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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L
管理番号 1365571
審判番号 不服2020-2477  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-02-25 
確定日 2020-09-08 
事件の表示 特願2016-556397「通信装置および通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年5月6日国際公開、WO2016/067696、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は2015年(平成27年)8月4日(優先権主張2014年10月31日、日本)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 元年 9月12日付け:拒絶理由通知書
令和 元年11月14日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年11月26日付け:拒絶査定
令和 2年 2月25日 :拒絶査定不服審判の審判請求書、手続補正 書の提出
令和 2年 5月19日付け:前置報告


第2 原査定と前置報告書の概要

1 原査定の概要

原査定(令和元年11月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(1)理由1(特許法第29条第1項第3号)
本願請求項1-4、11-14、16-18に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(2)理由2(特許法第29条第2項)
本願請求項1-18に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2007-214920号公報


2 前置報告書の概要

前置報告書の概要は次のとおりである。

(1)独立請求項である補正後の請求項8-10に係る発明は、それぞれ補正前の請求項16-18に対応するものであると認められるが、補正前の請求項8-10における発明特定事項の限定であるとは認められない。また、上記補正は、請求項の削除、明瞭でない記載の釈明、及び、誤記の訂正に該当するものでもない。
したがって、この補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

(2)以下の引用文献2に記載された発明に引用文献1に記載された発明を採用して請求項1-10に係る発明とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

引用文献等一覧
1.特開2007-214920号公報
2.国際公開第2014/003463号(新たに引用された文献)


第3 審判請求時の補正について

審判請求時の補正(令和2年2月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。))は、以下に示すように、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。

1 本件補正の概要

本件補正は、令和2年2月25日に提出された拒絶査定不服審判の審判請求書も参酌すると、次のように補正するものである。

(1)本件補正前の本願請求項1の発明特定事項の「フレーム」を「ビーコンフレーム」とするとともに、「ビーコンフレームは、前記複数の他の通信装置各々宛てのデータフレームが存在する旨を示す情報を有し」という事項を追加し、「周波数」を「複数の他の通信装置の各々に割り当てられる」とし、さらに、「通信部」について「通信部は、前記複数の他の通信装置の各々から前記指定情報に基づいて周波数分割多重化されたPS-Pollフレームを受信し、前記複数の他の通信装置の各々に前記データフレームを送信し、前記複数の他の通信装置の各々から前記データフレームに対する周波数分割多重化されたACKフレームを受信する」という事項を追加し、本件補正後の本願請求項1とする。

(2)本件補正前の本願請求項2-7、10、12を削除する。

(3)本件補正前の本願請求項8、11、15の記載内容を本件補正後の請求項1の記載に整合させ、それぞれ、本件補正後の本願請求項2、4、7とする。

(4)上記(2)に伴い、本件補正前の本願請求項9の従属先を変更し、本件補正後の本願請求項3とする。

(5)本件補正前の本願請求項13、14の記載内容を本件補正後の本願請求項1の記載に整合させるとともに、上記(2)に伴い、従属先を変更して、本件補正後の本願請求項5、6とする。

(6)本件補正前の本願請求項16が通信装置として当然に備える「通信部」を明記するとともに、請求項1に係る補正事項と同一の趣旨に基づいて補正し、本件補正後の本願請求項8とする。

(7)本件補正前の本願請求項1に対応するカテゴリーの異なる請求項であった本件補正前の本願請求項17を請求項1に係る補正事項と同一の趣旨に基づいて補正し、本件補正後の本願請求項9とする。

(8)本件補正前の本願請求項16に対応するカテゴリーの異なる請求項であった本件補正前の本願請求項18を請求項16(本件補正後の請求項8)に係る補正事項と同一の趣旨に基づいて補正し、本件補正後の本願請求項10とする。


2 本件補正の内容

上記1(1)、(3)ないし(8)の補正は、本願の発明の詳細な説明の段落【0189】から【0228】、【図20】から【図24】などの記載に基づくものであり、新規事項を追加する補正ではないし、発明の特別な技術的特徴を変更する補正でもない。
また、上記1(1)、(3)ないし(8)の補正は、「フレーム」と「通信部」に関する発明特定事項又は当該発明特定事項に対応する発明特定事項を限定するものであり、かつ、発明特定事項の限定がなされた本件補正前の本願請求項1、8、9、11、13-18と、本件補正後の本願請求項1-10に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、本件補正後の本願請求項1-10に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
なお、上記1(2)の補正が請求項の削除を目的とするものに該当することは明らかである。


第4 本願発明

本願請求項1-10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
複数の他の通信装置の各々について異なる、多重化のための送信処理を指定する指定情報を示すビーコンフレームを生成する処理部と、
前記処理部により生成される前記ビーコンフレームを前記複数の他の通信装置に送信する通信部と、
を備え、
前記指定情報は、前記複数の他の通信装置の各々に割り当てられる周波数を示す情報を含み、
前記ビーコンフレームは、前記複数の他の通信装置各々宛てのデータフレームが存在する旨を示す情報を有し、
前記通信部は、前記複数の他の通信装置の各々から前記指定情報に基づいて周波数分割多重化されたPS-Pollフレームを受信し、前記複数の他の通信装置の各々に前記データフレームを送信し、前記複数の他の通信装置の各々から前記データフレームに対する周波数分割多重化されたACKフレームを受信する
通信装置。
【請求項2】
前記複数の他の通信装置に送信する前記データフレームは、周波数分割多重化される、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記指定情報は、前記データフレームの周波数分割多重化で用いられた周波数を示す情報である、請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記通信部は、前記指定情報を示す前記ビーコンフレームに対する、前記指定情報を示す前記ビーコンフレームの受信から所定の時間経過後に前記複数の他の通信装置より送信される、周波数分割多重化された前記PS-Pollフレームを受信し、
前記処理部は、前記指定情報に基づいて前記PS-Pollフレームの受信有無の判定を行う、請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記PS-Pollフレームに、前記複数の他の通信装置の各々に割当てられた周波数の信号が含まれるかに基づいて前記判定を行う、請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記信号の復調により得られる前記PS-Pollフレームの内容が所定の内容であるかに基づいて前記判定を行う、請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記指定情報を示す前記ビーコンフレームは、前記指定情報を示す前記ビーコンフレームに対する前記PS-Pollフレームの送信要求を示す応答要求情報を含む、請求項1に記載の通信装置。
【請求項8】
他の通信装置からのビーコンフレームを受信する通信部と、
前記他の通信装置から示される送信処理に従って、前記ビーコンフレームに対する応答を処理する処理部を備え、
前記ビーコンフレームは周波数を示す情報と自装置宛てのデータフレームが存在する旨を示す情報を有し、
前記通信部は、他の装置に他の子機とともに前記周波数を示す情報に基づいて周波数分割多重化されたPS-Pollフレームを送信し、前記他の通信装置から前記データフレームを受信し、前記他の装置に前記他の子機とともに前記データフレームに対する周波数分割多重化されたACKフレームの送信を行う通信装置。
【請求項9】
複数の他の通信装置の各々について異なる、多重化のための送信処理を指定する指定情報を示すビーコンフレームを生成することと、
生成される前記ビーコンフレームを前記複数の他の通信装置に送信することと、
を含み、
前記指定情報は、前記複数の他の通信装置の各々に割り当てられる周波数を示す情報を含み、
前記ビーコンフレームは、前記複数の他の通信装置各々宛てのデータフレームが存在する旨を示す情報を有し、
前記複数の他の通信装置の各々から前記指定情報に基づいて周波数分割多重化されたPS-Pollフレームを受信することと、
前記複数の他の通信装置の各々に前記データフレームを送信することと、
前記複数の他の通信装置の各々から前記データフレームに対する、周波数分割多重化されたACKフレームを受信することとを含む通信方法。
【請求項10】
他の通信装置からのビーコンフレームの受信処理を行うことと、
複数の通信装置の各々について異なる、前記他の通信装置から示される送信処理に従って、前記ビーコンフレームに対する応答を処理することと、
を含み、
前記ビーコンフレームは周波数を示す情報と前記複数の通信装置宛てのデータフレームが存在する旨を示す情報を有し、
前記他の通信装置に、前記周波数を示す情報に基づいて前記複数の通信装置によって周波数分割多重化されたPS-Pollフレームを送信することと、
前記他の通信装置から前記データフレームを受信することと、
前記他の通信装置に、前記データフレームに対する、前記複数の通信装置によって周波数分割多重化されたACKフレームを送信することとを含む通信方法。」


第5 引用文献、引用発明等

1 引用文献1について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに、以下の記載事項がある。(なお、下線は当審にて付与した。)

(1)「【0001】
本発明は、無線通信システムに関するものであり、特に、無線LAN通信において、送達確認フレームであるACK/NACK(ACKnowledgement/NegativeACKnowledgement)などの制御フレームを複数端末間で多重して送信する無線通信システムに関するものである。」

(2)「【0024】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる無線通信システム(家庭/オフィス向けの無線ネットワーク)の構成を示す図である。この無線通信システムは、有線または無線系の外部の通信網を構成するアクセス網と接続するアクセスライン(たとえば、Ethernet(登録商標),xDSL,CATV,FTTH等)との相互接続を行うためのゲートウェイを有する基地局(AP)1と、複数の無線端末(STA)2-1?2-nから構成される。
【0025】
基地局1は、アクセス網と接続する有線または無線系のアクセスラインを終端させ、家庭/オフィス内の無線ネットワークを介して特定の無線端末へのアクセス網からの受信情報を送信する通信ユニットシステム11を備える。そして、この通信ユニットシステム11は、上記アクセスラインを終端させるアクセス系終端ユニット12と、アクセス網の信号と家庭/オフィス内の無線端末の信号との間の信号フォーマットの相互変換を制御する信号インタフェースユニット(たとえば、ルーター,ブリッジに相当)13と、家庭/オフィス内の無線ネットワークのアクセス制御および変復調を行う無線ユニット14と、を備える。
【0026】
また、各無線端末は、それぞれ、パソコン,PDA,携帯電話,テレビジョン受信機のような情報機器本体21と、各情報機器本体と基地局の通信ユニットシステムとの間のデータ送受信を制御する端末ユニットシステム22と、を備える。そして、この端末ユニットシステムは、基地局,他の無線端末の信号と情報機器本体21の信号との間の信号フォーマットの相互変換を制御する端末インタフェースユニット23と、家庭/オフィス内の無線ネットワークのアクセス制御および変復調を行う無線ユニット24と、を備える。」

(3)「【0028】
図2は、本実施の形態の無線ユニット14,24の構成を示す図である。この無線ユニットは、信号インタフェースユニット13または端末インタフェースユニット23との接続のためのホストインタフェースからのデータに基づいて、送信データの作成/受信データの作成およびアクセス制御を行うMAC(Media Access Control)31と、変復調などを行う物理層(PHY)32と、を備える。MAC31には、それぞれ、送信データの作成および送信タイミングなどの管理を行う送信制御部(MAC Tx)33と、受信タイミングの検出および受信データの成否の確認などを行う受信制御部(MAC Rx)34と、を有する。PHY32には、MAC31からの送信データを変調する送信変調部(Tx PHY)35と、受信データを復調する受信復調部(Rx PHY)36と、を有する。なお、図示はしていないが、MAC31は、呼の受付制御部,認証部,暗号化部等をも有する。
【0029】
図3は、本実施の形態のTMA(Tone Multiple ACK)を用いたフレーム送受信シーケンスを示す図である。本実施の形態では、複数のユーザーから送信される送達確認(ACK/NACK)フレームを1つの無線フレームに多重する方法を示す。また、この方式を“Tone Multiplex ACK”と呼ぶことにする。本実施の形態では、送達確認フレームの送信に関する情報(TMAフレームの構成)を、TMAインフォメーションフィールド(TMA Information Field)と呼ばれる複数のパラメータ(タイミング,送信方法,送信位置,電力など)からなるフィールドに含め、当該TMAインフォメーションフィールドが所定位置に配置されたアグリゲーションフレーム(Aggregation Frame)を各無線端末に対して通知する。なお、本実施の形態では、一例として、基地局がTMAインフォメーションフィールドを通知する場合について説明するが、これに限らず、たとえば、特定の無線端末が、TMAインフォメーションフィールドが配置されたフレームを他の各無線端末に対して通知し、当該他の各無線端末からTMAを受信することとしてもよい。
【0030】
まず、基地局1が、TMAインフォメーションフィールドを含む各無線端末宛のアグリゲーションフレームを図2の送信制御部33にて作成し、アクセス手順に則って送信変調部35にて変調し、送信する。
【0031】
つぎに、各無線端末は、受信復調部36にてアグリゲーションフレームを受信し、受信制御部34にてTMAインフォメーションフィールドと自端末向けのデータを抽出する。ここで、フレームエラーチェックなどを行い。受信が成功した場合にはホストインタフェースを経由して、上位レイヤに受信データを引き渡すとともに送達成功を示す送達確認フレーム(ACK)の送信を行う。
【0032】
その際、送信制御部33が、TMAインフォメーションフィールドにて指定されたフレーム構成(タイミング,サブキャリア等)で送信フレームを作成し、送信変調部35が、割り当てられた送信タイミング,アクセス手順に則って、TMAインフォメーションフィールドにおいて指定された送信方法で送信を行う。
【0033】
つぎに、基地局1においては、事前のTMAインフォメーションフィールドに基づいて各無線端末から送信された送達確認フレームを受信復調部36にて受信し、受信制御部34がその内容を解析し、各無線端末から多重された送達確認フレーム(TMA)がACKまたはNACKであることを認識する。
(中略)
【0036】
左の矩形は、基地局1(または特定の無線端末)から送信される複数の宛先を含むアグリゲーションフレームである。このアグリゲーションフレームは、タイミング同期,周波数同期, AGCなどを行うためのトレーニング部分および以降のシンボルに対する変調方式,データ長などを示すSignal部分(“HT Training+Signal”および“Legacy Training+Signal”)、TMAの構成や制御パラメータを宛先STAに通知するTMAインフォメーションフィールド、その後にMPDU(MAC Protocol Data Unit)、が続く構成となっている。」

(4)「【0038】
また、アグリゲーションフレームに関しては、本方式に限らず、図55?図58など、どのような構成でもかまわない。また、受信側端末がTMAを送信するために必要となるTMAインフォメーションフィールドは、事前のRTS/CTSフレーム,セットアップフレーム,Beaconなどのフレームによって通知してもかまわない。アグリゲーションフレームにTMAインフォメーションフィールドを含めないで、事前のフレームにて通知することによって、アグリゲーションフレームに毎回TMAインフォメーションフィールドを含めないですむことになり、TMAインフォメーションフィールドの挿入によるオーバーヘッドを低減できる。」

(5)「【0041】
図5は、本実施の形態におけるTMAの実施例を示す図であり、基地局1(または特定の無線端末)と宛先無線端末2-1,2-2,2-3との関係を示している。ここでは、図4と同様に、無線端末2-1,2-2,2-3が、通知された送達確認フレーム(TMA)に関する情報に基づいて、アグリゲーションフレームの送信元である基地局1に対してTMAを送信している様子が示されている。各端末(AP,STA)の横にある矩形は、横軸を時間(またはシンボル)、縦軸を周波数(または、Tone,サブキャリア)とした場合、各無線端末が、事前に割り当てられた位置(時間と周波数)を使用して、送信元の基地局1に対して送達確認フレームを送信し、基地局1が、多重された送達確認フレームを受信している。ここでは、上記図4において示したものと同じく、無線端末2-1からは2トーンを用いて2つのTMAが送信され、無線端末2-2からは1つのTMAが送信され、無線端末2-3からは1つのTMAが送信されている。なお、TMAを受信している基地局1では、すべてのTMAを同時刻において周波数分割された状態で受信している。なお、図5において、無線端末2-1では、アグリゲーションフレームにて2つのMPDUを受信していることから、2トーンを用いてTMAとしているが、これに限らず、合わせて1トーンとしてTMAを送信することも可能である。」

(6)図1


(7)図2


(8)図3


(9)図5


(10)上記(1)から(9)の記載事項から、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「基地局(AP)1と複数の無線端末(STA)2-1?2-nから構成され、送達確認フレームであるACK/NACK(ACKnowledgement/Negative ACKnowledgement)などの制御フレームを複数端末間で多重して送信する無線通信システムの基地局1であって、(1、2、6)
前記基地局1は無線ユニット14を有する通信ユニットシステム11を備え、(2、6)
前記各無線端末は無線ユニット24を有する端末ユニットシステム22を備え、(2、6)
前記無線ユニット14と24はそれぞれ、送信データの作成および送信タイミングなどの管理を行う送信制御部33、受信制御部34、送信データを変調する送信変調部35及び、受信復調部36を有し、(3、7)
前記送達確認フレームの送信に関する情報を、TMAインフォメーションフィールドと呼ばれる複数のパラメータ(タイミング,送信方法,送信位置,電力など)からなるフィールドに含め、当該TMAインフォメーションフィールドが所定位置に配置されたアグリゲーションフレームを送信制御部33にて作成し、アクセス手順に則って送信変調部35にて変調し、送信し、(3)
前記アグリゲーションフレームは、トレーニング部分およびSignal部分、TMAインフォメーションフィールド、その後にMPDU(MAC ProtocolData Unit)、が続く構成であり、(3)
前記TMAインフォメーションフィールドはBeaconフレームによって通知することができ、(3、4、8)
前記各無線端末は、受信復調部36にてアグリゲーションフレームを受信し、受信制御部34にてTMAインフォメーションフィールドと自端末向けのデータを抽出するとともに、送信制御部33が、TMAインフォメーションフィールドにて指定されたフレーム構成(タイミング,サブキャリア等)で送信フレームを作成し、送信変調部35が、割り当てられた送信タイミング、アクセス手順に則って、TMAインフォメーションフィールドにおいて指定された送信方法で、すなわち事前に割り当てられた位置(時間と周波数)を使用して、送達成功を示す送達確認フレーム(ACK)の送信を行い、(3、5、8、9)
前記基地局1は、事前のTMAインフォメーションフィールドに基づいて各無線端末から送信された送達確認フレームを受信復調部36にて受信し、受信制御部34がその内容を解析し、各無線端末から多重された送達確認フレームがACKまたはNACKであることを認識する、(3、8)
基地局1。」


2 その他の文献について

前置報告書において新たに引用された引用文献2には、図面とともに、以下の記載事項がある。(なお、下線は当審にて付与した。また、当審仮訳として、ファミリ文献の特表2015-515207号公報を参考にした。)

(1)「



(当審仮訳:[8] 要約:本発明の第1の技術的側面は、無線通信システムにおいてステーション(STA:Station)がチャネルアクセスを行う方法において、TIM(TrafficIndication Map)を含むビーコンフレームを受信するステップと、前記TIMによって前記STAにバッファされたトラフィックがあると指定された場合、PS(PowerSave)-Pollフレームを送信するステップと、を含み、前記PS-Pollフレームは、前記PS-Pollフレームを送信するために割り当てられるPS-Poll専用RAW(RestrictedAccess Window)及び前記PS-Poll専用RAW以降に追加的に割り当てられる追加RAWのうち少なくとも一つにおいて送信される、チャネルアクセス実行方法である。)

(2)「



(当審仮訳:[35] 図2は、本発明を適用し得るIEEE 802.11システムの他の例示的な構造を示す図である。図2は、図1の構造において、分配システム(DistributionSystem;DS)、分配システム媒体(Distribution System Medium;DSM)、アクセスポイント(Access Point;AP)などの構成要素が追加された形態である。)

(3)「



(当審仮訳:[109] IEEE 802.11に基づく無線LANシステムにおいて、MAC(Medium Access Control)の基本アクセスメカニズムは、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)メカニズムである。CSMA/CAメカニズムは、IEEE802.11 MACの分配調整機能(Distributed Coordination Function、DCF)とも呼ばれるが、基本的に「listen before talk」アクセスメカニズムを採用している。このような類型のアクセスメカニズムによれば、AP及び/又はSTAは送信を開始するに先立ち、所定の時間区間(例えば、DIFS(DCF Inter-Frame Space)の間に無線チャネル又は媒体(medium)をセンシング(sensing)するCCA(Clear Channel Assessment)を行うことができる。センシングの結果、媒体が遊休状態(idle status)と判断されると、当該媒体を通じてフレーム送信を始める。一方、媒体が占有状態(occupied status)と感知されると、当該AP及び/又はSTAは自分の送信を開始せず、媒体アクセスのための遅延期間(例えば、任意バックオフ周期(random backoff period))を設定して待った後、フレーム送信を試みることができる。任意バックオフ周期の適用から、複数のSTAはそれぞれ異なった時間待った後にフレーム送信を試みることが期待されるため、衝突(collision)を最小化することができる。)

(4)「



(当審仮訳:[159] 図17を参照すると、STAは、APからTIMを含むビーコンフレームを受信するためにスリープ状態からアウェイク状態に切り替わり、受信したTIM要素を解釈して、自身に送信されるバッファされたトラフィックがあることを確認できる。STAは、PS-Pollフレームの送信のための媒体アクセスのために他のSTAと競合(contending)を行った後に、APにデータフレーム送信を要請するためにPS-Pollフレームを送信することができる。STAによって送信されたPS-Pollフレームを受信したAPは、STAにフレームを送信することができる。STAはデータフレームを受信し、それに対する確認応答(ACK)フレームをAPに送信することができる。以降、STAは再びスリープ状態に切り替わればよい。)

(5)「



(当審仮訳:[239] 図28を参照すると、各STAのPS-Poll区間(interval)は、ビーコンに含まれたTIM情報要素に基づいて各STA別に指定されており、PS-Pollを行うSTA間にPS-Poll区間の位置が互いに異なるように設定される。すなわち、APは、STAに送信するデータフレームを保存している場合、それらSTA(STA1、STA2、STA3)に対してそれぞれのPS-Poll区間を設定することができる。更に、APは、TIM要素によって指示していない他のSTA(STA1、STA2、STA3以外のSTA)が総PS-Poll区間内でチャネルアクセスを試みることを防止するために、ビーコンのMACヘッダー内の持続時間(duration)フィールドの値は、当該ビーコンの長さに総PS-Poll区間を追加して設定することができる。STAはSIGフィールド内の長さ(Length)フィールド及びMCSフィールドからビーコンの長さを確認できるため、持続時間(duration)フィールドを通じてTIM要素によって指示されたSTA(STA1、STA2、STA3)に指定された総PS-Poll区間を確認でき、TIM要素によって指示されていないSTA(STA1、STA2、STA3以外のSTA)は、当該総PS-Poll区間ではチャネルアクセスを試みなくなる。)

(6)「



(当審仮訳:[257] 図29では、STA1、STA2、STA3のためのデータフレームをAPが有しており、このような事実をビーコンフレームのTIM要素を通じてSTA1、STA2、STA3に知らせたと仮定する。
[258] 図29を参照すると、ビーコンのTIMで3個のSTA(STA1、STA2、STA3)が順次に指示されると、各STAは、STA1、STA2、STA3の順にPS-Poll区間が設定され、各STAは自身のPS-Poll区間の位置を、TIMに含まれた情報から確認できる。)

(7)「



(当審仮訳:[262] APは総PS-Poll区間が終わった後、各STAにデータを送信し、各STA(最後のSTAは除く)は、総PS-Poll区間が終わる時点でアウェイク状態に切り替わり、APからデータを受信するためにCCAを行う。最後のSTA(STA3)は自身のPS-Poll区間からアウェイク状態を維持してCCAを行うようになる。APは、任意バックオフ周期に基づいて競合(contention)を行って各STAにデータを送信することができる。言い換えると、APは、各STA別にバックオフカウント値を選択し、バックオフカウント値が最も小さいSTAからバックオフカウント値が最も大きいSTAの順にデータを送信することができる。図29では、STA1のバックオフカウント値が最も小さく、次にSTA2が小さく、STA3のバックオフカウント値が最も大きい場合を例示している。APは、AIFSの間に媒体が遊休状態であることを確認し、バックオフスロットをカウントダウンした後、データフレームをSTA1に送信する。STAは、APから送信されるデータフレームのプリアンブル(例えば、SIGフィールドの部分AID(Partial AID))に基づいて、自身に向かうデータフレームか否かを確認することができる。すなわち、STA1は自身に向かうデータフレームであることを確認し、当該データフレームをデコードし、残りのSTA(STA2、STA3)は自身に向かうデータフレームでないことを確認し、スリープモードに切り替わり得る。また、STAは、APから送信されるデータフレームのプリアンブル(例えば、SIGフィールドの長さ(Length))から、当該データフレームのMPDUの長さを確認できる。すなわち、自身に向かうデータフレームでないことを確認してスリープモードに切り替わったSTAは、他のSTAのMPDU長を考慮してアウェイク状態に再び切り替わり得る。
[263] APからデータフレームを受信したSTA1は、SIFS以降にAPにACKフレームを送信する。STA1がAPにACKフレームを送信する時点、すなわち、APによるSTA1へのデータ送信が終了する時点でSTA2とSTA3はスリープ状態からアウェイク状態に切り替わり、以降、競合ベースでAPからデータフレームを受信する。)

(8)FIG.29(図29)


(9)上記(5)から(7)の記載を踏まえると、上記(8)からはAPがTIM要素を含むビーコン(図29の“Beacon(TIM)”)を各SATに送信し、各SATは各SATに設定されたPS-Poll区間(図29の“PS-Poll Interval of a STA”)にPS-PollをAPに送信し、各SATはAPからデータフレーム(図29の“DL data”)を受信した後にAPに対してACKフレームを送信していることがみてとれる。

(10)上記(1)から(9)の記載事項から、引用文献2には次の技術的事項(無線通信システム)が記載されているといえる。

「AP(Access Point)と複数のSAT(Station)から構成された無線通信システムであって、
前記各STAのためのデータフレームをAPが有していることをビーコンフレームのTIM要素を通じて各STAに知らせ、
前記TIMによって前記STAにバッファされたトラフィックがあると指定された場合に,前記ビーコンフレームを受信した各SATは各SATに設定されたPS-Poll区間にPS-PollをAPに送信し、ここで、各STAのPS-Poll区間は、ビーコンに含まれたTIM要素に基づいて各STA別に指定されるものであり、PS-Pollを行うSTA間にPS-Poll区間の位置が互いに異なるように設定されており、
前記各STA(最後のSTAは除く)は、総PS-Poll区間が終わる時点でアウェイク状態に切り替わり、APからデータを受信するために無線チャネルをセンシングするCCAを行い、最後のSTAは自身のPS-Poll区間からアウェイク状態を維持してCCAを行い、
前記APは総PS-Poll区間が終わった後、バックオフカウント値が最も小さいSTAからバックオフカウント値が最も大きいSTAの順にデータを送信し、
前記SATはAPからデータフレームを受信した後にAPにACKフレームを送信し、
STA1のバックオフカウント値が最も小さく、次にSTA2が小さく、STA3のバックオフカウント値が最も大きい場合,STA1がAPにACKフレームを送信する時点でSTA2とSTA3はスリープ状態からアウェイク状態に切り替わり、以降、競合ベースでAPからデータフレームを受信する、
無線通信システム。」


第6 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明は「無線通信システム」を構成する「基地局1」であるから、本願発明1である『通信装置』に含まれる。また、引用発明における「複数の無線端末」は、引用発明である「基地局1」とともに「無線通信システム」を構成するものであるから、本願発明1における『複数の他の通信装置』に含まれる。

イ 引用発明における「TMAインフォメーションフィールド」は「各無線端末」が「送達成功を示す送達確認フレーム(ACK)」を送信するための「フレーム構成(タイミング,サブキャリア等)」を指定するものであり、サブキャリア(周波数)を示す情報を含んでいる。
したがって、引用発明における「TMAインフォメーションフィールド」は、本願発明1でいう『複数の他の通信装置の各々について異なる、多重化のための送信処理を指定する指定情報』であって、『複数の他の通信装置の各々に割り当てられる周波数を示す情報を含』む『指定情報』に相当する。

ウ 引用発明における「TMAインフォメーションフィールド」は「Beaconフレームによって通知することができ」るものであるから、本願発明1でいう『ビーコンフレーム』が『複数の他の通信装置各々宛てのデータフレームが存在する旨を示す情報を有』するという点を除き、引用発明における「Beaconフレーム」は本願発明1でいう『ビーコンフレーム』に相当する。

エ 引用発明と無線通信を行う「各無線端末」は「アグリゲーションフレームを受信し」ており、引用発明におけるアグリゲーションフレームはトレーニング部分およびSignal部分、TMAインフォメーションフィールド、その後にMPDU(MACProtocol Data Unit)が含まれている。
ここで、「TMAインフォメーションフィールド」を「Beaconフレーム」で通知する場合には、「アグリゲーションフレーム」はトレーニング部分およびSignal部分、その後にMPDU(MAC Protocol Data Unit)抽出されるフレームであるから、本願発明1でいう『データフレーム』であるといえる。

オ 引用発明における「送信制御部33」は「TMAインフォメーションフィールドを含む各無線端末宛のアグリゲーションフレーム」を作成するものである。
ここで、引用発明が「送信制御部33」と「送信変調部35」とを有する「無線ユニット14」を1つだけ備える構成であることを踏まえれば、「TMAインフォメーションフィールド」を「Beaconフレーム」で通知する場合には「Beaconフレーム」も引用発明の「送信制御部33」で作成されると考えるのが自然である。
してみると、本願発明1でいう『ビーコンフレーム』が『複数の他の通信装置各々宛てのデータフレームが存在する旨を示す情報を有』するという点を除き、引用発明の「送信制御部33」は、本願発明1でいう『複数の他の通信装置の各々について異なる、多重化のための送信処理を指定する指定情報を示すビーコンフレームを生成する処理部』に相当する。

カ 引用発明の「送信変調部35」は引用発明の「送信制御部33」で作成された「各無線端末宛のアグリゲーションフレーム」を変調するものである。
ここで、送信データとして「Beaconフレーム」を送信するに際し、引用発明の「送信制御部33」は、送信データの作成を行い、「送信変調部35」は送信データを変調するから、「Beaconフレーム」は「送信制御部33」で作成され、「送信変調部35」で変調され、送信されるものである。
してみると、上記エで言及したことも踏まえると、引用発明の「送信変調部35」は、本願発明1の『通信部』が行う『処理部により生成される前記ビーコンフレームを前記複数の他の通信装置に送信する』との処理及び、『複数の他の通信装置の各々に前記データフレームを送信』する処理を行っている。

キ 引用発明の「基地局1」は「事前のTMAインフォメーションフィールドに基づいて各無線端末から送信された送達確認フレームを受信復調部36にて受信し、受信制御部34がその内容を解析し、各無線端末から多重された送達確認フレームがACKまたはNACKであることを認識する」から、引用発明の「受信復調部36」は、本願発明1の『通信部』が行う『複数の他の通信装置の各々から前記データフレームに対する周波数分割多重化されたACKフレームを受信する』との処理を行っている。

ク 上記カとキより、引用発明の「送信変調部35」と「受信復調部36」とは、本願発明1の『通信部』が『複数の他の通信装置の各々から前記指定情報に基づいて周波数分割多重化されたPS-Pollフレームを受信』するとの処理を行っている点を除き、本願発明1でいう『通信部』に相当する。


(2)一致点及び相違点

上記(1)で対比した様に、本願発明1と引用発明とは、

「複数の他の通信装置の各々について異なる、多重化のための送信処理を指定する指定情報を示すビーコンフレームを生成する処理部と、
前記処理部により生成される前記ビーコンフレームを前記複数の他の通信装置に送信する通信部と、
を備え、
前記指定情報は、前記複数の他の通信装置の各々に割り当てられる周波数を示す情報を含み、
前記通信部は、前記複数の他の通信装置の各々に前記データフレームを送信し、前記複数の他の通信装置の各々から前記データフレームに対する周波数分割多重化されたACKフレームを受信する
通信装置。」

で一致しており、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明1の『ビーコンフレーム』は『複数の他の通信装置各々宛てのデータフレームが存在する旨を示す情報を有』するのに対し、引用発明における「Beaconフレーム」は“データフレームが存在する旨を示す情報”を有していない点。

[相違点2]
本願発明1の『通信部』は『複数の他の通信装置の各々から前記指定情報に基づいて周波数分割多重化されたPS-Pollフレームを受信』するのに対し、引用発明の「受信復調部36」は“複数の他の通信装置の各々から前記指定情報に基づいて周波数分割多重化されたPS-Pollフレームを受信”しない点。


(3)判断

相違点2の「PS-Pollフレーム」は、本願の発明の詳細な説明の段落【0190】の「子機がパワーセーブモードにある場合、親機は子機宛てのデータフレームをバッファリングし、親機が送信するビーコン(Beacon)フレームにバッファリングされるデータフレームが存在する旨を示す情報が含まれる。」との記載及び、段落【0191】の「パワーセーブモードの子機は、ビーコンフレームの受信の際に、スリープ状態からアクティブ状態に自機の状態を遷移させ、自機宛てのデータフレームがバッファリングされている場合は、PS(Power Save)-Pollフレームを親機に送信する。」との記載に基づけば、「複数の他の通信装置各々宛てのデータフレームが存在する」場合に「複数の他の通信装置の各々」が送信し、本願発明1の「通信部」が受信するものである。
したがって、上記(2)に示した相違点2の「PS-Pollフレームを受信」するのは、相違点1の「複数の他の通信装置各々宛てのデータフレームが存在する旨を示す情報を有」する場合であるから、相違点1と2を一体的に判断する。

引用文献2には、第5の2に説示したとおりの無線通信システムが記載されており、各SATがPS-PollをAPに送信するPS-Poll区間の位置をビーコンフレームのTIM要素が指定しているものの、各SATはPS-Pollを送信すると,アウェイクしてキャリアセンスであるCCAを行い、APはバックオフ値が小さい順にSTAにデータ送信を行い、STAがACKを送信する時点で他のSTAがアウェイクしてAPからデータを受信している。
つまり、引用文献2のAPは、多重化されたACKフレームを受信しない通信方式の発明であるから、引用文献1に引用文献2を組み合わせることはできない。
仮に、引用発明と引用文献2を組み合わせても、基地局は周波数分割多重化されたPS-Pollを受信するが、ACKは個別に受信するのであって周波数分割多重化されたACKを受信しない通信装置や通信方法が構成されるだけである。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。


2 本願発明2-7について

本願発明2-7も、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


3 本願発明8について

本願発明8は、本願発明1に係る通信装置の通信相手となる通信装置に係る発明であり、本願発明1に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


4 本願発明9について

本願発明9は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

5 本願発明10について

本願発明10は、本願発明8に対応する方法の発明であり、本願発明1に対応する構成を備えるものであるから、本願発明8と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定について

1 理由1(特許法第29条第1項第3号)

本願発明1、4-6と引用発明は、上記第6の1(2)のとおり、相異点1及び2を有する。したがって、拒絶査定において引用された引用文献1に記載された発明ではないから、原査定の理由1を維持することはできない。
また、本願発明1が有する上記事項と対応する事項を有する本願発明8-10についても本願発明1と同様の理由により、原査定の理由1を維持することはできない。


2 理由2(特許法第29条第2項)

上記第6の1(3)で説示したとおり、審判請求時の補正により、本願発明1-7は「ビーコンフレーム」が「複数の他の通信装置各々宛てのデータフレームが存在する旨を示す情報を有」し、「通信部」が「複数の他の通信装置の各々から前記指定情報に基づいて周波数分割多重化されたPS-Pollフレームを受信」するという事項を有するものとなっており、拒絶査定において引用された引用文献1に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由2を維持することはできない。
また、本願発明1が有する上記事項と対応する事項を有する本願発明8-10についても本願発明1と同様の理由により、原査定の理由2を維持することはできない。


第8 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-08-20 
出願番号 特願2016-556397(P2016-556397)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 原田 聖子太田 龍一  
特許庁審判長 吉田 隆之
特許庁審判官 中野 浩昌
岡本 正紀
発明の名称 通信装置および通信方法  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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