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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F25D
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F25D
管理番号 1365697
審判番号 不服2019-4553  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-05 
確定日 2020-09-03 
事件の表示 特願2017- 80490「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月13日出願公開、特開2017-122576〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年10月6日(優先権主張平成21年3月27日、平成21年6月4日)に出願した特願2009-232440号の一部を平成26年11月4日に新たな特許出願とした特願2014-224063号の一部を、さらに平成29年4月14日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成30年2月14日付けで拒絶理由の通知
平成30年6月14日に意見書及び手続補正書の提出
平成30年8月7日付けで拒絶理由の通知(最後)
平成30年10月18日に意見書及び手続補正書の提出
平成31年1月7日付けで平成30年10月18日の手続補正について補正の却下の決定
平成31年1月7日付けで拒絶査定
平成31年4月5日に拒絶査定不服審判の請求及びその請求と同時に手続補正書の提出
令和元年6月6日に上申書の提出
令和2年2月14日付けで平成31年4月5日の手続補正について補正の却下の決定及び拒絶理由の通知
令和2年4月9日に意見書及び手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和2年4月9日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに願書に最初に添付された明細書及び図面の記載によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載された以下の事項により特定されるものである。
「【請求項1】
冷蔵温度帯の貯蔵室を有する冷蔵庫において、
ミストを放出するミスト放出部と、前記ミスト放出部に電圧を印加する電源装置とを有して放出口からミストを放出する構成の静電霧化装置を備え、
前記静電霧化装置は貯蔵室を仕切る仕切板に設置され、前記仕切り板の下方には、前記放出口からずれて位置させたミスト放出口が設けられた板があって、当該仕切板の下面に沿って前記貯蔵室内を冷却する冷気が流れ、
前記ミスト放出部の表面の水分が分裂して当該ミスト放出部から前記放出口を通して放出されたミストは、前記冷気に引き込まれ、前記ミスト放出口を通る冷蔵庫。」

第3 令和2年2月14日付けで通知した拒絶の理由
当審において、令和2年2月14日付けで通知した拒絶の理由は、以下のとおりである。
<理由1(新規性)について>
本願発明は、本願の出願前(優先日前)に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1又は2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができない。

<理由2(進歩性)について>
本願発明は、本願の出願前(優先日前)に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1又は2に記載された発明に基いて、本願の出願前(優先日前)にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献一覧>
引用文献1:特開2008-292134号公報
引用文献2:特開2008-116198号公報
引用文献3:特開平2-71074号公報(技術常識を示す文献)
引用文献4:特開昭63-75471号公報(技術常識を示す文献)

第4 引用文献
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の優先日前に頒布された引用文献1には、「冷蔵庫」に関し、次の記載がある。
なお、「・・・」は記載の省略を示し、下線は当審において付したものである。
「【0001】
本発明は野菜などを収納する貯蔵室空間に霧化装置を設置した冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
野菜の鮮度低下に対する影響因子としては、温度、湿度、環境ガス、微生物、光などが挙げられる。野菜は生き物であり、野菜表面では呼吸と蒸散作用が行われ、鮮度を維持するには呼吸と蒸散作用の抑制が必要となる。低温障害をおこす一部の野菜を除き、多くの野菜は低温で呼吸が抑制され、高湿により蒸散防止できる。近年、家庭用冷蔵庫では野菜の保存を目的とし、密閉された野菜専用容器が設けられ、野菜を適正な温度に冷却するとともに、庫内を高湿化するなど野菜の蒸散を抑制するよう制御している。ここで、庫内の高湿化手段として、ミストを噴霧するものがある。
【0003】
従来、この種のミスト噴霧機能を備えた冷蔵庫は、野菜室内が低湿時に超音波霧化装置にてミストを生成噴霧、野菜室内を加湿、野菜の蒸散を抑制しているものである(例えば、特許文献1参照)。
・・・
【0012】
また、オゾン水ミスト装置を設けた冷蔵庫を示す(例えば、特許文献2参照)。
【0013】
冷蔵庫は、野菜室の近傍にオゾン発生体、排気口、水道直結の水供給経路、およびオゾン水供給経路を有している。オゾン水供給経路は野菜室に導かれている。オゾン発生体は水道直結の水供給部に連結している。また、排気口はオゾン水供給経路に連結するよう構成されている。また、野菜室内には超音波素子が備えられている。オゾン発生体で発生したオゾンは水と接触させて処理水としてのオゾン水にされる。生成したオゾン水は冷蔵庫の野菜室に導かれ、超音波振動子により霧化され、野菜室に噴霧される。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記従来の構成では、霧化装置への水の供給は、除霜水を溜めた貯水容器の水かもしくは水道水を用いているので、除霜水ホースや浄化フィルター、もしくは水道直結の水供給経路などの構成が必要であり、その構成が複雑になるという課題を有していた。
【0015】
また、略密閉された低温空間である冷蔵庫の貯蔵室にミストを噴霧する際には、噴霧量の過多による貯蔵室内の過剰結露や渇水状態での噴霧による不具合を防ぐ為に、ムラがなく安定した噴霧を実現する必要があるが、上記従来の構成では、庫内を高湿にする目的でミストを噴霧しているが、霧化量の調整ができず、過剰噴霧によって庫内に水溜まりが発生する可能性があり、また野菜等の収納物が水腐れなどを発生する可能性があるという課題を有していた。
【0016】
本発明は、適切な量のミスト噴霧を行うことを目的とする。」

「【0323】
(実施の形態9)
図15は本発明の実施の形態9における冷蔵庫の野菜室近傍の断面図、図16は冷蔵庫の野菜室上部仕切り壁の図15のB-B部の平面図、図17は冷蔵庫の野菜室上部仕切り壁の図16のC-C部の正面図である。
【0324】
本実施の形態では、実施の形態1?8で詳細に説明した構成と異なる部分についてのみ詳細な説明を行い、実施の形態1?8で詳細に説明した構成と同じ部分もしくは、同じ技術思想が適用できる部分については、説明を省略する。
【0325】
図において、冷蔵庫100の断熱箱体101は主に鋼板を用いた外箱102とABSなどの樹脂で成型された内箱103で構成され、その内部には例えば硬質発泡ウレタンなどの発泡断熱材が充填、周囲と断熱され、複数の貯蔵室に区分されている。本実施例においては、野菜室107が冷蔵庫の最下部に構成され、その上部に冷凍温度帯の温度設定を行っている冷凍室108もしくは製氷室がその上に構成され、その間を仕切り壁で仕切り、貯蔵室として区画されている。
【0326】
冷凍室108の背面には冷気を生成する冷却室110が設けられ、その間には、断熱性を有する各室への冷気の搬送風路と、各室と断熱区画するために構成された奥面仕切り壁111が構成されている。
【0327】
冷却室の冷却器で生成された冷気は、各室に冷却ファンにより搬送される。ここで本実施例の野菜室107は、上部冷却器で生成された冷気を直接もしくは他室で熱交換された戻り風路を利用して、野菜室吐出風路182を介して野菜室に流れ、野菜室吸込み風路421から再び冷却器112に戻る。
【0328】
野菜室上面には冷凍室と区画するために仕切り壁414が構成されている。
【0329】
仕切り壁414は、ABSなどの樹脂で構成された野菜室側仕切り板413と冷凍室側仕切り板412とその間に断熱性を確保するための発泡スチロールやウレタンなどで構成された断熱材411で構成されている。ここで、仕切り壁414の野菜室側の壁面の一部に他の箇所より低温になるように凹部を設け、その箇所に静電霧化装置131とミスト風路417が設置されている。
【0330】
静電霧化装置131は主に霧化部139、電圧印加部133で構成されている。霧化部139は、霧化電極135が設置され、霧化電極135はアルミニウムやステンレス、真鍮などの良熱伝導部材からなる伝熱接続部材である金属ピン134に固定され、電気的にも電圧印加部から配線されている一端を含め接続している。
【0331】
この伝熱接続部材である金属ピン134は霧化電極135に比べて50倍以上、好ましくは100倍以上の大きな熱容量を有するものであり、例えば、アルミや銅などの高熱伝導部材が好ましく、金属ピン134の一端からもう一端に冷熱を熱伝導で効率よく伝導させるため、その周囲は断熱部材で覆われていることが望ましい。
【0332】
また、長期的に霧化電極135と金属ピン134の熱伝導の維持も必要であるので、接続部に湿度等の侵入を防止するためにエポキシ部材などを流しこみ、熱抵抗を抑え、さらに、霧化電極135と金属ピン134を固定する。また、熱抵抗を低下させるために霧化電極135を金属ピン134に圧入等により固定してもよい。
【0333】
さらに、金属ピン134は、貯蔵室と冷却器112もしくは風路を断熱するための断熱材内で冷温を熱伝導させる必要があるので、その長さは5mm以上好ましくは10mm以上確保することが望ましい。ただし、その長さを30mm以上にした場合は、その効果は低下すると同時に仕切り壁が厚くなり庫内収納量が減少する。
【0334】
なお、貯蔵室に設置された静電霧化装置131が高湿環境下にあり、その湿度が金属ピン134に影響する可能性があるので、金属ピン134は耐腐食性、耐錆性の性能を持った金属材料、もしくはアルマイト処理などの表面処理、コーティングを行った材料を選択したほうが好ましい。
【0335】
伝熱接続部材である金属ピン134は、断熱材411の一部に設けられた凹部にはめ合わせられ断熱材411に固定され、霧化電極135は金属ピン134とL字型に突起した形で取り付けられている。これは、庫内収納量を大きくするために仕切り壁の薄型化に寄与している。
【0336】
よって、伝熱接続部材である金属ピン134の霧化電極の反対側の端面は、ABSやPPなどの樹脂で成型された冷凍室側の仕切り板に圧接され、その冷凍室の冷気を仕切り板を介し、熱伝導で霧化電極を冷却させ、その先端に結露させ、水を生成する。
【0337】
このように簡単な構造で冷却手段を構成することができるので、故障が少なく信頼性が高い霧化部を実現することができる。また、冷凍サイクルの冷却源を利用して伝熱接続部材および霧化電極の冷却を行うことができるので、省エネルギで霧化を行うことができる。
【0338】
また、霧化電極135に対向している位置で貯蔵室側にドーナツ円盤状の対向電極136が、霧化電極135の先端と一定距離を保つように取付けられ、その延長上にミスト風路417が形成されている。
【0339】
ミスト風路417は、野菜室107と冷凍室108を区画する仕切り壁414の凹部に設けられている。
【0340】
仕切り壁414は、断熱性と庫内容量を確保するため一般に25mm?45mmで構成されている。この凹部にミスト風路を設ける。
【0341】
ミスト風路417は、野菜室から湿度を供給するためのミスト吸込み口423とミストを野菜室へ噴霧するミスト吐出口416があり、このミスト吸込み口から霧化部に高湿な空気を流入し、霧化部の霧化電極は冷凍室から熱伝導で金属ピンを介して冷却されているため、霧化電極先端は結露する。
【0342】
霧化電極先端と対向電極間に高電圧を印加さえることによりミストを発生させ、発生したミストは、ミスト風路417を通過して、ミスト吐出口416より野菜室に噴霧される。
【0343】
さらに、霧化部139と電気的に接続された電圧印加部133が構成され、高電圧を発生する電圧印加部133の負電位側が霧化電極135と、正電位側が対向電極136とそれぞれ電気的に配線、接続されている。
【0344】
霧化電極135近傍では、ミスト噴霧のため、常に放電が起こるため、霧化電極135先端では、磨耗を生じる可能性がある。冷蔵庫100は、10年以上運転することになるので、霧化電極135の表面は、強靭な表面処理が必要であり、例えば、ニッケルメッキ、および金メッキや白金メッキを用いることが望ましい。
【0345】
対向電極136は、例えば、ステンレスで構成されていて、また、その長期信頼性を確保する必要があり、特に異物付着防止、汚れ防止するため、例えば白金メッキなどの表面処理をすることが望ましい。
【0346】
電圧印加部133は、冷蔵庫本体の制御手段146と通信、制御され、冷蔵庫100もしくは静電霧化装置131からの入力信号で高圧のON/OFFを行う。
【0347】
なお、静電霧化装置131を固定している仕切り壁414には、風路内の結露を防止するためヒータ等の加熱手段418が設置されている。
【0348】
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作・作用を説明する。
【0349】
静電霧化装置131が設置されている仕切り壁414の断熱材411の厚さは、霧化電極135が固定されている金属ピン134を冷却するための冷却能力が必要であり、静電霧化装置131が備えられている箇所の壁厚は他の部分より薄く構成されている。そのため、比較的低温である冷凍室からの熱伝導により金属ピン134を冷却し、霧化電極135を冷却することが出来る。ここで、霧化電極135の先端温度を露点以下にすれば、霧化電極135近傍の水蒸気は霧化電極135に結露し、水滴が確実に生成される。
【0350】
ここでは図示しないが庫内に庫内温度検知部や庫内湿度検知部などを設置することにより、あらかじめ決められた演算により厳密に庫内環境下の変化に応じて露点を割り出すことが出来る。
【0351】
この状態で霧化電極135を負電圧側とし、対向電極136を正電圧側として、電圧印加部133によりこの電極間に高電圧(例えば7.5kV)を印加させる。このとき、電極間で空気絶縁層が破壊されコロナ放電が起こり、霧化電極135の水が電極先端から霧化し、目視できない1μm未満の電荷をもったナノレベルの微細ミストと、それに付随するオゾンやOHラジカルなどが発生する。
【0352】
発生した微細ミストは、野菜容器内に噴霧される。静電霧化装置131から噴霧される微細ミストは、マイナスの電荷を帯びている。一方、野菜室内には青果物である野菜が収納されており、その中には緑の菜っ葉ものや果物等も保存されている。これらの青果物は、通常、購入帰路時での蒸散あるいは保存中の蒸散によってやや萎れかけた状態で収納されていることが多い。これらの青果物は通常、プラスの電荷に帯電されており、噴霧されたマイナスの電荷を持った微細ミストは、野菜表面に集まりやすい。よって、噴霧された微細ミストは野菜室内を再び高湿にすると同時に青果物の表面に付着し、青果物からの蒸散を抑制し、保鮮性を向上させる。また、野菜や果物の細胞の隙間から組織内に浸透し、水分が蒸散して、萎んだ細胞内に再び水分が供給され、細胞の膨圧によって萎れが解消され、シャキッとした状態に復帰する。
【0353】
また、発生した微細ミストは、オゾンやOHラジカルなどを保持しており、これらは強い酸化力を保持する。そのため、発生した微細ミストが野菜室内の脱臭や野菜表面を抗菌、殺菌することが出来ると同時に、野菜表面に付着する農薬やワックスなどの有害物質を酸化分解・除去することが出来る。
【0354】
以上のように、本実施の形態9は、冷蔵庫本体は複数の貯蔵室を有し、霧化部を備えた貯蔵室である野菜室の天面側には霧化部を備えた貯蔵室である野菜室よりも低温に保たれた低温貯蔵室である冷凍室が備えられ、霧化部は野菜室の天面側の仕切り壁に取り付けた。
【0355】
これによって、霧化部を備えた貯蔵室の上部に冷凍室や製氷室のような冷凍温度帯の貯蔵室がある場合、それらを仕切る天面の仕切り壁に霧化部を設置することで、上部貯蔵室の冷気で霧化部の伝熱接続部材である金属ピンを冷却し、霧化電極135が冷却され、結露させることができるので、特別な冷却装置が不必要で、簡単な構成で霧化部を備えることができるので、故障が少なく信頼性が高い霧化部を実現することができる。
【0356】
貯蔵室を区画するための仕切り壁と、貯蔵室の天面側には低温貯蔵室が備えられ、静電霧化装置は天面の仕切り壁に取り付けたことにより、冷凍室や製氷室のような冷凍温度帯の貯蔵室が上部にある場合、それらを仕切る天面の仕切り壁に設置され、その冷却源で静電霧化装置の霧化電極を冷却し、結露させることができるので、特別な冷却装置が不必要で、また、天面から噴霧できるので収納容器全体に拡散しやすい。
【0357】
また、霧化部139を野菜室107の収納空間内に備えず、野菜室側仕切り板173の奥側に備えているので、人の手にも触れにくいので安全性が向上させることができる。
【0358】
また、本実施の形態の霧化部は静電霧化方式によってミストを生成するものであり、高電圧等の電気エネルギを使って水滴を分裂させ、細分化することによって微細ミストを発生させる。発生したミストは電荷を帯びている為、そのミストに野菜や果物等の付着させたい物と逆の電荷を持たすことによって、例えばプラスの電荷を持つ野菜に対してマイナスの電荷を帯びたミストを噴霧することにより、野菜や果物への付着力が向上するため、より均一に野菜表面にミストが付着するとともに、電荷を帯びていないタイプのミストと比較してミストの付着率をより向上させることが出来る。また、噴霧された微細ミストは直接、野菜容器内の食品に噴霧することができ、微細ミストと野菜の電位を利用して野菜表面に微細ミストを付着させることが出来るので、保鮮性を効率よく向上させることが出来る。
【0359】
さらに、本実施の形態の補給水は、外部から供給する水道水ではなく結露水を用いる。そのためミネラル成分や不純物がなく、霧化電極先端の劣化や目詰まりによる保水性の劣化を防ぐことが出来る。
【0360】
さらに、本実施の形態のミストはラジカルを含んでいることにより野菜表面に付着する農薬やワックスなどを極めて少ない水量で分解・除去出来るので節水ができ、かつ低入力化が出来る。」









(2)上記(1)記載から認められること
ア 上記(1)(特に、段落0001の記載)によれば、引用文献1には、冷蔵庫が記載されていることが認められる。

イ 上記(1)(特に、段落0325及び図15の記載)によれば、冷蔵庫100は、野菜室107が最下部に構成され、その上部に冷凍温度帯の温度設定を行っている冷凍室108がその上に構成され、その間を仕切り壁414で仕切り、貯蔵室として区画されていることが認められる。

ウ 上記(1)(特に、段落0330、0338、0342、0343及び0351の記載)によれば、霧化電極135先端とドーナツ円盤状の対向電極136間に高電圧が印加されることによりミストを発生する霧化部139と、前記霧化電極135を負電圧側とし、前記ドーナツ円盤状の対向電極136を正電圧側として、この電極間に高電圧を印加する電圧印加部133で構成された静電霧化装置131を備えることが認められる。

エ 上記(1)(特に、段落0325、0329、0341及び図1、15の記載)によれば、冷蔵庫100において、仕切り壁414は、ABSなどの樹脂で構成された野菜室側仕切り板413と冷凍室側仕切り板412とその間に断熱性を確保するための発泡スチロールやウレタンなどで構成された断熱材411で構成されており、前記仕切り壁414の野菜室107側の壁面の一部に他の箇所より低温になるように凹部が設けられ、その箇所に静電霧化装置131とミスト風路417が設置され、前記ミスト風路417は、前記野菜室107から湿度を供給するためのミスト吸込み口423とミストを前記野菜室107へ噴霧するミスト吐出口416があり、前記ミスト吐出口416は、ドーナツ円盤状の対向電極136から断熱箱体101の背面方向に離間して前記野菜室側仕切り板413に設けられることが認められる。

オ 上記(1)(特に、段落0327及び図15、16の記載)によれば、冷蔵庫100において、冷却室の冷却器112で生成された冷気は、冷却ファンにより搬送されて野菜室吐出風路422を介して野菜室107に流れ、野菜室吸込み風路421から再び前記冷却器112に戻るようにされたことが認められる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「野菜室107が最下部に構成され、その上部に冷凍温度帯の温度設定を行っている冷凍室108がその上に構成され、その間を仕切り壁414で仕切り、貯蔵室として区画されている冷蔵庫100において、
霧化電極135先端とドーナツ円盤状の対向電極136間に高電圧が印加されることによりミストを発生する霧化部139と、前記霧化電極135を負電圧側とし、前記ドーナツ円盤状の対向電極136を正電圧側として、この電極間に高電圧を印加する電圧印加部133で構成された静電霧化装置131を備え、
前記仕切り壁414は、ABSなどの樹脂で構成された野菜室側仕切り板413と冷凍室側仕切り板412とその間に断熱性を確保するための発泡スチロールやウレタンなどで構成された断熱材411で構成されており、前記仕切り壁414の野菜室107側の壁面の一部に他の箇所より低温になるように凹部が設けられ、その箇所に前記静電霧化装置131とミスト風路417が設置され、前記ミスト風路417は、前記野菜室107から湿度を供給するためのミスト吸込み口423とミストを前記野菜室107へ噴霧するミスト吐出口416があり、前記ミスト吐出口416は、前記ドーナツ円盤状の対向電極136から断熱箱体101の背面方向に離間して前記野菜室側仕切り板413に設けられ、
冷却室の冷却器112で生成された冷気は、冷却ファンにより搬送されて野菜室吐出風路422を介して前記野菜室107に流れ、野菜室吸込み風路421から再び前記冷却器112に戻るようにされた冷蔵庫。」

2 引用文献3
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献3には、「コンテナ用冷凍装置」に関し、次の記載がある。
「請求項(1)に係る発明においては、超音波加湿器(3)内に圧力空気を導く空気取入口(3c)を上記冷却通路(8)における蒸発器(2a)および送風手段(2b)の下流側に開口する一方、上記超音波加湿器(3)内部に連通されて生成霧を噴射させる噴射ノズル(3b)の噴射口(3d)を吐出通路(7)の冷却通路側端部に開口させたことにより、蒸発器(2a)から送風手段(2b)を介して流れる冷却空気は吐出通路(7)で、その流速が高くなるに伴って圧力降下を生じるため、超音波加湿器(3)で発生する生成霧は加湿器(3)内部(高圧)と噴射口(3d)付近(低圧)の圧力差によって、効率良く吐出通路(7)へ吸引されることになり、加湿器専用の送風ファンを設けることなく生成霧を噴出させるに十分な吸引力が得られ、該加湿器(3)の小形化、製造コストの低減および駆動部を減少させたことによる信頼性の向上が図られる。」(3頁右上欄16行?同頁左下欄13行)





3 引用文献4
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献4には、「冷凍装置用加湿装置」に関し、図面と共に次の記載がある。
「ここで、冷凍装置(3)及び加湿装置(4)が共に運転されているとき、第1図に矢印にて示したように冷却ユニット(6)の冷気吹出口(13)から例えば風速が略2.0m/secの冷気が庫内へ吹き出されると共に、加湿装置(4)の霧吹出口(28)から斜め前方へ前記冷気より霧吹出口(28)からの風速がはるかに遅い例えば略0.8m/secの霧が吹き出される。そして、この霧は風速の速い冷気の誘引作用により冷気に引き寄せられ、冷気と露とは次第に混ざり庫内を循環して庫内空気の冷却と加湿とが同時に行われる。」(3頁左上欄5?15行)





第5 対比
本願発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者における「野菜室107」は、前者における「冷蔵温度帯の貯蔵室」に相当し、同様に、「冷蔵庫100」は「冷蔵庫」に、「霧化部139」は「ミスト放出部」に、「電圧印加部133」は「電源装置」に、「静電霧化装置131」は「静電霧化装置」に、「仕切り壁414」は「仕切板」に、「ミスト吐出口416」は「ミスト放出口」に、それぞれ相当する。

・後者の「野菜室107が冷蔵庫の最下部に構成され、その上部に冷凍温度帯の温度設定を行っている冷凍室108がその上に構成され、その間を仕切り壁414で仕切り、貯蔵室として区画されている」ことは、貯蔵室として冷蔵温度帯である野菜室107が構成されているから、前者における「冷蔵温度帯の貯蔵室を有する」ことに相当する。

・後者の「霧化電極135先端とドーナツ円盤状の対向電極136間に高電圧が印加されることによりミストを発生する」ことは、前者の「ミストを放出する」に相当する。
また、後者の「前記霧化電極135を負電圧側とし、前記ドーナツ円盤状の対向電極136を正電圧側として、この電極間に高電圧を印加する」は、前者の「前記ミスト放出部に電圧を印加する」ことに相当する。
そして、後者の「静電霧化装置131」は、霧化部139におけるドーナツ円盤状の対向電極136の孔が発生したミストを放出する放出口として機能しているから、放出口からミストを放出する構成のものといえる。

・後者の「前記仕切り壁414は、ABSなどの樹脂で構成された野菜室側仕切り板413と冷凍室側仕切り板412とその間に断熱性を確保するための発泡スチロールやウレタンなどで構成された断熱材411で構成されており、前記仕切り壁414の野菜室107側の壁面の一部に他の箇所より低温になるように凹部が設けられ、その箇所に前記静電霧化装置131とミスト風路417が設置され」ることは、静電霧化装置131が野菜室107と冷凍室108との間を仕切る仕切り壁414に設置されるから、前者の「前記静電霧化装置は貯蔵室を仕切る仕切板に設置され」ることに相当する。

・後者の「前記ミスト風路417は、前記野菜室107から湿度を供給するためのミスト吸込み口423とミストを前記野菜室107へ噴霧するミスト吐出口416があり、前記ミスト吐出口416は、前記ドーナツ円盤状の対向電極136から断熱箱体101の背面方向に離間して前記野菜室側仕切り板413に設けられ」ることは、仕切り壁414の下方には仕切り壁414の下の部分も含まれ、野菜室側仕切り板413は仕切り壁414の下方にあるといえ、また、当該野菜室側仕切り板413は、放出口として機能する孔を有するドーナツ円盤状の対向電極136からずれて位置させたミスト吐出口416(ミスト放出口)が設けられた板といえるから、前者の「前記仕切り板の下方には、前記放出口からずれて位置させたミスト放出口が設けられた板があ」ることに相当する。

したがって、両者は、
「冷蔵温度帯の貯蔵室を有する冷蔵庫において、
ミストを放出するミスト放出部と、前記ミスト放出部に電圧を印加する電源装置とを有して放出口からミストを放出する構成の静電霧化装置を備え、
前記静電霧化装置は貯蔵室を仕切る仕切板に設置され、前記仕切り板の下方には、前記放出口からずれて位置させたミスト放出口が設けられた板がある冷蔵庫。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本願発明では、「当該仕切板の下面に沿って前記貯蔵室内を冷却する冷気が流れ、前記ミスト放出部の表面の水分が分裂して当該ミスト放出部から前記放出口を通して放出されたミストは、前記冷気に引き込まれ、前記ミスト放出口を通る」のに対して、引用発明では、「冷却室の冷却器112で生成された冷気は、冷却ファンにより搬送されて野菜室吐出風路422を介して前記野菜室107に流れ、野菜室吸込み風路421から再び前記冷却器112に戻るようにされた」ものであり、冷気及びミストの具体的な流れは特定されていない点。

第6 判断
1 理由1(新規性)について
引用発明において、冷却室の冷却器112で生成された冷気は、冷却ファンにより搬送されて野菜室吐出風路422を介して野菜室107に流れ、野菜室吸込み風路421から再び前記冷却器112に戻るようにされるところ、冷気は野菜室の下段収納容器119や上段収納容器120の内部を含む隅々まで行き渡るようにされるから、仕切り壁414(仕切板)の下面に沿って野菜室107(貯蔵室)内を冷却する冷気が流れることは明らかである。
そして、上記第4の2で摘記した引用文献3の記載及び上記第4の3で摘記した引用文献4の記載から理解できるように、一方の流体(冷気)が他方の流体(霧)の出口付近を他方の流体の流速より速い流速で流れる場合に、一方の流体の流れに他方の流体が引き込まれることは、本願の優先日前に技術常識であるから、引用発明において、霧化部139(ミスト放出部)の霧化電極135先端とドーナツ円盤状の対向電極136間に高電圧が印加されることにより、霧化部139(ミスト放出部)の霧化電極135先端の表面の水分が分裂して当該霧化部139で生成されたミスト(ミスト放出部から放出されたミスト)が、前記冷気に引き込まれ、ミスト吐出口416(ミスト放出口)を通ることも明らかである。
そうすると、上記相違点は実質的な相違点とは認められず、本願発明は引用発明と同一である。

2 理由2(進歩性)について
仮に、上記相違点が実質的な相違点であるとしても、引用発明において、ミストを野菜室107内の隅々まで行き渡らせる必要があるから、上記技術常識を考慮して、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
したがって、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 請求人の主張について
請求人は、令和2年4月9日に提出された意見書において、「本願発明の静電霧化装置は、放出口からミストを外部に放出する構成のものです。そして、本願発明の『板』は、静電霧化装置が設けられている仕切り板の下方に位置して設けられているもの、つまり、静電霧化装置とは別部材として設けられているものであり、その『板』に設けられている『ミスト放出口』は、静電霧化装置の「放出口」とは別のものです。
これに対して、引用文献1で言うミスト放出口は、霧化装置の筐体に設けられている開口を指しており、それは、本願発明で言う『放出口』に相当するものです。換言しますと、引用文献1のものは、本願発明で言う『ミスト放出口』を備えた構成にはなっていません。
そのため、本願発明の構成は、引用文献1の構成とは異なっています。すなわち、本願発明は、引用文献1に記載された発明ではありません。」(2頁2行?同頁12行)という主張、「本願発明の場合、静電霧化装置に収容されているミスト放出部から放出されたミストは、まず放出口を通って静電霧化装置の外部に放出され、その後、冷気に引き込まれて、仕切り板の下方に設けられている板に形成されているミスト放出口を通って供給される構成となっています。
つまり、本願発明は、引用文献1、2のいずれにも開示されていない『ミスト放出口が設けられた板』を備えており、その板に、放出口からずれて位置させたミスト放出口を設けています。
そして、引用文献1、2には、霧化装置とは別体で設けられている板に、無化装置の『放出口』から位置をずらして『ミスト放出口』を設ける構成を示唆する記載はありません。そのため、仮に引用文献1、2を参照したとしても、本願発明の構成は、想起も導出もされることはありません。」(2頁30行?同頁41行)という主張、及び「本願発明では、仕切板に設置されている静電霧化装置の下方に、静電霧化装置とは別体の板を配置しています。そして、その板には、静電霧化装置の放出口からずれて位置させたミスト放出口が設けられています。
そのため、本願発明の場合には、仮に静電霧化装置の放出口から水滴が滴下したとしても、その水滴は板に溜まることになり、貯蔵室内に水滴が目に見える状態で排出されるおそれが抑制され、例えばその板の下方に配置される容器に水滴が付着するおそれを抑制できます。そして、その板にはミスト放出口が設けられていますので、水滴ではないミストは、冷気によってミスト放出口を通って貯蔵室内に供給されることになります。
この点、引用文献1?4には、仕切り板に配置されている静電霧化装置の下方、つまりは、静電霧化装置とは別部材の板を設けることを示唆あるいは言及する記載はありません。また、冷蔵庫の貯蔵室内に壁面に沿って冷気が流れることは引用文献3、4に記載されていますように技術常識であると思料しますが、壁面(本願で言えば例えば仕切板)に沿って冷気が流れるという記載から、その壁面に敢えて「板」という別部材をさらに設けるという構成が想起されることは無いと考えるのが妥当です。
そのため、引用文献1?4を参照しても、また、仮に引用文献1?4を組み合わせたとしても、静電霧化装置が配置されている仕切り板の下方に、静電霧化装置とは別体の部材として、ミスト放出口が設けられた板を設けるとともに、そのミスト放出口を、静電霧化装置の放出口からずれた位置に設けるという本願発明の構成が、想起あるいは導出されることはありません。すなわち、引用文献1?4に基づいて本願発明を容易に発明できたとする論理付けはできません。」(2頁末行?3頁19行)という主張をする。
しかしながら、上記第5の対比で検討したとおり、引用発明の「野菜室側仕切り板413」は、静電霧化装置131の放出口として機能する孔を有するドーナツ円盤状の対向電極136からずれて位置させたミスト吐出口416が設けられた板、すなわち、「放出口からずれて位置させたミスト放出口が設けられた板」といえ、静電霧化装置131は、主に霧化部139と電圧印加部133で構成されていることから(引用文献1の段落0330)、引用発明においても、静電霧化装置が配置されている仕切り板の下方に、静電霧化装置とは別体の部材として、ミスト放出口が設けられた板を設けるとともに、そのミスト放出口を、静電霧化装置の放出口からずれた位置に設けるものであり、本願発明と同様の効果を奏するものといえる。
そうすると、請求人の上記主張は採用することができない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができず、又は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-06-25 
結審通知日 2020-06-30 
審決日 2020-07-13 
出願番号 特願2017-80490(P2017-80490)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F25D)
P 1 8・ 113- WZ (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石黒 雄一  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 塚本 英隆
槙原 進
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 特許業務法人 サトー国際特許事務所  

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