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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1365796
審判番号 不服2020-943  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-23 
確定日 2020-09-29 
事件の表示 特願2016-573069「TEEプローブのための誘導デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月23日国際公開、WO2015/193150、平成29年 7月 6日国内公表、特表2017-518118、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)6月10日(パリ条約による優先権主張 2014年(平成26年)6月17日 欧州特許庁)の出願であって、平成30年11月13日付けで拒絶理由が通知され、令和元年5月13日付けで意見書が提出され、同年9月19日付けで拒絶査定されたところ、令和2年1月23日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和元年9月19日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-4,6,7,10-14に係る発明は、以下の引用文献1,2に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであり、請求項5に係る発明は、以下の引用文献1-3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、請求項8,9に係る発明は、以下の引用文献1,2,4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.米国特許出願公開第2012/0245458号明細書
2.米国特許出願公開第2014/0121502号明細書
3.米国特許出願公開第2002/0107447号明細書
4.特開2009-189557号公報

第3 本願発明
本願請求項1-14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明14」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
TEEプローブのための誘導デバイスであって、
画像データ提供ユニットと、
処理ユニットとを含み、
前記画像データ提供ユニットは、初期的な位置及び向きにおけるTEEプローブ及び介入デバイスを示す第1の画像データを提供するように構成され、
前記処理ユニットは、前記第1の画像データにおいて前記介入デバイスの中心線を決定するように構成され、
前記処理ユニットは、前記中心線の接線に対して直交する平面を視認平面として決定するように構成され、
前記処理ユニットは、前記視認平面内にほぼ位置するよう、前記TEEプローブの撮像平面及び撮像向きを計算するように構成され、
前記処理ユニットは、前記計算されたデータを誘導データとして提供するように構成される、
誘導デバイス。
【請求項2】
前記TEEプローブによって提供される第2の画像データが円錐形状又は扇形状の撮像視野内に位置し、前記処理ユニットは、前記介入デバイスが前記TEEプローブの前記撮像視野内に位置するよう、前記TEEプローブの位置を計算するように構成される、請求項1に記載の誘導デバイス。
【請求項3】
前記処理ユニットは、前記介入デバイスが前記TEEプローブの前記円錐形状又は扇形状の撮像視野の重心内に位置するよう、前記TEEプローブの位置を計算するように構成される、請求項2に記載の誘導デバイス。
【請求項4】
前記処理ユニットは、最適化されたTEEビューのために、前記計算されたデータを、前記TEEプローブの位置及び/又は向きをどのように変えるかの表示として、使用者に伝達するように構成される、請求項1乃至3に記載の誘導デバイス。
【請求項5】
前記TEEプローブの向きの変化は、前記TEEプローブの移動及び/又は向きを電子的に適合させることを含む、請求項4に記載の誘導デバイス。
【請求項6】
前記処理ユニットは、前記TEEプローブの前記撮像位置及び/又は向きを前記第1の画像データと組み合わせるように構成され、当該誘導デバイスは、前記組み合わせを表示するよう、ディスプレイを更に含む、請求項1乃至5に記載の誘導デバイス。
【請求項7】
前記第1の画像データは、蛍光透視画像データである、請求項1乃至6に記載の誘導デバイス。
【請求項8】
前記介入デバイスの前記中心線は、単一のX線画像、2面X線画像、及び/又は、好ましくは光学形状検知のような、代替的な3Dトラッキング技術に基づき、3Dにおいて決定される、請求項1乃至7に記載の誘導デバイス。
【請求項9】
前記処理ユニットは、前記介入デバイスの2Dセグメント化に基づき前記視認平面を決定するように構成される、請求項1乃至8に記載の誘導デバイス。
【請求項10】
前記処理ユニットは、撮像位置として前記TEEプローブの不適切な位置を排除するように構成される、請求項1乃至9に記載の誘導デバイス。
【請求項11】
移動機構が前記TEEプローブを前記初期的な位置及び向きから前記撮像位置及び/又は向きに動かす信号を提供するように構成される、請求項1乃至10に記載の誘導デバイス。
【請求項12】
画像データ取得デバイスと、
TEEプローブと、
請求項1乃至11のうちのいずれか1項に記載の前記TEEプローブのための誘導デバイスと、
ディスプレイユニットとを含み、
前記画像データ取得デバイスは、前記誘導デバイスの前記画像データ提供ユニットによって提供されるべき第1の画像データを取得するように構成され、
前記TEEプローブは、第2の画像データを提供するように構成され、
前記ディスプレイユニットは、前記誘導デバイスの誘導データを提供するように構成される、
医療撮像システム。
【請求項13】
コンピューティングユニットによって実行されるときに、請求項11及び12のうちの
いずれか1項に記載の方法ステップを遂行するように構成される、請求項1乃至11のうちのいずれか1項に記載のデバイスを制御する、コンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラムを格納させる、コンピュータ可読媒体。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下記(2)の引用発明の認定に関連する部分の当審訳に下線を付した。


「1 . A method for processing an x-ray image, the method comprising the steps of:
receiving an x-ray image,
detecting (S 2 ) an ultrasound probe in the x-ray image,
registering (S 1 ) the ultrasound probe including an estimation of a position and of an orientation of the ultrasound probe relative to a reference coordinate system.(第4頁右欄第14-20行)

(当審訳)
【請求項1】
X線画像を処理する方法であって:
X線画像を受け取る段階と、
前記X線画像において超音波プローブを検出する段階(S2)と、
ある基準座標系に対する前記超音波プローブの位置および配向の推定を含む、前記超音波プローブを位置合わせする段階(S1)とを含む、
方法。」


「4 . The method of claim 1 , further comprising the steps of detecting an interventional device ( 200 ) in the x-ray image, and manipulating the ultrasound probe so that the interventional device is within the field of view of the ultrasound probe.(第4頁右欄第30-34行)

(当審訳)
【請求項4】
前記X線画像において介入デバイス(200)を検出する段階と、前記介入デバイスが前記超音波プローブの視野内になるよう、前記プローブを操作する段階とを含む、請求項1記載の方法。」


「9 . A computer program, comprising sets of instructions for performing the method of claim 1 .
10 . A system for a combination of ultrasound and x-ray images, the system comprising
an x-ray system ( 400 ),
an ultrasound system ( 100 ) including an ultrasound probe ( 110 ), a processing unit, and
a monitor,
wherein a computer program according to claim 9 is implemented in the processing unit.(第4頁右欄第45-55行)

(当審訳)
【請求項9】
請求項1記載の方法を実行するための命令のセットを含むコンピュータ・プログラム。

【請求項10】
超音波画像とX線画像の組み合わせのためのシステムであって、
X線システム(400)と、
超音波プローブ(110)を含む超音波システム(100)と、
処理ユニットと、
モニタとを有しており、
請求項9記載のコンピュータ・プログラムが前記処理ユニットにおいて実装されている、システム。」


「[0030] It is noted that the interventional device may be a flexible or stiff catheter or a biopsy device, a canula or trokar. The ultrasound probe may also be a trans-esophageal echocardiography ultrasound probe.

(当審訳)
【0030】
前記介入デバイスは柔軟なもしくは硬いカテーテル、生検デバイス、カニューレ、又は、トロカールであってもよいことを注意しておく。前記超音波プローブは経食道心エコー図検査超音波プローブであってもよい。」


「[0053] In step S 1 , the ultrasound system 100 and the x-ray imaging system 400 are first mutually registered. This can typically be achieved by imaging the probe of the ultrasound system 100 by the x-ray system 400 , and based on the settings 150 and data 160 of the ultrasound system 100 and on the settings 410 of the x-ray system 100 , plus on the possible use of a probe 3D model 500 or markers, in determining the position of the probe in the x-ray referential. From this information, and based on the relevant calibration information, one can use the parameters of the probe field of view in the x-ray referential, as described above. Data S 1 c will be exchanged for visualization of the resulting image.
[0054] In step S 2 , at the same time, the intervention device (for instant the tip of a catheter), is detected and tracked in the x-ray images. This step relies on data 420 of the x-ray system 400 and on usual object detection means that rely on the spatial signature of the device and possibly on its motion characteristics (for instance, the device is animated by a cardiac motion plus a steering motion, seen in projection).

(当審訳)
【0053】
ステップS1では、超音波システム100およびX線撮像システム400はまず相互に位置合わせされる。これは典型的には、X線システム400によって超音波システム100のプローブを撮像し、超音波システム100の設定150およびデータ160と、X線システム100の設定410と、加えてプローブ3Dモデル500またはマーカーの可能な使用に基づいて、前記X線参照基準において前記プローブの位置を決定することによって、達成されることができる。この情報から、関連する較正情報に基づいて、上記のような、前記X線参照基準におけるプローブ視野のパラメータを使うことができる。結果として得られる画像の視覚化のためにデータS1cが交換される。
【0054】
ステップS2では、同時に、X線画像において介入デバイス(たとえばカテーテルの先端)が検出され、追跡される。このステップは、X線システム400のデータ420と、前記デバイスの空間的なシグネチャおよびその動き特性に依拠する(例えば前記デバイスは、投影で見たとき、心臓の動きにステアリングによる動きを加えたものによって動かされる)通例のオブジェクト検出手段とに依拠する。」


「[0058] In step S 6 , alternatively or complementarily, a command S 6 a can be issued to the beam-steering module of the ultrasound system 100 , as to which field of view one should generate in order to nicely visualize the device at the center of the ultrasound cone (volume or image). The probe steering module, based on the ultrasound/x-ray registration information will determine and apply the relevant set parameters enabling this device-driven steering.

(当審訳)
【0058】
ステップS6では、代替的または相補的に、超音波システム100のビーム操縦モジュールに対して、前記デバイスを前記超音波コーン(体積または画像)の中心にうまく視覚化するためにどの視野を生成するべきかについて、コマンドS6aが発されることができる。
プローブ操縦モジュールは、超音波/X線位置合わせ情報に基づいて、このデバイス駆動の操縦を可能にする関連するセット・パラメータを決定し、適用する。」

キ 図3



(2)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

ア 上記(1)アの
「【請求項1】
X線画像を処理する方法であって:
X線画像を受け取る段階と、
前記X線画像において超音波プローブを検出する段階(S2)と、
ある基準座標系に対する前記超音波プローブの位置および配向の推定を含む、前記超音波プローブを位置合わせする段階(S1)とを含む、
方法。」、
上記(1)イの
「【請求項4】
前記X線画像において介入デバイス(200)を検出する段階と、前記介入デバイスが前記超音波プローブの視野内になるよう、前記プローブを操作する段階とを含む、請求項1記載の方法。」
上記(1)ウの
「【請求項9】
請求項1記載の方法を実行するための命令のセットを含むコンピュータ・プログラム。
【請求項10】
超音波画像とX線画像の組み合わせのためのシステムであって、
X線システム(400)と、
超音波プローブ(110)を含む超音波システム(100)と、
処理ユニットと、
モニタとを有しており、
請求項9記載のコンピュータ・プログラムが前記処理ユニットにおいて実装されている、システム。」
より、引用文献1には、
「超音波画像とX線画像の組み合わせのためのシステムであって、
X線システムと、
超音波プローブを含む超音波システムと、
処理ユニットと、
モニタとを有しており、
前記処理ユニットにおいて、X線画像を受け取る段階と、前記X線画像において超音波プローブを検出する段階と、ある基準座標系に対する前記超音波プローブの位置および配向の推定を含む、前記超音波プローブを位置合わせする段階と、前記X線画像において介入デバイスを検出する段階と、前記介入デバイスが前記超音波プローブの視野内になるよう、前記プローブを操作する段階とを含む、方法を実行する、
システム。」が記載されているものと認められる。

イ 上記(1)エの
「前記超音波プローブは経食道心エコー図検査超音波プローブであってもよい」より、上記アの
「超音波画像とX線画像の組み合わせのためのシステムであって、
X線システムと、
超音波プローブを含む超音波システムと、
処理ユニットと、
モニタとを有しており、
前記処理ユニットにおいて、X線画像を受け取る段階と、前記X線画像において超音波プローブを検出する段階と、ある基準座標系に対する前記超音波プローブの位置および配向の推定を含む、前記超音波プローブを位置合わせする段階と、前記X線画像において介入デバイスを検出する段階と、前記介入デバイスが前記超音波プローブの視野内になるよう、前記プローブを操作する段階とを含む、方法を実行する、
システム。」
における「超音波プローブ」は、「経食道心エコー図検査超音波プローブ」でもよいことが読み取れる。

ウ 上記(1)オの
「X線システム400によって超音波システム100のプローブを撮像し、」、及び、
「ステップS2では、同時に、X線画像において介入デバイス(たとえばカテーテルの先端)が検出され」
から、上記アの
「超音波画像とX線画像の組み合わせのためのシステムであって、
X線システムと、
超音波プローブを含む超音波システムと、
処理ユニットと、
モニタとを有しており、
前記処理ユニットにおいて、X線画像を受け取る段階と、前記X線画像において超音波プローブを検出する段階と、ある基準座標系に対する前記超音波プローブの位置および配向の推定を含む、前記超音波プローブを位置合わせする段階と、前記X線画像において介入デバイスを検出する段階と、前記介入デバイスが前記超音波プローブの視野内になるよう、前記プローブを操作する段階とを含む、方法を実行する、
システム。」
における「X線システム」は、「超音波プローブと介入デバイスを同時に撮影する」ことが読み取れる。

エ 上記(1)カの
「 超音波システム100のビーム操縦モジュールに対して、前記デバイスを前記超音波コーン(体積または画像)の中心にうまく視覚化するためにどの視野を生成するべきかについて、コマンドS6aが発されることができる。
プローブ操縦モジュールは、超音波/X線位置合わせ情報に基づいて、このデバイス駆動の操縦を可能にする関連するセット・パラメータを決定し、適用する。」
より、上記アの
「超音波画像とX線画像の組み合わせのためのシステムであって、
X線システムと、
超音波プローブを含む超音波システムと、
処理ユニットと、
モニタとを有しており、
前記処理ユニットにおいて、X線画像を受け取る段階と、前記X線画像において超音波プローブを検出する段階と、ある基準座標系に対する前記超音波プローブの位置および配向の推定を含む、前記超音波プローブを位置合わせする段階と、前記X線画像において介入デバイスを検出する段階と、前記介入デバイスが前記超音波プローブの視野内になるよう、前記プローブを操作する段階とを含む、方法を実行する、
システム。」
の「前記介入デバイスが前記超音波プローブの視野内になるよう、前記プローブを操作する段階」において、「超音波/X線位置合わせ情報に基づいて、このデバイス駆動の操縦を可能にする関連するセット・パラメータを決定し、適用する」ことを含むことが読み取れる。

以上を踏まえると、上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「超音波画像とX線画像の組み合わせのためのシステムであって、
経食道心エコー図検査超音波プローブと介入デバイスを同時に撮影するX線システムと、
経食道心エコー図検査超音波プローブを含む超音波システムと、
処理ユニットと、
モニタとを有しており、
前記処理ユニットにおいて、X線画像を受け取る段階と、前記X線画像において経食道心エコー図検査超音波プローブを検出する段階と、ある基準座標系に対する前記経食道心エコー図検査超音波プローブの位置および配向の推定を含む、前記経食道心エコー図検査超音波プローブを位置合わせする段階と、前記X線画像において介入デバイスを検出する段階と、
前記介入デバイスが前記経食道心エコー図検査超音波プローブの視野内になるよう、前記プローブを操作する段階であって、超音波/X線位置合わせ情報に基づいて、このデバイス駆動の操縦を可能にする関連するセット・パラメータを決定し、適用する段階、とを含む、方法を実行する、
システム。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付したものである。


「[0001] The present invention is directed to using ultrasound in imaging an object and, more particularly, to initializing a beamformer for this purpose based on an estimate of the location and/or orientation of the object.

(当審訳)
[0001]
本発明は、物体を撮像するために超音波を用いて、より具体的には、物体の位置および/または向きの推定値に基づいて、この目的のためにビーム形成器を初期化することに向けられている。」


「[0008] Likewise, needles, often used for biopsy, nerve block, drug delivery, hyperthermic therapy, and radiofrequency (RF) ablation, etc., are hard to visualize, especially when thin and applied to deep tissue locations. Visibility greatly improves if the insonifying angle is perpendicular to the needle. However, achieving a favorable angle is usually limited to shallow needle insertions. In addition, due to tissue heterogeneities and asymmetric needle bevel, the needle often deviates from its planned trajectory, even when a needle guide is used. If the needle deviates from the imaged plane, it becomes invisible. Very often, the clinician jiggles the needle to see on the image display where it is located.

(当審訳)
[0008]
同様に、多くの場合、生検、神経ブロック、薬剤供給、温熱療法、および高周波(RF)アブレーションなどに使用される、針を可視化するために、特に薄くて深い組織位置に適用される。照射角度は、針に対して垂直である場合には視認性が大幅に向上する。しかしながら、有利な角度を達成することは、通常、浅い針挿入に限定される。加えて、組織の不均一性および非対称のニードルの傾斜に起因して、針が計画された軌道から逸脱し、しばしば、針ガイドが使用される場合もある。針が撮像面から外れているとすると、見えなくなる。非常に多くの場合、臨床医は、針を軽く揺さぶることでディスプレイ上に見えるようにする。」

上記記載から、引用文献2には、「超音波を用いて、針を可視化する場合、照射角度は、針に対して垂直である場合には視認性が大幅に向上する。」という技術的事項が記載されていると認められる。

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付したものである。


「[0004] Physicians and staff performing diagnostic and therapeutic procedures, such as electrophysiological therapy, typically require an imaging system to assist them in positioning the ablation catheter. Mini-transesophageal echocardiography (mini-TEE) probes are available, however, these probes must be swallowed or inserted down the patients throat. Such probes are poorly tolerated by patients unless they are fully anesthetized. Further, these probes can be rather large (i.e., 20 French in diameter), use complex transducer configurations and are costly enough to discourage their disposal after a single use.

[0005] Alternatively, the use of ultrasound imaging systems, and in particular ultrasound imaging catheters, would be particularly useful in helping physicians monitor the positioning of ablation catheters. It is desirable, therefore, to have an ultrasound imaging catheter small enough to enter narrow and tortuous regions of the patients vascular system. It also is desirable if such imaging systems were easy to operate and cost efficient to encourage their disposal after use.

(当審訳)
[0004]
診断手順および治療手順を行う医師およびスタッフは、電気生理学的治療は、典型的には、撮像システムは、アブレーションカテーテルを配置するのを補助する必要がある。小型経食道超音波心エコー検査(mini-TEE)プローブが利用可能であるが、しかしながら、これらのプローブは、患者の喉まで飲み込まれ又は挿入されなければならない。このようなプローブは、それらが十分に麻酔されてない限り、患者は耐えがたいものである。さらに、これらのプローブは、かなり大きく(すなわち、直径20フレンチ)、かつ複雑なトランスデューサ構造を使用し、使い捨てをためらわせるほど費用がかかる。
[0005]
これと代替的に、特に超音波撮像カテーテル、超音波画像化システムの使用は、医師がアブレーションカテーテルの位置決めをモニターするために特に有用である。従って、望ましい患者番号血管系のより幅が狭く曲がりくねって部位に入るのに十分小さい超音波撮像カテーテルを有する。また、このような撮像システムは、使用後にそれらの廃棄を促進するために操作が容易であり、コスト効率的であることが望ましい。」


「[0050] The coordination and production of ultrasound images of sector 30 can be accomplished in a variety of ways within the scope of the present invention. For example, transducer element 20 can be rotated and energized in a coordinated fashion to propagate ultrasound signals only into sector 30 . Signals are reflected by a patients tissues, fluids and the like, and the reflected signals are received by transducer 20 . In one embodiment, one transducer 20 is used to transmit ultrasound signals and a second transducer 20 is used to receive reflected signals. The reflected signals can be used to produce an image of sector 30 . Alternatively, transducer 20 can propagate ultrasound signals into a larger angular region of image plane 28 or into the entire image plane 28 . In such a situation, a controller or electronic processing equipment may produce ultrasound images only for desired sector 30 by, for example, using only those reflected signals received from sector 30 .

(当審訳)
[0050]
セクタ30の超音波画像の生成は、本発明の範囲内の様々な方法で達成することができる。例えば、トランスデューサ素子20は、協調的に回転付勢するセクタ30内に超音波信号を伝播させることができる。信号は、患者番号、組織、流体などによって反射され、反射信号は、トランスデューサ20によって受信される。一実施形態では、1つのトランスデューサ20は、超音波信号を送信するために使用され、第2のトランスデューサ20は、反射された信号を受信するために使用される。反射された信号は、セクタ30の画像を生成するために使用することができる。あるいは、トランスデューサ20は、超音波信号を伝搬する画像平面28のより大きな角度範囲又は全体に像平面28に到達することができる。このような状況において、コントローラまたは電子処理装置は、例えばセクタ30から受信された出力信号を用いて所望のセクタ30についての超音波画像のみを生成することができる。」

上記記載から、引用文献3には、「セクタ30から受信された出力信号を用いて所望のセクタ30についての超音波画像のみを生成することができるコントローラまたは電子処理装置を有する、アブレーションカテーテルの位置決めをモニターするための超音波撮像カテーテル」という技術的事項が記載されていると認められる。

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付したものである。


「【0009】
本発明の一形態に係るデータ処理装置は、被検体の観察方向を算出するデータ処理装置であって、前記被検体の三次元データを保管する保管手段と、前記被検体の三次元データを、該三次元データに対応する二次元画像で表示する二次元画像表示手段と、前記表示手段で表示された前記二次元画像上で特定の座標に関する座標情報を指定する指定手段と、前記二次元画像上で指定された前記座標情報に基づいて、これに対応する前記三次元データにおける座標情報を特定する手段と、前記三次元上の座標情報に基づき、前記X線撮像手段の撮影方向を算出する算出手段と、を備えたことを特徴とする。」


「【0042】
本実施形態では、図12に示されるように、上記第1実施形態と同様にST1乃至ST4までの処理がなされた後、例えば図13に示すように、オペレータにより例えば病変(狭窄)近傍の所望の1箇所がクリックされて指定されることにより1つの点dが指定される(ST25)。
【0043】
なお、ボリュームデータは、血管中心座標が抽出済みのボリュームデータが用いられる。実際の臨床場面では、CT撮像後に操作者が血管芯線46aをトレースしているので、その血管芯線46aのデータをそのまま用いればよい。
【0044】
この場合に、既に抽出されている血管芯線46aに基づき、この指定された1点dから、血管芯線46aに沿って所定距離離れた両側の点e,fの座標をそれぞれ特定し(ST26)、これら2点e,fと指定された1点dとが通る平面P1が算出される(ST27)。この他は、上記第1実施形態と同様の処理が行われる。」

上記記載から、引用文献4には、「三次元上の座標情報に基づき、前記X線撮像手段の撮影方向を算出する算出手段を備えたデータ処理装置であって、血管芯線46aを抽出し、抽出された血管芯線46aに基づき、撮影方向を決定する」という技術的事項が記載されていると認められる。


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明における「経食道心エコー図検査超音波プローブ」、「X線システム」、「処理ユニット」は、それぞれ、本願発明1における「TEEプローブ」、「画像データ提供ユニット」、「処理ユニット」に相当する。
また、引用発明の「X線システム」は、「経食道心エコー図検査超音波プローブと介入デバイスを同時に撮影する」ものであり、上記「撮像」には、「初期的な位置及び向き」における「超音波システム100のプローブ、及び、介入デバイスを撮像」が含まれることは明らかであり、本願発明1の「初期的な位置及び向きにおけるTEEプローブ及び介入デバイスを示す第1の画像データを提供するように構成され」に相当する構成を有するものと認められる。

イ 引用発明の「前記介入デバイスが前記経食道心エコー図検査超音波プローブの視野内になるよう、前記プローブを操作する段階であって、超音波/X線位置合わせ情報に基づいて、このデバイス駆動の操縦を可能にする関連するセット・パラメータを決定し、適用する段階」は、「前記介入デバイスが前記経食道心エコー図検査超音波プローブの視野内になるよう」にするために、「超音波/X線位置合わせ情報に基づいて、このデバイス駆動の操縦を可能にする関連するセット・パラメータを決定し、適用する」ものであるから、上記「このデバイス駆動の操縦を可能にする関連するセット・パラメータ」は、本願発明1の「視認平面内にほぼ位置するよう、前記TEEプローブの撮像平面及び撮像向きを計算」した「データ」に相当するものと認められる。
そして、引用発明は、上記「このデバイス駆動の操縦を可能にする関連するセット・パラメータ」を「適用」して、「前記プローブを操作する」ものであるから、本願発明1の「前記計算されたデータを誘導データとして提供するように構成される」に相当する構成を備えるものと認められる。

ウ 上記イを踏まえると、引用発明における「超音波画像とX線画像の組み合わせのためのシステム」は、経食道心エコー図検査超音波プローブを誘導するためのデータを提供することを含むものであるから、本願発明1の「TEEプローブのための誘導デバイス」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「TEEプローブのための誘導デバイスであって、
画像データ提供ユニットと、
処理ユニットとを含み、
前記画像データ提供ユニットは、初期的な位置及び向きにおけるTEEプローブ及び介入デバイスを示す第1の画像データを提供するように構成され、
前記処理ユニットは、視認平面内にほぼ位置するよう、前記TEEプローブの撮像平面及び撮像向きを計算するように構成され、
前記処理ユニットは、前記計算されたデータを誘導データとして提供するように構成される、
誘導デバイス。」

(相違点)
処理ユニットに関して、本願発明1は、「第1の画像データにおいて前記介入デバイスの中心線を決定するように構成され、」「前記中心線の接線に対して直交する平面を視認平面として決定するように構成され、」「前記視認平面内にほぼ位置するよう、前記TEEプローブの撮像平面及び撮像向きを計算するように構成され」るのに対して、引用発明は、「介入デバイスが前記経食道心エコー図検査超音波プローブの視野内になるよう、前記プローブを操作」しているものの、上記のようには構成されていない点。

(2)相違点についての判断
以下、相違点について、検討する。
「第4 引用文献、引用発明等」の「2 引用文献2について」に記載のとおり、引用文献2には、「超音波を用いて、針を可視化する場合、照射角度は、針に対して垂直である場合には視認性が大幅に向上する。」という技術的事項が記載されている。
引用文献2記載の技術的事項は、超音波を針に照射する際に、視認性を向上させるために、針に対して垂直に超音波を照射することを示すものであるが、超音波を針に対して垂直に照射することは、その視認平面は、針に沿った平面ということになり、針に対して直交する平面を視認平面としているものではない。
そうすると、引用文献2には、その余の上記相違点の構成について検討するまでもなく、「第1の画像データにおいて前記介入デバイスの中心線を決定するように構成され、前記中心線の接線に対して直交する平面を視認平面として決定するように構成され、前記視認平面内にほぼ位置するよう、前記TEEプローブの撮像平面及び撮像向きを計算するように構成され」ることに相当する技術的事項が記載されているとはいえない。
また、上記相違点に相当する技術的事項は、その他の上記引用文献3、及び、4にも記載されておらず、本願の優先日前に当業者において周知な事項ともいえない。
よって、本願発明は、引用発明、及び、引用文献2記載の技術的事項から当業者が容易になし得た発明であるとはいえず、引用文献3、4並びに周知技術に鑑みても、容易になし得た発明であるとはいえない。

なお、上記相違点に係る事項においては、「介入デバイス」の「中心線の接線に対して直交する平面」を、TEEプローブの「視認平面」とするものであるから、TEEプローブの撮像平面において、介入デバイスは点として視認されると解釈されるが、このような解釈が技術的に正しいのか問い合わせたところ、請求人からは「介入デバイスが点として視認される」との解釈で問題ないとの回答(初回応対令和2年6月21日の応対記録参照)を得ており、当審においては、先行技術文献において「介入デバイスが点として視認される」ようにする技術的動機を見いだすことはできなかった。

2 本願発明2-14について
本願発明2-14も、本願発明1の「前記処理ユニットは、前記第1の画像データにおいて前記介入デバイスの中心線を決定するように構成され、
前記処理ユニットは、前記中心線の接線に対して直交する平面を視認平面として決定するように構成され、」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明、及び、引用文献2記載の技術的事項から当業者が容易になし得た発明であるとはいえず、引用文献3、4並びに周知技術に鑑みても、容易になし得た発明であるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-09-11 
出願番号 特願2016-573069(P2016-573069)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 伊知地 和之  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 松谷 洋平
森 竜介
発明の名称 TEEプローブのための誘導デバイス  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  

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