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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63B
管理番号 1365804
審判番号 不服2019-17397  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-24 
確定日 2020-10-01 
事件の表示 特願2018- 31792「装着可能なスポーツ計時タグ・アセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月 5日出願公開、特開2018-102954、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年10月13日に出願した特願2016-547220号の一部を,平成30年2月26日に新たな特許出願とした特願2018-31792号であり,その後の手続の概要は,以下のとおりである。
平成30年 3月28日:手続補正書
平成30年 4月 4日:上申書
平成31年 2月 8日:拒絶理由通知(起案日)
令和 元年 8月13日:意見書,手続補正書
令和 元年 8月20日:拒絶査定(起案日)
令和 元年12月24日:審判請求書,手続補正書

第2 原査定の概要
原査定(令和元年8月20日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1-9に係る発明は,以下の引用文献1-2に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2009/004728号
2.米国特許出願公開第2011/266343号明細書

第3 本願発明
本願請求項1-9に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明9」という。)は,令和元年12月24日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
装着者の身体に装着可能なスポーツ計時タグ・アセンブリであって,
第一端と第二端を有する低誘電発泡ゴムの細長い可撓支持基板であって,装着者の手首もしくは足首に巻回装着可能な該可撓支持基板と,
前記可撓支持基板の表面に配されていて,前記スポーツ計時タグ・アセンブリの装着者の識別に関連するデータを検出アンテナに送信し,前記可撓支持基板の厚みによって装着者の手首もしくは足首から4?15mm離間するように設定されている第1のタグ及び第2のタグと,
前記第1のタグ及び第2のタグの上に配され,装着者の識別番号を含む図形を備える耐水層とを有し,
前記可撓支持基板は,該可撓支持基板の第一端を該可撓支持基板の第二端に,接着剤もしくはベルクロ(登録商標)を用いて固定可能となっており,
前記スポーツ計時タグ・アセンブリが手首もしくは足首に装着されたときに,前記第1のタグのメインの信号送信方向が第1の方向であり,第2のタグのメインの信号送信方向が前記第1の方向と異なる第2の方向であることを特徴とするスポーツ計時タグ・アセンブリ。
【請求項2】
少なくとも第1のタグ及び第2のタグは,前記可撓支持基板の長手方向に均等に配置されていることとする請求項1に記載のスポーツ計時タグ・アセンブリ。
【請求項3】
前記第1のタグ及び第2のタグの長手方向の軸は,前記可撓支持基板の長手方向の軸に対して平行であることとする請求項1に記載のスポーツ計時タグ・アセンブリ。
【請求項4】
前記第1のタグの長手方向の軸は,前記第2のタグの長手方向の軸と斜角あるいは直角をなしていることとする請求項1に記載のスポーツ計時タグ・アセンブリ。
【請求項5】
前記第1のタグ及び第2のタグは,前記可撓支持基板の長手方向に一列に配置されていることとする請求項1に記載のスポーツ計時タグ・アセンブリ。
【請求項6】
少なくとも第1のタグ及び第2のタグは,装着者と関連する識別子を記憶するように構成されたメモリをそれぞれ備え,前記第1のタグに記憶された識別子は,前記第2のタグにおける識別子と同一であることとする請求項1に記載のスポーツ計時タグ・アセンブリ。
【請求項7】
前記バンドは,上部層を備え,該上部層は,少なくとも実質的に耐裂性及び耐水性の少なくとも一方を有する材料でできていることとする請求項1に記載のスポーツ計時タグ・アセンブリ。
【請求項8】
前記バンドは,上部層と,第1のタグ及び第2のタグを装着者の身体から隔てておくための予め決められた厚さのスペーサ層とを備え,該上部層又は該スペーサ層の少なくとも一端は,延長部を有し,身体の少なくとも一部の周りにバンドをフィットさせたとき,延長部をバンドの他端に固定するようになっていることとする請求項1に記載のスポーツ計時タグ・アセンブリ。
【請求項9】
延長部は,接着剤を備え,手首もしくは足首の周りにバンドをフィットさせたとき,延長部を,バンドの他端において上部層に固定するようになっていることとする請求項8に記載のスポーツ計時タグ・アセンブリ。」

第4 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。

「[0038] 図2は,本発明の第1実施形態のRFIDタグを示す図であり,図2(A)は平面図,図2(B)は側面図である。
[0039] このRFIDタグ100Aは,図1に示すような,アンテナ12と回路チップ13とを有するインレイ10と,そのインレイ10を封入する封入体20と,その封入体20と一体に形成され,その封入体20から図2の左右方向に延在するベルト30と,封入体20の,取付対象物90(図3参照)側の面に固定(ここでは接着)されたスペーサ40とから構成されている。
[0040] 封入体20およびベルト30は,ゴム,プラスチック等からなる可撓性を有する材料で作られており,その封入体20には,インレイ10が完全密封されている。ベルト30の一端30aには凹凸のある刻み目30bが形成されており,他端30cには,一端30aが挿入される通し孔を有する締結部30dが形成されている。
[0041] また,スペーサ40は,1つの連続体からなり,ゴム状の,変形に追随する材料で形成されている。」

「[0045] 図4は,図2に示すRFIDタグの,取付方法の説明図である。
[0046] 図4(A)に示すように,スペーサ40を取付対象物90に当てがうようにして取付対象物90をベルト30で取り巻き,締結部30dの通し孔(図2参照)に一端30aを通し,その一端30aの凹凸30bを通し孔に係合させることにより,このRFIDタグ100Aが図4(B)に示すように取付対象物90に取り付けられる。
[0047] このとき,スペーサ40は,ベルト100Aと取付対象物90とに挟まれて変形し,取付対象物90と封入体20(図2参照)との間に間隔を保持する。」

「[0063] 図6は,同様にして求めた,935MHzを使用するUHF帯のRFIDタグにおける,水とRFIDタグとの間の距離と,RFIDタグの通信距離を示す図である。
[0064] ここでは,アンテナ半波長ダイポールアンテナを使用し,水は比誘電率80.7,誘電正接0.055,面積20cm×20cm×深さ30cmの水槽を仮定し,金属の場合と同様の計算により通信距離を算出している。
[0065] 上記の際の水とRFIDタグの距離と,RFIDタグの通信距離との関係は,スペーサが18mmの厚みまでは通信距離の減少がなだらかであるが,それより薄い領域では距離変化率が大きくなる。
[0066] つまり,水とRFIDタグの距離をスペーサの厚みで確保する場合,18mm以下の領域では,スペーサの厚みのバラツキが通信距離のバラツキとして大きく影響してしまい,安定した利用ができない。したがって,スペーサ厚みを18mm以上として使用することにより,スペーサ厚みバラツキの影響を受けにくくし,水の影響が考えられる対象への取り付けに適合することができる。尚,実施の際には18mm以上の厚みであり入手が容易な厚み(例えば20mm,30mm等)を有するスペーサを適用してもよい。
[0067] 以上の考察から,本実施形態のRFIDタグ100Aは,および後述する各種実施形態のRFIDタグ取付対象物90として金属柱が想定されるときは,インレイ10と取付対象物90との間の距離が8mm以上となるようにスペーサ40の厚さが定められており,取付対象物90として人体の腕など水分の多い取付対象物が想定されるときは,インレイ10と取付対象物90との間の距離が18mm以上となるようにスペーサ40の厚さが定められている。」

「[0069] 図7は,本発明の第2実施形態のRFIDタグを示す図である。
[0070] 図7に示すRFIDタグ100Bは,図2に示すRFIDタグと比べ,スペーサ41のみ異なっている。この図7に示すRFIDタグ100Bのスペーサ41は,内部に気泡が分散した発泡材,例えば発泡ゴムで形成され,全体として1つの連続体からなる。
[0071] 一般的にゴム材料は誘電損失が大きく,電磁波のエネルギーが損失しやすく,通信距離が短くなる。そこで,ここではスペーサ41を発泡ゴム等の発泡材とすることにより,スペーサ41の内部に空気を存在させ,通信距離劣化を軽減している。一般的にゴム材は3?5程度の誘電率をもつが,空気を一部に含むことにより実効誘電率を2程度に抑えるころができる。こうすることにより,アンテナ12を不必要に小さくする必要がなくなり,アンテナ利得が向上する。」



」([図2])



」([図6])



」([図7])

したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「アンテナと回路チップとを有するインレイと,そのインレイを封入する封入体と,その封入体と一体に形成され,その封入体から左右方向に延在するベルトと,封入体の取付対象物側の面に固定されたスペーサとから構成されるRFIDタグであって,
前記封入体および前記ベルトは,ゴム,プラスチック等からなる可撓性を有する材料で作られており,前記封入体には,前記インレイが完全密封されており,
前記RFIDタグの前記スペーサは,内部に気泡が分散した発泡材,例えば発泡ゴムで形成され,一般的にゴム材料は誘電損失が大きく,電磁波のエネルギーが損失しやすく,通信距離が短くなるところ,前記スペーサを発泡ゴム等の発泡材とすることにより,前記スペーサの内部に空気を存在させ,通信距離劣化を軽減しており,
前記ベルトの一端には凹凸のある刻み目が形成されており,他端には,一端が挿入される通し孔を有する締結部が形成されており,前記スペーサを前記取付対象物に当てがうようにして前記取付対象物を前記ベルトで取り巻き,前記締結部の通し孔に一端を通し,その一端の凹凸を通し孔に係合させることにより,前記RFIDタグが前記取付対象物に取り付けられ,
このとき,前記スペーサは,前記ベルトと前記取付対象物とに挟まれて変形し,前記取付対象物と前記封入体との間に間隔を保持し,
前記取付対象物として人体の腕など水分の多い取付対象物が想定されるときは,前記インレイと前記取付対象物との間の距離が18mm以上となるように前記スペーサの厚さが定められている
RFIDタグ。」

2.引用文献2について
また,原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。

「[0004] There is a need to read/write a RFID wristband from all angle, and a need to read from and write into data on RFID securely such as a RFID wristband.」
(当審訳:[0004] RFIDリストバンドをあらゆる角度から読み書きしたいというニーズと,RFIDリストバンドのようにRFID上のデータを安全に読み書きしたいというニーズがある。)

「[0015] As described in the background section, there exists a need to design an all-angle readable/writable RFID wristband. One method is to use one RFID tag by extending its antenna to cover the wide area of the wristband so that the antenna is functioning as much as possible no matter how a patient wears the wristband around his/her wrist. For this method, an example implementation is shown in FIG. 1. Another method is to use two RFID tags so that at least one tag is not blocked by the patient wrist; an example implementation is shown in FIG. 2. In general, the two tag method has a better performance in terms of reading angle coverage and reading distance, comparing with the one tag method, though its cost is higher.」
(当審訳:[0015] 背景の項で述べたように,全方位で読み書き可能なRFIDリストバンドを設計する必要性がある。一つの方法は,患者がリストバンドを手首の周りにどのように装着してもアンテナが可能な限り機能するように,そのアンテナをリストバンドの広い領域を覆うように延長して,一つのRFIDタグを使用することである。この方法については,例示的な実施形態が図1に示されている。別の方法は,少なくとも1つのタグが患者の手首によってブロックされないように,2つのRFIDタグを使用する方法であり,例示的な実施形態が図2に示されている。一般に,2個のタグを使用する方法は,コストは高いが,1個のタグを使用する方法と比較して,読取角度の範囲および読取距離の点でより良い性能を有する。)

「[0018] The bottom view of a RFID wristband by the two tag method is shown FIG. 2 (A). At one end of the Wristband 100, there is a Wristband Button 104; at the other end, there are a number of small punched circles, one of which will be clapped with the Wristband Button 104 when the Wristband 100 is worn around a patient wrist. Two RFID tags are placed on the wristband: the RFID tag 500 is located near the side of the Wristband Button 104 while the RFID tag 600 is located on the side of small punched circles. The RFID tag 500 consists of a RFID Antenna 504 and a RFID Chip 508. The RFID tag 600 consists of a RFID Antenna 604 and a RFID Chip 608. The RFID Antennas 504 and 604 has a slotted antenna type in this example but other antenna types may be used. The RFID Chip 508 or 608 may be a RFID strap. A RFID strap is a miniature of a RFID tag.
[0019] The side view of the RFID wristband by the two tag method is shown FIG. 2 (B). It consists of three layers: Wristband 100, RFID Tags 500 and 600 and anti-irritation layer 300. The spacing between layers is for illustration purpose and not in scale. The RFID Tags 500 and 600 are below the Wristband 100; and the anti-irritation layer 300 covers the RFID Tags 500 and 600. The anti-irritation layer 300 is to protect the patient skin from irritation. The layer 300 is also water-proof and with high dielectricity. Optionally, Barcode 400 may be printed on the wristband surface for additional or auxiliary identification purposes.」
(当審訳:[0018] 2つのタグ方式によるRFIDリストバンドの底面図を図2(A)に示す。リストバンド100の一端にはリストバンドボタン104があり,他端には,リストバンド100が患者の手首の周りに装着されたときにそのうちの一つがリストバンドボタン104に結合する小さなパンチングされた円がいくつかある。2つのRFIDタグがリストバンド上に配置されており,RFIDタグ500は,リストバンドボタン104の側の近くに配置されており,一方,RFIDタグ600は,小さなパンチングされた円の側に配置されている。RFIDタグ500は,RFIDアンテナ504とRFIDチップ508とから構成されている。RFIDタグ600は,RFIDアンテナ604とRFIDチップ608とから構成されている。RFIDアンテナ504,604は,本実施例ではスロットアンテナタイプを有しているが,他のアンテナタイプを用いてもよい。RFIDチップ508または608は,RFIDストラップであってもよい。RFIDストラップは,RFIDタグをミニチュア化したものである。
[0019] 本発明の2タグ方式によるRFIDリストバンドの側面図を図2(B)に示す。それは,リストバンド100,RFIDタグ500,600,及び抗刺激層300の3つの層から構成されている。層間の間隔は説明のためのものであり,縮尺ではない。リストバンド100の下には,RFIDタグ500,600が配置されており,このRFIDタグ500,600を覆うように,抗刺激層300が配置されている。抗刺激層300は,患者の皮膚を刺激から保護するためのものである。また,層300は,防水性を有し,高い誘電率性を有する。必要に応じて,バーコード400は,追加的または補助的な識別目的のためにリストバンドの表面に印刷されてもよい。)

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

引用発明の「アンテナと回路チップとを有するインレイと,そのインレイを封入する封入体と,その封入体と一体に形成され,その封入体から左右方向に延在するベルトと,封入体の,取付対象物側の面に固定されたスペーサとから構成されるRFIDタグ」は,「インレイを封入する封入体」と「ベルト」と「スペーサ」とから構成される「RFIDタグ」の「アセンブリ」といえるから,本願発明の「スポーツ計時タグ・アセンブリ」とは,ともに“タグ・アセンブリ”である点で共通する。
引用発明の「RFIDタグ」は,「取付対象物として人体の腕など」が「想定される」ものであるから“装着者の身体に装着可能”なものといえる。
してみれば,引用発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,“装着者の身体に装着可能なタグ・アセンブリ”である点で共通する。

引用発明の「ベルト」は,「凹凸のある刻み目が形成され」た「一端」と,「締結部が形成され」た「他端」とを有し,「取付対象物を」「取り巻」くことができる“細長い”ものであり,当該「ベルト」と一体に形成された「封入体」に「アンテナと回路チップとを有するインレイ」を「完全密封」することによって支持していることから,本願発明の「可撓性支持基板」とは,“第一端と第二端を有する細長い可撓支持基板”である点で共通する。
そして,引用発明の「ベルト」は,「人体の腕など」の「取付対象物」を「取り巻」くことで,「取付対象物に取り付けられ」るものであるから,本願発明の「装着者の手首もしくは足首に巻回装着可能な該可撓支持基板」とは,“装着者の身体に巻回装着可能な可撓支持基板”である点で共通する。
以上のことから,引用発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,“第一端と第二端を有する細長い可撓支持基板であって,装着者の身体に巻回装着可能な該可撓支持基板”を有する点で共通する。

引用発明の「アンテナと回路チップとを有するインレイ」は,「ベルト」に“配されて”いるものであり,当該「インレイ」の回路チップは,アンテナを介してリーダライタと通信する際に何らかの「データ」をリーダライタの「検出アンテナ」に送信することは自明であるから,本願発明の「第1のタグ」とは,“前記可撓支持基板に配されていて,データを検出アンテナに送信する第1のタグ”である点で共通する。
また,引用発明の「インレイ」は,「取付対象物として人体の腕など水分の多い取付対象物が想定されるときは」,「取付対象物との間の距離が18mm以上となるようにスペーサの厚さが定められている」から,本願発明の「第1のタグ」とは,“装着者の身体から所定の距離だけ離間するように設定されている第1のタグ”である点で共通する。
してみれば,引用発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,“前記可撓支持基板に配されていて,データを検出アンテナに送信し,装着者の身体から所定の距離だけ離間するように設定されている第1のタグ”を有する点で共通する。

引用発明の「ベルト」は,「取付対象物」を「取り巻」いた状態で,「他端」に形成された「締結部の通し孔」に「一端」を通し,その「一端」の凹凸を通し孔に係合させて,「RFIDタグ」を「取付対象物に取り付け」るものであるから,本願発明の「可撓支持基板」とは,後記する点で相違するものの,“該可撓支持基板の第一端を該可撓支持基板の第二端に固定可能となって”いる点で共通する。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「装着者の身体に装着可能なタグ・アセンブリであって,
第一端と第二端を有する細長い可撓支持基板であって,装着者の身体に巻回装着可能な該可撓支持基板と,
前記可撓支持基板に配されていて,データを検出アンテナに送信し,装着者の身体から所定の距離だけ離間するように設定されている第1のタグとを有し,
前記可撓支持基板は,該可撓支持基板の第一端を該可撓支持基板の第二端に固定可能となっているタグ・アセンブリ。」

(相違点)
(相違点1)タグ・アセンブリが,本願発明1は,「スポーツ計時タグ・アセンブリ」であるのに対して,引用発明は,「スポーツ計時」に用いられることは記載されていない点。

(相違点2)本願発明1では,可撓支持基板が「低誘電発泡ゴム」で構成されているのに対して,引用発明は,スペーサが「発泡ゴム」で構成されてはいるものの,可撓支持基板に対応する「ベルト」は「発泡ゴム」で構成されていない点。

(相違点3)本願発明の可撓支持基板は,装着者の「手首もしくは足首」に巻回装着可能であるのに対して,引用発明は,取付対象物として人体の腕などを想定しているものの,「手首もしくは足首」を想定していることまでは明記されていない点。

(相違点4)本願発明1では,第1のタグが「可撓支持基板の表面」に配されているのに対して,引用発明は,インレイが,ベルトと一体に形成された封入体の内部に完全密封されており,インレイが「ベルトの表面」に配されているものではない点。

(相違点5)本願発明1では,「前記可撓支持基板の厚みによって」,装着者の身体から所定の距離だけ離間するように設定されているのに対して,引用発明は,可撓支持基板に対応するベルトの厚みではなく,ベルトとは別体に構成されるスペーサの厚みによって装着者の身体から所定の距離だけ離間するように設定されている点。

(相違点6)本願発明1では,「前記スポーツ計時タグ・アセンブリの装着者の識別に関連する」データを検出アンテナに送信するのに対して,引用発明のRFIDタグは,そのようなデータを送信することは記載されていない点。

(相違点7)第1のタグを装着者の身体から離間する距離が,本願発明1では「4?15mm」であるのに対して,引用発明では,「18mm以上」である点。

(相違点8)本願発明1は,第1のタグに加えて「第2のタグ」を有しており,「タグ・アセンブリが装着者の身体に装着されたときに,前記第1のタグのメインの信号送信方向が第1の方向であり,第2のタグのメインの信号送信方向が前記第1の方向と異なる第2の方向である」ようになっているのに対して,引用発明は,そのような構成となっていない点。

(相違点9)本願発明1は,「前記第1のタグ及び第2のタグの上に配され,装着者の識別番号を含む図形を備える耐水層」を有しているのに対して,引用発明は,そのような構成を有していない点。

(相違点10)可撓支持基板の第一端と第二端とを接続する際に,本願発明1では,「接着剤もしくはベルクロ(登録商標)を用いて」いるのに対して,引用発明は,ベルトの一端の「凹凸のある刻み目」と他端の「一端が挿入される通し孔を有する締結部」とを用いている点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み,上記相違点7について先に検討する。
本願発明は,明細書の段落0003に記載されているとおり,「身体の近傍では,タグアンテナのインピーダンスが変化し,それにより,タグは,その最適な作用点から「離調」する。この離調効果により,タグによって生成される変調された後方散乱信号は,非常に小さくなり,したがって,検出が非常に困難になる。この離調は,環境が湿っている場合,例えば,競技者の着衣及び身体の少なくとも一方が湿っていたり汗にぬれている場合,さらに悪くなる。」という課題を解決するために,同段落0053に記載されているように,「タグ・アセンブリと競技者の身体の間に間隔を創り出すよう構成されている」「スペーサ」の厚さtを,「スポーツ計時タグ・アセンブリが,身体や着衣上の装着箇所,及びスポーツ計時タグ・アセンブリの環境の湿度の少なくとも一方に応じて」4?15mmの間で選択するようにしたものである。
これに対して,引用発明は,引用文献1の段落0010に記載されている「ベルト型のRFIDタグを,例えば人体の様に水分を多く含む物体や金属柱などに適用した場合,特にUHF帯の電波を利用するRFIDタグの場合に,水分や金属の影響により通信が不能となり,あるいは通信可能距離が著しく劣化するおそれがある。」という課題を解決するものであり,同段落0063?0067及び図6に記載されているように,「取付対象物90が人体の腕など水分の多い取付対象物である場合には,インレイ10と取付対象物90との間の距離が18mm以上となるようにスペーサ40の厚さを定めることにより,RFIDタグの通信距離のバラツキが抑制される」というものである。
そうすると,両者は,RFIDタグを装着者の身体から離間することで,RFIDタグの通信特性を改善するという点では共通しているものの,引用発明は,「水とRFIDタグの距離をスペーサの厚みで確保する場合,18mm以下の領域では,スペーサの厚みのバラツキが通信距離のバラツキとして大きく影響してしまい,安定した利用ができない」(段落0066)ことから,RFIDタグを装着者の身体から18mm以上離間するように構成しているのであるから,そのような観点で決定されている18mm以上という離間距離をあえて18mmより小さくする動機付けはなく,当該距離を18mmより小さい4?15mmの範囲とすることには阻害要因があるといえる。

したがって,上記相違点1?6,及び8?10について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-9について
本願発明2-9は,本願発明1を直接・間接に引用するものであり,本願発明1の構成をさらに限定するものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
1.理由1(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により,本願発明1-9は,上記第5の1.(2)で検討した上記相違点7に係る構成を有するものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1-2に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由1を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。


 
審決日 2020-09-16 
出願番号 特願2018-31792(P2018-31792)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A63B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 須田 勝巳
山崎 慎一
発明の名称 装着可能なスポーツ計時タグ・アセンブリ  
代理人 藤岡 努  
代理人 藤岡 徹  
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