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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1365878
審判番号 不服2019-15298  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-14 
確定日 2020-09-29 
事件の表示 特願2016- 1690「脳磁計装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月13日出願公開、特開2017-121355、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年1月7日の出願であって、令和元年5月20日付けで拒絶理由が通知され、同年7月26日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月22日付けで拒絶査定されたところ、同年11月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後当審において令和2年4月28日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年8月7日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和元年8月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1 令和元年7月26日提出の手続補正書により補正された請求項1に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2 令和元年7月26日提出の手続補正書により補正された請求項3に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2006/067828号
2.特開2001-042016号公報
3.特開平04-194765号公報
4.特開2009-204241号公報


第3 本願発明
本願請求項1-2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明2」という。)は、令和2年8月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-2は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
生体から発生する磁場を検出するSQUIDセンサ、及び、前記SQUIDセンサを包囲している超伝導体によって構成された超伝導磁気シールド装置、を有する超伝導シールド型脳磁計と、
前記超伝導シールド型脳磁計が搭載された搭載部を有する車両と、を備え、
前記超伝導シールド型脳磁計は、前記搭載部に搭載されると共に前記超伝導磁気シールド装置を冷却する冷凍機と、前記冷凍機の運転及び停止を制御する制御部と、を有し、
前記冷凍機は、前記超伝導磁気シールド装置の外部に設けられており、
前記制御部は、前記SQUIDセンサによる前記磁場の検出時に、前記冷凍機を停止させる、脳磁計装置。
【請求項2】
前記超伝導シールド型脳磁計は、前記超伝導磁気シールド装置を冷却する冷凍機を有し、
前記搭載部は、平面視において長尺状に形成されており、
前記超伝導磁気シールド装置は、前記搭載部の長手方向における一端側に設置されており、
前記冷凍機は、前記搭載部の前記長手方向における他端側に搭載されている、請求項1に記載の脳磁計装置。」

第4 引用文献の記載事項
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由及び当審拒絶理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2006/067828号(2006年6月29日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は当審にて付した。)。
「背景技術
[0002] SQUIDを液体ヘリウムに漬けて極低温下で脳磁界センサとして使用した脳磁界計測装置は本発明者により開発され、実施されている。
図4を参照する。この従来の超伝導磁気シールド脳磁界計測装置は中空の円筒状真空熱絶縁構造体11と、循環冷却装置12と、極低温容器13と、頂部包囲体14とを備えている。真空熱絶縁構造体11は高温超伝導体の第1の包囲体111と高透磁率磁性体の第2の包囲体112とを二重壁内に収容し、中空円筒状の構造となっている。循環冷却装置12は真空熱絶縁構造体11の二重壁の空間に配置された高温超伝導体の第1の包囲体111を冷却する冷却媒体を循環させている。この第1の包囲体111には細い冷却パイプが巻きついていて、その冷却パイプにヘリウムガスを循環させて包囲体を冷却し外部磁場の侵入を防いでいる。
[0003] 極低温容器13は円筒状真空熱絶縁構造体11内に配置され、それに固定されている。頂部包囲体14は金属良導体(電磁波遮蔽)と磁性材料(磁場遮蔽)の二重構造の包囲体(内部は中空)となって真空熱絶縁構造体11の頂部に嵌合している。極低温容器13の下方に被検者の頭部を包囲する頭部収容域131が限定されており、そして極低温容器13の内部で頭部収容域131の周囲でSQUID磁気センサ15が支持部材20に配置されている。この極低温容器13には極低温媒体である液体ヘリウムを充填している。
[0004] この真空熱絶縁構造体11を床上に据え付け、それの下方開口に非磁性体の椅子17を配置する。真空熱絶縁構造体11の頂部に磁性材料の頂部包囲体14を嵌合させたのは頂部から電磁波と地磁気が侵入するのを防ぐためである。この頂部包囲体14を取り外して極低温容器13に蒸発した液体ヘリウムを補充する。
・・・
[0006] 真空熱絶縁構造体11と極低温容器13とについてさらに述べる。高温超伝導体(ビスマス・ストロンチューム・カルシューム・銅の酸化物:BSCCO)の第1の包囲体111を液体窒素温度付近まで低下(103K以下)させると、この高温超伝導体の内側の空間には磁力線が外部から入り込むことはできなくなる。しかし、真空熱絶縁構造体11の内部空間には第1の包囲体111の温度を低下させる前に既に地球磁場の磁束が入り込んでおり、その磁束が第1の包囲体111にピン止めされて、トラップされている。この状態では極低温容器13が第1の包囲体111に対して縦方向に移動しても、横方向に移動してもSQUID磁気センサ15を横切るピン止め静磁界の磁力線の成分は変化し、これがノイズ信号となって現れる。このノイズ信号を排除すると言う課題は、構造体11と極低温容器13とを相互に動かないよう固定することにより、そして脳磁界計測装置を設置した床から構造体11への振動伝達を完全に遮断して極低温容器13が構造体11内の包囲体111に対し僅かでも移動しないようにすることによって解決している(特許文献2参照)。具体的には構造体11の内壁と極低温容器13の外壁との間隙を埋める枕構造体を使用し、さらに構造体11を除振支持体を介して床上に支持している。除振支持体は床からの振動を吸収する振動吸収手段と床からの振動を検知してフイードバック制御により振動を相殺する除振機構とを備えている。
・・・
発明の開示
[0008] 本発明の目的は超伝導磁気シールド脳磁界計測装置におけるこの冷媒の保守管理上の問題を現実的な極低温冷凍機の冷却能力を考慮して解決し、併せて振動による計測への雑音をも排除することのできる構造簡単な計測構造体を提供することにある。
[0009] 再び図4を参照する。極低温容器13とこれを包囲する中空の円筒状真空熱絶縁構造体11との間には環状の空間があって、この包囲空間は構造体11の外側の周囲環境とつながっている。そのため、矢で示すように極低温容器13に熱が侵入して液体ヘリウムの蒸発を促進していることを発見した。本発明はこの発見に基礎を置いている。この外部からの熱侵入を阻止するには中空の円筒状真空熱絶縁構造体11と極低温容器13とを一体構造として包囲空間をなくすれば足りる。事実、この一体構造によって液体ヘリウムの消費は半減する。また、この一体構造にすることは円筒状真空熱絶縁構造体11と極低温容器13との相対的微動をも排除して床からの振動によるノイズ発生の原因も除去することになって、除振装置は実質的には不要となる。
・・・
[0017] この構成によりヘリウムガス冷却ポンプを作動させてSQUID磁気センサと磁場遮蔽の高温超伝導体の第1の包囲体とを冷却することができる。このようにして取り扱い難い液体窒素や液体ヘリウムなどの冷媒を用いる必要はなくなり、冷凍機運転のための電気エネルギーのみで脳磁界計測装置の連続稼働が可能になる。冷凍機は商用電源(100ボルト)で作動し、小型でもあり、また計測構造体は振動に対してセンサを不感としているので脳磁界計測装置を車両に搭載して巡回診断に使用することができる。

発明を実施するための最良の形態
[0018] 図1を参照する。本発明の超伝導磁気シールド脳磁界計測装置の円筒状の計測構造体1は、包囲外壁114と、この包囲外壁114内で上方に閉じた上部空間S1を限定する第1の包囲内壁115と、下方に開いた下部空間S2を限定する第2の包囲内壁116とを備えた気密構造体を含んでいる。図に示すように、第1の包囲内壁115の底と第2の包囲内壁116の天井とを対向させて包囲外壁114内に第1の包囲内壁115と第2の包囲内壁116とを配置する。
[0019] 包囲外壁114と第1と第2の包囲内壁115、116との間に形成された環状空間に高温超伝導体の第1の包囲体111と高透磁率磁性体の第2の包囲体112とを同中心に配置する。この環状空間は真空にされ、真空室を形成し、気密構造体は外部に対して熱絶縁状態を生ずる。
[0020] 第1の包囲内壁115の底と第2の包囲内壁116の天井とを対向させて形成した真空隔壁部113の中央に凹所をつくって人体の頭部を包囲する頭部収容域131を形成し、この収容域に沿って上部空間S1の内側にSQUID磁気センサ15を配置する。20はこれらのセンサ15の支持体である。
[0021] 上部空間S1では液体ヘリウムHを介してSQUID磁気センサ15を冷却し、環状真空空間内では高温超伝導体の1の包囲体111の冷却蛇菅(図示せず)に循環冷却装置12からヘリウムガスを送って冷却する。被験者は頭部を凹所に入れて非金属性の椅子17に腰掛ける。
[0022] 本発明の脳磁界計測装置と従来技術の脳磁界計測装置との違いを明確にするために、図5A及び図5Bを参照する。図5A及び図5Bは、ぞれぞれ、図1及び図4に示すような本発明及び従来技術の脳磁界計測装置の計測構造体の構造を図解的に示したものである。本発明の脳磁界計測装置は、図5Aに示すように、包囲外壁114と、第1の包囲内壁115と、第2の包囲内壁116とから成る1つの真空室V1を有する。これに対し、従来の脳磁界計測装置は、図5Bに示すように、円筒状真空熱絶縁構造体11と極低温容器13が分離している。特に、極低温容器13が真空室V3を有する構造においては、円筒状真空熱絶縁構造体11の真空室V2と極低温容器13の真空室V3も、分離している。なお、図5A及び図5Bでは、図解上、真空シールを形成する各真空壁の端部が開放されて描かれているが、実際には、これら各真空壁の端部は互いに密閉され、O-シールリングなどで真空シールされる。
[0023] 図2を参照する。本発明の第2の実施例であるこの計測構造体1は、第1の包囲内壁115が限定する上部空間S1に断熱膨張室117を設けた以外は図1の第1の実施例と同じである。上部空間の冷却媒体は液体ヘリウムHであり、そして断熱膨張室117に供給される冷却媒体はヘリウムガスであって、このヘリウムガスは断熱膨張室117内で液化して、液体ヘリウムとなって上部空間内に滴下し、稼働中の蒸発分を補充する。高温超伝導体の第1の包囲体111を冷却するヘリウムガスはヘリウム冷凍機12が供給し、断熱膨張室117へはヘリウム冷凍機214が供給している。これにより冷媒の補充のために計測を中断することなく脳磁界計測装置を連続稼働させることができる。
[0024] 図3を参照する。本発明の第3の実施例であるこの計測構造体1は、断熱膨張室117とSQUIDセンサ15の支持体20とを接続する熱伝導体118を設けた以外は図2の第2の実施例と同じである。SQIDセンサ15の支持体20は熱の良伝導体であって、これに断熱膨張室117の液化したヘリウムを熱伝導体118を介して間接的に接触させ、SQUIDセンサ15を熱伝導により冷却する。上部空間S1は真空とするか、低圧ヘリウムガスを充填しているが、液体ヘリウムは充填していない。この構成により断熱膨張室117に供給されるヘリウムガス(20K)は断熱膨張によって断熱膨張室117内で液体ヘリウム(4.3K)となってSQUID磁気センサを熱伝導により間接的に冷却する。第1の包囲体111を冷却するヘリウムガスと断熱膨張室117に供給するヘリウムガスとは循環冷却装置12、214から供給され、これらの冷却装置を運転する電気エネルギーのみで脳磁界計測装置は連続稼働することができる。

産業上の利用可能性
[0025] 本発明の計測構造体により超伝導磁気シールド脳磁界計測装置は現実的な使用に適するものとなった。特に、第2、第3の実施例では商業電源を利用できる環境で循環冷却装置のみを作動させて脳磁界装置を連続稼働できる。また、ヘリウムガスのみを冷却媒体として利用する第3実施例では脳磁界装置を車両に搭載した状態で作動させ、脳の働き(記憶、学習、注意など)を調べたり、脳障害(注意欠陥、自閉症、学習障害、精神分裂症など)を診断することが巡回診療の分野にまで拡張できる。」

[図1]



[図3]



(2)記載事項の整理
上記[0024]において「本発明の第3の実施例であるこの計測構造体1は、断熱膨張室117とSQUIDセンサ15の支持体20とを接続する熱伝導体118を設けた以外は図2の第2の実施例と同じである。」、[0023]に「本発明の第2の実施例であるこの計測構造体1は、第1の包囲内壁115が限定する上部空間S1に断熱膨張室117を設けた以外は図1の第1の実施例と同じである。」と記載されていることに鑑みれば、第3の実施例における「第1の包囲体111」に関する構成は第1の実施例における「第1の包囲体111」に関する構成と同じであり、そのため[0024]には「第1の包囲体111」の材質は記載されていないものの、第3の実施例の「第1の包囲体111」の材質は、第1の実施例の「第1の包囲体111」の材質と同じであるといえる。そして、第1の実施例には「高温超伝導体の第1の包囲体111」([0019])という記載があるから、第3の実施例の「第1の包囲体111」は高温超伝導体からなると認められる。


(3)図1、図3から見てとれる事項
ア 図1からは、「第1の包囲体111」がSQUIDセンサ15を包囲していることが見てとれる。そして、図1は第1の実施例、図3は第3の実施例を示した図面であること、及び、上記(2)にて述べたように第3の実施例における「第1の包囲体111」に関する構成は第1の実施例における「第1の包囲体111」に関する構成と同じであることから、図3には「第1の包囲体111」の符号は付されていないが図1と同じ箇所に「第1の包囲体111」が配置され、SQUIDセンサ15を包囲しているといえる。

イ 図3からは、「第1の包囲体111」を冷却するヘリウムガスを供給する「循環冷却装置12」が「第1の包囲体111」の外側に設けられていることが見てとれる。

(4)引用発明
上記(1)?(3)から、上記引用文献1(特に下線部参照)には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「超伝導磁気シールド脳磁界計測装置であって、
SQUIDを脳磁界センサとして使用し、
SQUIDセンサ15と、
SQUIDセンサ15を包囲する高温超伝導体からなる第1の包囲体111と、
第1の包囲体111を冷却するヘリウムガスを供給する循環冷却装置12と、
を有し、
前記循環冷却装置12は第1の包囲体111の外側に設けられており、
前記循環冷却装置12を運転する電気エネルギーのみで連続稼働することができ、
車両に搭載した状態で作動させる超伝導磁気シールド脳磁界計測装置。」

2 引用文献2の記載事項
原査定に引用された引用文献2の段落【0027】及び図3には、「生体磁場をSQUIDセンサにより測定する装置において、振動による磁場ノイズが生体磁場測定の障害となる場合には、SQUIDセンサを冷却するための冷凍機を停止させる。」という技術的事項が記載されている。

3 引用文献3の記載事項
原査定に引用された引用文献3の第3頁左下欄第2行-第5行には、「生体からの磁界をSQUIDセンサーにより計測する装置において、磁界の計測をSQUIDセンサを冷却するための冷凍機の停止時に行うことにより、計測時における冷凍機からの磁気ノイズを無くす。」という技術的事項が記載されている。

4 引用文献4の記載事項
原査定に引用された引用文献4の段落【0022】には、「生体磁場をSQUIDセンサにより測定する装置において、凝縮用冷凍機及び磁気シールド用冷凍機による磁気的及び機械的なノイズがSQUIDに及ばないように、凝縮用冷凍機及び磁気シールド用冷凍機を、SQUIDから離して設置する。」という技術的事項が記載されている。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 引用発明の「SQUIDセンサ15」は、脳磁界センサとして用いられるものであり、脳磁界は生体から発生する磁場であるから、本願発明1の「生体から発生する磁場を検出するSQUIDセンサ」に相当する。

イ 引用発明の「高温超伝導体からなる第1の包囲体111」は磁場を遮蔽するものであるから、本願発明1の「SQUIDセンサを包囲している超伝導体によって構成された超伝導磁気シールド装置」に相当する。

ウ 引用発明の「超伝導磁気シールド脳磁界計測装置」は、本願発明1の「超伝導シールド型脳磁計」に相当する。

エ 引用発明の「超伝導磁気シールド脳磁界計測装置」は、「車両に搭載した状態で作動させる」装置であるところ、その際に当該装置が搭載される箇所が、本願発明1の「超伝導シールド型脳磁計が搭載された搭載部」に相当する。またこの時、引用発明の「循環冷却装置12」は「超伝導磁気シールド脳磁界計測装置」を構成する部材であるから、「循環冷却装置12」も上記箇所であって、「第1の包囲体111」の外側に搭載されることとなる。

オ 引用文献1には「循環冷却装置12」の「運転及び停止を制御する制御部」について記載がないが、[0024]に「これらの冷却装置を運転する電気エネルギーのみで・・・」と記載されているように「循環冷却装置12」は電気エネルギーによって運転するところ、電気エネルギーによって運転される冷却装置であれば通常、その制御を行う部分があり、当該部分が本願発明1の「制御部」に相当する。

カ 引用発明の「超伝導磁気シールド脳磁界計測装置」と、当該「超伝導磁気シールド脳磁界計測装置」を搭載した「車両」とを含む装置全体が、本願発明1の「脳磁計装置」に相当する。

キ 以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。

【一致点】
「生体から発生する磁場を検出するSQUIDセンサ、及び、前記SQUIDセンサを包囲している超伝導体によって構成された超伝導磁気シールド装置、を有する超伝導シールド型脳磁計と、
前記超伝導シールド型脳磁計が搭載された搭載部を有する車両と、を備え、
前記超伝導シールド型脳磁計は、前記搭載部に搭載されると共に前記超伝導磁気シールド装置を冷却する冷凍機と、前記冷凍機を制御する制御部と、を有し、
前記冷凍機は、前記超伝導磁気シールド装置の外部に設けられている、脳磁計装置。」

【相違点】
本願発明1の「制御部」は、「冷凍機の運転及び停止を制御」し、「SQUIDセンサによる磁場の検出時に、冷凍機を停止させる」のに対し、引用発明の「循環冷却装置12」を制御する部分は「循環冷却装置12」の「運転及び停止を制御」するものではなく、また、「SQUIDセンサによる磁場の検出時に、冷凍機を停止させる」ものではない点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
ア 引用文献1の[0009]には「本発明はこの発見に基礎を置いている。この外部からの熱侵入を阻止するには中空の円筒状真空熱絶縁構造体11と極低温容器13とを一体構造として包囲空間をなくすれば足りる。事実、この一体構造によって液体ヘリウムの消費は半減する。また、この一体構造にすることは円筒状真空熱絶縁構造体11と極低温容器13との相対的微動をも排除して床からの振動によるノイズ発生の原因も除去することになって、除振装置は実質的には不要となる。」、[0017]には「冷凍機は商用電源(100ボルト)で作動し、小型でもあり、また計測構造体は振動に対してセンサを不感としているので脳磁界計測装置を車両に搭載して巡回診断に使用することができる。」と記載されている(下線は当審で付した。)。これらの記載から、引用発明は床からの振動によるノイズ発生の原因を除去したことで、除振装置を不要とし、また車両に搭載することを可能としたものと認められる。

イ 引用文献2に記載された発明は磁気シールドルーム601を有するものの、SQUID磁束計2と冷凍機104は共に磁気シールドルーム601の内部に設けられ、SQUID磁束計2と冷凍機104の間に磁気をシールドする部材を有しない。また、引用文献3に記載された発明も磁気をシールドする部材を有しない。これに対し、引用発明の循環冷却装置12は第1の包囲体111の外側に設けられており、循環冷却装置12が磁場ノイズを発生しても第1の包囲体111により磁場ノイズは遮蔽される。

ウ そうすると、「生体磁場をSQUIDセンサにより測定する装置において、振動による磁場ノイズが生体磁場測定の障害となる場合には、SQUIDセンサを冷却するための冷凍機を停止させる。」及び「生体からの磁界をSQUIDセンサーにより計測する装置において、磁界の計測をSQUIDセンサを冷却するための冷凍機の停止時に行うことにより、計測時における冷凍機からの磁気ノイズを無くす。」という技術的事項が引用文献2,3に記載されているように本願出願日前において公知の事項であったとしても、引用発明においては振動によるノイズへの対策がなされているのであるから、上記技術的事項を採用してあえて循環冷却装置12を停止させる必要がないものである。むしろ引用発明は、[0023]に「・・・冷媒の補充のために計測を中断することなく脳磁界計測装置を連続稼働させることができる。」、[0024]に「・・・これらの冷却装置を運転する電気エネルギーのみで脳磁界計測装置は連続稼働することができる。」と記載されているとおり、連続稼働させるものであるから、第1の包囲体111を冷却するための循環冷却装置12を停止させることには阻害要因があるといえる。

エ 引用文献4に記載されている技術的事項は、上記「第4」の「4」に述べたように、「SQUIDセンサによる磁場の検出時に、冷凍機を停止させる」という上記相違点に係る構成とは異なるものであり、これら引用文献には上記相違点に係る構成は記載されていない。

オ したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2?4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2も、本願発明1の「制御部は、SQUIDセンサによる磁場の検出時に、冷凍機を停止させる」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2?4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 小括
本願発明1-2は、原査定における引用文献1-4に基づいて、当業者が容易に発明できたものではないから、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

(1)令和元年11月14日提出の手続補正書により補正された請求項2に係る発明は、以下の引用文献A-Bに基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2)令和元年11月14日提出の手続補正書により補正された請求項3に係る発明は、以下の引用文献A-Cに基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.国際公開第2006/067828号(拒絶査定における引用文献1)
B.特開平06-304164号公報(当審において新たに引用した文献)
C.特開2009-204241号公報(拒絶査定における引用文献4)

2 判断
令和2年8月7日になされた手続補正によって、請求項2は削除された(請求項2を引用する請求項3についても削除された)ことにより、上記当審拒絶理由は解消された。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審の拒絶の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-09-14 
出願番号 特願2016-1690(P2016-1690)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 永田 浩司  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
磯野 光司
発明の名称 脳磁計装置  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 柳 康樹  
代理人 阿部 寛  
代理人 黒木 義樹  
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