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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1365906
審判番号 不服2019-8188  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-19 
確定日 2020-09-09 
事件の表示 特願2017-121488「マルチ無線アクセス技術ワイヤレスシステムにおける無線リソース管理のための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月12日出願公開、特開2017-188950〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2012年(平成24年)7月25日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2011年7月29日 米国)を国際出願日とする特願2014-523966号の一部を,平成27年7月13日に新たな特許出願とした特願2015-139570号の一部を,平成29年6月21日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯の概略は以下のとおりである。

平成29年 7月21日 :手続補正書の提出
平成30年 6月28日付け:拒絶理由通知書
平成30年10月 3日 :意見書の提出
平成31年 2月 7日付け:拒絶査定
令和 1年 6月19日 :拒絶査定不服審判の請求,手続補正書の提

令和 1年 7月17日 :手続補正書(方式)の提出(理由補充)

第2 本件補正

1 本件補正の概要
令和1年6月19日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)は,平成29年7月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項7に記載された
「 ワイヤレス送受信ユニット(WTRU)が,第1の無線アクセス技術(RAT)のセルから,第1の無線リソース制御(RRC)メッセージを受信するステップと,
前記受信された第1のRRCメッセージに応答して,第1のメディアアクセス制御(MAC)エンティティを前記第1のRATについて構成するステップであって,前記第1のRRCメッセージは,前記第1のRATの第1のプライマリセルと通信するように前記WTRUを構成するための情報を含む,ステップと,
前記WTRUが,前記第1のRATのセルから第2のRRCメッセージを受信するステップと,
前記第2のRRCメッセージに応答して,第2のMACエンティティを第2のRATについて構成するステップであって,前記第2のRRCメッセージは,前記第2のRATの第2のプライマリセルと通信するように前記WTRUを構成するための情報を含み,前記第1のMACエンティティおよび前記第2のMACエンティティは異なるものである,ステップと,
前記WTRUが,前記第1のRATおよび前記第2のRATと同時に通信するステップと,
を含む方法。」
との発明を,
「 ワイヤレス送受信ユニット(WTRU)が,第1の無線アクセス技術(RAT)のセルから,第1の無線リソース制御(RRC)メッセージを受信するステップと,
前記受信された第1のRRCメッセージに応答して,第1のメディアアクセス制御(MAC)エンティティを前記第1のRATについて構成するステップであって,前記第1のRRCメッセージは,前記第1のRATのプライマリセルと通信するように前記WTRUを構成するための情報を含む,ステップと,
前記WTRUが,前記第1のRATのセルから第2のRRCメッセージを受信するステップと,
前記第2のRRCメッセージに応答して,第2のMACエンティティを第2のRATについて構成するステップであって,前記第2のRRCメッセージは,前記第2のRATのサービングセルと通信するように前記WTRUを構成するための情報を含み,前記第1のMACエンティティおよび前記第2のMACエンティティは異なるものである,ステップと,
前記WTRUが,前記第1のRATおよび前記第2のRATと同時に通信するステップと,
を含む方法。」(下線は補正箇所を示す。)
との発明(以下,「本願発明」という。)に補正することを含むものである。

2 補正の適否
(1)新規事項の有無,シフト補正の有無,補正の目的要件
請求項7についての上記補正は,補正前の請求項7の「第1のRATの第1のプライマリセル」を「第1のRATのプライマリセル」とし,補正前の請求項7の「第2のRATの第2のプライマリセル」を「第2のRATのサービングセル」とする補正であって,当該補正は,拒絶査定にて指摘された「理由1.1(特許法第36条第6項第1号)」を解消するためのものであり,明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
したがって,上記補正は,特許法第17条の2第5項第4号に掲げる事項を目的とするものであり,同条第3項,同第4項の規定に違反するところはない。

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は,
「2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
というものであり,補正前の請求項7について,以下の引用例1が引用されている。

引用例1:米国特許出願公開第2011/0134831号明細書

第4 当審の判断

1 本願発明
本願発明は,「第2」の項中の「1 本件補正の概要」の「本願発明」のとおりのものと認める。

2 引用発明及び技術常識
(1)引用発明
原査定に引用された米国特許出願公開第2011/0134831号明細書(引用例1)には,以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「[0006] FIG. 1A reproduces Figure. 4.1 of 3GPP TS 36.300, and shows the overall architecture of the E-UTRAN system. The E-UTRAN system includes eNBs, providing the EUTRA user plane (PDCP/RLC/MAC/PHY) and control plane (RRC) protocol terminations towards the UE.
(中略)
[0018] In the LTE-A resource aggregation (carrier aggregation) the situation is currently that the basic principles are similar, as each component carrier (single Rel-8 carrier) operates independently of the other component carriers.
(中略)
[0047] Also shown in FIG. 2 is a second wireless network 2, such as a HSPA wireless network including at least one Node B 50, at least one RNC 52 (together foaming the UTRAN) and a CN 54 providing connectivity with a further network, such as a telephone network and/or a data communications network (e.g., the internet).
(中略)
[0057] In accordance with the exemplary embodiments of this invention the foregoing problems are overcome and the goals are realized in accordance with several basic principles. These basic principles include at least the following.
(中略)
D) The E-UTRAN MAC operates on top of the LTE L1, routing data to/from the RLC.
E) The MAC-ehs operates between the WCDMA L1 and the RLC for HSPA DL operation, and the MAC-i/is located between the WCDMA L1 and the RLC in the UL.
(中略)
[0058] More particularly, above the physical layer (L1) in a 3GPP system the MAC layer may be divided into several entities. One MAC entity, MAC enhanced high speed (MAC-ehs), has been introduced and optimized for HSPA in the DL.
(中略)
FIG. 4 shows one exemplary embodiment of protocol stacks for a DL case of the U-Plane, with the RRC connection located at the E-UTRAN eNB 12 (designated as Point A).
(中略)
[0059] FIG. 5 shows one exemplary embodiment of the protocol stacks for the DL case of the C-Plane, with the RRC connection located at the E-UTRAN eNB 12 (designated as Point A).
(中略)
[0061] FIG. 7 illustrates an embodiment of signaling flow to initiate resource aggregation, assuming use of the RRC in E-UTRAN, in accordance with the embodiments depicted in FIGS. 4, 5 and 6.
[0062] Message 1: The UE 10 sends (the RRC layer sends) to the eNB 12 a measurement report that a detected UTRAN carrier exceeds some quality threshold suitable for reception or carrier aggregation. (utilization of the MAC layer could be anticipated).
[0063] Message 2: The eNB 12 makes a decision to initiate carrier aggregation between E-UTRAN and UTRAN and sends over the X2 or Iur or compatible interface a resource aggregation request to the UTRAN RNC.
(中略)
[0067] Message 6: The UE 10 is informed from the E-UTRAN RRC of the Radio Bearer (RB) reconfiguration regarding resource aggregation (with the UTRAN RRC parameters being provided to the UE 10). This is followed by L1 synchronization between the UE 10 and the UTRAN Node B 50.
[0068] Message 7: The UE 10 (RRC) informs the eNB 12 that RB reconfiguration is complete.
[0069] Having performed the radio bearer reconfiguration, UE-related data routing is performed between the eNB 12 and the Node B 50 (via the RNC 52 or directly between the eNB 12 and the Node B 50), HS-DSCH and E-DCH signaling takes place between the UE 10 and the Node B 50 to enable HSPA transmission operation together with E-UTRAN transmission reception. During this reconfiguration procedure the user plane (U-Plane) data transmission may be constantly ongoing between the UE 10 and the eNB 12 by using E-UTRAN TX/RX operation. After the reconfiguration procedure is completed the data is then transmitted between the UE 10 and the network via both UTRAN and E-UTRAN based on scheduling decisions made by the Node B 50 and the eNB 12.
(中略)
[0071] It can be further noted with respect to FIG. 7 that Messages 5 and 6 may have a container to include any necessary other system parameters, or the LTE RRC may be extended to cover the necessary HSPA parameters to configure the Phy and MAC layers so that other carrier aggregation can be configured
(中略)
[0098] FIG. 11B is another view of the DL architecture, one that shows the position of a data routing switch (a logical switch) between the output of RLC buffers and inputs of the LTE and UTRAN MAC layers.
(中略)
[0100] In accordance with an aspect of the exemplary embodiments of this invention a single radio bearer can be transferred via both radio access technologies simultaneously, and the RLC protocol layer can be feeding both MAC layers based on their capability to transfer data. For example, the data routing decision (see again FIG. 11B) can be made on a RLC PDU by PDU basis, with the LTE system transmitting 60% of all PDUs and the WCDMA system transmitting 40% of all PDUs.













(当審仮訳:
[0006] 図1Aは,3GPP TS36.300の図4.1を再掲し,E-UTRANシステムの全体的なアーキテクチャを示す。E-UTRANシステムはeNBを含み,eNBはUEにEUTRAユーザプレーン(PDCP/RLC/MAC/PHY)及び制御プレーン(RRC)のプロトコルターミネーションを提供する。
(中略)
[0018] LTE-Aにおいて,リソースアグリゲーション(キャリアアグリゲーション)の現在の状況は,基本的な原理は各コンポーネントキャリア(単一のRel-8キャリア)と類似しており,他のコンポーネントキャリアとは独立して動作する。
(中略)
[0047] また,図2には第2無線ネットワーク2も示されており,例えば,第2無線ネットワーク2は,少なくとも1つのNode B 50及び少なくとも1つのRNC 52(UTRANを共に形成する。)と,電話網及び/又はデータ通信ネットワーク(例えば,インターネット)のような別のネットワークとの接続を提供するCN 54と,を含むHSPA無線ネットワークである。
(中略)
[0057] 本発明の例示的な実施形態によれば,上記の問題は克服され,目的はいくつかの基本的な原理に基づいて実現される。これらの基本的な原理は少なくとも以下を含む。
(中略)
D) E-UTRAN MACは,LTE-L1の上位で動作し,RLCへのデータをルーティングする。
E) MAC-ehsは,WCDMA L1とHSPA DL動作のためのRLCとの間で動作し,MAC-i/isは,WCDMA L1とULのRLCとの間に位置する。
(中略)
[0058] より詳細には,3GPPシステムでは,物理層(L1)の上位のMAC層は,いくつかのエンティティに分割することができる。一つのMACエンティティ,すなわち,MAC enhanced high speed(MAC-ehs)が,DLでのHSPAのために導入され最適化されている。
(中略)
図4は,E-UTRAN eNB 12におけるRRC接続(点Aで示される)と共にU-プレーンのDLケースのプロトコルスタックの例示的な一実施形態を示す。
(中略)
[0059] 図5は,E-UTRAN eNB 12におけるRRC接続(点Aで示される)と共にC-プレーンのDLケースのプロトコルスタックの例示的な一実施形態を示す。
(中略)
[0061] 図7は,リソースアグリゲーションを開始するシグナリングフローの一実施形態を示す図である。ここでは,図4,図5及び図6に示した実施の形態に従い,E-UTRANのRRCの使用を仮定する。
[0062] メッセージ1:UE 10は,検出されたUTRANキャリアが受信又はキャリアアグリゲーションに適したいくつかの品質しきい値を超えたことを示す測定レポートを基地局12aに送信する(RRCレイヤが送信する)。(MAC層の利用を図ることができる)。
[0063] メッセージ2:eNB 12は,E-UTRANとUTRANとの間でキャリアアグリゲーションを行うことを決定し,UTRAN RNCにリソースアグリゲーション要求をX2インターフェース又はIur又は互換性のあるインタフェースを介して送信する。
(中略)
[0067] メッセージ6:UE 10は,E-UTRAN RRCから,リソースアグリゲーションに関する無線ベアラ(RB) 再構成について通知される(UE 10に提供されるUTRANのRRCパラメータも共に通知される)。この後,UE 10とUTRAN Node B 50との間のL1同期がされる。
[0068] メッセージ7:UE 10(RRC)はeNB 12にRB再構成が完了したことを通知する。
[0069] 無線ベアラ再構成を実行すると,例えば,UEに関連したデータルーティングはeNB 12とNode B 50の間で実行され(RNC52を介して又はeNB 12とNode B 50との間で直接的に),E-UTRANの送受信と共にHSPAの送信動作を可能にするために,UE 10とNode B 50との間でHS-DSCH及びE-DCHシグナリングが行われる。この再構成手順中にユーザプレーン(U-Plane)データ送信は,E-UTRAN TX/RX動作を用いて,UE 10とeNB 12との間で継続中である。再構成手順が完了した後,データはNode B 50とeNB 12によって行われるスケジューリング決定に基づいて,UTRAN及びE-UTRANを介して,UE 10とネットワークとの間で送信される。
(中略)
[0071] 更に,図7に関連して,メッセージ5及び6は,任意の必要な他のシステム・パラメータを含むコンテナを有していてもよい,又は,他のキャリアアグリゲーションを構成できるようにするために,LTE RRCは,Phy及びMAC層を構成するために必要なHSPAパラメータを含むように拡張できる。
(中略)
[0098] 図11Bは,DLアーキテクチャの別の図であり,RLCバッファの出力とLTE及びUTRAN MAC層の入力との間のデータルーティングスイッチ(論理スイッチ)の位置を示す。
(中略)
[0100] 本発明の例示的実施形態の一態様によれば,単一の無線ベアラを同時に両方の無線アクセス技術を介して転送することができ,RLCプロトコル層はデータ転送の能力に基づいて両方のMACレイヤに入力することができる。例えば,データルーティングの決定(図11Bを参照)は,PDUベースでRLC PDU上で行うことができ,LTEシステムは全PDUの60%を送信し,WCDMAシステムは全PDUの40%を送信する。

(図面は省略)
)

上記の記載,並びに当業者の技術常識を考慮すると,以下のことがいえる。

ア [0006]には,E-UTRANはeNBを含むことが記載されている。
また,[0047],図2によれば,UTRANはHSPA無線ネットワークに含まれるといえる。
よって,引用例1には,「E-UTRANはeNBを含むものであり,UTRANはHSPA無線ネットワークに含まれるもの」であることが記載されていると認める。

イ [0063]には,eNBは,E-UTRANとUTRANとの間でキャリアアグリゲーションを行うことを決定することが記載されている。

ウ 図7によれば,UEは,eNB(E-NODE B 12)からE-UTRAN RRCを含むメッセージ6を受信していることが見てとれる。
また,[0067]には,UEは,E-UTRAN RRCから,リソースアグリゲーションに関する無線ベアラ(RB) 再構成について通知されることが記載されている。更に,[0018]の記載によれば,上述したリソースアグリゲーションがキャリアアグリゲーションのことを示していることは自明である。
よって,引用例1には,「UEは,eNBからE-UTRAN RRCを含むメッセージ6を受信し,E-UTRAN RRCから,キャリアアグリゲーションに関する無線ベアラ(RB) 再構成について通知されること」が記載されていると認める。

エ [0071]には,メッセージ6に関して,他のキャリアアグリゲーションを構成できるように,LTE RRCは,MAC層を構成するために必要なHSPAパラメータを含むように拡張できることが記載されている。
ここで, [0067]の記載を考慮すれば,「LTE RRC」とは「E-UTRAN RRC」のことを示していること自明である。また,LTE RRCが「HSPAパラメータを包含する」ことで,「他のキャリアアグリゲーション」を構成できることから,「他のキャリアアグリゲーション」とは, HSPA無線ネットワークに含まれる「UTRAN」のキャリアアグリゲーションのことを示していることは明らかである。
よって,引用例1には,「メッセージ6に関して,UTRANのキャリアアグリゲーションを構成できるように,E-UTRAN RRCは,MAC層を構成するために必要なHSPAパラメータを含むように拡張でき」ることが記載されていると認める。

オ [0069]には,無線ベアラ再構成を実行すると,UEに関連したデータルーティングが実行されることが記載されている。

また,[0100]の記載から,[0100]に記載されている「両方の無線アクセス技術」が,LTEシステムとWCDMAシステムを含むことは明らかである。ここで,[0057]の「D) E-UTRAN MACは,LTE-L1の上位で動作し」との記載から,LTEシステムがE-UTRANを含むことは自明である。更に,図4の「UE PROTOCOL STACK」の部分に,「UTRAN WCDMA L1」との記載が見てとれることから,WCDMAシステムがUTRANを含むことは自明である。
そうすると,[0100]によれば,単一の無線ベアラが同時にE-UTRANとUTRANを介して転送されることが記載されているといえる。

また,[0100]の記載から,データルーティングを行うことにより各システムで送信するPDUの割合を決定し,単一の無線ベアラが同時に両方の無線アクセス技術,すなわちE-UTRANとUTRANを介して転送されることは明らかである。

よって,引用例1には,「無線ベアラ再構成を実行すると,UEに関連したデータルーティングが実行され,単一の無線ベアラが同時にE-UTRANとUTRANを介して転送され」ることが記載されていると認める。

カ [0057]の「E) MAC-ehsは,WCDMA L1とHSPA DL動作のためのRLCとの間で動作し」との記載について,「WCDMA L1」とは,WCDMAの物理層(L1)のことを示しているのは自明である。そして,図4,図5からも見てとれるように,物理層(L1)とRLC層との間の層がMAC層であることは技術常識である。してみると,上述した[0057]の記載から,MAC-ehsは,WCDMA L1の上位のMAC層で動作するものであることは明らかである。
更に,[0058]の「一つのMACエンティティ,すなわち,MAC enhanced high speed(MAC-ehs)が,DLでのHSPAのために導入され最適化されている」との記載によれば,MAC-ehsは,DLでのHSPAのために導入され最適化されたMACエンティティといえる。
よって,引用例1には「UTRAN MAC-ehsは,WCDMA L1の上位のMAC層で動作しDLでのHSPAのために導入され最適化されたMACエンティティ」であることが記載されていると認める。

また,[0057]の「D) E-UTRAN MACは,LTE-L1の上位で動作し,RLCへのデータをルーティングする。」との記載について,「LTE-L1」とは,LTEの物理層(L1)のことを示しているのは自明である。そして,[0058]には,「物理層(L1)の上位」は「MAC層」であることが記載されている。してみると,E-UTRAN MACは,LTE-L1の上位のMAC層で動作するものといえる。
更に,[0058]の「3GPPシステムでは,物理層(L1)の上位のMAC層は,いくつかのエンティティに分割することができる。」との記載によれば,E-UTRAN MACは,エンティティに分割できるものといえる。
よって,引用例1には「E-UTRAN MACは,LTE-L1の上位のMAC層で動作しエンティティに分割できる」ことが記載されていると認める。

また,図4,図5によれば,UE PROTOCOL STACK として,E-UTRAN MACとUTRAN MAC-ehs を用いることが見てとれる。そして,図4,図5に記載された,「UTRAN MAC-ehs」が,[0057],[0058]に記載された「MAC-ehs」と同一のものであることは自明である。
更に,上述したとおり,[0058]には,MAC層はいくつかのエンティティに分割できることが記載されている。

したがって,引用例1には「MAC層はいくつかのエンティティに分割でき,UE PROTOCOL STACK として,E-UTRAN MACとUTRAN MAC-ehs を用いること,ここで,UTRAN MAC-ehsは,WCDMA L1の上位のMAC層で動作しDLでのHSPAのために導入され最適化されたMACエンティティであり,E-UTRAN MACは,LTE-L1の上位のMAC層で動作しエンティティに分割できる」ことが記載されている。

キ 「イ」「ウ」「エ」の検討から,引用例1には「UEがE-UTRANとUTRANとの間でキャリアアグリゲーションを行うための方法」が記載されていると認める。

以上を総合すると,引用例1には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「 UEがE-UTRANとUTRANとの間でキャリアアグリゲーションを行うための方法であって,ここで,E-UTRANはeNBを含むものであり,UTRANはHSPA無線ネットワークに含まれるものであり,
UEは,eNBからE-UTRAN RRCを含むメッセージ6を受信し,E-UTRAN RRCから,キャリアアグリゲーションに関する無線ベアラ(RB) 再構成について通知されること,ここで,メッセージ6に関して,UTRANのキャリアアグリゲーションを構成できるように,E-UTRAN RRCは,MAC層を構成するために必要なHSPAパラメータを含むように拡張でき,更に,無線ベアラ再構成を実行すると,UEに関連したデータルーティングが実行され,単一の無線ベアラが同時にE-UTRANとUTRANを介して転送され,
MAC層はいくつかのエンティティに分割でき,UE PROTOCOL STACK として,E-UTRAN MACとUTRAN MAC-ehsを用いること,ここで,UTRAN MAC-ehsは,WCDMA L1の上位のMAC層で動作しDLでのHSPAのために導入され最適化されたMACエンティティであり,E-UTRAN MACは,LTE-L1の上位のMAC層で動作しエンティティに分割できる,
を含む方法。」

(2)技術常識
本願の出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった3GGP規格である「Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Radio Resource Control (RRC); Protocol specification(Release 10)([当審仮訳]:発展型汎用地上無線アクセス(E-UTRA);無線リソース制御(RRC);プロトコル仕様(リリース10)),3GPP TS 36.331 V10.2.0 (2011-06),[online],2011年6月24日アップロード,インターネット<URL: https://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/36_series/36.331/36331-a20.zip>には,図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「3.2 Abbreviations
(中略)
PCell Primary Cell
(中略)
3.1 Definitions
(中略)
Primary Cell: the cell, operating on the primary frequency, in which the UE either performs the initial connection establishment procedure or initiates the connection re-establishment procedure, or the cell indicated as the primary cell in the handover procedure.
(中略)
5.3.3 RRC connection establishment
5.3.3.1 General


(中略)
The purpose of this procedure is to establish an RRC connection. RRC connection establishment involves SRB1 establishment. The procedure is also used to transfer the initial NAS dedicated information/ message from the UE to E-UTRAN.
(中略)
5.3.3.4 Reception of the RRCConnectionSetup by the UE
NOTE: Prior to this, lower layer signalling is used to allocate a C-RNTI. For further details see TS 36.321 [6];
The UE shall:
1> perform the radio resource configuration procedure in accordance with the received radioResourceConfigDedicated and as specified in 5.3.10;
(中略)
1> consider the current cell to be the PCell;
(中略)
5.3.10 Radio resource configuration
5.3.10.0 General
The UE shall:
(中略)
1> if the received radioResourceConfigDedicated includes the mac-MainConfig:
2> perform MAC main reconfiguration as specified in 5.3.10.4;
(中略)
5.3.10.4 MAC main reconfiguration
The UE shall:
1> reconfigure the MAC main configuration in accordance with the received mac-MainConfig;
(中略)
6.2.2 Message definitions
(中略)
- RRCConnectionSetup
The RRCConnectionSetup message is used to establish SRB1.
Signalling radio bearer: SRB0
RLC-SAP: TM
Logical channel: CCCH
Direction: E-UTRAN to UE




(当審仮訳:
3.2 略語
(中略)
PCell プライマリセル
(中略)
3.1 定義
(中略)
プライマリセル:プライマリセルはプライマリ周波数で動作するものである。また,プライマリセルにおいて,UEが初期接続確立手順を実行するか,接続再確立手順を開始する。あるいは,プライマリセルとは,ハンドオーバ手順においてプライマリセルとして示されるセルである。
(中略)
5.3.3 RRC接続確立
5.3.3.1 一般

(図面は省略)

(中略)
この手順の目的は,RRC接続を確立することである。RRC接続確立は,SRB1確立を含む。この手順はまた,UEからE-UTRANへ初期NAS専用情報/メッセージを転送するために使用される。
(中略)
5.3.3.4 UEによるRRCConnectionSetupの受信
注:この手順の前に,C-RNTIを割り当てるために下位レイヤシグナリングが使用される。さらなる詳細については,TS36.321 [6]を参照されたい。
UEは,以下の手順を実行する。
1> 5.3.10に規定されるように,受信したradioResourceConfigDedicatedに従って無線リソース構成手順を実行する;
(中略)
1> 現在のセルをPcellとする;
(中略)
5.3.10 無線リソース構成
5.3.10.0 一般
UEは,以下の手順を実行する。
(中略)
1> 受信されたradioResourceConfigDedicatedがmac-MainConfigを含む場合;
2> 5.3.10.4で規定されるMACメイン再構成を実行する;
(中略)
5.3.10.4 MACメイン再構成
UEは,以下の手順を実行する。
1> 受信したmac-MainConfigに従ってMACメイン構成を再構成する;
(中略)
6.2.2 メッセージ定義
(中略)
- RRCConnectionSetup
RRCConnectionSetupメッセージはSRB1を確立するために使用される。
シグナリング無線ベアラ:SRB0
RLC-SAP:TM
論理チャネル:CCCH
通信方向:E-UTRANからUE

(図面は省略)
)

上記の3GGP規格の記載より,
「 RRC接続確立の手順において,UEが,RRCConnectionSetupを受信すること,現在のセルをPcell(プライマリセル)とすること,RRCConnectionSetupがradioResourceConfigDedicatedを含み,更にradioResourceConfigDedicatedがmac-MainConfigを含む場合,当該mac-MainConfigに従ってMACメイン構成を再構成する。」ことは当業者における技術常識と認める。

3 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「UE」は本願発明の「ワイヤレス送受信ユニット(WTRU)」に相当する。
また,引用発明の「E-UTRAN」を「第1の無線アクセス技術(RAT)」と称することは任意である。更に,UEが「E-UTRAN」のセル,すなわち第1の無線アクセス技術(RAT)のセルと通信することは自明である。
また,引用発明の「E-UTRAN MAC」はエンティティに分割できるものであるから,「E-UTRAN MAC」をエンティティとして設けることができることは明らかである。そして,「E-UTRAN MAC」を「第1のメディアアクセス制御(MAC)エンティティ」と称するのは任意である。

してみると,本願発明の「ワイヤレス送受信ユニット(WTRU)が,第1の無線アクセス技術(RAT)のセルから,第1の無線リソース制御(RRC)メッセージを受信するステップと,
前記受信された第1のRRCメッセージに応答して,第1のメディアアクセス制御(MAC)エンティティを前記第1のRATについて構成するステップであって,前記第1のRRCメッセージは,前記第1のRATのプライマリセルと通信するように前記WTRUを構成するための情報を含む,ステップ」と,引用発明の「E-UTRANはeNBを含む」こと,及び「MAC層はいくつかのエンティティに分割でき,UE PROTOCOL STACK として,E-UTRAN MACとUTRAN MAC-ehsを用いること」とは,「ワイヤレス送受信ユニット(WTRU)が,第1の無線アクセス技術(RAT)のセルと通信し,第1の無線アクセス技術(RAT)について第1のメディアアクセス制御(MAC)エンティティを用いる」点で共通する。

(2)引用発明の「UEは,eNBからE-UTRAN RRCを含むメッセージ6を受信すること」について,「E-UTRAN RRCを含むメッセージ6」が,「E-UTRAN」のセル,すなわち第1の無線アクセス技術(RAT)のセルから受信するRRCメッセージであることは自明である。そして,引用発明の「E-UTRAN RRCを含むメッセージ6」を「第2のRRCメッセージ」と称することは任意である。
したがって,引用発明の「UEは,eNBからE-UTRAN RRCを含むメッセージ6を受信すること」は,本願発明の「前記WTRUが,前記第1のRATのセルから第2のRRCメッセージを受信するステップ」に相当する。

(3)引用発明の「UTRAN」を「第2の無線アクセス技術(RAT)」と称することは任意である。

また,本願発明の「第2のMACエンティティ」はMAC層のエンティティであることは明らかである。そして,引用発明の「メッセージ6」は,「MAC層を構成するために必要なHSPAパラメータを含む」ものである。そうすると,本願発明の「第2のRRCメッセージ」と,引用発明の「メッセージ6」は,双方とも「MAC層」を構成するためのメッセージである。
更に,引用発明において,UTRANのキャリアアグリゲーションを構成できるように「MAC層を構成する」ことは,UEが「UTRAN」のサービングセル,すなわち第2の無線アクセス技術(RAT)のサービングセルと通信するように,UEの「MAC層を構成する」ことを含むことは自明である。そして,引用発明の「MAC層を構成するために必要なHSPAパラメータ」が,「MAC層を構成する」ための情報を含むことは明らかである。そうすると,引用発明の「MAC層を構成するために必要なHSPAパラメータ」は,UEが「UTRAN」のサービングセル,すなわち第2の無線アクセス技術(RAT)のサービングセルと通信するように,UEを構成するための情報を含む。

してみると,本願発明の「前記第2のRRCメッセージに応答して,第2のMACエンティティを第2のRATについて構成するステップであって,前記第2のRRCメッセージは,前記第2のRATのサービングセルと通信するように前記WTRUを構成するための情報を含」むことと,引用発明の「メッセージ6に関して,UTRANのキャリアアグリゲーションを構成できるように,E-UTRAN RRCは,MAC層を構成するために必要なHSPAパラメータを含む」ことは,「前記第2のRRCメッセージに応答して,MAC層を構成することであって,前記第2のRRCメッセージは,前記第2のRATのサービングセルと通信するように前記WTRUを構成するための情報を含」む点で共通する。

また,引用発明の「UTRAN MAC-ehs」は,WCDMA L1の上位のMAC層で動作しDLでのHSPAのために導入され最適化された「MACエンティティ」であるから,引用発明の「UTRAN MAC-ehs」を「第2のMACエンティティ」と称することは任意である。
更に,引用発明の「MAC層」はいくつかのエンティティに分割できるから,「E-UTRAN MAC」と「UTRAN MAC-ehs」とは異なるエンティティであることは明らかである。

したがって,本願発明の「前記第2のRRCメッセージに応答して,第2のMACエンティティを第2のRATについて構成するステップであって,前記第2のRRCメッセージは,前記第2のRATのサービングセルと通信するように前記WTRUを構成するための情報を含み,前記第1のMACエンティティおよび前記第2のMACエンティティは異なるものである」ことと,引用発明の「メッセージ6に関して,UTRANのキャリアアグリゲーションを構成できるように,E-UTRAN RRCは,MAC層を構成するために必要なHSPAパラメータを含むように拡張でき」ること,及び「MAC層はいくつかのエンティティに分割でき,UE PROTOCOL STACK として,E-UTRAN MACとUTRAN MAC-ehsを用いること,ここで,UTRAN MAC-ehsは,WCDMA L1の上位のMAC層で動作しDLでのHSPAのために導入され最適化されたMACエンティティであり,E-UTRAN MACは,LTE-L1の上位のMAC層で動作しエンティティに分割できる」ことは,「前記第2のRRCメッセージに応答して,MAC層を構成するステップであって,前記第2のRRCメッセージは,前記第2のRATのサービングセルと通信するように前記WTRUを構成するための情報を含み,前記第1のMACエンティティおよび第2のMACエンティティは異なるものである」点で共通する。

(4)引用発明は「単一の無線ベアラが同時にE-UTRANとUTRANを介して転送され」るものであるから,UEが同時にE-UTRANとUTRANと通信することは自明である。
よって,引用発明の「無線ベアラ再構成を実行すると,UEに関連したデータルーティングが実行され,単一の無線ベアラが同時にE-UTRANとUTRANを介して転送され」ることは,本願発明の「前記WTRUが,前記第1のRATおよび前記第2のRATと同時に通信する」ことに相当する。

以上を総合すると,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。

(一致点)
「 ワイヤレス送受信ユニット(WTRU)が,第1の無線アクセス技術(RAT)のセルと通信し,第1の無線アクセス技術(RAT)について第1のメディアアクセス制御(MAC)エンティティを用いること,
前記WTRUが,前記第1のRATのセルから第2のRRCメッセージを受信するステップと,
前記第2のRRCメッセージに応答して,MAC層を構成するステップであって,前記第2のRRCメッセージは,前記第2のRATのサービングセルと通信するように前記WTRUを構成するための情報を含み,前記第1のMACエンティティおよび第2のMACエンティティは異なるものである,ステップと,
を含む方法。」

(相違点1)
「第1の無線アクセス技術(RAT)のセルと通信し,第1の無線アクセス技術(RAT)について第1のメディアアクセス制御(MAC)エンティティを用いる」ことについて,本願発明は「ワイヤレス送受信ユニット(WTRU)が,第1の無線アクセス技術(RAT)のセルから,第1の無線リソース制御(RRC)メッセージを受信するステップと,
前記受信された第1のRRCメッセージに応答して,第1のメディアアクセス制御(MAC)エンティティを前記第1のRATについて構成するステップであって,前記第1のRRCメッセージは,前記第1のRATのプライマリセルと通信するように前記WTRUを構成するための情報を含む」ものであるのに対し,引用発明はそのような特定はされていない点。

(相違点2)
「MAC層を構成する」ことについて,本願発明は「第2のMACエンティティを第2のRATについて構成する」ものであるのに対し,引用発明は,「MAC層を構成する」ものであるが,UTRAN MAC-ehs(第2のMACエンティティ)をUTRAN(第2のRAT)について構成することは特定されていない点。

以下,上記の各相違点について検討する。

(相違点1について)
引用発明は,UEは,E-UTRANからメッセージ6を受信するものであるから,メッセージ6を受信する前に,UEがE-UTRANと通信を行うために,E-UTRANとの接続を確立するための処理を行っていることは自明である。
ここで,上記「第4 当審の判断」の項中の「2 引用発明及び技術常識」の項中の「(2) 技術常識」で認定したとおり,
「 RRC接続確立の手順において,UEが,RRCConnectionSetupを受信すること,現在のセルをPcell(プライマリセル)とすること,RRCConnectionSetupがradioResourceConfigDedicatedを含み,更にradioResourceConfigDedicatedがmac-MainConfigを含む場合,当該mac-MainConfigに従ってMACメイン構成を再構成すること。」
は技術常識である。そして,RRCConnectionSetupが「RRCメッセージ」の一種であることは自明である。
そうすると,上記の技術常識を参酌することで,引用発明において,UEが「E-UTRAN」と通信するために「E-UTRAN」との接続を確立する際に,RRCメッセージの一種であるRRCConnectionSetupを受信し,RRCConnectionSetupに含まれるmac-MainConfigに従って「E-UTRAN MAC」を構成し,「E-UTRAN」と通信を行うセル(接続確立時のセル)をプライマリセルとすることは,当業者が適宜なしうることである。
したがって,引用発明において本願発明の相違点1に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到しうることである。

(相違点2について)
引用発明の「UTRAN MAC-ehs」は,「WCDMA L1の上位のMAC層で動作しDLでのHSPAのために導入され最適化されたMACエンティティ」であるから,引用発明の「メッセージ6」に含まれる「MAC層を構成するために必要なHSPAパラメータ」に応じて,「UTRAN MAC-ehs」を構成することは,当業者が当然なしうる事項である。また,引用発明の「UTRAN MAC-ehs」が「UTRAN」のMAC層のエンティティであることは明らかであるから,「UTRAN MAC-ehs」を構成することは,「UTRAN MAC-ehs」を「UTRAN」について構成することを含むことは自明である。
したがって,引用発明において本願発明の相違点2に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到しうることである。

そして,本願発明の作用効果も,引用発明に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。
したがって,本願発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

(請求人の主張について)
請求人は令和1年7月17日にされた手続補正書(方式)により,審判請求書の「請求の理由」を補正しており,当該手続補正書の「B. 本願発明が特許されるべき理由」の「(2)」において,「…引用文献1の記載の発明は,第2のRRCメッセージが,第2のRATのためのシグナリング無線ベアラ(SRB)を確立するための情報を含むことについては,何ら開示も示唆もしていません。特に,引用文献1は,シグナリング無線ベアラ(SRB)について何ら言及していません。したがって,少なくともこの点において,理由2は解消しているものと考えます。」と主張している。
ここで,上記の請求人の主張は,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1についての主張である。そして,本願発明(本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項7に係る発明)の「第2のRRCメッセージ」は,「第2のRRCメッセージが,第2のRATのためのシグナリング無線ベアラ(SRB)を確立するための情報を含む」との特定はされていない。よって,上記の請求人の主張は本願発明には該当しない。
したがって,請求人の上記主張を採用することはできない。

第5 むすび
本願発明は,当業者が引用例1に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-03-27 
結審通知日 2020-03-31 
審決日 2020-04-15 
出願番号 特願2017-121488(P2017-121488)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 537- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊東 和重  
特許庁審判長 岩間 直純
特許庁審判官 本郷 彰
相澤 祐介
発明の名称 マルチ無線アクセス技術ワイヤレスシステムにおける無線リソース管理のための方法および装置  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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