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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F01N
管理番号 1365948
審判番号 不服2019-17174  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-19 
確定日 2020-10-02 
事件の表示 特願2015-118781「還元剤タンクの取付構造」拒絶査定不服審判事件〔平成29年1月5日出願公開、特開2017-2849、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年6月12日の出願であって、平成31年2月27日付け(発送日:平成31年3月8日)で拒絶理由が通知され、平成31年4月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和元年9月18日付け(発送日:令和元年9月20日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して令和元年12月19日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正書が提出され、令和2年2月19日付けで前置報告がされ、令和2年5月7日に上申書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

(進歩性)本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項1及び2に対して 引用文献1及び2

<引用文献等一覧>
1.特開2015-25456号公報
2.特開2012-51529号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和元年12月19日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
タンク底面部と、前記タンク底面部の第1所定方向の両端から起立する1対のタンク壁面部と、前記タンク底面部の前記第1所定方向と交叉する第2所定方向の一側の一端から起立する第2のタンク壁面部と、前記タンク底面部の上方で前記タンク底面部に対向するタンク上面部とを有する還元剤タンクと、
前記還元剤タンクの前記タンク底面部を下方から支持するブラケット底面部と、前記ブラケット底面部の前記第1所定方向の両端から起立して相対向し、前記タンク底面部が前記ブラケット底面部によって支持されたタンク載置状態で前記1対のタンク壁面部に外側からそれぞれ対向する1対のブラケット壁面部とを有し、車体フレームに対して固定されて前記還元剤タンクを保持するブラケットと、
前記タンク載置状態で前記第2のタンク壁面部の前記第2所定方向の前記一側で前記第1所定方向に延びて、前記第1所定方向の両端部が前記ブラケットの前記1対のブラケット壁面部に対して固定された状態で前記還元剤タンクを支持するバンドと、を備え、
前記1対のブラケット壁面部と前記1対のタンク壁面部とは、前記タンク載置状態で前記還元剤タンクの膨張を許容するように前記第1所定方向に離間して配置され、
前記タンク底面部には、タンク側係合部が形成され、
前記ブラケット底面部には、前記タンク載置状態で前記タンク底面部の前記タンク側係合部と係合するブラケット側係合部が形成され、
前記還元剤タンクの前記第2のタンク壁面部には、第1の凸部が形成され、
前記バンドは、前記1対のブラケット壁面部に対して固定された状態で前記還元剤タンクの前記第1の凸部と係合する支持凹部を有し、
前記タンク底面部の前記タンク側係合部及び前記ブラケット底面部の前記ブラケット側係合部のうち、一方の底面部の係合部は、他方の底面部側へ突出した状態で前記第2所定方向に延びる第2の凸部であり、前記他方の底面部の係合部は、前記一方の底面部側から凹んだ状態で前記第2所定方向に延びる凹部であり、
前記バンドを前記1対のブラケット壁面部に対して固定する前の状態では、前記タンク底面部の前記タンク側係合部と前記ブラケット底面部の前記ブラケット側係合部との係合は、前記ブラケット底面部に対する前記還元剤タンクの前記第2所定方向に沿ったスライド移動を許容し、
前記バンドは、前記1対のブラケット壁面部に対して固定された状態で、前記ブラケット底面部に対する前記還元剤タンクの前記第2所定方向の前記一側へのスライド移動を規制し、
前記タンク底面部の前記タンク側係合部と前記ブラケット底面部の前記ブラケット側係合部との係合、及び前記還元剤タンクの前記第1の凸部と前記バンドの前記支持凹部との係合は、前記ブラケットに対する前記還元剤タンクの前記第1所定方向に沿った移動を規制する
ことを特徴とする還元剤タンクの取付構造。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2015-25456号公報(以下「引用文献1」という。)には、「ホイールローダ」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下同様。)。

(1)「【0027】
以下、本発明に係るホイールローダの実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、ホイールローダ1の右側面図である。なお、以下の説明において、「前」及び「後」とは車体3の前後を意味する。すなわち、図1の右が「前」、左が「後」となる。また、以下の説明における「右」、「左」、「上」、及び「下」とは運転室から前方を見た方向を基準とし、「車幅方向」は「左右方向」と同義である。また、「幅」とは、左右方向の長さを意味する。」

(2)「【0034】
図2は、左前方から見た尿素水タンク13の周囲を示す斜視図、図3は、左側から見た尿素水タンク13の側面断面図である。図2に示すように、梯子12の裏側に形成される空間に尿素水タンク(還元剤タンクの一例)13が設置される。図3に示すように、尿素水タンク13は、タンク本体13a、補充口13b、レベルゲージ13c、第1ポート13d、及び第2ポート13eを有する。
【0035】
タンク本体13aは、略直方体状であって、内部に尿素水(還元剤の一例)が貯留される。タンク本体13aの下面には、下方に突出する平面視円形の突出部13fが形成される。突出部13fは、前後方向において中央部より後方に位置する。タンク本体13aの上部には補充口13bが設けられ、この補充口13bからタンク本体13a内に尿素水が補充される。この補充口13bは、尿素水タンク13が梯子12の裏側に設置された状態において、前方側を向く。」

(3)「【0038】
図2に示すように、尿素水タンク13は、保持部材16に保持された状態で支持フレーム17内に収容される。支持フレーム17は、梯子12の裏側空間において、リアフレーム6に固定される。この支持フレーム17の空間内に尿素水タンク13が収容される。支持フレーム17は、レール部17a(図5参照)と、底板17b(図5参照)とを有する。レール部17aは、後述するように保持部材16を前方に引き出すための部材であり、第1傾斜部17c及び第2傾斜部17dを有する。底板17bは、尿素水タンク13を保持する保持部材16を下方から支持する。
【0039】
図4は、尿素水タンク13を保持した状態の保持部材16の斜視図である。保持部材16は、尿素水タンク13を保持するための部材である。図4に示すように、保持部材16は、底板16a、後板16b、一対の側板16c、第1規制バー(規制部材の一例)16d、及び第2規制バー(規制部材の一例)16eを有する。
【0040】
保持部材16の底板16aは矩形状であり、開口部16fが形成される。保持部材16が尿素水タンク13を保持した状態において、尿素水タンク13の突出部13fが、底板16aの開口部16fを貫通して下方に突出する。また、底板16aの後端から後板16bが上方に延び、底板16aの両側端からは一対の側板16cが上方に延びる。この底板16a、後板16b、及び一対の側板16cによって画定される空間に尿素水タンク13が収容される。
【0041】
一対の側板16cは、その前部において尿素水タンク13の下部から上部まで保持する。また、一対の側板16cは、その中央部及び後部において尿素水タンク13の下部を保持する。すなわち、各側板16cは、前部の方が、中央部及び後部よりも上方に延びる。なお、各側板16cの後部は、中央部よりも上方に延び、後板16bと同じ高さである。このように、保持部材16は、一対の側板16cで尿素水タンク13の側面全体を保持するのではなく、尿素水タンク13の側面中央部などを露出させるため、尿素水が凍結して尿素水タンク13が膨張した場合であっても、保持部材16が変形することを防ぐことができる。
【0042】
保持部材16の各側板16cは、作業者が保持部材16と共に尿素水タンク13を前方に引き出したり、元に戻したりするための把手16gを有する。また、各側板16cは、側方に突出する第1凸部16hを前部に、第2凸部16iを後部に有する。第1凸部16hは、第2凸部16iよりも上に位置する。第1及び第2凸部16h、16iは、支持フレーム17のレール部17a上を前後方向に摺動する。
【0043】
一対の側板16cの前部の上端から上方に取付金具16jが延びる。この取付金具16jを介して、第1規制バー16dは側板16cに取り付けられる。第1規制バー16dは、車幅方向に延び、両端部においてボルト及びナットなどを用いて取付金具16jに取り付けられる。第1規制バー16dは、保持部材16が尿素水タンク13を保持した状態において、尿素水タンク13の前部の上方に位置し、尿素水タンク13が上方に移動することを規制し、ひいては尿素水タンク13が保持部材16から上方へ飛び出ることを防止する。
【0044】
一対の側板16cの前部の中央部から前方に取付金具16kが延びる。この取付金具16kを介して、第2規制バー16eは側板16cに取り付けられる。第2規制バー16eは、車幅方向に延び、両端部においてボルト及びナットなどを用いて取付金具16kに取り付けられる。第2規制バー16eは、保持部材16が尿素水タンク13を保持した状態において、尿素水タンク13の前方に位置し、尿素水タンク13が前方に移動することを規制し、ひいては尿素水タンク13が保持部材16から前方に飛び出ることを防止する。」

(4)上記(1)、(2)及び図2ないし3の図示内容並びに技術常識から、尿素水タンク13が、タンク底面部と、前記タンク底面部の左右方向の両端から起立する1対のタンク壁面部と、前記タンク底面部の前方側の一端から起立する第2のタンク壁面部と、前記タンク底面部の上方で前記タンク底面部に対向するタンク上面部とを有していることは自明である。

上記記載事項、認定事項及び図面(特に、図1ないし7を参照。)の図示内容から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

〔引用発明〕
「タンク底面部と、前記タンク底面部の左右方向の両端から起立する1対のタンク壁面部と、前記タンク底面部の前方側の一端から起立する第2のタンク壁面部と、前記タンク底面部の上方で前記タンク底面部に対向するタンク上面部とを有する尿素水タンク13と、
前記尿素水タンク13の前記タンク底面部を下方から支持する底板16aと、前記底板16aの前記左右方向の両端から起立して相対向し、前記タンク底面部が前記底板16aによって支持されたタンク載置状態で前記1対のタンク壁面部に外側からそれぞれ対向する一対の側板16cとを有し、リアフレーム6に固定される支持フレーム17に支持されて前記尿素水タンク13を保持する保持部材16と、
前記タンク載置状態で前記第2のタンク壁面部の前方側で左右方向に延びて、左右方向の両端部が前記保持部材16の前記一対の側板16cに取り付けられた状態で前記尿素水タンク13を保持する第2規制バー16eと、を備え、
前記一対の側板16cは、その前部において尿素水タンク13の下部から上部まで保持し、その中央部及び後部において尿素水タンク13の下部を保持し、尿素水タンク13の側面中央部などを露出させるため、尿素水タンク13が膨張しても、保持部材16が変形することを防ぐことができ、
前記尿素水タンク13の底面部には突出部13fが形成され、
前記保持部材16の底板16aには、前記タンク載置状態で前記突出部13fと係合する開口部16fが形成され、
前記第2の規制バー16eは、前記一対の側板16cに取り付けられた状態で、前記尿素水タンク13が前記保持部材16から前方に飛び出ることを防止する、
尿素水タンク13の取付構造。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された特開2012-51529号公報(以下「引用文献2」という。)には、「作業機械の燃料タンク取付装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0038】
実施形態は、背景技術の説明に合わせて、図7に示す小型油圧ショベルの上部旋回体2に合成樹脂製の燃料タンクを設置する場合を例にとっている。
【0039】
実施形態において、
(i) アッパーフレーム11にエンジン等の機器類及びこれらを覆うガードパネル、運転席(いずれも図示しない)等を取付けて上部旋回体を構成する点、
(ii) アッパーフレーム11は底板12を有し、この底板12上の左側(図1の左側
を機械の前方とした場合の左側であって図3では右側。以下にいう前後、左右の方向性について同じ)にフロアプレート13(図2,3参照)が設けられる点、
(iii) このフロアプレート13は、アッパーフレーム底板12との間に空間Sが形成されるとともにこの空間Sの左側面がタンク出し入れ口として外部に開口する状態で、支柱14(左側前部の1本のみ図示する)によって底板12上に取付けられる点、
(iv) 合成樹脂製の燃料タンク15は、空間Sに外部から出し入れ口を介して出し入れ可能な状態で設置される点
は、図7に示す従来技術と同じである。」

(2)「【0043】
燃料タンク15は、空間Sにおいて前後一対の押えプレート20,20と、タンク左右の側面側でこの押えプレート20,20を下向きに締め付ける左右の締め付けロッド21,21とによって上からアッパーフレーム底板12上に押え込まれ、かつ、上下両側で凹凸嵌合によって水平方向に固定される。
【0044】
この点を詳述する。
【0045】
押えプレート20及び締め付けロッド21による押さえ込み構造と、タンク上下両側での凹凸嵌合による水平固定構造はタンク左右両側で同じであって、かつ、前後両側のタンク取付部分でも同じであるため、以下の説明は一組または一個所のみについて行う。
【0046】
押えプレート20は、図示のように水平な本体部分の前後両側に垂直な立ち上がり壁を備えた断面U字形に形成され、燃料タンク15の上面に左右方向の全幅に亘って配置される。
【0047】
この押えプレート20には、左右両端部にロッド挿通穴22,22が設けられるとともに、このロッド挿通穴22,22よりも内側に係合穴23,23が設けられている(図5参照)。
【0048】
また、同プレート20の左右両側の下面と燃料タンク上面との間に、ゴム等の摩擦係数の高い弾性材料から成る上側動き止め部材部材としての押えパッド24,24が挟み込まれる。
【0049】
この押えパッド24,24は、押えプレート20の断面形状に対応する断面U字形に形成され、押えプレート20に下側から外嵌される。
【0050】
ここで、押えパッド24,24の上面に上向きに突出する突起25,25が設けられ、この突起25,25が押えプレート20の係合穴23,22に係合することによって押え
パッド24,24が押えプレート20に結合される。
【0051】
また、燃料タンク上面に対する摩擦力を高める工夫として、図6に示すように押えパッド24,24の下面が多数のディンプル24a…を備えた凹凸状に形成されている。
【0052】
一方、燃料タンク15の上面における押えプレート20の両端部に対応する部分(左右両端部)に凹部26,26が設けられ、押えパッド24,24がこの凹部26,26に嵌合する(図3,4参照)。
【0053】
これにより、タンク上面側において燃料タンク15が前後及び左右方向に位置固定される。
【0054】
締め付けロッド21は、ロッド本体27と、同本体27の上端側に連設されたねじ部28とによって構成されている。
【0055】
ロッド本体27の下端部はフック状に曲げられ、このフック部分27aが、アッパーフレーム底板12の上面に取付けられたL字形のロッド止め具29に着脱自在に引っ掛け係止される。
【0056】
この状態で、ねじ部28が押えプレート20のロッド挿通穴22に挿通され、これにナット(図ではダブルナットとしている)30がねじ込まれる。
【0057】
これにより、押えプレート20が下向きに締め付けられて、燃料タンク15がアッパーフレーム底板12に上から押さえ込まれる。
【0058】
ここで、図4に示すように、締め付けロッド21のねじ部28がロッド本体27よりも小径とされることによって両者の境界部分に段部21aが形成され、この段部21aによって押えプレート20の締め付け代が規制される。
【0059】
また、燃料タンク15における締め付けロッド21に対面する左右両側面に、同ロッド21に対する逃げ用の凹溝31(図2,3参照)がタンク全高に亘って設けられ、締め付けロッド21がこの凹溝31内に配置される。」

上記記載事項及び図面(特に、図2、3及び5を参照。)の図示内容から、引用文献2には次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

〔引用文献2記載事項〕
「押えプレート20の左右両側の下面と燃料タンク15上面との間に、押えパッド24,24が挟み込まれ、前記燃料タンク15の上面における前記押えプレート20の左右両端部に対応する部分に凹部26,26が設けられ、前記押えパッド24,24がこの凹部26,26に嵌合することにより、タンク上面側において燃料タンク15が前後及び左右方向に位置固定されること。」

3 引用文献3
令和2年2月19日付けの前置報告書において引用された実願昭62-165392号(実開平1-73024号)のマイクロフィルム(以下「引用文献3」という。)には、「車両用燃料タンクの固定構造」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「第1図?第4図に示すように、間隔を隔てて並設される一対のサイドメンバ1は、上下フランジ2,3を有する断面コ字状のチャネル材で成り、これらフランジ2,3で区画されたチャネル部4が互いに向い合うように並設される。
このように構成されたサイドメンバ1,1間にはプラスチック製のタンク5が配置される。
このタンク5の底面には多数の係合凹部6が、そのタンク5の成形時に一体に成形加工されて設けられる。
この係合凹部6は、タンク5の底面で、かつその据付時、車長方向に向くように多数平行して設けられる。他方、サイドメンバ1,1間に掛け渡されるブラケット7には、タンク5の底面の係合凹部6と係合する係合凸部8が各係合凹部6の位置に対向して形成される。このブラケット7は、その係合凸部8が予めタンク5の底面の係合凹部6に係合され、そのタンク5とともにサイドメンバ1,1間に配置されたのち、ブラケット7の両端が第1図に示すように、サイドメンバ1,1の下端からビス9を挿入し、ブラケット7の両端に予め取り付けたナット10に螺合することで固定する。
タンク5の係合凹部6とブラケット7の係合凸部の係合は、第3図のようにタンク5の係合凹部にブラケット7の係合凸部8を強制的に押し込んで係合させても、或は第4図に示すようにタンク5の係合凹部6にブラケット7の係合凸部8をスライドさせて係合するようにしてもよい。」(3ページ20行ないし5ページ8行)

(2)「また、タンク5はその係合凹部6がブラケット7の係合凸部8と係合するため、車幅方向の移動を拘束できる。」(5ページ20行ないし6ページ2行)

(3)「第1?4図において、タンク5の係合凹部6とブラケット7の係合凸部8との係合は、車幅方向を拘束し、車長方向は係合しないため、他の部品で、その前後方向の移動を拘束する必要がある。」(6ページ20行ないし7ページ3行)

上記記載事項及び図面(特に、第1ないし4図を参照。)の図示内容から、引用文献3には次の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。

〔引用文献3記載事項〕
「タンク5の底面には係合凹部6が形成され、ブラケット7には係合凸部が形成され、タンク5の底面の係合凹部6とブラケット7の係合凸部の係合は、タンク5のブラケット7に対する車長方向のスライドを許容し、車幅方向の移動を拘束するものであること。」

第5 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「左右方向」は、その機能、構成または技術的意義から見て、本願発明における「第1所定方向」に相当し、以下同様に、「前方側」は「前記第1所定方向と交叉する第2所定方向の一側」に、「尿素水タンク13」は「還元剤タンク」に、「底板16a」は「ブラケット底面部」に、「側板16c」は「ブラケット壁面部」に、「保持部材16」は「ブラケット」に、「リアフレーム6」は「車体フレーム」に、「一対の側板16cに取り付けられた状態で前記尿素水タンク13を保持する」は「1対のブラケット壁面部に対して固定された状態で前記還元剤タンクを支持する」に、「第2の規制バー16e」は「バンド」に、「突出部13f」は「タンク側係合部」に、「開口部16f」は「ブラケット側係合部」に、それぞれ相当する。
そして、上記相当関係を踏まえると、引用発明における「リアフレーム6に固定される支持フレーム17に支持されて」と本願発明における「車体フレームに対して固定されて」とは、「車体フレームに対して支持されて」という限りにおいて一致しており、以下同様に、「前記一対の側板16cは、その前部において尿素水タンク13の下部から上部まで保持し、その中央部及び後部において尿素水タンク13の下部を保持し、尿素水タンク13の側面中央部などを露出させるため、尿素水タンク13が膨張しても、保持部材16が変形することを防ぐことができ」と「前記1対のブラケット壁面部と前記1対のタンク壁面部とは、前記タンク載置状態で前記還元剤タンクの膨張を許容するように前記第1所定方向に離間して配置され」とは、「前記1対のブラケット壁面部は、前記タンク載置状態で前記還元剤タンクの膨張を許容し」という限りにおいて一致しており、「前記第2の規制バー16eは、前記一対の側板16cに取り付けられた状態で、前記尿素水タンク13が前記保持部材16から前方に飛び出ることを防止し」と「前記バンドは、前記1対のブラケット壁面部に対して固定された状態で、前記ブラケット底面部に対する前記還元剤タンクの前記第2所定方向の前記一側へのスライド移動を規制し」とは、「前記バンドは、前記1対のブラケット壁面部に対して固定された状態で、前記還元剤タンクの前記第2所定方向の前記一側への移動を規制し」という限りにおいて一致している。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
〔一致点〕
「タンク底面部と、前記タンク底面部の第1所定方向の両端から起立する1対のタンク壁面部と、前記タンク底面部の前記第1所定方向と交叉する第2所定方向の一側の一端から起立する第2のタンク壁面部と、前記タンク底面部の上方で前記タンク底面部に対向するタンク上面部とを有する還元剤タンクと、
前記還元剤タンクの前記タンク底面部を下方から支持するブラケット底面部と、前記ブラケット底面部の前記第1所定方向の両端から起立して相対向し、前記タンク底面部が前記ブラケット底面部によって支持されたタンク載置状態で前記1対のタンク壁面部に外側からそれぞれ対向する1対のブラケット壁面部とを有し、車体フレームに対して支持されて前記還元剤タンクを保持するブラケットと、
前記タンク載置状態で前記第2のタンク壁面部の前記第2所定方向の前記一側で前記第1所定方向に延びて、前記第1所定方向の両端部が前記ブラケットの前記1対のブラケット壁面部に対して固定された状態で前記還元剤タンクを支持するバンドと、を備え、
前記1対のブラケット壁面部は、前記タンク載置状態で前記還元剤タンクの膨張を許容し、
前記タンク底面部には、タンク側係合部が形成され、
前記ブラケット底面部には、前記タンク載置状態で前記タンク底面部の前記タンク側係合部と係合するブラケット側係合部が形成され、
前記バンドは、前記1対のブラケット壁面部に対して固定された状態で、前記還元剤タンクの前記第2所定方向の前記一側への移動を規制する、
還元剤タンクの取付構造。」

〔相違点1〕
「車体フレームに対して支持されて前記還元剤タンクを保持するブラケット」に関して、本願発明においては、車体フレームに対して「固定」されて前記還元剤タンクを保持するブラケットであるのに対して、引用発明においては、リアフレーム6に固定される支持フレーム17に支持されて前記尿素水タンク13を保持する保持部材16である点。

〔相違点2〕
「前記1対のブラケット壁面部は、前記タンク載置状態で前記還元剤タンクの膨張を許容し、」に関して、本願発明においては、前記1対のブラケット壁面部と前記1対のタンク壁面部とは、前記タンク載置状態で前記還元剤タンクの膨張を許容するように前記第1所定方向に「離間」して配置されるものであるのに対して、引用発明においては、前記一対の側板16cは、その前部において尿素水タンク13の下部から上部まで保持し、その中央部及び後部において尿素水タンク13の下部を保持し、尿素水タンク13の側面中央部などを露出させるため、尿素水タンク13が膨張しても、保持部材16が変形することを防ぐことができるものである点。

〔相違点3〕
本願発明においては「前記還元剤タンクの前記第2のタンク壁面部には、第1の凸部が形成され、前記バンドは、前記1対のブラケット壁面部に対して固定された状態で前記還元剤タンクの前記第1の凸部と係合する支持凹部を有し、前記タンク底面部の前記タンク側係合部及び前記ブラケット底面部の前記ブラケット側係合部のうち、一方の底面部の係合部は、他方の底面部側へ突出した状態で前記第2所定方向に延びる第2の凸部であり、前記他方の底面部の係合部は、前記一方の底面部側から凹んだ状態で前記第2所定方向に延びる凹部であり、前記バンドを前記1対のブラケット壁面部に対して固定する前の状態では、前記タンク底面部の前記タンク側係合部と前記ブラケット底面部の前記ブラケット側係合部との係合は、前記ブラケット底面部に対する前記還元剤タンクの前記第2所定方向に沿ったスライド移動を許容し」、前記バンドは、前記1対のブラケット壁面部に対して固定された状態で、前記ブラケット底面部に対する前記還元剤タンクの前記第2所定方向の前記一側へのスライド移動を規制し、「前記タンク底面部の前記タンク側係合部と前記ブラケット底面部の前記ブラケット側係合部との係合、及び前記還元剤タンクの前記第1の凸部と前記バンドの前記支持凹部との係合は、前記ブラケットに対する前記還元剤タンクの前記第1所定方向に沿った移動を規制する」ものであるのに対して、引用発明においては、前記第2の規制バー16eは、前記一対の側板16cに対して固定された状態で、前記尿素水タンク13が前記保持部材16から前方に飛び出ることを防止するものである点。

事案に鑑み、先ず、上記相違点2について検討する。
引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項は上記のとおりであって、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を開示ないし示唆するものではない。
引用文献2の図3から、燃料タンク15と締め付けロッドのロッド本体との間に隙間があることが看取でき、引用文献3の第1図から、タンク5とサイドメンバ1との間に隙間があることが看取できるものの、これらは、ブラケット壁面部とタンク壁面部とを、「タンクの膨張を許容するように離間」して配置することを開示ないし示唆するものではない。
そして、ブラケット壁面部とタンク壁面部とを、「タンクの膨張を許容するように離間」して配置することは、本願出願前に周知の技術でもなく設計的事項ということもできない。
したがって、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明において引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項を参酌することにより、当業者が容易に想到することができたということはできない。

上記相違点3について検討する。
引用文献2記載事項は上記のとおり「押えプレート20の左右両側の下面と燃料タンク15上面との間に、押えパッド24,24が挟み込まれ、前記燃料タンク15の上面における前記押えプレート20の左右両端部に対応する部分に凹部26,26が設けられ、前記押えパッド24,24がこの凹部26,26に嵌合することにより、タンク上面側において燃料タンク15が前後及び左右方向に位置固定されること。」というものであり、引用文献3記載事項は上記のとおり「タンク5の底面には係合凹部6が形成され、ブラケット7には係合凸部が形成され、タンク5の底面の係合凹部6と、ブラケット7の係合凸部の係合は、タンク5のブラケット7に対する車長方向のスライドを許容し、車幅方向の移動を拘束するものであること。」というものである。
これらは、要すれば、押えプレート20によって燃料タンク15が位置固定されること、及び、タンク5の底面の係合凹部6と、ブラケット7の係合凸部の係合が、タンク5のブラケット7に対する所定方向のスライドを許容し、前記所定方向と直交する方向の移動を拘束するものであることを、個別に開示するに過ぎないのであって、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項のうち「バンドを1対のブラケット壁面部に対して固定する前の状態では、タンク底面部のタンク側係合部と前記ブラケット底面部のブラケット側係合部との係合は、前記ブラケット底面部に対する還元剤タンクの第2所定方向に沿ったスライド移動を許容し」、「バンドは、1対のブラケット壁面部に対して固定された状態で、ブラケット底面部に対する還元剤タンクの第2所定方向の前記一側へのスライド移動を規制し」、「還元剤タンクの第1の凸部とバンドの支持凹部との係合は、ブラケットに対する前記還元剤タンクの第1所定方向に沿った移動を規制する」という事項を開示ないし示唆するものではない。
また、本願発明の当該事項は、本願出願前に周知の技術でもなく設計的事項ということもできない。
したがって、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明において引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項を参酌することにより、当業者が容易に想到することができたということはできない。

本願発明の課題及び効果について検討する。
本願の発明の詳細な説明には、発明が解決しようとする課題に関して次の記載がある。

「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の尿素水(還元剤)タンクには、尿素水が貯留されており、尿素水は、尿素の水溶液であるので、寒冷地等の気温が低い場所などでは尿素水が凍結して、尿素水タンクが膨張する可能性がある。しかし、上記特許文献1に記載の尿素水タンクでは、尿素水タンクの外側面とブラケットの覆い部とが近接または接触しているので、尿素水タンク内の尿素水が凍結して尿素水タンクが膨張すると、ブラケットが破損してしまうおそれがある。上記問題を解決するために、尿素水タンクの外側面とブラケットの覆い部とを離間させると、尿素タンクの安定性が低下するおそれがある。また、ブラケットを厚肉化してブラケットの剛性を向上させると、ブラケットが重量化してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、還元剤タンクの安定性の低下やブラケットの重量化を防止し、且つ還元剤タンクの膨張時のブラケットの破損を防止することが可能な還元剤タンクの取付構造の提供を目的とする。」

上記記載によれば、本願発明は、尿素水タンクの外側面とブラケットの覆い部とが近接または接触していると、尿素水タンク内の尿素水が凍結して尿素水タンクが膨張すると、ブラケットが破損してしまうおそれがあり、尿素水タンクの外側面とブラケットの覆い部とを離間させると、尿素タンクの安定性が低下するおそれがあり、また、ブラケットを厚肉化してブラケットの剛性を向上させると、ブラケットが重量化してしまうおそれがあるので、還元剤タンクの安定性の低下やブラケットの重量化を防止し、且つ還元剤タンクの膨張時のブラケットの破損を防止することが可能な還元剤タンクの取付構造の提供することを課題としていると理解できる。
しかしながら、このような課題は、引用文献1ないし3には記載も示唆もされておらず、当業者にとって自明なものでもない。
そして、本願発明はその発明特定事項、特に、上記相違点2及び3に係る発明特定事項により、「上記構成では、1対のブラケット壁面部と1対のタンク壁面部とが、タンク載置状態で還元剤タンクの膨張を許容するように上記所定方向に離間して配置されるので、例えば、寒冷地等において還元剤タンクの内部の還元剤が凍結して還元剤タンクが膨張しても、ブラケットの破損を防止することができる。」(発明の詳細な説明の段落【0008】)、「また、1対のブラケット壁面部と1対のタンク壁面部とを上記所定方向に離間して配置することにより、還元剤タンクの膨張時のブラケットの破損を防止するので、例えば、厚肉化によりブラケットの剛性を向上させてブラケットの破損を防止する場合とは異なり、ブラケットの重量の増加を抑制することができる。」(発明の詳細な説明の段落【0009】)、「また、タンク載置状態でタンク底面部と係合するブラケット側係合部をブラケット底面部に形成し、タンク底面部とブラケット底面部のブラケット側係合部との係合が、ブラケットに対する還元剤タンクの少なくとも上記所定方向に沿った移動を規制するので、1対のブラケット壁面部と1対のタンク壁面部とを上記所定方向に離間して配置しても、還元剤タンクの安定性を確保することができる。」(発明の詳細な説明の段落【0010】)及び「また、還元剤タンク11の外面部16の凸部16aと第1バンド44の支持凹部44cとが係合し、還元剤タンク11の上面部17の凸部17aと第2バンド45の支持凹部45cとが係合する。この還元剤タンク11の凸部16aと第1バンド44の支持凹部44cとの係合、及び還元剤タンク11の凸部17aと第2バンド45の支持凹部45cとの係合は、ブラケット14に対する還元剤タンク11の前後方向の移動を規制するので、還元剤タンク11の前後方向の安定性を確実に確保することができる。」(発明の詳細な説明の段落【0036】)という、特有の効果を奏する。

したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本願発明は、原査定の引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-09-15 
出願番号 特願2015-118781(P2015-118781)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 菅野 京一小笠原 恵理村山 禎恒稲村 正義  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 北村 英隆
鈴木 充
発明の名称 還元剤タンクの取付構造  
代理人 米山 尚志  
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