ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G02B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 G02B |
---|---|
管理番号 | 1366037 |
異議申立番号 | 異議2019-700954 |
総通号数 | 250 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-10-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-11-26 |
確定日 | 2020-07-10 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6520091号発明「着色組成物、着色硬化膜及び表示素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6520091号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3、5?10、11?13〕について訂正することを認める。 特許第6520091号の請求項1?13に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6520091号の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成26年12月9日(先の出願に基づく優先権主張 平成25年12月16日)に特許出願され、令和元年5月10日にその特許権の設定登録がされ、令和元年5月29日に特許掲載公報が発行された。 その後、その特許について、令和元年11月26日付けで特許異議申立人特許業務法人朝日奈特許事務所(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和2年1月20日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である令和2年3月16日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)がなされたものである。 なお、令和2年3月19日付けで、異議申立人に対して訂正請求があった旨の通知を送付したが、指定した期間内に異議申立人からの意見書の提出はなされなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の趣旨 本件訂正の請求の趣旨は、「特許第6520091号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、3及び5?10、11?13について訂正することを求める。」というものである。 2 訂正の内容 本件訂正の内容は、以下のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「(B)バインダー樹脂」 と記載されているのを、 「(B)バインダー樹脂(但し、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体を除く。)」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3、5?10も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に 「ネガ型着色組成物」 と記載されているのを、 「画素形成用ネガ型着色組成物」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3、5?10も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項8に 「請求項1?7のいずれか一項に記載のネガ型着色組成物を用いて形成されたことを特徴とする、着色硬化膜。」 と記載されているのを、 「請求項1、3、5?7のいずれか一項に記載のネガ型着色組成物を用いて形成されたことを特徴とする、着色硬化膜。」 に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9、10も同様に訂正する。)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項9に 「画素、ブラックマトリックス又はブラックスペーサーである、請求項8に記載の着色硬化膜。」 と記載されているのを、 「画素である、請求項8に記載の着色硬化膜。」 に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項10も同様に訂正する。)。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項11として 「請求項2、4?7のいずれか一項に記載のネガ型着色組成物を用いて形成されたことを特徴とする、着色硬化膜。」 との記載を追加する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項12として 「画素、ブラックマトリックス又はブラックスペーサーである、請求項11に記載の着色硬化膜。」 との記載を追加する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項13として 「請求項11又は12に記載の着色硬化膜を具備することを特徴とする、表示素子。」 との記載を追加する。 (8) 一群の請求項 本件訂正請求は、一群の請求項〔1?10〕に対して請求されたものである。 3 訂正の目的の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1による訂正は、「(B)バインダー樹脂」について、「但し、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体を除く。」とする要件を付加することにより、「(B)バインダー樹脂」の範囲を縮小するものである。 したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものといえる。 (2)訂正事項2について 訂正事項2による訂正は、「ネガ型着色組成物」について、「画素形成用」とする限定を付加する訂正である。 したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものといえる。 (3)訂正事項3、5?7について 訂正事項3による訂正は、請求項2及び請求項4の記載を引用していた請求項8の記載を、請求項2及び請求項4の記載を引用しないものとするものであり、訂正事項5による訂正は、請求項1及び請求項3の記載を直接又は間接的に引用していた請求項8の記載を、請求項1及び請求項3の記載を直接又は間接的に引用しないものとして新たな請求項11とするものである。また、訂正事項6及び訂正事項7による訂正は、請求項1及び請求項3の記載を間接的に引用していた請求項9および請求項10の記載を、請求項1及び請求項3の記載を引用しないものとして新たな請求項12及び請求項13とするものである。 したがって、訂正事項3、5?7による訂正は、特許法第120条第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものといえる。 (4)訂正事項4について 訂正事項4による訂正は、「着色硬化膜」の選択肢から、「ブラックマトリックス」及び「ブラックスペーサー」を除くことにより、「着色硬化膜」の範囲を縮小するものである。 したがって、訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものといえる。 4 新規事項の有無 (1)訂正事項1、4について 本件訂正1による訂正は、請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、請求項に係る発明に包含される一部の事項のみをその請求項に記載した事項から除外することを明示するものであり、本件訂正4による訂正は、択一形式で記載された選択肢の一部を単に削除するにとどまるものである。そうすると、本件訂正1及び本件訂正4による訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかである。 したがって、訂正事項1及び訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 (2)訂正事項2について 本件特許の明細書の段落【0012】における「本発明の着色組成物をカラーフィルタを構成する各色画素の形成に用いる場合、(A)着色剤としては、輝度、コントラスト及び色純度の高い画素を容易に得られることから、有機顔料及び有機染料よりなる群から選択される1種以上を使用することが好ましい。」との記載に基づけば、訂正事項2による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかである。 したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 (3)訂正事項3、5?7について 訂正事項3による訂正は、請求項2及び請求項4の記載を引用しないものとするものであるから、新規事項を追加するものでないことは明らかである。また、訂正事項5?7による訂正も、請求項1及び請求項3の記載を直接又は間接的に引用しないものとするものであるから、新規事項を追加するものでないことは明らかである。 したがって、訂正事項3、5?7による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 5 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1による訂正は、「(B)バインダー樹脂」の範囲を縮小するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (2)訂正事項2について 訂正事項2による訂正は、「ネガ型着色組成物」について、「画素形成用」とする限定を付加する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (3)訂正事項3、5?7について 訂正事項3による訂正は、請求項2及び請求項4の記載を引用しないものとするものであり、訂正事項5?7による訂正も、請求項1及び請求項3の記載を直接又は間接的に引用しないものとするものであるから、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 したがって、訂正事項3、5?7による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (4)訂正事項4について 訂正事項4による訂正は、選択肢の一部を除くことにより、「着色硬化膜」の範囲を縮小するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 したがって、訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正は、前記第2のとおり、認められることになったので、本件特許の請求項1?13に係る発明(以下、それぞれ、「本件特許発明1」?「本件特許発明13」という。)は、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 (A)着色剤、 (B)バインダー樹脂(但し、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体を除く。)、 (C)ラジカル重合性化合物、 (D)光ラジカル発生剤、及び (E)下記式(E-1)?(E-3)及び(E-5)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物 を含有することを特徴とする、画素形成用ネガ型着色組成物 【化1】 〔式(E-1)?(E-3)及び(E-5)中、 E0は、それぞれ独立に、下記式(E0); *-(CR^(II)_(2))_(x)-O-R^(I) (E0) (式(E0)中、 R^(I)は、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基であり、 R^(II)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基であり、 xは、1又は2であり、 「*」は、芳香環に直接結合する結合手であることを表す。) で表される基であり、 Zは、それぞれ独立に、水酸基、炭素数1?6のアルコキシ基、炭素数2?8のアルコキシアルコキシ基又は炭素数2?6のアシルオキシ基であり、 Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?6のアルキル基であり、 Aは、それぞれ独立に、単結合又は-CR_(2)-(但し、Rは前記と同義である。)であり、 c1、c2、d1及びd2は、それぞれ独立に、0?5の整数であり、但し、c1+d1=0?5及びc2+d2=0?5の条件を満たし、かつc1及びc2のうちの少なくとも1つは0ではなく; e1?e3及びf1?f3は、それぞれ独立に、0?5の整数であり、但し、e1+f1=0?5、e2+f2=0?5及びe3+f3=0?5の条件を満たし、かつe1?e3のうちの少なくとも1つは0ではなく; g1?g4及びh1?h4は、それぞれ独立に、0?5の整数であり、但し、g1+h1=0?5、g2+h2=0?5、g3+h3=0?5及びg4+h4=0?5の条件を満たし、かつg1?g4のうちの少なくとも1つは0ではなく; k1、k2、L1及びL2は、それぞれ独立に、0?5の整数であり、 k3及びL3は、それぞれ独立に、0?4の整数であり、但し、k1+L1=0?5、k2+L2=0?5、及びk3+L3=0?4の条件を満たし、かつk1?k3のうちの少なくとも1つは0ではなく; mは、1?5の整数である。 但し、複数存在するZのうちの少なくとも1つは、水酸基である。〕 【請求項2】 (A)着色剤、 (B)バインダー樹脂、 (C)ラジカル重合性化合物、 (D)光ラジカル発生剤、及び (E)下記式(E-1)?(E-5)のそれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物 を含有することを特徴とする、ネガ型着色組成物。 【化2】 【化3】 〔式(E-1)?(E-5)中、 E0は、それぞれ独立に、下記式(E0); *-(CR^(II)_(2))_(x)-O-R^(I) (E0) (式(E0)中、 R^(I)は、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基であり、 R^(II)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基であり、 xは、1又は2であり、 「*」は、芳香環に直接結合する結合手であることを表す。) で表される基であり、 Zは、それぞれ独立に、炭素数1?6のアルコキシ基、炭素数2?8のアルコキシアルコキシ基又は炭素数2?6のアシルオキシ基であり、 Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?6のアルキル基であり、 Aは、それぞれ独立に、単結合又は-CR_(2)-(但し、Rは前記と同義である。)であり、 c1、c2、d1及びd2は、それぞれ独立に、0?5の整数であり、但し、c1+d1=0?5及びc2+d2=0?5の条件を満たし、かつc1及びc2のうちの少なくとも1つは0ではなく; e1?e3及びf1?f3は、それぞれ独立に、0?5の整数であり、但し、e1+f1=0?5、e2+f2=0?5及びe3+f3=0?5の条件を満たし、かつe1?e3のうちの少なくとも1つは0ではなく; g1?g4及びh1?h4は、それぞれ独立に、0?5の整数であり、但し、g1+h1=0?5、g2+h2=0?5、g3+h3=0?5及びg4+h4=0?5の条件を満たし、かつg1?g4のうちの少なくとも1つは0ではなく; i1?i3及びj1?j3は、それぞれ独立に、0?5の整数であり、 i4及びj4は、それぞれ独立に、0?4の整数であり、但し、i1+j1=0?5、i2+j2=0?5、i3+j3=0?5、及びi4+J4=0?4の条件を満たし、かつi1?i4のうちの少なくとも1つは0ではなく; k1、k2、L1及びL2は、それぞれ独立に、0?5の整数であり、 k3及びL3は、それぞれ独立に、0?4の整数であり、但し、k1+L1=0?5、k2+L2=0?5、及びk3+L3=0?4の条件を満たし、かつk1?k3のうちの少なくとも1つは0ではなく; mは、1?5の整数である。〕 【請求項3】 前記(E)式(E-1)?(E-3)及び(E-5)で表される化合物の含有割合が(B)バインダー樹脂100質量部に対して0.1?50質量部である、請求項1に記載のネガ型着色組成物。 【請求項4】 前記(E)式(E-1)?(E-5)で表される化合物の含有割合が(B)バインダー樹脂100質量部に対して0.1?50質量部である、請求項2に記載のネガ型着色組成物。 【請求項5】 前記(D)光ラジカル発生剤がO-アシルオキシム系化合物を含むものである、請求項1?4のいずれか一項に記載のネガ型着色組成物。 【請求項6】 前記(A)着色剤の含有割合が、着色組成物の固形分の合計を基準として15?45質量%である、請求項1?5のいずれか一項に記載のネガ型着色組成物。 【請求項7】 前記(A)着色剤が染料を含むものである、請求項1?6のいずれか一項に記載のネガ型着色組成物。 【請求項8】 請求項1、3、5?7のいずれか一項に記載のネガ型着色組成物を用いて形成されたことを特徴とする、着色硬化膜。 【請求項9】 画素である、請求項8に記載の着色硬化膜。 【請求項10】 請求項8又は9に記載の着色硬化膜を具備することを特徴とする、表示素子。 【請求項11】 請求項2、4?7のいずれか一項に記載のネガ型着色組成物を用いて形成されたことを特徴とする、着色硬化膜。 【請求項12】 画素、ブラックマトリックス又はブラックスペーサーである、請求項11に記載の着色硬化膜。 【請求項13】 請求項11又は12に記載の着色硬化膜を具備することを特徴とする、表示素子。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由 1 取消理由の概要 令和2年1月20日付けで通知した取消理由の概要は以下のとおりである。 (1)理由1(新規性) 本件特許の請求項1、3、5、6に係る発明は、先の出願前に、日本国内または外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 また、本件特許の請求項1、3、7に係る発明は、先の出願前に、日本国内または外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (2)理由2(進歩性) 本件特許の請求項1、3、5?10に係る発明は、先の出願前に、日本国内または外国において頒布された刊行物である甲第3号証、甲第4号証に記載された発明、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証、甲第2号証、甲第5号証に記載された発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) <引用文献等一覧> 甲第1号証:国際公開第2010/087238号 甲第2号証:国際公開第2006/098291号 甲第3号証:国際公開第2004/109403号 甲第4号証:特開2011-180472号公報 甲第5号証:国際公開第2011/067998号 (当合議体注:甲第1号証?甲第4号証は主引用例であり、甲第5号証は請求項6についての副引用例である。) 2 当審の判断 (1)甲号証の記載事項及び甲号証に記載された発明 ア 甲第1号証の記載事項 甲第1号証(国際公開第2010/087238号)には、以下の記載事項がある。なお、合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。他の甲号証についても同様である。 (ア)「技術分野 [0001] 本発明は、樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜、有機エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence:以下ELと記す)素子の絶縁層、有機EL素子を用いた表示装置の駆動用薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下TFTと記す)基板の平坦化膜、回路基板の配線保護絶縁膜、固体撮像素子のオンチップマイクロレンズや各種ディスプレイ・固体撮像素子用平坦化膜、回路基板用ソルダーレジストなどの用途に適した樹脂組成物に関する。 (中略) 発明が解決しようとする課題 [0005] 発色性化合物は、それ自体が熱により分子内構造変化を起こして、特定波長領域に吸収を発現するものである。最近では、さらに汎用性を高めるため、発色性化合物だけでなく、他の手段によって露光波長域に吸収を発現できる樹脂組成物が望まれている。そこで本発明は、特定の化合物の組み合わせにより、硬化前の樹脂膜の透過率を維持しながら、硬化膜の可視光領域における透過率を低減することができる樹脂組成物を提供することを目的とする。 課題を解決するための手段 [0006] すなわち本発明は、(a)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体またはポリベンゾオキサゾール前駆体、(b)1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレンまたは2,3-ジヒドロキシナフタレンおよび(c)下記一般式(1)で表される構造を有する熱架橋剤または下記一般式(2)で表される基を有する熱架橋剤を含有することを特徴とする樹脂組成物である。 (中略) 発明の効果 [0010] 本発明によれば、硬化前の樹脂膜の透過率を維持しながら、硬化膜の可視光領域における透過率を低減させることのできる樹脂組成物を得ることができる。」 (イ)「発明を実施するための形態 [0012] 本発明の樹脂組成物は、(a)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体またはポリベンゾオキサゾール前駆体、(b)1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレンまたは2,3-ジヒドロキシナフタレンおよび(c)前記一般式(1)で表される構造を有する熱架橋剤または前記一般式(2)で表される基を有する熱架橋剤を含有する。(a)成分の樹脂に対して(b)成分と(c)成分を組み合わせることにより、硬化膜を400?450nmにおいて発色させ、可視光領域における透過率を大幅に低減することができる。(a)?(c)の3つの成分のうちいずれが欠けても、目的とする400?450nmにおける発色は困難である。以下に、各成分について説明する。 [0013] 本発明の樹脂組成物は、(a)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体またはポリベンゾオキサゾール前駆体を含有する。これらを2種以上含有してもよいし、これらの2種以上の繰り返し単位を有する共重合体を含有してもよい。 (中略) [0041] 本発明の樹脂組成物は、(b)1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレンまたは2,3-ジヒドロキシナフタレンを含有する。これらを2種以上含有してもよい。水酸基を2個有することで、水酸基を1個有する場合に比べアルカリ現像性に優れ、感度を向上させることができる。また、縮合多環構造であるナフタレン構造は、単環化合物に比べ電子密度が高く、水酸基を2個有することで、さらに電子密度が高まり、後述する(c)熱架橋剤の求電子付加反応を効果的に起こすことができる。また、架橋反応形成後にπ電子の共役が2方向以上に広がり着色しやすいことから、後述する(c)熱架橋剤と組み合わせることにより、硬化膜の可視光領域における透過率を大幅に低減することができる。このような効果は、水酸基を1,5-位、1,6-位、1,7-位または2,3-位に有する場合に特に顕著となる。さらに、(c)熱架橋剤と前記(a)成分との架橋反応により、(b)成分の化合物を耐熱性に優れた(a)成分に定着させることができ、硬化膜の耐薬品性を高めることができる。 (中略) [0046] 本発明の樹脂組成物は、(c)下記一般式(1)で表される構造を有する熱架橋剤または下記一般式(2)で表される基を有する熱架橋剤を含有する。これらを2種以上含有してもよい。(c)成分の熱架橋剤は、(a)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体またはポリベンゾオキサゾール前駆体と(b)1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレンまたは2,3-ジヒドロキシナフタレンのそれぞれに架橋し、(a)(b)(c)の3成分をつなぎ合わせることで可視光領域の透過率を大幅に低減することができる。また、架橋反応により硬化膜の耐薬品性を高めることができる。 [0047][化6] [0048] 上記一般式(1)中、Rは2?4価の連結基を示す。R^(1)は炭素数1?20の1価の有機基、Cl、Br、IまたはFを示す。炭素数1?20の1価の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの炭素数1?6の1価の炭化水素基が好ましい。R^(2)およびR^(3)は、CH_(2)OR^(5)(R^(5)は水素原子または炭素数1?6の1価の炭化水素基)を示す。R^(4)は水素原子、メチル基またはエチル基を示す。sは0?2の整数、uは2?4の整数を示す。複数のR^(1)?R^(4)はそれぞれ同じでも異なってもよい。連結基Rの例を下に示す。 (中略) [0051] -N(CH_(2)OR^(6))_(t)(H)_(v) (2) 上記一般式(2)中、R^(6)は水素原子または炭素数1?6の1価の炭化水素基を示す。tは1または2、vは0または1を示す。ただし、t+vは1または2である。 [0052] 上記一般式(1)中、R^(2)およびR^(3)は、熱架橋基であるCH_(2)OR^(5)(R^(5)は水素原子または炭素数1?6の1価の炭化水素基)を表している。適度な反応性を残し、保存安定性に優れることから、R^(5)は炭素数1?4の1価の炭化水素基が好ましい。また、光酸発生剤や光重合開始剤などを含む感光性樹脂組成物においては、R^(5)はメチル基またはエチル基がより好ましい。 (中略) [0055] 一般式(1)で表される構造を有する熱架橋剤の好ましい例を下記に示す。 [0056] [化8] [0057] [化9] (中略) [0062] 本発明の樹脂組成物は、さらに(d)光酸発生剤や、(e)光重合開始剤および(f)エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物を含有してもよく、ポジ型やネガ型の感光性を付与することができる。 (中略) [0070] (e)光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4,4-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アルキル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、2-ヒドロキシ-3-(4-ベンゾイルフェノキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロペンアミニウムクロリド一水塩、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イロキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパナミニウムクロリド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,5,4’,5’-テトラフェニル-1,2-ビイミダゾール、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、メチルフェニルグリオキシエステル、η5-シクロペンタジエニル-η6-クメニル-アイアン(1+)-ヘキサフルオロフォスフェイト(1-)、ジフェニルスルフィド誘導体、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、4,4-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、4-ベンゾイル-4-メチルフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,3-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニル-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、p-t-ブチルジクロロアセトフェノン、ベンジルメトキシエチルアセタール、アントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、β-クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4-アジドベンザルアセトフェノン、2,6-ビス(p-アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6-ビス(p-アジドベンジリデン)-4-メチルシクロヘキサノン、2-フェニル-1,2-ブタジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、ナフタレンスルフォニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N-フェニルチオアクリドン、4,4-アゾビスイソブチロニトリル、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイルおよびエオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤の組み合わせなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。 (中略) [0072] (f)エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物として、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレートなどのアクリルモノマーを挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。 (中略) [0087] 本発明の樹脂組成物には、加熱により発色し、350nm以上700nm以下に吸収極大を示す熱発色性化合物や、350nm以上500nm未満に吸収極大を持たず500nm以上750nm以下に吸収極大を有する有機顔料または染料を含有することができる。熱発色性化合物の発色温度は120℃以上が好ましく、150℃以上が好ましい。熱発色性化合物の発色温度が高いほど、高温条件下での耐熱性に優れ、また長時間の紫外-可視光照射により退色することなく耐光性に優れる。 (中略) [0103] 本発明の樹脂組成物を硬化させて得られる硬化膜は、配線の絶縁膜や保護膜として好適に用いられる。例えば、ポリイミド、セラミックスなどのフィルムや基板の上に銅、アルミなどで配線を形成するプリンと基板における配線の絶縁膜や保護膜の用途、配線を部分的に半田付けするための保護膜の用途などが挙げられる。また、樹脂組成物が導電性フィラーを含有する場合には、配線材料として使用することもできる。 [0104] また、本発明の樹脂組成物を硬化させて得られる硬化膜は、TFTが形成された基板、平坦化膜、絶縁層および表示素子をこの順に有する表示装置の平坦化膜や絶縁層として、好適に用いられる。 (中略) [0105] また、本発明の樹脂組成物を硬化させて得られる硬化膜は、TFTが形成された基板、絶縁層および表示素子をこの順に有する表示装置の絶縁層として、好適に用いられる。 (中略) [0107] さらに、本発明の樹脂組成物を硬化させて得られる硬化膜は、LSIなど半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、デバイスをパッケージに封入する際の接着剤やアンダーフィル剤、銅のマイグレーションを防ぐキャップ剤、固体撮像素子のオンチップマイクロレンズや各種ディスプレイ・固体撮像素子用平坦化膜などの用途に好ましく用いることができる。」 (ウ)「実施例 [0108] 以下実施例等をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、実施例中の樹脂組成物の評価は以下の方法により行った。 (中略) [0119] 合成例3 アルコキシメチル基含有化合物(A-1)の合成 (1)1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(本州化学工業(株)製、TrisP-HAP)103.2g(0.4モル)を、水酸化ナトリウム80g(2.0モル)を純水800gに溶解させた溶液に溶解させた。完全に溶解させた後、20?25℃で36?38重量%のホルマリン水溶液686gを2時間かけて滴下した。その後20?25℃で17時間撹拌した。これに硫酸98gと水552gを加えて中和を行い、そのまま2日間放置した。放置後に溶液に生じた針状の白色結晶をろ過で集め、水100mLで洗浄した。この白色結晶を50℃で48時間真空乾燥した。乾燥した白色結晶を島津製作所(株)製の高速液体クロマトグラフィーで、カラムにODSを、展開溶媒にアセトニトリル/水=70/30を用い、254nmで分析したところ、出発原料は完全に消失し、純度92%であることがわかった。さらに、重溶媒にDMSO-d6を用いてNMR(日本電子(株)製、GX-270)により分析したところ、ヘキサメチロール化したTrisP-HAPであることがわかった。 [0120] (2)次に、このようにして得た化合物をメタノール300mLに溶解させ、硫酸2gを加えて室温で24時間撹拌した。この溶液にアニオン型イオン交換樹脂(Rohm and Haas社製、アンバーリストIRA96SB)15gを加え1時間撹拌し、濾過によりイオン交換樹脂を除いた。その後、乳酸エチル500mLを加え、ロータリーエバポレーターでメタノールを除き、乳酸エチル溶液にした。この溶液を室温で2日間放置したところ、白色結晶が生じた。 (中略) [0125] 合成例5 アルコキシメチル基含有化合物(A-3)の合成 (1)合成例3(1)と同様にして、純度92%のヘキサメチロール化したTrisP-HAPを得た。 [0126] (2)次に、メタノール300mLのかわりにエタノール300mLを用いた以外は合成例3(2)と同様にして、白色結晶を得た。得られた白色結晶を高速液体クロマトグラフィー法により分析したところ、下記式で表される、純度98%のTrisP-HAPのエトキシメチル化合物(アルコキシメチル基含有化合物(A-3))であることがわかった。 [0127] [化19] (中略) [0129] 実施例、比較例で使用したその他の熱架橋剤および酸発生剤は以下のとおりである。 [0130] [化20] [0131] 実施例1 乾燥窒素気流下、BAHF32.9g(0.09モル)をN-メチルピロリドン(NMP)500gに溶解させた。ここに3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(マナック(株)製、ODPA)31.0g(0.1モル)をNMP50gとともに加えて、30℃で2時間撹拌した。その後、3-アミノフェノール(東京化成(株)製)2.18g(0.02モル)を加え、40℃で2時間撹拌を続けた。さらにピリジン(東京化成(株)製)5gをトルエン(東京化成(株)製30g)に希釈して、溶液に加え、冷却管を付け系外に水をトルエンとともに共沸で除去しながら溶液の温度を120℃にして2時間、さらに180℃で2時間反応させた。この溶液の温度を室温まで低下させ、水3Lに溶液を投入し、白色の粉体を得た。この粉体をろ過で集め、さらに水で3回洗浄を行った。洗浄後、白色粉体を50℃の真空乾燥機で72時間乾燥させ、ポリイミドを得た。 (中略) [0151] 実施例11 実施例1で得たポリイミド10gに、1,7-ジヒドロキシナフタレン5g、合成例5で得られたアルコキシメチル基含有化合物(A-3)4g、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学工業(株)製、NKエステルBPE-100)2g、トリメチロールプロパントリアクリレート0.5g、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.1g、EL20gとGBL20gを加えてネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のように、硬化前後の膜の透過率評価、耐薬品性評価および感度評価を行った。450nmにおける透過率は、硬化前は94%、硬化後は66%であった。これより透過率変化量は28%であった。膜減り量は0.1μm、感度は200mJ/cm^(2)であった。また10μm以上のパターンが残存していた。 [0152] 実施例1?11および比較例1?6の組成と評価結果を表1?3に示す。 (中略) [0154] [表2] 」 (エ)「請求の範囲 [請求項1](a)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体またはポリベンゾオキサゾール前駆体、(b)1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレンまたは2,3-ジヒドロキシナフタレンおよび(c)下記一般式(1)で表される構造を有する熱架橋剤または下記一般式(2)で表される基を有する熱架橋剤を含有する樹脂組成物。 [化1] (上記一般式(1)中、Rは2?4価の連結基を示す。R^(1)は炭素数1?20の1価の有機基、Cl、Br、IまたはFを示す。R^(2)およびR^(3)は、CH_(2)OR^(5)(R^(5)は水素原子または炭素数1?6の1価の炭化水素基)を示す。R^(4)は水素原子、メチル基またはエチル基を示す。sは0?2の整数、uは2?4の整数を示す。) -N(CH_(2)OR^(6))_(t)(H)_(v) (2) (上記一般式(2)中、R^(6)は水素原子または炭素数1?6の1価の炭化水素基を示す。tは1または2、vは0または1を示す。ただし、t+vは1または2である。) (中略) [請求項3]請求項1記載の樹脂組成物に、さらに(e)光重合開始剤および(f)エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物を含有するネガ型感光性樹脂組成物。 (中略) [請求項5]薄膜トランジスタが形成された基板、請求項1?4のいずれか記載の樹脂組成物を硬化させて得られる平坦化膜および/または絶縁層、および表示素子をこの順に有する表示装置。」 イ 甲第1号証に記載された発明 (ア)甲1-1発明 甲第1号証の実施例11(段落[0151]等)に基づけば、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1-1発明」という。)が記載されていると認められる。 「ポリイミド10gに、1,7-ジヒドロキシナフタレン5g、以下のアルコキシメチル基含有化合物(A-3)4g、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学工業(株)製、NKエステルBPE-100)2g、トリメチロールプロパントリアクリレート0.5g、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.1g、乳酸エチル(EL)20gとガンマブチロラクトン(GBL)20gを加えて得たネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物のワニス。 アルコキシメチル基含有化合物(A-3) 」 (イ)甲1-2発明 甲第1号証の特許請求の範囲の請求項1及び請求項3の記載に基づけば、甲1号証には、熱架橋剤として一般式(1)で表される構造を有する熱架橋剤を選択した請求項3に係る発明として、次の発明(以下、「甲1-2発明」という。)が記載されていると認められる。 「(a)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体またはポリベンゾオキサゾール前駆体、(b)1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレンまたは2,3-ジヒドロキシナフタレンおよび(c)下記一般式(1)で表される構造を有する熱架橋剤、(e)光重合開始剤および(f)エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物を含有するネガ型感光性樹脂組成物。 [化1] (上記一般式(1)中、Rは2?4価の連結基を示す。R^(1)は炭素数1?20の1価の有機基、Cl、Br、IまたはFを示す。R^(2)およびR^(3)は、CH_(2)OR^(5)(R^(5)は水素原子または炭素数1?6の1価の炭化水素基)を示す。R^(4)は水素原子、メチル基またはエチル基を示す。sは0?2の整数、uは2?4の整数を示す。)」 ウ 甲第2号証の記載事項 甲第2号証(国際公開第2006/098291号)には、以下の記載事項がある。 (ア)「技術分野 [0001] 本発明は、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層、回路基板の配線保護絶縁膜などに適した感光性樹脂組成物に関するものである。さらに詳しくは、露光前はアルカリ水溶液に容易に溶解し、露光するとアルカリ水溶液に不溶となるネガ型の感光性樹脂組成物に関する。 (中略) 発明が解決しょうとする課題 [0006] 本発明は、アルカリ現像可能で、優れた耐熱性、強度および伸度を有するポリイミド膜を形成することのできる感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。 課題を解決するための手段 [0007] 本発明は、(a)主鎖末端に、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を有するポリイミド、(b1)一般式(1)で表される不飽和結合含有重合性化合物および(c)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物である。 [0008] [化1] [0009] (式中、R^(1)は少なくとも一つ以上の芳香環を有する1?3価の有機基を表し、R^(2)?R^(4)は不飽和結合を有する重合性基を表し、R^(5)?R^(7)は2価の有機基を表す。R^(2)?R^(4)およびR^(5)?R^(7)はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。また、o、p、qは0?1の整数を表し、r、s、tはそれぞれ独立に1?10の整数を表す。ただしo+p+q≧である。) 発明の効果 [0010] 本発明によれば、アルカリ水溶液で現像可能であり、高温加熱処理によりポリマーをイミド化する必要がなく、かつ、パターン加工性に優れた感光性樹脂組成物が得られる。また、この感光性樹脂組成物を用いて、優れた耐熱性、強度および伸度を有する耐熱性樹脂組成物被膜を形成することができる。さらに、脂環式炭化水素基を有する不飽和結合含有重合性化合物を組み合わせることにより、高解像度なネガ型の感光性樹脂組成物を得ることができる。」 (イ)「発明を実施するための最良の形態 [0011] 本発明の感光性樹脂組成物は、(a)主鎖末端に、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を有するポリイミド、(b1)一般式(1)で表される不飽和結合含有重合性化合物および(c)光重合開始剤を含有する。この感光性樹脂組成物は、露光前はアルカリ現像液に容易に溶解するが、露光後はアルカリ現像液に不溶になるために、現像による膜減りの少ないパターンを形成することができる。また、この感光性樹脂組成物は、ポリイミドを含有するため、ポリイミド前駆体を含有する樹脂組成物と比較して、加熱あるいは適当な触媒により、ポリイミド前駆体を閉環反応によりポリイミドに転換する必要がない。それ故、この感光性樹脂組成物は、高温処理が不要であり、かつ、イミド閉環反応による硬化収縮起因のストレスが小さいので、キュア時の熱収縮性およびクラック耐性が向上する。さらに、この感光性樹脂組成物は、キュア後のポリイミド膜のストレス耐性に優れるので、ポリイミド前駆体を含有する樹脂組成物よりも容易に厚膜を形成することができる。 (中略) [0076] 本発明の感光性樹脂組成物は、さらに(d)熱架橋性化合物を含有することが好ましい。(d)熱架橋性化合物を含有することで、熱処理時に熱架橋反応が起きるため、収縮率を小さくすることができる。(d)の熱架橋性化合物の例としては、一般式(6)で表される熱架橋性基を有する化合物、およびべンゾオキサジン化合物があげられる。 [0077] [化12] [0078](式中、R^(13)は水素原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数4?20の脂環式炭化水素基またはR^(14)CO基を表す。また、R^(14)は、炭素数1?20のアルキル基を表す。)熱架橋性基を有する化合物としては、熱架橋性基を少なくとも2つ含有するものが好ましい。 (中略) [0079] 下記に本発明で使用するのに特に好ましい代表的な熱架橋性化合物の構造を示した。 [0080] [化13] [0081] [化14] (中略) [0085] また、本発明の感光性樹脂組成物は(e)着色剤をさらに含有することもできる。着色剤を含有することで、有機電界発光素子の絶縁層に用いた場合は、発光エリアからの迷光を防止する作用があり、回路基板用のソルダーレジストに用いた場合は、基板上の回路配線を隠す目隠しの作用がある。 (中略) [0117] 本発明の感光性樹脂組成物により形成した耐熱性樹脂被膜は、半導体のパッシベーション膜、半導体素子の保護膜、高密度実装用多層配線の層間絶縁膜、回路基板の配線保護絶縁膜、有機電界発光素子を用いた表示装置の基板上の電極の保護絶縁膜などの用途に用いることができる。」 (ウ)「実施例 [0118] 以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、実施例中の感光性樹脂組成物の評価は以下の方法により行った。 (中略) [0137] 各実施例、比較例に使用した熱架橋性化合物剤、フェノール性水酸基を有する化合物および着色剤を下記に示した。 [0138][化19] [0139] 各実施例および比較例に使用した重合性化合物を下記に示した。 [0140][化20] (中略) [0144] 実施例4 乾燥窒素気流下、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAHF)30.03g(0.082モル)、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.24g(0.005モル)、末端封止剤として、3-ヒドロキシフタル酸無水物(東京化成工業(株)製)4.1g(0.025モル)をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)100gに溶解させた。ここにビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物31.02g(0.1モル)をNMP30gとともに加えて、20℃で1時間攪拌し、次いで50℃で4時間攪拌した。その後、180℃で5時間攪拌した。攪拌終了後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、200℃の真空乾燥機で5時間乾燥した。得られたポリマー粉体を、赤外吸収スペクトルで測定したところ、1780cm^(-1)付近、1377cm^(-1)付近にポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピークが検出された。 (中略) [0145] 実施例5 実施例4で得られたポリマー粉体10g、光重合開始剤の2-ベンジル-2-ジメチルアミノ1-1(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン 3g、熱架橋性化合物のHMOM-TPHAP(商品名、本州化学(株)製)1.5g、着色剤のOIL BLUE 2N(商品名、オリエント化学工業(株)製)0.1g、着色剤のCVL(商品名、保土谷化学工業(株)製)0.2g、PB-4EA(商品名、共栄社(株)製、不飽和結合含有重合性化合物)1gおよびイソボルニルアクリレート(不飽和結合含有重合性化合物)4gを乳酸エチル13gに溶解させてネガ型感光性ポリイミド組成物のワニスEを得た。得られたワニスEを用いて前記のように、シリコンウェハー上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、露光後ベーク、アルカリ現像および200℃で60分熱処理を行い、アル力リ現像性、残膜率、収縮残膜率、解像度、破断強度、弾性率、破断伸度および耐熱性について評価を行った。 (中略) [0155] 実施例15 乾燥窒素気流下、2,2-ビス(3-アミノ--4-ヒドロキシフェニル)へキサフルオロプロパン(BAHF)30.03g(0.082モル)、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.24g(0.005モル)および末端封止剤として、3-アミノフェノール(東京化成工業(株)製)2.73g(0.025モル)をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)100gに溶解させた。ここにビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物31.02g(0.10モル)をNMP30gとともに加えて、20℃で1時間攪拌し、次いで50℃で4時間攪拌した。その後、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール15.19g(0.127モル)をNMP4gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、80℃で7時間攪拌した。反応終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー粉体の沈殿をろ過で得た。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、ポリマー粉体を80℃の真空乾燥機で20時間乾燥した。得られたポリマー粉体を、赤外吸収スぺクトルで測定したところ、1780cm^(-1)付近、1377cm^(-1)付近にポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピークが検出された。このようにして得られたポリマー粉体についてまず、イミド化率を調べた。次に、このポリマー粉体10g、実施例5で得られたポリマー粉体5g、光重合開始剤の1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(o-ベンゾイルオキシム)0.4g、熱架橋性化合物のHMOM-TPHAP(商品名、本州化学工業(株)製)1.5g、BIR-PC(商品名、旭有機材工業(株)製)1.5g、エポキシエステル3000A(商品名、共栄社(株)製、不飽和結合含有重合性化合物)7gおよびイソボルニルアクリレート(不飽和結合含有重合性化合物)3gをプロピレングリコールモノメチルエーテル10gに溶解させ、ネガ型感光性ポリイミド組成物のワニスOを得た。得られたワニスOを用いて前記のように、シリコンウェハー上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、露光後ベーク、アルカリ現像および180℃で60分熱処理を行い、アルカリ現像性、残膜率、収縮残膜率、解像度、破断強度、弾性率、破断伸度および耐熱性について評価を行った。 (中略) [0166] 実施例1?15、比較例1?9における感光性樹脂組成物の組成について以下の表1?3に示した。 (中略) [0167] [表1] (中略) 」 (エ)「 請求の範囲 [1](a)主鎖末端に、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を有するポリイミド、(b1)一般式(1)で表される不飽和結合含有重合性化合物および (c)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物。 [化1] (式中、R^(1)は少なくとも一つの芳香環を有する1?3価の有機基を表し、R^(2)?R^(4)は不飽和結合を有する重合性基を表し、R^(5)?R^(7)は2価の有機基を表す。R^(2)?R^(4)およびR^(5)?R^(7)はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。また、o、pおよびqは0?1の整数を表し、r、sおよびtはそれぞれ独立に1?10の整数を表す。ただしo+p+q≧1である。) (中略) [3](d)熱架橋性化合物をさらに含有する請求項1または2記載の感光性樹脂組成物。 (中略) [6](d)成分の熱架橋性化合物が、一般式(6)で表される有機基を含有する請求項3記載の感光性樹脂組成物。 [化3] (式中、R^(13)は水素原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数4?20の脂環式炭化水素基またはR^(14)CO基を表す。また、R^(14)は、炭素数1?20のアルキル基を表す。)」 エ 甲第2号証に記載された発明 (ア)甲2-1発明 甲第2号証の実施例5(記載事項(ウ)段落[0145]等)に基づけば、甲2号証には、次の発明(以下、「甲2-1発明」という。)が記載されていると認められる。 「1780cm^(-1)付近、1377cm^(-1)付近にポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピークが検出されるポリマー粉体10g、光重合開始剤の2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン 3g、熱架橋性化合物のHMOM-TPHAP(商品名、本州化学(株)製)1.5g、着色剤のOIL BLUE 2N(商品名、オリエント化学工業 (株)製)0.1g、着色剤のCVL(商品名、保土谷化学工業 (株)製)0.2g、BP-4EA(商品名、共栄社(株)製、不飽和結合含有重合性化合物)1gおよびイソボルニルアクリレート(不飽和結合含有重合性化合物)4gを乳酸エチル13gに溶解させて得たネガ型感光性ポリイミド組成物のワニスE。 」 (イ)甲2-2発明 甲第2号証の実施例15(記載事項(ウ)段落[0155]等)に基づけば、甲2号証には、次の発明(以下、「甲2-2発明」という。)が記載されていると認められる。 「乾燥窒素気流下、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)へキサフルオロプロパン(BAHF)30.03g(0.082モル)、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.24g(0.005モル)および末端封止剤として、3-アミノフェノール(東京化成工業(株)製)2.73g(0.025モル)をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)100gに溶解させ、ここにビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物31.02g(0.10モル)をNMP30gとともに加えて、20℃で1時間攪拌し、次いで50℃で4時間攪拌し、その後、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール15.19g(0.127モル)をNMP4gで希釈した溶液を10分かけて滴下した後、80℃で7時間攪拌し、反応終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー粉体の沈殿をろ過で得て、 次に、この1780cm^(-1)付近、1377cm^(-1)付近にポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピークが検出されるポリマー粉体10g、甲2-1発明で得られたポリマー粉体5g、光重合開始剤の1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(o-ベンゾイルオキシム)0.4g、熱架橋性化合物のHMOM-TPHAP(商品名、本州化学工業(株)製)1.5g、BIR-PC(商品名、旭有機材工業(株)製)1.5g、エポキシエステル3000A(商品名、共栄社(株)製、不飽和結合含有重合性化合物)7gおよびイソボルニルアクリレート(不飽和結合含有重合性化合物)3gをプロピレングリコールモノメチルエーテル10gに溶解させて得た、ネガ型感光性ポリイミド組成物のワニスO。 」 (ウ)甲2-3発明 甲第2号証の特許請求の範囲の請求項1、3、6の記載(記載事項(エ))に基づけば、甲第2号証には、請求項1の記載を請求項3の記載を介して引用する請求項6に係る発明として、次の発明(以下、「甲2-3発明」という。)が記載されていると認められる。 「(a)主鎖末端に、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を有するポリイミド、(b1)一般式(1)で表される不飽和結合含有重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)一般式(6)で表される有機基を含有する熱架橋性化合物を含有する感光性樹脂組成物。 [化1] (式中、R^(1)は少なくとも一つの芳香環を有する1?3価の有機基を表し、R^(2)?R^(4)は不飽和結合を有する重合性基を表し、R^(5)?R^(7)は2価の有機基を表す。R^(2)?R^(4)およびR^(5)?R^(7)はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。また、o、pおよびqは0?1の整数を表し、r、sおよびtはそれぞれ独立に1?10の整数を表す。ただしo+p+q≧1である。) [化3] (式中、R^(13)は水素原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数4?20の脂環式炭化水素基またはR^(14)CO基を表す。また、R^(14)は、炭素数1?20のアルキル基を表す。)」 オ 甲第3号証の記載事項 甲第3号証(国際公開第2004/109403号)には、以下の記載事項がある。なお、行番号はパンフレットの欄外に記載されたものに基づく。 (ア)「技術分野 本発明は、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層、回路基板の配線保護絶縁膜などに適した、耐熱性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、紫外線で、未露光の部分は、アルカリ水溶液に容易に溶解し、露光した部分がアル力リ水溶液に不溶となるネガ型の感光性樹脂組成物及びそれを用いた電子部品、表示装置に関する。」(明細書第1頁第4?9行) (イ)「発明の開示 本発明は、紫外線で、未露光の部分は、アルカリ水溶液に容易に溶解し、露光した部分がアル力リ水溶液に不溶となるネガ型の感光性樹脂組成物を製造するに際し、特定の構造を有するアルカリ可溶性かつ有機溶剤可溶なポリイミドを用いる。当該ポリイミドが、露光前はアルカリ現像液に容易に溶解し、露光するとアル力リ現像液に不溶となり、微細パターンを再現性良く解像する組成物を提供することを目的とする。 すなわち本発明は、(a)ポリマー主鎖末端に、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基より選ばれる基を少なくとも一つ有するポリイミドと、(b)不飽和二重結合官能基および/または不飽和三重結合官能基からなる重合性基を有する化合物と、(c)光重合開始剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物である。 本発明によれば、ポリマー末端にアルカリ可溶性基を有しかつ、ポリマー分子量を適度に調節することによって、有機溶剤に可溶だけでなくアル力リ可溶なポリイミドを得ることができ、また、これをベースポリマーに用いたことから、アルカリ水溶液で現像後に、高温加熱処理により、ポリマーをイミド化する必要がなく、パターン加工性、熱収縮性、クラック耐性、ストレス耐性、熱処理の実用性に優れたネガ型の感光性樹脂組成物を得ることができ、得られた組成物は特に、半導体素子の保護膜、層間絶縁膜、ディスプレイの絶縁層、回路基板の配線保護絶縁膜に好適に用いることができる。」(明細書第2頁第19行?第3頁第9行) (ウ)「 本発明で用いられる(d)の熱架橋性化合物としては、一般式(5)で表される熱架橋性基を有する化合物、およびべンゾオキサジン化合物があげられる。 (式中R^(6)は水素原子、炭素数1から20までのアルキル基、炭素数4から20までの脂環式基またはR^(7)CO基を示す。また、R^(7)は、炭素数1から20までのアルキル基を示す。)」(明細書第21頁第12?17行) (エ)「 下記に本発明で使用するのに特に好ましい代表的な熱架橋性化合物の構造を示す。 」(明細書第23頁第15行?第24頁最終行) (オ)「 請求の範囲 1. (a)ポリマー主鎖未端に、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基より選ばれる基を少なくとも一つ有するポリイミドと、(b)不飽和二重結合官能基および/または不飽和三重結合官能基からなる重合性基を有する化合物と、(c)光重合開始剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。 2. (d)熱架橋性化合物を含有することを特徴とする請求の範囲第1項記載の感光性樹脂組成物。 3. (e)着色剤を含有することを特徴とする請求の範囲第1項または第2項記載の感光性樹脂組成物。」 カ 甲第3号証に記載された発明 甲第3号証の記載事項(オ)に基づけば、甲第3号証には、請求項1の記載を請求項2を介して引用する請求項3に係る発明として、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 「(a)ポリマー主鎖未端に、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基より選ばれる基を少なくとも一つ有するポリイミドと、(b)不飽和二重結合官能基および/または不飽和三重結合官能基からなる重合性基を有する化合物と、(c)光重合開始剤と、(d)熱架橋性化合物と、(e)着色剤を含有する感光性樹脂組成物。」 キ 甲第4号証の記載事項 甲第4号証(特開2011-180472号公報)には、以下の記載事項がある。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (a)アルカリ可溶性ポリイミド、(b)不飽和結合含有重合性化合物、(c)平均粒子径が20nm以上1μm以下である無機粒子および(d)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物フィルム。 (中略) 【請求項3】 さらに、(e)熱架橋性化合物を含有する請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物フィルム。 【請求項4】 請求項1?3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物フィルムを加熱硬化して形成された絶縁膜。」 (イ)「【技術分野】 【0001】 本発明は、感光性樹脂組成物フィルムに関する。さらに詳しくは、パターン加工後も絶縁材料として用いる永久レジストを形成するのに適した感光性樹脂組成物フィルムに関する。 (中略) 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、上記のような材料を用いてパターン加工をした際、パターン加工マージンが狭く、順テーパーまたは矩形状のパターンを得ることは難しかった。 【0007】 かかる状況に鑑み、本発明は厚膜であっても、高解像度で、順テーパーまたは矩形状のパターンを形成し、優れた耐熱性を有する膜を形成することができる感光性樹脂組成物フィルムを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 すなわち本発明は、(a)アルカリ可溶性ポリイミド、(b)不飽和結合含有重合性化合物、(c)平均粒子径が20nm以上1μm以下である無機粒子および(d)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物フィルムである。 【発明の効果】 【0009】 本発明によれば、厚膜であっても、高解像度で、順テーパーまたは矩形状のパターンを形成し、熱硬化後に優れた耐熱性を有する膜を形成することができる感光性樹脂組成物フィルムを得ることができる。本発明の感光性樹脂組成物フィルムは、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、回路基板の配線保護絶縁膜などの永久レジストに好適に用いることができる。更には、パターン形成後の基板、ガラス、半導体素子等と被着体とを熱圧着することで接着剤用途に好適に用いることができる。」 (ウ)「【0047】 本発明の感光性樹脂組成物フィルムは、さらに(e)熱架橋性化合物を含有することが好ましい。(e)熱架橋性化合物を含有することで、熱処理時に熱架橋反応が起きるため、硬化膜の耐熱性が向上する。(e)熱架橋性化合物の例としては、下記に示した構造で表される熱架橋性基を有する化合物、およびベンゾオキサジン化合物があげられる。 【0048】 【化5】 【0049】 式中、R^(10)は水素原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数4?20の脂環式炭化水素基またはR^(11)CO基を表す。また、R^(11)は炭素数1?20のアルキル基を表す。 (中略) 【0051】 下記に本発明で使用するのに特に好ましい代表的な熱架橋性化合物の構造を示した。 【0052】 【化6】 【0053】 【化7】 」 ク 甲第4号証に記載された発明 (ア)甲4号証の特許請求の範囲の請求項1及び請求項3の記載に基づけば、請求項1の記載を引用する請求項3に係る発明として、次の発明(以下、「甲4-1発明」という。)が記載されていると認められる。 「(a)アルカリ可溶性ポリイミド、(b)不飽和結合含有重合性化合物、(c)平均粒子径が20nm以上1μm以下である無機粒子および(d)光重合開始剤、(e)熱架橋性化合物を含有する感光性樹脂組成物フィルム。」 (2)対比・判断 ア 甲1-1発明を主引例発明とした場合 (ア)本件特許発明1 a 対比 本件特許発明1と甲1-1発明とを対比する。 (a)着色剤 甲1-1発明の「1,7-ジヒドロキシナフタレン」は、技術的にみて、着色し、硬化膜の可視光領域における透過率を低減するものであるから、着色剤として機能するものといえる(当合議体注:甲第1号証の記載事項(イ)の「本発明の樹脂組成物は、(b)1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレンまたは2,3-ジヒドロキシナフタレンを含有する。・・・また、架橋反応形成後にπ電子の共役が2方向以上に広がり着色しやすいことから、後述する(c)熱架橋剤と組み合わせることにより、硬化膜の可視光領域における透過率を大幅に低減することができる。このような効果は、水酸基を1,5-位、1,6-位、1,7-位または2,3-位に有する場合に特に顕著となる。」(段落[0041])との記載からも理解される事項である。)。 したがって、甲1-1発明の「1,7-ジヒドロキシナフタレン」は、本件特許発明1の「(A)着色剤」に相当する。 (b)バインダー樹脂 甲1-1発明の「ポリイミド」は、技術的にみて、本件特許発明1の「(B)バインダー樹脂」に相当する。 (c)ラジカル重合性化合物 甲1-1発明の「エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジメタクリレート」及び「トリメチロールプロパントリアクリレート」は、その名称のとおり、「(f)エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物」である(当合議体注:甲第1号証の記載事項(イ)段落[0072]の記載からも確認できる。)。 そうすると、甲1-1発明の「エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジメタクリレート」及び「トリメチロールプロパントリアクリレート」は、本件特許発明1の「(C)ラジカル重合性化合物」に相当する。 (d)光ラジカル発生剤 甲1-1発明の「1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]」は、技術的にみて、本件特許発明1の「(D)光ラジカル発生剤」に相当する。 (e)(E-1)?(E-3)及び(E-5)で表される化合物 甲1-1発明の「アルコキシメチル基含有化合物(A-3)」は、その化学構造からみて、本件特許発明1における式(E-2)で表される化合物であって、「E0」が「*-(CR^(II)_(2))_(x)-O-R^(I)(R^(I)が炭素数2のアルキル基であり、R^(II)が水素原子であり、xが1であり、「*」は、芳香環に直接結合する結合手であることを表す。)で表される基」であり、「Z」が水酸基であり、「R」が炭素数1のアルキル基であり、「e1?e3」が2、「f1?f3」が1の整数であり、「e1+f1=0?5、e2+f2=0?5及びe3+f3=0?5の条件を満たし、かつe1?e3のうちの少なくとも1つは0ではなく;但し、複数存在するZのうちの少なくとも1つは、水酸基である。〕」という要件を満たす化合物である。 そうすると、甲1-1発明の「アルコキシメチル基含有化合物(A-3)」は、本件特許発明1の「(E)下記式(E-1)?(E-3)及び(E-5)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物」とする要件を満たしている。 (f)画素形成用ネガ型着色組成物 甲1-1発明の「ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物」は、前記(ア)?(オ)において言及した化合物に「乳酸エチル(EL)20gとガンマブチロラクトン(GBL)20gを加えて得た」組成物である。 そうすると、甲1-1発明の「ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物」と本件特許発明1の「画素形成用ネガ型着色組成物」とは、「ネガ型着色組成物」である点で共通する。 (g)一致点及び相違点 以上より、本件特許発明1と甲1-1発明とは、 「(A)着色剤、 (B)バインダー樹脂、 (C)ラジカル重合性化合物、 (D)光ラジカル発生剤、及び (E)下記式(E-1)?(E-3)及び(E-5)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物 を含有する、ネガ型着色組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1-1-1]「(B)バインダー樹脂」が、本件特許発明1では、「ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体を除く。」とされるのに対し、甲1-1発明では、「ポリイミド」である点。 [相違点1-1-2]ネガ型着色組成物が、本件特許発明1は「画素形成用」であるのに対し、甲1-1発明は、そのように特定されていない点。 b 判断 事案に鑑みて、上記[相違点1-1-1]について検討する。 甲第1号証の記載事項(ア)には、課題を解決する手段として、「すなわち本発明は、(a)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体またはポリベンゾオキサゾール前駆体、(b)1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレンまたは2,3-ジヒドロキシナフタレンおよび(c)下記一般式(1)で表される構造を有する熱架橋剤または下記一般式(2)で表される基を有する熱架橋剤を含有することを特徴とする樹脂組成物である。」(段落[0006])と記載されている。当該記載に基づけば、甲1-1発明において、バインダー樹脂として「ポリイミド」を用いることは、課題解決のために欠くことのできないものといえる。 そうすると、当業者であっても、甲1-1発明における「ポリイミド」を、「ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体」以外のバインダー樹脂とすることを想到し得たということはできない。 c むすび したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、甲1-1発明に基づいて容易に発明できたものということができない。 (イ)本件特許発明3、5?10 本件特許発明3、5?10は、「(B)バインダー樹脂」について、本件特許発明1と同じ「ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体を除く。」とする要件を具備している。 そうすると、本件特許発明3、5?10も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明できたということができない。 イ 甲1-2発明又は甲1-3発明を主引例発明とした場合 (ア)本件特許発明1 a 対比 本件特許発明1と甲1-2発明とを対比する。 (a)着色剤 甲1-2発明の「(b)1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレンまたは2,3-ジヒドロキシナフタレン」は、技術的にみて、着色し、硬化膜の可視光領域における透過率を低減するものであるから、着色剤として機能するものといえる(当合議体注:甲第1号証の記載事項(イ)の「本発明の樹脂組成物は、(b)1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレンまたは2,3-ジヒドロキシナフタレンを含有する。・・・また、架橋反応形成後にπ電子の共役が2方向以上に広がり着色しやすいことから、後述する(c)熱架橋剤と組み合わせることにより、硬化膜の可視光領域における透過率を大幅に低減することができる。このような効果は、水酸基を1,5-位、1,6-位、1,7-位または2,3-位に有する場合に特に顕著となる。」(段落[0041])との記載からも理解される事項である。)。 したがって、甲1-2発明の「(b)1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレンまたは2,3-ジヒドロキシナフタレン」は、本件特許発明1の「(A)着色剤」に相当する。 (b)バインダー樹脂 甲1-2発明の「(a)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体またはポリベンゾオキサゾール前駆体」は、技術的にみて、本件特許発明1の「(B)バインダー樹脂」に相当する。 (c)ラジカル重合性化合物 甲1-2発明の「(f)エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物」は、技術的にみて、本件特許発明1の「(C)ラジカル重合性化合物」に相当する。 (d)光ラジカル発生剤 甲1-2発明の「(e)光重合開始剤」は、「(f)エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物」とともに用いられるものである。 そうすると、甲1-2発明の「(e)光重合開始剤」は、本件特許発明1の「(D)光ラジカル発生剤」に相当する。 (e)(E-1)?(E-3)及び(E-5)で表される化合物 甲1-2発明の「(c)下記一般式(1)で表される構造を有する熱架橋剤」と本件特許発明1の「(E)下記式(E-1)?(E-3)及び(E-5)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物」とは、その化学構造からみて、「連結基を介して結合した複数のベンゼン環に置換基を有する構造を有する化合物」である点で共通する。 (f)画素形成用ネガ型着色組成物 甲1-2発明の「ネガ型感光性樹脂組成物」は、前記(a)?(e)において言及した化合物を含有する組成物である。 そうすると、甲1-2発明の「ネガ型感光性樹脂組成物」と本件特許発明1の「画素形成用ネガ型着色組成物」とは、「ネガ型着色組成物」である点で共通する。 (g)一致点及び相違点 以上より、本件特許発明1と甲1-2発明とは、 「(A)着色剤、 (B)バインダー樹脂、 (C)ラジカル重合性化合物、 (D)光ラジカル発生剤、及び (E)連結基を介して結合した複数のベンゼン環に置換基を有する構造を有する化合物 を含有する、ネガ型着色組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1-2-1]「(B)バインダー樹脂」が、本件特許発明1では、「ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体を除く。」とされるのに対し、甲1-2発明では、「(a)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体またはポリベンゾオキサゾール前駆体」である点。 [相違点1-2-2](E)連結基を介して結合した複数のベンゼン環に置換基を有する構造を有する化合物が、本件特許の請求項1に係る発明は、「式(E-1)?(E-3)及び(E-5)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物」であるのに対し、甲1-2発明は、「一般式(1)で表される構造を有する熱架橋剤」である点。 [相違点1-2-3]ネガ型着色組成物が、本件特許発明1は「画素形成用」であるのに対し、甲1-2発明は、そのように特定されていない点。 b 判断 事案に鑑みて、上記[相違点1-2-1]について検討する。 甲第1号証の記載事項(ア)には、課題を解決する手段として、「すなわち本発明は、(a)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体またはポリベンゾオキサゾール前駆体、(b)1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレンまたは2,3-ジヒドロキシナフタレンおよび(c)下記一般式(1)で表される構造を有する熱架橋剤または下記一般式(2)で表される基を有する熱架橋剤を含有することを特徴とする樹脂組成物である。」(段落[0006])と記載されている。当該記載に基づけば、甲1-2発明において、「(a)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体またはポリベンゾオキサゾール前駆体」を用いることは、課題解決のために欠くことのできないものである。 そうすると、当業者であっても、甲1-2発明における「(a)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体またはポリベンゾオキサゾール前駆体」を、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体を除いたバインダー樹脂とすることが、容易になし得たということができない。 c むすび したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、甲1-2発明に基づいて容易に発明できたものということができない。 (イ)本件特許発明3、5?10 本件特許発明3、5?10は、「(B)バインダー樹脂」について、本件特許発明1と同じ「ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体を除く。」とする要件を具備している。 そうすると、本件特許発明3、5?10も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明できたということができない。 ウ 甲2-1発明を主引例発明とした場合 (ア)本件特許発明1 a 対比 本件特許発明1と甲2-1発明とを対比する。 (a)着色剤 甲2-1発明の「OIL BLUE 2N」及び「CVL」は、いずれも、「着色剤」である。 そうすると、甲2-1発明の「OIL BLUE 2N」及び「CVL」は、本件特許発明1の「(A)着色剤」に相当する。 (b)バインダー樹脂 甲2-1発明の「1780cm^(-1)付近、1377cm^(-1)付近にポリイミドに金するイミド構造の吸収ピークが検出されるポリマー粉体」は、技術的にみて、本件特許発明1の「(B)バインダー樹脂」に相当する。 (c)ラジカル重合性化合物 甲2-1発明の「BP-4EA」及び「イソボルニルアクリレート」は、いずれも、「不飽和結合含有重合性化合物」である。 そうすると、甲2-1発明の「BP-4EA」及び「イソボルニルアクリレート」は、技術的にみて、本件特許発明1の「(C)ラジカル重合性化合物」に相当する。 (d)光ラジカル発生剤 甲2-1発明の「2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン」は、技術的にみて、本件特許発明1の「(D)光ラジカル発生剤」に相当する。 (e)(E-1)?(E-3)及び(E-5)で表される化合物 甲2-1発明の「HMOM-TPHAP」は、その化学構造からみて、本件特許発明1における、式(E-2)で表される化合物であって、「E0」が「*-(CR^(II)_(2))_(x)-O-R^(I)(R^(I)が炭素数1のアルキル基であり、R^(II)が水素原子であり、xが1であり、「*」は、芳香環に直接結合する結合手であることを表す。)で表される基」であり、「Z」が水酸基であり、「R」が炭素数1のアルキル基であり、「e1?e3」が2、「f1?f3」が1の整数であり、「e1+f1=0?5、e2+f2=0?5及びe3+f3=0?5の条件を満たし、かつe1?e3のうちの少なくとも1つは0ではなく;但し、複数存在するZのうちの少なくとも1つは、水酸基である。〕」という要件を満たす化合物である(本件特許の明細書段落【0061】、【0062】において化合物(E-2)の具体例として開示された「E-2-1」と同じ化学構造を有している。)。 そうすると、甲2-1発明の「HMOM-TPHAP」は、本件特許発明1の「(E)下記式(E-1)?(E-3)及び(E-5)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物」とする要件を満たしている。 (f)画素形成用ネガ型着色組成物 甲2-1発明の「ネガ型感光性ポリイミド組成物」は、前記(a)?(e)において言及した化合物を「乳酸エチル13gに溶解させて得た」組成物である。 そうすると、甲2-1発明の「ネガ型感光性ポリイミド組成物」と本件特許発明1の「画素形成用ネガ型着色組成物」とは、「ネガ型着色組成物」である点で共通する。 (g)一致点及び相違点 本件特許発明1と甲2-1発明とは、 「(A)着色剤、 (B)バインダー樹脂、 (C)ラジカル重合性化合物、 (D)光ラジカル発生剤、及び (E)下記式(E-1)?(E-3)及び(E-5)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物 を含有する、ネガ型着色組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点2-1-1]「(B)バインダー樹脂」が、本件特許発明1では、「ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体を除く。」とされるのに対し、甲2-1発明では、「1780cm^(-1)付近、1377cm^(-1)付近にポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピークが検出されるポリマー粉体」である点。 [相違点2-1-2]ネガ型着色組成物が、本件特許発明1は「画素形成用」であるのに対し、甲2-1発明は、そのように特定されていない点。 b 判断 事案に鑑みて、上記[相違点2-1-1]について検討する。 甲2-1発明の「ポリマー粉体」は、「ポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピークが検出される」ことから、「ポリイミド」であることは明らかである。そして、甲第2号証の記載事項(ア)には、課題を解決するための手段について、「(a)主鎖末端に、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を有するポリイミド、(b1)一般式(1)で表される不飽和結合含有重合性化合物および(c)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物である。」(段落[0007])と記載されている。当該記載に基づけば、甲2-1発明において、バインダー樹脂として「ポリイミド」を用いることは、課題解決のために欠くことのできないものといえる。 そうすると、当業者であっても、甲2-1発明における「ポリマー粉体」を「ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体」以外のバインダー樹脂とすることを想到し得たということはできない。 c むすび したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、甲2-1発明に基づいて容易に発明できたものということができない。 (イ)本件特許発明3、5?10 本件特許発明3、5?10は、「(B)バインダー樹脂」について、本件特許発明1と同じ「ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体を除く。」とする要件を具備している。 そうすると、本件特許発明3、5?10も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明できたということができない。 エ 甲2-2発明を主引例発明とした場合 (ア)本件特許発明1 a 対比 本件特許発明1と甲第2-2発明とを対比する。 (a)バインダー樹脂 甲2-2発明の「ポリマー粉体」は、いずれも、技術的にみて、本件特許発明1の「(B)バインダー樹脂」に相当する。 (b)ラジカル重合性化合物 甲2-2発明の「エポキシエステル3000A」及び「イソボルニルアクリレート」は、「不飽和結合含有重合性化合物」である。 そうすると、甲2-2発明の「エポキシエステル3000A」及び「イソボルニルアクリレート」は、技術的にみて、本件特許発明1の「(C)ラジカル重合性化合物」に相当する。 (c)光ラジカル発生剤 甲2-2発明の「1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(o-ベンゾイルオキシム)」は、技術的にみて、本件特許発明1の「(D)光ラジカル発生剤」に相当する。 (d)(E-1)?(E-3)及び(E-5)で表される化合物 甲2-2発明の「HMOM-TPHAP」は、その化学構造からみて、本件特許発明1における、式(E-2)で表される化合物である(前記第2の2(1)ア(オ)を参照。)。 そうすると、甲2-2発明の「HMOM-TPHAP」は、本件特許発明1の「(E)下記式(E-1)?(E-3)及び(E-5)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物」とする要件を満たしている。 (e)画素形成用ネガ型着色組成物 甲2-2発明の「ネガ型感光性ポリイミド組成物」は、前記(a)?(d)において言及した化合物を「プロピレングリコールモノメチルエーテル」に溶解させて得た組成物である。 そうすると、甲2-2発明の「ネガ型感光性ポリイミド組成物」と本件特許発明1の「画素形成用ネガ型着色組成物」とは、「ネガ型組成物」である点で共通する。 (f)一致点及び相違点 以上より、本件特許発明1と甲2-2発明とは、 「(B)バインダー樹脂、 (C)ラジカル重合性化合物、 (D)光ラジカル発生剤、及び (E)下記式(E-1)?(E-3)及び(E-5)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物 を含有する、ネガ型組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点2-2-1]本件特許発明1は、「(A)着色剤」を含有するのに対し、甲2-2発明は、着色剤を含有しない点。 [相違点2-2-2]「(B)バインダー樹脂」が、本件特許発明1では、「ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体を除く。」とされるのに対し、甲2-2発明では、「1780cm^(-1)付近、1377cm^(-1)付近にポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピークが検出されるポリマー粉体」である点。 [相違点2-2-3]ネガ型組成物が、本件特許発明1では「画像形成用」ネガ型「着色」組成物であるのに対し、甲2-2発明では、そのように特定されていない点。 b 判断 事案に鑑みて、上記[相違点2-2-2]について検討する。 甲2-2発明の「ポリマー粉体」も、「ポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピークが検出される」ことから、「ポリイミド」であることは明らかである。そして、前記ウ(ア)bに記載したとおり、甲第2号証の記載事項(ア)段落[0007]の記載に基づけば、甲2-2発明において、バインダー樹脂として「ポリイミド」を用いることは、課題解決のために欠くことのできないものといえる。 そうすると、当業者であっても、甲2-2発明における「ポリマー粉体」を「ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体」以外のバインダー樹脂とすることを想到し得たということはできない。 c むすび したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、甲2-2発明に基づいて容易に発明できたものということができない。 (イ)本件特許発明3、5?10 本件特許発明3、5?10は、「(B)バインダー樹脂」について、本件特許発明1と同じ「ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体を除く。」とする要件を具備している。 そうすると、本件特許発明3、5?10も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明できたということができない。 オ 甲2-3発明を主引例発明とした場合 (ア)本件特許発明1 a 対比 本件特許発明1と甲2-3発明とを対比する。 (a)バインダー樹脂 甲2-3発明の「(a)主鎖末端に、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を有するポリイミド」は、技術的にみて、本件特許発明1の「(B)バインダー樹脂」に相当する。 (b)ラジカル重合性化合物 甲2-3発明の「(b1)一般式(1)で表される不飽和結合含有重合性化合物」は、技術的にみて、本件特許発明1の「(C)ラジカル重合性化合物」に相当する。 (c)光ラジカル発生剤 甲2-3発明の「(c)光重合開始剤」は、「(b1)一般式(1)で表される不飽和結合含有重合性化合物」とともに用いられるものである。 そうすると、甲2-3発明の「(c)光重合開始剤」は、本件特許発明1の「(D)光ラジカル発生剤」に相当する。 (d)画素形成用ネガ型着色組成物 甲2-3発明の「感光性樹脂組成物」は、前記(a)?(c)において言及した化合物を含有する組成物である。 そうすると、甲2-3発明の「感光性樹脂組成物」と本件特許発明1の「画素形成用ネガ型着色組成物」とは、「ネガ型組成物」である点で共通する。 (e)一致点及び相違点 以上より、本件特許発明1と甲2-3発明とは、 「(B)バインダー樹脂、 (C)ラジカル重合性化合物、及び (D)光ラジカル発生剤を含有する、ネガ型組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点2-3-1]本件特許発明1は、「(A)着色剤」を含有するのに対し、甲2-3発明は、着色剤を含有しない点。 [相違点2-3-2]「(B)バインダー樹脂」が、本件特許発明1では、「ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体を除く。」とされるのに対し、甲2-3発明では、「(a)主鎖末端に、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を有するポリイミド」である点。 [相違点2-3-3]ネガ型組成物が、本件特許発明1では「画像形成用」ネガ型「着色」組成物であるのに対し、甲2-3発明では、そのように特定されていない点。 [相違点2-3-4]ネガ型組成物が、本件特許発明1は、「(E)下記式(E-1)?(E-3)及び(E-5)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物」を含有するのに対して、甲2-3発明では、そのように特定されていない点。 b 判断 事案に鑑みて、上記[相違点2-3-2]について検討する。 前記ウ(ア)bに記載したとおり、甲第2号証の記載事項(ア)段落[0007]の記載に基づけば、甲2-3発明において、バインダー樹脂として「ポリイミド」を用いることは、課題解決のために欠くことのできないものといえる。 そうすると、当業者であっても、甲2-3発明における「(a)主鎖末端に、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を有するポリイミド」を「ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体」以外のバインダー樹脂とすることを想到し得たということはできない。 c むすび したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、甲2-3発明に基づいて容易に発明できたものということができない。 (イ)本件特許発明3、5?10 本件特許発明3、5?10は、「(B)バインダー樹脂」について、本件特許発明1と同じ「ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体を除く。」とする要件を具備している。 そうすると、本件特許発明3、5?10も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明できたということができない。 カ 甲3発明を主引例発明とした場合 (ア)本件特許発明1 a 対比 本件特許発明1と甲3発明とを対比する。 (a)着色剤 甲3発明の「(e)着色剤」は、本件特許発明1の「(A)着色剤」に相当する。 (b)バインダー樹脂 甲3発明の「(a)ポリマー主鎖未端に、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基より選ばれる基を少なくとも一つ有するポリイミド」は、技術的にみて、本件特許発明1の「(B)バインダー樹脂」に相当する。 (c)ラジカル重合性化合物 甲3発明の「(b)不飽和二重結合官能基および/または不飽和三重結合官能基からなる重合性基を有する化合物」は、技術的にみて、本件特許発明1の「(C)ラジカル重合性化合物」に相当する。 (d)光ラジカル発生剤 甲3発明の「(c)光重合開始剤」は、「(b)不飽和二重結合官能基および/または不飽和三重結合官能基からなる重合性基を有する化合物」とともに使用されるものである。 そうすると、甲3発明の「(c)光重合開始剤」は、技術的にみて、本件特許発明1の「(D)光ラジカル発生剤」に相当する。 (e)画素形成用ネガ型着色組成物 甲3発明の「感光性樹脂組成物」は、前記(a)?(d)において言及した化合物を含有するものである。 そうすると、甲3発明の「感光性樹脂組成物」と本件特許発明1の「画素形成用ネガ型着色組成物」とは、「ネガ型着色組成物」である点で共通する。 (f)一致点及び相違点 以上より、本件特許発明1と甲3発明とは、 「(A)着色剤、 (B)バインダー樹脂、 (C)ラジカル重合性化合物、及び (D)光ラジカル発生剤を含有する、ネガ型着色組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点3-1]「(B)バインダー樹脂」が、本件特許発明1では、「ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体を除く。」とされるのに対し、甲3発明では、「(a)ポリマー主鎖未端に、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基より選ばれる基を少なくとも一つ有するポリイミド」である点。 [相違点3-2]本件特許発明1は、「(E)下記式(E-1)?(E-3)及び(E-5)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物」を含有するのに対し、甲3発明は、「(d)熱架橋性化合物」を含有する点。 [相違点3-3]ネガ型着色組成物が、本件特許発明1では「画像形成用」であるのに対し、甲3発明では、そのように特定されていない点。 b 判断 事案に鑑みて、上記[相違点3-1]について検討する。 甲第3号証の記載事項(イ)における「本発明によれば、ポリマー末端にアルカリ可溶性基を有しかつ、ポリマー分子量を適度に調節することによって、有機溶剤に可溶だけでなくアル力リ可溶なポリイミドを得ることができ、また、これをベースポリマーに用いたことから、アルカリ水溶液で現像後に、高温加熱処理により、ポリマーをイミド化する必要がなく、パターン加工性、熱収縮性、クラック耐性、ストレス耐性、熱処理の実用性に優れたネガ型の感光性樹脂組成物を得ることができ、得られた組成物は特に、半導体素子の保護膜、層間絶縁膜、ディスプレイの絶縁層、回路基板の配線保護絶縁膜に好適に用いることができる。」との記載に基づけば、甲3発明において、「(a)ポリマー主鎖未端に、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基より選ばれる基を少なくとも一つ有するポリイミド」を用いることは、発明の目的の達成に欠くことができないものである。 そうすると、たとえ当業者であっても、甲3発明における「(a)ポリマー主鎖未端に、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基より選ばれる基を少なくとも一つ有するポリイミド」を、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体を除いたバインダー樹脂とすることが、容易になし得たということができない。 c むすび したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、甲3発明に基づいて容易に発明できたものということができない。 (イ)本件特許発明3、5?10 本件特許発明3、5?10は、「(B)バインダー樹脂」について、本件特許発明1と同じ「ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体を除く。」とする要件を具備している。 そうすると、本件特許発明3、5?10も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明できたということができない。 キ 甲4-1発明又は甲4-2発明を主引例発明とした場合 (ア)本件特許発明1 a 対比 本件特許発明1と甲4-1発明とを対比する。 (a)バインダー樹脂 甲4-1発明の「(a)アルカリ可溶性ポリイミド」は、技術的にみて、本件特許発明1の「(B)バインダー樹脂」に相当する。 (b)ラジカル重合性化合物 甲4-1発明の「(b)不飽和結合含有重合性化合物」は、技術的にみて、本件特許発明1の「(C)ラジカル重合性化合物」に相当する。 (c)光ラジカル発生剤 甲4-1発明の「(d)光重合開始剤」は、「(b)不飽和結合含有重合性化合物」とともに使用されるものである。 そうすると、甲4-1発明の「(d)光重合開始剤」は、技術的にみて、本件特許発明1の「D)光ラジカル発生剤」に相当する。 (d)画素形成用ネガ型着色組成物 甲4-1発明の「感光性樹脂組成物フィルム」は、前記(a)?(c)において言及した化合物を含有する組成物である。 そうすると、甲4-1発明の「感光性樹脂組成物フィルム」と本件特許発明1の「画素形成用ネガ型着色組成物」とは、「ネガ型組成物」である点で共通する。 (e)一致点及び相違点 以上より、本件特許発明1と甲4-1発明とは、 「(B)バインダー樹脂、 (C)ラジカル重合性化合物、及び (D)光ラジカル発生剤を含有する、ネガ型組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点4-1]本件特許発明1は、「(A)着色剤」を含有するのに対し、甲4-1発明は、着色剤を含有しない点。 [相違点4-2]「(B)バインダー樹脂」が、本件特許発明1では、「ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体を除く。」とされるのに対し、甲4-1発明では、「(a)アルカリ可溶性ポリイミド」である点。 [相違点4-3]本件特許発明1は、「(E)下記式(E-1)?(E-3)及び(E-5)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物」を含有するのに対し、甲4-1発明は、「(e)熱架橋性化合物」を含有する点。 [相違点4-4]ネガ型組成物が、本件特許発明1では「画像形成用」ネガ型「着色」組成物であるのに対し、甲4-1発明では、そのように特定されていない点。 b 判断 事案に鑑みて、上記[相違点4-2]について検討する。 甲第4号証の記載事項(イ)には、課題を解決するための手段として、「すなわち本発明は、(a)アルカリ可溶性ポリイミド、(b)不飽和結合含有重合性化合物、(c)平均粒子径が20nm以上1μm以下である無機粒子および(d)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物フィルムである。」(段落【0008】)と記載されている。当該記載に基づけば、甲4-1発明において、「(a)アルカリ可溶性ポリイミド」を用いることは、課題解決のために欠くことのできないものである。 そうすると、当業者であっても、甲4-1発明における「(a)アルカリ可溶性ポリイミド」をポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体を除いたバインダー樹脂とすることが、容易になし得たということができない。 c むすび したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、甲4-1発明に基づいて容易に発明できたものということができない。 (イ)本件特許発明3、5?10 本件特許発明3、5?10は、「(B)バインダー樹脂」について、本件特許発明1と同じ「ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体を除く。」とする要件を具備している。 そうすると、本件特許発明3、5?10も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明できたということができない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要は、以下のとおりである。 (1)特許法第29条第1項 請求項2及び請求項2の記載を引用する請求項4?10に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、又は、甲第4号証に記載の発明である。 (2)特許法第29条第2項 請求項2及び請求項2の記載を引用する請求項4?10に係る発明は、甲第1号証?甲第5号証に記載の発明に基づき容易想到である。 2 当審の判断 (1)特許法第29条第1項について 本件特許発明2と、甲1-1発明、甲1-2発明、甲2-1発明、甲2-2発明、甲2-3発明、甲3発明、甲4-1発明とを対比すると、少なくとも、本件特許発明2の「(E-1)?(E-5)のそれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物」における置換基「Z」が、「それぞれ独立に、炭素数1?6のアルコキシ基、炭素数2?8のアルコキシアルコキシ基又は炭素数2?6のアシルオキシ基」であって、「水酸基」を含まないのに対し、甲1-1発明の「アルコキシメチル基含有化合物(A-3)」及び甲2-1発明及び甲2-2発明の「HMOM-TPHAP」は、置換基「Z」にあたる部分が「水酸基」であり、甲1-2発明、甲2-3発明、甲3発明、甲4-1発明も、「(E-1)?「E-5」のそれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物」を有していない点で相違する。 そして、上記相違点は、実質的な相違点であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により該当するとはいえない。 (2)特許法第29条第2項について さらに、甲第1号証の記載事項(イ)の段落[0046]?[0057]、甲第2号証の記載事項(イ)の段落[0076]?[0081]、甲第3号証の記載事項(ウ)、甲第4号証の記載事項(ウ)を参酌しても、本件特許発明2の「(E-1)?(E-5)」の要件を満たす化合部を有することが、記載も示唆もされていない。また、他に、甲1-1発明、甲1-2発明、甲2-1発明、甲2-2発明、甲2-3発明、甲3発明又は甲4-1発明において、本件特許発明2の「(E-1)?(E-5)のそれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物」を採用することが当業者にとって容易であったとする理由を見いだせない。 そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は、当業者であっても、容易に発明できたものとはいえない。 本件特許発明2の記載を引用する本件特許発明4?7、11?13も同様のことがいえる。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載された取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?13に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1?13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A)着色剤、 (B)バインダー樹脂(但し、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体を除く。)、 (C)ラジカル重合性化合物、 (D)光ラジカル発生剤、及び (E)下記式(E-1)?(E-3)及び(E-5)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物 を含有することを特徴とする、画素形成用ネガ型着色組成物 【化1】 〔式(E-1)?(E-3)及び(E-5)中、 E0は、それぞれ独立に、下記式(E0); *-(CR^(II)_(2))_(x)-O-R^(I) (E0) (式(E0)中、 R^(I)は、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基であり、 R^(II)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基であり、 xは、1又は2であり、 「*」は、芳香環に直接結合する結合手であることを表す。) で表される基であり、 Zは、それぞれ独立に、水酸基、炭素数1?6のアルコキシ基、炭素数2?8のアルコキシアルコキシ基又は炭素数2?6のアシルオキシ基であり、 Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?6のアルキル基であり、 Aは、それぞれ独立に、単結合又は-CR_(2)-(但し、Rは前記と同義である。)であり、 c1、c2、d1及びd2は、それぞれ独立に、0?5の整数であり、但し、c1+d1=0?5及びc2+d2=0?5の条件を満たし、かつc1及びc2のうちの少なくとも1つは0ではなく; e1?e3及びf1?f3は、それぞれ独立に、0?5の整数であり、但し、e1+f1=0?5、e2+f2=0?5及びe3+f3=0?5の条件を満たし、かつe1?e3のうちの少なくとも1つは0ではなく; g1?g4及びh1?h4は、それぞれ独立に、0?5の整数であり、但し、g1+h1=0?5、g2+h2=0?5、g3+h3=0?5及びg4+h4=0?5の条件を満たし、かつg1?g4のうちの少なくとも1つは0ではなく; k1、k2、L1及びL2は、それぞれ独立に、0?5の整数であり、 k3及びL3は、それぞれ独立に、0?4の整数であり、但し、k1+L1=0?5、k2+L2=0?5、及びk3+L3=0?4の条件を満たし、かつk1?k3のうちの少なくとも1つは0ではなく; mは、1?5の整数である。 但し、複数存在するZのうちの少なくとも1つは、水酸基である。〕 【請求項2】 (A)着色剤、 (B)バインダー樹脂、 (C)ラジカル重合性化合物、 (D)光ラジカル発生剤、及び (E)下記式(E-1)?(E-5)のそれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物 を含有することを特徴とする、ネガ型着色組成物。 【化2】 【化3】 〔式(E-1)?(E-5)中、 E0は、それぞれ独立に、下記式(E0); *-(CR^(II)_(2))_(x)-O-R^(I) (E0) (式(E0)中、 R^(I)は、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基であり、 R^(II)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基であり、 xは、1又は2であり、 「*」は、芳香環に直接結合する結合手であることを表す。) で表される基であり、 Zは、それぞれ独立に、炭素数1?6のアルコキシ基、炭素数2?8のアルコキシアルコキシ基又は炭素数2?6のアシルオキシ基であり、 Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?6のアルキル基であり、 Aは、それぞれ独立に、単結合又は-CR_(2)-(但し、Rは前記と同義である。)であり、 c1、c2、d1及びd2は、それぞれ独立に、0?5の整数であり、但し、c1+d1=0?5及びc2+d2=0?5の条件を満たし、かつc1及びc2のうちの少なくとも1つは0ではなく; e1?e3及びf1?f3は、それぞれ独立に、0?5の整数であり、但し、e1+f1=0?5、e2+f2=0?5及びe3+f3=0?5の条件を満たし、かつe1?e3のうちの少なくとも1つは0ではなく; g1?g4及びh1?h4は、それぞれ独立に、0?5の整数であり、但し、g1+h1=0?5、g2+h2=0?5、g3+h3=0?5及びg4+h4=0?5の条件を満たし、かつg1?g4のうちの少なくとも1つは0ではなく; i1?i3及びj1?j3は、それぞれ独立に、0?5の整数であり、 i4及びj4は、それぞれ独立に、0?4の整数であり、但し、i1+j1=0?5、i2+j2=0?5、i3+j3=0?5、及びi4+J4=0?4の条件を満たし、かつi1?i4のうちの少なくとも1つは0ではなく; k1、k2、L1及びL2は、それぞれ独立に、0?5の整数であり、 k3及びL3は、それぞれ独立に、0?4の整数であり、但し、k1+L1=0?5、k2+L2ニ0?5、及びk3+L3=0?4の条件を満たし、かつk1?k3のうちの少なくとも1つは0ではなく; mは、1?5の整数である。〕 【請求項3】 前記(E)式(E-1)?(E-3)及び(E-5)で表される化合物の含有割合が(B)バインダー樹脂100質量部に対して0.1?50質量部である、請求項1に記載のネガ型着色組成物。 【請求項4】 前記(E)式(E-1)?(E-5)で表される化合物の含有割合が(B)バインダー樹脂100質量部に対して0.1?50質量部である、請求項2に記載のネガ型着色組成物。 【請求項5】 前記(D)光ラジカル発生剤がO-アシルオキシム系化合物を含むものである、請求項1?4のいずれか一項に記載のネガ型着色組成物。 【請求項6】 前記(A)着色剤の含有割合が、着色組成物の固形分の合計を基準として15?45質量%である、請求項1?5のいずれか一項に記載のネガ型着色組成物。 【請求項7】 前記(A)着色剤が染料を含むものである、請求項1?6のいずれか一項に記載のネガ型着色組成物。 【請求項8】 請求項1、3、5?7のいずれか一項に記載のネガ型着色組成物を用いて形成されたことを特徴とする、着色硬化膜。 【請求項9】 画素である、請求項8に記載の着色硬化膜。 【請求項10】 請求項8又は9に記載の着色硬化膜を具備することを特徴とする、表示素子。 【請求項11】 請求項2、4?7のいずれか一項に記載のネガ型着色組成物を用いて形成されたことを特徴とする、着色硬化膜。 【請求項12】 画素、ブラックマトリックス又はブラックスペーサーである、請求項11に記載の着色硬化膜。 【請求項13】 請求項11又は12に記載の着色硬化膜を具備することを特徴とする、表示素子。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-07-01 |
出願番号 | 特願2014-249021(P2014-249021) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(G02B)
P 1 651・ 121- YAA (G02B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 岩井 好子 |
特許庁審判長 |
樋口 信宏 |
特許庁審判官 |
宮澤 浩 井口 猶二 |
登録日 | 2019-05-10 |
登録番号 | 特許第6520091号(P6520091) |
権利者 | JSR株式会社 |
発明の名称 | 着色組成物、着色硬化膜及び表示素子 |
代理人 | 山本 博人 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |
代理人 | 村田 正樹 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |
代理人 | 村田 正樹 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |
代理人 | 山本 博人 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 高野 登志雄 |