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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A01G
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  A01G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A01G
審判 全部申し立て 2項進歩性  A01G
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A01G
管理番号 1366053
異議申立番号 異議2019-701054  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-10-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-12-24 
確定日 2020-07-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6534695号発明「照明アセンブリ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6534695号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2-5,7〕について訂正することを認める。 特許第6534695号の請求項1、3ないし7に係る特許を維持する。 特許第6534695号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6534695号に係る特許出願は、2010年(平成22年)9月16日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2009年9月18日、フィンランド及び2009年9月18日、米国)を国際出願日とする、特願2012-529311号の一部を、平成27年3月10日に新たな特許出願とした、特願2015-46893号の一部を、平成29年4月11日にさらに新たな特許出願としたものであり、令和1年6月7日にその特許権の設定登録がされ、令和1年6月26日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許について、令和1年12月24日に、特許異議申立人 中山 諭(以下、「申立人」という。)より、第1の特許異議申立書(以下、「申立書1」という。)が提出され、請求項1ないし7に対して特許異議の申立てがされた。また、同年同月同日に、同申立人より、第2の特許異議申立書(以下、「申立書2」という。)が提出され、請求項1及び3ないし7に対して特許異議の申立てがされた。

その後の経緯は、以下のとおりである。
令和 2年 2月26日(発送日): 取消理由通知
令和 2年 5月22日: 意見書の提出及び訂正の請求

なお、令和2年5月22日付け訂正請求の内容は、後記するとおり一部の請求項を削除するものであったため、当該訂正請求については、特許法第120条の5第5項ただし書きのとおり、申立人に意見書を提出する機会を与える必要はないと認められる。


第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和2年5月22日付け訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(2)訂正事項2
ア 特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または2」と記載されているのを、「請求項1」に訂正する。

イ 特許請求の範囲の請求項4に「請求項2または3」と記載されているのを、「請求項3」に訂正する。

ウ 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1から4のいずれか1項」と記載されているのを、「請求項1、3及び4のいずれか1項」に訂正する。

エ 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1から6のいずれか1項」と記載されているのを、「請求項1及び3から6のいずれか1項」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、及び一群の請求項について
(1)訂正事項1
ア 訂正目的、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、同法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定にも適合するものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項1は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、願書に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面に記載された事項の範囲内で行う訂正事項であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2
ア 訂正目的、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、訂正事項1により訂正前の請求項2を削除したことに対応して、訂正前の請求項3ないし5及び7において、それぞれ訂正前の請求項2を引用する選択肢を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明、並びに特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、同法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定にも適合するものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項2は、訂正前の請求項3ないし5及び7において、訂正前の請求項2を引用する選択肢を削除するものであるから、願書に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面に記載された事項の範囲内で行う訂正事項であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

(3)一群の請求項、及び独立特許要件について
訂正前の請求項2-5及び7について、請求項3-5及び7は請求項2を引用しているから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正がされるものである。そのため、請求項2-5,7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当する。
そして、本件においては、訂正前の請求項1-7について特許異議の申立てがされているから、訂正事項1及び2により訂正後の請求項2-5及び7について特許請求の範囲の減縮が行われていても、訂正後の請求項2-5及び7に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(4)小括
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5ただし書第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[2-5,7]について訂正を認める。


第3 訂正特許請求の範囲の記載
本件訂正請求による請求項2-5及び7についての訂正は認められたので、本件請求項1及び6に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明6」という。)、並びに本件請求項2-5及び7に係る発明(以下、「本件訂正発明2」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1-7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
植物栽培のために特に適した発光部品であって、
380?850nmの波長範囲に設定された光を放出するよう構成された少なくとも1つの発光ダイオード(LED)であって、放出された前記光の放出スペクトルが、前記少なくとも1つのLEDの照明によって栽培される植物の光合成反応に適合するLEDを有し、
前記少なくとも1つのLEDが、
a)600から700nmの波長範囲でピークを有し、少なくとも50nmまたはそれを超える半値幅を示すように調節された第1のスペクトル特性と、
b)50nmの半値幅の最大値を有し、440から500nmの範囲でピーク波長を示すように調節された第2のスペクトル特性と、
を有し、
c)600?800nmの波長における全てまたは一部の放出が、前記LEDに含まれる少なくとも1つのアップコンバージョン材料によるLEDチップ放射電力の完全なまたは部分的な波長アップコンバージョンを使用して生成され、
d)500?600nmの波長の放出の少なくとも一部または全部が、400?500nmバンドの強度以下かつ600?700nmバンドの強度以下に低減されるように調節される、
ことを特徴とする発光部品。

【請求項2】(削除)

【請求項3】
前記少なくとも1つのLEDが、
カロテノイド及びクロロフィルの吸収ピークに合致するスペクトル放出ピークを有する光を放出するよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の発光部品。

【請求項4】
前記少なくとも1つのLEDが、
前記少なくとも1つのLEDの第1の放出を使用することによる400?500nmの波長バンドにおける第1の放出ピークと、
前記第1の放出の完全なまたは部分的な波長アップコンバージョンを使用することによる600?800nmの波長バンドにおける第2の放出ピークと、
を生成するよう構成されたことを特徴とする請求項3に記載の発光部品。

【請求項5】
前記発光部品が複数のLEDを有することを特徴とする請求項1、3及び4のいずれか1項に記載の発光部品。

【請求項6】
600?800nmの波長における放出が、少なくとも2つのアップコンバージョン材料によって生成されることを特徴とする請求項1に記載の発光部品。

【請求項7】
請求項1及び3から6のいずれか1項に記載の少なくとも1つの発光部品を有する園芸用照明器具。」


第4 証拠一覧、異議申立理由及び取消理由の概要、並びに証拠の記載
1 証拠一覧
申立人により、申立書1及び申立書2とともに提出された証拠は、整理すると以下のとおりである。

文献1: 特開2008-181771号公報
(平成20年8月7日公開、
申立書1の甲第1号証、申立書2の甲第2号証)
文献2: 特開2006-73656号公報
(平成18年3月16日公開、
申立書1の甲第2号証)
文献3: 特開2008-258356号公報
(平成20年10月23日公開、
申立書1の甲第3号証)
文献4: 「光合成」、福岡大学理学部ホームページ、
インターネットURL
http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/photosyn.htm
(Wayback Machine https://archive.org/web/で保存された、
2005年9月14日時点のデータ、
申立書1の甲第4号証、申立書2の甲第3号証)
文献5: 国際公開第2010/053341号
(2010年(平成22年)5月14日国際公開、
申立書2の甲第1号証)
文献6: 国際出願 PCT/FI2010/050716号の
優先権主張証明書1(FI、出願番号20095967号、
申立書2の甲第4号証;以下、添付される先の出願の明細書
及び図面を「先の出願1の明細書及び図面」という。)
文献7: 国際出願 PCT/FI2010/050716号の
優先権主張証明書2(US、出願番号61/243613号、
申立書2の甲第5号証;以下、添付される先の出願の明細書
及び図面を「先の出願2の明細書及び図面」という。)

その他の証拠は、以下のとおりである。

文献8: 特開2002-27831号公報
(平成14年1月29日公開、当審が職権により探知)

2 異議申立理由、及び取消理由の要旨
(1)申立書1における異議申立理由
申立書1における異議申立理由の要旨は、次のとおりである。

ア(文献1を主たる引用例、文献2?4を副引用例若しくは周知技術とした進歩性)
本件特許の請求項1ないし2に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された文献1に記載された発明、及び文献2?3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである(申立書1第23頁第3行-第52頁第20行)。
また、本件特許の請求項3ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された文献1に記載された発明、及び文献2?3に記載された事項、並びに文献4に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである(申立書1第52頁第21行-第55頁第4行)。
したがって、本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

イ 記載不備
本件特許の請求項1及び3ないし7に係る発明は、「前記LEDに含まれる少なくとも1つのアップコンバージョン材料」との事項を有するところ、LED自体(LEDチップ、LED発光源、又はLED素子(半導体))の中にアップコンバージョン材料が含まれることは、明細書に記載されていない。
また、技術常識から考えても、アップコンバージョン材料がLED素子の中に含まれているようなLED素子は、一般に知られていないから、本件特許の請求項1及び3ないし7に係る発明は、発明を明確に把握することができず不明確である。
さらに、本件特許の請求項1及び3ないし7に係る発明について、当業者は容易に実施することができない。
したがって、本件特許の請求項1及び3ないし7に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第2号、同項第1号、及び同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである(申立書1第55頁第5行-同頁下から2行、及び第56頁第4行-第17行)。

(2)申立書2における異議申立理由
申立書2における異議申立理由の要旨は、次のとおりである。

ア(優先権主張不適、及び文献5を主たる引用例とした新規性及び進歩性)
本件特許の請求項1及び3ないし7に係る発明が有する、「500?600nmの波長の放出の少なくとも一部または全部が、400?500nmバンドの強度以下かつ600?700nmバンドの強度以下に低減されるように調節される」という事項は、本件特許の優先権の基礎である文献6及び文献7には記載されておらず、本件特許の新規性及び進歩性の判断基準日は、優先権主張日ではなく、本件特許の原々出願の現実の出願日である2010年9月16日となる(申立書2第2頁下半分-第9頁、及び第30頁第1行-第13行)。
そして、本件特許の請求項1及び3ないし7に係る発明は、本件特許の原出願日前に頒布された文献5に記載された発明と同一であるか、文献5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである(申立書2第30頁第1行-第43頁下から3行)。
したがって、本件特許の請求項1及び3ないし7に係る発明は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、若しくは同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

イ(優先権主張不適、及び文献1を主たる引用例とし、文献5並びに文献4を副引用例並びに周知技術とした進歩性)
本件特許の請求項1及び3ないし7に係る発明が有する、「500?600nmの波長の放出の少なくとも一部または全部が、400?500nmバンドの強度以下かつ600?700nmバンドの強度以下に低減されるように調節される」という事項は、本件特許の優先権の基礎である文献6及び文献7には記載されておらず、本件特許の新規性及び進歩性の判断基準日は、優先権主張日ではなく、本件特許の原出願日である2010年9月16日となる(申立書2第30頁第1行-第13行)。
そして、本件特許の請求項1及び3ないし7に係る発明は、本件特許の原出願日前に頒布された文献1に記載された発明に基いて、若しくは文献1に記載された発明及び文献5並びに文献4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである(申立書2第43頁下から2行-第59頁第4行)。
したがって、本件特許の請求項1及び3ないし7に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(3)令和2年2月26日発送の取消理由
当審が令和2年2月26日(発送日)に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(文献8を主たる引用例とした進歩性)
本件特許の請求項2ないし5及び7に係る発明は、文献8に記載された発明、及び文献4に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

3 証拠の記載
(1)文献1(特開2008-181771号公報、平成20年8月7日公開、申立書1の甲第1号証、申立書2の甲第2号証)

ア 記載事項
文献1には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付加した。以下、同様。)。
(ア)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、投入光の波長を変換して発光する色変換器、これを用いた植物育成装置及び植物育成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜、果物、花木などの植物の育成は屋外で行うのが一般的であるが、植物に適した環境を整えるために、温室やビニールハウスを用いた人工的な育成も行われている。この場合、植物に適した光の波長や量を制御する目的で、太陽光に替えて人工的な光が用いられることもある。人工的な光としては、白熱電球、蛍光ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプなどの光源が用いられてきた。さらに、エネルギー効率に優れる発光ダイオード(LED)を用いた植物栽培方法が知られている(例えば、特許文献1)。LEDを用いた照明として、赤色発光ダイオードと青色発光ダイオードとを併せて用いることにより、育成を促進する手法が知られている(例えば、特許文献2、特許文献3)。
【特許文献1】特開2001-28947号公報
【特許文献2】特開2002-27831号公報
【特許文献3】特開2004-113160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
人工光源である白熱電球はエネルギー効率が悪く、投入電力の多くは熱となって温度が上昇する問題があった。蛍光ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプは、光合成に必要な赤色(波長6.0×10^(2)nmから7.0×10^(2)nm)と青色(波長4.5×10^(2)nmから5.0×10^(2)nm)とのバランスが悪いため、植物の健全な育成に問題があった。赤色LEDと青色LEDとを組み合わせた人工光源では赤色と青色とのバランスの制御は容易であるが、他の光源に比べ素子を得るのが困難である問題があった。さらに、太陽光を用いた植物育成においても青色光と赤色光以外の緑色成分(波長5.0×10^(2)nmから5.8×10^(2)nm)とは、植物には吸収されないため照射光のかなりの部分は育成には寄与していなかった。
【0004】
このような事情により、植物育成に有用な光を効率よく得ることが困難であった。
【0005】
本発明の目的は、このような困難な事情を打破し、投入光の色の成分を適正なものに変換および調整可能な色変換器を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、植物育成用の光として、赤色成分と青色成分とをバランス良く含む光を生成する実用性の高い植物育成装置およびその方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために、太陽光あるいは安価な人工光源に含まれる短波長成分の光を蛍光体に用い、赤色を主体とする長波長成分に変換することにより、赤色成分と青色成分との比を制御できることを見出し、色変換器と、植物育成装置と、植物育成方法とに関する発明を完成させるに至った。」

(イ)
「【0027】
本発明による植物育成装置は、短波長成分および長波長成分を有する投入光を発する光源と、表面または内部に蛍光体を有する透光体または反射体を備え、投入光を変換光に変換し、植物に照射する色変換器とを含む。光源として太陽光あるいは安価な人工光源を用いることができるので、コストを低減することができる。このような光源からの投入光に含まれる青色や緑色成分の光を赤色光に変換して赤色成分を富化することにより、青色と赤色との成分の割合を制御した変換光を生成できるので、植物の育成を促進できる。」

(ウ)
「【0046】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明による植物育成装置の模式図である。
【0047】
植物育成装置200は、短波長成分と長波長成分とを有する投入光210を発する光源220と、色変換器100、100’とを含む。色変換器100、100’は、投入光210を変換光230に変換し、植物240に照射する。色変換器100、100’は、実施の形態1で詳述した色変換器と同一である。
投入光210は、5.8×10^(2)nm未満の短波長成分と、5.8×10^(2)nm以上の長波長成分とを有する。さらに、投入光210は、5.8×10^(2)nm以上7.0×10^(2)nm以下の光である。この範囲の光が、植物の育成に適している。これにより、実施の形態1で説明した蛍光体110が、短波長成分を長波長成分に変換するので、投入光210における短波長成分が減少し、かつ、長波長成分を富化した変換光230を植物240に照射できる。より好ましくは、短波長成分の光は、4.5×10^(2)nm以上5.8×10^(2)nm未満の波長の可視光であり、長波長成分の光は、5.8×10^(2)nm以上7.0×10^(2)nm以下の可視光である。このような投入光210の場合に、植物の育成効率を向上させることができる。
【0048】
このような投入光210を発する光源220は、白熱電球、蛍光ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプおよびLEDランプからなる群から選択される人工光源を含む。これらの人工光源から発生される投入光210は、いずれも4.5×10^(2)nm以上7.0×10^(2)nm以下の波長成分の可視光であり、比較的安価に入手できるため好ましい。
【0049】
光源220はまた、これら人工光源以外に、または、これら人工光源に加えて、太陽光を含み得る。太陽光もまた、3.8×10^(2)nm?7.8×10^(2)nmの範囲の可視光を万遍なく含み、短波長成分と長波長成分とを有しているが、植物の光合成に有効な赤色成分の光の量は限られる。光源220として、外部からの人工的なエネルギーを付加することなく、このような太陽光を用いることができるので、経済性に優れる。例えば、天候が悪く、太陽光の照射が不十分な場合には、人工光源による投入光210を併用し、天候が良く、太陽光の照射が十分な場合には、太陽光のみを採用してもよい。
【0050】
色変換器100、100’は、実施の形態1と同様であり、表面または内部に蛍光体110を有する透光体または反射体120を備える。蛍光体110および透光体または反射体120は、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0051】
色変換器100、110’に用いられる蛍光体150の量および/または種類は、好ましくは、変換光230における波長4.5×10^(2)nm?5.0×10^(2)nmの波長の青色成分の光量子束(PPF(B))と、波長6.0×10^(2)nm?7.0×10^(2)nmの波長の赤色成分の光量子束(PPF(R))との比(PPF(B)/PPF(R))が、所望の範囲の値となるように調整され得る。特に、0.05以上0.4以下の間の値となるように調整されれば、植物の育成効率がよい。
【0052】
上述したように、本発明による植物育成装置200は、短波長成分と長波長成分とを有する透入光210を発する光源220と、色変換器100、100’とを備える。これにより、投入光210における短波長成分は、色変換器100、100’における蛍光体110によって長波長成分に変換され、投入光210における長波長成分は、色変換器100、100’を透過する。その結果、色変換器100、100’から出射される変換光230は、投入光210に含まれる長波長成分に加えて、変換された長波長成分を有するため、赤色成分が富化され得る。このような変換光230を植物育成に用いるので、植物の育成が促進され得る。さらに、投入光210を発する光源220は、新規の人工光源を開発することなく従来の既存の人工光源を用いることができるので、経済的である。また光源220には、太陽光を用いることができるので、経済的かつ環境に優しい。
【0053】
植物育成装置200は、色変換器100、100’の透光体または反射体120が、太陽等の可動する光源220の方向を追随するようにコンピュータ制御部(図示せず)を設けてもよい。また、投入光210と変換光230との色成分の変化は、それぞれのスペクトルの形状の変化として観察できるので、分光器(図示せず)を設け、所望のPPF(B)/PPF(R)値となるように制御してもよい。」(当審注;段落【0051】に記載される「色変換器100、110’」及び「蛍光体150」は、それぞれ「色変換器100、100’」及び「蛍光体110」の誤記と認める。)

(エ)
「【0060】
次に本発明を以下に示す実施例によってさらに詳しく説明するが、これはあくまでも本発明を容易に理解するための一助として開示したものであって、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
<実施例1?23>
先ず、赤色蛍光体を作製した。原料粉末は、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93重量%、α型含有量92%の窒化ケイ素粉末、比表面積3.3m^(2)/g、酸素含有量0.79重量%の窒化アルミニウム粉末、窒化カルシウム粉末、純度99.9%の酸化ユーロピウム粉末を用いた。組成式Eu_(0.025)Ca_(0.975)AlSiN_(3)で示される化合物を得るべく、窒化ケイ素粉末と窒化アルミニウム粉末と窒化カルシウム粉末と酸化ユーロピウム粉末とを、各々33.319重量%、29.209重量%、34.34重量%、3.14重量%となるように秤量し、メノウ乳棒と乳鉢とで10分間混合を行なった。なお、粉末の秤量、混合、成形の各工程は全て、水分1ppm以下酸素1ppm以下の窒素雰囲気を保持することができるグローブボックス中で操作を行った。この混合粉末を窒化ホウ素製のるつぼに入れて黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。焼成の操作は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から8×10^(2)℃まで毎時5×10^(2)℃の速度で加熱し、8×10^(2)℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を1MPaとし、毎時5×10^(2)℃で18×10^(2)℃まで昇温し、18×10^(2)℃で2時間保持して行った。
【0062】
合成した試料をメノウの乳鉢を用いて粉砕し、CuのKα線を用いた粉末X線回折測定を行った結果、CaAlSiN_(3)相であると判定された。この粉末に、波長365nmの光を発するランプで照射した結果、赤色に発光することを確認した。この粉末の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した結果、励起および発光スペクトルのピーク波長は448nmに励起スペクトルのピークがあり448nmの励起による発光スペクトルにおいて、663nmの赤色光にピークがある蛍光体であることが分かった(図4)。なお、図中325nm付近のシャープなピークは、測定上生じるピークであり実際の発光ではない。
【0063】
製造した蛍光体を用いて、太陽光中の赤色成分を増加させる色変換器を作製した。先ず、信越化学工業製LEDポッティング用シリコーン樹脂約10gに対して表1に示す量の蛍光体を添加して、攪拌および脱泡を行い、均一な混合物を得た。次に、幅28mm長さ48mm厚さ1.3mmのガラス板(ソーダライムガラス)にこの混合物を塗布したものをオーブンに入れ、大気中、0.9×10^(2)℃で30分間加熱することにより硬化させた。硬化後の樹脂の厚さは約5mmであった。
【0064】
製造した色変換器を通過した太陽光のスペクトルを次の様に測定した。大塚電子製マルチチャンネル分光器MCPD-7000を用い、光ファイバの先端の光入力部を色変換器のガラス面に置き、色変換器を通った太陽光が分光器に取り込まれる様に設置した。図5に実施例23の色変換器を通った光のスペクトルを示す。比較のために色変換器を通さない太陽光のスペクトルも同時に示す。色変換器を通すことにより、太陽光の3.0×10^(2)nm?5.8×10^(2)nmの波長成分の光が減少し、6.0×10^(2)nm以上の波長成分の光の量が増加した。このように、蛍光体を含有する樹脂を通すことにより、短波長成分の光が減少し長波長成分の光が増加した。
【0065】
図6に実施例8、13、18の色変換器を通った光のスペクトルを示す。比較のために色変換器を通さない太陽光のスペクトルも同時に示す。色変換器を通すことにより、太陽光の3.0×10^(2)nm?5.8×10^(2)nmの波長成分の光が減少し、6.0×10^(2)nm以上の波長成分の光の量が増加した。
【0066】
表1に実施例1?23で作製した色変換器を通った光の青色成分、赤色成分、および青色成分と赤色成分の比(B/R)を示す。ここで、青色成分とは、上記のマルチチャンネル分光器で計測された4.0×10^(2)nm?5.0×10^(2)nmの波長成分のフォトン数(単位は10の25乗個)であり、赤色成分とは、上記のマルチチャンネル分光器で計測された6.0×10^(2)nm?7.0×10^(2)nmの波長成分のフォトン数(単位は10の25乗個)である。なお、比較のために同1条件で測定した太陽光の値は、青色成分は2.72、赤色成分は1.94であった。蛍光体の添加量が増加するに従って、青色成分は減少し、赤色成分が増加することが確認された。これに伴い、B/R比は太陽光の1.4から実施例23の0.06まで低下した。この様に、蛍光体の量を変えることにより、青色成分と赤色成分およびB/R比を変化させることができるので、それぞれの植物に適した条件を選択すると良い。



(オ)
図6には、次の図示がある。


イ 記載された発明
上記アより、文献1には、次の発明(以下、「文献1発明」という。)が記載されている。
「植物育成装置200に用いる、短波長成分と長波長成分とを有する投入光210を発する光源220と色変換器100,100’であり、
投入光210は、5.8×10^(2)nm未満の短波長成分と、5.8×10^(2)nm以上の長波長成分とを有し、
投入光210を発する光源220は、3.8×10^(2)nm?7.8×10^(2)nmの範囲の可視光を万遍なく含む太陽光、及び/または、4.5×10^(2)nm以上7.0×10^(2)nm以下の波長成分の可視光を発生する白熱電球、蛍光ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプおよびLEDランプからなる群から選択される、従来の既存の人工光源を用いることができ、
色変換器100,100’は、蛍光体110を有し、投入光210における短波長成分を長波長成分に変換し、4.5×10^(2)nm以上5.8×10^(2)nm未満の波長の可視光である短波長成分が減少して、5.8×10^(2)nm以上7.0×10^(2)nm以下の可視光である長波長成分が富化した変換光230を植物240に照射し、
色変換器100、100’に用いられる蛍光体110の量および/または種類は、変換光230における波長4.5×10^(2)nm?5.0×10^(2)nmの波長の青色成分の光量子束(PPF(B))と、波長6.0×10^(2)nm?7.0×10^(2)nmの波長の赤色成分の光量子束(PPF(R))との比(PPF(B)/PPF(R))が、0.05以上0.4以下の間の値となるように調整され、
光源220からの投入光210に含まれる青色や緑色成分の光を赤色光に変換して、植物の光合成に有効な赤色成分を富化することにより、青色と赤色との成分の割合を制御した変換光230を生成でき、植物の育成を促進できる、
光源220と色変換器100,100’。」

(2)文献2(特開2006-73656号公報、平成18年3月16日公開、申立書1の甲第2号証)

文献2には、次の事項が記載されている。


「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶バックライト光源、照明器具、ディスプレイのバックライト光源、カメラのフラッシュライト、動画照明補助光源などに用いられる発光装置に関する。」


「【0004】
従来、LEDを用いた白色発光装置には、以下の3種類の組合せが知られている。
【0005】
1つ目として青色LEDと黄色に発光するいわゆるYAG蛍光体とを組み合わせた発光装置がある。この発光装置は、青色LEDの光によりYAG蛍光体を励起して、青色光と黄色光との混色光により白色光を放出するものである。この発光装置は、消費電力を低減することができ、LEDの駆動制御を容易に行え、混色性も良好であることから、広く一般に使用されている。
【0006】
2つ目として紫外LEDと蛍光体とを組み合わせた発光装置がある。蛍光体は、青色、緑色、赤色に発光するものをそれぞれ用いる。この発光装置は、蛍光体からの青色光、緑色光、赤色光との混色光により白色光を放出するものである。紫外LEDからの光はほとんど視感できないため、蛍光体のみからの光により発光色が決定される。この発光装置は、LEDの制御を容易に行え、混色性も良好である。
【0007】
3つ目として青色LED、緑色LED、赤色LEDを組み合わせた発光装置がある。この発光装置は、いわゆる三波長の発光装置であり、LEDからの光により白色光を放出するものである。この発光装置は、消費電力を低減することができ、液晶透過後の色表示範囲が広い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、1つ目の発光装置は、青色光と黄色光との組合せであるため、冷陰極蛍光管(CCFL)に比べて赤味成分が少ない。
【0009】
2つ目の発光装置は、紫外LEDを用いるため、紫外線を外部に漏らさない対策を施さなければならない。また、紫外LEDはほとんど視感できないため、漏れた紫外光を可視光として有効に利用することはできず、発光効率が低くなる。
【0010】
3つ目の発光装置は、混色し難く、演色性に乏しいものである。LEDから放出される光は蛍光体から放出される光と異なりシャープな光であるため、各LEDから放出される光は混合され難い。また、一つの光源において少なくとも3つのLEDを要するため、駆動制御が複雑になり、また色調調整も複雑になる。
【0011】
以上のことから、本発明は、LEDの駆動制御が容易で、液晶透過後の色表示範囲が広い高い発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の問題点を解決すべく、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに到った。
【0013】
本発明は、可視光の短波長領域に第1の発光ピーク波長を持つ第1の発光素子と、該第1の発光素子からの光を波長変換する蛍光物質と、該第1の発光ピーク波長よりも長波長側、かつ、前記蛍光物質の発光ピーク波長よりも短波長側に第2の発光ピーク波長を持つ第2の発光素子と、を少なくとも有し、該第1の発光素子からの光と、該蛍光物質からの光と、該第2の発光素子からの光と、が混合され外部に放出される発光装置に関する。」


「【0019】
本発明は、可視光の短波長領域に第1の発光ピーク波長を持つ第1の発光素子と、該第1の発光素子からの光を波長変換する蛍光物質と、該第1の発光ピーク波長よりも長波長側、かつ、前記蛍光物質の発光ピーク波長よりも短波長側に第2の発光ピーク波長を持つ第2の発光素子と、を少なくとも有し、該第1の発光素子からの光と、該蛍光物質からの光と、該第2の発光素子からの光と、が混合され外部に放出される発光装置に関する。2つのLEDにより色調を調節することができるため、駆動制御が容易となる。また、LEDよりもブロードな発光スペクトルを持つ蛍光物質を使用するため、混色されやすく、演色性の高い発光装置を提供することができる。また、第1の発光素子からの可視光を利用できるため、発光効率の高い発光装置を提供することができる。さらに液晶透過後の色表示範囲も広い。」


「【0039】
<第2の実施の形態>
図5は、第2の実施の形態に係るパッケージ成型体を示す模式的な斜視図であり、図6は、第2の実施の形態に係るパッケージ成型体に発光素子を載置した状態を示す模式的な上面図である。図7は、図6の破線III-IIIにおける模式的な断面図であり、図8は、第2の実施の形態に係るパッケージ成型体の模式的な背面図である。
【0040】
パッケージ成型体100は、互いに対向し成型部材105により絶縁分離された第一の金属基体101、第二の金属基体102および第三の金属基体103を有する。第一の金属基体101、第二の金属基体102および第三の金属基体103は、端部が成型部材105に挿入されており、他端部が成型部材105の外壁面から突出するように成型部材の一体成型により形成されてなる。第一の金属基体101は、第二の金属基体102および第三の金属基体103が突出している外壁面に対向する外壁面から突出している。パッケージ成型体100は、内壁面106aにより形成され発光素子108を収納するための凹部(第一の凹部120)をその主面側に有し、金属基体の主面の一部が凹部の底面にてそれぞれ露出している。第一の凹部120内には、内壁面106bにより第二の凹部130が設けられており、第二の凹部130の底面にて第一の金属基体の主面が露出している。ここで、本明細書中において「主面」とは、パッケージ成型体、金属基体、リード電極のような発光装置の各構成部材の表面について、発光素子108が載置される側の面、例えば、発光素子108の光が取り出される発光面側の面のことをいう。
【0041】
発光素子108は、第1の発光素子108aと第2の発光素子108bとを持つ。第1の発光素子は、紫外領域から可視光の短波長領域に第1の発光ピーク波長を持つ。第2の発光素子108bは、第1の発光ピーク波長よりも長波長側に第2の発光ピーク波長を持つ。第一の凹部120及び第二の凹部130の少なくともいずれかには、蛍光物質140が配置されている。蛍光物質140は、第1の発光素子108aからの光を波長変換する。よって、可視光の短波長領域に発光ピーク波長を持つ第1の発光素子108aからの光と、蛍光物質140からの光と、第2の発光素子108bからの光と、が混合され外部に放出される。または、紫外領域に発光ピーク波長を持つ第1の発光素子108aを用い、蛍光物質140からの光と、第2の発光素子108bからの光と、が混合され外部に放出される。ただし、紫外領域に発光ピーク波長を持つ第1の発光素子108aであっても、ブロードな発光スペクトルを持つ場合は可視光が放出されるため、第2の発光素子108b及び蛍光物質140の光と混合し混色光として外部に放出される。本明細書中における「可視光の短波長領域」は、λp=380nm以上495nm以下の波長領域をいう。また、「紫外領域」は、λp=300nm以上380nm未満までの波長領域をいう。」


「【0047】
可視光の短波長領域に第1の発光ピーク波長を持つ第1の発光素子108aは、380nm以上495nm以下に発光ピーク波長を持ち、特に、380nmから420nm若しくは440nmから485nmに発光ピーク波長を持つものが好ましい。例えば、400nm、440nmから445nm、455nmから465nmに第1の発光ピーク波長を持つ第1の発光素子108aを使用する。紫外領域に第1の発光ピーク波長を持つ第1の発光素子108aは、300nm以上380nm未満に発光ピーク波長を持ち、特に、350nm以上380nm未満に発光ピーク波長を持つものが好ましい。
【0048】
第2の発光素子108bは、第1の発光ピーク波長よりも長波長側に第2の発光ピーク波長を持つものであればよいが、蛍光物質140の発光ピーク波長よりも短波長側に第2の発光ピーク波長を持つものが好ましい。これにより種々の発光色を実現できるからである。特に、可視光の短波長領域に第1の発光ピーク波長を持つ第1の発光素子108aを用いる場合は、第2の発光素子108bは、495nmから573nmに第2の発光ピーク波長を持つものが好ましい。一方、紫外領域に第1の発光ピーク波長を持つ第1の発光素子108aを用いる場合は、第2の発光素子108bは、400nmから573nmに第2の発光ピーク波長を持つものが好ましい。」


「【0059】
(蛍光物質)
(窒化物蛍光体)
第1の発光素子により励起される蛍光物質140は窒化物蛍光体を用いる。窒化物蛍光体は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Luからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の希土類元素により賦活される、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の第II族元素と、C、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の第IV族元素と、Nと、を含む窒化物蛍光体である。この窒化物蛍光体は、Bが1ppm以上10000ppm以下含まれていることが好ましい。または窒化物蛍光体は、組成中にOが含まれているものも使用できる。上記窒化物蛍光体の組合せのうち、Euにより賦活される、Ca及びSrの少なくともいずれか1元素と、Siと、Nと、からなる窒化物蛍光体であって、Bが1ppm以上10000ppm以下含まれていることが好ましい。Euの一部は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Luからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の希土類元素により置換可能である。Ca及びSrの少なくともいずれか一方の元素の一部は、Be、Mg、Ba、Znからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の第II族元素により置換可能である。Siの一部は、C、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の第IV族元素により置換可能である。」


「【0095】
<実施例1及び2>
実施例1及び2の発光装置は、第2の実施の形態に係る発光装置を用いる。図5は、第2の実施の形態に係るパッケージ成型体の模式的な斜視図である。図6は、第2の実施の形態に係る半導体装置の模式的な上面図である。図7は、第2の実施の形態に係るパッケージ成型体の模式的な断面図である。図8は、第2の実施の形態に係るパッケージ成型体の模式的な背面図である。図9は、窒化物蛍光体の励起スペクトルを示す図である。図10は、実施例1に係る発光装置の青紫色LEDで窒化物蛍光体を励起させたときの発光スペクトルを示す図である。図11は、実施例2に係る発光装置の青紫色LEDで窒化物蛍光体を励起させたときの発光スペクトルを示す図である。図12は、緑色LEDを発光させたときの発光スペクトルを示す図である。
【0096】
第1の発光素子108aは、□600μmのITOダイスであり、約444nmに第1の発光ピーク波長を持つものを使用する。この第1の発光素子108aは青紫色に発光する。
【0097】
第2の発光素子108bは、約533nmに第2の発光ピーク波長を持つものを使用する。この第2の発光素子108bは緑色に発光する。
【0098】
実施例1に用いる蛍光物質140は、Ca2Si5N8:Euの組成の窒化物蛍光体を使用する。この窒化物蛍光体は、約609nmに発光ピーク波長を持つ。実施例2に用いる蛍光物質140は、(Ca,Sr)2Si5N8:Euの組成の窒化物蛍光体を使用する。この窒化物蛍光体は、約650nmに発光ピーク波長を持つ。図より、第1の発光素子108aの第1の発光ピーク波長約444nmにおける実施例1及び実施例2で使用する窒化物蛍光体の光強度を100とする。第2の発光素子108bの第2の発光ピーク波長約533nmにおける実施例1で使用する窒化物蛍光体の光強度は約65、実施例2の光強度は約74である。これより窒化物蛍光体は、第1の発光素子108aと比べて、第2の発光素子108bによる励起効率は低い。
【0099】
実施例1及び実施例2における青紫色LEDと窒化物蛍光体とを発光させたものは、青紫色の約444nmと赤色の約609nmに発光ピーク波長を持つが、480nmから560nmの領域ではほとんど発光していない。このようにほとんど発光していない部分を三原色と異なる中間色に持たせることにより、以下に説明するように液晶透過後の色表示範囲を拡げることができる。」

ク 図10には、次の図示がある。


ケ 図11には、次の図示がある。


(3)文献3(特開2008-258356号公報、平成20年10月23日公開、申立書1の甲第3号証)

文献3には、次の事項が記載されている。


「【0005】
また、特開2006-164879号公報(特許文献2)に記載の照明光源は、青色を発光する発光素子としては、単一の青色発光ダイオードをそのまま利用しているために、青色部の演色性がよくない。その結果、全波長領域での平均の演色性も、よくならない。
【0006】
そこで、この発明の目的は、簡単な構成で、様々な色温度において演色性がよい照明光源を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
目に見える物の色は、その物を照らす光の波長の分布によって変化する。物の色を正しく見せる光を基準光とすると、基準光の下で見た色と、照明光の下で見た色とのずれが小さい照明光が理想的な照明光であるといえる。例えば、太陽光の下で見た色は、基準光の下で見た色とのずれが小さい。太陽光のように、ある物について、基準光の下で見たときと近い色を見せる光を、演色性のよい光であるという。演色性を評価する指数としては、平均演色評価指数Raが用いられる。平均演色評価指数Raは、演色性がよい照明では高く、基準光と同じ演色性の照明であれば、平均演色評価指数Raは100である。一般的に、平均演色評価指数Raが90以上であれば、演色性がよい照明であるといえる。演色性がわるい照明は平均演色評価指数Raが低く、色の見え方について基準光とのずれが大きければ大きいほど、その照明の平均演色評価指数Raは小さくなる。」


「【0010】
したがって、理想的な照明光は、太陽光のように演色性がよく、また、太陽光やキセノンランプ、白熱灯、蛍光灯等に含まれる赤外線や紫外線などの可視領域の光ではない光を発しない照明光である。」


「【0014】
発光ダイオードにおいては、出力の調整が容易であるので、様々な波長の光を発する発光ダイオードを用いた照明では、それぞれの発光ダイオードの出力を調整することによって、照明全体として発する光の色温度を簡単に変化させることができる。しかしながら、発光ダイオードが発する光の半値幅は20nm?50nmと狭いため、発光ダイオードのみを用いて広い波長範囲の分光分布をもつ演色性のよい照明とするためには、波長が異なる発光ダイオードを多数種類、備える必要があり、多数の発光ダイオードの出力をそれぞれ調整しなければならないので、構成と出力の調整が複雑な照明になってしまう。
【0015】
そこで、本発明の発明者は、種々の検討をした結果、青色域である380nmから500nmまでのピーク波長の光を発する発光ダイオードを含む第一と第二の原光源とを備え、第一の原光源が発する光のピーク波長と、第二の原光源が発する光のピーク波長とが異なることによって、多数の原光源を備えなくても、青色域の演色性をよくすることができることを見出した。また、光源によって励起される蛍光体を備えることによって、色温度を調整しやすくなることを見出した。このような発明者の知見に基づいて、この発明の照明光源は、以下の構成を備える。
【0016】
この発明に従った照明光源は、380nmから500nmまでのピーク波長の光を発する発光ダイオードを含む第一と第二の原光源と、光源によって励起される蛍光体とを備え、第一の原光源が発する光のピーク波長と、第二の原光源が発する光のピーク波長とが異なる。
【0017】
このようにすることにより、簡単な構成で、様々な色温度において演色性がよい照明光源を提供することができる。
【0018】
この発明に従った照明光源においては、蛍光体は、第一の原光源または第二の原光源によって励起されることが好ましい。」


「【0022】
この発明に従った照明光源は、380nm以下のピーク波長の光を発する励起光源をさらに備え、蛍光体は、励起光源によって励起される蛍光体を含むことが好ましい。
【0023】
このようにすることにより、例えば、ある種の植物や海ガメの飼育などに効果的な照明とすることができる。
【0024】
この発明に従った照明光源においては、蛍光体と蛍光体を励起させる光源は、発光素子として一体に形成されていることが好ましい。
【0025】
このようにすることにより、例えば、市販の発光ダイオードを発光素子として使用することができるので、光源と蛍光体を別に製作する必要がない。」


「【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
本発明者は、簡単な構成で、様々な色温度において演色性がよい照明光源、および、それを備える照明装置を得るために以下のとおり検討した。
【0049】
図1は、色温度が(A)3000K、(B)4200K、(C)5000K、(D)6500Kである基準光の分光分布を示す図である。
【0050】
図1に示すように、物の色を正しく見せる基準光の分光分布は、その光の色温度によって異なる。そのため、照明光を基準光に近づけて、演色性のよい照明光にするためには、照明光の色温度に応じて、照明光の分光分布を、その色温度における基準光の分光分布に近付ける必要がある。
【0051】
照明光の色温度を変化させるためには、その照明光が含む光の相対強度比を調整する必要がある。発光ダイオードは、出力の調整が容易な光源である。そのため、照明の光源として発光ダイオードを用いることによって、各色を発する発光ダイオードの出力を調整することによって、色温度を容易に変化させることができる。
【0052】
どのような色温度で照明するかが決定されると、その色温度で平均演色評価指数Raが最大になるように、照明光の分光分布を調整する。このとき、例えば、青色発光ダイオードと、緑色発光ダイオードと、赤色発光ダイオードのように、少数の発光ダイオードのみを備える照明においては、一つ一つの発光ダイオードは、それぞれ特定の波長の光のみを発する光源であるので、それぞれの発光ダイオードの出力を調整することが容易であっても、照明全体の平均演色評価指数Raを調整することは困難である。
【0053】
図2は、青色発光ダイオードと、緑色発光ダイオードと、赤色発光ダイオードのそれぞれが発する光の分光分布を示す図である。図2に示す分光分布は、計算によって得られた分光分布である。
【0054】
図2に示すように、発光ダイオードが発する光は、半値幅が狭い。そのため、それぞれの発光ダイオードが発する光の分布の境界には、輝度のほとんどない波長領域が形成されてしまう。」


「【0055】
表1は、図1に示す特性を持つ青色発光ダイオードと、緑色発光ダイオードと、赤色発光ダイオードを用いた照明について、様々な色温度で平均演色評価指数Raを最も高くするための、それぞれの発光ダイオードの輝度と、そのときの平均演色評価指数Raの値を示す表である。
【0056】
【表1】

【0057】
表1に示すように、光源が青色発光ダイオードと緑色発光ダイオードと赤色発光ダイオードとである照明は、どの色温度でも平均演色評価指数Raが低く、照明として不適当であることがわかる。
【0058】
図3は、図2の特性をもつ発光ダイオードのみを備える照明で5000Kの色温度の光を調整したときの、照明光の分光分布を示す図である。図3に示す分光分布は、計算によって得られた分光分布である。
【0059】
図3に示すように、図1に示す特性を持つ青色発光ダイオードと緑色発光ダイオードと赤色発光ダイオードとを用いて、各発光ダイオードの輝度を、表1に示す5000Kの色温度の場合の輝度に調整すると、各発光ダイオードの発する光の分光分布の境界には、極端に輝度の低い領域が見られる。そのため、平均演色評価指数Raは70と低くなり、照明として不適当である。
【0060】
また、一般的に、緑色発光ダイオードは効率と輝度が低いため、青色発光ダイオードと緑色発光ダイオードと赤色発光ダイオードの三種類の発光ダイオードで図3に示す分光分布をもつ照明を作製する場合には、緑色発光ダイオードの数を青色発光ダイオードと赤色発光ダイオードよりも多くする必要がある。
【0061】
このように、少数の発光ダイオードのみで構成される照明は、演色性がよくない。そこで、発光ダイオードの種類を増やすことが考えられる。
【0062】
発光ダイオードが発する光の半値幅は、20nm?40nmである。例えば、可視領域のうち、400nm?700nmの波長の光を発する照明には、半値幅が20nmの発光ダイオードのみを用いる場合には18種類、半値幅が40nmの発光ダイオードのみを用いても9種類の発光ダイオードが最小限、必要となる。
【0063】
図4は、ピーク波長がそれぞれ異なる10種類の発光ダイオードを用いた照明の分光分布を示す図である。発光ダイオードが発する光の半値幅は、30nmとする。図4に示す分光分布は、計算によって得られた分光分布である。
【0064】
図4に示すように、可視領域である380nm?780nmの波長全域において、輝度が極端に低い波長は見られない。しかしながら、10種類の発光ダイオードの出力をそれぞれ制御する必要があるので、制御回路や電源が複雑になる。また、緑色発光ダイオードのように、他の色の発光ダイオードよりも効率や輝度の低い発光ダイオードの数を他の発光ダイオードの数よりも増やさなくてはならないので、構成が複雑になる。
【0065】
そこで、半値幅の広い光を発する蛍光体と、発光ダイオードとを併用する照明が考えられる。
【0066】
図5は、青色発光ダイオードと黄色蛍光体とが一体に形成されている白色発光ダイオードについて、色温度が6212Kのときの分光分布を示す図である。図5に示す分光分布は、計算によって得られた分光分布である。
【0067】
図5に示すように、青色発光ダイオードと黄色蛍光体とが一体に形成された白色発光ダイオードの分光分布には、青色部に幅が狭く強度の強いピークと、黄色部に幅が広く強度が低いピークが見られる。この分光分布を持つ照明の平均演色評価指数Raは、70?80台程度である。
【0068】
このように、蛍光体を備える照明は、発光ダイオードの数が少なくても、広い波長範囲に広がる分光分布を持つことができる。
【0069】
現在、最も効率のよい発光ダイオードは、青色発光ダイオードである。また、青色は可視領域の中でも波長が短いので、可視領域の光を発する蛍光体として励起させることができる蛍光体が多い。そこで、青色発光ダイオードと、青色発光ダイオードと青色発光ダイオードが発する光に励起されて緑色を発する緑色蛍光体とが一体に形成された緑色発光ダイオードと、青色発光ダイオードと青色発光ダイオードが発する光に励起されて赤色を発する赤色蛍光体とが一体に形成された赤色発光ダイオードとを備える照明を考えることができる。青色発光ダイオードと緑色発光ダイオードと赤色発光ダイオードに用いられる青色発光ダイオードは、すべて同一の特性の光を発する青色発光ダイオードとする。
【0070】
図6は、青色発光ダイオードと、青色発光ダイオードと青色発光ダイオードが発する光によって励起されて緑色を発する緑色蛍光体とが一体に形成された緑色発光ダイオードと、青色発光ダイオードと青色発光ダイオードが発する光によって励起されて赤色を発する赤色蛍光体とが一体に形成された赤色発光ダイオードのそれぞれが発する光の分光分布を示す図である。図6に示す分光分布は、実測によって得られた分光分布である。
【0071】
図6に示すように、蛍光体が発する光の分光分布において、緑色と赤色のピークは、図2に示す緑色発光ダイオードと赤色発光ダイオードの分光分布よりも、幅が広い。図6に示す蛍光体が発する光の分光分布において、緑色と赤色のピークにおいては、半値幅が100nm程度であるので、発光ダイオードと蛍光体の数が少なくても、広い波長範囲に広がる分光分布を得ることができる。」


「【0072】
表2は、図6に示す特性を持つ青色発光ダイオードと、青色発光ダイオードと青色発光ダイオードが発する光によって励起されて緑色を発する緑色蛍光体とが一体に形成された緑色発光ダイオードと、青色発光ダイオードと青色発光ダイオードが発する光によって励起されて赤色を発する赤色蛍光体とが一体に形成された赤色発光ダイオードを用いた照明について、様々な色温度で平均演色評価指数Raを最も高くするための、それぞれの発光ダイオードの輝度と、そのときの平均演色評価指数Raの値を示す表である。
【0073】
【表2】

【0074】
表2に示すように、光源が青色発光ダイオードと、青色発光ダイオードと青色発光ダイオードが発する光によって励起されて緑色を発する緑色蛍光体とが一体に形成された緑色発光ダイオードと、青色発光ダイオードと青色発光ダイオードが発する光によって励起されて赤色を発する赤色蛍光体とが一体に形成された赤色発光ダイオードである照明の照明光は、4000Kから5500Kの色温度の範囲において、平均演色評価指数Raが90?92となる。
【0075】
図7は、図6の特性をもつ発光ダイオードのみを備える照明で5000Kの色温度の光を調整したときの、照明光の分光分布を示す図である。図7に示す分光分布は、計算によって得られた分光分布である。
【0076】
図7に示すように、蛍光体を備える照明の照明光の分光分布は、蛍光体を備えない発光ダイオードのみで構成された照明光の分光分布(図3)と比較して、広い波長領域の光を含み、また、波長による輝度の極端な強弱が少ない。
【0077】
このように、発光ダイオードと蛍光体とを組み合わせることによって、使用する発光ダイオードと蛍光体の種類を少なくして演色性のよい照明光を調整することができる。
【0078】
しかしながら、図7の破線で囲った部分に示すように、青色と他の色との境界には極端に輝度の低い波長領域が見られる。このような、波長による輝度の極端な強弱をなくすことによって、基準光の分光分布に近い分光分布を有する、演色性のよい照明光を調整することができる。
【0079】
そこで、本発明の発明者は、種々の検討をした結果、青色域である380nmから500nmまでのピーク波長の光を発する発光ダイオードを含む第一と第二の原光源とを備え、第一の原光源が発する光のピーク波長と、第二の原光源が発する光のピーク波長とが異なることによって、多数の原光源を備えなくても、青色域の演色性をよくすることができることを見出した。また、光源によって励起される蛍光体を備えることによって、色温度を調整しやすくなることを見出した。このような発明者の知見に基づいて、この発明の照明光源は、以下の構成を備える。
【0080】
この発明に従った照明光源は、380nmから500nmまでのピーク波長の光を発する発光ダイオードを含む第一と第二の原光源と、光源によって励起される蛍光体とを備え、第一の原光源が発する光のピーク波長と、第二の原光源が発する光のピーク波長とが異なる。
【0081】
このようにすることにより、簡単な構成で、様々な色温度において演色性がよい照明光源を提供することができる。」


「【0083】
(第1実施形態)
図8は、この発明の第1実施形態として、照明装置の構成(A)と、照明装置が備える光源(B)を模式的に示す図である。
【0084】
図8の(A)に示すように、照明装置100は、光源180と、白LED110を駆動するための白用駆動回路101と、緑LED120を駆動するための緑用駆動回路102と、赤LED130を駆動させるための赤用駆動回路103を備える。光源180は、白色発光ダイオード(白LED)110と緑色発光ダイオード(緑LED)120と赤色発光ダイオード(赤LED)130とから構成されている。白用駆動回路101と緑用駆動回路102と赤用駆動回路103は、それぞれ、白LED110と緑LED120と、赤LED130の出力を調整する。駆動方式は、一般的に、電流値を制御する方法、電圧と抵抗で制御する方法、また、スタティックに駆動する方式やパルス幅を変更する方式などがあるが、どれを使用してもかまわない。
【0085】
白LED110と、緑LED120と、赤LED130は、それぞれ、複数ずつ備えられて直列に接続されている。直列に接続されたそれぞれの色の発光ダイオードは、白LED110、緑LED120、赤LED130、白LED110、緑LED120、赤LED130、の順番に並べて並列に配置されて、照明装置100の照明光源180とされている。照明光源180の光の進行方向側には、乳白色の拡散板(図示しない)を設けて、白LED110と緑LED120と赤LED130とから発する光が混ざり合うようにする。
【0086】
図8の(B)は、それぞれの発光ダイオードの構成を模式的に示す図である。
【0087】
図8の(B)に示すように、白LED110は、光源としての第二の原光源として青色発光ダイオード(第2青LED)111と、第2青LED111が発する光によって励起されて黄色の光を主に発する第三の蛍光体として黄色蛍光体112を含む。緑LED120は、光源としての第一の原光源として青色発光ダイオード(第1青LED)121と、第1青LED121が発する光によって励起されて緑色の光を主に発する第一の蛍光体として緑色蛍光体122を含む。赤LED130は、光源としての第一の原光源として青色発光ダイオード(第1青LED)131と、第1青LED131が発する光によって励起されて赤色の光を主に発する第二の蛍光体として赤色蛍光体132を含む。白LED110と緑LED120と赤LED130においては、それぞれ、青LEDに蛍光体を含んだカバーが付けられることによって、青LEDと蛍光体とが一体に形成されている。
【0088】
白LED110の光源として用いられる第2青LED111は、ピーク波長が470nmの青色の光を発する発光ダイオードである。緑LED120の光源として用いられる第1青LED121と、赤LED130の光源として用いられる第1青LED131は、どちらもピーク波長が445nmの青色の光を発する発光ダイオードである。第1青LED121と第1青LED131は同じ特性の発光ダイオードである。
【0089】
図9は、この発明の第1実施形態の照明装置に用いられる、白LEDと、緑LEDと、赤LEDが発する光の分光分布を示す図である。図9に示す分光分布のうち、白LEDの分光分布は計算によって得られたものであり、緑LEDと赤LEDの分光分布は実測によって得られたものである。
【0090】
図9に示すように、白LED110が発する光には、第2青LED111が発する光に対応する470nmのピークと、黄色蛍光体112が発する黄色の光に対応する550?585nmのピークが見られる。緑LED120が発する光には、第1青LED121が発する光に対応する445nmのピークと、緑色蛍光体122が発する緑色の光に対応する500?550nmのピークが見られる。赤LED130が発する光には、第1青LED131が発する光に対応する445nmのピークと、赤色蛍光体132が発する赤色の光に対応する585?780nmのピークが見られる。
【0091】
表3は、この発明の第1実施形態の照明装置が発する光について、様々な色温度で平均演色評価指数Raを最も高くするための、白LEDと緑LEDと赤LEDの輝度と、そのときの平均演色評価指数Raの値を示す表である。
【0092】
【表3】

【0093】
表3に示すように、照明装置100が発する光は、3800Kから5000Kの色温度の範囲において、平均演色評価指数Raが90?97となる。特に、4200K?4800Kの色温度の範囲では、平均演色評価指数Raが93?97となり、演色性が非常によい照明であるといえる。
【0094】
図10は、この発明の第1実施形態にかかる制御関連のブロック図である。
【0095】
図10に示すように、本発明の照明装置100においては、制御装置191は、色温度入力部192と輝度入力部193から制御信号を受信し、設定記憶部194と設定・制御値(電流値)変換部195と制御信号の送受信を行なう。また、制御部191は、受けた信号に応じて白用駆動回路101と緑用駆動回路102と赤用駆動回路103に制御信号を送信する。
【0096】
図11は、この発明の第1実施形態にかかる制御処理を順に示すフローチャートである。
【0097】
図11に示すように、ステップS001で、使用者が色温度入力部192に、照明装置100が発する光の色温度の設定を入力すると、色温度入力部192から制御部191に制御信号が送信される。ステップS002では、色温度入力部192からの制御信号を受信した制御部191は、設定記憶部194と制御信号の送受信を行い、設定された色温度で最もよい平均演色評価指数Raの照明光を調整するために必要な、白LED110と緑LED120と赤LED130のそれぞれの輝度についてのデータを選択する。
【0098】
ステップS003では、使用者が輝度入力部193に、照明装置100が発する光の明るさについての設定を入力すると、輝度入力部193から制御部191に制御信号が送信される。ステップS004では、輝度入力部193から制御信号を受信した制御部191は、照明光が設定された明るさ(輝度)になるように、白LED110と緑LED120と赤LED130のそれぞれの輝度を補正する。
【0099】
ステップS005では、制御部191は、設定・制御値(電流値)変換部195と制御信号の送受信を行い、白LED110と緑LED120と赤LED130の発する光の輝度をステップS004で補正された輝度にするために、それぞれの発光ダイオードに供給する電流の値を得る。
【0100】
ステップS006では、制御部191は、白用駆動回路101と緑用駆動回路102と赤用駆動回路103をそれぞれ制御して、白LED110と緑LED120と赤LED130を、設定された輝度で発光させる。
【0101】
図12は、この発明の第1実施形態の照明装置の照明光について、色温度が4200Kになるように調整したときの分光分布を示す図である。図12に示す分光分布は、計算によって得られた分光分布である。
【0102】
図12に示すように、照明装置100の照明光を4200Kの色温度に調整した場合には、分光分布が可視領域の広い範囲に広がっている。波長によって、極端な輝度の強弱がなく、従来演色性がよくなかった青色領域にも、分光分布の大きな谷間は見られない。このときの平均演色評価指数Raは95である。
【0103】
このように、照明装置100の照明光源180は、470nmのピーク波長の光を発する第2青LED111と、445nmのピーク波長の光を発する第1青LED121と第1青LED131と、第2青LED111によって励起される黄色蛍光体112と、第1青LED121によって励起される緑色蛍光体122と、第1青LED131によって励起される赤色蛍光体132とを備え、第2青LED111が発する光のピーク波長と、第1青LED121、第1青LED131が発する光のピーク波長とが異なる。
【0104】
このようにすることにより、多数の原光源を備えなくても、青色域の演色性をよくすることができる。また、光源によって励起される蛍光体を備えることによって、色温度を調整しやすくなる。
【0105】
このようにすることにより、簡単な構成で、様々な色温度において演色性がよい照明光源180を備える照明装置100を提供することができる。
【0106】
照明光源180においては、蛍光体は、第2青LED111によって励起される黄色蛍光体112と、第1青LED121によって励起される緑色蛍光体122と第1青LED132によって励起される赤LED132とを含む。
【0107】
このようにすることにより、使用する光源の数を少なくすることができる。
【0108】
照明光源180においては、第1青LED121と緑色蛍光体122は、緑LED120として一体に形成され、第1青LED131と赤色蛍光体132は、赤LED130として一体に形成されている。
【0109】
このようにすることにより、例えば、市販の緑色発光ダイオードと赤色発光ダイオードを緑LED120と赤LED130として使用することができるので、光源と蛍光体を別に製作する必要がない。
【0110】
照明光源180においては、黄色蛍光体112と黄色蛍光体112を励起させる第2青LED111は、白LED110として一体に形成されている。
【0111】
白色発光ダイオードは、一般的な発光ダイオードである。そこで、このようにすることにより、照明光源180の製作費用を抑えることができる。
【0112】
照明光源180は、第2青LED111と第1青LED121と第1青LED131の発光強度比を調整することが可能である。
【0113】
このようにすることにより、任意の色温度で平均演色評価指数Raを調整することが可能となる。
【0114】
照明光源180は、各色温度において、平均演色評価指数Raをほぼ最大にするように調整することが可能であるように構成されている。
【0115】
このようにすることにより、色温度ごとに平均演色評価指数Raを最大にすることができる照明光源180を得ることができる。
【0116】
照明光源180においては、第2青LED111が発する光のピーク波長と第1青LED121と第1青LED132が発する光のピーク波長は、第2青LED111と第1青LED121と第1青LED132が発する光のほぼ半値幅程度異なっている。
【0117】
このようにすることにより、青色域の演色性がよくなる。また、分光分布の調整が容易になるので、照明光の平均演色評価指数Raを高めることができる。
【0118】
照明光源180においては、黄色蛍光体112と、緑色蛍光体122と、赤色蛍光体132のうちの一つから発する光の分光分布と、他の一つから発する光の分光分布とは、それぞれの分光分布におけるピーク強度の約1/3?2/3の強度となる波長において互いに重なるように構成されている。
【0119】
このようにすることにより、分光分布の調整が容易になるので、照明光の平均演色評価指数Raを高めることができる。
【0120】
照明光源180においては、蛍光体は、緑色蛍光体122と赤色蛍光体132を含み、緑色蛍光体122は、500nmから550nmまでのピーク波長の光を主な成分とする光を発する蛍光体であり、赤色蛍光体132は、585nmから780nmまでのピーク波長の光を主な成分とする光を発する蛍光体である。
【0121】
このようにすることにより、色温度を調整しやすくなる。また、広範囲の波長領域において平均演色評価指数Raを高くすることができる。
【0122】
照明光源180においては、蛍光体は、黄色蛍光体112を含み、黄色蛍光体112は、550nmから585nmまでのピーク波長の光を主な成分とする光を発する蛍光体である。
【0123】
このようにすることにより、色温度を調整しやすくなる。また、広範囲の波長領域において平均演色評価指数Raを高くすることができる。」


「【0181】
(第6実施形態)
この発明の第6実施形態の照明装置の照明光源は、380nm以下のピーク波長の光を発する励起光源をさらに備え、蛍光体は、励起光源によって励起される蛍光体を含む。
【0182】
このようにすることにより、例えば、ある種の植物や海ガメの飼育などに効果的な照明とすることができる。」

コ 図2には、次の図示がある。


サ 図6には、次の図示がある。


シ 図7には、次の図示がある。


ス 図8には、次の図示がある。


セ 図9には、次の図示がある。


ソ 図12には、次の図示がある。



(4)文献4(「光合成」、福岡大学理学部ホームページ、2005年9月14日時点のデータ、申立書1の甲第4号証、申立書2の甲第3号証)

文献4には、「光受容体」という項目中に、「[クロロフィル a(Chl a)の構造]」と付された後に、次の記載がある。
「クロロフィルはプロトポルフィリンIXの誘導体で,中心にMg^(2+)が配位している。クロロプラスト中の大部分のクロロフィルは光を集めるアンテナの役割を果たす。吸収された光子のエネルギーはアンテナクロロフィル間を励起エネルギーとして移動し,アンテナクロロフィルよりも励起エネルギーの低い反応中心クロロフィルに集められる。クロロフィルが吸収できない波長の光を集めるために,カロテノイド(橙色),フィコエリトロビリン(赤色),フィコシアノビリン(青色)など,別の色の色素も使われる。バクテリアのクロロフィルは,フィトール基の代りにゲラニルゲラニル基を持つものもある。また,ポルフィリン環の側鎖にも違いがある。」

また文献4には、同じく「光受容体」という項目中に、「[クロロフィルa,b他の吸収スペクトル]」と題されて、次の図が示されている。




上記図において、「Carotenoids」と付された吸収スペクトルのピークは、概略400nm?500nmの範囲内に分布し、「Chlorophyll a」及び「Chlorophyll b」の短波長側ピークと近接あるいは重複している様子が、看てとれる。

(5)文献5(国際公開第2010/053341号、2010年(平成22年)5月14日国際公開、申立書2の甲第1号証)
文献5には、以下の事項が記載されている(英文後の仮訳は、申立人提出の抄訳を参考に、当審が括弧書きで付した。)。

ア 明細書第1頁第6行-第13行
「The invention relates to solid-state sources of light with the emission spectra tailored in order to meet specific needs of plants. In particular, the invention discloses a light-emitting diode, where light generated in a semiconductor chip is partially or completely converted within a wavelength converter comprising a phosphor (a substance, which converts radiation with a shorter wavelength to that with a longer wavelength) that has an emission spectrum with a peak in the far-red region of about from 700 nm to 760 nm, which matches the absorption spectrum of the plant photoreceptor phytochrome of the P_(fr) form.」
(本発明は、発光スペクトルが植物の特定の要求に合うように調整された固体光源に関連するものである。特に、本発明は、半導体チップにおいて生成される光が、部分的に、または完全に、P_(fr)形態の植物感光体フィトクロムの吸収スペクトルに一致する700nm-760nm程度の近赤外領域にピークを有する発光スペクトルを有する蛍光体(より波長の短い放射線をより長波長に変換する物質)を含む波長変換器内で変換される、発光ダイオードを開示する。)

イ 明細書第1頁第16行-第17行
「The present invention is directly connected to artificial lighting for plant cultivation based on solid-state technology.」
(本発明は、固体技術に基づく植物の育成の為の人工光源に直接関係するものである。)

ウ 明細書第1頁第18行-第29行
「The photophysiological processes in plants are controlled by phytopigments(chlorophylls, carotenoids, phytochromes, cryptochromes), which efficiently utilize only photons within specific wavelength ranges. In particular, chlorophylls require light in the wavelength range from 620 nm to 680 nm, carotenoinds absorb light in the range around 450 nm, different forms of phytochrome, P_(r) and P_(fr), are activated by light in the wavelength ranges around 660 nm and 730 nm, respectively, cryptochromes absorb light in the range from 340 nm to 520 nm [M. S. Mc Donald, Photobiology of Higher Plants (Wiley, Chichester, 2003), xiv+354 p., ISBN 0470855223]. Meanwhile, light with the wavelengths shorter than 400 nm and longer than 800 nm can have a harmful effect on plant morphogenesis. This infers that efficiency of artificial lighting used in plant cultivation can be increased by using sources with a spectrum that contains only narrow bands in blue (around 450 nm), red (around 660 nm), and far-red (around 730 nm) regions.」
(植物における光生理機能プロセスは、特定の波長範囲の光子のみを効率的に利用する光色素(クロロフィル、カロテノイド、フィトクロム、クリプトクロム)によってコントロールされる。特に、クロロフィルは、620nmから680nmの範囲の波長の光を必要とし、カロテノイドは450nm付近の範囲の光を吸収し、フィとクロムの異なる形態P_(r)及びP_(fr)は、約660nm及び約730nmの波長の光によって活性化され、これに対してクリプトクロムは、340nmから520nmの範囲の光を吸収する[M. S. Mc Donald, Photobiology of Higher Plants (Wiley, Chichester, 2003)、xiv+354頁、ISBN 0470855223]。一方、400nmより短い波長及び800nmよりも長い波長を有する光は、植物の形態形成に有害な影響を及ぼす場合がある。このことは、青色(450nm付近)、赤(約660nm)、遠赤色(約730nm)の領域において、狭いバンドのみを含むスペクトルを有する光源を使用することによって、植物栽培に使用される人工照明の効率を高めることができることを意味する。)

エ 明細書第6頁第28行-第7頁第1行
「This aim is achieved by using a light-emitting diode (LED) comprising a package housing a semiconductor chip, which generates short-wavelength emission at a wavelength shorter than 500 nm due to injection electroluminescence, and a converter, placed on the way of the photon flux generated by the chip, the said converterbeing designed for the conversion of the said emission to longer- wavelengths due to photoluminescence and containing phosphor particles of at least one type.」
(この目標は、注入型電界発光による500nmよりも短い波長の短波長を放射する半導体チップ、及び、チップにより生成される光子束の通り道に設置されるコンバーターを具備するパッケージから構成される発光ダイオード(LED)を使用することにより達成することができる。かかるコンバーターは、フォトルミネッセンスによりかかる放出を長波長に変換するように設計されており、また、少なくとも1種類の蛍光体粒子を含んでいる。)

オ 明細書第7頁第19行-第24行
「In both partial-conversion and complete-conversion LEDs, the converter may have a supplementary phosphor that emits red light in the 620-680 nm spectral range, which meets the photosynthetic and photomorphogenetic needs of plants, such as oxide, halooxide, chalcogenide, or nitride compound activated by divalent or tetravalent manganese, divalent or trivalent europium, trivalent bismuth, or divalent tin ions.」
(部分的変換を行うLED及び完全な変換を行うLEDのいずれにおいても、コンバーターは、植物の光合成及び光形態形成の要求に合致した、620nm-680nmのスペクトル範囲の赤色光を発する追加の蛍光体、たとえば2価又は4価のマンガン、2価または3価のユーロピウム、3価のビスマス、又は2価のスズイオンにより活性化された、酸化物、ハロゲン酸化物、カルコゲン化物、または窒化物等の化合物であってもよい。)

カ 明細書第7頁第30行-第32行
「In partial conversion LEDs, the wavelength converter has either only one phosphor, that partially convertsblue light to far-red light, or several phosphors, that partially convert bluelight to far-red light and red light.」
(部分的変換を行うLEDにおいて、波長コンバーターは、青色光を部分的に遠赤色光に変換する一つの蛍光体のみを有するか、又は青色光を部分的に遠赤色光及び赤色光に変換する複数の蛍光体を有する。)

キ 明細書第9頁第1行-第5行
「In the preferred embodiment of the present invention, the generated spectral components have peak wavelengths as follows:
about 730±20 nm for the far-red spectral component,
about 660±20 nm for the red spectral component,
about 450±20 nm for the blue spectral component.」
(本発明の好ましい実施例において、生成されたスペクトルの成分は、次のピーク成分を有する:
遠赤色スペクトル成分の約730±20nm、
赤色スペクトル成分の約660±20nm、
青色スペクトル成分の約450±20nm。)

ク 明細書第13頁第24行-第28行
「Finally, three-component phosphor conversion LEDs, which emit within all three spectral ranges important for plant growth and development (far-red, red, and blue), can be used in illuminators designed for versatile plant cultivation, when all photophysiological needs of plants are met.」
(最後に、植物の成長と発達に重要な3つのスペクトル範囲全て(遠赤色、赤色、青色)内において発光する3成分蛍光体変換LEDは、植物の全ての光生理機能の要求を満たすとき、汎用性のある植物の育成のために設計された照明装置に使用することができる。)

ケ 明細書第19頁第10行-第11行
「Figure 5 shows emission spectra of the proposedplant-cultivation LEDs with partial conversion.」
(図5は、部分的変換を行う提案された植物育成用のLEDの発光スペクトルを示すものである。)

コ 明細書第19頁第25行-第31行
「Figure 5 (b) shows a spectrum of three-component blue-red-far-red light that is generated due to partial conversion of blue light due to electroluminescence in (Ca,Sr,Ba)_(2)Si_(5)N_(8):Eu^(2+) and Gd_(3)Ga_(5)O_(12):Cr^(3+) phosphors, which emit red and far-red light, respectively, due to photoluminescence. The fractional photon fluxes of the blue, red, and far-red components are 20%, 75%, and 5%, respectively. Such blue-red-far-red LEDs can be used for versatile cultivation of plants with all photophysiological needs of plants met.」
(図5(b)は、フォトルミネッセンスにより赤色光及び遠赤色光をそれぞれ発光する(Ca,Sr,Ba)_(2)Si_(5)N_(8):Eu^(2+)及びGd_(3)Ga_(5)O_(12):Cr^(3+)蛍光体が、電界発光による青色光の部分的変換により生成する、青色-赤色-遠赤色3成分光のスペクトルを示すものである。青色、赤色および遠赤色成分の各光子フラックスは、それぞれ20%、75%、及び5%である。かかる青色-赤色-遠赤色LEDは、多目的な植物の育成に使用することができ、植物の全ての光生理機能の要求を満たすものである。)

サ 図5
図5には、次の図示がある。



(6)文献6(国際出願 PCT/FI2010/050716号の優先権主張証明書1(FI、出願番号20095967号、申立書2の甲第4号証)
文献6には、以下の事項が記載されている(申立人は訳文を提出していないので、英文後の仮訳は、当審が括弧書きで付した。)。

ア 明細書第10頁第8行-第15行
「The present invention provides a light emitting diode and a related light fixture suitable for greenhouse cultivation. According to the invention, the light emitting diode has a specific emission frequency pattern, viz. it has at least two spectral characteristics; one emission peak with a full width of hal fmaximum of at least 50 nm or more and having a peak wavelength in the range of 600 to 700 nm, and a second spectral characteristics having a peak wavelength below 500 nm range. The emission peaks of the LED match well with a plant photosynthesis response spectrum and is therefore particularly suitable for high efficiency artificial lighting.」
(本発明が、温室栽培に適した発光ダイオード及び関連する照明器具を提供する。本発明によると、発光ダイオードが、特定の発光周波数パターンを有し、すなわち、これが、少なくとも2つのスペクトル特性を有する;少なくとも50nmまたはそれ以上の半値幅を有する一つの放出ピークであり、600?700nmの範囲のピーク波長を有し、第二のスペクトル特性が、500nm範囲以下のピーク波長を有する。LEDの放出ピークが、植物光合成応答スペクトルと上手く適合し、従って、高効率の人工照明に特に適している。)

イ 明細書第12頁第17行-第18行
「Figures 2 to 5 illustrate a few examples of the emission peaks of the single light emission source LED devices.」
( 図2?5が、単一発光源LEDデバイスの放出ピークの数個の例を示す。)

ウ 明細書第12頁第20行-第27行
「In Figure 2, the semiconductor LED chip emission frequency peaks at a wavelength of 457 nm with emission peaks Full Width of Half Maximum(FWHM) of 25 nm. In this case the up-conversion is done by using two “up-conversion”materials. These two “up-conversion” materials have individual emission peaks at 660 nm and 604 nm. Figure 2 shows the combined emission peak from these two“up-conversion” materials peaking at 651 nm wavelength with emission peaks FWHM of 101 nm. In this case about 40% (calculated from the peak intensities) of thesemiconductor LED chip emission, is up-converted to 651 nm emission by two individual “up-conversion” materials.」
(図2において、半導体LEDチップ発光周波数が、457nmの波長でピークとなり、25nmの放出ピーク半値幅(FWHM)を有する。この場合、波長アップコンバージョンが、2つのアップコンバージョン材料を使用してなされる。これらの2つの波長アップコンバージョン材料が、660nm及び604nmにおける各放出ピークを有する。図2が、651nmの波長においてピークとなるこれらの2つの波長アップコンバージョン材料からの結合された放出ピークを示し、101nmの放出ピークFWHMを有する。この場合、半導体LEDチップ放出物の約40%(ピーク強度から計算される)が、2つの各アップコンバージョン材料によって651nmの放出にアップコンバートされる。)」

エ 明細書第12頁第29行-第13頁第2行
「In Figure 3, the semiconductor LED chip emission frequency peaks at a wavelength of 470 nm with emission peaks Full Width of Half Maximum (FWHM) of30 nm. In this case the up-conversion is done by using two “up-conversion”materials. These two “up-conversion” materials have individual emission peaks at 660 nm and 604 nm. Figure 2 shows the combined emission peak from these two“up-conversion” materials peaking at 660 nm wavelength with emission peaks FWHM of 105 nm. In this case about 60% (calculated from the peak intensities) of thesemiconductor LED chip emission, is up-converted to 660 nm emission by two individual “up-conversion” materials.」
(図3において、半導体LEDチップ発光周波数が、470nmの波長でピークとなり、30nmの放出ピーク半値幅(FWHM)を有する。この場合、波長アップコンバージョンが、2つのアップコンバージョン材料を使用してなされる。これらの2つの波長アップコンバージョン材料が、660nm及び604nmにおける各放出ピークを有する。図2が、660nmの波長においてピークとなるこれらの2つの波長アップコンバージョン材料からの結合された放出ピークを示し、105nmの放出ピークFWHMを有する。この場合、半導体LEDチップ放出物の約60%(ピーク強度から計算される)が、2つの各“アップコンバージョン”材料によって660nmの放出にアップコンバートされる。)」

オ 明細書第14頁第23行-第26行
「To summarize, by tuning the phosphor ratio A:B it is possible to tune the desired phosphor emission spectra from the LED device and by tuning the phosphor concentration in material C it is possible to tune the desired LED chip emission quantity/amount for the LED device.」
(要約すると、蛍光体比A:Bを調節することにより、LEDデバイスからの所望の蛍光体放出スペクトルを調節することが可能であり、材料C中の蛍光体濃度を調節することにより、LEDデバイスに対して、所望のLEDチップ放出の量/総量を調節することが可能である。)

カ 図2
図2には、後記(7)カに示す文献7の図2と同様の図示がある。

キ 図3
図3には、後記(7)キに示す文献7の図3と同様の図示がある。

(7)文献7(国際出願 PCT/FI2010/050716号の優先権主張証明書2(US、出願番号61/243613号、申立書2の甲第5号証)
文献7には、以下の事項が記載されている(申立人は訳文を提出していないので、英文後の仮訳は、当審が括弧書きで付した。)。

ア 【0039】
「The present invention provides a light emitting diode and a related light fixture suitable for greenhouse cultivation. According to the invention, the light emitting diode has a specific emission frequency pattern, viz. it has at least two spectral characteristics; one emission peak with a full width of hal fmaximum of at least 50 nm or more and having a peak wavelength in the range of 600 to 700 nm, and a second spectral characteristics having a peak wavelength below 500 nm range. The emission peaks of the LED match well with a plant photosynthesis response spectrum and is therefore particularly suitable for high efficiency artificial lighting.」
(本発明が、温室栽培に適した発光ダイオード及び関連する照明器具を提供する。本発明によると、発光ダイオードが、特定の発光周波数パターンを有し、すなわち、これが、少なくとも2つのスペクトル特性を有する;少なくとも50nmまたはそれ以上の半値幅を有する一つの放出ピークであり、600?700nmの範囲のピーク波長を有し、第二のスペクトル特性が、500nm範囲以下のピーク波長を有する。LEDの放出ピークが、植物光合成応答スペクトルと上手く適合し、従って、高効率の人工照明に特に適している。)

イ 【0054】
「Figures 2 to 5 illustrate a few examples of the emission peaks of the single light emission source LED devices.」
( 図2?5が、単一発光源LEDデバイスの放出ピークの数個の例を示す。)

ウ 【0055】
「In Figure 2, the semiconductor LED chip emission frequency peaks at a wavelength of 457 nm with emission peaks Full Width of Half Maximum(FWHM) of 25 nm. In this case the up-conversion is done by using two “up-conversion”materials. These two “up-conversion” materials have individual emission peaks at 660 nm and 604 nm. Figure 2 shows the combined emission peak from these two“up-conversion” materials peaking at 651 nm wavelength with emission peaks FWHM of 101 nm. In this case about 40% (calculated from the peak intensities) of thesemiconductor LED chip emission, is up-converted to 651 nm emission by two individual “up-conversion” materials.」
(図2において、半導体LEDチップ発光周波数が、457nmの波長でピークとなり、25nmの放出ピーク半値幅(FWHM)を有する。この場合、波長アップコンバージョンが、2つのアップコンバージョン材料を使用してなされる。これらの2つの波長アップコンバージョン材料が、660nm及び604nmにおける各放出ピークを有する。図2が、651nmの波長においてピークとなるこれらの2つの波長アップコンバージョン材料からの結合された放出ピークを示し、101nmの放出ピークFWHMを有する。この場合、半導体LEDチップ放出物の約40%(ピーク強度から計算される)が、2つの各アップコンバージョン材料によって651nmの放出にアップコンバートされる。)」

エ 【0056】
「In Figure 3, the semiconductor LED chip emission frequency peaks at a wavelength of 470 nm with emission peaks Full Width of Half Maximum (FWHM) of30 nm. In this case the up-conversion is done by using two “up-conversion”materials. These two “up-conversion” materials have individual emission peaks at 660 nm and 604 nm. Figure 2 shows the combined emission peak from these two“up-conversion” materials peaking at 660 nm wavelength with emission peaks FWHM of 105 nm. In this case about 60% (calculated from the peak intensities) of thesemiconductor LED chip emission, is up-converted to 660 nm emission by two individual “up-conversion” materials.」
(図3において、半導体LEDチップ発光周波数が、470nmの波長でピークとなり、30nmの放出ピーク半値幅(FWHM)を有する。この場合、波長アップコンバージョンが、2つのアップコンバージョン材料を使用してなされる。これらの2つの波長アップコンバージョン材料が、660nm及び604nmにおける各放出ピークを有する。図2が、660nmの波長においてピークとなるこれらの2つの波長アップコンバージョン材料からの結合された放出ピークを示し、105nmの放出ピークFWHMを有する。この場合、半導体LEDチップ放出物の約60%(ピーク強度から計算される)が、2つの各“アップコンバージョン”材料によって660nmの放出にアップコンバートされる。)」

オ 【0066】
「To summarize, by tuning the phosphor ratio A:B it is possible to tune the desired phosphor emission spectra from the LED device and by tuning the phosphor concentration in material C it is possible to tune the desired LED chip emission quantity/amount for the LED device.」
(要約すると、蛍光体比A:Bを調節することにより、LEDデバイスからの所望の蛍光体放出スペクトルを調節することが可能であり、材料C中の蛍光体濃度を調節することにより、LEDデバイスに対して、所望のLEDチップ放出の量/総量を調節することが可能である。)

カ 図2
図2には、次の図示がある。


キ 図3
図3には、次の図示がある。


(8)文献8(特開2002-27831号公報、平成14年1月29日公開、当審が職権により探知)

ア 文献8の記載
文献8には、図面と共に次の事項が記載されている。

(ア)発明の属する技術分野、及び発明が解決しようとする課題
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、栽培農場やいわゆる植物工場等に使用することができる、高効率且つ高信頼性の植物育成用光源に関する。
【0002】
【従来の技術】食糧問題が深刻になりつつある現在、環境に左右されることなく安定的に植物を育成するための人工栽培技術の開発は世界的に重要な課題となっている。人工栽培技術の中で重要なものの一つに、植物育成用の人工光源がある。天候に左右されずに安定した植物育成を行うために、自然光(太陽光)に対して補助的に用いる、或いは自然光に完全に代替する人工光源は、特に植物工場等の技術において重要な位置を占める。人工光源によると、その照射タイミング、時間、強度等を植物の種類に応じて適切に制御することにより、安定的に且つ高効率に植物を生長させ、収穫を得ることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】図1はクロロフィル(葉緑素)の光吸収特性を示すグラフである。クロロフィルa、b(高等植物中C_(3)植物の葉緑体にはクロロフィルa及びbがほぼ3対1の割合で存在する)とも400?480nmの紫・青色域と650?700nm付近の赤色域に光吸収ピークを有することがわかる。香川大学工学部の岡本研正は、これらの光吸収ピークがGaAlAs系の超高輝度赤色発光ダイオード(LED)の発光ピーク及び新たに開発された超高輝度青色域LEDの発光ピークとほぼ一致していることに着目し、これらのLEDを基板上に配置して栽培装置を試作し、植物の育成に成功している(「高輝度LEDのバイオ・メディカル分野における新応用」岡本研正,日本学術振興会光電相互変換第125委員会本委員会第168回研究会資料,2000年5月25日)。
【0004】岡本の試作した装置は、クロロフィルの2つの吸光ピークに対応してそれぞれ赤色LEDと青色LEDという別個のLEDを用いたものであるが、本発明は、1個のLEDでクロロフィルの両吸光ピーク(青色域、赤色域)をカバーし、高効率で且つ信頼性の高い植物育成用光源を提供するものである。」

(イ)課題を解決するための手段及び効果
「【0005】
【課題を解決するための手段及び効果】上記のとおり、本発明は基本的に1個のLEDでクロロフィルが必要とする両吸光ピークの光を同時に供給するものであるが、その具体的手段は3種に分かれる。
【0006】第1の手段は、それら両吸収ピークの光を、1個のLED内に設けた2個(或いはそれ以上)の発光層により供給しようとするものである。すなわち、1個のLED内に、波長400?480nmの光を生成する第1発光層と650?700nmの光を生成する第2発光層とを形成する。
【0007】第2の手段は、短波長側(400?480nm)のピークをLED本体で生成させ、長波長側(650?700nm)のピークは、そのLEDを載置する基板で生成させるようにしたものである。この基板には、LED本体が生成する光(400?480nm)を吸収して、650?700nmの光を生成する蛍光体を用いる。なお、ここで言う「載置」には、基板上にLEDの各層を順次積層した場合の他、別途形成したLEDを基板上に置く場合を含む。
【0008】例えば、従来より半導体発光ダイオードの基板として用いられているサファイアにクロム又はチタンを添加することにより、そのような蛍光基板とすることができる。
【0009】第3の手段は、同様に短波長側(400?480nm)のピークをLED本体で生成させ、長波長側(650?700nm)のピークを、それを覆う蛍光体で発生させるというものである。蛍光体としては、上記のクロム又はチタンを添加したサファイアを用いることができる。
【0010】以上、3種のいずれの態様によっても、植物育成に必要な青色及び赤色の両ピークを1個のLEDで一挙に供給することができることになる。このように1個のLEDとすることにより、光源のスペース効率及び信頼性が高まり、特に無人で長期間の自動運転を行うような植物工場等での使用に適した光源となる。」

(ウ)第1の手段の実施形態、第2の手段の第1及び第2の実施形態
「【0011】
【発明の実施の形態】第1の手段の実施形態である植物育成用光源10の一例を図2に示す。この例はInGaN系半導体発光ダイオードを用いたものであり、1個のLEDの中にIn_(x)Ga_(1-x)N発光層を2層11、12設けたものである。これら2つの発光層11、12はn-GaN負極層とp-GaN正極層の間に挟まれ、活性層12とp-GaN層の間には、n-GaN層からの電子のオーバーフローを抑えるためのp-Al_(z)Ga_(1-z)N層(zは通常0.2程度)が、サファイア(Al_(2)O_(3))基板とn-GaN負極層の間には結晶整合のためのGaNバッファ層を設ける。
【0012】第1発光層11は、その発光ピークが400?480nm内となるようにIn:Ga混晶比xを調整する(0.1?0.3程度)。望ましくは、成長させる目的の植物が有するクロロフィル(a又はb)に合わせて、その発光ピークを図1のクロロフィルa又はbのいずれかの吸光ピークに合わせるように調整する。第2発光層12は、その発光ピークが650?700nm内となるようにIn:Ga混晶比xを調整する(0.4?0.8程度)。同じく、クロロフィルa又はbの吸光ピークに合わせて調整することが望ましい。
【0013】なお、InGaN系半導体では長波長側(650?700nm)の発光に未だ困難な点が残されている。そこで、InxGa1-xNに、そのN原子に置き換わるべき等電子トラップ形成元素としてP(燐)、As(砒素)、Sb(アンチモン)、Bi(ビスマス)等の他のV族原子をドープしたものを第2発光層12として用いるとよい。すなわち、長波長側の発光層12として一般式In_(x)Ga_(1-x)N_(1-y)X_(y)(0<x<1;X=P,As,Sb,Bi;0<y<0.01、望ましくは0<y<0.005)で表されるものを用いる。その理由については、特願2000-231572において詳細に説明した。
【0014】ただし、最近では種々の組成の半導体発光ダイオードにおいて発光波長を調整する技術が進んでいるため、上記InGaN系半導体以外にも種々のものを用いることも可能である。
【0015】本発明の第2の手段の第1の実施形態である光源の構成を図3に示す。本実施形態において、光源20は基板21と、その上に載置したLED22から構成される。
【0016】基板21は、チタンを添加したサファイア(Al_(2)O_(3):Ti)を使用する。このような基板は、サファイア(Al_(2)O_(3))に酸化チタン(Ti_(2)O_(3))を混合し、溶融・結晶化を行うことにより容易に得ることができる。チタン添加サファイアは赤色透明結晶であり、そのTi^(3+)イオンにより、図4に示すように、500nm付近に吸収ピークを持ち、700?850nmの赤色?赤外線域に広い発光ピークを有する蛍光体となっている。基板21の裏面には、光反射用の金属膜23を蒸着する。
【0017】この基板21上に載置されるLED22は、In_(x)Ga_(1-x)N活性層(発光層)24を挟んでn-GaN負極層とp-GaN正極層を積層した構造とする。なお、活性層24とp-GaN層の間に、n-GaN層からの電子のオーバーフローを抑えるため、p-Al_(z)Ga_(1-z)N層(zは通常0.2程度)を設ける。また、基板21とn-GaN負極層の間には、結晶整合のためのGaNバッファ層を設ける。
【0018】LED22のIn_(x)Ga_(1-x)N活性層(発光層)24は、480nm付近をピークとした青色光を発光するように、その混晶比xを設定する(具体的には約20%)。
【0019】図5に模式的に示すように、LED22の活性層24で発生した光は、一部はそのまま上部から放出されるが、一部は下方に進んで基板21に入る。その中の更に一部は基板21を通過する(基板21の裏面で反射した後、通過する場合も含む)が、残りは基板21により吸収され、基板21を励起する。励起された基板21は、そのエネルギの一部を蛍光として放出する。従って、この蛍光の波長は吸収された光(すなわち、LED22の光)の波長よりも長い。また、一般的に波長方向に広がりを持つ。
【0020】前述の通り、チタン添加サファイアは図4に示すような吸光/発光特性を有し、上記LED22の発生する480nmの青色光を高い効率で吸収する。そのため、LED22により生成された光はこのチタン添加サファイア基板21を励起し、基板21からは650nm付近から急速に立ち上がる赤色?赤外線域の光が生成される。従って、本実施形態の光源20からは、LED22から直接発光される480nm付近の青色光と650?700nmを含む赤色域の光の混合光が発生される。これらは図1に示すように植物の育成に必要な光であり、本実施形態の光源はこれらを非常に効率よく生成することができる。
【0021】こうしてLEDから生成される光と、それにより励起され生成される基板からの蛍光は、それぞれ前記クロロフィルの短波長側吸光ピーク(400?480nm)と長波長側吸光ピーク(650?700nm)に近い波長を有する。
【0022】次に、上記第2の手段の第2の実施形態を説明する。この実施形態は、基板にクロム添加サファイア(ルビー)を用いる他は、上記第1の実施形態と同様の構造(図3、図5)を有する。クロム添加サファイア(Al_(2)O_(3):Cr)は、図6(a)に示すように、410nm付近(紫色)及び550nm付近(緑色)に吸収ピークを持ち、同図(b)に示すように693nm及び694nm(赤色)に鋭い発光ピークを有する蛍光体である。なお、クロム添加サファイアはチタン添加サファイアと同様、赤色透明結晶であり、そのCr^(3+)イオンにより蛍光を発する。
【0023】上記同様、LED22のIn_(x)Ga_(1-x)N活性層(発光層)のInGa混晶比xを適切に設定して410nm付近の光を発光させることにより、LED22からはクロロフィルaの短波長側吸収ピークに近い波長の光が、基板21からはクロロフィルの長波長側吸収ピークに近い波長の蛍光が放出される。本実施形態の光源20も上記同様、植物の育成に必要な光を効率よく生成することができる。
【0024】なお、第1及び第2の実施形態(図3、図5)ではLED22の上面の発光側に電極及びリード線を設ける必要があるため、電極パッド26、27の面積はできる限り小さくしておくことが望ましい。」

(エ)第2の手段の第3の実施形態
「【0025】本発明の第2の手段の第3の実施形態を説明する。この形態は図7に示すように、基板31を発光側とするものである。基板31には、上記第1及び第2の実施形態で用いたチタン添加サファイア又はクロム添加サファイアのいずれをも用いることができる。LED32の裏面側は金属の蒸着等により電極兼反射面36、37としておく。
【0026】このような構造とすることにより、LED32から発する光の殆どが発光側の基板31に入ることになる。基板31に添加するチタン又はクロムの濃度及び基板31の厚さを適切に設定することにより、LED32からの光の一部が基板31を透過し、一部が基板31に吸収されて上記の通り蛍光を発するようにすることができる。従って、本光源30から放出される光がそれらの混合光となること、及びその発光色を適宜調整することができることについては第1及び第2の実施形態と同じであるが、本実施形態の光源では発光面側(図7において上側)において電極パッド等により光が遮られることがないため、高効率の発光を行うことができるという特長を有する。」

(オ)第3の手段の実施形態
「【0027】本発明の第3の手段の実施形態を図8に示す。この実施形態の光源40は、基板41を通常のサファイアとし、そのLED42の上面を上記チタン/クロム添加サファイア蛍光体43で覆ったものである。その作用及び効果は、上記第2手段の第3実施形態(図7)と同様となる。」

(カ)図1には、次の図示がある。




(キ)図4には、次の図示がある。


(ク)図6(b)には、次の図示がある。


(ケ)図8には、次の図示がある。



イ 記載された発明
上記アより、文献8には、
上記ア(イ)、(オ)及び(ケ)の「第3の手段」を用いる場合に着目し、
上記ア(ア)における従来技術を含む技術分野及び解決しようとする課題が、当該「第3の手段」を用いる場合にも該当すること、
並びに、上記ア(オ)から「第3の手段」を用いる場合にも、上記ア(エ)における「第2の手段の第3の実施形態」と同様の作用及び効果を有すること、
を勘案すると、次の発明(以下、「文献8発明」という。)が記載されている。
「照射タイミング、時間、強度等を植物の種類に応じて適切に制御することにより、安定的に且つ高効率に植物を生長させ、収穫を得る、植物育成用の人工光源であり、
クロロフィル(葉緑素)の光吸収特性が、クロロフィルa、bとも400?480nmの紫・青色域と650?700nm付近の赤色域に光吸収ピークを有することから、クロロフィルの2つの吸光ピークに対応して、短波長側(400?480nm)のピークをLED本体で生成させ、長波長側(650?700nm)のピークを、それを覆う蛍光体で発生させ、蛍光体としては、クロム又はチタンを添加したサファイアを用い、
LED本体が生成する光を吸収する基板にチタン添加サファイア又はクロム添加サファイアを用いた人工光源の場合に、基板に添加するチタン又はクロムの濃度及び基板の厚さを適切に設定することにより、LEDからの光の一部が基板を透過し、一部が基板に吸収されて蛍光を発する、混合光の発光色を適宜調整することができるのと、同様の作用及び効果を有する、
LEDの上面をチタン/クロム添加サファイア蛍光体で覆った、植物育成用の人工光源。」


第5 判断
上記第3のとおり、本件訂正請求による請求項2ないし5及び7についての訂正は全て認められ、請求項2は削除されるとともに、請求項3ないし5及び7のうち請求項2を引用する選択肢も削除された。
そのため、以下では、本件発明1、本件発明6、並びに、本件訂正発明3ないし5及び7について、取り消されるべきか否かを判断する。

1 先の取消理由通知に記載した取消理由について
(1)本件発明1及び6
本件発明1及び6は、本件訂正請求によって訂正されておらず、先の取消理由通知において、本件発明1及び6については、文献8を主たる引用例とした進歩性欠如の取消理由を通知していない。
したがって、本件発明1及び6は、先の取消理由通知において訂正前の請求項2等に対して通知した、文献8を主たる引用例とした進歩性欠如の取消理由により、取り消されるべきものではない。

(2)本件訂正発明3ないし5及び7
本件訂正発明3ないし5及び7は、本件発明1の構成を全て有したうえで、さらに限定を付したものであるところ、先の取消理由通知において、訂正前の請求項3ないし5及び7のうち、訂正前の請求項2を引用する選択肢については文献8を主たる引用例とした進歩性欠如の取消理由を通知したが、本件発明1を直接又は間接的に引用する選択肢については、文献8を主たる引用例とした進歩性欠如の取消理由を通知していない。
したがって、本件訂正発明3ないし5及び7は、先の取消理由通知において通知した、文献8を主たる引用例とした進歩性欠如の取消理由によって、取り消されるべきものではない。

2 先の取消理由通知において採用しなかった異議申立理由について
(1)記載不備
申立人は申立書1において、本件発明1及び6、並びに本件訂正発明3ないし5及び7が有する、「前記LEDに含まれる少なくとも1つのアップコンバージョン材料」という事項について、技術常識から考えても、アップコンバージョン材料がLED素子の中に含まれているようなLED素子は、一般に知られていないから、当該発明特定事項は不明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない旨を申し立てている。
また、申立人は申立書1において、上記の発明特定事項に関し、本件明細書には「LEDチップに直接的に近接して堆積される光波長アップコンバージョン蛍光体」(【0056】、【0057】)などの記載はあっても、LED自体(LEDチップ、LED発光源、又はLED素子(半導体))の中にアップコンバージョン材料が含まれていることに関しては何らの記載もないから、当該構成は明細書に記載されたものではなく、当業者が実施できるものでもないとして、特許法第36条第6項第1号違反、及び同条第4項第1号違反である旨を申し立てている(申立書1第55頁第5行-同頁下から2行、及び第56頁第4行-第17行)。

当該申立理由について判断する。
本件発明1を特定する請求項1には、「LED」という語と「LEDチップ」という語が用いられている。そして、「LEDチップ」については、「アップコンバージョン材料によるLEDチップ放射電力の完全なまたは部分的な波長アップコンバージョン」が行われるものであるから、アップコンバージョン材料による波長アップコンバージョンが行われる前段階で光を放出するチップ部品であると理解できる。また「LED」については、「波長アップコンバージョンを使用して生成」された「600?800nmの波長」の光を含めて、「380?850nmの波長範囲に設定された光を放出するように構成された」ものであるから、「LEDチップ」単体ではなく、LEDチップ放射電力を波長アップコンバージョンする「アップコンバージョン材料」と「LEDチップ」との両者を含むものと理解できる。そして、「LEDチップ」及びLEDチップと協働する「アップコンバージョン材料」の両者を含むLEDについて、請求項1が「LEDに含まれる少なくとも1つのアップコンバージョン材料」と記載した点に、発明特定事項として不明確な点はない。
この点に関する申立人の主張は、請求項1において「LEDチップ」と「LED」という2つの語が用いられていること、及び、当該2つの用語について光の放出に関する記載が区別されていることを失念し、請求項1における「LED」の語は、LEDチップに堆積されるアップコンバージョン材料等を含まない「LEDチップ」のみを意味するとの誤解に基づく主張とも思われる。
しかしながら、前述のとおり請求項1の記載は明確に理解することができるから、本件発明1について、申立人が申し立てる点で、発明が不明確なものではない。本件発明1を引用する、本件発明6、並びに、本件訂正発明3ないし5及び7についても、同様である。

そして、本件明細書には、申立人が言及する段落【0056】及び【0057】にも、「光波長アップコンバージョン蛍光体」を「LEDチップに直接的に近接して堆積」することが記載されているから、LEDチップに光波長アップコンバージョン蛍光体を堆積してLEDを構成し、もって「LEDに含まれる少なくとも1つのアップコンバージョン材料」という本件発明1の構成とすることは、本件明細書に記載されており、かつ本件発明の詳細な説明に実施可能な程度の説明がされているものである。
そのため、本件発明1は、申立人が申し立てる点で、サポート要件違反、及び実施可能要件違反を有するものではない。本件発明1を引用する、本件発明6、並びに、本件訂正発明3ないし5及び7についても、同様である。

したがって、本件発明1及び6、並びに、本件訂正発明3ないし5及び7について、申立人が申し立てる特許法第36条第6項第2号違反、同項第1号違反、及び同条第4項第1号違反はなく、それらの発明についての特許は、当該申立理由によって取り消されるべきものではない。

(2)文献1を主たる引用例、文献2?4を副引用例若しくは周知技術とした進歩性
ア 本件発明1について
(ア)対比
文献1発明と、本件発明1とを対比する。
文献1発明において、「光源220と色変換器100,100’」が「植物育成装置200に用いる」ものであり、「光源220からの投入光210に含まれる青色や緑色成分の光を赤色光に変換して植物の光合成に有効な赤色成分を富化することにより、青色と赤色との成分の割合を制御した変換光230を生成でき、植物の育成を促進できる」ものである点は、本件発明1における「発光部品」が、「植物栽培のために特に適した」ものである構成に相当する。また、文献1発明において、「光源220」として「人工光源」を用いる場合、「光源220と色変換器100,100’」とは、発光する部品も含む複数の部品の組み合わせとなるから、文献1発明における当該構成は、本件発明1における「発光部品」に相当する。
文献1発明において、「光源220と色変換器100,100’」が「光源220からの投入光210に含まれる青色や緑色成分の光を赤色光に変換して植物の光合成に有効な赤色成分を富化することにより、青色と赤色との成分の割合を制御した変換光230を生成」する構成と、本件発明1において「発光部品」が「380?850nmの波長範囲に設定された光を放出するよう構成された少なくとも1つの発光ダイオード(LED)であって、放出された前記光の放出スペクトルが、前記少なくとも1つのLEDの照明によって栽培される植物の光合成反応に適合するLED」を有する構成とは、「放出された光の放出スペクトルが、栽培される植物の光合成反応に適合」するという点で、共通する。
文献1発明において、「光源220」に用いる「4.5×10^(2)nm以上7.0×10^(2)nm以下の波長成分の可視光を発生する白熱電球、蛍光ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプおよびLEDランプからなる群から選択される、従来の既存の人工光源」と、本件発明1における「LEDチップ」とは、「光源」という点で共通する。
文献1発明における「蛍光体110」は、「投入光210における短波長成分を長波長成分に変換」するから、本件発明1における「アップコンバージョン材料」に相当する。
文献1発明における「蛍光体110」が、「光源220」が発する「投入光210」における「短波長成分を長波長成分に変換」し、「4.5×10^(2)nm以上5.8×10^(2)nm未満の波長の可視光である短波長成分が減少して、5.8×10^(2)nm以上7.0×10^(2)nm以下の可視光である長波長成分が富化した変換光230を植物240に照射」する構成は、富化される「5.8×10^(2)nm以上7.0×10^(2)nm以下の可視光」が「光源220」が発する「投入光210」の「変換」によって生成されると解されること、及び、当該「変換」によって生成された「5.8×10^(2)nm以上7.0×10^(2)nm以下の可視光」の中には、波長600nm以上の光も当然に含まれていると解されることを勘案すると、本件発明1における「600?800nmの波長における全てまたは一部の放出が、前記LEDに含まれる少なくとも1つのアップコンバージョン材料によるLEDチップ放射電力の完全なまたは部分的な波長アップコンバージョンを使用して生成され」る構成とは、「600?800nmの波長における全てまたは一部の放出が、少なくとも1つのアップコンバージョン材料による光源の放射電力の完全なまたは部分的な波長アップコンバージョンを使用して生成され」る構成である点で、一致する。

以上より、文献1発明と本件発明1とは、
「植物栽培のために特に適した発光部品であって、
放出された光の放出スペクトルが、栽培される植物の光合成反応に適合し、
600?800nmの波長における全てまたは一部の放出が、少なくとも1つのアップコンバージョン材料による光源の放射電力の完全なまたは部分的な波長アップコンバージョンを使用して生成される、
発光部品。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1においては、光源として「LEDチップ」を使用し、「アップコンバージョン材料」を「LEDに含まれる」ものとして、「380?850nmの波長範囲に設定された光を放出するよう構成された少なくとも1つの発光ダイオード(LED)であって、放出された前記光の放出スペクトルが、前記少なくとも1つのLEDの照明によって栽培される植物の光合成反応に適合するLED」を有するものとして、「発光部品」を構成するのに対し、
文献1発明においては、「既存の人工光源」として「LEDランプ」を用いる選択肢を有するものの、「蛍光体110」をLEDに含めて、「LEDチップ放射電力」を変換する「アップコンバージョン材料」を含む「少なくとも1つのLED」としておらず、「380?850nmの波長範囲に設定された光を放出するよう構成された少なくとも1つの発光ダイオード(LED)であって、放出された前記光の放出スペクトルが、前記少なくとも1つのLEDの照明によって栽培される植物の光合成反応に適合するLED」を有していない点。

<相違点2>
放出する光について、
本件発明1においては、「a)600から700nmの波長範囲でピークを有し、少なくとも50nmまたはそれを超える半値幅を示すように調節された第1のスペクトル特性と、b)50nmの半値幅の最大値を有し、440から500nmの範囲でピーク波長を示すように調節された第2のスペクトル特性と」、を有し、「d)500?600nmの波長の放出の少なくとも一部または全部が、400?500nmバンドの強度以下かつ600?700nmバンドの強度以下に低減されるように調節される」ことが特定されているのに対し、
文献1発明においては、「4.5×10^(2)nm以上5.8×10^(2)nm未満の波長の可視光である短波長成分が減少して、5.8×10^(2)nm以上7.0×10^(2)nm以下の可視光である長波長成分が富化した変換光230」とし、「変換光230における波長4.5×10^(2)nm?5.0×10^(2)nmの波長の青色成分の光量子束(PPF(B))と、波長6.0×10^(2)nm?7.0×10^(2)nmの波長の赤色成分の光量子束(PPF(R))との比(PPF(B)/PPF(R))が、0.05以上0.4以下の間の値となるように調整」しているものの、「a)600から700nmの波長範囲でピークを有し、少なくとも50nmまたはそれを超える半値幅を示すように調節された第1のスペクトル特性と、b)50nmの半値幅の最大値を有し、440から500nmの範囲でピーク波長を示すように調節された第2のスペクトル特性と」、を有し、「d)500?600nmの波長の放出の少なくとも一部または全部が、400?500nmバンドの強度以下かつ600?700nmバンドの強度以下に低減されるように調節される」とは特定されていない点。

(イ)判断
事案に鑑み、上記相違点2について判断する。
a 文献2に基づく検討
文献2には、上記第4の3(2)に摘記した事項が記載されており、LEDを用いた白色発光装置として、可視光の短波長領域の約444nmに第1の発光ピーク波長を持ち青紫色に発光する青紫色LED発光素子108aと、青紫色LED発光素子108aからの光により励起され約609nmに発光ピーク波長を持つ窒化物蛍光体を用いた蛍光物質140と、第1の発光ピーク波長よりも長波長側かつ蛍光物質140の発光ピーク波長よりも短波長側の約533nmに第2の発光ピーク波長を持ち緑色に発光する緑色LED発光素子108bとを有する構成が開示されている。そして、青紫色LED発光素子108aと窒化物蛍光体を用いた蛍光物質140とを発光させた際には、青紫色の約444nmと赤色の約609nmに発光ピーク波長を持つが、480nmから560nmの領域ではほとんど発光していないことも示されており、文献2において青紫色LED発光素子108aと窒化物蛍光体を用いた蛍光物質140とを発光させた際の図10及び図11に示されるスペクトル分布は、上記相違点2に係る本件発明1の構成におけるLEDのスペクトル分布に類似している。
しかしながら、文献2が開示するLEDを用いた白色発光装置は、緑色LED発光素子108bと合わせて白色の発光装置とする前提であり、パッケージ成形体100の中に青紫色LED発光素子108aと緑色LED発光素子108b及び蛍光物質140を備えているから、蛍光物質140を含むパッケージ成形体100からなるLEDの全体としては、上記相違点2に係る本件発明1の構成におけるスペクトル分布とはならず、文献1発明に文献2のLEDを用いた白色発光装置の構成を適用しても、相違点2に係る本件発明1の構成とはならない。
また、文献2はLEDを用いた白色発光装置とすることを意図しており、植物の育成に用いること、白色の発光装置とすることを離れて青紫色LED発光素子108aと窒化物蛍光体を用いた蛍光物質140の組み合わせだけを切り出して用いることは、記載も示唆もされていない。そのため、文献2には、文献2が開示する白色発光装置のうち、青紫色LED発光素子108aと窒化物蛍光体を用いた蛍光物質140の組み合わせだけを切り出して、他の用途に用いる動機付けがない。
そして、文献1発明においても、使用する光源は「3.8×10^(2)nm?7.8×10^(2)nmの範囲の可視光を万遍なく含む太陽光」あるいは「4.5×10^(2)nm以上7.0×10^(2)nm以下の波長成分の可視光を発生する白熱電球、蛍光ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプおよびLEDランプからなる群から選択される、従来の既存の人工光源」であり、「投入光210に含まれる青色や緑色成分の光を赤色光に変換して、植物の光合成に有効な赤色成分を富化する」際に「波長4.5×10^(2)nm?5.0×10^(2)nmの波長の青色成分の光量子束(PPF(B))と、波長6.0×10^(2)nm?7.0×10^(2)nmの波長の赤色成分の光量子束(PPF(R))との比(PPF(B)/PPF(R))」を調整していても、生成した変換光230は「4.5×10^(2)nm以上5.8×10^(2)nm未満の波長の可視光である短波長成分が減少して、5.8×10^(2)nm以上7.0×10^(2)nm以下の可視光である長波長成分が富化した」ものであればよく、第4の3(1)ア(オ)に摘記した図6にも示されるとおり、青色成分と赤色成分とにそれぞれピークを有し2つのピークの間を低減したものではない。そのため文献1発明においても、文献2が示すLEDを用いた白色発光装置から、青紫色LED発光素子108aと窒化物蛍光体を用いた蛍光物質140の組み合わせだけを切り出して採用する改変を行い、もって放出する光のスペクトル特性を変更する動機付けがあったということはできない。
したがって、文献1発明において、たとえ文献2に記載される事項を考慮しても、上記相違点2に係る本件発明1の構成に至ることが、当業者にとって容易であったということはできない。

b 文献3に基づく検討
文献3には、上記第4の3(3)に摘記した事項が記載されており、様々な色温度において演色性がよい照明光源180として、470nmのピーク波長の光を発する第2青LED111と、445nmのピーク波長の光を発する第1青LED121と第1青LED131と、第2青LED111によって励起される黄色蛍光体112と、第1青LED121によって励起される緑色蛍光体122と、第1青LED131によって励起される赤色蛍光体132とを備え、第2青LED111が発する光のピーク波長と、第1青LED121、第1青LED131が発する光のピーク波長とが異なる構成が記載されている。また、青色発光ダイオードと青色発光ダイオードが発する光によって励起されて赤色を発する赤色蛍光体とが一体に形成された赤色発光ダイオードである赤LEDの発光分布も示されており、図6に示される当該赤LEDのスペクトル分布は、上記相違点2に係る本件発明1の構成におけるLEDのスペクトル分布に類似している。
しかしながら、文献3が開示する照明光源は、放射する光の演色性をよくするために、図6に示される赤LED、青LED及び緑LEDの光を合成したうえで、さらに蛍光体を励起する青LEDのピーク波長を複数とすることで、図7に破線で囲った部分に示される青色と他の色との境界における強弱を減らすことを意図したものである。そのため、文献3が開示する照明光源のうち、青色発光ダイオードと青色発光ダイオードが発する光によって励起されて赤色を発する赤色蛍光体とが一体に形成された赤色発光ダイオードの部分のみを切り出して、他の用途に用いる動機付けが、文献3にあるということはできない。なお、文献3の段落【0022】-【0023】及び【0181】-【0182】には、「380nm以下のピーク波長の光を発する励起光源をさらに備え」た場合に、「例えば、ある種の植物や海ガメの飼育などに効果的な照明とすることができる」旨の記載があるが、当該記載は、さらに紫外領域の励起光を追加して照射する光のスペクトル範囲を拡充した場合に、ある種の植物や海ガメの飼育に効果的となる場合があることを述べるにとどまり、文献3が開示する照明光源の一要素である、青色発光ダイオードと青色発光ダイオードが発する光によって励起されて赤色を発する赤色蛍光体とが一体に形成された赤色発光ダイオードの部分のみを切り出して、植物の育成に用いることを示唆するものではない。
そして、文献1発明においても、先に上記aにおいて文献2に関して指摘したと同様の理由で、文献3が示す演色性がよい照明装置から、青色発光ダイオードと青色発光ダイオードが発する光によって励起されて赤色を発する赤色蛍光体とが一体に形成された赤色発光ダイオードの部分のみを切り出して採用する改変を行い、もって放出する光のスペクトル特性を変更する動機付けがあったということはできない。
したがって、文献1発明において、たとえ文献3に記載される事項を考慮しても、上記相違点2に係る本件発明1の構成に至ることが、当業者にとって容易であったということはできない。

c 文献4に基づく検討
文献4には、上記第4の3(4)に摘記した事項が記載されており、植物が光を受容する際に、クロロフィルが吸収できない波長の光を集めるためにカロテノイドも用いること、及び、カロテノイドの吸収スペクトルのピークは概略400?500nmの範囲内に分布し、クロロフィルa及びクロロフィルbの短波長側のピークに近接していることが示されている。
しかしながら、文献4には、カロテノイドの他にも植物が利用する種々の光受容体の吸収スペクトルが記載されており、文献1発明において放出する光のスペクトル分布を、上記相違点2に係る本件発明1のスペクトル分布とすべきことが、文献4に記載又は示唆されているということはできない。
そして、文献1発明においても、使用する人工光源は「従来の既存の人工光源」で足りており、生成する変換光230についても、「4.5×10^(2)nm以上5.8×10^(2)nm未満の波長の可視光である短波長成分が減少して、5.8×10^(2)nm以上7.0×10^(2)nm以下の可視光である長波長成分が富化した」ものであればよく、第4の3(1)ア(オ)に摘記した図6にも示されるとおり、青色成分と赤色成分とにそれぞれピークを有し2つのピークの間を低減したものではないから、たとえ文献4の記載を考慮したとしても、さらに放出する光のスペクトル特性を改変して上記相違点2に係る本件発明1のスペクトル分布とすべき動機付けがあったということはできない。
したがって、文献1発明において、たとえ文献4に記載される事項を考慮しても、上記相違点2に係る本件発明1の構成に至ることが、当業者にとって容易であったということはできない。

d 小括
以上のとおり、文献1発明において、上記相違点2に係る本件発明1の構成に至ることは、たとえ文献2ないし4に記載された事項を考慮しても、当業者にとって容易であったということはできない。
そして、上記相違点2に係る本件発明1の構成が想到容易でないから、上記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、文献1発明において、文献2ないし4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明1は、申立人が申立書1において申し立てる、文献1を主たる引用例、文献2?4を副引用例若しくは周知技術とした進歩性についての取消理由によって、取り消されるべきものではない。

イ 本件発明6、並びに本件訂正発明3ないし5及び7について
本件発明6、及び本件訂正発明3ないし5及び7は、本件発明1の構成を全て有し、さらに限定を加えたものである。
そして、本件発明1が、上記アのとおり、文献1発明において、文献2ないし4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1をさらに限定した本件発明6、及び本件訂正発明3ないし5及び7も、文献1発明において、文献2ないし4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明6、並びに本件訂正発明3ないし5及び7も、申立人が申立書1において申し立てる、文献1を主たる引用例、文献2?4を副引用例若しくは周知技術とした進歩性についての取消理由によって、取り消されるべきものではない。

(3)優先権主張不適、及び文献5を主たる引用例とした新規性及び進歩性
ア 優先権主張の適否
申立人は申立書2において、本件発明1が有する、「500?600nmの波長の放出の少なくとも一部または全部が、400?500nmバンドの強度以下かつ600?700nmバンドの強度以下に低減されるように調節される」という事項は、本件特許の優先権主張の基礎である文献6及び文献7には記載されておらず、本件特許の新規性及び進歩性の判断基準日は、優先権主張日ではなく、本件特許の原々出願の現実の出願日である2010年9月16日となる旨を申し立てている(申立書2第2頁下半分-第9頁、及び第30頁第1行-第13行)。
そこで、本件特許の優先権主張の適否について判断する。
本件特許が優先権主張の基礎とする、先の出願1の明細書及び図面である文献6、及び、先の出願2の明細書及び図面である文献7には、それぞれ上記第4の3(6)及び(7)に摘記した事項が記載されている。
発光ダイオードの発光周波数パターンに関し、文献7の段落【0039】に「600?700nmの範囲のピーク波長」と「500nm範囲以下のピーク波長」とを有するパターンとすることが記載されていること、同段落【0055】及び第2図、並びに同段落【0056】及び第3図に、2つのアップコンバージョン材料を使用して長波長側の放出ピーク範囲を調整し、400nm?500nmバンド内の放出ピークと600nm?700nmバンド内の放出ピークとの間に、両放出ピークの谷間となる領域を有する2つのパターンが示されていること、並びに、段落【0066】に、2つのアップコンバージョン材料である蛍光体比A:B、及び蛍光体濃度の調節により、蛍光体放出スペクトル、及び放出の総量に対するLEDチップの放出量を調節できることが記載されていることを勘案すると、2つの放出ピーク範囲の間である500?600nmの波長について、放出の少なくとも一部または全部を、400?500nmバンド及び600?700nmバンドの強度以下とすることは、文献7に示される先の出願2の明細書及び図面に記載されていたということができる。
文献6にも、上記第4の3(6)に摘記したとおり、上記第4の3(7)に摘記した文献7と同様の記載があるから、発光ダイオードの発光周波数パターンに関し、2つの放出ピーク範囲の間である500?600nmの波長について、放出の少なくとも一部または全部を、400?500nmバンド及び600?700nmバンドの強度以下とすることは、文献6に示される先の出願1の明細書及び図面に記載されていたということができる。
したがって、本件発明1が有する「500?600nmの波長の放出の少なくとも一部または全部が、400?500nmバンドの強度以下かつ600?700nmバンドの強度以下に低減されるように調節される」という事項は、本件特許の優先権の基礎である先の出願1及び2の明細書及び図面に、いずれも記載されていたということができ、本件特許が優先権主張の利益を享受することができない旨をいう申立人の申立は、採用することができない。

イ 文献5を主たる引用例とした新規性及び進歩性
申立人は申立書2において、本件特許の新規性及び進歩性の判断基準日は、優先権主張日ではなく、本件特許の原々出願の現実の出願日である2010年9月16日となり、本件特許の請求項1及び3ないし7に係る発明は、本件特許の原出願日前に頒布された文献5に記載された発明と同一であるか、文献5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨を申し立てている(申立書2第30頁第1行-第43頁下から3行)。
当該申立について判断する。
上記アのとおり、本件特許が優先権主張の利益を享受することができない旨をいう申立人の申立は、採用することができず、本件特許の新規性及び進歩性の判断基準日は、優先権主張日である2009年9月18日となるから、当該優先権主張日より後の2010年5月14日に国際公開された文献5は、本件発明1及び6、並びに本件訂正発明3ないし5及び7に関して、新規性進歩性を判断するうえでの先行技術とすることができない。
したがって、本件発明1及び6、並びに本件訂正発明3ないし5及び7は、申立人が申し立てる、文献5を主たる引用例とした新規性及び進歩性欠如の特許異議申立理由によって、取り消されるべきものではない。

(4)優先権主張不適、及び文献1を主たる引用例とし、文献5並びに文献4を副引用例並びに周知技術とした進歩性
ア 優先権主張の適否
申立人は申立書2において、本件発明1が有する、「500?600nmの波長の放出の少なくとも一部または全部が、400?500nmバンドの強度以下かつ600?700nmバンドの強度以下に低減されるように調節される」という事項は、本件特許の優先権の基礎である文献6及び文献7には記載されておらず、本件特許の新規性及び進歩性の判断基準日は、優先権主張日ではなく、本件特許の原々出願の現実の出願日である2010年9月16日となる旨を申し立てている(申立書2第30頁第1行-第13行)。
しかしながら、優先権主張の適否については上記(3)アに判断したとおりであり、本件特許が優先権主張の利益を享受することができない旨をいう申立人の申立は、採用することができない。

イ 文献1を主たる引用例とし、文献5並びに文献4を副引用例並びに周知技術とした進歩性
申立人は申立書2において、本件特許の新規性及び進歩性の判断基準日は、優先権主張日ではなく、本件特許の原々出願の現実の出願日である2010年9月16日となり、本件特許の請求項1及び3ないし7に係る発明は、本件特許の原出願日前に頒布された文献1に記載された発明に基いて、若しくは文献1に記載された発明及び文献5並びに文献4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨を申し立てている(申立書2第43頁下から2行-第59頁第4行)。
当該申立について、判断する。
優先権主張の適否については上記(3)アに判断したとおりであり、本件特許が優先権主張の利益を享受することができない旨をいう申立人の申立は、採用することができない。
そのため、本件特許の優先権主張日である2009年9月18日より後の、2010年5月14日に国際公開された文献5は、本件発明1及び6、並びに本件訂正発明3ないし5及び7に関して、新規性進歩性を判断するうえでの先行技術とすることができず、文献5を副引用例若しくは周知技術として進歩性の欠如を主張する申立人の申立は、採用することができない。
そして、本件の優先権主張日より前に公知となった文献1に記載された発明、及び文献4に示される周知技術に基いて、当業者が本件特許の請求項1及び3ないし7に係る発明を容易に発明することができた旨をいう申立人の申立については、上記(2)に判断したとおり、採用することができない。

3 申立人の主張について
(1)文献1を主たる引用例とした進歩性
ア 文献1に記載された発明について
申立人は申立書1及び2において、文献1には次の引用発明が記載されていると主張している(申立書1第41頁最終行?第42頁第24行、申立書2第50頁第1行?第26行)。

<申立人が主張する引用発明>
「植物栽培のために特に適した発光部品であって、
青色成分(波長4.0×10^(2)nm?5.0×10^(2)nm)及び赤色成分(波長6.0×10^(2)nm?7.0×10^(2)nm)の波長範囲に設定された光を放出するように構成された少なくとも1つの発光ダイオード(LED)であって、
放出された光の放出スペクトルが、LEDの照明によって栽培される植物の光合成反応に適合するように調節されたLEDを有し、前記LEDが、
6.0×10^(2)nm?7.0×10^(2)nmの波長を含み、663nmの波長にピークを有し、少なくとも半値幅が50nm以上であるスペクトル特性と、
4.0×10^(2)nmから5.0×10^(2)nmの波長を含むスペクトル特性を有し、
前記LEDに含まれる短波長成分の光を、かかるLEDに近接する蛍光体が吸収し、赤色(6.0×10^(2)nm?7.0×10^(2)nmの波長を含む)を主体とする長波長成分を有する光を生成して放出し、
緑色成分(波長5.0×10^(2)nmから5.8×10^(2)nm)の波長をゼロとし、又はその波長の強度を、青色成分(4.0×10^(2)nm?5.0×10^(2)nmの波長を含む)及び赤色成分(6.0×10^(2)nm?7.0×10^(2)nmの波長を含む)の波長の強度より少なくなるように低減させるように調節していることを特徴とする植物育成装置」

そして申立人は、文献1における、色変換器を用いて赤色成分と青色成分をバランス良く含む植物育成用の光を生成する旨の記載、太陽光や人工光源に含まれる光のうち、光合成への寄与が少ない緑色成分や過剰に含まれる青色成分の光を蛍光体で赤色に変換する旨の記載、投入光130としてLEDランプを用いる旨の記載、蛍光体の量を変えて赤色成分と青色成分の比を変化させるうえで、マルチチャンネル分光器で波長4.0×10^(2)nmから5.0×10^(2)nmの波長の青色成分のフォトン数と波長6.0×10^(2)nmから7.0×10^(2)nmの波長の波長の赤色成分のフォトン数とを計測する旨の記載等から、文献1に記載される発明を上記申立人主張のとおり認定できる旨を主張している(申立書1第23頁第4行?第41頁下から3行、並びに、申立書2第33頁下から2行?第39頁の図面まで及び第44頁第1行?第49頁最終行)。

しかしながら、文献1の記載は上記第4の3(1)アに示したとおりであり、文献1はLEDに関して、色変換前の「5.8×10^(2)nm未満の短波長成分と、5.8×10^(2)nm以上の長波長成分とを有する」投入光210を発する光源220として、「3.8×10^(2)nm?7.8×10^(2)nmの範囲の可視光を万遍なく含」む「太陽光」と並べて、「白熱電球、蛍光ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプおよびLEDランプからなる群から選択される人工光源」に言及するにとどまる。また文献1においては、「LEDランプ」を一例に含む「人工光源」についても、「新規の人工光源を開発することなく従来の既存の人工光源を用いる」ことが意図されている。
そのため、文献1において、「少なくとも1つの発光ダイオード(LED)」として、申立人が主張するように、「青色成分(波長4.0×10^(2)nm?5.0×10^(2)nm)及び赤色成分(波長6.0×10^(2)nm?7.0×10^(2)nm)の波長範囲に設定された光を放出するように構成」され、「放出された光の放出スペクトルが、LEDの照明によって栽培される植物の光合成反応に適合するように調節された」LEDであり、「6.0×10^(2)nm?7.0×10^(2)nmの波長を含み、663nmの波長にピークを有し、少なくとも半値幅が50nm以上であるスペクトル特性と、4.0×10^(2)nmから5.0×10^(2)nmの波長を含むスペクトル特性を」有するLEDが、記載されているということはできない。
また、文献1において、光源220の投入光210を色変換して、植物に照射される変換光230についてみても、「3.0×10^(2)nm?5.8×10^(2)nmの波長成分の光が減少し、6.0×10^(2)nm以上の波長成分の光の量が増加した」ことを示す指標として、「マルチチャンネル分光器で計測された4.0×10^(2)nm?5.0×10^(2)nmの波長成分のフォトン数」及び「上記のマルチチャンネル分光器で計測された6.0×10^(2)nm?7.0×10^(2)nmの波長成分のフォトン数」を用いて、「青色成分と赤色成分及びB/R比」を示しているにとどまり、放出する光のスペクトル分布は図6にも示されるとおり、青と緑の両方を減らして全体として赤色領域が富化されたものとはしていても、青と赤との2つのピークを生成してその間の緑の領域を赤及び青より減少させてはいない。
そのため、文献1において、植物に照射する光として、申立人が主張するように、「緑色成分(波長5.0×10^(2)nmから5.8×10^(2)nm)の波長をゼロとし、又はその波長の強度を、青色成分(4.0×10^(2)nm?5.0×10^(2)nmの波長を含む)及び赤色成分(6.0×10^(2)nm?7.0×10^(2)nmの波長を含む)の波長の強度より少なくなるように低減させるように調節」することが、記載されているということもできない。

したがって、文献1に、申立人が主張する引用発明が記載されているということはできず、文献1に記載された発明は、上記第4の3(1)イに示した文献1発明のとおりに認定されるべきものである。

イ 本件発明1と文献1に記載された発明との相違点、及び相違点の容易想到性について
申立人は申立書1及び申立書2において、文献1には上記アに示した引用発明が記載されており、本件発明1と文献1に記載された発明とは、申立人が主張する次の相違点を除き、全て一致する旨を主張している(申立書1第42頁第25行?第46頁第8行、並びに、申立書2第50頁第27行?第54頁第17行)。

<申立人が主張する相違点>
本件発明1では、第2スペクトル特性が50nmの半値幅の最大値を有し、440?500nmの範囲でピーク波長を示すように調節されたものであるのに対し、引用発明は、4.0×102nm?5.0×102nmの波長を含むスペクトル特性を有することを開示しているものの、その半値幅及びピーク波長に関する具体的な開示がない点。

そして、申立人は申立書1及び2において、上記相違点は設計事項、若しくは文献2ないし5に記載される事項に基いて当業者が容易に想到できた旨を申し立てている(申立書1第46頁第9行?第51頁下から4行、並びに、申立書2第54頁18行?第56頁第8行)。

しかしながら、上記アに示したとおり、文献1に申立人が主張する引用発明が記載されているということはできず、文献1に記載された発明は、申立人が主張する引用発明ではなく、上記第4の3(1)イに示した文献1発明のとおりに認定されるべきものであるから、本件発明1と文献1に記載された発明との相違点も、申立人が主張する相違点ではなく、上記2(2)ア(ア)に示した相違点1及び相違点2のとおり認定すべきものである。
そして、上記2(2)ア(イ)に判断したとおり、相違点2は文献2ないし4に記載される事項を考慮しても当業者にとって想到容易でないから、本件発明1と文献1に記載された発明との相違点が、設計事項若しくは文献2ないし4に記載された事項に基いて当業者が容易に想到できた旨をいう申立人の主張は、採用することができない。また、上記2(4)ア及びイに示したとおり、文献5は本件発明1の新規性進歩性を判断するうえでの先行技術とすることができないから、本件発明1と文献1に記載された発明との相違点が、文献5に記載された事項に基いて当業者が容易に想到できた旨をいう申立人の主張も、採用することができない。

ウ 小括
したがって、文献1を主たる引用例とした、本件発明1及び6、並びに本件訂正発明3ないし5及び7の進歩性について、申立人の主張を考慮しても、上記2(2)及び2(4)と異なる判断をすべき事情を見いだすことはできない。

(2)その他の申立人の主張について
申立人は申立書1において、本件発明1及び6、並びに本件訂正発明3ないし5及び7には記載不備の取消理由がある旨を申し立てているが(申立書1第55頁第5行-同頁下から2行、及び第56頁第4行-第17行)、その点については上記2(1)に判断したとおりである。
また、申立人は申立書2において、本件発明1及び6、並びに本件訂正発明3ないし5及び7は、優先権主張の利益を享受することができず、本件特許の原出願日前に頒布された文献5に記載された発明と同一であるか、文献5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨を申し立てているが(申立書2第30頁第1行-第43頁下から3行)、この点については、上記2(3)に判断したとおりである。


第6 むすび
以上のとおり、請求項2ないし5及び7についての本件訂正は全て認められるとともに、本件発明1及び6、並びに本件訂正発明3ないし5及び7に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。また、本件発明1及び6、並びに本件訂正発明3ないし5及び7に係る特許について、他に取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項2に係る発明は、本件訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てのうち、請求項2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物栽培のために特に適した発光部品であって、
380?850nmの波長範囲に設定された光を放出するよう構成された少なくとも1つの発光ダイオード(LED)であって、放出された前記光の放出スペクトルが、前記少なくとも1つのLEDの照明によって栽培される植物の光合成反応に適合するLEDを有し、
前記少なくとも1つのLEDが、
a)600から700nmの波長範囲でピークを有し、少なくとも50nmまたはそれを超える半値幅を示すように調節された第1のスペクトル特性と、
b)50nmの半値幅の最大値を有し、440から500nmの範囲でピーク波長を示すように調節された第2のスペクトル特性と、
を有し、
c)600?800nmの波長における全てまたは一部の放出が、前記LEDに含まれる少なくとも1つのアップコンバージョン材料によるLEDチップ放射電力の完全なまたは部分的な波長アップコンバージョンを使用して生成され、
d)500?600nmの波長の放出の少なくとも一部または全部が、400?500nmバンドの強度以下かつ600?700nmバンドの強度以下に低減されるように調節される、
ことを特徴とする発光部品。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
前記少なくとも1つのLEDが、
カロテノイド及びクロロフィルの吸収ピークに合致するスペクトル放出ピークを有する光を放出するよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の発光部品。
【請求項4】
前記少なくとも1つのLEDが、
前記少なくとも1つのLEDの第1の放出を使用することによる400?500nmの波長バンドにおける第1の放出ピークと、
前記第1の放出の完全なまたは部分的な波長アップコンバージョンを使用することによる600?800nmの波長バンドにおける第2の放出ピークと、
を生成するよう構成されたことを特徴とする請求項3に記載の発光部品。
【請求項5】
前記発光部品が複数のLEDを有することを特徴とする請求項1、3及び4のいずれか1項に記載の発光部品。
【請求項6】
600?800nmの波長における放出が、少なくとも2つのアップコンバージョン材料によって生成されることを特徴とする請求項1に記載の発光部品。
【請求項7】
請求項1及び3から6のいずれか1項に記載の少なくとも1つの発光部品を有する園芸用照明器具。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-07-16 
出願番号 特願2017-78013(P2017-78013)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (A01G)
P 1 651・ 537- YAA (A01G)
P 1 651・ 121- YAA (A01G)
P 1 651・ 113- YAA (A01G)
P 1 651・ 851- YAA (A01G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田辺 義拓  
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 有家 秀郎
土屋 真理子
登録日 2019-06-07 
登録番号 特許第6534695号(P6534695)
権利者 ヴァロヤ・オーイュー
発明の名称 照明アセンブリ  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 柿内 瑞絵  
代理人 吉村 充弘  
代理人 村山 靖彦  
代理人 阿部 達彦  
代理人 柿内 瑞絵  
代理人 実広 信哉  
代理人 今井 浩人  
代理人 今井 浩人  
代理人 阿部 達彦  
代理人 吉村 充弘  

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