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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B61F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B61F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B61F
管理番号 1366072
異議申立番号 異議2019-700857  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-10-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-10-28 
確定日 2020-07-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6509620号発明「鉄道車両の台車枠荷重負荷装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6509620号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正することを認める。 特許第6509620号の請求項1?4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6509620号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成27年4月20日に出願され、平成31年4月12日にその特許権の設定登録がされ、令和1年5月8日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和1年10月28日 :特許異議申立人 山崎英男(以下「申立人」と
いう。)より請求項1?4に係る特許に対する
特許異議の申立て
令和2年 1月20日付け:取消理由通知書
同年 3月13日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 3月26日付け:訂正請求があった旨の通知書(特許法第120
条の5第5項)
同年 4月23日 :特許異議申立人による意見書の提出

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和2年3月13日にされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。また、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、それぞれ「本件明細書」、「本件特許請求の範囲」といい、図面を含めて「本件明細書等」という。)を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。

(1)訂正事項1
本件特許請求の範囲の請求項1に、
「軸箱と台車枠との間に軸バネを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部と、台車の車軸方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、押圧力を発生させる荷重負荷部と、を備え、荷重負荷部により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸バネを圧縮させる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記荷重負荷部が、前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能な回転機構を有していること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。」
と記載されているのを、
「軸箱と台車枠との間に軸バネを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部と、台車の車軸方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、押圧力を発生させる荷重負荷部と、を備え、荷重負荷部により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸バネを圧縮させる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記荷重負荷部を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とするための回転機構を有していること、
前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持固定柱と、からなること、
前記回転機構は、前記被回転支持固定柱と前記回転支持部の間に設けられていること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。」
に訂正する。

(2)訂正事項2
本件特許請求の範囲の訂正前の請求項3に、
「請求項1または請求項2に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記回転機構は、前記支柱に設けられ、前記軸線の方向に対し、前記台車載置部より前記荷重負荷部に近い前記支柱の上端部側寄りに配置されていること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。」
と記載されているのを、
「請求項1に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記回転機構は、前記軸線の方向に対し、前記台車載置部より前記荷重負荷部に近い前記支柱の上端部側寄りに配置されていること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。」
に訂正し、請求項2とする。

(3)訂正事項3
本件特許請求の範囲の訂正前の請求項4に、
「請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持部と、からなり、
前記回転機構では、前記回転支持部が、電動モータの回転力に基づいて、前記被回転支持部と相対的に回動すること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。」
と記載されているのを、
「請求項1または請求項2に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記回転機構では、前記回転支持部が、電動モータの回転力に基づいて、前記被回転支持固定柱と相対的に回動すること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。」
に訂正し、請求項3とする。

(4)訂正事項4
本件特許請求の範囲の訂正前の請求項2に、
「請求項1に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記一対の支柱は、前記左右方向にスライド可能な構造で立設され、互いに離間する向き、または近接する向きに移動すること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。」
と記載されているのを、
「請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記一対の支柱は、前記左右方向にスライド可能な構造で立設され、互いに離間する向き、または近接する向きに移動すること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。」
に訂正し、請求項4とする。

(5)訂正事項5
本件明細書の段落【0008】に、
「本発明に係る鉄道車両の台車枠荷重負荷装置は、上記目的を達成するため、以下の構成を有する。
(1)軸箱と台車枠との間に軸バネを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部と、台車の車軸方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、押圧力を発生させる荷重負荷部と、を備え、荷重負荷部により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸バネを圧縮させる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、前記荷重負荷部が、前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能な回転機構を有していること、を特徴とする。
(2)(1)に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、前記一対の支柱は、前記左右方向にスライド可能な構造で立設され、互いに離間する向き、または近接する向きに移動すること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、前記回転機構は、前記支柱に設けられ、前記軸線の方向に対し、前記台車載置部より前記荷重負荷部に近い前記支柱の上端部側寄りに配置されていること、を特徴とする。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持部と、からなり、前記回転機構では、前記回転支持部が、電動モータの回転力に基づいて、前記被回転支持部と相対的に回動すること、を特徴とする。」
と記載されているのを、
「(1)軸箱と台車枠との間に軸バネを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部と、台車の車軸方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、押圧力を発生させる荷重負荷部と、を備え、荷重負荷部により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸バネを圧縮させる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、前記荷重負荷部を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とするための回転機構を有していること、前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持固定柱と、からなること、前記回転機構は、前記被回転支持固定柱と前記回転支持部の間に設けられていること、を特徴とする。
(2)(1)に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、前記回転機構は、前記軸線の方向に対し、前記台車載置部より前記荷重負荷部に近い前記支柱の上端部側寄りに配置されていること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、前記回転機構では、前記回転支持部が、電動モータの回転力に基づいて、前記被回転支持固定柱と相対的に回動すること、を特徴とする。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、前記一対の支柱は、前記左右方向にスライド可能な構造で立設され、互いに離間する向き、または近接する向きに移動すること、を特徴とする。」
に訂正する。

本件訂正請求は、一群の請求項〔1?4〕に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1?4〕について請求されたものである。

2 訂正の適否
(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1のうち訂正前に「前記荷重負荷部が、前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能な回転機構を有していること」を訂正後に「前記荷重負荷部を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とするための回転機構を有していること」に訂正する訂正事項は、令和2年1月20日付け取消理由通知書で通知した記載不備の理由を解消するための訂正であって、本件明細書の段落【0022】の「支柱20は、2つともそれぞれ、回転支持部20Aと被回転支持部20Bとからなる。回転支持部20Aは、図4に示すように、被回転支持部20Bの上で鉛直方向VT上向きから、水平方向である左右方向RLに90度屈曲した略逆L字型形状に形成されている。この回転支持部20Aは、その略逆L字型形状のうちの水平方向の部分である上端部21を有している。この上端部21には、荷重負荷部30が取付けられている。被回転支持部20Bは、回転支持部20Aを、その下方で支え、回転支持部20Aと被回転支持部20Bとは、回転機構40を介して連接されている。」との記載、段落【0023】の「回転機構40は、支柱20の鉛直方向VTに沿う軸線Mに対し、台車載置部10より荷重負荷部30に近い上端部21側寄りに配置されており、荷重負荷部30を、軸線Mを中心に、本実施形態では、90度旋回可能とする機構である。」との記載、及び【図4】等の図示内容に基づいて訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項1のうち訂正後に「前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持固定柱と、からなること、前記回転機構は、前記被回転支持固定柱と前記回転支持部の間に設けられていること」を追加する訂正事項は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「一対の支柱」に関し、訂正前の請求項4の「前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持部と、からなり」との記載及び【図4】等の図示内容に基づいて「前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持固定柱と、からなること」を限定し、さらに「回転機構」に関し、訂正前の請求項4の「前記回転機構では、前記回転支持部が、電動モータの回転力に基づいて、前記被回転支持部と相対的に回動すること」との記載、本件明細書の段落【0022】の「被回転支持部20Bは、回転支持部20Aを、その下方で支え、回転支持部20Aと被回転支持部20Bとは、回転機構40を介して連接されている。」との記載、及び段落【0023】の「回転機構40では、軸受43とリングギア44が、回転支持部20Aの下端に取り付けられた回転側接続板41と、被回転支持部20Bの上端に取り付けられた被回転側接続板42との間に、配設されている。」との記載、並びに【図6】等の図示内容に基づいて「前記回転機構は、前記被回転支持固定柱と前記回転支持部の間に設けられていること」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正事項2は、訂正前の請求項3について、訂正後の請求項1に回転機構が支柱に設けられる事項が実質的に含まれるようになったところ、かかる事項の重複の記載を避けるため「前記支柱に設けられ、」との事項を削除した上で、請求項2に繰り上げるとともに引用関係を整合させたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 訂正事項3は、上記アで説示したように、訂正後の請求項1において「前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持固定柱と、からなること、前記回転機構は、前記被回転支持固定柱と前記回転支持部の間に設けられている」との事項を追加したところ、訂正前の請求項4について、かかる事項の重複を避けるために「前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持部と、からなり」との事項を削除し、さらに、「被回転支持部」を「被回転支持固定柱」と訂正し訂正後の請求項1の用語と整合を図った上で、請求項3に繰り上げるとともに請求項の引用関係を整合させたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ 訂正事項4は、訂正前の請求項2を、請求項4に繰り下げるものであり、これに合わせて引用関係を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

オ 訂正事項5は、上記訂正事項1?4の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?4〕についての訂正を認める。

第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?4に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明4」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
軸箱と台車枠との間に軸バネを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部と、台車の車軸方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、押圧力を発生させる荷重負荷部と、を備え、荷重負荷部により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸バネを圧縮させる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記荷重負荷部を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とするための回転機構を有していること、
前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持固定柱と、からなること、
前記回転機構は、前記被回転支持固定柱と前記回転支持部の間に設けられていること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。
【請求項2】
請求項1に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記回転機構は、前記軸線の方向に対し、前記台車載置部より前記荷重負荷部に近い前記支柱の上端部側寄りに配置されていること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記回転機構では、前記回転支持部が、電動モータの回転力に基づいて、前記被回転支持固定柱と相対的に回動すること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記一対の支柱は、前記左右方向にスライド可能な構造で立設され、互いに離間する向き、または近接する向きに移動すること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。」

第4 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1?4に係る特許に対して令和2年1月20日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。

[取消理由1]
請求項1?4に係る発明は、特許請求の範囲の記載が不備なため、特許法第36条第6項第1号及び同条同項第2号の規定に適合するものではない。
よって、請求項1?4に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

[取消理由2]
請求項1に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された下記引用文献1に記載された発明に基いて、請求項2に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された引用文献2に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。



[引用文献等一覧]
・引用文献1:小笠原誠、「業務研究 台車組立装置活用による軸継ぎ手偏い測定方法の改善」、日本鉄道車両機械技術協会誌「R&m」Vol.19、2011年12月発行、60?63ページ
・引用文献2:特開2012-86832号公報

なお、引用文献1及び2は、申立人が証拠として提出した甲第2及び1号証である。

第5 当審の判断
1 各刊行物の記載事項等
(1)引用文献1
(1-1)記載事項 (下線は当審で付した。以下同様。)
ア 60ページ左欄7?9行
「保有車両数は2011年9月現在、特急車170両、通勤車908両、検測車1両の1079両で、大野総合車両所においては重要部および全般検査を主な業務としています。」

イ 60ページ左欄下から10行?下から7行
「大野総合車両所における台車の分解組立作業は、台車枠、輪軸、軸ばね、基礎制動装置など細部まで分解、点検、整備を行い、摩耗・摺動部位の測定や台車枠・ボルト類に関しては探傷検査を行っています。」

ウ 60ページ右欄5?9行
「台車組立装置は、2機(1号機・2号機)導入されました。主な機能は以下の内容となります(写真-2)。
・軸箱支持や駆動装置が自動でセット
・台車組立時、台車への垂直方向の荷重を掛けて組立が可能」

エ 60ページ右欄下から7行?末行
「これらの機能が装備されており、台車組立装置導入により台車へ垂直方向の荷重を掛けることが可能となった。その結果軸ばねを圧縮することにより各種部品の取り付けが容易になったほか、昇降機能や、重量部品の固定化や安定化により、作業の安全性や作業性が大幅に改善され、車形によりますが、約10%?18%の作業時間の軽減が図られました(写真-3、写真-4)。」

オ 62ページ左欄下から16行?下から14行
「現状、台車組立装置で台車組立時に掛ける荷重は、軸ばねを圧縮することで、軸ばね取り付けボルトの締付けや軸箱安全吊などの取り付けを容易にするためでした。」


カ 以下の「写真-2」及び「写真-4」が掲載されている。(符号は当審が付加。)
【写真-2】

【写真-4】

(1-2)認定事項
引用文献1には、大野総合車両所における鉄道車両の台車組立装置が記載されているところ、上記(1-1)の各記載事項から、次のことが認定できる。
ア 台車は、記載事項イから、台車枠、輪軸及び軸ばねを備え、記載事項ウから軸箱を備えること。また、記載事項カの【写真-2】において、3は台車枠、6は輪軸、4は軸箱であり、5には台車を載置する台車載置部が示されている。そして、鉄道車両の台車において、軸箱と台車枠との間に軸ばねを備えることは技術常識であるから、台車組立装置が、軸箱4と台車枠3との間に軸ばねを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部5を備えること。

イ 記載事項ウの「台車組立時、台車への垂直方向の荷重を掛けて組立が可能」との記載、記載事項エの「台車組立装置導入により台車へ垂直方向の荷重を掛けることが可能となった。その結果軸ばねを圧縮することにより各種部品の取り付けが容易になった。」との記載、及び記載事項オの「台車組立装置で台車組立時に掛ける荷重は、軸ばねを圧縮することで、軸ばね取り付けボルトの締付けや軸箱安全吊などの取り付けを容易にする」との記載から、台車組立装置は、軸ばねを圧縮する、台車への垂直方向の荷重を掛ける手段を備えること。
また、前記台車への垂直方向の荷重を掛ける手段は、記載事項カの【写真-2】において1として示されており、台車の輪軸6の方向に沿う左右方向に対し、台車載置部5の両側に立設した一対の2で示された支柱の各上端部に備えること。
そして、前記台車への垂直方向の荷重を掛ける手段1は、台車枠3との位置関係及び軸ばねを圧縮するという機能からみて、台車載置部5に置かれた台車の台車枠3に、荷重を掛けて軸ばねを圧縮させるものであること。

ウ 【写真-2】の支柱2の状態Aと【写真-4】の支柱2の状態Bの変化から、台車への垂直方向の荷重を掛ける手段1を前記支柱2に沿う軸線を中心に旋回可能にすること。

(1-3)引用文献1に記載された発明
上記(1-1)及び(1-2)に基づいて、本件発明1の発明特定事項に倣って整理すると、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。
<引用発明>
「軸箱と台車枠との間に軸ばねを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部と、台車の輪軸の方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、台車への垂直方向の荷重を掛ける手段と、を備え、台車への垂直方向の荷重を掛ける手段により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸ばねを圧縮させる鉄道車両の台車組立装置において、
前記台車への垂直方向の荷重を掛ける手段を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とする、
鉄道車両の台車組立装置。」

(2)引用文献2
(2-1)記載事項
「【0001】
本発明は、鉄道車両用台車を構成する輪軸とその上に搭載される台車枠とを、簡易且つ正確に位置決めして組み立てるための鉄道車両用台車の組立方法に関する。」

「【0011】
次に、本発明に係る鉄道車両用台車の組立方法について、その一実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、台車組立装置の一実施形態を示した平面図であり、図2は、図1のA部分について示した部分拡大図である。鉄道車両用台車は、こうした台車組立装置1に輪軸と台車枠とが搬入されて組立が行われる。台車組立装置1は、その中央に基準面となる定盤部3と左右2本のレール5、更に定盤部3を囲むように4箇所に配置された荷重負荷機10を有している。」

「【0015】
続いて、鉄道車両用台車枠を構成する台車枠は、台車組立状態で軸バネの加圧を行う荷重負荷機10によって位置決めが行われるよう構成されている。台車組立時には、台車枠側に固定されたモータと輪軸側に設けられたギヤとの連結が定員荷重状態で行われる。荷重負荷機10は、運行時の定員荷重(例えば6トン)をかけた状態にまで軸バネを圧縮させるためのものである。そして、本実施形態では、その荷重負荷機10が台車枠を位置決めするための構成を有している。
【0016】
図1に示すように4基の荷重負荷機10は、それぞれが定盤部3に対して左右方向に移動可能な構成がとられている。図4は、そうした荷重負荷機10を示した側面図である。荷重負荷機10は、ベース12上に設けられたLMガイド13と、移動用アクチュエータであるロッドレスシリンダ14によって移動可能な構成がとられている。そのため、ロッドレスシリンダ14の作動によってLMガイド13に案内された直線移動を可能とする荷重負荷機10は、実線で示す定盤部3に接近した作業位置と、二点鎖線で示す定盤部3から離れた待機位置とで停止する。台車枠は、作業位置に配置された4基の荷重負荷機10よって、その中心位置を合わせた芯出し状態で支持される。
【0017】
荷重負荷機10は、軸箱支持装置の軸バネに定員荷重をかけるための圧縮機構15と、その圧縮機構15を昇降させるための昇降機構16を備えている。特に、圧縮機構15は、軸箱支持装置の構造を利用して荷重をかけるようにしたものであるため、ここで簡単に軸箱支持装置について説明する。図7は、軸箱支持装置の一例を示した側面図である。この軸箱支持装置300は、輪軸301の両端部を軸受によって回動可能に保持する軸箱302が設けられてる。軸箱302のレール方向の前後には、台車枠303との間に軸バネ307が介装されている。
【0018】
また、軸箱支持装置300には、鉄道車両における上下方向の振動減衰手段として軸ダンパ310が設けられている。軸箱302側と台車枠303側には、上下の位置に受座311,312が形成され、軸ダンパ310はこの受座311,312に両端が連結され、上下方向に配置される。本実施形態の荷重負荷機10は、この受座311と軸箱302を利用して圧縮機構15による荷重を上下から加えるようにしたものである。荷重負荷機10は、先ず受座311を介して台車枠303を支持した後、昇降機構16によって台車枠303を輪軸301へ下降させ、次いで受座311と軸箱302の底面302aを介して圧縮機構15による軸バネ307の圧縮を行う。そこで、先ず簡単に軸バネ307の圧縮について説明する。」

「【0020】
昇降機構16は、垂直に配置されたネジ軸23に昇降ナット24が嵌め合わされたボールネジによって構成され、非回転の昇降ナット24に対して圧縮機構15が設けられている。圧縮機構15は、軸箱支持装置300の受座311と軸箱302の底面302a(図7参照)をそれぞれ上下から挟み込む上旋回アーム25と下旋回アーム26が設けられている。上旋回アーム25と下旋回アーム26は、圧縮用アクチュエータである油圧シリンダ27の作動によってコイルバネ18を圧縮して上下の間隔を狭め、作動油を解放することによりコイルバネ18の付勢力で上下の間隔を広げるよう構成されている。」

また、以下の【図1】及び【図4】が示されている。

【図1】

【図4】

(2-2)認定事項
上記(2-1)の記載事項から以下の事項が認定できる。
ア 段落【0011】の「鉄道車両用台車は、こうした台車組立装置1に輪軸と台車枠とが搬入されて組立が行われる。台車組立装置1は、その中央に基準面となる定盤部3と左右2本のレール5、更に定盤部3を囲むように4箇所に配置された荷重負荷機10を有している。」との記載から、中央に基準面となる定盤部3と左右2本のレール5、更に定盤部3を囲むように4箇所に配置された荷重負荷機10を有する鉄道車両用台車の台車組立装置1であること。

イ 段落【0015】の「鉄道車両用台車枠を構成する台車枠は、台車組立状態で軸バネの加圧を行う荷重負荷機10によって位置決めが行われるよう構成されている。」との記載、段落【0017】の「軸箱302のレール方向の前後には、台車枠303との間に軸バネ307が介装されている。」との記載及び【図7】から、鉄道車両用台車は、軸箱302と台車枠303との間に軸バネ307を備えること。さらに段落【0017】の「荷重負荷機10は、軸箱支持装置の軸バネに定員荷重をかけるための圧縮機構15と、その圧縮機構15を昇降させるための昇降機構16を備えている。」との記載を加味すると、荷重負荷機10は、軸箱302のレール方向の前後には、台車枠303との間に介装されている軸箱支持装置300の軸バネ307に定員荷重をかけるための圧縮機構15と、その圧縮機構15を昇降させるための昇降機構16を備えていること。

ウ 上記イを踏まえると、段落【0020】の「昇降機構16は、垂直に配置されたネジ軸23に昇降ナット24が嵌め合わされたボールネジによって構成され、非回転の昇降ナット24に対して圧縮機構15が設けられている。」との記載、及び【図1】、【図4】から、荷重負荷機10は、昇降機構16を収容する上下方向に延びる支柱を備え、該支柱の各上端部に定員荷重をかけるための圧縮機構15を備えること。

(2-3)引用文献2に記載された事項
上記(2-1)の記載事項及び(2-2)の認定事項から、引用文献2には、以下の事項が記載されていると認められる。
「中央に基準面となる定盤部3と左右2本のレール5、更に定盤部3を囲むように4箇所に配置された荷重負荷機10を有する鉄道車両用台車の台車組立装置1であって、鉄道車両用台車は、軸箱302と台車枠303との間に軸バネ307を備え、前記荷重負荷機10は、前記軸箱302のレール方向の前後には、前記台車枠303との間に介装されている軸箱支持装置300の軸前記バネ307に定員荷重をかけるための圧縮機構15と、その圧縮機構15を昇降させるための昇降機構16を備えるとともに、該昇降機構16を収容する上下方向に延びる支柱を備え、該支柱の各上端部に定員荷重をかけるための圧縮機構15を備え、前記圧縮機構15は、前記軸箱支持装置300の受座311と前記軸箱302の底面302aをそれぞれ上下から挟み込む上旋回アーム25と下旋回アーム26が設けられている鉄道車両用台車の台車組立装置1において、
4基の荷重負荷機10の支柱は、それぞれが定盤部3に対して左右方向に移動可能に立設されていること。」

2 対比・判断
2-1 取消理由1について
(1)取消理由1の内容
当審で通知した取消理由通知における取消理由1は以下のとおりのものである。
(1-1)請求項1について
請求項1に「前記荷重負荷部が、前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能な回転機構を有している」と記載されているが、「前記荷重負荷部が、・・・回転機構を有している」は、その具体的な構成が不明確である。
また、願書に添付された明細書(以下「本件明細書」という。)の段落【0022】の「支柱20は、2つともそれぞれ、回転支持部20Aと被回転支持部20Bとからなる。回転支持部20Aは、図4に示すように、被回転支持部20Bの上で鉛直方向VT上向きから、水平方向である左右方向RLに90度屈曲した略逆L字型形状に形成されている。この回転支持部20Aは、その略逆L字型形状のうちの水平方向の部分である上端部21を有している。この上端部21には、荷重負荷部30が取付けられている。被回転支持部20Bは、回転支持部20Aを、その下方で支え、回転支持部20Aと被回転支持部20Bとは、回転機構40を介して連接されている。」との記載及び【図4】、【図6】によれば、「回転機構」(回転機構40)は、「支柱」に有しているものと理解できるから、本件明細書の記載内容とも整合していない。

(1-2)請求項2について
請求項1を引用する請求項2の記載も、請求項1と同様に不明確であり、本件明細書の記載内容とも整合していない。

(1-3)請求項3について
請求項3は請求項1または請求項2を引用するところ、請求項3には「前記回転機構は、前記支柱に設けられ」と記載されており、請求項1に記載されている「前記荷重負荷部が、・・・回転機構を有している」との構成を前提としつつ、「前記回転機構は、前記支柱に設けられ」との構成を有することは不明確である。」

(2)判断
本件訂正により、訂正前に「前記荷重負荷部が、前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能な回転機構を有していること」とあったのを、訂正後に「前記荷重負荷部を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とするための回転機構を有していること」に訂正されたので、「回転機構」の機能が明確になったとともに、本件明細書の段落【0022】の記載内容とも整合したので、取消理由1は解消した。
また、請求項1を引用する請求項2?4の記載も、同様に取消理由1は解消した。

2-2 取消理由2について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明とを対比すると、
後者の「軸ばね」は、前者の「軸バネ」に相当するから、後者の「軸箱と台車枠との間に軸ばねを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部」は、前者の「軸箱と台車枠との間に軸バネを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部」に相当する。

後者の「台車の輪軸の方向」は、前者の「台車の車軸方向」に相当し、後者の「台車への垂直方向の荷重を掛ける手段」は、前者の「押圧力を発生させる荷重負荷部」に相当するから、後者の「台車の輪軸の方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、台車への垂直方向の荷重を掛ける手段、を備え」との構成は、前者の「台車の車軸方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、押圧力を発生させる荷重負荷部、を備え」との構成に相当する。また、後者の「台車への垂直方向の荷重を掛ける手段により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸ばねを圧縮させる鉄道車両の台車組立装置」は、前者の「荷重負荷部により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸バネを圧縮させる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置」に相当する。

後者の「前記台車への垂直方向の荷重を掛ける手段を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とする」との構成と、前者の「前記荷重負荷部を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とするための回転機構を有している」との構成とは、「前記荷重負荷部を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とする」との構成で共通する。

後者の「鉄道車両の台車組立装置」は、前者の「鉄道車両の台車枠荷重負荷装置」に相当する。

以上によれば、本件発明1と引用発明とは、
「軸箱と台車枠との間に軸バネを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部と、台車の車軸方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、押圧力を発生させる荷重負荷部と、を備え、荷重負荷部により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸バネを圧縮させる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記荷重負荷部を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とする、
鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。」で一致し、

以下の点で相違するといえる。
<相違点1>
本件発明1は、「前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持固定柱と、からな」るものであって、「前記荷重負荷部を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とする」との構成として、「回転機構を有して」おり、「前記回転機構は、前記被回転支持固定柱と前記回転支持部の間に設けられている」のに対して、
引用発明は、「前記台車への垂直方向の荷重を掛ける手段を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とする」構成を有するが、かかる「支柱」の構成及び「回転機構」が特定されていない点。

イ.判断
引用発明の「支柱」は、摘示カの【写真-2】と【写真-4】を見比べてみると、2で示された支柱の上端部に描かれたゼブラ模様、及び該ゼブラ模様に至るまでの支柱本体の側面の形状に注視すれば、支柱の旋回は、支柱の根元から旋回するものと理解できるから、引用発明は「荷重を掛ける手段」を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持固定柱とから構成されている、ということはできない。そして、引用発明において、「前記台車への垂直方向の荷重を掛ける手段を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とする」構成として、回転機構を支柱の根元に配置することを想起できたとしても、支柱を被回転支持固定柱と回転支持部に分けた上で、その間に回転機構を設ける構成にすべき根拠もないことから、回転機構を被回転支持固定柱と回転支持部の間に設けることまでは、容易想到ということはできない。
また、申立人が令和2年4月23日に提出された意見書において提示された参考文献1及び2においても、鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、回転機構を被回転支持固定柱と回転支持部の間に設ける構成が明記されているとはいえないから、かかる構成が周知・慣用ということもできない。
したがって、上記相違点1に係る本件発明1の構成は容易想到といえるものでないから、本件発明1は引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明4について
上記取消理由2の対象となった請求項2に係る発明は、訂正後の本件発明1の構成を含む本件発明4に対応するものであるところ、かかる本件発明4は本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものである。そして、引用文献2に記載された事項は、上記1(2)(2-3)で述べたように「・・・鉄道車両用台車の台車組立装置1において、4基の荷重負荷機10の支柱は、それぞれが定盤部3に対して左右方向に移動可能に立設されていること。」であって、回転機構を被回転支持固定柱と回転支持部の間に設ける構成は存在しない。
したがって、上記(1)で述べた理由と同様の理由により、本件発明4は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許異議申立人が主張する特許異議申立理由の概要
[申立理由1]特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)
請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明に対して新規性を有しないものである。また、請求項2、3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に対して新規性を有しないものである。
[申立理由2]特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
請求項4に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)当審の判断
[申立理由1]について
ア 各号証の記載事項等
ア-1 甲第1号証
(ア)記載事項及び認定事項
甲第1号証は、上記引用文献2であるから、甲第1号証の記載事項及び認定事項は、上記「第5 1(2)」の(2-1)及び(2-2)で述べたとおりである。

(イ)甲第1号証に記載された発明
上記(ア)の記載事項及び認定事項から、甲第1号証には、次の発明が記載されていると認められる(以下「甲1発明」という。)。
<甲1発明>
「中央に基準面となる定盤部3と左右2本のレール5、更に定盤部3を囲むように4箇所に配置された荷重負荷機10を有する鉄道車両用台車の台車組立装置1であって、鉄道車両用台車は、軸箱302と台車枠303との間に軸バネ307を備え、前記荷重負荷機10は、前記軸箱302のレール方向の前後には、前記台車枠303との間に介装されている軸箱支持装置300の前記軸バネ307に定員荷重をかけるための圧縮機構15と、その圧縮機構15を昇降させるための昇降機構16を備えるとともに、該昇降機構16を収容する上下方向に延びる支柱を備え、該支柱の各上端部に定員荷重をかけるための圧縮機構15を備え、前記圧縮機構15は、前記軸箱支持装置300の受座311と前記軸箱302の底面302aをそれぞれ上下から挟み込む上旋回アーム25と下旋回アーム26が設けられている鉄道車両用台車の台車組立装置1。」

ア-2 甲第2号証
甲第2号証は、上記引用文献1であるから、甲第2号証の記載事項、認定事項及び甲第2号証に記載された発明(以下「甲2発明」という。)は、上記「第5 1(1)」の(1-1)、(1-2)及び(1-3)」で述べたとおりである。

イ 対比・判断
イ-1 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、
a 後者の「軸箱302と台車枠303との間に軸バネ307を備え」る「鉄道車両用台車」は、前者の「軸箱と台車枠との間に軸ばねを備えた鉄道車両の台車」に相当する。また、後者の「定盤部3」は「鉄道車両用台車」を載置することは明らかであるから、前者の「鉄道車両の台車を載置する台車載置部」に相当する。

b 後者の「荷重負荷機10」は「定盤部3を囲むように4箇所に配置され」ているところ、後者の「荷重負荷機10」が備える「昇降機構16を収容する上下方向に延びる支柱」は、【図1】を参照すると、鉄道車両用台車の輪軸の方向に沿う左右方向に対し、定盤部3の両側に立設した一対の支柱といえるから、前者の「台車の輪軸の方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱」に相当する。また、後者の「該昇降機構16を収容する上下方向に延びる支柱を備え、該支柱の各上端部に定員荷重をかけるための圧縮機構15を備え」との構成は、前者の「台車の車軸方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、押圧力を発生させる荷重負荷部、を備え」との構成に相当する。

c 後者の「中央に基準面となる定盤部3と左右2本のレール5、更に定盤部3を囲むように4箇所に配置された荷重負荷機10を有する鉄道車両用台車の台車組立装置1」における「荷重負荷機10」は、「前記軸箱302のレール方向の前後には、前記台車枠303との間に介装されている軸箱支持装置300の前記軸バネ307に定員荷重をかけるための圧縮機構15」を備えるものであるから、「圧縮機構15」により、「定盤部3」に置かれた「鉄道車両用台車」の「台車枠303」に、荷重を掛けて「軸バネ307」を圧縮させるものといえる。
そうすると、後者の「中央に基準面となる定盤部3と左右2本のレール5、更に定盤部3を囲むように4箇所に配置された荷重負荷機10を有する鉄道車両用台車の台車組立装置1」は、前者の「荷重負荷部により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸バネを圧縮させる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置」に相当する。

以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「軸箱と台車枠との間に軸バネを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部と、台車の車軸方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、押圧力を発生させる荷重負荷部と、を備え、荷重負荷部により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸バネを圧縮させる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。」で一致し、

以下の点で相違するといえる。
<相違点A>
本件発明1は、「前記荷重負荷部を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とするための回転機構を有していること、前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持固定柱と、からなること、前記回転機構は、前記被回転支持固定柱と前記回転支持部の間に設けられている」のに対して、
甲1発明は、かかる「回転機構」及び「一対の支柱」に関する構成が特定されていない点。

(イ)判断
本件発明1と甲1発明とを対比すると、相違点Aが存在するから、本件発明1は、甲1発明に対して新規性を有しないものとはいえない。また、本件発明1と甲2発明とを対比すると、上記「2 2-2 (1)ア」で述べたとおり相違点1が存在するから、本件発明1は、甲2発明に対して新規性を有しないものとはいえない。

イ-2 本件発明4、本件発明2について
訂正前の請求項2及び請求項3に係る発明は、本件発明4及び本件発明2にそれぞれ対応するものである。
そして、本件発明4及び本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものであるから、甲1発明との対比において、本件発明1と同様に、少なくとも上記相違点Aが存在するから、本件発明4及び本件発明2は、甲1発明に対して新規性を有しないものとはいえない。

[申立理由2]について
訂正前の請求項4に係る発明は、本件発明3に対応するものである。
そして、本件発明3は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものであるから、本件発明3と甲2発明とを対比すると、上記「2 2-2 (1)ア」で述べたとおり上記相違点1が存在し、上記「2 2-2 (1)イ」で述べた理由と同様の理由により、本件発明3は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

よって、申立人の主張する[申立理由1]及び[申立理由2]により本件請求項1?4に係る特許を取り消すことができない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
鉄道車両の台車枠荷重負荷装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道車両の台車のメンテナンスにおいて、軸バネの復元力を失った状態にして、台車枠を取り外し、部品やユニット毎に分解する台車の分解工程や、分解された状態の部品やユニットを組付けて、台車枠を軸バネで軸箱に支持させる台車の組立工程を行うときに用いられる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の中には、車軸を回転自在に支持する軸受が収容された軸箱と、台車枠との間に、軸バネを設けた台車があり、このような台車では、台車枠は、軸箱に、軸バネによって相対的に支持されている。鉄道車両は、規定の走行距離や点検時期に達すると、台車の保守点検を目的としたメンテナンスが行われる。軸バネは、圧縮された状態で取り付けられており、バネがそれ以上伸長しないよう、ボルトで保持されている。台車のメンテナンスでは、台車は、台車枠荷重負荷装置等により、圧縮状態にある軸バネの復元力を失った状態にして、台車枠を輪軸から取り外し、さらに構成する部品やユニット毎に分解される。
【0003】
特許文献1は、鉄道車両に対し、輪軸と台車枠とを正確に位置決めして台車を組立てる台車組立装置であり、軸バネの付勢力に抗して台車枠を押し下げる台車枠押圧手段を備えている。前述した台車のメンテナンス作業は、特許文献1の台車枠押圧手段の構造と同じように構成された従来の車枠荷重負荷装置を用いて行われている。図13及び図14に示す従来の台車枠荷重負荷装置102による台車のメンテナンスでは、1基の台車が、当該台車枠荷重負荷装置102の支柱上端部121の下に搬入された後、荷重負荷部130の油圧シリンダ131が、台車枠75の上方中央部に荷重をかけることにより、前後及び左右両輪側にある4つの軸バネ76は、元々圧縮状態にあるバネ長からさらに圧縮される。これにより、軸バネ76の伸長は、油圧シリンダ131による負荷荷重(荷重積荷)で拘束され、そしてボルトによる軸バネ76の拘束状態が解除されて、ボルトを取り外すことができる。この後、油圧シリンダ131のロッド後退で、台車枠75への荷重が抜き取られると、軸バネ76は自然長になり、作業者は、台車枠75から軸バネ76を、安全に取り外すことができる。
【0004】
台車枠荷重負荷装置102では、支柱120は固定式で、この支柱120の上端部121にある荷重負荷部130は、搬入された台車の台車枠75上に位置しており、この台車枠荷重負荷装置102内で、台車枠75が吊り上げられると、台車枠75は荷重負荷部130(支柱上端部121)と干渉してしまう。そのため、ボルトを取り外した後に続く各種作業工程を台車枠荷重負荷装置102内で行うことができず、台車枠荷重負荷装置102周囲に、比較的広い作業スペースが確保できる場合には、作業者は、ボルトを取り外した状態の台車を、台車枠荷重負荷装置102の支柱上端部121との干渉を避ける位置まで遠ざけて移動させている。そして、移動後の場所を、台車の検査修理のスペースとして、台車枠荷重負荷装置102とは別の専用設備によって、作業者が、台車枠75や輪軸71等において、部品やユニットの分解作業や計測作業等、複数種の作業を行っている。なお、台車の検査修理後に行う部品等の組立工程では、分解工程の順序が逆で、部品の分解と、部品の組立てとの作業内容が異なるだけで、その他の実質的な作業内容に大きな違いはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-116992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術を含む従来の台車枠荷重負荷装置では、支柱が固定式となっていたため、荷重積荷を行った後に続く各種作業工程が、台車枠荷重負荷装置の下で行うことができず、ボルトを取り外した状態の台車の移動に伴う工程が余分に増えて、メンテナンスに要する作業時間が長くなり、メンテナンスの作業性も悪かった。併せて、メンテナンスがコスト高となっている問題もあった。さらに、台車のメンテナンスを行おうとする工場の中には、前述したように、台車枠荷重負荷装置の外側に、台車枠や輪軸等の大型ユニットを移動させて作業を行うスペースが確保し難い場合もあった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、鉄道車両の中でも、軸箱と台車枠との間に軸バネを備えた台車のメンテナンスで、台車の分解作業、及びその組立作業を行うのにあたり、作業効率の向上と共に、低コストで軸バネの着脱を行うことができる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る鉄道車両の台車枠荷重負荷装置は、上記目的を達成するため、以下の構成を有する。
(1)軸箱と台車枠との間に軸バネを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部と、台車の車軸方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、押圧力を発生させる荷重負荷部と、を備え、荷重負荷部により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸バネを圧縮させる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、前記荷重負荷部を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とするための回転機構を有していること、前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持固定柱と、からなること、前記回転機構は、前記被回転支持固定柱と前記回転支持部の間に設けられていること、を特徴とする。
(2)(1)に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、前記回転機構は、前記軸線の方向に対し、前記台車載置部より前記荷重負荷部に近い前記支柱の上端部側寄りに配置されていること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、 前記回転機構では、前記回転支持部が、電動モータの回転力に基づいて、前記被回転支持固定柱と相対的に回動すること、を特徴とする。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、前記一対の支柱は、前記左右方向にスライド可能な構造で立設され、互いに離間する向き、または近接する向きに移動すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記構成を有する本発明の鉄道車両の台車枠荷重負荷装置の作用・効果について説明する。
(1)軸箱と台車枠との間に軸バネを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部と、台車の車軸方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、押圧力を発生させる荷重負荷部と、を備え、荷重負荷部により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸バネを圧縮させる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、荷重負荷部が、支柱に沿う軸線を中心に旋回可能な回転機構を有していること、を特徴とする。この特徴により、荷重負荷部の向きを、回転機構により、台車枠に荷重を掛ける作動姿勢から、例えば、作動姿勢との間で、角度90度等に回転させた退避姿勢に変えることができ、台車の分解工程において、荷重載荷後の作業を行うのにあたり、台車載置部に載置した台車の位置からそのまま、台車枠を、台車載置部の真上にあるクレーンで吊り上げることができる。また、荷重負荷部の向きを、回転機構により退避姿勢から作動姿勢に変えることもでき、台車の組立工程において、台車枠を軸バネで輪軸の軸箱に支持させる作業を行うのにあたり、台車枠を、台車載置部に載置した輪軸に向けて、上記クレーンを用いて吊り下げることができる。そのため、従来の台車枠荷重負荷装置を用いて、台車のメンテナンスを行う場合に比して、本発明の台車枠荷重負荷装置を用いて、台車のメンテナンスを行えば、メンテナンス作業を効率良く行うことができ、作業時間の短縮化を図ることができるほか、作業性も向上する。そのため、メンテナンスに掛かるコストが抑制できる。
【0010】
従って、本発明の鉄道車両の台車枠荷重負荷装置によれば、鉄道車両の中でも、軸箱と台車枠との間に軸バネを備えた台車のメンテナンスで、台車の分解作業、及びその組立作業を行うのにあたり、作業効率を向上させる共に、低コストで軸バネの着脱を行うことができる、という優れた効果を奏する。
【0011】
(2)一対の支柱は、左右方向にスライド可能な構造で立設され、互いに離間する向き、または近接する向きに移動すること、を特徴とするので、台車載置部の左右方向両側で、支柱と、台車載置部に位置する輪軸(または台車)との間に、作業者の通路が確保できる。そのため、輪軸等に検査修理作業に取り組んでいる作業者は、支柱を大回りして通過しなくても、この通路をスムーズに移動できるため、作業性は向上する。
【0012】
(3)回転機構は、支柱に設けられ、軸線の方向に対し、台車載置部より荷重負荷部に近い支柱上端部側寄りに配置されていること、を特徴とするので、荷重負荷部を含む回動する部分全体の重さがより軽量になるため、剛体の慣性モーメントが小さくなり、回転力を生む駆動源では、より小さな駆動力で、荷重負荷部を回動させることができる。また、支柱を左右方向にスライド可能なスライド機構を有する場合には、支柱において、回転機構は、スライド機構と、より間隔を置いて設置できるため、回転機構とスライド機構とにおいて、双方の干渉の回避が容易となり、双方の機構の構造が複雑化するのを防ぐことができる。
【0013】
(4)一対の支柱はそれぞれ、荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で回転支持部を支える被回転支持部と、からなり、回転機構では、回転支持部が、電動モータの回転力に基づいて、被回転支持部と相対的に回動すること、を特徴とするので、回転機構に、油圧駆動源で回転力を得る油圧ユニットを用いた場合に比べ、管やホースの配管等による複雑な装置構造で装置全体が大型化することもなく、本発明の鉄道車両の台車枠荷重負荷装置をコンパクト化することができる。また、油圧ユニットを用いた場合、油圧ユニットの故障時に、作動油が床に漏れ出してしまうこともあるが、本発明の鉄道車両の台車枠荷重負荷装置では、回転機構に電動モータを用いているため、回転機構の故障時に、作動油で床を汚すことはない。
【0014】
(5)台車載置部には、当該台車載置部に置かれた台車の車輪を輪止めして、輪軸の載置位置を位置決めする位置決め機構が設けられていること、を特徴とするので、例えば、自動送り等による台車の搬送時に、台車載置部に搬入された台車が、台車載置部内で動いてしまうのを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係る鉄道車両の台車枠荷重負荷装置のほか、台車昇降装置等を一体化して構成された台車整備装置を、台車の走行方向から見た正面視で示す説明図である。
【図2】図1に示す台車整備装置を、車軸方向から見た側面視で示す説明図である。
【図3】図1に示す台車整備装置を、上方からの平面視で示す説明図である。
【図4】図1に示す台車整備装置のうち、台車枠荷重負荷装置を示す正面図である。
【図5】図4に示す台車枠荷重負荷装置のうち、支柱上端部の荷重負荷部を示す説明図である。
【図6】図4に示す台車枠荷重負荷装置の回転機構を、一部断面図を用いて示した説明図である。
【図7】図4中、A部を拡大して示すスライド機構の説明図である。
【図8】図4に示す台車枠荷重負荷装置の側面図であり、荷重負荷部で台車枠を押圧している様子を示す説明図である。
【図9】図8中、B部の拡大図である。
【図10】図4に示す台車枠荷重負荷装置の動作について、上方からの平面視で示す説明図である。
【図11】台車の分解工程における全体的な流れを説明するフローチャート図である。
【図12】台車の組立工程における全体的な流れを説明するフローチャート図である。
【図13】従来の台車枠荷重負荷装置を、台車の走行方向から見た正面視で示す説明図である。
【図14】従来の台車枠荷重負荷装置を、車軸方向からの側面視で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態)
以下、本発明に係る鉄道車両の台車枠荷重負荷装置について、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、実施形態に係る鉄道車両の台車枠荷重負荷装置のほか、台車昇降装置等を一体化して構成された台車整備装置を、台車の走行方向から見た正面視で示す説明図である。図1に示す台車整備装置について、車軸方向から見た側面視の説明図を図2に、上方からの平面視の説明図を図3に、それぞれ示す。
【0017】
本実施形態では、鉄道車両の台車枠荷重負荷装置2は、鉄道車両の台車70のメンテナンスで、台車70の分解工程において、台車枠75を輪軸71から取り外す前に、ボルト77を取り外すのにあたり、復元力に制限を加えて軸バネ76を拘束した状態とするのに用いられる。また、この台車枠荷重負荷装置2は、図示しない部品やユニット等の検査修理後に行う台車70の組立工程で、台車枠75を軸バネ76で軸箱73に支持させるのにあたり、復元力に制限を加えて軸バネ76を拘束した状態にして、ボルト77の取付け作業を行うときにも用いられる。
【0018】
図1?図3に示すように、台車枠荷重負荷装置2は、台車昇降装置3、歯車箱支持装置4、及び台車自動搬送装置と共に、一体化して構成された台車整備装置1内に組み込まれている。台車自動搬送装置は、図3中、走行方向FRの左方向きに対し、メンテナンスを行う台車70を1基、後に詳述する台車枠荷重負荷装置2の台車載置部10に、自動送りで搬入する機能を備えた装置である。
【0019】
台車昇降装置3は、分解工程のうち、ボルト77を取り外した後の工程で用いられ、台車70の軸箱73にある4箇所の軸箱底部74を、4つのジャッキ3aで支えて台車70を持ち上げる装置である。作業者は、この台車昇降装置3でジャッキアップした台車70の輪軸71、ギヤボックス等の点検、整備等の作業を行う。歯車箱支持装置4は、ギヤボックスに収容されているギアトレインの歯車の点検にあたり、ギヤボックスのケースを、2つのジャッキ4aで支える装置である。台車昇降装置3と歯車箱支持装置4は、地下ピットUP内に設置され、ジャッキ3aとジャッキ4aは何れも、地下ピットUP内と床面FLの上方位置との間を、所定のストロークで昇降する。
【0020】
台車枠荷重負荷装置2について説明する。図4は、台車枠荷重負荷装置を示す正面図であり、その側面図を図8に示す。台車枠荷重負荷装置2は、軸箱73と台車枠75との間に軸バネ76を備えた鉄道車両の台車70を載置する台車載置部10と、台車70の車軸方向に沿う左右方向RLに対し、台車載置部10の両側に立設した一対の支柱20,20の各上端部21に、押圧力Fを発生させる荷重負荷部30と、を備えている。
【0021】
台車載置部10には、車輪72を転動させて台車70を移動させる軌道11が、床面FLの高さに合わせて敷設されており、軌道11上の台車70は、台車自動搬送装置から付与される外力により、台車載置部10内を移動する。また、この軌道11内の一部に、台車ストッパ12(位置決め機構)が設けられている。台車ストッパ12は、台車載置部10に置かれた台車70の車輪72や、輪軸71だけの状態にある車輪72に対し、軌道11上の転動を阻止する機構となっており、この台車70や輪軸71の載置位置を位置決めする。
【0022】
支柱20について、説明する。図5は、図4に示す台車枠荷重負荷装置の支柱上端部の荷重負荷部を示す説明図であり、この台車枠荷重負荷装置の回転機構を、一部断面図で示した説明図を、図6に示す。支柱20は、2つともそれぞれ、回転支持部20Aと被回転支持部20Bとからなる。回転支持部20Aは、図4に示すように、被回転支持部20Bの上で鉛直方向VT上向きから、水平方向である左右方向RLに90度屈曲した略逆L字型形状に形成されている。この回転支持部20Aは、その略逆L字型形状のうちの水平方向の部分である上端部21を有している。この上端部21には、荷重負荷部30が取付けられている。被回転支持部20Bは、回転支持部20Aを、その下方で支え、回転支持部20Aと被回転支持部20Bとは、回転機構40を介して連接されている。
【0023】
図4及び図6に示すように、回転機構40は、支柱20の鉛直方向VTに沿う軸線Mに対し、台車載置部10より荷重負荷部30に近い上端部21側寄りに配置されており、荷重負荷部30を、軸線Mを中心に、本実施形態では、90度旋回可能とする機構である。回転機構40では、軸受43とリングギア44が、回転支持部20Aの下端に取り付けられた回転側接続板41と、被回転支持部20Bの上端に取り付けられた被回転側接続板42との間に、配設されている。
【0024】
軸受43の内輪は、回転側接続板41に固着され、外輪はリングギア44に固着されている。リングギア44は、環状の外歯歯車であり、その内周面と軸受43の外輪の外周面とが密着し固定した状態で、軸受43に取付けられている。回転側接続板41には、電動モータ46が配設され、回転側接続板41の貫通穴を挿通した電動モータ46の回転軸に、ピニオンギア45が取付けられている。このピニオンギア45は、リングギア44と噛み合い可能な歯車諸元で形成されている。
【0025】
回転機構40では、電動モータ46の回転力が、ピニオンギア45と噛み合ってリングギア44に伝達されると、軸受43の外輪が、内輪と相対的に回転することにより、回転側接続板41が、軸線Mを中心に回転する。これにより、支柱20の回転支持部20Aも、軸線Mを中心に回転して、図10に示すように、上端部21が角度90度の回転範囲内で、正転方向または逆転方向に旋回する。かくして、回転支持部20Aが、電動モータ46の回転力に基づいて、被回転支持部20Bと相対的に回動する。
【0026】
荷重負荷部30は、油圧シリンダ31、ロードセル33、及び図示しないオートスイッチ等を有している。この荷重負荷部30は、台車載置部10に置かれた台車70の台車枠75に、荷重を掛けて軸バネ76を圧縮させる。油圧シリンダ31は、ロッド32を下向きに配置した姿勢で、回転支持部20Aの上端部21に設置されている。油圧シリンダ31は、油圧駆動源39との間で、作動油の圧送経路を電磁弁で制御してロッド32を昇降させ、本実施形態では、ロッド32の昇降ストローク500mm、ロッド32の加圧力(押圧力F)が数十kN等の仕様となっている。このロッド32には、ロードセル33が、取付部材34を介して取り付けられている。ロードセル33は、油圧シリンダ31のロッド32から掛かる荷重を、歪ゲージ式変換器により電気的出力信号に変換して、その荷重(押圧力F)の大きさを検出する。
【0027】
上端部21には、ロッド32の上昇端位置の検出用スイッチとして、前記オートスイッチが設けられている。このオートスイッチがロッド32の上昇端を検出すると、上昇しているロッド32は停止する。なお、電磁弁、ロードセル33、オートスイッチ等の各種機器は、図示しない電気制御盤に電気的に接続されており、自動制御される。
【0028】
次に、スライド機構50について説明する。図7は、図4中、A部を拡大して示すスライド機構の説明図である。図8は、荷重負荷部で台車枠を押圧している様子を示す説明図であり、図8中、B部の拡大図を図9に示す。スライド機構50は、一対の支柱20をそれぞれ、左右方向RLに沿うスライドSL方向に移動可能な構造で立設し、互いに離間する向き、または近接する向きに動作させる機構である。このスライド機構50は、床面FLより低い低床面UFに収容され、架台上に載置されている。
【0029】
スライド機構50には、1つのエアシリンダ52と、2つのリニアガイド51が設けられている。エアシリンダ52は、細長のシリンダチューブ52Aの上側に、その長手方向のストローク範囲内で、ブロック状のスライドテーブル52Bを相対移動させるロッドレスシリンダであり、スライドテーブル52Bにブラケット53を取付けたシリンダである。図示しない電気制御盤により、不図示の空圧機器を自動制御で作動させて、エアの圧送経路を制御することで、スライドテーブル52Bの動作は制御されている。2つのリニアガイド51は、このエアシリンダ52を挟む両側に、エアシリンダ52と共に並置され、リニアガイド51とエアシリンダ52とが互いに、左右方向RLに沿って平行に配列されている。
【0030】
支柱20の被回転支持部20Bの下端は、支柱基礎部56で固定されており、支柱基礎部56は、第1支持部材54を介してブラケット53と連結されている。また、リニアガイド51は、両側とも、この支柱基礎部56に固設された第2支持部材55に接続されている。被回転支持部20Bを支える支柱基礎部56は、各第2支持部材55を介して2つのリニアガイド51で支持されながら、第1支持部材54及びブラケット53を介してスライドテーブル52Bにも支持されている。これにより、スライドテーブル52Bが、シリンダチューブ52Aに対して移動すると、支柱20が、リニアガイド51によりガイドされながら、本実施形態では、ストローク850mmの範囲内で、スライドSL方向に直線的に移動する。
【0031】
スライド機構50では、スライドカバー58が、支柱20前後の可動範囲に亘って、リニアガイド51やエアシリンダ52の周囲を覆っており、このような精密摺動ユニットを、外部から粉塵、排水、油等の異物から遮断して保護している。スライド機構50は、図1に示すように、低床面UFに収容されているため、床面FLとの段差をなくした高さで、カバーが、スライド機構50上にも、設けられている。
【0032】
次に、台車70の分解工程及び組立工程について、簡単に説明する。図11は、台車の分解工程における全体的な流れを説明するフローチャート図であり、図12は、台車の組立工程における全体的な流れを説明するフローチャート図である。
【0033】
はじめに、図1及び図10に示すように、各支柱20は後退端位置Qで退避し、上端部21の向きが、走行方向FRに向けた退避姿勢Sになっている。台車70では、軸バネ76が、ボルト77により拘束されて圧縮状態となっている。分解工程では、台車70が、台車自動搬送装置により、台車載置部10に搬入され、台車ストッパ12により車輪72が輪止めされる(S1)。次に、スライド機構50が、荷重負荷部30で台車70の台車枠75を押圧できる前進端位置Pまで、各支柱20を前進させる(S2)。次いで、上端部21の向きを、車軸方向(左右方向RL)に向けた作動姿勢Rに回動する(S3)。
【0034】
次いで、油圧シリンダ31のロッド32を下降して、台車枠75に押圧力Fを掛けることにより、圧縮状態になっている軸バネ76の復元力に制限を加えて押圧する(S4)。この押圧状態のまま、ボルト77を抜き取る(S4)。この後、油圧シリンダ31のロッド32を上昇させることにより、台車枠75に付与していた押圧力Fを開放する(S6)。これにより、台車枠75の自重による荷重が、軸バネ76に作用しているだけで、ボルト77の拘束による軸バネ76の復元力は失っていることから、作業者は、(S9)で台車枠75を取り除くことができる。
【0035】
次いで、回転支持部20Aを回動し、上端部21の向きを退避姿勢Sにする(S7)。次に、スライド機構50が、支柱20を後退端位置Qまで後退させる(S8)。次に、歯車箱支持装置4のジャッキ4aで、ギヤボックスのケースを支えながら、輪軸71及び台車枠75等の分解・検査・修理等を行う(S9)。次いで、(S10)で、台車枠75をクレーンで吊り上げた後、軸バネ76を取り出す(S11)。
【0036】
組立工程について説明する。輪軸71及び台車枠75等の検査修理等を終えたら、輪軸71及び台車枠75で各種部品の組付けを行う(S21)。次に、台車載置部10に載置されている輪軸71の軸箱73の上に、軸バネ76を取付ける(S22)。次に、(S23)で、台車枠75をクレーンで吊り上げ、台車枠75と輪軸71との位置合わせを行う図示しない治具を台車枠75に取り付ける。次いで、台車枠75を徐々に吊り下げながら、この治具を、台車枠75と輪軸71との組付け直前に取り外した後、台車枠75を、軸バネ76上に載せた状態で、輪軸71に組み付ける(S24)。
【0037】
次いで、スライド機構50が、各支柱20を、前進端位置Pまで前進させる(S25)。次いで、上端部21の向きを作動姿勢Rに変える(S26)。次いで、油圧シリンダ31のロッド32を下降して、台車枠75に押圧力Fを掛ける(S27)。このときの押圧力Fは、台車70上に実際に掛かる車体の荷重のうち、1つの軸バネ76に作用する分担荷重より大きくなっており、ボルト77による抑制で圧縮した軸バネ76のバネ長より短くなるよう、軸バネ76を圧縮できる荷重の大きさである。次いで、油圧シリンダ31で押圧力Fを台車枠75に掛けて、軸バネ76を押圧状態にしたまま、ボルト77を取付ける(S28)。この後、油圧シリンダ31のロッド32を上昇させて、台車枠75に付与していた押圧力Fを開放する(S29)。これにより、軸バネ76は、ボルト77により拘束された状態となる。
【0038】
次いで、回転支持部20Aを回動し、上端部21を退避姿勢Sにする(S30)。次に、スライド機構50が、支柱20を後退端位置Qまで後退させる(S31)。次いで、台車ストッパ12による車輪72の輪止めが解除された後、台車70は、作業者により、台車載置部10から次工程に向けて搬出される(S32)。かくして、台車整備装置1による台車70のメンテナンスが完了する。
【0039】
以上、本実施の形態に係る鉄道車両の台車枠荷重負荷装置2によれば、軸箱73と台車枠75との間に軸バネ76を備えた鉄道車両の台車70を載置する台車載置部10と、台車70の車軸方向に沿う左右方向RLに対し、台車載置部10の両側に立設した一対の支柱20,20の各上端部21に、押圧力Fを発生させる荷重負荷部30と、を備え、荷重負荷部30により、台車載置部10に置かれた台車70の台車枠75に、荷重を掛けて軸バネ76を圧縮させる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置2において、荷重負荷部30が、支柱20に沿う軸線Mを中心に旋回可能な回転機構40を有していること、を特徴とする。
【0040】
この特徴により、荷重負荷部30の向きを、回転機構40により、作動姿勢Rから退避姿勢Sに変えることができ、台車70の分解工程において、荷重載荷後の作業を行うのにあたり、台車載置部10に載置した台車70の位置からそのまま、台車枠75を、台車載置部10の真上にあるクレーンで吊り上げることができる。また、荷重負荷部30の向きを、回転機構40により退避姿勢Sから作動姿勢Rに変えることもでき、台車70の組立工程において、台車枠75を軸バネ76で軸箱73に支持させる作業を行うのにあたり、台車枠75を、台車載置部10に載置した輪軸71に向けて、上記クレーンを用いて吊り下げることができる。そのため、従来の台車枠荷重負荷装置102を用いて、台車のメンテナンスを行う場合に比して、本実施形態の台車枠荷重負荷装置2を用いて、台車70のメンテナンスを行えば、メンテナンス作業を効率良く行うことができ、作業時間の短縮化を図ることができるほか、作業性も向上する。そのため、メンテナンスに掛かるコストが抑制できる。
【0041】
特に、鉄道車両の中でも、新幹線車両の場合、在来線に比して、一編成の車両数が多いところに、走行速度も高速である上、1回の運行で走行する距離が長距離であるため、安全上、台車70のメンテナンスが頻繁に行われており、台車70のメンテナンスを、効率良く低コストで行うことが必須要件とされる。本実施形態の台車枠荷重負荷装置2では、このような必須要件を満たす台車70のメンテナンス作業が、実現できる。
【0042】
また、従来の台車枠荷重負荷装置102では、支柱120が固定式であったため、台車枠75を、支柱120から離れた場所まで一時的に移動させて、この台車枠75の検査修理を行う作業スペースが、台車枠荷重負荷装置102の外側に必要とされていたが、本実施形態の台車枠荷重負荷装置2では、このような作業スペースが不要である。そのため、台車70の検査修理スペース全体を省スペース化することができる。
【0043】
従って、本実施形態に係る鉄道車両の台車枠荷重負荷装置2によれば、鉄道車両の中でも、軸箱73と台車枠75との間に軸バネ76を備えた台車70のメンテナンスで、台車70の分解作業、及びその組立作業を行うのにあたり、作業効率を向上させると共に、低コストで軸バネ76の着脱を行うことができる、という優れた効果を奏する。
【0044】
また、本実施形態に係る鉄道車両の台車枠荷重負荷装置2では、一対の支柱20,20は、左右方向RL(スライド方向SL)にスライド可能な構造で立設され、互いに離間する向き、または近接する向きに移動すること、を特徴とするので、台車載置部10の左右方向RL両側で、支柱20と、台車載置部10に位置する輪軸71(または台車70)との間に、作業者の通路が確保できる。そのため、輪軸71等に検査修理作業に取り組んでいる作業者は、支柱20を大回りして通過しなくても、この通路をスムーズに移動できるため、作業性は向上する。
【0045】
また、本実施形態に係る鉄道車両の台車枠荷重負荷装置2では、回転機構40は、支柱20に設けられ、軸線Mの方向に対し、台車載置部10より荷重負荷部30に近い支柱20の上端部21側寄りに配置されていること、を特徴とするので、荷重負荷部30を含む回転支持部20A全体の重さがより軽量になるため、剛体の慣性モーメントが小さくなり、電動モータ46では、より小さな駆動力で、荷重負荷部30を回動させることができる。また、支柱20において、回転機構40は、スライド機構50と、より間隔を置いて設置できるため、回転機構40とスライド機構50とにおいて、双方の干渉の回避が容易となり、双方の機構の構造が複雑化するのを防ぐことができる。また、歩行中の作業者の足が引っ掛かることもなく、回転機構40の位置は、作業者に邪魔にならない位置となり得る。
【0046】
また、本実施形態に係る鉄道車両の台車枠荷重負荷装置2では、一対の支柱20,20はそれぞれ、荷重負荷部30を保持する回転支持部20Aと、その下方で回転支持部20Aを支える被回転支持部20Bと、からなり、回転機構40では、回転支持部20Aが、電動モータ46の回転力に基づいて、被回転支持部20Bと相対的に回動すること、を特徴とするので、回転機構に、油圧駆動源で回転力を得る油圧ユニットを用いた場合、管やホースの配管等による複雑な装置構造により、装置全体が大型化することもあるが、台車枠荷重負荷装置2では、回転支持部20Aの回転力が、電動モータ46であるため、台車枠荷重負荷装置2がコンパクトにできる。また、油圧ユニットを用いた場合、油圧ユニットの故障時に、作動油が床に漏れ出してしまうこともあるが、台車枠荷重負荷装置2では、回転機構40に電動モータ46を用いているため、回転機構40の故障時に、作動油で床を汚すことはなく、メンテナンス性も良い。
【0047】
また、一対の支柱20,20を、同じ仕様で製造しても、一方の回転支持部20Aの電動モータ46の回転方向と、他方の回転支持部20Aの電動モータ46の回転方向とを逆にする配線で結線するだけで、双方の回転支持部20Aは、走行方向FRから見て同一方向に回動可能となり、支柱20を左右別々に製造しなくても良いので、コスト安である。
【0048】
また、本実施形態に係る鉄道車両の台車枠荷重負荷装置2では、台車載置部10には、当該台車載置部10に置かれた台車70の車輪72を輪止めして、輪軸71の載置位置を位置決めする台車ストッパ12が設けられていること、を特徴とするので、台車70の搬送時に、台車自動搬送装置による自動送りで台車載置部10に搬入された台車70が、台車載置部10内で動いてしまうのを確実に防止できる。
【0049】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
(1)例えば、実施形態では、所定の軌道幅の軌道11で移動する台車70を対象に台車枠荷重負荷装置2を使用したが、軌道幅の異なる複数種の台車に対し、本発明に係る鉄道車両の台車枠荷重負荷装置を汎用的に用いても良く、この場合には、台車毎に、支柱同士の間隔を調整することにより、台車枠への押圧位置を変えれば良い。
(2)また、実施形態では、台車の分解工程の全体的な流れを、図11のフローチャート図に例示し、台車の組立工程の全体的な流れを、図12のフローチャート図に例示したが、台車の分解工程、及びその組立工程は、本実施形態に限定されるものではなく、作業工程の順序や内容は適宜変更可能である。
【0050】
(3)また、実施形態では、台車枠荷重負荷装置2を用いて、台車70の分解工程とその組立工程を行う場合を例示したが、本発明に係る鉄道車両の台車枠荷重負荷装置は、台車の分解工程のみに使用され、台車の組立工程に用いられない場合もある。従って、この場合には、図12に示すフローチャート図のような、台車の組立工程の各作業は行われない。
【符号の説明】
【0051】
2 台車枠荷重負荷装置
10 台車載置部
12 台車ストッパ(位置決め機構)
20 支柱
20A 回転支持部
20B 被回転支持部
21 上端部
30 荷重負荷部
40 回転機構
46 電動モータ
70 台車
73 軸箱
75 台車枠
76 軸バネ
RL 左右方向
F 押圧力
M 軸線
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸箱と台車枠との間に軸バネを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部と、台車の車軸方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、押圧力を発生させる荷重負荷部と、を備え、荷重負荷部により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸バネを圧縮させる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記荷重負荷部を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とするための回転機構を有していること、
前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持固定柱と、からなること、
前記回転機構は、前記被回転支持固定柱と前記回転支持部の間に設けられていること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。
【請求項2】
請求項1に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記回転機構は、前記軸線の方向に対し、前記台車載置部より前記荷重負荷部に近い前記支柱の上端部側寄りに配置されていること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記回転機構では、前記回転支持部が、電動モータの回転力に基づいて、前記被回転支持固定柱と相対的に回動すること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記一対の支柱は、前記左右方向にスライド可能な構造で立設され、互いに離間する向き、または近接する向きに移動すること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-07-16 
出願番号 特願2015-86126(P2015-86126)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B61F)
P 1 651・ 537- YAA (B61F)
P 1 651・ 113- YAA (B61F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 伊藤 秀行  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
島田 信一
登録日 2019-04-12 
登録番号 特許第6509620号(P6509620)
権利者 日本車輌製造株式会社
発明の名称 鉄道車両の台車枠荷重負荷装置  
代理人 特許業務法人コスモス国際特許商標事務所  
代理人 特許業務法人コスモス国際特許商標事務所  

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