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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08L 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08L 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08L |
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管理番号 | 1366075 |
異議申立番号 | 異議2019-700773 |
総通号数 | 250 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-10-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-09-27 |
確定日 | 2020-08-07 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6490303号発明「自動車適用のためのポリプロピレン組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6490303号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。 特許第6490303号の請求項1-11に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6490303号の請求項1?11に係る特許についての出願は、平成28年9月28日(パリ条約による優先権主張 2015年10月6日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする特許出願であって、平成31年3月8日に特許権の設定登録がされ、同年3月27日にその特許掲載公報が発行され、令和1年9月27日に、その請求項1?11に係る発明の特許に対し、松井伸一(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 手続の経緯は以下のとおりである。 令和1年 9月27日 特許異議申立書 同年12月 6日 手続補正書(方式)(申立人) 同年12月13日付け 取消理由通知書 令和2年 2月17日 意見書・訂正請求書(特許権者) 同年 2月21日 通知書(申立人あて) 同年 3月27日 意見書(申立人) 申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。 ・甲第1号証 特開2014-74102号公報 ・甲第2号証 特表2013-515086号公報 ・甲第3号証 ASTM D 1238-04 ・甲第4号証 JOURNAL OF APPLIED POLYMER SCIENCE、VOL.14 1970年、第1651?1653頁 ・甲第5号証 特開2002-97337号公報 ・甲第6号証 JIS K 6921-1:1997 プラスチック-ポリプロピレン(PP)成形用及び押出用材料-第1部:呼び方のシステム及び仕様表記の基礎、JISハンドブック 27 プラスチックII(材料)、日本規格協会編集、一般社団法人日本規格協会、2015年1月30日発行、第231?237頁 ・甲第7号証 ポリプロピレンハンドブック、エドワード・P・ムーア・Jr.編著 保田哲男 外1名翻訳監修、株式会社工業調査会、1998年5月15日発行、第279?293頁 ・甲第8号証 杉正浩 外1名著、メタロセン触媒によるエチレン系コポリマー、日本ゴム協会誌、第70巻、第2号、1997年、第100?105頁 ・甲第9号証 特開2009-132894号公報 ・甲第10号証 JIS K 7367-1:2002 プラスチック-毛細管形粘度計を用いたポリマー希釈溶液の粘度の求め方-第1部:通則、JISハンドブック 26 プラスチックI(試験)、日本規格協会編集、一般社団法人日本規格協会、2010年1月22日発行、第1978?1985頁 ・甲第11号証 再公表特許WO2012/102050号 ・甲第12号証 特開2004-51769号公報 また、申立人は、令和1年12月6日に提出した手続補正書(方式)に、甲第3号証抄訳及び甲第4号証抄訳を添付して提出した。 第2 訂正の適否についての判断 特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である令和2年2月17日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1?11について訂正することを求めた(以下「本件訂正」という。また、本件願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を「本件特許明細書等」という。)。 1 訂正の内容 (1)訂正事項1 訂正前の請求項1に「前記第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)と前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)との重量比[(HECO-1)/(HECO-2)]は3/1から1/2の範囲であり、」とあるのを、「前記第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)と前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)との重量比[(HECO-1)/(HECO-2)]は1.5/1から1/1.5の範囲であり、」に訂正する。 (2)訂正事項2 訂正前の請求項1に「[MFR_(2)(HECO)/MFR_(2)(EOP)]は2/1から100/1の範囲であり、」とあるのを、「[MFR_(2)(HECO)/MFR_(2)(EOE)]は2/1から100/1の範囲であり、」に訂正する。 (3)訂正事項3 訂正前の請求項3である「a)前記組成物の総重量に基づいて、前記第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)は20?75wt%の量で含有され、および/または b)前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)は15?50wt%の量で含有される、請求項1または2に記載のポリプロピレン組成物(PPC)。」を、 「a)前記組成物の総重量に基づいて、前記第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)は34?45wt%の量で含有され、および/または b)前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)は25?40wt%の量で含有される、請求項1または2に記載のポリプロピレン組成物(PPC)。」と訂正する。 (4)訂正事項4 訂正前の請求項4に「ISO 1268-1(デカリン)に従って測定された固有粘度(IV)」とあるのを、「ISO 1628-1(デカリン)に従って測定された固有粘度(IV)」に訂正する。 (5)訂正事項5 訂正前の請求項5に「ISO 1268-1(デカリン)に従って測定された固有粘度(IV)」とあるのを、「ISO 1628-1(デカリン)に従って測定された固有粘度(IV)」に訂正する。 (6)一群の請求項 訂正事項1?5に係る訂正前の請求項1?11について、請求項2?11はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 よって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。 2 判断 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1における第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)と第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)との重量比[(HECO-1)/(HECO-2)]について、「3/1?1/2」を「1.5/1?1/1.5」と限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 本件特許明細書等の【0030】には、重量比[(HECO-1)/(HECO-2)]は、最も好ましくは1.5/1から1/1.5の範囲と記載されているから、訂正事項1による訂正は本件特許明細書等の記載した事項の範囲内であるといえ、また、訂正事項1による訂正は実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項1における「MFR_(2)(EOP)」という記載を、「MFR_(2)(EOE)]とする訂正であるところ、この記載の前段には、「b)0.5g/10min未満のISO 1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(190℃)を有するエチレン-α-オレフィンエラストマー(EOE)」という記載があり、訂正前の「MFR_(2)(EOP)」は、その記載の前段のエチレン-α-オレフィンエラストマー(EOE)のMFR_(2)のことであることは明らかであって、それを単に正すものであるから、誤記の訂正を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項1の記載に基づく誤記の訂正を目的とする訂正であるから、新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更に当たらないことは明らかである。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的 訂正事項3による訂正は、訂正前の請求項3における組成物の総重量に基づく第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)の含有量について、「20?75wt%」を「34?45wt%」と限定し、及び、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)の含有量について、「15?50wt%」を「25?40wt%」と限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 本件特許明細書等の【0033】には、組成物の総重量に基づく第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)の含有量は、最も好ましくは34?45wt%と記載され、また、同【0034】には、組成物の総重量に基づく第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)の含有量は、最も好ましくは25?40wt%と記載されているから、訂正事項3による訂正は、本件特許明細書等の記載した事項の範囲内であるといえ、また、訂正事項3による訂正は、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。 (4)訂正事項4及び5について ア 訂正の目的 訂正事項4及び5による訂正は、訂正前の請求項4又は5における「ISO 1268-1(デカリン)に従って測定された固有粘度(IV)」という記載を、「ISO 1628-1(デカリン)に従って測定された固有粘度(IV)」とする訂正であるところ、訂正前の請求項1及び本件特許明細書等の段落【0016】、【0023】並びに【0175】には、「ISO 1628-1」又は「ISO 1628/1」と記載され、また、高分子化合物の固有粘度を測定するISOの規格は、「ISO1628-1」であることは当業者に明らかであるから、誤記の訂正を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項4及び5による訂正は、誤記の訂正を目的とする訂正であるから、新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更に当たらないことは明らかである。 (5)まとめ 以上のとおりであるから、訂正事項1?5による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1及び2号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。 第3 特許請求の範囲の記載 上記のとおり、本件訂正は認められたので、特許第6490303号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の次のとおりのものである(以下、請求項1?11に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」?「本件発明11」という。)。 「【請求項1】 9.0g/10min以上のISO 1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(230℃)を有するポリプロピレン組成物(PPC)であって、前記組成物は a)少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)を含み、前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)は、前記組成物の総重量に基づいて少なくとも50wt%の総量で含有され、前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)は、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)と、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)とを含み、さらに前記第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)と前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)との重量比[(HECO-1)/(HECO-2)]は1.5/1から1/1.5の範囲であり、前記組成物はさらに b)0.5g/10min未満のISO 1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(190℃)を有するエチレン-α-オレフィンエラストマー(EOE)を含み、 c)前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)の少なくとも1つのMFR_(2)と、前記エチレン-α-オレフィンエラストマー(EOE)のMFR_(2)との比率[MFR_(2)(HECO)/MFR_(2)(EOE)]は2/1から100/1の範囲であり、 d)前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)の少なくとも1つの低温キシレン可溶性成分(XCS)フラクションのISO 1628-1(デカリン)に 従って測定された固有粘度(IV)は2.5dl/g以上であり、 e)前記第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)は、50?500g/10minのISO 1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(230℃)であり、 f)前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)は、0.5?20g/10minのISO 1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(230℃) である、ポリプロピレン組成物(PPC)。 【請求項2】 a)前記組成物の総重量に基づいて、前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)は55?85wt%の総量で含有され、および/または b)前記エチレン-α-オレフィンエラストマー(EOE)は5?25wt%の量で含有される、請求項1に記載のポリプロピレン組成物(PPC)。 【請求項3】 a)前記組成物の総重量に基づいて、前記第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)は34?45wt%の量で含有され、および/または b)前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)は25?40wt%の量で含有される、請求項1または2に記載のポリプロピレン組成物(PPC)。 【請求項4】 前記第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)は、 a)10.0?30.0wt%の低温キシレン可溶性成分フラクション(XCS)、および/または b)75.0?97.0wt%の総プロピレン含有量、および/または c)55.0?75.0wt%の低温キシレン可溶性成分(XCS)フラクション中のプロピレン含有量、および/または d)1.5?4.0dl/gの低温キシレン可溶性成分(XCS)フラクションのISO 1628-1(デカリン)に従って測定された固有粘度(IV)を有する、請求項1?3のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物(PPC)。 【請求項5】 前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)は、 a)10.0?30.0wt%の低温キシレン可溶性成分フラクション(XCS)、および/または b)70.0?95.0wt%の総プロピレン含有量、および/または c)50.0?70.0wt%の低温キシレン可溶性成分(XCS)フラクション中のプロピレン含有量、および/または d)3.0?5.0dl/gの低温キシレン可溶性成分(XCS)フラクションのISO 1628-1(デカリン)に従って測定された固有粘度(IV)を有する、請求項1?4のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物(PPC)。 【請求項6】 前記エチレン-α-オレフィンエラストマー(EOE)は a)850?870kg/m^(3)のISO 1183-1に従って測定された密度を有し、かつ/または b)前記エチレン-α-オレフィンエラストマー(EOE)のα-オレフィンコモノマーはC_(4)?C_(10)α-オレフィンである、請求項1?5のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物(PPC)。 【請求項7】 前記ポリプロピレン組成物(PPC)は、最大10wt%の量の強化ミネラルフィラー(F)を含む、請求項1?6のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物(PPC)。 【請求項8】 前記ミネラルフィラー(F)は、 a)フィロケイ酸塩であり、ならびに/または b)0.8?25.0μmの平均粒径d_(50)を有する、請求項7に記載のポリプロピレン組成物(PPC)。 【請求項9】 前記ミネラルフィラー(F)は、雲母、ケイ灰石、カオリナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、およびタルクからなる群より選択される、請求項7または8に記載のポリプロピレン組成物(PPC)。 【請求項10】 a)前記ポリプロピレン組成物(PPC)は高密度ポリエチレン(HDPE)を含有せず、および/または b)前記ポリプロピレン組成物(PPC)は無機ブロッキング防止剤を含有しない、請求項1?9のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物(PPC)。 【請求項11】 請求項1?10のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物(PPC)を含む、自動車用物品。」 第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要 1 取消理由通知の概要 当審が取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。 (1)取消理由1 本件訂正前の請求項1?6、10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであって、それらの請求項に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)取消理由2 本件訂正前の請求項1?11に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの請求項に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 記 甲第6号証:JISハンドブック27 プラスチック II(材料)の「K6921-1:1997」の項(2015年1月30日)、p.231?237(以下、「甲6」という。) 甲第7号証:工業調査会、ポリプロピレンハンドブック(1998)、p.279?293(以下、「甲7」という。) 甲第8号証:日本ゴム協会誌、第70巻、第2号、第100?105頁(1997)(以下、「甲8」という。) 甲第9号証:特開2009-132894号公報(以下、「甲9」という。) 甲第11号証:再公表特許WO2012/102050号(以下、「甲11」という。) 参考文献1:特開2007-126531号公報 (3)取消理由3 本件訂正前の請求項1?11についての特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 記 ア 本件訂正前の請求項1に記載の「c)前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)の少なくとも1つのMFR_(2)と、前記エチレン-α-オレフィンエラストマー(EOE)のMFR_(2)との比率[MFR_(2)(HECO)/MFR_(2)(EOP)]は2/1から100/1の範囲であり」について、「MFR_(2)(EOP)」は、「MFR_(2)(EOE)」の誤記であると認められる。 イ 本件訂正前の請求項4及び5に記載の「低温キシレン可溶性成分(XCS)フラクションのISO1268-1(デカリン)に従って測定された固有粘度(IV)」について、「ISO1268-1」は、「ISO1628-1」の誤記であると認められる。 2 特許異議申立理由 申立人が特許異議申立書でした申立の理由の概要は、以下に示すとおりである。 (1)申立理由1 訂正前の請求項1?11に係る発明は、本件優先日前に頒布された刊行物である甲1に記載された発明及び甲2?12に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、訂正前の請求項1?11に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。 第5 当審の判断 当審は、当審が通知した取消理由1?3及び申立人がした申立理由1によっては、いずれも、本件発明1?11に係る特許を取り消すことはできないと判断する。 その理由は以下のとおりである。 1 取消理由通知の理由について (1)取消理由1及び2について ア 各甲号証の記載事項について (ア)甲11 甲第11号証には、以下の事項が記載されている。 (11a)「【請求項1】 下記(A)成分を100重量部、(B)成分を18重量部以上65重量部以下、(C)成分を6重量部以上45重量部以下、(D)成分を25重量部以上60重量部以下、(E)成分を0.1重量部以上6.5重量部以下、及び(F)成分を0.15重量部以上5.0重量部以下含有する、ポリプロピレン系樹脂組成物。 (A)下記(a1)?(d1)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体A: (a1)室温デカン可溶部が8重量%以上35重量%以下 (b1)室温デカン可溶部の極限粘度[η]が1.0dl/g以上10.0dl/g以下 (c1)室温デカン可溶部のエチレン量が33モル%以上48モル%以下 (d1)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重下)が20g/10分以上100g/10分以下 (B)下記(a2)?(d2)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体B: (a2)室温デカン可溶部:16重量%以上35重量%以下 (b2)室温デカン可溶部の極限粘度[η]が5.0dl/g以上10.0dl/g以下 (c2)室温デカン可溶部のエチレン量が36モル%以上49モル%以下 (d2)MFR(230℃、2.16kg荷重下)が1g/10分以上20g/10分未満 (C)MFR(230℃、2.16kg荷重下)が0.5g/10分以上20g/10分以下であるエチレン・α-オレフィン共重合体 (D)平均粒径が1μm以上14μm以下である無機充填材 (E)酸変性ポリプロピレン (F)滑剤 ・・・ 【請求項3】 前記(A)成分の室温デカン可溶部の極限粘度[η]が2.0dl/g以上8.5dl/g以下である請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。 ・・・ 【請求項5】 前記(B)成分の室温デカン可溶部の極限粘度[η]が6.5dl/g以上8.5dl/g以下である請求項1?4のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。 【請求項6】 前記(A)成分のMFR(230℃、2.16kg荷重下)が25g/10分以上95g/10分以下である請求項1?5のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。 【請求項7】 前記(B)成分のMFR(230℃、2.16kg荷重下)が10g/10分以上18g/10分以下である請求項1?6のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。 【請求項8】 MFR(230℃、2.16kg荷重下)が10g/10分以上45g/10分以下である請求項1?7のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。 【請求項9】 前記無機充填材(D)がタルクである請求項1?8のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。 ・・・ 【請求項11】 請求項1?10のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物を成形してなる成形品。 【請求項12】 自動車のインストルメントパネル用である請求項11に記載の成形品。」 (11b)「【0006】 本発明は、機械的物性に優れ、フローマーク等が目立ち難く、低光沢性、耐傷付き性に優れるポリプロピレン系樹脂組成物を提供することを目的とする。」 (11c)「【0009】 本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、下記の成分(A)?(F)を含有することを特徴とする。 (A)プロピレン・エチレンブロック共重合体A:100重量部 (B)プロピレン・エチレンブロック共重合体B:18重量部以上65重量部以下 (C)MFR(230℃、2.16kg荷重下)が0.5g/10分以上20g/10分以下であるエチレン・α-オレフィン共重合体:6重量部以上45重量部以下 (D)平均粒径が1μm以上14μm以下である無機充填材:25重量部以上60重量部以下 (E)酸変性ポリプロピレン:0.1重量部以上6.5重量部以下 (F)滑剤:0.15重量部以上5.0重量部以下 上記成分(A)?(F)を所定量含有することにより、フローマーク等が目立ち難く、低光沢性、耐傷付き性に優れる成形品が得られる。 ・・・ 【0012】 上記(b1)について、プロピレン・エチレンブロック共重合体Aの室温デカン可溶部の極限粘度[η]は1.0dl/g以上10.0dl/g以下であり、好ましくは、2.0dl/g以上8.5dl/g以下である。1.0dl/g以上4.5dl/g以下又は1.5dl/g以上3.5dl/g以下とすることもできる。 [η]が1.0dl/g未満の場合、目標の耐衝撃性を得ることができない。 一方、10.0dl/gを超えると、樹脂流動性の低下や混練時に他の樹脂と混ざり難くなるため、成形品にてブツが発生して外観が悪くなり、また、機械物性を低下させる可能性がある。 ・・・ 【0014】 上記(d1)について、プロピレン・エチレンブロック共重合体AのMFRは、20g/10分以上100g/10分以下であり、好ましくは25g/10分以上95g/10分以下である。メルトフローレートが20g/10分未満の場合、樹脂流動性が低下し、成形がし難くなる。一方、100g/10分を超えると、衝撃性が低下する。 ・・・ 【0018】 上記(b2)について、プロピレン・エチレンブロック共重合体Bのデカン可溶部の極限粘度[η]は5.0dl/g以上10.0dl/g以下であり、好ましくは、6.5dl/g以上8.5dl/g以下である。[η]が5.0dl/g未満の場合、フローマーク開始点が短くなり、成形品外観が悪くなる。また、光沢性も高くなる。一方、10.0dl/gを超えると、樹脂流動性の低下や、混練時に他の樹脂と混ざり難くなり、成形品にブツが生じて外観が悪くなる。 ・・・ 【0020】 上記(d2)について、プロピレン・エチレンブロック共重合体BのMFRは、1g/10分以上20g/10分未満であり、好ましくは10g/10分以上18g/10分以下である。MFRが1g/10分未満の場合、樹脂流動性が低下し成形し難くなる。一方、20g/10分以上であると、耐衝撃性が低下する。 【0021】 プロピレン・エチレンブロック共重合体Bの配合量は、上述した成分(A)100重量部に対して18重量部以上65重量部以下であり、好ましくは、20重量部以上50重量部以下である。共重合体Bの配合量が18重量部未満の場合、フローマーク開始点が短くなり、成形品外観が悪くなる。また、成形品の光沢が高くなる。一方、65重量部を超えると、樹脂流動性が低下し、成形性が悪くなる。また、成形品表面のブツが多くなり外観が悪くなる。」 (11d)「【0080】 本発明で使用するプロピレン・エチレンブロック共重合体の製造方法についてさらに詳細に説明する。 本発明者らの知見に拠れば、プロピレン・エチレンブロック共重合体を構成する室温n-デカンに不溶な部分(Dinsol)は、主としてプロピレン重合体成分から構成される。 一方、室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)は、主としてプロピレン-エチレン共重合体ゴム成分から構成される。 【0081】 従って、以下の二つの重合工程(重合工程1及び重合工程2)を連続的に実施することによって、上述した各要件を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体を得ることができる(以下、この方法を「直重法」と呼ぶ)。 [重合工程1] 固体状チタン触媒成分の存在下でプロピレンを重合し、プロピレン重合体成分を製造する工程(プロピレン重合体製造工程)。 [重合工程2] 固体状チタン触媒成分の存在下でプロピレン及びエチレンを共重合してプロピレン-エチレン共重合体ゴム成分を製造する工程(共重合体ゴム製造工程)。 【0082】 本発明で使用するプロピレン・エチレンブロック共重合体は、前述した製造方法で製造されることが好ましく、重合工程1を前段で行い、重合工程2を後段で行うことがより好ましい。また、各重合工程(重合工程1、重合工程2)は2槽以上の重合槽を用いて行うこともできる。ブロック共重合体中のデカン可溶部の含有量は、工程1と工程2の重合時間(滞留時間)を調整すればよい。 【0083】 (C)エチレン・α-オレフィン共重合体 本発明で使用するエチレン・α-オレフィン共重合体は、MFR(230℃、2.16kg荷重下)が0.5g/10分以上20g/10分以下であり、好ましくは0.5g/10分以上15g/10分以下である。MFRが0.5g/10分未満の場合、混練時に分散せず、成形品表面にブツが発生し、その結果、十分な耐衝撃性を得ることができない。一方、20g/10分を超えると十分な耐衝撃性が得られない。 【0084】 エチレン・α-オレフィン共重合体としては、エチレンと炭素数3以上10以下のα-オレフィンとの共重合体が挙げられる。α-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-へキセン、1-オクテン等が好ましい。α-オレフィンは1種で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。 エチレン・α-オレフィン共重合体に占めるα-オレフィンの量は、15重量%以上65重量%以下がよい。 エチレン・α-オレフィン共重合体としては、エチレン-オクテン共重合体、エチレン-ブテン共重合体が好ましい。」 (11e)「【0098】 本発明の組成物は、公知の加工法、例えば、射出成形や押出成形等により、各種成形品に加工できる。本発明の成形品は、フローマーク等が目立ち難く、低光沢性、耐傷付き性に優れている。そのため、塗装や表皮張り合わせといった後工程を設けなくとも製品として使用できる。従って、特に自動車の内装材(インストルメントパネル、ピラー、ドアトリム等)として好適である。 【実施例】 【0099】 以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。 各成分及び本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の特性の測定、並びに本発明のポリプロピレン系樹脂組成物及び成形品の評価方法を以下に示す。 【0100】 (1)室温デカン可溶部 プロピレン・エチレンブロック共重合体の室温(25℃)におけるデカン可溶成分量は、次のようにして求めた。まず、試料を5g精秤し、1,000ミリリットルのナス型フラスコに入れ、さらにBHT(ジブチルヒドロキシトルエン、フェノール系酸化防止剤)1gを添加した後、回転子及びn-デカン700ミリ リットルを投入した。 次いで、ナス型フラスコに冷却器を取り付け、回転子を作動させながら、135℃のオイルバスでフラスコを120分間加熱して、試料をn-デカンに溶解させた。 次に、1,000ミリリットルのビーカーにフラスコの内容物を注いだ後、ビーカー内の溶液をスターラーで攪拌しながら、室温(25℃)になるまで放冷(8時間以上)した後、析出物を金網でろ取した。ろ液を、さらに、ろ紙でろ過した後、3,000ミリリットルのビーカーに収容されたメタノール2,000ミリリットル中に注ぎ、この液を、室温(25℃)下、スターラーで攪拌しながら、2時間以上放置した。 次に、得られた析出物を金網でろ取した後、5時間以上風乾後、真空乾燥機にて100℃で240?270分間乾燥し、25℃におけるn-デカン可溶部を回収した。 25℃におけるn-デカン可溶部の含有量(x)は、試料重量をAg、回収したn-デカン可溶部の重量をCgとすれば、x(質量%)=100×C/Aで表される。 ・・・ 【0102】 (3)室温デカン可溶部の極限粘度[η] 135℃のデカリンで測定した。 【0103】 (4)メルトフローレートの測定: ISO1133に準拠し、試験荷重2.16kg、試験温度230℃の条件で測定した。」 (11f)「【0111】 実施例、比較例で用いた(A)成分と(B)成分の製造方法を以下に示す。 【0112】 製造例1:成分(A-1) (1)固体状チタン触媒成分の調製 無水塩化マグネシウム952g、デカン4420ml及び2-エチルヘキシルアルコール3906gを、130℃で2時間加熱して均一溶液とした。この溶液中に無水フタル酸213gを添加し、130℃にてさらに1時間攪拌混合を行って無水フタル酸を溶解した。 【0113】 このようにして得られた均一溶液を23℃まで冷却した後、この均一溶液の750mlを、-20℃に保持した四塩化チタン2000ml中に1時間にわたって滴下した。滴下後、得られた混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)52.2gを添加し、これより2時間攪拌しながら同温度に保持した。次いで熱時濾過にて固体部を採取し、この固体部を2750mlの四塩化チタンに再懸濁した後、再び110℃で2時間加熱した。 加熱終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカン及びヘキサンを用いて、洗浄液中にチタン化合物が検出されなくなるまで洗浄した。 【0114】 上記の様に調製された固体状チタン触媒成分はヘキサンスラリーとして保存したが、このうち一部を乾燥して触媒組成を調べた。固体状チタン触媒成分は、チタンを2重量%、塩素を57重量%、マグネシウムを21重量%及びDIBPを20重量%の量で含有していた。 【0115】 (2)前重合触媒の製造 固体触媒成分87.5g、トリエチルアルミニウム99.8mL、ジエチルアミノトリエトキシシラン28.4ml、ヘプタン12.5Lを内容量20Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15?20℃に保ちプロピレンを875g挿入し、100分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去及びヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で0.7g/Lとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。 【0116】 (3)本重合 内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを40kg/時間、水素を123NL/時間、(2)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として0.30g/時間、トリエチルアルミニウム2.1ml/時間、ジエチルアミノトリエトキシシラン0.88ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.3MPa/Gであった。 得られたスラリーは内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が3.3mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.1MPa/Gで重合を行った。 【0117】 得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、当該スラリーをガス化させ、気固分離を行った後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.24(モル比)、水素/エチレン=0.10(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力1.2MPa/Gで重合を行った。得られたプロピレン系ブロック共重合体は、80℃で真空乾燥を行った。得られたプロピレン系ブロック共重合体(A-1)の組成と特性を表1に示す。 ・・・ 【0134】 製造例5:成分(A-5) 本重合(3)を以下の様に変えた以外は、製造例1と同様の方法で行った。 (3)本重合 内容量1000Lの攪拌機付きベッセル重合器に、プロピレンを131kg/時間、触媒スラリーを遷移金属触媒成分として0.67g/時間、トリエチルアルミニウム19.7mL/時間、ジエチルアミノトリエトキシシラン4.4mL/時間を連続的に供給し、水素を気相部の水素濃度が5.9mol%になるように供給した。重合温度75℃、圧力3.5MPa/Gで重合を行った。 【0135】 得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを30kg/時間、水素を気相部の水素濃度が4.6mol%になるように供給した。重合温度74.5℃、圧力3.5MPa/Gで重合を行った。 得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを20kg/時間、水素を気相部の水素濃度が4.0mol%になるように供給した。重合温度73℃、圧力3.4MPa/Gで重合を行った。 【0136】 得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.17mol%、重合温度67℃、圧力3.3MPa/Gとなるようにエチレンを装入した。ジエチレングリコールエチルアセテートを遷移金属触媒成分中のTi成分あたり46モル倍の割合で添加した。 得られたスラリーは失活、気化後、気固分離を行った。得られたプロピレン系ブロック共重合体は、80℃で真空乾燥を行った。得られたプロピレン系ブロック共重合体(A-5)の組成と特性を表1に示す。 【0137】 製造例6:成分(B) 本重合(3)を以下の様に変えた以外は、製造例1と同様の方法で行った。 (3)本重合 内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを40kg/時間、水素を156NL/時間、(2)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として0.33g/時間、トリエチルアルミニウム2.2ml/時間、ジエチルアミノトリエトキシシラン0.9ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.5MPa/Gであった。 【0138】 得られたスラリーは内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が4.3mol%になるように供給した。重合温度69℃、圧力3.3MPa/Gで重合を行った。 得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、当該スラリーをガス化させ、気固分離を行った後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.21(モル比)、水素/エチレン=0.0063(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力1.5MPa/Gで重合を行った。 得られたプロピレン系ブロック共重合体は、80℃で真空乾燥を行った。得られたプロピレン系ブロック共重合体(B)の組成と特性を表1に示す。 【0139】 【表1】 【0140】 実施例1?13、比較例1?8 表2,3に示すように、各成分を配合し、タンブラーでドライブレンドした。得られた混合物を、二軸押出機(商品名:TEX、日本製鋼製)で混練して、ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットを製造した。混練条件は、混練温度180℃、スクリュー回転速度1100rpm,吐出量100kg/hとした。 得られたペレットを、射出成型にて上述した評価項目用試料に成形加工し、評価した。結果を表2,3に示す。 【0141】 【表2】 ・・・ 【0143】 ・成分(A):プロピレン・エチレンブロック共重合体A (A-1) (株)プライムポリマー製 商品名:プライムポリプロ (A-2) (株)プライムポリマー製 商品名:プライムポリプロ (A-3) CCCCHEMICAL COMMERCE CO.,LTD社製 商品名:TPP (A-4) (株)プライムポリマー製 商品名:プライムポリプロ (A-5) (株)プライムポリマー製 商品名:プライムポリプロ 【0144】 ・成分(B):プロピレン・エチレンブロック共重合体B (株)プライムポリマー製 商品名:プライムポリプロ 【0145】 ・成分(C):エチレン-α・オレフィン共重合体 (C-1) エチレン-オクテンランダム共重合体(ダウエラストマー日本社製 製品名:EG8100) MFR=2.0g/10分、αオレフィン(オクテン)量:37.4重量% (C-2) エチレン-オクテンランダム共重合体(ダウエラストマー日本社製 製品名:EG8200) MFR=9g/10分、αオレフィン(オクテン)量:37.4重量% (C-3) エチレン-ブテンランダム共重合体(三井化学社製 製品名:A0550S) MFR=1.8g/10分、αオレフィン(ブテン)量:29.1重量% (C-4) エチレン-ブテンランダム共重合体(三井化学社製 製品名:A4050S) MFR=8g/10分、αオレフィン(ブテン)量:29.1重量% (C-5) エチレン-ブテンランダム共重合体(三井化学社製 製品名:A1050S) MFR=2.4g/10分、αオレフィン(ブテン)量:29.1重量% (C-6) エチレン-ブテンランダム共重合体(三井化学社製 製品名:A0250S) MFR=1.0g/10分、αオレフィン(ブテン)量:29.1重量% 【0146】 ・成分(D):無機充填材 タルク1(浅田製粉社製 製品名:JM209 平均粒径(レーザー回折):5μm) タルク2(日本タルク製 製品名:UG剤 平均粒径(レーザー回折):15μm) 【0147】 ・成分(E):酸変性ポリプロピレン (E-1)無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学社製 製品名:アドマーQX-100) [η]=0.43dl/g(135℃、テトラリンで測定)、マレイン酸変性基含有量=3.0重量% (E-2)無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三洋化成社製 製品名:ユーメックス1010) [η]=0.28dl/g(135℃、テトラリンで測定)、マレイン酸変性基含有量=4.5重量% 【0148】 ・成分(F):滑剤 エルカ酸アミド(日本精化製 製品名:ニュートロンS) 【0149】 ・その他添加剤 酸化防止剤としてIrganox1010(BASF(株))0.1重量部,Irgafos168(BASF(株))0.1重量部,耐光安定剤としてLA-52((株)ADEKA製)0.2重量部,分散剤としてステアリン酸カルシウム((株)日本油脂)0.1重量部,及び黒色顔料としてMBPPCM802Y-307((株)東京インキ製)6重量部を配合した。 【0150】 表2,3から、実施例で得られる組成物とその成形品は、シャルピー衝撃強度、引張弾性率、フローマーク、グロス、耐傷付き性のバランスに優れることが分かる。」 (イ)甲6 甲6には、以下の事項が記載されている。 (6a)「 」(第232頁) (ウ)甲7 甲7には、以下の事項が記載されている。 (7a)「6.3.3 インパクト(ヘテロファジック)コポリマー PPヘテロファジック共重合体開発の主な理由は、低温衝撃強度を改良することである。したがって、「インパクト」コポリマーと呼ばれる。これは、通常はエチレン-プロピレン共重合体ゴム(EPR)であるエラストマー相が、PPホモポリマーのマトリックス中に、均一に分散したポリマー構造により達成される。当初は、リアクター外でのコンパウンディング法により製造されたが、1960年代には、リアクターで製造されるインパクトコポリマーが急速に商業化された。」(第289頁下から11?4行目) (エ)甲8 甲8には、以下の事項が記載されている。 (8a)「4.メタロセン系エラストマー 4.1 樹脂改質分野での展開 エラストマー領域(密度890kg/m^(3)以下)の現行のポリマー(エチレン・α-オレフィン共重合体)は、主としてV系のチーグラー触媒を用いて溶液法で製造されている。この領域のポリマーの結晶化度は20%以下であり、単体としての用途は少なく、主としてポリエチレンやポリプロピレンの改質材として、包材分野から自動車工業分野など広い用途で用いられている。」(第62頁右欄下から14?6行目) (オ)甲9 甲9には、以下の事項が記載されている。 (9a)「【0074】 (B-2) エチレン-ブテン共重合体ゴム 商品名: タフマーA0250S(三井化学(株)製) 密 度: 0.860(g/cm^(3)) MFR(190℃、2.16kg荷重):0.2(g/10分)」 (カ)参考文献1 参考文献1には、以下の事項が記載されている。 (参1)「【0071】 ・成分(a-1):エチレンとブテン-1との共重合体 成分(a-1)として、エチレンとブテン-1との共重合体(三井化学(株)社製タフマーA0250S)を用いた。重合触媒はメタロセン系、密度は0.860g/cm^(3)、Mw/Mn=2.2、MFR(190℃、21N荷重)=0.2g/10分であった。即ち、この成分(a-1)は本発明に規定する成分(a)の構成要素であるエチレン・α-オレフィン共重合体に該当する。」 イ 甲11に記載された発明 甲11の特許請求の範囲の請求項1には、「下記(A)成分を100重量部、(B)成分を18重量部以上65重量部以下、(C)成分を6重量部以上45重量部以下、(D)成分を25重量部以上60重量部以下、(E)成分を0.1重量部以上6.5重量部以下、及び(F)成分を0.15重量部以上5.0重量部以下含有する、ポリプロピレン系樹脂組成物。 (A)下記(a1)?(d1)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体A: (a1)室温デカン可溶部が8重量%以上35重量%以下 (b1)室温デカン可溶部の極限粘度[η]が1.0dl/g以上10.0dl/g以下 (c1)室温デカン可溶部のエチレン量が33モル%以上48モル%以下 (d1)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重下)が20g/10分以上100g/10分以下 (B)下記(a2)?(d2)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体B: (a2)室温デカン可溶部:16重量%以上35重量%以下 (b2)室温デカン可溶部の極限粘度[η]が5.0dl/g以上10.0dl/g以下 (c2)室温デカン可溶部のエチレン量が36モル%以上49モル%以下 (d2)MFR(230℃、2.16kg荷重下)が1g/10分以上20g/10分未満 (C)MFR(230℃、2.16kg荷重下)が0.5g/10分以上20g/10分以下であるエチレン・α-オレフィン共重合体 (D)平均粒径が1μm以上14μm以下である無機充填材 (E)酸変性ポリプロピレン (F)滑剤」が記載され、この具体例としての実施例13に着目すると、甲11には、以下の発明が記載されていると認められる。 「室温デカン可溶部が11重量%、室温デカン可溶部のエチレン量が40モル%、室温デカン可溶部の極限粘度が7.5dl/g、MFRが80g/10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A-5)を100重量部、室温デカン可溶部が23重量%、室温デカン可溶部のエチレン量が41モル%、室温デカン可溶部の極限粘度が7.2dl/g、MFRが13g/10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)を45重量部、(C-6)エチレン-ブテンランダム共重合体(三井化学社製 製品名:A0250S、MFR=1.0g/10分、αオレフィン(ブテン)量:29.1重量%)を35重量部、(D)タルク1(浅田製粉社製 製品名:JM209平均粒径(レーザー回折):5μm)を46重量部、(E-1)無水マレイン酸変性ポリプロピレンを0.2重量部、(F)エルカ酸アミドを0.5重量部、酸化防止剤としてIrganox1010(BASF(株))を0.1重量部、Irgafos168(BASF(株))を0.1重量部、耐光安定剤を0.2重量部、分散剤としてステアリン酸カルシウムを0.1重量部、及び黒色顔料を6重量部配合した、組成物のMFRが14g/10分であるポリプロピレン系樹脂組成物。」(以下、「甲11発明」という。) ウ 対比・判断 本件特許明細書等の全体の記載からみて、「MFR_(2)(HECO)」は、「ISO1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(230℃)」であり、「MFR_(2)(EOE)」は、「ISO1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(190℃)」であるものと認め、以下検討する。 (ア)本件発明1について a 対比 (a)甲11発明の「プロピレン・エチレンブロック共重合体」について 甲11発明の「プロピレン・エチレンブロック共重合体」は、甲11の段落【0080】?【0082】、【0134】?【0137】(摘記(11d)、(11f))に記載されるとおり、固体状チタン触媒成分の存在下でプロピレンを重合し、プロピレン重合体成分を製造する重合工程1(前段)と、固体状チタン触媒成分の存在下でプロピレン及びエチレンを共重合してプロピレン-エチレン共重合体ゴム成分を製造する重合工程2(後段)を連続的に実施することにより製造したものである。 ここで、甲6の表1には、プロピレンのホモポリマーの相と、プロピレンと他のオレフィンモノマーからなるゴム相との二つ以上の相で構成される熱可塑性耐衝撃性プロピレンポリマーを、以前は”ブロックコポリマー”と称した旨記載され(摘記(6a))、甲7には、インパクト(ヘテロファジック)コポリマーは、エチレン-プロピレン共重合体ゴム(EPR)であるエラストマー相が、PPホモポリマーのマトリックス中に、均一に分散したポリマー構造である旨記載されている(摘記(7a))ことから、上記ブロックコポリマーと上記ヘテロファジックコポリマーとは、同一の物を指すものといえる。また、本件特許明細書の段落【0002】に「異相プロピレンコポリマー(HECO:heterophasic propylene copolymers)」と記載されていることから、「ヘテロファジックコポリマー」は「異相プロピレンコポリマー」であるものと解され、すなわち、上記ブロックコポリマーと「異相プロピレンコポリマー(HECO)」とは同一の物を指すものといえる。 そうしてみると、甲11発明の「プロピレン・エチレンブロック共重合体」は、本件発明1の「異相プロピレンコポリマー(HECO)」に相当する。 (b)甲11発明の「プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-5)」及び「プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)」について 上記(a)で述べたとおりであるので、甲11発明の「プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-5)」及び「プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)」は、それぞれ本件発明1の「異相プロピレンコポリマー(HECO)」に相当する。この上で、以下検討を進める。 甲11発明の「プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-5)」は、MFRが80g/10分であり、該「MFR」は、甲11の段落【0103】の記載(摘記(11(f))によれば、「ISO1133に準拠し、試験荷重2.16kg、試験温度230℃の条件で測定した」ものであるから、本件発明1の「50?500g/10minのISO1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(230℃)であ」る「第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)」に相当する。 また、甲11発明の「プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)」は、MFRが13g/10分であり、上記した理由により、本件発明1の「0.5?20g/10minのISO1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(230℃)である」「第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)」に相当する。 そして、甲11発明は、「プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-5)」及び「プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)」を含んでいるから、これは、本件発明1の「前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)は、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)と、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)とを含み、」に相当する。 (c)甲11発明の「プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-5)」と「プロピレン・エチレンブロック共重合体B」とのポリプロピレン系樹脂組成物に対する配合割合について 甲11発明の「プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-5)」は「100重量部」含み、「プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)」は「45重量部」含み、それらの組成物中の総重量に基づく総量は62.2(=(100+45)/(100+45+35+46+0.2+0.5+0.1+0.1+0.2+0.1+6)×100)wt%であるから、甲11発明の「プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-5)」と「プロピレン・エチレンブロック共重合体B」とのポリプロピレン系樹脂組成物の配合割合は、本件発明1の「少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)を含み、前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)は、前記組成物の総重量に基づいて少なくとも50wt%の総量で含有され、」に相当する。 (d)甲11発明の「プロピレン・エチレンブロック共重合体」が含有する「室温デカン可溶部」について 甲11発明の「プロピレン・エチレンブロック共重合体」が含有する「室温デカン可溶部」に関して、甲11の段落【0080】には、「プロピレン・エチレンブロック共重合体を構成する室温n-デカンに不溶な部分(Dinsol)は、主としてプロピレン重合体成分から構成される。一方、室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)は、主としてプロピレン-エチレン共重合体ゴム成分から構成される。」と記載されている(摘記(11d))ことから、甲11発明の「室温デカン可溶部」は、「プロピレン・エチレンブロック共重合体」中の「プロピレン-エチレン共重合体ゴム成分」に該当するものと解される。一方、本件特許明細書等の段落【0040】及び【0071】によれば、本件発明1において、「低温キシレン可溶性成分(XCS)フラクションとは異相プロピレンコポリマー」「のエラストマー部分、すなわちエラストマープロピレンコポリマー」「を表す」ものと解される。これらのことから、甲11発明における「室温デカン可溶部」と、本件発明1における「低温キシレン可溶性成分(XCS)フラクション」とは、同一の部分を指すものといえる。 そして、甲11発明の「室温デカン可溶部」は、特定の「極限粘度」を有するものであるところ、「極限粘度」及び「固有粘度」は、同一の意味であることが当業者の技術常識である。また、甲11発明の「極限粘度」は、甲11の段落【0102】に記載される(摘記(11e))とおり、「135℃のデカリンで測定した」ものである一方、本件発明1の「固有粘度」は、本件特許明細書等の段落【0175】の記載から、「デカリン中135℃」で測定したものであるから、甲11発明の「極限粘度」と本件発明1の「ISO1628-1(デカリン)に従って測定された固有粘度(IV)」とは、技術的に同等のものであるといえる。 してみると、甲11発明の「室温デカン可溶部の極限粘度が7.5dl/g」「であるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A-5)」及び「室温デカン可溶部の極限粘度が7.2dl/g」「であるプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)」は、本件発明1の「d)前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)の少なくとも1つの低温キシレン可溶性成分(XCS)フラクションのISO1628-1(デカリン)に従って測定された固有粘度(IV)は2.5dl/g以上であり、」と一致する。 (e)甲11発明の「(C-6)エチレン-ブテンランダム共重合体」について 甲11発明の「(C-6)エチレン-ブテンランダム共重合体」は、本件発明1の「エチレン-α-オレフィンエラストマー(EOE)」と、「エチレン-α-オレフィン共重合体」の限りにおいて一致する。 (f)甲11発明の「組成物のMFR」について 甲11発明の「組成物のMFR」は、甲11の段落【0103】の記載(摘記(11e))によれば、「ISO1133に準拠し、試験荷重2.16kg、試験温度230℃の条件で測定した」ものであるから、甲11発明の「組成物のMFRが14g/10分であるポリプロピレン系樹脂組成物」は、本件発明1の「9.0g/10min以上のISO1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(230℃)を有するポリプロピレン組成物(PPC)」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲11発明とは、「9.0g/10min以上のISO1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(230℃)を有するポリプロピレン組成物(PPC)であって、前記組成物は a)少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)を含み、前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)は、前記組成物の総重量に基づいて少なくとも50wt%の総量で含有され、前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)は、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)と、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)とを含み、前記組成物はさらに b)エチレン-α-オレフィン共重合体を含み、 d)前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)の少なくとも1つの低温キシレン可溶性成分(XCS)フラクションのISO1628-1(デカリン)に従って測定された固有粘度(IV)は2.5dl/g以上であり、 e)前記第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)は、50?500g/10minのISO1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(230℃)であり、 f)前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)は、0.5?20g/10minのISO1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(230℃)である、ポリプロピレン組成物(PPC)」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> エチレン-α-オレフィン共重合体について、本件発明1は、「エチレン-α-オレフィンエラストマー(EOE)」であるのに対し、甲11発明は、「(C-6)エチレン-ブテンランダム共重合体(三井化学社製 製品名:A0250S)」である点 <相違点2> エチレン-α-オレフィン共重合体について、本件発明1は、「0.5g/10min未満のISO1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(190℃)を有する」のに対し、甲11発明は、「三井化学社製 製品名:A0250S、MFR=1.0g/10分」である点 <相違点3> 本件発明1は、「c)前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)の少なくとも1つのMFR_(2)と、前記エチレン-α-オレフィンエラストマー(EOE)のMFR_(2)との比率[MFR_(2)(HECO)/MFR_(2)(EOP)]は2/1から100/1の範囲であ」るのに対し、甲11発明は、「プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-5)」のMFR又は「プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)」のMFRと、「(C-6)エチレン-ブテンランダム共重合体」のMFRとの比率が明らかでない点 <相違点4> 第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)と第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)との重量比[(HECO-1)/(HECO-2)]が、本件発明1では「1.5/1から1/1.5の範囲」であるのに対し、甲11発明では、「プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-5)を100重量部」と「プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)を45重量部」を含む点 b 判断 事案に鑑み、相違点4から検討する。 (a)新規性について 甲11発明では、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)に相当する「プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-5)」を100重量部、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)に相当する「プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)」を45重量部配合しており、両者の重量比である[(HECO-1)/(HECO-2)]は、2.2:1と計算され、本件発明1で特定される「1.5/1から1/1.5」の範囲と一致しないことは明らかである。 そうすると、相違点4は実質的な相違点である。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲11発明でない。 (b)進歩性について 次に、この相違点4の容易想到性について検討する。 甲11の段落【0006】には、機械的物性に優れ、フローマーク等が目立ち難く、低光沢性、耐傷付き性に優れるポリプロピレン系樹脂組成物を提供することを目的とすることが記載され(摘記(11b))、これらの目的を達成するために、甲11の特許請求の範囲の請求項1には、ポリプロピレン系樹脂組成物として、(A)成分を100重量部、(B)成分を18重量部以上65重量部以下配合することが記載されている(摘記(11a))といえる。 これらの甲11の記載からすると、当業者であれば、甲11発明において「プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)」の配合量を、仮に最も多い量の65重量部としたとしても、成分Aと成分Bの重量比は、「1.54:1」と計算され、本件発明1で特定される「1.5/1から1/1.5」の範囲と一致しない。そして、甲11の段落【0021】には、プロピレン・エチレンブロック共重合体Bの配合量は、成分(A)100重量部に対して18重量部以上65重量部以下であること、65重量部を超えると、樹脂流動性が低下し、成形性が悪くなり、成形品表面のブツが多くなり外観が悪くなることが記載されている(摘記(11c))ことからすると、プロピレン・エチレンブロック共重合体Bの配合量をさらに多い量とし、本件発明1で特定する範囲とするには阻害要因があるといえ、甲11の記載からは第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)と第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)との重量比[(HECO-1)/(HECO-2)]を「1.5/1から1/1.5の範囲」とする動機付けがあるとはいえない。 そうすると、甲11発明において、相違点4を構成することは当業者が容易に想到することができたものとすることはできない。 また、甲6?甲9及び参考文献1をみても、この点を動機付ける記載はないから、当業者が相違点4を容易に構成することができたものとすることはできない。 (c)小括 よって、相違点1?3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲11発明であるとはいえず、また、甲11発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (イ)本件発明2?11について 本件発明2?11は、本件発明1を引用してさらに減縮した発明であるから、上記(ア)で述べた理由と同じ理由により、本件発明2?6及び10は、甲11発明であるとはいえず、また、甲11発明並びに甲6?甲9及び参考文献1に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。さらに、本件発明7?9及び11は、甲11発明並びに甲6?甲9及び参考文献1に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 エ まとめ 以上のとおりであるから、取消理由1及び2によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。 (2)取消理由3について 本件訂正により、本件訂正前の請求項1に記載の「MFR_(2)(EOP)」は、「MFR_(2)(EOE)」に訂正され、また、本件訂正前の請求項4及び5に記載の「ISO1268-1」は、「ISO1628-1」に訂正された。 これらの訂正により、取消理由3が解消したことは明らかである。 よって、取消理由3によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。 2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立人がした申立理由について (1)申立理由1について ア 各甲号証の記載事項について (ア)甲1 甲1には、以下の事項が記載されている。 (1a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A)メルトフローレート(ASTM D 1238、230℃、2.16kg荷重下)が5?500g/10分の範囲にあるポリプロピレン:50?65重量部、 (B-1)135℃、デカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が2.5?4.5dl/g、およびエチレン含有率が39?55モル%の範囲にあるプロピレン・エチレン共重合体:3?18重量部、 (B-2)135℃、デカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が5?10dl/g、およびエチレン含有率が35?45モル%の範囲にあるプロピレン・エチレン共重合体:1?5重量部、 (C)メルトフローレート(ASTM D 1238、230℃、2.16kg荷重下)が0.1?2g/10分、かつ密度が850?880kg/m^(3)の範囲にあるエチレン・α-オレフィンランダム共重合体:1?20重量部、および (D)無機充填剤:5?30重量部(ただし、成分(A)、(B-1)、(B-2)、(C)、(D)の合計量は100重量部)からなる(F)樹脂組成物100重量部に対して、 (E)脂肪酸アミド:0.1?0.5重量部を含んでなるポリプロピレン系樹脂組成物。 【請求項2】 前記(A)ポリプロピレン、(B-1)プロピレン・エチレン共重合体、および(B-2)プロピレン・エチレン共重合体が、下記要件(1-i)?(1-iv)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体(A,B-1)30?80重量部と、下記要件(2-i)?(2-iv)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体(A,B-2)5?40重量部であって、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A,B-1)とプロピレン・エチレンブロック共重合体(A,B-2)の配合割合の和が50?94重量部の組み合わせによる請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。 (1-i)23℃、n-デカンに不溶な成分(Dinsol)量が77?90重量%、 (1-ii)23℃、n-デカンに不溶な成分(Dinsol)のメルトフローレート(ASTM D 1238、230℃、2.16kg荷重下)が5?500g/10分、 (1-iii)23℃、n-デカンに可溶な成分(Dsol)の135℃、デカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が2.5?4.5dl/g、 (1-iv)23℃、n-デカンに可溶な成分(Dsol)のエチレン含有率が39?55モル%、 (2-i)23℃、n-デカンに不溶な成分(Dinsol)量が70?90重量%、 (2-ii)23℃、n-デカンに不溶な成分(Dinsol)のメルトフローレート(ASTM D 1238、230℃、2.16kg荷重下)が5?500g/10分、 (2-iii)23℃n-デカンに可溶な成分(Dsol)の135℃、デカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が5?10dl/g、 (2-iv)23℃、n-デカンに可溶な成分(Dsol)のエチレン含有率が35?45モル%。」 (1b)「【0011】 本発明が解決しようとする課題は、高い剛性および耐衝撃性を有し、かつ、成形体とした場合に無塗装でも優れた外観品質を与えることができる程度にフローマークの発生がなく、低光沢である成形体が得られ得るポリプロピレン系樹脂組成物を提供することにある。 ・・・ 【0015】 本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、剛性および耐衝撃性に優れ、フローマークを生じにくく、しかも、低光沢である成形品を製造できることから、無塗装でも優れた外観品質を与えることができるので、高い意匠性の要求される自動車内装部品などの用途にも好適に用いられる。」 (1c)「【0020】 なお、本発明において、メルトフローレート(MFR)は、ASTM D 1238に準拠し、2.16kg荷重下、230℃で測定した値である。」 (1d)「【0023】 [(B-1)プロピレン・エチレン共重合体] 本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を構成する成分の一つであるプロピレン・エチレン共重合体(B-1)は、135℃、デカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が2.5?4.5dl/g、好ましくは2.5?4.0dl/gの範囲にある。極限粘度[η]が、2.5dl/g以上のプロピレン・エチレン共重合体(B-1)を含むポリプロピレン系樹脂組成物から得られる成形体は耐衝撃性が優れる。また、4.5dl/g以下のプロピレン・エチレン共重合体(B-1)を用いることにより、得られる成形体は高分子量成分の分散不良によるブツの発生が抑えられる。 【0024】 本発明に係るプロピレン・エチレン共重合体(B-1)は、^(13)C-NMR測定から求められるエチレン由来の構造単位の含有率が、39?55モル%、好ましくは40?52モル%の範囲にある。エチレン由来の構造単位の含有率が39モル%以上のプロピレン・エチレン共重合体(B-1)を用いることにより、低光沢の成形体を得ることができる。また、55モル%以下のプロピレン・エチレン共重合体(B-1)を用いることにより、耐衝撃性が優れる成形体を得ることができる。 【0025】 本発明に係るプロピレン・エチレン共重合体(B-1)は、個別にプロピレンとエチレンとをランダム共重合することにより製造される重合体であっても、プロピレンとエチレ ンとをブロック共重合することによって製造されるブロック共重合体におけるプロピレンとエチレンとの共重合体成分であってもよい。本発明に係るプロピレン・エチレン共重合体(B-1)をブロック共重合で製造する場合は、23℃、n-デカンに可溶な成分が、プロピレン・エチレン共重合体(B-1)に相当する。 【0026】 [(B-2)プロピレン・エチレン共重合体] 本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を構成する成分の一つであるプロピレン・エチレン共重合体(B-2)は、135℃、デカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が5?10dl/g、好ましくは5.5?8dl/gの範囲にある。極限粘度[η]が、5dl/g以上であるとポリプロピレン系樹脂組成物を成形した際にフローマークの発生を抑えることができる。また、10dl/g以下であると、高分子量成分の分散不良によるブツの発生が抑えられる。 【0027】 本発明に係るプロピレン・エチレン共重合体(B-2)は、13C-NMR測定から求められるエチレン由来の構造単位の含有率が、35?45モル%、好ましくは35?40モル%の範囲にある。エチレン由来の構造単位の含有率が35モル%以上のプロピレン・エチレン共重合体(B-2)を用いることにより、低光沢の成形体を得ることができる。また、45モル%以下のプロピレン・エチレン共重合体(B-2)を用いることにより、耐衝撃性が優れる成形体を得ることができる。 【0028】 本発明に係るプロピレン・エチレン共重合体(B-2)は、個別にプロピレンとエチレンとをランダム共重合することにより製造される重合体であっても、プロピレンとエチレンとをブロック共重合することによって製造されるブロック共重合体におけるプロピレンとエチレンとの共重合体成分であってもよい。本発明に係るプロピレン・エチレン共重合体(B-2)をブロック共重合で製造する場合は、23℃、n-デカンに可溶な成分が、プロピレン・エチレン共重合体(B-2)に相当する。 ・・・ 【0040】 [プロピレン・エチレンブロック共重合体の製造方法] 本発明に係るポリプロピレン(A)およびプロピレン・エチレン共重合体(B-1)、あるいは、ポリプロピレン(A)およびプロピレン・エチレン共重合体(B-2)とをブロック共重合で製造する場合は、公知のチタン触媒を用いて製造することができる。チタン触媒の好ましい例としては、チタン、マグネシウム、ハロゲンの各原子を含む固体状チタン触媒成分およびアルミニウム化合物を主たる成分とする重合用固体触媒が挙げられる。 【0041】 本発明に係るポリプロピレン(A)およびプロピレン・エチレン共重合体(B-1)、あるいは、ポリプロピレン(A)およびプロピレン・エチレン共重合体(B-2)とをブロック共重合で製造する方法としては、たとえば、特開平11-107975号公報や特開2004-262993号公報に記載されている方法に準じて、高立体規則性ポリプロピレン製造用触媒の存在下に、多段重合により製造する方法が挙げられる。すなわち、プロピレン・エチレンブロック共重合体は、(i)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含有する固体状チタン触媒成分と、(ii)有機金属化合物触媒成分と、(iii)ドナー成分とから形成される高立体規則性ポリプロピレン製造用の重合用触媒の存在下に、第1段で実質的に水素の存在下もしくは非存在下でプロピレンを重合させるプロピレン単独重合体部を、最終的に得られるプロピレン・エチレンブロック共重合体全体の所望の範囲、例えば、70?90重量%製造する段と、エチレンおよびプロピレンを共重合させてエチレン・プロピレンランダム共重合体部を、最終的に得られるプロピレン・エチレンブロック共重合体全体の所望の範囲、例えば、10?30重量%製造する段とを含む2段以上の多段重合により製造することができる。プロピレン・エチレンブロック共重合体のMFRおよび極限粘度[η]を所望の範囲にするには、重合条件などを調節することで適宜調整することができ、特に制限されないが、分子量調整剤として水素を使用する方法が好ましい。」 (1e)「【0044】 [(C)エチレン・α-オレフィンランダム共重合体] 本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を構成する成分の一つであるエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)は、エチレンと炭素原子数4?20のα-オレフィンとのランダム共重合体である。 【0045】 上記炭素原子数4?20のα-オレフィンとしては、具体的には1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらのα-オレフィンは、単独でまたは組み合せて用いることができる。これらの中では、特にプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましく用いられる。」 (1f)「【0054】 本発明に係るプロピレン・エチレンブロック共重合体(A,B-1)、あるいはプロピレン・エチレンブロック共重合体(A,B-2)に含まれるポリプロピレン(A)、プロピレン・エチレン共重合体(B-1)、およびプロピレン・エチレン共重合体(B-2)は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A,B-1)、あるいはプロピレン・エチレンブロック共重合体(A,B-2)をn-デカンに完全に溶解させた後、放冷し、23℃、n-デカンに不溶な成分(Dinsol)と可溶な成分(Dsol)に分け、Dinsol分が(A)成分、Dsol分が(B-1)成分、あるいは(B-2)成分に相当する。 【0055】 成分(A,B-1)のDinsol分(成分(A))は、77?90重量%、好ましくは79?90重量%、Dsol分(成分(B-1))は10?23重量%、好ましくは10?21重量%(成分(A,B-1)中のDinsol分とDsol分の合計は100重量%)、成分(A,B-2)のDinsol分(成分(A))は、70?90重量%、好ましくは75?90重量%、Dsol分(成分(B-2))は10?30重量%、好ましくは10?25重量%(成分(A,B-2)中のDinsol分とDsol分の合計は100重量%)である。 ・・・ 【0057】 上記(A)成分、(B-1)成分および(B-2)成分として、成分(A,B-1)と成分(A,B-2)を用いる場合、成分(A,B-1)、(A,B-2)、(C)および(D)の合計量を100重量部とした場合に、成分(A,B-1)の配合割合は30?80重量部、好ましくは30?77重量部であり、成分(A,B-2)の配合割合は5?40重量部、好ましくは7?39重量部であって、成分(A,B-1)と成分(A,B-2)の配合割合の和は50?94重量部、好ましくは57?91重量部、より好ましくは62?87重量部である。」 (1g)「【0064】 ・・・ 【実施例】 ・・・ 【0066】 〔メルトフローレート(g/10分)〕 ASTM D1238に準拠し、試験荷重2.16kg、試験温度230℃の条件で測定した。以下、単に「MFR」ともいう。 ・・・ 【0075】 以下、実施例、比較例において使用した各プロピレン・エチレンブロック共重合体:(A,B-1)、(A,B-2)の製造例を示す。 ・・・ 【0089】 [製造例i-4] 製造例i-1の(1)固体状チタン触媒成分の調製は同様に行い、(2)前重合触媒の製造、(3)本重合を以下の方法で行った。 (2)前重合触媒の製造 固体状チタン触媒成分82.5g、トリエチルアルミニウム79.9mL、ジシクロペンチルジメトキシシラン20.5ml、ヘプタン12.5Lを内容量20Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15?20℃に保ちプロピレンを825g挿入し、100分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体状チタン触媒成分濃度で0.7g/Lとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。 【0090】 (3)本重合 内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを40kg/時間、水素を210NL/時間、(2)で製造した前重合触媒のスラリーを固体状チタン触媒成分として0.43g/時間、トリエチルアルミニウム2.9ml/時間、ジシクロペンチルジメトキシシラン1.1ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.2MPa/Gであった。 【0091】 得られたスラリーは内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が4.4mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.2MPa/Gで重合を行った。 【0092】 得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、当該スラリーをガス化させ、気固分離を行った後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.41(モル比)、水素/エチレン=0.15(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力0.9MPa/Gで重合を行った。 得られたプロピレン系ブロック共重合体は、80℃で真空乾燥を行った。 【0093】 [製造例i-5] 製造例i-4の(1)固体状チタン触媒成分の調製、(2)前重合触媒の製造は同様に行い、(3)本重合を以下の方法で行った。 【0094】 内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを40kg/時間、水素を200NL/時間、(2)で製造した前重合触媒のスラリーを固体状チタン触媒成分として0.44g/時間、トリエチルアルミニウム3.0ml/時間、ジエチルアミノトリエトキシシラン1.1ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.2MPa/Gであった。 【0095】 得られたスラリーは内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が4.3mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.2MPa/Gで重合を行った。 【0096】 得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、当該スラリーをガス化させ、気固分離を行った後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.47(モル比)、水素/エチレン=0.040(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力0.6MPa/Gで重合を行った。 得られたプロピレン系ブロック共重合体は、80℃で真空乾燥を行った。 ・・・ 【0109】 [製造例ii-3] 製造例i-1の(1)固体状チタン触媒成分の調製、(2)前重合触媒の製造は同様に行い、(3)本重合を以下の方法で行った。 【0110】 内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを40kg/時間、水素を225NL/時間、(2)で製造した前重合触媒のスラリーを固体状チタン触媒成分として0.39g/時間、トリエチルアルミニウム2.6ml/時間、ジエチルアミノトリエトキシシラン1.1ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.2MPa/Gであった。 【0111】 得られたスラリーは内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が6.3mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.2MPa/Gで重合を行った。 【0112】 得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、当該スラリーをガス化させ、気固分離を行った後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.14(モル比)、水素/エチレン=0.011(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力1.2MPa/Gで重合を行った。 得られたプロピレン系ブロック共重合体は、80℃で真空乾燥を行った。」 (1h)「【0129】 ・・・ 以上の製造例で作製された各プロピレン・エチレンブロック共重合体(A,B-1)および(A,B-2)の各物性を表1、2に示す。 また、エチレン・α-オレフィン共重合体(C)の物性を表3に示す。 【0130】 【表1】 【0131】 【表2】 【0132】 【表3】 *1:ダウエラストマー社製、*2:三井化学社製」 【0133】 無機充填材(D)は、松村産業社製タルク・製品名5000PJ(平均粒径4μm)を使用した。 脂肪酸アミド(E)は、日本精化社製エルカ酸アミド・製品名ニュートロンSを使用した。 【0134】 [実施例1?7、比較例1?7] 各成分を表4、5に示す比率で配合し、更に酸化防止剤であるIrganox1010(BASF製)を0.10部、Irgafos168(BASF製)を0.05部配合の上、タンブラーでドライブレンドした。この混合物を二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX30α)により、バレル温度200℃、スクリュー回転600rpm、押出し量50kg/hの条件で押出し、樹脂組成物ペレットを得た。 これらペレットを用いて、各種評価を実施した。結果を表4、5に示す。 【0135】 【表4】 」 (イ)甲3 甲3には、以下の事項が記載されている。 (3a)「ASTM D 1238-04 押出プラストメーターによる熱可塑性樹脂のメルトフローレイトのための標準試験方法」(表題) (3b)「注2-この試験方法及びISO 1133-1991は技術的に同等である。」(第1頁左欄第21?22行) (ウ)甲4 甲4には、以下の事項が記載されている。甲4の記載事項は、申立人が提出した甲第4号証抄訳によった。 (4a)「 注記 ポリプロピレンにおけるメルトフローレートと固有粘度との相関関係 緒言 メルトフロー及び固有粘度は、試験されるポリマーの分子量に関するパラメーターとしてポリマー産業の研究所で非常に一般的に用いられている。それにもかかわらず、これら2つの分子パラメーターを関連付けるための研究はほとんど試みられていない。本稿は、ポリプロピレンホモポリマーについてメルトフローレートと固有粘度との相関関係を扱う。」(第1651頁第1?8行) (4b)「 結果と考察 研究したポリプロピレンホモポリマーのメルトフローレート及び固有粘度のデータを表1に示す。DEC中及びTCB中の固有粘度は、他所^(1)で確立された下記関係に適合することが見出された。 [η]_(DEC)=(1.41±0.06)[η]_(TCB) (1) R^(2)=0.982、F=1041及びSTE=0.051 式(1)は、統計指標の検討から見出されるように十分な相関である。 図1において、MFRを「η」の関数としてプロットした。得られたプロットに対する式は以下の通りであることが見出された。 logMFR=(1.257±0.057)-(4.203±0.338)log[η]_(TCB) 又は 及び logMFR=(1.883±0.074)-(4.203±0.338)log[η]_(DEC) 又は 式(2)及び(3)について、統計指標は下記の通りであった。 R^(2)=0.984、F=733及びSTE=0.070 式(2)及び(3)は、0.27<MFR>22.10、0.87<[η]_(TCB)>2.56及び1.23<[η]_(DEC)>3.60により特徴付けることができる、ポリプロピレンホモポリマーについて確立されたMFRと[η]との間の相関関係であった。」(第1652頁第12?33行) イ 甲1に記載された発明 甲1の特許請求の範囲の請求項1及び2には、「【請求項1】 (A)メルトフローレート(ASTM D 1238、230℃、2.16kg荷重下)が5?500g/10分の範囲にあるポリプロピレン:50?65重量部、 (B-1)135℃、デカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が2.5?4.5dl/g、およびエチレン含有率が39?55モル%の範囲にあるプロピレン・エチレン共重合体:3?18重量部、 (B-2)135℃、デカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が5?10dl/g、およびエチレン含有率が35?45モル%の範囲にあるプロピレン・エチレン共重合体:1?5重量部、 (C)メルトフローレート(ASTM D 1238、230℃、2.16kg荷重下)が0.1?2g/10分、かつ密度が850?880kg/m^(3)の範囲にあるエチレン・α-オレフィンランダム共重合体:1?20重量部、および (D)無機充填剤:5?30重量部(ただし、成分(A)、(B-1)、(B-2)、(C)、(D)の合計量は100重量部)からなる(F)樹脂組成物100重量部に対して、 (E)脂肪酸アミド:0.1?0.5重量部を含んでなるポリプロピレン系樹脂組成物。 【請求項2】 前記(A)ポリプロピレン、(B-1)プロピレン・エチレン共重合体、および(B-2)プロピレン・エチレン共重合体が、下記要件(1-i)?(1-iv)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体(A,B-1)30?80重量部と、下記要件(2-i)?(2-iv)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体(A,B-2)5?40重量部であって、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A,B-1)とプロピレン・エチレンブロック共重合体(A,B-2)の配合割合の和が50?94重量部の組み合わせによる請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。 (1-i)23℃、n-デカンに不溶な成分(Dinsol)量が77?90重量%、 (1-ii)23℃、n-デカンに不溶な成分(Dinsol)のメルトフローレート(ASTM D 1238、230℃、2.16kg荷重下)が5?500g/10分、 (1-iii)23℃、n-デカンに可溶な成分(Dsol)の135℃、デカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が2.5?4.5dl/g、 (1-iv)23℃、n-デカンに可溶な成分(Dsol)のエチレン含有率が39?55モル%、 (2-i)23℃、n-デカンに不溶な成分(Dinsol)量が70?90重量%、 (2-ii)23℃、n-デカンに不溶な成分(Dinsol)のメルトフローレート(ASTM D 1238、230℃、2.16kg荷重下)が5?500g/10分、 (2-iii)23℃n-デカンに可溶な成分(Dsol)の135℃、デカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が5?10dl/g、 (2-iv)23℃、n-デカンに可溶な成分(Dsol)のエチレン含有率が35?45モル%。」が記載されている(摘記(1a))ところ、甲1の段落【0040】には、「本発明に係るポリプロピレン(A)およびプロピレン・エチレン共重合体(B-1)、あるいは、ポリプロピレン(A)およびプロピレン・エチレン共重合体(B-2)とをブロック共重合で製造する場合は、公知のチタン触媒を用いて製造することができる。チタン触媒の好ましい例としては、チタン、マグネシウム、ハロゲンの各原子を含む固体状チタン触媒成分およびアルミニウム化合物を主たる成分とする重合用固体触媒が挙げられる。」と記載されており(摘記(1d))、表1の表題が「プロピレン・エチレンブロック共重合体:(A,B-1)」と記載されている下に、「i-1」?「i-6」及び「iii-1」?「iii-3」が記載されている(摘記(1h))こと、表2の表題が「プロピレン・エチレンブロック共重合体:(A,B-2)」と記載されている下に、「ii-1」?「ii-3」及び「iv-1」が記載されている(摘記(1h))ことからみて、甲1の表4中の実施例5及び6に記載された[製造例i-4]及び[製造例i-5]は、請求項2のプロピレン・エチレンブロック共重合体(A,B-1)の具体例であり、同[製造例ii-3]は、請求項2のプロピレン・エチレンブロック共重合体(A,B-2)の具体例であるといえる。 また、甲1の段落【0134】に記載の更に配合する酸化防止剤の配合量は、例えば「0.10部」と記載されているが、甲1の記載全体からみて、「0.10重量部」を意味すると解することが自然である。 甲1の実施例5及び6に着目すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「プロピレン・エチレンブロック共重合体(A,B-1)として、23℃、n-デカン不溶部のMFRが23g/10min、23℃、n-デカン不溶部の量が82.9重量部、23℃、n-デカン可溶部のエチレン含有率が46mol%、23℃、n-デカン可溶部の極限粘度が2.6dl/gであるプロピレン系ブロック共重合体(i-4)を35重量%、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A,B-2)として、23℃、n-デカン不溶部のMFRが180g/10min、23℃、n-デカン不溶部の量が89.5重量部、23℃、n-デカン可溶部のエチレン含有率が35mol%、23℃、n-デカン可溶部の極限粘度が5.5dl/gであるプロピレン系ブロック共重合体(ii-3)を32重量%、エチレン/α-オレフィン共重合体(C)として、(E-1)(ダウエラストマー社製、グレード名:EG8150、αオレフィン種:C8、MFR/230℃:1.0g/10min、密度:868kg/m^(3))を13重量%、無機充填材(D)として、タルク(村松産業社製、製品名:5000PJ(平均粒径4μm))を20重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、脂肪酸アミド(E)として、エルカ酸アミド(日本精化社製、製品名:ニュートロンS)を0.20重量部、酸化防止剤であるIrganox1010(BASF製)を0.10重量部、Irgafos168(BASF製)を0.05重量部配合した、MFRが15g/10minであるポリプロピレン系樹脂組成物」(以下「甲1発明A」という。)及び 「プロピレン・エチレンブロック共重合体(A,B-1)として、23℃、n-デカン不溶部のMFRが22g/10min、23℃、n-デカン不溶部の量が88.6重量部、23℃、n-デカン可溶部のエチレン含有率が51mol%、23℃、n-デカン可溶部の極限粘度が3.9dl/gであるプロピレン系ブロック共重合体(i-5)を33重量%、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A,B-2)として、23℃、n-デカン不溶部のMFRが180g/10min、23℃、n-デカン不溶部の量が89.5重量部、23℃、n-デカン可溶部のエチレン含有率が35mol%、23℃、n-デカン可溶部の極限粘度が5.5dl/gであるプロピレン系ブロック共重合体(ii-3)を34重量%、エチレン/α-オレフィン共重合体(C)として、(E-1)(ダウエラストマー社製、グレード名:EG8150、αオレフィン種:C8、MFR/230℃:1.0g/10min、密度:868kg/m^(3))を15重量%、無機充填材(D)として、タルク(村松産業社製、製品名:5000PJ(平均粒径4μm))を18重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、脂肪酸アミド(E)として、エルカ酸アミド(日本精化社製、製品名:ニュートロンS)を0.20重量部、酸化防止剤であるIrganox1010(BASF製)を0.10重量部、Irgafos168(BASF製)を0.05重量部配合した、MFRが15g/10minであるポリプロピレン系樹脂組成物」(以下「甲1発明B」という。) ウ 対比・判断 (ア)本件発明1について a 対比 (a)甲1発明Aとの対比 i 甲1発明Aの「プロピレン・エチレンブロック共重合体」について 甲1発明の「プロピレン・エチレンブロック共重合体」は、甲1の段落【0040】?【0041】、【0089】?【0096】、【0109】?【0112】(摘記(1d)、(1g))に記載されるとおり、固体状チタン触媒成分の存在下でプロピレンを重合し、プロピレン単独重合部を重合する第1段と、固体状チタン触媒成分の存在下でプロピレン及びエチレンを共重合してプロピレン-エチレンランダム共重合体部を重合する後段を連続的に実施することにより製造したものである。 上記1(1)ウ(ア)a(a)で述べた理由と同様に、この重合方法により得られた「プロピレン・エチレンブロック共重合体」は、本件発明1の「異相プロピレンコポリマー(HECO)」に相当する。 ii 甲1発明Aの「プロピレン系ブロック共重合体(i-4)」及び「プロピレン系ブロック共重合体(ii-3)」について 上記iで述べたとおりであるので、甲1発明Aの「プロピレン系ブロック共重合体(i-4)」及び「プロピレン系ブロック共重合体(ii-3)」は、それぞれ本件発明1の「異相プロピレンコポリマー(HECO)」に相当する。そして、甲1発明Aの「プロピレン系ブロック共重合体(i-4)」を本件発明1の「第2の異相プロピレンコポリマー(HECO)」に対応させ、甲1発明Aの「プロピレン系ブロック共重合体(ii-3)」を本件発明1の「第1の異相プロピレンコポリマー(HECO)」に対応させて、以下検討を進める。 甲1発明Aの「プロピレン系ブロック共重合体(i-4)」及び「プロピレン系ブロック共重合体(ii-3)」は、それぞれ35重量%、32重量%含むから、重量比は1.09/1であり、これは、本件発明1の[(HECO-1)/(HECO-2)]は1.5/1から1/1.5の範囲と一致する。 また、甲1発明Aは、「プロピレン系ブロック共重合体(i-4)」及び「プロピレン系ブロック共重合体(ii-3)」を含んでいるから、これは、本件発明1の「前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)は、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)と、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)とを含み、」に相当する。 iii 甲1発明Aの「プロピレン系ブロック共重合体(i-4)」及び「プロピレン系ブロック共重合体(ii-3)」とのポリプロピレン系樹脂組成物に対する配合割合について 上記イで述べたとおり、甲1発明Aの「プロピレン系ブロック共重合体(i-4)」は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A,B-1)としてとして配合されており、また、「プロピレン系ブロック共重合体(ii-3)」は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A,B-2)として配合されているところ、甲1の表4によると、ポリプロピレン(A)量が57.7重量部、プロピレン・エチレン共重合体(B-1)量が6.0重量部、プロピレン・エチレン共重合体(B-2)量が3.4重量部と記載されており(摘記(1h))、組成物中の総重量に基づくそれらの総重量は、99.5(=(57.7+6.0+3.4)/(57.7+6.0+3.4+0.20+0.10+0.05)wt%であるから、甲1発明Aの「プロピレン系ブロック共重合体(i-4)」と「プロピレン系ブロック共重合体(ii-3)」とのポリプロピレン系樹脂組成物の配合割合は、本件発明1の「少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)を含み、前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)は、前記組成物の総重量に基づいて少なくとも50wt%の総量で含有され、」に相当する。 iv 甲1発明Aの「プロピレン・エチレンブロック共重合体」が含有する「23℃ n-デカン可溶部」について 甲1発明Aの「プロピレン・エチレンブロック共重合体」が含有する「23℃ n-デカン可溶部」は、甲1の段落【0025】には、本発明に係るプロピレン・エチレン共重合体(B-1)をブロック共重合で製造する場合は、23℃、n-デカンに可溶な成分が、プロピレン・エチレン共重合体(B-1)に相当する、と記載されて(摘記(1d)の段落【0025】、【0028】)おり、甲1発明Aは、ブロック共重合で製造しているから、甲1発明Aの「プロピレン・エチレンブロック共重合体」が含有する「23℃ n-デカン可溶部」は、プロピレン・エチレン共重合体(B-1)及び(B-2)に相当すると解される。また、上記1(1)ウ(ア)a(d)で述べたとおり、甲1発明Aにおける「23℃ n-デカン可溶部」と、本件発明1における「低温キシレン可溶性成分(XCS)フラクション」とは、同一の部分を指すものといえ、また、甲1発明Aの「極限粘度」と本件発明1の「ISO1628-1(デカリン)に従って測定された固有粘度(IV)」とは、技術的に同等のものであるといえる。 してみると、甲1発明Aの「プロピレン系ブロック共重合体(i-4)」の23℃ n-デカン可溶部の極限粘度が2.6dl/gであること、「プロピレン系ブロック共重合体(ii-3)」の23℃ n-デカン可溶部の極限粘度が5.5dl/gであることは、本件発明1の「d)前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)の少なくとも1つの低温キシレン可溶性成分(XCS)フラクションのISO1628-1(デカリン)に従って測定された固有粘度(IV)は2.5dl/g以上であり、」と一致する。 v 甲1発明Aの「エチレン/α-オレフィン共重合体(C)」について 甲1発明Aの「エチレン/α-オレフィン共重合体(C)」は、本件発明1の「エチレン-α-オレフィンエラストマー(EOE)」と、「エチレン-α-オレフィン共重合体」の限りにおいて一致する。 vi 甲1発明Aの「組成物のMFR」について 甲1発明Aの「組成物のMFR」は、甲1の段落【0066】の記載(摘記(1g))によれば、「ASTM D1238に準拠し、試験荷重2.16kg、試験温度230℃の条件で測定した。」ものであり、試験荷重と試験温度が本件発明1と同じであり、また、甲3には、ASTM D 1238-04とISO 1133-1991は技術的に同等であることが記載されている(摘記(3b))から、甲1発明Aの「MFRが15g/10mimであるポリプロピレン系樹脂組成物」は、本件発明1の「9.0g/10min以上のISO1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(230℃)を有するポリプロピレン組成物(PPC)」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明Aとは、「9.0g/10min以上のISO1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(230℃)を有するポリプロピレン組成物(PPC)であって、前記組成物は a)少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)を含み、前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)は、前記組成物の総重量に基づいて少なくとも50wt%の総量で含有され、前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)は、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)と、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)とを含み、さらに前記第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)と前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)との重量比[(HECO-1)/(HECO-2)]は1.5/1から1/1.5の範囲であり、前記組成物はさらに b)エチレン-α-オレフィン共重合体を含み、 d)前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)の少なくとも1つの低温キシレン可溶性成分(XCS)フラクションのISO1628-1(デカリン)に従って測定された固有粘度(IV)は2.5dl/g以上であり、 である、ポリプロピレン組成物(PPC)」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点5> エチレン-α-オレフィン共重合体について、本件発明1は、「エチレン-α-オレフィンエラストマー(EOE)」であるのに対し、甲1発明Aは、「(E-1)(ダウエラストマー社製、グレード名:EG8150、αオレフィン種:C8、密度:868kg/m^(3))」である点 <相違点6> エチレン-α-オレフィン共重合体について、本件発明1は、「0.5g/10min未満のISO1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(190℃)を有する」のに対し、甲1発明Aは、MFR/230℃:1.0g/10min」である点 <相違点7> 本件発明1は、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)は、50?500g/10minのISO 1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(230℃)であり、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)は、0.5?20g/10minのISO 1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(230℃)であるのに対して、甲1発明Aは、プロピレン系ブロック共重合体(i-4)とプロピレン系ブロック共重合体(ii-3)のISO 1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(230℃)が明らかでない点 <相違点8> 本件発明1は、「c)前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)の少なくとも1つのMFR_(2)と、前記エチレン-α-オレフィンエラストマー(EOE)のMFR_(2)との比率[MFR_(2)(HECO)/MFR_(2)(EOP)]は2/1から100/1の範囲であ」るのに対し、甲1発明Aは、「プロピレン系ブロック共重合体(i-4)」又は「プロピレン系ブロック共重合体(ii-3)」のMFRと、「(E-1)(ダウエラストマー社製、グレード名:EG8150、αオレフィン種:C8、密度:868kg/m^(3))」のMFRとの比率が明らかでない点 (b)甲1発明Bとの対比 甲1発明Bは甲1発明Aと対比すると、甲1発明Bは、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A,B-1)として、23℃、n-デカン不溶部のMFRが22g/10min、23℃、n-デカン不溶部の量が88.6重量部、23℃、n-デカン可溶部のエチレン含有率が51mol%、23℃、n-デカン可溶部の極限粘度が3.9dl/gであるプロピレン系ブロック共重合体(i-5)を33重量%含有し、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A,B-2)として、プロピレン系ブロック共重合体(ii-3)を34重量%含有し、エチレン/α-オレフィン共重合体(C)として、(E-1)を15重量%含有し、無機充填材(D)として、タルクを18重量%含有している点で、甲1発明Aと相違する。 この上で、本件発明1と対比すると、上記(a)i、v及びviは、上述のとおり、甲1発明Bと本件発明1は一致する。 また、上記(a)iiは、甲1発明Bの「プロピレン系ブロック共重合体(i-5)」及び「プロピレン系ブロック共重合体(ii-3)」は、それぞれ33重量%、34重量%含むから、重量比は1/1.03であり、これは、本件発明1の[(HECO-1)/(HECO-2)]は1.5/1から1/1.5の範囲と一致する。 さらに(a)iiiは、甲1の表4によると、ポリプロピレン(A)量が59.7重量部、プロピレン・エチレン共重合体(B-1)量が3.8重量部、プロピレン・エチレン共重合体(B-2)量が3.6重量部と記載されており(摘記(1h))、組成物中の総重量に基づくそれらの総重量は、99.5(=(59.7+3.8+3.6)/(57.7+6.0+3.4+0.20+0.10+0.05)wt%であるから、甲1発明Bの「プロピレン系ブロック共重合体(i-5)」と「プロピレン系ブロック共重合体(ii-3)」とのポリプロピレン系樹脂組成物の配合割合は、本件発明1の「少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)を含み、前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)は、前記組成物の総重量に基づいて少なくとも50wt%の総量で含有され、」に相当する。 加えて(a)ivは、甲1発明Aの「プロピレン系ブロック共重合体(i-5)」の23℃ n-デカン可溶部の極限粘度が3.9dl/gであることからすれば、本件発明1の「d)前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)の少なくとも1つの低温キシレン可溶性成分(XCS)フラクションのISO1628-1(デカリン)に従って測定された固有粘度(IV)は2.5dl/g以上であり、」と一致する。 そうすると、本件発明1と甲1発明Bとの一致点は、上記(a)で述べたとおりであり、相違点は以下のとおりである。 <相違点5> エチレン-α-オレフィン共重合体について、本件発明1は、「エチレン-α-オレフィンエラストマー(EOE)」であるのに対し、甲1発明Bは、「(E-1)(ダウエラストマー社製、グレード名:EG8150、αオレフィン種:C8、密度:868kg/m^(3))」である点 <相違点6> エチレン-α-オレフィン共重合体について、本件発明1は、「0.5g/10min未満のISO1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(190℃)を有する」のに対し、甲1発明Bは、MFR/230℃:1.0g/10min」である点 <相違点7’> 本件発明1は、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)は、50?500g/10minのISO 1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(230℃)であり、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)は、0.5?20g/10minのISO 1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(230℃)であるのに対して、甲1発明Bは、プロピレン系ブロック共重合体(i-5)とプロピレン系ブロック共重合体(ii-3)のISO 1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(230℃)が明らかでない点 <相違点8’> 本件発明1は、「c)前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)の少なくとも1つのMFR_(2)と、前記エチレン-α-オレフィンエラストマー(EOE)のMFR_(2)との比率[MFR_(2)(HECO)/MFR_(2)(EOP)]は2/1から100/1の範囲であ」るのに対し、甲1発明Bは、「プロピレン系ブロック共重合体(i-5)」又は「プロピレン系ブロック共重合体(ii-3)」のMFRと、「((E-1)(ダウエラストマー社製、グレード名:EG8150、αオレフィン種:C8、密度:868kg/m^(3))」のMFRとの比率が明らかでない点 b 判断 事案に鑑み、はじめに相違点7及び7’を検討する。 甲1発明A及びBにおける「プロピレン系ブロック共重合体(i-4)」、「プロピレン系ブロック共重合体(i-5)」及び「プロピレン系ブロック共重合体(ii-3)」のうち、23℃ n-デカン不溶部のMFRの値は、それぞれ、23g/10分、22g/10分及び180g/10分(甲1の段落【0066】の記載(摘記(1g))によれば、「ASTM D1238に準拠し、試験荷重2.16kg、試験温度230℃の条件で測定。)であるが、23℃ n-デカン可溶部も併せたプロピレン系ブロック共重合体全体のMFRの値は不明である。 甲1発明A及びBにおける「プロピレン系ブロック共重合体(i-4)」、「プロピレン系ブロック共重合体(i-5)」及び「プロピレン系ブロック共重合体(ii-3)」のうち、23℃ n-デカン可溶部の極限粘度の値が、それぞれ2.6dl/g、3.9dl/g及び5.5dl/gであるが、これらの極限粘度の値から、直接MFRの値は算出することができるという技術常識はない。 そして、甲4に記載のこの換算式は、ポリプロピレンホモポリマーについてメルトフローレートと固有粘度との相関関係を示した換算式であり(摘記(4a)、(4b))、甲1発明A及びBで用いられているポリプロピレン系ブロック共重合体の場合であっても、甲4に記載されている換算式を当てはめることができるという技術常識はない。 申立人は、本件発明1と甲1に記載された発明とは、重合体を製造する触媒がフタレート系のチーグラーナッタ触媒であるから、両者の分子量分布が同等である蓋然性が高いこと、甲1に記載された発明のプロピレン系ブロック共重合体はプロピレンが主成分であるから、ポリプロピレンホモポリマーのMFRと同一視できること、甲4に記載の換算式を本件特許明細書等に記載されたHECO-1?HECO-4に当てはまると、実測値と類似していたことを理由に、ポリプロピレン系ブロック共重合体の場合であっても、甲4に記載の換算式を適用できる旨の主張をする(特許異議申立書第36頁第4行?第38頁11行)。 しかしながら、仮に、本件発明1と甲1に記載された発明との分子量分布が同等である蓋然性が高いとしても、分子量分布が同等であることと極限粘度及びMFRとの関係を述べている訳ではないから、甲1に記載されたプロピレン系ブロック共重合体に甲4の換算式を適用できるとはいえない。 また、仮に、甲1に記載された発明のプロピレン系ブロック共重合体のMFRとポリプロピレンホモポリマーのMFRと同一視できるとしても、MFRを同一視できることと極限粘度及びMFRとの関係を述べている訳ではないから、このことから甲1に記載されたプロピレン系ブロック共重合体に甲4の換算式を適用できる理由を示したことにはならない。 さらに、甲4に記載の換算式を本件特許明細書等に記載されたHECO-1?HECO-4に当てはまると、実測値と類似していた値が計算されたとしても、これは、あくまで4つの例の結果を検討しただけであり、この4つの結果のみから、いかなるプロピレン系ブロック共重合体であっても甲4に記載の式を適用できるとまではいえない。そして、この4つの結果は実測値と計算値が同じ値を示していないことは明らかであるから、上記4つの結果は甲4に記載の換算式を適用できないことを示しているといえる。 以上のとおりであるから、相違点7及び7’は実質的な相違点であって、また、他の証拠をみても当業者が相違点7及び7’を容易に想到することができたとする理由はない。 c 小括 よって、相違点5、6、8及び8’について検討するまでもなく、本件発明1は甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (イ)本件発明2?11について 本件発明2?11は、本件発明1を直接又は間接的に引用してさらに減縮した発明であるから、上記(ア)で述べた理由と同じ理由により、本件発明2?11は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 エ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由1によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 特許第6490303号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?11]について訂正することを認める。 当審が通知した取消理由及び特許異議申立人がした申立理由によっては、本件発明1?11に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1?11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 9.0g/10min以上のISO 1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(230℃)を有するポリプロピレン組成物(PPC)であって、前記組成物は a)少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)を含み、前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)は、前記組成物の総重量に基づいて少なくとも50wt%の総量で含有され、前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)は、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)と、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)とを含み、さらに前記第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)と前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)との重量比[(HECO-1)/(HECO-2)]は1.5/1から1/1.5の範囲であり、前記組成物はさらに b)0.5g/10min未満のISO 1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(190℃)を有するエチレン-α-オレフィンエラストマー(EOE)を含み、 c)前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)の少なくとも1つのMFR_(2)と、前記エチレン-α-オレフィンエラストマー(EOE)のMFR_(2)との比率[MFR_(2)(HECO)/MFR_(2)(EOE)]は2/1から100/1の範囲であり、 d)前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)の少なくとも1つの低温キシレン可溶性成分(XCS)フラクションのISO 1628-1(デカリン)に従って測定された固有粘度(IV)は2.5dl/g以上であり、 e)前記第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)は、50?500g/10minのISO 1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(230℃)であり、 f)前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)は、0.5?20g/10minのISO 1133に従って測定されたメルトフローレートMFR_(2)(230℃) である、ポリプロピレン組成物(PPC)。 【請求項2】 a)前記組成物の総重量に基づいて、前記少なくとも2つの異相プロピレンコポリマー(HECO)は55?85wt%の総量で含有され、および/または b)前記エチレン-α-オレフィンエラストマー(EOE)は5?25wt%の量で含有される、請求項1に記載のポリプロピレン組成物(PPC)。 【請求項3】 a)前記組成物の総重量に基づいて、前記第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)は34?45wt%の量で含有され、および/または b)前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)は25?40wt%の量で含有される、請求項1または2に記載のポリプロピレン組成物(PPC)。 【請求項4】 前記第1の異相プロピレンコポリマー(HECO-1)は、 a)10.0?30.0wt%の低温キシレン可溶性成分フラクション(XCS)、および/または b)75.0?97.0wt%の総プロピレン含有量、および/または c)55.0?75.0wt%の低温キシレン可溶性成分(XCS)フラクション中のプロピレン含有量、および/または d)1.5?4.0dl/gの低温キシレン可溶性成分(XCS)フラクションのISO 1628-1(デカリン)に従って測定された固有粘度(IV)を有する、請求項1?3のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物(PPC)。 【請求項5】 前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO-2)は、 a)10.0?30.0wt%の低温キシレン可溶性成分フラクション(XCS)、および/または b)70.0?95.0wt%の総プロピレン含有量、および/または c)50.0?70.0wt%の低温キシレン可溶性成分(XCS)フラクション中のプロピレン含有量、および/または d)3.0?5.0dl/gの低温キシレン可溶性成分(XCS)フラクションのISO 1628-1(デカリン)に従って測定された固有粘度(IV)を有する、請求項1?4のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物(PPC)。 【請求項6】 前記エチレン-α-オレフィンエラストマー(EOE)は a)850?870kg/m^(3)のISO 1183-1に従って測定された密度を有し、かつ/または b)前記エチレン-α-オレフィンエラストマー(EOE)のα-オレフィンコモノマーはC_(4)?C_(10)α-オレフィンである、請求項1?5のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物(PPC)。 【請求項7】 前記ポリプロピレン組成物(PPC)は、最大10wt%の量の強化ミネラルフィラー(F)を含む、請求項1?6のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物(PPC)。 【請求項8】 前記ミネラルフィラー(F)は、 a)フィロケイ酸塩であり、ならびに/または b)0.8?25.0μmの平均粒径d_(50)を有する、請求項7に記載のポリプロピレン組成物(PPC)。 【請求項9】 前記ミネラルフィラー(F)は、雲母、ケイ灰石、カオリナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、およびタルクからなる群より選択される、請求項7または8に記載のポリプロピレン組成物(PPC)。 【請求項10】 a)前記ポリプロピレン組成物(PPC)は高密度ポリエチレン(HDPE)を含有せず、および/または b)前記ポリプロピレン組成物(PPC)は無機ブロッキング防止剤を含有しない、請求項1?9のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物(PPC)。 【請求項11】 請求項1?10のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物(PPC)を含む、自動車用物品。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-07-27 |
出願番号 | 特願2018-512294(P2018-512294) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(C08L)
P 1 651・ 121- YAA (C08L) P 1 651・ 113- YAA (C08L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 山▲崎▼ 真奈、藤本 保、大久保 智之 |
特許庁審判長 |
近野 光知 |
特許庁審判官 |
佐藤 健史 橋本 栄和 |
登録日 | 2019-03-08 |
登録番号 | 特許第6490303号(P6490303) |
権利者 | ボレアリス エージー |
発明の名称 | 自動車適用のためのポリプロピレン組成物 |
代理人 | 林 一好 |
代理人 | 芝 哲央 |
代理人 | 芝 哲央 |
代理人 | 林 一好 |
代理人 | 岩池 満 |
代理人 | 岩池 満 |