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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1366388
審判番号 不服2019-12988  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-30 
確定日 2020-09-17 
事件の表示 特願2015-118046号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年1月5日出願公開、特開2017-471号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本願は、平成27年6月11日の出願であって、平成31年1月9日付けで拒絶の理由が通知され、同年2月14日に意見書及び手続補正書が提出され、令和1年5月29日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年6月21日付けで意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年8月30日付け(送達日:同年9月3日)で、令和1年6月21日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年9月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和1年9月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年9月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正により、平成31年2月14日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における
「【請求項1】
遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
遊技者の動作を検出する検出手段と、
第1有効期間において遊技者の動作が検出されたことに基づいて演出が実行される第1演出と、前記第1有効期間とは異なる第2有効期間において遊技者の動作が検出されたことに基づいて演出が実行される第2演出とを実行可能な演出制御手段とを備え、
前記演出制御手段は、前記第1有効期間のうちの特定期間内で遊技者の動作が検出されて報知演出を実行する場合は、前記第1有効期間のうちの前記特定期間外で遊技者の動作が検出されて前記報知演出が実行されない場合よりも高い割合で前記第2演出を実行する、遊技機。」は、
審判請求時に提出された手続補正書(令和1年9月30日付け)の特許請求の範囲の請求項1における
「【請求項1】
遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
遊技者の動作を検出する検出手段と、
第1有効期間において遊技者の動作が検出されたことに基づいて演出が実行される第1演出と、前記第1有効期間とは異なる第2有効期間において遊技者の動作が検出されたことに基づいて演出が実行される第2演出とを実行可能な演出制御手段とを備え、
前記演出制御手段は、
前記第1有効期間のうちの特定期間内で遊技者の動作が検出されて報知演出を実行する場合は、前記第1有効期間のうちの前記特定期間外で遊技者の動作が検出されて前記報知演出が実行されない場合よりも高い割合で前記第2演出を実行し、
前記第2演出を実行する場合は、前記第1演出よりも前記有利状態に制御される可能性の高い演出を実行可能であり、
前記第2演出は、第1演出態様と、該第1演出態様よりも前記有利状態に制御される可能性が高い第2演出態様とを含み、
前記検出手段は、複数種類設けられ、
前記第1有効期間と、前記第2有効期間とで異なる前記検出手段により遊技者の動作を検出可能である、遊技機。」に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審判合議体にて付した。)。

2 補正の適否
2-1 補正の目的及び新規事項について
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第2演出」に関して、「前記第2演出を実行する場合は、前記第1演出よりも前記有利状態に制御される可能性の高い演出を実行可能であり、前記第2演出は、第1演出態様と、該第1演出態様よりも前記有利状態に制御される可能性が高い第2演出態様とを含み」と限定し、さらに、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「検出手段」に関して、「前記検出手段は、複数種類設けられ、前記第1有効期間と、前記第2有効期間とで異なる前記検出手段により遊技者の動作を検出可能である」と限定することを含むものである。
そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正の補正事項は、願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。)の段落【0070】、【0083】、【0088】の記載、および、【図4】(e)の図示内容に基づくものであり、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

2-2 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かについて、以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、次のとおりのものであると認める(記号A?Hは、分説するため当審判合議体にて付した。)。
「A 遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 遊技者の動作を検出する検出手段と、
C 第1有効期間において遊技者の動作が検出されたことに基づいて演出が実行される第1演出と、前記第1有効期間とは異なる第2有効期間において遊技者の動作が検出されたことに基づいて演出が実行される第2演出とを実行可能な演出制御手段とを備え、
D 前記演出制御手段は、
D1 前記第1有効期間のうちの特定期間内で遊技者の動作が検出されて報知演出を実行する場合は、前記第1有効期間のうちの前記特定期間外で遊技者の動作が検出されて前記報知演出が実行されない場合よりも高い割合で前記第2演出を実行し、
D2 前記第2演出を実行する場合は、前記第1演出よりも前記有利状態に制御される可能性の高い演出を実行可能であり、
E 前記第2演出は、第1演出態様と、該第1演出態様よりも前記有利状態に制御される可能性が高い第2演出態様とを含み、
F 前記検出手段は、複数種類設けられ、
G 前記第1有効期間と、前記第2有効期間とで異なる前記検出手段により遊技者の動作を検出可能である、
H 遊技機。」

(2)先願発明
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願の日前の他の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願2014-123970号(特開2016-2236号参照。以下「先願」という。出願日:平成26年6月17日、公開日:平成28年1月12日、発明者:灘原拓、佐々木伸也、大谷陽二、池田洋子、出願人:京楽産業.株式会社)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等」という。)には、「遊技機」に関して次の事項が図面とともに記載されている。
ア 記載事項
(ア)「【発明の効果】
【0008】
本発明に係る遊技機によれば、遊技者に積極的に操作を行わせることができるようになり、従来よりも興趣性の高い遊技機を提供することができるようになる。」

(イ)「【0013】
・・・この球貯留部4の上面には、遊技者が操作可能な操作ボタン6が設けられると共に、遊技盤10に打ち出すための遊技球を貯留しておくための貯留皿が設けられる。・・・」

(ウ)「【0019】
・・・特別遊技判定の結果が大当たりなどの所定の当たりに当選したことを示すものであれば、遊技機1はその後、遊技者にとって有利な特別遊技を開始する。」

(エ)「【0037】
例えば、主制御基板30によって特別遊技判定が行われて特別図柄の変動表示が所定時間行われる場合、演出制御基板33は、その所定時間の間、画像表示器12において3つの装飾図柄12a,12b,12cを変動させる図柄変動演出を行う。この図柄変動演出では、3つの装飾図柄12a,12b,12cが単に上下方向に変動するだけの通常の図柄変動演出や、そのような通常の図柄変動演出からキャラクタなどが出現する様々な予告演出に発展的に移行させる演出など、特別遊技判定の結果に応じて様々な演出が行われる。また演出制御基板33には、操作ボタン6が接続されている。そのため、演出制御基板33は、遊技者がボタン操作を行うことが可能な所定のタイミングで操作ボタン6が操作されたことを検知した場合、そのボタン操作に応じた演出を行うことも可能である。また演出制御基板33は、RTC33dを備えているため、遊技機1において行うべき演出を現在日時に応じて切り換えたり、変化させたりすることも可能である。」

(オ)「【0099】
一方、演出制御基板33のCPU33aは、図16に示すように、演出パターン決定部70、図柄変動演出制御部71及び特別遊技演出制御部72として機能する。」

(カ)「【0105】
図柄変動演出制御部71は、演出パターン決定部70によって図柄変動演出として行うべき1つの演出パターンが決定された場合に、その演出パターンに基づいて画像制御基板34及びランプ制御基板35のそれぞれの動作させることにより、遊技機1において特別遊技判定が行われたことに伴う図柄変動演出の実行を制御する。この図柄変動演出制御部71は、シナリオ進行演出制御部73を備えている。シナリオ進行演出制御部73は、演出パターン決定部70によって複数のシナリオ演出パターン78a?78jのうちの1つが選択された場合に機能し、選択されたシナリオ演出パターンに基づく図柄変動演出が行われるように制御する。つまり、シナリオ進行演出制御部73は、画像制御基板34及びランプ制御基板35を介して、画像表示器12などの各種演出手段にシナリオ進行演出を行わせるものである。
【0106】
シナリオ進行演出は、初期段階から始まり、遊技者によるボタン操作の有無やボタン操作のタイミングなどに応じて段階的にシナリオが進行し、最終的にシナリオが最終段階まで進行すれば遊技者に有利な遊技価値が付与される期待度が最も高くなる演出である。例えば本実施形態では、特別図柄の変動時間が90秒である場合に、90秒間のシナリオ進行演出が行われる。そのため、特別遊技判定の結果が大当たりであって、その後の遊技状態を特別遊技状態ST2へと移行させるものである場合、主制御基板30において決定される特別図柄の変動時間が90秒であれば、最終的に最終段階まで進行するシナリオ進行演出が行われることが多くなる。また特別遊技判定の結果が大当たりであって、その後の遊技状態を特別遊技状態ST2へと移行させるものであっても、最終的に最終段階まで進行しないシナリオ進行演出が行われることもある。この場合、最終段階まで進行しなかったことが報知された後に復活演出が行われ、その復活演出により特別遊技判定の結果が大当たりであってその後の遊技状態が特別遊技状態ST2へと移行することが報知される。一方、特別遊技判定の結果がハズレであって、その後の遊技状態を特別遊技状態ST2へと移行させないものである場合、主制御基板30において決定される特別図柄の変動時間が90秒であれば、最終的に最終段階まで進行させないシナリオ進行演出が行われる。このようにシナリオ進行演出では初期段階からシナリオを段階的に進行させて最終段階に近づいていく演出が行われるため、そのシナリオの段階的な進行によって遊技者の期待感を段階的に高揚させていくことができるようになる。そして本実施形態では、特別遊技判定の結果が特別遊技状態ST2へと移行させるものであるときには、特別遊技判定の結果が特別遊技状態ST2へと移行させないものであるときよりも高確率で最終段階まで進行するシナリオ進行演出が行われるようなる。
【0107】
上記のようなシナリオ進行演出を制御するため、シナリオ進行演出制御部73は、示唆演出制御部74、第1段階演出制御部75及び第2段階演出制御部76を備えている。」
(キ)「【0218】
示唆演出制御部74は、第1段階演出制御部75による第1段階演出402が行われているとき、その第1段階演出402において上記の特定条件が成立した場合に機能する。そして示唆演出制御部74は、第1段階演出402において特定条件が成立する度に、シナリオ進行演出が最終段階まで進行する期待度を示唆する示唆演出403を行わせる。上述のように第1段階演出制御部75は、第1段階演出402において遊技者による第1の操作を複数回受け付ける。そのため、示唆演出制御部74は、第1段階演出402が行われているときに示唆演出403を複数回行うこともある。ただし、第1段階演出402において特定条件が成立しなかった場合、示唆演出制御部74は、第1段階演出402において示唆演出403を行わない。」

(ク)「【0222】
図50に戻り、第1段階演出制御部75が第1段階演出402を開始した後、タイミングT2になると、第1段階演出制御部75による第1段階演出402が終了し、次に第2段階演出制御部76が機能する。第2段階演出制御部76は、タイミングT2から第2段階演出404を開始する。その第2段階演出404では遊技者が操作ボタン6に対して行う第2の操作を受け付ける。そして第2段階演出制御部76は、第2の操作を受け付けたことに応じてシナリオ進行演出が第1の段階から最終段階まで進行する成功演出405と、シナリオ進行演出が最終段階まで進行しない失敗演出406とのいずれか一方を行わせる。成功演出405又は失敗演出406は、タイミングT5まで継続し、タイミングT5になると終了する。また第2段階演出制御部76は、タイミングT2で第2段階演出404を開始した後、比較的速いタイミングT3で失敗演出406を行い、その後、復活演出407を行うこともある。この場合においても、復活演出407は、タイミングT5になるまで継続し、タイミングT5になると終了する。」

(ケ)「【0225】
第1段階演出制御部75は、タイトル表示401の後に第1段階演出402を開始すると、図54に示すように画像表示器12に対して第1段階演出402の初期画面402aを表示させる。尚、この初期画面402aでは、ボタン操作受付有効期間であるか否かにかかわらず、ボタン操作案内画像87bが表示されている。ただし、ボタン操作受付有効期間でないとき、ボタン操作案内画像87bは例えば背景を透過させるような第1の表示態様で表示され、遊技者にボタン操作受付有効期間でないことが報知される。第1段階演出制御部75は、初期画面402aを表示させた後、所定のタイミングになると、画像表示器12の表示画面を第1画面402bに更新し、画面内にサッカーボール87dを出現させを開始する、そのサッカーボール87dをキャラクタ87aに向けて近づけていく。そしてサッカーボール87dがキャラクタ87aの近傍の所定位置まで近づくと、ボタン操作受付有効期間が開始する。例えばサッカーボール87dの一部がボタン操作案内画像87bと重なる状態になると、ボタン操作受付有効期間が開始する。そして第1段階演出制御部75は、ボタン操作受付有効期間が開始すると、ボタン操作案内画像87dを例えば背景が透過しない所定の色で表示させ、第1の表示態様から第2の表示態様に表示態様を変更する。これにより、遊技者はボタン操作受付有効期間が開始されたことを把握することができる。また第1段階演出制御部75は、ボタン操作受付有効期間が開始すると、遊技者による第1の操作の受け付けを開始する。そしてボタン操作受付有効期間内に遊技者が第1の操作を行わなかった場合、第1段階演出制御部75は、画像表示器12の表示画面を第2画面402cに更新し、サッカーボール87dがキャラクタ87aの傍を通り過ぎた画像を表示する。この場合、キャラクタ87aの動作には何も変化が生じない。
【0226】
これに対し、図55は、遊技者がボタン操作受付有効期間内に第1の操作を行った場合の演出態様を示している。第1段階演出制御部75は、ボタン操作受付有効期間内に遊技者による第1の操作を受け付け、その第1の操作が所定のタイミングに一致して特定条件が成立した場合、画像表示器12の表示画面を、図55に示すように第1段階演出402の第1画面402bから第3画面402dへと遷移させる。この第3画面402dでは、第1段階演出制御部75によってキャラクタ87aがシュート動作を行ってゴールとなる画像が表示されることによりシナリオ進行演出が進行すると共に、それとほぼ同時に示唆演出制御部74による示唆演出403が行われる。」

(コ)【図55】:第4シナリオ演出パターンに基づく第1段階演出での一態様を示す図である。


(サ)「【0227】
示唆演出制御部74は、示唆演出403を行うとき、特別遊技判定の結果に基づいてシナリオ進行演出が最終段階まで進行する期待度を表示する。すなわち、示唆演出制御部74は、特別遊技判定の結果に基づいて示唆演出403を行うときの期待度を決定し、その決定した期待度に基づいて示唆演出403を行う。例えば、示唆演出制御部74は、特別遊技判定の結果に基づいて決定した期待度に応じてキック音などを模した「ドッ」などのエフェクト画像を表示させたり、或いは、画像表示器12の上部にある可動役物14の盤面ランプ14aを期待度に応じた色で点灯させたりすることにより、シナリオ進行演出が最終段階まで進行する期待度を表示する。
【0228】
図56は、期待度に応じて行われる示唆演出403の態様を示す図である。まず図56(a)に示すようにエフェクト画像には、2つの示唆演出パターンPT1,PT2がある。示唆演出パターンPT1は、シナリオ進行演出が最終段階まで進行する期待度が低いパターンである。これに対し、示唆演出パターンPT2は、シナリオ進行演出が最終段階まで進行する期待度が示唆演出パターンPT1よりも高いパターンである。例えば、特別遊技判定の結果が特別遊技状態ST2へと移行させるものである場合、示唆演出制御部74は、示唆演出パターンPT1よりも高い確率で示唆演出パターンPT2を、示唆演出403において表示するエフェクト画像として選択する。逆に、特別遊技判定の結果が特別遊技状態ST2へと移行させるものでない場合、示唆演出制御部74は、示唆演出パターンPT2よりも高い確率で示唆演出パターンPT1を、示唆演出403において表示するエフェクト画像として選択する。したがって、示唆演出403において示唆演出パターンPT2に対応するエフェクト画像が表示される場合には、示唆演出パターンPT1に対応するエフェクト画像が表示される場合よりもシナリオ進行演出が最終段階まで進行する期待度が高くなる。このような示唆演出403は、特定条件が成立した場合にのみ行われるため、遊技者は特定条件を成立させるために操作ボタン6に対する第1の操作を積極的に行うようになる。」

(シ)「【0230】
一方、第1段階演出制御部75は、ボタン操作受付有効期間内に受け付けた第1の操作が所定のタイミングに一致しておらず、特定条件不成立であると判断した場合、画像表示器12の表示画面を、図55に示すように第1段階演出402の第1画面402bから第4画面402eへと遷移させる。この第4画面402eでは、第1段階演出制御部75により、キャラクタ87aがシュート動作を行いつつも空振りとなり、サッカーボールが後方に転がっていく画像が表示される。このとき、第1段階演出制御部75は、図55に示すように「スカッ」などのエフェクト画像を表示して操作失敗演出408を行うようにしても良い。」

(ス)「【0233】
まず第2段階演出制御部76は、第1段階演出402及び示唆演出403が行われた後に第2段階演出404を開始すると、図57に示すように画像表示器12に対して第2段階演出404の初期画面404aを表示させる。この初期画面404aでは、第1段階演出202において進行した第1の段階から最終段階まで進行させるための準備画像が表示される。そして第2段階演出制御部76は、初期画面404aから第1画面404bに遷移させる。この第1画面404bでは、キャラクタ87aの前方位置に多数のサッカーボールが出現し、キャラクタ87aに向かって近づいていく。そして遊技者によるボタン操作受付有効期間の開始タイミングになると、第2段階演出制御部76は、第1画面404bに対してボタン操作案内画像を重ね合わせて表示させる。
【0234】
そしてボタン操作受付有効期間内に遊技者による第2の操作が行われると、第2段階演出制御部76は、第2の操作を受け付けたことに応じて画像表示器12の表示画面を第2段階演出404の第1画面404bから成功演出405の第1画面405a又は失敗演出406の第1画面406aのいずれか一方に遷移させる。尚、ボタン操作受付有効期間内に遊技者による第2の操作が行われなかった場合、第2段階演出制御部76は、ボタン操作受付有効期間が終了した後に、画像表示器12の表示画面を、第2段階演出404の第1画面404bから成功演出405の初期画面405a又は失敗演出406の初期画面406aのいずれか一方に遷移させる。」

(セ)【図57】:第4シナリオ演出パターンに基づく第2段階演出、成功演出及び失敗演出の一態様を示す図である。


(ソ)「【0238】
次に第4シナリオ演出パターン78dに基づくシナリオ進行演出が行われる場合の演出制御基板33における処理手順について説明する。図58乃至図60は、演出制御基板33において第4シナリオ演出パターン78dに基づくシナリオ進行演出を行う場合の第4シナリオ進行演出制御処理の一例を示すフローチャートである。演出制御基板33は、この処理を開始すると、まず第1段階演出制御部75を機能させ、図58に示すように、画像表示器12に対してタイトル表示401を表示させる処理を開始する(ステップS1300)。その後、第1段階演出402を開始するタイミングになると(ステップS1301でYES)、第1段階演出制御部75は、第1段階演出制御処理を開始する(ステップS1302)。その後、第2段階演出404を開始するタイミングになると(ステップS1303でYES)、演出制御基板33は、第2段階演出制御部76を機能させ、第2段階演出制御部76による第2段階演出404を開始させる(ステップS1304)。そして第2段階演出制御部76による処理が終了すると、第4シナリオ進行演出制御処理が終了する。
・・・
【0240】
そしてボタン操作受付有効期間になると(ステップS1313でYES)、第1段階演出制御部75は、遊技者による第1の操作の受け付けを開始する(ステップS1314)。その後、第1段階演出制御部75は、遊技者によるボタン操作(第1の操作)を検知したか否かを判断し(ステップS1315)、ボタン操作を検知していないときには(ステップS1315でNO)、第1の操作の受け付けを開始してから所定時間(ボタン操作受付有効期間)が経過したか否かを判断する(ステップS1316)。ボタン操作受付有効期間内に遊技者によるボタン操作(第1の操作)を検知した場合(ステップS1315でYES)、第1段階演出制御部75は、第1の操作を受け付けたタイミングが所定のタイミングに一致するか否かを判断する(ステップS1317)。すなわち、ここでは上述した操作失敗期間ではなく、操作成功期間に第1の操作を受け付けたか否かが判断される。その結果、第1の操作を受け付けたタイミングが所定のタイミングに一致する場合(ステップS1317でYES)、特定条件成立となり、示唆演出制御部74が機能する。そして示唆演出制御部74は、予め決定した期待度に基づき、シナリオ進行演出が最終段階まで進行する期待度を示唆する示唆演出403を実行する(ステップS1318)。また示唆演出制御部74による示唆演出403と共に、第1段階演出制御部75は、特定条件成立に基づき、シナリオ進行演出を進行させるシナリオ演出進行処理を実行する(ステップS1319)。これに対し、第1の操作を受け付けたタイミングが所定のタイミングに一致しなかった場合(ステップS1317でNO)、特定条件不成立となるため、第1段階演出制御部75は、操作失敗演出408を行わせる(ステップS1320)。つまり、特定条件が成立した場合と成立しなかった場合とで異なる演出が行われるようになる。また特定条件不成立のときには、シナリオ演出進行処理が行われないため、シナリオ進行演出は進行しない。」

(タ)「【0244】
以上のように、演出制御基板33において第4シナリオ演出パターン78dに基づくシナリオ進行演出が行われる場合、演出制御基板33において、第1段階演出制御部75、示唆演出制御部74及び第2段階演出制御部76がこの順に機能する。そして第1段階演出制御部75が、始めに、操作ボタン6に対する第1の操作を受け付け、その第1の操作を受け付けたタイミングが所定のタイミングに一致する特定条件の成立により第1の段階までシナリオ進行演出を進行させる第1段階演出402を行わせる。また示唆演出制御部74は、第1段階演出402において特定条件が成立すると、特別遊技判定の結果に基づいて、シナリオ進行演出が最終段階まで進行する期待度を示唆する示唆演出403を行わせる。そして第2段階演出制御部76は、第1段階演出402や示唆演出403が行われた後に、操作ボタン6に対する第2の操作を受け付け、第2の操作を受け付けたことに応じてシナリオ進行演出が第1の段階から最終段階まで進行する成功演出405及び最終段階まで進行しない失敗演出406のいずれか一方を行わせる。そして第2段階演出制御部76は、特別遊技判定の結果が特別遊技状態ST2に移行させる場合、特別遊技判定の結果が特別遊技状態ST2に移行させない場合よりも高確率で成功演出405を行わせるように構成されている。」

(チ)「【0333】
また上記実施形態においては、遊技者によって操作される操作ボタン6が遊技者による押下操作を検知可能であり、単押し操作や連打操作、長押し操作などを第1の操作や第2の操作として検知する場合を例示した。しかし、遊技者が操作可能な操作入力手段は、必ずしも上述したような操作ボタン6に限られるものではなく、例えばレバー、ダイヤル、タッチパネル、トラックボールなどであっても構わない。」

(ツ)「【符号の説明】
【0337】
1 遊技機
6 操作ボタン(操作入力手段)
・・・」

イ 認定事項
(ア)先願明細書の【0013】に「・・・遊技者が操作可能な操作ボタン6・・・」と記載され、【0037】に「・・・演出制御基板33は、遊技者がボタン操作を行うことが可能な所定のタイミングで操作ボタン6が操作されたことを検知した場合・・・」と記載され、【0337】に「・・・6 操作ボタン(操作入力手段)・・・」と記載されていることから、「演出制御基板33は、遊技者が操作ボタン6(操作入力手段)を操作したことを検知する機能を有する」ものと認める。

(イ)先願明細書の【0099】に「演出制御基板33のCPU33aは、・・・図柄変動演出制御部71・・・として機能する。」と記載され、【0105】に「・・・図柄変動演出制御部71は、シナリオ進行演出制御部73を備えている。」と記載され、【0107】に「・・・シナリオ進行演出制御部73は、示唆演出制御部74、第1段階演出制御部75及び第2段階演出制御部76を備えている。」と記載されていることから、先願明細書には、「演出制御基板33は、示唆演出制御部74、第1段階演出制御部75及び第2段階演出制御部76を備えているシナリオ進行演出部73として機能する」ことが記載されていると認める。

ウ 先願発明
上記アの記載事項および上記イの認定事項を総合すると、先願明細書等には、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認められる(a?hは、本件補正発明のA?Hに対応させて付与した。)。
「a 特別遊技判定の結果が大当たりなどの所定の当たりに当選したことを示すものであれば、遊技者にとって有利な特別遊技を開始する遊技機1(【0019】)であって、
b 遊技者が操作ボタン6(操作入力手段)を操作したことを検知する機能を有する演出制御基板33(認定事項(ア))を備え、
c 演出制御基板33は、示唆演出制御部74、第1段階演出制御部75及び第2段階演出制御部76を備えているシナリオ進行演出部73として機能し(認定事項(イ))、
第1段階演出制御部75は、ボタン操作受付有効期間内に遊技者による、操作ボタン6に対する第1の操作を受け付けた場合、画像表示器12の表示画面を、第1画面402bから第3画面402dへと遷移させるか、もしくは、第1画面402bから第4画面402eへと遷移させる第1段階演出402を開始し(【0225】、【0226】、【0230】、【0244】、【図55】)、
第2段階演出制御部76は、第1段階演出402及び示唆演出403が行われた後に、ボタン操作受付有効期間内に遊技者による、操作ボタン6に対する第2の操作が行われると、画像表示器12の表示画面を、第1画面404bから成功演出405の第1画面405a、もしくは、失敗演出406の第1画面406aに遷移させる第2段階演出404を開始し(【0233】【0234】、【0244】、【図57】)、
d シナリオ進行演出部73として機能する演出制御基板33は、第4シナリオ演出パターン78dに基づくシナリオ進行演出を行う場合の第4シナリオ進行演出制御処理を開始すると(【0238】、認定事項イ)、
d1 まず第1段階演出制御部75を機能させ、第1段階演出制御部75は、第1段階演出制御処理を開始し、ボタン操作受付有効期間内に受け付けた遊技者による第1の操作が、所定のタイミングに一致して特定条件が成立した場合、画像表示器12の表示画面を、第1段階演出402の第1画面402bから第3画面402dへと遷移させ、所定のタイミングに一致しておらず、特定条件不成立であると判断した場合、画像表示器12の表示画面を、第1段階演出402の第1画面402bから第4画面402eへと遷移させ(【0225】、【0226】、【0238】、【図55】)、
この第3画面402dでは、第1段階演出制御部75によってキャラクタ87aがシュート動作を行ってゴールとなる画像が表示されることによりシナリオ進行演出が進行し、それとほぼ同時に示唆演出制御部74による、シナリオ進行演出が最終段階まで進行する期待度を示唆する示唆演出403が行われ(【0218】、【0230】)、その後、第2段階演出404を開始するタイミングになると、第2段階演出制御部76を機能させ、第2段階演出制御部76による第2段階演出404を開始させ(【0238】)、
また、特定条件不成立の場合、第1段階演出制御部75は、操作失敗演出408を行わせ、このときには、シナリオ演出進行処理が行われないため、シナリオ進行演出は進行させず(【0240】)、
d2、e シナリオ進行演出は、初期段階から始まり、遊技者によるボタン操作の有無やボタン操作のタイミングなどに応じて段階的にシナリオが進行し、最終的にシナリオが最終段階まで進行すれば遊技者に有利な遊技価値が付与される期待度が最も高くなる演出であり(【0106】)、
示唆演出制御部74は、特別遊技判定の結果が特別遊技状態ST2へと移行させるものでない場合、示唆演出パターンPT2よりも高い確率で示唆演出パターンPT1を、示唆演出403において表示するエフェクト画像として選択し(【0228】)、
第2段階演出制御部76は、第1段階演出402や示唆演出403が行われた後の第2段階演出404で、操作ボタン6に対する第2の操作を受け付けたことに応じて、シナリオ進行演出が第1の段階から最終段階まで進行する成功演出405および最終段階まで進行しない失敗演出406のいずれか一方を行わせ、
特別遊技判定の結果が特別遊技状態ST2に移行させる場合、特別遊技判定の結果が特別遊技状態ST2に移行させない場合よりも高確率で最終段階まで進行する成功演出405を行わせ(【0222】、【0244】)、
f、g 遊技者による操作ボタン6の単押し操作や連打操作、長押し操作などを第1の操作や第2の操作として検知可能であるが、遊技者が操作可能な操作入力手段は、操作ボタン6に限られるものではなく、例えばレバー、ダイヤル、タッチパネル、トラックボールなどであっても構わない(【0333】)
h 遊技機1(【0019】)。」

(3)対比
本件補正発明と先願発明とを、分説に従い対比する。
(a、h)
先願発明における構成aの「遊技者にとって有利な特別遊技を開始する」ことは、本件補正発明における構成Aの「遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な」ことに相当する。
そして、先願発明における構成a、hの「遊技機1」は、本件補正発明における構成A、Hの「遊技機」に相当する。
したがって、先願発明の構成a、hは、本件補正発明の構成A、Hに相当する。

(b)
先願発明における構成bの「遊技者が」「操作」する「操作ボタン6(操作入力手段)」は、本件補正発明における構成Bの「遊技者の動作を検出する検出手段」に相当する。

(c)
先願発明における構成cの「ボタン操作受付有効期間内に遊技者による、操作ボタン6に対する第1の操作を受け付けた場合」は、本件補正発明における構成Cの「第1有効期間において遊技者の動作が検出されたことに基づ」くことに相当する。
そして、先願発明は、「第1段階演出制御部75」による「画像表示器12の表示画面を、第1画面402bから第3画面402dへと遷移させるか、もしくは、第1画面402bから第4画面402eへと遷移させる第1段階演出402を開始」する(構成c)とともに、「第1段階演出制御部75」による「第3画面402d」では、「シナリオ進行演出が進行し、それとほぼ同時に示唆演出制御部74による、シナリオ進行演出が最終段階まで進行する期待度を示唆する示唆演出403が行われ」る(構成d1)ものである。
そうすると、先願発明における構成cの「第1段階演出制御部75」による「画像表示器12の表示画面を、第1画面402bから第3画面402dへと遷移させるか、もしくは、第1画面402bから第4画面402eへと遷移させる第1段階演出402」、および、「示唆演出制御部74」による「示唆演出403」は、本件補正発明における構成Cの「第1演出」に相当する。
したがって、先願発明における構成cの「ボタン操作受付有効期間内に遊技者による、操作ボタン6に対する第1の操作を受け付けた場合、画像表示器12の表示画面を、第1画面402bから第3画面402dへと遷移させるか、もしくは、第1画面402bから第4画面402eへと遷移させる第1段階演出402を開始」する「第1段階演出制御部75」、および、構成d1の「シナリオ進行演出が最終段階まで進行する期待度を示唆する示唆演出403」を行う「示唆演出制御部74」「を備えているシナリオ進行演出部73として機能」する「演出制御基板33」は、本件補正発明における構成Cの「第1有効期間において遊技者の動作が検出されたことに基づいて演出が実行される第1演出」「を実行可能な演出制御手段」に相当する。

同様に、先願発明における構成cの「第1段階演出402及び示唆演出403が行われた後」の「ボタン操作受付有効期間内に遊技者による、操作ボタン6に対する第2の操作が行われる」ことは、本件補正発明における構成Cの「第1有効期間とは異なる第2有効期間において遊技者の動作が検出されたことに基づ」くことに相当する。
また、先願発明における構成cの「画像表示器12の表示画面を、第1画面404bから成功演出405の第1画面405a、もしくは、失敗演出406の第1画面406aに遷移させる第2段階演出404」は、本件補正発明における構成Cの「第2演出」に相当する。
したがって、先願発明における構成cの「第1段階演出402及び示唆演出403が行われた後に、ボタン操作受付有効期間内に遊技者による、操作ボタン6に対する第2の操作が行われると、画像表示器12の表示画面を、第1画面404bから成功演出405の第1画面405a、もしくは、失敗演出406の第1画面406aに遷移させる第2段階演出404を開始」する「第2段階演出制御部76を備えているシナリオ進行演出部73として機能」する「演出制御基板33」は、本件補正発明における構成Cの「第1有効期間とは異なる第2有効期間において遊技者の動作が検出されたことに基づいて演出が実行される第2演出」「を実行可能な演出制御手段」に相当する。

よって、先願発明における構成c、および、d1のうちの「示唆演出403」に関する構成は、本件補正発明における構成Cに相当する。

(d、d1)
先願発明における構成d1の「第1段階演出制御処理を開始し、ボタン操作受付有効期間内に受け付けた遊技者による第1の操作が、所定のタイミングに一致して特定条件が成立した場合」は、本件補正発明における構成D1の「第1有効期間のうちの特定期間内で遊技者の動作が検出され」た場合に相当する。
そして、先願発明における構成d1の「第3画面402dで」の「キャラクタ87aがシュート動作を行ってゴールとなる画像が表示されることによりシナリオ進行演出」の「進行」「とほぼ同時に」「行われ」る「シナリオ進行演出が最終段階まで進行する期待度を示唆する示唆演出403」は、本件補正発明における構成D1の「報知演出」に相当する。
また、先願発明における構成d1の「ボタン操作受付有効期間内に受け付けた遊技者による第1の操作が」、「所定のタイミングに一致しておらず、特定条件不成立であると判断した場合」は、本件補正発明における構成D1の「第1有効期間のうちの特定期間外で遊技者の動作が検出され」た場合に相当する。

ここで、先願発明は、構成d1によると、「特定条件が成立した場合」、「第1画面402bから第3画面402dへと遷移」し、「この第3画面402dでは、第1段階演出制御部75によってキャラクタ87aがシュート動作を行ってゴールとなる画像が表示されることによりシナリオ進行演出が進行し、それとほぼ同時に示唆演出制御部74による、シナリオ進行演出が最終段階まで進行する期待度を示唆する示唆演出403が行われ、その後、第2段階演出404を開始するタイミングになると、第2段階演出制御部76を機能させ、第2段階演出制御部76による第2段階演出404を開始させ」ることから、「特定条件が成立した場合」、必ず、「第2段階演出404を開始させ」るものである。同様に、先願発明は、構成d1によると、「特定条件不成立であると判断した場合」、「第1画面402bから第4画面402eへと遷移」するものであって、「第1画面402bから第3画面402dへと遷移」せず、「シナリオ演出進行処理が行われないため、シナリオ進行演出は進行」しないものであるから、この場合、先願発明において「第2段階演出404を開始させ」ることはない。
すなわち、先願発明は、「特定条件が成立した場合」、「特定条件不成立であると判断した場合」よりも高い割合で「第2段階演出404を開始させ」るものである。
そして、上記(c)より、先願発明における「第2段階演出404」は、本件補正発明における「第2演出」に相当するものである。

よって、先願発明における構成d1の内容を実行する構成dにおける「演出制御基板33」は、本件補正発明における構成D、D1の「第1有効期間のうちの特定期間内で遊技者の動作が検出されて報知演出を実行する場合は、第1有効期間のうちの特定期間外で遊技者の動作が検出されて報知演出が実行されない場合よりも高い割合で第2演出を実行」する「演出制御手段」に相当する。

(d、d2)
先願発明は、構成d1によると、「第1段階演出制御部75は」、「第1の操作が」「所定のタイミングに一致しておらず、特定条件不成立であると判断した場合」、「第1段階演出402の第1画面402bから第4画面402eへと遷移させ」、「操作失敗演出408を行わせ」るが、「このときには、シナリオ演出進行処理が行われないため、シナリオ進行演出は進行」しないものである。
そして、先願発明における「示唆演出403」(構成d1)は、構成d2、eによると、「特別遊技判定の結果が特別遊技状態ST2へと移行させるものでない場合」、「示唆演出403において表示するエフェクト画像として」の「示唆演出パターンPT1」が「示唆演出パターンPT2よりも高い確率で」「選択」されるものである。
一方、先願発明における構成d2、eの「第2段階演出404」の「成功演出405」は、「シナリオ進行演出が第1の段階から最終段階まで進行」し、「遊技者に有利な遊技価値が付与される期待度が最も高くなる演出であ」る。
そうすると、先願発明における「第2段階演出404」の「成功演出405」は、「第1段階演出402」の「操作失敗演出408」や、「示唆演出パターンPT1」による「示唆演出403」よりも、「遊技者に有利な遊技価値が付与される期待度」の「高」い演出であると認められる。
ここで、上記(c)より、先願発明の「第1段階演出402」、「示唆演出403」は、本件補正発明の「第1演出」に相当し、先願発明の「第2段階演出404」は、本件補正発明の「第2演出」に相当する。
そして、先願発明における構成d2、eの「最終的にシナリオが最終段階まで進行すれば遊技者に有利な遊技価値が付与される期待度が最も高くなる演出であ」って、「特別遊技判定の結果が特別遊技状態ST2に移行させる場合、特別遊技判定の結果が特別遊技状態ST2に移行させない場合よりも高確率で最終段階まで進行する成功演出405」は、本件補正発明における構成D2の「第1演出よりも前記有利状態に制御される可能性の高い演出」に相当する。
したがって、先願発明における構成d、d2、eの「第2段階演出404で、操作ボタン6に対する第2の操作を受け付けたことに応じて、シナリオ進行演出が第1の段階から最終段階まで進行する成功演出405」を「行わせ」る「シナリオ進行演出部73として機能する演出制御基板33」は、本件補正発明における構成D、D2の「第2演出を実行する場合は、第1演出よりも前記有利状態に制御される可能性の高い演出を実行可能であ」る「演出制御手段」に相当する。

(e)
先願発明における構成d2、eの「最終段階まで進行しない失敗演出406」は、本件補正発明における構成Eの「第1演出態様」に相当する。
そして、先願発明における構成d2、eの「成功演出405」は、「最終的にシナリオが最終段階まで進行すれば遊技者に有利な遊技価値が付与される期待度が最も高くなる演出であ」って、「特別遊技判定の結果が特別遊技状態ST2に移行させる場合、特別遊技判定の結果が特別遊技状態ST2に移行させない場合よりも高確率で最終段階まで進行する」演出であって、「最終段階まで進行しない失敗演出406」よりも「遊技者に有利な遊技価値が付与される期待度が」高い演出であるから、本件補正発明における「1演出態様よりも有利状態に制御される可能性が高い第2演出態様」に相当する。
したがって、先願発明における構成d2、eの「シナリオ進行演出が第1の段階から最終段階まで進行する成功演出405および最終段階まで進行しない失敗演出406のいずれか一方を行」う「第2段階演出404」は、本件補正発明における構成Eの「第1演出態様と、該第1演出態様よりも有利状態に制御される可能性が高い第2演出態様とを含」む「第2演出」に相当する。

(f、g)
上記(b)より、先願発明における「操作ボタン6(操作入力手段)」は、本件補正発明における「検出手段」に相当する。
先願発明の構成cにおいて、「第1段階演出制御部75は、ボタン操作受付有効期間内に遊技者による、操作ボタン6に対する第1の操作を受け付け」、また、「第2段階演出制御部76は、第1段階演出402及び示唆演出403が行われた後に、ボタン操作受付有効期間内に遊技者による、操作ボタン6に対する第2の操作」を受け付けるものである。
そうすると、先願発明は、「ボタン操作受付有効期間内」、「第1段階演出402及び示唆演出403が行われた後」の「ボタン操作受付有効期間内」に、それぞれ、同じ操作ボタン6に対する「第1の操作」、「第2の操作」を一つの検出手段により、受け付けるものである。
そして、上記(c)によると、先願発明の「ボタン操作受付有効期間内」は、本件補正発明の「第1有効期間」に相当し、同じく、先願発明の「第1段階演出402及び示唆演出403が行われた後」の「ボタン操作受付有効期間内」は、本件補正発明の「第1有効期間とは異なる第2有効期間」に相当する。
したがって、先願発明の構成f、gの「遊技者による操作ボタン6の単押し操作や連打操作、長押し操作などを第1の操作や第2の操作として検知可能である」ことと、本件補正発明の構成F、Gの「検出手段は、複数種類設けられ、第1有効期間と、第2有効期間とで異なる検出手段により遊技者の動作を検出可能である」こととは、「第1有効期間と、第2有効期間とで検出手段により遊技者の動作を検出可能である」ことで共通する。

上記(a)?(f、g)によれば、本件補正発明と先願発明とは、
「A 遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 遊技者の動作を検出する検出手段と、
C 第1有効期間において遊技者の動作が検出されたことに基づいて演出が実行される第1演出と、前記第1有効期間とは異なる第2有効期間において遊技者の動作が検出されたことに基づいて演出が実行される第2演出とを実行可能な演出制御手段)とを備え、
D 前記演出制御手段は、
D1 前記第1有効期間のうちの特定期間内で遊技者の動作が検出されて報知演出を実行する場合は、前記第1有効期間のうちの前記特定期間外で遊技者の動作が検出されて前記報知演出が実行されない場合よりも高い割合で前記第2演出を実行し、
D2 前記第2演出を実行する場合は、前記第1演出よりも前記有利状態に制御される可能性の高い演出を実行可能であり、
E 前記第2演出は、第1演出態様と、該第1演出態様よりも前記有利状態に制御される可能性が高い第2演出態様とを含み、
F’、G’ 前記第1有効期間と、前記第2有効期間とで前記検出手段により遊技者の動作を検出可能である、
H 遊技機。」である点で一致し、次の点で一応相違する。

[相違点](構成F、G)
第1有効期間と、第2有効期間とで、遊技者の動作を検出可能である検出手段に関して、本件補正発明は、検出手段は、複数種類設けられ、第1有効期間と、第2有効期間とで異なる検出手段により遊技者の動作を検出可能であるのに対して、先願発明は、第1有効期間と、第2有効期間とで同じ入力手段(操作ボタン6)により遊技者の動作を検出可能である点で一応相違する。

(4)当審判合議対による判断
ア 一応の相違点について
上記一応の相違点について検討する。
遊技機の技術分野において、興趣向上のために、検出手段を複数種類設け、第1有効期間と、第1有効期間とは異なる第2有効期間とで異なる検出手段により遊技者の動作を検出可能とすることは、本願の出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2015-80523号公報の【0028】?【0029】に「本実施形態において、第1の操作手段の操作が有効となる第1操作有効期間の終了後に、該第1の操作手段とは別の第2の操作手段の操作が有効となる第2操作有効期間が開始することが好ましい。本実施形態では、第1操作有効期間の終了と共に第1の操作手段の操作が行えなくなり、操作を促す表示の変化も途中で終了する。しかし、その後に第2操作有効期間が開始するので、第2の操作手段の操作を促す表示が開始し、変化していく。これにより、第1の操作手段の操作を行わなかった遊技者でも、第2の操作手段を操作する可能性がある興趣の高い遊技機を実現することができる。」と記載され、
特開2015-33502号公報の【0199】に「上記のように実施例1には、操作が指示された場合に遊技者が操作することで、演出が実行される2つの操作手段がある。ここで、操作手段のうち一の操作手段の操作が有効となる第1操作有効期間に該一の操作手段が操作された場合に、他の操作手段の操作が有効となる第2操作有効期間が開始する。従って、一の操作手段の操作による演出と他の操作手段の操作による演出が連続的に発生するので、遊技が単調になるのを防止することができる。」と記載されている。以下「周知の技術事項」という。)。
すると、上記一応の相違点は、上記周知の技術事項の付加であって、新たな効果を奏するものではないから、課題解決のための具体化手段における微差にすぎない。
そして、先願発明における「入力手段(操作ボタン6)」に上記周知の技術事項を付加して、異なる種類の「入力手段」を複数種類設けるとともに、第1段階演出制御部75によるボタン操作受付有効期間内の第1の操作と、第2段階演出制御部76によるボタン操作受付有効期間内の第2の操作を異なる種類の操作入力手段を用いて行い、上記一応の相違点に係る構成とすることは、「操作入力手段」の具体化手段における微差にすぎない。
また、先願発明の奏する「従来よりも興趣性の高い遊技機を提供することができるようになる。」(【0008】)との効果は、先願発明に上記周知の技術事項を付加したものが奏する効果の範囲内のものであって、先願発明に上記周知の技術事項を付加することによって新たな効果を奏するものではない。
したがって、上記一応の相違点は実質的な相違点ではない。

イ 請求人の主張について
請求人は、令和1年9月30日付け審判請求書において、次の主張をしている。
「先願1には、成功演出として1種類の演出しか開示されておらず、本願発明のように第2有効期間において実行される第1演出よりも有利状態に制御される可能性の高い第2演出として、第1演出態様と、該第1演出態様よりも有利状態に制御される可能性が高い第2演出態様とがあること(構成E)は何ら開示も示唆もされておりません。さらに、先願1は1種類の操作ボタンしかないため、検出手段が複数設けられ、第1有効期間と、第2有効期間とで異なる検出手段により遊技者の動作を検出可能であること(構成F,G)が開示されているはずがありません。」((3) 拡大先願について)
そこで、請求人の上記主張について検討する。
(ア)構成Eに関する主張について
上記主張において、請求人は、本件補正発明の構成Eが「第2有効期間において実行される第1演出よりも有利状態に制御される可能性の高い第2演出として、第1演出態様と、該第1演出態様よりも有利状態に制御される可能性が高い第2演出態様とがあること」であるとしているが、本件補正発明の構成Eは、「前記第2演出は、第1演出態様と、該第1演出態様よりも前記有利状態に制御される可能性が高い第2演出態様とを含み」とあるように、「前記第2演出」の「前記」で構成Cの「第2演出」を「前記」で受けるものであって、構成D2の「前記第1演出よりも前記有利状態に制御される可能性の高い演出」を「前記」で受けるものではない。
さらに、本件補正発明の構成D2は、「前記第2演出を実行する場合は、第1演出よりも有利状態に制御される可能性の高い演出を実行可能であ」ると特定されていることから、「第2演出」として、「第1演出よりも有利状態に制御される可能性の高い演出」が「実行可能であ」れば、それ以外の演出、例えば、「第1演出よりも有利状態に制御される可能性」の低い演出を実行することも含むものである。
そして、本件補正発明の構成Eの「前記第2演出は、第1演出態様と、該第1演出態様よりも前記有利状態に制御される可能性が高い第2演出態様とを含み」という特定は、「第2演出」のうち、「第1演出態様」と「第2演出態様」との間で、「有利状態に制御される可能性」の高低を特定するのみであって、「第1演出態様」及び「第2演出態様」と、「第1演出」との間で、有利状態に制御される可能性の高低を特定するものではない。
したがって、請求人の上記主張は、本願の特許請求の範囲の記載に基づかない主張である。
そして、本件補正発明における構成Eの「第1演出態様」は、「第1演出よりも前記有利状態に制御される可能性の高い演出」に限定されるものではなく、「第1演出よりも有利状態に制御される可能性」の低い演出を含むものであるから、上記「(3)対比で」検討したように、先願発明の構成eの「最終段階まで進行しない失敗演出406」に相当するものである。

(イ)構成F、Gに関する主張について
先願発明に上記周知の技術事項を付加して、本件補正発明の構成F、Gとすることは、上記アにおいて検討したように、先願発明の「操作入力手段」の具体化手段における微差にすぎない。

(ウ)小括
上記(ア)、(イ)より、請求人の上記主張を採用することはできない。

(5)まとめ
上記(1)?(4)より、本件補正発明は、先願発明と同一の発明であり、しかも、本願の発明者が先願の発明者と同一であるとはいえず、また、本願の出願時点において、その出願人が先願の出願人と同一であるともいえないので、本願補正発明は特許法第29条の2の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成31年2月14日付け手続補正書の請求項1に記載された、次のとおりのものと認める。
「A 遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 遊技者の動作を検出する検出手段と、
C 第1有効期間において遊技者の動作が検出されたことに基づいて演出が実行される第1演出と、前記第1有効期間とは異なる第2有効期間において遊技者の動作が検出されたことに基づいて演出が実行される第2演出とを実行可能な演出制御手段とを備え、
D 前記演出制御手段は、
D1 前記第1有効期間のうちの特定期間内で遊技者の動作が検出されて報知演出を実行する場合は、前記第1有効期間のうちの前記特定期間外で遊技者の動作が検出されて前記報知演出が実行されない場合よりも高い割合で前記第2演出を実行する
H 遊技機。」

2 原査定の拒絶の理由
(拡大先願)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特願2014-123970号(特開2016-2236号)

3 先願明細書等に記載された事項および先願発明
原査定の拒絶の理由に(引用文献等1として)引用された先願明細書等の記載事項、および、先願発明の認定については、前記「第2[理由] 2 2-2(2)先願発明」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記「第2[理由] 2 2-2(1)」で検討した本件補正発明から、構成D2?Gの限定を省くものである。
そうすると、本件補正発明は、本願発明の特定事項をすべて含み、さらに他の構成を付加したものであって、前記「第2[理由] 2 2-2(3)対比」における検討内容からみて、本願発明(構成A?D1、H)は、先願発明(構成a?d1、h)に一致し、相違する点はない。

5 むすび
上記1?4より、本願発明は、先願発明と同一の発明であり、しかも、本願の発明者が先願の発明者と同一であるとはいえず、また、本願の出願時点において、その出願人が先願の出願人と同一であるともいえないので、本願発明は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-07-01 
結審通知日 2020-07-07 
審決日 2020-07-21 
出願番号 特願2015-118046(P2015-118046)
審決分類 P 1 8・ 16- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 昌宏  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 長崎 洋一
▲吉▼川 康史
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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