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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  E21D
審判 全部無効 2項進歩性  E21D
管理番号 1366411
審判番号 無効2018-800070  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-05-31 
確定日 2020-09-25 
事件の表示 上記当事者間の特許第5063863号発明「気泡シールド工法で発生する建設排泥の処理方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第5063863号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明の特許を無効とすることを求める事件であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。

平成17年 3月23日 本件出願(特願2005-83412号)
平成24年 8月17日 設定登録(特許第5063863号)
平成30年 5月31日 本件無効審判請求
平成30年 8月21日 審判事件答弁書提出
平成30年 9月28日 審理事項通知(起案日)
平成30年10月24日 請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成30年11月 7日 被請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成30年11月21日 請求人より上申書提出
平成30年11月21日 口頭審理
平成30年12月11日 被請求人より上申書提出

第2 本件発明
本件特許の請求項1?3に係る発明(以下「本件発明1」などといい、これらの発明をまとめて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
気泡シールド工法で発生する建設排泥に、カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合し、造粒した後、無機系固化材を添加混合して固化することを特徴とする気泡シールド工法で発生する建設排泥の処理方法。
【請求項2】
請求項1において、無機系固化材がカルシウムまたはマグネシウムの酸化物を含む粉末である気泡シールド工法で発生する建設排泥の処理方法。
【請求項3】
請求項1において、無機系固化材が石膏を含む粉末である気泡シールド工法で発生する建設排泥の処理方法。」

第3 請求人の主張
請求人は、本件特許の請求項1?3に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、概ね以下のとおり主張している(審判請求書(以下「請求書」という。)、平成30年10月24日付け口頭審理陳述要領書(以下「請求人陳述書」という。)、平成30年11月21日付け上申書(以下「請求人上申書」という。)を参照。)。また、証拠方法として甲第1号証ないし甲第40号証を提出している。

1 無効理由の概要
〔無効理由1〕
本件特許の請求項1?3に係る発明は、本件特許の出願前日本国内において頒布された甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その発明に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
本件特許の請求項1?3に係る発明は、本件特許の出願前日本国内において頒布された甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第2号証?甲第28号証)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その発明に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
〔無効理由2〕
本件特許の請求項1?3に係る発明は、本件特許の出願前日本国内において頒布された甲第32号証に記載された発明、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第2号証?甲第28号証及び甲第33号証)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その発明に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(第1回口頭審理調書)

<証拠方法>
提出された証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証 特開2002-336671号公報
甲第2号証 「シールドトンネルの新技術」、第2版、株式会社土木工学社、平成13年10月10日発行、はじめに、目次、3?10頁、31?52頁、96?99頁、221?227頁
甲第3号証 「入門シリーズ17 シールド工法入門」、第3刷、社団法人地盤工学会、目次、89?109頁、214、215頁、平成8年6月10日発行
甲第4号証 大野宏紀、ほか1名、「気泡材を活用した大口径泥土圧シールドの切羽管理」、論文・報告集第1巻、トンネル工学研究発表会、1991年12月、267?272頁
甲第5号証 三輪恒久、「特集:共同溝 気泡シールド工法で施工した梅田共同溝」、土木技術、土木技術社、平成9年10月1日、52巻10号、p.79-90
甲第6号証 「気泡シールド工法 -技術資料-」、シールド工法技術協会、第7版、はじめに、p.1-3、平成23年8月発行
甲第7号証 特開平6-173583号公報
甲第8号証 特公平5-42560号公報
甲第9号証 齋藤優、「泥土圧シールド工法の添加材選定と施工性の向上」、第47回「シールドトンネル工法施工技術」講習会テキスト「シールド 厳しさへの対応」、有限会社日本プロジェクト・リサーチ、平成15年3月10日発行、p.13-36
甲第10号証 丸茂健、ほか2名、「洪積砂礫層を気泡併用大断面泥土圧シールドで掘る 都営地下鉄12号線練馬第二工区」、トンネルと地下、一般社団法人日本トンネル技術協会、株式会社土木工学社、平成3年3月1日、247号、p.21-30
甲第11号証 「土圧工法の添加材の選定について」、株式会社タック、平成8年9月
甲第12号証 特開昭60-188595号公報
甲第13号証 特開平8-120266号公報
甲第14号証 特開平4-203093号公報
甲第15号証 斎藤二郎、ほか3名、「気泡シールド工法の開発に関する現場実験(その1)」、大林組技術研究所報、1982、No.24、p.97-101
甲第16号証 池田弘、「高分子凝集剤について その種類と使い方」、実務表面技術、表面技術協会、73-12、p.588-594
甲第17号証 野田道宏、「高分子凝集剤の種類と作用機構」、高分子、1968年、Vol.17、No.194、p.404-412
甲第18号証 特公昭58-47560号公報
甲第19号証 特開平5-311985号公報
甲第20号証 赤木寛一、ほか2名、「起泡剤を用いた地盤掘削用安定液の溝壁安定化機構」、第37回地盤工学研究発表会、2002年7月、p.1523-1524
甲第21号証 近藤義正、ほか2名、「掘削土砂に気泡と水を添加した地盤掘削用安定液の開発と適用」、土木学会論文集C、2008年7月、Vol.64、No.3、p.505-518
甲第22号証 特開平2-194891号公報
甲第23号証 特開2004-8850号公報
甲第24号証 「高分子凝集剤の安全性について(アニオン・ノニオン編)」、高分子凝集剤環境協会、2003年4月、p.13-20
甲第25号証 山田順治、ほか1名、「わかりやすいセメントとコンクリートの知識」、鹿島出版会、昭和51年4月30日、p.22-36
甲第26号証 特開2003-117532号公報
甲第27号証 特開2002-282894号公報
甲第28号証 特開2004-181302号公報
甲第29号証 マグローヒル科学技術用語大辞典 第3版、株式会社日刊工業新聞社、1996年9月30日、第3版、p.1019、1229
甲第30号証 実験報告書
甲第31号証 甲第30号証の実験を撮影したビデオ
甲第32号証 特開平6-193382号公報
甲第33号証 特開2005-76285号公報
甲第34号証 「建設工事等から生ずる廃棄物の適正処理について(通知)」、環廃産276号、平成13年6月1日公布
甲第35号証 「発生土利用基準について」、[online]、国土交通省、平成16年3月31日公表、[2018年10月17日検索]、インターネット<URL:http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha04/13/130331_.html>
甲第36号証 阪本廣行、ほか2名、「建設汚泥のリサイクルについて」、廃棄物学会誌、2001年、Vol.12、No.3、p.150-160
甲第37号証 特開2003-138878号公報
甲第38号証 武田厚、ほか1名、「気泡シールド工法-工法の特長と施工例-」、建設機械、日本工業出版、1997年11月、393、Vol.33、No.11、p.16-21
甲第39号証 「気泡シールド工法-技術資料-」、シールド工法技術協会編、第7版、平成23年8月、はじめに、p.4-11
甲第40号証 「泥土加圧シールド工法-技術資料-」、シールド工法技術協会、第12版、平成23年8月、はじめに、p.1-4、16-19

2 具体的な理由
(1)無効理由1について(甲第1号証を主引例とした場合)
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲第1号証に記載された発明との対比
本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証には、シールド工事で発生する泥土を処理対象とすること(段落[0001])、凝集材供給手段54、57で多軸撹拌機70内に供給される凝集材B、Cによって、処理対象となる泥土を凝集して泥土を造粒処理、すなわち粒状化するように処理すること(段落[0019])、電気二重層の総電荷の抑制を行うには、その総電荷の量をできるだけ減らすように電荷を中和するのが有効であるが、こうした働きをする凝集材としてアニオン性の合成高分子凝集材が選択可能であり、さらに、凝集機構には、高分子の官能基による土粒子への吸着架橋(イオン結合、水素結合)により土粒子を集合させる、電気二重層の総電荷の抑制や圧縮による凝集を遥かに凌ぐ凝集力を発揮する架橋凝縮機構があり、この架橋凝縮を行わせるための凝集材としてアニオン性の合成高分子凝集材が選択可能であること(段落[0028])、工事中にベントナイトが添加されていない通常の泥土は、アニオン性の凝集材で凝集することが可能であること(段落[0029])、さらに、このようにして粒状化した粒状泥土生成物にセメント系や石灰系の無機系固化材と混合して浸水しても再泥土化しないように改質すること(段落[0064])が記載されていることから、甲第1号証には、「シールド工法で発生する建設排泥に、カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合し、造粒した後、無機系固化材を添加混合して固化するシールド工法で発生する建設排泥の処理方法。」(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
このことから、両者は、(A)処理対象の建設排泥について、本件発明1が、気泡シールド工法で発生する建設排泥である旨限定されているのに対して、甲1発明が、(気泡シールド工法の上位概念である)シールド工法で発生する建設排泥である点で相違し、その余は一致する。
(請求書29頁10行?30頁9行)

(イ)相違点(A)について
気泡シールド工法は、砂礫地盤を施工する場合の切羽の安定状態を維持するために切羽の土砂に加泥材を添加するシールド工法の主要な工法である泥土圧シールド工法と同様、添加剤として気泡(起泡剤)からなる加泥材を使用する工法であることから、甲1発明の出願時、又は少なくとも本件特許の出願時には、泥土圧シールド工法の範疇に入るもの(下位概念の工法であって泥土圧シールド工法に含まれるもの)とされている。
甲第2号証?甲第5号証より、気泡シールド工法のシールドにおける分類として以下のとおり確認することができ、当業者に一般的に知られている技術常識であると認めることができる。
・気泡は泥土圧シールドの添加材として代表的なものであることから、気泡シールド工法は泥土圧シールドの代表的なものである。また、気泡シールドとして区分される場合があるとしても、シールドの分類上は気泡シールドとして特に分類されず、土圧シールド、泥土圧シールドに内在されて分類されている。(甲第2号証?甲第5号証)
・シールドと言えば泥水式、土圧式を示すまでになっており、シールド工法のうち約70%が土圧式シールドを採用していること、土圧式の中で泥土圧シールドが年々増加傾向であること、最近では最も多く採用されていることから、シールドといえば先ずは土圧式の泥土圧シールドが連想されるものである。(甲第2号証及び甲第4号証)
・泥土圧シールドの添加材に加泥材と気泡を併用することが慣用されていること。そして、加泥材と気泡を併用したものも、泥土圧シールドであり、気泡シールドでもあること。(甲第2号証、甲第3号証及び甲第5号証)
これらをまとめると、
・気泡シールド工法は、シールド、泥土圧シールドの下位概念に分類される。そして、シールドといえば泥土圧シールドが連想され、更に、気泡シールドは泥土圧シールドの代表的なものであるから、気泡シールド工法も連想され導き出されるものである。また、泥土圧シールドの添加材に加泥材と気泡を併用して使用することが慣用されていて、少なくとも泥土圧シールドの添加材に加泥材と気泡を併用したものは、泥土圧シールドであり、かつ気泡シールドである。
・シールドとシールド工法、泥土圧シールドと泥土圧式シールド工法との差異は、カテゴリー表現上の相違に過ぎず、実質的に同一のものである。
なお、甲第6号証(発行日:平成23年8月、第7版)においても、気泡シールド工法は密閉型-土圧式シールド工法-泥土圧シールド工法の下位に位置付けられていることが記載されている。したがって、シールド工事には泥土圧シールドの気泡シールドも含まれる。
このように、泥土圧シールドにおいて添加材として気泡(起泡剤)を使用するものを気泡シールド工法と呼んでいるが、添加材は、施工する地盤の性状等に応じて、その優位性や施工性等を考慮して、単独で用いられるだけでなく、組み合わせて用いることも推奨されていること、そして、どの種類の添加材を用いる泥土圧シールド工法であっても、添加材が添加された掘削排土は泥土化するため、改質処理を施す必要があることで共通しており、発生する掘削排土の性状も、泥土圧シールド工法に使用される添加材(ベントナイト、高分子材料、起泡剤)、水、土粒子及び空気を含み、流動性を有している点で共通しているため(必要があれば、例えば、甲第7号証?甲第14号証参照。)、泥土圧シールド工法で発生する掘削排土の処理という観点からは、添加材として気泡(起泡剤)を単独又はその他の添加材を併せて使用する気泡シールド工法と、その他の添加材を用いる泥土圧シールド工法とに実質的な差異は存在しない。
一方、甲1発明は、シールド工事のような建設工事等で発生する泥土(甲第1号証の段落[0001])を対象として、特に、建設工事で発生する膨大な量の泥土処理を課題とするもの(甲第1号証の段落[0005])であるので、甲1発明のシールド工事から発生する泥土には、土圧シールド工法、泥土圧シールド工法により発生する泥土を含むものといえる。つまり、甲1発明のシールド工事には添加材として気泡(起泡剤)を単独又はその他の添加材を併せて使用する「気泡シールド工法」も当然に含まれるものであって、これを排除する理由はない。
ここで、気泡シールド工法は、発生する建設排泥の含水率の上昇を相対的には抑えられる等の特長を備えているが、発生する建設排泥の含水率は、施工する地盤の性状、特に、地下水の量によって当然に変動するものであること(必要があれば、例えば、甲第2号証、甲第3号証及び甲第5号証のほか、甲第9号証、甲第10号証及び甲第12号証参照。)から、発生する掘削排土の含水率という観点から、添加材として気泡(起泡剤)を用いる気泡シールド工法(で発生する掘削排土)と、その他の加泥材を用いる泥土圧シールド工法(で発生する掘削排土)とを区別することはできない。
しかも、このようにして発生する建設排泥の主体は、気泡があろうがあるまいが(残っていようがいまいが)、コロイド(例えば、甲第16号証では、1?100mμの粒度の微粒子とされている。)より大きい土粒子(シルト、粘土、砂礫)を包含することは明白であるから、両者とも同様に高分子凝集剤による凝集作用が生じる。なお、コロイドより粒子が大きい場合は、高分子凝集剤の凝集機構としての架橋結合は、イオン基の電気的相互作用の有無によって大した影響を受けず、負に帯電した土粒子を高分子イオン側が負に帯電した凝集剤であるアニオン性高分子凝集剤を用いて凝集させることができるということは、周知の技術的知見である(必要があれば、例えば、甲第1号証、甲第16号証及び甲第17号証参照。)。
そして、甲1発明は、シールド工法等で発生した泥土を改質することで、粒状化し、強度の高い一般建設残土と同等の土砂に改質して利用価値を創出し、改質処理現場から再利用先へと直接搬送することを可能とするものであって、甲1発明のアニオン性有機高分子凝集剤を適用することによって、建設排泥を凝集させ、適度な流動性を有する凝集状態にすることで、気泡(起泡剤)を含む各種加泥材を使用する泥土圧シールド工法より発生する建設排泥であっても、掘削土の自由水を土粒子に取り込み、見掛け上の含水比を低下させることで、掘削土を改質、粒状化し、運搬及び後処理を容易にすることができるものである。この場合、アニオン性有機高分子凝集剤は、泥土に適切に混合すると、泥土中の土粒子を集合させて、土粒子間の自由水を、集合した土粒子間に包み込むように抱合する。そのため、土粒子は、表面側が湿り気の少ない見掛け上乾燥した状態になって集合して、粘り気のない状態の泥土の粒状体が生成される(甲第1号証の段落[0026]及び次頁の図参照。)ものであることから、建設排泥が、大気中に開放しただけでは自然消泡しきれずに建設排泥中に気泡が残存するようになるものの場合であっても、アニオン性有機高分子凝集剤を適用することによって、消泡(気泡の効果の低減)も当然に行われると認められることから、甲1発明を気泡シールド工法で発生する建設排泥の改質に適用することの動機付けが存在するといえる。ここで、気泡を含有する建設排泥が、乾燥によって消泡することは、周知の技術的知見に過ぎない(例えば、甲第18号証?甲第21号証参照。)。
また、流動性を有する建設排泥の改質に、高分子凝集剤として、アニオン性有機高分子凝集剤を単独で使用することは、甲第22号証にも記載されている。
ここで、本件請求人の実施した実験(実験報告書(甲第30号証)及び実験を撮影したビデオ(甲第31号証)参照。)によれば、アニオン性有機高分子凝集剤による泥土圧シールド工法で発生する建設排泥(模擬土)の改質度合いは、加泥材としての気泡(起泡剤)の有無は、泥土を適度な流動性を有する凝集状態にする作用に実質的に影響を与えるものでないことが分かる。
このことから、甲第1号証に記載されたシールド工法で発生する建設排泥の改質に関する発明と、これを気泡シールド工法で発生する建設排泥の改質に適用することとは、実質的に相違がなく、同一である。
また、仮に建設排泥における気泡の有無が相違点であると認められ、甲第1号証に記載された「シールド工法」が気泡シールド工法を除くシールド工法と把握され、気泡シールド工法と区別されたとしても、両者は、技術分野も課題も作用も共通している、すなわち、加泥材が添加された掘削排土は含水率が高く泥土化するため、改質処理を施す必要があること(例えば、甲1発明は、シールド工事のような建設工事等で発生する泥土すなわち高含水比の軟弱な土砂を対象としたものである(甲第1号証の段落[0002])のに対し、気泡シールド工法により発生する建設排泥は、相対的に含水比の上昇は抑えられる等の特長を備えているが、上記のとおり、例えば、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証、甲第9号証、甲第10号証、甲第12号証及び甲第15号証に記載されているように、発生する建設排泥の含水率は、施工する地盤の性状、特に、地下水の量によって変動することは明らかである。)で共通していること、上記のとおり両者の組み合わせも推奨されるほどに親近性があることから、適用する積極的な動機付けがあり、何らの阻害要因もなく、当業者が容易になし得ることと認められる。
このように、上記相違点(A)は、実質的に相違点ではなく、仮に相違点であると認められるとしても、甲1発明及び周知技術から、当業者が容易に想到し得る事項であり、また、本件発明1によって、甲1及び周知技術を総合したものによって奏せられる効果以上のものを奏するものとは認められない。
ここで、本件発明1によって奏せられる、環境を汚染する心配はないという作用効果に関して、そもそも、アニオン性高分子凝集剤の生態毒性が低いことは、周知の技術的知見(必要があれば、例えば、甲第23号証及び甲第24号証参照。)であることから、当該作用効果は、甲1発明によって当然に奏せられるものである。
さらに言えば、流動性を有する建設排泥の改質に、高分子凝集剤として、アニオン性有機高分子凝集剤を単独で使用することは、甲第22号証にも記載されているが、生態毒性という普遍的な課題に基づけば、甲1発明において、「アニオン性高分子凝集剤を使用してカチオン性高分子凝集剤を使用しない」という使用方法は、具体的な記載がなくとも、当然に導き出せることにすぎず、また、少なくとも容易に想到できるものといえる。
したがって、本件発明1は、甲1発明と実質的に同一であり、仮にそうでないとしても、同発明及び周知技術(甲第2号証?甲第24号証)に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
(請求書30頁12行?38頁下から3行)

イ 本件発明2について
本件発明2と甲1発明とを対比すると、上記相違点(A)に加え、(B1)無機系固化剤に関し、本件発明2が、カルシウム又はマグネシウムの酸化物を用いる旨限定している点で相違する。
そこで、上記相違点(B1)について検討する。
建設排泥の改質目的に応じて、どのような無機系固化剤を選択するかは、当業者が当然に行うべき設計上の事項であって、カルシウム又はマグネシウムの酸化物は、甲1発明において無機系固化剤として用いられるセメント系の固化材に一般的に含まれる材料であることから(例えば、甲第25号証(周知技術)参照。)、甲1発明と実質的に同一であり、仮にそうでないとしても、カルシウムの酸化物又は甲第26号証(周知技術)に記載されたマグネシウムの酸化物(酸化マグネシウム)を用いることは、当業者が容易になし得ることと認められる。
このように、上記相違点(B1)は、甲第25号証及び甲第26号証に記載された周知技術から、当業者が容易に想到し得る事項であり、また、本件発明2によって、甲1発明及び周知技術(甲第25号証及び甲第26号証)を総合したものによって奏せられる効果以上のものを奏するものとは認められない。
したがって、本件発明2は、甲1発明と実質的に同一であり、仮にそうでないとしても、甲1発明及び周知技術(甲第2号証?甲第26号証)に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
(請求書39頁1行?下から5行)

ウ 本件発明3について
本件発明3と甲1発明とを対比すると、上記相違点(A)に加え、(B2)無機系固化剤に関し、本件発明3が、石膏を用いる旨限定している点で相違する。
そこで、上記相違点(B2)について検討する。
建設排泥の改質目的に応じて、どのような無機系固化剤を選択するかは、当業者が当然に行うべき設計上の事項であって、石膏は、甲1発明において無機系固化剤として用いられるセメント系の固化材に一般的に含まれる材料であることから(例えば、甲第25号証(周知技術)参照。)、甲1発明と実質的に同一であり、仮にそうでないとしても、甲第27号証及び甲第28号証(周知技術)に記載された石膏を用いることは、当業者が容易になし得ることと認められる。
このように、上記相違点(B2)は、甲第25号証、甲第27号証及び甲第28号証に記載された周知技術から、当業者が容易に想到し得る事項であり、また、本件発明3によって、甲1発明及び周知技術(甲第25号証、甲第27号証及び甲第28号証)を総合したものによって奏せられる効果以上のものを奏するものとは認められない。
したがって、本件発明3は、甲1発明と実質的に同一であり、仮にそうでないとしても、甲1発明及び周知技術(甲第2号証?甲第25号証、甲第27号証?甲第28号証)に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
(請求書39頁下から2行?40頁18行)

(2)無効理由2について(甲第32号証を主引例とした場合)
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲第32号証に記載された発明との対比
本件発明1と甲第32号証に記載された発明とを対比すると、甲第32号証には、泥土圧シールド機に使用するアクリル系有機高分子凝集剤分散剤としてアニオン性高分子業種剤に、カチオン性高分子凝集剤を併用するとの記載はない([請求項2]、段落[0008]、[0009])こと、「この発明による泥土圧シールド工法は、アクリル系有機高分子凝集剤を泥土圧シールド機のチャンバ(スクリューコンベヤのハウジングを含む)内に注入したので、該掘削土砂は適度な流動性を有する凝集状態の泥土に生成される(段落[0011])」と記載されていることから、甲第32号証には、「泥土圧シールド工法で発生する建設排泥に、カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合し、適度な流動性を有する凝集状態の泥土に生成する、泥土圧シールド工法で発生する建設排泥の処理方法。」(以下、「甲32発明」という。)が記載されているものと認められる。
このことから、両者は、(a)処理対象の建設排泥について、本件発明1が、気泡シールド工法で発生する建設排泥である旨限定されているのに対して、甲32発明が、(気泡シールド工法の上位概念である)泥土圧シールド工法で発生する建設排泥である点、(b)アニオン性高分子凝集剤を添加混合した建設排泥について、本件発明1が、造粒しているのに対して、甲32発明において、造粒という用語が用いられていない点、及び、(c)(アニオン性高分子凝集剤を添加混合した)建設排泥について、本件発明1が、無機系固化材を添加混合して固化するようにしているのに対して、甲32発明が、無機系固化材を添加混合して固化することが記載されていない点で相違し、その余は一致する。
(請求書46頁17行?47頁12行)

(イ)相違点(a)について
甲32発明は、泥土圧シールド工法に関する技術であるが、気泡シールド工法は、上記(1)ア(イ)において詳述したとおり、砂礫地盤を施工する場合の切羽の安定状態を維持するために切羽の土砂に加泥材を添加するシールド工法の主要な工法である泥土圧シールド工法と同様、添加剤として気泡(起泡剤)からなる加泥材を使用する工法であることから、甲32発明の出願時、又は少なくとも本件特許の出願時には、泥土圧シールド工法の範疇に入るもの(下位概念の工法であって泥土圧シールド工法に含まれるもの)とされている。
そして、甲32発明は、「泥土圧シールド工法」についての発明とされていることから、甲32発明は加泥材に気泡(起泡剤)を使用する「気泡シールド工法」も当然に含まれるものであって、これを排除する理由はない。
ここで、気泡シールド工法は、発生する建設排泥の含水率の上昇を相対的には抑えられる等の特長を備えているが、上記(1)ア(イ)において詳述したとおり、発生する建設排泥の含水率は、施工する地盤の性状、特に、地下水の量によって当然に変動するものであること(必要があれば、例えば、甲第2号証、甲第3号証及び甲第5号証のほか、甲第9号証、甲第10号証及び甲第12号証参照。)から、発生する掘削排土の含水率という観点から、添加材として気泡(起泡剤)を用いる気泡シールド工法(で発生する掘削排土)と、その他の加泥材を用いる泥土圧シールド工法(で発生する掘削排土)とを区別することはできない。
そして、甲32発明は、泥土圧シールド工法で発生した掘削土を、適度な流動性、止水性、残土処理性を有するように改質することを目的とするものであって、甲32発明のアニオン性有機高分子凝集剤を適用することによって、建設排泥を凝集させ、適度な流動性を有する凝集状態にすることで、気泡(起泡剤)を含む各種加泥材を使用するどのような泥土圧シールド工法より発生する建設排泥であっても、掘削土の自由水を土粒子に取り込み、見掛け上の含水比を低下させることで、掘削土を改質することができるものである。この場合、アニオン性有機高分子凝集剤は、泥土に適切に混合すると、泥土中の土粒子を集合させて、土粒子間の自由水を、集合した土粒子間に包み込むように抱合する。そのため、土粒子は、表面側が湿り気の少ない見掛け上乾燥した状態になって集合して、粘り気のない状態の泥土の粒状体が生成される(甲第1号証の段落[0026]及び第37頁の図参照。)ものであることから、建設排泥が、大気中に開放しただけでは自然消泡しきれずに建設排泥中に気泡が残存するようになるものの場合であっても、アニオン性有機高分子凝集剤を適用することによって、土粒子の表面が湿り気の少ない見掛け上乾燥によって消泡(気泡の効果の低減)も当然に行われると認められることから、甲32発明を気泡シールド工法で発生する建設排泥の改質に適用することの動機付けが存在するといえる。ここで、気泡を含有する建設排泥が、乾燥によって消泡することは、周知の技術的知見に過ぎない(例えば、甲第18号証?甲第21号証参照。)。
また、流動性を有する建設排泥の改質に、高分子凝集剤として、アニオン性有機高分子凝集剤を単独で使用することは、甲第22号証にも記載されている。
ここで、本件請求人の実施した実験(実験報告書(甲第30号証)及び実験を撮影したビデオ(甲第31号証)参照。)によれば、アニオン性有機高分子凝集剤による泥土圧シールド工法で発生する建設排泥(模擬土)の改質度合いは、加泥材としての気泡(起泡剤)の有無は、泥土を適度な流動性を有する凝集状態にする作用に実質的に影響を与えるものでないことが分かる。
このことから、甲第32号証に記載された泥土圧シールド工法で発生する建設排泥の改質に関する発明と、これを気泡シールド工法で発生する建設排泥の改質に適用することとは、実質的に相違がなく、同一である。
また、仮に建設排泥における気泡の有無が相違点であると認められ、甲第32号証に記載された「泥土シールド工法」が気泡シールド工法を除く泥土シールド工法と把握され、気泡シールド工法と区別されたとしても、両者は、技術分野も課題も作用も共通している、すなわち、加泥材が添加された掘削排土は含水率が高く泥土化するため、改質処理を施す必要があること(例えば、気泡シールド工法は、高透水性地層を掘削する泥土圧シールドである点で課題等が共通している。甲32発明は、高透水性地層を掘削する泥土圧シールドにおいて、土砂を凝集させて泥土とし、該泥土を容易に扱えるようにすることを発明の目的(課題)としている(甲第32号証の段落[0007]及び[0022]])。気泡シールド工法もまた、高透水性地層を掘削する泥土圧シールドである。具体的には、甲32発明は、透水係数10^(0)?10^(-3)cm/secの高透水性地層を対象とするものであるのに対して、気泡シールドも透水係数10^(-2)?10^(-3)cm/sec程度の透水性が高い地層を掘削施工するものであることが開示されている(例えば、甲第4号証?甲第5号証参照。)。さらに、透水性が高い地層を掘削施工した場合、甲第12号証には、「ずりと混合される気泡の一部が地下水によって消泡されること」、甲第33号証には、「豊富な地下水の湧出により気泡が消泡しやすく、スクリューコンベヤからの噴発などの不具合が生じ、掘進に支障を来すこと」が記載されていて、起泡材により発泡した気泡が高透水性地層において豊富な地下水等により消泡することは当該技術分野に関わらずとも明らかといえる。)で共通していること、上記のとおり両者の組み合わせも推奨されるほどに親近性があることから、適用する積極的な動機付けがあり、何らの阻害要因もなく、当業者が容易になし得ることと認められる。
ここで、甲第32号証には、スクリューコンベヤのハウジングに建設排泥の改質のための高分子材料を添加する場合に用いる加泥材について記載されていないが甲32発明において、スクリューコンベヤのハウジングに建設排泥の改質のための高分子材料を添加する場合に、加泥材(ベントナイト、高分子材料、起泡剤)を併用することは、当然に想定されることである(必要があれば、例えば、甲第13号証及び甲第14号証参照。)。
(請求書47頁14行?50頁5行)

(ウ)相違点(b)について
甲第32号証において、「カッタ15で掘削土砂は、チャンバ2内に注入された凝集剤と攪拌翼14によって混合され、チャンバ2から排出に好ましい状態、即ち、適度な流動性、不透水性即ち止水性、残土処理性に好ましい泥土に作られる。凝集剤と掘削土の混練はスクリュウコンベアなどのハウジング内の任意の場所で行うことができる。」(段落[0011])とされている。また、甲第1号証には、「凝集材は、泥土に適切に混合すると、泥土中の土粒子を集合させて、土粒子間の自由水を、集合した土粒子間に包み込むように抱合する。そのため、泥土の含水比が著しく高くない限り、土粒子は、表面側が湿り気の少ない見掛け上乾燥した状態になって集合して、粘り気のない状態の泥土の粒状体が生成される。」(段落[0026])と記載されている。したがって、凝集剤と泥土とを適切に混合することが記載されている甲32発明においても、「造粒」が行われることは明らかである。
この点についてさらに説明すると、甲第32号証には、
・「この発明による泥土圧シールド工法は、アクリル系有機高分子凝集剤を泥土圧シールド機のチャンバ(スクリューコンベヤ等のハウジングを含む)内に注入したので、該掘削土砂は適度な流動性を有する凝集状態の泥土に生成される。」(段落[0009])との記載がある。
上記記載及び段落[0011]によれば、撹拌機能を備えたチャンバ(スクリューコンベヤ等のハウジングを含む)内に注入するとは、有機高分子凝集剤を「添加混練」することにほかならない。
また、甲第32号証には、次の記載もある。
・「泥土加圧シールド工法においては、泥土圧シールド機のカッタで掘削した掘削土砂に適当な添加剤即ち作泥土剤を加えて搬出に好ましい状態の泥土を作り、該泥土に流動性を付与して坑外へ排出するものであり、特に、掘削土砂には流動性、止水性、残土処理性等が要求される。」(段落[0004])
・「しかも、この凝集剤が植物の生育阻害物質や有害物質を含んでおらず、且つ生成された泥土が通気性、保水性を有することにより、残土処理性を良好にし、例えば、園芸用土壌等に利用できることを特徴とする泥土圧シールド工法を提供することである。」(段落[0007])
・「この発明による泥土圧シールド工法は、アクリル系有機高分子凝集剤を泥土圧シールド機のチャンバ(スクリューコンベヤ等のハウジングを含む)内に注入したので、該掘削土砂は適度な流動性を有する凝集状態の泥土に生成される。それ故に、この泥土圧シールド機のカッタによって掘削された切羽面の掘削土砂に対する安定保持が得られると共に、掘削土砂が凝集状態の泥土を形成するので、スクリューコンベヤによるスムースな排出が行われ、残土の取り扱いが容易となる。」(段落[0009])
甲第32号証における上記記載及び段落[0011]によれば、建設排泥に高分子凝集剤を添加混合して混練することにより、「搬出に好ましい状態の泥土」、「該掘削土砂は適度な流動性を有する凝集状態の泥土」、「適度な流動性、不透水性即ち止水性、残土処理性に好ましい泥土」、「生成された泥土が通気性、保水性を有する」泥土が生成されるのであり、とりわけ「生成された泥土が通気性、保水性を有することにより、残土処理性を良好にし、例えば、園芸用土壌等に利用できる」との記載は泥土の造粒、すなわち、泥土の粒状体が生成される状態をも示している。
ちなみに、「造粒」とは、「凝集によって、小さな粒子から大きな粒子をつくること。」(甲第29号証)とされており、本件第1発明においては、「造粒」について特段の定義は置かれていない。
これらのことから、甲32発明においても、本件発明1と同様、「造粒」という結果が得られることは明らかである。
そうすると、甲32発明においても、造粒が行われていることは明らかであり、相違点(b)に実質的な相違はない。
(請求書50頁7行?51頁末行)

(エ)相違点(c)について
甲第1号証には、シールド工事のような建設工事等で発生する泥土(甲第1号証の段落[0001]を対象として、建設排泥にアニオン性高分子凝集剤を供給して造粒すること(甲第1号証の段落[0019])、さらに、造粒した建設排泥に無機系固化材を添加混合して固化するようにすることが記載されており、甲32発明において、改質した建設排泥の性状、再利用化の用途等の観点から、当該改質した建設排泥に無機系固化材を添加混合して固化するようにすることで、種々の用途に再利用することができるようにすることは、当業者が容易になし得ることと認められる。
なお、さらに付言すれば、甲32発明に甲第1号証に記載の建設排泥にアニオン性高分子凝集剤を供給して造粒すること(甲第1号証の段落[0019])を適用することで、相違点(b)(「造粒する」)も想到できるものである。
また、甲第27号証は、トンネル工事(シールド工事)で発生する建設泥土に代表される泥土の固化材及び固化方法に関する(甲第27号証の段落[0001]及び[0026])ものであり、雨水にさらされると濁水を発生しやすいため、埋立周辺の土壌温泉や自然破壊を引き起こすおそれがある(甲第27号証の段落[0003])とシールド工事で発生する建設泥土に関する普遍的な課題に基づくものである。さらに、甲第27号証に記載の技術は、水溶性高分子凝集剤を必須の成分とするものであり(甲第27号証の[請求項1]等)、水溶性高分子凝集剤の例としてアニオン型水溶性高分子凝集剤を使用するものである(甲第27号証の段落[0011])。また、甲第27号証に記載の技術は、無機系凝結材を必須の成分とするものである(甲第27号証の[請求項1]等)。したがって、甲32発明の泥土圧シールドにより発生する泥土に甲第27号証に記載の無機系凝結材、すなわち、無機系固化材を適用することは容易になし得るものである。なお、甲第27号証には、撹拌混合により粒状化すること(甲第27号証の段落[0010]及び[0011])、つまり造粒すること(相違点(b)に相当)、無機凝結材に、石膏(後述する相違点(c2)に相当)、及びポルトランドセメントなどのセメント類(後述する相違点(c1)に相当)を使用できることが記載されており、甲32発明に甲第27号証に記載の技術を適用することで、相違点(b)?(c)(後述する相違点(c1)及び(c2)についても同様。)は容易に想到できるものである。
(請求書52頁2行?53頁4行)

イ 本件発明2について
本件発明2と甲32発明とを対比すると、上記相違点(a)及び(b)に加え、(c1)無機系固化剤に関し、本件発明2が、カルシウム又はマグネシウムの酸化物を用いる旨限定している点で相違する。
上記相違点(c1)について検討すると、建設排泥の改質目的に応じて、どのような無機系固化剤を選択するかは、当業者が当然に行うべき設計上の事項であって、カルシウム又はマグネシウムの酸化物は、甲第1号証に記載された発明において無機系固化剤として用いられるセメント系の固化材に一般的に含まれる材料であることから(例えば、甲第25号証(周知技術)参照。)、カルシウムの酸化物又は甲第26号証(周知技術)に記載されたマグネシウムの酸化物(酸化マグネシウム)を用いることは、当業者が容易になし得ることと認められる。
このように、上記相違点(c1)は、甲第25号証及び甲第26号証に記載された周知技術から、当業者が容易に想到し得る事項であり、また、本件発明2によって、甲32発明並びに甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第25号証及び甲第26号証)を総合したものによって奏せられる効果以上のものを奏するものとは認められない。
したがって、本件発明2は、甲32発明並びに甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第2号証?甲第26号証及び甲第33号証)に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
(請求書53頁下から3行?54頁17行)

ウ 本件発明3について
本件発明3と甲32発明とを対比すると、上記相違点(a)及び(b)に加え、(c2)無機系固化剤に関し、本件第3発明が、石膏を用いる旨限定している点で相違する。
上記相違点(c2)について検討すると、建設排泥の改質目的に応じて、どのような無機系固化剤を選択するかは、当業者が当然に行うべき設計上の事項であって、石膏は、甲第1号証に記載された発明において無機系固化剤として用いられるセメント系の固化材に一般的に含まれる材料であることから(例えば、甲第25号証(周知技術)参照。)、甲第27号証及び甲第28号証(周知技術)に記載された石膏を用いることは、当業者が容易になし得ることと認められる。
このように、上記相違点(c2)は、甲第25号証、甲第27号証及び甲第28号証に記載された周知技術から、当業者が容易に想到し得る事項であり、また、本件発明3によって、甲32発明並びに甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第25号証、甲第27号証及び甲第28号証)を総合したものによって奏せられる効果以上のものを奏するものとは認められない。
したがって、本件発明3は、甲32発明並びに甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第2号証?甲第25号証、甲第27号証、甲第28号証及び甲第33号証)に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
(請求書54頁下から6行?55頁14行)

(3)被請求人の主張について
ア 本件発明の特徴について
本件発明においては「気泡シールド工法から発生した建設排泥」を対象としているとされているものの、通常は自然放置や消泡剤の添加により消泡され、「汚泥中にシルトやセルロース系増粘剤を含む場合」のみが問題であって、「気泡」自体ないし「気泡シールド工法」自体には格別の技術的意義を見いだすことはできない。
被請求人は、本件発明が「気泡シールド工法」に特化された発明であると主張するが、「気泡シールド工法」に特化されていることに技術的意義はないことは上述したとおりであるから、失当というほかない。
(請求人陳述書10頁7行?14行)

イ 無効理由1について(甲第1号証を主引例とした場合)
(ア)本件発明1について
a 処理対象物の相違について
処理対象物の含水比に関して処理対象物を限定する具体的な記載は、本件発明1にも、甲1発明にもない。また、甲1発明の「泥土」が気泡の添加されたものを排除していないことは、例えば甲第1号証の段落【0029】の記載内容から明らかである。そして、本件発明1の処理対象物が「気泡シールド工法で発生する建設排泥」に限定されるとしても、排泥中の気泡の存在は特に考慮されておらず、甲1発明の産業廃棄物である「泥土」、すなわち「建設汚泥」に該当することは明白である。
(請求人陳述書11頁6行?9行、14頁5行?8行)

b 「当該特定の建設排泥と特定の薬剤との組み合せ」について
甲1発明には、「建設工事で発生する泥土の中には工事中にベントナイトが添加されたものもあり」と記載されているとおり、「添加されたものもある」のであって、その他の添加材が添加されたものがあることが示唆されているということができ、少なくとも、気泡が添加されたものを排除はしていない。
また、被請求人も主張しているとおり、甲第1号証の段落【0029】には、「通常の泥土は、アニオン性又はノニオン性の凝集材で凝集することが可能」であることが記載されている。特に気泡シールド工法においては、消泡すると通常の土に戻ることは公知の技術(本件特許の明細書の段落【0007】ないし【0009】)であり、「通常の泥土にアニオン性凝集材を使用すると造粒を起こす」ことは明白である。
そして、被請求人は、相違点(A)について、「処理対象物の相違は、添加されるべき薬剤の種類を決定づける、極めて大きな相違点(実質的な相違点)であることは明白である。」(答弁書8?11頁)と主張しているが、本件第1発明の処理対象物となる汚泥とは、明細書の段落【0007】に記載のとおり、「・・・汚泥中にシルトやセルロース系増粘剤を含む場合が多く、・・・脱泡残留物においてもなお流動性を有する」ような泥土をも対象としている。
甲1発明には、ベントナイト以外の添加材についての記載は特にないが、甲第1号証の段落【0029】に記載のとおり、泥土の種類、泥土が粘土、シルト、コロイド等の何れに該当するかの泥土の土粒子径、泥土の含水比等、泥土の性状に応じて凝集剤を適時適宜選択することができると記載されており、様々な性状の泥土を処理対象物としていることに鑑みると、本件特許の明細書の段落【0007】に記載されたシルトやセルロース系増粘剤を含み、脱泡しても流動性を有する泥土と、甲1発明に記載されているシールド工事から排出される泥土とに有意的な相違は存在しないことは明白である。
甲1発明における請求項1を要約すると、「泥土を凝集材と共に撹拌混合し造粒化する」ことが記載されている。本件発明の請求項1においても、「建設排泥にアニオン性高分子凝集材を添加混合し、造粒」とあるように、根底にある技術に差はなく、被請求人が主張する、土に添加する材料が違うことで格別な効果があるとする点は、本件特許の明細書の段落【0007】の記載のみであり、本件第1発明の課題は、脱泡残留物に対する解決方法であって、気泡が含まれるということや含水比との記載は一切なく、これをまとめると「流動性のある泥土と凝集材をともに混合撹拌することで造粒化する」ということになる。
(請求人陳述書15頁1行?16頁5行)

c 小括
甲第1号証には、「気泡シールド工法で発生する建設排泥」に関する直接的な開示はないが、処理対象物は産業廃棄物たる泥土、すなわち「建設汚泥」であると記載されており、甲第37号証に他のシールド掘進工法と同様、気泡シールド掘進工法で発生した泥土もこれに含まれる旨の開示があること、本件発明1の処理対象物はそのコーン指数を踏まえると同じく「建設汚泥」であることから、本件発明1の処理対象となる建設排泥と甲1発明における泥土とには何ら差がないものといえる。さらに、通常の土砂がアニオン性高分子凝集材で造粒することは公知の技術であって、特に本件発明の汚泥中にシルトやセルロース系増粘剤を含む泥土については、甲第1号証の段落【0029】に記載のとおり、泥土の種類、粘土、シルト、コロイド等の何れに該当するかの泥土の粒子径、泥土の含水比等、泥土の性状に応じて凝集剤を適時選択することができるものである。
(請求人陳述書16頁15行?下から2行)

d 他の甲号証について
(a)甲第2?6号証について
甲第2号証?甲第5号証までの技術を見るに、少なくとも甲第2号証の発行日である平成13年10月までは、気泡を用いたとしても土圧式シールドであったことから、建設排泥に対する処理方法も通常の技術の延長でしかない。
(請求人陳述書26頁3行?5行)

(b)甲第7?14号証について
被請求人は、「気泡シールド工法とその他の泥土圧シールド工法とは、『使用される添加材』に気泡(起泡剤)が含まれるか否かという点において、大きく相違している(共通していない)。前述のとおり、両工法を分類する唯一のメルクマールは気泡の有無である。」(答弁書19頁)旨主張するが、本件発明においては「気泡シールド工法から発生した建設排泥」を対象としているとされているものの、通常は自然放置や消泡剤の添加により消泡され、「汚泥中にシルトやセルロース系増粘剤を含む場合」のみが問題であって、「気泡」自体ないし「気泡シールド工法」自体には格別の技術的意義を見いだすことはできない。
(請求人陳述書26頁7行?15行)

(c)甲第9、10、12、15号証について
甲第1号証は高含水比の泥土のみが対象とはならないことは明白であり、また、被請求人の「含水比が多すぎる場合には、気泡シールド工法が適用できない場合もある。気泡によるベアリング効果が発現しうる程度の含水比の場合に適用し得るものである」は、被請求人の記載する[1](審決注;原文は○の中に数字。以下同じ)及び[2](答弁書17?18頁)のメルクマールであるところの気泡を使用しているにもかかわらず、甲第8号証に記載の気泡と加泥材を用いた掘削方法や甲第19号証に記載のセルロース系増粘剤を気泡にして注入する泥土圧シールドを排除することに他ならず、何より本件発明には含水比の高低についての記載が一切ない。
(請求人陳述書26頁下から5行?27頁4行)

(d)甲第30、31号証について
被請求人が記載の粘性低下材については、甲第40号証に記載されている泥土圧シールド工法に用いられる材料と濃度、添加量を参考にした。添加材(起泡剤(液)、気泡(空気)、水)の変化がある以上、略同一の評価ではなく、加えられた添加材の影響を確認した結果であることは明白である。
また、カルボキシ基(-COOH)が水中でアニオン性(-COO-)となることで、ポリカルボン酸系粘性低下材のアニオン性の成分に起因して気泡が消泡している、と考察した原理が説明されていない。特に、本件発明で試用されているOK-1はアニオン性の界面活性剤であり、アニオン性の分散剤が消泡に起因する物質とは言えない。むしろアニオン性の界面活性剤との電荷的反発により強固な泡となることが考えられるし、また、カルボキシル基を持つ粘性低下材は洗剤ビルダーとして、水道水中に含まれる金属イオン(ミネラル分)をキレートすることで界面活性剤の気泡を維持する目的で添加されることからも、被請求人が記載する消泡原因は根拠に基づいた見解ではないことが明白である。しかし、含水が低い泥土では消泡を起こすことは甲第20、21号証から明白となっており、甲1発明に記載があるように、造粒した泥土は見かけ含水が下がり、表面が湿り気の少ない乾燥した状態になることで消泡を引き起こしていることに説明がつくことは明白といえる。
甲第30、31号証における試験対象模擬土について、被請求人は本件発明よりも含水比が著しく高く、再現実験ではないとするが、本件発明においては「気泡の離脱を妨害する上に脱泡残留物に流動性が残る泥土」を対象としており、例えば被請求人が記載する「アニオン性の粘性低下材で消泡している」土であったとしても、本件発明が解決しようとする根本的問題とはなんら乖離は認められないし、含水比が著しく増加しているとするのであれば、あるいは被請求人が指定する低含水の泥土ではなくとも気泡の有無によらず造粒化できる甲第1号証の証明に他ならない。
甲第40号証の記載に則った添加材の使用をしていることから、十分な流動性を得られていることは当然であり、軟弱となった泥土に対して、起泡剤(液)、気泡(空気)及び水の影響は少量の添加で顕著に表れるものであるが、被請求人が考察するとおり、table1、2から流動性への影響は気泡≧起泡剤(液)>水の順に大きくなっていることがわかる。つまり、そもそも甲第30、31号証における試験目的である、「泥土圧シールド工法より発生する建設排泥の処理と気泡の影響」において、流動性には気泡や起泡剤(液)は水よりも大きい影響を及ぼすが、その後のアニオン性高分子凝集材による改質度合いには何ら影響を与えていないことがわかる結果であって、被請求人の流動性寄与度についての考察は試験目的とかけ離れているといえる。
なお、被請求人は、「甲第30、31号証の実験結果は、本件特許出願日後に作成されたものであるから、甲第1号証に甲第30、31号証の実験結果を組み合せて本件発明の進歩性を否定することはできない。」(答弁書25頁)旨主張するが、甲第30、31号証は、アニオン性高分子凝集剤による泥土圧シールド工法で発生する建設排泥(模擬土)の改質度合いに関して、加泥材としての気泡(起泡剤+水+空気)の有無は、泥土を適度な流動性を有する凝集状態にする作用に実質的に影響を与えるものでないことを示すためのものであって、特許法第29条第2項の証拠として提出したものではない。
(請求人陳述書28頁下から9行?30頁4行)

(e)甲第23、24号証について
本件発明における毒性の問題は、アニオン性高分子凝集剤とカチオン性高分子凝集剤の比較であって、気泡(起泡剤+水+空気)の有無が使用可能な高分子凝集剤の種類に影響を与えない以上、流動性を有する建設排泥の改質に、高分子凝集剤として、アニオン性有機高分子凝集剤を単独で使用することは、甲第22号証にも記載されているが、生態毒性という普遍的な課題に基づけば、甲1発明において、「アニオン性高分子凝集剤を使用してカチオン性高分子凝集剤を使用しない」という使用方法は、具体的な記載がなくとも、当然に導き出せることにすぎず、また、少なくとも容易に想到できるものといえる。
(請求人陳述書30頁6行?13行)

(f)甲第25?29号証について
被請求人が記載の本件発明と甲1発明との相違点、すなわち、「気泡シールド工法で発生する建設排泥に、カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合し、造粒」との構成には想到し得ない、としているが、前記のとおり、気泡シールド工法は土圧シールド工法と区別されていない技術であったことから、本件発明2、本件発明3に係る技術選択においては、いわば「シールド工事から発生する建設排泥を造粒した後に添加する固化材選択」ということは明白であり、専業者が行う業務の延長でしかない。特に甲第27号証にはアニオン性高分子凝集剤と石膏の併用が記載されている。また、甲第28号証においては、アニオン系高分子凝集剤とセルロース系増粘剤を含む泥土に石膏を用いる記載もあり、本件発明における「シルトやセルロース系増粘剤を含む」脱泡残留物に石膏を用いる技術の開示がある。
(請求人陳述書30頁15行?末行)

(g)小括
被請求人が記載する「気泡シールド工法で発生する建設排泥を造粒及び固化し、運搬性を改善する」という課題は、甲1発明段階で気泡シールド工法と土圧シールド工法が統合されていたことからも同一視されるものであって、そもそも本件発明における課題をはき違えていることにほかならない結論である。また、もし、被請求人が記載するように、甲1発明にはベントナイトが用いられることがある建設排泥におけるカチオン性の凝集材を用いなければならないとする点については、ベントナイトが含まれない「気泡が消泡すると通常の泥土になる建設排泥」ではアニオン性又はノニオン性の凝集材で凝集できることを指していることは明白である。
(請求人陳述書31頁2行?10行)

ウ 無効理由2について(甲第32号証を主引例とした場合)
被請求人の甲第32号証に記載の発明の認定中における「・・・掘削土排出装置内にアクリル系有機高分子凝集剤分散液を注入し、生成した掘削土を前記チャンバー外へ排出移送する」点に着目すると、甲第32号証には、泥土圧シールド機に使用するアクリル系有機高分子凝集剤分散剤としてアニオン性高分子凝集剤に、カチオン性高分子凝集剤を併用するとの記載はない(【請求項2】、段落【0008】、【0009】)こと、「この発明による泥土圧シールド工法は、アクリル系有機高分子凝集剤を泥土圧シールド機のチャンバ(スクリューコンベヤ等のハウジングを含む)内に注入したので、該掘削土砂は適度な流動性を有する凝集状態の泥土に生成される(段落【0009】、【0011】)」と記載されていることから、甲第32号証には、「泥土圧シールド工法で発生する建設排泥に、カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合し、適度な流動性を有する凝集状態の泥土に生成する、泥土圧シールド工法で発生する建設排泥の処理方法。」(甲32発明)が記載されているものと認められる。
被請求人が主張する相違点(B1)?(B3)について、順に検討する。
まず、相違点(B1)について検討する。
相違点(B1)について、被請求人は、「本件発明は、気泡シールド工法で発生する建設排泥の処理方法の発明であるのに対して、甲第32号証に記載の発明は、泥土圧シールド工法自体の発明である点。」を挙げている。
しかしながら、上記のとおり、本件発明は、「気泡シールド工法から発生した建設排泥」を対象としているとされているものの、「気泡」自体ないし「気泡シールド工法」自体には格別の技術的意義はない。
そして、上記のとおり、廃棄物処理法等において、建設工事現場における掘削工事の工法と関係なく、「建設汚泥」等が定義されており、「気泡シールド工法で発生する建設排泥」も法令等にいう「建設汚泥」に該当することは明らかであり(甲第37号証)、しかも、甲第32号証には、「泥土圧シールド工法で発生する建設排泥の処理方法」(甲32発明)が記載されていること、そして、甲32発明は加泥材に気泡(起泡剤+水+空気)を使用する「気泡シールド工法」も包含するものであることから、相違点(B1)は、実質的な相違点ではない。
次に、相違点(B2)について検討する。
相違点(B2)について、被請求人は、「本件発明は、加泥材(作泥土材)として気泡が用いられているのに対して、甲第32号証に記載の発明は、加泥材(作泥土材)としてアクリル系有機高分子凝集剤分散液が用いられている点。」を挙げている。
ところで、被請求人が甲第32号証に記載の発明について認定しているとおり、甲第32号証に記載の発明において、アクリル系有機高分子凝集剤分散液は、「切羽を前面に設けた隔壁の後方に形成したチャンバーまたは掘削土排出装置内」に注入するようにされており、このうち、アクリル系有機高分子凝集剤分散液を、「掘削土排出装置内」に注入する甲32発明は、甲1発明の「アニオン性高分子凝集剤」(建設排泥の改質のための高分子材料)に該当するものであるといえる。
一方、甲第32号証には、アクリル系有機高分子凝集剤分散液を、「掘削土排出装置(スクリューコンベヤのハウジング)内」に注入する(「切羽を前面に設けた隔壁の後方に形成したチャンバー内」)に注入しない)場合に用いる加泥材について記載されていないが、甲32発明において、この場合に、加泥材(ベントナイト、高分子材料、気泡(起泡剤+水+空気))を併用することは、当然に想定されることである(必要があれば、例えば、甲第13号証及び甲第14号証参照。)。
したがって、相違点(B2)は、実質的な相違点ではない。
次に、相違点(B3)について検討する。
相違点(B3)について、被請求人は、「本件発明は、作泥土材(気泡)が添加された建設排泥に対して、カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合し、造粒した後、無機系固化材を添加混合して固化するのに対して、甲第32号証に記載の発明は、作泥土材(アクリル系有機高分子凝集剤分散液)が添加された掘削土に対して、他の添加材を添加していない点。」を挙げている。
相違点(B3)のうち、被請求人が主張する「本件発明は、作泥土材(気泡)が添加された建設排泥に対して、カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合するのに対して、甲第32号証に記載の発明は、掘削土に対して、作泥土材(アクリル系有機高分子凝集剤分散液)を添加する点」が、実質的な相違点ではないことは、相違点(B2)において説明したとおりである。
そして、建設排泥が、アニオン性高分子凝集剤を添加混合することで造粒されることは、審判請求書の(5-2-1-3)(相違点(b))において説明したとおり、実質的な相違点ではない。
また、当該建設排泥に対して、無機系固化材を添加混合して固化することは、審判請求書の(5-2-1-4)(相違点(c))において説明したとおり、甲32発明において、改質した建設排泥の性状、再利用化の用途等の観点から、当該改質した建設排泥に無機系固化材を添加混合して固化するようにすることで、種々の用途に再利用することができるようにすることは、当業者が容易になし得ることである。
(請求人陳述書32頁2行?34頁下から2行)

第4 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、請求人の主張に対して、概ね以下のとおり反論している(平成30年8月21日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)、平成30年11月7日付け口頭審理陳述要領書(以下「被請求人陳述書」という。)を参照。)。また、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証を提出している。

<証拠方法>
提出された証拠は、以下のとおりである。
乙第1号証 平尾孝典、「平成29年(行ケ)第10088号審決取消訴訟事件 気泡処理後の造粒性評価試験 結果報告書」、栗田工業株式会社、2017年8月22日
乙第2号証 「土質試験の方法と解説」、土質試験法(第3回改訂版)編集委員会編集、社団法人地盤工学会、第7刷、平成8年10月25日、表紙、P.186?199、奥付
乙第3号証 「耐塩型特殊起泡剤」(株式会社タックのウェブサイト)、[online]、2018年11月6日出力、<URL:http://www.tac-co.com/company/technical_information/a013001/>
乙第4号証 「シールド掘進技術 気泡シールド工法」(株式会社大林組のウェブサイト)、2018年11月6日出力、<URL:https://www.obayashi.co.jp/solution_technology/detail/tech_d050.html>

1 本件発明について
(1)本件発明の特徴
本件発明の特徴を整理すると、次のとおりである。
・工法は、「気泡シールド工法」に特化されている。
・しかし、本件発明は、「気泡シールド工法」自体ではなく、「同工法で発生する建設排泥の処理方法」に関する発明である。
・処理対象は、同工法により気泡が添加された建設排泥であり、本件発明では、当該排泥に対して、気泡とは異なる添加剤が添加される。
・カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合し、造粒した後、無機系固化材を添加混合して固化する。
(答弁書5頁2行、表3)

(2)本件発明の意義
ア 気泡シールド工法で発生する建設排泥の特異性
気泡シールド工法で発生する建設排泥は、気泡という特異な添加剤によって流動性が高められているため、流動性を消失させるためには、気泡を消泡する必要があるという、極めて特異な特徴を有するものである。
すなわち、気泡シールド工法で発生する建設排泥は、気泡のベアリング効果によって排泥の流動性が高められている(本件明細書の段落【0003】参照)。そのため、排泥の流動性を消失させるためには、気泡を消泡することが不可欠である。気泡が消泡されると、気泡のベアリング効果が失われるため、排泥の流動性は失われる。気泡が消泡されると、気泡を構成していた空気の多くは、排泥内から大気中に放出される。このようにして、気泡シールド工法で発生する建設排泥は、「通常の土状態に戻る」(本件明細書の段落【0009】)のである。
これに対して、泥土圧シールド工法で発生する建設排泥においては、例えばベントナイトを水に分散させたベントナイトスラリーが添加剤として添加されており、当該ベントナイトスラリーによって流動性が高められている。すなわち、排泥中の土粒子がベントナイトスラリー中に分散することにより、流動性が高められている。そのため、排泥の流動性を消失させるためには、凝集剤を添加して、「泥土を凝集させる」(甲第1号証の段落【0029】)必要がある。このようにして泥土が凝集することにより、排泥の流動性は失われる。
このように、気泡シールド工法で発生する建設排泥と、泥土圧シールド工法で発生する建設排泥とでは、
[1]流動性を高める物質(気泡/ベントナイトスラリー)
[2]流動性が高まる機構(ベアリング効果/ベントナイトスラリーによる土壌間の摩擦軽減)
[3]流動性を消失させる機構(気泡の消泡/泥土の凝集)
が全く異なる。
したがって、土粒子が水中に分散している懸濁液において土粒子を凝集させるという技術と、気泡を消泡する技術とは、全くの異質な技術であり、両者を互いに転用することは容易なことではないのである。

イ 本件発明の意義
本件発明は、気泡シールド工法で発生する建設排泥に、カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合することにより、
[1]気泡が“消泡”されるのみならず、
[2]排泥が“造粒”される、
[3]造粒後に無機系固化材を添加混合して“固化”することにより排泥の運搬性が改善される、
[4]環境汚染を引き起こす可能性がない、
等(本件明細書のの段落【0030】)という、従来法(自然放置、消泡剤の添加、カチオン性高分子凝集剤の添加)と比べて極めて優れた効果が奏されるという意義を有するものである。なお、アニオン性高分子凝集剤を添加混合することで、気泡が“消泡”されるという上記[1]の効果は、本件発明の出願日前には知られていなかった重要な効果である。
(被請求人陳述書2頁下から11行?3頁末行)

2 無効理由1について(甲第1号証を主引例とした場合)
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲第1号証に記載された発明との対比
甲1発明と、本件発明1とを対比すると、甲1発明と本件発明1とは、少なくとも次の点において相違する。
(相違点)
本件発明1は、「気泡シールド工法で発生する建設排泥に、カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合し、造粒」
するのに対して、甲第1号証に記載の発明は、「気泡シールド工法で発生する建設排泥」を処理対象物とするものではなく、したがって、「当該特定の建設排泥と特定の薬剤との組み合せ」に関する開示がない。
(答弁書6頁下から11行?下から3行)

イ 処理対象物の相違について
甲第1号証の請求項1は、「泥土造粒処理装置」に係る発明であるため、甲1発明における処理対象物は、当然のことながら「泥土」である。なお、甲第1号証の請求項1には、「泥土」の詳細を説明する記載は無い。
この点、甲第1号証の「発明の詳細な説明」の欄をみると、段落[0002]に、次のとおり記載されている。
「穴掘削機等による基礎工事、管推進機による推進工事、シールド工事、浚渫工事のような建設工事等で発生する泥土すなわち高含水比の軟弱な土砂は、産業廃棄物として脱水処理した後、最終処分場に埋立てて廃棄処理されている。」
当該記載から明白なとおり、甲1発明において、「泥土」とは「高含水比の軟弱な土砂」を意味する。
ここで、「高含水比」であることから、土砂中に水分が含まれていることは明らかである。よって、「泥土(すなわち高含水比の軟弱な土砂)」の構成成分は、「土砂」と「水分」であることが明白である。しかしながら、当然のことながら、「土砂」は気泡ではなく、「水分」も気泡ではない。したがって、甲1発明には、「気泡シールド工法で発生する建設排泥」を処理対象物とすることに関する記載は一切存在しない。
これに対し、本件発明1における処理対象物は、「気泡シールド工法で発生する建設排泥」である。
よって、両発明は処理対象物が相違することが明白である。
(答弁書7頁5行?下から4行)

ウ 「当該特定の建設排泥と特定の薬剤との組み合せ」について
本件発明1の処理対象物は、「気泡シールド工法で発生する建設排泥」であるため、気泡シールド工事中において気泡が添加されている。また、本件発明1では、当該特定の建設排泥に対して、「カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合」している。このように、本件発明においては、特定の建設排泥(気泡シールド工法で発生する建設排泥)と特定の薬剤(カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合)との組み合せが特定されている。
甲第1号証には、建設工事中に添加されている添加物に関する記載がなされている段落は、段落[0029]のみであり、建設工事中に添加されている添加物として、ベントナイトのみが記載されている。また、このように建設工事中にベントナイトが添加された泥土に対しては、「アニオン性又はノニオン性の凝集材だけでは、凝集させることができないので、主たる凝集材Bとしてアニオン性又はノニオン性のものを使用するほか、補助の凝集材Cとしてカチオン性のものを添加することにより、泥土を凝集させる」ことが記載されている。これに対して、同段落には、「通常の泥土は、アニオン性又はノニオン性の凝集材で凝集することが可能」であることが記載されている。
このように、甲第1号証には、建設工事中にベントナイト以外の添加材が添加された泥土に対して、如何なる薬剤が有効であるかに関する記載も示唆も一切ない。前述のとおり、そもそも甲第1号証には、「気泡シールド工法で発生する建設排泥」に関する記載が無いため、当該特定の建設排泥(気泡シールド工法で発生する建設排泥)に対して、如何なる薬剤が有効であるかに関する記載も示唆も一切ないことは明白である。
(答弁書8頁下から9行?10頁下から10行)

エ 小括
気泡シールド工法か否かを決定付ける唯一のメルクマールは、気泡が添加されたか否かである。そのため、気泡シールド工法以外のシールド工法においては、気泡は添加されないため、気泡のベアリング効果に起因する建設排泥の流動性を低減させ、造粒及び固化し、運搬性を改善する、という課題は生じ得ない。このように、本件発明1は、気泡シールド工法で発生する建設排泥において、気泡を消泡させて気泡のベアリング効果に起因する建設排泥の流動性を低減させ、造粒及び固化し、運搬性を改善するという、甲1発明には記載も示唆も無い課題を有する。
上記のとおり、甲第1号証には、「気泡シールド工法で発生する建設排泥に、カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合し、造粒」という本件発明1の構成に関する記載も示唆もない。
また、「気泡シールド工法で発生する建設排泥を造粒及び固化し、運搬性を改善する」という課題は、「気泡シールド工法で発生する建設排泥」という処理対象に固有の課題であるため、「泥土(高含水比の軟弱な土砂)」を処理対象物とする甲1発明からは、全く想定し得ない。
したがって、甲第1号証の記載に基づいて、「気泡シールド工法で発生する建設排泥に、カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合し、造粒」するという構成を有する本件発明を得ることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(答弁書13頁下から2行?14頁8行、15頁12行?下から2行)

オ 他の甲号証について
(ア)甲第2?6号証について
「気泡シールドであるか否かを決定付けるメルクマールは、添加材として気泡を用いたか否か」であり、気泡はシールド工事においてキーとなる物質であるにもかかわらず、甲第1号証には気泡に関する開示が無い。
また、甲第1号証には、工事中に添加された添加材として、ベントナイトのみしか開示されていない。なお、ベントナイトが添加されたからといって、気泡が併用されたことにはならないことは言うまでもない。また、工事中にベントナイト以外の添加材が添加された泥土を、如何なる添加剤(凝集剤または他の薬剤)で処理するのが好適であるかに関する記載が全く無い。
また、甲第2?6号証にも、工事中にベントナイト以外の添加材が添加された泥土を、如何なる凝集剤で処理するのが好適であるかに関する記載が全く無い。
したがって、甲1発明に、甲第2?6号証に記載されている気泡シールド工法に関する記載を適用して、甲1発明における処理対象物に「気泡シールド工法により発生する建設排泥」を含めることは成し得ない。
(答弁書18頁7行?下から7行)

(イ)甲第7?14号証について
請求人は、気泡シールド工法とその他の泥土圧シールド工法とを比較し、両工法は、「使用される添加材(ベントナイト、高分子材料、起泡剤)、水、土粒子及び空気を含み、流動性を有している点で共通しているため(必要があれば、例えば、甲第7号証?甲第14号証参照。)、」との点を根拠として、「泥土圧シールド工法で発生する掘削排泥の処理という観点からは、添加材として気泡(起泡剤)を単独又はその他の添加材を併せて使用する気泡シールド工法と、その他の添加材を用いる泥土圧シールド工法とに実質的な差異は存在しない。」
と結論付けている(審判請求書の第33頁第17?23行)。
しかしながら、先ず気泡シールド工法とその他の泥土圧シールド工法とは、「使用される添加材」に気泡(起泡剤)が含まれるか否かという点において、大きく相違している(共通していない)。前述のとおり、両工法を分類する唯一のメルクマールは気泡の有無である。
また、「泥土圧シールド工法で発生する掘削排泥の処理という観点」からは、掘削排土中に添加されている添加材の種類は、添加すべき凝集剤を決定づける「実質的な差異」であり、極めて重要な差異であることは明白である。
(答弁書18頁下から6行?19頁14行)

(ウ)甲第9、10、12、15号証について
甲第9、10、12、15号証の記載如何にかかわらず、甲1発明における処理対象物が「泥土すなわち高含水比の軟弱な土砂」(段落[0002])であるという事情に変わりは無く、また、当該泥土の構成成分である「土砂」及び「水分」が気泡では無いという事情に変わりは無く、したがって、甲第1号証には「気泡シールド工法で発生する建設排泥」の開示が無いという事情にも変わりは無いことは明白である。
また、甲第9、10、12、15号証には、掘削により発生した気泡混入排泥の造粒処理に関する記載は無い。
したがって、甲第9、10、12、15号証に鑑みても、本件特許の特徴である、「気泡シールド工法で発生する建設排泥に、カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合」
するという構成(相違点)には想到し得ない。
(答弁書19頁下から4行?20頁2行、下から9行?3行)

(エ)甲第16、17号証について
甲第16号証は、「水中に懸濁している粒子を互に結合させる能力のある物質を凝集剤と称し、」(第6頁左欄第2?3行)と記載されているとおり、水中にコロイド等の粒子が浮遊している懸濁液に関する記載である。
同様に、甲第17号証も、「各種産業や用水・廃水処理における懸濁液」(第404頁のタイトルの下側の記載の第1行)と記載されているとおり、水中にコロイド等の粒子が浮遊している懸濁液に関する記載である。
また、甲第16、17号証には、懸濁液に関する技術が、気泡が添加された建設排泥に転用可能である旨の記載は無く、そもそも気泡が添加された建設排泥に関する記載はない。
したがって、このような水中に粒子が浮遊している懸濁液に関する技術を、気泡が添加された建設排泥に適用することは、本件特許の出願時において当業者には成し得たことではなく、本件発明1を知った後に、本件発明1を導出するために恣意的に考え出された後知恵にすぎない。
(答弁書21頁下から6行?22頁11行)

(オ)甲第18?22号証について
気泡が添加された建設排泥においてアニオン性凝集剤によって気泡が消泡することは、本件特許出願時には知られていなかった事項であり、当該事項は甲第18?21号証にも一切記載されていない。よって、請求人の「建設排泥中に気泡が残存するようになるものの場合であっても、アニオン性有機高分子凝集剤を適用することによって、消泡(気泡の効果の低減)も当然に行われると認められる」との主張は、本件特許の出願によってはじめて判明した事項であり、いわゆる後知恵にすぎない。したがって当然のことながら、気泡が添加された排泥にアニオン性高分子凝集剤を添加混合することで、消泡することに加えて、さらに造粒物が生成することも、本件特許の出願前には知られていなかった事項である。
また、請求人は、「建設排泥の改質に、高分子凝集剤として、アニオン性有機高分子凝集剤を単独で使用することは、甲第22号証にも記載されている。」(審判請求書の第36頁第11?13行)と主張しているが、甲第22号証には、気泡と凝集剤との関係に関する記載が一切存在しない。
(答弁書23頁下から13行?4行、24頁下から4行?25頁2行)

(カ)甲第30、31号証について
甲第1号証の記載に甲第30、31号証の実験結果を組み合せ得たとしても、「気泡シールド工法で発生する建設排泥に、カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合し、造粒」するという構成を有する本件発明を得ることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
そもそも甲第30、31号証の実験結果は、本件特許出願日後に作成されたものであるから、甲第1号証に甲第30、31号証の実験結果を組み合せて本件発明の進歩性を否定することはできない。
また、甲第30号証の追加実験は、粘性低下剤のみで十分に流動性が付与されており、さらに気泡のベアリング効果により流動性を増加させる必要が全くない試料に対して、気泡を入れても、気泡の効果は検証し難いと考えられる。このように、甲第30号証の追加実験は、本件特許の実施例とかけ離れていると共に、実際の現場ともかけ離れているものと考えられる。
(答弁書25頁下から10行?2行、27頁1行?5行)

(キ)甲第23、24号証について
甲第23、24号証には、気泡に関する記載は無く、従って、気泡固有の課題に関する記載が無いため、「気泡シールド工法で発生する建設排泥を造粒及び固化し、運搬性を改善する」という作用効果も、甲23、24号証を参酌しても予見し得たことではない。
(答弁書28頁1行?5行)

(ク)甲第25?29号証について
甲第25?29号証には、気泡に関する記載は無く、従って、甲第25?29号証からは、本件発明と甲1発明との相違点、すなわち、「気泡シールド工法で発生する建設排泥に、カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合し、造粒」との構成には想到し得ない。
(答弁書28頁7行?11行)

3 無効理由2について(甲第32号証を主引例とした場合)
甲32発明において、アクリル系高分子が加泥材(作泥土材)であることは明白である。このように、甲第32号証には、添加材として、シールド工法において使用される加泥材(作泥土材)のことしか記載されておらず、シールド工法において加泥材(作泥土材)が添加された建設排泥を、異なる添加材を用いて処理する建設排泥の処理方法に関する記載は無い。
甲32発明と、本件発明1とを対比すると、甲32発明と本件発明1とは、少なくとも次の点において相違する。
(相違点)
(B1)本件発明は、気泡シールド工法で発生する建設排泥の処理方法の発明であるのに対して、甲第32号証に記載の発明は、泥土圧シールド工法自体の発明である点。
(B2)本件発明は、加泥材(作泥土材)として気泡が用いられているのに対して、甲第32号証に記載の発明は、加泥材(作泥土材)としてアクリル系有機高分子凝集剤分散液が用いられている点。
(B3)本件発明は、作泥土材(気泡)が添加された建設排泥に対して、カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合し、造粒した後、無機系固化材を添加混合して固化するのに対して、甲第32号証に記載の発明は、作泥土材(アクリル系有機高分子凝集剤分散液)が添加された掘削土に対して、他の添加材を添加していない点。
甲第32号証には、「気泡シールド工法で発生する建設排泥を造粒及び固化し、運搬性を改善する」という課題に関する記載も示唆もなく、気泡が添加された泥土に対して、如何なる薬剤が有効であるかに関する記載も示唆も一切ない。
甲第33号証、甲第1号証、甲第15?17、25?29号証にも、本件発明1における、「気泡シールド工法で発生する建設排泥に、カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合し、造粒」するという構成に関する記載及び示唆が無い。
甲第7?14号証については、上記オ(イ)と同様。甲第18?22号証については、上記オ(オ)と同様。
上記のとおり、甲第32号証には、「気泡シールド工法で発生する建設排泥」に関する開示は無く、また、甲第1?31、33号証の記載を勘案しても、「気泡シールド工法で発生する建設排泥」の処理のために添加すべき薬剤を選択するための指標が全く不明であることから、当業者は、本件発明1?3における、「気泡シールド工法で発生する建設排泥に、カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合し、造粒」するという、「当該特定の建設排泥と特定の凝集剤との組み合せ」に容易に想到することはできない。
(答弁書30頁下から9行?31頁5行、31頁16行?20行、35頁下から2行?36頁2行、36頁8行?37頁19行、43頁8行?下から3行、43頁末行?44頁15行)

第5 証拠
1 甲第1号証
(1)甲第1号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第1号証には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。以下同様。)

ア 「【請求項1】 多数の独立した撹拌羽根を回転軸に対して傾斜させて固着した撹拌機を、泥土を凝集材と共に撹拌羽根で巻き込んで剪断破砕しながら凝集材と撹拌混合し得るように複数個並設して多軸撹拌機を構成し、この多軸撹拌機の後端側及び前端側にそれぞれ泥土供給口及び泥土排出口を設け、泥土供給口の前方から泥土排出口の後方へ向けて、吸水材を多軸撹拌機内に供給するための吸水材供給手段と、凝集材を多軸撹拌機内に供給するための少なくとも一つの凝集材供給手段とを順次設けて、泥土供給口から供給された泥土を多軸撹拌機により粒状化するように処理して泥土排出口へ排出できるように構成したことを特徴とする泥土造粒処理装置。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、推進工事、シールド工事、基礎工事、浚渫工事のような建設工事等で発生する泥土を固化材と混合して固化する泥土固化処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】縦穴掘削機等による基礎工事、管推進機による推進工事、シールド工事、浚渫工事のような建設工事等で発生する泥土すなわち高含水比の軟弱な土砂は、産業廃棄物として脱水処理した後、最終処分場に埋立てて廃棄処理されている。こうした泥土の処理は、脱水処理に経費がかかる上、脱水処理した泥土も、産業廃棄物として再利用することなく廃棄しなければならないため、著しく非経済的である。また、このように泥土を処理して廃棄するにしても、最近は、産業廃棄物の最終処分地の立地難がとみに深刻化している。
【0003】こうしたことを背景にして建設工事等で発生する泥土のリサイクルの必要性が高まっている。こうした要請から、これまで利用価値のなかった泥土について、施工業者自らが泥土の発生現場で固化材を混合して改質処理を施すことにより、これを強度の高い一般建設残土と同等の土砂に改質して利用価値を創出し、改質処理現場から再利用先へと直接搬送して、路盤材、埋め戻し土、宅地造成土、土手の盛土等の種々の用途に再利用する技術の開発が進められている。
【0004】その技術の開発の一つとして、泥土を粒状化するように処理するための泥土造粒処理装置の開発が試みられている。こうした泥土の造粒処理を行うと、造粒処理により生成し粒状泥土生成物を路床材として再利用することができる。また、その場合、粒状泥土生成物の強度を高めると路盤材としても再利用することができる等、処理した泥土の付加価値を高めることができ、更にはその用途を拡大することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これまで開発された泥土造粒処理装置は、泥土をバッチ方式で処理するため、処理する泥土の量が多いと、その泥土の造粒処理に多大の時間を要し、泥土の発生現場で泥土を大量に造粒処理するには不向きであった。特に、建設工事で発生する泥土は、膨大な量に及ぶため、迅速に大量処理することが必要であるが、泥土をバッチ方式で処理する従来の泥土造粒処理装置では、こうした要求に応えることができない。
【0006】本発明は、こうした従来の技術の問題点を解消してようとするものであって、その技術課題は、泥土を大量に造粒処理するのに適した泥土固化処理装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、こうした技術課題を達成するため、多数の独立した撹拌羽根を回転軸に対して傾斜させて固着した撹拌機を、泥土を凝集材と共に撹拌羽根で巻き込んで剪断破砕しながら凝集材と撹拌混合し得るように複数個並設して多軸撹拌機を構成し、この多軸撹拌機の後端側及び前端側にそれぞれ泥土供給口及び泥土排出口を設け、泥土供給口の前方から泥土排出口の後方へ向けて、吸水材を多軸撹拌機内に供給するための吸水材供給手段と、凝集材を多軸撹拌機内に供給するための少なくとも一つの凝集材供給手段とを順次設けて、泥土供給口から供給された泥土を多軸撹拌機により粒状化するように処理して泥土排出口へ排出できるように泥土造粒処理装置を構成した。
【0008】このように構成された本発明の泥土造粒処理装置にあっては、造粒処理しようとする泥土が含水比の著しく高い泥土でない場合、多軸撹拌機を回転駆動して、泥土及び凝集材を、それぞれ泥土供給口及び凝集材供給手段を通じて多軸撹拌機内に供給する。そうすると、多軸撹拌機は、泥土を凝集材と共に撹拌羽根に巻き込んで、剪断破砕して細分化しながら泥土排出口側へ搬送する。このとき、泥土を撹拌羽根により剪断破砕して細分化することに加えて、撹拌羽根による泥土の剪断破砕及び搬送の双方の動作に伴って泥土を積極的に撹拌するため、凝集材に対する泥土の触れ合い回数を飛躍的に高めることができて、凝集材を泥土に均一に混合させることができる。そのため、泥土は、泥土排出口へ排出されるときには確実に凝集され、凝集された無数の土粒子間に自由水を満遍なく抱合して、粒状化した状態に処理され、泥土排出口へ排出される。
【0009】また、造粒処理しようとする泥土が含水比の著しく高い場合は、こうした造粒処理を行う際に吸水材を吸水材供給手段により多軸撹拌機内に供給する。そうすると、多軸撹拌機は、前記したメカニズムと同様のメカニズムにより泥土を積極的に撹拌するため、吸水材に対する泥土の触れ合い回数を飛躍的に高めることができて、凝集材と同様、吸水材を泥土に均一に混合させることができ、泥土中の自由水を吸水材で効果的に吸水することができる。そのため、凝集材で凝集させることが困難な含水比の著しく高い泥土であっても、泥土は、泥土排出口へ排出されるときには確実に凝集され、凝集された無数の土粒子間に自由水を満遍なく抱合して、粒状化した状態に処理することができる。そして、以上述べた泥土の造粒処理は、多軸撹拌機により連続的に行うことができてるため、本発明の泥土造粒処理装置によれば、泥土を大量に造粒処理することが可能になる。」

ウ 「【0017】54は多軸撹拌機70内に主たる凝集材を供給するための第1の凝集材供給手段、54aは主たる凝集材を投入するための第1の凝集材投入ホッパ、55はこの凝集材投入ホッパ54aと第1の凝集材導入口56との間に設けられ第1の凝集材投入ホッパ54a内の主たる凝集材を多軸撹拌機70へ定量供給する働きをする第1の凝集材切り出し装置、56は第1の凝集材投入ホッパ54a内の主たる凝集材を多軸撹拌機70へ導入するための第1の凝集材導入口、57は多軸撹拌機70内に補助の凝集材を供給するための第2の凝集材供給手段、57aは補助の凝集材を投入するための第2の凝集材投入ホッパ、58はこの凝集材投入ホッパ57aと第2の凝集材導入口59との間に設けられ第2の凝集材投入ホッパ57a内の補助の凝集材を多軸撹拌機70へ定量供給する働きをする第2の凝集材切り出し装置、59は第2の凝集材投入ホッパ57a内の補助の凝集材を多軸撹拌機70へ導入するための第2の凝集材導入口である。なお、図1には、主たる凝集材を符号B、補助の凝集材Cで示している。
【0018】第1の凝集材供給手段54は、第1の凝集材投入ホッパ54aと第1の凝集材切り出し装置55とで構成され、第2の凝集材供給手段57は、第2の凝集材投入ホッパ57aと第2の凝集材切り出し装置58とで構成される。ここに示す例では、凝集材投入ホッパ54a,57aに固体状の凝集材B,Cを投入し、凝集材切り出し装置55,58を通じて多軸撹拌機70内に凝集材を供給するようにしているが、凝集材B,Cについては、水に混合した溶液状のものを多軸撹拌機70内に定量供給するようにしてもよく、多軸撹拌機70への凝集材の供給手段は適宜選択することができる。凝集材切り出し装置55,58は、切り出し羽根55a,58aやケーシング及びロータを備えていて吸水材切り出し装置52と同様の構造を有し、吸水材切り出し装置52と同様の動作をする。これらの凝集材切り出し装置55,58は、使用する凝集材の種類及び泥土の含水比や土質等に応じて適切な量の凝集材を定量供給し、これにより、泥土に対する凝集材の混合比率を常に適切な値に保持できるようにするものである。
【0019】凝集材供給手段54,57で多軸撹拌機70内に供給される凝集材B,Cは、処理対象となる泥土を凝集して泥土を造粒処理、すなわち粒状化するように処理する働きをする。主たる凝集材Bは、泥土を凝集する際に不可欠のものとして常に使用する。補助の凝集材Cは、この主たる凝集材Bを補完する働きをし、必要に応じて使用する。泥土造粒処理装置の本質的な機能である泥土の造粒処理は、専らこれらの凝集材B,Cにより実現することができる。泥土の含水比が約150%以下と著しくは高くない場合、主たる凝集材Bを、必要に応じて補助の凝集材Cと共に泥土に添加して撹拌混合すると、泥土を凝集して団粒化させることができる。その場合、主たる凝集材Bでも、泥土への添加量は、0.1?0.2%前後とごく微量で足りる。なお、凝集材については、後に詳述する。
【0020】60は多軸撹拌機70内に固化材を供給するための固化材供給手段、60aは固化材を投入するための固化材投入ホッパ、61は固化材投入ホッパ60aと固化材導入口62との間に設けられ固化材投入ホッパ60a内の固化材を多軸撹拌機70へ定量供給する固化材切り出し装置、62は固化材投入ホッパ60a内の固化材を多軸撹拌機70へ導入する働きをする固化材導入口である。なお、図1には、固化材を符号SDで示している。
【0021】固化材供給手段60は、固化材投入ホッパ60aと固化材切り出し装置61とで構成される。固化材切り出し装置61は、切り出し羽根61aやケーシング及びロータを備えていて吸水材切り出し装置52と同様の構造を有し、吸水材切り出し装置52と同様の動作をする。この固化材供給手段60は、要求される粒状泥土生成物の品質に応じて適切な量の固化剤を定量供給して、泥土に対する固化材の混合比率を適切な値に保持できるようにする。多軸撹拌機70内に供給される固化材は、粒状泥土生成物の強度を高めるように泥土を改質する働きをし、例えば、セメント系や石灰系の固化材がこうした働きをする。」

エ 「【0024】ここで、多軸撹拌機70に供給する凝集材について言及する。凝集材は、泥土中の土粒子を集合させることを容易に行えるようにするのに役立つ薬剤である。この凝集材は、無機系凝集材と有機高分子凝集材とに大別することができる。このうち無機系凝集材の代表的なものとしては、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化第二鉄(PFC)、ポリ塩化アルミニウム(PAC)等の鉄又はアルミニウム化合物を挙げることができる。この無機系凝集材は、主として、凝集助剤や凝結助剤として有機高分子凝集材と併用する。
【0025】有機高分子凝集材としては、主として合成高分子凝集材を使用し、この合成高分子凝集材は、ノニオン性、アニオン性、カチオン性のものに分けることができる。このうちノニオン性のものは、分子内に解離基をほとんどもたない水溶性の高分子であり、アミド基、水酸基、エーテル基等を親水基としてもつ。アニオン性のものは、水中で負の電荷をもつ水溶性の高分子であり、解離基としてカルボキシル基やスルホン基等をもつ。カチオン性のものは、分子内にアミノ基をもち、そのアミノ基の解離によって水中で正の電荷を高分子に与える。ノニオン性及びアニオン性の合成高分子凝集材は、通常、高分子量のものほど凝集力が大きい。ノニオン性及びアニオン性の合成高分子凝集材の代表的なものとしては、ポリアクリルアミド及びその加水分解物を挙げることができる。カチオン性の合成高分子凝集材の代表的なものとしては、ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0026】凝集材は、泥土に適切に混合すると、泥土中の土粒子を集合させて、土粒子間の自由水を、集合した土粒子間に包み込むように抱合する。そのため、泥土の含水比が著しく高くない限り、土粒子は、表面側が湿り気の少ない見掛け上乾燥した状態になって集合して、粘り気のない状態の泥土の粒状体が生成される。
【0027】一般に、土粒子は、その外側を包囲する固定層と、更に外側を包囲して水素イオン濃度の高い拡散層(対イオン部)とからなる電気二重層をもつ。こうした電気二重層をもつた二つの土粒子が接近して双方の拡散層同士が重なると、重なり合った拡散層のイオン濃度が上昇し、これに起因して、土粒子が互いに反発し合って土粒子の集合を阻害する。そのため、多数の各土粒子は、分散して泥土状をなす。端的にいえば、泥土は、多数の微細土粒子とその土粒子間の自由水からなるが、一般に土粒子の表面は、マイナス帯電しているため、各土粒子は、互いに反発し合って安定した分散状態を保ち、その結果、固まらずにドロドロした泥土の状態を保っている。したがって、泥土中の土粒子の集合を容易に行えるようにするには、その集合の阻害要因となっている電気二重層の総電荷の抑制や電気二重層の圧縮(電気二重層を薄くすること)を行えばよく、こうした電気二重層の総電荷の抑制や圧縮によって泥土を凝集させることができる。
【0028】このうち電気二重層の総電荷の抑制を行うには、その総電荷の量をできるだけ減らすように電荷を中和するのが有効であるが、こうした働きをする凝集材は、アニオン性、カチオン性の合成高分子凝集材や無機系凝集材の中から選択することができる。また、電気二重層の圧縮に役立つ凝集材は、無機系凝集材の中から選択することができる。さらに、凝集機構には、以上の凝集機構とは原理の異なる架橋凝縮がある。この架橋凝縮は、高分子の官能基による土粒子への吸着架橋(イオン結合、水素結合)により土粒子を集合させるものであり、電気二重層の総電荷の抑制や圧縮による凝集を遥かに凌ぐ凝集力を発揮する。この架橋凝縮を行わせるための凝集材は、ノニオン性、アニオン性、カチオン性の凝集材の中から適当なものを選択する。
【0029】以上述べた凝集材は、主たる凝集材、補助の凝集材の何れに使用するかの凝集材の使用目的、更には、泥土が有機質か無機質かの泥土の種類、泥土が粘度、シルト、コロイド等の何れに該当するかの泥土の土粒子径、泥土の含水比等の泥土の性状に応じて適宜選択して使用する。例えば、通常の泥土は、アニオン性又はノニオン性の凝集材で凝集することが可能であるが、建設工事で発生する泥土の中には、工事中にベントナイトが添加されたものもあり、こうした泥土は、アニオン性又はノニオン性の凝集材だけでは、凝集させることができないので、主たる凝集材Bとしてアニオン性又はノニオン性のものを使用するほか、補助の凝集材Cとしてカチオン性のものを添加することにより、泥土を凝集させる。また、高分子凝集材の性能は、PHへの依存性が大きいので、泥土が酸性の場合はカチオン性やノニオン性のものを、アルカリ性の場合はアニオン性やノニオン性のものを、中性の場合はノニオン性ものを使用することも考える。
【0030】次に、こうした凝集材や吸水材、固化材を泥土に添加して撹拌混合する多軸撹拌機70の技術内容について説明する。
【0031】70は撹拌機71を、泥土と凝集材を撹拌羽根71bで巻き込んで剪断破砕しながら撹拌混合し得るようにケーシング70a内に複数個並列させて構成した多軸撹拌機、70aは基台としてのフレーム80に固定され撹拌機71を収容するケーシング、70bは多軸撹拌機の後端側に設けられ造粒処理用の泥土を供給する泥土供給口、70cは多軸撹拌機の前端側に設けられ多軸撹拌機70で造粒処理した泥土を排出する泥土排出口である。
【0032】多軸撹拌機70は、パドル混合機とも称し、後述する撹拌機71を複数個併設することにより泥土を吸水材や凝集材や固化材と共に撹拌羽根で巻き込んで剪断破砕しながら凝集材と撹拌混合し得るように構成されている。なお、図1において、撹拌機71は、紙面直角方向に複数個併設しているため、図には一つしか明示されていない。多軸撹拌機70には、図1に示すように泥土供給口70bの前方から泥土排出口70cの後方へ向けて、吸水材供給手段51、第1の凝集材供給手段54、第2の凝集材供給手段57及び固化材供給手段60を順次設けてケーシング70aの内部と連通させ、泥土供給口70bから供給された泥土を造粒処理して泥土排出口70cへ排出する。」

オ 「【0047】泥土定量供給機102で定量供給される泥土投入ホッパ101内の泥土は、多軸撹拌機70による泥土造粒処理装置により造粒処理されるが、その造粒処理を行うときの作用について説明する。
【0048】その作用の説明を行うに当たっては、造粒処理しようとする泥土の含水比がそれほど高くなく吸水材を供給しない場合とそうでない場合とに分けて説明し、その何れの場合にも、説明の便のため、固化材供給手段60から固化材を供給しない場合を、まず想定して説明する。また、主たる凝集材を第1の凝集材供給手段54から単独で供給する場合と、主たる凝集材及び補助の凝集材を第1の凝集材供給手段54及び第2の凝集材供給手段57から供給する場合とを区別して説明する意味はないので、単に凝集材を供給するものとして説明する。
【0049】まず、造粒処理しようとする泥土が含水比の著しく高い泥土でない場合は、多軸撹拌機70を回転駆動しながら泥土を泥土供給口70bから多軸撹拌機70内に供給するとともに凝集材を多軸撹拌機70内に供給し、吸水材切り出し装置52は停止させておく。そうすると、多軸撹拌機70は、泥土を凝集材と共に撹拌羽根70bに巻き込んで、剪断破砕して細分化しながら泥土排出口70c側へ搬送する。このとき、泥土を撹拌羽根70bにより剪断破砕して細分化することに加えて、撹拌羽根70bによる泥土の剪断破砕及び搬送の双方の動作に伴って泥土を積極的に撹拌するため、凝集材に対する泥土の触れ合い回数を飛躍的に高めることができて、凝集材を泥土に均一に混合させることができる。そのため、泥土は、泥土排出口70cへ排出されるときには確実に凝集され、凝集された無数の土粒子間に自由水を満遍なく抱合して、粒状化した状態に処理され、粒状泥土生成物が泥土排出口70cへ排出される。
【0050】また、造粒処理しようとする泥土が含水比の著しく高い泥水状である場合は、こうした造粒処理を行う際に吸水材を吸水材供給手段51により多軸撹拌機70内に供給する。そうすると、多軸撹拌機70は、前記したメカニズムと同様のメカニズムにより泥土を積極的に撹拌するため、吸水材に対する泥土の触れ合い回数を飛躍的に高めることができて、凝集材と同様、吸水材を泥土に均一に混合させることができ、泥土中の自由水を吸水材で効果的に吸水することができる。そのため、凝集材で凝集させることが困難な含水比の著しく高い泥土であっても、泥土は、泥土排出口へ排出されるときには確実に凝集され、凝集された無数の土粒子間に自由水を満遍なく抱合して、粒状化した状態に処理することができる。そして、以上述べた泥土の造粒処理は、多軸撹拌機70により連続的に行うことができてるため、本発明の泥土造粒処理装置によれば、泥土を大量に造粒処理することが可能になる。
【0051】以上、固化材を多軸撹拌機70に供給しないものとして説明したが、粒状泥土生成物の強度を高める必要がある場合には、以上のような造粒処理を行う際に、固化材切り出し装置61を駆動して固化材供給手段60から固化材を供給する。そうすると、多軸撹拌機70は、凝集材を泥土に混合するときのメカニズムと同様のメカニズムにより泥土を積極的に撹拌するため、吸水材に対する泥土の触れ合い回数を飛躍的に高めることができて、凝集材と同様、固化材を泥土に均一に混合させることができる。その結果、多軸撹拌機70のケーシング70a内の閉ざされた保温空間内で泥土中の自由水の一部を効果的に利用しながら固化材中の生石灰成分の消化吸収反応を進行させて、凝集材で粒状化させた泥土を固化することができ、これにより粒状泥土生成物の強度を高めることができる。」

カ 「【0064】図9及び図10において、1は粒状泥土生成物をセメント系や石灰系の固化材と混合して浸水しても再泥土化しないように改質する泥土改質処理装置、1aは回転ドラム10の後端側の開口を遮蔽するための後部固定板、1bは回転ドラム10の前端側の開口を遮蔽するための前部固定板、4は回転ドラム10を回転自在に支持するためのローラ、5はこのローラ4を軸着して基台6に回転自在に取付けるためのブラケット、6は泥土改質処理装置1を設置するための基台、9は改質した粒状泥土生成物を回転ドラム10の前端側から外部に搬出するための、土砂排出口9cを有する改質泥土搬出用スクリュコンベア、9bはこのスクリュコンベア9を回転駆動するための回転駆動装置である。」

キ 上記ア、イから、シールド工事で発生する泥土を固化する泥土固化処理装置に関するものであるから、実質的に、シールド工事で発生する泥土の処理方法について記載されているといえる。

ク 上記オから、固化材を供給することにより、凝集材で粒状化させた泥土を固化することが記載されているといえる。

(2)甲第1号証に記載された発明の認定
甲第1号証には、上記(1)で記載した事項を踏まえると、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「シールド工事で発生する泥土を凝集材と撹拌混合し泥土を粒状化するように処理し、
セメント系や石灰系の固化材を供給することにより、凝集材で粒状化させた泥土を固化し、
凝集材は、主たる凝集材、補助の凝集材の何れに使用するかの凝集材の使用目的、更には、泥土が有機質か無機質かの泥土の種類、泥土が粘度、シルト、コロイド等の何れに該当するかの泥土の土粒子径、泥土の含水比等の泥土の性状に応じて適宜選択して使用し、例えば、通常の泥土は、アニオン性又はノニオン性の凝集材で凝集することが可能であるが、建設工事で発生する泥土の中には、工事中にベントナイトが添加されたものもあり、こうした泥土は、アニオン性又はノニオン性の凝集材だけでは、凝集させることができないので、主たる凝集材としてアニオン性又はノニオン性のものを使用するほか、補助の凝集材としてカチオン性のものを添加することにより、泥土を凝集させ、また、高分子凝集材の性能は、PHへの依存性が大きいので、泥土が酸性の場合はカチオン性やノニオン性のものを、アルカリ性の場合はアニオン性やノニオン性のものを、中性の場合はノニオン性ものを使用することも考える、
シールド工事で発生する泥土の処理方法」

2 甲第2号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第2号証には、次の事項が記載されている。
ア 「1974年に土圧式シールドがわが国独自の発想により開発されたのに続き、・・・1976年に泥土加圧シールド,1981年に気泡シールドがそれぞれ開発され実用化されている.」(第7頁右欄8?12行)

イ 「この調査結果によれば,図1-3に示すによう1980年から1985年の6年間に密閉式シールドが80年の60%から86%に激増し,とくに土圧式シールドが19%から60%へと著しく増加している.これとは逆に,開放型の手掘式シールドは12%からわずか1%に激減している.」(第9頁左欄下から2行?同右欄3行)

ウ 「1-2-4 添加材注入装置(土圧式)
土圧式シールドで砂質土や砂礫などを掘削する場合,土の摩擦抵抗が大きく流動性が悪くなり,切羽の安定や土砂の取込みが損なわれることがある.このような地盤にはベントナイト・気泡材・高吸水性樹脂など流動性を高める添加材が注入装置によりチャンバー内に送られる.」(35頁右欄10?15行)

エ 「2-2-7 土圧式シールド・・・この土圧式シールドは,土圧シールドと泥土圧シールドに分類される.・・・(2)泥土圧シールド 泥土圧シールドは,掘削土砂の塑性流動化を促進するため添加材を注入する機構と・・・添加材にはベントナイト,CMC,粘土,高吸水樹脂,気泡材などがあり,地山の条件により添加材を選んで使用する.」(45頁右欄1行?46頁左欄24行)

オ 「泥土圧シールドは,・・・最近ではもっとも多く採用されている.このシールドは,掘削土を全体撹拌する泥土加圧シールドと部分撹拌の泥漿シールドにわけられる.」(46頁左欄28行?右欄2行)

カ 「1)泥土加圧シールド・・・掘削土砂にベントナイト,CMC,粘土や気泡材などの添加材を注入して強力に練り混ぜることで・・・」(46頁右欄第3?8行)

キ 「2)泥漿シールド・・・掘削した土砂にベントナイト,CMC,粘土や気泡材などの泥漿材を注入し,チャンバー内で撹拌し掘削土を泥土化する.」(46頁右欄15行?47頁左欄3行)

ク 「2-4 おわりに・・・今日,「切羽安定」と「シールド掘削」の技術は完成の域に達した感があり,シールドと言えば密閉型である泥水式,土圧式を示すまでになっている.土圧式のなかでも,泥土圧シールドは・・・理由により年々増加の傾向にある.」(52頁右欄18行?27行)

ケ 「3-5 添加材
泥土圧シールドに使用される添加材の代表的なものを以下に示す.
3-5-1 作泥土材 ・・・
3-5-2 気泡 ・・・最近は,気泡剤と作泥土材を併用する例もある.
3-5-3 水 ・・・防止する.」(227頁左欄10行?下から3行)

3 甲第3号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第3号証には、次の事項が記載されている。
ア 「(3) 密閉型シールド・・・現在,シールド工事の大部分で,この密閉型シールドが使われている。」(94頁12行?95頁4行目)

イ 「a)土圧式シールド・・・このため,掘削中,カッター前面,あるいは隔壁などに設けた注入口より粘性土を薄めた添加材(泥土,気泡等)を注入し,カッターの背面に設けた羽根等で土と撹拌混合することにより、土に流動性と止水性をもたせる方法(泥土圧シールド)も数多く用いられている。」(96頁7行?97頁19行)


ウ 「8.3.2 高水圧地盤を掘る
(1)高水圧の中を掘るトンネル 近年,都市部の地下空間の有効利用に伴って大深度トンネルの施工が要求されるようになり,都市部のシールドトンネルは深いものでGL-50mを超えるようになっている。高水圧下のシールドトンネルとしては,導水路トンネルの例があり,その切羽水圧は局所的ではあるが最大で11kgf/cm^(2)であった。このトンネルの施工には土圧式(泥土圧)シールド工法が採用された。」(214頁下から5行?215頁3行)

4 甲第4号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第4号証には、次の事項が記載されている。
ア 「現在、我が国のシールド工法の内、約70%が土圧式シールドを採用している。今後、土圧式シールド工法が現在の中小口径から大口径においても適用されるケースは増加するものと考えられる。」(267頁2行?3行)

イ 「2.概要
2・1工事概要
工法:泥土圧シールド工法
・・・
2・2地質概要
当該地域の地質は図-1に示すとおりで、トンネルの通過する地層は主に、武蔵野礫層、東京礫層で、一部、切羽下端に江戸川層の洪積粘性土が出現する。武蔵野礫層、東京礫層ともに、粒度構成は礫分は60?70%で、0.075mm以下の細粒分は2?9%と少なく、・・・透水係数は10^(-2)cm/secオーダーと透水性が高く、・・・」(267頁10行?268頁9行)

ウ 「そこで、本工事では加泥材と気泡を併用することで両方の長所をいかし、より確実な切羽の安定を図ることとした。」(269頁19行?20行)

5 甲第5号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第5号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「・工事内容 ・・・ シールド機械:泥土圧シールド機」(80頁右欄第2?5行)

イ 「3.地質概要 当工区は,大阪平野を南北に分断する上町台地の北方に張出した台地状の部分に位置し,天満砂堆と呼ばれる水量豊富な地層を有する.・・・透水係数は、10^(-2)?10^(-3)cm/secと透水性が良く,一部流速の速い砂礫層が存在し,最大水圧は2.5kg/cm^(2)である.」(80頁右欄下から2行?81頁左欄22行)

ウ 「5.気泡シールド工法 1)気泡シールドの選定理由 ・・・ 地下水が豊富な滞水砂礫地質という条件を考慮すると,適合可能な工法は密閉式シールドが前提となり,[1]泥土圧シールド工法,[2]泥水式シールド工法に集約される.・・・しかし,泥土圧シールド工法も,土質条件に応じて必要とする気泡材,助材等を使用することにより,近接構造物下での良好な施工実績を上げてきていると言える.・・・しかし,φ8.0mクラスの作業基地ヤード面積は泥水式シールド工法で2,500?3,000m^(2),泥土圧シールド工法で1,500?2,000m^(2)が必要であり,泥水式シールド工法を採用するのは事実上不可能であると判断し,小規模の設備で対応可能な気泡シールド工法を採用した.」(83頁左欄17行?右欄12行)

エ 「また,土質の粒度分布を見ると,砂礫層は透水性が高く,切羽保持を行うためには加泥材を添加する必要がある.同様に,洪積粘土についても溶解性が低いので,バインダー分としての機能は期待できない.従って,全線において助材と気泡の併用注入で対応し,土層構成によりその注入比率,注入量、濃度、種別等を変化させた(図-11).」(85頁右欄16行?末行)

6 甲第6号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第6号証には、次の事項が記載されている。

[気泡シールド工法の位置付け]の樹形図から、土圧式シールド工法の下位に泥土圧シールド工法があり、泥土圧シールド工法の下位に気泡シールド工法があることが看て取れる。

7 甲第7号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第7号証には、次の事項が記載されている。

「【0002】
【従来の技術】土圧式シールド掘進機は、削土に一定の圧力を与え、切羽の安定を図りながら掘進する装置で、地山を掘削する掘削機構と、削土を攪拌する混練機構と、削土に一定の拘束力を与える制御機構等を具備しており、土の内部摩擦角が大きくて流動性が悪く、かつ透水性の高い砂層や礫層を主なる施工対象としている。この種のシールド掘進機にあっては、カッタヘッドに放射線状に配置した複数のカッタウィングを装備すると共に、各カッタウィングに沿った混練翼を具備している。砂礫地盤を施工する場合は切羽の安定状態を維持する必要がある。そのため、切羽の土砂に添加剤(ベントナイト、作泥工剤、気泡等)を加えて、カッタヘッドの回転に伴い回転する混練翼によって切羽の土砂を混練して流動性と不透水性を付与した泥土を作成し、この泥土をカッタヘッド内に形成された泥土室内と排土用のスクリューコンベアに充填し、シールドの推進力やスクリューコンベアの絞り効果等によって、泥土室内の一定の泥土圧を発生させ、この泥土室内の泥土圧を切羽に作用させて切羽の判定を図っている。」

8 甲第8号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第8号証には、次の事項が記載されている。
ア 「地下水の豊富な地層におけるシールド掘進工事においては、水の流出に起因して切羽の崩壊が起こりやすい等の問題があるため、泥漿を注入しつつ切羽を掘削する泥漿シールド掘進方法が使用されている。ここで泥漿とはベントナイト、粘土を主成分とする添加材のことで、砂を主成分としては含まないものである。一般的にベントナイト及び粘土を主成分とする泥漿、又は粘土を主成分とする泥漿が使われている。」(2欄4行?12行)

イ 「また、他の工法として前記泥漿の代わりに切羽にシェービングクリーム状の気泡を注入しながら掘削を行う気泡シールド掘進方法がある。この気泡シールド掘進方法は粘性土地盤に対しては掘削ずりの付着防止を図れ、また砂質土から砂礫地盤に対しては流動性を改善できため、広く利用されている。」(3欄4行?10行)

ウ 「ところが、泥漿シールド掘進方法の地下水の豊富な玉石等を含む地盤の掘削に適用した場合には、該地盤は玉石を含むための地盤の間隙が大きくなると共に、含まれる砂分の割合が低いため、前記泥漿を注入するだけでは、混合掘削ずりは成分組成的に生コン状態になり得る条件を満たせず、従つて生コン状に改良されにくかつた。そのため、混合掘削ずりにより切羽面に対する対坑土圧を発生させて切羽土圧及び地下水圧を抑圧しながら切羽掘削を継続することができないという問題があつた。」(3欄12行?22行)

エ 「また、気泡シールド掘進方法を地下水の豊富な玉石等を含む地盤の掘削に適用した場合には、該地盤は玉石を含むことによつて地盤の間隙が大きくなるため、気泡だけでは掘削ずりの流動性の改善が難しく生コン状態にすることができなかつた。更に玉石等の大きな土粒子間に多量に含まれる地下水の存在により、注入された気泡は切羽の土粒子間隙に浸透しきれずに流されてしまい、気泡を切羽に実質的に注入できず、シールド掘進機のカツター部が切羽面から受ける負荷を低減することができず、掘進が中断停止するという問題があつた。すなわち、このような地盤は気泡シールド掘進方法では安定した掘進を維持することができなかつた。」(第3欄38行?4欄7行)

オ 「本発明は、地下水の豊富な玉石を含む地層を掘削対象地盤とし、そこに注入される泥漿には気泡が所定量混入されており、更に前記排出手段はリボンスクリューであることを特徴とするものである。」(第4欄第18行?22行)

9 甲第9号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第9号証には、図面とともに次の事項が記載されている。

15頁の表1の「複合系」の「特徴」の欄には「主に、地下水が豊富な滞水砂礫地盤を対象にして「加泥材と気泡」「加泥材と高分子」「気泡と高分子」等の組み合わせで希釈を防止し、細粒分や砂分相当の粒径を付与して掘削土砂の土性改良を行う。」と記載されている。

10 甲第10号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第10号証には、次の事項が記載されている。

泥土圧シールドの添加材として、加泥材と気泡のそれぞれの特徴を生かして併用注入することが記載されている。(25頁左欄7行?26頁左欄7行)

11 甲第11号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、甲第11号証には、次の事項が記載されている。

「砂地盤等の土砂粒形の均一な土層においては非常に有効な工法も、バインダー分が非常に少ない礫地盤においては加泥材との併用工法が薦められているため、噴発のおそれのある地盤では気泡単独の採用には問題がある。」(4頁11行?13行)

12 甲第12号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第12号証には、次の事項が記載されている。

「・・・ずり室内において気泡と混合したずりに流動性および止水性を付与していた(特公昭58-47560号)。
ところで、地盤から削り取られたずりは地下水を含んでおり、この地下水を含むずりの含水比と地盤のそれとはほぼ同じ値をとるが、地下水位が高く、含水比の大きい地盤の場合には、ずり室内に多量の地下水が取り込まれることとなり、この多量の地下水のためにずりの止水性が不十分となる。また、ずりと混合される気泡の一部が地下水によって消泡されるため、これを補うべく多量の気泡を供給すると、さらにずりの流動性が促進されることになる。さらに、排土された含水比の高いずりは、運搬のためにその含水比を低下させなければならない。」(2頁左上欄5行?19行)

13 甲第13号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第13号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【請求項1】 シールド式トンネル工法において、掘削土砂をシールド機の隔壁後方へ排出する途中において、掘削土砂に水溶性高分子物質を添加混合して流動性の掘削土砂を非流動化せしめることを特徴とするシールド掘削方法。」

イ 「【0006】すなわち、本発明の工法は、シールド式トンネル工法、特に、泥土圧シールド工法において、掘削土砂をシールド機の隔壁後方へ排出する途中において、掘削土砂に、水溶性高分子物質を添加混合して流動性の掘削土砂を急速に非流動化せしめることを特徴とするシールド掘削方法である。
【0007】本発明において使用する水溶性高分子物質としては、天然多糖類、変性多糖類および合成水溶性ポリマーなどが挙げられる。天然多糖類の例には、各種澱粉、アルギン酸塩、ペクチン、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、タマリンド、サイリュームガム、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ガッティーガム、カラギーナン、キサンタンガム、デキストリン、セルロース、またはプルランなどが包含される。
・・・
【0009】合成水溶性ポリマーの例には、ポリビニルアルコール(部分ケン化物が好ましい)、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドンまたはスルホン化スチレンなど親水基を導入したオレフィン系ポリマーなどが包含される。
・・・
【0011】本発明の方法では、通常のシールド式トンネル工法、特に、泥土圧シールド工法において、掘削土砂をシールド機の隔壁後方へ排出する途中において、例えば、土砂を後方へ搬出するスクリューコンベア内の掘削土砂に、かかる水溶性高分子物質を、そのまま、あるいはその適宜の濃度の水溶液として、または水もしくは有機溶剤、例えば、アセトン、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、低級アルコール、高級アルコール、エステル類、高級脂肪酸、炭化水素、油脂中の適宜の濃度の懸濁液として添加、混合する。水溶液または懸濁液中の水溶性高分子物質の濃度は特に限定するものではなく、適宜に選択できる。」

ウ 「【0016】
【作用】本発明によれば、シールド式トンネル工法、なかでも、泥土圧シールド工法において、掘削土砂をシールド機の隔壁後方へ掘削土砂を排出する途中において、前記の水溶性高分子を添加すると、急速に水溶性高分子の溶解が起こり、これによって土砂粒子の凝集化が生じ、それまで流動性を呈していた掘削土砂は急速に非流動化し、見掛け上固形化物となる。このような固形状土砂となれば、スクリューコンベアの排出口近くでは、いわゆる止水栓個処が形成されるので、地山が高水圧の砂礫地盤掘削時にしばしば遭遇するスクリューコンベア排出口からの土砂の噴発を防止することができ、したがって、安全円滑に掘削することが可能になる。
【0017】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、これに限定されるものではない。まず、添付の図1に示すシステム図を用い、本発明の掘削方法の一具体例を説明する。図1中、19はシールド発進竪坑であり、3はシールド機本体、5はそのロータリーカッタであり、20はカッタ前面の切羽である。掘削に使用される掘進用添加材は、地上の掘進用添加材調製プラント1およびミキサー1bで、水、粘土鉱物および必要に応じて増粘安定剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)をもって作製した泥漿に掘削助剤を添加混合して調製される。
【0018】ついで、ポンプ2で輸送管9を通して、ロータリーカッタ5のスリット開口部10から、シールド機3の前面の切羽20に該添加材を送り出す。掘進用添加材は、切羽20の土圧がシールド機前面に作用するのに対抗して切羽の崩壊を防ぎながら掘削を進めるに当たって必要なものであり、さらにロータリーカッタ5によって掘削された土砂は、掘削添加材と共にロータリーカッター5の背面のミキシングチャンバー4内に取り込まれる。ミキシングチャンバー4は隔壁18によって、シールド機3における隔壁18の後方の作業室と隔離されており、ミキシングチャンバー4内において、加圧されたままの状態で、掘削土砂と掘進添加材が混合され、土砂は流動性を与えられて、スクリューコンベア6の前半部7の入り口からスクリューコンベア6内に取り込まれる。スクリューコンベア6によって掘削土砂がミキシングチャンバー4内から隔壁18の後方へ搬出されるためには、流動性のある土砂であることが必要な性質として要求される。このような流動性を土砂に付与するために掘進用添加材が必要であり、特に砂礫地盤を掘削する場合には掘進用添加材が掘削性に果たす役割は極めて大きい。スクリューコンベア6への取り込みが容易なためにも、土砂は流動性が必要である。
【0019】ついで、スクリューコンベア6に取り込まれた土砂には、その前半部7の適当な部分において、本発明の水溶性高分子物質の貯留タンク12から添加ポンプ13を通して、スクリューコンベア6の入り口14へ水溶性高分子物質を投入混合する。添加混合された水溶性高分子物質は、スクリューコンベア6内のスクリューにより土砂と混合撹拌されながら、次第に後半部11へ送り出されていく。この間に水溶性高分子物質の膨潤が急速に起こって、極めて短時間で土砂は非流動性となる。」

エ 「【0027】
【発明の効果】本発明の方法に従い、水溶性高分子物質を掘削土砂に混合すると、掘削土砂を凝集、脱水、非流動化させる。そうすると、そのスクリューコンベア後部に充填された掘削土砂が、地山の土圧に対する止水プラグ機能を果たし、シールド切羽周辺の地山の乱れの低減、地表面沈下の低減という効果を奏する。また、排土はダンプカーでそのまま搬出できるよう凝集、脱水されているので、掘削土砂の改良設備、その用地及び改良剤を必要としない。そのため狭い工事用地で経済的な施工が可能となる。」

14 甲第14号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第14号証には、次の事項が記載されている。

ア 「2.特許請求の範囲
シールド本体1の前部に設けられたチャンバ1aと切羽の間に掘削添加剤(粘土+ベントナイトのスラリー)を注入してカッタヘッド3により掘進すると共に、チャンバ1a内で掘削添加剤と土砂をよく攪拌し流土性をもつ泥土の状態で排土用スクリュウコンバヤ6により排出するようにした泥土圧式シールド掘進機において、上記排土用スクリュウコンベヤ6をチャンバ1a内より土砂を搬出する主スクリュウコンベヤ7と該主スクリュウコンベヤ7に着脱自在な副スクリュウコンベヤ8より構成し、かつ上記副スクリュウコンベヤ8に土質改良剤注入管10より土質改良剤を注入して搬送中の土砂の土質改良を行うと共に、上記副スクリュウコンベヤ8の後端側に、高水圧に耐える止水プラグ13を形成する圧密部11及びプラグ形成ゾーン12を設けてなる高水圧対応型の泥土圧式シールド掘進機。」(1頁左欄4行?右欄1行)

イ 「次に作用を説明すると、シールド本体1の推進に伴いカッタヘッド3が掘削した土砂は、切羽に向けて注入された掘削添加剤とともにチャンバ1a内へ取込まれた後、主スクリュウコンベヤ7のスクリュウ7bによりケーシング7a内へ取込まれる。
ケーシング7a内へ取込まれた土砂はスクリュウ7bによりケーシング7aの後端側へ送られて排土口7eより副スクリュウコンベヤ8のケーシング8a内へ取込まれる。
副スクリュウコンベヤ8のケーシング8a内に取込まれた土砂には、土質改良剤注入管10より土質改良剤が注入され、リボンスクリュウ8bによりケーシング8a内を搬送されている間に土砂と土質改良剤が均一に混合されて土質の改良が行われる。」(3頁右上欄20行?左下欄15行)

15 甲第15号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、甲第15号証には、次の事項が記載されている。

表-1には、掘削土の自然含水比が32?37%、締固め特性としての最適含水比が18.5?20%であることが記載されている。また、気泡シールドでの掘削後、土捨場に1日放置後の含水比は30%であることが記載されている(101頁左欄下から2行?右欄3行)。

16 甲第18号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第18号証には、次の事項が記載されている。

「そして搬出された掘削ずり中の気泡は時間の経過とともに、徐々に消泡され、もとの気泡をおびない掘削ずりに戻る。」(4欄41行?43行)

17 甲第19号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第19号証には、次の事項が記載されている。

「【0010】
【作用】本発明の土圧シールド掘進工法では、土圧室内の掘削ずりにメチルセルロース等の水溶性高分子を気泡状にしたものを注入混合する。水溶性高分子は、水に溶解して粘稠性を呈し、この液体は土中の金属イオンに比較的強いため分解しにくく、また、ミキサ攪拌で容易に泡立つ程の発泡機能がある。そして、界面活性材等の起泡剤を使用した場合に比して、できる泡の発泡倍率は低いが、粘着性や比重が大きいため、特に、滞水砂礫地盤での損失を少なくする。さらに、圧密された粘性土により吸水されて消泡が発生したとしても、粘稠性は残るため、掘削土砂の止水性や流動性を保持することができる。また、ノニオン系の材料を用いれば塩基性容量の大きな洪積粘性土においても化学的に安定した添加材を形成する。」

18 甲第20号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第20号証には、次の事項が記載されている。

「[1] 気泡が土粒子の吸水作用によって消泡してしまう状態(図2-(a))」(1523頁17行)

19 甲第21号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第21号証には、次の事項が記載されている。

「気泡と混合する土砂の含水比が適切であると懸濁状態を保つ安定した気泡安定液となるが,土砂が乾燥状態にあると土粒子の吸水作用によって気泡の水が吸収され消泡が生じる.」(507頁左欄下から22行?19行)

20 甲第22号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第22号証には、次の事項が記載されている。

ア 「特許請求の範囲
(1)スランプ値が5cm以上である含水掘削残土1m^(3)に対し、ポリマー純分量が0.1?5kg量のアニオン性アクリル系凝集剤分散液を添加混練した後、生石灰、消石灰及びまたはセメントを1?100kg添加混練する事を特徴とする含水掘削残土の処理方法。」(1頁左欄5行?11行)

イ 「含水残土の流動性を除去する為、残土ホッパー内自然放置や天日乾燥等が行われている。
薬剤を添加する例としてはセメント系(特公昭62-4200、特公昭60-87813)、石灰系(特公昭62-318)、高吸水性樹脂(特開昭59-155488)等が公知である他、グアーガム等が用いられている。また含水率を下げながら流動性を保持する為気泡を混入し、消泡により流動性を除去する気泡シールド工法も提案されている。(特公昭58-47560、特公昭59-49999)」(1頁右下欄下から2行?2頁左上欄9行)。

21 甲第23号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第23号証には、次の事項が記載されている。

「【0022】
前記カチオン性凝集剤を用いると、前記の静電引力の作用などにより、纏った凝集フロックが形成されやすいため、固液分離の取り扱いが容易となる。しかし、このカチオン性の高分子凝集剤は、アニオン性やノニオン性の高分子凝集剤に比べて、使用量が多い場合などにやや毒性の高い傾向を示すものが多いため、一般には、アニオン性高分子凝集剤が使用される場合が多い。」

22 甲第26号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第26号証には、次の事項が記載されている。

「【請求項1】 酸化マグネシウムを含んで成ることを特徴とする重金属溶出抑制固化材。」

23 甲第27号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第27号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 水溶性高分子凝集剤及び無機系凝結材を必須の成分として含む泥土処理材Aと、石膏系凝結材、酸性中和剤、石膏系凝結材と酸性中和剤との混合物、石膏系凝結材と無水石膏との混合物、石膏系凝結材と無水石膏と酸性中和剤との混合物及び無水石膏と酸性中和剤との混合物の群から選ばれる1種を必須の成分として含む泥土処理材Bとを組み合わせてなることを特徴とする泥土固化材。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えばトンネル工事、掘削工事、造成工事、建築工事等の現場で発生する建設泥土、湖沼、河川、港湾等の浚渫泥土などに代表される泥土の固化材及びその固化方法に関する。
・・・
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、乾燥や脱水によって得られる固化土壌は、雨水にさらされると濁水を発生しやすいため、埋立周辺の土壌汚染や自然破壊を引き起こすおそれがある。一方、セメント系固化材によって得られる固化土壌は、このような濁水を発生するおそれは少ないが、この土壌と接した水のpHが一般に水質汚濁防止法の排水基準(pH5.8?8.6)を越えるアルカリ性を示し、また所要の実用強度(例えばコーン指数で200kN/m^(2) 以上)を得るには24時間以上を必要とするなど解決しなければならない課題が残されている。」

ウ 「【0010】本発明に係る泥土固化材の構成要素である泥土処理材Aは、水溶性高分子凝集剤と無機系凝結材とを必須の成分として含む前処理材であって、本発明方法の前処理工程における泥土の粒状化及び形成された粒状化泥土への強度発現性の付与をはかるために使用される。この泥土処理材Aには、無機系凝結材の凝結固化(水和反応)による粒状化泥土の強度発現を促進するため、好ましくは凝結促進材が新たな成分として含まれる。
【0011】前記水溶性高分子凝集剤は、泥土中の水に溶解して泥土をゲル状化して泥土中の懸濁土粒子を捕捉ないし凝集・粗粒化して攪拌混合による粒状化を容易にするフロック形成作用を有するものであって、かかる水溶性高分子凝集剤の例としては、例えばポリアクリル酸系及びその塩類、ポリアクリルアミド系及びその塩類及びこれらの混合物などが挙げられる。中でも、アニオン型水溶性高分子凝集剤、例えばポリアクリル酸系ナトリウム塩、ポリアクリルアミド系ナトリウム塩などが好ましく、特にポリアクリルアミド系ナトリウム塩(アクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの高共重合体)がより好ましい。水溶性高分子凝集剤の配合量としては、JIS A 1203(土質工学会基準JSF T 121-1990土の含水比試験方法)で規定するところの泥土の水分量100質量部に対して0.001?2質量部が好ましく、0.01?0.5質量がより好ましい。配合量が0.001質量部未満ではフロック形成効果が十分でなく、逆に2質量部を超えるとその効果は飽和に達する傾向があるため経済的でない。」

エ 「【0026】本発明の泥土固化材及び泥土の固化方法は、例えばトンネル工事(シールド工事)、掘削工事(ボーリング、抗埋設)、造成工事、建築工事等の現場で発生する建設泥土、湖沼、河川、港湾等の浚渫泥土、浄水場の泥土、下水処理の泥土、工場廃水の泥土、ヘドロ、廃ベントナイト泥水、セメントミルク等の泥土ほか、地盤改良など固化処理を必要とする産業分野に適用することができる。」

24 甲第28号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第28号証には、次の事項が記載されている。

「【0024】
本発明に用いられる水硬性物質としては、従来の含水汚泥安定処理用固化材の水硬性物質として使用されているものであれば特に限定されず、セメント、消石灰、生石灰、石膏等が挙げられ、処理後の含水汚泥のpH値を中性に保つことが必要な場合、半水石膏を用いることがより好ましい。」

25 甲第32号証
(1)甲第32号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第32号証には、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】 地層を掘削するにあたり切羽を前面に設けた隔壁の後方に形成したチャンバーまたは掘削土排出装置内にアクリル系有機高分子凝集剤分散液を注入し、生成した掘削土を前記チャンバー外へ排出移送することを特徴とする泥土圧シールド工法。
【請求項2】 分子量が100万以上であり、かつアニオン化率5?50モル%のアクリルアミド系有機高分子凝集剤分散液を使用することを特徴とする請求項1に記載の泥土圧シールド工法。」

イ 「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は泥土圧シールド工法に関するものであり、さらに詳しくは回転式カッタを備えたメカニカルシールド機により土砂層を掘削し、掘削した土砂を凝集状態の泥土にして排出移送する泥土圧シールド工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近、シールド工法の一種として、泥土圧シールド工法が開発されている。該泥土圧シールド工法は、回転式カッタ、チャンバーおよびスクリュウーコンベアなどの掘削土排出装置を備えたメカニカルシールド機を使用するものであり、砂層、細砂層、砂礫層或いは土丹層の掘削に好ましいシールド工法である。しかしながら、該泥土圧シールド機については、地盤の掘削において滞水した砂層、細砂層、砂礫層等の地層に遭遇した場合に、掘削土砂の流動性が適度でないため、チャンバ内やスクリューコンベヤ内で掘削土砂が詰まったり、スクリューコンベヤによる止水が保てない等の問題がある。従来、上記問題を解決する対策として、一般的には、微細土粒子から成る泥水等の作泥土材を添加する工法が行われているが、効果が不十分であり、また残土が泥状となり、産業廃棄物として処理する必要がある。
・・・
【0004】ところで、泥土加圧シールド工法においては、泥土圧シールド機のカッタで掘削した掘削土砂に適当な添加剤即ち作泥土剤を加えて搬出に好ましい状態の泥土を作り、該泥土に流動性を付与して坑外へ排出するものであり、特に、掘削土砂には流動性、止水性、残土処理性等が要求される。・・・
【0005】しかしながら、泥土圧シールド機に使用される上記の各種作泥土剤で処理した泥土は、流動性の点で十分でなく、例えば、チャンバ内のスクリューコンベヤによる搬出、次いでベルトコンベヤに載せて搬出する場合に、チャンバ内の泥土をスクリューコンベヤ内へ充填し難く、スクリューコンベヤでベルトコンベヤへ良好な移送ができず、また、泥土をベルトコンベヤ上に良好に載置できず、泥土の坑外への搬出が良好に行われないという問題がある。或いは、坑外へ搬出した残土の処理性に欠け、掘削土砂を産業廃棄物として処理する必要があった。また、これら上記の作泥土剤で処理した泥土は、止水効果も十分でなく、透水性の高い砂層、細砂層、砂礫層等の地層の地盤においては、スクリューコンベヤ部から地下水が坑内へ噴出するトラブルが発生し易い欠点があった。」

ウ 「【0007】
【発明が解決しようとする課題】この発明の目的は、上記の課題を解決することであり、透水係数が10^(0)?10^(-3)cm/secの高透水性地層であっても、該土砂を凝集させて泥土とし、該泥土を容易に取り扱えるようにすることができる凝集剤を泥土圧シールド機のチャンバ内などへ注入し、カッタで掘削したチャンバ内の掘削土砂と混練して搬出に良好な流動性を確保し、スクリューコンベヤでベルトコンベヤへスムースに移送でき、更に泥土をベルトコンベヤ上に多量に載置でき、それによって泥土の坑外への搬出が効率良く且つ大量に搬出でき、しかも、この凝集剤が植物の生育阻害物質や有害物質を含んでおらず、且つ生成された泥土が通気性、保水性を有することにより、残土処理性を良好にし、例えば、園芸用土壌等に利用できることを特徴とする泥土圧シールド工法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題に鑑み鋭意研究した結果、ある種のアクリル系有機高分子凝集剤分散液を使用することにより上記課題を解決することができることを見いだし本発明を成すに到った。本発明の請求項1の発明は、地層を掘削するにあたり切羽を前面に設けた隔壁の後方に形成したチャンバーまたは掘削土排出装置内にアクリル系有機高分子凝集剤分散液を注入し、生成した掘削土を前記チャンバー外へ排出移送することを特徴とする泥土圧シールド工法である。本発明の請求項2の発明は、分子量が100万以上であり、かつアニオン化率5?50モル%のアクリルアミド系有機高分子凝集剤分散液を使用することを特徴とする請求項1に記載の泥土圧シールド工法である。本発明の請求項3の発明は、JIS A1218(土の透水試験方法)による透水係数が10^(0) ?10^(-3)cm/secの地層を掘削することを特徴とする請求項1に記載の泥土圧シールド工法である。
【0009】
【作用】掘削する地層中に含まれる粘土が微量であり、その地層の透水係数が約10^(0)?10^(-3)cm/secであると、掘削土の流動性が高くスクリュウコンベアから噴出する。アクリル系有機高分子凝集剤分散液(以下、凝集剤と略す)を添加剤として上記地層から掘削した含水土砂に混合することによって、該土砂は適度な流動性を有する凝集状態の泥土に生成される。即ち、上記凝集剤は該土砂との凝集物である泥土を形成し、該泥土が適度な流動性、止水性、残土処理性を有するようになる。上記凝集作用は、セルロース誘導体の如き分散剤では期待できないものであり、アクリル系有機高分子凝集剤に特有の性質である。また、凝集剤は安定であるので該土砂との混練場所へ圧送する注入配管等で閉塞等は発生することがない。この発明による泥土圧シールド工法は、アクリル系有機高分子凝集剤を泥土圧シールド機のチャンバ(スクリューコンベヤ等のハウジングを含む)内に注入したので、該掘削土砂は適度な流動性を有する凝集状態の泥土に生成される。それ故に、この泥土圧シールド機のカッタによって掘削された切羽面の掘削土砂に対する安定保持が得られると共に、掘削土砂が凝集状態の泥土を形成するので、スクリューコンベヤによるスムースな排出が行われ、残土の取り扱いが容易となる。」

エ 「【0011】この泥土圧シールド機1については、チャンバ2内の掘削土砂は、加圧手段で積極的に加圧される場合、土砂自体の土圧或いは掘削された土砂によって土圧がかかる場合がある。チャンバ2には、該凝集剤を注入するため凝集剤注入口12が設けられている。この凝集剤は、凝集剤分散液貯槽6から凝集剤圧送ポンプ19によって凝集剤フロー9を経て坑外に設けた注入ポンプ10に送り込まれる。更に、注入ポンプ10に送り込まれた凝集剤は、凝集剤フロー9を経て調節バルブ20で注入量を調節されて凝集剤注入口12からチャンバ2内へ注入される。必要があれば、水注入配管7から水を混合し水溶液状態として注入することもできる。一方、カッタ15で掘削した掘削土砂は、チャンバ2内に注入された凝集剤と攪拌翼14によって混合され、チャンバ2から排出に好ましい状態、即ち、適度な流動性、不透水性即ち止水性、残土処理性に好ましい泥土に作られる。凝集剤と掘削土の混練はスクリュウコンベアなどのハウジング内の任意の場所で行うことができる。
・・・
【0014】この発明による泥土圧シールド工法において、凝集剤に用いるアクリル系有機高分子とは、水溶性アクリルモノマーの(共)重合物及び/又はその誘導体より成る。・・・
・・・
【0016】これらの中で最も重要な高分子は、5モル%以上のアニオン基と50モル%以上のアミド基を有する平均分子量100万以上のアニオン性アクリル系水溶性高分子であり、ポリアクリルアミド部分加水分解物、アクリルアミド・アクリル酸塩共重合物、アクリルアミド・アクリル酸塩・アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸塩共重合物等がこの発明に最も適しており、これらの高分子を油中に分散したものが特にこの発明に適している。
【0017】アクリル系有機高分子凝集剤を、例えば、図示の凝集剤貯槽6の圧送ポンプ19によってチャンバ2内へ圧入すると、該凝集剤は、切羽即ちカッタ15に対する止水作用を行い、掘削土砂と混合して凝集状態の泥土に変換され、スクリューコンベヤ13から排出される。スクリューコンベヤ13から排出される泥土は、過度の流動性がなく、スクリューコンベヤ13からの地下水噴出を防止すると共に、泥土はそのままダンプトラック8等に積載可能となる。また、この凝集剤が掘削土砂に混合されて生成した泥土は、植物の生育阻害物質や有害物質を含まず、適度の通気と保水性を有するため、園芸用土等に資源化することも容易に可能である。」

オ 上記アの記載から、「地層を掘削するにあたり切羽を前面に設けた隔壁の後方に形成したチャンバーまたは掘削土排出装置内にアクリル系有機高分子凝集剤分散液を注入し」、掘削土を生成するから、泥土圧シールド工法における掘削土砂の処理方法が記載されているといえる。

(2)甲第32号証に記載された発明の認定
甲第32号証には、上記(1)で記載した事項を踏まえると、次の発明(以下「甲32発明」という。)が記載されていると認められる。

「地層を掘削するにあたり切羽を前面に設けた隔壁の後方に形成したチャンバーまたは掘削土排出装置内にアクリル系有機高分子凝集剤分散液を注入し、掘削土砂と混合して凝集状態の泥土に変換し、当該泥土は、過度の流動性がなく、植物の生育阻害物質や有害物質を含まず、適度の通気と保水性を有するため、園芸用土等に資源化することも容易に可能であり、アクリル系有機高分子として、アニオン性アクリル系水溶性高分子が適している、泥土圧シールド工法における掘削土砂の処理方法。」

26 甲第33号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第33号証には、次の事項が記載されている。
ア 「【背景技術】
【0002】
泥土圧系シールドで使用されている加泥材は、(a)ベントナイト系、(b)セルロース系、(c)ポリアクリルアミド系、(d)吸水性樹脂系、(e)界面活性剤係に分類される。
【0003】
これらのうち、気泡シールド工法で使用される気泡剤は、一般に(e)界面活性剤系に属し、特殊気泡剤(OK-2……パルプを原料としたセルロース系高分子を起泡材の主剤とするもの)の水溶液にエアを混入して生成されるものである。この気泡材を切羽に注入することにより、掘削土の流動性と止水性とを向上させるとともに、チャンバー内土砂の付着を防止し、切羽の安定性を確保しながらスムーズな掘削を行うことができる。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特に透水性の高い砂礫地盤、とりわけIVゾーンに属する透水係数の大きい土質では、Bタイプを用いたとしても豊富な地下水の湧出により気泡が消泡しやすく、
切羽の安定保持が困難になったり、スクリューコンベアからの噴発などの不具合が生じ、掘進に支障を来すことがあった。」

27 甲第37号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第37号証には、次の事項が記載されている。

「【0002】
【従来の技術】都市トンネルの構築工事に採用されるシールド掘進工法の一種として、泥土圧シールド掘進工法が知られている。この種の工法では、通常、筒状に形成された掘進機本体と、この掘進機本体の先端に回転自在に設置されたカッターと、カッターの背面側に設けられ、泥状掘削ズリを充満して土圧に対抗させるチャンバとを備えたシールド掘進機が用いられ、泥状掘削ズリには、泥漿などの添加材が加えられる。
【0003】このような泥土圧シールド掘進工法は、仮設設備が安価になるという特徴がある。ところで、このような泥土圧シールド掘進工法の一種として、掘削ズリの添加材に、気泡生成用の起泡材を用いる気泡シールド掘進工法が知られている。
【0004】この気泡シールド掘進工法は、前記した泥土圧シールド掘進工法の長所に加えて、起泡材が、環境にやさしく、気泡と掘削土砂とを混合することで、掘削ズリの流動性を改善できるなどの取扱い性に優れるという特長があって、飛躍的に採用され、施工性,信頼性,品質のすべてに優れた工法である。
【0005】しかしながら、このようなシールド掘進工法には、以下に説明する課題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】すなわち、近年、産業廃棄物に関する法律が改正され、これに伴い、泥土圧シールド掘進工法で施工する場合には、添加材として起泡材を使用しても掘削残土の全量が汚泥(産業廃棄物)扱いになることが懸念されており、掘削残土の全量が汚泥として扱われると、その処理費用が非常に大きくなるという問題があった。」

第6 無効理由についての判断
1 無効理由1について
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明の対比
(ア)甲1発明の「シールド工事」は、シールド工法による工事であるので、本件発明1の「気泡シールド工法」と、「シールド工法」の点で共通する。

(イ)甲1発明の(シールド工事で発生する)「泥土」は、建設工事によって発生するものであるから、本件発明1の「建設排泥」に相当する。

(ウ)甲1発明の「凝集材」、「アニオン性」「の凝集材」は、それぞれ本件発明1の「凝集剤」、「アニオン性高分子凝集剤」に相当し、甲1発明の「(凝集材と)撹拌混合し泥土を粒状化するように処理し」は、本件発明1の「(アニオン性高分子凝集剤を)添加混合し、造粒した」に相当する。

(エ)甲1発明の「セメント系や石灰系の固化材を供給することにより、凝集材で粒状化させた泥土を固化し」は、本件発明1の「(造粒した)後、無機系固化材を添加混合して固化する」に相当する。

(オ)したがって、両者は、次の一致点で一致し、相違点1、2で相違する。
(一致点)
「シールド工法で発生する建設排泥に、アニオン性高分子凝集剤を添加混合し、造粒した後、無機系固化材を添加混合して固化する、シールド工法で発生する建設排泥の処理方法。」

(相違点1)
シールド工法に関して、本件発明1は「気泡シールド工法」であるのに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。
(相違点2)
凝集材に関して、本件発明1は「カチオン性高分子凝集剤を添加することなく」としているのに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。

イ 各相違点に対する判断
(ア)当審の判断
相違点1、2は関連するため、合わせて検討する。
本件発明1は、「気泡シールド工法で発生する建設排泥」を処理対象とするものであって、「気泡シールド工法で発生する建設排泥」に特化して「カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合」するものである。
一方、甲第1号証において、シールド工事として、さらに具体的な工法などについて記載されていないことを併せて見ても、甲1発明は、シールド工法全般を対象とし、処理対象となる建設排泥もシールド工法から発生する建設排泥全般を対象としていると解することができる。ただし、甲第1号証には、泥土の状態として、気泡を有する泥土についての記載や示唆はない。
また、甲1発明は、凝集材として、「アニオン性」、「ノニオン性」、「カチオン性」の凝集材を泥土の状態に合わせて組み合わせて用いるものであるが、甲第1号証の記載を参酌しても、カチオン性の凝集材の使用を排除するとの記載や示唆はないから、カチオン性の凝集材の使用を排除しているとはいえない。
したがって、上記したように甲第1号証に気泡を有する泥土に関する記載がないことから見て、甲1発明は実質的に「気泡シールド工法で発生する建設排泥」を対象としているとはいえず、甲第1号証の記載から、「気泡シールド工法で発生する建設排泥」のみに着目する動機付けはなく、さらに、上記したように甲第1号証においてカチオン性の凝集材の使用を排除しているとはいえず「カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合」することについて何ら示唆もないことから、甲1発明において、「気泡シールド工法で発生する建設排泥」に特化して「カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合」することは当業者が容易に想到しうる程度のことといえるものではない。
また、その他の証拠である甲第2号証?甲第28号証においても、甲1発明に対する動機付けや示唆を含んだ構成、及び相違点1、2に相当する構成は開示されていない。
よって、本件発明1は甲1発明と同一であるとはいえず、また、甲1発明において、相違点1、2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到しうる程度のことではない。

(イ)請求人の主張に対して
請求人は、「そして、甲1発明は、シールド工法等で発生した泥土を改質することで、粒状化し、強度の高い一般建設残土と同等の土砂に改質して利用価値を創出し、改質処理現場から再利用先へと直接搬送することを可能とするものであって、甲1発明のアニオン性有機高分子凝集剤を適用することによって、建設排泥を凝集させ、適度な流動性を有する凝集状態にすることで、気泡(起泡剤)を含む各種加泥材を使用する泥土圧シールド工法より発生する建設排泥であっても、掘削土の自由水を土粒子に取り込み、見掛け上の含水比を低下させることで、掘削土を改質、粒状化し、運搬及び後処理を容易にすることができるものである。この場合、アニオン性有機高分子凝集剤は、泥土に適切に混合すると、泥土中の土粒子を集合させて、土粒子間の自由水を、集合した土粒子間に包み込むように抱合する。そのため、土粒子は、表面側が湿り気の少ない見掛け上乾燥した状態になって集合して、粘り気のない状態の泥土の粒状体が生成される(甲第1号証の段落[0026]及び次頁の図参照。)ものであることから、建設排泥が、大気中に開放しただけでは自然消泡しきれずに建設排泥中に気泡が残存するようになるものの場合であっても、アニオン性有機高分子凝集剤を適用することによって、消泡(気泡の効果の低減)も当然に行われると認められることから、甲1発明を気泡シールド工法で発生する建設排泥の改質に適用することの動機付けが存在するといえる。ここで、気泡を含有する建設排泥が、乾燥によって消泡することは、周知の技術的知見に過ぎない(例えば、甲第18号証?甲第21号証参照。)。
また、流動性を有する建設排泥の改質に、高分子凝集剤として、アニオン性有機高分子凝集剤を単独で使用することは、甲第22号証にも記載されている。
・・・
また、仮に建設排泥における気泡の有無が相違点であると認められ、甲第1号証に記載された「シールド工法」が気泡シールド工法を除くシールド工法と把握され、気泡シールド工法と区別されたとしても、両者は、技術分野も課題も作用も共通している、すなわち、加泥材が添加された掘削排土は含水率が高く泥土化するため、改質処理を施す必要があること(例えば、甲1発明は、シールド工事のような建設工事等で発生する泥土すなわち高含水比の軟弱な土砂を対象としたものである(甲第1号証の段落[0002])のに対し、気泡シールド工法により発生する建設排泥は、相対的に含水比の上昇は抑えられる等の特長を備えているが、上記のとおり、例えば、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証、甲第9号証、甲第10号証、甲第12号証及び甲第15号証に記載されているように、発生する建設排泥の含水率は、施工する地盤の性状、特に、地下水の量によって変動することは明らかである。)で共通していること、上記のとおり両者の組み合わせも推奨されるほどに親近性があることから、適用する積極的な動機付けがあり、何らの阻害要因もなく、当業者が容易になし得ることと認められる。」(第3の2(1)ア(イ))、「甲第1号証には、「気泡シールド工法で発生する建設排泥」に関する直接的な開示はないが、処理対象物は産業廃棄物たる泥土、すなわち「建設汚泥」であると記載されており、甲第37号証に他のシールド掘進工法と同様、気泡シールド掘進工法で発生した泥土もこれに含まれる旨の開示があること、本件発明1の処理対象物はそのコーン指数を踏まえると同じく「建設汚泥」であることから、本件発明1の処理対象となる建設排泥と甲1発明における泥土とには何ら差がないものといえる。さらに、通常の土砂がアニオン性高分子凝集材で造粒することは公知の技術であって、特に本件発明の汚泥中にシルトやセルロース系増粘剤を含む泥土については、甲第1号証の段落【0029】に記載のとおり、泥土の種類、粘土、シルト、コロイド等の何れに該当するかの泥土の粒子径、泥土の含水比等、泥土の性状に応じて凝集剤を適時選択することができるものである。」(第3の2(3)イ(ア)c)旨主張する。
しかしながら、上記(ア)で説示したように、本件発明1は甲1発明と同一であるとはいえず、また、甲1発明において、「気泡シールド工法で発生する建設排泥」のみに着目する動機付けはなく、さらに「気泡シールド工法で発生する建設排泥」に特化して「カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合」することは当業者が容易に想到しうる程度のことではない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

ウ むすび
以上のとおり、本件発明1は、甲1発明と同一ではなく、さらに相違点1、2に係る本件発明1の構成にすることが当業者が容易に想到し得たことではないため、甲第1号証ないし甲第28号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(2)本件発明2について
ア 本件発明2と甲1発明の対比
(ア)甲1発明の「セメント系や石灰系の固化材」は、無機系であり、カルシウムの酸化物を含んでいることは明らかであるから、本件発明2の「無機系固化材がカルシウムまたはマグネシウムの酸化物を含む粉末」と、「無機系固化材がカルシウムの酸化物を含む粉末」である点で共通する。

(イ)したがって、本件発明2と甲1発明は、上記(1)アの相違点1、2に加えて、次の相違点3で相違する。

(相違点3)
無機系固化材として、本件発明2は「マグネシウムの酸化物」を選択的に含むのに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。

イ 各相違点に対する判断
(ア)相違点1、2について
相違点1、2については、上記(1)イで説示したとおりである。

(イ)相違点3について
相違点3は、選択的な事項であるので、実質的な相違点とはいえない。

ウ むすび
以上のとおり、本件発明2は、甲1発明と同一ではなく、さらに相違点1、2に係る本件発明2の構成にすることが当業者が容易に想到し得たことではないため、甲第1号証ないし甲第28号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(3)本件発明3について
ア 本件発明3と甲1発明の対比
(ア)甲1発明の「セメント系や石灰系の固化材」は、無機系であり、セメントは石膏を一般的に含んでいるから、本件発明3の「無機系固化材が石膏を含む粉末」に相当する。

(イ)したがって、本件発明3と甲1発明は、上記(1)アの相違点1、2で相違する。

イ 各相違点に対する判断
相違点1、2については、上記(1)イで説示したとおりである。

ウ むすび
以上のとおり、本件発明3は、甲1発明と同一ではなく、さらに相違点1、2に係る本件発明3の構成にすることが当業者が容易に想到し得たことではないため、甲第1号証ないし甲第28号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件発明1?3は、甲1発明と同一ではなく、さらに甲第1号証ないし甲第28号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえないから、その特許は、無効とすべきものではない。

2 無効理由2について
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲32発明の対比
(ア)甲32発明の「泥土圧シールド工法」は、本件発明1の「気泡シールド工法」と、「シールド工法」の点で共通する。

(イ)甲32発明の「掘削土砂」は、建設工事によって発生する排泥ということもできるから、本件発明1の「建設排泥」に相当する。

(ウ)甲32発明の「凝集剤」、「アニオン性アクリル系水溶性高分子が適している」「アクリル系有機高分子凝集剤」は、それぞれ本件発明1の「凝集剤」、「アニオン性高分子凝集剤」に相当する。

(エ)甲32発明の(アクリル系有機高分子凝集剤を掘削土砂と)「混合して凝集状態の泥土に変換し」は、(凝集剤が)添加されて混合されていることは明らかであるから、本件発明1の(アニオン性高分子凝集剤を)「添加混合し」たに相当する。

(オ)したがって、両者は、次の一致点で一致し、相違点A、Bで相違する。
(一致点)
「建設排泥に、アニオン性高分子凝集剤を添加混合した、シールド工法における建設排泥の処理方法。」

(相違点A)
本件発明1は「気泡シールド工法で発生する建設排泥」に「カチオン性高分子凝集剤を添加することなく」凝集剤を添加混合し「造粒し」ているのに対し、甲32発明は「泥土圧シールド工法」において「地層を掘削するにあたり切羽を前面に設けた隔壁の後方に形成したチャンバーまたは掘削土排出装置内にアクリル系有機高分子凝集剤分散液を注入し、掘削土砂と混合して凝集状態の泥土に変換し」ている点。
(相違点B)
本件発明1は「無機系固化材を添加混合して固化する」のに対し、甲32発明はそのような特定がなされていない点。

イ 各相違点に対する判断
(ア)相違点Aについて
本件発明1は、「気泡シールド工法で発生する建設排泥」を処理対象とするものであるから、文字通り、気泡シールド工法を行った結果、発生する「建設排泥」を対象としていると解される。
一方、甲32発明は、「地層を掘削するにあたり切羽を前面に設けた隔壁の後方に形成したチャンバーまたは掘削土排出装置内にアクリル系有機高分子凝集剤分散液を注入」するものであり、また、甲第32号証における「【0004】ところで、泥土加圧シールド工法においては、泥土圧シールド機のカッタで掘削した掘削土砂に適当な添加剤即ち作泥土剤を加えて搬出に好ましい状態の泥土を作り、該泥土に流動性を付与して坑外へ排出するものであり、特に、掘削土砂には流動性、止水性、残土処理性等が要求される。・・・【0007】【発明が解決しようとする課題】この発明の目的は、上記の課題を解決することであり、透水係数が10^(0)?10^(-3)cm/secの高透水性地層であっても、該土砂を凝集させて泥土とし、該泥土を容易に取り扱えるようにすることができる凝集剤を泥土圧シールド機のチャンバ内などへ注入し、カッタで掘削したチャンバ内の掘削土砂と混練して搬出に良好な流動性を確保し、スクリューコンベヤでベルトコンベヤへスムースに移送でき、更に泥土をベルトコンベヤ上に多量に載置でき、それによって泥土の坑外への搬出が効率良く且つ大量に搬出でき」との記載から見ても、甲32発明における凝集剤は、泥土シールド工法における「添加剤即ち作泥土剤」に相当すると解することが自然である。
したがって、甲32発明における凝集剤は、泥土圧シールド工法の中で用いられる凝集剤(添加剤即ち作泥土剤)であるから、泥土圧シールド工法を行った結果、発生する掘削土砂に添加する凝集剤ではない。よって、甲第32号証において、泥土圧シールド工法を行った結果、発生する掘削土砂に凝集剤を添加することは記載されていないし、さらに泥土圧シールド工法の中で用いられた凝集剤(添加剤即ち作泥土剤)と同様の凝集剤を添加する動機付けはないというべきである。また、甲32発明において、泥土圧シールド工法の中で用いられる凝集剤(添加剤即ち作泥土剤)を既に用いていることから、さらに、同じような目的で凝集剤(添加剤即ち作泥土剤)として気泡を加える必要性はない。
よって、上記したように泥土圧シールド工法を行った結果、発生する掘削土砂にさらに同様の凝集剤を添加する動機付けはないこと、及び泥土圧シールド工法の中で用いられる凝集剤(添加剤即ち作泥土剤)として気泡をさらに加える必要性はないことから、甲32発明において、「気泡シールド工法で発生する建設排泥」に特化して「カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合」することは当業者が容易に想到しうる程度のことといえるものではない。
また、その他の証拠である甲第1号証?甲第28号証、甲第33号証においても、甲32発明に対する動機付けや示唆を含んだ構成、及び相違点Aに相当する構成は開示されていない。
よって、甲32発明において、相違点Aに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到しうる程度のことではない。

(イ)相違点Bについて
シールド工法において、凝集剤を添加した建設排泥に、無機系固化材を添加して固化することは、甲第1号証に記載されている。
そして、シールド工法による建設排泥において、残土処理や運搬性の向上のために、建設排泥を固化させることは共通の周知の課題であるので、甲32発明に甲第1号証に記載された上記技術事項を適用し、相違点Bに係る本件発明1のようにすることは当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない。

(ウ)請求人の主張に対して
請求人は、「甲32発明は、泥土圧シールド工法に関する技術であるが、気泡シールド工法は、・・砂礫地盤を施工する場合の切羽の安定状態を維持するために切羽の土砂に加泥材を添加するシールド工法の主要な工法である泥土圧シールド工法と同様、添加剤として気泡(起泡剤)からなる加泥材を使用する工法であることから、甲32発明の出願時、又は少なくとも本件特許の出願時には、泥土圧シールド工法の範疇に入るもの(下位概念の工法であって泥土圧シールド工法に含まれるもの)とされている。
そして、甲32発明は、「泥土圧シールド工法」についての発明とされていることから、甲32発明は加泥材に気泡(起泡剤)を使用する「気泡シールド工法」も当然に含まれるものであって、これを排除する理由はない。
ここで、気泡シールド工法は、発生する建設排泥の含水率の上昇を相対的には抑えられる等の特長を備えているが、・・・発生する建設排泥の含水率は、施工する地盤の性状、特に、地下水の量によって当然に変動するものであること(必要があれば、例えば、甲第2号証、甲第3号証及び甲第5号証のほか、甲第9号証、甲第10号証及び甲第12号証参照。)から、発生する掘削排土の含水率という観点から、添加材として気泡(起泡剤)を用いる気泡シールド工法(で発生する掘削排土)と、その他の加泥材を用いる泥土圧シールド工法(で発生する掘削排土)とを区別することはできない。
そして、甲32発明は、泥土圧シールド工法で発生した掘削土を、適度な流動性、止水性、残土処理性を有するように改質することを目的とするものであって、甲32発明のアニオン性有機高分子凝集剤を適用することによって、建設排泥を凝集させ、適度な流動性を有する凝集状態にすることで、気泡(起泡剤)を含む各種加泥材を使用するどのような泥土圧シールド工法より発生する建設排泥であっても、掘削土の自由水を土粒子に取り込み、見掛け上の含水比を低下させることで、掘削土を改質することができるものである。この場合、アニオン性有機高分子凝集剤は、泥土に適切に混合すると、泥土中の土粒子を集合させて、土粒子間の自由水を、集合した土粒子間に包み込むように抱合する。そのため、土粒子は、表面側が湿り気の少ない見掛け上乾燥した状態になって集合して、粘り気のない状態の泥土の粒状体が生成される(甲第1号証の段落[0026]及び第37頁の図参照。)ものであることから、建設排泥が、大気中に開放しただけでは自然消泡しきれずに建設排泥中に気泡が残存するようになるものの場合であっても、アニオン性有機高分子凝集剤を適用することによって、土粒子の表面が湿り気の少ない見掛け上乾燥によって消泡(気泡の効果の低減)も当然に行われると認められることから、甲32発明を気泡シールド工法で発生する建設排泥の改質に適用することの動機付けが存在するといえる。ここで、気泡を含有する建設排泥が、乾燥によって消泡することは、周知の技術的知見に過ぎない(例えば、甲第18号証?甲第21号証参照。)。
また、流動性を有する建設排泥の改質に、高分子凝集剤として、アニオン性有機高分子凝集剤を単独で使用することは、甲第22号証にも記載されている。
ここで、本件請求人の実施した実験(実験報告書(甲第30号証)及び実験を撮影したビデオ(甲第31号証)参照。)によれば、アニオン性有機高分子凝集剤による泥土圧シールド工法で発生する建設排泥(模擬土)の改質度合いは、加泥材としての気泡(起泡剤)の有無は、泥土を適度な流動性を有する凝集状態にする作用に実質的に影響を与えるものでないことが分かる。
このことから、甲第32号証に記載された泥土圧シールド工法で発生する建設排泥の改質に関する発明と、これを気泡シールド工法で発生する建設排泥の改質に適用することとは、実質的に相違がなく、同一である。」(第3の2(2)ア(イ))旨主張する。
しかしながら、上記(ア)で説示したように、甲32発明における凝集剤は、泥土圧シールド工法の中で用いられる凝集剤(添加剤即ち作泥土剤)であるから、甲32発明において、「気泡シールド工法で発生する建設排泥」に特化して「カチオン性高分子凝集剤を添加することなく、アニオン性高分子凝集剤を添加混合」することは当業者が容易に想到しうる程度のことではない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

ウ むすび
以上のとおり、本件発明1は、相違点Aに係る本件発明1の構成にすることが当業者が容易に想到し得たことではないため、甲32発明、及び甲第1号証、甲第2号証?甲第28号証、甲第33号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(2)本件発明2について
ア 本件発明2と甲32発明の対比
両者は、上記(1)アの相違点Aに加えて、次の相違点B1で相違する。

(相違点B1)
本件発明2は「無機系固化材を添加混合して固化」し「無機系固化材がカルシウムまたはマグネシウムの酸化物を含む粉末である」のに対し、甲32発明はそのような特定がなされていない点。

イ 各相違点に対する判断
(ア)相違点Aについて
相違点Aについては、上記(1)イで説示したとおりである。

(イ)相違点B1について
シールド工法において、凝集剤を添加した建設排泥に、カルシウムの酸化物を含む無機系固化材を添加して固化することは、甲第1号証に記載されている。
そして、シールド工法による建設排泥において、残土処理や運搬性の向上のために、建設排泥を固化させることは共通の周知の課題であるので、甲32発明に甲第1号証に記載された上記技術事項を適用し、相違点B1に係る本件発明2のようにすることは当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない。

ウ むすび
以上のとおり、本件発明2は、相違点Aに係る本件発明2の構成にすることが当業者が容易に想到し得たことではないため、甲32発明、及び甲第1号証、甲第2号証?甲第28号証、甲第33号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(3)本件発明3について
ア 本件発明3と甲32発明の対比
両者は、上記(1)アの相違点Aに加えて、次の相違点B2で相違する。

(相違点B2)
本件発明3は「無機系固化材を添加混合して固化」し「無機系固化材が石膏を含む粉末である」のに対し、甲32発明はそのような特定がなされていない点。

イ 各相違点に対する判断
(ア)相違点Aについて
相違点Aについては、上記(1)イで説示したとおりである。

(イ)相違点B2について
シールド工法において、凝集剤を添加した建設排泥に、石膏を含む無機系固化材を添加して固化することは、甲第1号証に記載されている。
そして、シールド工法による建設排泥において、残土処理や運搬性の向上のために、建設排泥を固化させることは共通の周知の課題であるので、甲32発明に甲第1号証に記載された上記技術事項を適用し、相違点B2に係る本件発明3のようにすることは当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない。

ウ むすび
以上のとおり、本件発明3は、相違点Aに係る本件発明3の構成にすることが当業者が容易に想到し得たことではないため、甲32発明、及び甲第1号証、甲第2号証?甲第28号証、甲第33号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件発明1?3は、甲第32号証、甲第1号証ないし甲第28号証、甲第33号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえないから、その特許は、無効とすべきものではない。

第7 むすび
上記第6で検討したとおり、本件発明1?3について、請求人の主張する無効理由には無効とする理由がないから、その特許は無効とすべきものではない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-03-28 
結審通知日 2019-04-01 
審決日 2019-04-15 
出願番号 特願2005-83412(P2005-83412)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (E21D)
P 1 113・ 113- Y (E21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 住田 秀弘  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 井上 博之
西田 秀彦
登録日 2012-08-17 
登録番号 特許第5063863号(P5063863)
発明の名称 気泡シールド工法で発生する建設排泥の処理方法  
代理人 高久 浩一郎  
代理人 森 治  
代理人 服部 啓  
代理人 宮内 知之  
代理人 菅 尋史  
代理人 大谷 保  
代理人 宍戸 充  
代理人 片岡 誠  
代理人 有永 俊  
代理人 石村 理恵  
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