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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1366587
審判番号 不服2019-13393  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-07 
確定日 2020-09-23 
事件の表示 特願2018-137332「半導体装置および半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月11日出願公開、特開2018-160707〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成14年12月27日を出願日とする出願である特願2002-379270号の一部を、平成20年10月17日に新たに特許出願した特願2008-268083号の一部を、平成23年8月5日に新たに特許出願した特願2011-171781号の一部を、平成25年6月3日に新たに特許出願した特願2013-117030号の一部を、平成27年10月1日に新たに特許出願した特願2015-195693号の一部を、平成28年8月22日に新たに特許出願した特願2016-162142号の一部を、平成29年2月13日に新たに特許出願した特願2017-23720号の一部を、平成29年7月20日に新たに特許出願した特願2017-140417号の一部を、平成29年11月24日に新たに特許出願した特願2017-225497号の一部を、平成30年7月23日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 8月21日 手続補正書の提出
平成30年10月 4日付け 拒絶理由通知書
平成31年 2月 6日 意見書、及び手続補正書の提出
平成31年 3月11日付け 刊行物等提出書
令和 1年 7月 5日付け 拒絶査定
令和 1年10月 7日 拒絶査定不服審判の請求


第2 原査定の拒絶の理由

令和1年7月5日付け拒絶査定の内容は以下のとおりである。

「 この出願については、平成30年10月 4日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
●理由1(特許法第17条の2第3項)について
まず、平成30年8月21日付け手続補正書による補正(補正1と略す)により、請求項2、4において、「半導体素子(S)の電極(L)が、上記樹脂層(4)の厚みにおける中央部付近に位置していること」を追加している。
当該補正1は、前記拒絶理由通知書で通知した通り、「この出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(当初明細書等と略す)において、半導体素子の電極が樹脂層の厚み方向においてどこに位置しているかは記載も示唆もされていない。そして、半導体素子の電極が樹脂層の厚み方向における位置を特定することにより、樹脂層の厚みについて、半導体素子の厚みとアイランド部の厚みを考慮した上で、決定するという新たな技術的事項を導入するもの」である。
これに対して、出願人は、平成31年2月6日付け手続補正書による補正(補正2と略す)により、前記補正1における請求項2、4を、それぞれ請求項1、3に繰り上げた上で、「樹脂層(4)の厚みにおける中央付近」という部分を「樹脂層(4)の厚みにおける中央」と補正を行うとともに、新たに請求項2を追加した。
しかしながら、当該補正2後の請求項1、3においても、前記拒絶理由通知書に記載の通り、半導体素子の電極が樹脂層の厚み方向における位置を特定することは、樹脂層の厚みについて、半導体素子の厚みとアイランド部の厚みを考慮した上で、決定するという新たな技術的事項を導入するものである。
また、前記補正2において追加された請求項2においても、「上記半導体素子(S)が上記アイランド部(2a)上に搭載された状態において、上記半導体素子(S)の電極(L)形成面が、上記樹脂層(4)の厚みにおける中央に位置していること」を含むものであるから、同様である。
よって、前記補正2後の請求項1-3の記載は、依然として当初明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
この点につき、出願人は意見書において、『今回の補正事項である「上記半導体素子(S)の電極(L)形成面が、上記樹脂層(4)の厚みにおける中央に位置していること」については、同図面の図3に開示されています』と主張する。
しかしながら、図3を参酌しても、電極(L)が樹脂層の厚みの中央に位置するという構成は読み取れず、対応する記載も何らなく、さらに、当初明細書等に記載された発明の課題、目的又は作用効果等からみても、そのような構成を採用していると理解することもできない。
よって、出願人の主張は採用できない。」

ここで、平成30年10月4日付け拒絶理由通知書に記載された理由1の内容は以下のとおりである。

「1.(新規事項)平成30年8月21日付け手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。



●理由1(新規事項)について
上記補正では、請求項2、4において、「半導体素子(S)の電極(L)が、上記樹脂層(4)の厚みにおける中央部付近に位置していること」を追加している。 しかしながら、この出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(当初明細書等と略す)において、半導体素子の電極が樹脂層の厚み方向においてどこに位置しているかは記載も示唆もされていない。
そして、半導体素子の電極が樹脂層の厚み方向における位置を特定することにより、樹脂層の厚みについて、半導体素子の厚みとアイランド部の厚みを考慮した上で、決定するという新たな技術的事項を導入するものである。
よって、上記補正は当初明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
なお、当該補正がなされた請求項2、4に記載した事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にないことが明らかであるから、当該請求項に係る発明については新規性進歩性等の特許要件についての審査を行っていない。」


第3 補正の概要
平成31年2月6日付け手続補正書でした補正(以下、「本件補正」という。)は、請求項1を削除するとともに、平成30年8月21日付け手続補正書により特定される請求項2に係る発明を、平成31年2月6日付け手続補正書により特定される請求項1に記載された、

「 【請求項1】
半導体素子(S)と、上記半導体素子(S)が搭載されるアイランド部(2a)と、上記半導体素子(S)の電極(L)と電気的に接続される電極部(2b)とが樹脂層(4)にて封止され、上記アイランド部(2a)および上記電極部(2b)の裏面が上記樹脂層(4)の底面と同じ側で露出する半導体装置であって、
上記アイランド部(2a)及び上記電極部(2b)はそれぞれ、実装用金属薄膜(11)の上面にリード層(12)が積層された少なくとも二層構造からなり、互いに独立しており、
上記半導体素子(S)の電極(L)形成面が、上記樹脂層(4)の厚みにおける中央に位置していることを特徴とする半導体装置。」

という発明(以下、「本件補正発明」という。)に補正することを含むものである。
すなわち、本件補正の内容は、平成30年10月4日付け拒絶理由において、新規事項の追加にあたるとされた「上記半導体素子(S)の電極(L)が、上記樹脂層(4)の厚みにおける中央部付近に位置していること」という発明特定事項を、「上記半導体素子(S)の電極(L)形成面が、上記樹脂層(4)の厚みにおける中央に位置していること」という発明特定事項に変更することを含むものである。

第4 当初明細書等の記載

本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「当初明細書等」という。)には、以下の記載がある。(下線は、当審で付与した。)

ア 「【0002】
従来、この種樹脂封止型の半導体装置として、母型基板上に半導体素子S搭載用の金属層と外部導出用の電極層から成る電鋳製のリード材を形成し、リード材上に半導体素子Sを搭載の後結線処理を行い、母型基板上で樹脂封止した後母型基板のみを除去し個々に切断して構成することは公知である(特許文献1参照)。特許文献1に係る半導体装置は、上記リード材を構成する半導体素子Sが搭載される金属層と外部導出用の電極層の各裏面が樹脂封止体から露出して構成され、ガラスエポキシ基板やセラミック基板等の基板を使用することなく、半導体装置の高さを低くし装置全体を小型化することができるとともに、放熱性にも優れるという利点がある。」

イ 「【0006】
この発明の目的は、半導体装置の小型、薄型形状の形態は維持したまま実装時の外部電極部2b分の導通性を向上させることにある。・・・」

ウ 「【0011】
この発明では、半導体素子Sが搭載されるアイランド部2aと、該アイランド部2aの周りに所定の間隔をおいて配置される1以上の電極部2bとを有し、上記アイランド部2a上に搭載した半導体素子Sと上記電極部2bとの間を電気的に接続した後樹脂封止して、アイランド部2aと電極部2bのそれぞれ裏面が樹脂層4の底面と同一平面で露出して構成される小型、薄型の半導体装置において、アイランド部2aと電極部2bを電鋳で形成する際に、少なくとも電極部2bを構成するリード層12の裏面側に、実装用の導電性に優れた金属薄膜11をあらかじめ形成しておき、金属薄膜11とリード層12の二層構造とすることで、後工程で別途実装用のメッキを電極部2b露出面に形成する必要が無く、実装時の電極導通性、信頼性に優れた小型、薄型の半導体装置を構成できる。(請求項1)」

エ 「【0017】
ここで、図1(a)において、上記アイランド部2aおよび電極部2bは、上端部周縁をそれぞれ庇状に張り出し形成して構成されており、樹脂封止体としての樹脂層4に対する喰い付き効果によって、アイランド部2a、電極部2bと樹脂層4との結着力が向上し、樹脂剥れやズレを効果的に防止できる構成となっている。また、アイランド部2aおよび電極部2bは、それぞれ裏面側が金、スズ、ハンダ、パラジウム等の導電性に優れた実装用金属薄膜11が0.05?1μm程度の厚さで形成され、その上面にニッケル等の電鋳金属から成るリード層12が一体に積層された二層構造からあらかじめ形成されており、さらには、本実施例の場合、リード層12の上面に、金、銀等から成るワイヤ3との結線力向上のためのボンディング用金属膜13が0.3?0.4μm厚程度形成されている。このボンディング用金属膜13については必須の構成ではない。」

オ 「【0019】
次いで、基板1の一面側のレジストパターン層6で覆われていない露出面に対し、必要に応じて化学エッチングによる表面酸化被膜除去や薬品による周知の化学処理等の表面活性化処理を行った後、図2(d)に示すごとく基板1のレジストパターン層66により規定された露出面に0.05?1μm厚で金を成長させて、実装用金属薄膜11を形成する。
(中略)
【0020】
次いで、図2(e)のごとく、ニッケルや銅、ニッケル-コバルト等の合金等から選択される電鋳金属、本実施例の場合はニッケルを上記金属薄膜11上面に、一体に積層して電着することでリード層12を形成し、上記金属薄膜11とリード層12の二層構造から成る、半導体搭載用のアイランド部2aと、該アイランド部2aに対して1以上の独立した電極部2bを、各々対として複数組を並列形成する。なお、本実施例においては、本工程で電着形成されるリード層12をレジストパターン層6の厚みを越えて(例えば60?80μm厚で)形成することで、アイランド部2aおよび電極部2bの上端部周縁に庇状の張り出しを形成するようにしている。
【0021】
次いで、必要に応じて各アイランド部2aおよび電極部2bの表面に後述のワイヤボンディング時の結着力向上用の金メッキ等を0.3?0.4μm厚で行い、ボンディング用金属膜13を形成して、基板1の両面よりレジストパターン層6及びレジスト層5を除去することで、図2(f)の状態となる。」

カ 図1(a)として以下の図面が記載されている。


キ 図2(e)、(f)として以下の図面が記載されている。


ク 図3(c)?(e)として以下の図面が記載されている。


ケ 図4として以下の図面が記載されている。



第5 当審の判断

本件補正が新規事項の追加に該当するか否かについて検討する。
本件補正発明には、「上記半導体素子(S)の電極(L)形成面が、上記樹脂層(4)の厚みにおける中央に位置していること」との特定(以下、「本件発明特定事項」)がされている。ここで「中央」という語の定義はなされていないから、「中央」という語の一般的な意味を参酌すれば、中央の位置とは、半分の位置、ないし、1/2の位置を意味していると解される。

一方、上記第4のア?ウによれば、当初明細書等には薄型の半導体装置を構成することについて記載されており、特に上記第4のアによれば、ガラスエポキシ基板やセラミック基板等の基板を使用しないことにより、薄型に構成することが記載されている。
しかしながら、半導体素子の電極形成面が樹脂層の厚み方向のどこに位置しているかについては何ら記載されていないから、上記第4のア?ウの記載は本件発明特定事項を開示するものではない。

また、上記第4のエ及びオによれば、当初明細書等には、実装用金属薄膜11を0.05?1μm程度、リード層12を60?80μm厚、ボンディング用金属膜13を0.3?0.4μm厚程度とすることについて記載されているものの、半導体素子及び樹脂層の厚さについては何ら記載されておらず、半導体素子の電極形成面が樹脂層の厚み方向のどこに位置しているかは特定されていないから、本件発明特定事項が開示されているということはできない。

更に、図1(a)、図3(c)?(e)及び図4をみると、半導体素子の電極形成面である半導体素子の上面の位置は、図面上、樹脂層の厚みの半分程度となっていることが見てとれる。しかしながら、一般的に、特許出願の願書に添付される図面は、明細書を補完し、特許を受けようとする発明に係る技術内容を当業者に理解させるための説明図であり、必ずしも現実の寸法を反映するものとは限らないから、明細書の裏付けが無い限りにおいて、当該部分の寸法や比率などがこれによって特定されるものではない。
そして、本願の当初明細書等には、図2に関して、段落[0019]に実装用金属薄膜11の厚みが0.05μm?1μmであること、段落[0020]にリード層12の厚みが60μm?80μmであることがそれぞれ記載されている。これらの記載に従えば、実装用金属薄膜11とリード層12との厚みの比率は1:1600?1:60となるところ、図2(e)及び(f)から読み取れる金属薄膜11とリード層12との厚みの比率は、この厚みの比率から大幅に異なっている。したがって、本願の特許出願の願書に添付される図面も、現実の寸法を反映するものと言うことはできない。
よって、図1(a)、図3(c)?(e)及び図4から、図面上、樹脂層の厚みの半分程度となっていることが見てとれるとしても、本件発明特定事項が開示されているということはできない。

したがって、本件補正は新たな技術事項である本件発明特定事項を導入するものであり、本件補正は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

なお、審判請求人は令和1年10月7日付け審判請求書において、「本願発明は、半導体装置の小型化・薄型化を実現させるものであり、さらに、小型化・薄型化を図った上で、半導体装置の信頼性・量産性の向上も実現させるものであると思料いたします。そして、その実現の一構成として、半導体素子の電極形成面を樹脂層(半導体装置)の厚みの中央に位置させることが開示されている」旨主張をしている。
しかしながら、本願の当初明細書等には、上述のように本件発明特定事項について記載されておらず、更に、半導体装置の小型化・薄型化、及び信頼性・量産性の向上という本願の作用効果と本件発明特定事項との関連性についても記載されていないから、本願発明の上記作用効果を実現する一構成として本件発明特定事項が開示されているものともいえない。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。


第6 むすび

以上のとおり、平成31年2月6日にされた手続補正は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、本件出願は特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。



 
審理終結日 2020-06-16 
結審通知日 2020-06-23 
審決日 2020-07-07 
出願番号 特願2018-137332(P2018-137332)
審決分類 P 1 8・ 55- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原田 貴志  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 山本 章裕
須原 宏光
発明の名称 半導体装置および半導体装置の製造方法  

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