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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B08B
審判 査定不服 特39条先願 取り消して特許、登録 B08B
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 取り消して特許、登録 B08B
管理番号 1366606
審判番号 不服2019-14520  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-30 
確定日 2020-10-13 
事件の表示 特願2017-187515「真空洗浄装置および真空洗浄方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月25日出願公開、特開2018- 12106、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)11月20日(優先権主張 平成23年11月25日)を国際出願日とする特願2013-545937号(以下、「原出願」という。)の一部を平成27年 2月 6日に新たな特許出願とした特願2015-22618号(以下、「分割出願1」という。)の一部を平成28年7月20日に新たな特許出願とした特願2016-142767号(以下、「分割出願2」という。)の一部を平成29年 9月28日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。

平成30年11月28日付け :拒絶理由通知書
平成31年 2月 4日 :意見書の提出
令和 元年 7月23日付け :拒絶査定
令和 元年10月30日 :審判請求書、手続補正書の提出


第2 補正の却下の決定
1.補正の却下の決定の結論
令和 元年10月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。

2.補正の却下の決定の理由
(1)本件補正の内容
ア 本件補正により特許請求範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。
「【請求項1】
石油系溶剤の蒸気を生成する蒸気生成手段と、
前記蒸気生成手段から供給される蒸気によって減圧下でワークを洗浄可能な洗浄室と、
前記洗浄室に隣接し、減圧状態に保持される凝縮室と、
前記凝縮室を前記洗浄室よりも低い温度に保持する温度保持手段と、
前記凝縮室と前記洗浄室とを連通させ、または、その連通を遮断する開閉バルブと、を備え、
洗浄後の前記ワークの乾燥に真空ポンプを寄与させることなく、前記開閉バルブによって前記凝縮室と前記洗浄室とを連通させることによって洗浄後の前記ワークを乾燥させることを特徴とする真空洗浄装置。」

イ 本件補正前の特許請求の範囲である、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1の記載は次の通りである(下線は当審で付与した。)。
「【請求項1】
石油系溶剤の蒸気を生成する蒸気生成手段と、
前記蒸気生成手段から供給される蒸気によって減圧下でワークを洗浄可能な洗浄室と、
前記洗浄室に隣接し、減圧状態に保持される凝縮室と、
前記凝縮室を前記洗浄室よりも低い温度に保持する温度保持手段と、
前記凝縮室と前記洗浄室とを連通させ、または、その連通を遮断する開閉バルブと、を備え、
前記凝縮室と前記洗浄室とは配管を用いることなく前記開閉バルブを介して接続され、前記開閉バルブによって前記凝縮室と前記洗浄室とを連通させることによって洗浄後の前記ワークを乾燥させることを特徴とする真空洗浄装置。」

(2)本件補正の適否の判断
本件補正後の請求項1が、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定したものであるか否か検討する。
本件補正前の請求項1には、「前記凝縮室と前記洗浄室とは配管を用いることなく前記開閉バルブを介して接続され、前記開閉バルブによって前記凝縮室と前記洗浄室とを連通させることによって洗浄後の前記ワークを乾燥させる」と記載されているから、本件補正前の請求項1に係る発明では、「前記凝縮室と前記洗浄室とは配管を用いることなく前記開閉バルブを介して接続され」ることが特定されている。
一方、本件補正後の請求項1には、「洗浄後の前記ワークの乾燥に真空ポンプを寄与させることなく、前記開閉バルブによって前記凝縮室と前記洗浄室とを連通させることによって洗浄後の前記ワークを乾燥させる」と記載されているものの、本件補正後の請求項1に係る発明では、「前記凝縮室と前記洗浄室とは配管を用いることなく前記開閉バルブを介して接続され」ることについては何ら特定されていない。
すなわち、本件補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記凝縮室と前記洗浄室とは配管を用いることなく前記開閉バルブを介して接続され」るとの特定を削除するものであるから、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定したものであるとは認められない。
したがって、本件補正の請求項1についてする補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。

また、本件補正の請求項1についてする補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的としたものではないことも明らかである。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により本件補正を却下する。

上記のように、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるが、仮に、本件補正が同項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものとすると、補正後の請求項1に係る発明は、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定(特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。以下、「独立特許要件」という。)に適合する必要がある。
そこで、独立特許要件について、予備的に検討すると、まず、本件補正後の請求項1に係る発明の「洗浄後の前記ワークの乾燥に真空ポンプを寄与させることなく、前記開閉バルブによって前記凝縮室と前記洗浄室とを連通させることによって洗浄後の前記ワークを乾燥させる」という事項は、原出願の当初明細書の段落[0029],[0030],[0040]の記載から、自明な事項といえ、その他、本願の分割要件を認めないとする特段の事情は存在しない。
そして、本件補正後の請求項1に係る発明の「洗浄後の前記ワークの乾燥に真空ポンプを寄与させることなく」という事項は、請求人が審判請求書において主張するように、「既に登録されている特許第6220018号(当審注:分割出願2の特許)の請求項2…に記載された事項と同様の事項であ」り、また、本件補正後の請求項1に係る発明の他の発明特定事項も前記特許第6220018号の請求項2に係る発明の他の発明特定事項と同じであって、本件補正後の請求項1に係る発明は、分割出願2(特許第6220018号)の請求項2に係る発明と同一である。
したがって、本願は、特許法第39条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本件補正は、仮に特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものとしても、同条第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明
本件補正は、上記「第2 補正の却下の決定」のとおり、却下された。
したがって、本願の請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりである。

「【請求項1】
石油系溶剤の蒸気を生成する蒸気生成手段と、
前記蒸気生成手段から供給される蒸気によって減圧下でワークを洗浄可能な洗浄室と、
前記洗浄室に隣接し、減圧状態に保持される凝縮室と、
前記凝縮室を前記洗浄室よりも低い温度に保持する温度保持手段と、
前記凝縮室と前記洗浄室とを連通させ、または、その連通を遮断する開閉バルブと、を備え、
前記凝縮室と前記洗浄室とは配管を用いることなく前記開閉バルブを介して接続され、
前記開閉バルブによって前記凝縮室と前記洗浄室とを連通させることによって洗浄後の前記ワークを乾燥させることを特徴とする真空洗浄装置。
【請求項2】
ワークが搬入された洗浄室および当該洗浄室に隣接した凝縮室を減圧する工程と、
石油系溶剤の蒸気を生成し、当該蒸気を減圧下にある前記洗浄室に供給して前記ワークを洗浄する工程と、
減圧下にある前記凝縮室を前記洗浄室よりも低い温度に保持する工程と、
前記凝縮室と前記洗浄室とを配管を用いることなく開閉バルブを介して接続し、当該開閉バルブを開弁して前記洗浄室と前記凝縮室とを連通させることによって洗浄後の前記ワークを乾燥させる工程と
を含む真空洗浄方法。」


第4 原査定の概要
原査定(令和 元年 7月23日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願は分割の要件を満たさず、出願日の遡及を認めることが出来ない。
そして、本願請求項1、2に係る発明は、引用文献1(特許第5695762号公報)に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第5 判断
1.分割要件について
本願が、二以上の発明を包含する特許出願の一部を新たな特許出願としたものであるといえるためには、本願の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「明細書等」という。)に記載された事項が、原出願、分割出願1、分割出願2の出願当初の明細書等及び分割直前の明細書等(本件の場合、分割出願1、分割出願2及び本願が、それぞれ原出願、分割出願1及び分割出願2について特許をすべき旨の謄本の送達があった日から30日以内にされた分割出願であるから、原出願、分割出願1、分割出願2の登録時の明細書等)に記載された事項の範囲内でなければならない。
本願の明細書等に記載されて事項のうち、凝縮室と洗浄室とは「配管を用いることなく」接続されている点以外は、原出願、分割出願1、分割出願2の出願当初及び分割直前の明細書等に記載されていることが明らかなため、上記の点について検討する。

原出願、分割出願1、分割出願2の出願当初及び分割直前の明細書には、各構成要素間を配管により接続することが以下のように記載されている。
・洗浄室2は蒸気供給管7を介して蒸気発生室8に接続されている(原出願及び分割出願1の明細書の段落[0016]、分割出願2の明細書の段落[0015])
・洗浄室2には、配管9を介して、真空ポンプ10が接続されている(原出願及び分割出願1の明細書の段落[0017]、分割出願2の明細書の段落[0016])
・凝縮室21も、洗浄室2と同様に、配管9から分岐する分岐管25を介して真空ポンプ10に接続されている(原出願及び分割出願1の明細書の段落[0018]、分割出願2の明細書の段落[0017])
・洗浄室2には、この洗浄室2を大気開放するための配管11が接続されている(原出願及び分割出願1の明細書の段落[0017]、分割出願2の明細書の段落[0016])
・凝縮室21の底部には、リターン配管23を介して、リザーバタンク24が接続されている(原出願及び分割出願1の明細書の段落[0019]、分割出願2の明細書の段落[0018])
また、原出願、分割出願1、分割出願2の出願当初及び分割直前の図1には、上述した各配管を示す線が図示されている。ここで、原出願、分割出願1、分割出願2の出願当初及び分割直前の図1は、次に示すような同じ図である。


一方、原出願、分割出願1、分割出願2の出願当初及び分割直前の明細書には、洗浄室2には、開閉手段である開閉バルブ20を介して、凝縮室21が接続されていることが記載されており(原出願及び分割出願1の明細書の段落[0018]、分割出願2の明細書の段落[0017])、洗浄室2と凝縮室21との間の配管による接続については言及されていない。
さらに、原出願、分割出願1、分割出願2の出願当初及び分割直前の図1からは、洗浄室2と凝縮室21とが、凝縮室21と略同一の高さを有する開閉バルブ20に接触している様子が看取され、配管を示す線は洗浄室2と凝縮室21との間に図示されていない。

以上のことから、原出願、分割出願1、分割出願2の出願当初及び分割直前の明細書等には、凝縮室と洗浄室とは「配管を用いることなく」接続されている点が記載されているといえる。
したがって、本願の明細書等に記載された事項は、原出願、分割出願1、分割出願2の出願当初及び分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であると認められる。
さらに、分割出願1及び分割出願2が分割要件を満たさないという特段の事情は認められず、本願が分割要件を満たさないとする、その他の理由も認められない。

よって、本願は、二以上の発明を包含する特許出願の一部を新たな特許出願としたものであるから、本願は原出願の特許出願の時にしたものとみなす。

2.進歩性について
本願の出願日は、原出願の出願日である平成24年11月20日に遡及するから、本願は優先権の主張の効果も認められることとなり、引用文献1(発行日 平成27年4月8日)は本願の優先日(平成23年11月25日)前に日本国内又は外国において頒布された刊行物ではない。すると、この引用文献1を基に、本願発明1,2について、優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。


第6 むすび
本願発明1、2は、当業者が本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。


 
審決日 2020-09-25 
出願番号 特願2017-187515(P2017-187515)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B08B)
P 1 8・ 4- WY (B08B)
P 1 8・ 57- WY (B08B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大内 康裕大光 太朗村山 達也片岡 弘之  
特許庁審判長 柿崎 拓
特許庁審判官 長馬 望
小川 恭司
発明の名称 真空洗浄装置および真空洗浄方法  
代理人 清水 雄一郎  
代理人 寺本 光生  
代理人 高橋 久典  
代理人 清水 雄一郎  
代理人 高橋 久典  
代理人 西澤 和純  
代理人 西澤 和純  
代理人 寺本 光生  

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