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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K |
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管理番号 | 1366860 |
審判番号 | 不服2020-8 |
総通号数 | 251 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-01-06 |
確定日 | 2020-11-02 |
事件の表示 | 特願2016- 18130「電子部品」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月10日出願公開、特開2017-139294、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年2月2日の出願であって、その手続の経緯は以下の通りである。 令和元年 6月 6日付け:拒絶理由通知書 令和元年 8月 8日 :意見書、手続補正書 令和元年10月25日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和2年 1月 6日 :審判請求書、手続補正書 第2 原査定の拒絶の概要 この出願の以下の請求項に係る発明は、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項1,6 ・引用文献1-2 ・請求項2-4 ・引用文献1-3 ・引用文献5 ・引用文献1-4 引用文献等一覧 引用文献1:特開2010-272837号公報 引用文献2:特開2004-124257号公報 引用文献3:国際公開第2016/013473号 引用文献4:特開平4-263486号公報(周知技術を示す文献) 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正によって請求項1に「前記下地配線層の周囲は前記中間層によって覆われ、前記中間層の周囲は前記Cuめっき膜層によって覆われており」という事項を追加する補正は、補正前の請求項1に記載のあった発明を特定するために必要な事項である「下地配線層」、「中間層」、「Cuめっき膜層」の配置関係を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、追加された事項は、願書に最初に添付した明細書の【0046】に「下地配線層(Cu焼結体層)21を給電膜として、Cuの電解めっきを行い、…中間層22を形成するとともに、中間層22上にCuめっき膜層23を形成した」と記載され、図1からも見てとれる。 よって、新規事項の追加には該当せず、さらに補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、本願発明1-6は、独立特許要件を満たすものである。 よって、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 第4 本願発明 本願の請求項1-6に係る発明(以下、「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、令和2年1月6日提出の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 基材と、前記基材上に配設された導体層を備えた電子部品であって、 前記導体層が、 前記基材上に配設された、平均結晶子径が60nm以上150nm以下のCu焼結体を有する下地配線層と、 前記下地配線層を構成するCu焼結体の表面近傍の空隙が、Cuめっき金属により埋められてなる中間層と、 前記中間層上に形成されたCuめっき膜層と を具備しており、 前記下地配線層の周囲は前記中間層によって覆われ、前記中間層の周囲は前記Cuめっき膜層によって覆われており、 前記Cu焼結体は、Cu粒子どうしが焼結して連結した焼結体であることを特徴とする電子部品。 【請求項2】 前記基材がビアホールを有し、前記ビアホールにはビア電極が配設され、前記導体層が前記ビア電極と電気的に接続するように配設されているとともに、前記導体層を構成する前記下地配線層と前記ビア電極とが両者の界面で金属結合していることを特徴とする請求項1記載の電子部品。 【請求項3】 前記ビア電極が、CuまたはCu合金を含む材料から形成されたものであることを特徴とする請求項2記載の電子部品。 【請求項4】 前記基材の一方の主面と他方の主面の両方に、前記導体層が配設されていることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の電子部品。 【請求項5】 前記基材が複数枚積層されて積層体を構成し、前記導体層が前記積層体の内部に配設されているとともに、前記積層体の内部に配設され、前記基材を介して対向する前記導体層の少なくとも一部が、前記ビア電極を介して層間接続されていることを特徴とする請求項2または3に記載の電子部品。 【請求項6】 前記基材が、有機材料および無機材料のいずれか一方、または両者を組み合わせた材料から形成されていることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の電子部品。」 第5 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について (1)記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された本願出願前に頒布された文献である、特開2010-272837号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。下線は、当審で付与した。 「【0001】 本発明は、プリント配線板用基板、プリント配線板、及びプリント配線板用基板の製造方法に関する。」 「【0020】 前記導電性インクに含まれる金属粒子の大きさは、粒子径が1?500nmのものを用いる。この粒子径は通常の塗装用のものに比べて著しく小さく、緻密な導電薄膜を得るのに適したものとされている。粒子径が1nm未満の場合は、インク中での分散性、安定性が必ずしもよくないのと、粒子が小さすぎて積層に係る塗装に手間がかかる。また500nmを超える場合は、沈殿しやすく、また塗布した際にムラが出やすくなる。分散性、安定性、ムラ防止等を考慮して、好ましくは30?100nmがよい。」 「【0035】 (塗布層の熱処理) 絶縁性の基材11上に塗布された導電性インクを熱処理することで、焼成された塗布層として基材上に固着された第1導電層12を得る。導電層の厚みは0.05?2μmが好ましい。 熱処理により、塗布された導電性インクに含まれる分散剤やその他の有機物を、熱により揮発、分解させて塗布層から除去すると共に、残る金属粒子を焼結状態或いは焼結に至る前段階にあって相互に密着して固体接合したような状態として絶縁性の基材11上に強固に固着させる。 熱処理は、大気中で行ってもよい。また金属粒子の酸化を防止するために、大気中で焼成後に、還元雰囲気中で更に焼成してもよい。焼成の温度は、前記焼成によって形成される第1導電層12の金属の結晶粒径が大きくなりすぎたり、ボイドが発生したりするのを抑制する観点から700度以下とすることができる。 勿論、前記熱処理は、絶縁性の基材11がポリイミド等の有機樹脂の場合は、絶縁性の基材11の耐熱性を考慮して500℃以下の温度で行う。熱処理温度の下限は、導電性インクに含有される金属粒子以外の有機物を塗布層から除去する目的を考慮して、150℃以上が好ましい。 …中略… 以上で、導電性インクによる絶縁性の基材11上への塗布と、塗布層の熱処理によって第1導電層12を構成する工程が完了する。」 「【0039】 (本発明に係る他のプリント配線板) ここでは、上記した本発明のプリント配線板用基板1を用いて形成したプリント配線板2とは異なるタイプのプリント配線板、即ち本発明のプリント配線板用基板を必ずしも必要とすることなく、しかも導電性インクの塗布層としての第1導電層とめっき層による第2導電層との対を備えたプリント配線板を説明する。 即ち、本発明に係る他のプリント配線板は、プリント配線層を構成する複数層の一部に、導電性インクの塗布層として構成された第1導電層と、該第1導電層の上にめっき層として構成された第2導電層とを、対として有するものである。別の言い方をすると、プリント配線板は絶縁性の基材を介して対向する導電層を有する多層板であって、前記導電層が第1の導電層と第2の導電層を有し、第1の導電層が導電性インクの塗布層として構成され、第2の導電層が第1の導電層の上にめっき層として構成されたものである。 【0040】 本発明に係る他のプリント配線板の実施形態の第1の例を、図3を参照して説明する。 この第1の例では、絶縁性の基材31を下層として、図3の(A)?(F)の順序で、セミアディティブ法によりプリント配線板3を製造している。 即ち、先ず絶縁性の基材31を用意する(A)。絶縁性の基材31は、ポリイミド等の既述した絶縁性の基材11と同様の材料を用いることができる。 次に前記絶縁性の基材31を下層として、絶縁性の基材31の上に1?500nmの粒子径をもつ金属粒子を分散させた導電性インクを塗布し、熱処理を施して、第1導電層32を塗布層として積層する(B)。金属粒子は、典型的にはチタンレドックス法により得られたCu粒子の他、既述した種々の金属粒子を用いることができる。また導電性インクについても既述したものを用いることができる。更に熱処理についても既述した熱処理条件を用いることができる。 次に第1導電層32の上にレジスト3aにより、配線パターン3bとなるべき部分以外を被覆する(C)。 次に電気めっき法により、レジスト3a以外の配線パターン3bとなるべき部分に第2導電層33を積層する(D)。 次に、レジスト3aを除去する(E)。 次にエッチングを施して、レジスト3aがあった部分の第1導電層32を除去する(F)。 以上によりプリント配線板3が得られる。 得られたプリント配線板3は、複数層からなり、その一部にプリント配線層を構成している。また複数層の一部に、第1導電層32と第2導電層33とを対として有している。」 「【0042】 以上において説明したプリント配線板用基板、プリント配線板、プリント配線板用基板の製造方法においては、基材11(31、41)の上に第1導電層12(32、42)を導電性インクを用いて塗布、積層し、その後、第2導電層13(33、43)を電気めっきにより積層するのを主たる構成乃至製造方法としたが、第1導電層12(32、42)を導電性インクで構成する工程を経た後、第2導電層13(33、43)を積層する工程を行う前に、第1導電層12(32、42)に対して無電解金属めっき工程を行うことが効果的である。 無電解金属めっきはCu、Ag、Niなどが考えられるが、第1導電層12(32、42)、第2導電層13(33、43)をCuとする場合は、密着性、コストを考慮して、Cu、Niとするのがよい。 【0043】 即ち図5(A)で示す基材11(31、41)に、図5(B)で示す第1導電層12(32、42)を施した後、第1導電層12(32、42)に対して、無電解金属めっきを施すことで、図5(B’)で示す無電解金属めっき部12a(32a、42a)を構成し、これによって前記第1導電層12(32、42)に存在する空隙部が、無電解金属めっき部12a(32a、42a)によって充填されるようにする。 前記無電解金属めっき部12a(32a、42a)は、第1導電層12(32、42)の後述する空隙部V、より正しくは第1導電層12(32、42)の表面と連通する空隙部Vに充填される。ここで「充填」とは、少なくとも表面と連通する空隙部Vの底に基材11(31、41)が露出することなく、基材11(31、41)が無電解金属めっき部12a(32a、42a)で覆われているという意味である。よって無電解金属めっき部12a(32a、42a)は、第1導電層12(32、42)の空隙部Vを第1導電層12(32、42)の丁度表面まで面一状態に充填する他、表面には面一に満たない状態で充填される場合や、面一を超えて充填される場合も含む。面一を超えて充填される場合は、第1導電層12(32、42)の面上に多少の無電解金属めっき層が積層された状態となる。このような場合も前記「充填」に含まれるものとする。 無電解金属めっき部12a(32a、42a)を施すことによって、第1導電層12の表面全面が金属、即ち導電性物質からなる表面となり、その後に第2導電層13(33、43)を電気めっき法で積層した際に緻密な層を得ることができる。」 (2)技術的事項 上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア 段落【0001】の記載によれば、引用文献1に記載された技術は、「プリント配線板」に関するものである。 イ 段落【0039】の記載によれば、「プリント配線板」は「基材を介して対向する導電層を有」するものであり、また、「導電層は第1の導電層と第2の導電層を有し」ている。また、段落【0042】の記載によれば、「第1導電層12(32、42)を導電性インクで構成する工程を経た後、第2導電層13(33、43)を積層する工程を行う前に、第1導電層12(32、42)に対して無電解金属めっき工程を行う」。 してみると、「導電層」は「第1の導電層と無電解金属めっき部と第2の導電層」を有するものである。 ウ 段落【0040】の記載によれば、「第1導電層」は、「基材の上に1?500nmの粒子径をもつ金属粒子を分散させた導電性インクを塗布し、熱処理を施し」たものであり、「金属粒子」には「Cu粒子」が用いられる。また、段落【0035】の記載によれば、「導電性インク」は、「熱処理により」「焼結状態」にある。してみると、「第1導電層」は、「基材の上に1?500nmのCu粒子を分散させた導電性インクを塗布し、熱処理を施して焼結状態にした」ものである。 エ 段落【0042】、【0043】によれば、「無電解金属めっき部」は、「第1導電層に対して無電解金属めっき工程を行う」ことで、「第1導電層の表面と連通する空隙部に充填される」。また、段落【0042】によれば、「第1導電層、第2導電層をCuとした場合」に、「無電解金属めっき部」が「Cu、Ni」からなる。してみると、「無電解金属めっき部」は、「第1導電層に対してCu、Niからなる無電解金属めっき工程を行う」ことで、「第1導電層の表面と連通する空隙部に充填」されたものである。 オ 段落【0042】によれば、「第2導電層」は、「電気めっきにより」形成され「Cuからなる」。また、「第1導電層12(32、42)を導電性インクで構成する工程を経た後、第2導電層13(33、43)を積層する工程を行う前に、第1導電層12(32、42)に対して無電解金属めっき工程を行う」から、「第2導電層」は、「無電解金属めっき」部上に形成される。 (3)引用発明 上記ア?オから、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「基材を介して対向する導電層を有し、導電層は第1の導電層と無電解金属めっき部と第2の導電層を有するプリント配線板であって、 第1導電層は、基材の上に粒子径が1?500nmのCu粒子を分散させた導電性インクを塗布し、熱処理を施して焼結状態にしたものであり、 無電解金属めっき部は、第1導電層に対してCu、Niからなる無電解金属めっき工程を行うことで、第1導電層の表面と連通する空隙部に充填されたものであり、 第2導電層は、無電解金属めっき部上に電気めっき法により形成されたCuからなるものである プリント配線板。」 2 引用文献2について (1)記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された本願出願前に頒布された文献である、特開2004-124257号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。下線は、当審で付与した。 「【0001】 本発明は、金属銅微粒子及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、導電ペースト用材料として好適な、BET径が3μm以下で、大きな結晶子サイズを有する分散性の良い真球状の金属銅微粒子、及びそれを製造するための方法に関する。」 「【0033】 (実施例1) 縦形に配置した石英管(内径70mm)に高純度銅金属をいれたアルミナ製坩堝(内径50mm)をいれ、内部を窒素ガスで置換した後、抵抗加熱式の電気炉で加熱し銅を溶解し、熔体温度を1200℃に維持した。ついで、溶融状態の銅表面の上方に設けたノズルから3リットル/分(銅単位面積当たり0.15リットル/cm^(2)・分)の流量でアンモニアガスを溶体表面に吹き付けた。生成した微粒子をフィルターで捕集した。 得た微粒子をX線回折で調べたところ、金属銅であることが確認できた。また、この微粒子を走査電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、微粒子は球状で、その粒径は0.3?7μmであった。また、BET法でBET径を求めたところ、2.9μmであつた。また、FIBで加工した断面のSIM像から、微粒子はほとんどが単結晶であり、他は大きな単結晶に1?2個の小さな結晶が合わさった粒子であることがわかった。1μm以下の粒子はほぼ単結晶で、5μm程度の粒子にも単結晶があり、結晶子サイズは0.3?5μmであることがわかった。つまり、実質上、ほぼ単結晶であると言えるものであることがわかった。」 (2)技術的事項 上記記載から、引用文献2には、「導電ペースト用材料として好適な、BET径が3μm以下で、大きな結晶子サイズを有する分散性の良い真球状の金属銅微粒子であって、粒径は0.3?7μmで、結晶子サイズが0.3?5μmの銅微粒子」という技術的事項が記載されているといえる。 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明との対比を行う。 ア 引用発明の「基材」、「基材を介して対向する導電層を有するプリント配線板」は、本願発明1の「基材」、「基材上に配置された導体層を備えた電子部品」にそれぞれ相当する。 イ 引用発明の「第1の導体層」は、基材に設けられ、Cu粒子を分散させた導電性インクを塗布し、熱処理を施して焼結状態にしたものであるから、本願発明1の「基材上に配設された、」「Cu焼結体を有する下地配線層」、「Cu粒子どうしが焼結して連結した焼結体」に相当する。 ただし、引用文献1には、導電性インクに含まれる金属粒子の「粒子径」が好ましくは30?100nmであることが記載(段落【0020】)されているものの、金属粒子の「平均結晶子径」についての記載はなく、「Cu焼結体」に関して、本願発明1は「平均結晶子径が60nm以上150nm以下のCu焼結体」であるのに対して、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。 ウ 引用発明の「無電解金属めっき部」は、Cuを含み、第1導電層の表面と連通する空隙部に充填されているから、本願発明1の「前記下地配設層を構成するCu焼結体の表面近傍の空隙が、Cuめっき金属により埋められてなる中間層」に相当する。 エ 引用発明の「第2の導体層」は、Cuからなり、無電解金属めっき部上に電気めっきにより形成されるから、本願発明1の「前記中間層上に形成されたCuめっき膜層」に相当する。 オ 上記イ?エを踏まえると、引用発明の「第1の導体層」「無電解金属めっき部」「第2の導体層」を有する「導電層」は、本願発明1の「導体層」に対応する。 ただし、「導電層」に関して、本願発明1は「前記下地配線層の周囲は前記中間層によって覆われ、前記中間層の周囲は前記Cuめっき膜層によって覆われて」いるのに対して、引用発明はその旨特定していない点で相違する。 したがって、本願発明1と引用発明の一致点、相違点は次の通りである。 (一致点) 基材と、前記基材上に配設された導体層を備えた電子部品であって、 前記導体層が、 前記基材上に配設された、Cu焼結体を有する下地配線層と、 前記下地配線層を構成するCu焼結体の表面近傍の空隙が、Cuめっき金属により埋められてなる中間層と、 前記中間層上に形成されたCuめっき膜層とを具備しており、 前記Cu焼結体は、Cu粒子どうしが焼結して連結した焼結体である 電子部品。 (相違点1) 「Cu焼結体」に関して、本願発明1は「平均結晶子径が60nm以上150nm以下」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (相違点2) 「導電層」に関して、本願発明1は「前記下地配線層の周囲は前記中間層によって覆われ、前記中間層の周囲は前記Cuめっき膜層によって覆われて」いるのに対して、引用発明はその旨特定されていない点。 (2)相違点についての判断 引用文献1には、導電性インクに含まれる金属粒子の粒子径が分散性、安定性、ムラ防止等を考慮して、30?100nmがよいことが記載されている(段落【0020】)のに対し、引用文献2では、粒径が0.3?7μmである銅微粒子が用いられている(段落【0033】)。してみると、引用文献1にとって好ましくない引用文献2に記載された粒径を引用発明に採用する動機付けは認められない。 また、引用文献2に記載された銅微粒子は、焼結「前」の結晶子が0.3?5μmであることは記載されている(段落【0033】)ものの、当該銅微粒子の焼結「後」の平均結晶子径が60nm以上150nm以下となることは記載されておらず、当業者にとって自明ともいえない。 したがって、引用発明に引用文献2に記載された技術を適用して、相違点1に係る構成を得ることが容易であったとはいえない。 また、「平均結晶子径が60nm以上150nm以下のCu焼結体」であるという構成は、原査定の拒絶の理由で引用された国際公開第2016/013473号(以下、「引用文献3」という。)、特開平4-263486号公報(以下、「引用文献4」という。)にも記載されておらず、本願出願前において周知技術であるともいえない。 よって、引用文献1-4に記載された発明に基づいて本願発明1の相違点1に係る構成を得ることは、当業者が容易に為したとこととはいえない。 したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 2 本願発明2-6について 本願発明1を引用する本願発明2-6も、上記相違点1に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献1-4に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-10-06 |
出願番号 | 特願2016-18130(P2016-18130) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H05K)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 鹿野 博司 |
特許庁審判長 |
酒井 朋広 |
特許庁審判官 |
山田 正文 山本 章裕 |
発明の名称 | 電子部品 |
代理人 | 西澤 均 |