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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1366922
審判番号 不服2019-15491  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-19 
確定日 2020-10-08 
事件の表示 特願2016- 49871「半導体素子搭載用基板、半導体装置、半導体素子搭載用基板の製造方法、及び半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月21日出願公開、特開2017-168510〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)3月14日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成31年 2月15日付け:拒絶理由通知書
平成31年 4月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和 1年 9月 5日付け:拒絶査定
令和 1年11月19日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和1年11月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年11月19日にされた手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
令和1年11月19日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び明細書についてするもので、特許請求の範囲については、

本件補正前に、
「 【請求項1】
導電性基板と、
前記導電性基板の表面上の所定領域に設けられためっき層からなるリード部と、を備え、
前記めっき層は、前記導電性基板と接触する所定厚の下地めっき層と、該下地めっき層の上側に形成された主めっき層が設けられ、前記下地めっき層が前記導電性基板と同種のエッチング液で可溶な金属めっきであり、
前記導電性基板の表面上に半導体素子搭載部が設けられ、
前記リード部は、前記半導体素子搭載部の周辺に設けられ、
前記下地めっき層の厚さは、0.5μm以上である半導体素子搭載用基板。
【請求項2】
前記下地めっき層の厚さは、2.0μm以下である請求項1に記載の半導体素子搭載用基板。
【請求項3】
前記導電性基板がCu又はCu合金であり、前記下地めっき層がCuめっきである請求項1又は2に記載の半導体素子搭載用基板。
【請求項4】
前記半導体素子搭載部は、前記リード部を構成する前記めっき層と同一の積層構成を有するめっき層からなる請求項1乃至3の何れか1項に記載の半導体素子搭載用基板。
【請求項5】
前記半導体素子搭載部及び前記リード部の断面形状は、逆台形であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の半導体素子搭載用基板。
【請求項6】
半導体素子と、
めっき層からなるリード部と、
前記半導体素子と前記リード部とを電気的に接続する接続体と、
少なくとも前記リード部の底面以外の領域と、前記半導体素子及び、前記接続体とを封止する封止樹脂部とを、備え、
前記半導体素子は半導体素子搭載部上に設けられ、
前記リード部は、前記半導体素子搭載部の周辺に設けられ、
前記リード部の底面は、前記封止樹脂部の底面より、少なくとも0.5μm以上の深さを有する凹部となっていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
前記凹部の深さは、2.0μm以下であることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体素子搭載部は、前記リード部を構成する前記めっき層と同一の積層構成を有するめっき層からなる請求項6又は7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記半導体素子搭載部及び前記リード部の断面形状は、逆台形であることを特徴とする請求項6乃至8の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
導電性基板の表面上に設けられた半導体素子の周囲の前記導電性基板の前記表面上の所定領域に、めっき層からなるリード部が設けられた半導体素子搭載用基板の製造方法であって、
前記導電性基板上にレジスト層を被覆し、
前記レジスト層にリード部を設ける領域にパターンニングを施しレジストマスクを形成し、
前記レジストマスクの開口部の前記導電性基板が露出した領域に、前記リード部を設けるための下地めっき層と主めっき層とを、形成し、
前記下地めっき層は、前記導電性基板と同種のエッチング液で溶解可能な金属めっきであり、かつ、前記下地めっきのめっき液は前記レジストマスクに耐性のあるめっき液であり、
前記半導体素子は半導体素子搭載部上に設けられ、
前記リード部は、前記半導体素子搭載部の周辺に設けられ、
前記下地めっき層の厚さは、0.5μm以上である半導体素子搭載用基板の製造方法。
【請求項11】
前記導電性基板は、Cu又はCu合金であり、前記レジストマスクは、アルカリ系のレジストであり、前記下地めっきのめっき液は、酸性のめっき液である請求項10の半導体素子搭載用基板の製造方法。
【請求項12】
前記半導体素子搭載部及び前記リード部の断面形状は、逆台形であることを特徴とする請求項10又は11に記載の半導体素子搭載用基板の製造方法。
【請求項13】
請求項10乃至12の何れか1項に記載された半導体素子搭載用基板の製造方法により製造された半導体素子搭載用基板上に、半導体素子を搭載し、
前記半導体素子と前記リード部とを電気的に接続し、
少なくとも前記リード部の底面以外の領域と、前記半導体素子と、接続体とを、封止し、
導電性基板を溶解除去する半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記リード部の底面は、封止樹脂部の底面より、少なくとも0.5μm以上の深さを有する凹部であることを特徴とする請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記凹部の深さは、2.0μm以下であることを特徴とする請求項14に記載の半導体装置の製造方法。」とあったところを、

本件補正により、
「 【請求項1】
導電性基板と、
前記導電性基板の表面上の所定領域に設けられためっき層からなるリード部と、を備え、
前記めっき層は、前記導電性基板と接触する所定厚の下地めっき層と、該下地めっき層の上側に形成された主めっき層が設けられ、前記下地めっき層が前記導電性基板と同種のエッチング液で可溶な金属めっきであり、
前記導電性基板は、前記下地めっきが形成される部分にのみ、活性化のための前処理が施され、
前記導電性基板の表面上に半導体素子搭載部が設けられ、
前記リード部は、前記半導体素子搭載部の周辺に設けられ、
前記下地めっき層は、前記主めっき層を形成するためのめっき液を堰止めするためであり、前記下地めっき層の厚さは、0.5μm以上、2.0μm以下である半導体素子搭載用基板。
【請求項2】
前記導電性基板がCu又はCu合金であり、前記下地めっき層がCuめっきである請求項1に記載の半導体素子搭載用基板。
【請求項3】
前記半導体素子搭載部は、前記リード部を構成する前記めっき層と同一の積層構成を有するめっき層からなる請求項1又は2に記載の半導体素子搭載用基板。
【請求項4】
前記半導体素子搭載部及び前記リード部の断面形状は、逆台形であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の半導体素子搭載用基板。
【請求項5】
半導体素子と、
めっき層からなるリード部と、
前記半導体素子と前記リード部とを電気的に接続する接続体と、
少なくとも前記リード部の底面以外の領域と、前記半導体素子及び、前記接続体とを封止する封止樹脂部とを、備え、
前記半導体素子は半導体素子搭載部上に設けられ、
前記リード部は、前記半導体素子搭載部の周辺に設けられ、
前記リード部の底面は、前記封止樹脂部の底面より、0.5μm以上、2.0μm以下の深さを有する凹部となっていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
前記半導体素子搭載部は、前記リード部を構成する前記めっき層と同一の積層構成を有するめっき層からなる請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体素子搭載部及び前記リード部の断面形状は、逆台形であることを特徴とする請求項5又は6に記載の半導体装置。
【請求項8】
導電性基板の表面上に設けられた半導体素子の周囲の前記導電性基板の前記表面上の所定領域に、めっき層からなるリード部が設けられた半導体素子搭載用基板の製造方法であって、
前記導電性基板上にレジスト層を被覆し、
前記レジスト層にリード部を設ける領域にパターンニングを施しレジストマスクを形成し、
前記レジストマスクの開口部の前記導電性基板が露出した領域に、活性化のための前処理を施した後、前記リード部を設けるための下地めっき層と主めっき層とを、形成し、
前記下地めっき層は、前記導電性基板と同種のエッチング液で溶解可能な金属めっきであり、かつ、前記下地めっきのめっき液は前記レジストマスクに耐性のあるめっき液であり、
前記半導体素子は半導体素子搭載部上に設けられ、
前記リード部は、前記半導体素子搭載部の周辺に設けられ、
前記下地めっき層は、前記主めっき層を形成するためのめっき液を堰止めするためであり、
前記下地めっき層の厚さは、0.5μm以上、2.0μm以下である半導体素子搭載用基板の製造方法。
【請求項9】
前記導電性基板は、Cu又はCu合金であり、前記レジストマスクは、アルカリ系のレジストであり、前記下地めっきのめっき液は、酸性のめっき液である請求項8の半導体素子搭載用基板の製造方法。
【請求項10】
前記半導体素子搭載部及び前記リード部の断面形状は、逆台形であることを特徴とする請求項8又は9に記載の半導体素子搭載用基板の製造方法。
【請求項11】
請求項8乃至10の何れか1項に記載された半導体素子搭載用基板の製造方法により製造された半導体素子搭載用基板上に、半導体素子を搭載し、
前記半導体素子と前記リード部とを接続体により電気的に接続し、
少なくとも前記リード部の底面以外の領域と、前記半導体素子と、前記接続体とを、封止し、
導電性基板を溶解除去する半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記リード部の底面は、封止樹脂部の底面より、0.5μm以上、2.0μm以下の深さを有する凹部であることを特徴とする請求項11に記載の半導体装置の製造方法。」とするものである。なお、下線部は補正箇所を示す。

本件補正により、補正後の請求項1,8は、下地めっき層について、「前記下地めっき層は、前記主めっき層を形成するためのめっき液を堰止めするためであ」る点を限定すると共に、下地めっき層の厚さについて、「0.5μm以上」とあったのを「0.5μm以上、2.0μm以下」とし、上限値を2.0μmに限定した。また、補正後の請求項1,8は、下地めっきが形成される部分に対してのみ「活性化のための前処理」が施される点が限定された。上記補正は特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正により、本件補正後の請求項5,12は、リード部の底面に設けられた凹部の深さについて、「少なくとも0.5μm以上」とあったのを「0.5μm以上、2.0μm以下」とし、上限値を2.0μmに限定した。上記補正は特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
更に、本件補正により、本件補正後の請求項11は、「半導体素子」と「リード部」とが「接続体」により電気的に接続されることが明確化された。上記補正は特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

そこで、特許請求の範囲の減縮を目的とする本件補正の請求項5に記載された事項によって特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下検討する。

2.引用文献
(1)特開2003-078071号公報
原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-078071号公報(以下「引用文献1」という。)には、「半導体装置」に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

ア.「【0008】
【発明の実施の形態】本発明に係る半導体装置の製造方法の一例を図1に示す。図1は、本発明に係る半導体装置の製造方法の一例を説明するための工程図である。先ず、金属基板としての銅基板10の一面側に形成したレジスト層12にパターニングを施し、外部接続端子用パッドを形成する部分に銅基板10の表面が底面に露出する凹部14を形成する[図1(a)]。かかる凹部14内に露出している銅基板10の表面には、銅基板10を給電層とする電解めっきによって、銅基板10にエッチングを施すエッチング液に可溶の金属、具体的には銅から成る可溶金属層16を形成する[図1(b)]。更に、凹部14内に形成した可溶金属層16に引き続いて、銅基板10を給電層とする電解めっきによって複数の金属層を積層し、外部接続端子用パッド20を形成する[図1(c)]。」
イ.「【0011】銅基板10の一面側に封止樹脂層26を形成した後、銅基板10及び可溶金属層16とを同一エッチング液でエッチングして除去することによって、外部接続端子用パッド20の面が底面に露出する凹部28を、封止樹脂層26に形成できる[図1(f)]。かかる銅基板10及び可溶金属層16とをエッチングする際に、可溶金属層16に引き続いて形成された、銅基板10及び可溶金属層16にエッチングを施すエッチング液に不溶の不溶金属層としてAu層20aによって、外部接続端子用パッド20がオーバーエッチングされることを防止できる。この様にして形成された凹部28内に露出する外部接続端子用パッド20の露出面は、Au層20aによって形成されている。このため、図3に示す様に、外部接続端子としてのはんだボール30を、外部接続端子用パッド20に接合する際に、外部接続端子用パッド20とはんだボール30とを良好に接合できる。特に、図3に示す外部接続端子用パッド20の様に、Au層20aに引き続いてPd層20bが形成されている場合、はんだ濡れ性を向上でき、外部接続端子用パッド20とはんだボール30との接合力を向上できる。また、この場合、Au層20aをフラッシュめっきで形成して極めて薄い層としても、はんだ濡れ性を向上できる。」
ウ.「【0015】また、図6に示す半導体装置の様に、半導体素子22の一面側に形成された放熱部32が、封止樹脂層26に形成された凹部29の底面に露出するようにしてもよい場合がある。かかる図6に示す半導体装置を得るには、先ず、図7(a)に示す様に、レジスト層12にパターニングを施し、外部接続端子用パッド20を形成する部分に銅基板10の表面が底面に露出する凹部14と、放熱部32を形成する部分に放熱部用凹部31とを形成する。この凹部14及び放熱部用凹部31内には、銅から成る可溶金属層16を銅基板10を給電層とする電解めっきで形成する。更に、凹部14及び放熱部用凹部31内に可溶金属層16を形成した後、可溶金属層16に引き続いて、銅基板10を給電層とする電解めっきによって、同一金属から成る外部接続端子用パッド20を凹部14内に形成し、同時に放熱部用凹部31内にも、外部接続端子用パッド20と同一のめっき構成の放熱部32を形成する[図7(b)]。次いで、レジスト層12を除去し、放熱部32に半導体素子22を搭載する[図7(c)]。
【0016】その後、図1(e),(f)の工程と同様に、半導体素子22と外部接続端子用パッド20とをワイヤ24で電気的に接続した後、可溶金属層16及び外部接続端子用パッド20、ワイヤ24及び半導体素子22を樹脂封止する。更に、銅基板10及び可溶金属層16とを、同一エッチング液でエッチングして除去することによって、図6に示す半導体装置を得ることができる。」

・上記ウ及び図6によれば、半導体素子22と、外部接続端子用パッド20と、ワイヤ24と、放熱部32と、封止樹脂層26とを備えた半導体装置について記載されている。

・上記アによれば、外部接続端子用パッド20は、電解めっきによって複数の金属層を積層し形成されることが記載されている。

・上記ウによれば、半導体素子22と外部接続端子用パッド20とはワイヤ24で電気的に接続されることが記載されている。

・上記ウによれば、封止樹脂層26により、外部接続端子用パッド20、ワイヤ24及び半導体素子22を樹脂封止することが記載されている。

・上記ウによれば、放熱部32に半導体素子22を搭載することが記載されている。

・上記イによれば、外部接続端子用パッド20の面が底面に露出する凹部28を、封止樹脂層26に形成することが記載されている。

上記アないしウの記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「半導体素子22と、
電解めっきによって複数の金属層を積層し形成された外部接続端子用パッド20と、
半導体素子22と外部接続端子用パッド20とを電気的に接続するワイヤ24と、
半導体素子22を搭載する放熱部32と、
外部接続端子用パッド20、ワイヤ24及び半導体素子22を樹脂封止する封止樹脂層26とを備えており、
外部接続端子用パッド20の面が底面に露出する凹部28を封止樹脂層26に形成する、半導体装置。」

3.対比
そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比する。

(1)引用発明1の「半導体素子22」は、本願補正発明の「半導体素子」に相当する。

(2)引用発明1の「電解めっきによって複数の金属層を積層し形成された外部接続端子用パッド20」は、本願補正発明の「めっき層からなるリード部」に相当する。

(3)引用発明1の「半導体素子22と外部接続端子用パッド20とを電気的に接続するワイヤ24」は、本願補正発明の「前記半導体素子と前記リード部とを電気的に接続する接続体」に相当する。

(4)引用発明1の「封止樹脂層26」は、「外部接続端子用パッド20の面が底面に露出する凹部28を封止樹脂層26に形成」しているから、「ワイヤ24及び半導体素子22」と「外部接続端子用パッド20」の底面以外の領域を「樹脂封止」するものである。よって、引用発明1の「外部接続端子用パッド20、ワイヤ24及び半導体素子22を樹脂封止する封止樹脂層26」は本願補正発明の「少なくとも前記リード部の底面以外の領域と、前記半導体素子及び、前記接続体とを封止する封止樹脂部」に相当する。

(5)引用発明1の「半導体素子22を搭載する放熱部32」は、本願補正発明の「前記半導体素子は半導体素子搭載部上に設けられ」る構成に相当する。

(6)引用発明1の「外部接続端子用パッド20」と「放熱部32」は、ワイヤ24で接続される程度に離れたものであるから、本願補正発明の「前記リード部は、前記半導体素子搭載部の周辺に設けられ」ることに相当する構成を備えている。

(7)引用発明1の「外部接続端子用パッド20の面が底面に露出する凹部28を封止樹脂層26に形成する」ことは、「外部接続端子用パッド20」の底面が「封止樹脂層26」の底面よりも所定の深さだけ凹んでいるから、本願補正発明の「前記リード部の底面は、前記封止樹脂部の底面より」所定の「深さを有する凹部となっている」ことに相当する。
但し、本願補正発明が「0.5μm以上、2.0μm以下」の深さを有する凹部であるのに対し、引用発明1には凹部の深さが特定されていない。

そうすると、本願補正発明と引用発明1とは、
「半導体素子と、
めっき層からなるリード部と、
前記半導体素子と前記リード部とを電気的に接続する接続体と、
少なくとも前記リード部の底面以外の領域と、前記半導体素子及び、前記接続体とを封止する封止樹脂部とを、備え、
前記半導体素子は半導体素子搭載部上に設けられ、
前記リード部は、前記半導体素子搭載部の周辺に設けられ、
前記リード部の底面は、前記封止樹脂部の底面より所定の深さを有する凹部となっている」点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
凹部の所定の深さについて、本願補正発明は、「0.5μm以上、2.0μm以下」と特定するのに対し、引用発明1は特定されていない。

4.判断
上記相違点について検討する。
外部接続用の電極が周囲の絶縁層の表面から凹む深さとして「0.5μm以上、2.0μm以下」の範囲の値は、例えば原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2008/120755号の段落[0147]-[0148]及び図20(h)(銅からなる導体配線層73の高さは、周りを取り囲む絶縁樹脂層84より0.5?20μm程度低い位置)、特開2005-327780号公報の段落【0041】及び図1(下層配線の下面と基体絶縁膜の下面との間の距離:0.5乃至10μm)、特開2010-067888号公報の段落【0061】及び図5(形成すべきCu層24の厚さは、要求される凹部DP(図5)の深さに応じて決定され、例えば、1?30μm程度(好適には20μm程度)の厚さに形成)等に記載されているように、当該技術分野において普通に見られる値である。
そうすると、引用発明1の凹部28の深さは、はんだボールの接合強度が低いという難点を解消する程度の深さが必要であるところ、係る深さは半導体装置の具体的な実施の態様を考慮して当業者が適宜設計すべきものであり、凹部の深さを「0.5μm以上、2.0μm以下」の範囲を満たす値とすることは、当業者が容易になし得た事項である。

この点について、請求人は、審判請求書にて、「次に、『前記下地めっき層の厚さは、0.5μm以上、2.0μm以下である』ことも、どの引用文献にも記載や示唆がありません。」と主張している。
しかしながら、本願補正発明には、「凹部の深さ」が0.5μm以上、2.0μm以下であることについては記載されているものの、請求人の主張している「下地めっき層の厚さ」が0.5μm以上、2.0μm以下であることについては記載されておらず、請求人の上記主張は本願補正発明の記載に基づく主張ではなく採用できない。

また、請求人は、審判請求書にて、「まず、『前記導電性基板は、前記下地めっきが形成される部分にのみ、活性化のための前処理が施される』ことは、どの引用文献にも記載や示唆がありません。」、「次に、『前記下地めっき層は、前記主めっき層を形成するためのめっき液を堰止めするためである』ことも、どの引用文献にも記載や示唆がありません。」と主張している。
しかしながら、本願補正発明には、「活性化のための前処理」や「下地めっき層」が「めっき液を堰止めするため」のものであることについては記載されておらず、請求人の上記主張は本願補正発明の記載に基づく主張ではなく採用できない。

よって、請求人の主張はいずれも採用できない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1及び周知の技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正の請求項5に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
令和1年11月19日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成31年4月5日にされた手続補正の特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項6に係る発明は次のとおりである(以下「本願発明」という)。
「 【請求項6】
半導体素子と、
めっき層からなるリード部と、
前記半導体素子と前記リード部とを電気的に接続する接続体と、
少なくとも前記リード部の底面以外の領域と、前記半導体素子及び、前記接続体とを封止する封止樹脂部とを、備え、
前記半導体素子は半導体素子搭載部上に設けられ、
前記リード部は、前記半導体素子搭載部の周辺に設けられ、
前記リード部の底面は、前記封止樹脂部の底面より、少なくとも0.5μm以上の深さを有する凹部となっていることを特徴とする半導体装置。」

2.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記「第2[理由]2.引用文献」に記載したとおりであり、引用発明1は以下のとおりである。
「半導体素子22と、
電解めっきによって複数の金属層を積層し形成された外部接続端子用パッド20と、
半導体素子22と外部接続端子用パッド20とを電気的に接続するワイヤ24と、
半導体素子22を搭載する放熱部32と、
外部接続端子用パッド20、ワイヤ24及び半導体素子22を樹脂封止する封止樹脂層26とを備えており、
外部接続端子用パッド20の面が底面に露出する凹部28を封止樹脂層26に形成する、半導体装置。」

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2[理由]1.本件補正」で検討した本願補正発明から、リード部の底面に設けられた凹部の深さについて、「2.0μm以下」との上限値の限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2[理由]3.対比、4.判断、5.むすび」に記載したとおり、引用発明1及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明1及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項6に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。



 
審理終結日 2020-07-31 
結審通知日 2020-08-04 
審決日 2020-08-18 
出願番号 特願2016-49871(P2016-49871)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 駿平石丸 昌平  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 井上 信一
赤穂 嘉紀
発明の名称 半導体素子搭載用基板、半導体装置、半導体素子搭載用基板の製造方法、及び半導体装置の製造方法  
代理人 小池 晃  
代理人 村上 浩之  
代理人 北原 明彦  
代理人 河野 貴明  

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