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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1366925
審判番号 不服2019-16591  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-06 
確定日 2020-10-08 
事件の表示 特願2017-231426号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月22日出願公開、特開2018- 27479号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月4日(以下「遡及日」という。)に出願した特願2013-117544号の一部を平成29年12月1日に新たな特許出願(特願2017-231426号)としたものであって、平成30年9月25日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月26日に意見書及び手続補正書が提出され、平成31年4月3日付けで最後の拒絶の理由が通知され、令和1年6月3日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年10月3日付け(謄本送達日:同年同月8日)で、同年6月3日提出の手続補正書による補正が却下されるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年12月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 令和1年12月6日に提出された手続補正書による補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
令和1年12月6日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、平成30年11月26日に提出された手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1に、
「遊技を統括的に制御する遊技制御手段と、
遊技に関連した演出の制御を行う演出制御手段と、
遊技者が操作可能な操作手段と、
を備えた遊技機において、
前記操作手段は、第1操作手段と、第2操作手段と、を含み、
前記演出は、第1演出と、第2演出と、第3演出と、を含み、
前記演出制御手段は、
遊技が実行されていないことを条件として客待ち状態を実行可能であり、
前記客待ち状態中の前記第1操作手段に対する操作に基づいて前記第1演出を実行し、
前記客待ち状態中の前記第2操作手段に対する操作に基づいて前記第2演出を実行し、
遊技中の前記第2操作手段に対する操作に基づいて前記第3演出を実行し、
前記第1演出を実行する出力手段の出力強度を、前記客待ち状態中の出力強度よりも大きな出力強度とすることを特徴とする遊技機。」とあったものを、

「遊技を統括的に制御する遊技制御手段と、
遊技に関連した演出の制御を行う演出制御手段と、
遊技者が操作可能な操作手段と、
を備えた遊技機において、
前記遊技制御手段は、所定条件の成立により、識別情報が変動するゲームを実行可能であり、
前記操作手段は、第1操作手段と、第2操作手段と、を含み、
前記演出は、第1演出と、第2演出と、第3演出と、を含み、
前記演出制御手段は、
遊技が実行されていないことを条件として客待ち状態を実行可能であり、
前記客待ち状態中の前記第1操作手段に対する操作に基づいて前記第1演出を実行し、
前記客待ち状態中の前記第2操作手段に対する操作に基づいて前記第2演出を実行し、
遊技中の前記第2操作手段に対する操作に基づいて前記第3演出を実行し、
前記第1演出を前記ゲームが実行されていない状態で実行するとともに、当該第1演出に係る音を、前記客待ち状態中の出力強度よりも大きな出力強度で出力することを特徴とする遊技機。」とする補正を含むものである(下線は補正前後の箇所を明示するために合議体が付した。)。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、次の補正事項からなる。
ア 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「遊技制御手段」が、「所定条件の成立により、識別情報が変動するゲームを実行可能であり、」とする補正。

イ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「第1演出」に関し、「前記第1演出を実行する出力手段の出力強度を、前記客待ち状態中の出力強度よりも大きな出力強度とする」ことを「前記第1演出を前記ゲームが実行されていない状態で実行するとともに、当該第1演出に係る音を、前記客待ち状態中の出力強度よりも大きな出力強度で出力する」とする補正。

2 本件補正の目的、新規事項追加の有無
(1)ア 上記1(2)アの補正は、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)の【0036】ないし【0039】、【0055】ないし【0059】等の記載に基づいて、本件補正前の請求項1において記載されていた「遊技制御手段」が、「所定条件の成立により、識別情報が変動するゲームを実行可能であ」るものに限定するものである。

イ 上記1(2)イの補正は、当初明細書等の【0805】、【0806】、【0808】、【0809】、図113、図115等の記載に基づいて、本件補正前の請求項1において記載されていた「第1演出」が「ゲームが実行されてない状態で」実行するものに限定するとともに、演出の出力が「音」であるものに限定するものである。

(2)以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)ア及びイの補正は、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。また、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)ア及びイの補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が補正の前後において同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである。なお、記号AないしLは、分説するため合議体が付した。

「A 遊技を統括的に制御する遊技制御手段と、
B 遊技に関連した演出の制御を行う演出制御手段と、
C 遊技者が操作可能な操作手段と、
を備えた遊技機において、
D 前記遊技制御手段は、所定条件の成立により、識別情報が変動するゲームを実行可能であり、
E 前記操作手段は、第1操作手段と、第2操作手段と、を含み、
F 前記演出は、第1演出と、第2演出と、第3演出と、を含み、
G 前記演出制御手段は、
遊技が実行されていないことを条件として客待ち状態を実行可能であり、
H 前記客待ち状態中の前記第1操作手段に対する操作に基づいて前記第1演出を実行し、
I 前記客待ち状態中の前記第2操作手段に対する操作に基づいて前記第2演出を実行し、
J 遊技中の前記第2操作手段に対する操作に基づいて前記第3演出を実行し、
K 前記第1演出を前記ゲームが実行されていない状態で実行するとともに、当該第1演出に係る音を、前記客待ち状態中の出力強度よりも大きな出力強度で出力する
L ことを特徴とする遊技機。」

(2)引用例
ア 引用例1
原査定の拒絶の理由及び令和1年10月3日付けの補正の却下の決定の理由に引用文献1として引用され、本願の遡及日前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013-22297号公報(平成25年2月4日出願公開、以下「引用例1」という。)には、遊技機(発明の名称)に関し、次の事項が図とともに記載されている(下線は引用発明等の認定に関連する箇所を明示するために合議体が付した。以下同様。)。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技の状況に応じて演出を行う遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ遊技機等の遊技機では、予め設定された種々の条件を満たすことによって、様々な遊技状態へ移行し、遊技性を高めている。例えば、遊技球が始動口に入賞すると、これを契機として抽選(大当たり抽選、特別図柄抽選)が行われる。そして、この抽選の結果に応じて、次に抽選が行われた場合の当選確率が変動する(確率変動)。また、この抽選結果は、特別図柄にて遊技者に報知される。特別図柄は、抽選が行われる際に所定の時間だけ変動し、抽選結果を表す図柄で停止する。そして、上記の抽選の結果に応じて、次に抽選が行われる場合の特別図柄の変動時間が変化する。
【0003】
また今日、多くの遊技機では、遊技盤に液晶ディスプレイ等による画像表示装置や可動役物を備え、遊技状態や遊技の進行に応じて、画像を表示したり可動役物を動かしたりすることによる演出が行われている。この種の遊技機では、遊技が一定時間以上行われない場合(客待ち時)等に、客待ち時用の演出(客待ち演出)を行う遊技機がある(例えば、特許文献1参照)。客待ち演出としては、遊技の説明や紹介(デモンストレーション)のための画像を画像表示装置に表示すること等が行われる。また、遊技の説明のための演出は、客待ち時に限らず、遊技者による遊技機の操作に応じて遊技の合間に行われる場合もある(例えば、特許文献2参照)。
・・・略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
客待ち時等に行われるこの種の演出では、通常、遊技のデモンストレーション用として予め用意された動画等のデータを記憶手段(ROM(Read Only Memory)等)から読み出して再生することが行われる。このため、演出の内容が単調になっていた。ここで、複数の動画等を用意しておき、種々の条件に基づいて選択的に実行することも考えられる。しかし、この場合も、選択された演出の内容は固定的であるため、演出自体が複雑になるわけではない。
【0006】
ここで、デモンストレーションが行われるのは、通常、その遊技機における遊技が行われていないとき(客待ち時等)である。そのため、デモンストレーションとして実際の遊技における演出を表現するような演出が行われる場合、デモンストレーションと実際の遊技との相違から、実際の遊技における演出とは異なる音量でデモンストレーションにおける音声出力を行うことが望ましい場合がある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、客待ち演出等として行われる遊技のデモンストレーションにおいて実際の遊技に近い複雑な演出を行うと共に、デモンストレーションとして行われる演出における音声の音量を個別に設定可能とし、効果的にデモンストレーションを実行できる遊技機を提供することを目的とする。」

(イ)「【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
〔遊技機の基本構成〕
図1は、本実施の形態に係るパチンコ遊技機100の概略正面図である。
同図に示す遊技機の一例としてのパチンコ遊技機100は、遊技者の指示操作により打ち出された遊技球が入賞すると賞球を払い出すように構成されたものである。このパチンコ遊技機100は、遊技球が打ち出される遊技盤110と、遊技盤110を囲む枠部材150とを備えている。遊技盤110は、枠部材150に着脱自在に取り付けられている。」

(ウ)「【0019】
また、遊技盤110の裏面には、内部抽選および当選の判定等を行う遊技制御基板、演出を統括的に制御する演出制御基板、画像および音による演出を制御する画像制御基板、各種のランプおよび可動役物115による演出を制御するランプ制御基板などの図示しない各種の基板等が取り付けられる。また、遊技盤110の裏面には、供給された24VのAC電源をDC電源に変換して各種の基板等に出力するスイッチング電源(不図示)が配設されている。
【0020】
枠部材150は、遊技者がハンドル151に触れてレバー152を時計方向に回転させる操作を行うとその操作角度に応じた打球力にて遊技球を所定の時間間隔(例えば1分間に100個)で電動発射する発射装置(不図示)を備えている。また、枠部材150は、遊技者のレバー152による操作と連動したタイミングで発射装置に遊技球を1つずつ順に供給する供給装置(不図示)と、供給装置が発射装置に供給する遊技球を一時的に溜めておく皿153(図2参照)と、を備えている。この皿153には、例えば払い出しユニットによる払出球が払い出される。
なお、本実施の形態では、皿153を上下皿一体で構成しているが、上皿と下皿とを分離する構成例も考えられる。また、発射装置のハンドル151を所定条件下で発光させる構成例も考えられる。
・・・略・・・
【0022】
図2は、本実施の形態に係るパチンコ遊技機100を説明する図であり、(a)は、遊技盤110の右下に配設された表示器130の一例を示す拡大図であり、(b)は、パチンコ遊技機100の部分平面図である。
パチンコ遊技機100の表示器130は、図2の(a)に示すように、第1始動口121の入賞に対応して作動する第1特別図柄表示器221と、第2始動口122の入賞に対応して作動する第2特別図柄表示器222と、ゲート124の通過に対応して作動する普通図柄表示器223と、を備えている。第1特別図柄表示器221は、第1始動口121の入賞による特別図柄を変動表示しその抽選結果を表示する。第2特別図柄表示器222は、第2始動口122の入賞による特別図柄を変動表示しその抽選結果を表示する。普通図柄表示器223は、遊技球がゲート124を通過することにより普通図柄を変動表示しその抽選結果を表示する。本実施の形態では、第1特別図柄表示器221、第2特別図柄表示器222および普通図柄表示器223は、各々LEDを配列した表示装置で構成されている。
【0026】
パチンコ遊技機100の枠部材150は、遊技者が演出に対する入力を行うための入力装置を備えている。図2の(b)に示すように、本実施の形態では、入力装置の一例として、演出ボタン161と、演出ボタン161に隣接し、略十字に配列された複数のキーからなる演出キー162と、が枠部材150に配設されている。演出キー162は、その中央に1つの中央キーを配置し、また、中央キーの周囲に略同一形状の4つの周囲キーを配置して構成されている。遊技者は、4つの周囲キーを操作することにより、画像表示部114に表示されている複数の画像のいずれかを指示することが可能であり、また、中央キーを操作することにより、指示した画像を選択することが可能である。また、入力装置の形態としては、図示した演出ボタン161および演出キー162の他、レバーやダイヤル等、演出の内容等に応じて様々な入力形態を採用することができる。
【0027】
〔制御ユニットの構成〕
次に、パチンコ遊技機100での動作制御や信号処理を行う制御ユニットについて説明する。
図3は、制御ユニットの内部構成を示すブロック図である。同図に示すように、制御ユニットは、メイン制御手段として、内部抽選および当選の判定等といった払い出す賞球数に関する各種制御を行う遊技制御部200を備えている。また、サブ制御手段として、演出を統括的に制御する演出制御部300と、画像および音響を用いた演出を制御する画像/音響制御部310と、各種のランプおよび可動役物115を用いた演出を制御するランプ制御部320と、払出球の払い出し制御を行う払出制御部400と、を備えている。
【0028】
前述したように、遊技制御部200、演出制御部300、画像/音響制御部310、ランプ制御部320、および払出制御部400各々は、遊技盤110の後面に配設されたメイン基板としての遊技制御基板、サブ基板としての演出制御基板、画像制御基板、ランプ制御基板、および払出制御基板において個別に構成されている。
・・・略・・・
【0032】
また、遊技制御部200には、第1始動口121への遊技球の入賞により始動した特別図柄抽選(大当たり抽選)の未抽選分の保留個数を限度個数内(例えば4個)で表示する第1特別図柄保留表示器218と、第2始動口122への遊技球の入賞により始動した特別図柄抽選の未抽選分の保留個数を限度個数内で表示する第2特別図柄保留表示器219と、ゲート124への遊技球の通過により始動した普通図柄抽選(開閉抽選)が始動する未抽選分の保留個数を限度個数内で表示する普通図柄保留表示器220と、が接続されている。
さらに、遊技制御部200には、第1始動口121への遊技球の入賞により始動した特別図柄抽選の結果を表示する第1特別図柄表示器221と、第2始動口122への遊技球の入賞により始動した特別図柄抽選の結果を表示する第2特別図柄表示器222と、普通図柄抽選の結果を表示する普通図柄表示器223と、パチンコ遊技機100の状態を表示する状態表示器224と、が接続されている。」

(エ)「【0068】
具体的には、特別図柄変動制御部233は、まず第2始動口122の入賞に係る保留数U2が1以上か判断する(ステップ803)。保留数U2が1以上である場合(ステップ803でYes)、特別図柄変動制御部233は、保留数U2の値を1減算する(ステップ804)。一方、保留数U2=0である場合は(ステップ803でNo)、特別図柄変動制御部233は、次に第1始動口121の入賞に係る保留数U1が1以上か判断する(ステップ805)。保留数U1が1以上である場合(ステップ805でYes)、特別図柄変動制御部233は、保留数U1の値を1減算する(ステップ806)。一方、保留数U1=0である場合は(ステップ805でNo)、特別図柄の抽選を始動するための入賞が無いことを意味するため、特別図柄変動を開始せず、別ルーチンの客待ち設定処理を実行して処理を終了する(ステップ816)。
・・・略・・・
【0071】
この後、特別図柄変動制御部233は、大当たり判定処理および変動パターン選択処理で決定された設定内容に基づき、図2に示す第1特別図柄表示器221、第2特別図柄表示器222により表示される特別図柄の変動を開始する(ステップ810)。そして、この設定内容を示す設定情報(図柄、遊技状態、変動パターン等)を含んだ変動開始コマンドを生成し、RAM203にセットする(ステップ811)。ステップ811でセットされた変動開始コマンドは、図5のステップ506に示した出力処理で演出制御部300へ送信される。
・・・略・・・
【0093】
〔遊技制御部による客待ち設定処理〕
図12は、客待ち設定処理(図8のステップ816)の内容を示すフローチャートである。
この客待ち設定処理において、遊技制御部200の遊技進行制御部236は、まず、RAM203のフラグ設定において客待ちフラグがONになっているか否かを調べる(ステップ1201)。ここで、客待ちフラグは、パチンコ遊技機100が客待ち状態であることを識別するためにセットされるフラグである。
【0094】
客待ちフラグがONである場合、パチンコ遊技機100は客待ち状態であるので、そのまま処理を終了する(ステップ1201でYes)。一方、客待ちフラグがOFFである場合、遊技進行制御部236は、客待ちコマンドを生成してRAM203にセットし(ステップ1202)、客待ちフラグをONにする(ステップ1203)。ステップ1202でセットされた客待ちコマンドは、図5のステップ506に示した出力処理で演出制御部300へ送信される。」

(オ)「【0147】
図25は、図19の客待ちコマンド受信処理(ステップ1912)の内容を示すフローチャートである。
演出制御部300は、客待ち状態に移行するための客待ちコマンドを受信したか否かを判断する(ステップ2501)。客待ちコマンドを受信した場合(ステップ2501でYes)、演出制御部300は、経過時間の計測を開始し(ステップ2502)、RAM303において計測フラグをONにする(ステップ2503)。一方、受信したコマンドが客待ちコマンドでなかった場合(ステップ2501でNo)、RAM303に保持されている計測フラグがONになっているか否かを判断する(ステップ2504)。計測フラグがOFFであれば(ステップ2504でNo)、客待ちコマンド受信処理を終了する。
【0148】
計測フラグがONである場合(ステップ2504でYesまたはステップ2503でONにした後)、次に演出制御部300は、計測時間があらかじめ定められたタイムアップ時間に達したか否かを判断する(ステップ2505)。タイムアップしていない場合(ステップ2505でNo)、客待ちコマンド受信処理を終了する。一方、タイムアップした場合(ステップ2505でYes)、演出制御部300は、RAM303に保持されている計測フラグをOFFにし(ステップ2506)、客待ち演出を行うための客待ち演出コマンドをRAM303にセットして客待ちコマンド受信処理を終了する(ステップ2507)。
【0149】
以上のようにしてコマンド受信処理が完了すると、RAM303には、変動演出開始コマンド、変動演出終了コマンド、当たり演出開始コマンド、エンディング演出開始コマンド、客待ち演出コマンドのいずれかがセットされている。」

(カ)「【0153】
〔デモンストレーション演出〕
次に、遊技のデモンストレーションのために行われる演出について説明する。
本実施の形態によるパチンコ遊技機100は、演出制御部300および画像/音響制御部310の制御により、画像表示部114に画像を表示させて演出を行う。また、演出制御部300およびランプ制御部320の制御により、可動役物115を動作させ、盤ランプ116や枠ランプ157を点灯させて演出を行う。さらに、これらの視覚的な演出に加え、演出制御部300および画像/音響制御部310の制御により、スピーカ156を介して楽曲、音声、効果音等を出力して音響による演出を行う。
【0154】
このような演出は、主に遊技の進行状況等に応じて、パチンコ遊技機100の遊技状態を報知あるいは示唆したり、遊技における興趣を高めたりするために行われる。一方、これとは別に、遊技の説明や紹介のための演出(以下、デモンストレーション演出と呼ぶ)を行うパチンコ遊技機100がある。このデモンストレーション演出は、遊技の進行とは別に、例えば上記の客待ち演出(図25参照)の一つとして行われる。」

(キ)「【0161】
ここで、デモンストレーション演出において音響出力を行う場合、実際の遊技時の演出(以下、実演出と呼ぶ)として出力する場合の音量とは異なる音量で出力することが考えられる。例えば、実演出で出力する場合よりも大きい音量で出力すれば、実演出と同じ音量で出力するよりも、デモンストレーション演出による遊技の説明や紹介を行っていることを周囲に強く報知することができる。特に、遊技中の遊技者がいないときに客待ち演出として行われるデモンストレーション演出において、実演出よりも大きい音量で音響出力を行うことにより、遊技する台を選択中の遊技者等の注意を引きつける効果が大きくなることを期待できる。
【0162】
反対に、デモンストレーション演出における音響出力の音量を、実演出で出力する場合よりも小さい音量で出力すれば、遊技されていない台の音響により周囲の遊技者が迷惑を被る(うるさいと感じる)ことを防止することができる。」

(ク)「【0168】
〔デモンストレーション演出の実行態様〕
デモンストレーション演出を実行する態様としては、上述したように客待ち演出として行う他、遊技者の呼び出し操作に応じて行うようにしても良い。例えば、遊技者が遊技を中断(遊技球の発射を止める等)し、演出ボタン161や演出キー162を特定のパターンで操作した場合に、実演出を中断してデモンストレーション演出を開始する、といった制御を行うことができる。一方、デモンストレーション演出を終了して遊技および実演出を再開するには、遊技球の発射を再開すれば良い。デモンストレーション演出において可動役物115を動作させている場合、可動役物の動作中に遊技球が発射されることが考えられる。この場合は、直ちに可動役物115を初期位置(演出による動作が行われないときの配置)に戻した後、実演出を再開する。
【0169】
〔デモンストレーション演出における疑似抽選〕
上記のように、本実施の形態におけるデモンストレーション演出では、遊技の説明や紹介を行うために実演出を模した内容の演出を行う場合がある。実際の遊技では、遊技球が第1始動口121または第2始動口122に入賞すると、これを契機として特別図柄抽選が行われ、その抽選結果に基づいて遊技状態が遷移する。そして、遷移した遊技状態(確変遊技状態、時短遊技状態など)に応じて、その遊技状態での遊技のために用意された演出が行われる。本実施の形態のデモンストレーション演出では、このような遊技球の入賞、特別図柄抽選、抽選結果に基づく遊技状態の遷移とこれに伴う演出の変化等についてもデモンストレーションを行う。
【0170】
ここで、本実施の形態では、特別図柄抽選のデモンストレーションにおいて、実際の遊技で行われる特別図柄抽選を模した演出用の抽選を行う。すなわち、デモンストレーションにおいて、予め用意された遊技状態の遷移の過程を表現した固定的な演出を実行するのではなく、実際に抽選を行って遊技状態が遷移する過程を表す演出を行う。以下、この演出用の抽選を疑似抽選と呼ぶ。疑似抽選は、演出制御部300により行われる。」

(ケ)「【0174】
〔疑似抽選の開始条件〕
上記のように、疑似抽選は、デモンストレーション演出において特別図柄抽選のデモンストレーションを行う場合に行うこととした。この特別図柄抽選のデモンストレーションは、原則として、実際の遊技の場合と同様に、遊技のデモンストレーションにおいて遊技球が第1始動口121または第2始動口122に入賞したことを契機に行われるものとする。しかし、デモンストレーションにおいて、遊技者に対して様々な遊技状態を示すためには、遊技者の要求に応じて特別図柄抽選が行われるように構成することが望ましい。そこで、デモンストレーション演出における疑似抽選の開始条件として、遊技者による意図的な操作を設定しても良い。
【0175】
例えば、デモンストレーション演出中に行われた遊技者による演出ボタン161や演出キー162の操作を契機として疑似抽選が行われるようにしても良い。この場合、図26に示した演出ボタン処理により、演出制御部300は、デモンストレーション中に演出ボタン等が操作されたことを認識する。そして、これを契機として疑似抽選を実行する。なお、デモンストレーション演出が行われている間、継続的に演出ボタン等の操作を受け付けるのではなく、特別図柄変動のデモンストレーションを行う場合等、特定のタイミングでのみ演出ボタン等の操作を受け付けるようにしても良い。この場合、演出ボタン等の操作を受け付けるタイミングで画像表示部114の表示画面にメッセージを表示して、遊技者に演出ボタン等の操作を促すようにしても良い。
【0176】
〔疑似抽選結果の遊技への利用〕
以上説明したように、本実施の形態では、客待ち時等に行われるデモンストレーション演出において、特別図柄抽選のデモンストレーションを行う際に、演出制御部300が実際に抽選(疑似抽選)を行う。これにより、デモンストレーションにおいて示される遊技の流れが疑似抽選の抽選結果にしたがって変化するため、デモンストレーション演出の内容が、予め用意された固定的な演出パターンを実行する場合のように単調にならない。
【0177】
さらに、この疑似抽選の抽選結果を実際の遊技における演出に反映させても良い。例えば、実際の遊技において、同一の条件で行われる演出として複数の演出が用意されている場合、実行する演出をデモンストレーション演出における疑似抽選の抽選結果に基づいて決定する、といった制御を行うことができる。
【0178】
具体例として、リーチ演出を考える。リーチ演出を行うパチンコ遊技機100には、同じ演出時間で実行される複数の異なる演出が用意されるものがある。このようなパチンコ遊技機100では、特別図柄抽選によりリーチ演出を行うことが決定された場合(図10参照)、実行するリーチ演出の選択が行われる。リーチ演出の選択は、通常、演出制御部300による抽選で行ったり、遊技者による演出ボタン161や演出キー162を用いた選択操作を受け付けて行ったりする。
【0179】
本実施の形態では、デモンストレーション演出の疑似抽選の結果としてリーチ演出のデモンストレーションを行う場合、遊技中の実演出によるリーチ演出と同様に、デモンストレーションとして実行するリーチ演出が選択される。そして、遊技中の特別図柄抽選においてリーチ演出が行われることが決定された場合に、上記のようなリーチ演出の選択方法に関わらず、デモンストレーション演出における疑似抽選で選択されたリーチ演出を実行する。すなわち、デモンストレーション演出においてリーチ演出の選択が行われると、演出制御部300は、選択したリーチ演出の種類を示す情報をRAM303に格納する。そして、遊技時の特別図柄抽選でリーチ演出を行うことが決定された場合に、演出制御部300は、RAM303に格納されている情報に基づき、実行するリーチ演出の種類を決定する。なお、RAM303に格納されている情報に基づいて実行するリーチ演出を決定する代わりに、本来の選択方法によりリーチ演出を選択した後、選択されたリーチ演出をRAM303に格納されている情報により特定されるリーチ演出に差し替えるようにしても良い。」

(コ)上記(ア)ないし(ケ)からみて、引用例1には、実施形態として、次の発明が記載されている。なお、aないしlについては本願補正発明のAないしLに概ね対応させて付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。
「a、b 内部抽選および当選の判定等を行う遊技制御基板と、演出を統括的に制御する演出制御基板と、を備えた遊技盤110(【0019】)と、
c、e 遊技者がハンドル151に触れて回転させる操作することにより遊技球を電動発射させるレバー152と、遊技者が演出に対する入力を行うための入力装置である演出ボタン161及び演出キー162と、を備えた枠部材150(【0020】、【0026】)と、
を備えたパチンコ遊技機100(【0013】)であって、
d 遊技制御基板において構成されている遊技制御部200(【0028】)には、第1始動口121への遊技球の入賞により始動して特別図柄の変動を開始し、特別図柄抽選の結果を表示する第1特別図柄表示器221と、第2始動口122への遊技球の入賞により始動して特別図柄の変動を開始し、特別図柄抽選の結果を表示する第2特別図柄表示器222と、が接続され(【0032】、【0071】)、
g 保留数0であり、特別図柄の抽選を始動するための入賞が無い場合、特別図柄変動を開始せず、客待ち設定処理を実行することにより(【0068】)、客待ちコマンドが、演出制御基板において構成されている演出制御部300へ送信され(【0028】、【0094】)、演出制御部300は、客待ちコマンドを受信した場合(【0147】)、客待ち演出を行い(【0148】)、
f、h 客待ち演出として行われるデモンストレーション演出を終了して遊技および実演出を再開するには、遊技球の発射を再開すれば良く(【0154】、【0168】)、
f、i デモンストレーション演出中に行われた遊技者による演出ボタン161や演出キー162の操作を契機として疑似抽選が行われ(【0175】)、該擬似抽選は、実演出を模した内容の演出である特別図柄抽選のデモンストレーションにおいて、実際の遊技で行われる特別図柄抽選を模した演出用の抽選であり(【0170】)、
f、j 特別図柄抽選によりリーチ演出を行うことが決定された場合、実行するリーチ演出の選択は、遊技者による演出ボタン161や演出キー162を用いた選択操作を受け付けて行われ(【0178】)、
k デモンストレーション演出における音響出力の音量を、実演出で出力する場合よりも小さい音量で出力する(【0162】)、
l パチンコ遊技機100(【0013】)。」(以下「引用発明」という。)

イ 引用例2
令和1年10月3日付けの補正の却下の決定の理由に引用文献2として引用され、本願の遡及日前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013-43081号公報(平成25年3月4日出願公開、以下「引用例2」という。)には、遊技機(発明の名称)に関し、次の事項が図とともに記載されている。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機に関し、特に、いわゆるセブン機、羽根物、権利物といったパチンコ遊技機や組合せ式遊技機(アレンジボール遊技機)等の遊技機(弾球遊技機)又はいわゆるパチスロといわれる遊技機(回胴式遊技機)に関する。」

(イ)「【0008】
ここで、省力モードとは、通常モードと比べて遊技機の消費電力を低くするように設定したモードである。例えば、通常モードと省力モードとで同様の状況が発生した場合において(特定のリーチ演出中、デモンストレーション中、大当り中)、省力モードでは、点灯する電飾部材の数を減らしたり、電飾部材の輝度を低下させたり、可動部材の動作回数・動作量を減らしたり、出力音声を減らしたりすること等により、通常モードよりも消費電力が低くなるように設定されている。」

(ウ)「【0017】
(第1実施例)
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。なお、以下では、特別図柄の変動表示の終了に伴い大当り図柄が停止表示され、これを契機に大当り遊技が開始されるタイプ(いわゆるセブン機タイプ)のパチンコ遊技機(以下、単に遊技機という)に本発明を適用した実施例について説明する。
・・・略・・・
【0022】
下皿部6は、上皿部5の下方に設けられている。下皿部6の略中央には、遊技機1の内部から下皿部6に遊技球を排出するための排出口6aが設けられている。下皿部6の左端には灰皿7が設けられている。下皿部6の右端には、遊技者が発射装置ユニット(図示略)を操作するための発射ハンドル8が設けられている。発射ハンドル8には、遊技者が触れていることを検出する接触検知手段としてのタッチスイッチ8aが設けられている。発射ハンドル8の左側面には、遊技者が操作して遊技球の発射を一時的に停止する発射停止スイッチ8bが配置されている。
・・・略・・・
【0036】
図3に示すように、電子制御装置は、主制御部200と、その主制御部200に接続された副制御部230、260、280とを含んで構成されている。副制御部は、払出制御部(賞球制御部)230、サブ制御部260及び演出表示制御部280から構成される。主制御部200は主制御基板200aを備え、副制御部230、260及び280は周辺制御基板として払出制御基板230a、サブ制御基板260a及び演出表示制御基板280aをそれぞれ備えている。これらの各制御基板や、その他の基板(電源基板、中継基板、駆動基板、装飾基板、アンプ基板、演出ボタン基板など)は、遊技機1の裏面側に配置される。
・・・略・・・
【0040】
払出制御部230を構成する払出制御基板230aは、主制御部200のCPU200bと同様の構成を有するCPU230bを備えている。払出制御部230には、発射制御部250、CRユニット13等が接続されている。また、発射制御部250には、遊技者が発射ハンドルに接触していることを検知するタッチスイッチ8a、遊技球の発射を停止する発射停止スイッチ8b、発射ハンドルの操作量を検知する発射ボリュームスイッチ8c、遊技球を発射する発射装置250bが接続されている。そして、発射制御部250は、タッチスイッチ250bからの信号がオン(遊技者が接触していることを検知している状態)となっている状態で、且つ発射停止スイッチからの信号がオフ(発射停止スイッチが操作されていない)となっている状態で、発射ボリュームスイッチ250cによって、発射ハンドル8が所定量以上回動操作されたことを検知した場合には、その操作量に応じた強度で遊技球を遊技盤面に向けて発射する。
【0041】
尚、このタッチスイッチ250bの操作状態(オンかオフか)は、発射制御部250、払出制御部230、を介して主制御部200に入力されている。このタッチスイッチ250bからの信号(操作状態)は、主制御部200からサブ制御部260に送信され、デモンストレーション画像の表示制御に用いられている。
・・・略・・・
【0044】
演出表示制御部280の演出表示制御基板280aには、内蔵ROMや内蔵RAMを備えるCPU280b、入出力ポート、VDP(ビデオディスプレイプロセッサ)等を有する演算回路構成要素(図示略)が設けられ、入出力ポートにおいてサブ制御部260に接続されており、演出表示制御部280には図柄表示装置25が接続されている。
また、サブ制御部260には、装飾駆動基板261を介して各種LED・ランプ262が接続されており、装飾駆動基板261によって各種LED・ランプ262が駆動される。サブ制御部260には、アンプ基板263を介してスピーカ10a?10dが接続されており、アンプ基板263で増幅された音声がスピーカ10a?10dから出力される。スピーカ10a?10dからは、遊技の進行に伴って、遊技興趣を向上させるための演出上の効果音が出力される。このような効果音は、例えば始動口28への遊技球入球(始動口入賞)に伴う特別図柄の変動表示中あるいは大当り遊技中等に出力される。尚、この各種LED・ランプ262は本発明の電飾部材に相当する。」

(エ)「【0063】
本実施例においては、所定の条件が成立した場合に実行されるデモンストレーション(デモ)を複数記憶するデモンストレーション記憶手段を備えており、当該記憶手段には、通常デモンストレーションと省力デモンストレーションとが記憶されている。デモンストレーションとは、遊技待ち(遊技者が遊技を実行していない)の遊技機において、実行されるもので、遊技機枠や遊技盤面に設けられているLED、ランプ、液晶表示装置を様々な態様で点灯制御・表示制御することで、遊技者を引き付けるために行われるものである。
【0064】
このデモンストレーションを実行することによって、遊技機を装飾し、どの遊技機を遊技するか思案中の遊技者をデモ実行中の遊技機に引き付けることができる。しかしながら、遊技されていない遊技機であるにもかかわらず、LED等を点灯制御して派手な装飾(演出)を実行するため、この間、相当の電力を消費することにもなっている。そこで、本実施例の遊技機では、地域の電力がひっ迫した状態や、遊技店の事情により電力を節約したいと考える場合には、消費電力の少ない省力デモンストレーション(省力デモ)に設定することで遊技機を省電力の態様にすることができるようにしている。
【0065】
省力モードに設定されている場合、遊技機枠や遊技盤面に設けられているLED、ランプ、液晶表示装置の制御態様が、通常モードと比較して省電力とされている。
具体的に、通常モードでは、サブ制御部260のCPU260aが、後述するデモ実行条件が成立したと判定した場合、デモンストレーションとして通常デモンストレーションが選択される。そして、遊技機枠に設けられたLED(枠ランプ)や遊技盤に設けられたLED(中央装飾部202LED、第1及び第2装飾装置50、60LED等)が、予め定められた態様の点灯制御が繰り返し実行される。例えば、多数のフルカラーLEDを順に又は同時に点灯させて可変表示したり、点滅表示したりする一連の制御が繰り返し実行される。また、液晶表示装置上では、所定の機種情報(キャラクタを表示したり、遊技方法を説明したり、機種のスペックを説明したり等)や製造メーカの紹介画像を繰り返し表示される。
【0066】
次に、遊技機が省力モードに設定されている場合において、サブ制御部260のCPU260aが、デモ実行条件が成立したと判定した場合、デモンストレーションとして省力デモンストレーションが選択される。この省力デモンストレーションでは、遊技待ちの遊技機の電力(待機中の電力)を極力省電力とすることを目的としているので、遊技機枠に設けられたLED(枠ランプ)や遊技盤に設けられたLED(中央装飾部202LED、第1及び第2装飾装置50、60LED等)が消灯する設定となっている。また液晶表示装置も消灯する設定となっている。
【0067】
尚、省力デモンストレーションの他の態様として、省力デモンストレーションが実行されると直ちにLED等(ここでは、LED、ランプ、液晶表示装置等を含む)が消灯するのではなく、所定の態様(一連の点灯態様)を所定回数(1回以上)実行し、当該所定の態様が所定回数実行された場合には、点灯制御を終了し、消灯状態に切り換わることとしてもよい。尚、所定回数を実行する前にデモ終了条件が成立した場合(遊技者が遊技を開始したと判断した場合)には、もちろんその時点で省力デモは終了する。省力デモの終了により遊技が開始されるため、LED等では、当否判定の結果や、選択された演出に応じて所定の点灯態様が実行される。
【0068】
また、通常モードでは、所定の点灯態様が、デモ終了条件が成立するまで(遊技者が遊技を開始したと判断するまで)繰り返し実行されるため、所定回数で所定の点灯態様を終了して消灯状態となる省力モードとは、消費電力が異なる設定とされている。
また、省力モードにおいても、遊技者が遊技を終了した後の一定期間は、所定のデモンストレーションが実行されるため、一定期間ではあるが遊技機が空台であることを遊技者に報知する(遊技者を引き付ける)ことが可能である。
また、この場合、通常デモで繰り返し実行されるLED等の点灯態様(所定の態様)と、省力デモで一定期間実行されるLEDの点灯態様(所定の態様)とは、同じものであっても異なるものであってもよい。
【0069】
また他の態様として、省力モードにおいては、全てのLED等を消灯するのではなく、一部のLED等を消灯してもよい。すなわち省力デモンストレーションでは、通常デモンストレーションに比べて、点灯されるLED等の数が少ないものとしてもよい。
【0070】
また、省力デモンストレーションの更に他の態様としてLEDと液晶表示装置とを備えている場合、LEDの一部又は全部を消灯し、液晶表示装置を点灯する態様としてもよい。この際、液晶表示装置で、省電力モードに設定されている旨を表示(報知)してもよい。例えば、表示画面上に『節電中』の文字を表示することができる。また、遊技者が、LED等が消灯されている遊技機について、「稼働できない遊技機である」と誤認しないように、表示画面上(他の表示装置でもよい)に、省力モードからLEDが点灯制御される通常モードへの復帰方法を表示してもよい。例えば、所定の方法で通常の状態(LEDが点灯した状態)に復帰すること、具体的には「操作ハンドルにタッチすることで通常の状態に復帰できます」等の表示をすることができる。本実施例においても、タッチセンサ8aからの信号が主制御部200に入力され、そしてタッチセンサ8aへの接触があるか否かの情報が、主制御部200からサブ制御部260に送信される。そして、タッチセンサ8aへの接触があった場合には、サブ制御部260のCPU260aは省力デモンストレーションを終了し、LED等の点灯制御を再開する。尚、サブ制御部260のCPU260aは、遊技が実行されているか否かを判断する本発明の「遊技実行判断手段」に相当する。また、タッチセンサ8aからの信号は主制御部200にも入力されているので、主制御部200のCPU200aを「遊技実行判断手段」とすることもできる。
・・・略・・・
【0079】
ここで、本実施例における、デモンストレーション終了条件は、タッチセンサ8aからタッチ信号が入力されたこと、すなわち遊技者が発射ハンドル(タッチセンサ8a)に接触したことを条件としている。従って、デモンストレーションを実行中の遊技機において、遊技者がタッチセンサ8aに接触すると、実行中のデモンストレーションを終了し、LED等が所定の態様で点灯制御・表示制御される。
【0080】
また、デモンストレーション終了条件の他の態様として、始動口28に遊技球が入球すること、すなわち特別図柄が変動表示を開始することをデモンストレーションの終了条件としてもよい。そして、前述したとおり、この遊技機に設定されたデモ終了条件を、省力モードの表示画面上に表示することで、省力デモンストレーションの解除方法を遊技者に報知することができる。」

(オ)上記(ア)ないし(エ)からみて、引用例2には、次の事項が記載されている。なお、引用箇所の段落番号等を併記した。
「特別図柄の変動表示の終了に伴い大当り図柄が停止表示され、これを契機に大当り遊技が開始される、パチンコ遊技機であって(【0017】)、
遊技者が触れていることを検出する接触検知手段としてのタッチスイッチ8aが設けられている発射ハンドル8(【0022】)を備え、
遊技者が発射ハンドル8に接触していることを検知している状態となっている状態で、発射ハンドル8が所定量以上回動操作されたことを検知した場合には、その操作量に応じた強度で遊技球を遊技盤面に向けて発射し(【0040】)、
遊技者が遊技を実行していない遊技待ちにおいて行われるデモンストレーションでは、遊技機枠や遊技盤面に設けられているLED、ランプ、液晶表示装置を様々な態様で点灯制御・表示制御され(【0063】)、
デモンストレーションの実行中において、遊技者がタッチセンサ8aに接触すると、実行中のデモンストレーションを終了し、LED等が所定の態様で点灯制御・表示制御される(【0079】)、
パチンコ遊技機(【0017】)。」(以下「引用例2の記載事項」という。)

(3)対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。なお、以下の見出し(a)ないし(l)は、本願補正発明のAないしLに概ね対応させている。

(a)引用発明のa、bの「遊技制御基板」は、「内部抽選および当選の判定等を行う」ものであり、遊技を統括的に制御するといえるから、本願補正発明の「遊技を統括的に制御する遊技制御手段」に相当する。
してみると、引用発明のa、bは、本願補正発明の特定事項Aを備える。

(c)(e)(l)引用発明のc、eの「レバー151」、「『演出ボタン161』及び『演出キー162』」は、それぞれ本願補正発明の「第1操作手段」、「第2操作手段」に相当し、該「第1操作手段」及び該「第2操作手段」を含む「遊技者が操作可能な操作手段」に相当する。
また、引用発明の「パチンコ遊技機100」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。
してみると、引用発明のc、eは、本願補正発明の特定事項C、Eを備える。引用発明のlは、本願補正発明の特定事項Lに相当する。

(d)引用発明のdにおいて、「特別図柄表示器」に、「始動口」への「遊技球の入賞により始動して特別図柄の変動を開始し、特別図柄抽選の結果を表示する特別図柄抽選の結果を表示する」ことは、技術常識からみて、本願補正発明の特定事項Dの「所定条件の成立により、識別情報が変動するゲームを実行可能であ」ることに相当することは明らかである。
また、引用発明のdの遊技制御基板(遊技制御手段)において構成されている遊技制御部200に第1特別図柄表示器221と第2特別図柄表示器222が接続されていることと、特別図柄表示器をメイン制御手段である遊技制御手段でで制御することが技術常識であることを踏まえれば、引用発明のdの遊技制御基板(遊技制御手段)が特別図柄表示器に始動口への遊技球の入賞により始動した特別図柄抽選の結果を表示させること、すなわち、所定条件の成立により、識別情報が変動するゲームを実行可能であるものと認められる。
してみると、引用発明のdは、本願補正発明の特定事項Dに相当する。

(g)引用発明のgの「客待ち演出」は、特別図柄の抽選を始動するための入賞が無く、特別図柄変動を開始しない場合に行われ、遊技が実行されていないことを条件として実行可能であるといえるから、本願補正発明の「客待ち状態」に相当する。
また、引用発明のgの「客待ち演出」は、演出制御基板(演出制御手段)において構成されている演出制御部300によって実行されるものである。
してみると、引用発明のgは、本願補正発明の特定事項Gに相当する。

(f)(h)(i)(j)
引用発明のf、hにおいて、「デモンストレーション演出を終了して」「再開」される「実演出」は、遊技球の発射の再開、すなわち、遊技者がハンドル151に触れてレバー152を回転操作させて遊技球を電動発射させることにより演出制御部300によって実行されるのであるから、本願補正発明のHの「前記客待ち状態中の前記第1操作手段に対する操作に基づいて」「実行」される「第1演出」に相当する。そうすると、引用発明のf、hは、本願補正発明の特定事項Hを備える。
また、引用発明のf、iの「特別図柄抽選のデモンストレーション」は、実演出を模した内容の演出であり、デモンストレーション演出中(客待ち状態中)に行われた遊技者による演出ボタン161や演出キー162(第2操作手段)の操作を契機として行われる疑似抽選により決定され演出制御部300によって実行されるものであるから、本願補正発明の「第2演出」に相当する。そうすると、引用発明のf、iは、本願補正発明の特定事項Iを備える。
また、引用発明のf、jの「リーチ演出の選択」は、特別図柄抽選によりリーチ演出を行うことが決定された場合、遊技者による演出ボタン161や演出キー162(第2操作手段)を用いた選択操作を受け付けて演出制御部300によって行われるものであり、遊技中に選択操作を受け付けていることは明らかであるから、本願補正発明の「第3演出」に相当する。そうすると、引用発明のf、jは、本願補正発明のJを備える。
以上からみて、引用発明は、本願補正発明の「F 前記演出は、第1演出と、第2演出と、第3演出と、を含み、」を備えることも明らかである。

(b)引用発明のa、bの「演出制御基板」は、「演出を統括的に制御する」ものであり、上記(f)(h)(i)(j)からみて、引用発明の「f、h」、「f、i」及び「f、j」の演出は、本願補正発明の「遊技に関連した演出」に相当する。そうすると、引用発明のa、bの「演出制御基板」は、本願補正発明の「遊技に関連した演出の制御を行う演出制御手段」に相当する。
してみると、引用発明は、本願補正発明の特定事項Bを備える。

イ 上記アからみて、本願補正発明と引用発明とは、
「A 遊技を統括的に制御する遊技制御手段と、
B 遊技に関連した演出の制御を行う演出制御手段と、
C 遊技者が操作可能な操作手段と、
を備えた遊技機において、
D 前記遊技制御手段は、所定条件の成立により、識別情報が変動するゲームを実行可能であり、
E 前記操作手段は、第1操作手段と、第2操作手段と、を含み、
F 前記演出は、第1演出と、第2演出と、第3演出と、を含み、
G 前記演出制御手段は、
遊技が実行されていないことを条件として客待ち状態を実行可能であり、
H 前記客待ち状態中の前記第1操作手段に対する操作に基づいて前記第1演出を実行し、
I 前記客待ち状態中の前記第2操作手段に対する操作に基づいて前記第2演出を実行し、
J 遊技中の前記第2操作手段に対する操作に基づいて前記第3演出を実行する、
L 遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。

・相違点(特定事項K)
「第1演出」に関し、
本願補正発明は、「前記第1演出を前記ゲームが実行されていない状態で実行するとともに、当該第1演出に係る音を、前記客待ち状態中の出力強度よりも大きな出力強度で出力する」のに対し、
引用発明は、遊技球の発射を再開することにより、客待ち演出として行われるデモンストレーション演出を終了して遊技および実演出を再開し、デモンストレーション演出における音響出力の音量を、実演出で出力する場合よりも小さい音量で出力するものであるが、本願補正発明のような特定がない点。

(4)判断
ア 上記相違点について検討する。
(ア)引用発明は、デモンストレーション演出(客待ち演出中)における音響出力の音量を、実演出で出力する場合よりも小さい音量で出力するものである、言い換えれば、実演出の音を、デモンストレーション演出(客待ち状態中)の出力強度よりも大きな出力強度で出力するものである。そして、引用発明の「実演出」は、上記(3)の(f)(h)(i)(j)で示したように、「デモンストレーション演出を終了して」「再開」されるものであれば、「第1演出」に相当する。そうすると、引用発明は、本願補正発明の特定事項Kのうち、「第1演出に係る音を、客待ち状態中の出力強度よりも大きな出力強度で出力する」との特定事項を実質的に備えるといえる。

(イ)引用例2の記載事項(上記(2)イ(オ))は、概略、パチンコ遊技機において、遊技者が発射ハンドル8のタッチスイッチ8aに接触していることを検知している状態となっている状態で、発射ハンドル8が所定量以上回動操作されたことを検知した場合には、その操作量に応じた強度で遊技球を遊技盤面に向けて発射し、遊技者が遊技を実行していない遊技待ちにおいて行われるデモンストレーションでは、遊技機枠や遊技盤面に設けられているLED、ランプ、液晶表示装置を様々な態様で点灯制御・表示制御され、デモンストレーションの実行中において、遊技者がタッチセンサ8aに接触すると、実行中のデモンストレーションを終了し、LED等が所定の態様で点灯制御・表示制御されるというものである。

(ウ)引用例2の記載事項の「遊技者が遊技を実行していない遊技待ちにおいて行われるデモンストレーションの実行中」、「発射ハンドル8のタッチセンサ8a」は、本願補正発明の「客待ち状態中」、「第1操作手段」に相当する。
そして、引用例2の記載事項は、デモンストレーションの実行中(客待ち状態中)において、遊技者がタッチセンサ8a(第1操作手段)に接触すると、実行中のデモンストレーション(客待ち状態)を終了し、LED等が所定の態様で点灯制御・表示制御されるものである。
そうすると、引用例2の記載事項における、デモンストレーション終了後の「LED等が所定の態様で点灯制御・表示制御される」ことは、タッチセンサ8a(第1操作手段)への遊技者の接触を契機として、すなわち遊技(ゲーム)が未だ実行されていない状態で、デモンストレーションとは別の演出が実行されるといえるから、本願補正発明の「第1演出」に相当する。
してみると、引用例2の記載事項は、本願補正発明の「C 遊技者が操作可能な操作手段」「を備えた遊技機において、」「H 前記客待ち状態中の前記第1操作手段に対する操作に基づいて前記第1演出を実行し、」「前記第1演出を前記ゲームが実行されていない状態で実行する」(特定事項Kの一部)との構成を備えるといえる。

(エ)引用発明と引用例2の記載事項とは、客待ち状態において、遊技者が発射ハンドルを操作すると、客待ち状態中の演出を終了し、他の演出を実行するパチンコ遊技機であることで技術分野が共通し、技術常識からみて、両者は、客待ち状態で発射ハンドルの操作を受け付けたことを遊技者に明確に把握させるという課題を潜在的に有する点でも共通する。そうすると、当業者が引用例2の記載事項を引用発明に適用することは容易になし得ることである。

(オ)具体的に検討すると、引用発明は、遊技球の発射を再開することにより、客待ち演出として行われるデモンストレーション演出を終了して遊技および実演出を再開するものであるところ、まず遊技球を発射するには、その前段階として、遊技者がハンドル151に触れてレバー152を回転させる操作することが必要であり、この「ハンドル151に触れて」とは、引用例2の記載事項のように、ハンドルに設けられたタッチセンサへ遊技者が触れることを意味することは当業者における技術常識である。
そして、上述したとおり、引用発明と引用例2の記載事項とは、客待ち状態において、遊技者が発射ハンドルを操作すると、客待ち状態中の演出を終了することで共通する。
そうすると、引用発明は、ハンドル151にタッチセンサを設けていることは明らかであるか、そうでないとしても、ハンドル151にタッチセンサを設けることは引用例2の記載事項に基づけば当業者にとって自明な事項である。
そうしてみると、上記(ア)で示した「第1演出に係る音を、客待ち状態中の出力強度よりも大きな出力強度で出力する」との特定事項を備える引用発明において、客待ち演出として行われるデモンストレーション演出を終了する契機として、「遊技球の発射」に換えて、タッチセンサへ遊技者が触れることとなすことは、引用例2の記載事項に基づけば、当業者にとって格別困難なことではない。
さらに、引用発明において、客待ち演出として行われるデモンストレーション演出を終了する契機をタッチセンサへ遊技者が触れることとすれば、タッチセンサの検出のみでは遊技球が未だ発射されない状態であるから、遊技(ゲーム)が実行されていない状態であることは明らかである。

(カ)以上のとおりであるから、引用発明において、上記相違点に係る本願補正発明の特定事項となすことは当業者が引用例2の記載事項に基づいて容易になし得たことである。

イ 本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び引用例2の記載事項の奏する効果から、予測することができた程度のものである。

ウ 審判請求人の主張について
(ア)審判請求人は、審判請求書の【請求の理由】の「3.本願発明が特許されるべき理由」において、以下のとおり概略主張している。
「(4)本願発明と引用発明の対比
(a)補正後の本願請求項1に記載の発明(以降、本願発明と呼ぶ)と、引用文献1の発明を比較すると、引用文献1は『前記第1演出を前記ゲームが実行されていない状態で実行するとともに、当該第1演出に係る音を、前記客待ち状態中の出力強度よりも大きな出力強度で出力する』という特徴的構成については開示していない。
(b)本願発明では、上記の特徴的構成によって、第1操作手段(発射ハンドル)の操作により、音の出力強度(音量)が客待ち状態中よりも大きい状態で第1演出が実行されるため、第1操作手段(発射ハンドル)の操作を受け付けたことが明確に遊技者に伝達される。例えば、上皿に遊技球が無かったり、球止まりやファール球のために遊技盤上に遊技球が射出されなくても、遊技者は発射ハンドルの操作が受け付けられたことが直ちに分かる。なお、遊技者は遊技を開始した直後は遊技球の発射位置を確認して、発射ハンドルにより発射強度を調整するので、遊技を開始した直後は遊技者は遊技球が発射される遊技盤面上部や発射ハンドルを注視するが、第1演出に係る音の出力強度を大きくすることにより遊技盤面上部や発射ハンドルを注視している遊技者でも操作が受け付けられたことが分かり易い。また、第1操作手段を操作しただけで第1演出に係る音の出力強度は大きくなるので、発射ハンドルの操作からタイムラグを有する始動入賞口への遊技球の入賞によるゲームの実行と誤解することがない。
(c)なお、引用文献2には、[0008]において、「省力モードでは、点灯する電飾部材の数を減らしたり、電飾部材の輝度を低下させたり、可動部材の動作回数・動作量を減らしたり、出力音声を減らしたりすること等により、通常モードよりも消費電力が低くなるように設定されている。」と記載されている。それにも関わらず、[0079]では、「減らした出力音声」の出力強度を大きくすることについて何らの記載も無い。従って、引用文献2から「当該第1演出に係る音を、前記客待ち状態中の出力強度よりも大きな出力強度で出力する」ことを容易には導出できない。即ち、引用文献2では、第1操作手段(発射ハンドル)の操作(タッチセンサ8aに接触したこと)によって減らした出力音声を元に戻して、第1操作手段(発射ハンドル)の操作を受け付けたことが明確に遊技者に伝達されるという効果は生じない。
・・・略・・・
(d)従って、本願請求項1(補正後)に係る発明は、引用文献1?3の発明に存在しない特徴的構成と当該特徴的構成による有利な作用効果を有し、引用文献1?3の発明に基づいて容易に想到しうるものでない。・・・略・・・」

(イ)上記(ア)の請求人の主張について検討すると、上記アで説示したとおり、本願補正発明の「当該第1演出に係る音を、前記客待ち状態中の出力強度よりも大きな出力強度で出力する」については引用例1に、本願補正発明の「前記第1演出を前記ゲームが実行されていない状態で実行するとともに、」については引用例2に、それぞれ記載されていると認められ、引用例2の記載事項を引用発明に適用することも当業者が容易になし得たことである。また、本願補正発明の奏する効果についても引用発明及び引用例2の記載事項から予測可能であると認められるから、審判請求人の主張については採用することができない。

(6)独立特許要件のむすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、当業者が、引用発明及び引用例2の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年11月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、上記第2〔理由〕1(1)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、以下の理由を含むものである。
(理由1)(新規性)この出願の平成30年11月26日に提出された手続補正書により補正された下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(理由2)(進歩性)この出願の平成30年11月26日に提出された手続補正書により補正された下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


●理由1、2について
・請求項1
・引用文献1:特開2013-22297号公報

3 引用例
(1)引用例1(引用文献1)は、上記第2〔理由〕3(2)アに記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明(上記第2〔理由〕1(1))は、本願補正発明(上記第2〔理由〕3(1))において、「D 前記遊技制御手段は、所定条件の成立により、識別情報が変動するゲームを実行可能であり、」を削除するとともに、「K 前記第1演出を前記ゲームが実行されていない状態で実行するとともに、当該第1演出に係る音を、前記客待ち状態中の出力強度よりも大きな出力強度で出力する」の代わりに、「K’前記第1演出を実行する出力手段の出力強度を、前記客待ち状態中の出力強度よりも大きな出力強度とする」との特定事項(以下「特定事項K’」という。)を有するものである。
引用発明と本願発明とを対比すると、上記第2〔理由〕3(3)のとおり、引用発明は、本願発明の特定事項AないしC、EないしJ、L(本願補正発明の特定事項AないしC、EないしJ、Lと同じ。)を備える。
本願発明の特定事項K’について検討すると、上記第2〔理由〕3(4)で説示したとおり、引用発明は、デモンストレーション演出(客待ち演出中)における音響出力の音量を、実演出(第1演出)で出力する場合よりも小さい音量で出力するものである、言い換えれば、実演出(第1演出)の音を、デモンストレーション演出(客待ち状態中)の出力強度よりも大きな出力強度で出力するものである。そうすると、引用発明は、本願発明の「K’前記第1演出を実行する出力手段の出力強度を、前記客待ち状態中の出力強度よりも大きな出力強度とする」との特定事項を備える。
してみると、本願発明と引用発明とは、相違点がなく、本願発明は引用発明と同一である。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明であるから、他の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-07-29 
結審通知日 2020-08-04 
審決日 2020-08-18 
出願番号 特願2017-231426(P2017-231426)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 廣瀬 貴理  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
鉄 豊郎
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人後藤特許事務所  

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