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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1366928
審判番号 不服2020-204  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-08 
確定日 2020-10-08 
事件の表示 特願2017- 86371号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月22日出願公開、特開2018-183352号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本願は、平成29年4月25日に出願した特許出願(特願2017-86371号)であって、平成31年3月6日付けで拒絶の理由が通知され、令和1年5月9日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年10月9日付け(送達日:同年10月15日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、令和2年1月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 令和2年1月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年1月8日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正により、令和1年5月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における、
「【請求項1】
遊技を行うことが可能な遊技機であって、
第1言語と第2言語とを含む複数種類の言語のうち少なくとも1の言語を用いた制御を実行可能な制御手段と、
前記第1言語を用いた制御が実行されることにより、特典の付与に関する報知を実行する特典報知手段と、
前記第1言語と前記第2言語との双方を用いた制御が実行されることにより、異常に関する報知を実行する異常報知手段とを備え、
遊技に関する設定を行うことが可能な設定画面において、前記設定に関する1の事項を前記第1言語と前記第2言語との双方を用いて表示する、遊技機。」は、

令和2年1月8日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における、
「【請求項1】
遊技を行うことが可能な遊技機であって、
第1言語と第2言語とを含む複数種類の言語のうち少なくとも1の言語を用いた制御を実行可能な制御手段と、
前記第1言語を用いた表示が実行されることにより、特典の付与に関する報知を実行する特典報知手段と、
前記第1言語と前記第2言語との双方を用いた表示が実行されることにより、異常に関する報知を実行する異常報知手段とを備え、
遊技に関する設定を行うことが可能な設定画面において、前記設定に関する1の事項を前記第1言語と前記第2言語との双方を用いて表示し、
前記異常報知手段により前記異常に関する報知が実行されるときは、該異常に関する報知に対応する音声が、前記第2言語で出力されず、前記第1言語で出力される、遊技機。」に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審判合議体にて付した。)。

2 補正の適否
2-1 補正の目的及び新規事項について
(1)補正事項
本件補正後の請求項1に係る上記補正は、以下に挙げる補正事項を含むものである。

ア 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記第1言語を用いた制御」及び「前記第1言語と前記第2言語との双方を用いた制御」との記載を、それぞれ「前記第1言語を用いた表示」及び「前記第1言語と前記第2言語との双方を用いた表示」との記載にする補正。

イ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「異常に関する報知」に関して、「前記異常報知手段により前記異常に関する報知が実行されるときは、該異常に関する報知に対応する音声が、前記第2言語で出力されず、前記第1言語で出力される」という記載を追加する補正。

(2)本件補正の目的及び根拠
ア 本件補正後の請求項1に係る上記(1)アの補正は、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)の【0007】、【0014】、図11及び図12等の記載に基づいて、本件補正前請求項1において記載されていた「前記第1言語を用いた制御」及び「前記第1言語と前記第2言語との双方を用いた制御」に関して、当該各「制御」を「表示」と特定することで、それぞれ「前記第1言語を用いた表示」及び「前記第1言語と前記第2言語との双方を用いた表示」と限定するものである。

イ 本件補正後の請求項1に係る上記(1)イの補正は、当初明細書等の【0179】及び図12等の記載に基づいて、本件補正前請求項1において記載されていた「異常に関する報知」に関して、「前記異常報知手段により前記異常に関する報知が実行されるときは、該異常に関する報知に対応する音声が、前記第2言語で出力されず、前記第1言語で出力される」と限定するものである。

以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る上記(1)ア及びイの補正は、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、本件補正後の請求項1に係る上記(1)ア及びイの補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が補正の前後において同一であるから、それぞれ特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

2-2 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かについて、以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、次のとおりのものであると認める(記号A?Gは、分説するため当審判合議体にて付した。)。
「A 遊技を行うことが可能な遊技機であって、
B 第1言語と第2言語とを含む複数種類の言語のうち少なくとも1の言語を用いた制御を実行可能な制御手段と、
C 前記第1言語を用いた表示が実行されることにより、特典の付与に関する報知を実行する特典報知手段と、
D 前記第1言語と前記第2言語との双方を用いた表示が実行されることにより、異常に関する報知を実行する異常報知手段とを備え、
E 遊技に関する設定を行うことが可能な設定画面において、前記設定に関する1の事項を前記第1言語と前記第2言語との双方を用いて表示し、
F 前記異常報知手段により前記異常に関する報知が実行されるときは、該異常に関する報知に対応する音声が、前記第2言語で出力されず、前記第1言語で出力される、
G 遊技機。」

(2)先願発明
原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願の日前の他の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願2017-47320号(特開2018-149066号公報参照。以下「先願」という。)(出願日:平成29年3月13日、出願人:サミー株式会社、発明者:宮前晶、他8名)の願書に最初に添付された明細書(以下「先願明細書」という。)、特許請求の範囲または図面(以下先願明細書と併せて「先願明細書等」という。)には、「遊技機」に関して次の事項が図面とともに記載されている(下線は当審判合議体で付した。以下同様。)。

ア 記載事項
(1-a)「【0013】
図1は、ぱちんこ遊技機の前面側における基本的な構造を示す。ぱちんこ遊技機100は、主に遊技機枠と遊技盤で構成される。・・・」

(1-b)「【0033】
以上のような構成の遊技機においてなされる遊技の方法および制御の流れを概説する。遊技者が発射ハンドル107を手で回動させると、その回動角度に応じた強度で上球皿105に貯留された遊技球が1球ずつレール82に案内されて遊技領域81へ発射される。遊技者が発射ハンドル107の回動位置を手で固定させると一定の時間間隔で遊技球の発射が繰り返される。遊技領域81の上部へ発射された遊技球は、複数の遊技釘や風車、センター飾り64等に当たりながらその当たり方に応じた方向へ落下する。遊技球が一般入賞口33、第1始動口11、第2始動口12、大入賞口20の各入賞口へ落入すると、その入賞口の種類に応じた賞球が上球皿105または下球皿106に払い出される。一般入賞口33等の各入賞口に落入した遊技球はセーフ球として処理され、アウト口34に落入した遊技球はアウト球として処理される。」

(1-c)「【0212】
(実施例) つづいて、本実施例の特徴的な構成について説明する。本実施例では、演出表示装置60に文字情報を表示する際に、1種類の言語だけでなく、複数の種類の言語により文字情報を表示可能とする。実施例のぱちんこ遊技機は、初期状態においては、文字情報を表示する際の言語の種別として日本語が選択されており、一般的なぱちんこ遊技機と同様に日本語のみで文字情報を表示するが、日本語以外の言語、例えば、英語、中国語、韓国語による文字情報の表示に対応しており、遊技者がそれらの言語の中から表示を希望する言語の種別を設定すると、設定した種別の言語でも文字情報を表示することができる。以降の説明では、初期状態で設定される言語(上記の説明では、日本語)を「第1の言語」と呼び、第1の言語以外に遊技者が設定可能な言語(上記の説明では、英語、中国語、韓国語)を「第2の言語」と呼ぶ。遊技者が第2の言語として複数の言語を選択可能である場合には、選択可能なそれぞれの言語を「第2の言語」と呼ぶこともあるし、それらを総称して「第2の言語」と呼ぶこともある。」

(1-d)「【0229】
第4の例は、大当り開始デモにおいて表示される文字情報である。特別遊技が開始されるときに表示される大当り開始デモにおいて、特別遊技の契機となった大当りの種類、確変の有無、特別遊技を構成する単位遊技の数などに応じて特別遊技の名称などが表示される場合に、第2の言語による文字情報は、大当りの種類、確変の有無、特別遊技を構成する単位遊技の数などによらず、一律で「大当り」の訳語を表示する。このように、第2の言語による文字情報は、第1の言語による文字情報の直訳でなくてもよく、一部を省略した簡易な訳であってもよいし、第1の言語による異なる複数の意味の文字情報に1つの第2の言語による文字情報を対応させてもよい。これにより、開発の工数、データ量、及び処理負荷を低減させることができる。」

(1-e)「【0231】
[多言語表示対応エラーと多言語表示非対応エラー] 本実施例では、遊技中にエラーが発生したときに演出表示装置60にエラーメッセージを表示する際にも、1種類の言語だけでなく、複数の種類の言語により文字情報を表示可能とする。この場合も、演出表示装置60に表示される全てのエラーメッセージについて、第1の言語だけでなく第2の言語でも表示できるようにしてもよいが、本実施例では、開発の工数を抑えるために、一部のエラーメッセージを第2の言語でも表示可能とする一方、その他のエラーメッセージは第2の言語で表示しない。すなわち、発生したエラーがある特定の種別のエラーである場合には、発生した種別のエラーに関する文字情報を第2の言語により表示可能である一方、発生したエラーが特定の種別とは異なる別の種別のエラーである場合には、発生した種別のエラーに関する文字情報を第2の言語により表示しない。以降、第2の言語により文字情報を表示可能なエラーを「第1の種別のエラー」と呼び、第2の言語により文字情報が表示されないエラーを「第2の種別のエラー」と呼ぶ。具体的には、第1の種別のエラーは、遊技者の操作により解除が可能又は容易なエラーであってもよく、第2の種別のエラーは、遊技者の操作により解除が不可能又は困難なエラーであってもよい。
・・・
【0234】
スピーカー108から出力される音声によっても、発生したエラーに関する情報を報知する場合、第1の種別のエラーに関する情報は、第1の言語による音声だけでなく第2の言語による音声もスピーカー108から出力可能としてもよく、第2の種別のエラーに関する情報は、第1の言語による音声を出力し、第2の言語による音声を出力しなくてもよい。第1の言語による音声と第2の言語による音声をスピーカー108から出力する場合、両者を同時に、例えば右側スピーカーと左側スピーカーからそれぞれ別個に出力してもよいし、両者を交互に出力してもよい。第3の種別のエラーに関する情報は、出力可能な全ての言語による音声を同時又は順番に出力してもよい。
【0235】
サブCPU310により実現されるエラー制御手段は、メインエラー検出手段284又はサブエラー検出手段364によりエラーが検知されたときに、発生したエラーに関するエラーメッセージをデータROM324から読み出して演出表示装置60に表示する際に、発生したエラーが第1の種別のエラーである場合は、第2の言語が遊技者により設定されているか否かを確認し、設定されていれば、設定されている種別の第2の言語の言語情報のデータを更にデータROM324から読み出してエラーメッセージとして表示する。」

(1-f)「【0237】
図29は、第2の言語の種別を遊技者が設定するための設定画面の例を示す。サブCPU310は、設定画面を表示させるための操作、例えば演出ボタン109の押下を検出すると、図29(a)に示す設定画面を演出制御手段304に表示させる。本実施例のぱちんこ遊技機においては、スピーカー108から出力される演出などの音声の音量や、装飾ランプ111の光量のほか、遊技に関する各種の設定ができるようになっている。各種設定を受け付けるためのメニュー項目には、このぱちんこ遊技機が多言語表示に対応していることを示す多言語表示対応アイコン750が表示されており、「各種設定」のメニュー項目から多言語表示機能の設定ができることが示される。
【0238】
「各種設定」のメニュー項目が選択されると、図29(b)の設定画面に遷移させる。「各種設定」のメニュー項目として、各種のボタンを自動入力する機能の設定を受け付けるためのメニュー項目と、第2の言語による文字情報の表示の設定を受け付けるためのメニュー項目が表示されている。第2の言語による文字情報の表示の設定を受け付けるためのメニュー項目は、日本語を読むことができない遊技者のために英語で表示するとともに、多言語表示機能を設定するためのメニュー項目であることを分かりやすくするために多言語表示対応アイコン750を表示する。
【0239】
「LANGUAGE」のメニュー項目が選択されると、図29(c)の設定画面に遷移させる。「LANGUAGE」の設定画面において、遊技者は、複数の言語の中から所望の第2の言語を選択して設定することができる。このように、サブCPU310は、第2の言語の種別の設定を受け付ける第1設定手段として機能する。また、サブCPU310は、この設定画面において、装飾ランプ111の明るさ、及び、演出においてスピーカー108から出力される音声の音量の設定を遊技者から受け付ける第2設定手段としても機能する。
・・・
【0241】
サブCPU310は、第2の言語の設定を遊技者から受け付けると、サブRAM311の所定領域に、設定された第2の言語の種別を示すデータを格納する。演出制御手段304は、演出表示装置60に文字情報を表示する際に、サブRAM311に格納された第2の言語の種別を示すデータを参照して、第2の言語が設定されているか否かを確認する。第2の言語が設定されており、かつ、表示しようとしている第1の言語による文字情報に対応する第2の言語による文字情報がデータROM324に格納されている場合には、データROM324から第2の言語による文字情報を読み出して表示する。」

イ 認定事項
(1-g)認定事項
図29



段落【0239】の「「LANGUAGE」のメニュー項目が選択されると、図29(c)の設定画面に遷移させる。「LANGUAGE」の設定画面において、遊技者は、複数の言語の中から所望の第2の言語を選択して設定することができる。」との記載、段落【0212】の「日本語以外の言語、例えば、英語、中国語、韓国語による文字情報の表示に対応しており、遊技者がそれらの言語の中から表示を希望する言語の種別を設定すると、設定した種別の言語でも文字情報を表示することができる。」との記載、及び、図29(c)の開示内容を参酌すれば、図29(c)には、「「LANGUAGE」の設定画面において」、「第2の言語を選択」するための「メニュー項目」が、「日本語」、「英語」、「中国語」及び「韓国語」で表示されることが図示されていると認められる。

(1-h)認定事項
段落【0234】の「スピーカー108から出力される音声によっても、発生したエラーに関する情報を報知する場合、第1の種別のエラーに関する情報は、第1の言語による音声だけでなく第2の言語による音声もスピーカー108から出力可能としてもよく」との記載事項に関して検討すると、当該記載事項には、「第1の言語による音声だけでなく」及び「第2の言語による音声も・・・出力可能としてもよい」と記載されていることや、同段落の他の箇所には、「第2の種別のエラーに関する情報は、第1の言語による音声を出力し、第2の言語による音声を出力しなくてもよい」と記載されており、「第2の言語による音声を出力」せず「第1の言語による音声」のみを出力する態様も開示されていることを考慮すると、上記記載事項には、「第2の言語による音声も・・・出力可能としてもよい」という構成を採用しない場合も当然含まれることから、先願明細書等には、「スピーカー108から出力される音声によっても、発生したエラーに関する情報を報知する場合、第1の種別のエラーに関する情報は、第1の言語による音声だけで・・・スピーカー108から出力・・・」する構成が開示されていることは明らかである。
そして、先願明細書等に開示された上記構成に加えて、段落【0231】の「遊技中にエラーが発生したときに演出表示装置60にエラーメッセージを表示する際にも、1種類の言語だけでなく、複数の種類の言語により文字情報を表示可能とする」及び「第2の言語により文字情報を表示可能なエラーを「第1の種別のエラー」と呼」ぶとの記載とを参酌すれば、先願明細書等には、「遊技中にエラーが発生したときに演出表示装置60にエラーメッセージを表示する際、発生したエラーに関する情報をスピーカー108から出力される音声によっても報知し、第1の種別のエラー(第2の言語により文字情報を表示可能なエラー)に関する情報は、第1の言語による音声だけでスピーカー108から出力する」構成が開示されていると認められる。

上記(1-a)?(1-f)の記載事項及び上記(1-g)及び(1-h)の認定事項を総合すれば、先願明細書等には、以下の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。

「a 遊技者が発射ハンドル107を手で回動させると、その回動角度に応じた強度で上球皿105に貯留された遊技球が1球ずつレール82に案内されて遊技領域81へ発射され、遊技領域81の上部へ発射された遊技球は、複数の遊技釘や風車、センター飾り64等に当たりながらその当たり方に応じた方向へ落下し、遊技球が一般入賞口33、第1始動口11、第2始動口12、大入賞口20の各入賞口へ落入すると、その入賞口の種類に応じた賞球が上球皿105または下球皿106に払い出されるぱちんこ遊技機100(【0033】、【0013】)であって、
b、c 初期状態においては日本語(第1の言語)のみで文字情報を表示するが、英語、中国語、韓国語の中から表示を希望する言語の種別を設定すると、設定した種別の言語(第2の言語)でも文字情報を表示することができ(【0212】)、
特別遊技が開始されるときに表示される大当り開始デモにおいて、特別遊技の契機となった大当りの種類、確変の有無、特別遊技を構成する単位遊技の数などに応じて特別遊技の名称が表示される場合に、第2の言語による文字情報は「大当り」の訳語を表示し(【0229】)、
サブCPU310は、第2の言語の設定を遊技者から受け付けると、サブRAM311の所定領域に、設定された第2の言語の種別を示すデータを格納し、演出制御手段304は、演出表示装置60に文字情報を表示する際に、サブRAM311に格納された第2の言語の種別を示すデータを参照して、第2の言語が設定されているか否かを確認し、第2の言語が設定されており、かつ、表示しようとしている第1の言語による文字情報に対応する第2の言語による文字情報がデータROM324に格納されている場合には、データROM324から第2の言語による文字情報を読み出して表示し(【0241】)、
d 遊技中にエラーが発生したときに演出表示装置60にエラーメッセージを表示する際にも、1種類の言語だけでなく、複数の種類の言語により文字情報を表示可能な、サブCPU310により実現されるエラー制御手段を備え(【0231】、【0235】)、
e 「LANGUAGE」の設定画面において、第2の言語を選択するためのメニュー項目が、日本語、英語、中国語及び韓国語で表示され(認定事項(1-g))、
f 遊技中にエラーが発生したときに演出表示装置60にエラーメッセージを表示する際、発生したエラーに関する情報をスピーカー108から出力される音声によっても報知し、第1の種別のエラー(第2の言語により文字情報を表示可能なエラー)に関する情報は、第1の言語による音声だけでスピーカー108から出力する(認定事項(1-h))、
g ぱちんこ遊技機100(【0013】)。」

(3)対比
本件補正発明と先願発明とを対比する(本件補正発明の特定事項A?Gに対応させて、見出し(a)?(g)を付した。)。
(a)先願発明の「遊技者が発射ハンドル107を手で回動させると、その回動角度に応じた強度で上球皿105に貯留された遊技球が1球ずつレール82に案内されて遊技領域81へ発射され、遊技領域81の上部へ発射された遊技球は、複数の遊技釘や風車、センター飾り64等に当たりながらその当たり方に応じた方向へ落下し、遊技球が一般入賞口33、第1始動口11、第2始動口12、大入賞口20の各入賞口へ落入すると、その入賞口の種類に応じた賞球が上球皿105または下球皿106に払い出される」構成は、本件補正発明の「遊技を行うことが可能」な構成に相当し、先願発明の「ぱちんこ遊技機100」は、本件補正発明の「遊技機」に相当する。
してみると、先願発明の構成aは、本件補正発明の構成Aに相当する。

(b)先願発明の「日本語(第1の言語)」及び「英語、中国語、韓国語の中から」「設定した種別の言語(第2の言語)」は、それぞれ本件補正発明の「第1言語」及び「第2言語」に相当することから、先願発明の「初期状態においては日本語(第1の言語)のみで文字情報を表示するが、英語、中国語、韓国語の中から表示を希望する言語の種別を設定すると、設定した種別の言語(第2の言語)でも文字情報を表示することができ」る構成は、本件補正発明の「第1言語と第2言語とを含む複数種類の言語のうち少なくとも1の言語を用いた制御を実行可能」な構成に相当する。
また、先願発明は、「サブCPU310は、第2の言語の設定を遊技者から受け付けると、サブRAM311の所定領域に、設定された第2の言語の種別を示すデータを格納し、演出制御手段304は、演出表示装置60に文字情報を表示する際に、サブRAM311に格納された第2の言語の種別を示すデータを参照して、第2の言語が設定されているか否かを確認し、第2の言語が設定されており、かつ、表示しようとしている第1の言語による文字情報に対応する第2の言語による文字情報がデータROM324に格納されている場合には、データROM324から第2の言語による文字情報を読み出して表示」することから、先願発明の「サブCPU310」及び「演出制御手段304」は、本件補正発明の「制御手段」に相当する機能を備える。
してみると、先願発明の構成b、cは、本件補正発明の構成Bに相当する構成を備える。

(c)先願発明は、「初期状態においては日本語(第1の言語)のみで文字情報を表示するが、英語、中国語、韓国語の中から表示を希望する言語の種別を設定すると、設定した種別の言語(第2の言語)でも文字情報を表示することができ」る構成であることから、「特別遊技が開始されるときに表示される大当り開始デモにおいて、特別遊技の契機となった大当りの種類、確変の有無、特別遊技を構成する単位遊技の数などに応じて」「表示される」「特別遊技の名称」が、「日本語」であることは自明である。
また、当該「特別遊技の名称」は、「特別遊技が開始されるときに表示される大当り開始デモにおいて、特別遊技の契機となった大当りの種類、確変の有無、特別遊技を構成する単位遊技の数などに応じて」「表示される」ことから、先願発明の「日本語」で表示される「特別遊技の名称」は、本件補正発明の「特典の付与に関する報知」に相当する。
そして、先願発明は、「サブCPU310は、第2の言語の設定を遊技者から受け付けると、サブRAM311の所定領域に、設定された第2の言語の種別を示すデータを格納し、演出制御手段304は、演出表示装置60に文字情報を表示する際に、サブRAM311に格納された第2の言語の種別を示すデータを参照して、第2の言語が設定されているか否かを確認し、第2の言語が設定されており、かつ、表示しようとしている第1の言語による文字情報に対応する第2の言語による文字情報がデータROM324に格納されている場合には、データROM324から第2の言語による文字情報を読み出して表示」することから、先願発明の「サブCPU310」及び「演出制御手段304」は、本件補正発明の「特典報知手段」に相当する機能を備える。
してみると、先願発明の構成b、cは、本件補正発明の構成Cに相当する構成を備える。

(d)先願発明の「演出表示装置60にエラーメッセージ」を「1種類の言語だけでなく、複数の種類の言語により」「表示」する構成は、本件補正発明の「前記第1言語と前記第2言語との双方を用いた表示が実行されることにより、異常に関する報知を実行する」構成に相当し、先願発明の「サブCPU310により実現されるエラー制御手段」は、本件補正発明の「異常報知手段」に相当する。
してみると、先願発明の構成dは、本件補正発明の構成Dに相当する。

(e)先願発明の「第2の言語を選択する」ことは、本件補正発明の「遊技に関する設定を行うこと」及び「前記設定に関する1の事項」に相当することから、先願発明の「「LANGUAGE」の設定画面」は、本件補正発明の「遊技に関する設定を行うことが可能な設定画面」に相当する。
そして、先願発明の「「LANGUAGE」の設定画面」の「第2の言語を選択するためのメニュー項目」を「日本語、英語、中国語及び韓国語で表示」する構成は、本件補正発明の「前記設定に関する1の事項を前記第1言語と前記第2言語との双方を用いて表示」する構成に相当する。
してみると、先願発明の構成eは、本件補正発明の構成Eに相当する。

(f)先願発明の「遊技中にエラーが発生したときに演出表示装置60にエラーメッセージを表示する際」は、本件補正発明の「前記異常報知手段により前記異常に関する報知が実行されるとき」に相当し、先願発明の「発生したエラーに関する情報」に関する「スピーカー108から出力される音声」は、本件補正発明の「該異常に関する報知に対応する音声」に相当する。
そして、先願発明の「発生したエラーに関する情報をスピーカー108から出力される音声によっても報知し、第1の種別のエラー(第2の言語により文字情報を表示可能なエラー)に関する情報は、第1の言語による音声だけでスピーカー108から出力する」構成は、本件補正発明の「該異常に関する報知に対応する音声が、前記第2言語で出力されず、前記第1言語で出力される」構成に相当する。
してみると、先願発明の構成fは、本件補正発明の構成Fに相当する。

(g)先願発明における「ぱちんこ遊技機100」が、本件補正発明の「遊技機」に相当することは上記(a)にて説示のとおりである。
してみると、先願発明の構成gは、本件補正発明の構成Gに相当する。


したがって、上記(a)?(g)によれば、本件補正発明と先願発明は、
「A 遊技を行うことが可能な遊技機であって、
B 第1言語と第2言語とを含む複数種類の言語のうち少なくとも1の言語を用いた制御を実行可能な制御手段と、
C 前記第1言語を用いた表示が実行されることにより、特典の付与に関する報知を実行する特典報知手段と、
D 前記第1言語と前記第2言語との双方を用いた表示が実行されることにより、異常に関する報知を実行する異常報知手段とを備え、
E 遊技に関する設定を行うことが可能な設定画面において、前記設定に関する1の事項を前記第1言語と前記第2言語との双方を用いて表示し、
F 前記異常報知手段により前記異常に関する報知が実行されるときは、該異常に関する報知に対応する音声が、前記第2言語で出力されず、前記第1言語で出力される、
G 遊技機。」
の点で一致し、相違する点はない。

(4)請求人の主張
令和2年1月8日提出の審判請求書において、請求人は概略以下の点について主張する。
ア 先願明細書等には、「「第1の種別のエラーに対応する音声の出力として、第2の言語で出力されずかつ第1の言語で出力される事項」は記載されてお」らず「補正後の本願発明と先願1に係る発明と」「は相違」する。
イ 「補正後の本願発明が上述の特徴を有することにより」、「異常に関する報知が実行されるときに、第1言語の音声および第2言語の音声の双方が同時に出力された場合には、例えば第1言語を理解できる者であっても、この音声を理解し難くなるという問題」「が生じることを防止でき」、「保持する音声データの容量を削減でき」、「異常の発生の原因となる遊技者による不正行為の店員による発見が遅れてしまうという問題」「が生じることを防止できるという新たな効果を奏」する。

そこで、請求人の上記各主張について検討すると、上記(2)イ(1-h)及び上記(3)(f)で説示したとおり、先願発明は、本件補正発明の構成F(「前記異常報知手段により前記異常に関する報知が実行されるときは、該異常に関する報知に対応する音声が、前記第2言語で出力されず、前記第1言語で出力される」)に相当する構成を備えることから、請求人の上記主張アは理由がない。また、請求人が上記主張イで新たな効果として主張する各事項も、構成Fを含む全ての構成で本件補正発明と一致する先願発明であれば、当然奏する効果であると認められることから、請求人の上記主張イについても理由がない。
したがって、請求人の上記各主張を採用することはできない。

(5)まとめ
上記(1)?(4)より、本件補正発明は、先願発明と同一の発明であり、しかも、本件補正発明の発明者が先願発明の発明者と同一であるとはいえず、また、本願の出願時点において、その出願人が先願発明の出願人と同一であるともいえないので、本件補正発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。そして、本件補正発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和1年5月9日付け手続補正書により補正された、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
遊技を行うことが可能な遊技機であって、
第1言語と第2言語とを含む複数種類の言語のうち少なくとも1の言語を用いた制御を実行可能な制御手段と、
前記第1言語を用いた制御が実行されることにより、特典の付与に関する報知を実行する特典報知手段と、
前記第1言語と前記第2言語との双方を用いた制御が実行されることにより、異常に関する報知を実行する異常報知手段とを備え、
遊技に関する設定を行うことが可能な設定画面において、前記設定に関する1の事項を前記第1言語と前記第2言語との双方を用いて表示する、遊技機。」

2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりのものである。

(拡大先願)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

・請求項1
・引用文献等1

先願発明:特願2017-47320号(特開2018-149066号)

3 先願発明
先願明細書等の記載事項及び先願発明の認定については、上記「第2[理由]2 2-2(2)」に説示したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]2 2-2(1)」で検討した本件補正発明から、「前記第1言語を用いた表示」及び「前記第1言語と前記第2言語との双方を用いた表示」と特定された事項が、それぞれ「前記第1言語を用いた制御」及び「前記第1言語と前記第2言語との双方を用いた制御」と上位概念化され、そして、「前記異常報知手段により前記異常に関する報知が実行されるときは、該異常に関する報知に対応する音声が、前記第2言語で出力されず、前記第1言語で出力される」との限定を削除したものである。
そうすると、上記「第2[理由]2 2-2(3)」で説示したとおり、本願発明の構成要件を全て含む本件補正発明と先願発明とは全ての構成で一致することから、本願発明と先願発明とは全ての構成で一致する。
したがって、本願発明は、先願発明と同一である。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-07-30 
結審通知日 2020-08-04 
審決日 2020-08-18 
出願番号 特願2017-86371(P2017-86371)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 櫻井 茂樹  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 鷲崎 亮
▲高▼橋 祐介
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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