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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする A61B 審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする A61B |
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管理番号 | 1366933 |
審判番号 | 不服2020-5609 |
総通号数 | 251 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-04-24 |
確定日 | 2020-10-27 |
事件の表示 | 特願2016-556941「螺旋状体積撮像のためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月17日国際公開、WO2015/138946、平成29年 3月23日国内公表、特表2017-507740、請求項の数(29)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2015年(平成27年)3月13日(パリ条約による優先権主張 2014年3月14日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成30年10月25日付けで拒絶理由が通知され、平成31年2月5日に意見書及び手続補正書が提出され、令和元年5月10日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年7月30日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月23日付けで前記令和元年7月30日付け手続補正書でした補正についての却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、令和2年4月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 令和元年12月23日付け補正の却下の決定について 請求人は、令和2年4月24日提出の審判請求書の請求の理由の「6.むすび」で、「以上のとおり、本願の請求項1-29に係る発明は、引用文献1-5に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではなく、独立特許要件を備えているので、『この補正は同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反する』との判断は誤りであります。よって、補正の却下の決定ならびに原査定を取り消す、この出願の発明はこれを特許すべきものとする、との審決を求める次第です。」と主張しており、「補正の却下の決定」に対して不服が申し立てられているものと認められるため、令和元年12月23日付けの補正の却下の決定の当否について検討する。 [令和元年12月23日付け補正の却下の決定についての結論] 平令和元年12月23日付け補正の却下の決定を取り消す。 [理由] 1 補正の内容 令和元年7月30日付け手続補正書でした手続補正(以下「本件補正」という。)は、本件補正前(平成31年2月5日付け手続補正により補正されたもの)の特許請求の範囲を、以下のとおりに補正する内容を含むものである。 (1)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、平成31年2月5日付け手続補正による補正後の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 磁気共鳴撮像(MRI)システムであって、 前記MRIシステム内に配置された対象の少なくとも関心領域(ROI)の周囲に静磁場を生成するように構成された磁気システムと、 前記静磁場に対する少なくとも1つの勾配磁場を達成するように構成された複数の勾配コイルと、 送信および受信コイルを含むラジオ周波数(RF)システムと、を備え、 前記送信および受信コイルが、 前記MRIシステムによって撮像される前記対象の部分の輪郭に沿うように構成された基板と、 前記基板に結合されているとともに半球形の螺旋パターンを形成する少なくとも1つのコイルと、を備え、 前記半球形の螺旋パターンが、前記少なくとも1つのコイルの隣接する部分の間の距離が等間隔であるよう構成された、MRIシステム。 【請求項2】 前記静磁場は、低磁場の静磁場である、請求項1に記載のMRIシステム。 【請求項3】 前記静磁場は、10mT未満である、請求項1又は2に記載のMRIシステム。 【請求項4】 前記送信および受信コイルは、前記対象の外縁を撮像するようなサイズである、請求項1?3のいずれか一項に記載のMRIシステム。 【請求項5】 前記MRIシステムは、撮像プロセスを実施するためにパルスシーケンスを実施するよう構成され、 前記少なくとも1つのコイルは、前記パルスシーケンスを実施する間に送信および受信動作を実施するように構成された、請求項1?4のいずれか一項に記載のMRIシステム。 【請求項6】 前記パルスシーケンスは、定常自由歳差運動(b-SSFP)パルスシーケンスを含む、請求項5に記載のMRIシステム。 【請求項7】 前記基板がヘルメットを形成し、前記対象の前記部分が頭部であり、前記ヘルメットが、前記対象の前記頭部の輪郭に合うように構成されている、請求項1?6のいずれか一項に記載のMRIシステム。 【請求項8】 前記少なくとも1つのコイルは、前記対象の頭頂部にそろえられた中心から外に螺旋状に前記対象の前記頭部を囲む外縁に向かうように構成された、請求項7に記載のMRIシステム。 【請求項9】 前記基板が3次元(3D)プリンティングに適切な材料で形成された、請求項1?8のいずれか一項に記載のMRIシステム。 【請求項10】 MRIシステムを使用して磁気共鳴撮像(MRI)プロセスを実施するための送信および受信コイルシステムであって、 前記MRIシステムによって撮像される対象の部分の輪郭に沿うように構成された基板と、 前記基板に結合されているとともに前記基板にわたって延びる3次元螺旋パターンを形成する少なくとも1つの送信および受信コイルと、を備え、 前記3次元螺旋パターンは、前記少なくとも1つのコイルの隣接する部分の間の距離が等間隔であるよう構成された、送信および受信コイルシステム。 【請求項11】 前記少なくとも1つのコイルは、前記対象の外縁を撮像するようなサイズである、請求項10に記載の送信および受信コイルシステム。 【請求項12】 前記基板がヘルメットを形成し、前記対象の前記部分が頭部であり、前記ヘルメットが、前記対象の前記頭部の輪郭に合うように構成されている、請求項10又は11に記載の送信および受信コイルシステム。 【請求項13】 前記少なくとも1つのコイルは、前記対象の頭頂部にそろえられた中心から外に螺旋状に前記対象の前記頭部を囲む外縁に向かうように構成された、請求項12に記載の送信および受信コイルシステム。 【請求項14】 前記基板が3次元(3D)プリンティングに適切な材料で形成された、請求項10?13のいずれか一項に記載の送信および受信コイルシステム。 【請求項15】 人間の解剖学的構造の部分のために構成された単一チャネルRF(ラジオ周波数)コイルであって、 関心領域の周囲に3次元形状に配置された導体を備え、 前記3次元形状パターンは、前記導体の隣接する部分の間の距離が等間隔であるよう構成され、 対象の前記人間の解剖学的構造の前記部分の磁気共鳴を実施することと併せて前記単一チャネルRFコイルが送信および受信コイルとして作動したときに、前記導体が、前記対象の体の長手軸にほぼ並行な磁場を生成および検出するよう構成されている、単一チャネルRFコイル。 【請求項16】 前記導体が、ほぼ螺旋状の形状に配置されている、請求項15に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項17】 前記単一チャネルRFコイルが、前記対象の頭部を収容するように形成された基板を備えたヘッドコイルとして構成され、 前記導体は、前記基板の表面にわたって前記3次元形状に配置された、請求項15又は16に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項18】 前記導体は、前記基板の少なくとも半球にわたって配置されている、請求項17に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項19】 前記導体は、前記3次元形状に配置されたワイヤによって形成された、請求項15?18のいずれか一項に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項20】 前記ワイヤは単一撚り線である、請求項19に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項21】 前記ワイヤはリッツ線である、請求項19に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項22】 前記導体は1メートルより大の長さである、請求項15に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項23】 前記導体は5メートルより大の長さである、請求項22に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項24】 前記導体は10メートルより大の長さである、請求項23に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項25】 前記導体は、前記導体が少なくとも10の巻き数を形成するように、前記3次元形状に配置された、請求項15に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項26】 前記導体は、前記導体が少なくとも20の巻き数を形成するように、前記3次元形状に配置された、請求項15に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項27】 前記導体は、前記導体が少なくとも30の巻き数を形成するように、前記3次元形状に配置された、請求項15に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項28】 前記RFコイルは、0.2Tより小であるB0磁場に対応する周波数において送信および受信するように構成された、請求項15に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項29】 前記半球形の螺旋パターンは、撮像される前記対象の前記部分の輪郭の周りにおいて複数の螺旋状の巻きを有し、前記少なくとも1つのコイルの隣接する螺旋状の巻きの間の距離が等間隔であるよう構成された、請求項1に記載のMRIシステム。 【請求項30】 前記3次元螺旋パターンは、撮像される前記対象の前記部分の輪郭の周りにおいて複数の螺旋状の巻きを有し、前記少なくとも1つのコイルの隣接する螺旋状の巻きの間の距離が等間隔であるよう構成された、請求項10に記載の送信および受信コイルシステム。 【請求項31】 前記導体は、前記導体が前記関心領域の周りにおいて複数の螺旋状の巻きを形成するように3次元形状に配置され、前記導体の隣接する螺旋状の巻きの間の距離が等間隔であるよう構成された、請求項15に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項32】 前記導体が、前記対象の頭頂部にそろえられた中心から外に螺旋状に前記対象の頭部を囲む外縁に向かうように構成された、請求項17に記載の単一チャネルRFコイル。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲 本件補正により、特許請求の範囲は次のとおり補正された(下線部は、請求人が付したもので、補正箇所を示すものである。) 「【請求項1】 磁気共鳴撮像(MRI)システムであって、 前記MRIシステム内に配置された対象の少なくとも関心領域(ROI)の周囲に静磁場を生成するように構成された磁気システムと、 前記静磁場に対する少なくとも1つの勾配磁場を達成するように構成された複数の勾配コイルと、 送信および受信コイルを含むラジオ周波数(RF)システムと、を備え、 前記送信および受信コイルが、 前記MRIシステムによって撮像される前記対象の部分の輪郭に沿うように構成された基板と、 前記基板に結合されているとともに半球形の螺旋パターンを形成する少なくとも1つのコイルと、を備え、 前記半球形の螺旋パターンが、前記少なくとも1つのコイルの隣接する部分の間の距離が等間隔であるよう構成され、 前記少なくとも1つのコイルが、前記対象の頭頂部にそろえられた中心から始まって外に螺旋状に向かうように構成され、 前記少なくとも1つのコイルが、前記対象の前記頭部の外縁を囲むように螺旋状に構成された、MRIシステム。 【請求項2】 前記静磁場は、低磁場の静磁場である、請求項1に記載のMRIシステム。 【請求項3】 前記静磁場は、10mT未満である、請求項1又は2に記載のMRIシステム。 【請求項4】 前記送信および受信コイルは、前記対象の外縁を撮像するようなサイズである、請求項1?3のいずれか一項に記載のMRIシステム。 【請求項5】 前記MRIシステムは、撮像プロセスを実施するためにパルスシーケンスを実施するよ う構成され、 前記少なくとも1つのコイルは、前記パルスシーケンスを実施する間に送信および受信 動作を実施するように構成された、請求項1?4のいずれか一項に記載のMRIシステム。 【請求項6】 前記パルスシーケンスは、定常自由歳差運動(b-SSFP)パルスシーケンスを含む、請求項5に記載のMRIシステム。 【請求項7】 前記基板がヘルメットを形成し、前記対象の前記部分が頭部であり、前記ヘルメットが 、前記対象の前記頭部の輪郭に合うように構成されている、請求項1?6のいずれか一項 に記載のMRIシステム。 【請求項8】 前記基板が3次元(3D)プリンティングに適切な材料で形成された、請求項1?7のいずれか一項に記載のMRIシステム。 【請求項9】 MRIシステムを使用して磁気共鳴撮像(MRI)プロセスを実施するための送信および受信コイルシステムであって、 前記MRIシステムによって撮像される対象の部分の輪郭に沿うように構成された基板と、 前記基板に結合されているとともに前記基板にわたって延びる3次元螺旋パターンを形成する少なくとも1つの送信および受信コイルと、を備え、 前記3次元螺旋パターンは、前記少なくとも1つのコイルの隣接する部分の間の距離が等間隔であるよう構成され、 前記少なくとも1つの送信および受信コイルが、前記対象の頭頂部にそろえられた中心から始まって外に螺旋状に向かうように構成され、 前記少なくとも1つの送信および受信コイルが、前記対象の前記頭部の外縁を囲むように延びるように螺旋状に構成された、送信および受信コイルシステム。 【請求項10】 前記少なくとも1つのコイルは、前記対象の外縁を撮像するようなサイズである、請求項9に記載の送信および受信コイルシステム。 【請求項11】 前記基板がヘルメットを形成し、前記対象の前記部分が頭部であり、前記ヘルメットが、前記対象の前記頭部の輪郭に合うように構成されている、請求項9又は10に記載の送信および受信コイルシステム。 【請求項12】 前記基板が3次元(3D)プリンティングに適切な材料で形成された、請求項9?11のいずれか一項に記載の送信および受信コイルシステム。 【請求項13】 人間の解剖学的構造の部分のために構成された単一チャネルRF(ラジオ周波数)コイルであって、 関心領域の周囲に3次元形状に配置された導体を備え、 前記3次元形状パターンは、前記導体の隣接する部分の間の距離が等間隔であるよう構成され、 対象の前記人間の解剖学的構造の前記部分の磁気共鳴を実施することと併せて前記単一チャネルRFコイルが送信および受信コイルとして作動したときに、前記導体が、前記対象の体の長手軸にほぼ並行な磁場を生成および検出するよう構成され、 前記導体が、前記対象の頭頂部にそろえられた中心から始まって外に螺旋状に向かうように構成され、 前記導体が、前記対象の前記頭部の外縁を囲むように延びるように螺旋状に構成された、単一チャネルRFコイル。 【請求項14】 前記導体が、ほぼ螺旋状の形状に配置されている、請求項13に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項15】 前記単一チャネルRFコイルが、前記対象の頭部を収容するように形成された基板を備えたヘッドコイルとして構成され、 前記導体は、前記基板の表面にわたって前記3次元形状に配置された、請求項13又は14に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項16】 前記導体は、前記基板の少なくとも半球にわたって配置されている、請求項15に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項17】 前記導体は、前記3次元形状に配置されたワイヤによって形成された、請求項13?16のいずれか一項に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項18】 前記ワイヤは単一撚り線である、請求項17に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項19】 前記ワイヤはリッツ線である、請求項17に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項20】 前記導体は1メートルより大の長さである、請求項13に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項21】 前記導体は5メートルより大の長さである、請求項20に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項22】 前記導体は10メートルより大の長さである、請求項21に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項23】 前記導体は、前記導体が少なくとも10の巻き数を形成するように、前記3次元形状に配置された、請求項13に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項24】 前記導体は、前記導体が少なくとも20の巻き数を形成するように、前記3次元形状に配置された、請求項13に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項25】 前記導体は、前記導体が少なくとも30の巻き数を形成するように、前記3次元形状に配置された、請求項13に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項26】 前記RFコイルは、0.2Tより小であるB0磁場に対応する周波数において送信および受信するように構成された、請求項13に記載の単一チャネルRFコイル。 【請求項27】 前記半球形の螺旋パターンは、撮像される前記対象の前記部分の輪郭の周りにおいて複数の螺旋状の巻数を有し、前記少なくとも1つのコイルの隣接する螺旋状の巻きの間の距離が等間隔であるよう構成された、請求項1に記載のMRIシステム。 【請求項28】 前記3次元螺旋パターンは、撮像される前記対象の前記部分の輪郭の周りにおいて複数の螺旋状の巻数を有し、前記少なくとも1つのコイルの隣接する螺旋状の巻きの間の距離が等間隔であるよう構成された、請求項9に記載の送信および受信コイルシステム。 【請求項29】 前記導体は、前記導体が前記関心領域の周りにおいて複数の螺旋状の巻数を形成するように3次元形状に配置され、前記導体の隣接する螺旋状の巻きの間の距離が等間隔であるよう構成された、請求項13に記載の単一チャネルRFコイル。」 (3)補正事項 上記(1)-(2)から、本件補正は、以下の補正事項からなるものである。 (補正事項1)補正前の請求項1における「少なくとも1つのコイル」につき、「前記少なくとも1つのコイルが、前記対象の頭頂部にそろえられた中心から始まって外に螺旋状に向かうように構成され、前記少なくとも1つのコイルが、前記対象の前記頭部の外縁を囲むように螺旋状に構成された」ものに限定して、本件補正後の請求項1とする。 (補正事項2)補正前の請求項10における「少なくとも1つの送信および受信コイル」につき、「前記少なくとも1つの送信および受信コイルが、前記対象の頭頂部にそろえられた中心から始まって外に螺旋状に向かうように構成され、前記少なくとも1つの送信および受信コイルが、前記対象の前記頭部の外縁を囲むように螺旋状に構成された」ものに限定して、本件補正後の請求項9とする。 (補正事項3)補正前の請求項15における「導体」につき、「前記導体が、前記対象の頭頂部にそろえられた中心から始まって外に螺旋状に向かうように構成され、前記導体が、前記対象の前記頭部の外縁を囲むように延びるように螺旋状に構成された」ものに限定して、本件補正後の請求項13とする。 (補正事項4)補正前の請求項29における「3次元螺旋パターン」の「複数の螺旋状の巻きを有し」を、「複数の螺旋状の巻数を有し」と言い換え、本件補正後の請求項27とする。 (補正事項5)補正前の請求項30における「3次元螺旋パターン」の「複数の螺旋状の巻きを有し」を、「複数の螺旋状の巻数を有し」と言い換え、さらに引用する請求項の項番を改め、本件補正後の請求項28とする。 (補正事項6)補正前の請求項31における「導体」の「複数の螺旋状の巻きを形成するように3次元形状に配置され、」を、「複数の螺旋状の巻数を形成するように3次元形状に配置され、」と言い換え、さらに引用する請求項の項番を改め、本件補正後の請求項29とする。 (補正事項7)補正前の請求項8,13及び32を削除し、補正前の請求項9,11,12,14,16-28が引用する請求項の項番を改め、補正後の請求項8,10-12,14-26とする。 2 令和元年12月23日付け補正の却下の決定の概要 令和元年12月23日付け補正の却下の決定の概要は、次のとおりである。 (1)令和元年7月30日付け手続補正書による請求項1-29についての補正は限定的減縮を目的としている。 (2-1)請求項1-5,7,9-11,13-26に係る発明は、以下の引用文献1及び4に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものである。 (2-2)請求項6に係る発明は以下の引用文献1,2,4に記載された発明に基づいて、請求項8,12に係る発明は以下の引用文献1,3,4に記載された発明に基づいて、請求項27-29に係る発明は以下の引用文献1,4,5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)したがって、補正後の請求項1-29に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (4)よって、令和元年7月30日付け手続補正書でした特許請求の範囲の補正は特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に違反するものであるから、特許法第53条第1項の規定により、令和元年7月30日付け手続補正書でした補正を却下することを決定する。 <引用文献等一覧> 1.特開2010-029313号公報 2.特開2010-124911号公報 3.韓国公開特許第10-2012-0097855号公報 4.特開2005-124692号公報 5.特表2005-503907号公報 3 令和元年12月23日付け補正の却下の決定についての検討 (1)補正の目的について ア 補正事項1 補正事項1(上記1(3))は、発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、補正の前後で請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることは明らかであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 請求項2-8,27は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、補正事項1による補正で、請求項1に係る発明が減縮されたことに伴い、請求項2-8,27に係る発明も減縮されている。 イ 補正事項2 補正事項2(上記1(3))は、発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、補正の前後で補正前の請求項10に記載された発明と補正後の請求項9に記載された発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることは明らかであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 請求項10-12,28は、請求項9を直接的又は間接的に引用するものであるから、補正事項2による補正で、請求項9に係る発明が減縮されたことに伴い、請求項10-12,28に係る発明も減縮されている。 ウ 補正事項3 補正事項3(上記1(3))は、発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、補正の前後で補正前の請求項15に記載された発明と補正後の請求項13に記載された発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることは明らかであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 請求項14-26,29は、請求項13を直接的又は間接的に引用するものであるから、補正事項3による補正で、請求項13に係る発明が減縮されたことに伴い、請求項14-26,29に係る発明も減縮されている。 エ 補正事項4ないし6 補正事項4ないし6(上記1(3))は、令和元年5月10日付けの拒絶理由通知における「理由1」の請求項29-31についての備考で指摘された不明確な記載を明確な記載となるように補正するものであるから、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明に該当する。 オ 補正事項7 補正事項7は、請求項の削除とそれに伴う引用請求項の項番の変更であるから、特許法第17条の2第5項第1項に掲げる請求項の削除に該当する。 そこで、上記補正事項1ないし3に係る補正後の請求項1ないし29に係る発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討する。 (2)独立特許要件について ア 本願補正発明 本願の請求項1ないし29に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし29に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1ないし29に係る発明(それぞれ、「本願補正発明1」ないし「本願補正発明29」という。)は、上記1(2)に記載のとおりのものであり、本願補正発明1には、以下のとおり、当審にて分説しA)?E-2-3)の見出しを付けた。 「【請求項1】 A)磁気共鳴撮像(MRI)システムであって、 B)前記MRIシステム内に配置された対象の少なくとも関心領域(ROI)の周囲に静磁場を生成するように構成された磁気システムと、 C)前記静磁場に対する少なくとも1つの勾配磁場を達成するように構成された複数の勾配コイルと、 D)送信および受信コイルを含むラジオ周波数(RF)システムと、を備え、 E)前記送信および受信コイルが、 E-1)前記MRIシステムによって撮像される前記対象の部分の輪郭に沿うように構成された基板と、 E-2)前記基板に結合されているとともに半球形の螺旋パターンを形成する少なくとも1つのコイルと、を備え、 E-2-1)前記半球形の螺旋パターンが、前記少なくとも1つのコイルの隣接する部分の間の距離が等間隔であるよう構成され、 E-2-2)前記少なくとも1つのコイルが、前記対象の頭頂部にそろえられた中心から始まって外に螺旋状に向かうように構成され、 E-2-3)前記少なくとも1つのコイルが、前記対象の前記頭部の外縁を囲むように螺旋状に構成された、 A)MRIシステム。」 イ 刊行物の記載及び引用発明 (ア)引用文献1について a 引用文献1に記載された事項 令和元年12月23日付けの補正の却下の決定及び原査定で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2010-29313号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は当審が付した。以下同じ。) (引1a)「【0001】 本発明は、核磁気共鳴画像診断システムに関する。」 (引1b)「【0014】 ==核磁気共鳴画像診断システム== 図1に核磁気共鳴画像診断システム1の全体構成を示す。この核磁気共鳴画像診断システム1は、磁気回路2、ベッドを備えた手術台3、手術台上の被検体の頭部を固定するための頭部定位固定具4、被検体の頭部に被せるための半球状の送受信用コイル5、被検体の頭部の位置を特定するための頭部位置特定用マーカー6、を有する。 【0015】 磁気回路2は、特に限定されないが、永久磁石を用いたオープン型であることが好ましい。手術台3その他の部品に関しては、特に限定されず、従来のMRI診断装置で用いられているものを使用できる。」 (引1c)「【0017】 図3に脱着時の送受信用コイル5の模式図を示す。送受信用コイル5は、RF電波を発信し、高周波信号を受信するアンテナの機能を有し、半球状の基板11と、その上に半球渦巻き状に形成された導線12を含んで構成される。送受信用コイル5には、導線12やコンデンサなどの電気回路の保護や頭部定位固定具4の構造に関係ない部分に通気孔があることが好ましく、例えば、頭頂部に、円形の通気孔を設けてもよい。この通気性により、送受信用コイル5から発生される高周波励起磁場による被検体温度の上昇、すなわちSARをできる限り低減し、なおかつ被検体の感じる圧迫感を低減することができる。基板11の材料は、ポリプロピレン樹脂やアクリル樹脂が例示されるが、特に限定されない。 この送受信用コイル5を被検体の頭部20に被せた時、頭部定位固定具4を超えて、目や鼻が隠れるくらいに送受信用コイル5が深く被るように、ボルト10に対応した切り込み13を基板11に設ける。この切り込み13部分では、導線12は、切り込み13を逃げるように、切り込み13にそって走らせる。この際、基板11の末端(すなわち、半球の遊離端)近傍で、導線間隔を狭くしたり、導線を2重巻きにしたりすることにより、送受信用コイル5が送受信する高周波磁場均一領域を、送受信用コイル5内側から外側に広げることができる。なお、導線12の材料は、無酸素銅やタフピッチ銅からなる線材や平板が例示されるが、特に限定されない。」 (引1d)「【図1】 」 (引1e)「【図3】(A) 」 b 引用文献1の記載から把握できる事項 上記(引1c)及び(引1e)より、「送受信用コイル5」は、「頭頂部の円形の通気孔と切り込み13には導線12は存在しない」ことが見てとれる。 c 引用文献1に記載された発明 上記(引1a)-(引1c)の下線部の事項と、上記(引1d)ないし(引1e)の図面と、上記bの下線部の事項から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 「核磁気共鳴画像診断システムにおいて、 核磁気共鳴画像診断システム1は、磁気回路2、ベッドを備えた手術台3、手術台上の被検体の頭部を固定するための頭部定位固定具4、被検体の頭部に被せるための半球状の送受信用コイル5、被検体の頭部の位置を特定するための頭部位置特定用マーカー6、を有し、 磁気回路2は、永久磁石を用いたオープン型であり、手術台3その他の部品に関しては、特に限定されず、従来のMRI診断装置で用いられているものを使用でき、 送受信用コイル5は、RF電波を発信し、高周波信号を受信するアンテナの機能を有し、半球状の基板11と、その上に半球渦巻き状に形成された導線12を含んで構成され、 送受信用コイル5には、頭頂部の円形の通気孔と切り込み13には導線12は存在しない、 核磁気共鳴画像診断システム。」 (イ)引用文献4について a 引用文献4に記載された事項 令和元年12月23日付けの補正の却下の決定及び原査定で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2005-124692号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の記載がある。 (引4a)「【0001】 本発明は、RFコイル(radio frequency coil)およびMRI(magnetic resonance imaging)装置に関し、特に、コイル軸上の位置を異にする複数の同軸のループ(loop)を有するRFコイル、および、そのようなRFコイルを備えたMRI装置に関する。」 (引4b)「【0018】 同図に示すように、本装置はマグネットシステム(magnet system)100を有する。マグネットシステム100は主磁場マグネット部102、勾配コイル部106および送信コイル部108を有する。これら主磁場マグネット部102および各コイル部は、いずれも空間を挟んで互いに対向する1対のものからなる。また、いずれも概ね円盤状の形状を有し中心軸を共有して配置されている。マグネットシステム100の内部空間に、撮影の対象1がクレードル500に搭載されて図示しない搬送手段により搬入および搬出される。対象1は頭部に受信コイル部110が装着されている。」 (引4c)「【0033】 図2に、受信コイル部110の一例の構成を模式的に示す。本コイルは発明を実施するための最良の形態の一例である。本コイルの構成によって、RFコイルに関する本発明を実施するための最良の形態の一例が示される。 【0034】 同図においてz軸方向(体軸方向)は受信コイル部110のコイル軸の方向であり、Oはコイル中心である。同図の(a)はz軸方向に見た図、(b)はx軸方向に見た図である。同図に示すように、受信コイル部110は複数のループ112a,112b,112c,112d,112fを有する。ここではループの個数が6である例を示すがこれに限るものではなく、適宜の複数であってよい。各ループはLC回路となっている。LC回路の共振周波数は各ループとも同一になっている。共振周波数は磁気共鳴信号の中心周波数に一致する。各ループはそれぞれソレノイドコイルである。ソレノイドコイルは構造が単純な点で好ましい。 【0035】 複数のループ112a-112fはコイル軸を共有する同軸のループであり、コイル軸上に等間隔に配置されている。各ループの形状は円形である。各円は、破線で示すようにコイル中心Oと同心の球を想定したとき、これを各ループの位置でそれぞれコイル軸に垂直に切ってできる円に相当する。これによって、複数のループ112a-112fを包絡するエンベロープ(envelope)は球殻となる。また、複数のループ112a-112fの内側には球状の内部空間が形成される。内部空間の大きさは対象1の頭部を収容できる大きさとなっている。」 (引4d)「【0039】 複数のループ112a-112fは、図4に示すように、全体としてひと繋がりの螺旋状のループ(螺旋コイル)を形成するようなものとしてもよい。このようにしても、上記と同様な機能を持つ受信コイル部110を得ることができる。このようにした場合は、コイル軸上にループが連続的に存在するので感度分布の均一性がさらに良くなる。」 (引4e)「【0059】 以上の受信コイル部110の構成は、RF信号の受信ばかりでなく、RF信号の送信ま たは送受信に利用できる。したがって、本発明のRFコイルは受信専用のコイルに限定されない。」 (引4f)「【図1】 」 (引4g)「【図2】 」 (引4h)「【図4】 」 b 引用文献4の記載から把握できる事項 上記(引4c)、(引4d)及び(引4h)より、「受信コイル部110は複数のループ112a,112b,112c,112d,112fよりなり、複数のループ112a-112fは、全体としてひと繋がりの螺旋状のループ(螺旋コイル)を形成し、螺旋コイルは球の中心OからZ軸方向(体軸方向)に見て球面の最上部又は最下部から離れた球面上の点を始点又は終点として形成されている」ことが見てとれる。 c 引用文献4に記載された発明 上記(引4a)-(引4e)の下線部の事項と、上記(引4f)ないし(引4h)の図面と、上記bの下線部の事項から、引用文献4には、以下の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されている。 「RFコイル(radio frequency coil)およびMRI(magnetic resonance imaging)装置において、 本装置はマグネットシステム(magnet system)100を有し、マグネットシステム100は主磁場マグネット部102、勾配コイル部106および送信コイル部108を有し、 対象1は頭部に受信コイル部110が装着されており、 受信コイル部110の構成は、RF信号の受信ばかりでなく、RF信号の送信または送受信に利用でき、 受信コイル部110は複数のループ112a,112b,112c,112d,112fよりなり、複数のループ112a-112fはコイル軸を共有する同軸のループであり、コイル軸上に等間隔に配置されており、複数のループ112a-112fは、全体としてひと繋がりの螺旋状のループ(螺旋コイル)を形成し、螺旋コイルは球の中心OからZ軸方向(体軸方向)に見て球面の最上部又は最下部から離れた球面上の点を始点又は終点として形成されている、 RFコイルおよびMRI装置。」 (ウ)引用文献2について 令和元年12月23日付けの補正の却下の決定及び原査定で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2010-124911号公報(以下「引用文献2」という。)には、その【0005】段落及び【0014】段落の記載からみて、「定常自由歳差運動パルスシーケンスによって被験体の頭部の磁気共鳴撮像を行う」という技術的事項が記載されている。 (エ)引用文献3について 令和元年12月23日付けの補正の却下の決定及び原査定で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である韓国公開特許第10-2012-0097855号公報(以下「引用文献3」という。)には、その[0054]段落の記載からみて、「被験体の頭部に沿ったマスクを3次元プリンティングで形成する」という技術的事項が記載されている。 (オ)引用文献5について 令和元年12月23日付けの補正の却下の決定及び原査定で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2005-503907号公報(以下「引用文献5」という。)には、その【0023】段落の記載からみて、「巻線の本数が複数の螺旋状の巻きであるRFコイル」という技術的事項が記載されている。 (カ)引用文献6について a 引用文献6に記載された事項 当審で新たに発見した、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭60-253857号公報(以下「引用文献6」という。)には、以下の記載がある。 (引6a)「(1)発明の技術分野 本発明は、核磁気共鳴(NMR)装置用コイル構成およびそのNMR装置に関するものである。」(第2頁左上欄第17-19行) (引6b)「(4)発明の実施例 本発明によるNMR装置は、例えば英国特許第1,578,910 号または第2,056,078 号に記載の如く大部分従来の形式から構成されている。 そのような装置の基本的な構成要素は、下記の通りである。 本発明によるNMR装置は、第1のコイル装置を備えており、それによつて検査しようとする身体に対して三つの直交する方向、すなわちX,YおよびZのいずれか一つ以上の方向に勾配を有して所定方向(通常Z方向と定められている)に磁界を与えることができる。 第1図において、第1のコイル装置は、Z方向に定常均一磁界Boを与えるコイル1と、X方向に磁界勾配Gxを与えるコイル3と、Y方向に磁界勾配Gyを与えるコイル5と、およびZ方向に磁界勾配Gzを与えるコイル7とから構成されている。 更に、本発明によるNMR装置には、第2のRFコイル装置が備えられており、それによつて検査中の身体に対して第1のコイル装置によって生じた磁界方向に対して垂直な面にRF磁界を与え、かつZ方向以外のスピンベクトル成分によつて核磁気共鳴に励磁された検査中の身体の原子核から生じるRF磁界を検出することができる。 第2のコイル装置は、RF磁界を与える一対のコイル9Aおよび9Bから構成された第1のコイル構成と、RF磁界を検出する一対のコイル10Aおよび10Bから構成された第2のコイル構成とを備えており、それらのコイルの位置(構成ではない)のみを第1図に示してある。」(第2頁右下欄第14行?第3頁右上欄第5行) (引6c)「一例として説明されている本発明によるNMR装置において、コイル9Aおよび9Bから成るコイル構成は、従来のNMR装置と同様、第1のコイル装置内に位置決めされた管状巻形(図示せず)に取り付けられており、コイル10Aおよび10Bから成るコイル構成は、患者の頭部の周囲に密着して位置決めされるようになつている。 さて第3図において、前記コイル構成は、このために外形の一部分が球状となつており、かつ多用な目的のために通常オートバイに乗る人が使用する顔面開放型ヘルメツトの外観を呈す巻形45から構成されている。前記二つのコイル構成は、前記巻形のいずれかの側に一つずつ同軸的に置かれており、その夫々が前記巻形の外面に一致してらせん状に巻かれた多数の巻き、通常三回から六回の巻きによつて構成されている。」(第3頁右下欄第12行?第4頁左上欄第8行) (引6d)「Fig.3 」 b 引用文献6の記載から把握できる事項 上記(引6c)及び(引6d)より、「コイル10Aは、患者の頭部の周囲に密着して位置決めされ、顔面開放型ヘルメットの外観を呈す巻形45に巻形の外面に一致してらせん状に巻かれている」ことが見てとれる。 c 引用文献6に記載された発明 上記(引6a)-(引6c)の下線部の事項と、上記(引6d)の図面と、上記bの下線部の事項から、引用文献6には、以下の発明(以下「引用発明6」という。)が記載されている。 「核磁気共鳴(NMR)装置用コイル構成およびそのNMR装置において、 NMR装置は、第1のコイル装置を備えており、 第1のコイル装置は、Z方向に定常均一磁界Boを与えるコイル1と、X方向に磁界勾配Gxを与えるコイル3と、Y方向に磁界勾配Gyを与えるコイル5と、およびZ方向に磁界勾配Gzを与えるコイル7とから構成されており、 NMR装置には、第2のRFコイル装置が備えられており、 第2のコイル装置は、RF磁界を与える一対のコイル9Aおよび9Bから構成された第1のコイル構成と、RF磁界を検出する一対のコイル10Aおよび10Bから構成された第2のコイル構成とを備えており、 コイル10Aは、患者の頭部の周囲に密着して位置決めされ、顔面開放型ヘルメットの外観を呈す巻形45に巻形の外面に一致してらせん状に巻かれている、 核磁気共鳴(NMR)装置用コイル構成およびそのNMR装置。」 ウ 対比・判断 ウ-1 本願補正発明1と引用発明1との対比及び判断 (ア)対比 本願補正発明1と引用発明1とを対比する。 a A)について 引用発明1の「核磁気共鳴画像診断システム1」は、本願補正発明1の「磁気共鳴撮像(MRI)システム」に相当する。 b B)について 引用発明1の「核磁気共鳴画像診断システム1」が有する「永久磁石を用いたオープン型であ」る「磁気回路2」は、本願補正発明1の「MRIシステム内に配置された対象の少なくとも関心領域(ROI)の周囲に静磁場を生成するように構成された磁気システム」に相当する。 c C)について 引用発明1の「核磁気共鳴画像診断システム1」は、「手術台3その他の部品に関しては、特に限定されず、従来のMRI診断装置で用いられているものを使用でき」、核磁気共鳴画像を撮影することができるものであるから、本願補正発明1の「静磁場に対する少なくとも1つの勾配磁場を達成するように構成された複数の勾配コイル」を備えていると認められる。 d D)、E)について 引用発明1の「核磁気共鳴画像診断システム1」が有する「RF電波を発信し、高周波信号を受信するアンテナの機能を有し」た「被検体の頭部に被せるための半球状の送受信用コイル5」は、本願補正発明1の「送信および受信コイル」並びに「送信および受信コイルを含むラジオ周波数(RF)システム」に相当する。 e E-1)について 引用発明1の「被検体の頭部に被せるための半球状の送受信用コイル5」の「半球状の基板11」は、本願補正発明1の「MRIシステムによって撮像される」「対象の部分の輪郭に沿うように構成された基板」に相当する。 f E-2)、E-2-3)について 引用発明1の「被検体の頭部に被せるための半球状の送受信用コイル5」の「半球状の基板11」「の上に半球渦巻き状に形成された導線12」は、本願補正発明1の「基板に結合されているとともに半球形の螺旋パターンを形成する少なくとも1つのコイル」「が、」「対象の」「頭部の外縁を囲むように螺旋状に構成され」ていることに相当する。 g 上記a-fから、本願補正発明1と引用発明1とは、次の一致点で一致し、次の相違点で相違する。 (一致点) 「磁気共鳴撮像(MRI)システムであって、 前記MRIシステム内に配置された対象の少なくとも関心領域(ROI)の周囲に静磁場を生成するように構成された磁気システムと、 前記静磁場に対する少なくとも1つの勾配磁場を達成するように構成された複数の勾配コイルと、 送信および受信コイルを含むラジオ周波数(RF)システムと、を備え、 前記送信および受信コイルが、 前記MRIシステムによって撮像される前記対象の部分の輪郭に沿うように構成された基板と、 前記基板に結合されているとともに半球形の螺旋パターンを形成する少なくとも1つのコイルと、を備え、 前記少なくとも1つのコイルが、前記対象の前記頭部の外縁を囲むように螺旋状に構成された、MRIシステム。」 (相違点) <相違点1> 送信および受信コイルが備える半球形の螺旋パターンを形成する少なくとも1つのコイルにおいて、本願補正発明1は「前記半球形の螺旋パターンが、前記少なくとも1つのコイルの隣接する部分の間の距離が等間隔であるよう構成され、前記少なくとも1つのコイルが、前記対象の頭頂部にそろえられた中心から始まって外に螺旋状に向かうように構成され」るのに対し、引用発明1は、半球状の基板11の上に半球渦巻き状に形成された導線12の導線間隔は明示がなく、頭頂部の円形の通気孔と切り込み13には導線12は存在しない点。 (イ)判断 上記相違点1について検討する。 (イ-1)引用発明4との組み合わせについて 引用発明4には、MRI装置に用いるRFコイルを開示しているが、そのRFコイルである受信コイル部110は「複数のループ112a,112b,112c,112d,112fよりなり、複数のループ112a-112fはコイル軸を共有する同軸のループであり、コイル軸上に等間隔に配置されており、複数のループ112a-112fは、全体としてひと繋がりの螺旋状のループ(螺旋コイル)を形成し、螺旋コイルは球の中心OからZ軸方向(体軸方向)に見て球面の最上部又は最下部から離れた球面上の点を始点又は終点として形成されている」という技術的事項を開示しているものの、複数のループの隣接する部分の間の距離が等間隔であること、及び対象の頭頂部にそろえられた中心から始まって外に螺旋状に向かうように構成することは、開示も示唆もしていない。上記受信コイル部110のループ間の間隔は、コイル軸上では等間隔であるものの、ループはコイル軸上ではなく中心Oの球の球面上にあることから、ループ間の間隔は等間隔とは認められない。 ここで、引用発明1の頭頂部の円形の通気孔を引用文献1の【0017】段落(上記(2)イ(ア)a(引1c)参照。)の記載をもとに、頭頂部以外の「導線12やコンデンサなどの電気回路の保護や頭部定位固定具4の構造に関係ない部分に」移動させて頭頂部をふさぎ、引用発明4の受信コイル部110の技術を採用したとしても、受信コイル部110は「螺旋コイルは球の中心OからZ軸方向(体軸方向)に見て球面の最上部又は最下部から離れた球面上の点を始点又は終点として形成されている」ことから、上記相違点1の「対象の頭頂部にそろえられた中心から始まって外に螺旋状に向かうように構成すること」とはならない。そして、上記引用発明1に引用発明4の受信コイル部110の技術を採用した際に、螺旋コイル部のコイル間の距離を等間隔にすること及び螺旋コイルを対象の頭頂部にそろえられた中心から始まって外に螺旋状に向かうように構成することを行うことは、単なる設計的事項とも認められず、当業者が、容易に想到し得たということはできない。 なお、令和元年12月23日付け補正の却下の決定においては、引用発明1において頭頂部の円形の通気孔がなくなれば、「導線12は半球状の基板11に半球渦巻き状に形成されることを考慮すれば、当該導線12は被検体の頭頂部にそろえられた中心から外に螺旋状に前記被検体の頭部を囲む外縁に向かうように構成されることが明らかである」としているが、MRIシステムの受信コイルは、ループ内を通る信号を測定するものであるから、ループを構成する部分ではない頭頂部までその導線12を延ばして被検体の頭頂部にそろえられた中心から外に螺旋状に前記被検体の頭部を囲む外縁に向かうように構成とすることは、引用発明4の受信コイル部110を見ても分かるとおり受信コイルとして必須の構成ではなく、当業者が必ず行う設計変更とも認められない。 以上のことから、引用発明1に引用発明4の技術を採用したとしても上記相違点1に係る構成を当業者が容易に想到し得たということはできない。 (イ-2)引用発明4及び6との組み合わせについて 上記(イ-1)で検討した事項につき、引用発明6の技術を当業者が知り得ていた場合について検討する。 引用発明6は、RF磁界を検出する一対のコイル10Aおよび10Bの、コイル10Aは「患者の頭部の周囲に密着して位置決めされ、顔面開放型ヘルメットの外観を呈す巻形45に巻形の外面に一致してらせん状に巻かれている」という技術的事項を開示している。しかしながら、コイル10Aおよび10Bは、引用文献6のFig.3(上記(2)イ(カ)(引6d)参照)を見ても分かるように頭部左右側面に備えられたコイルであり、頭頂部に備えられたものではない。さらにその螺旋状に巻かれたコイル線の間隔が等しいかどうかも開示していない。 以上のことから、引用発明1に引用発明4及び6の技術を採用したとしても上記相違点1に係る構成を当業者が容易に想到し得たということはできない。 (イ-3)引用文献2,3,5について 引用文献2,3,5には、上記相違点1に係る構成である「前記半球形の螺旋パターンが、前記少なくとも1つのコイルの隣接する部分の間の距離が等間隔であるよう構成され、前記少なくとも1つのコイルが、前記対象の頭頂部にそろえられた中心から始まって外に螺旋状に向かうように構成され」ることについて、記載も示唆もされていない。 以上のことから、引用発明1を基礎として引用発明4,6及び引用文献2,3,5に記載の技術的事項から、当業者が、相違点1に係る本願補正発明1の構成を容易に想到し得たということはできない。 (ウ)小括 したがって、引用発明1,4,6及び引用文献2,3,5に記載の技術的事項から、当業者が、相違点1に係る本願補正発明1の構成を容易に想到し得たということはできない。 ウ-2 本願補正発明1と引用発明4との対比及び判断 (ア)対比 本願補正発明1と引用発明4とを対比する。 a A)について 引用発明4の「MRI(magnetic resonance imaging)装置」は、本願補正発明1の「磁気共鳴撮像(MRI)システム」に相当する。 b B)について 引用発明4の「MRI(magnetic resonance imaging)装置」が有する「マグネットシステム(magnet system)100」の「主磁場マグネット部102」は、本願補正発明1の「MRIシステム内に配置された対象の少なくとも関心領域(ROI)の周囲に静磁場を生成するように構成された磁気システム」に相当する。 c C)について 引用発明4の「MRI(magnetic resonance imaging)装置」が有する「マグネットシステム(magnet system)100」の「勾配コイル部106」は、本願補正発明1の「静磁場に対する少なくとも1つの勾配磁場を達成するように構成された複数の勾配コイル」に相当する。 d D)、E)について 引用発明4の「MRI(magnetic resonance imaging)装置」が有する「マグネットシステム(magnet system)100」の「RF信号の受信ばかりでなく、RF信号の送信または送受信に利用でき」る「受信コイル部110」は、本願補正発明1の「送信および受信コイル」並びに「送信および受信コイルを含むラジオ周波数(RF)システム」に相当する。 e E-2)、E-2-3)について 引用発明4の「受信コイル部110」が「頭部に」「装着され」るものであり、「複数のループ112a,112b,112c,112d,112fよりなり、複数のループ112a-112fはコイル軸を共有する同軸のループであり、コイル軸上に等間隔に配置されており、複数のループ112a-112fは、全体としてひと繋がりの螺旋状のループ(螺旋コイル)を形成し、螺旋コイルは球の中心OからZ軸方向(体軸方向)に見て球面の最上部又は最下部から離れた球面上の点を始点又は終点として形成されている」ことは、本願補正発明1の「半球形の螺旋パターンを形成する少なくとも1つのコイル」「が、」「対象の」「頭部の外縁を囲むように螺旋状に構成され」ていることに相当する。 f 上記a-eから、本願補正発明1と引用発明4とは、次の一致点で一致し、次の相違点で相違する。 (一致点) 「磁気共鳴撮像(MRI)システムであって、 前記MRIシステム内に配置された対象の少なくとも関心領域(ROI)の周囲に静磁場を生成するように構成された磁気システムと、 前記静磁場に対する少なくとも1つの勾配磁場を達成するように構成された複数の勾配コイルと、 送信および受信コイルを含むラジオ周波数(RF)システムと、を備え、 前記送信および受信コイルが、 半球形の螺旋パターンを形成する少なくとも1つのコイルと、を備え、 前記少なくとも1つのコイルが、前記対象の前記頭部の外縁を囲むように螺旋状に構成された、MRIシステム。」 (相違点) <相違点2> 送信および受信コイルが、本願補正発明1では「前記MRIシステムによって撮像される前記対象の部分の輪郭に沿うように構成された基板」を備え、「基板に結合されている」るのに対し、引用発明4では、そのような基板を備えていない点。 <相違点3> 送信および受信コイルが備える半球形の螺旋パターンを形成する少なくとも1つのコイルにおいて、本願補正発明1は「前記半球形の螺旋パターンが、前記少なくとも1つのコイルの隣接する部分の間の距離が等間隔であるよう構成され、前記少なくとも1つのコイルが、前記対象の頭頂部にそろえられた中心から始まって外に螺旋状に向かうように構成され」るのに対し、引用発明4は、受信コイル110はコイル軸上に等間隔に配置されており、球の中心OからZ軸方向に見て最上部又は最下部から離れた球面上の点を始点又は終点として螺旋コイルとして形成されている点。 (イ)判断 (イ-1)相違点2について 引用発明1には、送受信用コイル5を半球状の基板11の上に半球渦巻き状に形成する技術を開示していることから、引用発明4の受信コイル部110の螺旋コイルに上記引用発明1の技術を採用して、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者ならば容易になし得たことである。 また、引用発明6にはコイル10Aを顔面開放型ヘルメットの外観を呈す巻形45に巻形の外面に一致してらせん状に巻く技術を開示していることから、引用発明4の受信コイル部110の螺旋コイルに上記引用発明1の技術を採用して、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者ならば容易に想到し得たことである。 (イ-2)相違点3について検討する。 上記相違点3は、上記ウ-1(イ)で検討した相違点1と同一の技術的事項を備えていることから、同様の理由で引用発明1,4,6及び引用文献2,3,5に記載の事項から、当業者が、相違点3に係る本願補正発明1の構成を容易に想到し得たということはできない。 以上のことから、引用発明4を基礎として引用発明1,6及び引用文献2,3,5に記載の技術的事項から、当業者が、相違点3に係る本願補正発明1の構成を容易に想到し得たということもできない。 (ウ)小括 したがって、本願補正発明1は、当業者が引用発明1,4,6及び引用文献2,3,5に記載の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 エ 本願補正発明2ないし29について 本願補正発明2ないし29も、上記相違点1及び3に係る本願補正発明1が備える構成と同一の構成を備えるものであるから、本願補正発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1,4,6及び引用文献2,3,5に記載の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 オ また、他に本願補正発明1ないし29について、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由はない。 (3)むすび 上記(2)で検討したように、本願補正発明1ないし29が特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである、とはいえない。 そして、他に本件補正を却下すべき理由はない。 したがって、原審における令和元年12月23日付け補正の却下の決定を取り消す。 第3 本願発明についての判断 以上のとおり、令和元年12月23日付け補正の却下の決定は取り消されたから、本願の請求項1ないし29に係る発明(それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明29」という。)は、令和元年7月30日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし29(上記第2 1(2)参照。)に記載された事項により特定されるとおりのものであり、上記第2 3で検討した本願補正発明1ないし29と同じ発明である。 ここで、原査定の拒絶の理由は令和元年5月10日付け拒絶理由通知書に記載した理由であり、その概要は、平成31年2月5日提出の手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項1ないし32に係る発明は、引用文献1ないし5(上記第2 2の<引用文献等一覧>の引用文献1ないし5と同じ)に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 しかしながら、本願補正発明1ないし29は、上記第2 3(2)で検討したとおり、引用発明1,4,6及び引用文献2,3,5に記載の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえないのであるから、本願発明1ないし29も同様の理由で、引用発明1,4,6及び引用文献2,3,5に記載の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。すなわち、本願発明1ないし29については、原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり、審決する。 |
審決日 | 2020-10-12 |
出願番号 | 特願2016-556941(P2016-556941) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WYA
(A61B)
P 1 8・ 575- WYA (A61B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 亀澤 智博 |
特許庁審判長 |
森 竜介 |
特許庁審判官 |
伊藤 幸仙 渡戸 正義 |
発明の名称 | 螺旋状体積撮像のためのシステム |
代理人 | 津田 俊明 |
代理人 | 福田 康弘 |
代理人 | 瀧野 文雄 |