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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B29C 審判 全部申し立て 2項進歩性 B29C |
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管理番号 | 1366947 |
異議申立番号 | 異議2020-700052 |
総通号数 | 251 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-11-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-01-30 |
確定日 | 2020-08-25 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6560470号発明「発泡成形体の製造装置、発泡成形体の製造方法および発泡成形体製造装置用スクリュ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6560470号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔5及び6〕について訂正することを認める。 特許第6560470号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 特許第6560470号の請求項5及び6に係る特許についての特許異議申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6560470号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成31年3月8日の出願であって、令和1年7月26日にその特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、同年8月14日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和2年1月30日に特許異議申立人 株式会社日本製鋼所(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし6)がされ、同年4月17日付けで取消理由が通知され、同年6月18日に特許権者 三恵技研工業株式会社、マクセル株式会社及び株式会社 日本油機から訂正請求がされるとともに意見書が提出されたものである。 なお、下記第2のとおり、訂正請求の内容は、特許請求の範囲の請求項5及び6の削除のみであるから、特許法第120条の5第5項ただし書に規定する特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるといえるので、特許異議申立人に意見書を提出する機会を与えない。 第2 訂正の適否について 1 訂正の内容 令和2年6月18日にされた訂正の請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 2 訂正の目的の適否、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 むすび 以上のとおり、訂正事項1及び2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 また、訂正事項1及び2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないので、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 なお、訂正前の請求項6は訂正前の請求項5を引用するものであるから、訂正前の請求項5及び6は一群の請求項に該当するものである。そして、訂正事項1及び2は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 また、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし6に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔5及び6〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 発泡成形体の製造装置であって、 熱可塑性樹脂が可塑化溶融して溶融樹脂となる可塑化ゾーンと、前記溶融樹脂が飢餓状態となる飢餓ゾーンとを有し、前記飢餓ゾーンへの物理発泡剤の導入口が設けられたシリンダと、 前記シリンダの内部に、軸回りに回転自在にかつ軸方向に進退自在に配置されたスクリュと、 一定圧力の前記物理発泡剤を、前記導入口を介して前記飢餓ゾーンに導入し、前記飢餓ゾーンを常時前記一定圧力に保持する圧力調整容器とを備え、 前記スクリュは、前記飢餓ゾーンにおいて多条フライト構造となっており、 前記多条フライト構造は、隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積が、5cm^(3)以上100cm^(3)以下となっていることを特徴とする発泡成形体の製造装置。 【請求項2】 前記可塑化ゾーンは、前記溶融樹脂の流動方向における前記飢餓ゾーンの上流側に位置し、前記溶融樹脂の流動抵抗を高める機構により圧縮された状態の前記溶融樹脂を保持する計量ゾーンを有し、 前記計量ゾーンにおける隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積を容積Aとし、 前記飢餓ゾーンにおける隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積に、前記飢餓ゾーンのスクリュフライトの数を乗じた容積を容積Bとすると、 容積Aを容積Bで除した値は、0.1以上1.0以下となっていることを特徴とする請求項1に記載の発泡成形体の製造装置。 【請求項3】 発泡成形体の製造方法であって、 可塑化ゾーンと飢餓ゾーンとを有し、前記飢餓ゾーンへの物理発泡剤の導入口が設けられたシリンダと、前記シリンダの内部に、軸回りに回転自在にかつ軸方向に進退自在に配置され、前記飢餓ゾーンにおいて多条フライト構造となっており、前記多条フライト構造は、隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積が、5cm^(3)以上100cm^(3)以下となっているスクリュと、前記物理発泡剤を、前記導入口を介して前記飢餓ゾーンに導入する圧力調整容器とを用い、 前記製造方法は、 前記可塑化ゾーンにおいて、熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂とする工程と、 前記飢餓ゾーンに一定圧力の前記物理発泡剤を導入して、前記飢餓ゾーンを常時前記一定圧力に保持する工程と、 前記飢餓ゾーンにおいて、前記多条フライト構造により前記溶融樹脂の移送経路を分割し、それぞれを飢餓状態とする工程と、 飢餓状態の前記溶融樹脂と前記一定圧力の物理発泡剤とを接触させる工程と、 前記一定圧力の物理発泡剤と接触した前記溶融樹脂を発泡成形体に成形する工程とを有することを特徴とする発泡成形体の製造方法。 【請求項4】 前記可塑化ゾーンは、前記溶融樹脂の流動方向における前記飢餓ゾーンの上流側に位置し、前記溶融樹脂の流動抵抗を高める機構により圧縮された状態の前記溶融樹脂を保持する計量ゾーンを有し、 前記計量ゾーンにおける隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積を容積Aとし、 前記飢餓ゾーンにおける隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積に、前記飢餓ゾーンのスクリュフライトの数を乗じた容積を容積Bとすると、 容積Aを容積Bで除した値は、0.1以上1.0以下となっていることを特徴とする請求項3に記載の発泡成形体の製造方法。 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 (削除)」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由の概要 1 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和2年1月30日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 (1)申立理由1(甲1を主引用文献とし、甲2及び3を副引用文献とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由2(明確性要件) 本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、下記の点で特許請求の範囲の記載に不備があり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ・本件特許発明1、3及び5は、「多条フライト構造は、隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積が、5cm^(3)以上100cm^(3)以下となっている」ことをその発明特定事項としているが、「隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積」はスクリュ外径が変われば、スクリュ外径に応じて必然的に所定の数値範囲で決定されるものであるから、特定された数値範囲「5cm^(3)以上100cm^(3)以下」だけでは、その技術的意味が理解できず、出願時の技術常識を考慮しても発明特定事項が不足しており、本件特許発明1、3及び5は明確でない。 本件特許発明2、4及び6は、それぞれ本件特許発明1、3及び5に従属する発明であるから、同様に明確でない。 (3)証拠方法 甲第1号証:特許第4233240号公報 甲第2号証:特開2019-18522号公報 甲第3号証:Injection Moulding Techonology,Dusseldorf:VDI-Verlag(独),1981年,NE:Gesellshaft Kunststofftechnik;GT,p.91-92 なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載に従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 2 取消理由の概要 令和2年4月17日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。 本件特許の請求項5及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項5及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第5 当審の判断 1 取消理由について 本件訂正により請求項5及び6は削除されたため、取消理由の対象がなくなった。 2 取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について 取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、本件特許の請求項1ないし4に対する申立理由1及び2である。 (1)申立理由1(甲1を主引用文献とし、甲2及び3を副引用文献とする進歩性)について ア 甲1に記載された事項及び甲1発明 (ア)甲1に記載された事項 甲1には、「射出発泡成形方法、並びにそれに適した射出成形機および樹脂組成物」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。他の文献についても同様。 ・「【特許請求の範囲】 【請求項1】 第1段目の最後の溝の深さL1と二段目の最初の溝の深さL2の比L2/L1が、1.2?6の範囲にある二段圧縮スクリューを有する射出成形機を用いて、シリンダー途中から物理発泡剤を供給する熱可塑性樹脂の射出発泡成形において、 (1)気体状態である二酸化炭素または窒素からなる物理発泡剤を、貯蔵タンクから貯蔵圧力の80%以下に減圧された圧力で、射出成形機シリンダー内との圧力差により供給すること、 (2)該物理発泡剤の供給を、スクリューを射出方向へ最も前進させた時の、射出方向にスクリューの二段目の開始点からスクリュー外径の9倍の長さまでの範囲で行うこと、および (3)射出成形機の金型のキャビティー内を大気圧にし、射出充填後、キャビティー内の容積を膨張させ発泡体を得ること を特徴とする射出発泡成形方法。 【請求項2】 射出充填後、発泡体を得る方法として、金型内の金属板を後退させることによりキャビティー内の容積を膨張させることを特徴とする請求項1に記載の射出発泡成形方法。 【請求項3】 射出成形機への物理発泡剤注入部に樹脂逆止弁を設けることを特徴とする請求項1または2に記載の射出発泡成形方法。 【請求項4】 (1)気体状態である二酸化炭素または窒素の貯蔵タンク (2)第1段目の最後の溝の深さL1と二段目の最初の溝の深さL2の比L2/L1が、1.2?6の範囲にある二段圧縮スクリュー (3)スクリューを射出方向へ最も前進させた時の、スクリューの二段目の開始点から射出方向にスクリュー外径の9倍の長さまでの範囲に、二酸化炭素または窒素を昇圧する装置を含まない二酸化炭素または窒素供給部を有するシリンダー、および (4)キャビティー内の容積を膨張させうる金型 を有する熱可塑性樹脂用射出成形機。 【請求項5】 前記二酸化炭素または窒素供給部に、樹脂逆止弁が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の射出成形機。 【請求項6】 前記熱可塑性樹脂として、熱可塑性樹脂に、発泡核剤として平均粒径0.5?10μmの無機フィラーを該樹脂に対して0.1?5重量%、及び/又は、化学発泡剤またはその分解物を、未分解物に換算して0.01?1重量%含ませた樹脂組成物を用いることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の射出発泡成形方法。 【請求項7】 前記無機フィラーがタルク、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウムのいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の射出発泡成形方法。 【請求項8】 化学発泡剤がポリカルボン酸と炭酸水素塩の0.1:0.9?0.9?0.1の混合物またはその分解物であることを特徴とする請求項6に記載の射出発泡成形方法。 【請求項9】 化学発泡剤がクエン酸と炭酸水素ナトリウムの0.1:0.9?0.9?0.1の混合物またはその分解物であることを特徴とする請求項6または8に記載の射出発泡成形方法。 【請求項10】 熱可塑性樹脂がポリオレフィンであることを特徴とする請求項6?9のいずれかに記載の射出発泡成形方法。 【請求項11】 射出成形機の金型のキャビティー容積を計量樹脂量よりも低くし、物理発泡剤と混合した溶融樹脂を射出しながらキャビティー容積を広げて充填することを特徴とする請求項6?10のいずれかに記載の射出発泡成形方法。」 ・「【0057】 本発明では、樹脂の送り能力に優れるため、第一段目の圧縮スクリュー部分が終了した次の溝を深くし、樹脂圧を急激に低下させる。この減圧された部分では、溶融樹脂は、飢餓状態となり、樹脂が存在しない空洞が発生し、この空洞部分に、貯蔵圧力よりも減圧した、好ましくは貯蔵圧力に対して80%以下に減圧した物理発泡剤を供給する。 【0058】 図1を参考にし射出発泡成形機を説明する。射出発泡成形機には、射出成形機シリンダー7および射出成形機二段圧縮シリンダー8が備えられている。射出成形機シリンダーは、ヒーター12により加熱される。物理発泡剤は、物理発泡剤ボンベ13、発泡剤供給配管14により、ボンベバルブ15、減圧弁16、逆止弁17を経て、物理発泡剤注入孔18からシリンダーに注入される。 一段目の圧縮部は9の部分であり、第二段目の圧縮部は10の部分である。 【0059】 図1は、スクリューが射出方向へ最も前進した時の図である。一段目の圧縮部9は、ホッパー19から供給されたペレットを前方に送るため、スクリュー溝は深く、通常第一段目の前方までほぼ均等にスクリュー溝が浅くなるか、一定の領域までスクリュー溝が一定の部分が続いた後、スクリュー溝が浅くなることにより、樹脂が圧縮され樹脂中の空気が後方に抜ける。 【0060】 それに続いて、11では急激にスクリュー溝が深くなり、スクリュー溝間の容積が膨張し、溶融樹脂の他に気体が注入可能な空間が出来る。これを減圧部分11と呼ぶ。この部分も通常第一段目の圧縮部と同様に第二段目の圧縮部の前方までほぼ均等にスクリュー溝が浅くなるか、一定の領域までスクリュー溝が一定の部分が続いた後、スクリュー溝が浅くなることにより、樹脂が圧縮される。物理発泡剤注入孔は、スクリューが射出方向に最も前進した状態で、第二段目圧縮部の開始部分からスクリュー外径(D)の9倍の長さ(9D)、すなわち、第二段目圧縮部の0?9D部、好ましくは0?3D部に位置するように設けることが好ましい。 【0061】 0Dよりも後方、すなわち第一段目圧縮部では、物理発泡剤がホッパー口、スクリューの後方のグランド部分から飛散し発泡剤として活用されない。9D部より前方では、それに続く物理発泡剤との混合を行う領域、樹脂を圧縮する領域が続くため、スクリュー全体のL/Dが非常に長くなりすぎ、射出成形機のスクリューとしての強度に劣り、且つ、射出成形機全体の寸法も大きくなるので効率的でない。 【0062】 樹脂は、射出成形機ノズル6から、ホットランナー5、シャットオフバルブ4を経て金型コア(移動側)1および金型シェル(固定側)2を有する金型のキャビティ3に射出される。 【0063】 図2は、この物理発泡剤注入孔周囲部分を拡大した図である。圧縮部分10の溝とスクリューの羽21により、溶融樹脂は、前方に送られるため、減圧部分11に樹脂が存在しない空間が発生する。減圧部分11には、物理発泡剤注入孔18が設けられ、物理発泡剤が物理発泡剤供給配管20から注入される。 【0064】 図1及び図2の状態では、空洞部分の圧力はあまり高くなく、低圧で注入可能である状態にある。この状態を実現するには、第一段目の最後のスクリュー溝深さL1と第二段目の最初のスクリュー溝深さL2の比L2/L1が1.2?6の範囲、好ましくは2.5?4.5の範囲にあることが望ましい。 【0065】 また、第一段目圧縮部9と第二段目圧縮部10は、樹脂の送り能力、混合能力を考慮し適宜、1条、2条または3条にすることが可能である。第一段目、第二段目の圧縮部の溝深さなどのデザインは、上記に記載の範囲であれば、市販のベント付き射出成形機ベント部分の耐圧構造を補強し使用することができる。また、スクリューのみベント付きタイプにし、シリンダーは、通常タイプに物理発泡剤注入孔を設けたものであってもよい。 【0066】 さらに、第一段目圧縮部のスクリュー部において、最後の0.5?2D部をスクリュー間の距離が短い形状にし、スクリューの溝間が完全に溶融樹脂で充満されるように設計したものでは、第一段目圧縮部のスクリューの後方に物理発泡剤が逃げることを防止する効果が大きい。 【0067】 スクリューが 図1及び2の状態から射出方向とは反対方向に後退しだした場合(計量・可塑化工程)、可塑化された樹脂が圧縮部分9から減圧部分11に供給される。供給された溶融樹脂は、物理発泡剤注入孔18より注入された物理発泡剤と適度に混合される。この場合、特に微分散が必要ではなく、溶融樹脂への発泡剤が発泡剤の圧力、樹脂が混練される剪断により巻き込まれた状態でよい。」 ・「【図1】 」 ・「【図2】 」 (イ)甲1発明 甲1に記載された事項を整理すると、甲1には、次の発明が記載されていると認める。 <甲1装置発明> 「第一段目圧縮部9と第二段目圧縮部10を有するスクリューの第一段目圧縮部9の部分である第一段目の圧縮部と、前記スクリューの第二段目圧縮部10の部分である第二段目の圧縮部とを有する射出成形機二段圧縮シリンダー8を備え、物理発泡剤が物理発泡剤ボンベ13、発泡剤供給配管14により、ボンベバルブ15、減圧弁16、逆止弁17を経て、物理発泡剤注入孔18から射出成形機二段圧縮シリンダー8に注入される射出発泡成形機であって、 前記スクリューの第二段目圧縮部10は2条または3条となっている射出発泡成形機。」 なお、特許異議申立人は、甲1発明として次の発明を認定した。 「射出発泡成形機であって、 熱可塑性樹脂が可塑化溶融して溶融状態となる第一段目(9)と、前記 溶融樹脂が減圧状態となる減圧部分(11)とを有し、前記減圧部分(11)に対応して物理発泡剤注入孔(18)が設けられた射出成形機シリンダ(7)と、 前記射出成形機シリンダ(7)の内部に、軸回りに回転自在にかつ軸方向に進退自在に配置されたスクリュ(8)とを備え、 前記スクリュ(8)は、前記減圧部分(11)において多条フライト構造となっていることを特徴とする発泡成形体の製造装置。」 しかし、符合(8)は、スクリュに付されたものではないし、また、「軸回りに回転自在にかつ軸方向に進退自在に配置された」及び「多条フライト構造」等の甲1に直接は記載されていない用語を用いて、甲1発明を認定しており、適切な認定とはいえないので、当審において適切と考える発明を甲1装置発明として認定した。 <甲1方法発明> 「第一段目圧縮部9と第二段目圧縮部10を有するスクリューの第一段目圧縮部9の部分である第一段目の圧縮部と、前記スクリューの第二段目圧縮部10の部分である第二段目の圧縮部とを有する射出成形機二段圧縮シリンダー8を備え、物理発泡剤が物理発泡剤ボンベ13、発泡剤供給配管14により、ボンベバルブ15、減圧弁16、逆止弁17を経て、物理発泡剤注入孔18から射出成形機二段圧縮シリンダー8に注入される射出発泡成形機を用いる発泡成形体の製造方法であって、 前記スクリューの第二段目圧縮部10は2条または3条となっている射出発泡成形機を用いる発泡成形体の製造方法。」 なお、特許異議申立人は、甲1発明として「発泡成形体の製造方法」の発明を認定していないので、当審において適切と考える発明を甲1方法発明として認定した。 イ 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と甲1装置発明を対比する。 甲1装置発明における「第一段目圧縮部9と第二段目圧縮部10を有するスクリューの第一段目圧縮部9の部分である第一段目の圧縮部」は本件特許発明1における「熱可塑性樹脂が可塑化溶融して溶融樹脂となる可塑化ゾーン」に相当し、以下同様に、「前記スクリューの第二段目圧縮部10の部分である第二段目の圧縮部」は「前記溶融樹脂が飢餓状態となる飢餓ゾーン」に、「射出成形機二段圧縮シリンダー8」は「シリンダ」に、「射出発泡成形機」は「発泡成形体の製造装置」に、それぞれ相当する。 甲1装置発明は、「物理発泡剤ボンベ13、発泡剤供給配管14により、ボンベバルブ15、減圧弁16、逆止弁17を経て、物理発泡剤注入孔18から射出成形機二段圧縮シリンダー8に注入される」ものであるから、甲1装置発明における「射出成形機二段圧縮シリンダー8」は本件特許発明1における「前記飢餓ゾーンへの物理発泡剤の導入口が設けられたシリンダ」に相当する。 甲1装置発明における「スクリュー」は、甲1の【0059】及び【0067】によると、射出工程で射出方向に前進し、計量・可塑化工程で射出方向とは反対方向に後退するものであるから、本件特許発明1における「前記シリンダの内部に、軸回りに回転自在にかつ軸方向に進退自在に配置されたスクリュ」に相当する。 甲1装置発明において、「物理発泡剤」は「ボンベバルブ15、減圧弁16、逆止弁17」を経て「物理発泡剤注入孔18」から「射出成形機二段圧縮シリンダー8」に注入されていることから、「スクリューの第二段目圧縮部10の部分である第二段目の圧縮部」は常時一定圧力に保持されていることは明らかである。してみると、甲1装置発明における「物理発泡剤」が「ボンベバルブ15、減圧弁16、逆止弁17」を経て「物理発泡剤注入孔18」から「射出成形機二段圧縮シリンダー8」に注入される機構は本件特許発明1における「一定圧力の前記物理発泡剤を、前記導入口を介して前記飢餓ゾーンに導入し、前記飢餓ゾーンを常時前記一定圧力に保持する圧力調整容器」と、「一定圧力の前記物理発泡剤を、前記導入口を介して前記飢餓ゾーンに導入し、前記飢餓ゾーンを常時前記一定圧力に保持する機構」という限りにおいて一致する。 甲1装置発明における「前記スクリューの第二段目圧縮部10は2条または3条となっている」は本件特許発明1における「前記スクリュは、前記飢餓ゾーンにおいて多条フライト構造となっており」に相当する。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「発泡成形体の製造装置であって、 熱可塑性樹脂が可塑化溶融して溶融樹脂となる可塑化ゾーンと、前記溶融樹脂が飢餓状態となる飢餓ゾーンとを有し、前記飢餓ゾーンへの物理発泡剤の導入口が設けられたシリンダと、 前記シリンダの内部に、軸回りに回転自在にかつ軸方向に進退自在に配置されたスクリュと、 一定圧力の前記物理発泡剤を、前記導入口を介して前記飢餓ゾーンに導入し、前記飢餓ゾーンを常時前記一定圧力に保持する機構とを備え、 前記スクリュは、前記飢餓ゾーンにおいて多条フライト構造となっている発泡成形体の製造装置。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1> 「一定圧力の前記物理発泡剤を、前記導入口を介して前記飢餓ゾーンに導入し、前記飢餓ゾーンを常時前記一定圧力に保持する機構」に関して、本件特許発明1においては、「圧力調整容器」と特定されているのに対して、甲1装置発明においては、「ボンベバルブ15、減圧弁16、逆止弁17」を経て「物理発泡剤注入孔18」から「射出成形機二段圧縮シリンダー8」に注入される機構である点。 <相違点2> 本件特許発明1においては、「前記多条フライト構造は、隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積が、5cm^(3)以上100cm^(3)以下となっている」と特定されているのに対し、甲1装置発明においては、そのようには特定されていない点。 (イ)判断 そこで、相違点について検討する。 まず、相違点1から検討する。 甲1装置発明における「ボンベバルブ15、減圧弁16、逆止弁17」は、図1及び2から看取されるように、管の途中に弁を設けた機構であり、「一定圧力に保持する」という機能を有する「容器」ではない。 そして、甲1には、「ボンベバルブ15、減圧弁16、逆止弁17」のような管の途中に弁を設けた機構に代えて、「一定圧力に保持する」という機能を有する「容器」を用いることは記載も示唆もされていない。 また、甲2及び3にも、「一定圧力に保持する」という機能を有する「容器」を用いることは記載も示唆もされていない。 したがって、甲1装置発明において、甲2及び3に記載された技術的事項を考慮しても、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「飢餓ゾーンにおいて溶融樹脂を常時一定圧力の物理発泡剤にて加圧して発泡成形を行う装置をより大型化した場合、すなわちスクリュ径をより大径とした場合でも、発泡成形体の内部に微細セルが形成される良好な発泡成形を実現でき、発泡成形体の発泡性能が低下するのを抑制できる」という甲1装置発明並びに甲2及び3に記載された技術的事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。 (ウ)まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1装置発明並びに甲2及び3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件特許発明2について 請求項2は請求項1を引用するものであり、本件特許発明2は、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1装置発明並びに甲2及び3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 本件特許発明3について (ア)対比 本件特許発明3と甲1方法発明を対比する。 甲1方法発明における「第一段目圧縮部9と第二段目圧縮部10を有するスクリューの第一段目圧縮部9の部分である第一段目の圧縮部」は本件特許発明3における「可塑化ゾーン」に相当し、同様に、「前記スクリューの第二段目圧縮部10の部分である第二段目の圧縮部」は「飢餓ゾーン」に相当する。 甲1方法発明は、「物理発泡剤」が「物理発泡剤ボンベ13、発泡剤供給配管14により、ボンベバルブ15、減圧弁16、逆止弁17を経て、物理発泡剤注入孔18から射出成形機二段圧縮シリンダー8に注入される」ものであるから、甲1方法発明における「射出成形機二段圧縮シリンダー8」は本件特許発明3における「前記飢餓ゾーンへの物理発泡剤の導入口が設けられたシリンダ」に相当する。 甲1方法発明における「第一段目圧縮部9と第二段目圧縮部10を有するスクリュー」は、甲1の【0059】及び【0067】によると、射出工程で射出方向に前進し、計量・可塑化工程で射出方向とは反対方向に後退するものであり、また、「第二段目圧縮部10は2条または3条となっている」ものであるから、本件特許発明3における「前記シリンダの内部に、軸回りに回転自在にかつ軸方向に進退自在に配置され、前記飢餓ゾーンにおいて多条フライト構造となっており、前記多条フライト構造は、隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積が、5cm^(3)以上100cm^(3)以下となっているスクリュ」と、「前記シリンダの内部に、軸回りに回転自在にかつ軸方向に進退自在に配置され、前記飢餓ゾーンにおいて多条フライト構造となっているスクリュ」という限りにおいて一致する。 甲1方法発明において、「物理発泡剤」は「ボンベバルブ15、減圧弁16、逆止弁17」を経て「物理発泡剤注入孔18」から「射出成形機二段圧縮シリンダー8」に注入されていることから、「スクリューの第二段目圧縮部10の部分である第二段目の圧縮部」は常時一定圧力に保持されていることは明らかである。してみると、甲1方法発明における「物理発泡剤」が「ボンベバルブ15、減圧弁16、逆止弁17」を経て「物理発泡剤注入孔18」から「射出成形機二段圧縮シリンダー8」に注入される機構は本件特許発明3における「前記物理発泡剤を、前記導入口を介して前記飢餓ゾーンに導入する圧力調整容器」と、「前記物理発泡剤を、前記導入口を介して前記飢餓ゾーンに導入する圧力調整機構」という限りにおいて一致する。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「発泡成形体の製造方法であって、 可塑化ゾーンと飢餓ゾーンとを有し、前記飢餓ゾーンへの物理発泡剤の導入口が設けられたシリンダと、前記シリンダの内部に、軸回りに回転自在にかつ軸方向に進退自在に配置され、前記飢餓ゾーンにおいて多条フライト構造となっているスクリュと、前記物理発泡剤を、前記導入口を介して前記飢餓ゾーンに導入する圧力調整機構とを用いる発泡成形体の製造方法。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点3> 「前記シリンダの内部に、軸回りに回転自在にかつ軸方向に進退自在に配置され、前記飢餓ゾーンにおいて多条フライト構造となっているスクリュ」に関して、本件特許発明3においては、「前記多条フライト構造は、隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積が、5cm^(3)以上100cm^(3)以下となっている」と特定されているのに対し、甲1方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点4> 「前記物理発泡剤を、前記導入口を介して前記飢餓ゾーンに導入する圧力調整機構」に関して、本件特許発明3においては、「前記物理発泡剤を、前記導入口を介して前記飢餓ゾーンに導入する圧力調整容器」と特定されているのに対し、甲1方法発明においては、「物理発泡剤」が「ボンベバルブ15、減圧弁16、逆止弁17」を経て「物理発泡剤注入孔18」から「射出成形機二段圧縮シリンダー8」に注入される機構である点。 <相違点5> 本件特許発明3においては、「前記可塑化ゾーンにおいて、熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂とする工程と、 前記飢餓ゾーンに一定圧力の前記物理発泡剤を導入して、前記飢餓ゾーンを常時前記一定圧力に保持する工程と、 前記飢餓ゾーンにおいて、前記多条フライト構造により前記溶融樹脂の移送経路を分割し、それぞれを飢餓状態とする工程と、 飢餓状態の前記溶融樹脂と前記一定圧力の物理発泡剤とを接触させる工程と、 前記一定圧力の物理発泡剤と接触した前記溶融樹脂を発泡成形体に成形する工程とを有する」と特定されているのに対して、甲1方法発明においては、そのようには特定されていない点。 (イ)判断 そこで、相違点について検討する。 事案に鑑み、相違点4から検討する。 相違点4は実質的に相違点1と同じである。 したがって、甲1方法発明において、甲2及び3に記載された技術的事項を考慮しても、相違点4に係る本件特許発明3の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明3は、本件特許発明1と同様に、甲1方法発明並びに甲2及び3に記載された技術的事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。 (ウ)まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲1方法発明並びに甲2及び3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 オ 本件特許発明4について 請求項4は請求項3を引用するものであり、本件特許発明4は、本件特許発明3をさらに限定したものであるから、本件特許発明3と同様に、甲1方法発明並びに甲2及び3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 カ 申立理由1についてまとめ したがって、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、申立理由1によっては取り消すことはできない。 (2)申立理由2(明確性要件)について ア 明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 イ 明確性要件の判断 (ア)本件特許の請求項1及び3の記載は、上記第3の【請求項1】及び【請求項3】のとおりであり、それ自体不明確な記載はなく、また、本件特許の発明の詳細な説明の【0008】ないし【0015】、【0047】及び【0066】ないし【0073】の記載とも整合している。 (イ)なお、「隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積」が「5cm^(3)以上100cm^(3)以下」となっていることの技術的意味は、その記載どおりであり、仮に何らかの発明特定事項が不足していることがあったとしても、明確でないということにはならないので、特許異議申立人の主張は採用できない。 (ウ)したがって、本件特許発明1ないし4に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 ウ 申立理由2についてのまとめ したがって、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、申立理由2によっては取り消すことはできない。 第6 結語 上記第5のとおり、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件特許の請求項5及び6に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項5及び6に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 発泡成形体の製造装置であって、 熱可塑性樹脂が可塑化溶融して溶融樹脂となる可塑化ゾーンと、前記溶融樹脂が飢餓状態となる飢餓ゾーンとを有し、前記飢餓ゾーンへの物理発泡剤の導入口が設けられたシリンダと、 前記シリンダの内部に、軸回りに回転自在にかつ軸方向に進退自在に配置されたスクリュと、 一定圧力の前記物理発泡剤を、前記導入口を介して前記飢餓ゾーンに導入し、前記飢餓ゾーンを常時前記一定圧力に保持する圧力調整容器とを備え、 前記スクリュは、前記飢餓ゾーンにおいて多条フライト構造となっており、 前記多条フライト構造は、隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積が、5cm^(3)以上100cm^(3)以下となっていることを特徴とする発泡成形体の製造装置。 【請求項2】 前記可塑化ゾーンは、前記溶融樹脂の流動方向における前記飢餓ゾーンの上流側に位置し、前記溶融樹脂の流動抵抗を高める機構により圧縮された状態の前記溶融樹脂を保持する計量ゾーンを有し、 前記計量ゾーンにおける隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積を容積Aとし、 前記飢餓ゾーンにおける隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積に、前記飢餓ゾーンのスクリュフライトの数を乗じた容積を容積Bとすると、 容積Aを容積Bで除した値は、0.1以上1.0以下となっていることを特徴とする請求項1に記載の発泡成形体の製造装置。 【請求項3】 発泡成形体の製造方法であって、 可塑化ゾーンと飢餓ゾーンとを有し、前記飢餓ゾーンへの物理発泡剤の導入口が設けられたシリンダと、前記シリンダの内部に、軸回りに回転自在にかつ軸方向に進退自在に配置され、前記飢餓ゾーンにおいて多条フライト構造となっており、前記多条フライト構造は、隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積が、5cm^(3)以上100cm^(3)以下となっているスクリュと、前記物理発泡剤を、前記導入口を介して前記飢餓ゾーンに導入する圧力調整容器とを用い、 前記製造方法は、 前記可塑化ゾーンにおいて、熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂とする工程と、 前記飢餓ゾーンに一定圧力の前記物理発泡剤を導入して、前記飢餓ゾーンを常時前記一定圧力に保持する工程と、 前記飢餓ゾーンにおいて、前記多条フライト構造により前記溶融樹脂の移送経路を分割し、それぞれを飢餓状態とする工程と、 飢餓状態の前記溶融樹脂と前記一定圧力の物理発泡剤とを接触させる工程と、 前記一定圧力の物理発泡剤と接触した前記溶融樹脂を発泡成形体に成形する工程とを有することを特徴とする発泡成形体の製造方法。 【請求項4】 前記可塑化ゾーンは、前記溶融樹脂の流動方向における前記飢餓ゾーンの上流側に位置し、前記溶融樹脂の流動抵抗を高める機構により圧縮された状態の前記溶融樹脂を保持する計量ゾーンを有し、 前記計量ゾーンにおける隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積を容積Aとし、 前記飢餓ゾーンにおける隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積に、前記飢餓ゾーンのスクリュフライトの数を乗じた容積を容積Bとすると、 容積Aを容積Bで除した値は、0.1以上1.0以下となっていることを特徴とする請求項3に記載の発泡成形体の製造方法。 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 (削除) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-08-12 |
出願番号 | 特願2019-43095(P2019-43095) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(B29C)
P 1 651・ 537- YAA (B29C) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | ▲来▼田 優来 |
特許庁審判長 |
大島 祥吾 |
特許庁審判官 |
加藤 友也 植前 充司 |
登録日 | 2019-07-26 |
登録番号 | 特許第6560470号(P6560470) |
権利者 | マクセル株式会社 三恵技研工業株式会社 株式会社 日本油機 |
発明の名称 | 発泡成形体の製造装置、発泡成形体の製造方法および発泡成形体製造装置用スクリュ |
代理人 | 新田 修博 |
代理人 | 栗林 三男 |
代理人 | 栗林 三男 |
代理人 | 栗林 三男 |
代理人 | 三浦 淳史 |
代理人 | 栗林 和輝 |
代理人 | 新田 修博 |
代理人 | 三浦 淳史 |
代理人 | 三浦 淳史 |
代理人 | 栗林 和輝 |
代理人 | 新田 修博 |
代理人 | 杉谷 裕通 |
代理人 | 栗林 和輝 |
代理人 | 栗林 三男 |
代理人 | 新田 修博 |
代理人 | 三浦 淳史 |
代理人 | 栗林 和輝 |