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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04H
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E04H
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E04H
管理番号 1366959
異議申立番号 異議2019-700453  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-11-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-06-04 
確定日 2020-08-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6433418号発明「機械式駐車装置の出入口扉開閉制御装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6433418号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕について訂正することを認める。 特許第6433418号の請求項3に係る特許を維持する。 特許第6433418号の請求項1及び2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6433418号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成27年12月22日に出願され、平成30年11月16日にその特許権の設定登録がされ、平成30年12月5日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許について、令和1年6月4日に特許異議申立人小松珠美(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和1年8月14日に取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和1年10月21日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、申立人は、令和2年4月9日に意見書を提出した。
その後、当審は、令和2年4月30日に取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和2年7月12日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。これによって、特許法第120条の5第7項の規定により、令和1年10月21日にされた訂正請求は取下げられたものとみなされる。
なお、申立人は特許異議申立書の意見書提出希望の有無の欄において、「希望する。」としているものの、上記令和2年7月12日に行われた訂正請求における訂正は、実質的に誤記の訂正等軽微なもののみであり、特許法第120条の5第5項ただし書に規定される「特別の事情があるとき」にあたることから、申立人に意見書を提出する機会を与える必要はないものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和2年7月12日になされた訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記今回利用者同一性判定第一処理部は、前記登録者認証操作時に前記記憶媒体に書き込まれている前記識別データとは異なる前記発行コードを発行することを特徴とする請求項2に記載の機械式駐車装置の出入口扉開閉制御装置。」とあるのを、「出入口扉を開いた利用者と、前記出入口扉を閉じようとしている利用者が同一であることを判定した後に前記出入口扉を閉処理する出入口扉閉処理部を備えた機械式駐車装置の出入口扉開閉制御装置であって、前記出入口扉開閉制御装置は、前記利用者と関連付けられた利用者関連情報を予め格納する登録者データテーブルと、前記出入口扉の開動作に先立って、利用者が所持し、識別データを保持する記憶媒体を使用して行われる登録者認証操作時に、前記利用者関連情報と前記識別データとを照合して、前記利用者が機械式駐車装置の登録者であるかを判定する登録者認証照合処理部と、前記登録者認証操作時に、前記識別データとは異なる今回の入出庫操作にだけ有効な発行コードを新たな認証データとして発生させて記憶するとともに、前記認証データを前記記憶媒体に設けられた発行データエリアに書き込む今回利用者同一性判定第一処理部と、前記出入口扉の閉操作に先立って、前記今回利用者同一性判定第一処理部に記憶された前記認証データと前記記憶媒体に書き込まれた前記認証データとを照合する今回利用者同一性判定第二処理部と、を備え、前記出入口扉の開動作に先立って、前記登録者認証照合処理部は、前記識別データと前記利用者関連情報とを照合して一致することを判定するとともに、今回利用者同一性判定第一処理部は、該今回利用者同一性判定第一処理部が発行した前記認証データの前記記憶媒体への書き込みを実行し、前記出入口扉の閉動作に先立って、今回利用者同一性判定第二処理部は、前記今回利用者同一性判定第一処理部に記憶された前記認証データと前記記憶媒体に書き込まれた前記認証データとを照合して一致することを判定して、前記出入口扉閉処理部の前記出入口扉の閉動作を有効にする、機械式駐車装置の出入口扉開閉制御装置。」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
上記訂正事項1に係る訂正は、請求項を削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、かかる訂正は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件特許明細書等」という。)との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。
また、訂正事項1は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について
上記訂正事項2に係る訂正は、請求項を削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、かかる訂正は、本件特許明細書等との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。
また、訂正事項2は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3について
上記訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項3が請求項1を引用する請求項2を引用していたところ、訂正前の請求項1及び2に記載された発明特定事項を全て請求項3に記載することとし、請求項3を独立形式に改めるものであるという点において、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、上記訂正事項3に係る訂正は、上記の独立形式に改めるに際して、訂正前の請求項1ないし3における重複した記載や不整合な記載を整理することにより、種々の不明瞭な点を是正するものであるという点において、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、かかる訂正は、本件特許明細書等との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。
また、訂正事項3は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(4)一群の請求項について
訂正事項1ないし3に係る訂正前の請求項1ないし3は、請求項2が請求項1を、請求項3が請求項2をそれぞれ引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし3に対応する訂正後の請求項1ないし3は一群の請求項である。
(5)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし3に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次の事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】
出入口扉を開いた利用者と、前記出入口扉を閉じようとしている利用者が同一であることを判定した後に前記出入口扉を閉処理する出入口扉閉処理部を備えた機械式駐車装置の出入口扉開閉制御装置であって、
前記出入口扉開閉制御装置は、
前記利用者と関連付けられた利用者関連情報を予め格納する登録者データテーブルと、
前記出入口扉の開動作に先立って、利用者が所持し、識別データを保持する記憶媒体を使用して行われる登録者認証操作時に、前記利用者関連情報と前記識別データとを照合して、前記利用者が機械式駐車装置の登録者であるかを判定する登録者認証照合処理部と、
前記登録者認証操作時に、前記識別データとは異なる今回の入出庫操作にだけ有効な発行コードを新たな認証データとして発生させて記憶するとともに、前記認証データを前記記憶媒体に設けられた発行データエリアに書き込む今回利用者同一性判定第一処理部と、
前記出入口扉の閉操作に先立って、前記今回利用者同一性判定第一処理部に記憶された前記認証データと前記記憶媒体に書き込まれた前記認証データとを照合する今回利用者同一性判定第二処理部と、
を備え、
前記出入口扉の開動作に先立って、前記登録者認証照合処理部は、前記識別データと前記利用者関連情報とを照合して一致することを判定するとともに、前記今回利用者同一性判定第一処理部は、該今回利用者同一性判定第一処理部が発行した前記認証データの前記記憶媒体への書き込みを実行し、
前記出入口扉の閉動作に先立って、今回利用者同一性判定第二処理部は、前記今回利用者同一性判定第一処理部に記憶された前記認証データと前記記憶媒体に書き込まれた前記認証データとを照合して一致することを判定して、前記出入口扉閉処理部の前記出入口扉の閉動作を有効にする、
機械式駐車装置の出入口扉開閉制御装置。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1に係る特許に対して、当審が令和1年8月14日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一である。よって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)請求項1に係る発明は、甲第1号証、または甲1号証、甲第3号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。よって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

また、令和1年10月21日になされた訂正請求の訂正請求書に記載された請求項3に係る特許に対して、当審が令和2年4月30日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(3)請求項3に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

2 刊行物(申立人が提出した証拠)
・甲第1号証:特開2015-151679号公報
・甲第2号証:特開2014-139401号公報
・甲第3号証:特開2003-232152号公報
・甲第4号証:特開2004-339737号公報
・甲第5号証:特開2005-190446号公報

(1)甲第1号証
甲第1号証には、以下の記載がある(当審で下線を付与。以下同様。)。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は自動車などの車両を駐車するための駐車装置における安全機構に関する。」

イ 「【0023】
[駐車装置100の構成]
図1に本発明の一態様に係る
駐車装置100の主たる構成を示す。図1は駐車装置を側面(入出庫口がある面を正面とする場合)から見た概略図である。
【0024】
駐車装置100は支柱102によって主構造体が構成され、主構造体の中に車両を載置するパレット104が設置されている。パレット104は昇降機106により支柱102に沿って昇降可能に設けられている。また、パレット104は車体横方向(図1の紙面奥行き方向)に沿って移動させることが可能になっていてもよい。主構造体の中でパレット104は、複数の車両を縦方向に積み重ねたとき、車両同士が干渉しない間隔をもって設けられている。これによって、支柱102によって形成される主構造体は、縦方向に複数段に積み重なった駐車空間を形成している。
【0025】
駐車装置100は駐車装置操作盤108によって操作される。駐車装置操作盤108は駐車装置100の外側に設けられている。例えば、駐車装置100の入出庫口(図右側下部)の近くの支柱102に駐車装置操作盤108およびインターロック操作盤110が取り付けられている。駐車装置操作盤108とインターロック操作盤110とが一体の筐体に収められ、一つの操作盤として構成されていてもよい。
【0026】
利用者は駐車装置100の外側から駐車装置操作盤108を操作して、目的のパレット104を入出庫口まで移動させる。また、利用者はインターロック操作盤110を操作して後述するインターロックを作動させたり解除したりすることができる。
【0027】
駐車装置100の入出庫口に設けられる安全ゲート112は駐車装置操作盤108により開閉を行うことができる。安全ゲート112は車両を入出庫するために開けた場合以外は閉じた状態となっている。したがって、パレット104が移動するときも安全ゲート112は閉じた状態になっている。安全ゲート112が 閉じていることにより、通常は駐車装置100の中に人が入れないようになっている。駐車装置操作盤108から出力される信号は制御盤114に送られ、制御盤114はパレット104の移動や安全ゲート112の開閉を行う駆動装置に制御信号を出力する。駆動装置には、パレット104を移動させるための昇降機106等の装置、および安全ゲート112を開閉するための装置が含まれる。」

ウ 「【0031】
[駐車装置操作盤108]
図2は、駐車装置操作盤108の一例を示す。駐車装置操作盤108は目的のパレットを入出庫口まで移動させる操作を行う。駐車装置操作盤108には操作電源スイッチ120、操作部122、番号入力部126、表示部124、非常停止ボタン128が設けられている。
【0032】
駐車装置100は、操作電源スイッチ120を「切」から「入」に回すことで電源が投入される。操作電源スイッチ120は駐車装置100の施錠手段でもあり、この施錠手段に合った操作キーによって施錠が解除され操作が可能となる。鍵手段としては、シリンダー錠に嵌合する鍵、ダイヤル式の鍵、暗証番号式の鍵、磁気カードまたはICカードによる鍵などを適用することが可能である。以下では、鍵手段の一例としてブレードの付いた鍵を用いる場合について例示するものとし、鍵手段を「操作キー」と呼んで説明する。
【0033】
駐車装置を使用するに当たっては、操作電源スイッチ120の鍵穴に操作キーを差し込むことで操作が可能となり、操作キーを「入」に回したときは操作電源スイッチ120から操作キーを抜くことができないようになっている。操作電源スイッチ120から操作キーを抜くには、「ゲート閉」とし、さらに「切」の位置まで操作キーを回して駐車装置の電源を落としてからでないと抜き取れないようになっている。
【0034】
操作部122は駐車装置の基本的な操作を行う部分である。図2で示すものはその一例であるが、操作部122は操作手順ごとに点灯ランプおよび操作ボタンが配列されている。操作電源スイッチ120を「切」から「入」に回すことで操作部122の「電源キーSW」が点灯する。操作部122の「安全確認ボタン」は、駐車装置内に人がいないかどうかを利用者が確認してから利用者によって押されるボタンである。安全ゲート112が閉鎖中であれば、このボタンを押すことによりパレット呼び出しを可能な状態に移行させるボタンとなる。安全ゲート112が開放されている状態では、パレットの移動はされないようになっている。
【0035】
操作部122の「呼び出し番号入力」はパレットの番号(呼び出し番号)の入力を促す点灯ランプである。そして、操作部122の「スタート」は、パレット104の入出庫口への移動を開始させ、パレット104が入出庫口へ移動したら安全ゲート112が開くようにするための操作ボタンである。一方、利用者は、安全ゲート112が開放中のときに、操作キーを「ゲート閉」に回した後、「安全確認ボタン」を押すことで安全ゲート112を閉鎖することができる。安全ゲート112が閉鎖されると、利用者は、操作キーを「切」に回すことができ、その後、操作キーを抜くことができる。
【0036】
パレット番号は番号入力部126で入力をする。番号入力部126により入力された番号は表示部124に表示される。利用者は番号入力部126から入力した番号を表示部124で確認することができる。非常停止ボタン128は移動中のパレット104を緊急停止させたい場合にこのボタンを押すことで停止させることができる。このように、駐車装置操作盤108は、ゲートの開閉を指示するためのゲート開閉指示部およびパレット104を移動する指示をするためのパレット指示部を備え、鍵手段によって電源が投入されているときに操作可能になっている。利用者は、駐車装置操作盤108を用いて駐車装置100の基本的な操作を行うことができる。」

エ 「【0038】
[インターロック操作盤110]
他の利用者が操作キーを操作して安全ゲート112を閉鎖してしまったりしないように、本実施の形態に係る駐車装置100にはインターロック機能が付加されている。駐車装置100に設けられるインターロック操作盤110は、駐車装置操作盤108の操作を無効化する機能、すなわち制御盤114による駆動装置の制御を無効化する機能を有している。図3はインターロック操作盤110の一例を示す。
【0039】
インターロック操作盤110には、利用者からのコードの入力を受け付けるコード入力部130が設けられている。このコード入力部130は、この例では数字入力キーであるが、文字入力が可能になっていてもよい。コード入力部130を用いて、利用者が適当なコード(例えば、4桁の数字)を入力すると、このコードが例えばインターロック操作盤110に設けられたメモリに記憶される。詳細は後述するが、安全ゲート112の開閉が実行される前に、コードが入力されるようになっている。このように、インターロック操作盤110は、コードの入力を受け付けるコード受付部を備え、鍵手段によって電源が投入されているときに操作可能になっている。
【0040】
安全ゲート112が閉じているときには、コードの入力がコード入力部130に受け付けられるまでの期間(安全ゲート112が閉じてからの期間)は、駐車装置操作盤108による操作にかかわらず安全ゲート112が開けられないように、制御盤114による駆動装置の制御が無効化されインターロックが作動した状態になる。コードの入力が受け付けられれば、制御盤114による駆動装置の制御の無効化が解除され、駐車装置操作盤108への指示に応じてパレット104の移動および安全ゲート112の開放が行われる。
【0041】
一方、安全ゲート112が開いているときには、コードの入力が再び受け付けられるまでの期間(安全ゲート112が開いてからの期間)は、駐車装置操作盤108による操作にかかわらず安全ゲート112が閉じられないように、制御盤114による駆動装置の制御が無効化されインターロックが作動した状態になる。コードの入力が受け付けられれば、制御盤114による駆動装置の制御の無効化が解除され、駐車装置操作盤108への指示に応じて安全ゲート112の閉鎖が行われ、メモリに記憶されたコードがリセットされる。ここでのコードの入力は、安全ゲート112を開放する直前に入力されたコードであり、すなわちメモリに記憶されたコードであることを要する。
【0042】
上述の通り、安全ゲート112を開ける際に入力したコードは、利用者が任意に選択したものでよいが、安全ゲート112を閉める際に入力するコードが、安全ゲート112を開ける際に入力したコード(メモリに記憶されたコード)と同じでないと、インターロックが作動したままとなるため、安全ゲート112は閉じられず、開いたままとなる。
したがって、パレット104も移動されない。なお、制御盤114による駆動装置の制御が無効化される場合には、駐車装置操作盤108において電源をオフにした場合と同様の状態としてもよい。
【0043】
ここで、駐車装置操作盤108とインターロック操作盤110とが一体の操作盤で構成される場合には、コード入力部130と、番号入力部126とが共通化され、数字入力キーによってパレット番号の入力とコードの入力とが行われてもよい。
【0044】
なお、制御盤114による駆動装置の制御を無効化するために用いられるコードは、利用者がコード入力部130のキーを操作して入力する場合に限らない。例えば、無線通信機能を有する装置から無線信号を受信する受信部を、コード入力部130の代わりに用いてもよい。この場合、受信部によって受信した無線信号から得られる情報がコードとして受け付けられるようにしてもよい。無線通信機能を有する装置とは、RFID技術等を用いた非接触短距離通信が可能なカード、携帯電話等である。例えば、これらの装置が電子マネー等に用いられるものであれば、受信する無線信号から、例えば、固有に割り当てられた識別番号、電子マネーの残額等がコードとして用いられてもよい。
【0045】
また、指紋の画像をセンサ等によって取得する指紋取得部を、代わりに用いてもよい。この場合、利用者の指紋の画像から得られる情報(例えば、画像の特徴量等)がコードとして受け付けられるようにしてもよい。上述したとおり、安全ゲート112を開ける際には入力すべきコードは自由に選択可能であるため、どの指の指紋を用いてもよい。安全ゲート112を閉める際に同じ指の指紋をコードの入力に用いればよい。
【0046】
インターロック操作盤110には、インターロックが作動している(制御盤114による駆動装置の制御が無効化されている)ことを利用者等に知らせるインターロック表示部132が設けられている。図3で示すインターロック表示部132は、文字によるメッセージが表示されるようになっている。インターロック表示部132は駐車装置100内に人がいることを確認するためのものでもある。もちろん、文字によるメッセージの他に注意を喚起するランプが点灯するものであってもよいし、音声を出力するようにしてもよいし、機械的な動きによるものであってもよいし、あるいはこれらを組み合わせてもよい。すなわち、利用者に対してインターロックが作動していること、あるいはインターロックが作動していないことを利用者に報知する報知部により、駐車装置100内に人がいることを認識させるようになっていればよい。
【0047】
また、図3ではインターロック操作盤110に操作スイッチ130とインターロック表示部132を設ける構成を示しているが、インターロック表示部132を分離して駐車装置100の他の場所(利用者の目に付きやすい場所、例えば駐車装置操作盤108など)に設けるようにしてもよい。」

オ 「【0055】
[駐車装置100のシステム
図7はこのような駐車装置100のシステムブロック図を示す。駐車装置操作盤108には操作電源スイッチ120、操作部122、番号入力部126、表示部124、および非常停止ボタン128が設けられ、入力された操作に応じた操作情報が制御盤114に送られる。
【0056】
インターロック操作盤110は、コード入力部130、インターロック表示部132およびコードを記憶するメモリ131が設けられている。コード入力部130によりコードが入力されると、メモリ131にそのコードが記憶され、コード入力部130により再び同じコードが入力されるとメモリ131に記憶されていたコードがリセットされる。リセットとは、メモリ131から消去されることであってもよいし、予め決められた初期値に書き換えられることであってもよい。メモリ131にコードが記憶されているか否か(または初期値であるか)を示すメモリ情報がインターロック操作盤110から制御盤114に送られる。
【0057】
なお、メモリ131にコードが記憶されたことを示す情報と、メモリ131に記憶されたコードと同じコードが入力されたことを示す情報とのいずれかが制御盤114に送られるようにしてもよい。これらの情報により、制御盤114が駆動装置200の制御を無効化するかどうかを決定することができる。また、メモリ131に記憶されたコードと同じコード以外にも、特定のコードが入力された場合には、メモリ131に記憶されたコードと同じコードが入力されたものとして扱われるようにしてもよい。このようにすると、利用者が入力したコードを忘れてしまった場合、インターロックが作動したまま駐車装置100から利用者が立ち去ってしまった場合等、管理者が利用者に変わってインターロックを解除することもできる。
【0058】
制御盤114は操作情報およびメモリ情報に基づいて駆動装置200の制御を行う制御部として機能する。この駆動装置200は、パレット104を移動させるための昇降機106等の装置、および安全ゲート112を開閉させるための装置等が含まれる。
【0059】
制御盤114は、安全ゲート112が閉じているときにはメモリ131にコードが記憶されていなければ操作情報に基づく駆動装置200の制御を無効化し、メモリ131にコードが記憶されていれば操作情報に基づく駆動装置200の制御を行う。一方、制御盤114は、安全ゲート112が開いているときにはメモリ131にコードが記憶されていれば操作情報に基づく駆動装置200の制御を無効化し、メモリ131にコードが記憶されていなければ操作情報に基づく駆動装置200の制御を行う。
【0060】
このように、駐車装置100の安全ゲート112の開閉、パレット104の移動を制御する制御装置は、駐車装置操作盤108、インターロック操作盤110、および制御盤114によって実現される。
【0061】
[駐車装置の動作フロー]
図8は駐車装置100の動作および利用者の作業を説明するフローチャートを示す。まず、駐車装置100を作動させるために、駐車装置操作盤108の操作電源スイッチ120に操作キーを入れて電源を投入する操作をする(ステップS101)。そして、入出庫口に呼び出すパレット104を指示する操作(パレット番号を入力等)をする(ステップS103)。ただし、この時点では、コード入力部130に対してコードの入力が行われておらず、メモリ131にコードが記憶されていない。したがって、制御盤114による駆動装置200の制御が無効化されインターロックが作動している状態であるため、パレット104は移動されず、安全ゲート112も動かない。
【0062】
利用者によるコードの入力がコード入力部130に受け付けられる(ステップS105)と、コードがメモリ131に記憶される(ステップS107)。これにより駆動装置200による制御の無効化が解除され、パレットの移動が始まる(ステップS111)。指示したパレット104が入出庫口まで移動すると、安全ゲート112が開く動作をする(ステップS113)。
なお、コードの入力(ステップS105)がパレット104を指示する操作(ステップS103)よりも先に行われてもよく、その場合には、パレット104を指示する操作が行われると、直ちにパレットの移動が始まる(ステップS111)。
【0063】
安全ゲート112が開くと、再び駆動装置200による制御が無効化されてインターロックが作動する。そして、インターロック表示部132のランプがオンになり、注意喚起の文字が表示される(ステップS115)。上記までの段階で、駐車装置100に入って車両の入出庫、充電等の作業を開始することが可能となる(ステップS121)。
【0064】
駐車装置100での作業が終了すると、利用者は安全ゲート112を閉める操作を行う(ステップS131)。ただし、この時点では、コード入力部130に対して再度のコードの入力が行われておらず、メモリ131にコードが記憶されたままになっている。したがって、制御盤114による駆動装置200の制御が無効化されインターロックが作動している状態であるため、安全ゲート112が動かず、閉じる動作が行われない。
【0065】
利用者によるコードの入力がコード入力部130に受け付けられる(ステップS133)と、このコードがメモリ131に記憶されているコードと一致するかどうかの判定が行われる(ステップS135)。
コードが一致しない場合(ステップS135;No)には、エラー表示が行われる(ステップS137)。エラー表示は、インターロック表示部132に表示されてもよいし、表示部124に表示されてもよいし、それ以外の表示手段に表示されてもよい。
【0066】
入力されたコードがメモリ131に記憶されているコードと一致した場合(ステップS135;Yes)には、メモリ131に記憶されたコードがリセット(消去)される(ステップS141)。これにより駆動装置200による制御の無効化が解除され、安全ゲート112が閉じる動作をする(ステップS143)。
【0067】
なお、コードの入力(ステップS133)が安全ゲート112を閉める操作(ステップS131)よりも先に行われてもよく、その場合には、安全ゲート112を閉める操作が行われると、直ちに安全ゲート112が閉じる動作が始まる(ステップS143)。また、コードのリセット(ステップS141)と安全ゲート112が閉じる動作(ステップS143)とは順番が逆でもよい。
【0068】
安全ゲート112が完全に閉まると、利用者は、電源を切る操作をして操作キーを駐車装置操作盤108の操作電源スイッチ120から抜いて取り外すことができる(ステップS145)。
【0069】
本発明の一実施形態に係る駐車装置100によれば、インターロック操作盤110におけるコード入力部130により利用者自身が入力時に決めたコードを用いることで、インターロックを作動させる一方、作動したインターロックを解除するためには、再び同じコードを入力するようになっている。
【0070】
したがって、インターロックの解除を利用者自身に限定することができ、利用者が駐車装置100に入って作業している場合でも、他の利用者はこのコードがわからないため、誤って駐車装置操作盤108を操作してしまうことを防ぐことができる。これにより、利用者が駐車装置100の中に立ち入っているときに、他の利用者が駐車装置操作盤108を操作しても安全ゲート112が閉鎖してしまわないようにすることができ、その結果、パレット104が移動することもなくなるので、利用者の安全を確保することができる。」

カ 図1は次のものである。

キ 図2は次のものである。

ク 図3は次のものである。

ケ 図7は次のものである。

コ 図8は次のものである。


上記アないしコからみて、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

(甲1発明)
「駐車装置における安全機構であって、
駐車装置は支柱によって主構造体が構成され、主構造体の中に車両を載置するパレットが設置されており、
駐車装置は駐車装置操作盤によって操作され、駐車装置の入出庫口の近くの支柱に駐車装置操作盤およびインターロック操作盤が取り付けられ、駐車装置操作盤とインターロック操作盤とが一体の筐体に収められ、一つの操作盤として構成されていてもよく、
駐車装置の入出庫口に設けられる安全ゲートは駐車装置操作盤により開閉を行うことができ、
駐車装置操作盤から出力される信号は制御盤に送られ、制御盤はパレットの移動や安全ゲートの開閉を行う駆動装置に制御信号を出力し、
駐車装置にはインターロック機能が付加されており、駐車装置に設けられるインターロック操作盤は、駐車装置操作盤の操作を無効化する機能、すなわち制御盤による駆動装置の制御を無効化する機能を有しており、
制御盤による駆動装置の制御を無効化するために用いられるコードは、無線通信機能を有する装置から無線信号を受信する受信部を用い、受信部によって受信した無線信号から得られる情報がコードとして受け付けられるようにし、無線通信機能を有する装置とは、RFID技術等を用いた非接触短距離通信が可能なカード、携帯電話等であり、
駐車装置を作動させるために、利用者によるコードの入力がコード入力部に受け付けられると、コードがメモリに記憶され、これにより駆動装置による制御の無効化が解除され、安全ゲートが開く動作をし、
駐車装置での作業が終了すると、利用者は安全ゲートを閉める操作を行い、利用者によるコードの入力がコード入力部に受け付けられると、このコードがメモリに記憶されているコードと一致するかどうかの判定が行われ、入力されたコードがメモリに記憶されているコードと一致した場合には、メモリに記憶されたコードがリセットされ、これにより駆動装置による制御の無効化が解除され、安全ゲートが閉じる動作をし、
インターロック操作盤におけるコード入力部により利用者自身が入力時に決めたコードを用いることで、インターロックを作動させる一方、作動したインターロックを解除するためには、再び同じコードを入力するようになっていることで、インターロックの解除を利用者自身に限定することができる駐車装置における安全機構」

(2)甲第2号証
甲第2号証には、以下の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式立体駐車場に係り、特に車両の入庫時および出庫時に、該車両のユーザー(ドライバー)自身が入出庫扉を開閉操作するように構成された機械式立体駐車場の制御方法およびこの制御方法により制御される機械式立体駐車場に関するものである。」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、モータの動力により車両を移動させる機能を有する機械式立体駐車場であれば幅広く適用できるものであって、以下の説明にある垂直循環式立体駐車場に限定されるものではない。
【0025】
図1は、本発明に係る制御方法を適用し得る機械式立体駐車場の一例を示す斜視図である。この機械式立体駐車場1は、オフィスビルやマンション等に併設される契約者専用のものである。機械式立体駐車場1は、複数の車両2を収容可能な垂直循環式の立体駐車場施設であり、地上部に車両2の入出庫口3が開口する塔状の車庫装置(駐車塔)4内に複数のパレット5(車体搬送手段)が収容されている。各パレット5は車庫装置4内で上下に駆動される搬送チェーン6にアーム7を介して所定間隔で設けられたケージ8に吊設されており、搬送チェーン6の位置に拘らず常に水平な姿勢を保たれている。
【0026】
図1には図示しないパレット駆動機構25(図2参照)に備えられた昇降用モータにより搬送チェーン6が駆動されると、各パレット5が水平な姿勢で車庫装置4内を上下に循環し、最下部の位置でパレット5が地上レベルの高さとなり、入出庫口3から車両2の積み降ろしが行われる。また、車両2は入出庫口3の前に設けられたターンテーブル9により向きを変えられ、例えば常に前向きでパレット5上に載置される。ターンテーブル9は図示しないパレット旋回機構に備えられた旋回用モータにより旋回駆動される。
【0027】
入出庫口3には、車両の入出庫時にのみ、ユーザーの操作によって開扉される入出庫扉11が設けられている。また、入出庫口3の近傍には、図2にも示す操作盤12が設けられ、機械式立体駐車場1に車両を駐車させるユーザーは、この操作盤12を後述するように操作して入出庫扉11の開閉と車両の入出庫作業を行う。操作盤12は、車庫装置4の外部、且つ車庫装置4の内部を目視可能な位置に設けられている。なお、同じく入出庫口3の近傍には管理人室13が設けられており、ここに駐在する管理人が、必要に応じてユーザーのアシストを行うようになっている。この管理人室13は必ずしもこの位置になくてもよく、遠隔位置に設けてユーザーとの対話を行いながらユーザーをアシストするようにしてもよい。
【0028】
このように構成された機械式立体駐車場1は、図2に概略的に示す制御系統の下で、本発明に係る制御方法により制御される。この制御系統15は制御装置16を有し、制御装置16には主制御部17と、この主制御部17に統括制御される入出庫扉開閉制御部18およびパレット駆動制御部19が含まれている。また、主制御部17には認証照合部21が含まれている。
【0029】
入出庫扉開閉制御部18には、入出庫扉11を開閉させる入出庫扉開閉機構22と、入出庫扉11の開位置および閉位置を検出して入出庫扉開閉制御部18にフィードバックする入出庫扉位置センサ23が接続されている。また、パレット駆動制御部19には、パレット5を駆動するパレット駆動機構25と、パレット5の位置を検出してパレット駆動制御部19にフィードバックするパレット位置センサ26が接続されている。さらに、図示しないが、主制御部17には、ターンテーブル9を駆動するターンテーブル駆動機構と、ターンテーブル9の位置を検出してターンテーブル駆動機構にフィードバックするターンテーブル位置センサが接続されている。
【0030】
操作盤12は主制御部17に接続されている。この操作盤12には、表示画面31と、音声スピーカ32と、テンキー操作部33と、ICカードリーダー34と、起動ボタン35と、閉扉ボタン36等が設けられている。表示画面31と音声スピーカ32は、画面および音声によってユーザーに操作方法を指示するものであり、テンキー操作部33はユーザーに暗証番号によって認証を行わせるものであり、ICカードリーダー34はユーザーにICカードによって認証を行わせるものである。また、起動ボタン35は、認証操作を終えたユーザーがパレット5の呼び出しを行うスイッチであり、閉扉ボタン36はユーザーが入出庫扉11を閉じるためのスイッチである。
【0031】
このように構成された機械式立体駐車場1にユーザーが車両を入庫させる時の手順は次の通りである。 まず、図3に示すように、車両2を入出庫扉11の前(ターンテーブル9の上)に停車させ、同乗者を降車させ、ドアミラーを畳み、アンテナを下げる。次に、図4に示すように、
ユーザー(車両のドライバー)は、操作盤12に向かい、第1の認証操作を行う。この第1の認証操作に基づき、主制御部17の認証照合部21において、ユーザーが機械式立体駐車場1の正式な契約者であるか否かの判定が行われる。仮に非契約者が認証操作を行っても、表示画面31と音声スピーカ32によりエラー表示がなされ、機械式立体駐車場1は動作しない。
【0032】
この第1の認証操作は、ユーザーが自分専用の暗証番号をテンキー操作部33に入力するか、自分専用に貸与された暗証記号媒体を操作盤12に認識させることによって行われる。この機械式立体駐車場1では、例えば図示しないICカードが暗証記号媒体として用いられており、ユーザーはICカードを操作盤12のICカードリーダー34にタッチして認識させる。
【0033】
第1の認証操作でユーザーが正式な契約者であると認証されると、表示画面31と音声スピーカ32によってユーザーに起動ボタン35を押すように指示がなされる。ユーザーは起動ボタン35を押して再び車両に乗り込む。主制御部17は、ユーザーの認証内容によって入庫か出庫かを見分け、起動ボタン35が押されると同時に図2に示すパレット駆動機構25を起動させて空のパレット5を入出庫口3の位置に搬送させる。空のパレット5が到着すると、入出庫扉開閉制御部18と入出庫扉開閉機構22が自動的に入出庫扉11を開扉させ、同時に入出庫口3の上方に設けられた入庫管制灯38が赤から青に変わる。
【0034】
次に、ユーザーは、図5に示すように車両を前進させて入出庫口3に進入し、パレット5上の規定位置に車両を停車させる。図6に示すように、パレット5の前方となる壁面には電光板39が設けられており、この電光板39には、「前進」、「停車」、「後退」といった表示ランプ41,42,43と、各種の注意事項が記載された注意表示部44,45が設けられている。ユーザーは、電光板の「前進」の表示ランプ41が「停車」の表示ランプ42に切り替わるまで車両を前進させて停車する。前に進み過ぎた場合は「後退」の表示ランプ43が点灯するため、ユーザーは「後退」の表示ランプ43が「停車」の表示ランプ42に切り替わるまで車両を後退させて位置を調整する。
【0035】
車両をパレット5の規定位置に停車させたら、ユーザーはパーキングブレーキを掛けてエンジンを停止させ、ドアミラーが畳まれているか、アンテナが下がっているか、ドアや窓が開いていないか、貴重品が残ってないか等を確認し、図7に示すように降車してキーロックを掛ける。ここで、例えば車両がバッテリーの充電を要する電動車両であり、パレット5に充電用の充電用コンセントが設置されている場合には、ユーザーは充電用コンセントと、車体側に設けられた充電口との間を充電ケーブルで接続する作業を行い、図示しない操作部を操作して充電を開始させる。
【0036】
次に、ユーザーは、車庫装置4の外部に出て、図8に示すように再び操作盤12に向かい、第2の認証操作を行う。第2の認証操作は第1の認証操作と同様な操作である。この第2の認証操作では、第1の認証操作を行ったユーザーと、第2の認証操作を行ったユーザーとが同一人物であるか否かの判定が行われる。仮に第2の認証操作を行ったユーザーが第1の認証操作を行ったユーザーと異なる場合、例えば第1のユーザーが車庫装置4の中に居る時に次のユーザーが訪れて第1の認証操作を行った場合には、第1の認証操作と第2の認証操作の認証情報が一致しないため、表示画面31と音声スピーカ32によりエラー表示がなされ、機械式立体駐車場1は動作しない。このため、前のユーザーがまだ車庫装置4の中に居る状態で入出庫扉11が閉じられてパレット駆動機構25が起動してしまうことが防止される。
【0037】
第2の認証操作において、主制御部17の認証照合部21が第1の認証操作を行ったユーザーと同一であると判定すると、表示画面31と音声スピーカ32により、ユーザーに車庫装置4内の安全確認を行うよう報知がなされ、さらに安全確認が取れたら閉扉ボタン36を押して入出庫扉11を閉じるように指示がなされる。これに従いユーザーは車庫装置4内に人が残っていないかどうかを確認してから閉扉ボタン36を押して入出庫扉11を閉じる。
【0038】
操作盤12は入出庫口3の近傍に設けられていて、ここから車庫装置4の内部を目視可能であるため、ユーザーは庫内の安全確認をたやすく行うことができる。そして、入出庫扉11を閉じたユーザーは機械式立体駐車場1から立ち去ることができる。
【0039】
また、ユーザーが機械式立体駐車場1に駐車させていた車両を出庫させる時の手順は次の通りである。
まず、図9に示すように、ユーザー(車両のドライバー)は、操作盤12に向かい、第1の認証操作を行う。この第1の認証操作の手順および判定内容は入庫時に行ったものと同様であり、仮に非契約者が認証操作を行っても、表示画面31と音声スピーカ32によりエラー表示がなされて機械式立体駐車場1は動作しない。ユーザーが認証されると、表示画面31と音声スピーカ32によって起動ボタン35を押すよう指示がなされ、ユーザーは起動ボタン35を押す。主制御部17は、ユーザーの認証内容によって入庫か出庫かを見分け、起動ボタン35が押されると同時にパレット駆動機構25を起動させ、車両が搭載されたパレット5を選定して入出庫口3の位置に搬送させる。パレット5が到着すると、入出庫扉開閉制御部18と入出庫扉開閉機構22が図10に示すように自動的に入出庫扉11を開扉させる。
【0040】
次に、ユーザーは、車庫装置4内に入り、車両に乗り込んでエンジンを掛け、図11に示すように出庫させる。車両が電動車両であって、その駐車中にバッテリーの充電を行った場合には、パレット5の充電用コンセントと車両側の充電口との間を接続していた充電ケーブルを切り離し、充電ケーブルを車内に回収してから出庫する。
【0041】
最後に、ユーザーは、図12に示すように、再び操作盤12に向かい、第2の認証操作を行う。第2の認証操作の操作手順および判定内容も、入庫時に行った第2の認証操作と同様である。ここで、仮に、ユーザーがまだ車庫装置4内に居る時に次のユーザーが訪れて第1の認証操作を行っても、第1の認証操作と第2の認証操作の認証情報が一致しないため、表示画面31と音声スピーカ32によりエラー表示がなされ、機械式立体駐車場1は動作しない。このため、入庫時と同様に、前のユーザーがまだ車庫装置4の中に居る状態で入出庫扉11が閉じられてパレット駆動機構25が起動してしまうことが防止される。
【0042】
そして、主制御部17の認証照合部21において、第1と第2の認証操作を行ったユーザーが同一であるか否かが判定され、同一であると判定されると、表示画面31と音声スピーカ32により、ユーザーに車庫装置4内の安全確認を行うよう報知がなされ、さらに安全確認が取れたら閉扉ボタン36を押して入出庫扉11を閉じるように指示がなされる。これに従いユーザーは車庫装置4内に人が残っていないかどうかを確認した後、閉扉ボタン36を押して入出庫扉11を閉じ、車両に乗車して、必要に応じてターンテーブル9により車両の向きを変更してから出発する。
【0043】
なお、入庫時および出庫時において、第1の認証操作を行う場所と第2の認証操作を行う場所は、必ずしも同じ場所でなくてもよい。例えば、第1の認証操作は車庫装置4の遠方またはリモコン等によって行われ、第2の認証操作は車庫装置4の内部を目視可能な位置、例えば操作盤12の位置で行われるようにしてもよい。
【0044】
ところで、この機械式立体駐車場1では、車両の入庫時、出庫時に拘わらず、入出庫扉11が開かれて、車両の入出庫が行われた後、第2の認証操作が実行されないまま所定の時間が経過した場合には、機械式立体駐車場1の管理人に通知がなされるようになっている。これにより、例えば入庫または出庫を終えたユーザーが、第2の認証操作を実行し忘れて立ち去ってしまったり、ユーザーが暗証記号やICカードを忘れてしまったり、ユーザーが操作に不慣れで自力で操作できないような場合には、管理人がユーザーに代わって第1および第2の認証処理を代行することができる。
【0045】
具体的には、管理人は、上述の第1の認証処理における認証情報と第2の認証処理における認証情報とを一致させることのできる専用の認証一致手段を有している。この認証一致手段として、例えば管理人は専用のマスターICカードを所持しており、入庫または出庫を終えたユーザーが、第2の認証操作を実行し忘れて立ち去ってしまった場合等には、管理人が自らマスターICカードをICカードリーダー34にタッチすることによって第2の認証操作を完了させ、入出庫扉11を閉じて機械式立体駐車場1の運行に支障が出ないようにする。
【0046】
図13は、本実施形態に係る制御プログラムをフローチャートで示している。この制御プログラムは主制御部17に記憶されている。また、この制御プログラムは、車両の入庫時と出庫時とで概ね同一である。
【0047】
この制御の流れを順に説明すると、制御開始後、まずステップS1でユーザーによる第1の認証操作が実行されたか否かが判定される。このステップS1の判定結果がNOの場合は元に戻り、このステップS1の判定結果がYESであれば次のステップS2に移行して第1の認証操作を行ったユーザーが機械式立体駐車場1の正式な契約者であるか否かが判定される。このステップS2の判定結果がNOの場合にはステップS3に移行してエラー表示処理がなされ、表示画面31と音声スピーカ32によりエラー表示がなされる。
【0048】
ステップS2の判定結果がYESの場合はステップS4に移行し、ユーザーによる第1の認証操作に基づいて該ユーザーの認証を行う第1の認証処理が実行される。この第1の認証処理では、ユーザーの暗証番号またはICカードの情報が記憶されるとともに、入庫か出庫かの判定が下される。同時に、表示画面31と音声スピーカ32によってユーザーに起動ボタン35を押すように指示がなされるため、ユーザーが起動ボタン35を押す。これを受けて主制御部17ではステップS5に移行して搬送呼出処理が実行され、入庫時には空のパレット5が、出庫時には当該車両が積載されたパレット5が、それぞれパレット駆動機構25によって入出庫口3の位置に搬送される。このパレット5の到着とともにステップS6に移行して開扉処理が実行され、入出庫扉開閉機構22により入出庫扉11が開扉される。このためユーザーは、入庫の際には車両をパレット5上の規定位置に停車させ、出庫の際にはパレット5に積載された車両を入出庫口3の外に出庫させる。
【0049】
次に、制御はステップS7に移行し、ユーザーによる第2の認証操作が実行されたか否かが判定される。このステップS7の判定結果がYESの場合、即ちユーザーにより第2の認証操作がなされている場合はステップS8に移行し、ユーザーの第2の認証操作に基づいて該ユーザーの認証を再度行う第2の認証処理が実行される。この第2の認証処理では、ユーザーの暗証番号やICカードの情報が再度記憶される。続いてステップS9に移行し、第1の認証処理における認証情報と第2の認証処理における認証情報とが一致しているか否かを照合する照合処理が認証照合部21において実行される。この照合処理では、第1の認証操作と第2の認証操作とで、ユーザーの暗証番号またはICカードの情報が一致しているか否かが判定される。
【0050】
ステップS9の判定結果がYESの場合、即ち第1の認証操作を行ったユーザーの認証情報と第2の認証操作を行ったユーザーの認証情報とが一致した場合には、ステップS11に移行して安全確認報知処理が実行され、表示画面31と音声スピーカ32によってユーザーに車庫装置4内の安全確認を行うよう報知がなされ、さらに閉扉ボタン36を押して入出庫扉11を閉じるように指示がなされる。ユーザーは安全確認を行って閉扉ボタン36を押すため、ステップS12に移行して閉扉処理が実行され、入出庫扉開閉機構22によって入出庫扉11が閉じられ、制御は最初に戻る。
【0051】
また、ステップS9の判定結果がNOの場合、即ち第1の認証操作を行ったユーザーの認証情報と第2の認証操作を行ったユーザーの認証情報とが一致しない場合には、ステップS10に移行してエラー表示処理がなされ、表示画面31と音声スピーカ32によりエラー表示がなされる。その後、ステップS7以降の制御が反復される。
【0052】
一方、ステップS7の判定結果がNOの場合、即ちステップS6にて開扉処理が実行されて車両の入出庫が行われた後、第2の認証操作が実行されない場合には、ステップS13に移行し、所定の時間(例えば3分)が経過したか否かが判定される。このステップS13の判定結果がNOであればステップS7に戻り、ステップS7以降の制御が反復される。また、ステップS13の判定結果がYESであればステップS14に移行し、管理人通知処理が実行される。この場合、管理人が入出庫口3付近に赴いて第2の認証操作が実行されない原因を調べ、例えばユーザーが第2の認証操作を実行し忘れて立ち去ってしまったり、あるいは暗証番号やICカードを忘れてしまった場合には、認証一致手段としてのマスターICカードを操作盤12のICカードリーダー34にタッチする。
【0053】
このように管理人がマスターICカードを使用することにより、制御はステップS15に移行し、管理人による認証が一致したか否かの判定が下され、この判定結果がYESであれば、ステップS16にてマスター認証処理が実行され、さらに、ステップS11?ステップS12に移行して閉扉処理が実行されて入出庫扉11が閉じられる。また、ステップS15の判定結果がNOである場合、即ち管理人が未着、あるいは原因究明中であればステップS15において待機となる。このように、管理人が呼び出されてマスターICカードを使用することにより入出庫扉11を閉じることができるため、以後の駐車場運行に差し支えることがない。
【0054】
以上説明したように、本発明に係る機械式立体駐車場1の制御方法は、車庫装置4の入出庫扉11を開く前に、ユーザーによる第1の認証操作に基づいて該ユーザーの認証を行う第1の認証処理(ステップS4)と、この第1の認証処理の後でパレット5を呼び出す搬送呼出処理(ステップS5)と、パレット5の到着後に入出庫扉11を開く開扉処理(ステップS6)と、入出庫扉11を閉じる前にユーザーによる第2の認証操作に基づいて該ユーザーの認証を再度行う第2の認証処理(ステップS8)と、第1の認証処理(ステップS4)における認証情報と第2の認証処理(ステップS8)における認証情報とが一致しているか否かを照合する照合処理(ステップS9)と、この照合処理における照合結果が一致した場合にのみ入出庫扉11を閉じる閉扉処理(ステップS12)とを有する。
【0055】
このため、第1の認証操作を行って認証されたユーザーが、第2の認証操作を行うことによって再度認証され、その両方の認証情報が一致した場合にのみ入出庫扉11が閉じられる。したがって、第1の認証操作を行ったユーザーが、入出庫操作を終えて車庫装置4外に退避し、第2の認証操作を行うまでは入出庫扉11が閉じられることがない。よって、車庫装置4内にユーザーが取り残された状態で入出庫扉が閉じられてしまうことを防止することができる。
【0056】
特に、複数のユーザーが連続して入出庫操作に訪れた場合には、前のユーザーがまだ車庫装置4内に居る時に次のユーザーが第1の認証操作を行っても、この操作は前のユーザーの第2の認証操作と見なされ、第1の認証処理における認証情報と、第2の認証処理における認証情報とが一致しなくなるため、入出庫扉11を閉じる閉扉処理(ステップS12)が実行されない。したがって、前のユーザーの入出庫操作が完了するまで、次のユーザーは入出庫操作ができず、こうして前のユーザーが車庫装置4内に取り残された状態で次のユーザーにより入出庫扉11が閉じられてしまう事態を確実に防止することができる。
【0057】
このことは、特に、充電作業を要する電動車両の入出庫時には効果が高い。即ち、パレット5に設けられている充電用コンセントと、電動車両の車体に設けられている充電口との間を充電ケーブルで接続したり、あるいは接続を切り離して充電ケーブルを回収したりする作業は、ユーザーが車体の傍らに屈み込んで行うものであり、他のユーザーから認識されにくく、しかもこのような作業は時間を要することが多い。このため、同じユーザーに入出庫操作の前後で第1の認証操作と第2の認証操作を行わせ、その結果が一致した場合にのみ入出庫扉11を閉じる閉扉処理(ステップS12)を実行するようにしたことにより、他のユーザーが車庫装置4内に人が居ないと誤認して入出庫扉11を閉じてしまう虞を回避することができる。
【0058】
また、本発明に係る制御方法は、第1の認証操作および第2の認証操作が、車庫装置4の外部、且つ車庫装置4の内部を目視可能な位置に設けられた操作盤12にて行われるため、ユーザーは車庫装置4の内部を目視可能な位置で第1および第2の認証操作を行う。このため、入出庫扉11が閉じられる前に自ずと車庫装置4の内部に人が居ないことを確認でき、車庫装置4内に人が取り残された状態で入出庫扉が閉じられてしまうことを防止することができる。
【0059】
さらに、本発明に係る制御方法は、照合処理(ステップS9)の結果が不一致の場合には操作盤12にエラー表示を行うエラー表示処理(ステップS10)をさらに有するため、例えば車庫装置4内に前のユーザーが居る時に次のユーザーが第1の認証処理を実行しようとしても、エラー表示がなされ、次のユーザーは前のユーザーの存在に気付くことができるので、前のユーザーが車庫装置4内に取り残された状態で次のユーザーにより入出庫扉11が閉じられてしまうことを確実に阻止することができる。
【0060】
また、本発明に係る制御方法は、照合処理(ステップS9)と閉扉処理(ステップS12)との間に、ユーザーに車庫装置4内の安全確認を促す安全確認報知処理(ステップS11)をさらに有するため、ユーザーに安全確認を励行させ、車庫装置4内に人が取り残された状態で入出庫扉11が閉じられてしまうことを防止することができる。
【0061】
しかも、本発明に係る制御方法は、閉扉処理(ステップS12)が実行され、車両の入出庫が行われた後、第2の認証操作が実行されないまま所定の時間が経過した時に、機械式立体駐車場1の管理人に通知する管理人通知処理(ステップS14)をさらに有するため、例えばユーザーが車両を車庫装置4に入出庫させた後に第2の認証操作を実行し忘れて立ち去ってしまっても、管理人が入出庫扉11を閉じることができ、機械式立体駐車場1の運行に支障が出ない。
【0062】
その上、本発明に係る制御方法は、機械式立体駐車場1の管理人が、第1の認証処理における認証情報と第2の認証処理における認証情報とを一致させることのできる専用の認証一致手段(マスターICカード等)を有しているため、何らかの理由によりユーザー第2の認証操作を実行しなかった場合でも、管理人がユーザーに代わって第1および第2の認証処理を代行して入出庫作業を行うことができ、機械式立体駐車場の運行に支障が出ない。
【0063】
また、本発明に係る制御方法は、第1の認証操作および前記第2の認証操作が、ユーザーに暗証記号を操作盤12に入力させたり、あるいはユーザーに自己所持の暗証記号媒体を操作盤12に認識させることによって行われるため、ユーザーにさしたる負担を強いることなく、第1の認証処理と第2の認証処理を速やかに実行させて、スムーズに入出庫操作を行わせることができる。
【0064】
そして、上記のような制御方法によって制御される機械式立体駐車場1によれば、車庫装置4内に人が取り残された状態で入出庫扉11が閉じられてしまうことを確実に防止することができる。」

ウ 図1は次のものである。

エ 図2は次のものである。

オ 図3は次のものである。

カ 図4は次のものである。

キ 図5は次のものである。

ク 図8は次のものである。

ケ 図9は次のものである。

コ 図10は次のものである。

サ 図11は次のものである。

シ 図12は次のものである。

ス 図13は次のものである。


上記アないしスからみて、甲第2号証には以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

(甲2発明)
「機械式立体駐車場の制御装置であって、
ユーザー(車両のドライバー)は、操作盤に向かい、第1の認証操作を行い、第1の認証操作は、ユーザーが自分専用の暗証番号をテンキー操作部に入力するか、自分専用に貸与された暗証記号媒体を操作盤に認識させることによって行い、ICカードが暗証記号媒体として用いられており、ユーザーはICカードを操作盤のICカードリーダーにタッチして認識させ、
第2の認証操作では、第1の認証操作を行ったユーザーと、第2の認証操作を行ったユーザーとが同一人物であるか否かの判定が行われ、第2の認証操作において、主制御部の認証照合部が第1の認証操作を行ったユーザーと同一であると判定すると、ユーザーは閉扉ボタンを押して入出庫扉を閉じる、機械式立体駐車場の制御装置」

(3)甲第3号証
甲第3号証には、以下の記載がある。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、無線でユーザーと接続し合って、錠の少なくとも開錠を可能にする、錠システムおよびその錠に関するものである。」

イ 「【0072】(第13実施形態)図17および図18はこの発明の第13の実施形態を表わす。この実施形態で特徴的な点は、ユーザーが所持するものが、内部に通信用の誘導コイルを備えたICカード8である点である(誘導コイルは図示せず)。図17で表わしたものは、レンタル自転車の駐車場に設置したユーザー管理装置の子機である。これは送受信部13とアンテナ14と、送受信部13に接続された通信部15と、通信部15に接続されたコイル16とから構成されている。通信部15はコイル16を介してICカード8にユニークな(一対一対応する)番号を送信する。なお、この番号の発生はユーザー管理装置で行 なうようにし子機を介して通知するようにしても、或いは各子機でこの番号を発 生するようにしてもよい。
【0073】次にレンタル自転車2の錠を図18で表わす。上述したユニークな番号を記録したICカード8がコイル302にかざされると、コイル302に接続した通信部301がICカード8と通信して、前記ユニークな番号(パスワード)を読み出し、センターサーバにアクション内容すなわち施錠された状態では開錠要求を送受信部32を介して伝えるが、この時先に読み出したパスワードを提示する。このパスワードがセンターサーバで認証された場合には、開錠命令が錠側へ送信されて来るので、これを送受信部32で受信して、開錠部3がソレノイド30に通電して開錠する。なお施錠は他の実施形態で説明したような手動で行なうものとしたが、開錠部3を変更することでどちらにも対応し得るように構成することができる。次の第14実施形態の錠では錠動作部34を説明する。」

ウ 図17は次のものである。

エ 図18は次のものである。


(4)甲第4号証
甲第4号証には、以下の記載がある。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遠隔操作により車両のドアの施錠および開錠を行うシステムに関し、特に、宅配業者など車両の所有者以外の者もドアの開錠を行い得るシステムに関する。」

イ 「【0040】
次に、上記構成の錠操作システム1の動作について説明する。
【0041】
(パスワード発行処理)
図3および図4を参照して、パスワード発行処理について説明する。図3は、錠操作システム1におけるパスワード発行処理の流れを示すフローチャートであり、図4は、所有者端末2に表示される画面例を示す図である。
【0042】
車両4の所有者が、所有者端末2においてWebクライアントソフトを起動し、錠操作システム1が提供するパスワード発行サービスのURL(Uniform Resource Locator)を入力すると、所有者端末2に図4(a)のパスワード発行画面が表示される。
【0043】
パスワード発行画面で、ユーザIDおよびユーザパスワードを入力し、発行ボタンを押下すると、パスワード発行要求が錠操作システム1に送信される。このとき、任意に、時間指定および場所指定を行うこともできる。時間指定では、ドアの開錠を許可する日および時間を指定することができ、場所指定では、ドアの開錠を許可する場所を指定することができる。
【0044】
錠操作システム1のパスワード発行部10は、所有者端末2からパスワード発行要求を受信すると(ステップS100)、ユーザ認証を行う(ステップS101)。本実施形態では、パスワード発行要求からユーザIDおよびユーザパスワードを抽出し、それらがデータベース13に登録された所有者情報と一致しているかどうかを確認することによって認証を行う。
【0045】
ユーザ認証に成功した場合、パスワード発行部10はパスワードを生成する(ステップS102)。ここで生成するパスワードの形式はどのようなものでも構わ ないが、所有者への通知、並びに、所有者から他の者への通知の利便性に鑑みれ ば、視認可能な形式のパスワードが好ましい。本実施形態では、英数記号の組み 合わせからなる文字列をパスワードとして用いる。
【0046】
続いて、パスワード発行部10は、生成したパスワードをデータベース13に格納する(ステップS103)。パスワード発行要求に時間指定もしくは場所指定が含まれている場合には、その情報もパスワードと共にデータベース13に格納する。
【0047】
図2(b)の例では、パスワードとして「ABCDE001」、指定時間として「4月7日13時?15時」、指定場所として「愛知県○○市○○町」が登録されている。これらのパスワード情報は車両4の登録情報と関連付けられており、パスワードに基づいて登録情報を取得したり、逆に、自動車登録番号やユーザIDに基づいてパスワード情報を取得したりすることが可能である。
【0048】
また、パスワード情報には、ステイタスと更新時刻も含まれる。ステイタスは、パスワードが利用されたか否かを示す情報である。ステイタスの初期値は「0」であり、開錠要求がなされると「1」に設定される。パスワードの生成やステイタスの変更など、パスワード情報が更新されたときには、その時刻が更新時刻として記録される。
【0049】最後に、パスワード発行部10は、生成したパスワードを所有者に通知する(ステップS104)。本実施形態では、図4(b)のパスワード通知画面を所有者端末2に送信し表示させることで、パスワードの通知を行う。なお、通知の方法はこれに限られず、所有者本人にのみ通知可能であれば、電子メールなど他の方法を用いても構わない。
【0050】
ここで通知されたパスワードは、錠操作システム1に対して開錠要求や施錠要求を行うときに利用するものである。開錠要求・施錠要求はパスワードを知っている者(以下、「パスワード知得者」という。)ならばすることができるので、所有者自身はもちろんのこと、所有者からパスワードを教えてもらった者もすることができる。
【0051】
(開錠処理)
次に、図5および図6を参照して、開錠処理について説明する。図5は、錠操作システム1における開錠処理の流れを示すフローチャートであり、図6は、開錠要求を行う端末に表示される画面例を示す図である。
【0052】
パスワード知得者は、自己の端末3から錠操作システム1に対して車両4のドアの開錠を要求することができる。端末3としては、インターネット接続機能を有する携帯電話や携帯情報端末(PDA)などの無線端末を用いることが好ましい。通常、車両4の傍、すなわち屋外において開錠要求をするケースが多いからである。
【0053】
パスワード知得者が、端末3においてWebクライアントソフトを起動し、錠操作システム1が提供する開錠サービスのURLを入力すると、端末3に図6の開錠要求画面が表示される。
【0054】
開錠要求画面で、錠操作システム1から発行されたパスワードと、車両4の車両情報(自動車登録番号および車種)とを入力し、OKボタンを押下すると、開錠要求が錠操作システム1に送信される。
【0055】
錠操作システム1の錠操作部12は、端末3から開錠要求を受信すると(ステップS200)、開錠要求からパスワードを抽出し、そのパスワードを検索キーとしてデータベース13から同一のパスワードを含むパスワード情報を索出する。パスワード情報が索出されなかった場合には、無効なパスワードとみなし、処理 を終了する(ステップS201)。
【0056】
パスワード情報が索出された場合には、そのステイタスが「0」か否かを調べる(ステップS202)。この処理は、開錠要求が初回のものか2回目以降のものかを確認する処理に相当する。つまり、ステイタスの初期値は「0」であるため、初回はステップS203に進むが、一度開錠要求を行った後はステイタスが「0」以外の値に設定され、2回目以降の開錠要求は無効となるのである。このように本実施形態では、ワンタイムパスワードの仕組みを採用している。
【0057】 ステップS203では、パスワードに時間指定がなされているか否かを調べる。 時間指定がない場合は有効な開錠要求とみなし、時間指定がある場合には指定時 間内に開錠要求を受信していた場合にのみ有効な開錠要求とみなして(ステップ S204)、ステップS205に処理を進める。この処理により、車両4の所有 者が予め指定した時間内にしか開錠操作を行えないようにすることができる。
【0058】
ステップS205では、錠操作部12は、パスワードに基づいてデータベース13から車両4の登録情報を取得する。そして、錠操作部12は、開錠要求に含まれる車両情報と、データベース13から取得した車両情報とを比較し、両者が一致しているかどうかを確認する(ステップS206)。この処理により、車両4の自動車登録番号や車種を実際に知っている者しか開錠要求を行えないようにすることができる。
【0059】
車両情報が一致していた場合、錠操作部12は、登録情報に基づいて車両4が駐 車中か否かを調べる(ステップS206)。車両4の走行中にドアを開錠するこ とは危険を伴うおそれがあるからである。
【0060】
続いて、錠操作部12は、パスワードに場所指定がなされているか否かを調べる(ステップS208)。場所指定がない場合は有効な開錠要求とみなし、場所指定がある場合には指定場所内に車両4が位置している場合にのみ有効な開錠要求とみなして(ステップS209)、ステップS210に処理を進める。この処理により、車両4の所有者が予め指定した場所に車両4を駐車してあるときにしか開錠操作を行えないようにすることができる。
【0061】
ステップS210では、錠操作部12は、車両4に対して開錠信号を送出する。これにより、車両4のドアが開錠される。
【0062】
開錠操作が正常に行われた後、錠操作部12は、データベース13のパスワード情報のステイタスを「1」に設定し、更新時刻を記録する(ステップS211)。したがって、これ以降は、同一のパスワードを用いた開錠要求は無効なものとして扱われるようになる。」

ウ 図3は次のものである。

エ 図4(a)は次のものである。

オ 図4(b)は次のものである。

カ 図5は次のものである。

キ 図6は次のものである。


(5)甲第5号証
甲第5号証には、以下の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、月極駐車場や自家用車や社用車などの保管場所として確保された駐車場所を、保管場所として満たすべき社会的要件を満足しながら間貸しや相互利用に供することを可能にするシステムである。」

イ 「【0016】
専属車両が出庫する際には、専属利用者は管理サーバーに再び携帯電話などで通信、保管場所IDと専属利用者であることを証明する暗証番号、及び帰庫予定時刻を自動音声案内に従いプッシュ音で管理サーバーに入力する。この時点ではディスプレーにワンタイムパスワードは表示されておらず、専属利用者であってもこれを知ることがはできない。管理サーバーでは利用状況データベースと照会を行い、入力されたIDを持つ保管場所の登録されている利用状況と矛盾がないことを確認し、有効なワンタイムパスワードを音声または電子メールで携帯電話に表示するなどで知らしめる。専属利用者は管理サーバーに入力したものと同じ帰庫予定時刻と、管理サーバーから知らされたワンタイムパスワードを機械式時間貸し駐車設備に取り付けられたワンタイムパスワード認証ユニットに入力する。この認証ユニットは入力されたパスワードが自分が内蔵するワンタイムパスワード生成器の持つパスワードと矛盾しないことを確認し、機械式時間貸し駐車設備にゲートシステムを開けさせ、専属利用者が料金を支払うことなく出庫するのを許すと同時に帰庫予定時刻を間貸し利用可能時間帯としてディスプレーに表示する。ここで専属利用者が適切な帰庫予定時刻を管理サーバと保管場所に入力してディスプレーに表示させたかはシステムでは確認していないが、別に定める人為的取り決めにより、専属利用者に保管場所の間貸しを最大限多くしようとする動機を十分に与えておくことで適正な入力を促すことができる。」

ウ 「【0027】
最良の実施例[0016]では、専属利用者が同じ帰庫予定時刻を管理サーバーと保管場所に入力してディスプレーに表示させたかどうかはシステムでは確認せず、別に定める人為的取り決めにより動機づけを与えて適正な入力を促す例を示したが、例えば本発明の発明者の未公開発明(整理番号 TAKUJU0005)による「分散型無接続ワンタイムパスワード認証による管理システム」の、タイマーパスワード認証機能を利用することもできる。即ち、専属利用者が出庫に際して出庫予定時刻をワンタイムパスワード認証ユニットに入力するとワンタイムパスワード認証ユニットはその時刻を間貸し利用者のために表示し、その時刻に有効になるためのパスワードを生成してタイマーパスワードとして記憶すると共にこのパスワードも3分間だけディスプレーに表示するように設定しておく。専属利用者がこのパスワードを管理サーバーに入力すると管理サーバーは連続演算で一致するものを求めることにより同じ時刻を得ることができる。一方ワンタイムパスワード認証ユニットは、このタイマーパスワードが有効になった時点でまだ専属利用者が帰庫しておらず、駐車場が利用されていない状態であればゲートを操作してそれ以後の入庫を禁止し、専属利用者の帰庫に備えることができる。その後に専属利用者が帰庫した時には、管理サーバーに専属利用者であることを示す暗証番号など認証させた上でその時点のパスワードを得、出庫時等と同様
にワンタイムパスワード認証ユニットに入力してゲートを開けさせることができる。なお、このタイマーパスワードは利用者に既知となったため管理サーバーは念のためにそのパスワードを一時的に禁止することが望ましい。」

3 当審の判断
(1)請求項1に係る発明の新規性進歩性について
請求項1は、上記第2のとおり、令和2年7月12日になされた本件訂正請求によって削除された。これにより、上記1の(1)及び(2)に係る取消理由は対象が存在しないものとなった。

(2)特許法第36条第6項第2号について
上記1の(3)に係る取消理由は、令和1年10月21日に提出された訂正請求書に記載された請求項3に、認証データを記憶媒体の発行コードエリアに書き込む主体として2つの異なる処理部が挙げられていることから、機械式駐車装置の出入口扉開閉制御装置の構成が不明確となっているというものであった。
しかしながら、本件訂正後の請求項3の記載においては、「前記認証データを前記記憶媒体に設けられた発行データエリアに書き込む今回利用者同一性判定第一処理部」及び「前記今回利用者同一性判定第一処理部は、該今回利用者同一性判定第一処理部が発行した前記認証データの前記記憶媒体への書き込みを実行し」のいずれに鑑みても、認証データを記憶媒体の発行データエリアに書き込む主体が「今回利用者同一性判定第一処理部」であることは明確である。よって、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。

なお、申立人は、令和2年4月9日に提出した意見書において、令和1年10月21日に提出された訂正請求書に記載された請求項3について、認証データを記憶媒体に書き込む主体として、「今回利用者同一性判定第一処理部」と「登録者認証照合処理部」との両方が記載されており、どちらが認証データを記憶媒体に書き込むのかが不明であると主張する。しかしながら、上記のとおり、令和2年7月12日になされた本件訂正後の請求項3の記載においては、認証データを記憶媒体に書き込む主体が「今回利用者同一性判定第一処理部」であることは明確である。
よって、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確でないとはいえない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由の概要
申立人が特許異議申立書に記載した申立理由のうち、当審が取消理由通知において採用しなかったものの要旨は、次のとおりである。

(1)請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と同一である。よって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明並びに甲第3号証ないし甲第5号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。よって、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(3)請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明並びに甲第3号証ないし甲第5号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。よって、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(4)請求項1の「今回の入出庫操作にだけ有効な認証データを発生させて記憶する今回利用者同一性判定第一処理部」との構成における「今回の入出庫操作にだけ有効な認証データを発生させる」との発明特定事項は、今回利用者同一性判定第一処理部が自ら発行コードを発生させることを意味しているのか、それとも利用者から入力された指紋認証データや顔認証データを受信した上でこれらのデータに基づいて認証データを発生させることも含むものであるのか明確でない。よって、請求項1及び請求項1に従属する請求項2及び3に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
また、請求項1の「今回の入出庫操作にだけ有効な認証データ」とは、明細書の段落【0049】によれば指紋認証データや顔認証データでもよいとされているが、指紋認証データや顔認証データは利用者固有の情報であり相当な年数において同じ情報であると考えられるから、ワンタイムパスワードのようにその都度異なる情報である認証データを意味するのかそれとも他の意味をも含むものなのかが不明確である。よって、請求項1及び請求項1に従属する請求項2及び3に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

また、申立人が、令和2年4月9日に提出した意見書において、甲第6号証(特開2008-217305号公報)、甲第7号証(特開2003-278421号公報)及び甲第8号証(特開2003-63656号公報)を新たに提示するとともに、令和1年10月21日に提出された訂正請求書に記載された請求項3に係る特許について述べた意見であって、当審が取消理由通知において採用しなかったものの要旨は、次のとおりである。

(5)請求項3に係る特許は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された発明、甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された発明、又は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証ないし甲第8号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたものである。よって、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

2 当審の判断
(1)請求項1に係る発明の新規性に関する申立理由について
上記1(1)のとおり、申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項1に係る発明が、甲2発明と同一である旨を主張する。
しかしながら、請求項1は、上記第2のとおり、令和2年7月12日になされた本件訂正請求によって削除された。これにより、上記異議申立理由は対象が存在しないものとなった。

(2)請求項2に係る発明の進歩性に関する申立理由について
上記1(2)のとおり、申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項2に係る発明が、甲1発明及び甲2発明並びに甲第3号証ないし甲第5号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易にすることができたものである旨を主張する。
しかしながら、請求項2は、上記第2のとおり、令和2年7月12日になされた本件訂正請求によって削除された。これにより、上記異議申立理由は対象が存在しないものとなった。

(3)請求項3に係る発明の進歩性に関する申立理由について
上記1(3)のとおり、申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項3に係る発明が、甲1発明及び甲2発明並びに甲3号証ないし甲5号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易にすることができたものである旨を主張する。
請求項3に係る発明は本件訂正請求によって訂正されているので、この点に関して、訂正後の本件発明3の進歩性を、申立人の主張に沿って甲1発明を主引用発明として検討する。

ア 対比
本件発明3と甲1発明とを対比する。

(ア)甲1発明の「安全ゲート」は、「駐車装置の入出庫口に設けられる」ものであるから、本件発明3の「出入口扉」に相当し、以下同様に、
「利用者」は、「利用者」に、
「安全ゲートの開閉を行う駆動装置に制御信号を出力」する「制御盤」は、「出入口扉を閉処理する出入口扉閉処理部」に、
「駐車装置」は、「支柱によって主構造体が構成され、主構造体の中に車両を載置するパレットが設置されて」おり、該パレットは「駆動装置」によって「移動」されるものであるから、「機械式駐車装置」に、
「駐車装置」における「安全機構」は、「制御盤」によって「安全ゲートの開閉を行う駆動装置に制御信号を出力」するものであるから、「機械式駐車装置」の「出入口扉開閉制御装置」にそれぞれ相当する。

(イ)甲1発明において、駐車装置での作業が終了すると、利用者は安全ゲートを閉める操作を行い、利用者によるコードの入力がコード入力部に受け付けられると、このコードがメモリに記憶されているコードと一致するかどうかの判定が行われ、入力されたコードがメモリに記憶されているコードと一致した場合には、メモリに記憶されたコードがリセットされ、これにより駆動装置による制御の無効化が解除され、安全ゲートが閉じる動作をするようになっているから、甲1発明の「インターロックの解除を利用者自身に限定する」点は、本件発明3の「出入口扉を開いた利用者と、前記出入口扉を閉じようとしている利用者が同一であることを判定」する点に相当する。

(ウ)甲1発明において、「入力されたコードがメモリに記憶されているコードと一致した場合には、メモリに記憶されたコードがリセットされ、これにより駆動装置による制御の無効化が解除され、安全ゲートが閉じる動作を」する点は、本件発明3の「利用者が同一であることを判定した後に前記出入口扉を閉処理する」点に相当する。

(エ)甲1発明において、「制御盤による駆動装置の制御を無効化するために用いられるコードは、無線通信機能を有する装置から無線信号を受信する受信部を用い、受信部によって受信した無線信号から得られる情報がコードとして受け付けられるようにし、無線通信機能を有する装置とは、RFID技術等を用いた非接触短距離通信が可能なカード、携帯電話等であり、駐車装置を作動させるために、利用者によるコードの入力がコード入力部に受け付けられると、コードがメモリに記憶され、これにより駆動装置による制御の無効化が解除され、安全ゲートが開く動作を」する点に関して、「カード、携帯電話等」は、今回の操作において有効なコードを記憶している記憶媒体といえる。また、甲1発明において、「利用者によるコードの入力がコード入力部に受け付けられると、このコードがメモリに記憶されているコードと一致するかどうかの判定が行われ、入力されたコードがメモリに記憶されているコードと一致した場合には、メモリに記憶されたコードがリセットされ」ることから、上記「コード」は今回の操作においてのみ有効なものといえる。甲1発明の以上の点と、本件発明3の「前記出入口扉の開動作に先立って、利用者が所持し、識別データを保持する記憶媒体を使用して行われる登録者認証操作時」「に、前記識別データとは異なる今回の入出庫操作にだけ有効な発行コードを新たな認証データとして発生させて記憶するとともに、前記認証データを前記記憶媒体に設けられた発行データエリアに書き込む今回利用者同一性判定第一処理部」「を備え」た点とは、「前記出入口扉の開動作に先立って、利用者が所持し、識別データを保持する記憶媒体を使用して行われる登録者認証操作時に、今回の入出庫操作にだけ有効な認証データを記憶する今回利用者同一性判定第一処理部」を備える点で共通する。
(オ)甲1発明において、「制御盤による駆動装置の制御を無効化するために用いられるコードは、無線通信機能を有する装置から無線信号を受信する受信部を用い、受信部によって受信した無線信号から得られる情報がコードとして受け付けられるようにし、無線通信機能を有する装置とは、RFID技術等を用いた非接触短距離通信が可能なカード、携帯電話等であり、」「駐車装置での作業が終了すると、利用者は安全ゲートを閉める操作を行い、利用者によるコードの入力がコード入力部に受け付けられると、このコードがメモリに記憶されているコードと一致するかどうかの判定が行われ、入力されたコードがメモリに記憶されているコードと一致した場合には、メモリに記憶されたコードがリセットされ、これにより駆動装置による制御の無効化が解除され、安全ゲートが閉じる動作を」する点は、今回の操作において有効なコードをメモリに記憶したものと、再入力されたコードが一致しているか否かを判定していることから、本件発明3の「前記出入口扉の閉操作に先立って、前記今回利用者同一性判定第一処理部に記憶された前記認証データと前記記憶媒体に書き込まれた前記認証データとを照合する今回利用者同一性判定第二処理部」「を備え」た点に相当する。
また、甲1発明における上記の点は、本件発明3の「前記出入口扉の閉動作に先立って、今回利用者同一性判定第二処理部は、前記今回利用者同一性判定第一処理部に記憶された前記認証データと前記記憶媒体に書き込まれた前記認証データとを照合して一致することを判定して、前記出入口扉閉処理部の前記出入口扉の閉動作を有効にする」点に相当する。

上記の(ア)ないし(オ)から、本件発明3と甲1発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「出入口扉を開いた利用者と、前記出入口扉を閉じようとしている利用者が同一であることを判定した後に前記出入口扉を閉処理する出入口扉閉処理部を備えた機械式駐車装置の出入口扉開閉制御装置において、
前記出入口扉の開動作に先立って、利用者が所持し、識別データを保持する記憶媒体を使用して行われる登録者認証操作時に、今回の入出庫操作にだけ有効な認証データを記憶する今回利用者同一性判定第一処理部と、前記出入口扉の閉操作に先立って、前記今回利用者同一性判定第一処理部に記憶された前記認証データと前記記憶媒体に書き込まれた前記認証データとを照合する今回利用者同一性判定第二処理部と、
を備え、
前記出入口扉の閉動作に先立って、今回利用者同一性判定第二処理部は、前記今回利用者同一性判定第一処理部に記憶された前記認証データと前記記憶媒体に書き込まれた前記認証データとを照合して一致することを判定して、前記出入口扉閉処理部の前記出入口扉の閉動作を有効にする、
機械式駐車装置の出入口扉開閉制御装置。」

[相違点1]
本件発明3は、「前記利用者と関連付けられた利用者関連情報を予め格納する登録者データテーブルと、前記出入口扉の開動作に先立って、利用者が所持し、識別データを保持する記憶媒体を使用して行われる登録者認証操作時に、前記利用者関連情報と前記識別データとを照合して、前記利用者が機械式駐車装置の登録者であるかを判定する登録者認証照合処理部」を備えたものであって、「前記出入口扉の開動作に先立って、前記登録者認証照合処理部は、前記識別データと前記利用者関連情報とを照合して一致することを判定する」ものであり、当該識別データは、今回の入出庫操作にだけ有効な発行コードである「認証データ」とは異なるものであるのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。

[相違点2] 認証データについて、本件発明3は、登録者認証操作時に、今回利用者同一性判定第一処理部が、認証データを発生させるとともに記憶媒体に設けられた発行データエリアに書き込むものであるのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。

イ 判断
(ア) 相違点1及び2について
甲2発明は、第1の認証操作を、ユーザーが自分専用の暗証番号をテンキー操作部に入力するか、自分専用に貸与された暗証記号媒体を操作盤に認識させることによって行い、ICカードが暗証記号媒体として用いられるものである(上記第4の2(2)を参照。)。
また、鍵システムの技術分野において、利用者によって行われる操作時に、今回の操作にだけ有効な認証データを発生させて記憶することは、甲第3号証(上記第4の2(3)を参照。)、甲第4号証(上記第4の2(4)を参照。)および甲第5号証(上記第4の2の(5)を参照。)に記載されているように、本件特許出願時において周知技術である。
しかしながら、利用者と関連付けられた利用者関連情報を予め格納する登録者データテーブルを備え、鍵の開動作に先立って、利用者が所持し、識別データを保持する記憶媒体を使用して行われる登録者認証操作時に、前記利用者関連情報と前記識別データとを照合して、前記利用者が鍵システムの登録者であるかを判定する処理部を備えるとともに、前記識別データを保持する記憶媒体に、前記識別データとは異なる認証データを、上記の今回の操作にだけ有効な認証データとして書き込む処理部を備える点については、甲第2号証ないし甲第5号証のいずれにも記載されておらず、また示唆もされていない。
よって、甲1発明において上記相違点1及び2に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではないから、本件発明3は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)特許法第36条第6項第2号に関する申立理由について
上記1(4)のとおり、申立人は、異議申立書において、訂正前の請求項1に係る発明に記載されており本件発明3も備えている「今回の入出庫操作にだけ有効な」「認証データ」を「発生させ」るという発明特定事項が、今回利用者同一性判定第一処理部が自ら発生させることを意味しているのか、それとも、利用者から入力されたデータに基づいて認証データを発生させることも含むものであるのか明確でない旨を主張する。しかしながら、利用者から入力されたデータに基づく処理においても、今回利用者同一性判定第一処理部が記憶するために、何らかのデータを発生させる必要があることは明らかである。
また、上記1(4)のとおり、申立人は、異議申立書において、訂正前の
請求項1に記載され本件発明3も備えている「今回の入出庫操作にだけ有効な」「認証データ」とは、明細書の段落【0049】によれば指紋認証データや顔認証データでもよいとされているが、指紋認証データや顔認証データは利用者固有の情報であり相当な年数において同じ情報であると考えられるから、ワンタイムパスワードのように、その都度異なる情報である認証データを意味するのかそれとも他の意味をも含むものなのかが不明確である旨を主張する。しかしながら、顔認証データ及び指紋認証データの基となる顔や指紋は確かに相当な年数において大きく変化しないものであるとはいえ、一度発生させた顔認証データや指紋認証データを複数回の入出庫操作において用いることなく、入出庫操作のたびに当該顔認証装置や指紋認証装置を使用した認証操作を行う場合には、認証操作のたびごとに新しいデータが発生しているといえる。したがって、本件発明3において、「今回の入出庫操作にだけ有効な」「認証データ」とは、その都度異なる情報である認証データを意味することが明らかである。
よって、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確でないとはいえない。

(5)請求項3に係る発明の進歩性に関する意見について
上記1(5)のとおり、申立人は、令和2年4月9日に提出した意見書において、甲第6号証(特開2008-217305号公報)、甲第7号証(特開2003-278421号公報)及び甲第8号証(特開2003-63656号公報)を新たに提示するとともに、令和1年10月21日に提出された訂正請求書に記載された請求項3に係る特許が、甲1発明及び甲第3号証に記載された事項、甲1発明及び甲第6号証に記載された事項、又は、甲1発明及び甲第3号証ないし甲第8号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたものである旨を主張する。
請求項3に係る発明は本件訂正請求によって訂正され、令和1年10月21日に提出された訂正請求書による訂正は特許法第120条の5第7項の規定により取下げられたものとみなされるので、この点に関して、訂正後の本件発明3の進歩性を、申立人の主張に沿って甲1発明を主引用発明として検討する。
本件発明3と甲1発明との一致点及び相違点については上記(3)アに示したとおりである。そして、上記(3)イに示したとおり、本件発明3の上記相違点1及び2に係る構成については、甲第3号証ないし甲5号証のいずれにも記載されておらず、また示唆もされていない。
また、本件発明3の上記相違点1及び2に係る構成については、甲第6号証(特に段落【0030】及び【0034】等に、本人認証システムを有する駐車場管理システムにおいて、ETC車載器から車載器ID番号を受信するとともに、本人認証パスワードをメール本文中に含む携帯メールを利用者の携帯端末に送信する点について記載されている。)、甲第7号証(特に段落【0053】等に、ロッカーシステムにおいて、ロッカー開錠のためのワンタイムパスワードを送信する点について記載されている。)、甲第8号証(特に段落【0078】等に、配達支援システムにおいて、集荷者がワンタイムパスワードを投入して開錠する点について記載されている。)のいずれにおいても記載も示唆もされていない。
よって、本件発明3は、甲1発明及び甲第3号証に記載された事項、甲1発明及び甲第6号証に記載された事項、又は、甲1発明及び甲第3号証ないし甲第8号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件発明1及び2に係る特許は、上記第2のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1及び2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 (削除)
【請求項2】 (削除)
【請求項3】
出入口扉を開いた利用者と、前記出入口扉を閉じようとしている利用者が同一であることを判定した後に前記出入口扉を閉処理する出入口扉閉処理部を備えた機械式駐車装置の出入口扉開閉制御装置であって、
前記出入口扉開閉制御装置は、
前記利用者と関連付けられた利用者関連情報を予め格納する登録者データテーブルと、
前記出入口扉の開動作に先立って、利用者が所持し、識別データを保持する記憶媒体を使用して行われる登録者認証操作時に、前記利用者関連情報と前記識別データとを照合して、前記利用者が機械式駐車装置の登録者であるかを判定する登録者認証照合処理部と、
前記登録者認証操作時に、前記識別データとは異なる今回の入出庫操作にだけ有効な発行コードを新たな認証データとして発生させて記憶するとともに、前記認証データを前記記憶媒体に設けられた発行データエリアに書き込む今回利用者同一性判定第一処理部と、
前記出入口扉の閉操作に先立って、前記今回利用者同一性判定第一処理部に記憶された前記認証データと前記記憶媒体に書き込まれた前記認証データとを照合する今回利用者同一性判定第二処理部と、
を備え、
前記出入口扉の開動作に先だって、前記登録者認証照合処理部は、前記識別データと前記利用者関連情報とを照合して一致することを判定するとともに、前記今回利用者同一性判定第一処理部は、該今回利用者同一性判定第一処理部が発行した前記認証データの前記記憶媒体への書き込みを実行し、
前記出入口扉の閉動作に先立って、今回利用者同一性判定第二処理部は、前記今回利用者同一性判定第一処理部に記憶された前記認証データと前記記憶媒体に書き込まれた前記認証データとを照合して一致することを判定して、前記出入口扉閉処理部の前記出入口扉の閉動作を有効にする、
機械式駐車装置の出入口扉開閉制御装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-08-17 
出願番号 特願2015-250117(P2015-250117)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (E04H)
P 1 651・ 537- YAA (E04H)
P 1 651・ 113- YAA (E04H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 住田 秀弘
袴田 知弘
登録日 2018-11-16 
登録番号 特許第6433418号(P6433418)
権利者 日精株式会社
発明の名称 機械式駐車装置の出入口扉開閉制御装置  
代理人 中島 愼一  
代理人 中島 愼一  

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