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審決分類 審判 全部申し立て 1項1号公知  C02F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C02F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C02F
管理番号 1366973
異議申立番号 異議2020-700383  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-11-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-06-03 
確定日 2020-10-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第6614425号発明「微生物製剤の投入方法、微生物製剤の自動投入装置及び廃水処理システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6614425号の請求項1?18に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6614425号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、平成30年 5月 9日(優先権主張 平成29年 5月 9日 平成30年 5月 9日)を国際出願日とする特願2018-563648号(以下、「原出願」という。)の一部を、平成31年 4月 5日に特願2019-72376号として新たな特許出願としたものであって、令和 1年11月15日にその請求項1?18に係る発明について特許権の設定登録がされ、同年12月 4日に特許掲載公報が発行され、その後、全請求項に係る特許に対して、令和 2年 6月 3日付けで、特許異議申立人 菅野 歩(以下、「申立人」という。)により甲第1?12号証を証拠方法として特許異議の申立てがされ、同年 7月21日付けで申立人より甲第13号証を添付して上申書が提出されたものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1?18に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明18」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
油脂含有廃水に含まれる油脂を分解する少なくとも1種の好気性微生物を含む好気性微生物群の種微生物を生存状態で冷蔵保管する保冷貯蔵装置と、前記種微生物を増殖して微生物製剤を製造する増殖槽と、を用い、
前記保冷貯蔵装置を用いて冷蔵保管した前記種微生物を、前記増殖槽を用いて定期的に増殖して所定の微生物製剤を製造し、製造した所定の微生物製剤を油脂含有廃水に投入する際に、
前記種微生物として個体数濃度が1×10^(7)CFU/mL?5×10^(9)CFU/mLのものを前記保冷貯蔵装置に冷蔵保存し、
前記増殖槽により前記種微生物の所定容量を原料として増殖して、容量が前記所定容量の50倍?500倍で個体数濃度が1×10^(7)CFU/mL?2×10^(10)CFU/mLの微生物製剤を製造し、製造した微生物製剤を油脂含有廃水に投入することを特徴とする微生物製剤の投入方法。
【請求項2】
前記増殖槽における前記種微生物の増殖は、前記所定容量の前記種微生物と、水と、前記種微生物を活性化させる活性化剤と、前記種微生物を増殖させる植物油からなる炭素源とを用い、前記種微生物に空気を供給し且つ対流を生じさせる処理を行うことによることを特徴とする請求項1に記載の微生物製剤の投入方法。
【請求項3】
前記活性化剤は、窒素、リン及びカリウムを含むことを特徴とする請求項2に記載の微生物製剤の投入方法。
【請求項4】
前記種微生物の増殖は、24時間に1回、毎日繰り返して行うことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の微生物製剤の投入方法。
【請求項5】
第1のタイミングで、前記増殖槽の洗浄を行う洗浄工程と、
第2のタイミングで、前記増殖槽への所定量の貯水を行う貯水工程と、
第3のタイミングで、前記増殖槽に供給された前記所定容量の前記種微生物と、前記種微生物を活性化させる活性化剤と、前記種微生物を増殖させる植物油からなる炭素源とを、一定温度に保持した状態で混合物に空気を導入すると共に撹拌混合しながら前記種微生物を所定個体数濃度の範囲に増殖させる増殖工程と、
第4のタイミングで、前記増殖工程で製造された微生物製剤を油脂含有廃水に所定量投入する投入工程と、を有することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の微生物製剤の投入方法。
【請求項6】
前記洗浄工程、前記貯水工程、前記増殖工程及び前記投入工程を24時間に1回行い、毎日繰り返すことを特徴とする請求項5に記載の微生物製剤の投入方法。
【請求項7】
前記洗浄工程、前記貯水工程、前記増殖工程及び前記投入工程を48時間に1回、24時間ずらして2つの増殖槽でそれぞれ行い、48時間毎に繰り返し、前記2つの増殖槽からの油脂含有廃水への前記微生物製剤の投入を毎日行うことを特徴とする請求項5に記載の微生物製剤の投入方法。
【請求項8】
前記増殖槽へ水道水を給水して貯水を行った後、エアレーションを所定時間行って水道水の脱塩素を行う脱塩素工程を有することを特徴とする請求項5から請求項7の何れか一項に記載の微生物製剤の投入方法。
【請求項9】
前記増殖槽は、槽全体が鉛直方向に縦長形状に形成されたものであり、
空気吐出口を有する空気吐出部を前記増殖槽の下部側に有する散気手段を用い、前記空気吐出口からの空気の吐出により前記増殖槽の内容物に対流を発生させて空気導入と共に撹拌混合を行うことを特徴とする請求項1から請求項8の何れか一項に記載の微生物製剤の投入方法。
【請求項10】
前記好気性微生物群は、ヤロウィア リポリティカ(Yarrowia lipolytica)1A1株 NITE BP-1167と、バークホルデリア アルボリス(Burkholderia arboris)SL1B1株 NITE BP-00724とを含むことを特徴とする請求項1から請求項9の何れか一項に記載の微生物製剤の投入方法。
【請求項11】
前記好気性微生物群は、カンジダ シリンドラセア(Candida cylindracea)SL1B2株 NITE BP-00714を含むことを特徴とする請求項10に記載の微生物製剤の投入方法。
【請求項12】
油脂含有廃水に含まれる油脂を分解する少なくとも1種の好気性微生物を含む好気性微生物群の種微生物を生存状態で冷蔵保管する保冷貯蔵装置と、前記種微生物を増殖して微生物製剤を製造する増殖槽と、
前記増殖槽に水を供給する給水手段と、
前記増殖槽内の内容物を撹拌混合する撹拌混合手段と、
前記増殖槽で製造された前記微生物製剤を油脂含有廃水に投入する投入手段と、
制御手段と、を備え、
前記種微生物として、前記好気性微生物群の種微生物が生存状態で保存され且つ個体数濃度が1×10^(7)CFU/mL?5×10^(9)CFU/mLのものを用い、
前記制御手段は、前記給水手段により前記増殖槽内に水を供給すると共に、別途供給された所定容量の前記種微生物と、前記種微生物を活性化させる活性化剤と、前記種微生物を増殖させる植物油からなる炭素源とを、前記撹拌混合手段により前記増殖槽内の前記内容物に対流を発生させて空気導入と共に撹拌混合して前記種微生物を所定個体数濃度の範囲に増殖させて、容量が前記所定容量の50倍?500倍で個体数濃度が1×10^(7)CFU/mL?2×10^(10)CFU/mLの微生物製剤を製造して、その後、製造した前記微生物製剤を前記投入手段により油脂含有廃水へ投入することを所定間隔で繰り返し行うことを特徴とする
微生物製剤の自動投入装置。
【請求項13】
前記制御手段は、
第1のタイミングで、前記増殖槽の洗浄を行う洗浄工程を制御する洗浄制御部と、
第2のタイミングで、前記給水手段により前記増殖槽への所定量の貯水を行う貯水工程を制御する貯水制御部と、
第3のタイミングで、前記増殖槽に別途供給された前記種微生物と前記活性化剤と前記炭素源とを、前記撹拌混合手段により撹拌混合を行いながら前記種微生物を所定個体数濃度の範囲に増殖させる増殖工程を制御する増殖制御部と、
第4のタイミングで、前記微生物製剤を前記投入手段により油脂含有廃水に投入する投入工程を制御する投入制御部と、を具備することを特徴とする請求項12に記載の微生物製剤の自動投入装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記洗浄工程、前記貯水工程、前記増殖工程及び前記投入工程を24時間に1回行い、毎日繰り返すことを特徴とする請求項13に記載の微生物製剤の自動投入装置。
【請求項15】
2つの増殖槽を備え、
前記制御手段は、前記洗浄工程、前記貯水工程、前記増殖工程及び前記投入工程を48時間に1回、24時間ずらして前記2つの増殖槽でそれぞれ行い、48時間毎に繰り返し、油脂含有廃水への前記微生物製剤の投入を前記2つの増殖槽から交代で毎日行うことを特徴とする請求項13に記載の微生物製剤の自動投入装置。
【請求項16】
前記制御手段は、前記貯水制御部が前記増殖槽への水道水を供給して貯水を行った後、所定時間のエアレーションを行って前記水道水の脱塩素を行う脱塩素工程を制御する脱塩素制御部を具備することを特徴とする請求項13から請求項15の何れか一項に記載の微生物製剤の自動投入装置。
【請求項17】
前記増殖槽が、槽全体が鉛直方向に縦長形状に形成されたものであり、
前記撹拌混合手段が、空気吐出口を有する空気吐出部を前記増殖槽の下部側に有する散気手段であり、前記空気吐出口からの空気の吐出により前記増殖槽の内容物に対流を発生させて空気導入と共に撹拌混合を行うことを特徴とする請求項13から請求項16の何れか一項に記載の微生物製剤の自動投入装置。
【請求項18】
請求項12から請求項17の何れか一項に記載の微生物製剤の自動投入装置を備えることを特徴とする廃水処理システム。」

第3 特許異議申立理由の概要
1 各甲号証
甲第1号証:堀 克敏編著,「排水処理技術の低コスト・高効率・高性能化」,Electronic Journal Archives,No.1162,2014年10月27日,(株)電子ジャーナル,p.13-35
甲第2号証:「<自動投入装置概略>」が記載された資料
甲第3号証:Hiroshi Matsuoka et al.,「Symbiotic effects of a lipase-secreting bacterium,Burkholderia arboris SL1B1, and a glycerol-assimilating yeast, Candida cylindracea SL1B2, on triacylglycerol degradation」,Journal of Bioscience and Bioengineering, Vol.107 No.4,2009年,p.401-408
甲第4号証:2016年 9月 7日-9月29日の件名「名大テクノフェアご来場のお礼」、「RE:名大テクノフェアご来場のお礼」、「Re:訪問のご相談」の電子メールの写し
甲第5号証:井上智実,「油汚染環境を修復する微生物の探索と微生物製剤の開発」
甲第6号証:研究テーマの紹介 平成21年成果発表会要旨集,石川県工業試験場,石川県工業試験場九谷焼技術センターのウエブページの写し
甲第7号証:中村 洋介ら,「バイオオーグメンテーション用微生物製剤の開発」,住友化学 2003-II,p.19-25
甲第8号証:研究開発論文 2003年度 住友化学技術誌2003-II(2003年11月28日発行) 住友化学技術誌2003-I(2003年 5月30日発行)のウエブページの写し
甲第9号証:今井 正ら,「テナガエビ幼生の生残と脱皮に及ぼすチオ硫酸ナトリウムの影響」,水産増殖(Aquacult.Sci.),Vol.63 No.3,2015年,p.349-351
甲第10号証:堀 克敏監著,「低コスト・ハイパフォーマンス技術による水処理革命」,初版第1刷,2013年12月11日,株式会社コロナ社,p.16-17
甲第11号証:特開2013-146689号公報
甲第12号証:特願2017-093364号の優先権証明書
甲第13号証:平成21年度 研究・指導成果発表会 新製品開発事例発表会 PROGRAM,石川県工業試験場 企画指導部

2 甲第1号証に基づく特許異議申立理由
(1)本件発明1について
本件発明1と甲第1号証に記載された発明との間には実質的な相違点が存在しないから、本件発明1は甲第1号証に記載された発明である。
また、本件発明1と甲第1号証に記載された発明との間に実質的な相違点が存在するとしても、前記相違点は、甲第5、7号証に記載される本件特許の原出願の優先日当時の技術常識及び甲第3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得る事項であり、本件発明1による効果は当業者が予測し得る範囲のものであるから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証に記載された事項及び本件特許の原出願の優先日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件発明2?7について
本件発明2?7は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証に記載された事項及び本件特許の原出願の優先日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件発明8について
本件発明8は、甲第1号証に記載された発明、甲第3、9号証に記載された事項及び本件特許の原出願の優先日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件発明9について
本件発明9は、甲第1号証に記載された発明、甲第3、9、10号証に記載された事項及び本件特許の原出願の優先日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件発明10及び11について
本件発明10及び11は、甲第1号証に記載された発明、甲第3、9?11号証に記載された事項及び本件特許の原出願の優先日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)本件発明12?18について
本件発明12?18は、本件発明1、5?9に記載の投入方法を単に装置として記載したに過ぎず、本件発明12?18は、甲第1号証に記載された発明、甲第3、9?11号証に記載された事項及び本件特許の原出願の優先日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 甲第2号証に基づく特許異議申立理由
(1)本件発明1について
甲第2号証に記載された発明は、本件特許の原出願の優先権主張の基礎出願前に秘密保持義務の対象とはならない公然知られた発明であり、本件発明1と甲第2号証に記載された発明との間には実質的な相違点が存在しないから、本件発明1は、本件特許の原出願の優先権主張の基礎出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明である。
また、本件発明1と甲第2号証に記載された発明との間に実質的な相違点が存在するとしても、前記相違点は、甲第1、3、5号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得る事項であり、本件発明1による効果は当業者が予測し得る範囲のものであるから、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明、甲第1、3、5号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件発明2?18について
本件発明2?18は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3、5、9?11号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 実施可能要件違反に基づく特許異議申立理由
本件発明1の発明特定事項及び本件特許明細書の【0030】によれば、本件発明は、「1×10^(7)CFU/mL?5×10^(9)CFU/mL」で保冷貯蔵装置に冷蔵保存され得るものであり、かつ短時間で「所定容量の50倍?500倍で個体数濃度が1×10^(7)CFU/mL?2×10^(10)CFU/mLの微生物製剤」にまで増殖できるという特定のパラメータを達成し得る微生物を用いる点に特徴がある。
他方、本件特許明細書を精査しても、特定の微生物が前記のパラメータを達成し得たことは何ら示されておらず、このようなパラメータを達成し得る微生物が存在するのかどうか、存在するとすればどの微生物であるのか、不明である。
仮に、甲第1号証に、本件特許発明のような微生物の投入方法や自動投入装置に適していることが記載されており、本件発明10及び11に特定される、ヤロウィア リポリティカ、バークホルデリア アルボリス、カンジダ シリンドラセアの特定の組み合わせについては実施可能であるとしても、そのような特定のない本件発明1?10及び12?18は、実施可能であるということはできないから、本件特許は実施可能要件を充足しない。

5 国内優先権主張について
本件特許に係る出願は、特願2017-93364号を基礎出願とする国内優先権主張(優先日:平成29年 5月 9日)を行っているが、甲第12号証によれば、前記基礎出願の明細書、特許請求の範囲においては、増殖前の種微生物の個体数濃度は「10^(6)個/mL?10^(9)個/mL」と記載され、増殖後の種微生物の個体数濃度は「10^(8)個/mL?10^(9)個/mL」と記載され、増殖工程では種微生物の「50倍?200倍の容量」に増殖させることが記載されている。
ところが、前記基礎出願の明細書、特許請求の範囲(甲第12号証)には、本件発明1の発明特定事項である、種微生物の「個体数濃度が1×10^(7)CFU/mL?5×10^(9)CFU/mL」であることや、増殖後の種微生物の「個体数濃度が1×10^(7)CFU/mL?2×10^(10)CFU/mL」であることや、増殖後の容量を「所定容量の50倍?500倍」とすることは記載されていないから、前記基礎出願に基づく国内優先権の主張は認められない。
このため、本件発明の新規性進歩性の判断は、原出願の出願日であり、かつ他の優先権主張の優先日である平成30年 5月 9日を基準として行われるべきであることを念のため付言する。

第4 当審の判断
1 甲第1号証に基づく特許異議申立理由について
(1)各甲号証の記載事項
ア 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明
(ア)本件特許の原出願の優先日前に頒布された甲第1号証には以下(1a)?(1d)の記載がある。
(1a)「

」(27頁)

(1b)「

」(29頁)

(1c)「

」(30頁)

(1d)「

」(31頁)

(イ)前記(ア)(1b)?(1d)によれば、甲第1号証には「新微生物分解プロセス」が記載されており、前記「新微生物分解プロセス」は、動植物油を分解する共生微生物の複合剤であり、液体もしくは顆粒の形状の油脂分解微生物製剤を、水質連動型微生物自動増幅投入装置内に補充するものであり、前記水質連動型微生物自動増幅投入装置は、微生物製剤を種として、油脂分解微生物を100倍に増幅させるものであって、微生物製剤使用量の大幅削減、全自動なので運転管理が容易、という利点を有するものであり、増幅した油脂分解微生物を、油分解(前処理)槽に水質を検知して投入するものであり、このとき、油脂分解微生物を優先化させるために、毎日1回に投入する(当審注:「毎日1回に投入する」は「毎日1回で投入する」の誤記といえる。)ものであり、さらに、油脂分解微生物が好気性菌のため曝気ブロワによる曝気が必要であるものである。
そして、前記「新微生物分解プロセス」のためのシステムは、省スペースであり、油脂分解微生物が好気性菌のため曝気ブロワが必要であり、運転管理は、条件を設定するだけでよく、1日1回程度でよいものである。

(ウ)前記(イ)によれば、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「新微生物分解プロセスであって、
動植物油を分解する共生微生物の複合剤であり、液体もしくは顆粒の形状の油脂分解微生物製剤を、水質連動型微生物自動増幅投入装置内に補充するものであり、
前記水質連動型微生物自動増幅投入装置は、微生物製剤を種として、油脂分解微生物を100倍に増幅させるものであって、微生物製剤使用量の大幅削減、全自動なので運転管理が容易、という利点を有するものであり、
増幅した油脂分解微生物を、水質を検知して油分解(前処理)槽に投入するものであり、このとき、油脂分解微生物を優先化させるために、毎日1回で投入するものであり、さらに、油脂分解微生物が好気性菌のため曝気ブロワによる曝気が必要である、新微生物分解プロセス。」(以下、「甲1発明」という。)

「水質連動型微生物自動増幅投入装置であって、
動植物油を分解する共生微生物の複合剤であり、液体もしくは顆粒の形状の油脂分解微生物製剤が補充され、
微生物製剤を種として、油脂分解微生物を100倍に増幅させるものであって、微生物製剤使用量の大幅削減、全自動なので運転管理が容易、という利点を有し、
増幅した油脂分解微生物を、水質を検知して油分解(前処理)槽に投入するものであり、このとき、油脂分解微生物を優先化させるために、毎日1回で投入するものであり、さらに、油脂分解微生物が好気性菌のため曝気ブロワによる曝気が必要である、水質連動型微生物自動増幅投入装置。」(以下、「甲1’発明」という。)

「甲1’発明の水質連動型微生物自動増幅投入装置を備える、新微生物分解プロセスのための新システムであって、
前記新システムは、省スペースであり、曝気ブロワが必要であり、運転管理は、条件を設定するだけでよく、1日1回程度でよいものである、新システム。」(以下、「甲1”発明」という。)

イ 甲第3号証の記載事項
本件特許の原出願の優先日前に頒布された甲第3号証には以下(3a)の記載がある。
(3a)「

」(405頁)
(FIG.4の説明文の当審訳:発酵槽における、B.arboris SL1B1の純粋培養(A、C、E)と、B.arboris SL1B1とC.cylindracea SL1B2の混合培養(B、D、F)によるキャノーラ油の分解の時間プロファイルである。グラフAとBでは、白抜きのひし形と白抜きの四角は、それぞれB.arboris SL1B1とC.cylindracera SL1B2のCFU値を示す。グラフC及びDでは、白抜きの三角、黒塗りの四角、黒塗りの丸は、キャノーラ油中及びフリーフォーム中のアンモニウムイオン、グリセロール、および総脂肪酸の濃度を示す。グラフEおよびFは、培養上清(白抜きの丸)のリパーゼ活性を示す。すべてのデータは、代表的な培養からの同じサンプルの3つの独立した測定から得られた平均(記号)±SD(エラーバー)である。培養を3回繰り返し、それぞれの培養から同様の時間プロファイルを得ることができた。)

ウ 甲第5号証の記載事項
本件特許の原出願の優先日前に頒布された甲第5号証には以下(5a)?(5b)の記載がある。
(5a)「3.4 保存温度の検討結果
保存温度が生残率に与える影響を図5に示す。微生物製剤を冷蔵(5℃)、冷凍(-20℃)で8週間保存した結果,室温(20℃)保存に比べ,生残率がそれぞれ5倍,40倍増大した。」(最終頁19行?22行)

(5b)「

」(最終頁)

エ 甲第7号証の記載事項
本件特許の原出願の優先日前に頒布された甲第7号証には以下(7a)の記載がある。
(7a)「硝化細菌製剤の残効性は、主として保存温度に依存する。5℃で冷蔵保存すれば、硝化細菌製剤は1ケ月後も90%を上回る硝化活性を保持する(第6図)。」(22頁左欄下から4行?最終行)

オ 甲第9号証の記載事項
本件特許の原出願の優先日前に頒布された甲第9号証には以下(9a)の記載がある。
(9a)「水道水に含まれている残留塩素は,低濃度でも水生生物には有害な物質であり(金子1996),水道水を淡水生物の飼育に使用する場合には残留塩素の除去(脱塩素)が必要である。脱塩素には曝気,活性炭吸着,薬品による還元があり(金子1985),なかでもチオ硫酸ナトリウムによる脱塩素は広く使用されている。」(349頁左欄下から11行?下から6行)

カ 甲第10号証の記載事項
本件特許の原出願の優先日前に頒布された甲第10号証には以下(10a)の記載がある(当審注:「…」は記載の省略を表す。以下、同様である)。
(10a)「1.4.1 標準活性汚泥法
〔1〕工程
標準活性汚泥法の工程図を図1.2に示す。…ばっ気槽の底部に設けられた各種散気管から空気の微細な泡をブロアーにより注入し,MLへの酸素の供給と気泡によるかくはんが行われる。」(16頁6行?14行)

キ 甲第11号証の記載事項
本件特許の原出願の優先日前に頒布された甲第11号証には以下(11a)の記載がある。
(11a)「【0013】
本発明では遊離脂肪酸の資化能に優れるヤロウィア リポリティカを使用することによって、油脂の分解によって生成する遊離脂肪酸を除去する。或いは遊離脂肪酸の蓄積を防止し、油脂の分解を促す。…
【0014】
いずれの条件を採用する場合であっても、各種リパーゼを使用可能であり、例えば、市販のリパーゼ製剤を利用すればよい。…一方、リパーゼ分泌能を有する微生物としては、バチルス(Bacillus)属、バークホルデリア(Burkholderia)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、ロドバクター(Rhodobacter)属、ラルストニア(Ralstonia)属、アシドボラックス(Acidovorax)属等を用いることができる。中でも、バークホルデリア属微生物が好ましい。バークホルデリア属微生物の具体例はバークホルデリア アルボリスSL1B1株である。当該菌株は受託番号NITE P-724で独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託されており、所定の手続を経ることによって分譲を受けることができる。当該菌株は油脂を高率に分解する。しかも、弱酸性条件下においても増殖及び油脂分解が可能である。

【0018】
後述の実施例に示すように、本発明者らの検討の結果、遊離脂肪酸の資化能に優れるとして同定されたヤロウィア リポリティカがリパーゼを分泌しないことが判明した。この事実に基づき、本発明の一態様では、リパーゼを分泌しないという特性を備えたヤロウィア リポリティカを使用する。…バークホルデリア アルボリスと共生可能なヤロウィア リポリティカの具体例は、後述の実施例に示した1A1株、8A1株、8D1株、24B2株である。中でも、バークホルデリア アルボリスSL1B1株との併用効果に優れた1A1株が好ましい。当該菌株は以下の通り、所定の寄託機関に寄託されている。
寄託機関:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)
寄託日:2011年11月25日
受託番号:NITE BP-1167」

(2)本件発明1について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「油脂分解微生物」は好気性菌であるから、本件発明1における「油脂含有廃水に含まれる油脂を分解する少なくとも1種の好気性微生物」に相当し、甲1発明における「油脂分解微生物製剤」は、本件発明1における「油脂含有廃水に含まれる油脂を分解する少なくとも1種の好気性微生物を含む好気性微生物群の種微生物」に相当し、甲1発明において「油分解(前処理)槽」に投入される「増幅した油脂分解微生物」は、本件発明1における「微生物製剤」に相当し、甲1発明において、「動植物油を分解する共生微生物の複合剤であり、液体もしくは顆粒の形状の油脂分解微生物製剤」が補充されて、「微生物製剤を種として、油脂分解微生物を100倍に増幅させる」「水質連動型微生物自動増幅投入装置」は、本件発明1における、「油脂含有廃水に含まれる油脂を分解する少なくとも1種の好気性微生物を含む好気性微生物群の種微生物」「を増殖して微生物製剤を製造する増殖槽」に相当する。
また、甲1発明において、「水質連動型微生物自動増幅投入装置」により「増幅した油脂分解微生物を、油脂分解微生物を優先化させるために、油分解(前処理)槽に毎日1回で投入する」ことは、本件発明1において、「前記種微生物を、前記増殖槽を用いて」「増殖して所定の微生物製剤を製造し、製造した所定の微生物製剤を油脂含有廃水に投入する」ことに相当し、甲1発明における「新微生物分解プロセス」は、本件発明1における「微生物製剤の投入方法」に相当する。

(イ)そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「油脂含有廃水に含まれる油脂を分解する少なくとも1種の好気性微生物を含む好気性微生物群の種微生物を増殖して微生物製剤を製造する増殖槽を用い、
前記種微生物を、前記増殖槽を用いて増殖して所定の微生物製剤を製造し、製造した所定の微生物製剤を油脂含有廃水に投入する、微生物製剤の投入方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点1-1:本件発明1は、「微生物製剤の投入方法」が、「種微生物を生存状態で冷蔵保管する保冷貯蔵装置」「を用い」る、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明には「保冷貯蔵装置を用い」ることは記載されていない点。

・相違点1-2:本件発明1は、「微生物製剤の投入方法」が、「種微生物」を「定期的に増殖して所定の微生物製剤を製造し、製造した所定の微生物製剤を油脂含有廃水に投入する」、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、「微生物製剤」を水質を検知して油分解(前処理)槽に投入するものであり、このとき、「油脂含有廃水に含まれる油脂を分解する少なくとも1種の好気性微生物」を優先化させるために、毎日1回で投入するものである点。

・相違点1-3:本件発明1は、「微生物製剤の投入方法」が、「前記種微生物として個体数濃度が1×10^(7)CFU/mL?5×10^(9)CFU/mLのものを前記保冷貯蔵装置に冷蔵保存し、前記増殖槽により前記種微生物の所定容量を原料として増殖して、容量が前記所定容量の50倍?500倍で個体数濃度が1×10^(7)CFU/mL?2×10^(10)CFU/mLの微生物製剤を製造」する、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明には前記発明特定事項が記載されていない点。

イ 判断
(ア)事案に鑑み、前記ア(イ)の相違点1-2から検討すると、本件特許明細書には、以下(a)、(b)の記載がある。
(a)「【0047】
本発明の自動投入装置は、必要な微生物製剤の例えば1/500?1/50の容量の種微生物を用い、これを増殖させて所定容量の微生物製剤を毎日製造することができるものであり、増殖の準備工程から増殖工程、更には投入工程を24時間サイクルで行うことができるようにしたものである。」

(b)「【0083】
以上説明した実施形態では、増殖槽20の洗浄(ステップS4)、増殖槽20への貯水(ステップS6)、増殖槽20の脱塩素(ステップS7)、増殖槽20への製剤成分の供給(ステップS9)、種微生物の増殖(ステップS10)及び微生物製剤の投入(ステップS12)の各工程を24時間に1回それぞれ行い、全工程を24時間で完了するようにプログラムされている。微生物製剤の投入のタイミングの時刻を決定することにより、それぞれのタイミングが全て所定の時刻に設定される。」

(イ)そして、前記(ア)(a)、(b)によれば、前記相違点1-2に係る、「種微生物」を「定期的に増殖して所定の微生物製剤を製造し、製造した所定の微生物製剤を油脂含有廃水に投入する」、との発明特定事項は、増殖の準備工程から増殖工程、更には投入工程を例えば24時間といった所定のサイクルで行うものをいうものといえる。

(ウ)これに対して、甲第1号証の記載からは、甲1発明が、増殖の準備工程から増殖工程、更には投入工程を所定のサイクルで行うものであるか否かは明らかでなく、また、甲1発明は、「微生物製剤」を、水質を検知して油分解(前処理)槽に投入するものであって、投入工程を所定のサイクルで行うものとはいえない。
そして、そのような甲1発明が、「油脂含有廃水に含まれる油脂を分解する少なくとも1種の好気性微生物」を優先化させるために、「微生物製剤」を毎日1回で投入するものであるとしても、増殖の準備工程から増殖工程、更には投入工程を所定のサイクルで行うものとはいえない。
このことと、前記(イ)によれば、甲1発明が、「種微生物」を「定期的に増殖して所定の微生物製剤を製造し、製造した所定の微生物製剤を油脂含有廃水に投入する」ものとはいえない。

(エ)前記(ウ)によれば、甲1発明は、前記相違点1-2に係る本件発明1の発明特定事項を有するものではないから、前記相違点1-2は実質的な相違点であるので、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1が甲1発明であるとはいえない。

(オ)更に、前記相違点1-2の想到容易性について検討すると、甲1発明が、「油脂含有廃水に含まれる油脂を分解する少なくとも1種の好気性微生物」を優先化させるために、「微生物製剤」を毎日1回で投入するものであるとしても、増殖の準備工程から増殖工程、更には投入工程を所定のサイクルで行うものとはいえないことは、前記(ウ)に記載のとおりであり、また、「微生物製剤」を水質を検知して油分解(前処理)槽に投入する甲1発明は、そもそも増殖の準備工程から増殖工程、更には投入工程を所定のサイクルで行うことを想定したものとはいえないから、甲1発明において、「種微生物」を「定期的に増殖して所定の微生物製剤を製造し、製造した所定の微生物製剤を油脂含有廃水に投入する」ものとする動機付けは存在しない。
更に、前記(1)ウ(5a)、(5b)、同エ(7a)の甲第5、7号証の記載によれば、微生物の冷蔵保存を行うことは、本件特許の原出願の優先日当時の技術常識といえ、また、同(イ)(3a)の甲第3号証の記載によれば、種菌の個体数濃度を1×10^(7)CFU/mL?5×10^(9)CFU/mLとし、それを増殖して個体数濃度を1×10^(7)CFU/mL?2×10^(10)CFU/mLの範囲とすることは、当業者が適宜なし得る範囲のものといえるが、「微生物製剤の投入方法」において、「種微生物」を「定期的に増殖して所定の微生物製剤を製造し、製造した所定の微生物製剤を油脂含有廃水に投入する」することは、甲第3、5、7号証のいずれにも記載も示唆もされるものではない。
そうすると、甲1発明において、「微生物製剤の投入方法」を、「種微生物」を「定期的に増殖して所定の微生物製剤を製造し、製造した所定の微生物製剤を油脂含有廃水に投入する」、との前記相違点1-2に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることを、甲第3号証に記載された事項及び本件特許の原出願の優先日当時の技術常識に基づいて当業者が容易になし得るとはいえない。
したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1を、甲1発明、甲第3号証に記載された事項及び本件特許の原出願の優先日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)本件発明2?11について
本件発明2?11は本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであって、本件発明2?11と甲1発明とを対比した場合、いずれの場合であっても、少なくとも前記相違点1-2の点で相違する。
そして、「微生物製剤の投入方法」において、「種微生物」を「定期的に増殖して所定の微生物製剤を製造し、製造した所定の微生物製剤を油脂含有廃水に投入する」することは、甲第9?11号証のいずれにも記載も示唆もされるものではないから、前記(2)イ(オ)に記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明2?11を、甲1発明、甲第3、9?11号証に記載された事項及び本件特許の原出願の優先日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(4)本件発明12について
(ア)前記(2)ア(ア)と同様にして本件発明12と甲1’発明とを対比すると、本件発明12と甲1’発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
相違点1-4:本件発明12は、「微生物製剤の自動投入装置」が、「制御手段」「を備え」、「前記制御手段は、給水手段により増殖槽内に水を供給すると共に、別途供給された所定容量の種微生物と、前記種微生物を活性化させる活性化剤と、前記種微生物を増殖させる植物油からなる炭素源とを、撹拌混合手段により前記増殖槽内の内容物に対流を発生させて空気導入と共に撹拌混合して前記種微生物を所定個体数濃度の範囲に増殖させて、容量が所定容量の50倍?500倍で個体数濃度が1×10^(7)CFU/mL?2×10^(10)CFU/mLの微生物製剤を製造して、その後、製造した前記微生物製剤を投入手段により油脂含有廃水へ投入することを所定間隔で繰り返し行う」、との発明特定事項を有するのに対して、甲1’発明は、「微生物製剤」を、水質を検知して油分解(前処理)槽に投入するものであり、「油脂含有廃水に含まれる油脂を分解する少なくとも1種の好気性微生物」を優先化させるために、毎日1回で投入するものである点。

(イ)そこで、前記(ア)の相違点1-4について検討すると、前記相違点1-4に係る発明特定事項は、「種微生物を所定個体数濃度の範囲に増殖させて」「微生物製剤を製造して、その後、製造した前記微生物製剤を投入手段により油脂含有廃水へ投入することを所定間隔で繰り返し行う」ことを含むものであり、前記(2)イ(イ)に記載したのと同様の理由により、増殖の準備工程から増殖工程、更には投入工程を例えば24時間といった所定のサイクルで行うものをいうものといえる。
すると、前記(2)イ(ウ)に記載したのと同様の理由により、甲1’発明が、「制御手段」「を備え」、「前記制御手段は、前記給水手段により前記増殖槽内に水を供給すると共に、別途供給された所定容量の前記種微生物と、前記種微生物を活性化させる活性化剤と、前記種微生物を増殖させる植物油からなる炭素源とを、前記撹拌混合手段により前記増殖槽内の前記内容物に対流を発生させて空気導入と共に撹拌混合して前記種微生物を所定個体数濃度の範囲に増殖させて、容量が前記所定容量の50倍?500倍で個体数濃度が1×10^(7)CFU/mL?2×10^(10)CFU/mLの微生物製剤を製造して、その後、製造した前記微生物製剤を前記投入手段により油脂含有廃水へ投入することを所定間隔で繰り返し行う」ものであるとはいえない。
更に、前記相違点1-4の想到容易性について検討すると、前記(2)イ(オ)、(3)に記載したのと同様の理由により、甲1’発明において、「微生物製剤の自動投入装置」を、「制御手段」「を備え」、「前記制御手段は、前記給水手段により前記増殖槽内に水を供給すると共に、別途供給された所定容量の前記種微生物と、前記種微生物を活性化させる活性化剤と、前記種微生物を増殖させる植物油からなる炭素源とを、前記撹拌混合手段により前記増殖槽内の前記内容物に対流を発生させて空気導入と共に撹拌混合して前記種微生物を所定個体数濃度の範囲に増殖させて、容量が前記所定容量の50倍?500倍で個体数濃度が1×10^(7)CFU/mL?2×10^(10)CFU/mLの微生物製剤を製造して、その後、製造した前記微生物製剤を前記投入手段により油脂含有廃水へ投入することを所定間隔で繰り返し行う」、との前記相違点1-4に係る本件発明12の発明特定事項を有するものとすることを、甲第3、9?11号証に記載された事項及び本件特許の原出願の優先日当時の技術常識に基づいて当業者が容易になし得るとはいえない。
したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明12を、甲1’発明、甲第3、9?11号証に記載された事項及び本件特許の原出願の優先日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(5)本件発明13?17について
本件発明13?17は本件発明12を直接的又は間接的に引用するものであって、本件発明13?17と甲1’発明とを対比した場合、いずれの場合であっても、少なくとも前記相違点1-4の点で相違する。
そうすると、前記(4)(イ)に記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明13?17を、甲1’発明、甲第3、9?11号証に記載された事項及び本件特許の原出願の優先日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(6)本件発明18について
(ア)前記(2)ア(ア)と同様にして本件発明18と甲1”発明とを対比すると、本件発明18と甲1”発明とは、少なくとも、以下の点で相違する。
相違点1-5:本件発明18は、「廃水処理システム」が、「請求項12から請求項17の何れか一項に記載の微生物製剤の自動投入装置を備える」、との発明特定事項を有するのに対して、甲1”発明は、「甲1’発明の水質連動型微生物自動増幅投入装置を備える」点。

(イ)そして、本件発明12?17を、甲1’発明、甲第3、9?11号証に記載された事項及び本件特許の原出願の優先日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないことは、前記(4)(イ)及び(5)に記載したとおりであるので、同様の理由により、本件発明18も、甲1”発明、甲第3、9?11号証に記載された事項及び本件特許の原出願の優先日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(7)小括
したがって、前記第3の2(1)?(6)の特許異議申立理由はいずれも理由がない。

2 甲第2号証に基づく特許異議申立理由について
(1)甲第2号証の公知性について
(ア)申立人は、甲第2号証は、名古屋大学と某企業との間における2016年10月 4日の微生物製剤の自動投入装置の事業化のための会議において、名古屋大学側が企業側に交付した資料であり、同日の会議が開催されるまでに名古屋大学と企業側との間で送受信された電子メールである甲第4号証によれば、名古屋大学と企業側との間で同日の会議までに秘密保持契約は締結されておらず、それを踏まえて名古屋大学が甲第2号証を企業側に提示したことがわかるから、秘密保持契約を締結することなく提示された甲第2号証に記載の発明は、本件特許の出願前に、秘密保持義務の対象とはならない公然知られた発明であることがわかる旨(特許異議申立書28頁17行?27行)、特許異議申立書28頁下から14行目記載の「2016年10月 4日の微生物製剤の自動投入装置の事業化のための会議」とは、同日、名古屋大学工学部1号館710号室にて堀克敏氏が開催した、「装置概略および仕様」などを議題とする会議を指し、同会議が開催されたことは甲第4号証の記載から明らかであり、堀克敏氏作成の甲第2号証の表題は「<自動投入装置概略>」であり、その右上には「2016/10/4 名古屋大学」との記載があり、通常、資料に記載される日付と場所は、その発行日と発行場所か、またはその発表日と発表場所を表し、表題はその内容を表すところ、甲第2号証記載の日付・場所は、前記会議の日時・場所と一致し、かつ、表題が「装置概略」であるという点で、当該会議の議題とも一致しているうえ、甲第2号証の作成者である堀克敏氏が前記会議の主催者であり、偶然これらが一致するとは考え難く、甲第2号証は、前記会議にて発行・発表されたものということができる旨を主張している。

(イ)以下、前記(ア)の主張について検討すると、甲第4号証には、以下の記載がある。
「Date:2016/09/29 13:14」(1頁3行)
「<会議詳細>
1.日時:10/4(火)14:00-
2.場所:名古屋大学工学部1号館710号室
3.議題:1)名刺交換など
2)事業化に向けた考え方
3)装置概略及び仕様
4)その他」(1頁18行?24行)
「NDAが締結できない状況下では,(黒塗)で実物をお見せしたり図面をお見せしての説明などできかねず、従いまして(黒塗)への訪問は不必要となり名古屋大学でビジネスを中心とした会議を開催させて頂きたく、ご理解をよろしくお願いいたします。また、NDAが締結できない状況下では御社からの情報に関しても必ずしも守秘義務を負いかねる部分が生じますことのご理解をよろしくお願いいたします。
当日は14:00より、弊学の堀研究室におきまして御社からの最初のメールでの記載がありました様に、顔合わせ、および弊学における事業化に向けた考え方を中心に議論させて頂きますのでよろしくお願いいたします。
また、弊学における事業化の一環として研究成果を装置に落とし込んだ装置の制作に関しても議論させて頂きたいと思いますが、今回、NDAの締結がなく非常に簡単な装置概略及び仕様書に基づいた説明にならざるを得ませんが簡単な説明をさせて頂きますのでよろしくお願いいたします。
弊学としましては、それに基づき、御社に装置を作成依頼した場合の概算での見積もりを頂ければ、幸甚と考えております。」(2頁21行?35行)(当審注:「(黒塗)」は申立人が黒塗りにした部分である。)
「堀 克敏,博士(工学)名古屋大学 大学院工学研究科 化学・生物工学専攻 教授」(3頁10?11行)
「また,装置そのものの設計や技術についてはフジミックスも交えますが,ビジネスにはフジミックスは関与しませんので,」(6頁11?12行)
「私の部署(研究所)のバイオ関連のメンバーも大変興味を持っているので,」(8頁20行)

(ウ)そして、甲第4号証の前記(イ)の記載によれば、本件特許の原出願の優先日前の2016年10月 4日に名古屋大学で堀克敏氏と某企業との間で議題を「装置概略及び仕様」などとする「会議」が開催されたこと、前記「会議」の議題となる「装置」について「NDA」が締結されないこと、「装置」の設計や技術について「フジミックス」を交えること、前記「会議」における「装置」が「バイオ関連」の装置であることが推認され、また、本件発明の発明者が所属する企業は、「株式会社フジミックス」と認められる。
ところが、甲第4号証には、前記「会議」の議題とされた「装置」が、甲第2号証に記載される微生物製剤の「自動投入装置」であることは記載も示唆もされていない。
すると、仮に、2016年10月 4日に名古屋大学で堀克敏氏と某企業との間で議題を「装置概略及び仕様」などとする「会議」が開催され、前記「会議」の議題となる「装置」について「NDA」が締結されず、前記「装置」の設計や技術について「フジミックス」を交えるものであり、前記「会議」における「装置」が「バイオ関連」の装置であり、本件発明の発明者が所属する企業が「株式会社フジミックス」と認められるとしても、これらのことから、前記「会議」で議題とされた「装置」が甲第2号証に記載される「自動投入装置」であるということはできない。
更に、前記「会議」で議題とされた「装置」が甲第2号証に記載される「自動投入装置」であったとしても、甲第4号証には、甲第2号証が堀克敏氏により作成され、前記「会議」において某企業側に交付されたことが記載されるものではないから、甲第2号証の「<自動投入装置概略>」、「2016/10/4 名古屋大学」といった記載事項に関わらず、甲第4号証の記載事項に基づいて、甲第2号証が堀克敏氏により作成されたものであり、前記「会議」において某企業側に交付された資料であるということはできないので、甲第2号証に記載された発明が、本件特許の原出願の優先権主張の基礎出願前に公然知られたものとなったものとはいえない。
したがって、申立人の前記(ア)の主張はいずれも採用できない。

(エ)前記(ウ)によれば、本件発明1が、本件特許の原出願の優先権主張の基礎出願前に、日本国内又は外国において公然知られた発明であるとはいえない。

(オ)そして、甲第2号証に記載された発明が、本件特許の原出願の優先権主張の基礎出願前に公然知られたものとなったものとはいえないのであれば、本件発明1が、甲第2号証に記載された発明、甲第1、3、5号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、本件発明2?18が、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3、5、9?11号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載された発明
(ア)甲第2号証に記載された発明が、本件特許の原出願の優先権主張の基礎出願前に公然知られたものとなったものとはいえないことは、前記(1)(ウ)に記載のとおりであるが、仮に、甲第2号証に記載された発明が、本件特許の原出願の優先権主張の基礎出願前に公然知られたものとなったものとして、以下、本件発明の新規性進歩性について検討すると、甲第2号証には以下(2a)の記載がある。
(2a)「



(イ)前記(ア)(2a)によれば、甲第2号証には「自動投入装置フロー」が記載されており、前記「自動投入装置フロー」における「自動投入装置」は、微生物製剤を種として微生物を約100倍に増殖させ、現場排水に自動添加する装置であり、装置内に薬剤を定期的に補充するだけで、全ての工程を全自動で行うものであり、排水量が100m^(3)/日以下の場合、ブロアー及び散気管により曝気が行われる培養槽(増殖槽)に、冷蔵庫から微生物製剤800ml/日が供給され、更に活性化剤300ml/日、栄養剤240ml/日が供給されて、前記培養槽(増殖槽)で増殖した微生物が、油分解槽に1日1回100Lが定期投入されるものである。

(ウ)前記(イ)によれば、甲第2号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「自動投入装置フローであって、
前記自動投入装置フローにおける自動投入装置は、微生物製剤を種として微生物を約100倍に増殖させ、現場排水に自動添加する装置であり、装置内に薬剤を定期的に補充するだけで、全ての工程を全自動で行うものであり、
排水量が100m^(3)/日以下の場合、ブロアー及び散気管により曝気が行われる培養槽(増殖槽)に、冷蔵庫から微生物製剤800ml/日が供給され、更に活性化剤300ml/日、栄養剤240ml/日が供給されて、前記培養槽(増殖槽)で増殖した微生物が、油分解槽に1日1回100Lが定期投入される、自動投入装置フロー。」(以下、「甲2発明」という。)

「自動投入装置であって、
前記自動投入装置は、微生物製剤を種として微生物を約100倍に増殖させ、現場排水に自動添加する装置であり、装置内に薬剤を定期的に補充するだけで、全ての工程を全自動で行うものであり、
排水量が100m^(3)/日以下の場合、ブロアー及び散気管により曝気が行われる培養槽(増殖槽)に、冷蔵庫から微生物製剤800ml/日が供給され、更に活性化剤300ml/日、栄養剤240ml/日が供給されて、前記培養槽(増殖槽)で増殖した微生物が、油分解槽に1日1回100Lが定期投入される、自動投入装置。」(以下、「甲2’発明」という。)

「甲2’発明の自動投入装置を備える、システム。」(以下、「甲2”発明」という。)

(3)本件発明1について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明は、「培養槽(増殖槽)」で増殖した「微生物」が「油分解槽」に投入されるものであって、前記「培養槽(増殖槽)」において「ブロアー」及び「散気管」により曝気が行われることからみて、甲2発明における「微生物」は、本件発明1における「油脂含有廃水に含まれる油脂を分解する少なくとも1種の好気性微生物」に相当し、甲2発明における「微生物製剤」は、本件発明1における「油脂含有廃水に含まれる油脂を分解する少なくとも1種の好気性微生物を含む好気性微生物群の種微生物」に相当し、甲2発明における「冷蔵庫」は、本件発明1における「種微生物を生存状態で冷蔵保管する保冷貯蔵装置」に相当し、甲2発明において「油分解槽」に投入される「増殖した微生物」は、本件発明1における「微生物製剤」に相当し、甲2発明における「培養槽(増殖槽)」は、本件発明1における、「前記種微生物を増殖して微生物製剤を製造する増殖槽」に相当する。
また、甲2発明において、「排水量が100m^(3)/日以下の場合、ブロアー及び散気管により曝気が行われる培養槽(増殖槽)に、冷蔵庫から微生物製剤800ml/日が供給され、更に活性化剤300ml/日、栄養剤240ml/日が供給されて、前記培養槽(増殖槽)で」「微生物」が「増殖」することは、本件発明1において、「前記保冷貯蔵装置を用いて冷蔵保管した前記種微生物を、前記増殖槽を用いて」「増殖して所定の微生物製剤を製造」することに相当し、甲2発明において、「増殖した微生物が、油分解槽に1日1回100L定期投入される」ことは、本件発明1において、「製造した所定の微生物製剤を油脂含有廃水に」「定期的に」「投入する」ことに相当し、甲2発明における「自動投入装置フロー」は、本件発明1における「微生物製剤の投入方法」に相当する。

(イ)そうすると、本件発明1と甲2発明とは、
「油脂含有廃水に含まれる油脂を分解する少なくとも1種の好気性微生物を含む好気性微生物群の種微生物を生存状態で冷蔵保管する保冷貯蔵装置と、前記種微生物を増殖して微生物製剤を製造する増殖槽と、を用い、
前記保冷貯蔵装置を用いて冷蔵保管した前記種微生物を、前記増殖槽を用いて増殖して所定の微生物製剤を製造し、製造した所定の微生物製剤を油脂含有廃水に定期的に投入する、微生物製剤の投入方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点2-1:本件発明1は、「微生物製剤の投入方法」が、「種微生物」を「定期的に増殖して所定の微生物製剤を製造」する、との発明特定事項を有するのに対して、甲2発明は、排水量が100m^(3)/日以下の場合、ブロアー及び散気管により曝気が行われる「増殖槽」に、「保冷貯蔵装置」から「種微生物」800ml/日が供給され、更に「活性化剤」300ml/日、「栄養剤」240ml/日が供給されるものである点。

・相違点2-2:本件発明1は、「微生物製剤の投入方法」において、「種微生物」の「個体数濃度が1×10^(7)CFU/mL?5×10^(9)CFU/mL」であり、「前記増殖槽により前記種微生物の所定容量を原料として増殖して、容量が前記所定容量の50倍?500倍で個体数濃度が1×10^(7)CFU/mL?2×10^(10)CFU/mLの微生物製剤を製造」する、との発明特定事項を有するのに対して、甲2発明には前記発明特定事項が記載されていない点。

イ 判断
(ア)まず、前記ア(イ)の相違点2-1について検討すると、甲2発明において、排水量が100m^(3)/日以下の場合、ブロアー及び散気管により曝気が行われる「増殖槽」に、「保冷貯蔵装置」から「種微生物」800ml/日が供給され、更に「活性化剤」300ml/日、「栄養剤」240ml/日が供給されて、前記「増殖槽」で「微生物」が増殖することは、「微生物」の増殖における「種微生物」、「活性化剤」及び「栄養剤」の一日あたりの供給量を特定するものに過ぎず、投入工程に合わせて、増殖の準備工程から増殖工程を所定のサイクルで行うことを開示するものではない。
すると、甲2発明が、「微生物製剤」を「油分解槽」に1日1回100L定期投入するものであるとしても、増殖の準備工程から増殖工程、更には投入工程を所定のサイクルで行うものとはいえない。
なお、甲2発明は、「装置内に薬剤を定期的に補充するだけで、全ての工程を全自動で行う」ものであるが、ここでいう「薬剤」の定期的な補充は、「自動投入装置内」への「薬剤」の定期的な補充をいうものと認められ、「増殖槽」への定期的な供給をいうものとは認められないから、甲2発明が、増殖の準備工程から増殖工程、更には投入工程を所定のサイクルで行うものとはいえないことに変わりはない。
このことと、前記1(2)イ(イ)によれば、甲2発明が、「種微生物」を「定期的に増殖して所定の微生物製剤を製造」するものとはいえない。

(イ)前記(ア)によれば、甲2発明は、前記相違点2-1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとはいえないから、前記相違点2-1は実質的な相違点であるので、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1が、原出願の優先権主張の基礎出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明であるとはいえない。

(ウ)更に、前記相違点2-1の想到容易性について検討すると、甲2発明が、「微生物製剤」を「油分解槽」に1日1回100L定期投入するものであるとしても、増殖の準備工程から増殖工程、更には投入工程を所定のサイクルで行うものとはいえないことは、前記(ア)に記載のとおりであり、また、「微生物」の増殖における「種微生物」、「活性化剤」及び「栄養剤」の一日あたりの供給量が特定されるに過ぎず、投入工程に合わせて、増殖の準備工程から増殖工程を所定のサイクルで行うことが開示されない甲2発明において、増殖の準備工程から増殖工程、更には投入工程を所定のサイクルで行うべき理由はないから、甲2発明において、「種微生物」を「定期的に増殖して所定の微生物製剤を製造し、製造した所定の微生物製剤を油脂含有廃水に投入する」ものとする動機付けは存在しない。
更に、「微生物製剤の投入方法」において、「種微生物」を「定期的に増殖して所定の微生物製剤を製造」することは、甲第1、3、5号証のいずれにも記載も示唆もされるものではないから、甲2発明において、「微生物製剤の投入方法」を、「種微生物」を「定期的に増殖して所定の微生物製剤を製造」する、との前記相違点2-1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることを、甲第1、3、5号証に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえない。
したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1を、甲2発明及び甲第1、3、5号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(4)本件発明2?11について
本件発明2?11は本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであって、本件発明2?11と甲2発明とを対比した場合、いずれの場合であっても少なくとも前記相違点2-1の点で相違する。
そして、「微生物製剤の投入方法」において、「種微生物」を「定期的に増殖して所定の微生物製剤を製造」することは、甲第1、3、5号証のいずれにも記載も示唆もされるものではないことは、前記(2-1)に記載のとおりであり、このことは、甲第9?11号証についても同様であるから、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明2?11を、甲2発明及び甲第1、3、5、9?11号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(5)本件発明12について
(ア)前記(3)ア(ア)と同様にして本件発明12と甲2’発明とを対比すると、本件発明12と甲2’発明とは、少なくとも、以下の点で相違する。
相違点2-3:本件発明12は、「微生物製剤の自動投入装置」が、「制御手段」「を備え」、「前記制御手段は、給水手段により増殖槽内に水を供給すると共に、別途供給された所定容量の種微生物と、前記種微生物を活性化させる活性化剤と、前記種微生物を増殖させる植物油からなる炭素源とを、撹拌混合手段により前記増殖槽内の内容物に対流を発生させて空気導入と共に撹拌混合して前記種微生物を所定個体数濃度の範囲に増殖させて、容量が所定容量の50倍?500倍で個体数濃度が1×10^(7)CFU/mL?2×10^(10)CFU/mLの微生物製剤を製造して、その後、製造した前記微生物製剤を投入手段により油脂含有廃水へ投入することを所定間隔で繰り返し行う」、との発明特定事項を有するのに対して、甲2’発明は前記発明特定事項を有しない点。

(イ)そこで、前記(ア)の相違点2-3について検討すると、前記相違点2-3に係る発明特定事項は、前記1(4)(イ)に記載したのと同様の理由により、増殖の準備工程から増殖工程、更には投入工程を例えば24時間といった所定のサイクルで行うものをいうものといえる。
すると、前記(3)イ(ア)に記載したのと同様の理由により、甲2’発明が、「制御手段」「を備え」、「前記制御手段は、前記給水手段により前記増殖槽内に水を供給すると共に、別途供給された所定容量の前記種微生物と、前記種微生物を活性化させる活性化剤と、前記種微生物を増殖させる植物油からなる炭素源とを、前記撹拌混合手段により前記増殖槽内の前記内容物に対流を発生させて空気導入と共に撹拌混合して前記種微生物を所定個体数濃度の範囲に増殖させて、容量が前記所定容量の50倍?500倍で個体数濃度が1×10^(7)CFU/mL?2×10^(10)CFU/mLの微生物製剤を製造して、その後、製造した前記微生物製剤を前記投入手段により油脂含有廃水へ投入することを所定間隔で繰り返し行う」ものであるとはいえない。
更に、前記相違点2-3の想到容易性について検討すると、前記(3)イ(ウ)、(4)に記載したのと同様の理由により、甲2’発明において、「微生物製剤の自動投入装置」を、「制御手段」「を備え」、「前記制御手段は、前記給水手段により前記増殖槽内に水を供給すると共に、別途供給された所定容量の前記種微生物と、前記種微生物を活性化させる活性化剤と、前記種微生物を増殖させる植物油からなる炭素源とを、前記撹拌混合手段により前記増殖槽内の前記内容物に対流を発生させて空気導入と共に撹拌混合して前記種微生物を所定個体数濃度の範囲に増殖させて、容量が前記所定容量の50倍?500倍で個体数濃度が1×10^(7)CFU/mL?2×10^(10)CFU/mLの微生物製剤を製造して、その後、製造した前記微生物製剤を前記投入手段により油脂含有廃水へ投入することを所定間隔で繰り返し行う」、との前記相違点2-3に係る本件発明12の発明特定事項を有するものとすることを、甲第1、3、5、9?11号証に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえない。
したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明12を、甲2’発明及び甲第1、3、5、9?11号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(6)本件発明13?17について
本件発明13?17は本件発明12を直接的又は間接的に引用するものであって、本件発明13?17と甲2’発明とを対比した場合、いずれの場合であっても、少なくとも前記相違点2-3の点で相違する。
そうすると、前記(5)(イ)に記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明13?17を、甲2’発明及び甲第1、3、5、9?11号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(7)本件発明18について
(ア)前記(3)ア(ア)と同様にして本件発明18と甲2”発明とを対比すると、本件発明18と甲2”発明とは、少なくとも、以下の点で相違する。
相違点2-4:本件発明18は、「廃水処理システム」が、「請求項12から請求項17の何れか一項に記載の微生物製剤の自動投入装置を備える」、との発明特定事項を有するのに対して、甲2”発明は、「甲2’発明の水質連動型微生物自動増幅投入装置を備える」点。

(イ)そして、本件発明12?17を、甲2’発明及び甲第1、3、5、9?11号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないことは、前記(5)(イ)及び(6)に記載したとおりであるので、同様の理由により、本件発明18も、甲2”発明及び甲第1、3、5、9?11号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(8)小括
したがって、前記第3の3(1)?(2)の特許異議申立理由はいずれも理由がない。

なお、申立人は、本件特許に係る出願の国内優先権主張は認められない旨を主張しているが、第3の2(1)?(6)及び同3(1)?(2)の特許異議申立理由はいずれも理由がないことは前記1(7)、2(8)に記載のとおりであり、かつ、前記国内優先権主張の適否は、甲第1?3、5、7、9?11号証の公知性に影響せず、前記国内優先権主張の適否が前記特許異議申立理由の判断を左右するものではないから、本件特許異議申立において前記国内優先権主張の適否を判断する必要はないので、ここではその判断は行わない。

3 特許法第36条第4項第1号について
(ア)本件特許明細書の発明の詳細な説明には、更に以下(c)?(f)の記載がある。
(c)「【0033】
ここで、所定の種微生物とは、油脂含有廃水に含まれる油脂を分解する少なくとも1種の好気性微生物を含む好気性微生物群の種微生物である。好気性微生物群の種微生物は、油脂含有廃水に含まれる油脂を分解する少なくとも1種の好気性微生物を含む微生物群の種となるものである。このような好気性微生物群には、ヤロウィア リポリティカ(Yarrowia lipolytica)1A1株 NITE BP-1167と、バークホルデリア アルボリス(Burkholderia arboris)SL1B1株 NITE BP-00724)とが含まれていることが好ましく、カンジダ シリンドラセア(Candida cylindracea)SL1B2株 NITE BP-00714を含んでいてもよい。
【0034】
また、保存可能な種微生物の濃度とは、後述する所定条件下で一定期間保存することができ、必要に応じて微生物製剤として利用可能な濃度まで増殖させることが可能な種微生物の個体数濃度である。本発明において適用可能な種微生物は、1×10^(7)CFU/mL?5×10^(9)CFU/mLの個体数濃度のものである。かかる濃度の種微生物を用いることで、これを増殖させて、所定の微生物製剤、即ち容量が種微生物の容量の50倍?500倍で個体数濃度が1×10^(7)CFU/mL?2×10^(10)CFU/mLの微生物製剤を製造することができる。なお、種微生物の保存については後述する。
【0035】
種微生物及び微生物製剤における個体数濃度は、単位体積当たりのコロニー形成単位で表す。具体的には、正確に希釈した試料の一定量を培地上に撒き、培養(例えば、30℃、1日?2日間)により生じたコロニー数を計測し算出する。例えば、10^(6)倍に希釈した試料溶液0.1mLを培地に撒き、20個のコロニーが生じた場合、試料中の個体数濃度は20÷0.1×10^(6)=2×10^(8)CFU/mLと計算される。」

(d)「【0038】
種微生物の増殖は、上述した所定容量の種微生物と、水と、種微生物を活性化させる活性化剤と、種微生物を増殖させる植物油からなる炭素源とを用い、自動投入装置の増殖槽内に種微生物、水、活性化剤及び炭素源(以下、これらをまとめて「製剤成分」ともいう)を投入し、増殖槽内の内容物に空気導入(エアレーション)しながら撹拌することにより行うことができる。
【0039】
種微生物を活性化させる活性化剤は、窒素、リン及びカリウムを含むものであり、必要に応じて種微生物の構成要素となる金属を添加してもよい。
【0040】
種微生物を増殖させる植物油からなる炭素源は、種微生物の増殖に必須のものである。この炭素源は、種微生物について油脂に対する馴養を行って、油脂の分解に適した微生物製剤を製造すると共に、雑菌の増殖を防止するために植物油としている。また、炭素源は、後述する廃水処理システム200(図3参照)で処理する油脂の種別に応じて適宜変更することができる。例えば、油脂としては植物油が好ましく、植物油としては、綿実油、菜種油、大豆油、トウモロコシ油(コーン油)、オリーブ油、サフラワー油、米油、ゴマ油、パーム油、ヤシ油、落花生油等を挙げることができる。処理対象が動物性油脂を多く含有する場合には、ラード、牛脂、乳脂肪等を用いてもよく、必要に応じて1種又は複数の炭素源を用いてもよい。」

(e)「【0043】
本発明は、種微生物を保存することができる。このため、自動投入装置には、雑菌の繁殖を防ぐと共に、増殖を停止し且つ生きた状態で一定期間種微生物を保管することが可能な保存手段を設ける。保存手段としては、種微生物を冷蔵状態で保管する保冷貯蔵手段(例えば保冷庫や保冷剤)を用いる。なお、自動投入装置は、生存状態の種微生物の保存を一定期間維持するために、上述したエアレーションや撹拌を行う手段を保存手段に設けてもよい。」

(f)「【受託番号】
【0098】
ヤロウィア リポリティカ(Yarrowia lipolytica)1A1株 NITE BP-1167
バークホルデリア アルボリス(Burkholderia arboris)SL1B1株 NITE BP-00724)
カンジダ シリンドラセア(Candida cylindracea)SL1B2株 NITE BP-00714
【0099】
微生物への言及
寄託機関の名称: 独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター
寄託機関のあて名: 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室
寄託機関に寄託した日付: 2011年11月25日
寄託機関が寄託について付した受託番号: NITE BP-1167

寄託機関の名称: 独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター
寄託機関のあて名: 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室
寄託機関に寄託した日付: 2018年4月10日
寄託機関が寄託について付した受託番号: NITE BP-00714
当該寄託された微生物は、2009年3月6日に独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターへ国内寄託した微生物(受託番号NITE P-714)を、2018年4月10日に国際寄託に移管したものである。

寄託機関の名称: 独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター
寄託機関のあて名: 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室
寄託機関に寄託した日付: 2018年4月10日
寄託機関が寄託について付した受託番号: NITE BP-00724
当該寄託された微生物は、2009年3月17日に独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターへ国内寄託した微生物(受託番号NITE P-724)を、2018年4月10日に国際寄託に移管したものである。」

(イ)前記(ア)(c)?(f)によれば、本件発明においては、油脂含有廃水に含まれる油脂を分解する少なくとも1種の好気性微生物を含む好気性微生物群の種微生物として、ヤロウィア リポリティカ(Yarrowia lipolytica)1A1株 NITE BP-1167と、バークホルデリア アルボリス(Burkholderia arboris)SL1B1株 NITE BP-00724)とが含まれるもの、更に、カンジダ シリンドラセア(Candida cylindracea)SL1B2株 NITE BP-00714が含まれるものが用いられるものであり、種微生物として、1×10^(7)CFU/mL?5×10^(9)CFU/mLの個体数濃度の種微生物を用いることで、これを増殖させて、所定の微生物製剤、即ち容量が種微生物の容量の50倍?500倍で個体数濃度が1×10^(7)CFU/mL?2×10^(10)CFU/mLの微生物製剤を製造することができるものであるが、微生物製剤を種として油脂分解微生物を100倍程度に増幅したり、1×10^(7)CFU/mL?5×10^(9)CFU/mLの個体数濃度の前記微生物を培養して、1×10^(7)CFU/mL?2×10^(10)CFU/mL程度の個体数濃度とすることは、前記1(1)ア(ア)(1c)の甲第1号証の記載事項及び同イ(3a)の甲第3号証の記載事項からみて、通常なされ得る範囲のものと認められる。
また、種微生物の増殖は、上述した所定容量の種微生物と、水と、種微生物を活性化させる活性化剤と、種微生物を増殖させる植物油からなる炭素源とを用い、自動投入装置の増殖槽内に種微生物、水、活性化剤及び炭素源を投入し、増殖槽内の内容物に空気導入しながら撹拌することで行うことができるのであり、活性化剤は、窒素、リン及びカリウムを含むものであり、必要に応じて種微生物の構成要素となる金属を添加してもよいものであり、種微生物を増殖させる植物油からなる炭素源は、例えば、油脂としては植物油が好ましく、植物油としては、綿実油、菜種油、大豆油、トウモロコシ油(コーン油)、オリーブ油、サフラワー油、米油、ゴマ油、パーム油、ヤシ油、落花生油等を挙げることができ、処理対象が動物性油脂を多く含有する場合には、ラード、牛脂、乳脂肪等を用いてもよく、必要に応じて1種又は複数の炭素源を用いてもよいものであり、また、前記種微生物の保存手段として、種微生物を冷蔵状態で保管する保冷貯蔵手段(例えば保冷庫や保冷剤)を用いるものである。
そして、これらの増殖方法及び保冷貯蔵手段は、微生物の増殖や貯蔵に際して一般的に用いられる手法と認められる。

(ウ)前記(イ)によれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明は、油脂含有廃水に含まれる油脂を分解する少なくとも1種の好気性微生物を含む好気性微生物群の種微生物として、1×10^(7)CFU/mL?5×10^(9)CFU/mLの個体数濃度の、ヤロウィア リポリティカ(Yarrowia lipolytica)1A1株 NITE BP-1167と、バークホルデリア アルボリス(Burkholderia arboris)SL1B1株 NITE BP-00724)とが含まれるもの、更に、カンジダ シリンドラセア(Candida cylindracea)SL1B2株 NITE BP-00714が含まれる種微生物を用いて、微生物の増殖や貯蔵に際して一般的に用いられる増殖方法及び保冷貯蔵手段によって、通常なされ得る範囲の増殖を行って、所定容量の50倍?500倍で個体数濃度が1×10^(7)CFU/mL?2×10^(10)CFU/mLの微生物製剤として、本件発明を実施できることを理解できる。

(エ)また、当業者は、油脂含有廃水に含まれる油脂を分解する好気性微生物であって、微生物の増殖や貯蔵に際して一般的に用いられる増殖方法及び保冷貯蔵手段により、通常なされ得る範囲の増殖及び貯蔵ができる好気性微生物により、本件発明を実施できることを理解できるから、本件発明1?10、12?18において好気性微生物が特定されていないとしても、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たすというべきである。

(オ)したがって、本件特許明細書の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定に適合するというべきであるので、前記第3の4の特許異議申立理由は理由がない。

第5 むすび
以上のとおりであるので、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1?18に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-09-14 
出願番号 特願2019-72376(P2019-72376)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C02F)
P 1 651・ 111- Y (C02F)
P 1 651・ 113- Y (C02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 池田 周士郎  
特許庁審判長 宮澤 尚之
特許庁審判官 村岡 一磨
金 公彦
登録日 2019-11-15 
登録番号 特許第6614425号(P6614425)
権利者 日産化学株式会社
発明の名称 微生物製剤の投入方法、微生物製剤の自動投入装置及び廃水処理システム  
代理人 山▲崎▼ 雄一郎  
代理人 栗原 浩之  
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