• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E03C
審判 全部申し立て 2項進歩性  E03C
管理番号 1366989
異議申立番号 異議2020-700483  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-11-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-07-14 
確定日 2020-10-12 
異議申立件数
事件の表示 特許第6629087号発明「水栓」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6629087号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6629087号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成28年2月8日に特許出願され、令和1年12月13日に特許の設定登録がされ、令和2年1月15日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1ない4に係る特許に対し、令和2年7月14日に特許異議申立人鈴木宏和(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。

第2 本件発明
特許第6629087号の請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などという。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
側面に吐水ヘッドが着脱自在に装着される水栓本体部を備え、
前記水栓本体部は、浄水機能を有しない吐水ヘッドから浄水機能を有する別の吐水ヘッドに交換可能に構成されることを特徴とする水栓。
【請求項2】
前記水栓本体部内または前記水栓本体部の上流側に逆止弁が設けられることを特徴とする請求項1に記載の水栓。
【請求項3】
前記水栓本体部に水を導入するための通水管を有し、
前記逆止弁は前記通水管に設けられる逆止弁を含むことを特徴とする請求項2に記載の水栓。
【請求項4】
前記水栓本体部は、前記水栓本体部の側面から突出して、吐水ヘッドに収容される継手管を有しており、
前記別の吐水ヘッドは、内蔵された浄水カートリッジを交換するために取外すことができる吐水部材を有することを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の水栓。」

第3 申立理由の概要
申立人が主張する申立理由の概要は以下のとおりである。
1 申立理由1
本件発明1は、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明であるから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、その特許は取り消されるべきものである。
2 申立理由2
(1)本件発明1は、甲1発明及び、甲2発明又は甲5発明の何れかの発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、その特許は取り消されるべきものである。
(2)本件発明1は、甲3発明及び、甲1発明、甲2発明又は甲5発明の何れかの発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、その特許は取り消されるべきものである。
(3)本件発明1は、甲4発明及び、甲1発明、甲2発明又は甲5発明の何れかの発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、その特許は取り消されるべきものである。
(4)本件発明2は、上記(1)?(3)で示した各発明に加えて、甲第6号証ないし甲第8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、その特許は取り消されるべきものである。
(5)本件発明3は、上記(1)?(3)で示した各発明に加えて、甲第6号証ないし甲第8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、その特許は取り消されるべきものである。
(6)本件発明4は、上記(1)?(3)で示した各発明に加えて、甲第6号証ないし甲第10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、その特許は取り消されるべきものである。

[証拠方法]
甲第1号証:特開2002-206264号公報
甲第2号証:特開2003-328412号公報
甲第3号証:特開平8-275897号公報
甲第4号証:実公平4-14120号公報
甲第5号証:特開2005-163402号公報
甲第6号証:特開2012-7376号公報
甲第7号証:特開平11-229463号公報
甲第8号証:特開平9-280402号公報
甲第9号証:特開2002-356891号公報
甲第10号証:特開2003-184146号公報

第4 各甲号証の記載
1 甲第1号証について
(1)甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている(下線は当決定で付した。以下同様)。
ア「【請求項1】 給水源からの配管に接続された水栓本体と、吐水管と吐水管の先端に吐出口部を備えた水栓において、この吐出口部は外部に設けられた水廻り機器への流出口と、この流出口と上記吐出口部の吐水口への切替バルブを一体に備えたことを特徴とする水栓。
【請求項2】 前記吐出口部は、吐水管に脱着可能であることを特徴とする請求項1記載の水栓。
・・・・
【請求項4】 前記水廻り機器が、浄水器・イオン水生成器などの水処理装置であって、前記吐出口部は前記水処理装置からの、処理水の流入口を備えるこを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の水栓。」

イ「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、給水源からの上水をたとえば浄水化する浄水器、電気分解によってイオン化したりするイオン水生成器や、食洗器等の水廻り機器に接続して使えるようにした水栓に関する。
・・・・
【0007】本発明が解決すべき課題は、従来の不都合を解消し、水栓の吐水口の高さ位置を変えないで、外部に設置している水廻り機器への接続可能な水栓を提供することを目的としている。」

ウ「【0010】請求項2記載の発明は吐出口部が、水栓の吐水管に脱着可能であることが好ましく、この様にすれば従来の水栓の吐水管にも後付けが可能であり取替え対応もできる。」

エ「【0014】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、この発明の実施例について説明する。
【0015】初めに図1に基づいて本発明の水栓の使用例を説明するに、流しには水栓本体が設置してあり、この水栓本体1には給湯パイプ1Aを介して給湯機(図示せず)からの湯が供給され、水道管(図示せず)に接続された給水パイプ1Bから上水が供給されるようになっており、水廻り機器7は流し8を備えた台所カウンター9上に載置して使用されるようになっている。
【0016】水栓本体1の吐水管3A先端には切替バルブを内蔵した吐出口部4Bが取付けてあり、この吐出口部4Bは上水供給ホース5と処理水吐出ホース6により水廻り機器7に接続されている。吐出口部4Bの切替ハンドル4Aを所定位置に回すと、水栓1からの上水は上水供給ホース5により水廻り機器7に送られ、処理された処理水は処理水吐出ホース6から吐出口部4Bに送り返され、吐出口部の処理水専用吐水口4Cから吐出される。切替ハンドル4Aを他の位置に回すと、水栓本体1からの上水(又は湯水混合水)は水廻り機器7を経由することなく吐出口部4Bの出口4Cからそのまま吐出され、すべての機能を吐出口部4Bに集約している。
【0017】図2は本発明の水栓で、1は水栓本体、2は水栓のハンドル、3Aは水栓の吐水管、10Aは吐水管3Aに接続されている接手、4Bは接手10Aに接続されている吐出口部、4Aは吐出口部内の流路を切替える切替ハンドルである。水栓の吐水管3A先端に吐出口部4Bを接続する接手はシール部材が組込まれており、又、吐水管3Aとの接続のため接手10Aにはシール部材10Bの後に爪10Cがあり、吐水管3Aに挿入すると同時に接手10Aの爪10Cが吐水管3Aの孔3Bに入り固定され、この接手10Aに吐出口部4Bの回転軸4Dを挿入しこの回転軸4Dはシール部材4Fが組込まれておりネジ11で接手10Aと吐出口部4Bを固定している。吐出口部4Bはねじ11での固定のため、吐出口部4Bの取付け・取外しも容易にできる。又、吐出口部4B内に回転軸4Dが組込まれているので、吐出口部4Bは360度回転でき、上水の吐水、処理水の吐水の方向を自在に変えることができる。」

オ「【0023】水廻り機器7が設けられていない場合は、吐出口部4Bの水廻り機器7への流出口12は図8の塞ぎ蓋21で塞ぐことにより流出口12からの上水の吐出は閉にでき、仮に吐出口部4Bの切替ハンドル4A操作で水廻り機器7への流出口12へ流路の切替を行った場合でも、図6の安全弁14を備えているので、そこから上水が吐水されるので吐出口部4B内部に圧力がこもるこはない。又、15は上水(整流)吐水口、16は上水(ソフトシャワー)吐水口、17は処理水吐水口である。」

カ 図面
(ア)図1




上記図1より、台所カウンター9上に水回り機器7が載置されている点が看取できる。

(イ)図2




上記図1より、水栓本体1の側面に吐水管3Aが接続され、吐水管3Aの先端に吐水口部4Bを備えた点が看取できる。

(ウ)図6




キ 上記ア、エ及びカ(ア)(図1)よりいえること
(ア)水回り機器7に浄水器である水処理装置が含まれること。
(イ)吐出口部4Bは上水供給ホース5と処理水吐出ホース6により、台所カウンター上に載置された、浄水器である水処理装置に接続されており、上水供給ホース5により水処理装置に送られ、処理された処理水は処理水吐出ホース6から吐出口部4Bに送り返されること。

(2)甲第1号証に記載された発明
上記(1)ア?キを踏まえると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「給水源からの配管に接続された水栓本体1と、水栓本体1の側面に吐水管3Aが接続され、吐水管3Aの先端に吐水口部4Bを備えた水栓において、この吐出口部4Bは外部に設けられた浄水器である水処理装置への流出口12と、この流出口12と上記吐出口部4Bの吐水口15、16への切替バルブを一体に備え、
前記吐出口部は前記水処理装置からの、処理水の流入口を備え、
吐出口部4Bは上水供給ホース5と処理水吐出ホース6により、台所カウンター上に載置された、浄水器である水処理装置に接続されており、上水供給ホース5により水処理装置に送られ、処理された処理水は処理水吐出ホース6から吐出口部4Bに送り返され、
前記吐出口部4Bが、水栓の吐水管3Aに脱着可能であり、従来の水栓の吐水管にも後付けが可能であり取替え対応もできる、
水栓。」

2 甲第2号証について
(1)甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
ア「【請求項1】 湯供給流路に連通する湯流路、水供給流路に連通する水流路および湯水混合水の混合流路を有する胴と、前記混合流路に連通する吐水流路を形成する吐水管本体および前記胴を着脱自在に被覆する第1の円筒状胴カバーを有する吐水管とを備えた浄水機能を持たない湯水混合水栓の前記吐水管を前記胴から取り外し、浄水カートリッジを内蔵した吐水管本体および第2の円筒状胴カバーよりなる吐水管を、前記胴に取り付けるために用いられる第1部材および第2部材よりなるアダプタであって、前記第1部材は、前記湯流路、水流路および混合流路にそれぞれ連通可能な流路を有し、前記胴の上面に載置される一方、前記第2部材は、前記胴および前記第1部材が内嵌可能で、かつ、前記第2の円筒状胴カバーが外嵌可能な筒状形状を有することを特徴とする湯水混合水栓における吐水管取り替え用アダプタ。」

イ「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、浄水機能を持たない湯水混合水栓の吐水管を前記湯水混合水栓の胴から取り外した後、浄水カートリッジを吐水管本体に内蔵した吐水管を、前記胴に取り付けるために用いられる湯水混合水栓における吐水管取り替え用アダプタに関する。」

ウ「【0007】まず、図1、図4において、浄水機能を持たない湯水混合水栓1は、胴2と、胴上面nに載置された弁機能を有するシングルレバー9用のカートリッジ11と、カートリッジ11内で混合された湯水混合水が流れる混合流路Mに連通する吐水流路Jを形成する吐水管本体3および胴2を着脱自在に被覆する第1の円筒状胴カバー4を有する吐水管5と、カートリッジ11に設けた弁棒12に連動連結され、吐水管5に供給される湯水の混合比と止水を含む吐水量の調整を行うシングルレバー9とから主としてなる。
・・・・
【0013】次に、図1、図5において、浄水機能付湯水混合水栓1’は、前記胴2よりも大径の胴2’と、胴上面n’に載置された弁機能を有するシングルレバー9’用のカートリッジ11’と、混合流路mに連通する吐水流路J’を形成する浄水カートリッジ10が内蔵されている吐水管本体3’および胴2’を着脱自在に被覆する第2の円筒状胴カバー4’を有する吐水管5’と、カートリッジ11’の弁棒12’に連動連結され、吐水管5’に供給される湯水の混合比と止水を含む吐水量の調整を行うシングルレバー9’とから主としてなる。胴カバー4’は、胴カバー4よりも大径である。カートリッジ11’は、セラミック製の固定ディスク47およびセラミック製の可動ディスク48を内蔵したカバー筒体49を有し、カートリッジ押さえ50によって胴上面n’に載置されている。すなわち、カートリッジ押さえ50は、最下端に内ねじ50aを有する一方、胴2’は、最上端に前記内ねじ50aに螺合する外ねじ50bを有する。また、胴2’の外ねじ50bを含む上部およびカートリッジ押さえ50は、上カバー29’によって被覆されている。上カバー29’は、胴2’の上端における外周面に形成されたピン穴52に嵌め込まれる平行ピン53により胴2’に係止される。
・・・・
【0018】前記第1部材61は、円柱状で、浄水機能を持たない湯水混合水栓1の胴2に形成された前記湯流路Hに連通可能な流路を有し、胴2に形成された前記水流路に連通可能な流路を有し、胴2に形成された前記導出流路Gを介して前記混合流路Mに連通可能な流路M’を有し、前記胴2の上面nに載置される。63は、胴2に形成された前記湯流路Hに連通可能な流路を形成する穴、64は、胴2に形成された前記水流路に連通可能な流路を形成する穴、65は、前記流路M’を形成する穴である。
【0019】第1部材61は、外径rを有する上部小径部61aと、胴2の外径と等しい外径R(>r)を有する下部大径部61bよりなる。
【0020】一方、前記第2部材62は、浄水機能を持たない湯水混合水栓1の前記胴2および第1部材61が内嵌可能で、かつ、前記浄水機能付湯水混合水栓1’の前記第2の円筒状胴カバー4’が外嵌可能な筒状形状を有し、また、前記胴2の上端に形成された前記外ねじ30に螺合する内ねじ66(接続部)を上下方向における中間位置に有する。そして、第2部材62は、内ねじ66(接続部)と外ねじ30との螺合によって接続された前記胴2と、前記第1部材61とを内嵌させながら、前記浄水機能付湯水混合水栓1’の前記第2の円筒状胴カバー4’を外嵌させた状態では、前記胴カバー4’がずれ落ちないよう、縦断面逆L型の外向きフランジ68を下端に有する。この外向きフランジ68は、図3に示した座金13および座パッキン14を覆うよう胴2が第2部材62によって嵌め込まれる。
【0021】第2部材62は、上から順に、第1部材61が嵌まり込む第1部材収容部69と、胴2が嵌まり込む胴収容部80とよりなる。
【0022】更に、この実施形態では、胴カバー4’が第2部材62の下部のまわりを回動できるよう、外向きフランジ68の上面部68cと胴カバー4’の下面4a’間に隙間が設けられている。すなわち、図5において上述したように、胴カバー4’は、下端の内周面に環状溝200を有する。一方、胴カバー4’が外嵌する第2部材62は、外向きフランジ68の直上で、前記環状溝200に対応する位置に、環状のOリング溝82を有する。そして、この実施形態では、前記Oリング溝82と前記環状溝200間にOリング83が嵌め込まれる構成を採用している。これは、浄水機能付湯水混合水栓1’の吐水管5’は、胴カバー4よりも大径の胴カバー4’と、浄水カートリッジ10が内蔵されているシャワヘッド33を有するので、浄水機能を持たない湯水混合水栓1の吐水管5より重たく、よって、胴カバー4’の下面4a’が外向きフランジ68の上面部68cに直接座当たると、胴カバー4’が回動し難いからである。
【0023】また、第2部材62は、第1部材収容部69の外周面に、環状溝92を円周方向に有し、この環状溝92には合成ゴムのUパッキン93が嵌込まれている。更に、第2部材62は、胴収容部80の外周面に環状溝94を円周方向に有し、この環状溝94にも合成ゴムのUパッキン95が嵌込まれている。
【0024】また、第2部材62は、カートリッジ11’内で混合された湯水混合水が流れる流路M’、導出流路G、混合流路Mに連通可能な一対の連通孔100,100をUパッキン95直上の外周面に有する。そして、胴カバー4’に設けた前記連通孔27’から混合流路Mの湯水混合水が吐水管5’内に形成されている原水流路33aに至る。このとき、第2部材62の外周面の上下位置にそれぞれ設けた前記Uパッキン93およびUパッキン95によって胴カバー4’および第2部材62間がシールされており、湯水混合水が胴カバー4’および第2部材62間からリークするのを確実に防止できる。
【0025】
【発明の効果】以上詳述したようにこの発明では、浄水カートリッジを内蔵した吐水管を、浄水機能を持たない湯水混合水栓の吐水管に代えて容易に後付け設置できる湯水混合水栓における吐水管取り替え用アダプタを提供できる効果がある。」

エ 図面
(ア)図1



上記図1より以下の点が看取できる。
・吐水管5は、吐水管本体3が第1の円筒状胴カバー4の側面に結合し一体となったものである点。
・吐水管5’は、吐水管本体3’が第2の円筒状胴カバー4’の側面に結合し一体となったものである点。

(イ)図2




(ウ)図4





(2)甲第2号証に記載された発明
上記(1)ア?エを踏まえると、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲2発明)
「湯供給流路に連通する湯流路、水供給流路に連通する水流路および湯水混合水の混合流路を有する胴2と、前記混合流路に連通する吐水流路を形成する吐水管本体3が、前記胴を着脱自在に被覆する第1の円筒状胴カバー4の側面に結合し一体となった吐水管5とを備えた浄水機能を持たない湯水混合水栓において、
前記吐水管5を前記胴2から取り外し、浄水カートリッジ10を内蔵した吐水管本体3’が、第2の円筒状胴カバー4’の側面に結合し一体となった吐水管5’を、前記胴2に取り付けるために用いられる第1部材61および第2部材62よりなるアダプタであって、
前記第1部材61は、前記湯流路、水流路および混合流路にそれぞれ連通可能な流路を有し、前記胴2の上面に載置される一方、前記第2部材62は、前記胴2および前記第1部材61が内嵌可能で、かつ、前記第2の円筒状胴カバー4’が外嵌可能な筒状形状を有し、
浄水カートリッジ10を内蔵した吐水管5’を、浄水機能を持たない湯水混合水栓1の吐水管5に代えて容易に後付け設置できる、
湯水混合水栓9’における吐水管取り替え用アダプタ。」

3 甲第3号証について
(1)甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
ア「【請求項1】 ホース収納タイプ水栓のホース継手先端に挿着可能であるとともに、固定式水栓の吐水管先端にも挿着可能に形成された挿入軸を備えたシャワーヘッドであって、前記挿入軸の外周には、前記ホース継手及び前記吐水管にそれぞれ形成された挿着溝孔を通し嵌め込みリングが外嵌される抜止溝が形成されているとともに、該挿入軸の先端には、前記ホース継手の内周面に突設されたキーが係合するキー溝が形成されていることを特徴とするシャワーヘッド。」

イ「【0001】【産業上の利用分野】この発明は、シャワーヘッドに関するものである。」

ウ「【0004】
【作用】シャワーヘッドに一体形成された挿入軸の外周には抜止溝が形成されており、挿入軸を挿着した状態で、この抜止溝に対し嵌め込みリングを外嵌させて、嵌め込みリングを介し、ホース収納タイプの水栓にも、また固定式水栓の何れにもシャワーヘッドを取り付けることができ、シャワーヘッドは1種類のものを製造すれば、タイプの異なる水栓に共用できるため、シャワーヘッドのコストが低減し、また管理が容易となる。
【0005】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1はホース収納タイプの水栓の断面構成図であり、水栓本体1には傾斜状に突出して突出管部2が形成されており、この突出管部2内には引出しホース5が収納されており、引出しホース5の先端にはホース継手4が接続され、このホース継手4の先端にシャワーヘッド6が取り付けられて構成され、前記水栓本体1の上端には操作用のレバーハンドル3が設けられたものとなっている。
【0006】前記シャワーヘッド6のホース継手4に対する取付構造を図2に拡大断面で示し、また図3にはシャワーヘッド6とホース継手4を破断した分解図を示す。前記シャワーヘッド6には外方へ突出して挿入軸7が一体形成されており、シャワーヘッド6及び挿入軸7は樹脂で形成されたものであり、挿入軸7の外周には、根元側にオーリングを嵌め込み可能なオーリング溝8が形成されており、このオーリング溝8の外側の外周には抜止溝9が凹み状に形成されており、この抜止溝9内には、図示上方へ突出して補強リブRが、また下方へ突出して回動規制突起10が形成されたものとなっており、この抜止溝9の外側の外周はオーリングを嵌め込み可能なオーリング段部11となって、このオーリング段部11の外側の挿入軸7の先端には、外周方向に等間隔で3個所に先端が開放されたキー溝12が形成されたものとなっている。
【0007】一方、前記ホース継手4の外周下部には貫通状に挿着溝孔14が形成されており、この挿着溝孔14の奥側内周面は摺接部15となっており、摺接部15の奥側には段状にオーリング当接面16が形成されており、その奥側に突出して3個所にキー17が形成されたものとなっている。前記挿着溝孔14には、外側より嵌め込みリング18を差し込んで固定できるものとなっており、嵌め込みリング18は樹脂で形成され、基部19の両端側に上方へ湾曲して延びる把持片20,20が一体形成されており、基部19の上面は扇状凹部21となっており、基部19の側面には凹み状に工具掛け凹部22が形成されたものとなっている。
【0008】ホース継手4の先端からシャワーヘッド6の挿入軸7を挿入させて、オーリング段部11の外周面に外嵌させたオーリング23を、前記摺接部15及びオーリング当接面16に当接させた状態として、先端のキー溝12をホース継手4のキー17に係合させると、シャワーヘッド6はキー溝12及びキー17の係合により回転止めされた状態でホース継手4に取り付けられるものであり、この状態で前記嵌め込みリング18を挿着溝孔14内に差し込むと、嵌め込みリング18の把持片20,20が前記抜止溝9の外周に嵌合し、この状態では、嵌め込みリング18によりシャワーヘッド6は最早ホース継手4から抜脱することはなく、良好に抜止された状態となり、取り付けが完了する。
・・・・
【0010】次に図4には固定式の水栓の断面図を示す。即ち、図4の水栓は、水栓本体から一体状に吐水管31が突出形成されているものであり、水栓本体30と同様に吐水管31は金属製であり、水栓本体30の上端には操作用のシャワーハンドル32が設けられている。この固定式の水栓の吐水管31に、前述したシャワーヘッド6を取り付けることができるものであり、前述ホース収納タイプの水栓に取り付けられたシャワーヘッドをそのまま固定式の水栓に取り付けることができるものとなっている。
・・・・
【0012】なお、前記吐水管31の外周下部にも貫通状に装着溝孔35内に下方より前述した嵌め込みリング18を嵌め込んで、嵌め込みリング18の把持片20、20を挿入軸7の抜止溝9の外周に嵌め込み、嵌め込みリング18によりシャワーヘッド6の吐水管31からの抜脱を防ぐことができるものである。」

エ 図面
(ア)図1



上記図1より以下の点が看取できる。
・水栓本体1において、上下方向に延びる部分と、当該上下方向に延びる部分の側面から傾斜状に突出する突出管部2を有している点。
・ホース継手2が突出管部2の先端側に取り付けられた点。

(イ)図2



(ウ)図3




(エ)図4




上記図4より、以下の点が看取できる。
・水栓本体1とは異なる水栓本体30において、上下方向に延びる部分と、当該上下方向に延びる部分の側面から傾斜状に突出する吐水管31を有している点。
・シャワーヘッド6が吐水管31に取り付けられている点。

(オ)図5



上記図5から、シャワーヘッド6には、吐水管31に成された挿着溝孔35を通し、嵌め込みリング18が外嵌される抜止溝9が形成されている点が看取できる。

オ 上記ア、ウ、エ(オ)からいえること
シャワーヘッド6の挿入軸7の外周には、ホース継手4及び吐水管31にそれぞれ形成された挿着溝孔14又は35を通し嵌め込みリング18が外嵌される抜止溝9が形成されていること。

(2)甲第3号証に記載された発明
上記(1)ア?オを踏まえると、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲3発明)
「水栓本体1において、上下方向に延びる部分と、当該上下方向に延びる部分の側面から傾斜状に突出する突出管部2を有しており、この突出管部2内には引出しホース5が収納されており、引出しホース5の先端にはホース継手4が接続され、このホース継手4の先端にシャワーヘッド6が取り付けられて構成され、ホース継手4が突出管部2の先端側に取り付けられ、前記水栓本体1の上端には操作用のレバーハンドル3が設けられている、ホース収納タイプの水栓と、
水栓本体1とは異なる水栓本体30において、上下方向に延びる部分と、当該上下方向に延びる部分の側面から傾斜状に突出する吐水管31を有しており、シャワーヘッド6が吐水管31に取り付けられ、前記水栓本体30の上端には、操作用のレバーハンドル32が設けられている、固定式の水栓と、において、
ホース収納タイプ水栓のホース継手4先端に挿着可能であるとともに、固定式の水栓の吐水管31先端にも挿着可能に形成された挿入軸7を備えたシャワーヘッド6であって、
前記挿入軸7の外周には、前記ホース継手4及び前記吐水管31にそれぞれ形成された挿着溝孔14又は35を通し嵌め込みリング18が外嵌される抜止溝9が形成されているとともに、該挿入軸7の先端には、前記ホース継手4の内周面に突設されたキー17が係合するキー溝12が形成されており、
嵌め込みリング18により、シャワーヘッド6はホース継手4から抜脱することはなく、また、吐水管31からの抜脱を防ぐことができ、
ホース収納タイプの水栓に取り付けられたシャワーヘッド6をそのまま固定式の水栓に取り付けることができる、
シャワーヘッド6。」

4 甲第4号証について
(1)甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
ア「・・【実用新案登録請求の範囲】
食器、台所用品又は類似のものを洗浄するための給水栓において、延長ホース4を有する吐水栓と、該延長ホース4に継手2を介して選択的且つ着脱可能に連結される複数種類の水洗具3とから成つており、前記延長ホースの先端には接続金具9が固着されていて、この接続金具に前記継手2が螺着されており、一方、水洗具3の先端には接続部3aが形成されており、この接続部3aが継手2に着脱可能であり、さらに継手が、逆止弁13及び係止体15を有しており、該係止体15は、合成樹脂を用いてほぼ横長状の輪形状で一体に形成されており、しかもこの係止体が、一端には押しボタン15aを設け、かつ他端側の内周径を水洗具3の接続部3aの外径より幾分大きく形成して、この部分の肉厚を厚くして内周径と同じ長さにわたる係止突部15bを形成し、さらにこの係止突部15b側周面から外周へ向けて円弧状に突出する弾圧バネ部15cを一体に形成して成つており、このように形成された全く同形の係止体15を2個組合わせて使用するようになつていることを特徴とする、給水栓。」(第1頁第1欄第1行?第2欄第5行)

イ「産業上の利用分野
この考案は食器、台所用品又は類似のものを洗浄するための給水栓に関する。」(第1頁第2欄第7?9行)

ウ「作用
継手を介して吐水栓に着脱される複数種類の水洗具は作業内容に応じてワンタツチで取換えられ、それぞれに具備された機能を発揮する。」(第2頁第3欄第39?42行)

エ「実施例
本考案の実施の一例を図面に基づいて説明すると、図中Aは給水栓本体であり、この給水栓本体Aは吐水栓である延長ホース4付の湯水混合栓1と、この混合栓1からの湯水を吐水する水洗具3と、該水洗具3と延長ホース4とを着脱自在に接続する継手2とから構成される。
湯水混合栓1は湯及び水の流量調節ハンドル5,5′が付設する本体1aの上部に導管6が回動自在に設けられて成るものである。同本体1aの下部に設けられた吐水管7には延長ホース4の一端を接続すると共に、同ホース4をカウンター8下面から前記導管6内を貫通させて先端部の開口から引き出す。そして、延長ホース4の先端には接続金具9を固着させ、この金具9に継手2を螺着する。なお、延長ホース4はカウンター8の下面に、所定の長さ分だけ弛ませると共に、重り10を付設して同ホース4の先端が導管6内に常時引き込まれる様に成す。」(第2頁第3欄第43行?第4欄第17行)

オ「なお、本考案の給水栓Aは浴室用としても使用できるものであつて、浴室用湯水混合栓のホース先端にシヤワーヘツドや洗髪用シヤワーヘツドなどの水洗具3を継手2を介して連結し、用途に応じて前記水洗具3を使い分けて使用することができる。
考案の効果
本考案の給水栓は吐水栓と、この吐水栓に継手を介して選択的且つ着脱可能に連結する複数種類の水洗具とから構成したものであるから、用途に応じて複数種類の水洗具をワンタツトで付替えて使用できるので、給水栓によつて行う多種多様な作業も、その作業に適した機能を有する水洗具を選択して用いることによつて能率良く実行することができる。 また、水洗具の種類(機能)も替えられるので給水栓の利用度を従来よりも大幅に高めることができると共に、水洗具自体の費用を安くすることができる。」(第3頁第6欄第17行?35行)

カ「図面の簡単な説明
第1図は本考案を実施した給水栓を示す斜視図、」(第3頁第6欄第36行?38行)

キ 図面
(ア)第1図




上記カを踏まえると、上記第1図から、給水栓が、湯水混合栓1、延長ホース4、水洗具3、継手2、導管6を備えている点が看取できる。

(イ)第3図






(2)甲第4号証に記載された発明
上記(1)ア?キを踏まえると、甲第4号証には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲4発明)
「湯水混合栓1、延長ホース4、水洗具3、継手2、導管6を備えているとともに、水洗具3が、延長ホース4に継手2を介して選択的且つ着脱可能に連結される複数種類の水洗具3である、給水栓であって、
延長ホース4を有する湯水混合栓1と、該延長ホース4に継手2を介して選択的且つ着脱可能に連結される複数種類の水洗具3を備えている給水栓であって、
湯水混合栓1は湯及び水の流量調節ハンドル5,5′が付設する本体1aの上部に導管6が回動自在に設けられて成り、前記本体1aの下部に設けられた吐水管7には延長ホース4の一端を接続すると共に、延長ホース4をカウンター8下面から前記導管6内を貫通させて先端部の開口から引き出し、
延長ホース4の先端には接続金具9を固着させ、この金具9に継手2を螺着したものであり、
用途に応じて複数種類の水洗具をワンタツチで付替えて使用できるので、給水栓によつて行う多種多様な作業も、その作業に適した機能を有する水洗具を選択して用いることによつて能率良く実行することができ、
また、水洗具の種類(機能)も替えられるので給水栓の利用度を従来よりも大幅に高めることができると共に、水洗具自体の費用を安くすることができる、
給水栓。」

5 甲第5号証について
(1)甲第5号証の記載事項
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
ア「【0001】
本発明は、水栓本体の下向き水導出口に、吐水管に代えて、シャワーヘッドを接続するための継手、および吐水口として前記シャワーヘッドを備えたシャワーヘッド付き水栓に関する。」

イ「【0005】
図3に示すシャワーヘッド(3)は、その上部に設けられたプッシュ式切替ボタン(34)の操作により、先端の吐水部(32)からの吐水形態をシャワー吐水とストレート吐水の間で任意に切り替えできるように構成されている。
また、この種のシャワーヘッドには、上記のような吐水形態切替機構の他、例えば浄水ユニットや塩素除去ユニット等を内蔵したものもあり、機能性に優れたものが多く見られる。
・・・・
【0007】
本発明の目的は、通常は吐水管が接続されている水栓本体の下向き水導出口に、吐水管に代えて、機能性に優れたシャワーヘッドを簡単に接続できるようにすることにある。」

ウ「【0028】
次に、上記継手(4)によって混合水栓本体(2)の混合湯水導出口(21)にシャワーヘッド(3)を接続する手順の一例を説明する。
まず、混合水栓本体(2)の混合湯水導出口(21)から吐水管を取り外しておいてから、混合湯水導出口(21)に継手本体(4A)の一端部の袋ナット(41)をねじ嵌める。一方、アダプタ(4B)をシャワーヘッド(3)の基端部にねじ嵌める。
【0029】
そして、シャワーヘッド(3)の基端部がねじ嵌められたアダプタ(4B)を、その外周面の環状段差(45)および径小部(44)の後端面(441)がそれぞれ継手本体(4A)内周面の第1環状段差(46)および第2環状段差(47)に受けられるまで継手本体(4A)の他端部内に挿入する。この際、シャワーヘッド(3)の位置決め用突起(33)を継手本体(4A)の他端部の位置決め用切欠き(49)に嵌め込むようにする。これによって、シャワーヘッド(3)をその吐水部(32)が下向きとなるように位置決めすることができる。
【0030】
その後、継手本体(4A)のネジ孔(48)に固定用ネジ(5)をその先端がアダプタ(4B)の環状溝(442)の底に当接するまでねじ込むことにより、アダプタ(4B)が継手本体(4A)の他端部に固定される。
【0031】
以上のような簡単な作業によって、図1に示すような、混合水栓本体(2)の混合湯水導出口(21)に継手(4)を介してシャワーヘッド(3)が接続されたシャワーヘッド(3)付き混合水栓(1)が得られる。
このシャワーヘッド(3)付き混合水栓(1)によれば、本来の吐水管に代えてシャワーヘッド(3)を吐水口として使用することができる。特に、シャワーヘッド(3)のプッシュ式切替ボタン(34)の操作によって、吐水形態をストレート吐水とシャワー吐水の間で任意に切り換えることができる点で便利である。」

エ 図面
(ア)図1




(イ)図2




6 甲第6号証について
(1)甲第6号証の記載事項
甲第6号証には、以下の事項が記載されている。
ア「【0001】
この発明はセンサによる検知対象の検知、非検知に基づいて吐水口からの吐水、吐水停止を自動的に行う自動水栓装置に関し、詳しくは貯湯式の温水器を給湯源として用いた自動水栓装置に関する。」

イ「【0027】
タンク22の上部からは、タンク22内の湯を出湯させる管路48が延び出し、混合弁46に接続されている。
混合弁46からは管路50が延び出しており、その先端が吐水部14に接続されている。
即ち電気温水器20のタンク22からの湯と、管路44からの水とが混合弁46で一定比率に混合されて適温の混合水とされ、その混合水が管路50を通じて吐水部14へと送られるようになっている。
そしてこの管路50にアスピレータ52と逆止弁54とが設けられている。
ここでアスピレータ52はタンク22からの膨張水を排水路へと逃す働きを有する。」

ウ 図面
(ア)図1




7 甲第7号証について
(1)甲第7号証の記載事項
甲第7号証には、以下の事項が記載されている。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、流し台又は洗面化粧台に取付けて使用するハンドシャワー付混合水栓の銅管結合構造に関する。」

イ「【0010】水栓本体3の接続筒4と混合弁6の間の外周にはホース9の先端に結合したハンドシャワー10を引出し自在に支持する吐水管8が上傾して回転可能に設けられており、ハンドシャワー10を吐水管8に支持した状態又は吐水管8からホース9と共に引出して使用し、レバー7を吐水方向へ操作すればハンドシャワー10から湯水を吐水可能となっている。
【0011】前記接続筒4の下部には、混合弁6に給湯源から湯を供給する湯管11及び給水源から水を供給する水管12を垂設し、この湯管11及び水管12は下部にそれぞれ逆止弁ユニット13をクイックファスナー14により結合しており、さらに前記混合弁6により流量及び温度を設定された湯水をハンドシャワー10へ供給する銅管15を延設し、この銅管15の下端からやや上部には後述するカプラー17をワンタッチで結合するための嵌合溝16を一体に加工して形成している。」

ウ 図面
(ア)図1




8 甲第8号証について
(1)甲第8号証の記載事項
甲第8号証には、以下の事項が記載されている。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水栓取付足を備えた湯水混合水栓に関するものである。」

イ「【0009】
【実施例】以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1はシャワー栓1を接続した湯水混合水栓2を示し、図2は要部を破断した湯水混合水栓2を示している。これらの図において、図中の3は湯水の混合室Aを形成する水栓本体で、例えば洗面ボールの周部面板4に開設の貫通孔5に止着される水栓取付足6と、湯水混合用の弁ユニット7を内蔵する水栓胴体8とから成る。」

ウ「【0012】一方、水栓取付足6は、例えば銅や真鍮などの鋳造製であって、水栓胴体8の雌ねじ部hに螺着される雄ねじ部jと、Oリング23を嵌合保持させる環状溝mと、周部面板4に開設の貫通孔5に挿通されて雌ねじ部材24により固定される雄ねじ部nと、湯用および水用の供給管25,25を弁ユニット7の弁座流路c,cに連通させる2本の供給流路26,26とを、切削加工して成るもので、供給流路26,26の上部側には、湯水混合室Aから供給管25,25への湯水の逆流を防止する逆止弁27と、湯水連通用アタッチメント28の脚部とを、その順に弁ユニット9側から嵌め込むための収容部26aを形成し、供給流路26,26の下部側には、供給管接続用の雌ねじ孔26bを形成している。」

エ 図面
(ア)図2




9 甲第9号証について
(1)甲第9号証の記載事項
甲第9号証には、以下の事項が記載されている。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は水道水を浄化して吐水する機能を備えた水栓に関し、詳しくは緊急遮断弁付きの水栓に関する。」

イ「【0034】
【実施例】次に本発明をキッチン水栓に適用した場合の実施例を図面に基づいて詳しく説明する。図1において、1はキッチンに設置されたキャビネットで、2はシンク、3はカウンターで、このカウンター3上にシングルレバー式の混合水栓(以下単に水栓とする)10が起立状態で設置されている。同図において4は水栓10に対し水,湯を供給するためのサプライ管であって、下端部が止水栓5を介して元配管に接続され、また上端部が水栓10における水栓本体12にそれぞれ接続されている。この水栓本体12からは下向きに接続管6が延び出しており、その接続管6に対して可撓性のホース22の端部が接続されている。
【0035】水栓10は、水栓本体12の上部にシングルレバー式のハンドル14を備えており、更にまた水栓本体12からシンク2の上方に向って吐水管16が延び出している。水栓本体12の内部には、図2に示しているように吐止水と吐水の水量調節及び温度調節を行う主弁7が内蔵されており、その主弁7に対し上記ハンドル14が作動的に連結されている。この水栓10では、ハンドル14を左右回動操作することで吐水の温度調節が行われ、また上下に回動操作することで吐止水及び吐水の水量調節が行われる。
【0036】吐水管16は、水栓本体12に固定の吐水管基部18と、上記ホース22の端部が接続固定されてそのホース22とともに引出可能な吐水ヘッド20とを有している。この吐水ヘッド20の先端部には、後に詳述する原水ストレート吐水,原水シャワー吐水及び浄水ストレート吐水を切替操作するためのレバー式且つ回転式の切替操作部24が外部に突き出す状態で設けられている。
【0037】図3にも示しているように、吐水ヘッド20は吐水ヘッド本体(グリップ部)26とその先端側の頭部28とを有している。ここで頭部28は吐水ヘッド本体26と別体とされていて、吐水ヘッド本体26に対し脱着可能とされている。本例ではこの頭部28の脱着によって、その内部に収容されている後述のカートリッジ42が交換可能とされている。
【0038】ここで頭部28は、吐水ヘッド本体26に取り付けられた状態でカートリッジ42を軸方向、詳しくは図3中左方向に押えるカートリッジ押えとしての働きも有している。吐水ヘッド本体26には、その基端部に上記ホース22がシール部材30によるシールの下に水密に接続固定されている。
【0039】ここでホース22は、図4にも示しているように吐水管基部18の先端部に取付固定された筒状をなすホースガイド31の中心部のホース挿通孔32に軸方向に摺動可能に挿通されている。このホースガイド31はまた、吐水ヘッド20をここに差し込むことでこれを保持する機能も有している。ここでホースガイド31及び吐水管基部18には、ホース22とホースガイド31との間の隙間から浸入して来た水を外部に排出するための水抜孔33及び35がそれぞれ形成されている。」

ウ「【0070】一方カートリッジ42を交換する必要が生じたときには、ハンドル14を閉操作して主弁7を閉じた上で、吐水ヘッド20における頭部28を吐水ヘッド本体26から取り外す。そして吐水ヘッド20、詳しくは吐水ヘッド本体26内部に収容状態にあるカートリッジ42を、頭部28の取外しによって開放された開口部を通じて新規のものと交換する。このときカートリッジ42が本来の装着位置から外れると同時に緊急遮断弁51がスプリング63の付勢力により自動的に閉弁し流路を遮断する。尤もこのときには通常主弁7は閉じているので流路内に給水圧は働いておらず、従って緊急遮断弁51がなくてもそこから湯水が勢い良く外部に飛び出すといったことはない。」

エ 図面
(ア)図2




(イ)図5





10 甲第10号証について
(1)甲第10号証の記載事項
甲第10号証には、以下の事項が記載されている。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、台所の流し台や洗面化粧台などに設置される水栓であって、供給される湯水を浄化する機能を有する浄水器を内蔵した型式の水栓に関する。」

イ「【0023】水栓1においては、水道水を浄化するための浄水カートリッジ10は円筒形をした把持部5内に着脱可能に収納されているが、この浄水カートリッジ10は使用時間の経過とともに浄化機能が徐々に劣化していくので、定期的に交換する必要がある。浄水カートリッジ10を交換する場合は、図2に示すように、本体部3に装着された状態にある把持部5からシャワーヘッド6のみを離脱させ、把持部5内に収納されている浄水カートリッジ10を抜き取った後、新しい浄水カートリッジ10を把持部5内へ収納し、シャワーヘッド6を把持部5に再装着するという手順をとる。」

ウ「



第5 対比・判断
1 甲第1号証を主引用例として
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「水栓」は、本件発明1の「水栓」に相当し、
甲1発明の「水栓本体1」は、本件発明1の「水栓本体部」に相当し、
甲1発明の「吐水口部4B」は、本件発明1の「吐水ヘッド」に相当する。

(イ)甲1発明の「前記吐出口部4Bが、水栓の吐水管3Aに脱着可能」であることと、本件発明1の「側面に吐水ヘッドが着脱自在に装着される」ことは、「吐水ヘッドが脱着可能に装着される」ことで共通する。

(ウ)甲1発明の「浄水器である水処理装置」に「上水供給ホース5と処理水吐出ホース6」により接続される「吐出口部4B」と、本件発明1の「浄水機能を有する別の吐水ヘッド」とは、「浄水機能を発揮可能な吐水ヘッド」である点で共通する。

(エ)甲1発明の「浄水器である水処理装置に接続され」る「前記吐出口部」が、「従来の水栓の吐水管にも後付けが可能であり取替え対応もできる」ものであること、そして、甲1発明の「従来の水栓の吐水管」には、一般的な吐水口部(「浄水器である水処理装置に接続され」ない通常の吐水口部)が装着されていると考えられることから、甲1発明は、一般的な吐出口部から、「浄水器である水処理装置に接続され」る「前記吐出口部」に取替え可能、すなわち、交換可能に構成されているといえる。

(オ)上記(ウ)で説示した共通事項を踏まえると、上記(エ)で説示した、甲1発明の、一般的な吐水口部が、「浄水器である水処理装置に接続され」る「前記吐出口部」に交換可能に構成されていていることと、本件発明1の「浄水機能を有しない吐水ヘッドから浄水機能を有する別の吐水ヘッドに交換可能に構成される」こととは、「浄水機能を有しない吐水ヘッドから浄水機能を発揮可能な吐水ヘッドに交換可能に構成される」点で共通する。

そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「水栓本体部を備え、
吐水ヘッドが着脱自在に装着され、
浄水機能を有しない吐水ヘッドから浄水機能を発揮可能な吐水ヘッドに交換可能に構成される水栓。」

(相違点1)
「吐水ヘッドが着脱自在に装着される」部位が、本件発明1では、「水栓本体部」の「側面」であるのに対し、甲1発明では、「水栓本体1の側面」に「接続」された「吐水管3Aの先端」である点。
(相違点2)
「浄水機能を発揮可能な吐水ヘッド」が、本件発明1では、「浄水機能を有する別の吐水ヘッド」であるのに対し、甲1発明では、「上水供給ホース5と処理水吐出ホース6により、台所カウンター上に載置された、浄水器である水処理装置に接続され」た「吐出口部4B」である点。

イ 判断
(ア)上記相違点が、実質的な相違点であるか否かについて検討する。
甲1発明の「吐水ヘッドが着脱自在に装着される」部位が、「吐水管3Aの先端」であり、この「吐水管3A」は「水栓本体1」とは別部材であることから、吐水ヘッドが装着される部位や、「吐水ヘッド」と「水栓本体1」との間に部材を有している点で、本件発明1とは異なっているので、相違点1は、実質的な相違点である。
また、甲1発明では、浄水機能は、「吐出口部4B」が有するものではなく、「吐出口部4B」と「上水供給ホース5と処理水吐出ホース6」により接続された台所カウンター上に載置された浄水器である水処理装置が有するものであることから、浄水する態様が、本件発明1とは明らかに異なっているので、相違点2は、実質的な相違点である。

したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。

(イ)次に、相違点1について検討する。
甲第2号証には、「吐水管本体3」が「円筒状胴カバー」の側面に一体となって装着されている「吐水管5」を「胴2」から取り外したり、別の「吐水管5’」を前記「胴2」に取付ける技術が開示され、また甲第5号証には、水栓本体の下向き水導出口に、吐水管に代えてシャワーヘッドを接続する継手や、浄水ユニットを内蔵したシャワーヘッドについての技術が開示されている。
しかしながら、甲第2号証及び甲第5号証のいずれにも、「吐水ヘッドが着脱自在に装着される」部位が、「水栓本体部」の「側面」であることについては、記載されておらず、示唆もされていない。
また、甲第3号証、甲第4号証、甲第6号証ないし甲第10号証をみても、相違点1に係る本件発明1の構成は、記載も示唆もされていない。
よって、甲1発明において、上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

ウ 申立人の主張について
申立人は特許異議申立書(第25頁第5-9行)において、
甲1発明のうち、「吐出口部」「水栓本体1及び吐水管3A」「浄水機能を有しない吐出口部」「浄水機能を有する別の吐出口部4B」「水栓」は、それぞれ、本件発明1の「吐水ヘッド」「水栓本体部」「浄水機能を有しない吐水ヘッド」「浄水機能を有する別の吐水ヘッド」「水栓」に相当し、両者間に相違点はない旨主張している。なお、申立人は、本件発明1の構成要素である「側面に」の点につき、甲1発明との相当関係については何ら言及していない。

ところで、本件特許明細書をみると、「側面」についての定義はないが、「側面」につき以下の記載がある。
すなわち、段落【0013】には、「図1は、本発明の実施形態に係る水栓100の側面図であり、図2は水栓100の分解斜視図である。水栓100は、水栓本体部112と、水栓本体部112の側面に着脱自在に装着される吐水ヘッド106と、を含む。・・・」との記載があり、段落【0015】には、「水栓100は、図2に示すように、本体側面から突出する突出管部20を有する水栓本体部112と、水栓本体部112に着脱自在に装着される吐水ヘッド106と、を含む。・・・」との記載があり、さらに、段落【0018】には「・・・図1に示すように、吐水ヘッド106の端部は回転部104の側面部(外周面)と対向する。・・・」との記載がある。
上記記載及び図1や図2をふまえると、本件発明1の「側面」とは、「吐水ヘッド106」が着脱自在に装着される面状の部位、「突出管部20」が突出する起点となる面状の部位、水栓本体部112の構成要素である回転部104の外周面等、すなわち、上下方向に延びる水栓における突出する部分の起点側にあって、側方から見たとき、およそ面状となっている部位であると解される。
そして、このような理解に基づくと、本件発明1の「側面」を有する「水栓本体部」に相当するのは、上記ア(ア)で説示したように甲1発明の「水栓本体1」であって、申立人が主張する「水栓本体1及び吐水管3A」とするのは、妥当でない。

仮に、申立人が主張するように、甲1発明の「水栓本体1及び吐水管3A」を本件発明1の「水栓本体部」に相当させると、甲1発明の「吐出口部」が着脱自在に装着される部位は、「吐水管3A」の先端となる。そして、この甲1発明の「吐水管3A」の先端は、上下方向に延びる水栓における突出する部分の起点側にあって、側方から見たとき、およそ面状となっている部位(本件発明1の「側面」についての上記理解による)とはいえないから、「吐出口部」を「水栓本体1及び吐水管3A」の構成体の「側面」に着脱自在に装着したことにはならない、すなわち、本件発明1と甲1発明とは、「側面に」「装着する」点で相違することになるから、申立人が主張するように「両者間に相違点はない」とはいえない。
したがって、申立人の主張を採用することはできない。

エ 小括
したがって、本件発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲1発明及び、甲2発明、甲5発明の何れかの発明、並びに甲第3号証、甲第4号証、甲第6号証ないし甲第10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、本件発明1の構成を全て含み更に減縮したものであるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1発明及び、甲2発明、甲5発明の何れかの発明、並びに甲第3号証、甲第4号証、甲第6号証ないし甲第10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 甲第2号証を主引用例として
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明の「湯水混合水栓」は、本件発明1の「水栓」に相当し、
甲2発明の「第1の円筒状胴カバー4」又は「第2の円筒状胴カバー4’」は、本件発明1の「水栓本体部」に相当し、
甲2発明の「吐水管本体3」又は「吐水管本体3’」は、本件発明1の「吐水ヘッド」に相当する。

(イ)甲2発明の「前記混合流路に連通する吐水流路を形成する吐水管本体3が、前記胴を着脱自在に被覆する第1の円筒状胴カバー4の側面に結合し一体となった吐水管5」と、本件発明1の「側面に吐水ヘッドが着脱自在に装着される水栓本体部」とは、「側面に吐水ヘッド」を具備する「水栓本体部」の点で共通する。

(ウ)甲2発明の「浄水カートリッジ10を内蔵した吐水管本体3’」は、本件発明1の「浄水機能を有する別の吐水ヘッド」に相当する。

(エ)甲2発明の「浄水カートリッジ10を内蔵した吐水管5’を、浄水機能を持たない湯水混合水栓1の吐水管5に代えて容易に後付け設置できる」ものであることと、本件発明1の「浄水機能を有しない吐水ヘッドから浄水機能を有する別の吐水ヘッドに交換可能に構成される」こととは、「浄水機能を有しない吐水ヘッドを具備する形態から浄水機能を有する別の吐水ヘッドを具備する形態に交換可能に構成される」ことで共通する。

そうすると、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「側面に吐水ヘッドを具備する水栓本体部を備え、
前記水栓本体部は、浄水機能を有しない吐水ヘッドを具備する形態から浄水機能を有する別の吐水ヘッドを具備する形態に交換可能に構成される水栓。」

(相違点3)
「側面に吐水ヘッド」が具備される「水栓本体部」について、本件発明1では、「吐水ヘッド」が「水栓本体部」に対して「着脱自在に装着」されるのに対し、甲2発明では、「吐水管本体3」が「第1の円筒状胴カバー4」に対して結合し一体となっている点。

イ 判断
上記相違点3が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
甲2発明の「吐水管本体3」は「第1の円筒状胴カバー4」に対して結合し一体となっている点で、「吐水ヘッド」と「水栓本体部」との相対関係が、本件発明1とは、明らかに異なっているので、相違点3は、実質的な相違点である。

ウ 申立人の主張について
申立人は特許異議申立書(第25頁下から3行-第26頁2行)において、甲2発明のうち、「吐水管」「胴2」「浄水機能を持たない吐水管5」「浄水機能を内蔵した別の吐水管5’」「水栓1、1’」は、それぞれ、本件発明1の「吐水ヘッド」「水栓本体部」「浄水機能を有しない吐水ヘッド」「浄水機能を有する別の吐水ヘッド」「水栓」に相当し、両者間に相違点はない旨主張している。なお、申立人は、本件発明1の構成要素である「側面に」の点につき、甲2発明との相当関係については何ら言及していない。

しかしながら、上記1(1)ウで説示した本件発明1の「側面」についての理解に基づくと、本件発明1の「側面」を有する「水栓本体部」に相当するのは、上記ア(ア)で説示したように甲2発明の「第1の円筒状胴カバー4」又は「第2の円筒状胴カバー4’」であって、申立人が主張する「胴2」とするのは、妥当ではない。
そして、本件発明1と甲2発明とは、上記イで説示したとおり、実質的な相違点3があるから、申立人が主張するように「両者間に相違点はない」とはいえない。
したがって、申立人の主張を採用することはできない。

エ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明ではない。

3 甲3を主引用例として
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
(ア)甲3発明の「ホース収納タイプの水栓」は、本件発明1の「水栓」に相当し、
甲3発明の「水栓本体1」の「上下方向に延びる部分」は、本件発明1の「水栓本体部」に相当し、
甲3発明の「シャワーヘッド6」は、本件発明1の「吐水ヘッド」に相当する。

(イ)甲3発明において、「シャワーヘッド6」が、「ホース継手4の先端に」「取り付けられて構成され」るとともに、「そのまま固定式の水栓に取り付けることができる」ことから、当該「シャワーヘッド6」は、「ホース継手4」に対して着脱自在に装着されているものといえる。
そうすると、甲3発明の「シャワーヘッド6」が、「水栓本体1」の「上下方向に延びる部分の側面から傾斜状に突出する突出管部2を有しており、この突出管部2内」に収納された「引出しホース5」の先端に接続された「ホース継手4」に対して、着脱自在に装着されていることと、本件発明1の「側面に吐水ヘッドが着脱自在に装着される水栓本体部」とは、「吐水ヘッドが着脱自在に装着される」点で共通する。

そうすると、本件発明1と甲3発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「水栓本体部を備え、
吐水ヘッドが着脱自在に装着される、
水栓。」

(相違点4)
「吐水ヘッドが着脱自在に装着される」部位が、本件発明1では、「水栓本体部」の「側面」であるのに対して、甲3発明では、「水栓本体1」の「上下方向に延びる部分の側面から傾斜状に突出する突出管部2」の内に収納された「引出しホース5」の先端に接続された「ホース継手4」である点。

(相違点5)
本件発明1は、「水栓本体部」が、「浄水機能を有しない吐水ヘッドから浄水機能を有する別の吐水ヘッドに交換可能に構成される」のに対して、甲3発明では、そのような特定がなされていない点。

イ 判断
上記相違点4について検討する。
甲第1号証には、水栓本体1の側面に吐水管3Aが接続され、吐水管3Aの先端に吐水口部4Bを備えた水栓において、前記吐出口部4Bが、水栓の吐水管3Aに脱着可能にした技術が開示され、また、甲第2号証には、「吐水管本体3」が「円筒状胴カバー」の側面に一体となって装着されている「吐水管5」を「胴2」から取り外したり、別の「吐水管5’」を前記「胴2」に取り付ける技術が開示され、また甲第5号証には、水栓全体の下向き水導出口に、吐水管に代えてシャワーヘッドを接続する継手や、浄水ユニットを内蔵したシャワーヘッドについての技術が開示されている。
しかしながら、「吐水ヘッドが着脱自在に装着される」部位が、「水栓本体部」の「側面」であることについては、甲第1号証、甲第2号証及び甲第5号証のいずれにも記載されておらず、示唆もされていない。
また、甲第4号証、甲第6号証ないし甲第10号証をみても、相違点4に係る本件発明1の構成は、記載も示唆もされていない。
よって、甲3発明において、相違点4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

ウ 申立人の主張について
申立人は特許異議申立書(第29頁下から6?4行)において、
甲3発明のうち、「シャワーヘッド」「水栓本体1、突出管部2及びホース継手2」「水栓」は、それぞれ、本件発明1の「吐水ヘッド」「水栓本体部」「水栓」に相当し、本件発明1の構成要件A(「側面に吐水ヘッドが着脱自在に装着される水栓本体部を備え、」)は一致する旨述べている。なお、申立人は、本件発明1の構成要素である「側面に」の点につき、甲3発明のと相当関係については何ら言及していない。

しかしながら、上記1(1)ウで説示した本件発明1の「側面」についての理解に基づくと、本件発明1の「側面」を有する「水栓本体部」に相当するのは、上記ア(ア)で説示したように甲3発明の「水栓本体1」の「上下方向に延びる部分」(「上下方向に延びる部分の側面から傾斜状に突出する突出管部2」は含まない。)であって、申立人が主張する「水栓本体1、突出管部2及びホース継手2」とするのは、妥当ではない。
そして、本件発明1と甲3発明とは、本件発明1の構成要件Aに関して、
上記イで説示したとおり、相違点4があるから、申立人が主張するように「本件発明1の構成要件Aは一致する」とはいえない。
したがって、申立人の主張を採用することはできない。

エ 小括
したがって、本件発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲3発明及び、甲1発明、甲2発明、甲5発明の何れか発明、並びに甲第4号証、甲第6号証ないし甲第10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、本件発明1の構成を全て含み更に減縮したものであるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、甲3発明及び、甲1発明、甲2発明、甲5発明の何れか発明、並びに甲第4号証、甲第6号証ないし甲第10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 甲4を主引用例として
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲4発明とを対比する。
(ア)甲4発明の「給水栓」は、本件発明1の「水栓」に相当し、
甲4発明の「湯水混合栓1」の「本体1a」は、本件発明1の「水栓本体部」に相当し、
甲4発明の「水洗具3」は、本件発明1の「吐水ヘッド」に相当する。

(イ)甲4発明において、「水洗具3」が、「延長ホース4に継手2を介して」「選択的且つ着脱可能に連結される」ことから、当該「水洗具3」は、「延長ホース4」に対して着脱自在に装着されているものといえる。
そうすると、甲4発明の「水洗具3」が、「湯水混合栓1」の「本体1a」の上部に「回動自在に設けられ」た「導管6」内を貫通させて先端部の開口から引き出された「延長ホース4の先端に」固着させた「接続金具9」に螺着された「継手2」を介して、「選択的且つ着脱可能に連結される」ことと、本件発明1の「側面に吐水ヘッドが着脱自在に装着される水栓本体部」とは、「吐水ヘッドが着脱自在に装着される」点で共通する。

(ウ)甲4発明が、「延長ホース4に継手2を介して選択的且つ着脱可能に連結される複数種類の水洗具3」を有していることから、延長ホース4に装着された「水洗具3」を、別の「水洗具3」に交換可能であることは明らかである。
そうすると、甲4発明の「延長ホース4」に装着されている「水栓具3」を、別の「水洗具3」に交換可能であることと、本件発明1の「前記水栓本体部は、浄水機能を有しない吐水ヘッドから浄水機能を有する別の吐水ヘッドに交換可能に構成されること」こととは、「吐水ヘッド」から「別の吐水ヘッドに交換可能に構成される」点で共通する。

そうすると、本件発明1と甲4発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「水栓本体部を備え
吐水ヘッドが着脱自在に装着され、
吐水ヘッドから別の吐水ヘッドに交換可能に構成される、
水栓。」

(相違点6)
「吐水ヘッドが着脱自在に装着される」部位が、本件発明1では、「水栓本体部」の「側面」であるのに対して、甲4発明では、「水栓本体1」の「上下方向に延びる部分の側面から傾斜状に突出する突出管部2を有しており、この突出管部2内」に収納された「引出しホース5」の先端に接続された「ホース継手4」である点。

(相違点7)
本件発明1は「水栓本体部」が、「浄水機能を有しない吐水ヘッドから浄水機能を有する別の吐水ヘッドに交換可能に構成される」のに対して、甲4発明では、吐水ヘッドから別の吐水ヘッドに交換可能に構成されるにとどまり、そのような特定がなされていない点。

イ 判断
相違点6について検討する。
甲第1号証には、水栓本体1の側面に吐水管3Aが接続され、吐水管3Aの先端に吐水口部4Bを備えた水栓において、前記吐出口部4Bが、水栓の吐水管3Aに脱着可能にした技術が開示され、また、甲第2号証には、「吐水管本体3」が「円筒状胴カバー」の側面に一体となって装着されている「吐水管5」を「胴2」から取り外したり、別の「吐水管5’」を前記「胴2」に取り付ける技術が開示され、また甲第5号証には、水栓全体の下向き水導出口に、吐水管に代えてシャワーヘッドを接続する継手や、浄水ユニットを内蔵したシャワーヘッドについての技術が開示されている。
しかしながら、「吐水ヘッドが着脱自在に装着される」部位が、「水栓本体部」の「側面」であることについては、甲第1号証、甲第2号証及び甲第5号証のいずれにも記載されておらず、示唆もされていない。
また、甲第3号証、甲第6号証ないし甲第10号証をみても、相違点6に係る本件発明1の構成は、記載も示唆もされていない。
よって、甲4発明において、相違点6に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

ウ 申立人の主張について
申立人は特許異議申立書(第34頁第1?3行)において、
甲4発明のうち、「水洗具3」「湯水混合栓1と継手2」「給水栓A」は、それぞれ、本件発明1の「吐水ヘッド」「水栓本体部」「水栓」に相当し、本件発明1の構成要件A(「側面に吐水ヘッドが着脱自在に装着される水栓本体部を備え、」)を開示する旨述べている。なお、申立人は、本件発明1の構成要素である「側面に」の点につき、甲4発明との相当関係については何ら言及していない。

しかしながら、上記1(1)ウで説示した本件発明1の「側面」についての理解に基づくと、本件発明1の「側面」を有する「水栓本体部」に相当するのは、上記ア(ア)で説示したように甲4発明の「湯水混合栓1」の「本体1a」であって、申立人が主張する「湯水混合栓1と継手2」とするのは、妥当ではない。
そして、本件発明1と甲4発明とは、本件発明1の構成要件Aに関して、
上記イで説示したとおり、相違点3があるから、申立人が主張するように「本件発明1の構成要件Aを開示する」とはいえない。
したがって、申立人の主張を採用することはできない。

エ 小括
したがって、本件発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲4発明及び、甲1発明、甲2発明、甲5発明の何れかの発明、並びに甲第3号証、甲第6号証ないし甲第10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、本件発明1の構成を全て含み更に減縮したものであるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、甲4発明及び、甲1発明、甲2発明、甲5発明の何れかの発明、並びに甲第3号証、甲第6号証ないし甲第10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。


 
異議決定日 2020-09-28 
出願番号 特願2016-22005(P2016-22005)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (E03C)
P 1 651・ 121- Y (E03C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 下井 功介  
特許庁審判長 住田 秀弘
特許庁審判官 西田 秀彦
秋田 将行
登録日 2019-12-13 
登録番号 特許第6629087号(P6629087)
権利者 株式会社LIXIL
発明の名称 水栓  
代理人 森下 賢樹  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ