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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1367308
審判番号 不服2019-17002  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-17 
確定日 2020-10-15 
事件の表示 特願2016-529348「偏光子、粘着剤付き偏光板及び画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月23日国際公開、WO2015/194523〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
特願2016-529348号(以下「本件出願」という。)は、平成27年6月16日(先の出願に基づく優先権主張 平成26年6月18日)を国際出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和 元年 6月19日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 7月29日提出:意見書
令和 元年 7月29日提出:手続補正書
令和 元年 9月26日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 元年12月17日提出:審判請求書
令和 元年12月17日提出:手続補正書
(令和 元年12月17日にした手続補正を以下「本件補正」という。)


第2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、本件出願の請求項1?12に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である下記の引用文献に記載された発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


引用文献2:特開2010-189489号公報
引用文献3:特開2010-65217号公報
引用文献5:特開2012-247574号公報
(当合議体注:引用文献5は、主引用例であり、引用文献2及び引用文献3は、副引用例である。)


第3 本願発明
本件出願の請求項1を引用する請求項7に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び請求項7に記載された事項により特定されるとおりの、次のものである。なお、引用形式を書き改めて記載した。
「ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオン及びフルオロアルキルスルホン酸イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の陰イオンを有する塩と、
下式(III)
R^(5)(OCH_(2)CH_(2))_(n)OR^(6) (III)
(式中、R^(5)は炭素数1?12のアルキル基を表し、R^(6)は水素原子又は炭素数1?12のアルキル基を表し、nは3?6の整数を表す)
で示されるポリエーテルとを含む帯電防止剤を含有する粘着剤組成物から形成される粘着剤層が、偏光子の少なくとも一方の面に密着して積層されている粘着剤付き偏光子における前記偏光子の片面に第一の透明保護層が積層され、前記偏光子の他方の面に前記粘着剤層が積層されている粘着剤付き偏光板。」
(なお、本件補正により補正前の請求項9が削除され、補正前の請求項10?12が請求項9?11に繰り上がったので、本件補正の目的は、請求項の削除である。)


第4 引用文献、引用発明
1 引用文献5の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用文献5として引用され、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、特開2012-247574号公報(以下、同じく「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付与したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。

(1)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板と、当該偏光板に設けられた粘着剤層を有する粘着型偏光板に関する。さらには、本発明は、前記粘着型偏光板を用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に関する。
・・・(省略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
・・・(省略)・・・
【0006】
一方、粘着型偏光板としては、偏光子の片側にのみ透明保護フィルムを設け、他の片側には透明保護フィルムを設けることなく、粘着剤層を設けた粘着型偏光板を用いる場合がある。かかる粘着型偏光板は、透明保護フィルムが片側にのみあるため、両側に透明保護フィルムを有する場合に比べて、透明保護フィルム一層分のコストが削減可能であるが、粘着剤層がイオン性化合物を含有させて帯電防止機能を付与する場合には、当該粘着剤層中のイオン性化合物の偏光子への影響が大きく、例えば、イオン性化合物として、イオン性液体およびイオン性固体を用いた場合には、偏光子を劣化させて、加湿試験後には光学特性が大きく低下する問題がある。
【0007】
また、特許文献5のように、ポリチオフェンなどの導電性ポリマーを含有する層を偏光板と粘着剤層に設けた場合も、偏光子が劣化し、光学特性が低下する。
【0008】
本発明は、帯電防止機能を有し、かつ耐久性を満足する粘着剤層を有し、光学特性の劣化が小さい粘着型偏光板を提供することを目的とする。
【0009】
また本発明は、前記粘着型偏光板を用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記粘着型偏光板を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち本発明は、偏光板と、当該偏光板に設けられた粘着剤層を有する粘着型偏光板であって、
前記偏光板は、偏光子の片側にのみ透明保護フィルムを有し、前記粘着剤層は、前記透明保護フィルムを有しない側の偏光子に設けられており、かつ
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)およびアルカリ金属塩(B)を含有する粘着剤組成物から形成されたものであることを特徴とする粘着型偏光板、に関する。
【0012】
上記粘着型偏光板において、前記アルカリ金属塩(B)が、リチウム塩であることが好ましい。
・・・(省略)・・・
【発明の効果】
【0023】
アクリル系ポリマーをベースポリマーとして用いた粘着剤において、当該粘着剤にイオン性化合物を配合することで帯電防止機能を付与させることができる。この場合には、粘着剤層の表面にイオン性化合物がブリードアウトすることで効率的に帯電防止機能が発現すると考えられる。一方、偏光子にイオン性化合物が接触することで、偏光度などの光学特性が低下する場合がある。
【0024】
本発明の粘着型偏光板の粘着剤層を形成する粘着剤組成物は、ベースポリマーである(メタ)アクリル系ポリマー(A)に加えて、帯電防止機能を付与することができる、アルカリ金属塩(B)を含有しており、当粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、帯電防止機能に優れている。また、本発明では、アルカリ金属塩(B)を用いることで、偏光子の劣化を招くことなく、帯電防止機能を付与できることが分かった。」

(2)「【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の粘着型偏光板の粘着剤層を形成する粘着剤組成物は、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマー(A)を含む。(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、通常、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
・・・(省略)・・・
【0047】
本発明の粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)に加えて、アルカリ金属塩(B)を含有する。アルカリ金属塩(B)は1種を単独でまたは複数を併用することができる。アルカリ金属塩(B)は、アルカリ金属の有機塩および無機塩を用いることができる。
【0048】
アルカリ金属塩(B)のカチオン部を構成するアルカリ金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムの各イオンが挙げられる。これらアルカリ金属イオンのなかでもリチウムイオンが好ましい。
【0049】
アルカリ金属塩(B)のアニオン部は有機物で構成されていてもよく、無機物で構成されていてもよい。有機塩を構成するアニオン部としては、・・・(省略)・・・特に(CF_(3)SO_(2))_(2)N^(-)、で表わされる(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが好ましい。
【0050】
アルカリ金属の有機塩としては、・・・(省略)・・・、特に(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドリチウム塩が好ましい。
・・・(省略)・・・
【0052】
本発明の粘着剤組成物におけるアルカリ金属塩(B)の割合は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、0.001?5重量部が好ましい。前記アルカリ金属塩(B)が0.001重量部未満では、帯電防止性能の向上効果が十分ではない場合がある。前記アルカリ金属塩(B)は、0.01重量部以上が好ましく、さらには0.1重量部以上であるのが好ましい。一方、前記アルカリ金属塩(B)は5重量部より多いと、耐久性が十分ではなくなる場合がある。前記アルカリ金属塩(B)は、3重量部以下が好ましく、さらには1重量部以下であるのが好ましい。前記アルカリ金属塩(B)の割合は、前記上限値または下限値を採用して好ましい範囲を設定できる。
・・・(省略)・・・
【0069】
さらに本発明の粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのポリエーテル化合物、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。また、制御できる範囲内で、還元剤を加えてのレドックス系を採用してもよい。
・・・(省略)・・・
【0074】
本発明の粘着型偏光板は、偏光子の片側にのみ透明保護フィルムを設け、他の片側には透明保護フィルムを設けることなく、偏光子に、前記粘着剤組成物により粘着剤層を形成したものである。」

(3)「【実施例】
【0113】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。以下に特に規定のない室温放置条件は全て23℃65%RHである。
【0114】
<(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量の測定>
(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
・分析装置:東ソー社製、HLC-8120GPC
・カラム:東ソー社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計90cm
・カラム温度:40℃
・流量:0.8ml/min
・注入量:100μl
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン
【0115】
<偏光板(1)の作成>
薄型偏光膜を作製するため、まず、非晶性PET基材に9μm厚のPVA層が製膜された積層体を延伸温度130℃の空中補助延伸によって延伸積層体を生成し、次に、延伸積層体を染色によって着色積層体を生成し、さらに着色積層体を延伸温度65度のホウ酸水中延伸によって総延伸倍率が5.94倍になるように非晶性PET基材と一体に延伸された4μm厚のPVA層を含む光学フィルム積層体を生成した。このような2段延伸によって非晶性PET基材に製膜されたPVA層のPVA分子が高次に配向され、染色によって吸着されたヨウ素がポリヨウ素イオン錯体として一方向に高次に配向された高機能偏光膜を構成する、厚さ4μmのPVA層を含む光学フィルム積層体を生成することができた。更に、当該光学フィルム積層体の偏光膜の表面にポリビニルアルコール系接着剤を塗布しながら、けん化処理した40μm厚のトリアセチルセルロースフィルムを貼合せたのち、非晶性PET基材を剥離して、薄型偏光膜を用いた偏光板を作製した。以下、これを薄型偏光板(1)という。
【0116】
<偏光板(2)の作成>
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、速度比の異なるロール間において、30℃、0.3%濃度のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3倍まで延伸した。その後、60℃、4%濃度のホウ酸、10%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に0.5分間浸漬しながら総合延伸倍率が6倍まで延伸した。次いで、30℃、1.5%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に10秒間浸漬することで洗浄した後、50℃で4分間乾燥を行い、厚さ20μmの偏光子を得た。当該偏光子の両面に、けん化処理した厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せて偏光板を作成した。以下、これをTAC系偏光板(2)という。
【0117】
製造例1
<アクリル系ポリマー(A1)の調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート82部、ベンジルアクリレート15部、4-ヒドロキシブチルアクリレート3部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、前記モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチルと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃付近に保って7時間重合反応を行った。その後、得られた反応液に、酢酸エチルを加えて、固形分濃度30%に調整した、重量平均分子量100万のアクリル系ポリマー(A-1)の溶液を調製した。
【0118】
製造例2
<アクリル系ポリマー(A-2)の調製>
製造例1において、モノマー混合物として、ブチルアクリレート76.8部、ベンジルアクリレート10部、フェノキシエチルアクリレート10部、4-ヒドロキシブチルアクリレート3部およびアクリル酸0.2部を含有するモノマー混合物を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、重量平均分子量100万のアクリル系ポリマー(A2)の溶液を調製した。
【0119】
製造例3
<アクリル系ポリマー(A-3)の調製>
製造例1において、モノマー混合物として、ブチルアクリレート81.9部、ベンジルアクリレート13部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.1部およびアクリル酸5部を含有するモノマー混合物を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、重量平均分子量100万のアクリル系ポリマー(A2)の溶液を調製した。
【0120】
実施例1
(粘着剤組成物の調製)
製造例1で得られたアクリル系ポリマー(A-1)溶液の固形分100部に対して、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(日本カーリット社製)0.002部を配合し、さらに、トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート(三井化学社製:タケネートD110N)0.1部と、ジベンゾイルパーオキサイド0.3部と、γ-グリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM-403)0.075部を配合して、アクリル系粘着剤溶液を調製した。
【0121】
(粘着型偏光板の作製)
次いで、上記アクリル系粘着剤溶液を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータフィルム)の表面に、ファウンテンコータで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで2分間乾燥し、セパレータフィルムの表面に厚さ20μmの粘着剤層を形成した。次いで、上記で作成した薄型偏光板(1)の偏光子の偏光膜の側に、セパレータフィルム上に形成した粘着剤層を転写して、粘着型偏光板を作製した。
【0122】
実施例2?17、比較例1?4
実施例1において、粘着剤組成物の調製にあたり、各成分の使用量を表1に示すように変えたこと、粘着型偏光板の作製にあたり偏光板の種類を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着型偏光板を作製した。
【0123】
上記実施例および比較例で得られた、粘着型偏光板について以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0124】
<表面抵抗値:初期>
粘着型偏光板のセパレータフィルムを剥がした後、粘着剤表面の表面抵抗値(Ω/□)を三菱化学アナリテック社製MCP-HT450を用いて測定した。
【0125】
<静電気ムラの評価>
作製された粘着型偏光板を100mm×100mmの大きさに切断し、液晶パネルに貼り付けた。このパネルを10000cdの輝度を持つバックライト上に置き、静電気発生装置であるESD(SANKI社製,ESD-8012A)を用いて5kvの静電気を発生させることで液晶の配向乱れを起こした。その配向不良による表示不良の回復時間(秒)を、瞬間マルチ測光検出器(大塚電子社製,MCPD-3000)を用いて測定し、下記基準で評価した。
◎:表示不良が1秒未満で消失した。
○:表示不良が1秒以上10秒未満で消失した。
×:表示不良が10秒以上で消失した。
【0126】
<耐久性>
粘着型偏光板のセパレータフィルムを剥がし、厚さ0.7mmの無アルカリガラス(コーニング社製,1737)にラミネーターを用いて貼着した。次いで、50℃、0.5MPaで、15分間のオートクレーブ処理を行って、上記粘着型偏光板を完全に無アクリルガラスに密着させた。次いで、これを、80℃の加熱オーブン(加熱)および60℃/90%RHの恒温恒湿機(加湿)の条件下にそれぞれ投入して、500時間後の偏光板の剥がれの有無を、下記基準で評価した。
◎:全く剥がれが認められなかった。
○:目視では確認できない程度の剥がれが認められた。
△:目視で確認できる小さな剥がれが認められた。
×:明らかな剥がれが認められた。
【0127】
<偏光の測定>
粘着型偏光板のセパレータフィルムを剥がし厚さ0.7mmの無アルカリガラス(コーニング社製,1737)にラミネーターを用いて貼着した。次いで、50℃、0.5MPaで、15分間のオートクレーブ処理を行って、上記粘着型偏光板を完全に無アクリルガラスに密着させた。次いで、60℃/95%RHの恒温恒湿機に500時間投入した。投入前と投入後の偏光板の偏光度を、日本分光(株)製のV7100を用いて測定し、変化量ΔP=(投入前の偏光度)-(投入後の偏光度)、を求めた。
【0128】
【表1】


【0129】
表1において、アルカリ金属塩(B)における、「B-1」は日本カーリット社製のリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、「B-2」は日本カーリット社製のリチウムパークロライド、「B-3」は関東化学社製の1-ヘキシル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロリン酸塩、を示す。
架橋剤(C)における、「C-1」は三井武田ケミカル社製のイソシアネート架橋剤(タケネートD110N,トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート)、「C-2」は日本ポリウレタン工業社製のイソシアネート架橋剤(コロネートL,トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネートのアダクト体)、「C-3」は日本油脂社製のベンゾイルパーオキサイド(ナイパーBMT)、を示す。
シランカップリング剤(D)における「D-1」は信越化学工業社製のKBM403を示す。
その他の化合物(E)における「E-1」はカネカ社製のサイリルSAT10(数平均分子量4000)、を示す。「E-2」はポリプロピレングルコール(数平均分子量5000)、を示す。」
(当合議体注:「ナイパーBMT」は「ジベンゾイルパーオキサイド」等の混合物である。また,「KBM403」は,「γ-グリシドキシプロピルメトキシシラン」である。)

(4)引用発明
上記(1)ないし(3)より、引用文献5には、粘着型偏光板の実施例12として下記の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、用語を統一して記載した。

「 非晶性PET基材に9μm厚のPVA層が製膜された積層体を延伸温度130℃の空中補助延伸によって延伸積層体を生成し、次に、延伸積層体を染色によって着色積層体を生成し、さらに着色積層体を延伸温度65度のホウ酸水中延伸によって総延伸倍率が5.94倍になるように非晶性PET基材と一体に延伸された4μm厚のPVA層を含む光学フィルム積層体を生成し、このような2段延伸によって非晶性PET基材に製膜されたPVA層のPVA分子が高次に配向され、染色によって吸着されたヨウ素がポリヨウ素イオン錯体として一方向に高次に配向された高機能偏光膜を構成する、厚さ4μmのPVA層を含む光学フィルム積層体を生成し、更に、当該光学フィルム積層体の偏光膜の表面にポリビニルアルコール系接着剤を塗布しながら、けん化処理した40μm厚のトリアセチルセルロースフィルムを貼合せたのち、非晶性PET基材を剥離して薄型偏光膜を用いた薄型偏光板(1)を作製し、

攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート82部、ベンジルアクリレート15部、4-ヒドロキシブチルアクリレート3部を含有するモノマー混合物を仕込み、さらに、前記モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチルと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃付近に保って7時間重合反応を行い、その後、得られた反応液に、酢酸エチルを加えて、固形分濃度30%に調整して重量平均分子量100万のアクリル系ポリマー溶液を調製し、

アクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、日本カーリット社製のリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド0.2部を配合し、さらに、三井武田ケミカル社製のイソシアネート架橋剤(タケネートD110N,トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート)0.1部と、日本油脂社製のベンゾイルパーオキサイド(ナイパーBMT)0.3部と、信越化学工業社製のKBM403(γ-グリシドキシプロピルメトキシシラン)0.075部と、ポリプロピレングリコール(E-2)0.5部を配合して、アクリル系粘着剤溶液を調製し、

アクリル系粘着剤溶液を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータフィルム)の表面に、ファウンテンコータで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで2分間乾燥し、セパレータフィルムの表面に厚さ20μmの粘着剤層を形成し、次いで、薄型偏光板(1)の偏光子の偏光膜の側に、セパレータフィルム上に形成した粘着剤層を転写して、作製した粘着型偏光板。」

2 引用文献2及び引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用され、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、特開2010-189489号公報(以下、同じく「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付与したものであり、引用文献2に記載された事項の認定に活用した箇所を示す。

(1)「【0001】
本発明は、帯電防止性を有する粘着剤組成物及び粘着シートに関する発明であり、より具体的には、特に液晶ディスプレイ等に使用される偏光板や位相差板に好適に適用される帯電防止性を有する粘着剤組成物及び粘着シートに関する。
・・・(省略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況の下、本発明の目的は、表面抵抗率が5×10^(10)Ω/□以下という優れた帯電防止性を有するとともに十分な耐光漏れ性や耐久性を有する粘着剤層を形成するための粘着剤組成物、および該粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する粘着シートを提供することにある。
従来の帯電防止性を有する粘着シート類においては、表面抵抗率が5×10^(10)Ω/□以下という優れた帯電防止性を発現させるためには、多量の帯電防止剤の添加が必要となり、耐久性への悪影響が顕著になるため、帯電防止性と耐久性の両立が難しいという問題があった。
・・・(省略)・・・
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の粘着剤組成物においては、2種類の異なる官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)および(B)を使用する。
一方の共重合体(A)は、モノマー構成単位として1.0?15質量%の水酸基含有モノマーを含み、もう一方の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)はモノマー構成単位としてカルボキシル基含有モノマー含んでおり、カルボキシル基含有モノマーが水酸基含有モノマーに対して当量比で0.3以上となる関係を有し、かつ、リチウム塩(C)およびオキシアルキレン鎖の繰り返し単位が2?10であるアルキレングリコールジアルキルエーテル(D)を含有することを特徴としている。
・・・(省略)・・・
【0013】
次に、成分(C)であるリチウム塩について説明する。本発明においては、帯電防止性を付与するためにリチウム塩を含有させる。リチウム塩を構成するリチウムイオンは、各種金属イオンの中でも原子半径が小さく、形成される粘着剤層中を移動しやすく、帯電防止性を発揮させることに優れている。
リチウム塩としては、LiCl、LiBr、LiI、LiBF_(4)、LiPF_(6)、LiSCN、LiClO_(4)、LiCF_(3)SO_(3)、Li(CF_(3)SO_(2))_(2)N、Li(CF_(3)SO_(2))_(3)C等が挙げられる。中でも粘着剤組成物との親和性の観点からLiCF_(3)SO_(3)、Li(CF_(3)SO_(2))_(2)N、Li(CF_(3)SO_(2))_(3)Cが特に好ましい。
次に、成分(D)であるオキシアルキレン鎖の繰り返し単位が2?10であるアルキレングリコールジアルキルエーテルについて説明する。
成分(C)と共に成分(D)を使用することにより、成分(C)のリチウムイオンと成分(D)が錯体を形成することにより帯電防止性を発揮するのに十分な電離状態を有効に作りだすことができ、また、これを維持することができる。さらに、成分(D)は、共重合体(A)および(B)等の粘着剤組成物のその他の成分と成分(C)の親和性を高める役割を果たす。特に、本発明の成分(D)は少量で前記効果を発揮することができることを特徴とする。
成分(D)のアルキレングリコールジアルキルエーテルにおけるオキシアルキレン鎖の繰り返し単位は、通常2?10であり、3?8であることが好ましく、4?6であることが特に好ましい。また、成分(D)におけるアルキレングリコールジアルキルエーテルの両末端の酸素原子と結合するアルキル基は、通常炭素数1?6であり、1?4であることが好ましく、1?2であることが特に好ましい。
具体的には、オクタエチレングリコールジブチルエーテル、オクタエチレングリコールジエチルエーテル、オクタエチレングリコールジメチルエーテル、ヘキサエチレングリコールジブチルエーテル、ヘキサエチレングリコールジエチルエーテル、ヘキサエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテルなどが好ましく挙げられ、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルが特に好ましく挙げられる。
前記リチウム塩(C)とアルキレングリコールジアルキルエーテル(D)の配合割合は、モル比(C)/(D)として、通常30/70?70/30であり、好ましくは40/60?60/40であり、特に好ましくは50/50である。
リチウム塩(C)とアルキレングリコールジアルキルエーテル(D)の最も好ましい組み合わせの例としては、リチウム塩(C)としてLi(CF_(3)SO_(2))_(2)Nを使用し、アルキレングリコールジアルキルエーテル(D)としてテトラエチレングリコールジメチルエーテルを使用し、モル比(C)/(D)が50/50となるように配合したものが挙げられる。
リチウム塩(C)とアルキレングリコールジアルキルエーテル(D)は、その他の粘着剤組成物の成分と混合する前に、予め混合しておくことが好ましい。予め混合しておくことにより粘着剤組成物との混合を均一に行うことができる。
リチウム塩(C)とアルキレングリコールジアルキルエーテル(D)の混合物は、共重合体(A)中に含有させておくことも可能であるし、共重合体(B)中に含有させておくこともできる。あるいは、共重合体(A)および(B)の混合時に添加することもできる。リチウム塩(C)とアルキレングリコールジアルキルエーテル(D)の合計の含有量は、共重合体(A)100質量部(固形分換算)に対して、1?30質量部が好ましく、より好ましくは2?20質量部、特に好ましくは3?15質量部である。リチウム塩(C)とアルキレングリコールジアルキルエーテル(D)の合計の含有量を1質量部以上とすることにより、帯電防止性が確保され、30質量部以下とすることにより、リチウム塩の析出を防止し、耐久性の低下及びブリードアウトによる汚染を防止する。」

(2)引用文献2に記載された事項
上記(1)より、引用文献2には、「粘着剤組成物において、Li(CF_(3)SO_(2))_(2)Nとテトラエチレングリコールジメチルエーテルとを含有させると、帯電防止性が確保され、リチウム塩の析出を防止し、耐久性の低下及びブリードアウトによる汚染を防止することができること。」(以下「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されている。

3 引用文献3及び引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用文献3として引用され、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、特開2010-65217号公報(以下、同じく「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付与したものであり、引用文献3に記載された事項の認定に活用した箇所を示す。

(1)「【0001】
本発明は、液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に好適に用いられる光学フィルム(偏光フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等)等、具体的には、偏光フィルムが、三酢酸セルロース系フィルム等の保護フィルムで被覆された光学積層体と液晶セルのガラス基板との接着に用いられる光学部材用粘着剤樹脂組成物、および光学部材用粘着剤、ならびにこの光学部材用粘着剤からなる粘着剤層が形成された粘着剤層付き光学部材、とりわけ粘着剤層付き偏光板に関するものである。より詳しくは、帯電防止性能に優れ、さらには、高温、高湿の条件下においても、光学積層体とガラス基板との接着性に優れ、粘着剤層とガラス基板との間に発泡や剥離が生じないうえに、光学フィルムの収縮により生じる光漏れ現象を防止することができる等の耐久性に優れた光学部材用粘着剤樹脂組成物、および光学部材用粘着剤、ならびにそれを用いて得られる粘着剤層付き光学部材に関するものである。
・・・(省略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の開示技術では、帯電防止性能の効果は認められるものの、イオン液体が配合されているため、経時においてブリードしてくる等の可能性があり、またベースポリマー自身については帯電防止能を有しない一般的なものであり、上記イオン液体のみの帯電防止性能に頼るものであった。また、使用対象である光学部材、特に偏光板用途において重要である耐久性および光漏れ防止性能については全く考慮されてはいないものであった。
【0007】
一方、上記特許文献2の開示技術では、上記特許文献1と同様、帯電防止性能の効果は認められるものの、ベースポリマーに配合した帯電防止剤が、経時においてブリードしてくる等の可能性があり、実用には耐えないものであった。
・・・(省略)・・・
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を解決するため、鋭意検討を行なう過程で、まず、帯電防止能の付与を目的に帯電防止剤を多量に添加した場合、粘着剤自体の耐久性が著しく低下し、逆に帯電防止剤の添加量を減らし帯電防止性能を維持させるためには、粘着剤を構成する樹脂自体の改良が必要となるという知見を得た。この知見に基づき、研究を重ねた結果、上記樹脂の重合成分である水酸基含有アクリルモノマーの使用比率を高くすることにより帯電防止能が発揮されることとなるが、上記水酸基含有アクリルモノマーの使用量が多すぎると耐久性が低下することを突き止めた。このようなことから、粘着剤の耐久性の低下を生起させずに優れた帯電防止能を付与することを可能とする帯電防止剤を得るべくさらに研究を重ねた結果、種々の帯電防止剤の中でも特に粒子径の小さい帯電防止剤である、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方を用いると、耐久性、光漏れ防止性および帯電防止能に優れた光学部材用粘着剤樹脂組成物が得られることを見出し本発明に到達した。
・・・(省略)・・・
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明は、水酸基含有モノマーを15重量%以上含有する重合成分が重合してなるアクリル系樹脂(A)と、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)を含有する光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]であり、この光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]が架橋されてなる光学部材用粘着剤である。このため、粘着物性と帯電防止性能のバランスに優れ、また、高温、高湿の条件下においても、光学積層体、とりわけ偏光板とガラス基板との接着性に優れ、粘着剤層とガラス基板との間に発泡や剥離が生じないうえに、偏光フィルムの収縮により生じる光漏れ現象を防止することができる等の耐久性に優れた液晶表示板を得ることができる。
【0015】
上記光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]が、架橋剤(C)を含有し、この架橋剤(C)により架橋されたものであると、より一層優れた耐久性と光漏れ防止性が得られる。
【0016】
上記光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]が、重合性成分として不飽和基含有化合物(D)を含有するとともに、重合開始剤(E)を含有し、活性エネルギー線および/または熱により架橋されたものであると、より一層優れた耐久性と光漏れ防止性が得られる。【0017】
上記光学部材用粘着剤のゲル分率が80%以上であると、より一層優れた耐久性と光漏れ防止性が得られる。
【発明を実施するための形態】
・・・(省略)・・・
【0019】
本発明の光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]は、水酸基含有モノマーを15重量%以上含有する重合成分が重合してなるアクリル系樹脂(A)と、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)を用いて得られるものである。そして、本発明の光学部材用粘着剤は、この光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]が架橋されてなる架橋体からなるものである。
・・・(省略)・・・
【0044】
上記アクリル系樹脂(A)とともに用いられるアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)(以下、「帯電防止剤(B)」と記すことがある。)は、帯電防止剤としての作用を奏するものであるが、併せて耐久性の低下を招かないといった作用も奏するものである。
【0045】
上記アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩における、カチオン部分としては、例えば、Li^(+),Na^(+),K^(+),Mg^(2+),Ca^(2+)があげられるが、これらの中でも帯電防止性能に優れる点で、Li^(+)、Na^(+)、K^(+)であることが好ましい。
【0046】
また、上記アルカリ金属塩,アルカリ土類金属塩における、アニオン部分としては、例えば、Cl^(-)、Br^(-)、I^(-)、BF_(4)^(-)、PF_(6)^(-)、CF_(3)COO^(-)、SbF_(6)^(-)、NbF_(6)^(-)、TaF_(6)^(-)、F(HF)n^(-)、C_(4)F_(9)SO_(3)^(-)、C_(3)F_(7)COO^(-)、CF_(3)SO_(3)^(-)、(CF_(3)SO_(2))_(2)N^(-)、(CF_(3)SO_(2))_(3)C^(-)、(C_(2)F_(5)SO_(2))_(2)N^(-)、(CF_(3)SO_(2))(CF_(3)CO)N^(-)、AlCl_(4)^(-)、Al_(2)Cl_(7)^(-)、ClO_(4)^(-)、NO_(3)^(-)、CH_(3)COO^(-)、CH_(3)SO_(3)^(-)、AsF_(6)^(-)、(CN)_(2)N^(-)、等があげられるが、これらの中でも、BF_(4)^(-)、PF_(6)^(-)、CF_(3)COO^(-)、SbF_(6)^(-)、NbF_(6)^(-)、TaF_(6)^(-)、F(HF)n^(-)、C_(4)F_(9)SO_(3)^(-)、C_(3)F_(7)COO^(-)、CF_(3)SO_(3)^(-)、(CF_(3)SO_(2))_(2)N^(-)、(CF_(3)SO_(2))_(3)C^(-)、(C_(2)F_(5)SO_(2))_(2)N^(-)、(CF_(3)SO_(2))(CF_(3)CO)N^(-)等のフッ素原子含有アニオンであることが好ましく、特に好ましくは(CF_(3)SO_(2))_(2)N^(-)、(CF_(3)SO_(2))_(3)C^(-)、(C_(2)F_(5)SO_(2))_(2)N^(-)、(CF_(3)SO_(2))(CF_(3)CO)N^(-)等のスルホニル基およびフッ素原子含有アニオンであり、さらに好ましくは(CF_(3)SO_(2))_(2)N^(-)、(C_(2)F_(5)SO_(2))_(2)N^(-)、(CF_(3)SO_(2))(CF_(3)CO)N^(-)等のイミド構造を有するスルホニル基およびフッ素原子含有アニオンである。
【0047】
上記カチオンおよびアニオンを組み合わせて得られるアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)の中でも、帯電防止性能以外の物性を悪化させることなく帯電防止性能を付与できる点で、トリフルオロメタンスルホニルイミドリチウム(当合議体注:「ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム」の趣旨と理解される。)、トリフルオロメタンスルホニルイミドカリウムを用いることが特に好ましい。
【0048】
上記アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、通常、0.001?20重量部に設定する。より好ましくは0.1?10重量部であり、特に好ましくは1?5重量部である。すなわち、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)の含有量が少な過ぎると、充分な帯電防止能を付与することが困難となり、多過ぎると、耐久性が低下する傾向がみられるからである。
・・・(省略)・・・
【0100】
また、本発明においては、粘着剤形成材料である粘着剤組成物[I]として、さらにアルキレンオキサイド基含有化合物(G)〔ただし、先に述べた不飽和基含有化合物(D)は除く〕〔以下、単にアルキレンオキサイド基含有化合物(G)と記すことがある。〕を含有することが、光学部材に対する密着性が向上する点で好ましい。
【0101】
上記アルキレンオキサイド基含有化合物(G)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、通常、1?90重量部に設定され、好ましくは2?30重量部、特に好ましくは3?10重量部、殊には4?5重量部である。上記アルキレンオキサイド基含有化合物(G)の含有量が少なすぎると、帯電防止能に劣る傾向があり、多すぎると粘着物性が悪化する傾向がある。
【0102】
上記オキシアルキレン基含有化合物(G)としては、オキシアルキレン基を有する化合物(不飽和基含有化合物は除く)であればよく、各種オキシアルキレン基含有化合物を用いることができ、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンジアミン、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルアリルエーテル等の非イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、オキシアルキレン基を有するカチオン性界面活性剤や両イオン性界面活性剤、オキシアルキレン基含有ポリエーテルエステル等があげられる。
【0103】
これらの中でも、オキシエチレン基含有化合物が好ましく、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンジアミン、オキシエチレン基含有ポリエーテル系ポリマー、オキシエチレン基含有ポリエーテルエステルアミド、オキシエチレン基含有ポリエーテルアミドイミド、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン酸脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等があげられ、オキシエチレン基を有するポリエーテル系ポリマーまたはアクリル系ポリマーが、ベースポリマーとの相溶性のバランスがとり易く好ましく用いられる。
【0104】
上記オキシエチレン基含有ポリエーテル系ポリマーとしては、ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールのブロック共重合体、ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコールのブロック共重合体、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコールのブロック共重合体、ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコールのランダム共重合体等のポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのランダム共重合体やブロック共重合体があげられる。グリコール鎖の末端は、水酸基のままでもよいし、アルキル基、フェニル基等で置換されていてもよい。
【0105】
上記ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのランダム共重合体やブロック共重合体のポリエチレングリコール比率としては5?75重量%が好ましく、10?70重量%がより好ましい。ポリエチレングリコール比率が少なすぎるとイオン性液体との相溶性が悪くなり、充分な帯電防止特性が得られにくくなる傾向があり、多すぎると結晶性が高くなりアクリル系ポリマーとの相溶性が悪くなり充分な帯電防止特性が得られにくくなる傾向がある。
【0106】
これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。上記オキシエチレン基含有化合物のなかでも、上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルが、効果的に帯電防止能を上げる点で好ましい。
【0107】
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の繰返しが2のもの、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等の繰返しが3のもの、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、それ以上のポリオキシエチレンジメチルエーテル等があげられ、これらの中でも、テトラエチレングリコールジメチルエーテルが好ましく用いられる。
【0108】
また、本発明においては、上記オキシアルキレン基含有化合物(G)中のオキシアルキレン基含有率が5?85重量%であることが好ましく、7?80重量%であることがより好ましく、9?75重量%であることがさらに好ましい。かかる含有率が低すぎると、帯電防止性能に劣る傾向があり、多すぎると、親水性になりすぎることにより、耐湿熱性に劣る傾向がある。
【0109】
上記オキシアルキレン基含有化合物(G)の分子量としては、数平均分子量が100?10000が好ましく、特に好ましくは180?1000である。なお、上記数平均分子量は、前述の重量平均分子量と同様の方法にて求められる。
【0110】
なお、本発明において、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)をあらかじめオキシアルキレン基含有化合物(G)に溶解して用いることが、効率的に塩をアクリル系樹脂(A)に溶解できる点で好ましい。この操作を行わない場合、アクリル樹脂(A)に帯電防止剤(B)が溶けにくい事がある。」

(2)引用文献3に記載された事項
上記(1)より、引用文献3には、「光学部材用粘着剤樹脂組成物において、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドリチウムを含有させると、帯電防止剤としての作用を奏するものであるが、併せて耐久性の低下を招かず、テトラエチレングリコールジメチルエーテルとを含有させると、密着性が向上し効果的に帯電防止能を上げることできること。」(以下「引用文献3に記載された事項」という。)が記載されている。


第5 当審の判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)塩、粘着剤組成物
引用発明の「アクリル系粘着剤溶液」は、「アクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、日本カーリット社製のリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド0.2部を配合し、さらに、三井武田ケミカル社製のイソシアネート架橋剤(タケネートD110N,トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート)0.1部と、日本油脂社製のベンゾイルパーオキサイド(ナイパーBMT)0.3部と、信越化学工業社製のKBM403(γ-グリシドキシプロピルメトキシシラン)0.075部と、ポリプロピレングリコール0.5部を配合して」、「調製し」たものである。
ここで、引用発明の「リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド」は、その文言が意味するとおり、「ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド」(陰イオン)と「リチウム」(陽イオン)の塩であり,帯電防止剤として機能するものである。また、引用発明の「アクリル系粘着剤溶液」は、その文言が意味するとおり、「アクリル系粘着剤」の「溶液」であり、組成物と理解される。
そうしてみると、引用発明の「リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド」及び「アクリル系粘着剤溶液」は、それぞれ本願発明の「ビス(トリフルオロアルキルスルホニル)イミド」「の陰イオンを有する塩」及び「粘着剤組成物」に相当する。また,引用発明の「アクリル系粘着剤溶液」は,本願発明の「粘着剤組成物」における,「ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオン及びフルオロアルキルスルホン酸イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の陰イオンを有する塩」「を含む帯電防止剤を含有する」との要件を満たす。

(2)粘着剤層、偏光子
引用発明の「粘着型偏光板」は、「アクリル系粘着剤溶液を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータフィルム)の表面に、ファウンテンコータで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで2分間乾燥し、セパレータフィルムの表面に厚さ20μmの粘着剤層を形成し、次いで、上記で作成した薄型偏光板(1)の偏光子の偏光膜の側に、セパレータフィルム上に形成した粘着剤層を転写して、作製した」ものである。また、引用発明の「アクリル系粘着剤溶液」は,前記(1)で述べたとおりのものである。
そうしてみると、引用発明の「粘着剤層」及び「偏光子」は、それぞれ、本願発明の「粘着剤層」及び「偏光子」に相当する。また、引用発明の「粘着剤層」は、本願発明の「粘着剤層」における、「帯電防止剤を含有する粘着剤組成物から形成される」との要件を満たす。加えて、引用発明の「粘着剤層」及び「偏光子」を併せたものは、本願発明の、「粘着剤層が、偏光子の少なくとも一方の面に密着して積層されている」とされる「粘着剤付き偏光子」に相当する。

(3)第一保護層
引用発明の「薄型偏光板(1)」は、「非晶性PET基材に9μm厚のPVA層が製膜された積層体を延伸温度130℃の空中補助延伸によって延伸積層体を生成し、次に、延伸積層体を染色によって着色積層体を生成し、さらに着色積層体を延伸温度65度のホウ酸水中延伸によって総延伸倍率が5.94倍になるように非晶性PET基材と一体に延伸された4μm厚のPVA層を含む光学フィルム積層体を生成し、このような2段延伸によって非晶性PET基材に製膜されたPVA層のPVA分子が高次に配向され、染色によって吸着されたヨウ素がポリヨウ素イオン錯体として一方向に高次に配向された高機能偏光膜を構成する、厚さ4μmのPVA層を含む光学フィルム積層体を生成し、更に、当該光学フィルム積層体の偏光膜の表面にポリビニルアルコール系接着剤を塗布しながら、けん化処理した40μm厚のトリアセチルセルロースフィルムを貼合せたのち、非晶性PET基材を剥離して」「作製し」たものである。また、引用発明の「粘着型偏光板」は、前記(2)で述べたとおりのものである。
ここで、引用発明の「トリアセチルセルロースフィルム」が偏光子を保護する機能を具備する層であることは、技術的にみて明らかである。また、これに序数詞(第一)を付して称しても、その実体は変わらない。「偏光子」のどちらの面を「一方」、「他方」と称するかについても同様である。
そうしてみると、引用発明の「トリアセチルセルロースフィルム」及び「粘着型偏光板」は、本願発明の「第一保護層」及び「粘着剤付き偏光板」に相当する。また、引用発明の「粘着型偏光板」は、本願発明の「粘着剤付き偏光板」における、「粘着剤付き偏光子における前記偏光子の片面に第一の透明保護層が積層され、前記偏光子の他方の面に前記粘着剤層が積層されている」との要件を満たす。

2 一致点・相違点
(1)一致点
以上の対比結果を踏まえると、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。
「 ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオン及びフルオロアルキルスルホン酸イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の陰イオンを有する塩を含む帯電防止剤を含有する粘着剤組成物から形成される粘着剤層が、偏光子の少なくとも一方の面に密着して積層されている粘着剤付き偏光子における前記偏光子の片面に第一の透明保護層が積層され、前記偏光子の他方の面に前記粘着剤層が積層されている粘着剤付き偏光板。」

(2)相違点
本願発明と引用発明は、以下の点で相違する。
(相違点)
「帯電防止剤」が、本願発明は、「下式(III)
R^(5)(OCH_(2)CH_(2))_(n)OR^(6) (III)
(式中、R^(5)は炭素数1?12のアルキル基を表し、R^(6)は水素原子又は炭素数1?12のアルキル基を表し、nは3?6の整数を表す)で示されるポリエーテル」「を含む」のに対して、引用発明は、この構成を具備しない点。

3 判断
上記相違点について検討する。
(1)引用文献2及び引用文献3に記載された「テトラエチレングリコールジメチルエーテル」は、相違点に係る本願発明の「下式(III)」「で示されるポリエーテル」の要件を満たすものである。また、引用文献2に記載された事項及び引用文献3に記載された事項からみて、「Li(CF_(3)SO_(2))_(2)N」と「テトラエチレングリコールジメチルエーテル」の組み合わせは、粘着剤層における帯電防止性能や密着性の観点から、優れた効果が期待できるものといえる。
これに対して、引用文献5の【0008】には、「本発明は、帯電防止機能を有し、かつ耐久性を満足する粘着剤層を有し、光学特性の劣化が小さい粘着型偏光板を提供することを目的とする」と記載されている。また、粘着剤層において、密着性をよくするという課題は周知のものである。

(2)そうしてみると、引用発明の「粘着型偏光板」において「Li(CF_(3)SO_(2))_(2)N」と「テトラエチレングリコールジメチルエーテル」の組み合わせを帯電防止剤として採用することにより、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

4 効果についての検討
本件出願明細書の[0011]の「本発明によれば、偏光子の表面に直接帯電防止剤を含有する粘着剤層が形成されても、高温や高湿熱環境下において、偏光子の色抜けや劣化を抑制することができる。また、偏光子に粘着剤層を積層することによって、これを適用した偏光板及び画像表示装置をより薄型軽量な構成とすることができる。本発明の粘着剤付き偏光板は、高温や高湿熱環境下においても良好な耐久性を示すものとなるため、この偏光板を画像表示素子と組み合わせた画像表示装置も、薄肉化され、しかも耐久性に優れたものとなる。」という効果は、引用発明並びに引用文献2に記載された事項及び引用文献3に記載された事項から予測できる範囲内のものである。

5 審判請求人の主張について
審判請求人は、令和元年12月17日提出の審判請求書において、「引用文献5は、ポリエーテルの使用に消極的であり、このような引用文献5と、引用文献2や引用文献3に記載された適用とに基づいて、敢えてポリエーテル〔要件(B)〕を使用することとして本願発明に想到することは、決して容易ではない。」と主張している。
確かに、引用文献5の【0008】及び【0023】には、それぞれ「本発明は、帯電防止機能を有し、かつ耐久性を満足する粘着剤層を有し、光学特性の劣化が小さい粘着型偏光板を提供することを目的とする」、「アクリル系ポリマーをベースポリマーとして用いた粘着剤において、当該粘着剤にイオン性化合物を配合することで帯電防止機能を付与させることができる。この場合には、粘着剤層の表面にイオン性化合物がブリードアウトすることで効率的に帯電防止機能が発現すると考えられる。」と記載されている。
しかしながら、引用文献5の【0023】には、「一方、偏光子にイオン性化合物が接触することで、偏光度などの光学特性が低下する場合がある。」とも記載されている(ブリードアウトさせるとしても、その量の制御は必要と理解される。)。
そうしてみると、引用発明において、ポリエーテルを使用することに阻害要因はないと理解される。
なお、引用文献5の【0069】には、「さらに本発明の粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのポリエーテル化合物・・・などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。」と記載され、ポリエーテルの使用に肯定的な記載もある。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献5に記載された発明並びに引用文献2及び引用文献3に記載された事項に基づいて,先の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-08-07 
結審通知日 2020-08-11 
審決日 2020-08-28 
出願番号 特願2016-529348(P2016-529348)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 説志  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 井口 猶二
関根 洋之
発明の名称 偏光子、粘着剤付き偏光板及び画像表示装置  
代理人 坂元 徹  
代理人 中山 亨  
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