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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1367553
審判番号 不服2019-11301  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-28 
確定日 2020-10-20 
事件の表示 特願2017-519479「ワイヤレス通信システムにおけるサービングノードの選択」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月21日国際公開、WO2016/060897、平成29年11月 2日国内公表、特表2017-532904〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)10月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年10月17日 米国、2015年3月16日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。

平成30年 7月 5日 :手続補正書の提出
平成30年10月 4日付け:拒絶理由通知書
平成31年 2月19日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 5月16日付け:拒絶査定
令和 元年 8月28日 :拒絶査定不服審判の請求

第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成31年2月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの
「ユーザ機器(UE)において動作可能なワイヤレス通信の方法であって、前記方法が、
無線アクセスネットワーク(RAN)ノードとの接続を要求するように構成された接続要求メッセージを送信するステップであって、前記接続要求メッセージが、前記UEのサービスプロファイルを示すように構成された情報を備え、前記サービスプロファイルは、サービングノードによりサポートされることを要求される1つまたは複数のサービスを示すように構成される、ステップと、
前記UEの前記サービスプロファイルに少なくとも部分的に基づいて選択されたサービングノードを示すように構成された情報を備える接続受付メッセージを受信するステップと、
を含む、方法。」と認める。

第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶理由の概要は、「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、請求項1に対して国際公開第2013/187144号(以下、「引用例」という。)が引用されている。

第4 引用発明

原査定の拒絶の理由に引用された引用例には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、強調のために当審が付与した。)

「[0018] [用語説明] まず、本実施形態で用いる、移動体通信システムにおける用語について説明する。以下において説明がない用語であって本実施形態で用いられている用語については、基本的には3GPPの用語の定義をそのまま用いるものとする。

[0019] 「UE(User Equipment)」は、移動通信端末であり、移動体通信システムにおいて移動体通信を行う。「IMSI(International Mobile Subscriber Identity)」は、UEの加入者を全世界で一意に識別するための移動加入者識別子である。「IMEI(International Mobile Equipment Identity)」は、UEに割り当てられる一意の識別子である移動通信端末識別子であり、UEの製造者が設定する。「MME(Mobility Management Entity)」は、パケット通信用のセッション(接続)の設定・開放やハンドオーバーの制御を行う等、移動管理(モビリティ制御)やベアラ制御を行う移動管理制御装置である。なお、ベアラとは、ユーザの通信情報を転送するための一連の物理的あるいは論理的なパスを意味する。「eNB(evolved Node B)」は、いわゆる基地局であり、無線リソース管理機能、移動管理機能、無線ベアラ制御機能、スケジューリング機能などを具備し、コアネットワークと接続してユーザパケットを転送する。「HSS(Home Subscriber Server)」は、加入者のプロファイル情報などが格納される加入者情報管理装置である。「DNS(Domain Name Server)」は、ドメイン名とIPアドレスとの対応づけを管理するドメイン情報管理装置である。」

「[0021] 「アタッチ」とは、(通常、電源を入れたとき)移動通信端末から指定されたPDNのアドレスに従い、対応するP-GWまでの通信経路を確立することを示す(移動通信端末からPDNのアドレスの指定がない場合は後述のデフォルトPDNのアドレスが用いられる)。なお、しばらく通信が行われないときに設定されたTEIDトンネルは開放する(プリザベーション)。「デタッチ」とは、移動通信端末の電源を切ったときに、確立していた移動通信端末からP-GWまでの通信経路を開放することを示す。」

「[0023] [従来方式のアタッチ手順] 続いて、図1が示す移動体通信システムを参照しながら、従来方式におけるアタッチ手順について説明する。図1に示す移動体通信システムは、UE、コアネットワーク及びPDNを含み、コアネットワークは、eNB、MME、HSS、DNS、S-GW及びP-GWを含む。なお、以下で説明するアタッチ手順では、処理の順に手順番号を振っている。

[0024] 1.UEの電源が入れられた際に、UEは、eNBに対し、IMSI(およびIMEI)を含み、PDNのアドレスを指定したアタッチ信号を送信する。2.eNBは、帰属するMME(S1-Flexの場合は帰属するMMEの内の任意の1つのMME)に信号を転送する。3.アタッチ信号を受け取ったMMEは、HSSより認証情報を受け取り、UEとの間で認証、秘匿、インテグリティ処理を行う。4.MMEは、HSSに対して位置登録信号を送信し、HSSは、UEの制御を担当する。HSSは、MMEを登録すると共に、UEからPDNのアドレスの指定がない場合はデフォルトPDNのドメイン情報をMMEに返信する。5.MMEは、接続先のPDNのドメイン情報をDNSに送信し、応答としてPDNのアドレスに対応するS-GWおよびP-GWのアドレスを受信する。6.MMEは、受信したアドレスを用いて、S-GWに対してP-GWに向けたベアラ設定要求を送信し、さらにS-GWは、P-GWに経路設定要求を送信する。7.経路設定要求を受信したP-GWは、UE向けのIPアドレスを払い出すと共に、S-GWとP-GWと間にGREトンネルを確立する。8.MMEは、UEに対して、P-GWより払いだされたIPアドレスおよびMMEが割りあてたUEのテンポラリな識別子としてGUTIを通知し、無線データベアラを確立すると共に、eNBに向けてS-GWのアドレスを通知し、eNBとS-GWとの間にTEIDトンネルが確立される。9.以上によりUEからP-GWまでの通信経路が確立する。10.以降、UEは識別子として、IMSIに変えてGUTIを使用する。」

「[0057] [第2実施形態] 引き続いて、図9を用いて、第2実施形態に係る移動通信網振り分けシステム及び移動通信網振り分け方法について説明する。図9は、第2実施形態に係る移動体通信システム2の概要を示す図である。移動体通信システム2は、移動通信端末であるUE2に移動体通信の機能を提供するシステムである。図9に示す通り、移動体通信システム2は、UE2、移動通信網であるN2-1及びN2-2、及びPDN2を含んで構成される。ここで、N2-1は、3GPPで規定されている従来の移動通信網であり、N2-2は、従来の移動通信網から移動管理機能を省いた移動通信網である縮退移動通信網である。なお、N2-2は、サーバ仮想化技術により構築されていてもよい。そして、N2-1は、eNB2、MME2-1、HSS2-1、S-GW2、及びP-GW2を含んで構成される。また、N2-2は、MMEが備える機能を一部制限したMME2-2、HSSが備える機能を一部制限したHSS2-2、S-GW及びP-GWが備える機能を一部制限した(移動管理機能を省いた)装置又はノードであるSP-GW2を含んで構成される。

[0058] 第2実施形態において、移動通信網振り分けシステムはeNB2に該当する。すなわち、eNB2は、取得部11、決定部12、及び振り分け部13を含む。

[0059] 続いて、図9が示す移動体通信システム2を参照しながら、本実施形態におけるS1-Flexにおけるアタッチ/位置登録手順について説明する。なお、以下で説明するS1-Flexにおけるアタッチ/位置登録手順では、処理の順に手順番号を振っている。

[0060] 1.eNB2の取得部11は、UE2からアタッチ要求があった際に、その信号に含まれるIMSIまたはIMEIを取得する。次に、eNB2の決定部12は、第1実施形態と同様の判定で、帰属する複数の移動通信網からN2-2(MME2-2)を選択する。そしてeNB2の振り分け部13は、N2-2をUE2の接続先に振り分けるため、MME2-2に対して、アタッチ/位置登録手順を行う。2.選択されたMME2-2は、アタッチ応答として、UE2にGUTIを通知する(GUTI内には、MME2-2を識別する識別子が含まれる)。3.UE2は、発信時に、GUTI(含むMME識別子)を含めてeNB2に信号を送信する。4.eNB2は、MME識別子を見て、MME2-2に転送する。5.(以降の処理は、第1実施形態で説明したアタッチ手順の3以降と同じ)

[0061] ここで、従来技術と本実施形態2に係る移動体通信システム2との差異について説明する。従来のS1-Flexは、MME装置の負荷分散や、MME故障時の冗長化を目的としている。一方、本実施形態2に係る移動体通信システム2では、eNB2が、IMSIまたはIMEIからUE2が受けるサービスの特性を判別し(例えば、eNB2が、IMSIまたはIMEIと当該IMSIまたはIMEIが示すUEのサービス特性とを対応付けたサービス情報を予め格納し、IMSIまたはIMEIを受信するたびに当該サービス情報を参照することでサービス特性を判別する)、(従来の様々なサービスのための機能を具備したN2-1とは異なる)個別の機能セットからなるN2-2を選択させるものである。」

上記の記載、並びに当業者の技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

(1)引用例の[0060]に「1.eNB2の取得部11は、UE2からアタッチ要求があった際に、その信号に含まれるIMSIまたはIMEIを取得する。」と記載されており、また引用例の[0024]に従来方式のアタッチ手順として「1.UEの電源が入れられた際に、UEは、eNBに対し、IMSI(およびIMEI)を含み、PDNのアドレスを指定したアタッチ信号を送信する。 」と記載されている。ここで、引用例の[0060]の「その信号」とは、引用例の[0024]の従来方式のアタッチ手順における「アタッチ信号」といえる。
そうすると、引用例には、「UEは、eNBに対し、IMSI(およびIMEI)を含み、PDNのアドレスを指定したアタッチ信号を送信し、eNB2の取得部11は、UE2からアタッチ要求があった際に、アタッチ信号に含まれるIMSIまたはIMEIを取得する」ことが記載されていると認める。

(2)引用例の[0061]に「eNB2が、IMSIまたはIMEIからUE2が受けるサービスの特性を判別し(例えば、eNB2が、IMSIまたはIMEIと当該IMSIまたはIMEIが示すUEのサービス特性とを対応付けたサービス情報を予め格納し、IMSIまたはIMEIを受信するたびに当該サービス情報を参照することでサービス特性を判別する)、(従来の様々なサービスのための機能を具備したN2-1とは異なる)個別の機能セットからなるN2-2を選択させるものである。」と記載されている。そして、引用例の当該記載から、eNB2はIMSIまたはIMEIを受信するたびにIMSIまたはIMEIと当該IMSIまたはIMEIが示すUEのサービス特性とを対応づけたサービス情報を参照することでサービス特性を判別し、個別の機能セットからなるN2-2を選択するといえる。
また、「個別の機能セットからなるN2-2」とは引用例の[0057]及び[0061]の記載によれば、「N2-2は、従来の移動通信網から移動管理機能を省いた移動通信網である縮退移動通信網」であり、「N2-2は、MMEが備える機能を一部制限したMME2-2、HSSが備える機能を一部制限したHSS2-2、S-GW及びP-GWが備える機能を一部制限した(移動管理機能を省いた)装置又はノードであるSP-GW2を含んで構成され」ており、また、「(従来の様々なサービスのための機能を具備したN2-1とは異なる)個別の機能セットからなるN2-2」である。したがって、引用例の当該記載から、個別の機能セットからなるN2-2は、従来の様々なサービスのための機能を具備したN2-1とは異なる個別の機能セットからなり、MMEが備える機能を一部制限したMME2-2を含んで構成され、従来の移動通信網から移動管理機能を省いた縮退移動通信網であるといえる。
更に、引用例の[0060]には、「eNB2の振り分け部13は、N2-2をUE2の接続先に振り分けるため、MME2-2に対して、アタッチ/位置登録手順を行う。2.選択されたMME2-2は、アタッチ応答として、UE2にGUTIを通知する(GUTI内には、MME2-2を識別する識別子が含まれる)。」と記載されている。そして、引用例の当該記載より、eNB2は、MME2-2に対してアタッチ/位置登録手順を行い、選択されたMME2-2は、アタッチ応答として、UE2にMME2-2を識別する識別子が含まれるGUTIを通知するといえる。
以上のことから、引用例には「eNB2はIMSIまたはIMEIを受信するたびにIMSIまたはIMEIと当該IMSIまたはIMEIが示すUEのサービス特性とを対応づけたサービス情報を参照することでサービス特性を判別し、個別の機能セットからなるN2-2を選択し、個別の機能セットからなるN2-2は、従来の様々なサービスのための機能を具備したN2-1とは異なる個別の機能セットからなり、MMEが備える機能を一部制限したMME2-2を含んで構成され、従来の移動通信網から移動管理機能を省いた縮退移動通信網であり、eNB2は、MME2-2に対してアタッチ/位置登録手順を行い、選択されたMME2-2は、アタッチ応答として、UE2にMME2-2を識別する識別子が含まれるGUTIを通知する」ことが記載されていると認める。

(3)上記(1)及び(2)に示したように、引用例にはUEにおいてアタッチ信号の送信及びアタッチ応答の通知を受ける方法が示されており、またアタッチ信号の送信及びアタッチ応答の通知をワイヤレス通信で行うことは技術常識である。したがって、引用例に記載された方法はUEにおいて動作可能なワイヤレス通信の方法といえる。

したがって、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「UEにおいて動作可能なワイヤレス通信の方法であって、
UEは、eNBに対し、IMSI(およびIMEI)を含み、PDNのアドレスを指定したアタッチ信号を送信し、eNB2の取得部11は、UE2からアタッチ要求があった際に、アタッチ信号に含まれるIMSIまたはIMEIを取得し、
eNB2はIMSIまたはIMEIを受信するたびにIMSIまたはIMEIと当該IMSIまたはIMEIが示すUEのサービス特性とを対応づけたサービス情報を参照することでサービス特性を判別し、個別の機能セットからなるN2-2を選択し、個別の機能セットからなるN2-2は、従来の様々なサービスのための機能を具備したN2-1とは異なる個別の機能セットからなり、MMEが備える機能を一部制限したMME2-2を含んで構成され、従来の移動通信網から移動管理機能を省いた縮退移動通信網であり、eNB2は、MME2-2に対してアタッチ/位置登録手順を行い、選択されたMME2-2は、アタッチ応答として、UE2にMME2-2を識別する識別子が含まれるGUTIを通知する、
を含む方法。」

第5 対比・判断

本願発明と引用発明とを対比すると、

(1)引用発明の「UE」および「UE2」は本願発明の「ユーザ機器(UE)」に相当する。また、本願発明の「無線アクセスネットワーク(RAN)ノード」はeNBを含むから、引用発明の「eNB」および「eNB2」は本願発明の「無線アクセスネットワーク(RAN)ノード」といえる。更に、本願発明の「サービングノード」はMMEを含むから、引用発明の「MME」および「MME2-2」は本願発明の「サービングノード」といえる。
そして、本願発明と引用発明とは「ユーザ機器(UE)において動作可能なワイヤレス通信の方法」の点で共通する。

(2)引用発明の「UEは、eNBに対し、IMSI(およびIMEI)を含み、PDNのアドレスを指定したアタッチ信号を送信し、eNB2の取得部11は、UE2からアタッチ要求があった際に、アタッチ信号に含まれるIMSIまたはIMEIを取得し、」との事項において、「eNB2」は上記(1)で示したように本願発明の「無線アクセスネットワーク(RAN)ノード」といえる。
また、引用発明の上記事項の「アタッチ要求」とは、UEからコアネットワークの装置であるP-GWまでの通信経路確立の要求であることが技術常識として知られている。そして、当該通信経路はUEとeNBとの間の通信経路を含むことから、UE2からのアタッチ要求はeNBとの接続を要求するものといえる。したがって、引用発明のUE2からのアタッチ要求は、本願発明の「無線アクセスネットワーク(RAN)ノードとの接続を要求する」ものといえる。
更に、引用発明の上記事項によれば、UEはeNBにアタッチ信号を送信し、eNB2はUE2からアタッチ要求があったとしてアタッチ信号に含まれるIMSIまたはIMEIを取得していることから、UEとUE2及びeNBとeNB2は同一装置であり、また当該アタッチ信号はアタッチ要求を示すように構成されていることは当業者にとって明らかである。したがって、引用発明の「アタッチ信号」は本願発明の「接続要求メッセージ」に相当し、引用発明のUEがアタッチ信号を送信することは、本願発明の「無線アクセスネットワーク(RAN)ノードとの接続を要求するように構成された接続要求メッセージを送信する」ことといえる。
したがって、引用発明の「UEは、eNBに対し、IMSI(およびIMEI)を含み、PDNのアドレスを指定したアタッチ信号を送信し、eNB2の取得部11は、UE2からアタッチ要求があった際に、アタッチ信号に含まれるIMSIまたはIMEIを取得し、」との事項は、本願発明の「無線アクセスネットワーク(RAN)ノードとの接続を要求するように構成された接続要求メッセージを送信する」との点で一致する。

(3)引用発明の「UEは、eNBに対し、IMSI(およびIMEI)を含み、PDNのアドレスを指定したアタッチ信号を送信し、」との事項に関し、上記(2)で示したように引用発明の「アタッチ信号」は本願発明の「接続要求メッセージ」に相当する。
また、引用発明の上記事項のIMSIは、UEが送信していることからUEのIMSIといえる。一方、本願の発明の詳細な説明【0055】によると、サービスプロファイルはUEのデバイスタイプを示すように構成され、また発明の詳細な説明【0056】によれば、UEのデバイスタイプの暗黙的表示に関して、UE識別子の表示にしたがいサービングノードを選択し得ること、サービングノード選択のために利用される識別子はUEのIMSIを含む任意の適切な識別子であってよいことが示されている。以上のことから、本願発明の「サービスプロファイル」とは、UEのデバイスタイプの表示を含み、デバイスタイプの表示はUE識別子の表示を含むことから、UEのIMSIの表示を含むと解される。したがって、引用発明の上記事項のIMSIは、UEのIMSIであり本願発明の「UEのサービスプロファイル」といえ、引用発明のアタッチ信号がIMSIを含むことは、本願発明の「前記接続要求メッセージが、前記UEのサービスプロファイルを示すように構成された情報を備え」ているといえる。
以上のことから、引用発明の「UEは、eNBに対し、IMSI(およびIMEI)を含み、PDNのアドレスを指定したアタッチ信号を送信し、」との事項は、本願発明の「前記接続要求メッセージが、前記UEのサービスプロファイルを示すように構成された情報を備え」ている点で一致する。

(4)引用発明の「eNB2はIMSIまたはIMEIを受信するたびにIMSIまたはIMEIと当該IMSIまたはIMEIが示すUEのサービス特性とを対応づけたサービス情報を参照することでサービス特性を判別し、個別の機能セットからなるN2-2を選択し、個別の機能セットからなるN2-2は、従来の様々なサービスのための機能を具備したN2-1とは異なる個別の機能セットからなり、MMEが備える機能を一部制限したMME2-2を含んで構成され、従来の移動通信網から移動管理機能を省いた縮退移動通信網であり、」との事項から、eNB2はIMSIを受信するたびにIMSIが示すUEのサービス特性とを対応づけたサービス情報を参照することでN2-2を選択しているといえる。また、N2-2はMME2-2を含んで構成されていることから、引用発明の上記事項よりeNB2はIMSIに基づいてMME2-2を選択するといえる。更に、上記(1)で示したように引用発明の「MME2-2」は本願発明の「サービングノード」に相当し、加えて上記(3)で示したように引用発明のIMSIは本願発明の「UEのサービスプロファイル」といえることから、引用発明のIMSIに基づいて選択されたMME2-2は、本願発明の「前記UEの前記サービスプロファイルに少なくとも部分的に基づいて選択されたサービングノード」といえる。
また、引用発明の「選択されたMME2-2は、アタッチ応答として、UE2にMME2-2を識別する識別子が含まれるGUTIを通知する、」との事項において、選択されたMME2-2はUE2にMME2-2を識別する識別子が含まれるGUTIを通知することから、UE2は選択されたMME2-2を識別する識別子が含まれるGUTIを受信するといえる。また、選択されたMME2-2とは、前段落で示したIMSIに基づいて選択されたMME2-2のことであることは明らかであり、更に、IMSIに基づいて選択されたMME2-2とは本願発明の「前記UEの前記サービスプロファイルに少なくとも部分的に基づいて選択されたサービングノード」といえるから、引用発明の選択されたMME2-2を識別子が含まれるGUTIとは、本願発明の「前記UEの前記サービスプロファイルに少なくとも部分的に基づいて選択されたサービングノードを示すように構成された情報」といえる。そして、引用発明の上記事項において、「アタッチ応答」は、アタッチ要求に対する応答であることが技術常識として知られており、本願発明の「接続受付メッセージ」といえる。すると、引用発明のアタッチ応答としてUE2がMME2-2を識別する識別子が含まれるGUTIを受信することは、本願発明の「前記UEの前記サービスプロファイルに少なくとも部分的に基づいて選択されたサービングノードを示すように構成された情報を備える接続受付メッセージを受信する」ことといえる。
以上のことから、引用発明の「eNB2はIMSIまたはIMEIを受信するたびにIMSIまたはIMEIと当該IMSIまたはIMEIが示すUEのサービス特性とを対応づけたサービス情報を参照することでサービス特性を判別し、個別の機能セットからなるN2-2を選択し、個別の機能セットからなるN2-2は、従来の様々なサービスのための機能を具備したN2-1とは異なる個別の機能セットからなり、MMEが備える機能を一部制限したMME2-2を含んで構成され、従来の移動通信網から移動管理機能を省いた縮退移動通信網であり、eNB2は、MME2-2に対してアタッチ/位置登録手順を行い、選択されたMME2-2は、アタッチ応答として、UE2にMME2-2を識別する識別子が含まれるGUTIを通知する」との事項は、本願発明の「前記UEの前記サービスプロファイルに少なくとも部分的に基づいて選択されたサービングノードを示すように構成された情報を備える接続受付メッセージを受信する」との点で一致する。

以上を総合すると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致または相違する。

(一致点)
「ユーザ機器(UE)において動作可能なワイヤレス通信の方法であって、前記方法が、
無線アクセスネットワーク(RAN)ノードとの接続を要求するように構成された接続要求メッセージを送信するステップであって、前記接続要求メッセージが、前記UEのサービスプロファイルを示すように構成された情報を備える、ステップと、
前記UEの前記サービスプロファイルに少なくとも部分的に基づいて選択されたサービングノードを示すように構成された情報を備える接続受付メッセージを受信するステップと、
を含む、方法。」

(相違点)
本願発明と引用発明とは、本願発明が「前記サービスプロファイルは、サービングノードによりサポートされることを要求される1つまたは複数のサービスを示すように構成される」との発明特定事項を有するのに対し、引用発明では、IMSIはUEのサービス特性を示し、従来の様々なサービスのための機能を具備したN2-1とは異なる個別の機能セットN2-2からなる縮退移動通信網に含まれるMME2-2を選択するために用いられているものの、IMSIが本願発明のようにサービングノードによりサポートされることを要求されるサービスを示すように構成されるかどうか特定されていない点。

次に、相違点について検討する。
引用発明では、個別の機能セットからなるN2-2は、従来の様々なサービスのための機能を具備したN2-1とは異なる個別の機能セットから異なることから、従来の移動通信網が提供するサービスとは異なるサービスを提供するものといえる。また、個別の機能セットからなるN2-2に含まれるMME2-2は、そのN2-2が提供するサービスをサポートする機能を有しなければならないのは明らかである。また、UEのサービス特性とは、UEが備えるべきサービスに関する性質のことであり、UEが当該性質を備えるために移動通信網に対してサービスを要求しなければならないのは明らかであることから、UEが当該性質に係るサービスを提供するMMEに対してサポートを要求することは当然のことといえる。
以上のことを考慮すると、UEのサービス特性を示すIMSIを用いてMME2-2を選択することは、すなわちIMSIが、MME2-2によりサポートされるサービスであり、なおかつUEからMME2-2によりサポートを要求されているサービスを示すように構成されているといえる。したがって、引用発明のIMSIは、本願発明の「サービングノードによりサポートされることを要求される1つまたは複数のサービスを示すように構成される」ものといえる。
よって、相違点とした本願発明の構成は、実質的な相違点とはいえない。

したがって、本願発明は引用発明である。また、引用発明に基づいて本願発明をすることは当業者がとって容易である。

第6 請求人の主張

令和元年8月28日に提出された審判請求書の「【本願発明が特許されるべき理由】」の「(b)本願発明と引用文献との対比」において、請求人は、以下のとおり主張して本願発明は引用例に開示されていないことを主張する。


「審査官殿は、IMSIまたはIMEIが、引用文献1に開示の発明において、eNB2によりサービス情報と関連付けて記録されることから、IMSIまたはIMEIが、「UEのサービスプロファイルを示すように構成された情報」に対応するとし、「UEのサービスプロファイルを示すように構成された情報」を不当に広く解釈していると思料します。
請求項1等における「UEのサービスプロファイルを示すように構成された情報」との事項は、その情報が、それ単体で「サービスプロファイルを示す」ように構成される情報を意味するものであり、つまり、単なる端末の識別子という概念を含むものではありません。また、請求項1等ではさらに、「前記サービスプロファイルは、サービングノードによりサポートされることを要求される1つまたは複数のサービスを示すように構成される」と特定されるように、サービスプロファイルが、単なる端末の識別子を意味するものでないことも明らかです。従って、上記の事項に照らせば、請求項1における「UEのサービスプロファイルを示すように構成された情報」が、引用文献1に開示の発明における「IMSIまたはIMEI」と対応するものでないことは明らかであると思料します。」

しかしながら、本願発明の「UEのサービスプロファイルを示すように構成された情報」について、「サービスプロファイル」については上記「第5 対比・判断」の(3)にて説明したとおり、UEのデバイスタイプの表示を含み、デバイスタイプの表示はUE識別子の表示を含むことから、UEのIMSIの表示も含むと解される。したがって、サービスプロファイルが出願人の主張する「単なる端末の識別子という概念を含むものではない」としても、サービスプロファイルは、UEのデバイスタイプの表示である端末の識別子の表示を含む。そして、引用発明の「IMSI」はUEのサービス特性を示すことから、本願発明の「UEのサービスプロファイル」に相当し、本願発明と引用発明は、本願発明の「前記接続要求メッセージが、前記UEのサービスプロファイルを示すように構成された情報を備え」ている点で一致する。

したがって、請求人の主張は採用できない。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明は引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、引用例に記載された発明に基づいて本願発明をすることは、当業者にとって容易であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-03-31 
結審通知日 2020-04-06 
審決日 2020-06-03 
出願番号 特願2017-519479(P2017-519479)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 浩兵  
特許庁審判長 岩間 直純
特許庁審判官 望月 章俊
中元 淳二
発明の名称 ワイヤレス通信システムにおけるサービングノードの選択  
代理人 村山 靖彦  
代理人 黒田 晋平  

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