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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1367763 |
審判番号 | 不服2019-16282 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-12-03 |
確定日 | 2020-10-28 |
事件の表示 | 特願2016-557988「非白色光の一般的な照明装置を含む手術システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月24日国際公開、WO2015/142800、平成29年 4月20日国内公表、特表2017-511176〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本件出願(以下「本願」と記す。)は、2015年3月17日(パリ条約による優先権主張 2014年3月17日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成31年1月28日付けで拒絶理由が通知され、令和元年5月7日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月22日付け(送達日:同年9月3日)で拒絶査定されたところ、同年12月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同時に手続補正がなされたものである。 2 令和元年12月3日付けの手続補正についての補正の却下の決定 〔補正の却下の決定の結論〕 令和元年12月3日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 〔理由〕 (1)補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、その補正内容は、特許請求の範囲について、請求項1を令和元年5月7日付け手続補正書に記載された以下の請求項1(以下「本願発明1」という。) 「【請求項1】 機器であって、当該機器は、 カメラであって、該カメラは、該カメラに入射する光を画素のセットに分離するように構成され、前記画素のセットの各セットは、前記カメラの異なるカラーチャンネルにある、カメラと、 複数の色成分の照明源を有する照明装置であって、前記複数の色成分の照明源は、該照明装置が非白色光を出力し、それによって前記カメラの各カラーチャンネルが、完全な反射面から反射した前記非白色光に対して略等しい応答を有するよう構成される、照明装置と、 前記複数の色成分の照明源に結合された制御装置であって、該制御装置は、前記複数の色成分の照明源の出力の組合せが前記非白色光となるように、前記複数の色成分の照明源の1つ又は複数によって出力される光の照明強度を調節するように構成される、制御装置と、を備える、 機器。」 から、以下の請求項1(以下「本願補正発明1」という。) 「【請求項1】 機器であって、当該機器は、 カメラであって、該カメラは、該カメラに入射する光を画素のセットに分離するように構成され、前記画素のセットの各セットは、前記カメラの異なるカラーチャンネルにある、カメラと、 複数の色成分の照明源を有する照明装置であって、前記複数の色成分の照明源は、該照明装置が非白色光を出力するよう構成される、照明装置と、 前記複数の色成分の照明源に結合された制御装置であって、該制御装置は、前記複数の色成分の照明源の出力の組合せが前記非白色光となり且つ前記カメラの各カラーチャンネルが完全な反射面から反射した前記非白色光に対して略等しい応答を有するように、前記複数の色成分の照明源の1つ又は複数によって出力される光の照明強度を調節するように構成される、制御装置と、を備える、 機器。」(下線は補正箇所を示す。) に補正するものを含むものである。 (2)本件補正の目的 本件補正のうち、請求項1についての補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、「照明装置」について「複数の色成分の照明源を有する照明装置であって、前記複数の色成分の照明源は、該照明装置が非白色光を出力し、それによって前記カメラの各カラーチャンネルが、完全な反射面から反射した前記非白色光に対して略等しい応答を有するよう構成される、照明装置」から「複数の色成分の照明源を有する照明装置であって、前記複数の色成分の照明源は、該照明装置が非白色光を出力するよう構成される、照明装置」と表現を変更し、「制御装置」を「前記複数の色成分の照明源に結合された制御装置であって、該制御装置は、前記複数の色成分の照明源の出力の組合せが前記非白色光となるように、前記複数の色成分の照明源の1つ又は複数によって出力される光の照明強度を調節するように構成される、制御装置」から照明装置の構成部分に記載された事項である「それによって前記カメラの各カラーチャンネルが、完全な反射面から反射した前記非白色光に対して略等しい応答を有するよう構成される」の部分を取り込みその事象の発生時期を限定するために「前記複数の色成分の照明源に結合された制御装置であって、該制御装置は、前記複数の色成分の照明源の出力の組合せが前記非白色光となり且つ前記カメラの各カラーチャンネルが完全な反射面から反射した前記非白色光に対して略等しい応答を有するように、前記複数の色成分の照明源の1つ又は複数によって出力される光の照明強度を調節するように構成される、制御装置」に限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (3)独立特許要件について 本件補正後の前記本願補正発明1が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 ア 本願補正発明 本願補正発明1は、前記「2(1)」に記載したとおりのものである。 イ 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前である平成11年(1999年)9月21日に頒布された刊行物である「特開平11-253402号公報」(以下「引用例」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は内視鏡の先端側に照明手段として固体発光素子を設けた内視鏡装置に関する。」 (イ)「【0007】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。 (第1の実施の形態)図1ないし図3は本発明の第1の実施の形態に係り、図1は第1の実施の形態の内視鏡装置の構成を示し、図2はLED発光タイミング信号を示し、図3はLEDを駆動するLED駆動信号を示す。 【0008】図1に示すように本発明の第1の実施の形態の内視鏡装置1Aは撮像手段を内蔵した内視鏡2Aと、この内視鏡2Aと接続され、信号処理を行うビデオプロセッサ3Aと、このビデオプロセッサ3から出力される映像信号を表示するカラーモニタ4とから構成される。 【0009】内視鏡2Aは細長の挿入部5と、この挿入部5の後端に設けられた操作部6と、この操作部6から基端が延出されたユニバーサルコード7とを有し、このユニバーサルコード7の先端にはコネクタ8が設けてあり、このコネクタ8はビデオプロセッサ3のコネクタ受け9に着脱自在で接続される。 【0010】挿入部5の先端部11には、照明光源12が設けてある。この照明光源12は赤、緑、青(R,G,Bで略記)の3色でそれぞれ発光する固体発光素子としての発光ダイオード(LEDと略記)13R,13G,13Bと、これらに対向する照明窓に取り付けられ、光を拡開して出射する照明レンズ14とからなる。 【0011】また、このLED13R,13G,13Bの付近にはこれらを駆動する駆動回路としてのLEDドライバ15が配置されている。」 (ウ)「【0054】(第3の実施の形態)次に本発明の第3の実施の形態を図9の内視鏡装置を参照して説明する。図9に示す本実施の形態の内視鏡装置1Cは、例えば図1に示す第1の実施の形態において、内視鏡2Aの代わりに、硬性内視鏡31と、この硬性内視鏡31に装着されたカメラヘッド32とからなるカメラ外付け内視鏡33を採用したものである。 【0055】硬性内視鏡31は硬質の挿入部35を有し、この挿入部35の後端には接眼部36が設けてある。挿入部35の先端部には図1の内視鏡2Aと同様にLED13R,13G,13B(図9ではこれらを符号13で示す)と、LEDドライバ15と、照明レンズ14とが設けてあり、LEDドライバ15に接続されたケーブル16は接眼部36に設けた第1の接点部37に接続される。 【0056】この第1の接点部37はカメラヘッド32の対応する位置に設けた第2の接点部38に接続され、この第2の接点部38に接続されたケーブル39はカメラヘッド32からその基端が延出されたカメラケーブル40内を挿通され、カメラケーブル40の先端に設けたコネクタ41の接点ピンに至る。このコネクタ41はビデオプロセッサ(或いはカメラコントロールユニット)3Aのコネクタ受け9に着脱自在で接続される。 【0057】また、挿入部35の先端部には対物レンズ21が設けてあり、この対物レンズ21の像はリレー光学系42により接眼部36側に伝送され、接眼レンズ43を介して拡大観察できる。 【0058】また、カメラヘッド32が装着された場合にはこの接眼レンズ43に対向する位置に設けた結像レンズ44を介してCCD22に結像できるようにしている。このCCD22に接続されたケーブル23はカメラケーブル40内を挿通され、コネクタ41の接点ピンに至る。その他の構成は図1に示す第1の実施の形態と同様である。 【0059】次に本実施の形態の動作を説明する。硬性内視鏡31の接眼部36に接続されるカメラヘッド32は着脱自在になっている。そして接続した状態では第1の接点部37と第2の接点部38とが接続され、分離した時には接続が解除される。 【0060】このようにLED発光タイミング信号TR,TG,TBをカメラヘッド32の撮像系と同様にカメラケーブル40内に挿通することによって、LED発光タイミング信号TR,TG,TBを伝送するケーブル16を硬性内視鏡31自体から外部に延出しないで、1本のカメラケーブル40で済むようになっている。 【0061】従って、このような構成にしないで硬性内視鏡31自体からケーブル16を外部に延出した場合には、カメラヘッド32から延出されるカメラケーブル40の他に、硬性内視鏡31から延出されたケーブル16が内視鏡検査の際に邪魔になることがある。本実施の形態ではこのようなことを解消できる。 【0062】なお、本実施の形態ではLED発光タイミング信号TR,TG,TBはケーブル39と、ケーブル16とを経てLEDドライバ15に伝送される。 【0063】また、対物レンズ21による像はリレー光学系42等を経てCCD22に結像される。 【0064】その他は第1の実施の形態で説明したのと殆ど同様の動作となる。従って、本実施の形態は基本的には第1の実施の形態とほぼ同様の効果を有する。 【0065】なお、図9に示す第3実施の形態ではカメラヘッド32内にはモノクロのCCD22を採用しているが、その撮像面の前にモザイクフィルタ46等の色分離フィルタを取り付けたカラー撮像用CCD52とした場合には図10に示すような構成の内視鏡装置51にしても良い。 【0066】この内視鏡装置51では硬性内視鏡31の先端部に内蔵したLED13はケーブル16を介して第1の接点部37に接続している。 【0067】また、カメラヘッド32内にはモノクロのCCD22の代わりにカラー撮像用CCD52が配置されている。また、この場合のカメラコントロールユニット53はLED13を常時駆動或いは点灯する点灯回路54と、CCD駆動回路24と、ビデオプロセス回路25と、これらを制御する制御回路55とを備えている。 【0068】この内視鏡装置51ではLED13を常時点灯させる駆動信号を出力する構成にしているので、直流の駆動信号をLED13に印加する。 【0069】この内視鏡装置51では図9の内視鏡装置1Cで説明したのと類似して、LED駆動信号を伝送する伝送線は硬性内視鏡31自体から外部に延出しないで、接点部37,38を介してカメラヘッド32から延出されるカメラケーブル40内を撮像系のケーブル23と共に挿通されている。 【0070】また、ホワイトバランスをとる動作を行うには、硬性内視鏡31の被写体としてに白いガーゼなどを用意して、その白いガーゼを撮影することにより、白のバランスが崩れている時には、その得られた白いガーゼの像が白になるようなビデオ信号の調整が行われる。この作業を、ホワイトバランスをとるという。 【0071】このホワイトバランスをとる時には、通常は、ビデオ信号の処理を行うビデオプロセス回路25内の増幅回路において、青と赤に分離された色信号の増幅度を変えて色バランスをとるということをする。 【0072】通常、CCD22は青の感度は低く、青の増幅度を上げるとSN比が悪くなるという問題があったが、本実施の形態の構成によると、LED13の点灯電流を変えることによって、このホワイトバランスを調整することができるので、ビデオ信号の増幅度を変える方法に代わり、LED13の点灯電流の赤と青のバランスを変えてやることによって、同様に、ホワイトバランスの調整ができるようになる。 【0073】そして、青の色のバランスが低い場合には、青のLED13Bの点灯電流を増やすことによって、つまりLED13の点灯電流を変えることによって、ホワイトバランスが変えられる。」 (エ)[図10] (オ)【0007】ないし【0011】及び【0054】ないし【0067】の記載からして図10には、「硬性内視鏡31と、この硬性内視鏡31に装着されたカメラヘッド32と、からなるカメラ外付け内視鏡33と、カメラヘッド32からその基端が延出されたカメラケーブル40の先端に設けたコネクタ41とコネクタ受け9で接続するカメラコントロールユニット53と、カメラコントロールユニット53に接続された映像信号を表示するカラーモニタ4と、からなる内視鏡装置51」が図示されていると認められる。 (カ)【0058】,【0065】及び【0067】の記載からして図10には、「カラー撮像用CCD52に接続されたケーブル23はカメラケーブル40内を挿通され、コネクタ41の接点ピンに至る」ことが図示されていると認められる。 上記引用例の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「内視鏡の先端側に照明手段として固体発光素子を設けた内視鏡装置において、 内視鏡装置51は、硬性内視鏡31と、この硬性内視鏡31に装着されたカメラヘッド32と、からなるカメラ外付け内視鏡33と、カメラヘッド32からその基端が延出されたカメラケーブル40の先端に設けたコネクタ41とコネクタ受け9で接続するカメラコントロールユニット53と、カメラコントロールユニット53に接続された映像信号を表示するカラーモニタ4と、を備え、 硬性内視鏡31は硬質の挿入部35を有し、この挿入部35の後端には接眼部36が設けてあり、挿入部35の先端部には赤、緑、青(R,G,Bで略記)の3色でそれぞれ発光する固体発光素子としての発光ダイオード(LEDと略記)LED13R,13G,13B(これらを符号13で示す)と、これらに対向する照明窓に取り付けられ、光を拡開して出射する照明レンズ14とが設けてあり、LED13はケーブル16を介して第1の接点部37に接続されており、この第1の接点部37はカメラヘッド32の対応する位置に設けた第2の接点部38に接続され、この第2の接点部38に接続されたケーブル39はカメラヘッド32からその基端が延出されたカメラケーブル40内を挿通され、カメラケーブル40の先端に設けたコネクタ41の接点ピンに至り、このコネクタ41はカメラコントロールユニット53のコネクタ受け9に着脱自在で接続され、また挿入部35の先端部には対物レンズ21が設けてあり、この対物レンズ21の像はリレー光学系42により接眼部36側に伝送され、接眼レンズ43を介して拡大観察でき、 カメラヘッド32は、硬性内視鏡31に装着された場合には接眼レンズ43に対向する位置に設けた結像レンズ44を介して、モノクロのCCDの撮像面の前にモザイクフィルタ46等の色分離フィルタを取り付けたカラー撮像用CCD52に結像できるようにしており、このカラー撮像用CCD52に接続されたケーブル23はカメラケーブル40内を挿通され、コネクタ41の接点ピンに至り、 カメラコントロールユニット53は、LED13を常時駆動或いは点灯する点灯回路54と、CCD駆動回路24と、ビデオプロセス回路25と、これらを制御する制御回路55とを備えており、LED13を常時点灯させる駆動信号を出力する構成にしているので、直流の駆動信号をLED13に印加しており、 ホワイトバランスをとる作業において、硬性内視鏡31の被写体として白いガーゼなどを用意して、その白いガーゼを撮影することにより、白のバランスが崩れている時には、その得られた白いガーゼの像が白になるようなビデオ信号の調整が行われるのであるが、ビデオ信号の増幅度を変える方法に代わり、LED13の点灯電流の赤と青のバランスを変えてやることによって、同様に、ホワイトバランスの調整ができるようになっており、青の色のバランスが低い場合には、青のLED13Bの点灯電流を増やすことによって、つまりLED13の点灯電流を変えることによって、ホワイトバランスが変えられるものである、 内視鏡装置51。」 ウ 対比 本願補正発明1を、引用発明と比較する。 (ア)引用発明の「内視鏡装置」は、本願補正発明1における「機器」に相当する。 (イ)引用発明における「カメラヘッド32」は、「結像レンズ44を介して、モノクロのCCDの撮像面の前にモザイクフィルタ46等の色分離フィルタを取り付けたカラー撮像用CCD52に結像」して撮影を行い、「このカラー撮像用CCD52に接続され」「カメラケーブル40内を挿通され、コネクタ41の接点ピンに至」る「ケーブル23」により撮像信号を「コネクタ受け9で接続するカメラコントロールユニット53」に送信している。よって、引用発明における「カメラヘッド32」と「カメラケーブル40」を合わせたものは、本願補正発明1における「カメラ」に相当する。 (ウ)引用発明における「赤、緑、青(R,G,Bで略記)の3色でそれぞれ発光する固体発光素子としての発光ダイオード(LEDと略記)LED13R,13G,13B(これらを符号13で示す)」は、本願補正発明1における「複数の色成分の照明源」に相当する。 (エ)引用発明における「硬性内視鏡31」の「挿入部35の先端部」に「設け」られた「LED13」と、「これらに対向する照明窓に取り付けられ、光を拡開して出射する照明レンズ14」は、硬性内視鏡31の前方の被写体に光を照射するものであるから、本願補正発明1における「複数の色成分の照明源を有する照明装置」に相当する。 (オ)引用発明における「LED13」は、「カメラコントロールユニット53」から「LED13を常時点灯させる駆動信号」である「直流の駆動信号を」「印加」されているので、常時点灯しているものであり、また、ホワイトバランスをとる作業において「青の色のバランスが低い場合には、青のLED13Bの点灯電流を増やすことによって、つまりLED13の点灯電流を変えることによって、ホワイトバランスが変えられるものである」ことから、青のLED13Bのみを点灯電流を変えることにより青の色のバランスを増やす、つまり赤、緑、青の均等発光から青の色のバランスを増やした非白色光を出力することができるものである。よって、引用発明における「LED13」と「照明レンズ14」は、本願補正発明1における「非白色光を出力するよう構成される」「照明装置」に相当する。 (カ)引用発明の「カメラコントロールユニット53」は、「LED13を常時駆動或いは点灯する点灯回路54と、CCD駆動回路24と、ビデオプロセス回路25と、これらを制御する制御回路55とを備えており」、「LED13を常時点灯させる駆動信号を出力する構成にして」「直流の駆動信号をLED13に印加して」いることから、本願補正発明1における「複数の色成分の照明源に結合された制御装置」に相当する。 すると、本願補正発明1と、引用発明とは、次の点で一致する。 <一致点> 「機器であって、当該機器は、 カメラと、 複数の色成分の照明源を有する照明装置であって、前記複数の色成分の照明源は、該照明装置が非白色光を出力するよう構成される、照明装置と、 前記複数の色成分の照明源に結合された制御装置と、 を備える、 機器。」 一方で、両者は、次の点で相違する。 <相違点1> カメラが、本願補正発明1では「該カメラに入射する光を画素のセットに分離するように構成され、前記画素のセットの各セットは、前記カメラの異なるカラーチャンネルにある」のに対し、引用発明では前記構成を備えるかどうか明記されていない点。 <相違点2> 制御装置が、本願補正発明1では、「前記複数の色成分の照明源の出力の組合せが前記非白色光となり且つ前記カメラの各カラーチャンネルが完全な反射面から反射した前記非白色光に対して略等しい応答を有するように、前記複数の色成分の照明源の1つ又は複数によって出力される光の照明強度を調節するように構成される」のに対し、引用発明では「ホワイトバランスをとる作業において、硬性内視鏡31の被写体として白いガーゼなどを用意して、その白いガーゼを撮影することにより、白のバランスが崩れている時には、その得られた白いガーゼの像が白になるようなビデオ信号の調整が行われるのであるが、ビデオ信号の増幅度を変える方法に代わり、LED13の点灯電流の赤と青のバランスを変えてやることによって、同様に、ホワイトバランスの調整ができるようになっており、青の色のバランスが低い場合には、青のLED13Bの点灯電流を増やすことによって、つまりLED13の点灯電流を変えることによって、ホワイトバランスが変えられるものである」点。 エ 判断 前記「ウ」で記載した各相違点について判断する。 (ア)相違点1について a 引用発明における「カメラヘッド32」内の「カラー撮像用CCD52」は、「モノクロのCCDの撮像面の前にモザイクフィルタ46等の色分離フィルタを取り付けた」ものである。ここで、CCDは複数の画素によりそれぞれの画素での光量を電気信号に変換する検出器であり、モザイクフィルタ46等の色分離フィルタはモザイク状にR(赤)G(緑)B(青)の色フィルタがちりばめられているフィルタであるから、カラー撮像用CCD52は、各画素ごとにR(赤)またはG(緑)またはB(青)の光量を測定する構成となっている。 b 以上のことから、引用発明の「カラー撮像用CCD52」が出力する撮像信号は、R(赤)のフィルタの後方で受光する画素の信号のみを集めたもの、G(緑)のフィルタの後方で受光する画素の信号のみを集めたもの、B(青)のフィルタの後方で受光する画素の信号のみを集めたもの、にそれぞれ分離することができる。 c ゆえに、引用発明における「カラー撮像用CCD52」を備えた「カメラヘッド32」と「カメラケーブル40」を合わせたものが出力する撮像信号が、R(赤)のフィルタの後方で受光する画素の信号のみを集めたもの、G(緑)のフィルタの後方で受光する画素の信号のみを集めたもの、B(青)のフィルタの後方で受光する画素の信号のみを集めたもの、にそれぞれ分離することができることは、本願補正発明1における「カメラ」が「入射する光を画素のセットに分離するように構成され」ており、「画素のセットの各セットは、前記カメラの異なるカラーチャンネルにある」ことと同等であると認められることから、前記「ウ」で記載した相違点1は、実質的な相違点でない。 (イ)相違点2について a 引用発明では、「ホワイトバランスをとる作業において、硬性内視鏡31の被写体として白いガーゼなどを用意して、その白いガーゼを撮影することにより、白のバランスが崩れている時には、その得られた白いガーゼの像が白になるようなビデオ信号の調整が行われるのであるが、ビデオ信号の増幅度を変える方法に代わり、LED13の点灯電流の赤と青のバランスを変えてやることによって、同様に、ホワイトバランスの調整ができるようになっており、青の色のバランスが低い場合には、青のLED13Bの点灯電流を増やすことによって、つまりLED13の点灯電流を変えることによって、ホワイトバランスが変えられるものである」から、引用発明における「青のLED13Bの点灯電流を増やすことによって、つまりLED13の点灯電流を変えることによって、ホワイトバランスが変えられ」た状態は、本願補正発明1における「前記複数の色成分の照明源の出力の組合せが前記非白色光とな」る状態である。 b また前記「a」の「ホワイトバランスをとる作業」では、「硬性内視鏡31の被写体として白いガーゼなどを用意して、その白いガーゼを撮影する」こと及び「その得られた白いガーゼの像が白になるよう」に「LED13の点灯電流の赤と青のバランスを変えてやることによって」「ホワイトバランスの調整」が行われている。これは、白いガーゼにLED13の点灯電流の赤と青のバランスを変えた光、つまり非白色光を当ててその白いガーゼから反射してきた光である非白色光を、対物レンズ21、リレー光学系42、接眼レンズ43、結像レンズ44を介してカラー撮像用CCD52で撮影し、その撮影で得られた撮像信号をケーブル23、コネクタ41、コネクタ受け9、カメラコントロールユニット53のビデオプロセス回路25を介してカラーモニタ4で撮影された画像として表示した際に、白いガーゼが白い像となるように調整することである。 c 前記「b」において、白いガーゼが白い像となることは、カラーモニタ4に入力される撮像信号の、赤、緑、青それぞれの画像信号が等しい光量の画像信号であることを示している。そして、ビデオ信号の増幅度を変える方法に代えて「LED13の点灯電流の赤と青のバランスを変えてやることによって」「ホワイトバランスの調整」を行っているのであるから、カラー撮像用CCD52で得られた撮像信号の、赤、緑、青それぞれの画像信号が等しい光量の画像信号であることを示している。 d 一方、本願補正発明1の「カメラの各カラーチャンネルが」「反射した前記非白色光に対して略等しい応答を有するように」光の照明強度を調節することは、本願の段落【0063】及び【0064】の説明及び【図2】を参酌すると、複数のカラーチャンネルのそれぞれは概ね同量の光を受け取り、複数のカラーチャンネルの信号がすでに等しいので、画像処理パイプライン240におけるホワイトバランス・ステージで、複数のカラーチャンネルのいずれの信号も増幅する必要がないことを生じさせるものである。つまり、画像処理パイプライン240に入力される複数のカラーチャンネルのいずれの信号、すなわちカメラ220R,220Lから画像パイプライン240に出力される複数のカラーチャンネルのいずれの信号がすでに等しいことを示している。 e 前記「d」を踏まえると前記「a」乃至「c」で検討した引用発明における「ホワイトバランスをとる作業」は、「青のLED13Bの点灯電流を増やすことによって、つまりLED13の点灯電流を変えることによって、ホワイトバランスが変えられ」た状態で撮影された白いガーゼがカラーモニタ4上で白い像として表示されるよう、すなわちカラー撮像用CCD52で得られた撮像信号の、赤、緑、青それぞれの画像信号が等しい光量の画像信号になるよう、行う作業であるから、この作業は、本願補正発明1における「複数の色成分の照明源の出力の組合せが前記非白色光となり且つ」「カメラの各カラーチャンネルが」「反射した前記非白色光に対して略等しい応答を有するよう」に「複数の色成分の照明源の1つ又は複数によって出力される光の照明強度を調節する」ことと同等のことを行っていると認められる。 f ここで、前記「b」では、撮影対象を白いガーゼとしている。白いガーゼは白色であるとは認められるものの、本願補正発明1でいう「完全な反射面」かどうかは定かではない。 g 本願補正発明1における「完全な反射面」については、本願の発明の詳細な説明の【0016】【0023】【0027】に記載があり、また、【0059】には「白色(完全反射)面」と、【0063】には「白(完全反射)面」という記載がある。よって、本願補正発明1における「完全な反射面」は「白色面」や「白面」が実施例として挙げられていることが分かる。 h 引用発明における「白いガーゼ」がどの程度白いかは定かではないが、ホワイトバランスの調整の際に被写体として採用され、正しいホワイトバランスとなった際にカラーモニタ4で白く見えることを期待されるものである。よって、引用発明において、白いガーゼの代わりに完全な反射面である、白色面や白面を採用することは、当業者が適宜なしうる設計変更にすぎず、当業者が容易になしえたことである。 (ウ)本願補正発明1の効果について 本願補正発明1の効果は、引用発明から当業者が予測しうる程度のものにすぎない。 オ 小括 したがって、本願補正発明1は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3 本願発明について (1)本願発明1 令和元年12月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至12に係る発明は、令和元年5月7日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至12に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明である本願発明1は、前記「2(1)」にも記載した、次のとおりのものである。 「【請求項1】 機器であって、当該機器は、 カメラであって、該カメラは、該カメラに入射する光を画素のセットに分離するように構成され、前記画素のセットの各セットは、前記カメラの異なるカラーチャンネルにある、カメラと、 複数の色成分の照明源を有する照明装置であって、前記複数の色成分の照明源は、該照明装置が非白色光を出力し、それによって前記カメラの各カラーチャンネルが、完全な反射面から反射した前記非白色光に対して略等しい応答を有するよう構成される、照明装置と、 前記複数の色成分の照明源に結合された制御装置であって、該制御装置は、前記複数の色成分の照明源の出力の組合せが前記非白色光となるように、前記複数の色成分の照明源の1つ又は複数によって出力される光の照明強度を調節するように構成される、制御装置と、を備える、 機器。」 (2)原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-12に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開平11-253402号公報 引用文献2:特開平08-228341号公報 引用文献3:国際公開第2013/031701号 (3)引用された刊行物に記載された発明 原査定の拒絶の理由で引用された刊行物に記載された発明並びにその記載事項は、引用文献1については前記「2(3)イ」で引用例とした刊行物であるから、前記「2(3)イ」に記載したとおりである。 (4)対比・判断 本願発明1は、前記「2(3)」で検討した本願補正発明1から、「制御装置」を「前記複数の色成分の照明源に結合された制御装置であって、該制御装置は、前記複数の色成分の照明源の出力の組合せが前記非白色光となり且つ前記カメラの各カラーチャンネルが完全な反射面から反射した前記非白色光に対して略等しい応答を有するように、前記複数の色成分の照明源の1つ又は複数によって出力される光の照明強度を調節するように構成される、制御装置」から「前記複数の色成分の照明源に結合された制御装置であって、該制御装置は、前記複数の色成分の照明源の出力の組合せが前記非白色光となるように、前記複数の色成分の照明源の1つ又は複数によって出力される光の照明強度を調節するように構成される、制御装置」へと「且つ前記カメラの各カラーチャンネルが完全な反射面から反射した前記非白色光に対して略等しい応答を有するように、」の発明特定事項の記載を取り除いて当該事象の同時発生の限定を削除して拡張し、「照明装置」を「複数の色成分の照明源を有する照明装置であって、前記複数の色成分の照明源は、該照明装置が非白色光を出力するよう構成される、照明装置」から制御装置の発明特定事項として記載された事項を取り込んで「複数の色成分の照明源を有する照明装置であって、前記複数の色成分の照明源は、該照明装置が非白色光を出力し、それによって前記カメラの各カラーチャンネルが、完全な反射面から反射した前記非白色光に対して略等しい応答を有するよう構成される、照明装置」と表現を変更するものである。 そうすると、本願発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明1が、前記「2(3)」に記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-05-26 |
結審通知日 | 2020-06-02 |
審決日 | 2020-06-15 |
出願番号 | 特願2016-557988(P2016-557988) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 奥田 雄介、増渕 俊仁 |
特許庁審判長 |
福島 浩司 |
特許庁審判官 |
伊藤 幸仙 森 竜介 |
発明の名称 | 非白色光の一般的な照明装置を含む手術システム |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 大貫 進介 |