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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1367764
審判番号 不服2019-16565  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-06 
確定日 2020-10-28 
事件の表示 特願2017- 98094「身体の体勢および活動を決定するための方法および身体センサデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月 2日出願公開、特開2017-196417〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」と記す。)は、2013年11月1日(パリ条約による優先権主張 2012年11月2日 米国 2013年10月31日 米国)を国際出願日とする特願2015-540827号の一部を平成29年5月17日に新たな特許出願としたものであって、平成30年6月5日付けで拒絶理由が通知され、同年9月14日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月12日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成31年3月15日付けで意見書及び手続補正書が提出され、令和元年8月1日付けで平成31年3月15日付けの手続補正に対する補正の却下の決定がなされるとともに同日付けで拒絶査定がなされたところ、同年12月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同時に手続補正がなされたものである。

2 令和元年12月6日付けの手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
令和元年12月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
〔理由〕
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、その補正内容は、特許請求の範囲について、請求項1を平成30年9月14日付け手続補正書に記載された以下の請求項1(以下「本願発明1」という。)
「【請求項1】 身体の体勢および活動を決定するための方法において、
身体センサデバイスを使用して加速度計データを検出するステップと、
自動較正によって前記身体センサデバイスを較正するステップと、
較正された加速度計データを取得するステップと、
前記較正された加速度計データにローパスフィルタを適用するステップと、
前記加速度計データ、前記較正された加速度計データ、および前記ローパスフィルタが適用された加速度計データのうちの少なくとも1つに基づいて、身体の身体移行を検出および分類するステップと、
前記加速度計データ、前記較正された加速度計データ、および前記ローパスフィルタが適用された加速度計データのうちの少なくとも1つに基づいて、前記身体の活動が存在するかどうかを検出するステップと、
活動が存在する場合には、前記活動を分類するステップと、
活動が存在しない場合には、前記身体の休止姿勢を分類するステップとを含むことを特徴とする方法。」
から、以下の請求項1(以下「本願補正発明1」という。)
「【請求項1】 身体の体勢および活動を決定するための方法において、
身体センサデバイスを使用して加速度計データを検出するステップであって、前記身体センサデバイスは3軸加速度計を備え、前記加速度計データは3軸加速度計データを含むステップと、
垂直(VT)軸の方向を決定し、前記VT軸を使用して前側-後側(AP)軸および中央-側方(ML)軸を決定する自動較正によって前記身体センサデバイスを較正するステップと、
3つの較正された軸での回転された加速度を取得するために前記3軸加速度計データに加速度計軸の回転を適用することによって、較正された加速度計データを取得するステップと、
前記較正された加速度計データにローパスフィルタを適用するステップと、
前記加速度計データ、前記較正された加速度計データ、および前記ローパスフィルタが適用された加速度計データのうちの少なくとも1つに基づいて、身体の身体移行を検出および分類するステップと、
前記加速度計データ、前記較正された加速度計データ、および前記ローパスフィルタが適用された加速度計データのうちの少なくとも1つに基づいて、前記身体の活動が存在するかどうかを検出するステップと、
活動が存在する場合には、前記活動を分類するステップと、
活動が存在しない場合には、前記身体の休止姿勢を分類するステップとを含むことを特徴とする方法。」(下線は補正箇所を示す。)
に補正するものを含むものである。

(2)本件補正の目的
本件補正のうち、請求項1についての補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、「身体センサデバイスを使用して加速度計データを検出するステップ」を「身体センサデバイスを使用して加速度計データを検出するステップであって、前記身体センサデバイスは3軸加速度計を備え、前記加速度計データは3軸加速度計データを含むステップ」に限定し、「自動較正によって前記身体センサデバイスを較正するステップ」を「垂直(VT)軸の方向を決定し、前記VT軸を使用して前側-後側(AP)軸および中央-側方(ML)軸を決定する自動較正によって前記身体センサデバイスを較正するステップ」に限定し、「較正された加速度計データを取得するステップ」を「3つの較正された軸での回転された加速度を取得するために前記3軸加速度計データに加速度計軸の回転を適用することによって、較正された加速度計データを取得するステップ」に限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)独立特許要件について
本件補正後の前記本願補正発明1が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

ア 本願補正発明
本願補正発明1は、前記「2(1)」に記載したとおりのものである。

イ 引用例
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前である2006年(平成18年)1月31日に頒布された刊行物である「Dean M. Karantonis et al.,Implementation of a Real-Time Human Movement Classifier Using a Triaxial Accelerometer for Ambulatory Monitoring,IEEE TRANSACTIONS ON INFORMATION TECHNOLOGY IN BIOMEDICINE,2006年1月31日,第10巻,第1号,p.156-167」(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。(注:仮訳は当審で作成した。)

a 「Abstract-The real-time monitoring of human movement can provide valuable information regarding an individual's degree of functional ability and general level of activity. This paper presents the implementation of a real-time classification system for the types of human movement associated with the data acquired from a single, waist-mounted triaxial accelerometer unit. The major advance proposed by the system is to perform the vast majority of signal processing onboard the wearable unit using embedded intelligence. In this way, the system distinguishes between periods of activity and rest, recognizes the postural orientation of the wearer, detects events such as walking and falls,and provides an estimation of metabolic energy expenditure.」(156頁左欄第1-12行)
(仮訳: 要約-人間の動きをリアルタイムで監視することは、個人の機能的能力の程度と一般的な活動レベルに関する貴重な情報を提供することができます。このペーパーでは、腰に取り付けられた単一の3軸加速度計ユニットから取得したデータに関連する人間の動きのタイプをリアルタイムで分類するシステムの実装について説明します。システムによって提案された主な進歩は、組み込みインテリジェンスを使用してウェアラブルユニットに搭載された信号処理の大部分を実行することです。 このようにして、システムは活動期間と休息期間を区別し、着用者の姿勢の向きを認識し、歩行や転倒などのイベントを検出し、代謝エネルギー消費の推定を提供します。)

b 「For this reason, the system is required to distinguish between periods of activity and rest, upright andlying postures, and lying subpostures-if the user is lying on his or her right or left side, on his or her back, or face down. In addition to fall detection,the system is required to recognize other types of activity, such as sittingand standing, and depending on hardware limitations, walking as well.」(第157頁左欄第38-44行)
(仮訳: このため、システムは、活動と休息の期間、直立姿勢と横臥姿勢、およびユーザーが右または左、仰向け、またはうつぶせで横になっているならば横臥に関する下位姿勢を区別する必要があります。ユーザーが右または左、仰向け、または下向きで横になっている場合、システムは、転倒検出に加えて、座ったり立ったり、ハードウェアの制限によっては歩行など、他のタイプの活動を認識する必要があります。)

c 「1) Preliminary Processing on the TA Unit: Due to the limited buffering capacity of the onboard microcontroller,a second-by-second classification scheme was adopted, whereby movement is classified based on the data collected over a 1 s interval. An evaluation of the most suitable size for such a classification window was presented in[18], where it was determined that a window of around 1 s (0.8-1.4 s) was optimal.(第158頁左欄下から2行目-右欄第5行。)
(仮訳: 1)TAユニットでの予備処理:オンボードマイクロコントローラーのバッファー容量が限られているため、1秒間隔で収集されたデータに基づいて動きが分類される、秒単位の分類スキームが採用されました。そのような分類ウィンドウに最適なサイズの評価は[18]に示され、約1秒(0.8-1.4秒)のウィンドウが最適であると判断されました。)

d 「The major processing that must be performed on the raw data after each sample is acquired includes two steps. The first step is median filtering, whereby a median filter with n=3 is applied to the raw digitized signal to remove any abnormal noise spikes produced by the accelerometers. The output of this filter is used in the calculations of all decisions. The second step is low pass filtering (LPF),where custom third-order elliptical infinite impulse response (IIR) filter with cut-off frequency at 0.25 Hz (0.01 dB passband ripple; stopband at -100 dB) is employed to separate the acceleration components due to gravity (GA) and bodily motion (BA) from the median-filtered (n=3) signal. These two components are linearly combined in the TA signal, and because they overlap both in time andin frequency, they cannot be easily separated. However, LPF allows approximations to the two components to be made. The GA component is taken directly from the result of applying the LPF to the median-filtered signal,whereas the BA component is taken as the difference between the original signal and the GA component. The BA component is used when distinguishing activity from rest because in this case, we are not interested in the effects of gravity. The GA component provides information on the tilt angle of the TA device, which can be used to make inferences about the postural orientation of a subject.」(158頁右欄第13-36行)
(仮訳: 各サンプルの取得後に生データに対して実行する必要がある主要な処理には、2つのステップが含まれます。最初のステップはメジアンフィルタリングです。これにより、n=3のメジアンフィルターが生のデジタル化信号に適用され、加速度計によって生成される異常なノイズスパイクが削除されます。このフィルターの出力は、すべての決定の計算に使用されます。2番目のステップはローパスフィルタリング(LPF)で、0.25Hzのカットオフ周波数(0.01dBの通過帯域リップル、-100dBの阻止帯域)を備えたカスタムの3次楕円無限インパルス応答(IIR)フィルターを使用して、中央値フィルタリング(n=3)信号からの重力(GA)と体動(BA)による加速度成分を分離します。これらの2つのコンポーネントは、TA信号で線形に結合されます。これらのコンポーネントは、時間的にも周波数的にも重なるため、簡単に分離できません。ただし、LPFでは、2つのコンポーネントの近似を行うことができます。GA成分は、LPFをメディアンフィルター処理された信号に適用した結果から直接取得されますが、BA成分は、元の信号とGA成分の差として取得されます。この場合、重力の影響には関心がないので、活動を安静と区別するときにBAコンポーネントが使用されます。GAコンポーネントは、TAデバイスの傾斜角度に関する情報を提供します。これは、被験者の姿勢の向きについて推論するために使用できます。)

e 「2) Activity and Rest: To distinguish between periods of user activity and rest, a measure that includes the effect of signal variations in all three axes is required. A suitable measure, which is discussed in several previous studies [1], [18], is the normalized signal magnitude area (SMA). Defined in (1), the SMA was used as the basis for identifying periods of activity:

where x(t),y(t), and z(t) refer to the body components of the x-, y-, and z-axis samples, respectively. Calculation of this parameter is performed by summing each sampled value progressively (i.e., following the digitization of each accelerometer sample)over a 1-s interval. An appropriate threshold value (th in Fig. 2) was determined via testing-for an SMA value above the threshold, activity was deemed to have occurred, and values below the threshold mean the user is in a resting state.」(第158頁右欄第43行?第159頁左欄第2行)
(仮訳: 2)活動と休息:ユーザーの活動と休息の期間を区別するには、3つの軸すべての信号変動の影響を含む測定が必要です。これまでのいくつかの研究[1]、[18]で説明されている適切な尺度は、正規化された信号振幅領域(SMA)です。(1)で定義されているSMAは、活動期間を特定するための基礎として使用されました。

ここで、x(t)、y(t)、およびz(t)は、それぞれx軸、y軸、およびz軸のサンプルのボディコンポーネントを参照します。このパラメーターの計算は、各サンプル値を1秒間隔で徐々に(つまり、各加速度計サンプルのデジタル化に従って)合計することによって実行されます。適切なしきい値(図2のth)は、しきい値を超えるSMA値のテストによって決定され、活動は発生したと見なされ、しきい値を下回る値は、ユーザーが休息状態であることを意味します。)

f 「3) Postural Orientation: Postural orientation refers to the relative tilt of the body in space. In our application, we have aimed to provide a distinction between the upright postures of sitting and standing, as well as the various subpostures associated with lying. When determining postural orientation, only the gravitational component of the TA signal is used because we are dealing with static accelerations where tilt is measured.
The basic technique employed to perform such classifications relies on evaluating the user's tilt angle (Φ), defined as the angle between the positive z-axis and the gravitational vector g by the relation:

An overview of how the tilt angle relates to the various postural orientations is illustrated in Fig. 3. If the patient's tilt angle is 0 to 60 °, it is classified as upright, whereas values of 60 to 120 ° indicate a lying posture; any greater a tilt angle and the user is classified as inverted. Because we employ fixed thresholds to determine postural orientation, we need not calculate the exact tilt angle value in degrees, but rather we only need to perform comparisons of the z-axis data with equivalent thresholds of the same units.
The technique used to distinguish sitting and standing is a highly simplified version compared with other studies that have used neural networks,rule-based classifiers, and/or knowledge of future events. However, because such methods are infeasible due to the system constraints for the TA unit, we have been forced to use this simpler technique based on tilt angle differences. Mathie [18] determined that a tilt angle between 20 and 60 ° is definitely sitting, and angles of 0 to 20 ° may be either sitting or standing, depending on various other parameters. Thus, in our scheme, sitting and standing may sometimes be incorrectly classified.
When the patient is lying down, their orientation is divided into the categories of right side (right), left side (left), lying face down (front), or lying on their back (back), as shown in Fig. 4. The x- and y-axis labels indicate the direction of positive acceleration relative to the patient, given that they are facing the back label. It should be noted here that the TA unit is mounted at the right anterior iliac crest of the pelvis at an angle of 45° to the frontal plane.」(第159頁左欄第3行?第160頁左欄第4行)
(仮訳: 3)姿勢の向き:姿勢の向きは、空間における身体の相対的な傾きを指します。私たちのアプリケーションでは、座った状態と立った状態の直立姿勢、および横になることに関連するさまざまな下位姿勢を区別することを目的としています。姿勢の方向を決定するとき、傾きが測定される静的加速度を扱っているため、TA信号の重力成分のみが使用されます。
このような分類を実行するために使用される基本的な手法は、正のz軸と重力ベクトルgの間の角度として定義されるユーザーの傾斜角(Φ)の評価に依存しています。

傾斜角度がさまざまな姿勢の向きにどのように関係するかの概要を図3に示します。患者の傾斜角度が0から60度の場合、直立として分類されます。60から120度の値は横になった姿勢を示します。傾斜角が大きくなると、ユーザーは倒立として分類されます。固定されたしきい値を使用して姿勢の方向を決定するため、正確な傾斜角の値を度数で計算する必要はありませんが、z軸データと同じ単位の同等のしきい値を比較するだけで済みます。
座位と立位を区別するために使用される手法は、ニューラルネットワーク、ルールベースの分類子、および/または将来のイベントの知識を使用した他の研究と比較して、非常に簡略化されたバージョンです。ただし、TAユニットのシステム制約のためにこのような方法は実行不可能であるため、傾斜角の違いに基づくこのより単純な手法を使用せざるを得ませんでした。 Mathie [18]は、20度から60度の間の傾斜角度は確実に座っていると判断し、0から20度の角度は、他のさまざまなパラメーターに応じて、座っているか立っているかのどちらかです。したがって、私たちのスキームでは、座っていることと立っていることは時々間違って分類されることがあります。
図4に示すように、患者が横になったときの向きは、右側(右)、左側(左)、うつぶせ(前)、または仰向け(後ろ)のカテゴリに分類されます。x軸とy軸のラベルは、背面ラベルに面している場合、患者に対する正の加速度の方向を示します。ここで、TAユニットが骨盤の右前腸骨稜に正面から45°の角度で取り付けられていることに注意してください。)

g 「4) Falls: Falls are said to have occurred if at least two consecutive peaks in the signal magnitude vector (SVM) above a defined threshold are recorded. SVM [defined in (3)] essentially provides a measure of the degree of movement intensity, as derived from the TA output signal. This fall detection technique and the associated threshold are described in [18]. The threshold was determined by considering accelerations in SVM and in the x-, y-, and z-axes, whereas falls and stumbles were simulated. A review of these test results identified the most suitable parameter to be SVM at a threshold of 1.8 g, and this value was justified through formal patient studies. When such a fall event occurs, a classification of possible fall is assigned to the current time period, and the system operator will be notified of a potential safety threat. The operator will receive the fall event data together with the complete signal for 60 s following the event, via transmission to the receiver unit. In this way, the system operator can more precisely determine if the wearer has actually fallen and whether he or she has recovered. Movement classifications are performed as per usual in this period:

where xi is the ith sample of the x-axis signal (similarly for yi and zi).
An attempt was made at automating the detection of a recovery by the wearer following the possible fall. Typically, a fall event involves a sequence of classifications such as possible fall, lying active, lying active, front,front, and front. If the wearer has injured themselves as a result and remains motionless for the following minute, then third-party assistance may be urgently required. As such, if the system recognizes that no activity has occurred during this 60 s postfall interval (ignoring the first 5 s due to potential residual movement relating to the fall), then the alert is upgraded to a fall, and further measures taken to ensure the operator is made aware of the situation. If, however, there is activity detected in the postfall period, then the event is left marked as a possible fall.」(第160頁左欄第5-40行)
(仮訳: 4)転倒:定義されたしきい値を超えるシグナルマグニチュードベクトル(SVM)で少なくとも2つの連続したピークが記録された場合、転倒が発生したと言われます。SVM [(3)で定義]は、基本的に、TA出力信号から導出される、移動強度の程度の尺度を提供します。この落下検出手法と関連するしきい値については、[18]で説明されています。しきい値は、SVMとx、y、z軸の加速度を考慮して決定されましたが、転倒とつまずきがシミュレーションされました。これらのテスト結果のレビューにより、1.8 gのしきい値でのSVMとして最も適切なパラメーターが特定され、この値は正式な患者の研究を通じて正当化されました。このような転倒イベントが発生すると、転倒の可能性の分類が現在の期間に割り当てられ、システムオペレーターに潜在的な安全上の脅威が通知されます。オペレーターは、転倒イベントデータを、受信ユニットへの送信を介して、イベント後60秒間の完全な信号とともに受信します。このようにして、システムオペレーターは、着用者が実際に転倒したかどうか、および着用者が回復したかどうかをより正確に判断できます。移動の分類は、この期間は通常どおり実行されます。

ここで、xiはx軸信号のi番目のサンプルです(yiとziについても同様)。
転倒の可能性に続く装着者による回復の検出を自動化する試みが行われた。 通常、転倒イベントには、転倒の可能性、アクティブな横たわり、アクティブな横たわり、うつぶせ、うつぶせ、うつぶせなどの一連の分類が含まれます。その結果、着用者が怪我をして次の1分間動かない場合は、サードパーティの支援が緊急に必要になることがあります。 したがって、システムがこの60秒間の転倒後の間隔中に活動が発生しなかったことを認識した場合(転倒に関連する潜在的な残留移動による最初の5秒間を無視)、アラートは落下にアップグレードされ、さらに確実な対策が講じられますオペレーターに状況を知らせます。 ただし、落下後の期間に活動が検出された場合、イベントは転倒の可能性があるとしてマークされたままになります。)

h 「5) Walking: As mentioned earlier, the task of performing signal processing for the recognition of walking was deemed infeasible for the TA unit. As a solution to this problem, when a situation is reached where there is activity in which the patient is upright, the z-axis signal data will be transmitted to the receiver unit. In this way, an opportunity exists to apply various signal processing techniques to the raw accelerometer output that will clarify whether the activity is indeed walking or some other type of activity.
In the current system, signal data acquired by the receiver that isclassified as upright active are buffered. If less than four consecutive such classifications are received, then no further processing is performed on the data. This decision was made in accordance with the walking algorithm presented by Mathie [18]. If a longer sequence of upright activity presents itself, then the z-axis data associated with this movement event are buffered and subsequently subject to a highpass filter (HPF) to obtain the body component of the signal. Even though the body component is derived on the TA unit,better results were obtained when applying an HPF on the local computer becausea filter of much higher order could be implemented. The HPF employed was a seventh-order IIR elliptic filter with cut-off frequency of 0.25 Hz (0.01 dB ripple in passband; -100 dB in the stopband). Following application of the HPF, an FFT of the z-axis data is employed to obtain its magnitude spectrum and to determine whether there is a frequency peak in the expected range of walking frequencies (0.7-3.0 Hz) [18]. This method is used to determine if the motion is cyclic, and if a suitable frequency peak is found, this is identified as the step rate, and the motion is reclassified from upright active to walking.」(第160頁左欄第41行?右欄第29行)
(仮訳: 5)歩行:前述のように、歩行の認識のために信号処理を実行するタスクは、TAユニットでは実行不可能と見なされていました。この問題の解決策として、患者が直立している活動がある状況に達したとき、z軸信号データが受信機ユニットに送信されます。このようにして、さまざまな信号処理技術を生の加速度計出力に適用して、活動が実際にウォーキングなのか他のタイプの活動なのかを明らかにする機会が存在します。
現在のシステムでは、直立アクティブとして分類される受信機によって取得された信号データがバッファリングされます。受信したそのような分類の連続が4つ未満の場合、データに対してそれ以上の処理は実行されません。この決定は、Mathie [18]によって提示された歩行アルゴリズムに従って行われました。直立した活動のより長いシーケンスが現れる場合、この移動イベントに関連付けられたz軸データがバッファーに入れられ、続いてハイパスフィルター(HPF)の対象となり、信号のボディコンポーネントが取得されます。本体コンポーネントはTAユニットで生成されますが、はるかに高次のフィルターを実装できるため、ローカルコンピューターにHPFを適用すると、より良い結果が得られます。採用したHPFは、0.25Hzのカットオフ周波数(通過帯域で0.01dBリップル、阻止帯域で-100dB)の7次IIR楕円フィルターでした。 HPFの適用後、z軸データのFFTを使用して、その振幅スペクトルを取得し、歩行周波数の予想範囲(0.7-3.0Hz)に周波数ピークがあるかどうかを判断します[18]。この方法は、動きが周期的であるかどうかを判断するために使用され、適切な周波数ピークが見つかった場合、これはステップレートとして識別され、動きは直立アクティブからウォーキングに再分類されます。)

i 「Fig.1



j 「Fig.2



k 「Fig.3



l 「Fig.4



m 前記「a」の記載とFig.1より、「腰に取り付けられた単一の3軸加速度計ユニットはTAユニットである」ことが読み取れる。

n 前記「c」乃至「h」と「k」乃至「m」の記載とFig.2より、「TAで測定された3軸加速度信号は、メディアンフィルターとローパスフィルタで処理され、処理後の信号から正規化された信号振幅領域(SMA)が計算され、SMAをしきい値thと比較してSMAが大きい場合はアクティビティが発生したと判定し、その場合は異常な加速度ピークの有無と正のz軸と重力ベクトルgの間の角度として定義されるユーザーの傾斜角(Φ)により、転倒の可能性、直立アクティブ、横たわりアクティブの3つに分類し、SMAをしきい値thと比較してSMAが小さい場合は休息と判定し、ユーザーの傾斜角(Φ)により、着座、直立、逆立ち、横たわりの4つに分類し、休息の横たわりの場合はxy平面での正の加速度方向により、横になったときの向きを、右側(右)、左側(左)、うつぶせ(前)、または仰向け(後ろ)のカテゴリに分類する」ことが図示されていると読み取れる。

上記引用例1の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「腰に取り付けられた単一の3軸加速度計TAユニットから取得したデータにより着用者の動きのタイプをリアルタイムで分類するシステムを用いて活動期間と休息期間を区別し、着用者の姿勢の向きを認識し、歩行や転倒などのイベントを検出する方法において、
1秒間隔でTAで測定された3軸加速度信号は、メディアンフィルターとローパスフィルタで処理され、処理後の信号から重力(GA)と体動(BA)による加速度成分を分離し、BAコンポーネントから正規化された信号振幅領域(SMA)が計算され、GAコンポーネントから、TAデバイスの傾斜角度すなわちユーザーの傾斜角(Φ)に関する情報を生成し、
SMAをしきい値thと比較してSMAが大きい場合は活動が発生したと判定し、その場合は異常な加速度ピークの有無とユーザーの傾斜角(Φ)により、転倒の可能性、直立アクティブ、横たわりアクティブの3つに分類し、
SMAをしきい値thと比較してSMAが小さい場合は休息と判定し、その場合は、ユーザーの傾斜角(Φ)により、着座、直立、逆立ち、横たわりの4つに分類し、休息の横たわりの場合はxy平面での正の加速度方向により、横になったときの向きを、右側(右)、左側(左)、うつぶせ(前)、または仰向け(後ろ)のカテゴリに分類し、
直立アクティブの場合、その直立アクティブに分類されることが4つ未満より長く連続したシーケンスとして現れる場合にこの移動イベントに関連付けられたz軸データがバッファーに入れられ、続いてハイパスフィルター(HPF)の対象となり、信号のボディコンポーネントが取得され、動きが周期的であるかどうかを判断するために適切な周波数ピークがあるかどうか判定し、適切なピークが見つかった場合、これはステップレートとして識別され、動きは直立アクティブからウォーキングに再分類される、
1秒間隔で収集されたデータに基づいて動きが分類される、秒単位の分類スキームが採用された方法。」

(イ)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前である平成18年(2006年)7月6日に頒布された刊行物である「特開2006-175206号公報」(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。

a 「【0001】
本発明は、3軸加速度センサを用いて、日常生活、作業などにおける人の歩行状態や姿勢などを検出する身体状態検出装置、その検出方法及び検出プログラムに関する。」

b 「【0007】
本発明の目的は、上記の課題を解決すべく、加速度センサの取り付け方向に依存せず、歩行状態、姿勢の傾斜などの身体状態を精度よく検出することができる身体状態検出装置、その検出方法及び検出プログラムを提供することにある。」

c 「【0053】
(重力加速度方向の検出機能)
次に、重力加速度の方向を検出する機能に関して説明する。これは、加速度データから歩行状態を自動検出し、歩行状態における加速度データの平均を求め、これを重力加速度方向として決定する機能である。一般的に歩行状態における平均的な身体姿勢は、重力加速度方向に対して同一人では同じ姿勢が保たれていると考えられる。従って、加速度センサによって得られる加速度データから、図2に示した処理により歩行状態を検出し、予め決められた判定時間幅(以下、重力加速度判定時間と記す)よりも長く歩行状態が継続している場合、評価時間幅T_(1)における平均加速度データを重力加速度とすることができる 。
【0054】
図6は、本実施の形態に係る身体状態検出装置による重力加速度方向の検出処理を示すフローチャートである。図2に関する説明と同様に、図6に示した処理においても、時系列に記録部3に予め記録された加速度データを対象とし、特に断らない限り処理部5が行う処理として説明する。
【0055】
ステップS11?ステップS18の処理は、図2に示したステップS1?S8における処理と同様であるので、説明を省略する。但し、ステップS11において初期設定として、重力加速度判定時間T_(2)を設定することが、ステップS1とは異なる。
【0056】
ステップS19において、ステップS18でフラグがflag(j)=1と設定された連続区間L(全てのflag(j)の値が“1”である連続する区間)を求め、連続区間Lの時間長t_(2)を求める。
【0057】
ステップS20において、ステップS19で求めた合計時間t_(2)がステップS11で設定した重力加速度判定時間T_(2)より大きいか否かを判断する。t_(2)>T_(2)でないと判断した 場合、ステップS15に移行した後、ステップS12?S19の処理を繰り返す。t_(2)> T_(2)であると判断した場合、ステップS21に移行する。
【0058】
ステップS21において、連続区間L内の最後の評価時間幅T_(1)における加速度データ の平均ベクトルを求めて、その結果を連続区間L以降の重力加速度として記録する。従って、このステップS21が実行されない区間に関しては、それ以前の処理で決定された重力加速度が適用される。
【0059】
ステップS22において、処理対象の加速度データがN_(1)以上残っているか否を判断し、残っていないと判断するまで、ステップS15に戻った後、ステップS2?S21の処理を繰り返す。
【0060】
以上によって、歩行状態にあり且つt_(2)>T_(2)の条件を満たす区間(時間幅T_(1))における加速度データの平均を用いて、全期間の重力加速度方向を加速度センサの座標系で決定することができる。」

d 「【0064】
(身体姿勢の検出機能)
最後に、身体の傾斜角度を検出する機能に関して説明する。これは、上記した重力加速度検出機能によって検出された重力加速度方向を用いて、加速度センサの装着方向に影響されることなく正しい身体傾斜角を検出する機能である。
【0065】
即ち、先ず、図7で説明した重力加速度検出機能によって更新された重力加速度方向を基準に、各時刻において加速度センサから採取した加速度データの評価時間幅T_(1)における平均加速度ベクトル(身体加速度ベクトル)が成す角度を計算する。そして、得られた角度を、加速度センサを装着した身体の傾斜角度(腰部に装着した場合には、腰部の傾斜角度)として決定する。
【0066】
一例として、図4、図7に示した、加速度センサの方向を3種類(約10°、約30°、約90°)に変化させて「着席」と「歩行」とを繰り返して採取した加速度データに対して、本機能を適用した結果を図8に示す。図8では、最上段に実際の状態を示し、その下に採取した3軸の加速度データを示し、さらにその下に「補正あり」と記して、本身体姿勢の検出機能による身体の傾斜角度の計算結果を示す。「補正なし」と記した最下段は、重力加速度検出機能による重力加速度方向の検出を行わずに加速度データを処理して得られた身体の傾斜角度を示す。
【0067】
「補正あり」と記した段に示したように、本身体姿勢の検出機能によれば、試行1?3と加速度センサの取り付け角度を変更しても、着席時の身体の傾斜角度としてほぼ一定の値(約23度?約37度)を算出できていることが分かる。これに対して、「補正なし」と記した段では、重力加速度方向の検出による修正を行っていないので、加速度センサの取り付け角度に依存して身体の傾斜角度が大きく変化している。従って、本身体姿勢の検出機能が非常に有効であることが分かる。」

上記引用例2の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「3軸加速度センサを用いて、日常生活、作業などにおける人の歩行状態や姿勢などを検出する身体状態検出方法において、歩行状態にあり且つt_(2)>T_(2)の条件を満たす区間(時間幅T_(1))における加速度データの平均を用いて、全期間の重力加速度方向を加速度センサの座標系で決定し、更新された重力加速度方向を基準に、各時刻において加速度センサから採取した加速度データの評価時間幅T_(1)における平均加速度ベクトル(身体加速度ベクトル)が成す角度を計算し、得られた角度を、加速度センサを装着した身体の傾斜角度(腰部に装着した場合には、腰部の傾斜角度)として決定することにより、加速度センサの装着方向に影響されることなく正しい身体傾斜角を検出する方法。」

(ウ)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前である平成24年(2012年)2月9日に頒布された刊行物である「特開2012-24449号公報」(以下「引用例3」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。

a 「【0001】
この発明は、歩行変化判定装置に関し、特に、当該装置を所定部位に装着するユーザの歩行状態の変化を判定するのに適した歩行変化判定装置に関する。」

b 「【0027】
図2は、この実施の形態における活動量計100の使用状態を示す図である。図2を参照して、活動量計100は、たとえば、ユーザの腰部のベルトに、クリップ部192を用いて装着される。この実施の形態においては、活動量計100は、ユーザの腰の近辺に固定して装着されることが望ましい。
【0028】
なお、本実施の形態において、歩行時のユーザの進行方向をZ軸(進む向きを正方向)とし、歩行時のユーザの左右方向をX軸(右向きを正方向)とし、鉛直方向をY軸(鉛直上向きを正方向)とする座標系を用いることとする。」

c 「【0037】
図6(B)は、加速度データから算出したユーザの歩行時の腰の軌跡を歩行の進行方向から見た図である。ここで、活動量計100の加速度センサによって検出された3軸方向の加速度データに基づいて、ユーザの歩行時の腰の軌跡を算出する方法について説明する。なお、この軌跡は、活動量計100の制御部によって算出される。
【0038】
まず、図2で説明したX軸、Y軸およびZ軸方向それぞれの加速度Ax(t),Ay(t),Az(t)を特定する。ここで、加速度センサの3軸方向がX軸、Y軸およびZ軸方向と一致している場合は、加速度センサで得られた検出値をそのままX軸、Y軸およびZ軸方向それぞれの加速度Ax(t),Ay(t),Az(t)とすればよい。一方、加速度センサの3軸方向がX軸、Y軸およびZ軸方向と一致していない場合は、加速度センサで得られた検出値を座標変換することによって、X軸、Y軸およびZ軸方向それぞれの加速度Ax(t),Ay(t),Az(t)を算出する。」

上記引用例3の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「ユーザの腰部のベルトに、クリップ部192を用いて活動量計100を装着し、活動量計100の加速度センサによって検出された3軸方向の加速度データに基づいて、ユーザの歩行時の腰の軌跡を算出する方法において、歩行時のユーザの進行方向をZ軸(進む向きを正方向)とし、歩行時のユーザの左右方向をX軸(右向きを正方向)とし、鉛直方向をY軸(鉛直上向きを正方向)とする座標系を用い、加速度センサの3軸方向がX軸、Y軸およびZ軸方向と一致していない場合は、加速度センサで得られた検出値を座標変換することによって、X軸、Y軸およびZ軸方向それぞれの加速度Ax(t),Ay(t),Az(t)を算出する方法。」

ウ 対比
本願補正発明1を、引用発明1と比較する。
(ア)引用発明1の「着用者の姿勢の向きを認識し、歩行や転倒などのイベントを検出する方法」は、本願補正発明1における「身体の体勢および活動を決定するための方法」に相当する。
(イ)引用発明1における「腰に取り付けられた単一の3軸加速度計TAユニット」は、「着用者」の腰に取り付けられた「3軸加速度計」を備え「3軸加速度信号」を「測定」するものであるから、本願補正発明1における「3軸加速度計を備え、」「3軸加速度計データを」「検出する」「身体センサデバイス」に相当する。
(ウ)引用発明1では、「腰に取り付けられた単一の3軸加速度計TAユニットから」「3軸加速度信号」を「取得し」ていることから、本願補正発明1における「身体センサデバイスを使用して加速度計データを検出するステップであって、前記身体センサデバイスは3軸加速度計を備え、前記加速度計データは3軸加速度計データを含むステップ」を備えている。
(エ)引用発明1では、「TAで測定された3軸加速度信号は、」「ローパスフィルタで処理され」ていることから、本願補正発明1における「加速度計データにローパスフィルタを適用するステップ」を備えている。
(オ)引用発明1では、「TAで測定された3軸加速度信号は、メディアンフィルターとローパスフィルタで処理され、」「処理後の信号から重力(GA)と体動(BA)による加速度成分を分離し、BAコンポーネントから正規化された信号振幅領域(SMA)が計算され、GAコンポーネントから、TAデバイスの傾斜角度すなわちユーザーの傾斜角(Φ)に関する情報を生成」していることから、引用発明1における「TAで測定された3軸加速度信号」を「メディアンフィルターとローパスフィルタで処理」した「処理後の信号」は、本願補正発明1における「ローパスフィルタが適用された加速度計データ」に相当し、引用発明1における「SMA」と「異常な加速度ピーク」と「ユーザーの傾斜角(Φ)」と「z軸データ」は、本願補正発明1における「ローパスフィルタが適用された加速度計データ」「に基づい」たデータに相当する。
(カ)引用発明1における「SMAをしきい値thと比較してSMAが大きい場合はアクティビティが発生したと判定し、その場合は異常な加速度ピークの有無とユーザーの傾斜角(Φ)により、転倒、直立アクティブ、横たわりアクティブの3つに分類」し、「直立アクティブの場合、その直立アクティブに分類されることが4つ未満より長く連続したシーケンスとして現れる場合にこの移動イベントに関連付けられたz軸データがバッファーに入れられ、続いてハイパスフィルター(HPF)の対象となり、信号のボディコンポーネントが取得され、動きが周期的であるかどうかを判断するために適切な周波数ピークがあるかどうか判定し、適切なピークが見つかった場合、これはステップレートとして識別され、動きは直立アクティブからウォーキングに再分類される」ことは、本願補正発明1における「ローパスフィルタが適用された加速度計データ」「に基づいて、前記身体の活動が存在するかどうかを検出するステップと、活動が存在する場合には、前記活動を分類するステップ」に相当する。
(キ)引用発明1における「SMAをしきい値thと比較してSMAが小さい場合は休息と判定し、その場合は、ユーザーの傾斜角(Φ)により、着座、直立、逆立ち、横たわりの4つに分類し、休息の横たわりの場合はxy平面での正の加速度方向により、横になったときの向きを、右側(右)、左側(左)、うつぶせ(前)、または仰向け(後ろ)のカテゴリに分類」することは、本願補正発明1における「ローパスフィルタが適用された加速度計データ」「に基づいて、前記身体の活動が存在するかどうかを検出するステップ」で「活動が存在しない場合には、前記身体の休止姿勢を分類するステップ」に相当する。
(ク)引用発明1では、「1秒間隔で収集されたデータに基づいて動きが分類される、秒単位の分類スキームが採用され」「着用者の動きのタイプをリアルタイムで分類する」ことから、リアルタイムで時系列的に着用者の動き、アクティビティ、休息を分類することができる。また、その分類は「転倒、直立アクティブ、横たわりアクティブ」「着座、直立、逆立ち、横たわり」「ウオーキング」などがある。よって、引用発明1において1つの分類から他の分類へ時系列的に分類が変更されたことを検出する場合は、本願補正発明1における「ローパスフィルタが適用された加速度計データ」「に基づいて、前記身体の身体移行を検出及び分類する」ことを行っているといえる。
すると、本願補正発明1と、引用発明1とは、次の点で一致する。
<一致点>
「身体の体勢および活動を決定するための方法において、
身体センサデバイスを使用して加速度計データを検出するステップであって、前記身体センサデバイスは3軸加速度計を備え、前記加速度計データは3軸加速度計データを含むステップと、
前記加速度計データにローパスフィルタを適用するステップと、
前記ローパスフィルタが適用された加速度計データに基づいて、身体の身体移行を検出および分類するステップと、
前記ローパスフィルタが適用された加速度計データに基づいて、前記身体の活動が存在するかどうかを検出するステップと、
活動が存在する場合には、前記活動を分類するステップと、
活動が存在しない場合には、前記身体の休止姿勢を分類するステップとを含む方法。」

一方で、両者は、次の点で相違する。
<相違点1>
本願補正発明1では「垂直(VT)軸の方向を決定し、前記VT軸を使用して前側-後側(AP)軸および中央-側方(ML)軸を決定する自動較正によって前記身体センサデバイスを較正するステップ」を備えているのに対し、引用発明1では前記構成を備えていない点。

<相違点2>
本願補正発明1では、「3つの較正された軸での回転された加速度を取得するために前記3軸加速度計データに加速度計軸の回転を適用することによって、較正された加速度計データを取得するステップ」と「前記較正された加速度計データにローパスフィルタを適用するステップ」を備えているのに対し、引用発明1では「TAで測定された3軸加速度信号」を「ローパスフィルタで処理」する点。

エ 判断
前記「ウ」で記載した各相違点について判断する。
(ア)相違点1について
a 引用発明2には「3軸加速度センサを用いて、日常生活、作業などにおける人の歩行状態や姿勢などを検出する身体状態検出方法において」、「歩行状態にあり且つt_(2)>T_(2)の条件を満たす区間(時間幅T_(1))における加速度データの平均を用いて、全期間の重力加速度方向を加速度センサの座標系で決定し、更新された重力加速度方向を基準に、」「各時刻において」「加速度センサを装着した身体の傾斜角度(腰部に装着した場合には、腰部の傾斜角度)」を「決定」し「加速度センサの装着方向に影響されることなく正しい身体傾斜角を検出する」技術が開示されている。

b 引用発明2では、「各時刻において」「加速度センサを装着した身体の傾斜角度(腰部に装着した場合には、腰部の傾斜角度)」が決定されることから、3軸加速度センサの座標軸が重力加速度方向からどれだけ傾いているかがリアルタイムで検出できる。また、引用発明2では、「更新された重力加速度方向を基準に、」「各時刻において」「加速度センサを装着した身体の傾斜角度(腰部に装着した場合には、腰部の傾斜角度)」を「決定」していることから、重力加速度方向を決定することを行っている。そして、引用発明2では、「加速度センサの装着方向に影響されることなく正しい身体傾斜角を検出する」ことから、重力加速度方向を垂直軸として正しい身体傾斜角を求めている。すなわち3軸加速度センサの座標軸と重力加速度方向との傾きを用いて、重力加速度方向を基準とした3軸加速度センサの装着方向を検出している。

c 以上のことから、引用発明2では、歩行中にリアルタイムで測定される3軸加速度データを用いて各時刻において重力加速度方向を決定し、重力加速度方向を基準とした3軸加速度センサの装着方向を検出して、3軸加速度センサ(を装着した身体)の傾斜角度を求めている。

d 一方、本願補正発明1の相違点1に係る「自動較正」については、本願の発明の詳細な説明の[0011]-[0013]に記載があり、その記載によれば「自動較正では、アルゴリズムは、ユーザが歩行しているかどうかを解析し、次いで、この検出された歩行期間中に、垂直較正ベクトルを取得する」([0012]参照。)及び「垂直軸VTを決定し、VTを使用して他の2軸を決定する。」([0013]参照。)ということである。つまり、歩行データから垂直較正ベクトルを取得して垂直軸VTを決定し、VTを使用して他の2軸を決定することが自動較正の一例として述べられている。

e 前記「c」「d」より、引用発明2には、本願補正発明1における「垂直(VT)軸の方向を決定し」「自動較正によって前記身体センサデバイスを較正する」技術が開示されている。

f ここで、引用発明1では、「腰に取り付けられた単一の3軸加速度計TAユニットから」「リアルタイムで」「取得したデータ」を処理して得られた「GAコンポーネントから、TAデバイスの傾斜角度すなわちユーザーの傾斜角(Φ)に関する情報を生成」し「xy平面での正の加速度方向により、横になったときの向きを、右側(右)、左側(左)、うつぶせ(前)、または仰向け(後ろ)のカテゴリに分類」することが行われている。ゆえに、引用発明1と引用発明2は、腰に3軸加速度センサを取り付けて、人の動きや姿勢を検出するという同一の技術分野に属する発明であるから、引用発明1におけるユーザーの傾斜角に関する情報を得た後に、引用発明2に開示された重力加速度方向を決定し、重力加速度方向を基準とした3軸加速度センサの装着方向を検出する技術を採用して、前記相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者ならば容易になしえたことである。

(イ)相違点2について
a 引用発明3には「ユーザの腰部のベルトに、クリップ部192を用いて活動量計100を装着し、活動量計100の加速度センサによって検出された3軸方向の加速度データに基づいて、ユーザの歩行時の腰の軌跡を算出する方法において、」「歩行時のユーザの進行方向をZ軸(進む向きを正方向)とし、歩行時のユーザの左右方向をX軸(右向きを正方向)とし、鉛直方向をY軸(鉛直上向きを正方向)とする座標系を用い、加速度センサの3軸方向がX軸、Y軸およびZ軸方向と一致していない場合は、加速度センサで得られた検出値を座標変換する」技術が開示されている。ここで、3軸方向を他の3軸方向に座標変換する方法には色々手法があるがその中に軸の回転を用いた回転行列による座標変換が含まれることは、当業者にとって常識的事項である。

b ここで、引用発明1では、「TAデバイスの傾斜角度すなわちユーザーの傾斜角(Φ)に関する情報を生成」していることから、TAデバイスの3軸方向は、「鉛直方向を」1つの「軸(鉛直上向きを正方向)とする」3軸「座標系」とは、鉛直方向ではTAデバイスの傾斜角度分だけ一致していないことが分かる。

c 引用発明1と引用発明3は、腰に3軸加速度センサを取り付けて、人の活動を検出するという同一の技術分野に属する発明であるから、引用発明1において、「ローパスフィルタで処理」する信号を「TAで測定された3軸加速度信号」としているところ、引用発明3に開示された加速度センサの3軸方向がX軸、Y軸およびZ軸方向と一致していない場合は、加速度センサで得られた検出値を座標変換する技術を採用し、「TAで測定された3軸加速度信号」をX軸、Y軸およびZ軸方向での3軸加速度信号となるように回転行列による座標変換を行い、つまり、「較正」された3軸加速度信号として、前記相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者ならば容易になしえたことである。

(ウ)本願補正発明1の効果について
本願補正発明1の効果は、引用発明1乃至3から当業者が予測しうる程度のものにすぎない。

オ 小括
したがって、本願補正発明1は、引用発明1乃至3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明について
(1)本願発明1
令和元年12月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至20に係る発明は、平成30年9月14日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至20に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明である本願発明1は、前記「2(1)」にも記載した、次のとおりのものである。

「【請求項1】 身体の体勢および活動を決定するための方法において、
身体センサデバイスを使用して加速度計データを検出するステップと、
自動較正によって前記身体センサデバイスを較正するステップと、
較正された加速度計データを取得するステップと、
前記較正された加速度計データにローパスフィルタを適用するステップと、
前記加速度計データ、前記較正された加速度計データ、および前記ローパスフィルタが適用された加速度計データのうちの少なくとも1つに基づいて、身体の身体移行を検出および分類するステップと、
前記加速度計データ、前記較正された加速度計データ、および前記ローパスフィルタが適用された加速度計データのうちの少なくとも1つに基づいて、前記身体の活動が存在するかどうかを検出するステップと、
活動が存在する場合には、前記活動を分類するステップと、
活動が存在しない場合には、前記身体の休止姿勢を分類するステップとを含むことを特徴とする方法。」

(2)原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、平成30年12月12日付け拒絶理由通知書に記載した理由1-3であり、理由3については、この出願の請求項1-20に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:Dean M. Karantonis et al.,Implementation of a Real-Time Human Movement Classifier Using a Triaxial Accelerometer for Ambulatory Monitoring,IEEE TRANSACTIONS ON INFORMATION TECHNOLOGY IN BIOMEDICINE,2006年1月31日,第10巻,第1号,p.156-167
引用文献2:特開2012-24449号公報
引用文献3:特開2007-160076号公報
引用文献4:特開2012-187162号公報
引用文献5:特開2006-175206号公報

(3)引用された刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物に記載された発明並びにその記載事項は、引用文献1は、引用例1であり、引用文献5は引用例2であり、引用文献2は引用例3であるので、引用文献1,引用文献2及び引用文献5については前記「2(3)イ」に記載したとおりである。

(4)対比・判断
本願発明1は、前記「2(3)」で検討した本願補正発明1から、「身体センサデバイスを使用して加速度計データを検出するステップであって、前記身体センサデバイスは3軸加速度計を備え、前記加速度計データは3軸加速度計データを含むステップ」を「身体センサデバイスを使用して加速度計データを検出するステップ」に拡張し、「垂直(VT)軸の方向を決定し、前記VT軸を使用して前側-後側(AP)軸および中央-側方(ML)軸を決定する自動較正によって前記身体センサデバイスを較正するステップ」を「自動較正によって前記身体センサデバイスを較正するステップ」に拡張し、「3つの較正された軸での回転された加速度を取得するために前記3軸加速度計データに加速度計軸の回転を適用することによって、較正された加速度計データを取得するステップ」を「較正された加速度計データを取得するステップ」に拡張したものである。
そうすると、本願発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明1が、前記「2(3)」に記載したとおり、引用発明1乃至3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用発明1乃至3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1乃至3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について拒絶の理由1乃至3について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-05-26 
結審通知日 2020-06-02 
審決日 2020-06-15 
出願番号 特願2017-98094(P2017-98094)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 裕勝福田 千尋門田 宏  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 森 竜介
伊藤 幸仙
発明の名称 身体の体勢および活動を決定するための方法および身体センサデバイス  
代理人 特許業務法人鷲田国際特許事務所  

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