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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G08G |
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管理番号 | 1367775 |
審判番号 | 不服2019-8856 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-07-02 |
確定日 | 2020-11-05 |
事件の表示 | 特願2016-27158「経路決定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年8月24日出願公開、特開2017-146730〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は、平成28年2月16日の出願であって、平成29年10月26日に審査請求がされ、平成30年7月31日付け(発送日:同年8月7日)で拒絶の理由が通知され、平成30年10月3日に意見書が提出され、平成31年3月22日付け(発送日:同年4月2日)で拒絶査定がされ、これに対し、令和元年7月2日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判請求と同時に、手続補正書が提出されたものである。 第2 令和元年7月2日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和元年7月2日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正前の平成28年2月16日の出願時の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 自動運転が可能な車両に搭載された経路決定装置であって、 前記車両が複数のゲートを有する料金所を通過する場合、前記複数のゲートの中から通過するゲートを選択するゲート選択部を備え、 前記ゲート選択部は、前記車両が前記料金所を通過するまで走行する道路が高速道路か否かという判断を、前記通過するゲートを選択するための条件判断の一つとして行うように構成されている ことを特徴とする経路決定装置。」 (2)そして、本件補正により、上述の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおり補正された(下線は、請求人が補正箇所を示すために付したものである。)。 「【請求項1】 自動運転が可能な車両に搭載された経路決定装置であって、 前記車両が複数のゲートを有する料金所を通過する場合、前記複数のゲートの中から通過するゲートを選択するゲート選択部を備え、 前記ゲート選択部は、前記車両が前記料金所を通過するまで走行する道路が高速道路か否かという条件判断を実行し、その条件判断の結果に基づいて前記通過するゲートを選択するように構成されている ことを特徴とする経路決定装置。 2 本件補正の適否 本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ゲート選択部」において、「車両が料金所を通過するまで走行する道路」が、「高速道路か否かという判断を、前記通過するゲートを選択するための条件判断の一つとして行う」との事項において、「高速道路か否かという条件判断を実行し、その条件判断の結果に基づいて前記通過するゲートを選択する」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1(以下「本件補正発明」という。)が、同法同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1.(2)に記載したとおりのものである。 (2)記載要件(サポート要件)についての検討 本件補正発明は、「料金所に複数のゲートが設けられている場合、その複数のゲートの中から車両が通過するゲートを適切に選択できるようにすること」(段落【0004】)を課題とし、課題を解決するための手段として、本件補正発明の経路決定装置は「複数のゲートの中から通過するゲートを選択するゲート選択部」を備えることが記載されている。 そして、ゲート選択部16には、ゲートの選択基準として、選択基準1ないし3について予め定義されており(段落【0045】)、選択基準は、以下の4つの条件の組み合わせによって決められる(段落【0060】)。 条件1:自車両Vが料金所を通過するまで走行する道路が高速道路か一般道路か 条件2:自車両Vが料金所を通過してから走行する道路が高速道路か一般道路か 条件3:自車両Vが料金所を通過するまで行う運転が自動運転か手動運転か 条件4:自車両Vが料金所を通過してから行う運転が自動運転か手動運転か さらにゲート選択の手順として、メインルーチン及びサブルーチンからなるゲート選択プログラムが記載されているが(段落【0064】)、ゲートを選択するためには、料金所通過前が高速道路であることの確認、及び料金所通過後が高速道路か否かの確認を行ったうえで、ゲートを選択することが示されている(段落【0064】ないし【0089】及び【図10】ないし【図12】)。 以上、発明の詳細な説明における記載によると、ゲートを選択するためには、少なくとも「車両が料金所を通過するまで走行する道路が高速道路か否か」及び「車両が料金所を通過してから走行する道路が高速道路か否か」についての条件判断を実行する必要があることがわかる。 一方、本件補正発明においてゲート選択部は、「前記車両が前記料金所を通過するまで走行する道路が高速道路か否かという条件判断を実行し、その条件判断の結果に基づいて前記通過するゲートを選択する」という事項を備えているが、車両が料金所を通過してから走行する道路が高速道路か否かについての条件判断を実行する事項を有していないことから、上記ゲートを選択するための選択基準を備えておらず、複数のゲートの中から車両が通過するゲートを適切に選択できるようにするという課題を解決することができない。 したがって、本件補正発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないことから、本件補正は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。 (3)小括 上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3 むすび 以上のとおりであるから、上記[補正却下の結論の決定]のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和元年7月2日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成28年2月16日の出願時の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、第2 1(1)に記載したとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。 本願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 また、本願の請求項1に係る発明は、依然として、引用文献1に記載された発明に基き、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許をすることができない。 引用文献1.特開2011-214914号公報 3 引用文献、引用発明 (1)引用文献1 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2011-214914号(以下「引用文献1」という。)には、「前方環境認識装置、およびそれを備えた車両誘導システム」に関して、図面(特に、図6および7を参照。)とともに次の記載がされている(下線は、当審が付与したものである。)。 (ア)「【0040】 [第3実施形態] 次に、本発明の第3実施形態に係る前方環境認識装置を備えた車両誘導システムについて説明する。図5は、本発明の第3実施形態に係る前方環境認識装置を備えた車両誘導システムである。図5に示す車両誘導システム10は、前方環境認識装置1、およびナビゲーション装置50を備えている。前方環境認識装置1は、上記の実施形態の前方環境認識装置1と同じである。」 (イ)「【0044】 走行履歴判定部61は、自車両の走行履歴を認識し、認識した走行履歴に関する情報(以下、「走行履歴情報」という。)を記憶部に格納する。走行履歴判定部61は、記憶部に格納された情報を参照して、自車両の走行履歴を判定する。 【0045】 走行履歴判定部61は、例えば、高速道路などの自動車専用道路を走行した場合に、自車両の走行履歴として認識し、認識した走行履歴情報を記憶部に格納する。例えば、高速道路へ進入するための入口ゲートを通過した場合には、自動車専用道路を走行したとの走行履歴情報を記憶する。 【0046】 また、走行履歴判定部61は、自動車専用道路の本線から退出路へ移動した場合に、自車両の走行履歴として認識し、認識した走行履歴情報を記憶部に格納する。例えば、車速が基準速度より低下し、所定の操舵が行われた場合には、退出路へ移動したとの走行履歴情報を記憶する。なお、退出路を走行するための運転支援制御が実行された場合に、退出路へ移動したとの走行履歴情報を記憶してもよい。」 (ウ)「【0047】 誘導経路設定部62は、設定された目的地までの誘導経路を探索し、経路誘導を行うものである。本実施形態の誘導経路設定部62では、前方環境認識装置1からゲート位置、ゲート種別に関する情報を取得して、所定のゲートを通過するように誘導経路を設定することができる。」 (エ)「【0049】 次に、図6のフローチャートを参照して、車両誘導システム10における動作について説明する。図6は、ECUで実行される目標通過ゲート選択処理の手順を示すフローチャートである。前方環境認識装置1のECU3は、ナビゲーション装置50から出力された情報を取得する。ECU3は、自動車専用道の走行履歴が有るか否かを判定する(ステップS21)。自車両が自動車専用道を走行したという走行履歴が有る場合には、ステップS22に進み、自動車専用道を走行したという走行履歴がない場合には、ここでの処理を終了する。 【0050】 ステップS22では、ECU3は、退出路への進入履歴が有るか否かを判定する。自車両が自動車専用道の本線から退出路へ移動した場合には、退出路への進入履歴があると判定し、ステップS23へ進む。自車両が本線を走行中である場合には、退出路への進入履歴がないと判定し、ここでの処理を終了する。 【0051】 ステップS23では、ECU3は、ナビゲーション装置50の地図DB63(ナビ情報)から料金所のゲート位置情報を取得したか否かを判定する。例えば、ナビ情報を参照し、自車両の現在地から距離が200m未満の範囲内に料金所のゲートGが存在すると認識した場合には、ゲート位置情報を取得したと判定し、ステップS24に進み、一方、ゲート位置情報を取得したと判定しない場合には、ここでの処理を終了する。 【0052】 ステップS24では、ECU3は、ミリ波レーダ2を用いたゲート位置認識処理を実行する。ECU3は、図3に示す処理(ステップS1?S4)を実行し、センサ認識物標点Pに基づいて平面分布形状Hを作成し、平面分布形状Hから山型分布形状Yを認識する。 ECU3は、山型分布形状Yに対応する位置に、ゲートGが存在すると認識し、ゲート位置を算出する。 【0053】 続くステップS25では、ECU3は、ステップS24で認識された複数のゲートから目標通過ゲートを選択する。ナビゲーション装置50では、前方環境認識装置1によって選択された目標通過ゲートの位置情報を取得して、当該ゲートを通過するように経路案内を行う。」 (オ)【図6】には、ECUで実行される目標通過ゲート選択処理の手順を示すフローチャートが示されている(段落【0016】参照。)。 これらの記載事項及び図面の図示内容を総合し、整理すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「運転支援制御が可能な自車両に搭載された車両誘導システム10であって、 前記自車両が複数のゲートを有する料金所を通過する場合、前記複数のゲートから目標通過ゲートを選択するECU3を備え、 前記ECU3は、前記自車両が自動車専用道の走行履歴及び退出路への進入履歴が有るか否かを判定し、続くステップにおいて目標通過ゲートを選択するように構成されている車両誘導システム10。」 4 対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「運転支援制御」はその機能、構成及び技術的意義からみて前者の「自動運転」に相当し、以下同様に「自車両」は「車両」に、「車両誘導システム10」は「経路決定装置」に、「目標通過ゲート」は「通過するゲート」に、「ECU3」は「ゲート選択部」に、それぞれ相当する。 また、後者の「自動車専用道の走行履歴及び退出路への進入履歴が有るか否かを判定」することは、目標通過ゲートまで走行する道路の判定、つまり、道路が高速道路か否かを判定することであるから(上記3.(イ)「高速道路などの自動車専用道路」参照。)、前者の「料金所を通過するまで走行する道路が高速道路か否かという判断」を行うことに相当する。 また、後者の「続くステップにおいて目標通過ゲートを選択するように構成されている」は、「自車両が自動車専用道の走行履歴及び退出路への進入履歴が有るか否かを判定」、つまり高速道路か否かという条件判断を行い、高速道路を走行しているという結果に基づいて、引き続き目標通過ゲートを選択するステップ処理をおこなっていることから、前者の「前記通過するゲートを選択するための条件判断の一つとして行うように構成されている」に相当する。 したがって、両者は、 「自動運転が可能な車両に搭載された経路決定装置であって、 前記車両が複数のゲートを有する料金所を通過する場合、前記複数のゲートの中から通過するゲートを選択するゲート選択部を備え、 前記ゲート選択部は、前記車両が前記料金所を通過するまで走行する道路が高速道路か否かという判断を、前記通過するゲートを選択するための条件判断の一つとして行うように構成されている 経路決定装置。」 という点で一致し、相違点はない。 仮に、本願発明が「車両が料金所を通過するまで走行する道路が高速道路か否かという判断を、通過するゲートを選択するための条件判断の一つとして行うように構成」する点で引用発明と相違するとしても、引用文献1の段落【0016】に「【図6】ECUで実行される目標通過ゲート選択処理の手順を示すフローチャートである。」と記載されているように、高速道路などの自動車専用道路を走行したか否かという判断を、通過するゲートを選択するための条件判断の一つとして構成することは、当業者が容易になし得たことといえる。 5 請求人の主張について 請求人は、審判請求書において以下の主張をしている。 「すなわち、本願の請求項1に係る発明の『ゲート選択部』が、『前記車両が前記料金所を通過するまで走行する道路が高速道路か否かという条件判断を実行し、その条件判断の結果に基づいて前記通過するゲートを選択する』ものであるに対し、引用文献1に記載された発明は、段落0049-0053の記載から分かるように、自動車専用道の走行履歴が有ることを、目標通過ゲートを選択するという処理を実行する上での条件の一つとするものです。引用文献1に記載された発明では、目標通過ゲートの選択は、自車両の現在位置からゲート候補までの横方向(路幅方向)の移動量や、ゲートの混雑度に基づいて行われています。 つまり、引用文献1に記載された発明では、『自動車専用道の走行履歴の有無』に基づいて『目標通過ゲートの選択を行うか否かを決定』しているのに対し、本願の請求項1に係る発明は、ゲートの選択を行う前提において、『車両が料金所を通過するまで走行する道路が高速道路か否か』に基づいて『通過するゲートを選択』しています。」 しかし、上記「第2 2 本件補正の適否」において検討したとおり、令和元年7月2日にされた手続補正は却下されたため、上記主張における本願の請求項1に係る発明に関する事項は、補正前である出願時の特許請求の範囲の請求項1に記載の事項である。 そして、「ゲート選択部」が、「前記車両が前記料金所を通過するまで走行する道路が高速道路か否かという判断を、前記通過するゲートを選択するための条件判断の一つとして行うように構成されている」事項については、上記第「3 4 対比・判断」において検討したとおり、引用発明においても「ECU3」が、自車両が自動車専用道の走行履歴が有るか否かを判定し(つまり、高速道路か否かを判断し)、続くステップにおいて目標通過ゲートを選択していることから、本願の請求項1に係る発明と同様な構成を備えているといえる。 6 まとめ したがって、本願発明は、引用発明と同一であることから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができない。 また、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-08-27 |
結審通知日 | 2020-09-01 |
審決日 | 2020-09-17 |
出願番号 | 特願2016-27158(P2016-27158) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(G08G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 純一 |
特許庁審判長 |
金澤 俊郎 |
特許庁審判官 |
北村 英隆 谷治 和文 |
発明の名称 | 経路決定装置 |
代理人 | 高橋 英樹 |
代理人 | 大西 秀和 |
代理人 | 高田 守 |