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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01B
管理番号 1367912
審判番号 不服2020-2301  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-02-19 
確定日 2020-12-01 
事件の表示 特願2018- 92222「透明導電積層体の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月 8日出願公開、特開2018-174140、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年1月14日を出願日とする特願2014-004478号(以下,「原出願」という。)の一部を,平成30年5月11日に新たに特許出願したものであって,平成31年4月19日付けで拒絶理由が通知され,それに対して令和1年6月26日付けで手続補正がなされたが,同年11月26日付けで拒絶査定がなされ,それに対して令和2年2月19日に拒絶査定不服の審判請求がされたものである。

第2 原査定の理由の概要
原査定(令和1年11月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1乃至4
・引用文献等 1乃至5

<引用文献等一覧>
1.国際公開第2013/157858号
2.特開2013-129183号公報(周知技術を示す文献)
3.特開平05-037126号公報(周知技術を示す文献)
4.米国特許出願公開第2009/0090942号明細書(周知技術を示す文献)
5.特開2000-223886号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願の請求項1?4に係る発明は,令和1年6月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される発明であり,本願の請求項1-4に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は,以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
透明フィルム基材の少なくとも片面に,1?10μmの線幅の配線パターンを備え,全光線透過率が80%以上である透明導電積層体の製造方法であって,
前記透明フィルム基材は,前記配線パターンの形成面に,アクリル系の易接着層を備え,
前記配線パターンは,前記透明フィルム基材の前記易接着層上に,順に設けられた酸化銅膜および銅膜がともにパターニングされたものであり,
前記酸化銅膜を,銅ターゲットを用いて,50℃以上の基板温度でスパッタリング法により形成し,その際,アルゴンガスと酸素ガスを含む混合ガスを用い,前記混合ガスに対する前記酸素ガスの導入量が15体積%?30体積%であり,酸化銅の組成がCu_(x)O(1≦x≦2)であることを特徴とする透明導電積層体の製造方法。
【請求項2】
透明フィルム基材の少なくとも片面に,1?10μmの線幅の配線パターンを備え,全光線透過率が80%以上である透明導電積層体の製造方法であって,
前記透明フィルム基材は,前記配線パターンの形成面に,アクリル系の易接着層を備え,
透明フィルム基材の前記易接着層上に,銅ターゲットを用いて,50℃以上の基板温度でスパッタリング法により酸化銅膜を形成する工程と,
前記酸化銅膜上に銅膜を積層する工程と,
前記銅膜に防錆処理を行う工程と,
前記防錆処理後の銅膜の上にレジスト膜を塗布後,レジストパターンを形成する工程と,
前記レジストパターンをマスクとして,前記酸化銅膜及び前記銅膜を同一エッチャントにより同時にエッチングし,線幅が1?10μmの配線パターンを形成する工程と,
前記レジストパターンを剥離する工程と,を順に含み,
前記酸化銅膜を形成する工程において,アルゴンガスと酸素ガスを含む混合ガスを用い,前記混合ガスに対する前記酸素ガスの導入量が15体積%?30体積%であり,酸化銅の組成がCu_(x)O(1≦x≦2)であることを特徴とする,透明導電積層体の製造方法。
【請求項3】
前記酸化銅膜の厚さが15?60nmであり,前記酸化銅膜の厚さと前記銅膜の厚さの合計が600nm以下である,請求項1または2に記載の透明導電積層体の製造方法。
【請求項4】
前記酸化銅膜と前記銅膜を,前記透明フィルム基材の両面に形成する請求項1?3のいずれかに記載の透明導電積層体の製造方法。」

第4 引用文献,引用発明等
1.引用文献1
原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献1(国際公開第2013/157858号)には,図面とともに次の事項が記載されている。(仮訳はパテントファミリである特表2015-503182号公報の記載を摘記した。)
a.「


(仮訳:[請求項20] 基材上に導電性層を形成するステップ,
前記導電性層の形成の以前,以後,または以前と以後すべてで,CuO_(x)(0<x≦1)を含む暗色化層を20?60nmの厚さで形成するステップ,
前記導電性層および暗色化層をそれぞれまたは同時にパターニングして線幅が10μm以下である導電性パターンおよび暗色化パターンを形成するステップを含む導電性構造体の製造方法であって,
前記導電性構造体の可視光線領域における平均屈折率は2以上3以下であり,可視光線領域における平均消滅係数(k)は0.2以上1.5以下であることを特徴とする,導電性構造体の製造方法。)

b.「


(仮訳:[請求項23] 前記暗色化層はスパッタリング方法を利用して形成することを特徴とする,請求項20に記載の導電性構造体の製造方法。)

c.「


(仮訳:[76] また,本発明の一実施形態に係る導電性構造体において,前記暗色化パターンは接着層または粘着層を介在せず,直接に前記基材上にまたは直接に前記導電性パターン上に備えられることができる。前記接着層または粘着層は,耐久性や光学物性に影響を及ぼすことができる。また,本発明の一実施形態に係る導電性構造体は,接着層または粘着層を利用する場合と比べるとき,製造方法がまったく異なる。さらに,接着層や粘着層を利用する場合に比べ,本発明の一実施形態では,基材または導電性パターンと暗色化パターンの界面特性が優れている。)

d.「


(仮訳:[85] 本発明の一実施形態に係る導電性構造体において,前記基材としては透明基板を使用することができるが,特に限定されることはなく,例えば,ガラス,プラスチック基板,プラスチックフィルムなどを使用することができる。)

e.「


(仮訳:[89] 本発明の一実施形態において,前記導電性パターンの材料の具体的な例としては,銅,アルミニウム,銀,ネオジウム,モリブデン,ニッケル,これらの合金,これらの酸化物,これらの窒化物などを1種以上含む単一膜または多層膜であることができ,より好ましくは銅であってもよい。
[90] 導電性パターンが銅を含む場合,暗色化パターンがCuO_(x)(0<x≦1)を含むため一括エッチングが可能となり,生産工程において効率が高く,費用が節減されて経済的であるという長所がある。また,銅は比抵抗値が1.7×10^(-6)cmであるため,比抵抗値が2.8×10^(-6)cmであるAlよりも有利である。そのため,0Ω/□超過2Ω/□以下,好ましくは0Ω/□超過0.7Ω/□以下の面抵抗値を満たすため,導電性パターンの厚さをAlよりも薄く形成することができるという長所がある。前記面抵抗は導電性パターンの厚さに応じて調節することができる。例えば,面抵抗が0.6?0.7Ω/□を満たすために,Alの場合は80?90nmを形成しなければならないが,Cuの場合は55?65nmを形成しなければならないため,パターンの厚さをさらに薄く形成することができて経済的である。また,実験例6を参照すれば,CuがAlよりもスパッタリング工程において2.5倍程度の優れた収率をもつため,理論的に4?5倍の蒸着速度の向上を期待することができる。したがって,Cuを含む導電性パターンは,生産工程において効率が高くて経済的であるため,優れた長所がある。
[91] 本発明の一実施形態において,前記導電性パターンの線幅は0μm超過10μm以下であってもよく,具体的に0.1μm以上10μm以下であってもよく,より具体的に0.2μm以上?8μm以下であってもよく,さらに具体的に0.5μm以上?5μm以下であってもよい。
[92] 本発明の一実施形態において,前記導電性パターンの開口率,すなわちパターンによって覆われない面積の割合は70%以上であってもよく,85%以上であってもよく,95%以上であってもよい。また,前記導電性パターンの開口率は90?99.9%であることができるが,これにのみ限定されることはない。)

f.「


(仮訳:[128] 図1によれば,前記暗色化パターン200が前記基材100と前記導電性パターン300の間に配置された場合を例示した。これは,使用者が基材側からタッチスクリーンパネルを眺める場合,導電性パターンによる反射度を大きく減少させることができる。)

g.「


(仮訳:[138] 本発明の一実施形態において,前記暗色化パターンまたは暗色化層を形成するステップにおいて,暗色化パターンまたは暗色化層の形成は当技術分野に周知の方法を利用することができる。例えば,蒸着(evaporation),スパッタリング(sputtering),湿式コーティング,蒸発,電解メッキまたは無電解メッキ,金属箔のラミネーションなどの方法によって形成することができ,具体的にはスパッタリング方法によって形成することができる。
[139] 例えば,Cuを含む導電性層とCuO_(x)(0<x≦1)を含む暗色化層を形成する場合,スパッタリングガス(sputtering gas)として不活性気体,例えばArのような気体を使用する場合,CuO単一物質スパッタリングターゲット(sputtering target)を使用することによって得られる長所がある。例えば,AlO_(x)N_(y)のようにAl金属ターゲットを使用して反応性スパッタリング(reactive sputtering)方法を利用すれば,O_(2)とN_(2)のような反応性ガスの分圧調節をしなければならない。しかし,本発明はCuOのような単一物質ターゲットを使用するため,反応性ガスの分圧調節が必要なく工程調節が比較的容易であり,最終導電性構造体の形成でもCuエッチング液を利用して一括エッチングが可能であるという長所をもつ。
[140] 本発明の一実施形態において,前記導電性パターンの形成方法としては特に限定されることはないが,導電性パターンを直接印刷方法によって形成することもでき,導電性層を形成した後にこれをパターン化する方法を利用することができる。)

上記記載事項から,請求項23に記載された「導電性構造体の製造方法」の発明について次のことがいえる。
(1)[85]の記載によれば,基材としては,透明プラスチックフィルムを使用できる。
(2)[91]の記載によれば,導電性パターンの線幅は0.1μm超過10μm以下であり,請求項20の記載によれば,暗色化パターンは,導電性パターンの線幅と同じ線幅をもつパターン形態である。
(3)[128]( 図1)の記載によれば,暗色化パターン200が基材100と導電性パターン300の間に配置されている。
(4)[89]の記載によれば,導電性パターンの材料は,好ましくは銅であり,[90]の記載によれば,導電性パターンが銅を含む場合,暗色化パターンがCuO_(x)(0<x≦1)である。
(5)[139]の記載によれば,Cuを含む導電性層とCuO_(x)(0<x≦1)を含む暗色化層を形成する場合,最終導電性構造体の形成でもCuエッチング液を利用して一括エッチングが可能である。
[139]の記載によれば,CuO_(x)(0<x≦1)を含む暗色化層を形成するのに,スパッタリングガス(sputtering gas)として不活性気体,例えばArのような気体を使用する場合,CuO単一物質スパッタリングターゲット(sputtering target)を使用する。

請求項20,23の記載,及び,上記(1)?(5)によれば,引用文献1には,請求項23に記載された「導電性構造体の製造方法」について,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「透明プラスチックフィルム基材上に,銅の導電性層を形成するステップ,
前記導電性層の形成の以前に,CuO_(x)(0<x≦1)を含む暗色化層を20?60nmの厚さで形成するステップ,
前記導電性層および暗色化層をそれぞれまたは同時にパターニングして線幅が0.1μm以上10μm以下である導電性パターンおよび暗色化パターンを形成するステップを含む導電性構造体の製造方法であって,
前記CuO_(x)(0<x≦1)を含む暗色化層をスパッタリング方法を利用して形成するのに,スパッタリングガスとして不活性気体,例えばArのような気体を使用し,CuO単一物質スパッタリングターゲットを使用することを特徴とする,導電性構造体の製造方法。」

2.引用文献2
原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0013】
本発明の積層体は,少なくとも黒化層を2層と基材を1層有する。そして本発明は,より好ましくは,金属層を有する積層体である。金属層を有する事で,導電性を確保することができ,本発明の積層体を,透明導電性フィルムとして使用することができる。また本発明の積層体は,チタン,ニッケル,及びクロムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含む密着層を有することが好ましい。
本発明の積層体を構成する基材は,後述するようにガラス板やフィルムが用いられる。そのため基材は,積層体を上から見た場合にベタ膜状となっている。
【0014】
一方で,本発明の積層体が,黒化層及び金属層を有する場合には,黒化層及び金属層はそれぞれがベタ膜状となっていてもよいし,図2のようにパターン状となっていてもよい。なお,黒化層及び金属層をパターン状とする場合には,ベタ膜状の黒化層及び金属層を有する積層体から,黒化層及び金属層の一部を除去してパターン状とすることが可能である。
【0015】
同様に,本発明の積層体が黒化層,金属層,及び密着層を有する場合には,黒化層,金属層,密着層は,ベタ膜状となっていてもよいし,図2のようにパターン状となっていてもよい。なお,黒化層,金属層,密着層をパターン状とする場合には,ベタ膜状の黒化層,金属層,密着層を有する積層体から,黒化層,金属層,密着層の一部を除去してパターン状とすることが可能である。
【0016】
また,黒化層などがパターン状の積層体の場合には,そのパターンの形状は特に限定されないが,好ましくはメッシュ状やストライプ状を挙げることができる。」

「【0055】
第三実施の形態の積層体の各層は,特記しない限り,第二実施の形態の項で説明したとおりの役割や態様である。

[本発明の積層体]
本発明の積層体は,全光線透過率が20%以上であることが好ましく,50%以上であることがより好ましい。全光線透過率が高いほどタッチセンサー下に配置されるディスプレイの像のコントラストが向上するからである。積層体の全光線透過率は高ければ高いほど好ましいが,現実的に得られる上限は99%以下である。なお,積層体の全光線透過率は,少なくとも一方の面から測定して,20%以上であれば十分である。」

「【0062】
(3)膜厚
膜厚は,FIB(収束イオンビーム)法により積層体を切断し,その断面をTEM(透過型電子顕微鏡)により観察することで測定した。
(実施例1)
図1を使って説明する。
【0063】
基材(3)として東レ株式会社製PETフィルム(商品名:ルミラーU48)を用いた。基材の厚みは100μmであった。基材(3)の全光線透過率は92%であった。」

上記記載(特に下線部)によれば,引用文献2には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「フィルム基材上に黒化層,金属層,密着層をパターン状に形成した積層体の全光線透過率は高ければ高いほど好ましく,現実的に得られる上限は99%以下であり,具体的なフィルム基材の全光線透過率は92%であること。」

3.引用文献3
原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0029】実施例2
予めテープロール状に巻きとられた厚さ50μm のポリエステル樹脂フィルム2を,図2に示すように銅金属ターゲット4を装着したスパッタの真空槽5内に装着し,ポリエステル樹脂フィルム2を巻き戻しながら,アルゴンと酸素との混合ガス雰囲気で反応性スパッタを行い,フィルム上に黒色の酸化銅薄膜を成膜した。真空槽5には,バルブ6を介して排気系7が接続されている。このとき,ガス圧は5 mTorr,混合ガス流量は28 sccm ,アルゴンと酸素の分圧比は3対1,印加した電子ビームのパワーは500 Wであった。このスパッタ条件下における酸化銅の堆積速度は20 nm /分であり,成膜した酸化銅薄膜の膜厚は 80 nmであった。さらにこの酸化銅薄膜上に,カーボンターゲット9を用いて,アルゴンガスによりスパッタを行い,黒色のカーボン層を成膜した。このとき,ガス圧は5 mTorr,アルゴンガス流量は28 sccm ,印加した電子ビームのパワーは500 Wであった。このスパッタ条件下におけるカーボンの堆積速度は15 nm /分であり,成膜したカーボンの膜厚は 10 nmであった。このようにしてポリエステル樹脂フィルム上に酸化銅薄膜およびカーボン層を積層した試料の,波長830 nmの光の反射率は3%,吸収率は72%であった。」

「【0046】実施例7
図2に示すように,予めテープロール状に巻きとられた厚さ50μm のポリエステル樹脂フィルム2を,金属銅ターゲット4を備えたスパッタの真空槽5内に装着した。真空槽5には,バルブ6を介して排気系7が接続されている。真空槽5内に装着したポリエステル樹脂フィルム2を巻き戻しながら,アルゴンガスと酸素ガスとの混合ガス雰囲気で反応性スパッタを行い,このポリエステル樹脂フィルム2基体上に,情報記録層となる黒色の酸化銅薄膜を成膜した。このとき,ガス圧は5 mTorr,混合ガス流量は28 sccm ,アルゴンと酸素の分圧比は3対1,印加した電子ビームのパワーは500 Wであった。このスパッタ条件下における酸化銅の堆積速度は20 nm /分であり,成膜した酸化銅薄膜の膜厚は 80 nmであった。」

上記記載(特に下線部)によれば,引用文献3には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「ポリエステル樹脂フィルム2を,金属銅ターゲット4を備えたスパッタの真空槽5内に装着し,装着したポリエステル樹脂フィルム2を巻き戻しながら,アルゴンガスと酸素ガスとの混合ガス雰囲気,ガス圧は5 mTorr,混合ガス流量は28 sccm ,アルゴンと酸素の分圧比は3対1で反応性スパッタを行い,ポリエステル樹脂フィルム2基体上に,黒色の酸化銅薄膜を成膜する。」

4.引用文献4
原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。
「[0036] FIG.1 illustrates a cross-section of a thin film 2 on a substrate 1. The structure of FIG.2 is a detailed a cross-section of a thin film 2 wiring structure, having a copper layer 2b over a copper oxide 2a on a substrate 1. Copper oxide layer 2a is sputtered using a copper target with argon and oxygen in the vacuum chamber. When oxygen is not supplied to the chamber, the copper layer 2b is obtained. ・・・In this embodiment of invention sputtering is used, but electroplating, electroless plating, evaporation, chemical vapor deposition, etc. may be used for making a copper layer. The substrate 1. is a transparent or opaque material made of glass, plastic, etc.」
(仮訳:[0036]FIG.1は,基板1上の薄膜2の断面を示している。FIG.2の構造は,その薄膜配線構造の詳細な断面図であり,基板1上の銅酸化物層2aの上に銅層2bを有している。銅 酸化物層2aは,真空チャンバ内でアルゴンと酸素に銅ターゲットを使用してスパッタリングされる。 酸素がチャンバに供給されない場合に,銅層2bが得られる。・・・本発明のこの実施形態では,スパッタリング法が用いられるが,電解メッキ,無電解メッキ,蒸着,化学気相成長等が銅層を形成するために使用することができる。基板1は,ガラス,プラスチック等から作られている透明あるいは不透明な材料である。)

「[0077] FIG.12 and FIG.15, a gate adhesion layer 141 and a gate conductive layer 142 formed on the insulating substrate 120, in sequence. A gate adhesion layer 141 and a gate conductive layer 142 formed in a sputtering chamber or in a sputtering apparatus. A sputtering target of copper is set in the chamber, and argon and oxygen gas is injected. The copper oxide layer is deposited to the substrate. The partial pressure of the oxygen to argon is recommended to be about 0.33:1 to 1:1. In this atmosphere, the deposited copper oxide layer contains about 16 at % to 39 at % oxygen. ・・・」
(仮訳:[0077]FIG.12とFIG.15を参照すると,ゲート接着層141とゲート導電層142は,絶縁基板120の上に順に形成される。ゲート接着層141とゲート導電層142は,絶縁基板120の上に順に形成される。ゲート接着層141とゲート導電層142は,一つのスパッタリングチャンバ内または一つのスパッタリング装置内で形成される。チャンバ内に銅ターゲットが装着され,アルゴンと酸素ガスが注入される。銅酸化物層は基板に積層される。アルゴンに対する酸素の分圧は,好ましくは約0.33:1?1:1である。この雰囲気において,積層された銅酸化物層は,酸素%が16% ?39%である。)

上記記載(特に下線部)によれば,引用文献4には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「真空チャンバ内でアルゴンと酸素に銅ターゲットを使用してスパッタリングにより銅酸化物層が基板に積層されるものにおいて,アルゴンに対する酸素の分圧は,好ましくは約0.33:1?1:1であり,この雰囲気において,積層された銅酸化物層は,酸素%が16%?39%である。」

5.引用文献5
原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献5には,次の事項が記載されている。
「【請求項4】 透明基材上に直接又は透明接着剤層を形成後,順に(1)黒色樹脂層,黒色無機層,黒色金属酸化物層のいずれかである第1黒色層,(2)金属層,(3)黒色樹脂層,黒色無機層,黒色金属酸化物層のいずれかである第2黒色層を形成し,更にメッシュ状のレジスト層を設け,レジスト層で保護されていない第1黒色層,金属層,第2黒色層をサンドブラスト法及び/又はエッチング液による溶解,により除去しレジスト層に対応したメッシュ状パターンとし,必要に応じてレジスト層を剥離及び/又はメッシュ状パターン側(透明基材の反対側)を透明樹脂で被覆することを特徴とする透視性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項6】 黒色金属酸化物層が,イオンプレーティング,スパッター,真空蒸着,無電解めっき,電気めっき,のいずれか又は2つ以上を組合せた方法で形成されたことを特徴とする請求項4記載の透視性電磁波シールド材の製造方法。」

「【0073】 第1黒色層を透明接着剤を介して透明基材に積層する場合,透明接着剤としては,ポリビニルアセタール系,アクリル糸,ポリエステル系,エポキシ系,セルロース系,酢酸ビニル系等の樹脂が拳げられる。接着剤層の厚みは一般的には1μ以上,好ましくは5?500μ程度である。」

「【0090】
【実施例1】 大同化成工業(株)製黒色顔料(酸化鉄微粉)「鉄黒P0023」を,電気化学工業(株)製ポリビニルブチラール(PVB)「#6000-C」のアルコール(エタノール)溶液中に均一分散し黒色塗布液とした(塗布液組成(重量部);酸化鉄/PVB/エタノール=50/100/1850)。
【0091】この塗布液を福田金属箔粉工業(株)製電解銅箔「CF T9 SV」(12μ)の一方の面上に塗布,乾燥して第1黒色樹脂層(10μ)とし,この塗膜面と東レ(株)製ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム「ルミラー」をアクリル系接着剤を介して貼り合せ積層品とした。」

上記記載(特に下線部)によれば,引用文献5には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「透明基材上に直接又は透明接着剤層を形成後,黒色樹脂層,黒色無機層,黒色金属酸化物層のいずれかである第1黒色層を形成し,第1黒色層が黒色金属酸化物層の場合,黒色金属酸化物層はスパッターを含む方法で形成され,透明接着剤は,アクリル系等の樹脂である。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「透明プラスチックフィルム基材」は,本願発明1の「透明フィルム基材」に相当する。
(イ)引用発明の「銅の導電性層」は,本願発明1の「銅膜」に相当し,引用発明の「CuO_(x)(0<x≦1)を含む暗色化層」は,本願発明1の「酸化銅膜」に相当するといえる。
(ウ)引用発明の「透明プラスチックフィルム基材上に,銅の導電性層を形成」し,それ「以前に,CuO_(x)(0<x≦1)を含む暗色化層を」透明プラスチックフィルム基材上に形成する構成は,本願発明1の「前記透明フィルム基材の前記易接着層上に,順に設けられた酸化銅膜および銅膜」と「前記透明フィルム基材上に,順に設けられた酸化銅膜および銅膜」である点で共通するといえる。
(エ)引用発明の「前記導電性層および暗色化層をそれぞれまたは同時にパターニングして線幅が0.1μm以上10μm以下である導電性パターンおよび暗色化パターンを形成する」構成は,本願発明1の「透明フィルム基材の少なくとも片面に」備え,「前記透明フィルム基材の前記易接着層上に,順に設けられた酸化銅膜および銅膜がともにパターニングされた」「1?10μmの線幅の配線パターン」と「透明フィルム基材の少なくとも片面に」備え,「透明フィルム基材上に,順に設けられた酸化銅膜および銅膜がともにパターニングされた」「1?10μmの線幅の配線パターン」である点で共通するといえる。
(オ)引用発明の「前記CuO_(x)(0<x≦1)を含む暗色化層をスパッタリング方法を利用して形成するのに,スパッタリングガスとして不活性気体,例えばArのような気体を使用し,CuO単一物質スパッタリングターゲットを使用すること」は,本願発明1の「酸化銅膜を,銅ターゲットを用いて,50℃以上の基板温度でスパッタリング法により形成し,その際,アルゴンガスと酸素ガスを含む混合ガスを用い,前記混合ガスに対する前記酸素ガスの導入量が15体積%?30体積%であり,酸化銅の組成がCu_(x)O(1≦x≦2)であること」と「酸化銅膜をスパッタリング法により形成し,その際,酸化銅の組成がCu_(x)O(1≦x≦2)を含む」点では共通するといえる。
(カ)引用発明の「導電性構造体の製造方法」は,後述する相違点を除き,本願発明1の「透明導電積層体の製造方法」に対応するといえる。

(一致点)
「透明フィルム基材の少なくとも片面に,1?10μmの線幅の配線パターンを備える,透明導電積層体の製造方法であって,
前記配線パターンは,前記透明フィルム基材上に,順に設けられた酸化銅膜および銅膜がともにパターニングされたものであり,
前記酸化銅膜をスパッタリング法により形成し,その際,酸化銅の組成がCu_(x)O(1≦x≦2)を含むことを特徴とする透明導電積層体の製造方法。」

(相違点1)
本願発明1の「透明導電積層体」は,「全光線透過率が80%以上である」のに対し,引用発明は,そのような構成は特定されていない点。

(相違点2)
本願発明1の「透明フィルム基材は,配線パターンの形成面に,アクリル系の易接着層を備え,前記配線パターンは,前記透明フィルム基材の前記易接着層上に,順に設けられた酸化銅膜および銅膜がともにパターニングされたもの」であるのに対し,引用発明は,透明プラスチックフィルム基材にアクリル系の易接着層を備える構成は特定されていない点。

(相違点3)
本願発明1は,「酸化銅膜を,銅ターゲットを用いて,50℃以上の基板温度でスパッタリング法により形成し,その際,アルゴンガスと酸素ガスを含む混合ガスを用い,前記混合ガスに対する前記酸素ガスの導入量が15体積%?30体積%であり,酸化銅の組成がCu_(x)O(1≦x≦2)である」のに対し,引用発明は,CuO_(x)(0<x≦1)を含む暗色化層をスパッタリング方法を利用して形成するのに,スパッタリングガスとして不活性気体,例えばArのような気体を使用し,CuO単一物質スパッタリングターゲットを使用する点。

(2)判断
ア 事案に鑑みて,上記相違点2について検討する。
引用文献5には,「透明基材上に直接又は透明接着剤層を形成後,黒色樹脂層,黒色無機層,黒色金属酸化物層のいずれかである第1黒色層を形成され,透明接着剤は,アクリル系等の樹脂である。」技術的事項が記載されている。
しかしながら,引用文献1には,「本発明の一実施形態に係る導電性構造体において,前記暗色化パターンは接着層または粘着層を介在せず,直接に前記基材上にまたは直接に前記導電性パターン上に備えられることができる。前記接着層または粘着層は,耐久性や光学物性に影響を及ぼすことができる。また,本発明の一実施形態に係る導電性構造体は,接着層または粘着層を利用する場合と比べるとき,製造方法がまったく異なる。さらに,接着層や粘着層を利用する場合に比べ,本発明の一実施形態では,基材または導電性パターンと暗色化パターンの界面特性が優れている。」と記載されており,基材上に接着層または粘着層を備えることを示唆しておらず,引用発明において,上記引用文献5に記載された技術的事項を適用する動機付けはない。
さらに,引用文献5に記載されている「透明接着剤層」(アクリル系接着剤)は,本願発明1の「アクリル系の易接着層」とは異なるものであるから,仮に,引用発明に引用文献5の技術的事項を適用できたとしても上記相違点2に係る本願発明1の構成には至らない。

イ 次に,相違点3は相違点2に関連している(相違点2に係る本願発明1の「易接着層上」に設けられる「酸化銅膜」は,「銅ターゲットを用いて,50℃以上の基板温度でスパッタリング法により形成」されるものである。)から,相違点3について検討する。
引用文献3には,「ポリエステル樹脂フィルム2を,金属銅ターゲット4を備えたスパッタの真空槽5内に装着し,装着したポリエステル樹脂フィルム2を巻き戻しながら,アルゴンガスと酸素ガスとの混合ガス雰囲気,ガス圧は5 mTorr,混合ガス流量は28 sccm ,アルゴンと酸素の分圧比は3対1で反応性スパッタを行い,ポリエステル樹脂フィルム2基体上に,黒色の酸化銅薄膜を成膜する。」技術的事項が記載されており,引用文献4には,「真空チャンバ内でアルゴンと酸素に銅ターゲットを使用してスパッタリングにより銅酸化物層が基板に積層されるものにおいて,アルゴンに対する酸素の分圧は,好ましくは約0.33:1?1:1であり,この雰囲気において,積層された銅酸化物層は,酸素%が16%?39%である。」技術的事項が記載されている。
しかしながら,引用文献1には,「本発明はCuOのような単一物質ターゲットを使用するため,反応性ガスの分圧調節が必要なく工程調節が比較的容易」であることが記載されており,引用発明において,上記引用文献3,4に記載された技術的事項を適用する動機付けはない。
さらに,引用文献3,4には,スパッタリングの条件として,「50℃以上の基板温度」,「アルゴンガスと酸素ガスを含む混合ガスに対する酸素ガスの導入量が15体積%?30体積%であり,酸化銅の組成がCu_(x)O(1≦x≦2)である」ことは示されておらず,仮に,引用発明に引用文献2,3の技術的事項を適用できたとしても上記相違点3に係る本願発明1の構成には至らない。
引用文献2にも,上記相違点2,3に係る本願発明1の構成は記載されておらず,示唆されてもいない。

また,上記相違点2,3に係る本願発明1の構成が,原出願の出願前に周知技術であったとはいえない。

ウ したがって,上記相違点1を検討するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明および引用文献2?5記載の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

2.本願発明2,3,4について
本願発明2,3,4は,上記相違点2,3に係る本願発明1の構成と同様の構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-11-13 
出願番号 特願2018-92222(P2018-92222)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 加藤 浩一
特許庁審判官 ▲吉▼澤 雅博
辻本 泰隆
発明の名称 透明導電積層体の製造方法  
代理人 特許業務法人はるか国際特許事務所  
代理人 新宅 将人  
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