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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F16L
審判 全部申し立て 2項進歩性  F16L
管理番号 1368055
異議申立番号 異議2020-700058  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-01-31 
確定日 2020-09-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6553443号発明「管継手」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6553443号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1ないし6〕について訂正することを認める。 特許第6553443号の請求項1ないし4及び6に係る特許を維持する。 特許第6553443号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6553443号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成27年7月31日に出願され、令和1年7月12日にその特許権の設定登録がされ、令和1年7月31日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議申立ての経緯は、次のとおりである。
令和2年1月31日:特許異議申立人 三谷 芳安(以下、「特許異議申立人」という。)による請求項1ないし6に係る特許異議の申立て
令和2年3月30日付け:取消理由通知書
令和2年6月1日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和2年6月5日付け:訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)
令和2年7月8日:特許異議申立人による意見書の提出

第2 訂正の請求
1 訂正の内容
令和2年6月1日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次の訂正事項よりなる(なお、下線を付した箇所は訂正箇所である。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「筒状に形成された内筒と、
筒状に形成され、前記内筒の外側に前記内筒に対し軸方向に沿う圧入方向に相対的に圧入されて組み付けられた外筒と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、何れか一方に形成された凸部と、前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、他方に形成された、前記凸部と係合する凹部とを備え、
前記凸部と前記凹部との間に、間隙が形成され、
前記凸部は、軸方向に間隔を置いて複数形成され、
前記間隙は、全ての前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成された、管継手。」とあるのを、

「筒状に形成された内筒と、
筒状に形成され、前記内筒の外側に前記内筒に対し軸方向に沿う圧入方向に相対的に圧入されて組み付けられた外筒と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、何れか一方に形成された凸部と、前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、他方に形成された、前記凸部と係合する凹部とを備え、
前記凸部と前記凹部との間に、間隙が形成され、
前記凸部は、軸方向に間隔を置いて複数形成され、
前記間隙は、全ての前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成されており、
前記外筒の硬度は、前記内筒の硬度より低い、管継手。」
と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「筒状に形成された内筒と、
筒状に形成され、前記内筒の外側に前記内筒に対し軸方向に沿う圧入方向に相対的に圧入されて組み付けられた外筒と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、何れか一方に形成された凸部と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、他方に形成された、前記凸部と係合する凹部とを備え、
前記凸部と前記凹部との間に、間隙が形成され、
前記凸部は、軸方向に間隔を置いて複数形成され、
前記間隙は、少なくとも、複数の前記凸部のうち、前記凸部が形成された前記内筒と外筒のうちの何れか一方の他方に対する前記圧入方向の、最も後方側に形成された前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成された、管継手。」とあるのを、

「筒状に形成された内筒と、
筒状に形成され、前記内筒の外側に前記内筒に対し軸方向に沿う圧入方向に相対的に圧入されて組み付けられた外筒と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、何れか一方に形成された凸部と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、他方に形成された、前記凸部と係合する凹部とを備え、
前記凸部と前記凹部との間に、間隙が形成され、
前記凸部は、軸方向に間隔を置いて複数形成され、
前記間隙は、少なくとも、複数の前記凸部のうち、前記凸部が形成された前記内筒と外筒のうちの何れか一方の他方に対する前記圧入方向の、最も後方側に形成された前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成されており、
前記外筒の硬度は、前記内筒の硬度より低い、管継手。」
と訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「筒状に形成された内筒と、
筒状に形成され、前記内筒の外側に前記内筒に対し軸方向に沿う圧入方向に相対的に圧入されて組み付けられた外筒と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、何れか一方に形成された凸部と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、他方に形成された、前記凸部と係合する凹部とを備え、
前記凸部と前記凹部との間に、間隙が形成され、
前記凸部は、軸方向に間隔を置いて複数形成され、
前記間隙は、少なくとも、複数の前記凸部のうち、前記凸部が形成された前記内筒と外筒のうちの何れか一方の他方に対する前記圧入方向の、最も前方側に形成された前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成された、管継手。」とあるのを、

「筒状に形成された内筒と、
筒状に形成され、前記内筒の外側に前記内筒に対し軸方向に沿う圧入方向に相対的に圧入されて組み付けられた外筒と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、何れか一方に形成された凸部と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、他方に形成された、前記凸部と係合する凹部とを備え、
前記凸部と前記凹部との間に、間隙が形成され、
前記凸部は、軸方向に間隔を置いて複数形成され、
前記間隙は、少なくとも、複数の前記凸部のうち、前記凸部が形成された前記内筒と外筒のうちの何れか一方の他方に対する前記圧入方向の、最も前方側に形成された前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成されており、
前記外筒の硬度は、前記内筒の硬度より低い、管継手。」と訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1から5の何れか1項に記載の」とあるのを、「請求項1から4の何れか1項に記載の」と訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の「外筒」及び「内筒」に対して、「前記外筒の硬度は、前記内筒の硬度より低い」ことを限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること。
訂正事項1は、本願明細書の段落【0016】及び【0019】の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上記アのように訂正前の請求項1に記載された事項をさらに限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の「外筒」及び「内筒」に対して、「前記外筒の硬度は、前記内筒の硬度より低い」ことを限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること。
訂正事項2は、本願明細書の段落【0016】及び【0019】の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した範囲内の訂正である。
訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。


ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、上記アのように訂正前の請求項2に記載された事項をさらに限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の「外筒」及び「内筒」に対して、「前記外筒の硬度は、前記内筒の硬度より低い」ことを限定するものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること。
訂正事項3は、本願明細書の段落【0016】及び【0019】の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した範囲内の訂正である。
訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、上記アのように訂正前の請求項3に記載された事項をさらに限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、請求項5を削除するというものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アに記載したとおり、訂正事項4は、請求項5を削除するというものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した範囲内の訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項6が、請求項1から5の何れか1項を引用する記載であるところ、請求項5を引用せず、請求項1ないし4の何れか1項を引用する記載とすることにより引用請求項数を削減するものであるから、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アで記載したとおり、訂正事項5は、訂正前の請求項6が、請求項1から5の何れか1項を引用する記載であるところ、請求項5を引用せず、請求項1から4の何れか1項を引用する記載とすることにより引用請求項数を削減するものであるから、訂正事項5は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した範囲内の訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1ないし6〕について訂正することを認める。

第3 本件訂正発明
本件訂正により訂正された請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「訂正発明1」ないし「訂正発明6」という。また、これらを総称して「訂正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
筒状に形成された内筒と、
筒状に形成され、前記内筒の外側に前記内筒に対し軸方向に沿う圧入方向に相対的に圧入されて組み付けられた外筒と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、何れか一方に形成された凸部と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、他方に形成された、前記凸部と係合する凹部とを備え、
前記凸部と前記凹部との間に、間隙が形成され、
前記凸部は、軸方向に間隔を置いて複数形成され、
前記間隙は、全ての前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成されており、
前記外筒の硬度は、前記内筒の硬度より低い、管継手。

【請求項2】
筒状に形成された内筒と、
筒状に形成され、前記内筒の外側に前記内筒に対し軸方向に沿う圧入方向に相対的に圧入されて組み付けられた外筒と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、何れか一方に形成された凸部と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、他方に形成された、前記凸部と係合する凹部とを備え、
前記凸部と前記凹部との間に、間隙が形成され、
前記凸部は、軸方向に間隔を置いて複数形成され、
前記間隙は、少なくとも、複数の前記凸部のうち、前記凸部が形成された前記内筒と外筒のうちの何れか一方の他方に対する前記圧入方向の、最も後方側に形成された前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成されており、
前記外筒の硬度は、前記内筒の硬度より低い、管継手。

【請求項3】
筒状に形成された内筒と、
筒状に形成され、前記内筒の外側に前記内筒に対し軸方向に沿う圧入方向に相対的に圧入されて組み付けられた外筒と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、何れか一方に形成された凸部と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、他方に形成された、前記凸部と係合する凹部とを備え、
前記凸部と前記凹部との間に、間隙が形成され、
前記凸部は、軸方向に間隔を置いて複数形成され、
前記間隙は、少なくとも、複数の前記凸部のうち、前記凸部が形成された前記内筒と外筒のうちの何れか一方の他方に対する前記圧入方向の、最も前方側に形成された前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成されており、
前記外筒の硬度は、前記内筒の硬度より低い、管継手。

【請求項4】
前記間隙は、前記凸部に対し軸方向に隣接して形成された、請求項1から3の何れか1項に記載の管継手。

【請求項5】(削除)

【請求項6】
前記外筒は、樹脂材料から形成され、
前記内筒は、金属材料から形成された、請求項1から4の何れか1項に記載の管継手。」

第4 取消理由について
1 取消理由の概要
請求項1ないし6に係る特許に対して当審が令和2年3月30日付け取消理由により特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。

[理由1]本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

[理由2]本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。



<甲号証一覧>
甲第1号証:特開2012-77804号公報
甲第2号証:特開2011-137525号公報
甲第3号証:特許第5015358号公報
甲第4号証:特開2012-72895号公報
甲第5号証:特開2011-163384号公報

(当審注:以下、上記「甲第1号証」ないし「甲第5号証」を「甲1」ないし「甲5」という。また、「本件特許の請求項1に係る発明」ないし「本件特許の請求項6に係る発明」を「本件発明1」ないし「本件発明6」という。)

(1)甲1を主引用例とした場合の検討
ア 請求項1ないし4([理由1])
本件発明1ないし4は、甲1に記載された発明である。

イ 請求項5及び6([理由2]
本件発明5及び6は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明し得たものである。

(2)甲3を主引用例とした場合の検討
ア 請求項1ないし3([理由1])
本件発明1ないし3は、甲3に記載された発明である。

イ 請求項4([理由2])
本件発明4は、甲3に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明し得たものである。

ウ 請求項5及び6([理由2])
本件発明5及び6は、甲3に記載された発明、甲1に記載された事項及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明し得たものである。

(3)甲4を主引用例とした場合の検討
ア 請求項1ないし3([理由2])
本件発明1ないし3は、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明し得たものである。

イ 請求項4([理由2])
本件発明4は、甲4に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明し得たものである。

ウ 請求項5及び6([理由2])
本件発明5及び6は、甲4に記載された発明、甲1に記載された事項及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明し得たものである。

(4)甲5を主引用例とした場合の検討
ア 請求項1ないし4
本件発明1ないし4は、甲5に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明し得たものである。

イ 請求項5及び6
本件発明5及び6は、甲5に記載された発明、甲1に記載された事項及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明し得たものである。

2 各甲号証の記載等
(1)甲1
ア 甲1の記載
1a)「





1b)「【0015】
図1に示すように、この管継手Aは、継手本体1と、外筒部を構成する外筒部材2及びキャップ部材3と、リング状シール材4と、抜け止めリング5aと、ガイド部材6とを備え、図2に示すように、複合管9が接続されるようになっている。
複合管9は、高密度ポリエチレン製の外層91と、耐熱ポリエチレン製の内層92と、アルミニウム製の中間層93を備えている。
【0016】
継手本体1は、砲金やステンレス鋼等の金属材料で形成されていて、中央にスパナ等の締め付け工具(図示せず)の係合部が係合する六角ナット状のフランジ部1aを備え、フランジ部1aを挟んで一方に雄ネジ筒部1b、他方に、外筒受部1cとノズル部1dとが設けられている。」(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)

1c)「【0027】
外筒部材2は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPSU(ポリフェニルサルフォン)、PC(ポリカーボネート)などの透明なエンジニアリングプラスチックで形成された筒状体であって、一端部の内周面に係合突条21を備え、他端部側が一旦外側に膨らみ厚肉になったのち、外周面が切り欠かれた状態となり、この切欠き部に2条の係合溝22,22が形成されている。
また、外筒部材2は、内径が概ね複合管9の外径と略同じか少し大径になっていて、外周面他端に内周面が他の部分より段状に拡径している拡径部23を備えている。
外筒部材2のノズル部1dの先端側の端面は、後述する抜け止めリング5の本体51の形状に沿うように、抜け止めリング位置決め凹部24がリング状に設けられている。
【0028】
そして、外筒部材2は、その一端に設けられた係合突条21が外筒受部1cの係合溝15に係合されるように、一端部が外筒受部1cに外嵌されている。
すなわち、外筒部材2は、係合突条21が、弾性変形しながら、継手本体1方向に押し込まれ、係合突条21が係合溝15に係合することによって、継手本体1から離脱せず、継手本体1に対して回転自在に取着されている。」

1d)「【0031】
キャップ部材3は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPSU(ポリフェニルサルフォン)、PC(ポリカーボネート)などの透明なエンジニアリングプラスチックで形成されたキャップ本体31と、嵌合筒部32とを備えている。
キャップ本体31は、管挿入端側の内径が複合管9の外径と略同じか少し大径をしていて、中間部から先端(嵌合筒部32と反対側の端)にかけてガイド部31aを備えている。
ガイド部31aは、キャップ本体31先端に向かってその内径が略30度の角度で徐々に拡径するテーパ面となっているとともに、先端の内径が、後述する複合管9が切断の際に偏平となっても、通常予想される偏平率の範囲(70?75%)では、偏平した複合管9の管端の最大外径より大径となっている。
【0032】
嵌合筒部32は、キャップ本体31の厚み方向の一方に延出するように設けられ、内周面に2条の係合突条32a,32aが設けられている。
そして、キャップ部材3は、係合突条32a,32aが外筒部材2の係合溝22,22に嵌り込むように、嵌合筒部32が外筒部材2に外嵌されることによって、抜け止めリング5aの離脱を防止している。」

1e)図1から、キャップ部材3に設けられた全ての係合突条32a、32aと外筒部材2に設けられた係合溝22,22との間に間隙を、係合突条32a、32aと軸方向に隣接するように、形成することが示されている。

1f)図1には、キャップ部材3に設けられた係合突条32a、32aを、軸方向に間隔をおいて複数形成することが示されている。

イ 甲1発明
上記アから、甲1には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「金属材料で形成された継手本体1と、
継手本体1に外嵌される外筒部材2と、
外筒部材2の外側に軸方向に沿う方向に外嵌されたキャップ部材3と、
キャップ部材3のキャップ本体31の厚み方向の一方に延出するように設けられた嵌合筒部32の内周面に設けられた係合突条32a、32aと、
外筒部材2の外周面に設けられた係合突条32a、32aと嵌合する係合溝22、22とを備え、
係合突条32a、32aと係合溝22、22との間に、間隙が形成され、
係合突条32a、32aは、軸方向に間隔をおいて2個形成され、
間隙は、全ての係合突条32a、32aと、係合突条32a、32aと嵌合する係合溝22,22との間に、係合突条32a、32aと軸方向に隣接するように形成された、
管継手。」

ウ 甲1記載事項
上記(1)1e)及び図1には、以下の事項(以下、「甲1記載事項」という。)が記載されている。
「キャップ部材3において軸方向に間隔をおいて設けられた2個の係合突条32a、32aのうち全てと外筒部材2に設けられた係合溝22,22との間に間隙を、係合突条32a、32aと軸方向に隣接するように形成すること。」

(2)甲2
ア 甲2の記載
2a)「



2b)「【0020】
管継手10は、管状の本体部12と、この本体部12に外挿される管状のスリーブ18を備えている。図2に示すように、スリーブ18と本体部12との間には、管体40が挿入される挿入孔20が構成されている。」

2c)「【0026】
この管継手10では、本体部12は青銅製、スリーブ18及び解放リング22は樹脂製、ロックリング30はステンレス製とすることができる。なお、管継手10の各部材はこれらの材質に限定するものではなく、他の材質でも構わない。また、管体40は樹脂製である。なお、管体40は樹脂製、又はロックリング30の爪部36が食い込み可能な他の比較的軟らかい部材としてもよい。」

イ 甲2記載事項
上記アから、甲2には以下の事項(以下、「甲2記載事項」という。)が記載されている。
「管状の本体部12と、本体部12に外挿される管状のスリーブ18を備える管継手10において、本体部を青銅製、スリーブ18を樹脂製としたこと。」

(3)甲3
ア 甲3の記載
3a)「



」 」

3b)「【0023】
図1及び図2に示すように、継手10は、継手本体13を含む。継手本体13は、樹脂パイプ11を接続するための円筒状の三方に延びる三つのパイプ接続部12を有する。継手本体13は、ゴムが混入されたポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS:polyphenylene sulfide)等のゴム入りの合成樹脂により形成されている。樹脂パイプ11は、ポリオレフィン(例えば、架橋ポリエチレン、ポリブテン)等の合成樹脂により形成されている。パイプ接続部12はいずれも同じ構成であることから、そのうちの一つのパイプ接続部12について説明する。
【0024】
図1及び図3に示すように、継手本体13には、樹脂パイプ11が差し込まれる差込空間14を形成する内筒部15及び外筒部16が一体形成されている。内筒部15の外周面には一対の嵌着溝17が並設され、これらの嵌着溝17にそれぞれエチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(EPDM:ethylene propylene diene monomer)製のシール部材18が嵌着されている。このシール部材18により、差込空間14に樹脂パイプ11が差し込まれたとき樹脂パイプ11の内周面と内筒部15の外周面との間が水密に保持されるように構成されている。一対の嵌着溝17は、外筒部16の外端部よりも内端側に位置するように設けられ、継手本体13の長さを短く設計できるようになっている。前記内筒部15の内側空間は、水などの流体が流通する流路19となっている。」

3c)「【0026】
該スペーサ20より外端側には、差込空間14に差し込まれた樹脂パイプ11を抜け止めする抜け止め機構21が設けられている。この抜け止め機構21を構成する抜け止めリング22はステンレス鋼等の金属で形成され、その内周部には複数の抜け止め片22aが斜め方向に突出するように形成されている。そして、抜け止め片22aが差込空間14に差し込まれた樹脂パイプ11の外周部に食い込むことにより、抜け止めリング22は、樹脂パイプ11を抜け止めする。この抜け止めリング22は、外筒部16に被せられるPPS製のキャップ23と、ポリアセタール樹脂(POM:polyoxymethylene)製の押さえリング24とに挟着されている。キャップ23はその内周面の凹条23aが外筒部16の凸条16aに係止されることにより、外筒部16に取着されている。このキャップ23を透明樹脂で形成することにより、該キャップ23、後述する視認窓25、スペーサ20を介してシール部材18を視認することができる。」

3d)図3には、凸条16aが軸方向に間隔を置いて複数形成されること、及び前記凸条16aと前記凹条23aとの間に間隙が形成されることが示されている。

イ 甲3発明
上記アから、甲3には以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。
「継手本体13に一体形成される内筒部15及び外筒部16と、
外筒部16の外側に被せられるキャップ23と、
外筒部16の外周面に形成された凸条16aと、
キャップ23の内周面に形成された、凸条16aに係止される凹条23aとを備え、
凸条16aと凹条23aとの間に、間隙が形成され、
凸条16aは、軸方向に間隔を置いて2個形成され、
間隙は、全ての凸条16aと、凸条16aに係止される凹条23a、との間に形成された、樹脂パイプ11の継手。」

(4)甲4
ア 甲4の記載
4a)「



4b)「【0026】
図において、本発明における管継手本体1は、例えば、給水・給湯用の樹脂管2を抜け止め状態で接続可能になっており、内筒3、外筒4が設けられた継手本体5、キャップ6、ロックリング7、シール部材8を有し、この管継手本体1内には挿入ガイド10が装着されている。樹脂管2としては、例えば、架橋ポリエチレン管やポリブテン管等の管を用いることができ、更には、これ以外にも、金属強化ポリエチレン管等の各種の樹脂管、或は、銅管等の金属管を接続することも可能である。
【0027】
本実施形態における継手本体5には内筒3が一体に形成され、この継手本体5に対して外筒4が取付けられてこの内筒3と外筒4との間に間隙Gが形成され、この間隙Gに樹脂管2が挿入される。継手本体5は、例えば、銅合金などの金属、又はPPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)などの剛性の高い樹脂により筒状に形成され、通水用の流路口11を有している。内筒3は継手本体5の樹脂管2を接続する側に樹脂管2の内径に応じた適宜の外径に設けられている。なお、内筒3は、別部品として継手本体に装着するようにしてもよい。」

4c)「【0029】
継手本体5の外周囲には凹凸状の係合部14が形成され、この係合部14に外筒4が取付けられる。継手本体5における内筒3との他方側には雄ネジ部16が設けられ、この雄ネジ部16には図示しないヘッダーや接続部材、或はその他の外部の配管が接続可能になっている。継手本体5は、図示したような直線形状以外にも、例えば、チーズ形状やエルボ形状などであってもよい。
【0030】
外筒4は、例えば、非結晶性ナイロンやPPSU(ポリフェニルサルフォン樹脂)などの樹脂により透明或は半透明に設けられ、この外筒4の外部から樹脂管2や挿入ガイド10の挿入状態を透視可能になっている。」

4d)「【0033】
キャップ6は、たとえば、引張り弾性率が外筒4よりも高いポリアセタールなどの樹脂によりキャップ状に形成されている。このキャップ6の内周側には、外筒4の係合段部23にスナップ嵌合可能な係合段部27が形成されている。キャップ6は、係合段部23、27のスナップ嵌合により外筒4の開口側に取付けられ、取付け後には、キャップ6と外筒4とが相互に回転可能になる。キャップ6の端部側には内周方向に突設する環状突部28が形成され、外筒4の装着後には、この環状突部28によりロックリング7の抜け出しが防止される。キャップ6は、透明性を有する材料により形成することもできる。」

4e)上記4d)から、「キャップ6の内周側に形成された」、「係合段部27」は、「外筒4の外周側に形成された係合段部23にスナップ嵌合可能」であって、上記4a)図1からみて係合段部23がその前後に形成する凹部と係合することが分かる。

4f)図1には、キャップ6の内周側に形成された係合段部27と、外筒4の外周側に形成された係合段部27と係合する凹部が、軸方向に間隔を置いて複数形成されたものであることが示されている。

イ 甲4発明
上記アから、甲4には以下の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。
「内筒3が一体に形成された継手本体5と、
継手本体5の外側に取付けられる外筒4と、
外筒4の外側に嵌合されたキャップ6と、
キャップ6の内周側に形成された係合段部27と、
外筒4の外周側に形成された係合段部23がその前後に形成する、係合段部27と係合する凹部と、
キャップ6の外筒4への取付け後には、キャップ6と外筒4とが相互に回転可能になるものであり、
係合段部27は、軸方向に間隔を置いて2個形成されたものである管継手。」

(5)甲5
ア 甲5の記載
5a)「



5b)「【0013】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る管継手10は、ビールを移送するための管体としてのビールホース12を接続するための管継手であり、継手本体14を備えている(なお、図1及び図2では継手本体14の一部のみが図示されている)。この継手本体14は、樹脂材料によって形成されたものであり、筒状のホース連結部16を有している。このホース連結部16の内側は、ビールホース12が挿入される挿入孔18となっている。
【0014】
挿入孔18の内周部は、複数段の段付き状に形成されており、軸線方向一端側(図1及び図2では左側)が大径部20となっている。大径部20は、軸線方向一端側が開口しており、大径部20の軸線方向他端側(図1及び図2では右側)には、大径部20よりも小径な中径部22が設けられている。さらに、中径部22の軸線方向他端側(図1及び図2では右側)には、中径部22よりも小径な小径部24が設けられており、小径部24の軸線方向他端側(図1及び図2では右側)には、小径部24よりも小径な流路26が設けられている。なお、小径部24の内径寸法は、ビールホース12の外径寸法よりも僅かに大きく形成されている。」

5c)「【0017】
スリーブ34は、カバーリング30に対して挿入孔18の開口側(図1では左側)に配置されており、大径部20の内側に同軸的に嵌挿されている。このスリーブ34は、軸線方向他端側(図1及び図2では右側)で内径寸法がテーパー状に拡大しており、軸線方向他端部が薄肉な薄肉部34Aとなっている。
【0018】
一方、カバーリング30に対して挿入孔18内の開口側となるスリーブ34の薄肉部34Aの内側には、バネ性を有する金属材料によってリング状に形成されたロック爪44が同軸的に配置されている。このロック爪44は、断面略V字状に形成されており、撓み変形することで内径寸法を拡径可能となっている。このロック爪44の自然状態での内径寸法は、ビールホース12の外径寸法よりも僅かに小さく形成されている。また、ビールホース12が引張られた場合、ロック爪44がスリーブ34のテーパ面に沿ってもぐりこみ、そのくさび効果でロック爪44がビールホース12に食い込みチャック(ロック)する構造となっている。
【0019】
また、スリーブ34の外周部には、断面略台形状に形成された凸部34Dが設けられている。この凸部34Dは、大径部20の内周部に形成された圧入溝16A(周溝)内に嵌り込んでいる。」

5d)「【0026】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
上記構成の管継手10では、スリーブ34の薄肉部34Aの先端34Bとカバーリング30との間に間隔W1を開けた状態で、スリーブ34が継手本体14に圧入されている。即ち、スリーブ34の薄肉部34Aの先端34Bがカバーリング30に押し付けられていない状態で、スリーブ34が継手本体14に圧入されており、スリーブ34はカバーリング30から反発力を受けない。このため、スリーブ34と継手本体14との係止部分(凸部34Dと圧入溝16Aとの当接部分)に入力される荷重が低減される。これにより、圧入溝16Aに加わる応力が低減されるため、圧入溝16Aを起点として継手本体14に亀裂が生じることを防止できる。
【0027】
また、上記構成の管継手10では、スリーブ34の薄肉部34Aの先端34Bとカバーリング30との間に間隔W1を開けた状態で、スリーブ34が継手本体14に圧入されている。このため、管継手10の組み立てにおいて、スリーブ34を継手本体14の内部に圧入する際に、スリーブ34の先端部34Bがカバーリング30に当たる又は食い込むことがない。この結果、スリーブ34とカバーリング30との間のロック爪44が、スリーブ34によって破壊しないように注意しながら組付け作業をする必要がなく、組付け作業性を向上できる。」

5e)図1には、間隙が凸部34Dに対して軸方向に隣接するように形成されることが示されている。

イ 甲5発明
上記アから、甲5には以下の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されている。

「スリーブ34と、
スリーブ34の外周部に相対的に圧入された継手本体14と、
スリーブ34の外周部に形成された凸部34Dと、
継手本体14の内周部に形成された凸部34Dが嵌り込む圧入溝16Aとを備え、
凸部34Dと圧入溝16Aとの間に間隙が形成され、
間隙は、凸部34Dに対して軸方向に隣接するように形成された、管継手。」

3 判断
以下、訂正後の請求項1ないし3は、訂正前の請求項1ないし3を訂正前の請求項5の内容で限定したことに鑑み、訂正発明1ないし4に対する判断は、訂正前の請求項5に対する取消理由を含めて判断する。

(1)甲1を主引用例とした場合の検討
ア 請求項1
訂正発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「外筒部材2」は、訂正発明1における「筒状に形成された内筒」に相当し、以下同様に、「キャップ部材3」は「筒状に形成され」た「外筒」に、「キャップ部材3のキャップ本体31の厚み方向の一方に延出するように設けられた嵌合筒部32の内周面に設けられた係合突条32a、32a」は「外筒の内周面」、「に形成された凸部」に、「外筒部材2の外周面に設けられた係合突条32a、32aと嵌合する係合溝22、22」は「内筒の外周面」、「に形成された凸部と係合する凹部」に、「2個」は「複数」に、「軸方向に隣接するように形成された」は「形成された」に、それぞれ相当する。
そして、甲1発明における「外筒部材2の外側に軸方向に沿う方向に外嵌されたキャップ部材3」は、キャップ部材3を外筒部材2へ外嵌する際に、キャップ部材3の「係合突条32a、32a」を外筒部材2の「係合溝22、22」に嵌合させるためには圧入することが必要であることは技術常識から明らかであるから、訂正発明1における「筒状に形成され、内筒の外側に内筒に対し軸方向に沿う圧入方向に相対的に圧入されて組み付けられた外筒」に相当する。

したがって、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「筒状に形成された内筒と、
筒状に形成され、前記内筒の外側に前記内筒に対し軸方向に沿う圧入方向に相対的に圧入されて組み付けられた外筒と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、何れか一方に形成された凸部と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、他方に形成された、前記凸部と係合する凹部とを備え、
前記凸部と前記凹部との間に、間隙が形成され、
前記凸部は、軸方向に間隔を置いて複数形成され、
前記間隙は、全ての前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成された、管継手。」

[相違点1]
訂正発明1においては「前記外筒の硬度は、前記内筒の硬度より低い」のに対して、甲1発明においては、「キャップ部材3」の硬度が「外筒部材2」の硬度より低いか不明である点。

以下、上記相違点1について検討する。

[相違点1について]
甲2記載事項は、「管状の本体部12と、本体部12に外挿される管状のスリーブ18を備える管継手10において、本体部を青銅製、スリーブ18を樹脂製としたこと」であって、本体部12に外挿される樹脂製の管状のスリーブ18の硬度が、青銅製の管状の本体部12の硬度よりも低いことは技術常識からみて明らかである。
しかし、上記2(1)ア 1c)、1d)の甲1の記載によると、甲1発明における「キャップ部材3」及び「外筒部材2」は、ともに、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPSU(ポリフェニルサルフォン)、PC(ポリカーボネート)などの透明なエンジニアリングプラスチックから形成されるものであって内部を透視できるものであり、外筒部材2を外嵌する継手本体1が金属材料で形成されるものであるから、甲1発明における外筒部材2を青銅製のものに変更する動機付けを見いだすことはできない。
そうすると、甲1発明において甲2記載事項を適用して、上記相違点1に係る訂正発明1とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
したがって、訂正発明1は、甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、上記相違点1は、実質的な相違点であるから、訂正発明1は、甲1発明と同一であるともいえない。

イ 請求項2及び3
訂正発明2、3は、訂正発明1における発明特定事項である「前記間隙は、全ての前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成されており、」を「前記間隙は、少なくとも、複数の前記凸部のうち、前記凸部が形成された前記内筒と外筒のうちの何れか一方の他方に対する前記圧入方向の、最も後方側に形成された前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成されており、」(訂正発明2)、あるいは「前記間隙は、少なくとも、複数の前記凸部のうち、前記凸部が形成された前記内筒と外筒のうちの何れか一方の他方に対する前記圧入方向の、最も前方側に形成された前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成されており、」(訂正発明3)とそれぞれ置き換えたものである。
そして、訂正発明2及び訂正発明3は、ともに「前記外筒の硬度は、前記内筒の硬度より低い」という発明特定事項を有するものであるから、訂正発明1と同様、甲1発明との対比において上記相違点1を有する。
そうすると、上記アにおける判断と同様に、
甲1発明において甲2記載事項を適用して、上記相違点1に係る訂正発明2、3とすることは、当業者が容易になし得たとはいえず、
訂正発明2、3は、甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、上記相違点1は、実質的な相違点であるから、訂正発明2、3は、甲1発明と同一であるともいえない。

ウ 請求項4
訂正発明4は、訂正発明1ないし3のうち、何れか1つを引用するものであるから、訂正発明1ないし3と同様に、甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、甲1発明と同一であるともいえない。

エ 請求項6
訂正発明6は、訂正発明1ないし4のうち、何れか1つを引用するものであるから、訂正発明1ないし4と同様に、甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)甲3を主引用例とした場合の検討
ア 請求項1
訂正発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明における「外筒部16」は、訂正発明1における「筒状に形成された内筒」に相当し、以下同様に、「キャップ23」は「筒状に形成され」た「外筒」に、「外筒部16の外周面に形成された」、「凸条16a」は「内筒の外周面」、「に形成された」、「凸部」に、「キャップ23の内周面に形成された、前記凸条16aに係止される」、「凹条23a」は「外筒の内周面」、「に形成された、凸部と係合する」、「凹部」に、「2個」は「複数」に、「係止される」は「係合する」に、「樹脂パイプ11の継手」は「管継手」に、それぞれ相当する。
そして、甲3発明における「外筒部16の外側に被せられるキャップ23」を、キャップ23を外筒部16の外側に被せる際、キャップ23の「凹条23a」を外筒部16の「凸条16a」と嵌合するために軸方向に圧入することが必要であることは明らかであるから、訂正発明1における「筒状に形成され、内筒の外側に内筒に対し軸方向に沿う圧入方向に相対的に圧入されて組み付けられた外筒」に相当する。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「筒状に形成された内筒と、
筒状に形成され、前記内筒の外側に前記内筒に対し軸方向に沿う圧入方向に相対的に圧入されて組み付けられた外筒と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、何れか一方に形成された凸部と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、他方に形成された、前記凸部と係合する凹部とを備え、
前記凸部と前記凹部との間に、間隙が形成され、
前記凸部は、軸方向に間隔を置いて複数形成され、
前記間隙は、全ての前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成された、管継手。」

[相違点2]
訂正発明1においては、「前記外筒の硬度は、前記内筒の硬度より低い」のに対して、甲3発明においては、「キャップ23」の硬度が「外筒部16」の硬度より低いか不明である点。

以下、上記相違点2について検討する。

[相違点2について]
甲2記載事項は、「管状の本体部12と、本体部12に外挿される管状のスリーブ18を備える管継手10において、本体部を青銅製、スリーブ18を樹脂製としたこと」であって、本体部12に外挿される樹脂製の管状のスリーブ18の硬度が、青銅製の管状の本体部12の硬度よりも低いことは技術常識からみて明らかである。
しかし、上記2(3)ア 3b)、3c)の甲3の記載によると、継手本体13は、PPS等のゴム入りの合成樹脂からなり、内筒部15と外筒部16とが一体に形成されるものであって、甲3発明における「キャップ23」及び「外筒部16」は、ともにPPS(ポリフェニレンサルファイド)によって形成されるものであるところ、内筒部15及び外筒部16は継手本体13に一体に形成されることを前提とするものであるから、甲3発明における外筒部16を青銅製のものに変更する動機付けを見いだすことはできない。
そうすると、甲3発明において甲2記載事項を適用して、上記相違点2に係る訂正発明1とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
したがって、訂正発明1は、甲3発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、上記相違点2は、実質的な相違点であるから、訂正発明1は、甲3発明と同一であるともいえない。

イ 請求項2及び3
訂正発明2、3は、訂正発明1における発明特定事項である「前記間隙は、全ての前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成されており、」を「前記間隙は、少なくとも、複数の前記凸部のうち、前記凸部が形成された前記内筒と外筒のうちの何れか一方の他方に対する前記圧入方向の、最も後方側に形成された前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成されており、」(訂正発明2)、あるいは「前記間隙は、少なくとも、複数の前記凸部のうち、前記凸部が形成された前記内筒と外筒のうちの何れか一方の他方に対する前記圧入方向の、最も前方側に形成された前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成されており、」(訂正発明3)とそれぞれ置き換えたものである。
そして、訂正発明2及び訂正発明3は、ともに「前記外筒の硬度は、前記内筒の硬度より低い」という発明特定事項を有するものであるから、訂正発明1と同様、甲3発明との対比において上記相違点2を有する。
そうすると、上記アにおける判断と同様に、
甲3発明において甲2記載事項を適用して、上記相違点2に係る訂正発明2、3とすることは、当業者が容易になし得たとはいえず、
訂正発明2、3は、甲3発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、上記相違点2は、実質的な相違点であるから、訂正発明2、3は、甲3発明と同一であるともいえない。

ウ 請求項4
甲1記載事項は、「キャップ部材3において軸方向に間隔をおいて設けられた2個の係合突条32a、32aのうち全てと外筒部材2に設けられた係合溝22,22との間に間隙を、係合突条32a、32aと軸方向に隣接するように形成すること」である。
しかし、甲1記載事項は、上記相違点2に係る訂正発明1ないし3の発明特定事項である「前記外筒の硬度は、前記内筒の硬度より低い」ことを開示や示唆するものではない。
そして、訂正発明4は、上記で検討した訂正発明1ないし3の何れか1つを引用するものであるから、訂正発明4は、甲3発明、甲1記載事項及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

エ 請求項6
訂正発明6は、訂正発明1ないし4のうち、何れか1つを引用するものであるから、訂正発明1ないし3と同様に、甲3発明及び甲2記載事項に基いて、あるいは訂正発明4と同様に、甲3発明、甲1記載事項及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)甲4を主引用例とした場合の検討
ア 請求項1
訂正発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明における「外筒4」は、訂正発明1における「筒状に形成された内筒」に、以下同様に、「キャップ6」は「筒状に形成され」た「外筒」に、「キャップ6の内周側」に形成された「係合段部27」は、「外筒の内周面」、「に形成された凸部」に、「外筒4の外周側に形成された係合段部23がその前後に形成する、係合段部27と係合する凹部」は「内筒の外周面」、「に形成された、前記凸部と係合する凹部」に、「2個」は「複数」に、それぞれ相当する。
さらに、甲4発明における「外筒4の外側に嵌合されたキャップ6」は、上記2(4)ア 4d)によると、外筒4とのスナップ嵌合である以上、外筒4に対して軸方向に圧入することは明らかであるから、訂正発明1における「筒状に形成され、前記内筒の外側に前記内筒に対し軸方向に沿う圧入方向に相対的に圧入されて組み付けられた外筒」に相当する。
そうすると、訂正発明1と甲4発明との一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
「筒状に形成された内筒と、
筒状に形成され、前記内筒の外側に前記内筒に対し軸方向に沿う圧入方向に相対的に圧入されて組み付けられた外筒と、
前記外筒の内周面に形成された凸部と、
前記内筒の外周面に形成された、前記凸部と係合する凹部とを備え、
前記凸部は、軸方向に間隔を置いて複数形成された、管継手。」

[相違点3]
訂正発明1においては「凸部と凹部との間に、間隙が形成」されるとともに、「間隙は、全ての凸部と、該凸部と係合する凹部と、の間に形成され」ているのに対して、甲4発明においては、「軸方向に間隔を置いて2個形成された」、「キャップ6の内周側に形成された係合段部27と、外筒4の外周側に形成された、係合段部27と係合する凹部」との間に間隙が形成されているか不明である点。

[相違点4]
訂正発明1においては、「前記外筒の硬度は、前記内筒の硬度より低い」のに対して、甲4発明においては、「キャップ6」の硬度が「外筒4」の硬度より低いか不明である点。

事案に鑑み、まず、上記相違点4について検討する。

[相違点4について]
甲2記載事項は、「管状の本体部12と、本体部12に外挿される管状のスリーブ18を備える管継手10において、本体部を青銅製、スリーブ18を樹脂製としたこと」であって、本体部12に外挿される樹脂製の管状のスリーブ18の硬度が、青銅製の管状の本体部12の硬度よりも低いことは技術常識からみて明らかである。
しかし、上記2(4)ア 4c)、4d)の甲4の記載によると、甲4発明における「キャップ6」は、ポリアセタールなどの樹脂とするとともに、「外筒4」は、非結晶性ナイロンやPPSU(ポリフェニルサルフォン樹脂)などの透明或いは半透明な樹脂として、外筒4の外部から樹脂管2や挿入ガイド10の挿入状態を透視可能とするものであるとともに、上記2(4)ア 4b)段落【0027】の甲4の記載によると、継手本体5は、金属あるいは剛性の高い樹脂により形成されるものであるから、継手本体5の外側に取り付けられる外筒4を青銅製のものとする動機付けを見いだすことはできない。
また、甲1記載事項は、「キャップ部材3において軸方向に間隔をおいて設けられた2個の係合突条32a、32aのうち全てと外筒部材2に設けられた係合溝22,22との間に間隙を、係合突条32a、32aと軸方向に隣接するように形成すること」であって、甲1記載事項は、上記相違点4に係る訂正発明1の発明特定事項である「前記外筒の硬度は、前記内筒の硬度より低い」ことを開示や示唆するものではない。
そうすると、上記相違点3について検討するまでもなく、甲4発明において甲1記載事項及び甲2記載事項を適用して訂正発明1とすることは、当業者が容易になし得たとはいえず、訂正発明1は、甲4発明、甲1記載事項及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

イ 請求項2及び3
訂正発明2、3は、訂正発明1における発明特定事項である「前記間隙は、全ての前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成されており、」を「前記間隙は、少なくとも、複数の前記凸部のうち、前記凸部が形成された前記内筒と外筒のうちの何れか一方の他方に対する前記圧入方向の、最も後方側に形成された前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成されており、」(訂正発明2)、あるいは「前記間隙は、少なくとも、複数の前記凸部のうち、前記凸部が形成された前記内筒と外筒のうちの何れか一方の他方に対する前記圧入方向の、最も前方側に形成された前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成されており、」(訂正発明3)とそれぞれ置き換えたものである。
そして、訂正発明2及び訂正発明3は、ともに「前記外筒の硬度は、前記内筒の硬度より低い」という発明特定事項を有するものであるから、訂正発明1と同様、甲4発明との対比において上記相違点4を有する。
そうすると、上記アにおける判断と同様に、
甲4発明において甲1記載事項及び甲2記載事項を適用して、上記相違点4に係る訂正発明2、3とすることは、当業者が容易になし得たとはいえず、訂正発明2、3は、甲4発明、甲1記載事項及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ 請求項4
訂正発明4は、訂正発明1ないし3のうち、何れか1つを引用するものであるから、訂正発明1ないし3と同様に、甲4発明、甲1記載事項及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

エ 請求項6
訂正発明6は、訂正発明1ないし4のうち、何れか1つを引用するものであるから、訂正発明1ないし4と同様に、甲1発明、甲1記載事項及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(4)甲5を主引用例とした場合の検討
ア 請求項1
訂正発明1と甲5発明とを対比する。
甲5発明における「スリーブ34」は、訂正発明1における「筒状に形成された内筒」に相当し、以下同様に、「スリーブ34の外周部に圧入された継手本体14」は「筒状に形成され、前記内筒の外側に前記内筒に対し軸方向に沿う圧入方向に相対的に圧入されて組み付けられた外筒」に、「スリーブ34の外周部に形成された凸部34D」は「内筒の外周面」、「に形成された凸部」に、「継手本体14の内周部に形成された凸部34Dが嵌り込む圧入溝16A」は「外筒の内周面」、「に形成された前記凸部と係合する凹部」に、それぞれ相当する。

そうすると、訂正発明1と甲5発明との一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
「筒状に形成された内筒と、
筒状に形成され、前記内筒の外側に前記内筒に対し軸方向に沿う圧入方向に相対的に圧入されて組み付けられた外筒と、
前記内筒の外周面に形成された凸部と、
前記外筒の内周面に形成された、前記凸部と係合する凹部とを備え、
前記凸部と前記凹部との間に、間隙が形成された、管継手。」

[相違点5]
訂正発明1においては、「凸部は、軸方向に間隔を置いて複数形成され、間隙は、全ての凸部と、該凸部と係合する凹部と、の間に形成され」たのに対して、
甲5発明においては、「凸部34D」が「軸方向に間隔を置いて複数形成され」たものではない点。

[相違点6]
訂正発明1においては、「前記外筒の硬度は、前記内筒の硬度より低い」のに対して、甲5発明においては、「継手本体14」の硬度が「スリーブ34」の硬度より低いか不明である点。

事案に鑑み、まず、上記相違点6について検討する。

[相違点6について]
甲2記載事項は、「管状の本体部12と、本体部12に外挿される管状のスリーブ18を備える管継手10において、本体部を青銅製、スリーブ18を樹脂製としたこと」であって、本体部12に外挿される樹脂製の管状のスリーブ18の硬度が、青銅製の管状の本体部12の硬度よりも低いことは技術常識からみて明らかである。
そして、甲5において、上記2(5)ア 5b)の記載によれば、継手本体14は樹脂材料で形成される一方、継手本体14に圧入されているスリーブ34の材質は不明である。
しかし、上記2(5)ア 5d)の記載によれば、スリーブ34は、カバーリング30から反発力を受けないものであって、スリーブ34が圧入される継手本体14のように、スリーブ34の硬度や強度を高める必要性が認められないから、スリーブ34を青銅製のものとする動機付けを見いだすことはできない。
また、甲1記載事項は、「キャップ部材3において軸方向に間隔をおいて設けられた2個の係合突条32a、32aのうち全てと外筒部材2に設けられた係合溝22,22との間に間隙を、係合突条32a、32aと軸方向に隣接するように形成すること」であって、甲1記載事項は、上記相違点6に係る訂正発明1の発明特定事項である「前記外筒の硬度は、前記内筒の硬度より低い」ことを開示や示唆するものではない。
そうすると、上記相違点5について検討するまでもなく、甲5発明において甲1記載事項及び甲2記載事項を適用して訂正発明1とすることは、当業者が容易になし得たとはいえず、訂正発明1は、甲5発明、甲1記載事項及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

イ 請求項2及び3
訂正発明2、3は、訂正発明1における発明特定事項である「前記間隙は、全ての前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成されており、」を「前記間隙は、少なくとも、複数の前記凸部のうち、前記凸部が形成された前記内筒と外筒のうちの何れか一方の他方に対する前記圧入方向の、最も後方側に形成された前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成されており、」(訂正発明2)、あるいは「前記間隙は、少なくとも、複数の前記凸部のうち、前記凸部が形成された前記内筒と外筒のうちの何れか一方の他方に対する前記圧入方向の、最も前方側に形成された前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成されており、」(訂正発明3)とそれぞれ置き換えたものである。
そして、訂正発明2及び訂正発明3は、ともに「前記外筒の硬度は、前記内筒の硬度より低い」という発明特定事項を有するものであるから、訂正発明1と同様、甲5発明との対比において上記相違点6を有する。
そうすると、上記アにおける判断と同様に、
甲5発明において甲1記載事項及び甲2記載事項を適用して、上記相違点6に係る訂正発明2、3とすることは、当業者が容易になし得たとはいえず、訂正発明2、3は、甲5発明、甲1記載事項及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ 請求項4
訂正発明4は、訂正発明1ないし3のうち、何れか1つを引用するものであるから、訂正発明1ないし3と同様に、甲5発明、甲1記載事項及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

エ 請求項6
訂正発明6は、訂正発明1ないし4のうち、何れか1つを引用するものであるから、訂正発明1ないし4と同様に、甲5発明、甲1記載事項及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許異議申立理由
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された甲第4号証、または甲第5号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

(2)特許異議申立理由についての判断
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、訂正が認められたことにより訂正発明1ないし3に対応する。そして、上記3(3)または3(4)において判断したとおり、訂正発明1ないし3は、甲第4号証に記載された発明と、少なくとも[相違点4]において相違するから、訂正発明1ないし3は甲4発明であるとはいえない。
また、訂正発明1ないし3は、甲第5号証に記載された発明と、少なくとも[相違点6]において相違するから、訂正発明1ないし3は甲5発明であるとはいえない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、本件請求項1ないし4及び6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし4及び6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項5に係る特許は、訂正により削除された。これにより、本件特許の請求項5に対して特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成された内筒と、
筒状に形成され、前記内筒の外側に前記内筒に対し軸方向に沿う圧入方向に相対的に圧入されて組み付けられた外筒と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、何れか一方に形成された凸部と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、他方に形成された、前記凸部と係合する凹部とを備え、
前記凸部と前記凹部との間に、間隙が形成され、
前記凸部は、軸方向に間隔を置いて複数形成され、
前記間隙は、全ての前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成されており、
前記外筒の硬度は、前記内筒の硬度より低い、管継手。
【請求項2】
筒状に形成された内筒と、
筒状に形成され、前記内筒の外側に前記内筒に対し軸方向に沿う圧入方向に相対的に圧入されて組み付けられた外筒と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、何れか一方に形成された凸部と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、他方に形成された、前記凸部と係合する凹部とを備え、
前記凸部と前記凹部との間に、間隙が形成され、
前記凸部は、軸方向に間隔を置いて複数形成され、
前記間隙は、少なくとも、複数の前記凸部のうち、前記凸部が形成された前記内筒と外筒のうちの何れか一方の他方に対する前記圧入方向の、最も後方側に形成された前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成されており、
前記外筒の硬度は、前記内筒の硬度より低い、管継手。
【請求項3】
筒状に形成された内筒と、
筒状に形成され、前記内筒の外側に前記内筒に対し軸方向に沿う圧入方向に相対的に圧入されて組み付けられた外筒と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、何れか一方に形成された凸部と、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面のうちの、他方に形成された、前記凸部と係合する凹部とを備え、
前記凸部と前記凹部との間に、間隙が形成され、
前記凸部は、軸方向に間隔を置いて複数形成され、
前記間隙は、少なくとも、複数の前記凸部のうち、前記凸部が形成された前記内筒と外筒のうちの何れか一方の他方に対する前記圧入方向の、最も前方側に形成された前記凸部と、該凸部と係合する前記凹部と、の間に形成されており、
前記外筒の硬度は、前記内筒の硬度より低い、管継手。
【請求項4】
前記間隙は、前記凸部に対し軸方向に隣接して形成された、請求項1から3の何れか1項に記載の管継手。
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記外筒は、樹脂材料から形成され、
前記内筒は、金属材料から形成された、請求項1から4の何れか1項に記載の管継手。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-08-31 
出願番号 特願2015-152838(P2015-152838)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (F16L)
P 1 651・ 121- YAA (F16L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤原 弘  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 松下 聡
平城 俊雅
登録日 2019-07-12 
登録番号 特許第6553443号(P6553443)
権利者 株式会社ブリヂストン
発明の名称 管継手  
代理人 塚中 哲雄  
代理人 杉村 憲司  
代理人 鈴木 治  
代理人 塚中 哲雄  
代理人 坂本 晃太郎  
代理人 坂本 晃太郎  
代理人 杉村 光嗣  
代理人 鈴木 治  
代理人 杉村 光嗣  
代理人 杉村 憲司  

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