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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B60R
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B60R
管理番号 1368070
異議申立番号 異議2019-700766  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-09-26 
確定日 2020-09-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6490538号発明「車両用オーナメント」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6490538号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕、5について訂正することを認める。 特許第6490538号の請求項1?5に係る特許を維持する。 
理由 結論
特許第6490538号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕、5について訂正することを認める。
特許第6490538号の請求項1?5に係る特許を維持する。

理 由
第1 手続の経緯
特許第6490538号の請求項1?5に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成27年8月25日に出願され、平成31年3月8日にその特許権の設定登録がされ、同年3月27日に特許掲載公報が発行された。
本件特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和1年 9月26日付け:特許異議申立人特許業務法人虎ノ門知的財産事務所(以下「申立人」という。)による請求項1?5に係る特許に対する特許異議の申立て
同年11月29日付け:取消理由通知書
令和2年 2月 3日付け:意見書の提出(特許権者)
同年 3月16日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年 4月27日付け:指定期間延長に係る上申書の提出(特許権者)
同年 5月12日付け:通知書(指定期間の延長)
同年 6月22日付け:意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
同年 7月 9日付け:訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)
同年 8月11日付け:意見書の提出(申立人)

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和2年6月22日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許第6490538号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?5について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下の訂正事項1?6のとおりである(下線部が訂正箇所である。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「電波透過性を有し且つ金属成分を含まない半透明のフィルムと、
前記フィルムの裏側面に形成されたグレーの印刷膜又は塗装膜と、
光透過性を有し、前記フィルムの表側面を被覆するように前記フィルムと一体成形された表面部材と、
を備え、
前記フィルムは、数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されてなるフィルムである、車両用オーナメント。」と記載されているのを、
「電波透過性を有し且つ金属成分を含まない、表側面にエンボス模様が形成された半透明のフィルムと、
前記フィルムの裏側面に形成されたグレーの印刷膜又は塗装膜と、
光透過性を有し、前記フィルムの表側面を被覆するように前記フィルムと一体成形された表面部材と、
を備え、
前記フィルムは、数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されてなるフィルムであり、
前記グレーの印刷膜又は塗装膜は、前記フィルムの表側面から入射して裏側面まで透過した光を表側面に反射させ、
前記フィルムは、前記グレーの印刷膜又は塗装膜が前記透過した光を表側面に反射させることにより、該グレーの印刷膜又は塗装膜が形成されていない場合に比べてより鮮やかな金属調光沢を呈する、車両用オーナメント。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2?4も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に
「前記フィルムは、前記グレーの印刷膜又は塗装膜が該フィルムの裏側面に形成されることで、該フィルムの表側面から見たときに金属色を示すためのものであり、
前記フィルムは、該フィルムの裏側面に前記グレーの印刷膜又は塗装膜が形成され且つ該フィルムの表側面から入射して裏側面まで透過した光が該グレーの印刷膜又は塗装膜で表側面に反射することにより、該グレーの印刷膜又は塗装膜が形成されていない場合に比べてより鮮やかな金属調光沢を呈するものであり、
前記グレーの印刷膜又は塗装膜の明度を変えることにより、前記金属色の明度を調整することができる、請求項1又は請求項2に記載の車両用オーナメント。」と記載されているのを、
「前記フィルムは、前記グレーの印刷膜又は塗装膜が該フィルムの裏側面に形成されることで、該フィルムの表側面から見たときに金属色を示すためのものであり、
前記グレーの印刷膜又は塗装膜の明度を変えることにより、前記金属色の明度を調整することができる、請求項1又は請求項2に記載の車両用オーナメント。」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に
「電波透過性を有し且つ金属成分を含まない半透明のフィルムと、
前記フィルムの裏側面に形成されたグレーの印刷膜又は塗装膜と、
前記フィルムの表側面に塗装により部分的に形成された黒色の光遮断膜と、
光透過性を有し、前記フィルムの表側面を被覆するように前記フィルムと一体成形された表面部材と、
前記グレーの印刷膜又は塗装膜の裏側面を被覆するように前記フィルムと一体成形されたベース部材と、
を備え、
前記フィルムは、数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されてなるフィルムである、車両用オーナメント。」と記載されているのを、
「電波透過性を有し且つ金属成分を含まない、表側面にエンボス模様が形成された半透明のフィルムと、
前記フィルムの裏側面に形成されたグレーの印刷膜又は塗装膜と、
前記フィルムの表側面に塗装により部分的に形成された黒色の光遮断膜と、
光透過性を有し、前記フィルムの表側面を被覆するように前記フィルムと一体成形された表面部材と、
前記グレーの印刷膜又は塗装膜の裏側面を被覆するように前記フィルムと一体成形されたベース部材と、
を備え、
前記フィルムは、数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されてなるフィルムであり、
前記グレーの印刷膜又は塗装膜は、前記フィルムの表側面から入射して裏側面まで透過した光を表側面に反射させ、
前記フィルムは、前記グレーの印刷膜又は塗装膜が前記透過した光を表側面に反射させることにより、該グレーの印刷膜又は塗装膜が形成されていない場合に比べてより鮮やかな金属調光沢を呈する、車両用オーナメント。」に訂正する。

(4)訂正事項4
本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の段落【0008】に「本発明の一局面に従った例示的な車両用オーナメントは、電波透過性を有し且つ金属成分を含まない半透明のフィルムと、フィルムの裏側面に形成されたグレーの印刷膜又は塗装膜と、光透過性を有し、フィルムの表側面を被覆するようにフィルムと一体成形された表面部材とを備え、前記フィルムは、数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されてなるフィルムであるものである。」と記載されているのを、「本発明の一局面に従った例示的な車両用オーナメントは、電波透過性を有し且つ金属成分を含まない、表側面にエンボス模様が形成された半透明のフィルムと、フィルムの裏側面に形成されたグレーの印刷膜又は塗装膜と、光透過性を有し、フィルムの表側面を被覆するようにフィルムと一体成形された表面部材とを備え、前記フィルムは、数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されてなるフィルムであり、前記グレーの印刷膜又は塗装膜は、前記フィルムの表側面から入射して裏側面まで透過した光を表側面に反射させ、前記フィルムは、前記グレーの印刷膜又は塗装膜が前記透過した光を表側面に反射させることにより、該グレーの印刷膜又は塗装膜が形成されていない場合に比べてより鮮やかな金属調光沢を呈するものである。」に訂正する。

(5)訂正事項5
本件明細書の段落【0010】に「好ましくは、前記フィルムは、前記グレーの印刷膜又は塗装膜が該フィルムの裏側面に形成されることで、該フィルムの表側面から見たときに金属色を示すためのものであり、前記フィルムは、該フィルムの裏側面に前記グレーの印刷膜又は塗装膜が形成され且つ該フィルムの表側面から入射して裏側面まで透過した光が該グレーの印刷膜又は塗装膜で表側面に反射することにより、該グレーの印刷膜又は塗装膜が形成されていない場合に比べてより鮮やかな金属調光沢を呈するものであり、前記グレーの印刷膜又は塗装膜の明度を変えることにより、前記金属色の明度を調整することができる。」と記載されているのを、「好ましくは、前記フィルムは、前記グレーの印刷膜又は塗装膜が該フィルムの裏側面に形成されることで、該フィルムの表側面から見たときに金属色を示すためのものであり、前記グレーの印刷膜又は塗装膜の明度を変えることにより、前記金属色の明度を調整することができる。」に訂正する。

(6)訂正事項6
本件明細書の段落【0012】に「本発明の一局面に従った例示的な車両用オーナメントは、電波透過性を有し且つ金属成分を含まない半透明のフィルムと、前記フィルムの裏側面に形成されたグレーの印刷膜又は塗装膜と、前記フィルムの表側面に塗装により部分的に形成された黒色の光遮断膜と、光透過性を有し、前記フィルムの表側面を被覆するように前記フィルムと一体成形された表面部材と、前記グレーの印刷膜又は塗装膜の裏側面を被覆するように前記フィルムと一体成形されたベース部材と、を備え、前記フィルムは、数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されてなるフィルムであるものである。」と記載されているのを、「本発明の一局面に従った例示的な車両用オーナメントは、電波透過性を有し且つ金属成分を含まない、表側面にエンボス模様が形成された半透明のフィルムと、前記フィルムの裏側面に形成されたグレーの印刷膜又は塗装膜と、前記フィルムの表側面に塗装により部分的に形成された黒色の光遮断膜と、光透過性を有し、前記フィルムの表側面を被覆するように前記フィルムと一体成形された表面部材と、前記グレーの印刷膜又は塗装膜の裏側面を被覆するように前記フィルムと一体成形されたベース部材と、を備え、前記フィルムは、数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されてなるフィルムであり、前記グレーの印刷膜又は塗装膜は、前記フィルムの表側面から入射して裏側面まで透過した光を表側面に反射させ、前記フィルムは、前記グレーの印刷膜又は塗装膜が前記透過した光を表側面に反射させることにより、該グレーの印刷膜又は塗装膜が形成されていない場合に比べてより鮮やかな金属調光沢を呈するものである。」に訂正する。

上記訂正事項1及び2に係る特許請求の範囲の訂正は、一群の請求項〔1?4〕に対して請求されたものである。
また、上記訂正事項4及び5に係る明細書の訂正は、一群の請求項〔1?4〕に対して請求されたものである。

2 訂正の適否
(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無
(1-1)訂正事項1について
ア 訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「半透明のフィルム」について、「表側面にエンボス模様が形成された」ものであること(以下「訂正A」という。)を特定し、また、「前記グレーの印刷膜又は塗装膜は、前記フィルムの表側面から入射して裏側面まで透過した光を表側面に反射させ、前記フィルムは、前記グレーの印刷膜又は塗装膜が前記透過した光を表側面に反射させることにより、該グレーの印刷膜又は塗装膜が形成されていない場合に比べてより鮮やかな金属調光沢を呈する」こと(以下「訂正B」という。)を追加するので、それら訂正A及び訂正Bに区分して、以下検討する。

イ 訂正Aについて
訂正Aは、本件明細書の「光遮断膜123で描かれる模様に合わせて、膜状体12の表側面にエンボス(浮き出し)模様124を形成してもよい。」(段落【0031】)等の記載を根拠に、「半透明のフィルム」が「表側面にエンボス模様が形成された」ものであることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ 訂正Bについて
訂正Bは、訂正前の請求項3の「前記フィルムは、該フィルムの裏側面に前記グレーの印刷膜又は塗装膜が形成され且つ該フィルムの表側面から入射して裏側面まで透過した光が該グレーの印刷膜又は塗装膜で表側面に反射することにより、該グレーの印刷膜又は塗装膜が形成されていない場合に比べてより鮮やかな金属調光沢を呈するものであり」との記載、及び本件明細書の「膜状体12の裏側面に光沢膜122を形成することにより、膜状体12の表側面から入射して裏側面まで透過した光が表側面に反射して、膜状体12のうち光沢膜122が形成された部分はより鮮やかな金属調光沢を帯びるようになる。」(段落【0027】)等の記載を根拠に、「グレーの印刷膜又は塗装膜」が「前記フィルムの表側面から入射して裏側面まで透過した光を表側面に反射させ」ること、及び「前記フィルム」が「前記グレーの印刷膜又は塗装膜が前記透過した光を表側面に反射させることにより、該グレーの印刷膜又は塗装膜が形成されていない場合に比べてより鮮やかな金属調光沢を呈する」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

エ したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(1-2)訂正事項2について
訂正事項2は、上記訂正事項1に係る請求項1の訂正に合わせて、請求項3の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえ、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(1-3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項5に記載した発明を特定するために必要な事項について、上記訂正事項1と同様の訂正を行うものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(1-4)訂正事項4及び5について
訂正事項4及び5は、上記訂正事項1及び2の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(1-5)訂正事項6について
訂正事項6は、上記訂正事項3の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?4〕、5についての訂正を認める。

第3 本件発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1?5に係る発明(以下「本件発明1?5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
電波透過性を有し且つ金属成分を含まない、表側面にエンボス模様が形成された半透明のフィルムと、
前記フィルムの裏側面に形成されたグレーの印刷膜又は塗装膜と、
光透過性を有し、前記フィルムの表側面を被覆するように前記フィルムと一体成形された表面部材と、
を備え、
前記フィルムは、数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されてなるフィルムであり、
前記グレーの印刷膜又は塗装膜は、前記フィルムの表側面から入射して裏側面まで透過した光を表側面に反射させ、
前記フィルムは、前記グレーの印刷膜又は塗装膜が前記透過した光を表側面に反射させることにより、該グレーの印刷膜又は塗装膜が形成されていない場合に比べてより鮮やかな金属調光沢を呈する、車両用オーナメント。
【請求項2】
前記フィルムの厚みは100?200μmである、請求項1に記載の車両用オーナメント。
【請求項3】
前記フィルムは、前記グレーの印刷膜又は塗装膜が該フィルムの裏側面に形成されることで、該フィルムの表側面から見たときに金属色を示すためのものであり、
前記グレーの印刷膜又は塗装膜の明度を変えることにより、前記金属色の明度を調整することができる、請求項1又は請求項2に記載の車両用オーナメント。
【請求項4】
前記車両用オーナメントの少なくとも一部は車載レーダー装置の送受信電波領域内に配置される部材である、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の車両用オーナメント。
【請求項5】
電波透過性を有し且つ金属成分を含まない、表側面にエンボス模様が形成された半透明のフィルムと、
前記フィルムの裏側面に形成されたグレーの印刷膜又は塗装膜と、
前記フィルムの表側面に塗装により部分的に形成された黒色の光遮断膜と、
光透過性を有し、前記フィルムの表側面を被覆するように前記フィルムと一体成形された表面部材と、
前記グレーの印刷膜又は塗装膜の裏側面を被覆するように前記フィルムと一体成形されたベース部材と、
を備え、
前記フィルムは、数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されてなるフィルムであり、
前記グレーの印刷膜又は塗装膜は、前記フィルムの表側面から入射して裏側面まで透過した光を表側面に反射させ、
前記フィルムは、前記グレーの印刷膜又は塗装膜が前記透過した光を表側面に反射させることにより、該グレーの印刷膜又は塗装膜が形成されていない場合に比べてより鮮やかな金属調光沢を呈する、車両用オーナメント。」

第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が令和2年3月16日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
本件特許の請求項1?5に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された甲第1?5号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
甲第1号証:特開2010-50598号公報
甲第2号証:特開2014-69634号公報
甲第3号証:特開2010-66152号公報
甲第4号証:特開2014-94473号公報
甲第5号証:特開2008-132773号公報
上記甲第1?5号証(以下「甲1?5」という。)は、申立人が提出した各甲号証である。

2 当審の判断
2-1 刊行物に記載された事項等
(1)甲1の記載事項等
(1-1)甲1の記載事項
甲1には次の記載がある(なお、下線は当審で付した。以下同様。)。
(1a)「【0001】
本発明は、通信機器、電磁波式レーダー等電磁波を利用する機器の外装等の部材に用いることができる金属光沢を有しながらも、電磁波の透過性に優れた電磁波透過性部材に使用される金属光沢調装飾フィルムに関するものである。
・・・
【0007】
本発明は、通信機器、電磁波式レーダー等電磁波を利用する機器の外装等の部材に用いることができ、金属光沢の意匠を有しながら、電磁波の透過性に優れる電磁波透過性部材に使用される電磁波透過性金属光沢調装飾フィルムを提供するとことを課題とする。
・・・
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の詳細を説明する。
・・・
【0012】
本発明の電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムは、図1に示すように、熱可塑性樹脂Aからなる層(A層)1と熱可塑性樹脂Bからなる層(B層)2を交互にそれぞれ30層以上積層した構造を含んでなる。
・・・
【0020】
本発明の電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムにおいて、A層とB層を交互に積層した構造を含むとは、A層とB層を厚み方向に交互に積層した構造を有している部分が存在することで定義される
また、本発明ではA層とB層が厚み方向に交互にそれぞれ30層以上積層された構造が望ましい。より好ましくは、200層以上である。さらに、好ましくはA層とB層の総積層数が600層以上である。A層とB層が厚み方向に交互にそれぞれ30層以上積層した構造でないと、十分な反射率が得られなくなり、輝度の高い金属調の外観とはならない。
また、A層とB層が厚み方向に交互にそれぞれ200層以上含まれていると、波長帯域400?1000nmの相対反射率を40%以上とすることが容易となる。また、A層とB層の総積層数が600層以上であると、波長帯域400?1000nmの相対反射率を60%以上とすることが容易となり、非常に輝度の高い金属調の外観を有することが容易となる。また、積層数の上限値としては特に限定するものではないが、装置の大型化や層数が多くなりすぎることによる積層精度の低下に伴う波長選択性の低下を考慮すると、1500層以下であることが好ましい。
・・・
【0024】
また、本発明の電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムは、層対厚み10nm以上220nm未満の層の数が層対厚み220nm以上320nm以下の層の数より多い。このようにすることにより、ほとんど色づきのない金属調とすることが可能となる。ここで、層対厚みとは、隣接するA層とB層のそれぞれの層厚みを足した厚みである。また、層対厚みは、A層のみについて一方の表面から数えたm番目のA層と、B層のみについて同表面から数えたm番目のB層の層厚みを足したものである。ここでmは整数を表している。例えば、一方の表面から反対側の表面にA1層/B1層/A2層/B2層/A3層/B3層・・・・の順番で並んでいた際、A1層とB1層が1番目の層対であり、A2層とB2層が2番目の層対であり、A3層とB3層が3番目の層対となる。層対厚み10nm以上220nm未満の層の数が、層厚み220nm以上320nm以下の層の数と同数または少ないと、波長帯域400?1100nmの反射帯域において低波長側ほど反射率が低下するため、赤味をおびた外観となるので好ましくない。これは、低波長側の反射を起こす層対の密度が薄くなるために起こるものである。従って、積層フィルムを構成する層の層対厚みの序列としては、単調に等差数列的に層対厚みが増加もしくは減少するのではなく、上記条件を満たしながら等比数列的に層対厚みが増加もしくは減少することが好ましい。より好ましくは、層対厚み120nm以上220nm未満の層の数が、層対厚み220nm以上320nm以下の層の数の1.05倍以上2.5倍以下であることが好ましい。この場合、まったく色づきのない金属調とすることが可能である。
・・・
【0027】
本発明に係る電磁波発信器から発信される又は電磁波受信器に受信される電磁波の経路上に使用される電磁波透過性部材としては、上記電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムを含む成形体であることが望ましい。本発明の電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム以外に、ハードコート層、エンボス層、耐候層(UVカット層)、着色層、接着層、基材樹脂層などのいずれかを含んでなることも好ましい。このような成形体は、すべての層を樹脂などの有機物や酸化ケイ素など電磁波を吸収しない無機化合物で構成することが可能であり、金属や重金属などを含まないため、環境負荷が小さく、リサイクル性にも優れ、電磁波障害を起こさないものである。既存の技術では、アルミなどの金属薄膜層の蒸着等が行なわれているが、電磁波の送受信を必要とする電磁波発信器又は電磁波受信器の電磁波経路上にこれら既存の技術を活用した外装部材を使用すると、意匠性は向上するかも知れないが、本来必要な発信器や受信器の送受信機能を損なう可能性がある。そこで、本発明の電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムは、自動車のミリ波レーダーの機能を損なわないという観点から、76GHzにおける電磁波の減衰率が2.0dB以下であることが望ましい。より好ましくは、76GHzにおける電磁波の減衰率が1.0dB以下である。このような場合、本発明の電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムを用いても本来の機能を損なうことのない自動車のミリ波レーダーの電磁波経路上に使用される電磁波透過性部材となることが可能である。このとき、電磁波透過性部材と電磁波送信器あるいは電磁波受信器との距離は10m以内であることが好ましい。
【0028】
本発明の電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムは、その片面または両面に表面に着色層が形成されたものであることが好ましい。本発明の電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムは、可視光線の一部は透過する設計とできるので、着色層を設けることにより、外装部材の色目を調整することが可能となる。着色層を設けるには印刷によることが好ましい。」
・・・
【0047】
本発明の電磁波透過性部材を得る方法の例としては、本発明の電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムに印刷などをした後に、該当フィルムとアクリル等の樹脂とを一体成形し、さらには、スチレン等の樹脂と該当フィルムを挟む形で、曲面や複数の平面が組み合わさった形状を有している立体的な成形体を一体成形する方法が挙げられる。
・・・
【0058】
(実施例1)
・・・
【0061】
3.フィルムの作製
次に、本発明の電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムを構成する2種類の熱可塑性樹脂として、合成したポリエステル1とポリエステル2を準備した。ポリエステル191.46wt%に、平均2次粒径が1μmの凝集シリカ粒子を0.04wt%、マロン酸エステル系の紫外線吸収剤(クラリアント・ジャパン社製”サンデュボアB-CAP”)を8.5wt%混合し、これを熱可塑性樹脂Aとした。次にポリエステル2を熱可塑性樹脂Bとした。これら熱可塑性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bは、それぞれ乾燥した後、別々の押出機に供給した。
・・・
【0064】
この一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風で予熱後、110℃の温度で横方向に3.3倍延伸した。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で240℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度にて幅方向に8%の弛緩処理を施し、その後、室温まで徐冷後、巻き取った。得られたフィルムの厚みは、100μmであり、厚みむらは4.0%であった。ここで得られた電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムを3とする。得られた結果を表1のフィルム特性に示す。
【0065】
4.後加工、成形
次に上記3項の方法で得たフィルムを用いて自動車のミリ波レーダーの電磁波経路上に使用される自動車用エンブレム(電磁波透過性部材)を作製した。フィルムの両面に透明の印刷層を印刷した。このとき、金属光沢調に見せない部分は光を透過しない黒インキを使用した印刷層をさらに設けた。この印刷層を施したフィルムを、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)と一体成形し、続いてアクリロニトル・エチレン・スチレン(AES)と一体成形し、印刷層を施したフィルムが積層された自動車用エンブレムを得た。自動車用エンブレムの断面の一部を図2に示す。得られた結果を表1に示す。
・・・
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明のフィルムの積層構造の一部を示す模式図
【図2】自動車用エンブレムの断面構造の一部を示す模式図」
(1b)甲1には、以下の図表が示されている。

(1-2)認定事項
甲1の記載(摘示(1a)(1b))より、以下の事項が認定できる。
ア「自動車用エンブレム」の構成について
(ア)図2は、「自動車用エンブレムの断面構造の一部を示す模式図」(段落【0074】)であり、図中に「ポリメチルメタクリレート層」、「黒色インキ層」及び「アクリロニトリル・エチレン・スチレン層」が表記されているところ、上記「黒色インキ層」は、段落【0065】に記載されている「黒インキを使用した印刷層」に対応し、図2における図番「3」は、段落【0064】に記載されている「電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム」であり、図番「4」は、段落【0065】に記載されている「透明の印刷層」に対応していることが明らかであるから、
上記「自動車用エンブレム」は、ポリメチルメタクリレート層、黒色インキ層、透明の印刷層、電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム、アクリロニトリル・エチレン・スチレン層を備えること。
(イ)段落【0065】の記載より、
上記「自動車用エンブレム」は、自動車のミリ波レーダーの電磁波経路上に使用されること、及び、電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムの両面に透明の印刷層を印刷し、金属光沢調に見せない部分は光を透過しない黒色インキ層の印刷層をさらに設けたフィルムを、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)と一体成形し、続いてアクリロニトル・エチレン・スチレン(AES)と一体成形して得ること。

イ 「電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム」の態様について
(ア)段落【0027】の記載より、電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムは、電磁波を吸収しない無機化合物で構成され、金属や重金属などを含まないこと。
(イ)段落【0028】の記載より、電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムは、その片面または両面の表面に着色層が形成され、可視光線の一部は透過する設計とし、着色層を設けることにより、外装部材の色目を調整することが可能であり、着色層を設けるには印刷によるものであること。
(ウ)段落【0012】の記載より、電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムは、熱可塑性樹脂Aからなる層(A層)1と熱可塑性樹脂Bからなる層(B層)2を交互にそれぞれ30層以上積層した構造を含んでなること。
(エ)段落【0020】の記載より、電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムは、A層とB層が厚み方向に交互にそれぞれ200層以上又は600層以上積層された構造が望ましく、積層数の上限値としては、1500層以下であること。
(オ)段落【0024】の記載より、電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムは、層対厚み10nm以上220nm未満の層の数が層対厚み220nm以上320nm以下の層の数より多いものであること。
(カ)段落【0064】の記載より、電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムは、厚みが100μmであること。

(1-3)甲1に記載された発明
上記(1-1)及び(1-2)から、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「ポリメチルメタクリレート層、黒色インキ層、透明の印刷層、電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム、アクリロニトリル・エチレン・スチレン層を備え、自動車のミリ波レーダーの電磁波経路上に使用される自動車用エンブレムであって、
電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムの両面に透明の印刷層を印刷し、金属光沢調に見せない部分は光を透過しない黒色インキ層の印刷層をさらに設けたフィルムを、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)と一体成形し、続いてアクリロニトル・エチレン・スチレン(AES)と一体成形して得るものであり、
電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムは、
電磁波を吸収しない無機化合物で構成され、金属や重金属などを含まず、
その片面または両面の表面に着色層が形成され、
可視光線の一部は透過する設計とし、着色層を設けることにより、外装部材の色目を調整することが可能であり、着色層を設けるには印刷によるものであり、
熱可塑性樹脂Aからなる層(A層)1と熱可塑性樹脂Bからなる層(B層)2を交互にそれぞれ30層以上積層した構造を含んでなり、A層とB層が厚み方向に交互にそれぞれ200層以上又は600層以上積層された構造が望ましく、積層数の上限値としては、1500層以下であって、電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムは、層対厚み10nm以上220nm未満の層の数が層対厚み220nm以上320nm以下の層の数より多いものであり、
厚みが100μmである、
自動車用エンブレム。」

(2)甲2の記載事項
甲2には、次の記載がある。
(2a)「【0001】
本発明は、ミリ波レーダの前方に配置される電波透過カバーなどに用いられる車両用加飾部材に関する。
・・・
【0024】
本発明の実施形態に係る車両用加飾部材は、透明部材と、加飾層と、樹脂接着層とからなる。
・・・
【0027】
透明部材は、前面と後面とを有する。透明部材は、車両用加飾部材の前側に配置される部材である。透明部材の後面は、平坦面であってもよいし凹凸部を有していても良い。透明部材の後面は凹凸部を有しているとよい。透明部材の後面に凹凸部を有している場合には、後面の凹凸部を含む部分に加飾層が形成されているとよい。凹凸部は、加飾層の模様や形状が立体的に見えるように、加飾層の模様や形状に合わせて凹凸形状が形成されている。凹凸部の凹部、凸部、又は凹部及び凸部の双方に加飾層を形成してもよく、 加飾層は、透明部材の後面に形成されて、透明部材の前面から透明部材を通じて視認可能となっている。加飾層は、透明部材の後面の全体に形成されていてもよいし、後面の一部に形成されていてもよい。加飾層は、1つの層から構成されていてもよいが、複数の層から構成されていてもよい。また、加飾層は、1つの色が付されていてもよいが、2以上の色が組み合わせて用いられていても良い。
・・・
【0052】
加飾層は、電波透過部の全体又は一部に形成される。加飾層はミリ波透過性を有していることが好ましい。電波透過部全体がミリ波透過性を有することになる。ミリ波透過性を有する加飾層は、0.05?0.1mmと薄い厚みであるとよく、また、ミリ波透過性の低い金属成分を含まないことがよい。金属成分の中でも、インジウムはミリ波を透過しやすいため、加飾層に用いることに適している。
・・・
【0067】
(実施例2)
本例のフロントグリル1は、図5に示すように、樹脂接着層5の後面に、ベース部6が形成されている。ベース部6は、透明部材2とは別の成形体である。ベース部6は、AESからなり、透明である。」
(2b)甲2には、以下の図が示されている。


(3)甲3の記載事項
甲3には、次の記載がある。
(3a)「【0001】
本発明は、車両に搭載されて車両周囲の障害物を検知するレーダの検知側に配置されるレドーム及びレドームの製造方法に関する。
・・・
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、製造に大規模又は特別な設備を必要とせず、製造過程における歩留まりを向上させ、レーダによる検知を妨げることなくメッキや金属蒸着等と実質的に同等な鏡面状の金属光輝面を有するレドームを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明のレドームは、車両に搭載されて車両周囲の障害物を検知するレーダの検知側に配置され、透明部材を備えると共に、透明部材のレーダに対向する対向面に金属塗装層が形成されたレドームであって、金属塗装層には、複数の箔状金属片が透明部材の上記対向面と各々略平行する姿勢で埋没しているという構成を採用する。
・・・
【0023】
次に、レドーム10の構成を、図2ないし図4を参照して説明する。
図2に示すように、レドーム10は、前面側から見た場合に金属鏡面状を呈する金属部10Aと、黒色を呈する黒色部10Bとを有している。
図3に示すように、レドーム10は、前面側から背面側に向かって、透明(着色透明を含む)部材11、第1着色層12、金属塗装層13、第2着色層14、接着剤層15及びベース部材16が順次配置され一体的に設けられた構成となっている。
【0024】
透明部材11は、前面側から見て略矩形を呈する板状部材であり、その背面側の金属部10Aに対応する部分には凹部11Aが形成されている。この凹部11Aは、前面から見た場合に金属部10Aを立体的に視認させるためのものである。
金属部10Aに立体感を付与する必要がない場合には、凹部11Aを形成する必要はない。また、透明部材11は、例えばポリカーボネート等の透明合成樹脂で形成され、その部材厚みは3mm?10mmである。
透明部材11の前面側及び背面側の表面は共に平滑面となるように成形され、凹部11Aの背面側表面である凹部表面(対向面)11B(図4参照)は、特に平滑面となるように成形されている。また、透明部材11の前面側の表面には擦過等に対する耐久性を向上させ傷等の発生を防止するいわゆるハードコート処理がなされている。
・・・
【0026】
金属塗装層13は、凹部表面11Bに厚み0.2μm以下で形成されており、いわゆるバインダーと称される透明(着色透明を含む)樹脂分13S内に複数の箔状金属片Mが埋没した構成となっている。但し、本実施形態では第1着色層12の背面側表面にも金属塗装層13が形成されており、このような構成であってもよい。
なお、金属塗装層13は、複数の箔状金属片Mと透明樹脂分13Sとを含有する塗料13L(図6(c)参照)の塗膜を乾燥させることで形成される。透明樹脂分13Sとしては、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)が使用される。
・・・
【0028】
第2着色層14は、金属部10Aにおける色調の調整及び金属塗装層13の保護のために用いられる塗装層であり、金属塗装層13の背面側表面に灰黒色の合成樹脂塗料を塗布して形成され、その厚みは20μm?30μmである。なお、第2着色層14は、灰黒色以外の色であってもよい。
・・・
【0030】
ベース部材16は、例えばABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)、AES(アクリロニトリル・エチレン・スチレン共重合合成樹脂)等の合成樹脂からなり、その部材厚みは3mm?10mmである。また、ベース部材16は、金型装置内に第1着色層12から接着剤層15までが形成された透明部材11をインサートし射出成形等を用いて接着剤層15の背面側表面に形成される。さらに、ベース部材16は、レドーム10をラジエータグリル1に取り付けるための取付片16Aを有しており、取付片16Aはレドーム10の背面側から紙面上下方向に突出した形状となっている。
・・・
【0051】
また、第2着色層14として灰黒色及び黒色以外の色を使用してもよい。前述の通り、金属部10Aの表面側から入射した光は箔状金属片M及び第2着色層14にて反射するが、第2着色層14の色を変更することで金属部10Aの色調を変化させることができる。」
(3b)甲3には、以下の図が示されている。

(4)甲4の記載事項
甲4には、次の記載がある。
(4a)「【0001】
本発明は、自動車、通信機器(携帯電話、PDA、リモコン、携帯情報端末、電子辞書、電子手帳等)、家電機器、建築部材等の外装等の部材に用いることができる、金属光沢調を示す積層体及び該積層体を具備する構造体に関する。
・・・
【0082】
実施例1?3
2mL容の試験管に、表1に示す高分子色素3mg及びクロロホルム0.448g(0.3mL)を仕込み、溶解させ、均一な溶液を得た。
【0083】
次に、撥水PP(ポリプロピレン)加工を施した灰色上質紙A(L*値 27.31、a*値 0.29、b*値 -0.24、光透過率 1.83%、膜厚 100μm)をガラス板(100mm×100mm、膜厚 200μm)上に貼り付けて、反射防止層を作製した。
【0084】
灰色上質紙の表面にマスキングテープを用いて長方形(10mm×50mm)のパターンを形成し、高分子色素のクロロホルム溶液を流し込み、25℃で、240分間乾燥させることで、高分子色素膜を含む金属光沢調積層体を作製した。」

(5)甲5の記載事項
甲5には、次の記載がある。
(5a)「【0001】
本発明は、透過光および/または反射光の両方で観察でき、意匠性に優れ、多くの用途に使用できる画像形成物を実現できる、熱転写記録方法および画像形成方法、ならびにその方法により得られる画像形成物に関する。
・・・
【0020】
また、本発明の別の態様による画像形成物は、被転写体上に、昇華型および/または溶融型の熱転写画像が形成された画像形成物であって、
カラー画像、黒色画像、白色画像、およびグレー画像よりなる群から選択される少なくとも1種が形成された画像領域と、その画像領域全体が覆われるように金属光沢画像が形成された画像領域とが、この順で被転写体上に形成されたものであり、
画像形成物表面の、カラー画像、黒色画像、白色画像、およびグレー画像よりなる群から選択される少なくとも1種が形成された画像領域と、それ以外の画像領域との光の反射率が、国際照明委員会(CIE)のL*a*b*表色系におけるL*値の差として、0?20である、ことを特徴とするものである。
・・・
【0071】
(黒色インキ層)
黒色インキ層としては、溶融熱転写記録における公知の熱転写層や、昇華熱転写記録における公知の染料層を、使用することができ、特に限定されるものではない。なお、黒色インキ層を構成する着色剤の含有比率を低下させたり、黒色インキ層の塗布量を少なくしたり、黒色顔料(カーボンブラック)と白色顔料を混ぜて任意のグレー色調に調整して、グレーインキ層を用意して、本発明に利用することが可能である。図6および7に示すように、グレーインキ層を金属光沢層と組み合わせて使用して、金属光沢層の透過率とグレーインキ層の透過率の差を利用した、意匠性の高い画像形成物を形成することもできる。この画像形成物は、光透過量を調整した製品となり、例えば、スモークガラス(スモークフィルム)のような自動車リアウィンドウや、窓ガラスのような用途に使用することができる。」

2-2 対比・判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム」は、「電磁波を吸収しない無機化合物で構成され、金属や重金属などを含ま」ないものであり、また、「可視光線の一部は透過する設計とし」たものであるから、半透明ということができる。
したがって、甲1発明の「電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム」と、本件発明1の「電波透過性を有し且つ金属成分を含まない、表側面にエンボス模様が形成された半透明のフィルム」とは、「電波透過性を有し且つ金属成分を含まない半透明のフィルム」の点で共通するものといえる。
(イ)甲1発明の「電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム」は、「その片面または両面の表面に着色層が形成され、可視光線の一部は透過する設計とし、着色層を設けることにより、外装部材の色目を調整することが可能であり、着色層を設けるには印刷によるものであ」るところ、印刷により印刷膜が得られることは技術的に明らかであるから、甲1発明の上記「着色層」は、電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムの面に形成された着色のある印刷膜ということもできる。
したがって、甲1発明の上記「着色層」と、本件発明1の「前記フィルムの裏側面に形成されたグレーの印刷膜又は塗装膜」とは、上記(ア)をも踏まえると、「前記フィルムの面に形成された着色のある印刷膜又は塗装膜」の点で共通するものといえる。
(ウ)甲1発明の「自動車用エンブレム」は、「ポリメチルメタクリレート層、黒色インキ層、透明の印刷層、電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム、アクリロニトリル・エチレン・スチレン層を備え」るものであって、「磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムの両面に透明の印刷層を印刷し、金属光沢調に見せない部分は光を透過しない黒色インキ層の印刷層をさらに設けたフィルムを、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)と一体成形し、続いてアクリロニトル・エチレン・スチレン(AES)と一体成形して得るものであ」るところ、上記「アクリロニトル・エチレン・スチレン(AES)」が、「自動車用エンブレム」における、ベース部材を構成することは技術常識であるから(必要ならば、甲2(摘示(2a))に記載されたAESからなるベース部6(段落【0067】)、甲3(摘示(3a))に記載されたAESからなるベース部材16(段落【0030】)など参照)、甲1発明の「自動車用エンブレム」の「アクリロニトル・エチレン・スチレン層」側の面は、「電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム」の裏側面であり、「ポリメチルメタクリレ-ト層」側の面は、「電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム」の表側面であるといえる。
そして、甲1発明の「ポリメチルメタクリレ-ト層」が光透過性であることは技術的に明らかであるから、甲1発明の「電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムの両面に透明の印刷層を印刷し、金属光沢調に見せない部分は光を透過しない黒色インキ層の印刷層をさらに設けたフィルム」と「一体成形」される「ポリメチルメタクリレ-ト層」は、本件発明1の「光透過性を有し、前記フィルムの表側面を被覆するように前記フィルムと一体成形された表面部材」に相当するものといえる。
(エ)甲1発明の「自動車用エンブレム」のは、本件発明1の「車両用オーナメント」に相当する。

したがって、本件発明1と甲1発明とは、
「電波透過性を有し且つ金属成分を含まない半透明のフィルムと、
前記フィルムの面に形成された着色のある印刷膜又は塗装膜と、
光透過性を有し、前記フィルムの表側面を被覆するように前記フィルムと一体成形された表面部材と、
を備える、車両用オーナメント。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1は、
「フィルム」が、「表側面にエンボス模様が形成された」ものであって、「数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されてなる」ものであり、
「着色のある印刷膜又は塗装膜」が、フィルムの「裏側面」に形成された「グレーの印刷膜又は塗装膜」であり、
「フィルム」と「着色のある印刷膜又は塗装膜」との相互関係について、「前記グレーの印刷膜又は塗装膜は、前記フィルムの表側面から入射して裏側面まで透過した光を表側面に反射させ、前記フィルムは、前記グレーの印刷膜又は塗装膜が前記透過した光を表側面に反射させることにより、該グレーの印刷膜又は塗装膜が形成されていない場合に比べてより鮮やかな金属調光沢を呈する」ものとして構成されているのに対し、
甲1発明は、
「フィルム」が、「熱可塑性樹脂Aからなる層(A層)1と熱可塑性樹脂Bからなる層(B層)2を交互にそれぞれ30層以上積層した構造を含んでなり、A層とB層が厚み方向に交互にそれぞれ200層以上又は600層以上積層された構造が望ましく、積層数の上限値としては、1500層以下であって」、「層対厚み10nm以上220nm未満の層の数が層対厚み220nm以上320nm以下の層の数より多いものであ」り、
「着色のある印刷膜又は塗装膜」が、フィルムの「片面または両面の表面」に形成された「着色層」であり、
「フィルム」と「着色のある印刷膜又は塗装膜」との相互関係について、「着色層を設けることにより、外装部材の色目を調整することが可能であ」るものとして構成されている点。

イ 判断
上記相違点1について検討する。
(ア)本件明細書の「当該フィルムは、数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みパターンで積層されて成形されており、入射光がこれら各層表面で反射されることで自然な金属調光沢を呈することができる。」(段落【0025】)等の記載によれば、本件発明1の「フィルム」は、「数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されて」構成(以下「構成A」ということもある。)されることで、入射光がこれら各層表面で反射されて自然な金属調光沢を呈することが明らかである。
また、上記「フィルム」には、「表側面にエンボス模様が形成され」て構成(以下「構成B」ということもある。)されるものであるところ、本件明細書の「光遮断膜123で描かれる模様に合わせて、膜状体12の表側面にエンボス(浮き出し)模様124を形成してもよい。これにより、光遮断膜123で描かれた模様を立体的に表して意匠性をさらに高めることができる。」(段落【0031】)等の記載によれば、上記「フィルム」は、「エンボス模様が形成され」ることにより、意匠性をさらに高めたものということができる。
さらに、上記「フィルム」の「裏側面」には、「グレーの印刷膜又は塗装膜」が「形成され」て構成(以下「構成C」ということもある。)されるものであるところ、本件明細書の「膜状体12の裏側面に光沢膜122を形成してもよい。・・・光沢膜122は光沢グレーであればよく、必要に応じて色彩や模様を付ければよい。膜状体12の裏側面に光沢膜122を形成することにより、膜状体12の表側面から入射して裏側面まで透過した光が表側面に反射して、膜状体12のうち光沢膜122が形成された部分はより鮮やかな金属調光沢を帯びるようになる。」(段落【0028】)等の記載によれば、上記「フィルム」は、その「裏側面」に「形成され」た「グレーの印刷膜又は塗装膜」により、より鮮やかな金属調光沢を帯びるように構成されたものということができる。
そして、上記構成Aの「さまざまな層厚みで積層され」た「ポリマー薄膜」は、上記構成Bの「エンボス模様」が「形成され」ることで、その形成部位での光の入射角及び反射角が部分的に変化することが技術的に明らかであって、さらに、上記構成Cの「グレーの印刷膜又は塗装膜」が「形成され」ることで、裏側面まで透過した光の反射の態様も変化することが技術的に明らかである。したがって、本件発明1は、少なくとも上記構成A、構成B及び構成Cが技術的に密接に関連することで、「前記グレーの印刷膜又は塗装膜は、前記フィルムの表側面から入射して裏側面まで透過した光を表側面に反射させ、前記フィルムは、前記グレーの印刷膜又は塗装膜が前記透過した光を表側面に反射させることにより、該グレーの印刷膜又は塗装膜が形成されていない場合に比べてより鮮やかな金属調光沢を呈する」ものとして構成(以下「構成D」ということもある。)されたものといえる。
(イ)他方、甲1発明の「電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム」は、「熱可塑性樹脂Aからなる層(A層)1と熱可塑性樹脂Bからなる層(B層)2を交互にそれぞれ30層以上積層した構造を含んでなり、A層とB層が厚み方向に交互にそれぞれ200層以上又は600層以上積層された構造が望ましく、積層数の上限値としては、1500層以下であって」、「層対厚み10nm以上220nm未満の層の数が層対厚み220nm以上320nm以下の層の数より多いものであ」り、「層対厚み10nm以上220nm未満の層」及び「層対厚み220nm以上320nm以下の層」が含まれることから、甲1発明においても、本件発明1と同様、ナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されているということができる。
また、甲1発明の「電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム」は、「可視光線の一部は透過する設計とし、着色層を設けることにより、外装部材の色目を調整することが可能」であるところ、上記「電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム」には、「その片面または両面の表面に着色層が形成され」るものであるから、本件発明1とは、フィルムの面を着色した程度の構造面について一部共通したものということもできる。
しかし、上記「着色層」は、あくまでも、上記「電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム」における「その片面または両面」に「形成され」て「色目を調整する」ものであることからして、上記「着色層」を、上記「電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム」の裏側面に配置することを前提として、表側面から入射して裏側面まで透過した光を表側面に反射させることを企図して設けたものとまでいうことはできないし、より鮮やかな金属調光沢を呈するような着色を目的としたものか、その態様も明らかでない。
また、甲1には、電磁波透過性部材を、電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムを含む成形体とし、上記電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム以外にエンボス層を含んで構成すること(段落【0027】)、及び、上記電磁波透過性部材を得る方法の例として、印刷を施した電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムとアクリル等の樹脂とを一体成形し、さらには、スチレン等の樹脂と該当フィルムを挟む形で、曲面や複数の平面が組み合わさった形状を有している立体的な成形体を一体成形すること(段落【0047】)が記載されており、甲1発明の「自動車用エンブレム」を、「エンボス層」を含んで構成することや、立体的な成形体として構成することが記載ないし示唆されてはいるものの、その具体的な態様は明らかでない。
(ウ)以上を踏まえて検討する。
a 甲2に記載された技術事項の適用について
(a)甲2(摘示(2a)(2b))には、「ミリ波レーダの前方に配置される電波透過カバーなどに用いられる車両用加飾部材」に関し(段落【0001】)、車両用加飾部材を透明部材と加飾層と樹脂接着層とから構成すること(段落【0024】)、透明部材を車両用加飾部材の前側に配置するとともに、透明部材の後面に凹凸部を形成することで、加飾層の模様や形状が立体的に見えるように構成すること(段落【0027】)、加飾層を0.05?0.1mmと薄い厚みとし、金属成分の中でもミリ波を透過しやすいインジウムを用いて構成すること(段落【0052】)が記載されている(以下「甲2に記載された技術事項」ということもある。)。
(b)甲2に記載された技術事項を検討するに、甲2に記載された「車両用加飾部材」と甲1発明の「自動車用エンブレム」とは、「車両用の加飾部材」という点において共通するものということもできるが、甲2に記載された「加飾層」は、インジウムといった金属成分を含むものであって、甲1発明の「電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム」のように「金属や重金属などを含まず」に構成したものでなく、また、「熱可塑性樹脂Aからなる層(A層)1と熱可塑性樹脂Bからなる層(B層)2を交互にそれぞれ30層以上積層した構造を含ん」構成されたものでもないから、甲2に記載された「加飾層」と甲1発明の「電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム」とは、金属成分の有無を含めた層の基本的な構造が相違していることが明らかである。
また、甲1発明の「電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム」は「可視光線の一部は透過する設計とし、着色層を設けることにより、外装部材の色目を調整することが可能であ」る一方で、甲2に記載された「加飾層」は、そもそもインジウムといった金属成分を含んで構成されることから、それら部材の光の透過及び反射の態様に加え、それら部材に求められる機能自体が異なることも技術的に明らかである。
したがって、「電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム」を備えて構成される甲1発明に、上記「電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム」とはその基本的な構造及び機能が異なる上記「加飾層」含む甲2に記載された技術事項を適用する動機付けが存在するということはできない。
(c)また、仮に、甲1発明に甲2に記載された技術事項を適用することができたとしても、甲2に記載された「加飾層」は、そもそもインジウムといった金属成分を含むものであって、本件発明1の「フィルム」のように「金属成分を含まない」で構成したものではないし、また、「数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されて」構成されたものではなく、さらに、「裏側面に」「グレーの印刷膜又は塗装膜」が「形成された」ものでもない。
要するに、甲2には、本件発明1における上記構成Bと一部共通する技術は記載されているが、上記構成Bと密接に関連する上記構成A及構成C、加えて上記構成Dについて記載されるものではない。
したがって、甲1発明に甲2に記載された技術事項を適用しても、上記相違点1に係る本件発明1の構成には至らない。

b 甲3に記載された技術事項の適用について
(a)甲3(摘示(3a)(3b))には、「車両に搭載されて車両周囲の障害物を検知するレーダの検知側に配置されるレドーム」に関し(段落【0001】)、レーダによる検知を妨げることなくメッキや金属蒸着等と実質的に同等な鏡面状の金属光輝面を有するレドームを提案することを課題として(段落【0008】)、かかる課題を解決するために、レドームは、車両に搭載されて車両周囲の障害物を検知するレーダの検知側に配置され、透明部材を備えると共に、透明部材のレーダに対向する対向面に金属塗装層が形成されたレドームであって、金属塗装層には、複数の箔状金属片が透明部材の上記対向面と各々略平行する姿勢で埋没しているという構成を採用すること(段落【0009】)、より具体的には、レドーム10は、前面側から背面側に向かって、透明部材11、第1着色層12、金属塗装層13、第2着色層14、接着剤層15及びベース部材16が順次配置され一体的に設けられた構成となっていること(段落【0023】)、透明部材11は、その背面側の金属部10Aに対応する部分には凹部11Aが形成されており、この凹部11Aは、前面から見た場合に金属部10Aを立体的に視認させるためのものであること(段落【0024】)、金属塗装層13は、凹部表面11Bに厚み0.2μm以下で形成されており、いわゆるバインダーと称される透明樹脂分13S内に複数の箔状金属片Mが埋没した構成となっていること(段落【0026】)、金属部10Aの表面側から入射した光は箔状金属片M及び第2着色層14にて反射するが、第2着色層14の色を変更することで金属部10Aの色調を変化させることができること(段落【0051】)が記載されている(以下「甲3に記載された技術事項」ということもある。)。
(b)甲3に記載された技術事項を検討するに、上記甲3に記載された「レドーム」と甲1発明の「自動車用エンブレム」とは、「自動車用エンブレム(レドーム)」という点において共通するものということができるが、甲3に記載された「金属塗装層」は、複数の箔状金属片が埋没された構成であって、甲1発明の「電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム」のように「金属や重金属などを含まず」に構成したものでなく、また、「熱可塑性樹脂Aからなる層(A層)1と熱可塑性樹脂Bからなる層(B層)2を交互にそれぞれ30層以上積層した構造を含ん」構成されたものでもないから、甲3に記載された「金属塗装層」と甲1発明の「電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム」とは、金属成分の有無を含めた層の基本的な構造が相違していることが明らかである。
また、甲1発明の「電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム」は「可視光線の一部は透過する設計とし、着色層を設けることにより、外装部材の色目を調整することが可能であ」る一方で、甲3に記載された「金属塗装層」は、そもそも複数の箔状金属片が埋没された構成とされることから、それら部材の光の透過及び反射の態様に加え、それら部材に求められる機能自体が異なることも技術的に明らかである。
したがって、「電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム」を備えて構成される甲1発明に、上記「電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルム」とはその基本的な構造及び機能が異なる上記「金属塗装層」含む甲3に記載された技術事項を適用する動機付けが存在するということはできない。
まして、甲1発明は、「金属や重金属などを含まず」に構成するものであるところ、甲3に記載された技術事項は、そもそも、金属塗装層に複数の箔状金属片を埋没することが課題解決手段として採用されているのであるから(段落【0009】)、かかる技術の適用には、むしろ阻害要因が存在するということもできる。
(c)また、仮に、甲1発明に甲3に記載された技術事項を適用することができたとしても、甲3に記載された「金属塗装層」は、そもそも複数の箔状金属片を埋没しているのであって、本件発明1の「フィルム」のように「金属成分を含まない」で構成したものでないし、また、「数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されて」構成されたものでもない。
要するに、甲3には、本件発明1における上記構成B及びCと一部共通する技術は記載されているが、上記構成B及びCと密接に関連する上記構成A、加えて上記構成Dについて記載されるものではない。
したがって、甲1発明に甲3に記載された技術事項を適用しても、上記相違点1に係る本件発明1の構成には至らない。

c 甲4及び甲5に記載された技術事項の適用について
(a)甲4(摘示(4a))には、自動車等の外装等の部材に用いることができる、金属光沢調を示す積層体及び該積層体を具備する構造体に関し(段落【0001】)、灰色上質紙Aをガラス板上に貼り付けて、反射防止層を作製すること(段落【0083】)、灰色上質紙の表面に長方形のパターンを形成し、高分子色素のクロロホルム溶液を流し込み、25℃で、240分間乾燥させることで、高分子色素膜を含む金属光沢調積層体を作製したこと(段落【0084】)が記載され(以下「甲4に記載された技術事項」ということもある。)、また、甲5(摘示(5a))には、透過光および/または反射光の両方で観察でき、意匠性に優れ、多くの用途に使用できる画像形成物に関し(段落【0001】)、画像形成物を、カラー画像、黒色画像、白色画像、およびグレー画像よりなる群から選択される少なくとも1種が形成された画像領域と、その画像領域全体が覆われるように金属光沢画像が形成された画像領域とが、この順で被転写体上に形成されたものとして構成すること(段落【0020】)、グレーインキ層を金属光沢層と組み合わせて使用して、金属光沢層の透過率とグレーインキ層の透過率の差を利用した、意匠性の高い画像形成物を形成すること(段落【0071】)が記載されている(以下「甲5に記載された技術事項」ということもある。)。
(b)甲4及び甲5に記載された技術事項を検討するに、それら技術事項は、本件発明1の上記構成Cと、金属調光沢を帯びるようにグレー(灰色)の形成部位を設ける点において、一部共通した技術ということもできるが、甲4及び甲5には、本件発明1の上記構成A及びBについて記載されておらず、加えて上記構成Dについて記載されるものではない。
したがって、甲1発明に甲4及び甲5に記載された技術事項が適用し得たとしても、上記相違点1に係る本件発明1の構成には至らない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は甲1発明及び甲2?5に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2?4について
本件発明2?4は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定したものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明及び甲2?5に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明5は、上記(1)で述べた、上記相違点1に係る本件発明1の構成を全て含んで発明を構成するものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明及び甲2?5に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人の主張
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
[申立理由]
本件発明1?5は、特許請求の範囲の記載が以下(1)?(3)の点で特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。したがって、本件発明1?5に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである(特許異議申立書29頁2行?30頁11行)。
(1)本件発明1及び本件発明5では、発明特定事項として「印刷膜又は塗装膜」が「グレー」であるとしている。本件明細書の段落【0027】?【0028】の記載を見ても、色相や彩度についての規定がないため、彩度が「0」以外のものも含みうるのか否かが明確ではない。
(2)本件発明1及び本件発明5では、発明特定事項として「数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されてなる」との記載がある。しかしながら、本件明細書の段落【0025】の記載があるのみで、「東レ株式会社製のフィルムP!CASUS(登録商標)」以外に当該要件を満たすフィルムが明確でない。また、「数百から数千」との発明特定事項はその上限及び下限が定かではなく、「ナノレベル」との用語についても、その上限及び下限が不明確であり、「さまざまな層厚み」との記載についても、具体的にどのような組み合わせの層厚みであるのか、含みうる層厚みの上限及び下限が明確でなく、発明の範囲が不明確である。
(3)上記(1)(2)のとおり、本件発明1?5における「グレー」、「数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されてなる」という発明特定事項は、いかなるものが上記の発明特定事項に該当するのか、本件発明の詳細な説明及び図面、当業者の出願時の技術常識を参酌しても把握することができないから、本件発明1?5は不明確である。

2 当審の判断
(1)本件明細書の記載
本件明細書には、以下の記載がある。
「【0025】
膜状体12は、電波透過性を有し、さらに、光を複雑に反射して特別な光沢や質感を呈するような半透明の素材でできている。そのような膜状体12として、例えば、東レ株式会社製のフィルムP!CASUS(登録商標)を用いることができる。当該フィルムは、数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みパターンで積層されて成形されており、入射光がこれら各層表面で反射されることで自然な金属調光沢を呈することができる。しかも当該フィルムは金属成分を含んでいないため、電波透過性に優れる。
・・・
【0027】
膜状体12の裏側面に光沢膜122を形成してもよい。光沢膜122の厚みは任意である。光沢膜122の明度は0%よりも大きく100%よりも小さければよい。すなわち、光沢膜122は光沢グレーであればよく、必要に応じて色彩や模様を付ければよい。膜状体12の裏側面に光沢膜122を形成することにより、膜状体12の表側面から入射して裏側面まで透過した光が表側面に反射して、膜状体12のうち光沢膜122が形成された部分はより鮮やかな金属調光沢を帯びるようになる。
【0028】
光沢膜122の明度の階調を変えることで膜状体12の見た目が違ってくる。例えば、光沢膜122を淡いグレーにすると、膜状体12は明るめの金属色を放つようになる。一方、光沢膜122を濃いグレーにすると、膜状体12は暗めの金属色を放つようになる。したがって、膜状体12に対する所望の色調に応じて光沢膜122の明度を適宜決定すればよい。」

(2)検討
特許法36条第6項第2号は、特許請求の範囲の記載において、特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨を規定する。同号がこのように規定した趣旨は、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、特許発明の技術的範囲、すなわち、特許によって付与された独占の範囲が不明となり、第三者に不測の不利益を及ぼすことがあるので、そのような不都合な結果を防止することにある。
そして、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるかという観点から判断されるべきである。(例えば、知財高裁平成20年(行ケ)第10107号、同平成29年(行ケ)第10138号等参照。)
以上を踏まえて検討する。
ア 上記「1(1)」の主張について
本件明細書の段落【0027】の「光沢膜122の明度は0%よりも大きく100%よりも小さければよい。すなわち、光沢膜122は光沢グレーであればよく」との記載、段落【0028】の「光沢膜122を淡いグレーにすると、膜状体12は明るめの金属色を放つようになる。一方、光沢膜122を濃いグレーにすると、膜状体12は暗めの金属色を放つようになる。したがって、膜状体12に対する所望の色調に応じて光沢膜122の明度を適宜決定すればよい。」との記載は、「グレー」である「光沢膜122」の明度が0%よりも大きく100%よりも小さければよく、当該明度は所望の色調に応じて適宜決定すればよいことを記載したものと理解できる。
上記「光沢膜122」は本件発明1?5の「印刷膜又は塗装膜」の実施形態として記載されたものであるから、本件発明1?5の「印刷膜又は塗装膜」は、その実施形態において、明度が0%よりも大きく100%よりも小さい「グレー」であることが理解できる。
また、当該「グレー」の語義は、「灰色。ねずみ色。」(広辞苑第六版)であり、「灰色」の語義は「灰のような薄黒い色。鼠色。」(広辞苑第六版)であり、「鼠色」の語義は「鼠の毛のような、青ばんだ淡い黒色。灰色。ねずいろ。」(広辞苑第六版)であるところ、申立人の主張する色相や彩度についての規定がなくとも、一般的に、「グレー」なる色は、灰のような薄黒い色又は青ばんだ淡い黒色として他の色と識別されているといえる。
したがって、「印刷膜又は塗装膜」が「グレー」であるとの構成は、本件明細書の記載を考慮し、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である、とはいえないから、申立人の上記主張は理由がない。

イ 上記「1(2)」の主張について
本件明細書の段落【0025】には、「当該フィルムは、数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みパターンで積層されて成形されており、入射光がこれら各層表面で反射されることで自然な金属調光沢を呈することができる。」と記載されているから、本件発明1?5の「数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されてなるフィルム」は、上記「入射光がこれら各層表面で反射されることで自然な金属調光沢を呈することができる」ように構成されていることが明らかである。
そして、「数百」及び「数千」における「数」の語義は、「少ない数を漠然と示す語。」(広辞苑第六版)であるところ、申立人の主張する上下限の特定がなくとも、「数百から数千」について、「入射光がこれら各層表面で反射されることで自然な金属調光沢を呈することができる」との作用を奏する程度の百?千の位を用いる数値範囲と理解することができる。
また、「ナノレベル」の「ナノ」が「nmの尺度」であることは技術常識に照らして明らかであり、「さまざまな」の語義は「あれこれ異なっているさま。いろいろ。しゅじゅ。」(広辞苑第六版)であって、「いろいろ」の語義は「種類の多いさま。さまざま。くさぐさ。種々。」(広辞苑第六版)であるから、「さまざまな層厚み」は、「複数の層厚みの種類を含」むものと理解できる。
したがって、本件発明1?5の「数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されてなる」こと(以下「構成a」ということもある。)は、入射光がこれら各層表面で反射されることで自然な金属調光沢を呈することができるとの作用を奏する程度の百?千の位を用いる数値範囲であって、nmの尺度レベルのポリマー薄膜が、複数の層厚みの種類を含んで積層されてなることを特定するものと理解できる。
また、申立人は東レ株式会社製のフィルムP!CASUS(登録商標)以外に上記構成aの要件を満たすフィルムが明確でない旨主張するが、本件明細書の段落【0025】には、上記構成aを満たす「フィルム」の実施例として、東レ株式会社製のフィルムP!CASUS(登録商標)が示されている。また、かかる実施例以外のフィルムについても適用可能であることは当業者に明らかであり、この実施例から類推して当業者が上記構成aの要件を満たすフィルムを構成できないとまでいうこともできない。要するに、単に実施例の数が少ないという理由だけで明細書の記載に不備があるとはいえない。
したがって、「数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されてなる」との構成は、本件明細書の記載を考慮し、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である、とはいえないから、申立人の上記主張は理由がない。

ウ 上記「1(3)」の主張について
上記ア、イのとおり、本件発明1?5における「グレー」、「数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されてなる」という発明特定事項について、いかなるものが発明特定事項に該当するのか、本件発明の詳細な説明及び図面、当業者の出願時の技術常識を参酌しても把握することができない、ということはできない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本件取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件請求項1?5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
車両用オーナメント
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用部材に関し、特に、自動車のオーナメントなどに好適な車両用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安全性向上や利便性向上を目的として車両(自動車)にさまざまなレーダーシステムが搭載されている。その一例としてレーダークルーズコントロールがある。レーダークルーズコントロールは、レーダーセンサーから車両前方にミリ波レーダーを照射して先行車からの反射波を受けることで先行車との速度差や車間距離を認識し、自動で車両の走行速度をコントロールするシステムである。
【0003】
レーダーセンサーは、レーダーの指向性を考慮して車両の前面中央、それもフロントグリル奥などの目立たない場所に隠されて配置される。ところが、車両の前面中央にはCI(Corporate Identity)マークなどを表示するオーナメントあるいはフロントエンブレムが配置されることが多い。このため、レーダーセンサーとオーナメントの配置位置が重なってレーダーセンサーの電波放射面がオーナメントによって覆われてしまうことがある。
【0004】
オーナメントは、意匠性を考慮して金属または金属調光沢を有する素材で製作される。しかし、ステンレスやニッケルメッキなどを使用したオーナメントは、レーダーセンサーに入放射される電波を吸収・拡散して弱めてしまう。この問題に対して、CIマークをかたどる非金属素材の表面にインジウム(In)を蒸着することで、金属調光沢を帯びつつ電波透過性に優れたオーナメントを実現している(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-273216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インジウムは高価なレアメタルであることから、オーナメントにインジウムを使用することはオーナメントのコスト高の要因となる。また、インジウムは銀白色の金属調光沢を呈するが、色調を明るめまたは暗めにするといった調整が困難である。このため、インジウムを使用したオーナメントは、色調が単調で所望の意匠性を実現することが困難である。
【0007】
上記問題に鑑み、本発明は、自動車のオーナメントに好適な車両用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に従った例示的な車両用オーナメントは、電波透過性を有し且つ金属成分を含まない、表側面にエンボス模様が形成された半透明のフィルムと、フィルムの裏側面に形成されたグレーの印刷膜又は塗装膜と、光透過性を有し、フィルムの表側面を被覆するようにフィルムと一体成形された表面部材とを備え、前記フィルムは、数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されてなるフィルムであり、前記グレーの印刷膜又は塗装膜は、前記フィルムの表側面から入射して裏側面まで透過した光を表側面に反射させ、前記フィルムは、前記グレーの印刷膜又は塗装膜が前記透過した光を表側面に反射させることにより、該グレーの印刷膜又は塗装膜が形成されていない場合に比べてより鮮やかな金属調光沢を呈するものである。これによると、意匠性および電波透過性に優れた車両用オーナメントを実現することができる。そして、フィルムは金属成分を含まないから、車両用オーナメントの電波透過性をより高めることができ、あるいは、インジウムなどの高価なレアメタルを使用せずに済むため車両用オーナメントのコストを低減することができる。また、グレーの印刷膜又は塗装膜は、印刷膜又は塗装膜であるから、容易に形成することができる。
【0009】
好ましくは、前記フィルムの厚みは100?200μmである。
【0010】
好ましくは、前記フィルムは、前記グレーの印刷膜又は塗装膜が該フィルムの裏側面に形成されることで、該フィルムの表側面から見たときに金属色を示すためのものであり、前記グレーの印刷膜又は塗装膜の明度を変えることにより、前記金属色の明度を調整することができる。これによると、意匠性および電波透過性に優れた車両用オーナメントを実現することができる。
【0011】
具体的には、車両用オーナメントの少なくとも一部は車載レーダー装置の送受信電波領域内に配置される部材である。これによると、前面中央にレーダーセンサーが搭載された車両のオーナメントとして当該車両用オーナメントを使用することができる。
【0012】
本発明の一局面に従った例示的な車両用オーナメントは、電波透過性を有し且つ金属成分を含まない、表側面にエンボス模様が形成された半透明のフィルムと、前記フィルムの裏側面に形成されたグレーの印刷膜又は塗装膜と、前記フィルムの表側面に塗装により部分的に形成された黒色の光遮断膜と、光透過性を有し、前記フィルムの表側面を被覆するように前記フィルムと一体成形された表面部材と、前記グレーの印刷膜又は塗装膜の裏側面を被覆するように前記フィルムと一体成形されたベース部材と、を備え、前記フィルムは、数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されてなるフィルムであり、前記グレーの印刷膜又は塗装膜は、前記フィルムの表側面から入射して裏側面まで透過した光を表側面に反射させ、前記フィルムは、前記グレーの印刷膜又は塗装膜が前記透過した光を表側面に反射させることにより、該グレーの印刷膜又は塗装膜が形成されていない場合に比べてより鮮やかな金属調光沢を呈するものである。これによると、意匠性および電波透過性に優れた車両用オーナメントを実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、自動車のオーナメントに好適な意匠性および電波透過性に優れた車両用オーナメントを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態に係る車両用部材で製作されたオーナメントを有する車両の斜視図
【図2】一実施形態に係る車両用部材の分解斜視図
【図3】図2に示した車両用部材の断面図
【図4】一実施形態に係る車両用部材の製造方法のフローチャート
【図5A】図4のフローチャートの各工程を説明する模式図
【図5B】図5Aに続く図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0016】
なお、発明者らは、当業者が本発明を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。また、図面に描かれた各部材の寸法、厚み、細部の詳細形状などは実際のものとは異なることがある。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用部材で製作されたオーナメントを有する車両の斜視図である。車両100の前面部分にフロントグリル101が配置されている。オーナメント102は、フロントグリル101の幅方向の中央、すなわち、車両100の前面の車幅中央に配置されている。
【0018】
車両100は、先行車などの車両前方の障害物を検知するためのレーダーセンサー(車載アンテナ)103を備えている。レーダーセンサー103は、車両前方にミリ波レーダーを照射して先行車からの反射波を受けることで先行車との速度差や車間距離を認識する。
【0019】
レーダーセンサー103は、オーナメント102から10数cm程度奥まった位置に配置されている。すなわち、オーナメント102は、レーダーセンサー103の電波放射面、しかもレーダーセンサー103から比較的近い位置に配置されている。したがって、レーダーセンサー103から車両前方に放射される電波、および車両前方の障害物からの反射波の大部分はオーナメント102を透過することとなる。このため、レーダーセンサー103に入放射される電波がオーナメント102で吸収・拡散されて弱められることがないように、オーナメント102は高い電波透過性を有する部材で形成する必要がある。
【0020】
本実施形態に係る車両用部材は、高い電波透過性を有し、また、意匠性に優れ、オーナメントなどの人目に付きやすい車両外装への使用に好適な部材である。以下、本実施形態に係る車両用部材の構造および製造方法について詳細に説明する。
【0021】
≪車両用部材の構造≫
まず、本実施形態に係る車両用部材の構造について説明する。図2は、上記のオーナメント102に用いられる車両用部材の分解斜視図である。図3は、その断面図である。なお、後述するように車両用部材は各要素が互いに密着して一体成形されているが、図3では便宜上、各要素を分離して描いている。
【0022】
車両用部材10は、表面部材11と、膜状体12と、ベース部材13とからなる。膜状体12は、表面部材11とベース部材13とで挟まれている。車両用部材10の全体形状は任意であり、例えば、図1のようにオーナメント102として使用する場合、車両用部材10を略楕円形状にすることができる。
【0023】
表面部材11は、車両100の外部に晒される部材であり、膜状体12の表側面を保護するために設けられる。また、表面部材11は、膜状体12の光沢を損ねないように光透過性を有する素材でできており、その表面は滑らかにされている。表面部材11として、例えば有機ガラスを用いることができる。有機ガラスの中でも特にポリカーボネート(PC)は、透明性(高光線透過率)、耐熱性、耐衝撃性などに優れ、表面部材11の素材として好適である。
【0024】
なお、表面部材11の厚みは任意である。また、表面部材11の厚みは均一でなくてもよい。例えば、図1のようにオーナメント102に車両用部材10を用いる場合、表面部材11の中央部を最厚にして縁部にいくほどだんだん薄くなるような略球面状にしてもよい。このように、表面部材11は、単に膜状体12を保護するだけではなく、それ自体に立体形状(例えば、丸みを帯びた形状)を施して意匠性を持たせるようにしてもよい。
【0025】
膜状体12は、電波透過性を有し、さらに、光を複雑に反射して特別な光沢や質感を呈するような半透明の素材でできている。そのような膜状体12として、例えば、東レ株式会社製のフィルムP!CASUS(登録商標)を用いることができる。当該フィルムは、数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みパターンで積層されて成形されており、入射光がこれら各層表面で反射されることで自然な金属調光沢を呈することができる。しかも当該フィルムは金属成分を含んでいないため、電波透過性に優れる。
【0026】
膜状体12は、表面に傷が付きやすく、また、厚みが100?200ミクロン程度と薄いため破損しやすい。そのため、膜状体12は、外部環境に晒されるような外装部材としては不向きである。そこで、上述したように膜状体12を表面部材11で被覆して膜状体12が外部環境に晒されないように保護している。
【0027】
膜状体12の裏側面に光沢膜122を形成してもよい。光沢膜122の厚みは任意である。光沢膜122の明度は0%よりも大きく100%よりも小さければよい。すなわち、光沢膜122は光沢グレーであればよく、必要に応じて色彩や模様を付ければよい。膜状体12の裏側面に光沢膜122を形成することにより、膜状体12の表側面から入射して裏側面まで透過した光が表側面に反射して、膜状体12のうち光沢膜122が形成された部分はより鮮やかな金属調光沢を帯びるようになる。
【0028】
光沢膜122の明度の階調を変えることで膜状体12の見た目が違ってくる。例えば、光沢膜122を淡いグレーにすると、膜状体12は明るめの金属色を放つようになる。一方、光沢膜122を濃いグレーにすると、膜状体12は暗めの金属色を放つようになる。したがって、膜状体12に対する所望の色調に応じて光沢膜122の明度を適宜決定すればよい。
【0029】
一方、膜状体12の表側面において所定の模様を描くように部分的に光遮断膜123を形成してもよい。光遮断膜123の厚みは任意である。光遮断膜123は、文字通り光を遮断する膜であり、色は任意である。例えば、光遮断膜123は、黒一色にしてもよく、あるいは部分的に色調を変えてもよく、さらにグラデーションを施してもよい。すなわち、光遮断膜123が形成された部分とそうでない部分とで明度および/または彩度が異なるようにすればよい。これにより、光遮断膜123が形成された部分とそうでない部分とのコントラストが際立つようになり、光遮断膜123で描かれた模様を目立たせることができる。
【0030】
光遮断膜123を膜状体12の表面側に部分的に形成することで、光遮断膜123が形成されていない部分のみが金属色を放つようにすることができる。例えば、膜状体12の表側面において光遮断膜123でCIマークの反転画像を形成することで、あたかも金属でできたCIマークが取り付けられているかのように見せることができる。逆に、膜状体12の表側面において光遮断膜123でCIマークを形成することで、CIマークがくり抜かれた金属プレートのように見せることができる。
【0031】
光遮断膜123で描かれる模様に合わせて、膜状体12の表側面にエンボス(浮き出し)模様124を形成してもよい。これにより、光遮断膜123で描かれた模様を立体的に表して意匠性をさらに高めることができる。
【0032】
なお、膜状体12の表側面にエンボス模様124を形成した場合には、表面部材11およびベース部材13において膜状体12と接する面にも同じエンボス模様が形成される。
【0033】
また、光遮断膜123で描かれる模様とエンボス模様124とを一致させなくてもよい。光遮断膜123とエンボスとでそれぞれ別の模様を形成することにより、膜状体12が違った印象の意匠性を呈することとなる。
【0034】
ベース部材13は、膜状体12を裏側面から支持する部材である。上述したように膜状体12は薄いフィルム状部材であるため、表面部材11とベース部材13とで挟み込んで保護・補強することが望ましい。ベース部材13の厚みは任意である。また、ベース部材13の裏側面には突起やボスなどを設けることができる。ベース部材13として、例えば樹脂を用いることができる。樹脂の中でも特にABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂やAES(Acrylonitrile-Ethylene-Styrene)樹脂などは熱可塑性、剛性、硬度
などに優れ、ベース部材13の素材として好適である。
【0035】
≪車両用部材の製造方法≫
次に、本実施形態に係る車両用部材の製造方法について説明する。図4は、上記のオーナメント102の製造方法のフローチャートである。図5Aおよび図5Bは、図4のフローチャートの各工程を説明する模式図である。
【0036】
まず、膜状体12の元となるフィルム(例えば、東レ株式会社製のP!CASUS)を適当な大きさにカットする(工程S1)。
【0037】
次に、フィルムの裏側面に光沢膜122を形成する(工程S2)。例えば、印刷または塗装により光沢膜122を形成することができる。
【0038】
次に、フィルムの表側面に部分的に光遮断膜123を形成する(工程S3)。例えば、印刷または塗装により光遮断膜123を形成することができる。ただし、フィルムの表面側の所定位置に光遮断膜123が形成されるようにきちんと位置決めして印刷または塗装を行う。
【0039】
なお、工程S2と工程S3の順番は入れ替わってもよい。
【0040】
次に、フィルムにエンボス加工を施してエンボス模様124を形成する(工程S4)。例えば、フィルムを加熱して軟化させてから金型にセットし、真空成形または圧空成形によりエンボス模様124をフィルム表面に形成する。
【0041】
その後、不要な部分を取り除くトリミング処理を行う(工程S5)。これにより、膜状体12ができあがる。
【0042】
次に、表面部材11と膜状体12とを一体成形する(工程S6)。例えば、膜状体12を射出成形金型にセットし、表面部材11の元となるポリカーボネートを流し込んで膜状体12に溶着させる。
【0043】
次に、一体化した表面部材11および膜状体12とベース部材13とを一体成形する(工程S7)。例えば、一体化した表面部材11および膜状体12を射出成形金型にセットし、ベース部材13の元となるAES樹脂またはABS樹脂を流し込んで一体化した表面部材11および膜状体12に溶着させる。これにより、車両用部材10ができあがる。
【0044】
最後に、表面部材11の表面にハードコートを施して車両用部材10の表面を強化する(工程S8)。
【0045】
以上のように、本発明における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0046】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0047】
また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【符号の説明】
【0048】
10 車両用部材
11 表面部材
12 膜状体
122 光沢膜
123 光遮断膜
124 エンボス模様
103 レーダーセンサー(車載レーダー装置)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波透過性を有し且つ金属成分を含まない、表側面にエンボス模様が形成された半透明のフィルムと、
前記フィルムの裏側面に形成されたグレーの印刷膜又は塗装膜と、
光透過性を有し、前記フィルムの表側面を被覆するように前記フィルムと一体成形された表面部材と、
を備え、
前記フィルムは、数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されてなるフィルムであり、
前記グレーの印刷膜又は塗装膜は、前記フィルムの表側面から入射して裏側面まで透過した光を表側面に反射させ、
前記フィルムは、前記グレーの印刷膜又は塗装膜が前記透過した光を表側面に反射させることにより、該グレーの印刷膜又は塗装膜が形成されていない場合に比べてより鮮やかな金属調光沢を呈する、車両用オーナメント。
【請求項2】
前記フィルムの厚みは100?200μmである、請求項1に記載の車両用オーナメント。
【請求項3】
前記フィルムは、前記グレーの印刷膜又は塗装膜が該フィルムの裏側面に形成されることで、該フィルムの表側面から見たときに金属色を示すためのものであり、
前記グレーの印刷膜又は塗装膜の明度を変えることにより、前記金属色の明度を調整することができる、請求項1又は請求項2に記載の車両用オーナメント。
【請求項4】
前記車両用オーナメントの少なくとも一部は車載レーダー装置の送受信電波領域内に配置される部材である、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の車両用オーナメント。
【請求項5】
電波透過性を有し且つ金属成分を含まない、表側面にエンボス模様が形成された半透明のフィルムと、
前記フィルムの裏側面に形成されたグレーの印刷膜又は塗装膜と、
前記フィルムの表側面に塗装により部分的に形成された黒色の光遮断膜と、
光透過性を有し、前記フィルムの表側面を被覆するように前記フィルムと一体成形された表面部材と、
前記グレーの印刷膜又は塗装膜の裏側面を被覆するように前記フィルムと一体成形されたベース部材と、
を備え、
前記フィルムは、数百から数千のナノレベルのポリマー薄膜がさまざまな層厚みで積層されてなるフィルムであり、
前記グレーの印刷膜又は塗装膜は、前記フィルムの表側面から入射して裏側面まで透過した光を表側面に反射させ、
前記フィルムは、前記グレーの印刷膜又は塗装膜が前記透過した光を表側面に反射させることにより、該グレーの印刷膜又は塗装膜が形成されていない場合に比べてより鮮やかな金属調光沢を呈する、車両用オーナメント。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-09-08 
出願番号 特願2015-165392(P2015-165392)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B60R)
P 1 651・ 121- YAA (B60R)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高島 壮基  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 氏原 康宏
一ノ瀬 覚
登録日 2019-03-08 
登録番号 特許第6490538号(P6490538)
権利者 マツダ株式会社
発明の名称 車両用オーナメント  
代理人 特許業務法人前田特許事務所  
代理人 特許業務法人前田特許事務所  
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