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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C07C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C07C
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C07C
審判 全部申し立て 2項進歩性  C07C
管理番号 1368079
異議申立番号 異議2019-700721  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-09-11 
確定日 2020-09-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6484465号発明「2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの結晶多形体およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6484465号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔9-12〕について訂正することを認める。 特許第6484465号の請求項1?8、13に係る特許を維持する。 特許第6484465号の請求項9?12に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6484465号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?13に係る特許についての出願は、平成27年3月5日(優先権主張 平成26年3月10日 日本国(JP))に出願され、平成31年2月22日にその特許権の設定登録がされ、平成31年3月13日に特許掲載公報が発行された。
その後、当該特許に対し、令和1年9月11日に岡林茂(以下、「申立人A」という。)、令和1年9月12日にロイター ヘミッシェ アパラテバウ エー.カー.(以下、「申立人B」という。)により、いずれも全請求項に対して、特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯の概要は次のとおりである。

令和2年 1月17日付け 取消理由通知
同年 3月12日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者)
なお、申立人A及び申立人Bに対し、令和2年4月22日付けで訂正請求があった旨の通知をし、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、期間内に応答はなかった。

第2 訂正の適否
特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である令和2年3月12日に訂正請求書を提出し、特許第6484465号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項9?12について訂正(以下、「本件訂正」という。)することを求めた。

1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項9を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項10を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項11を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項12を削除する。

2 訂正の適否
(1)一群の請求項について
訂正事項1?3は請求項9?11を訂正するものであるところ、本件訂正前の請求項12は、直接的・間接的に本件訂正前の請求項9?11の記載を引用するものであるから、本件訂正前の請求項9?12は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
そして、本件訂正の請求は、請求項9?12についてされているから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

(2)訂正事項1?4について
ア 訂正の目的について
訂正事項1?4は、いずれも請求項の記載を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加、特許請求の範囲の実質上の拡張・変更について
訂正事項1?4は、いずれも請求項の記載を削除するものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔9?12〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正後の請求項〔9?12〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1?8、13に係る発明は、令和2年3月12日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?8、13に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下、「本件発明1」などと、また、これらを併せて「本件発明」ともいう。)である。

「【請求項1】
Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが10.4±0.2°、12.1±0.2°、14.8±0.2°および22.3±0.2°にピークを有する2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン結晶。
【請求項2】
示差走査熱分析による融解吸熱最大が109?112℃である請求項1に記載の2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン結晶。
【請求項3】
板状結晶であって、光学顕微鏡写真に基づき求めた最大結晶長さLと幅Wとの比L/Wが1?8である請求項1又は2に記載の2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン結晶。
【請求項4】
板状結晶の幅Wが3μm以上である請求項3に記載の2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン結晶。
【請求項5】
Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが10.0±0.2°、19.2±0.2°、19.7±0.2°および22.2±0.2°にピークを有する2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン結晶。
【請求項6】
示差走査熱分析による融解吸熱最大が106?108℃である請求項5に記載の2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン結晶。
【請求項7】
板状結晶であって、光学顕微鏡写真に基づき求めた最大結晶長さLと幅Wとの比L/Wが1?8である請求項5又は6に記載の2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン結晶。
【請求項8】
板状結晶の幅Wが3μm以上である請求項7に記載の2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン結晶。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
請求項1?8のいずれか1項に記載の2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの結晶を用意する工程と、
前記結晶を40?108℃に加熱する工程と、
を含む2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの塊状結晶の製造方法。」

第4 取消理由の概要
当審が令和2年1月17日付けで通知した取消理由及び申立人A、Bが申し立てた異議申立理由は、以下に示すとおりである。

1 当審が令和2年1月17日付けで通知した取消理由
(1)(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下、「取消理由1」という。)。
(2)(実施可能要件)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下、「取消理由2」という。)。

発明の詳細な説明の記載より当業者が本件発明9の課題が解決できると認識できる範囲は、第2溶液中の母液の量が特定の範囲内である製造方法であるといえるところ、本件発明9は、第2溶液が母液のみからなる態様や、第2溶液に母液がごくわずかしか含まれない態様をも包含するものであって、母液が多形体の製造にどのように影響を及ぼすのか、そのメカニズム等について発明の詳細な説明には記載がなく、技術常識として当業者に知られているともいえないから、本件発明9は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであり、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
また、母液の使用量がどの程度であっても多形体B又は多形体Cを製造できるとはいえない以上、本件発明の詳細な説明は、当業者が本件発明9を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
母液の使用量について同様のことがいえる本件発明10?11、本件特許の請求項9?11を引用する本件発明12についても同様である。

2 申立人Aが申し立てた異議申立理由
(1)(新規性)本件特許の請求項1?4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1?3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、請求項1?4に係る特許は、同法第113条第2号の規定に基いて取り消されるべきものである(以下、「申立理由A1」という。)。

(2)(進歩性)本件特許の請求項1?2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1?3号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1?2に係る特許は、同法第113条第2号の規定に基いて取り消されるべきものである(以下、「申立理由A2」という。)。

(3)(進歩性)本件特許の請求項3?4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1?3号証に記載された発明及び同甲第5?10号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項3?4に係る特許は、同法第113条第2号の規定に基いて取り消されるべきものである(以下、「申立理由A3」という。)。

(4)(新規性)本件特許の請求項5?8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、請求項5?8に係る特許は、同法第113条第2号の規定に基いて取り消されるべきものである(以下、「申立理由A4」という。)。

(5)(進歩性)本件特許の請求項5?6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第4号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項5?6に係る特許は、同法第113条第2号の規定に基いて取り消されるべきものである(以下、「申立理由A5」という。)。

(6)(進歩性)本件特許の請求項7?8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第4号証に記載された発明及び同甲第5?10号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項7?8に係る特許は、同法第113条第2号の規定に基いて取り消されるべきものである(以下、「申立理由A6」という。)。

(7)(進歩性)本件特許の請求項9?13に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1?4号証に記載された発明及び同甲第5?10号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項9?13に係る特許は、同法第113条第2号の規定に基いて取り消されるべきものである(以下、「申立理由A7」という。)。

そして、甲第1?10号証として、以下のものが挙げられている。

甲第1号証:特開2011-153248号公報
甲第2号証:Org. Biomol. Chem., 2012, 10,pp.9383-9392
甲第3号証:J.C.S. Chem. Comm., 1976, pp.284-285
甲第4号証:Tetrahedron 69 (2013),pp.10662-10668
甲第5号証:結晶多形の基礎と応用(松岡正邦監修、pp.97,154-157,201-206,210、株式会社シーエムシー出版、2010年10月22日発行)
甲第6号証:Netsu Sokutei 15 (3) 1988, pp.143-145
甲第7号証:固体医薬品の評価法1(当審注:原文は○の中に1)?原薬の結晶形の種類を調べる?、リガクアプリケーションノート XRD1001(株式会社リガク、2012年)
甲第8号証:H19.7.4知財高裁平成18年(行ケ)10271判決、第13頁26行?第14頁10行、第17頁5行?10行
甲第9号証:特願2007-507487号の平成20年7月31日(起案日)付拒絶理由通知書
甲第10号証:特願2007-507487号の平成20年12月12日付拒絶査定

以下、申立人Aが提出した甲第1?10号証を、それぞれ甲1A?甲10Aのように省略して記載する。

3 申立人Bが申し立てた異議申立理由
(1)(新規性)本件特許の請求項1?4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、請求項1?4に係る特許は、同法第113条第2号の規定に基いて取り消されるべきものである(以下、「申立理由B1」という。)。

(2)(進歩性)本件特許の請求項1?4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明及び同甲第6?7、11?13号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1?4に係る特許は、同法第113条第2号の規定に基いて取り消されるべきものである(以下、「申立理由B2」という。)。

(3)(新規性)本件特許の請求項5?8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、請求項5?8に係る特許は、同法第113条第2号の規定に基いて取り消されるべきものである(以下、「申立理由B3」という。)。

(4)(進歩性)本件特許の請求項5?8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証に記載された発明及び同甲第6?7、11?13号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項5?8に係る特許は、同法第113条第2号の規定に基いて取り消されるべきものである(以下、「申立理由B4」という。)。

(5)(新規性)本件特許の請求項1?4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、請求項1?4に係る特許は、同法第113条第2号の規定に基いて取り消されるべきものである(以下、「申立理由B5」という。)。

(6)(進歩性)本件特許の請求項1?4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第3号証に記載された発明及び同甲第6?7、11?13号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1?4に係る特許は、同法第113条第2号の規定に基いて取り消されるべきものである(以下、「申立理由B6」という。)。

(7)(新規性)本件特許の請求項1?4又は5?8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、請求項1?4又は5?8に係る特許は、同法第113条第2号の規定に基いて取り消されるべきものである(以下、「申立理由B7」という。)。

(8)(進歩性)本件特許の請求項1?4又は5?8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第4号証に記載された発明及び同甲第6?7、11?13号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1?4又は5?8に係る特許は、同法第113条第2号の規定に基いて取り消されるべきものである(以下、「申立理由B8」という。)。

(9)(新規性)本件特許の請求項5?8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、請求項5?8に係る特許は、同法第113条第2号の規定に基いて取り消されるべきものである(以下、「申立理由B9」という。)。

(10)(進歩性)本件特許の請求項5?8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第5号証に記載された発明及び同甲第6?7、11?13号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項5?8に係る特許は、同法第113条第2号の規定に基いて取り消されるべきものである(以下、「申立理由B10」という。)。

(11)(進歩性)本件特許の請求項9?12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証に記載された発明及び同甲第9、11?13号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項9?12に係る特許は、同法第113条第2号の規定に基いて取り消されるべきものである(以下、「申立理由B11」という。)。

(12)(進歩性)本件特許の請求項9?11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第5号証に記載された発明及び同甲第9、11?13号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項9?11に係る特許は、同法第113条第2号の規定に基いて取り消されるべきものである(以下、「申立理由B12」という。)。

(13)(進歩性)本件特許の請求項13に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1?5号証に記載された発明及び同甲第10?13号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項13に係る特許は、同法第113条第2号の規定に基いて取り消されるべきものである(以下、「申立理由B13」という。)。

(14)(サポート要件)本件の請求項9?12に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである(以下、「申立理由B14」という。)。

(15)(実施可能要件)本件の請求項9?12に係る発明について、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、請求項9?12に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである(以下、「申立理由B15」という。)。

そして、甲第1?15号証として、以下のものが挙げられている。

甲第1号証:Tetrahedron (2013), 69,pp.10662-10668
甲第2号証:国際公開第2011/126066号
甲第3号証:Tetrahedron (1980), 36, pp.2521-2523
甲第4号証:Dyes and Pigments (2014), 103,pp.95-105
甲第5号証:米国特許第4001279号明細書
甲第6号証:特開2008-222708号公報
甲第7号証:特開2012-207008号公報
甲第8号証:Applied Spectroscopy Reviews (2015),50, pp.565-583
甲第9号証:Organic Process Research & Development (1997), 1, pp.165-167
甲第10号証:Crystallization of Organic Compounds, pp.82,93-94,98-99
甲第11号証:実験報告書
甲第12号証:実験報告書の付属書類A
甲第13号証:実験報告書の付属書類B
甲第14号証:本件特許公報
甲第15号証:証明書

以下、申立人Bが提出した甲第1?15号証を、それぞれ甲1B?甲15Bのように省略して記載する。

第5 当審の判断
1 当審が令和2年1月17日付けで通知した取消理由について
当審が通知した取消理由1は、請求項9?12に係る発明について、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないことを根拠とし、取消理由2は、請求項9?12に係る発明について、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないことを根拠とするものであるところ、本件訂正により、取消理由1、2の対象の請求項である請求項9?12は削除された。
したがって、取消理由1、2によって、本件特許を取り消すべきものとすることはできない。

2 取消理由通知で採用しなかった申立人Aが申し立てた異議申立理由についての検討
(1)削除された請求項9?12に係る発明について
上記第2で述べたとおり、本件訂正が認められたことにより、請求項9?12に係る発明は削除された。
そして、申立人Aが申し立てた異議申立理由のうち、請求項9?12に係る発明に対するものは、対象とする請求項が存在しないものとなった。
したがって、請求項9?12に係る発明に対する特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。
以下に検討する申立理由A1?A7では、本件発明1?8、13について検討する。

(2)甲1A?甲10Aの記載事項
甲1A?甲10Aには、以下の事項が記載されている。

ア 甲1A
(1A)「【0167】
合成例1
攪拌機、温度計、ディーンスタークトラップ、コンデンサーが装着された5Lの4つ口フラスコにビナフトール858g(3モル)、エチレンカーボネート634g(7.2モル)、48質量%水酸化カリウム24gを加え、170℃で4時間反応させた。その後、メチルイソブトキシケトン1500gを加えて溶解し、水1000gを加え、攪拌を停止して下層を棄却した。更に水1000gを加え、攪拌を停止して下層を棄却した。その後、150℃で脱溶剤を行いDSC測定による融点108℃の樹脂1050gを得た。この樹脂をマススペクトル(FD-MS)で測定し、M=374のピークが確認されたこと、また、図1に示した^(13)C-NMRの測定結果から、下記構造式で表される水酸基含有化合物(a)であることを確認した。
【0168】
【化20】



イ 甲2A(訳文で示す。)
(2Aa)「大環状化合物2は、スキーム2の反応に従って合成された。最初に、(rac)-1,1’-ビナフトール(BINOL)7をK_(2)CO_(3)の存在下で乾燥アセトン中で2-クロロエタノールと還流し、化合物8を得た。」(9383頁右欄下から2行目?9384頁左欄2行目)

(2Ab)「

」(9384頁 Scheme 2 の一部)

(2Ac)「2,2’-(1,1’ビナフチル-2,2’-ジイルビス(オキシ))ジエタノール8。乾燥アセトン(40mL)中の(rac)-BINOL7(3.00g,10.48mmol)とK_(2)CO_(3)(4.34g,31.43mmol)の混合物に対し、アセトン5mL中の2-クロロエタノール(2.53g,31.43mmol)を滴下し、反応混合物を24時間還流した。反応混合物を真空下で濃縮し、30mLの水を混合物に加えた。水層をCHCl_(3)(3×40mL)で抽出し、無水Na_(2)SO_(4)で乾燥させた。溶媒を真空で蒸発させた後、粗生成物を、溶離液として石油エーテル中の5%酢酸エチルを使用するカラムクロマトグラフィーにより精製して、白色結晶生成物8(2.6g、収率65%)、m.p.108℃を得た。^(1)HNMR・・(略)・・;FTIR・・(略)・・;m/z・・(略)・・」(9390頁右欄6?23行)

ウ 甲3A(訳文で示す。)
(3Aa)「K_(2)CO_(3)及び還流Me_(2)COの存在下、2,2’-ジヒドロキシ-1,1’-ビナフチル(RS)-(1)とBrCH_(2)CO_(2)Meとの縮合により、ジエステル(RS)-(2)、m.p.133-134℃が得られ(80%)、これをTHF中のLiAlH_(4)で還元し、ジオール(RS)-(3)、m.p.108-109℃(85%収率)とした。」(284頁左欄下から20?16行)

(3Ab)「

」(284頁右欄左上図)

エ 甲4A(訳文で示す。)
(4Aa)「最初のステップは、カテコール、2,3-ジヒドロキシナフタレン又は2,2’-ジヒドロキシ-1,1’-ビナフタレンを2-クロロエタノールでアルキル化して、二置換ジオールを得た(スキーム2)。」(10662頁右欄下から5?3行)

(4Ab)「

・・・

」(10663頁 Scheme 2 の一部)

(4Ac)「3.2. 1-a、b、cの合成に関する概略的手順
別々に、ジヒドロキシ置換基、カテコール(a)、2,3-ジヒドロキシナフタレン(b)、2,2’-ジヒドロキシ-1,1’-ビスナフタレン(c)(50mmol)、およびNaOH(0.12mol)のそれぞれを、20?25mlのエタノールに溶解し、この溶液に2-クロロエタノール(0.12mol)を15分間かけて滴下した。反応混合物を20時間還流した後、得られた固体を濾過によって分離した。エタノールを真空蒸発させ、得られた油状生成物を200mlのクロロホルムに溶解した。クロロホルム溶液を3%NaOHで洗浄し、次いで、pHが中性に達するまで蒸留水で洗浄した。」(10666頁3.2.)

(4Ad)「3.2.3. 2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン(1-c)。灰色の固体、収率:80%、mp:105-106℃(lit.mp:112-114℃)。^(1)HNMR・・(略)・・。」(10666頁右欄3.2.3.)

オ 甲5A
(5Aa)「結晶構造が異なれば結晶の形状、結晶の密度、溶解度、溶解速度が異なるため、結果として・・・ろ過性、・・・結晶の安定性などの重要な結晶特性が異なることとなる。・・・多形の存在を確認し、その特性を把握することは、結晶製品を生産する上で重要である。」(97頁下から9?6行)

(5Ab)「多形の析出は、溶媒とその組成、晶析温度、過飽和度、不純物の存在と濃度、攪拌速度、pHなど、晶析の操作パラメータ全般に支配されている。中でも、溶媒の種類と混合溶媒組成は、多形に大きく影響し、慎重な選択が必要である。溶媒の種類や混合組成を変えると新しく多形が「発見される」ということは珍しくない。」(154頁14?17行)

(5Ac)「AE1-923のB形からC形への転移も、40℃、50%メタノール溶液下では・・・進行しなかったが、60%メタノール溶液下では、2.5時間で転移が終了した^(2))。このように溶媒組成は、溶媒媒介転移に重大な影響を及ぼす。」(155頁12?14行)

(5Ad)「不純物が転移を抑制する場合がある。溶液の純度を上げることによって新しい多形が出現し、純度が低い溶液から回収していた結晶が得られなくなる、または、得にくくなることがある。これは、溶液を精製すると、不純物によって抑えられていた転移が進むようになるためである。」(156頁16?19行)

(5Ae)「針状晶のD形晶はB形晶、C形晶に比べて濾過性が悪く、・・・」(203頁14?15行)

(5Af)「

」(205頁表2)

(5Ag)「D形晶を析出させずにC形晶のみを析出させるには、C形晶とD形晶の溶解度の範囲内で操作すればよい・・・」(206頁18?19行)

(5Ah)「融点が75?76℃の結晶と82?84℃の結晶があることが分かり、これらは・・・結晶多形であると判明した。濾過性の良い柱状結晶は融点75?76℃、濾過性の悪い微細針状結晶は82?84℃であった。前者をα形、後者をβ形・・・晶析温度が低いとα形が得られると示唆された。」(210頁下から13?5行)

カ 甲6A
(6Aa)「これらの中で,薬剤や各種添加剤といった物質の融点測定法として,現在,日本薬局方やJISで規定されているのは目視法であり^(1),2)),上記物質の品質管理等の現場においても多く使われている。」(143頁左欄8?11行)

(6Ab)「まず,長さ70?100mm,内径0.8?1.2mm,壁の厚さ0.2?0.3mmの硬質ガラス製の毛管に粉末状のサンプルをつめる。次いで,これをFig.1の様に挿入し,約3℃/minで温度上昇させる。予想融点より約5℃低い温度からは約1℃/minで温度上昇させ,Fig.2に示した様な変化の見られる温度を読みとる。そして,試料が変化をし始める時(Fig.2の湿潤点に相当する)を融点の始まり,完全に液化した時(Fig.2の融解終点)を融点の終わりとする。」(143頁右欄下から9行?最下行)

(6Ac)「

」(143頁Fig.2)

キ 甲7A
(7A)「原理3 DSCによる結晶形の同定
示差走査熱量測定(DSC)は、試料を加熱または冷却した時に、試料内に発生する熱エネルギーの変化を検出する手法です。同じ物質でも結晶構造が異なる結晶形では水素結合やファンデルワールス力などの相互作用力が異なるため、エネルギー状態が異なります。結晶形に違いがある場合、融点や相転移挙動およびその温度が大きく異なることが多く、示差走査熱量測定で結晶形の違いを見分けることができます。
分析結果3
図3は・・・相転移温度が両者で大きく異なることから、両者は結晶構造の異なる結晶多形であることがわかります。」(2頁右欄11?25行)

ク 甲8A
(8Aa)「2.多形
多形とは同じ化学組成をもちながら結晶構造が異なり,別の結晶形を示す現象またはその現象を示すものをいう。すなわち結晶中の原子あるいは分子の空間的な配列の違いによって多形がおこるので,融解したり溶解した場合には区別はできない。
多形を示す物質としては無機物では炭素(graphite と diamond),炭酸カルシウム(calcite と aragonite)など多くのものが知られている。医薬品では酢酸コルチゾン,プロゲステロン,プレドニゾロン,バルビタール,フェノバルビタールなどがあり,とくに最近では多くの薬品に多形の存在が見出されている。
多形は結晶中での分子や原子の配列が異なるので,その存在はX線回折法,密度測定法,偏光顕微鏡法,赤外吸収スペクトル法により知ることができる。また熱力学的に多形は別の相として考えられ,各多形はそれぞれの融点や溶解度をもつ。」(13頁最下行?14頁10行)

(8Ab)「結晶多形においては,結晶形が異なることにより,溶解度,安定性,融点等の物性が異なってくること,再結晶すると安定形が得られることがあること,結晶多形の検出及び同定手段として,X線回折法,顕微鏡法,赤外吸収スペクトル法,融点測定等が,一般的に知られていたことが認められる。」(17頁5?10行)

ケ 甲9A
(9A)「(A)1の実施例98、(A)2に117頁には、本願明細書の実施例1に記載の製造方法と同一或いは類似の方法によって製造されるバゼドキシフェンアセテートが融点174-178℃、170.5-172.5℃を持つことが記載され・・・そうすると、176℃の融点を持つバゼドキシフェンアセテートの多形A型は、(A)1、2に記載の結晶と同一或いは類似の物と認められ、(A)1、2にA型という名称や請求項6?13に記載の物性値が記載されていないとしても、請求項1?13に係る発明が新規性進歩性を有するということはできない。・・・結晶多形においては、結晶形が異なることにより、溶解度、安定性、融点等の物性が異なり、結晶多形の検出及び同定手段として、X線回折法、赤外吸収スペクトル法等が、一般的に知られていた。・・・(以上の説示内容については、平成18年行ケ第10271号知財高裁判決を参照のこと。)」

コ 甲10A
(10A)「しかし、(A)1、2に記載される結晶性固体(【0003】)は多形A形と同程度の融点を示すから、両者が同一或いは類似であるとする合理的理由が存在し(なお、出願人は特願2007-507417号においては融点の相違を結晶構造が異なる根拠としているところである。)、(A)1、2に、明細書に記載される物性値、結晶化条件が記載されてないからといって、上記結晶性固体と多形A形或いは多形A形を一定量以上含有するものが物として相違すると解することはできない。
一方で、拒絶理由でも説示したように、・・・結晶形が異なることにより、溶解度、安定性、融点等の物性が異なり、結晶多形の検出及び同定手段として、X線回折法、赤外吸収スペクトル法等が、一般的に知られていたこと(以上については、平成18年(行ケ)第10271号判決を参照のこと。)、・・・が本願優先日前における当業者の技術常識であった。」

(3)申立理由A1について
ア 甲1A?甲3Aに記載された発明
(ア)甲1Aに記載された発明
記載事項(1A)より、甲1Aには次の発明が記載されていると認められる。
「下記構造式で表される融点108℃の水酸基含有化合物(a)。

」(以下、「甲1A発明」という。)

(イ)甲2Aに記載された発明
記載事項(2Aa)?(2Ac)より、甲2Aには次の発明が記載されていると認められる。
「下記構造式で表される化合物8の、m.p.(融点)108℃である白色結晶生成物。

」(以下、「甲2A発明」という。)

(ウ)甲3Aに記載された発明
記載事項(3Aa)?(3Ab)より、甲3Aには次の発明が記載されていると認められる。
「下記構造式で表されるm.p.(融点)108-109℃のジオール(RS)-(3)。

」(以下、「甲3A発明」という。)

イ 対比・判断
(ア)本件発明1について
a 甲1A発明との対比・判断
甲1A発明の「水酸基含有化合物(a)」は、その構造式から本件発明1の「2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1A発明とは、
「2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
(相違点1)本件発明1は「Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが10.4±0.2°、12.1±0.2°、14.8±0.2°および22.3±0.2°にピークを有する」「結晶」であるのに対し、甲1A発明はCu-Kα線による粉末X線回折パターンも結晶であることも特定していない点。

以下、相違点1について検討する。
甲1Aには、Cu-Kα線による粉末X線回折パターンは記載がない。
また、結晶化条件が同じであれば同じ結晶形の結晶であると考えられるため、結晶化条件について検討してみても、甲1Aには、甲1A発明の「水酸基含有化合物(a)」の結晶化条件の詳細は開示されておらず、甲1A発明の「水酸基含有化合物(a)」が本件発明1の結晶と同一の方法により生成したとはいえない。
そして、結晶多形はそれぞれが固有の融点をもつこと、結晶多形において結晶形が異なれば融点等が異なることは、本件優先日当時に技術常識として知られているところ、本件発明1の示差走査熱分析による融解吸熱最大は甲1A発明の融点と同程度であるが、仮に甲1A発明が結晶であったとしても、融点が同じであることのみで、同一の結晶形であるとする出願時の技術常識はない。
そうすると、甲1A発明の「水酸基含有化合物(a)」が本件発明1の結晶と同一であるということはできず、甲1A発明の「水酸基含有化合物(a)」が本件発明1のCu-Kα線による粉末X線回折パターンと同一のパターンを示すということもできない。
したがって、上記相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1A発明ではない。

b 甲2A発明との対比・判断
甲2A発明の「化合物8」は、その構造式から本件発明1の「2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン」に相当する。
したがって、本件発明1と甲2A発明とは、
「2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン結晶」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
(相違点2)本件発明1は「Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが10.4±0.2°、12.1±0.2°、14.8±0.2°および22.3±0.2°にピークを有する」結晶であるのに対し、甲1A発明はCu-Kα線による粉末X線回折パターンを特定していない点。

以下、相違点2について検討する。
甲2Aには、Cu-Kα線による粉末X線回折パターンは記載がない。
また、結晶化条件が同じであれば同じ結晶形の結晶であると考えられるため、結晶化条件について検討してみても、甲2Aには、甲2A発明の「化合物8」の結晶化条件の詳細は開示されておらず、甲2A発明の「化合物8」の「白色結晶生成物」が本件発明1の結晶と同一の方法により生成したとはいえない。
そして、本件発明1の示差走査熱分析による融解吸熱最大は甲2A発明の融点と同程度であるが、融点が同じであることのみで、同一の結晶形であるとする出願時の技術常識はないことは上記aで述べたとおりである。
そうすると、甲2A発明の「化合物8」の「白色結晶生成物」が本件発明1の結晶と同一であるということはできず、当該「白色結晶生成物」が本件発明1のCu-Kα線による粉末X線回折パターンと同一のパターンを示すということもできない。
したがって、上記相違点2は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲2A発明ではない。

c 甲3A発明との対比・判断
甲3A発明の「ジオール(RS)-(3)」は、その構造式から本件発明1の「2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン」に相当する。
したがって、本件発明1と甲3A発明とは、
「2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
(相違点3)本件発明1は「Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが10.4±0.2°、12.1±0.2°、14.8±0.2°および22.3±0.2°にピークを有する」「結晶」であるのに対し、甲3A発明はCu-Kα線による粉末X線回折パターンも結晶であることも特定していない点。

以下、相違点3について検討する。
甲3Aには、Cu-Kα線による粉末X線回折パターンは記載がない。
また、結晶化条件が同じであれば同じ結晶形の結晶であると考えられるため、結晶化条件について検討してみても、甲3Aには、甲3A発明の「ジオール(RS)-(3)」の結晶化条件の詳細は開示されておらず、甲3A発明の「ジオール(RS)-(3)」の結晶が本件発明1の結晶と同一の方法により生成したとはいえない。
そして、本件発明1の示差走査熱分析による融解吸熱最大は甲3A発明の融点と同程度であるが、仮に甲3A発明が結晶であったとしても、融点が同じであることのみで、同一の結晶形であるとする出願時の技術常識はないことは上記aで述べたとおりである。
そうすると、甲3A発明の「ジオール(RS)-(3)」が本件発明1の結晶と同一であるということはできず、甲3A発明の「ジオール(RS)-(3)」が本件発明1のCu-Kα線による粉末X線回折パターンと同一のパターンを示すということもできない。
したがって、上記相違点3は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲3A発明ではない。

d 小括
よって、本件発明1は甲1A発明?甲3A発明ではない。

(イ)本件発明2?4について
本件発明2?4はいずれも、本件発明1の発明特定事項をその発明特定事項とするものであるから、本件発明1と同様の理由により甲1A発明?甲3A発明ではない。

ウ 以上のとおり、本件発明1?4は甲1A?3Aに記載された発明であるとはいえない。

(4)申立理由A2、A3について
ア 判断
(ア)本件発明1について
結晶化条件が同じであれば同じ結晶形の結晶であると考えられ、目的とする結晶の製造方法を容易に想到することができれば、当該製造方法で得られる結晶も容易に想到し得たといえるが、目的とする結晶の製造方法を容易に想到し得なければ、当該製造方法で得られる結晶を容易に想到し得たということもできないので、以下、本件発明及び甲1A?甲3Aにおける、結晶又は化合物の製造方法について検討する。
本件発明1の結晶(多形体B)は、本件明細書の段落0090?0093に実施例3?5として記載された製造方法により得られた結晶であるところ、当該製造方法は、晶析溶液に母液を添加し特定条件において晶析を行う方法であって、そのような方法は甲1A?甲3Aには記載も示唆もされておらず、また、本件優先日当時に技術常識として知られた一般的な製造方法ということもできない。
そうすると、甲1A?甲3Aに記載された事項に基いて本件発明1の結晶の製造方法を当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明1は甲1A発明?甲3A発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項をその発明特定事項とするものであるから、本件発明1と同様の理由により甲1A発明?甲3A発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(ウ)本件発明3?4について
本件発明3?4は、本件発明1の発明特定事項をその発明特定事項とするものであるから、甲5A?甲10Aの記載事項を参酌しても、本件発明1と同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ よって、本件発明1?2は甲1A発明?甲3A発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、本件発明3?4は甲1A発明?甲3A発明及び甲5A?甲10Aに記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)申立理由A4について
ア 甲4Aに記載された発明
記載事項(4Aa)?(4Ad)より、甲4Aには次の発明が記載されていると認められる。
「下記構造式で表される化合物1-cの、mp(融点)105-106℃である灰色の固体。

」(以下、「甲4A発明」という。)

イ 対比・判断
(ア)本件発明5について
甲4A発明の「化合物1-c」は、その構造式から本件発明5の「2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン」に相当する。
したがって、本件発明5と甲4A発明とは、
「2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
(相違点4)本件発明5は「Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが10.0±0.2°、19.2±0.2°、19.7±0.2°および22.2±0.2°にピークを有する」「結晶」であるのに対し、甲4A発明はCu-Kα線による粉末X線回折パターンも結晶であることも特定していない点。

以下、相違点4について検討する。
甲4Aには、Cu-Kα線による粉末X線回折パターンは記載がない。
また、結晶化条件が同じであれば同じ結晶形の結晶であると考えられるため、結晶化条件について検討してみても、甲4Aには、甲4A発明の「灰色の固体」の結晶化条件の詳細は開示されておらず、甲4A発明の「灰色の固体」が本件発明1の結晶と同一の方法により生成したとはいえない。
そして、本件発明5の示差走査熱分析による融解吸熱最大は甲4A発明の融点と同程度であるが、仮に甲4A発明が結晶であったとしても、融点が同じであることのみで、同一の結晶形であるとする出願時の技術常識はないことは、上記2(3)イ(ア)aで述べたとおりである。
そうすると、甲4A発明の「灰色の固体」が本件発明5の結晶と同一であるということはできず、当該「灰色の固体」が本件発明5のCu-Kα線による粉末X線回折パターンと同一のパターンを示すということもできない。
したがって、上記相違点4は実質的な相違点であるから、本件発明5は、甲4A発明ではない。

(イ)本件発明6?8について
本件発明6?8はいずれも、本件発明5の発明特定事項をその発明特定事項とするものであるから、本件発明5と同様の理由により甲4A発明ではない。

ウ 以上のとおり、本件発明5?8は甲4Aに記載された発明であるとはいえない。

(6)申立理由A5、A6について
ア 判断
(ア)本件発明5について
上記(4)ア(ア)と同様に、結晶の製造方法について検討する。
本件発明5の結晶(多形体C)は、本件明細書の段落0087?0089に実施例1?2として記載された製造方法により得られた結晶であるところ、当該製造方法は、晶析溶液に母液を添加し特定条件において晶析を行う方法であって、そのような方法は甲4Aには記載も示唆もされておらず、また、本件優先日当時に技術常識として知られた一般的な製造方法ということもできない。
そうすると、甲4Aに記載された事項に基いて、本件発明5の結晶の製造方法を当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明5は甲4A発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)本件発明6について
本件発明6は、本件発明5の発明特定事項をその発明特定事項とするものであるから、本件発明5と同様の理由により甲4A発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(ウ)本件発明7?8について
本件発明7?8は、本件発明5の発明特定事項をその発明特定事項とするものであるから、甲5A?甲10Aの記載事項を参酌しても、本件発明5と同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ よって、本件発明5?6は甲4A発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、本件発明7?8は甲4A発明及び甲5A?甲10Aに記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(7)申立理由A7について
本件発明13は、本件発明1?8のいずれかの結晶から塊状結晶を製造する方法の発明である。
本件発明13において原料となる本件発明1?4は、上記(3)イで述べたとおり、甲1A?甲3A発明ではなく、上記(4)アで述べたとおり、甲1A?甲3A発明に基いて、又は、甲1A発明?甲3A発明及び甲5A?甲10Aに記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
同様に本件発明13において原料となる本件発明5?8は、上記(5)イで述べたとおり、甲4A発明ではなく、上記(6)アで述べたとおり、甲4A発明に基いて、又は、甲4A発明及び甲5A?甲10Aに記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
よって、本件発明13は、甲1A?甲4A発明及び甲5A?甲10Aに記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(8)以上のとおり、申立人Aが申し立てた取消理由によって、本件請求項1?8、13に係る特許を取り消すことはできない。

3 取消理由通知で採用しなかった申立人Bが申し立てた異議申立理由についての検討
(1)削除された請求項9?12に係る発明について
上記第2で述べたとおり、本件訂正が認められたことにより、請求項9?12に係る発明は削除された。
そして、申立人Bが申し立てた異議申立理由のうち、請求項9?12に係る発明に対するもの(申立理由B11?B12、B14?B15は、対象とする請求項が存在しないものとなった。
したがって、請求項9?12に係る発明に対する特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。
以下、申立理由B1?B10及びB13について検討する。

(2)甲1B?甲13Bの記載事項
甲1Bは甲4Aと同じ文献であるから、甲1Bには上記2(2)エに示した事項が記載されており、甲2B?甲13Bには、以下の事項が記載されている。

ア 甲2B
(2B)「[0083]合成例4:(メタ)アクリレート化合物(F)((RS)-1,1’-ビ-2-ナフトールジエトキシジアクリレート)の合成
撹拌装置、還流管、温度計をつけたフラスコの中に、(RS)-1,1’-ビ-2-ナフトールを286.3g(1.0mol)、炭酸エチレンを264.2g(3.0mol)、炭酸カリウムを41.5g(0.3mol)、トルエン2000mlを仕込み、110℃で12時間反応させた。
反応後、得られた反応液を水洗、1%NaOH水溶液で洗浄し、次いで洗浄水が中性になるまで水洗を行った。水洗後の溶液をロータリーエバポレーターを用いて減圧下に溶媒を留去し、(RS)-1,1’-ビ-2-ナフトールのエチレンオキサイド2mol反応物300.0gを得た。」

イ 甲3B(訳文で示す。)
(3Ba)「

」(2521頁)

(3Bb)「ラセミジクロロエーテル11。2,2’-ジヒドロキシビナフチル(5g、17.5mmol)、100mlの水、5gのKOH、および4.25mlのエチレンクロロヒドリンの混合物を、70 90°で1時間攪拌した。次いで4.25mlのクロロヒドリンを添加し、加熱し、攪拌をさらに3時間継続し、10%のKOHaqを滴下することによってpHを約10に維持した(cf.Ref.9)。混合物をエチルエーテルで抽出し、有機層を10%のKOHaq.、水で2回洗浄し、最後に乾燥させた。溶媒を蒸発させた後、少量のMeOHを添加した後に残留物が結晶化し、1.14g(17%)の2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチルを得た。m.p.112?114°、HNMR・・・。」(2523頁左欄第5段落?右欄第1段落)

ウ 甲4B(訳文で示す。)
(4Ba)「2.3.1. 2,2’-[1,1’-ビナフタレン-2,2’-ジイルビス(オキシ)]ジエタノール(1)の合成
1,1’-ビナフタレン-2,2’-ジオール(10g、35mmol)をN_(2)(g)雰囲気下で60mLの無水エタノールに溶解し、NaOH(35g、87.5mmol)を添加した。混合物を50℃で加熱し、2-クロロエタノール(6mL、87.4mmol)および17mLの無水エタノールを15分間にわたって滴下した。次いで、N_(2)(g)雰囲気下で2日間、還流した。混合物をクロロホルム/メタノール(9.5:0.5)溶媒系で調整し、次いで合成を終了させた。クリーム状混合物を室温まで冷却し、濾過し、真空下で蒸発乾固し、最後に粘性液体生成物が得られた。この生成物をクロロホルム(200mL)に再溶解し、次いで、10%NaOHおよび水でそれぞれ洗浄した。合わせた有機抽出物を無水MgSO_(4)で乾燥させ、蒸発乾固した。エタノールから粗製残留物を再結晶させた後に、生成物をクリーム状固体として単離した。収率:7g(54%)。m.p.:100?102℃。分析計算値C_(24)H_(22)O_(4):・・・。実測値:・・・。IR・・・。^(1)HNMR・・・。^(13)CNMR・・・。」(96頁右欄第3段落)

(4Bb)「

」(97頁 Scheme 1 の一部)

エ 甲5B(訳文で示す。)
(5Ba)「

」(47欄)

(5Bb)「ジトシレート1b’およびジオール16(実施例3、手順2参照)を、下記の通り調製した。液体エチレンオキシド(30ml)を、-20℃で窒素下に保持された28.7gのラセミ体1および18gの無水炭酸カリウムの攪拌スラリーに添加した。2時間かけて、反応混合物を90℃まで徐々に温め、そこで16時間保持した。過剰なエチレンオキシドを、この期間中に蒸発させた。生成物を冷却し、氷および希塩酸と混合し、収集した。フィルターケーキを水で洗浄し、250mlのジクロロメタンに溶解し、溶液を、100mlの4N NaOH水溶液で4回にわたり洗浄し、ブラインで1回洗浄した。溶液を乾燥させ、蒸発させ、残留油をベンゼンおよびシクロヘキサンから結晶化させて、34.5g(92%)の16、m.p.101°?104°を得、そのpmr(60MHz)スペクトルは、実施例3、手順2で報告された材料の場合と同一であった。・・・」(47欄34?59行)

(5Bc)「

」(68欄)

(5Bd)「手順2
手順2では、15のより良好な収率が、1→16+17→18→19→15の順で得られた。化合物16および17は、下記の通り調製した。カリウムt-ブトキシド(23.5g、0.21mol)を、50g(0.175mol)の1を11のテトラヒドロフランに加えた攪拌溶液に、窒素下で添加した。還流混合物にクロロ酢酸エチル(25.8g、0.21mol)を30mlのテトラヒドロフランに溶かした溶液を、30分間、添加した。混合物を14時間還流し、溶媒を蒸発させ、残留物を、600mlのエーテルおよび400mlの水に溶解した、層を分離し、エーテル層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。エーテル溶液を300mlに濃縮し、水素化アルミニウムリチウム(7.0g、0.184mol)を1500mlの無水エーテルに加えたスラリーに滴下した。混合物を25°で12時間攪拌した。過剰な還元剤を3mlの酢酸エチルで破壊した後、400mlの6N塩酸を添加し、混合物をさらに4時間攪拌した。不溶性物質(17)を濾過した。濾液層を分離し、エーテル層を、2:1の水-メタノール中の2N水酸化カリウム溶液80mlで数回抽出した。水溶液を濃塩酸溶液で酸性化し、沈殿物を濾過し、可能な限り乾燥した状態で吸引した。
・・・
上記の塩基抽出からのエーテル層を、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。残留物のベンゼン-ヘキセンからの再結晶により、9.8g(15%)の16を綿状固体、m.p.112°?113°として得、そのmr(60MHz)スペクトルはCDCl_(3)中で、下記のシグナルを与えた:・・・。
分析・・・。」(69欄15?68行)

オ 甲6B
(6Ba)「【0001】
本発明は、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの新規結晶多形体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどのフルオレン誘導体は、耐熱性、透明性に優れ、高屈折率を備えたポリマー(例えばエポキシ樹脂、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等)を製造するための原料として有望であり、光学レンズ、フィルム、プラスチック光ファイバー、光ディスク基盤、耐熱性樹脂やエンジニヤリングプラスチックなどの素材原料として期待されている。
【0003】
これらの用途において熱的、光学的に優れたポリマーを作るためには、高い分子量、狭い分子量分布および未反応モノマーやオリゴマー含有率が低いことが重要であり、原料モノマーである9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが高純度で反応性に優れていることが望まれる。このため、原料モノマーの純度や反応性に大きく影響を与える結晶形や融点を制御することはより優れたポリマーを得るための重要な因子である。またポリマーの製造において優れた性能を維持し、より安定した製造を行うためには一定の品質を維持できる特定の結晶形を作り分けることが必要であった。」

(6Bb)「【0008】
本発明の目的は、一定の品質を維持し、ポリマー原料として優れた9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの新規な結晶多形体を提供することであり、また、その結晶多形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンには、従来から知られている融解吸熱最大が示差走査熱分析で100?130℃である結晶多形体(以下多形体Aと称する)の他に、融解吸熱最大が示差走査熱分析で150℃?180℃である新規な結晶多形体(以下多形体Bと称する)が存在する事を見出した、また、本発明者らは、かかる多形体Bを選択的に得る製造方法を見出すことにより本発明を完成するに至った。」

(6Bc)「【0011】
本発明によれば、一定の品質を維持し、ポリマー原料として優れた9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの新規な結晶多形体およびその製造方法を提供することができる。また、本発明により得られる多形体Bは、公知の多形体Aよりも嵩密度が高いため、容積効率等の点で工業的な取扱いに有利である。」

カ 甲7B
(7Ba)「【0001】
本発明は、取扱性、作業性、保存安定性などに優れた6,6-(9-フルオレニリデン)-ジ(2-ナフトール)の新規な結晶多形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
9,9-ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類などのフルオレン骨格を有する化合物は、高屈折率、高耐熱性などの優れた特性を有していることが知られている。例えば、特開2007-99741号公報(特許文献1)には、6,6-(9-フルオレニリデン)-ジ(2-ナフトール)が開示され、硫酸、β-メルカプトプロピオン酸、及びトルエンの存在下、フルオレノンとβ-ナフトールとを反応させ、この反応混合物にトルエン及び水を加え、さらに水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和した後、水層を除去し、有機層からジイソプロピルエーテルで再結晶させて6,6-(9-フルオレニリデン)-ジ(2-ナフトール)を得たことも記載されている。しかし、この結晶は、取扱性や作業性が低く、保存安定性も充分でない。」

(7Bb)「【0005】
従って、本発明の目的は、取扱性や作業性が向上した6,6-(9-フルオレニリデン)-ジ(2-ナフトール)の新規な結晶多形体及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、保存安定性に優れた6,6-(9-フルオレニリデン)-ジ(2-ナフトール)の新規な結晶多形体及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、高温で保存しても、純度の低下及び着色を抑制できる6,6-(9-フルオレニリデン)-ジ(2-ナフトール)の新規な結晶多形体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、6,6-(9-フルオレニリデン)-ジ(2-ナフトール)には結晶多形体が存在し、特定の晶析溶媒から6,6-(9-フルオレニリデン)-ジ(2-ナフトール)を晶析すると結晶多形体が得られること、この結晶多形体を熱処理することにより、さらに他の結晶多形体が得られること、これらの結晶多形体が、特許文献1記載の方法により得られた結晶多形体(以下、単に結晶多形体γ又はγ晶という場合がある)に比べて、取扱性、作業性、保存安定性に優れることを見いだし、本発明を完成した。」

(7Bc)「【0012】
本発明の6,6-(9-フルオレニリデン)-ジ(2-ナフトール)の結晶多形体は、嵩密度が高く、滑り性にも優れているため、取扱性や作業性を向上できる。また、この結晶多形体は、保存安定性(例えば、高温での保存安定性)にも優れている。特に、高温で長期間に亘り保存しても、純度の低下及び着色を有効に抑制できる。」

(7Bd)「【0064】
本発明の結晶多形体は、取扱性、作業性、保存安定性に優れるため、工業製品として好適に使用できる。また、本発明の結晶多形体は、ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン骨格を有するため、種々の特性(光学特性、耐熱性、耐水性、耐湿性、耐薬品性、電気特性、機械特性、寸法安定性など)に優れている。そのため、本発明の結晶多形体は、樹脂原料や樹脂硬化剤などとして好適に用いることができる。特に、本発明の結晶多形体を、熱硬化性樹脂[エポキシ樹脂(又はその硬化剤)や、アクリル系樹脂(多官能性(メタ)アクリレートなど)など]に適用すると、高耐熱性、高架橋性、高屈折率、高透明性、低線膨張率などの優れた特性を効率よく付与することができる。前記エポキシ樹脂は、上記のような特性が要求される用途、例えば、半導体封止剤、電装基板などとして好適である。また、前記アクリル系樹脂は、光学材料用途、例えば、光学用オーバーコート剤、ハードコート剤、反射防止膜、眼鏡レンズ、光ファイバー、光導波路、ホログラムなどに有用である。」

キ 甲8B(訳文で示す。)
(8Ba)「熱技術(8)、X線粉末回折(XRD)(9)、および赤外(IR)分光法、近赤外(NIR)分光法、およびテラヘルツ吸収分光法を含む振動分光法などの様々な分析ツールが、薬物分子(10)における多形の存在を確認するために報告されている。振動分光法は、原子の振動を調べることによって、固体状態における構造と分子コンホメーションに関する情報を提供する(11)。結晶格子内の分子間水素結合パターンは異なる多形によって違っており、吸収バンドのシフトを生じる。また、結晶充填の違いによる低エネルギー格子振動は多形の識別に有用である。この分野では、テラヘルツは、NIR分光法とマイクロ波分光法の間のリンクであり、異なる結晶形態を特徴づける格子フォノンモードを直接調べる。超分子化学および医薬品固形剤形に有望な非常に強力で有益な技術である(12)。」(565頁下から2行目?566頁10行目)

(8Bb)「NIR分光法は、石油化学、農業、臨床、環境(17)、医薬品の偽造(24、25)、医薬品分析(26)など、多様な分野で広く応用されている。報告された研究の中には、原薬の様々な多形、水和物および擬似多形をスクリーニングおよび特徴付けるための単一のツールまたはツールの1つとしてNIR分光法を実施したものもあった(表3に要約)。薬物分子中の多形をモニターするための有望なツールとしてテラヘルツ分光法を利用した最近のいくつかの研究も注目されている。McGoverinら(27)は、塩酸ラニチジンの二成分多形混合物の定量におけるNIR分光法の適用について検討した。スペクトルを乗法散乱補正(MSC)により前処理し、二次導関数および校正モデルを主成分回帰(PCR)および部分最小二乗回帰(PLSR)を用いて開発した。2つの多形間の分子内水素結合の違いは、多形のスペクトル変化を示した。この研究は、NIRが、ラニチジン塩酸塩の1つの多形体と別の多形体とのコンタミネーションを18.2%の定量レベルまで定量化する実行可能な方法を提供することを示唆する。」(568頁7?21行)

ク 甲9B(訳文で示す。)
(9Ba)「要約:
結晶化または沈殿からの母液の連続リサイクルに関する単純なモデルについて論じる。・・・」(165頁左欄1?3行)

(9Bb)「序文:
液体への生成物の損失を最小限に抑えながら、化学収率およびプロセス効率を最大限にすることは、経済上および環境上の理由で重要な目標である。しかし、生成物が反応混合物から沈殿した場合、または結晶化では、一般に液体への生成物の損失がある。」(165頁左欄14?20行)

(9Bc)「『二次収穫』回収の代替法は、母液を次のバッチにリサイクルすることである。結晶化後の母液に含まれる生成物は、当然に溶解度の限界にあり、次の結晶化の液の再使用は、他の条件が等しい場合、次のバッチにおいて、再使用された母液中の生成物の量に等しい追加の収率を与えるはずである。」(165頁左欄下から10?4行)

ケ 甲10B(訳文で示す。)
(10B)「4.2.1.2 オストワルド熟成
上述のプロセスにより形成されたクラスターは、核生成事象ではないが、得られる結晶集団の性質に影響を及ぼす現象を経験する。図4?5は、クラスターの表面分子が応力下にある事実を示すが、それはその分子が不十分に配位されているからである。この応力は、内部の圧力を上昇させ、界面張力を増大させ、より小さい実体、特に臨界クラスターサイズ近くの実体の、増大した溶解度をもたらす。この現象は、オストワルド-フロイントリッヒの方程式により記述され、商業的に重要なオストワルド熟成と呼ばれるプロセスをもたらす。多くの工業的結晶化プロセスは、しばしば加熱および冷却と共にエージサイクルを進んで、より小さい結晶を犠牲にしながら集団内でより大きい結晶を成長させる。オストワルド熟成について、セクション4.3.1.7および4.4でさらに論じる。」(92頁4?14行)

コ 甲11B(訳文で示す。)
(11Ba)「実験報告書
・・・
下記の実験は、以下に列挙する引用文献1から4で提供された、化合物2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン(以下、BHBNAとも呼ぶ)を調製するための手順を再現するために実施した。
1)A. Kertmenら、Tetrahedron 2013、69、10662?10668;特に10666頁、セクション3.2参照;
2)WO2011/126066、特に、[0083]:合成例(Synthesis Example)4参照;
3)J. F. Biernatら、Tetrahedron 1980、36、2521?2523、特に、2523頁、左欄の、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチルの調製およびそのメタノールからの結晶化;
4)M. B. Kilicaslanら、Dyes and Pigments 2014、103、95?105;特に、96頁、右欄のセクション2.3.1参照。」(1頁10?21行)

(11Bb)「実験手順を、引用文献に記載される通りに繰り返した。手順をどのように実施するかに関する詳細が見当たらない場合には、当業者が最も行ったであろう通りに進めた。」(1頁22?23行)

(11Bc)「I.BHBNAを調製するための、引用文献1の手順の再現
実験I-1
合成:
2,2’-ジヒドロキシ-1,1’-ビスナフタレン(14.3g、50mmol)およびNaOH(4.80g、0.12mol、2.4当量)を、EtOH(25mL)中に50℃で溶解した。2-クロロエタノール(19.8g、0.12mol、2.4当量)を添加し、反応混合物を20時間還流した。反応物をろ過し、濾液の溶媒を真空蒸発させた。油状残留物をCHCl_(3)(200mL)に溶解した。有機層をNaOH水溶液(3%、100mL)で、およびpH値が中性に到達するまで水(2×100mL)で連続的に洗浄した。
正確な融点105?106℃が引用文献中に示されているので、引用文献1の著者は、明らかにBHBNAを結晶形態で調製した。しかし、引用文献1は、結晶をどのように得たか述べていない。この理由により、実際に、最も一般的な結晶化方法、即ち、生成物溶液を濃縮し、所望の化合物を濃縮溶液から周囲温度またはそれよりも低い温度で結晶化する方法が使用されたと想定される。このように、引用文献1の手順の再現は、以下に記述されるように適宜継続された。
単離および結晶化:
17重量%の濃度を有する未処理の生成物のCHCl_(3)溶液が得られるまで、有機相を減圧下、50℃で濃縮した。この溶液から、0℃で3時間以内に、表題の化合物が無色の平板として結晶化した(付属書類Bの図I-1d参照)、m.p.:105?106℃。
NIRおよびPXRD測定は、得られた結晶が多形体Bに該当することを確認した。得られた材料のNIRスペクトルを付属書類Bの図I-1aに示すが、この図は、そのスペクトルと、多形体Bの参照BHBNA結晶のNIRスペクトルとの重ね合わせからわかるように、形態Bの特徴的な晶癖を示す。特に、4457および4568cm^(-1)での特徴的なバンドが存在し、一方、多形体Aに特徴的な4676cm^(-1)での吸収バンドは存在しない。」(2頁下から10行目?3頁16行)

(11Bd)「以下の実験I-2からI-7では、BHBNAの合成を、上記にてI-1で述べたものと同じ手順で実施した。
実験I-2
単離および結晶化:
19重量%の濃度を有する未処理の生成物のCHCl_(3)溶液が得られるまで、有機相を減圧下、50℃で濃縮した。この溶液から、表題の化合物が、一晩かけて周囲温度で、無色の平板として結晶化した(付属書類Bの図I-2c参照)、m.p.:103?106℃。
材料のDSCは、108.6℃で最大値を有する吸熱ピークを示した(付属書類Bの図I-2b参照)。
・・・
実験I-3
単離および結晶化:
23重量%の濃度を有する未処理の生成物のCHCl_(3)溶液が得られるまで、有機相を減圧下、50℃で濃縮した。この溶液から、表題の化合物が、周囲温度で3時間後に無色の平板として結晶化した(付属書類Bの図I-3b参照)、m.p.:104?105℃。
・・・
実験I-4
単離および結晶化:
24重量%の濃度を有する未処理の生成物のCHCl_(3)溶液が得られるまで、有機相を減圧下、50℃で濃縮した。この溶液から、表題の化合物が、周囲温度で一晩かけて、無色の平板として結晶化した(付属書類Bの図I-4c参照)、m.p.:104?105℃。
材料のDSCは、109.5℃で最大値を有する吸熱ピークを示した(付属書類Bの図I-4b参照)。
・・・
実験I-5
単離および結晶化:
25重量%の濃度を有する未処理の生成物のCHCl_(3)溶液が得られるまで、有機相を減圧下、50℃で濃縮した。この溶液から、表題の化合物が、周囲温度で一晩かけて、無色の平板として結晶化した、m.p.:105?108℃。
材料のDSCは、110.6℃で最大値を有する吸熱ピークを示した(付属書類Bの図I-5b参照)。
・・・
実験I-6
単離および結晶化:
25重量%の濃度を有する未処理の生成物のCHCl_(3)溶液が得られるまで、有機相を減圧下、50℃で濃縮した。この溶液から、表題の化合物が、周囲温度で一晩かけて、無色の平板として結晶化した(付属書類Bの図I-6c参照)、m.p.:105℃。
材料のDSCは、110℃で最大値を有する吸熱ピークを示した(付属書類Bの図I-6b参照)。
・・・
実験I-7
単離および結晶化:
23重量%の濃度を有する未処理の生成物のCHCl_(3)溶液が得られるまで、有機相を減圧下、50℃で濃縮した。この溶液から、表題の化合物が、周囲温度で一晩かけて、無色の平板として結晶化した(付属書類Bの図I-7c参照)、m.p.:104?105℃。
材料のDSCは、111.9℃で最大値を有する吸熱ピークを示した(付属書類Bの図I-7b参照)。
・・・
結論:
実験I-1からI-7では、多形体Bの結晶が得られた。」(3頁20行?5頁下から10行目)

(11Be)「II.BHBNAを調製するための、引用文献2の再現
実験II-1
温度計を備えた2Lのフラスコに、143.16g(0.5mol)の(R,S)-2,2’-ジヒドロキシ-1,1’-ビスナフタレン、132.1g(1.5mol)のエチレンカーボネート、20.7gの炭酸カリウム(K_(2)CO_(3))、およびトルエン(1000mL)を入れた。混合物を、12時間加熱して還流させた(110℃)。反応が完了した後(TLCによりチェックする)、得られた反応溶液を水(200mL)で、70℃で洗浄し、その後NaOH水溶液(1%、200mL)で、次いで水性相が中性になるまで水で洗浄した。有機相を、ロータリーエバポレーターを使用して60℃で濃縮した。溶媒が部分蒸発した後既に、長方形の小板が結晶化し始めた(付属書類Bの図II-1c参照)。蒸発を中断させて試料を採取し、次いで同じ温度で乾燥状態に至るまで完結させて、BHBNAを長方形の板状結晶として得た(付属書類Bの図II-1d参照)、m.p.:104℃。
試料のDSCは、108.5℃でピーク最大値を示した(立ち上がり101.5℃)。
このように得られたBHBNAを、付属書類Bの図II-1aに示されるように、NIR分光法により分析した、プローブのNIRスペクトルの晶癖は、そのスペクトルと、多形体Cの参照BHBNA結晶のNIRスペクトルとの重ね合わせからわかるように、多形体CのNIR参照スペクトルの晶癖に該当する。特に、4000から5000cm^(-1)の範囲にある微細構造は多形体Cに特徴的であり、4415/4377cm^(-1)での特徴的ダブルバンドを観察することができ、一方、多形体Aに特徴的な4676cm^(-1)での吸収バンドは存在しなかった。」(5頁下から2行目?6頁19行)

(11Bf)「実験II-2
・・・得られた溶液を、40?50℃で減圧下で濃縮した。このステップ中に、板状結晶が形成された。溶媒除去の完了により、結晶性生成物(169g)が得られ、この結晶は、本質的に長方形の小板状形態を有する(図II-2b参照);m.p.:102?104℃。
・・・
実験II-3
・・・得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを使用して40?50℃および100mbarで濃縮した。このステップ中に、板状結晶が形成された。溶媒除去の完了により、結晶性生成物の残留物(366g)が得られ、この結晶は、本質的に小板状形態を有する(図II-3b参照);m.p.:103?104℃。
・・・
実験II-4
・・・このように得られた生成物溶液を5分割し、それぞれをさらに、以下の実験II-4aからII-4eに詳述されるように異なる条件を使用して、減圧下で溶媒を除去することにより処理した。
実験II-4a
生成物溶液の100mL分を、ロータリーエバポレーターを使用して30℃および40mbarで濃縮した。このステップ中に、板状結晶が観察されたので、蒸発を中断させて試料を採取し、次いで同じ温度で乾燥状態に至るまで完結させて、板状結晶としてBHBNAを得た。・・・NIR分光法により多形体Cとして同定した・・・
実験II-4b
生成物溶液の100mL分を、ロータリーエバポレーターを使用して40℃および50mbarで濃縮した。このステップ中に、板状結晶が観察されたので、蒸発を中断させて試料を採取し、次いで同じ温度で乾燥状態に至るまで完結させて、板状結晶としてBHBNAを得た。・・・NIR分光法により多形体Cとして同定した・・・
実験II-4c
生成物溶液の100mL分を、ロータリーエバポレーターを使用して50℃および70mbarで濃縮した。このステップ中に、板状結晶が観察されたので、蒸発を中断させて試料を採取し、次いで同じ温度で乾燥状態に至るまで完結させて、板状結晶としてBHBNAを得た。・・・NIR分光法により多形体Cとして同定した・・・
実験II-4d
生成物溶液の100mL分を、ロータリーエバポレーターを使用して60℃および100mbarで濃縮した。このステップ中に、板状結晶が観察されたので、蒸発を中断させて試料を採取し、次いで同じ温度で乾燥状態に至るまで完結させて、板状結晶としてBHBNAを得た。・・・NIR分光法により多形体Cとして同定した・・・
実験II-4e
ロータリーエバポレーターを使用して70℃および100mbarで、生成物溶液の100mL分を濃縮した。乾燥状態に至る完全蒸発後、BHBNAの板状結晶が得られた。結晶は、NIR分光法により、微量の多形体Aを含む多形体Cとして同定された・・・
実験II-5
・・・このように得られた生成物溶液を5分割し、それぞれをさらに、以下の実験II-5aからII-5cに詳述されるように異なる条件を使用して、減圧下で溶媒を除去することにより加工する。
実験II-5a
ロータリーエバポレーターを使用して、30℃で、乾燥状態になるまで、生成物溶液の200mL分を濃縮した。板状結晶が、蒸発中に、および完全蒸発後の最終残留物中にも観察された(付属書類Bの図II-5b参照)。
完全蒸発後に得られた結晶は、NIR分光法により多形体Cとして同定された・・・
実験II-5b
ロータリーエバポレーターを使用して、40℃で、乾燥状態になるまで、生成物溶液の200mL分を濃縮した。板状結晶が、蒸発中に、および完全蒸発後の最終残留物中にも観察された(付属書類Bの図II-5b参照)。
完全蒸発後に得られた結晶は、NIR分光法により多形体Cとして同定された・・・
実験II-5c
ロータリーエバポレーターを使用して、60℃で、乾燥状態になるまで、生成物溶液の200mL分を濃縮した。板状結晶が、蒸発中に、および完全蒸発後の最終残留物中にも観察された(付属書類Bの図II-5f参照)。
完全蒸発後に得られた結晶は、NIR分光法により多形体Cとして同定された・・・
結論:
全ての実験II-1からII-5において、多形体Cの結晶が得られた。生成物溶液の濃縮が、70℃という非常に普通よりも高い温度で実施された実験II-4eの場合のみ、微量の多形体Aをさらに検出することができた。」(6頁下から9行目?10頁13行)

(11Bg)「III.BHBNAを調製するための、引用文献3の手順の再現
実験III
2,2’-ジヒドロキシビナフチル(5g、17.5mmol)、水(100mL)、KOH(5g)、および2-クロロエタノール(4.25mL)の混合物を、90℃で1時間攪拌した。2-クロロエタノール(4.25mL)を添加したが、このとき、KOH水溶液(10%)を滴下することによってpHを約10の値で維持しながら、加熱および攪拌をさらに3時間継続した。混合物をエチルエーテルで抽出し、有機層をKOH水溶液(10%、2×100mL)で、次いで水で洗浄し、最後に硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶媒の蒸発後、残留物をMeOH(13.5g)で均質化した。混合物を周囲温度まで冷却し、一晩かけて、結晶化させたことにより、0.4g(収率:6%)のBHBNAが無色の小板状結晶の形態で得られた(付属書類Bの図IIIb参照);m.p.:103?105℃。このように得られた結晶のDSCは、111℃の吸熱ピーク最大値を示す。
得られた結晶は、・・・NIR分光法により多形体Bとして同定された。」(10頁14?29行)

(11Bh)「IV.BHBNAを調製するための、引用文献4の手順の再現
実験IV
2,2’-ジヒドロキシ-1,1’-ビナフタレン(10g、35mmol)をアルゴン雰囲気下で60mLの無水エタノールに溶解した。NaOH(3.5g、87.5mmol)を溶液に添加した。混合物を50℃で加熱し、2-クロロエタノール(7.05g、87.6mmol)を17mLの無水エタノールに溶かしたものを、15分間にわたって滴下した。次いで反応混合物を、アルゴン雰囲気下で2日間、還流した。TLC対照は、比が9.5:0.5(v/v)であるクロロホルムおよびメタノールからなる溶媒系で実施した。反応混合物を、セライトに通して濾過し、真空下で蒸発乾固した。得られた残留物をクロロホルム(200mL)に再度溶解し、次いで、NaOH水溶液(10%)および水でそれぞれ洗浄した。合わせた有機抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発乾固した。残留物を、60℃でEtOH(20ml)に溶解し、次いで周囲温度まで一晩冷却することにより、付属書類Bの図IVからわかるように結晶性小板2.7g(収率:21%)を得た。」(10頁下から5行目?11頁9行)

サ 甲12B(訳文で示す。)
(12B)「付属書類A
日本特許第6484465号に記載されたプロトコールにより調製された、参照材料の分析データ」(1頁1?3行)

シ 甲13B(訳文で示す。)
(13B)「付属書類B
I 引用文献1により調製されたBHBNA
・・・
II 引用文献2によるBHBNA調製
・・・
III 引用文献IIIによるBHBNA
・・・
IV 引用文献4によるBHBNA調製
・・・」(1頁1?2行・・・13頁1行・・・26頁1行・・・27頁)

(3)申立理由B1について
ア 甲1Bに記載された発明
甲1Bは甲4Aと同じ文献であるから、甲1Bには、上記2(5)アで認定したとおり、次の発明が記載されていると認められる。
「下記構造式で表される化合物1-cの、mp(融点)105-106℃である灰色の固体。

」(以下、「甲1B発明」という。)

イ 対比・判断
(ア)本件発明1について
甲1B発明の「化合物1-c」は、その構造式から本件発明1の「2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1B発明とは、
「2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
(相違点5)本件発明1は「Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが10.4±0.2°、12.1±0.2°、14.8±0.2°および22.3±0.2°にピークを有する」「結晶」であるのに対し、甲1B発明はCu-Kα線による粉末X線回折パターンも結晶であることも特定していない点。

以下、相違点5について検討する。
甲1Bには、Cu-Kα線による粉末X線回折パターンは記載がない。
また、結晶化条件が同じであれば同じ結晶形の結晶であると考えられるため、結晶化条件について検討してみても、甲1Bには、甲1B発明の「灰色の固体」の結晶化条件の詳細は開示されておらず、甲1B発明の「灰色の固体」が本件発明1の結晶と同一の方法により生成したとはいえない。
そして、甲11Bの実験報告書で示された「再現実験」の実験I-1?I-7(記載事項(11Bb)?(11Bd))においては、結晶化を「一般的な結晶化方法」により行うが、論文等の文献に結晶化条件の開示がない場合に当該「一般的な結晶化方法」で行ったものと解する合理的な理由はないし技術常識であるともいえないから、当該「一般的な結晶化方法」により得られた結晶が、甲1B発明の「灰色の固体」と同一であるということはできない。
また、本件発明1の示差走査熱分析による融解吸熱最大は甲1B発明の融点と同程度であるが、仮に甲1B発明が結晶であったとしても、融点が同じであることのみで、同一の結晶形であるとする出願時の技術常識はないことは、上記2(3)イ(ア)aで述べたとおりである。
そうすると、甲1B発明の「灰色の固体」が本件発明1の結晶と同一であるということはできず、当該「灰色の固体」が本件発明1のCu-Kα線による粉末X線回折パターンと同一のパターンを示すということもできない。
したがって、上記相違点5は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1B発明ではない。

(イ)本件発明2?4について
本件発明2?4はいずれも、本件発明1の発明特定事項をその発明特定事項とするものであるから、本件発明1と同様の理由により甲1B発明ではない。

ウ 以上のとおり、本件発明1?4は甲1Bに記載された発明であるとはいえない。

(4)申立理由B2について
ア 判断
(ア)本件発明1について
上記2(4)ア(ア)と同様に、結晶の製造方法について検討する。
本件発明1の結晶(多形体B)の製造方法のような、晶析溶液に母液を添加し特定条件において晶析を行う方法は、甲1Bには記載も示唆もされておらず、また、本件優先日当時に技術常識として知られた一般的な製造方法ということもできない。
そうすると、甲6B?甲7Bの記載事項及び甲11B?甲13Bを参酌しても、甲1Bに記載された事項に基いて、本件発明1の結晶の製造方法を当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲1B発明及び甲6B?甲7B記載事項に基いて、甲11B?甲13Bを参酌しても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)本件発明2?4について
本件発明2?4は、本件発明1の発明特定事項をその発明特定事項とするものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1B発明及び甲6B?甲7B記載事項に基いて、甲11B?甲13Bを参酌しても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ よって、本件発明1?4は、甲1B発明及び甲6B?甲7B記載事項に基いて、甲11B?甲13Bを参酌しても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)申立理由B3について
ア 甲2Bに記載された発明
記載事項(2B)より、甲2Bには次の発明が記載されていると認められる。
「(RS)-1,1’-ビ-2-ナフトールのエチレンオキサイド。」(以下、「甲2B発明」という。)

イ 対比・判断
(ア)本件発明5について
甲2B発明の「(RS)-1,1’-ビ-2-ナフトールのエチレンオキサイド」は、本件発明5の「2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン」に相当する。
したがって、本件発明5と甲2B発明とは、
「2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
(相違点6)本件発明5は「Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが10.0±0.2°、19.2±0.2°、19.7±0.2°および22.2±0.2°にピークを有する」「結晶」であるのに対し、甲2B発明はCu-Kα線による粉末X線回折パターンも結晶であることも特定していない点。

以下、相違点6について検討する。
甲2Bには、甲2B発明の化合物を結晶化することは開示されておらず、甲2B発明の化合物が固体として得られたのかも明らかではない。
そして、甲11Bの実験報告書で示された「再現実験」の実験II-1?II-5(記載事項(11Be)?(11Bf))においては、例えば実験II-1では濃縮を60℃で行う等、甲2Bに記載のない実験条件を独自に定めているが、濃縮温度等の結晶化条件により結晶形が変わる可能性があることは本件優先日当時の技術常識であるから、当該「再現実験」により得られた結晶が、甲2B発明の化合物と同一であるということはできない。
そうすると、甲2B発明の化合物が結晶として得られているということはできず、当該化合物が本件発明5のCu-Kα線による粉末X線回折パターンと同一のパターンを示すということもできない。
したがって、上記相違点6は実質的な相違点であるから、本件発明5は、甲2B発明ではない。

(イ)本件発明6?8について
本件発明6?8はいずれも、本件発明5の発明特定事項をその発明特定事項とするものであるから、本件発明5と同様の理由により甲2B発明ではない。

ウ 以上のとおり、本件発明5?8は甲2Bに記載された発明であるとはいえない。

(6)申立理由B4について
ア 判断
(ア)本件発明5について
上記(5)イ(ア)で述べたとおり、甲2B発明が結晶であるとはいえず、特定の結晶とする動機付けもない。
したがって、本件発明5は、甲2B発明及び甲6B?甲7Bの記載事項に基いて、甲11B?甲13Bを参酌しても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)本件発明6?8について
本件発明6?8は、本件発明5の発明特定事項をその発明特定事項とするものであるから、本件発明5と同様の理由により、甲2B発明及び甲6B?甲7Bの記載事項に基いて、甲11B?甲13Bを参酌しても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ よって、本件発明5?8は、甲2B発明及び甲6B?甲7Bの記載事項に基いて、甲11B?甲13Bを参酌しても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(7)申立理由B5について
ア 甲3Bに記載された発明
記載事項(3Ba)?(3Bb)より、甲3Bには次の発明が記載されていると認められる。
「2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチルの、m.p.(融点)112?114°である結晶。」(以下、「甲3B発明」という。)

イ 対比・判断
(ア)本件発明1について
本件発明1と甲3B発明とは、
「2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン結晶」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
(相違点7)本件発明1は「Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが10.4±0.2°、12.1±0.2°、14.8±0.2°および22.3±0.2°にピークを有する」結晶であるのに対し、甲3B発明はCu-Kα線による粉末X線回折パターンを特定していない点。

以下、相違点7について検討する。
甲3Bには、Cu-Kα線による粉末X線回折パターンは記載がない。
また、結晶化条件が同じであれば同じ結晶形の結晶であると考えられるため、結晶化条件について検討してみても、甲3Bには、甲3B発明の結晶の結晶化条件の詳細は開示されておらず、甲3B発明の結晶が本件発明1の結晶と同一の方法により生成したとはいえない。
そして、甲11Bの実験報告書で示された「再現実験」の実験III(記載事項(11Bg))により得られた結晶の融点は103?105℃であり、甲3B発明の結晶の融点(112?114°)と異なるから、当該「再現実験」により得られた結晶が、甲3B発明の結晶と同一であるということはできない。
そうすると、甲3B発明の結晶が本件発明1の結晶と同一であるということはできず、当該結晶が本件発明1のCu-Kα線による粉末X線回折パターンと同一のパターンを示すということもできない。
したがって、上記相違点7は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲3B発明ではない。

(イ)本件発明2?4について
本件発明2?4はいずれも、本件発明1の発明特定事項をその発明特定事項とするものであるから、本件発明1と同様の理由により甲3B発明ではない。

ウ 以上のとおり、本件発明1?4は甲3Bに記載された発明であるとはいえない。

(8)申立理由B6について
ア 判断
(ア)本件発明1について
上記2(4)ア(ア)と同様に、結晶の製造方法について検討する。
本件発明1の結晶(多形体B)の製造方法のような、晶析溶液に母液を添加し特定条件において晶析を行う方法は、甲3Bには記載も示唆もされておらず、また、本件優先日当時に技術常識として知られた一般的な製造方法ということもできない。
そうすると、甲6B?甲7Bの記載事項及び甲11B?甲13Bを参酌しても、甲3Bに記載された事項に基いて、本件発明1の結晶の製造方法を当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲3B発明及び甲6B?甲7Bの記載事項に基いて、甲11B?甲13Bを参酌しても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)本件発明2?4について
本件発明2?4は、本件発明1の発明特定事項をその発明特定事項とするものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲3B発明及び甲6B?甲7Bの記載事項に基いて、甲11B?甲13Bを参酌しても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ よって、本件発明1?4は、甲3B発明及び甲6B?甲7Bの記載事項に基いて、甲11B?甲13Bを参酌しても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(9)申立理由B7について
ア 甲4Bに記載された発明
記載事項(4Ba)?(4Bb)より、甲4Bには次の発明が記載されていると認められる。
「2,2’-[1,1’-ビナフタレン-2,2’-ジイルビス(オキシ)]ジエタノール(1)の、m.p.(融点)100?102℃である結晶。」(以下、「甲4B発明」という。)

イ 対比・判断
(ア)本件発明1について
甲4B発明の「2,2’-[1,1’-ビナフタレン-2,2’-ジイルビス(オキシ)]ジエタノール」は、本件発明1の「2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン」に相当する。
したがって、本件発明1と甲4B発明とは、
「2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン結晶」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
(相違点8)本件発明1は「Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが10.4±0.2°、12.1±0.2°、14.8±0.2°および22.3±0.2°にピークを有する」結晶であるのに対し、甲4B発明はCu-Kα線による粉末X線回折パターンを特定していない点。

以下、相違点8について検討する。
甲4Bには、Cu-Kα線による粉末X線回折パターンは記載がない。
また、結晶化条件が同じであれば同じ結晶形の結晶であると考えられるため、結晶化条件について検討してみても、甲4Bには、甲4B発明の結晶の結晶化条件の詳細は開示されておらず、甲4B発明の結晶が本件発明1の結晶と同一の方法により生成したとはいえない。
そして、甲11Bの実験報告書で示された「再現実験」の実験IV(記載事項(11Bh))には、得られた結晶が小板状であったことが記載されているのみであり、当該実験結果からは、当該結晶が多形体Aではないことが予想されるものの、どのような結晶形であるかは定まらないから、当該「再現実験」により得られた結晶が、甲4B発明の結晶と同一であるということはできない。
そうすると、甲4B発明の結晶が本件発明1の結晶と同一であるということはできず、当該結晶が本件発明1のCu-Kα線による粉末X線回折パターンと同一のパターンを示すということもできない。
したがって、上記相違点8は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲4B発明ではない。

(イ)本件発明2?4について
本件発明2?4はいずれも、本件発明1の発明特定事項をその発明特定事項とするものであるから、本件発明1と同様の理由により甲4B発明ではない。

(ウ)本件発明5について
上記(ア)と同様に比較すると、本件発明5と甲4B発明とは、
「2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン結晶」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
(相違点9)本件発明5は「Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが10.0±0.2°、19.2±0.2°、19.7±0.2°および22.2±0.2°にピークを有する」結晶であるのに対し、甲4B発明はCu-Kα線による粉末X線回折パターンを特定していない点。

以下、相違点9について検討する。
甲4Bには、Cu-Kα線による粉末X線回折パターンは記載がない。
また、結晶化条件が同じであれば同じ結晶形の結晶であると考えられるため、結晶化条件について検討してみても、甲4Bには、甲4B発明の結晶の結晶化条件の詳細は開示されておらず、甲4B発明の結晶が本件発明5の結晶と同一の方法により生成したとはいえない。
そして、上記(ア)のとおり、甲11Bの「再現実験」により得られた結晶が、甲4B発明の結晶と同一であるということはできない。
そうすると、甲4B発明の結晶が本件発明5の結晶と同一であるということはできず、当該結晶が本件発明5のCu-Kα線による粉末X線回折パターンと同一のパターンを示すということもできない。
したがって、上記相違点9は実質的な相違点であるから、本件発明5は、甲4B発明ではない。

(エ)本件発明6?8について
本件発明6?8はいずれも、本件発明5の発明特定事項をその発明特定事項とするものであるから、本件発明5と同様の理由により甲4B発明ではない。

ウ 以上のとおり、本件発明1?8は甲4Bに記載された発明であるとはいえない。

(10)申立理由B8について
ア 判断
(ア)本件発明1について
上記2(4)ア(ア)と同様に、結晶の製造方法について検討する。
本件発明1の結晶(多形体B)の製造方法のような、晶析溶液に母液を添加し特定条件において晶析を行う方法は、甲4Bには記載も示唆もされておらず、また、本件優先日当時に技術常識として知られた一般的な製造方法ということもできない。
そうすると、甲6B?甲7Bの記載事項及び甲11B?甲13Bを参酌しても、甲4Bに記載された事項に基いて、本件発明1の結晶の製造方法を当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲4B発明及び甲6B?甲7Bの記載事項に基いて、甲11B?甲13Bを参酌しても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)本件発明2?4について
本件発明2?4は、本件発明1の発明特定事項をその発明特定事項とするものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲4B発明及び甲6B?甲7Bの記載事項に基いて、甲11B?甲13Bを参酌しても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(ウ)本件発明5について
上記2(4)ア(ア)と同様に、結晶の製造方法について検討する。
本件発明5の結晶(多形体C)の製造方法のような、晶析溶液に母液を添加し特定条件において晶析を行う方法は、甲4Bには記載も示唆もされておらず、また、本件優先日当時に技術常識として知られた一般的な製造方法ということもできない。
そうすると、甲6B?甲7Bの記載事項及び甲11B?甲13Bを参酌しても、甲4Bに記載された事項に基いて、本件発明5の結晶の製造方法を当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明5は、甲4B発明及び甲6B?甲7Bの記載事項に基いて、甲11B?甲13Bを参酌しても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(エ)本件発明6?8について
本件発明6?8は、本件発明5の発明特定事項をその発明特定事項とするものであるから、本件発明5と同様の理由により、甲4B発明及び甲6B?甲7Bの記載事項に基いて、甲11B?甲13Bを参酌しても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ よって、本件発明1?8は、甲4B発明及び甲6B?甲7Bの記載事項に基いて、甲11B?甲13Bを参酌しても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(11)申立理由B9について
ア 甲5Bに記載された発明
記載事項(5Ba)?(5Bd)より、甲5Bには次の発明が記載されていると認められる。
「下記構造式で表される化合物16の、m.p.(融点)101°?104°である結晶。

」(以下、「甲5B発明」という。)

イ 対比・判断
(ア)本件発明5について
甲5B発明の「化合物16」は、その構造式から本件発明5の「2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン」に相当する。
したがって、本件発明5と甲5B発明とは、
「2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン結晶」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
(相違点10)本件発明5は「Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが10.0±0.2°、19.2±0.2°、19.7±0.2°および22.2±0.2°にピークを有する」結晶であるのに対し、甲2B発明はCu-Kα線による粉末X線回折パターンを特定していない点。

以下、相違点10について検討する。
甲5Bには、Cu-Kα線による粉末X線回折パターンは記載がない。
また、結晶化条件が同じであれば同じ結晶形の結晶であると考えられるため、結晶化条件について検討してみても、甲5Bには、甲5B発明の結晶の結晶化条件の詳細は開示されておらず、甲5B発明の結晶が本件発明5の結晶と同一の方法により生成したとはいえない。
そして、本件発明5の示差走査熱分析による融解吸熱最大は甲5B発明の融点と同程度であるが、仮に甲5B発明が結晶であったとしても、融点が同じであることのみで、同一の結晶形であるとする出願時の技術常識はないことは、上記2(3)イ(ア)aで述べたとおりである。
そうすると、甲5B発明の結晶が本件発明5の結晶と同一であるということはできず、当該結晶が本件発明5のCu-Kα線による粉末X線回折パターンと同一のパターンを示すということもできない。
したがって、上記相違点10は実質的な相違点であるから、本件発明5は、甲5B発明ではない。

(イ)本件発明6?8について
本件発明6?8はいずれも、本件発明5の発明特定事項をその発明特定事項とするものであるから、本件発明5と同様の理由により甲5B発明ではない。

ウ 以上のとおり、本件発明5?8は甲5Bに記載された発明であるとはいえない。

(12)申立理由B10について
ア 判断
(ア)本件発明5について
上記2(4)ア(ア)と同様に、結晶の製造方法について検討する。
本件発明5の結晶(多形体C)の製造方法のような、晶析溶液に母液を添加し特定条件において晶析を行う方法は、甲5Bには記載も示唆もされておらず、また、本件優先日当時に技術常識として知られた一般的な製造方法ということもできない。
そうすると、甲6B?甲7Bの記載事項及び甲11B?甲13Bを参酌しても、甲5Bに記載された事項に基いて、本件発明5の結晶の製造方法を当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明5は、甲5B発明及び甲6B?甲7Bの記載事項に基いて、甲11B?甲13Bを参酌しても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)本件発明6?8について
本件発明6?8は、本件発明5の発明特定事項をその発明特定事項とするものであるから、本件発明5と同様の理由により、甲5B発明及び甲6B?甲7Bの記載事項に基いて、甲11B?甲13Bを参酌しても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ よって、本件発明5?8は、甲5B発明及び甲6B?甲7Bの記載事項に基いて、甲11B?甲13Bを参酌しても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(13)申立理由B13について
本件発明13は、本件発明1?8のいずれかの結晶から塊状結晶を製造する方法の発明である。
本件発明13において原料となる本件発明1?4は、上記(3)イで述べたとおり甲1B発明ではなく、上記(7)イで述べたとおり甲3B発明でもなく、上記(9)イで述べたとおり甲4B発明でもない。また、上記(4)アで述べたとおり、甲1B発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、上記(8)アで述べたとおり、甲3B発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、上記(10)アで述べたとおり、甲4B発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
同様に本件発明13において原料となる本件発明5?8は、上記(5)イで述べたとおり甲2B発明ではなく、上記(9)イで述べたとおり甲4B発明でもなく、上記(11)イで述べたとおり甲5B発明でもない。また、上記(6)アで述べたとおり、甲2B発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、上記(10)アで述べたとおり、甲4B発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、上記(12)アで述べたとおり、甲5B発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
よって、本件発明13は、甲10B?甲13Bの記載事項を参酌しても、甲1B?甲5B発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(14)以上のとおり、申立人Bが申し立てた取消理由によって、本件請求項1?8、13に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?8、13に係る特許は、令和2年1月17日付けの取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立人A、Bが申し立てた特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?8、13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件請求項9?12に係る特許は訂正により削除され、本件特許の請求項9?12に係る特許異議の申立ては対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが10.4±0.2°、12.1±0.2°、14.8±0.2°および22.3±0.2°にピークを有する2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン結晶。
【請求項2】
示差走査熱分析による融解吸熱最大が109?112℃である請求項1に記載の2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン結晶。
【請求項3】
板状結晶であって、光学顕微鏡写真に基づき求めた最大結晶長さLと幅Wとの比L/Wが1?8である請求項1又は2に記載の2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン結晶。
【請求項4】
板状結晶の幅Wが3μm以上である請求項3に記載の2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン結晶。
【請求項5】
Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが10.0±0.2°、19.2±0.2°、19.7±0.2°および22.2±0.2°にピークを有する2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン結晶。
【請求項6】
示差走査熱分析による融解吸熱最大が106?108℃である請求項5に記載の2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン結晶。
【請求項7】
板状結晶であって、光学顕微鏡写真に基づき求めた最大結晶長さLと幅Wとの比L/Wが1?8である請求項5又は6に記載の2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン結晶。
【請求項8】
板状結晶の幅Wが3μm以上である請求項7に記載の2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン結晶。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
請求項1?8のいずれか1項に記載の2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの結晶を用意する工程と、
前記結晶を40?108℃に加熱する工程と、
を含む2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの塊状結晶の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-09-07 
出願番号 特願2015-43191(P2015-43191)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C07C)
P 1 651・ 121- YAA (C07C)
P 1 651・ 536- YAA (C07C)
P 1 651・ 113- YAA (C07C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 伊藤 幸司薄井 慎矢  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 冨永 保
櫛引 智子
登録日 2019-02-22 
登録番号 特許第6484465号(P6484465)
権利者 田岡化学工業株式会社
発明の名称 2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの結晶多形体およびその製造方法  
代理人 特許業務法人平木国際特許事務所  
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