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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
管理番号 1368085
異議申立番号 異議2019-700785  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-10-02 
確定日 2020-09-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6496193号発明「硬化性シリコーン樹脂組成物及びその硬化物、並びに光半導体装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6496193号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。 特許第6496193号の請求項1、2、4ないし9に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨・審理範囲

1.本件特許の設定登録までの経緯
本件特許第6496193号に係る出願(特願2015-112586号、以下「本願」ということがある。)は、平成27年6月2日に出願人株式会社ダイセル(以下「特許権者」ということがある。)によりされた特許出願であり、平成31年3月15日に特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、平成31年4月3日に特許掲載公報が発行されたものである。

2.本件特許異議の申立ての趣旨
本件特許につき、令和元年10月2日に特許異議申立人信越化学工業株式会社(以下「申立人」ということがある。)により、「特許第6496193号の特許請求の範囲の請求項1、2及び4ないし9に記載された発明についての特許を取り消すべきである。」という趣旨の本件特許異議の申立てがされた。(以下、当該申立てを「申立て」ということがある。)

3.審理すべき範囲
上記2.の申立ての趣旨からみて、特許第6496193号の特許請求の範囲の請求項1、2及び4ないし9に係る発明についての特許を審理の対象とすべきものであって、請求項3に係る発明についての特許は、本件特許異議の申立てに係る審理の対象外である。

4.以降の手続の経緯
令和2年 1月 9日付け 取消理由通知
令和2年 3月13日 意見書・訂正請求書
令和2年 4月 6日付け 通知書(申立人あて)
(通知書に対する申立人からの意見書の提出はなかった。)

第2 申立人が主張する取消理由
申立人は、同人が提出した本件特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第6号証を提示し、具体的な取消理由として、概略、以下の(1)及び(2)が存するとしている。

(1)本件の請求項1及び5ないし9に係る発明は、いずれも、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではないから、本件特許の請求項1及び5ないし9に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)本件特許の請求項1、2及び4ないし9に係る発明は、いずれも甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は特許法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。

・申立人提示の甲号証
甲第1号証:特開2010-47646号公報
甲第2号証:特開平11-60955号公報
甲第3号証:特開平6-316690号公報
甲第4号証:特開平7-11010号公報
甲第5号証:特開2006-335857号公報
甲第6号証:国際公開第2012/081247号
(以下、上記「甲第1号証」ないし「甲第6号証」を、それぞれ、「甲1」ないし「甲6」と略す。)

第3 当審が通知した取消理由の概要
当審は、本件特許第6496193号に対する下記第2に示す特許異議の申立てを審理した上、以下の取消理由を通知した。

●本件の請求項1及び5ないし8に係る発明は、いずれも、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではないから、本件特許の請求項1及び5ないし8に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由1」という。)
●本件特許の請求項1、2及び4ないし9に係る発明は、いずれも、甲第1号証又は甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものではなく、本件特許の請求項1、2及び4ないし9に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由2」という。)

第4 令和2年3月13日付訂正請求による訂正の適否

1.訂正内容
令和2年3月13日付訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、以下の訂正事項を含むものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「(D):希土類金属原子の酸化物、希土類金属原子の水酸化物、希土類金属原子のホウ化物、希土類金属原子のハロゲン化物、希土類金属原子の錯体、及び希土類金属原子の塩からなる群より選択される1以上の希土類金属化合物(但し蛍光体及びリン光体材料に該当するものを除く)」とあるのを、「(D):希土類金属原子の錯体、希土類金属原子の無機塩、希土類金属原子の酢酸塩、及び希土類金属原子のヘキサン酸塩からなる群より選択される1以上の希土類金属化合物(但し、蛍光体及びリン光体材料に該当するものを除く)」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に
「下記の(E)成分を含む請求項1又は2に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
(E):分子内に2個以上のアルケニル基及び1個以上のアリール基を有するポリオルガノシロキシシルアルキレン」とあるのを、
「下記の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、及び(E)成分を含むことを特徴とする硬化性シリコーン樹脂組成物。
(A):分子内に1個以上のヒドロシリル基を有し、脂肪族不飽和基を有しないポリオルガノシロキサン
(B):分子内に1個以上のアルケニル基を有する分岐鎖状のポリオルガノシロキサン
(C):白金族金属を含むヒドロシリル化触媒
(D):希土類金属原子の酸化物、希土類金属原子の水酸化物、希土類金属原子のホウ化物、希土類金属原子のハロゲン化物、希土類金属原子の錯体、及び希土類金属原子の塩からなる群より選択される1以上の希土類金属化合物(但し、蛍光体及びリン光体材料に該当するものを除く)
(E):分子内に2個以上のアルケニル基及び1個以上のアリール基を有するポリオルガノシロキシシルアルキレン」に訂正する。

2.検討
以下の検討において、本件訂正前の請求項1ないし9をそれぞれ項番に従い「旧請求項1」のようにいい、訂正後の請求項1ないし9についてそれぞれ項番に従い「新請求項1」のようにいう。)

(1)訂正の目的

ア.訂正事項1に係る訂正
上記訂正事項1に係る訂正では、旧請求項1について、「(D)」の「希土類金属化合物」につき、並列的選択肢の一部を削除すると共に、旧請求項1における「希土類金属原子の塩」につき、「無機塩」、「酢酸塩」又は「ヘキサン酸塩」に限定することにより、旧請求項1に対してその特許請求の範囲を減縮して新請求項1としていることが明らかであるから、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ.訂正事項2に係る訂正
上記訂正事項2に係る訂正では、旧請求項1又は2を引用して記載された旧請求項3について、旧請求項1に記載された事項を書き下して、新請求項3としたものであるから、他の請求項を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

ウ.小括
したがって、本件訂正における上記訂正事項1又は2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる目的要件に適合する。

(2)新規事項の追加及び特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無
上記(1)でそれぞれ説示したとおり、訂正事項1に係る訂正は、「希土類金属化合物」につき、並列的選択肢の一部を削除すると共に、旧請求項1における「希土類金属原子の塩」につき、明細書の【0062】ないし【0069】の記載に基づき、「無機塩」、「酢酸塩」又は「ヘキサン酸塩」に限定することにより、請求項1に係る特許請求の範囲を実質的に減縮していることが明らかであり、また、訂正事項2に係る訂正は、旧請求項1を引用する旧請求項3につき、旧請求項1に記載された事項を単に書き下して新請求項3としたものであるから、各訂正事項に係る訂正は、いずれも、新たな技術的事項を導入するものではなく、訂正前の各請求項に係る特許請求の範囲を実質的に変更又は拡張するものでもない。
したがって、上記各訂正事項に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものである。

(3)独立特許要件について
本件訂正のうち、訂正事項2に係る訂正は、本件特許異議の申立てがされていない請求項3に係るものであるところ、上記(1)で説示したとおり、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5ただし書第4号に掲げる目的要件に適合するものであり、同条ただし書第1号又は第2号に掲げる目的要件に適合するものではない。
してみると、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項における同条第1項ただし書第1号又は第2号の目的をもって訂正したものではないから、第126条第7項の規定を適用することはできず、いわゆる独立特許要件につき検討することを要しない。
なお、訂正事項1に係る訂正は、本件特許異議の申立てがされている請求項1についてのものであるから、いわゆる独立特許要件につき検討することを要しない。
したがって、本件訂正に係る訂正の適否の検討において、独立特許要件につき検討すべき請求項が存するものではない。

3.訂正に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項並びに第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正を認める。

第5 訂正後の本件特許に係る請求項に記載された事項
訂正後の本件特許に係る請求項1ないし9には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
下記の(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を含むことを特徴とする硬化性シリコーン樹脂組成物。
(A):分子内に1個以上のヒドロシリル基を有し、脂肪族不飽和基を有しないポリオルガノシロキサン
(B):分子内に1個以上のアルケニル基を有する分岐鎖状のポリオルガノシロキサン
(C):白金族金属を含むヒドロシリル化触媒
(D):希土類金属原子の錯体、希土類金属原子の無機塩、希土類金属原子の酢酸塩、及び希土類金属原子のヘキサン酸塩からなる群より選択される1以上の希土類金属化合物(但し、蛍光体及びリン光体材料に該当するものを除く)
【請求項2】
希土類金属原子の含有量が、前記硬化性シリコーン樹脂組成物100重量%に対して、0.1?500ppmである請求項1に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
下記の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、及び(E)成分を含むことを特徴とする硬化性シリコーン樹脂組成物。
(A):分子内に1個以上のヒドロシリル基を有し、脂肪族不飽和基を有しないポリオルガノシロキサン
(B):分子内に1個以上のアルケニル基を有する分岐鎖状のポリオルガノシロキサン
(C):白金族金属を含むヒドロシリル化触媒
(D):希土類金属原子の酸化物、希土類金属原子の水酸化物、希土類金属原子のホウ化物、希土類金属原子のハロゲン化物、希土類金属原子の錯体、及び希土類金属原子の塩からなる群より選択される1以上の希土類金属化合物(但し、蛍光体及びリン光体材料に該当するものを除く)
(E):分子内に2個以上のアルケニル基及び1個以上のアリール基を有するポリオルガノシロキシシルアルキレン
【請求項4】
さらに蛍光体を含む請求項1?3のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化させることにより得られる硬化物。
【請求項6】
光半導体封止用樹脂組成物である請求項1?4のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項7】
光半導体用レンズの形成用樹脂組成物である請求項1?4のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項8】
光半導体素子と、該光半導体素子を封止する封止材とを含み、前記封止材が請求項6に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする光半導体装置。
【請求項9】
光半導体素子とレンズとを含み、前記レンズが請求項7に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする光半導体装置。」
(以下、各請求項に記載された事項で特定される発明を項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明9」といい、「本件発明」と総称することがある。)

第6 当審の判断
当審は、
当審が通知した上記取消理由及び申立人が主張する上記取消理由についてはいずれも理由がなく、ほかに各特許を取り消すべき理由も発見できないから、本件の請求項1、2、4ないし9に係る発明についての特許は、いずれも取り消すべきものではなく、維持すべきもの、
と判断する。
以下、まず、取消理由1及び2につき併せて検討し、次に、申立人が主張する取消理由につき検討・詳述する。

I.取消理由1及び2について

1.各甲号証に記載された事項及び記載された発明
上記取消理由1及び2並びに申立人が主張する取消理由は、いずれも特許法第29条に基づく取消理由であるから、まず、各甲号証に記載された事項を確認し、記載された事項に基づき、甲1及び甲5に記載された発明の認定を行う。(記載事項に係る下線は、元々あるものを除き、当審が付した。)

(1)甲1

ア.甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている。

(1a)
「【請求項1】
(A)(A1)SiO_(4/2)単位及びR_(3)SiO_(1/2)単位、並びに場合によってはさらにR_(2)SiO単位及び/又はRSiO_(3/2)単位(式中、Rは、それぞれ独立して、1価の非置換又は置換の炭化水素基を表す)からなり、1分子当たり、少なくとも3個のRがアルケニル基である、分岐状オルガノポリシロキサンと、
場合によって、(A2)ケイ素原子に、R(Rは、上記のとおりである)が結合しており、1分子当たり、少なくとも2個のRがアルケニル基である、直鎖状オルガノポリシロキサンと、
からなる、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン;
(B)SiO_(4/2)単位及びR^(3)(CH_(3))_(2)SiO_(1/2)単位(式中、R^(3)は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す)からなり、1分子当たり、少なくとも3個のR^(3)が水素原子である、ポリアルキルハイドロジェンシロキサン;並びに
(C)(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金
を含む光硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
(C)の白金原子の含有量が、(A)及び(B)の合計量に対して0.1?1,000重量ppmである、請求項1記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
(A)100重量%中、(A1)が50?100重量%であり、(A2)が50?0重量%である、請求項1又は2記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
(A)に存在するアルケニル基1個に対する、(B)のケイ素原子に結合した水素原子の数の比(H/Vi)が0.5?2.0である、請求項1?3のいずれか1項記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか1項記載のオルガノポリシロキサン組成物を、硬化させて得られる硬化物。
【請求項6】
タイプDデュロメータによる硬さが、30以上である請求項5記載の硬化物。
【請求項7】
光学レンズである、請求項5又は6記載の硬化物。
【請求項8】
発光ダイオードの封止材である、請求項5又は6記載の硬化物。」

(1b)
「【0001】
本発明は、光硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関し、特に、硬化して、発光ダイオード(以下、LEDという)の封止材、レンズなどの光学的用途に適した硬化物を与えるオルガノポリシロキサン組成物に関する。また、本発明は、このようなオルガノポリシロキサン組成物を硬化させて得られる硬化物、特に光学用及びLED用に好適な硬化物に関する。
・・(中略)・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ポットライフと硬化特性のコントロールが自由に決定でき、かつ黄変が抑制され、LED用及び光学レンズ用に適した硬化物を与える、光硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供することである。本発明のもう一つの目的は、上記の特性を有し、LEDの封止材及び光学レンズに適した硬化物を提供することである。」

(1c)
「【0030】
さらに、本発明の組成物には、硬化物の硬さや透明性などの本発明の目的を損なわないかぎり、必要に応じて、オクタン酸セリウムに代表されるセリウム化合物のような無色の耐熱性向上剤など、各種の添加剤を配合してもよい。また用途によっては、本発明の組成物を、トルエン、キシレンのような有機溶媒に溶解ないし分散させて用いてもよい。」

(1d)
「【0037】
本発明の組成物の硬化物は、青色から紫外領域にかけての短波長領域での透過性に優れ、厚さ10mmの硬化物に対して、波長400nmにおける光透過率が、通常、84%以上であり、より好ましくは86%以上である。さらに、硬化物においては、熱への暴露による黄変が抑制されており、透過率が低下しにくい。
【0038】
また、本発明の組成物の硬化物は、線膨張係数が、通常、100?300×10^(-6)/K、好ましくは200?280×10^(-6)/Kである。このように膨張係数を上記範囲とすることで、レンズなどを光学機械などの部品に固定した後の熱履歴や熱衝撃による内部ひずみが緩和され、レンズなどの亀裂を防ぐことができる。さらに、レンズとして光学設計する際のレンズの変形を抑えることができる。
【0039】
例えば、本発明の組成物は、LED用の封止に使用することができ、例えば、LEDを搭載した基板に、LEDを封止するように、かつ気泡が残らないように、注型などの方法で送り込み、UV光を照射して、場合により加熱して硬化させて、LEDを内包したレンズの成形品を作製することができる。また、あらかじめ各種の方法で成形したレンズをLED部品にセットし、LEDをそこに嵌め込むか、接着剤で固定することもできる。このように、本発明の組成物の硬化物はLED封止材として好ましく、また、光学レンズにも好適である。」

(1e)
「【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに詳細に説明する。これらの例において、部は重量部、組成の%は重量%を示し、粘度は23℃における粘度を示す。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0041】
以下、シロキサン単位を、次のような記号で示す。
M 単位: (CH_(3))_(3)SiO_(1/2)-
M^(H)単位: (CH_(3))_(2)HSiO_(1/2)-
M^(v)単位: (CH_(3))_(2)(CH_(2)=CH)SiO_(1/2)-
D 単位: -(CH_(3))_(2)SiO-
D^(H)単位: -(CH_(3))HSiO-
Q 単位: SiO_(4/2)(4官能性)
【0042】
実施例及び比較例に用いる(A)オルガノポリシロキサンは、以下のとおりである。
(A1):M単位、M^(v)単位及びQ単位からなり、モル単位比がM_(5)M^(v)Q_(8)で示される分岐状の固体ポリメチルビニルシロキサンの60%キシレン溶液;
(A2):両末端がM^(v)単位で封鎖され、中間単位がすべてD単位であり、23℃における粘度が0.2Pa・sである直鎖状ポリメチルビニルシロキサン;
【0043】
上記のオルガノポリシロキサン(A1)は、以下のように調製したものである。キシレン210部、トリメチルクロロシラン271.3部、ジメチルビニルクロロシラン60.3部及びテトラエトキシシラン832部を、攪拌機、滴下装置、加熱・冷却装置及び減圧装置を備えた反応容器に仕込み、均一に溶解させた。ここに過剰の水を滴下し、副生した塩酸の溶解熱を冷却により除去しつつ、80℃で共加水分解と縮合を行った。得られた有機層を、洗浄水が中性を示すまで水で洗浄し、脱水した後、KOHを200ppmになるように添加し、140℃において系外に水を除きながら脱水縮合を行った。その後、リン酸で中和し、生成した塩をろ過し、不揮発分が60%になるようにキシレンで希釈し調整した。
【0044】
また、上記の直鎖状ポリメチルビニルシロキサン(A2)は、以下のように調製したものである。オクタメチルシクロテトラシロキサン845.6部を攪拌機、滴下装置、加熱・冷却装置及び減圧装置を備えた反応容器に仕込み、N_(2)を流しながら、140℃において攪拌し脱水した。その後、1,7-ジビニル-1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチルシロキサン14.2部及びKOH8部を添加し、140℃で8時間、開環重合を行った。その後、100℃まで冷却し、エチレンクロロヒドリン100gを添加し、100℃2時間で中和を行った。その後、低分子量のポリマーを160℃で4時間、1.3KPa{10mmHg}以下でストリッピングを行い、冷却後ろ過を行い、目的物を得た。
【0045】
実施例及び比較例に用いる架橋剤(B)は、以下のように調製したものである。トルエン520部、テトラエトキシシラン879部及びジメチルクロロシラン832部を仕込み、均一に溶解させた。これを、撹拌機、滴下装置、加熱・冷却装置及び減圧装置を備えた反応容器に撹拌中の過剰の水に滴下して、副生した塩酸の溶解熱を冷却により除去しつつ、室温で共加水分解と縮合を行った。得られた有機相を、洗浄水が中性を示すまで水で洗浄し、脱水した後、トルエンと副生したテトラメチルジシロキサンを100℃/667Pa{5mmHg}で留去して、液状のポリメチルハイドロジェンシロキサンを調製した。GPCによる平均分子量は800(理論値:776)であり、これとアルカリ滴定によるSi-H結合の分析結果から、得られたシロキサンが近似的にM^(H)_(8)Q_(4)で示されるポリメチルハイドロジェンシロキサンであることを確認した。
【0046】
実施例に用いる(C)硬化触媒である(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(Me_(3)Pt-Cp-Me錯体)(C1)は、Strem Chemicals, Inc.社製(ドイツ)により市販されている。また、比較例に用いる硬化触媒(Pt-D^(v)_(4)錯体)(C2)は、塩化白金酸をD^(v)_(4)で示される環状シロキサンと加熱して調製され、白金含有量が2重量%である白金-ビニルシロキサン錯体である。
【0047】
比較例に用いる硬化遅延剤は、1-エチニル-1-シクロヘキサノールである。
【0048】
実施例1及び2、比較例1?3
A1がキシレン溶液なので、減圧加熱装置及び撹拌機を備えた容器にA1とA2を仕込み、均一になるまで撹拌・混合した後、A1に含まれるキシレンを140℃/667Pa{5mmHg}で留去して、液状のベースポリマー混合物を調製した。
【0049】
万能混練機を用いて、表1に示す配合比で、ベースポリマーの一部、触媒からなる主剤部、並びにベースポリマーの残部、架橋剤を含む硬化剤部を、それぞれ調製した。なお、主剤部と硬化剤部がほぼ重量比で1:1になるように、ベースポリマーの配分を行った。主剤部と硬化剤部を混合し、続いて、脱泡して、厚さ2mmのシート状に注型し、実施例1及び2では、次いで、4KWコンベア式UV照射装置(ウシオ電機社製)を使用して、波長250?400nmで、積算光量1000mJ/cm^(2)のUV光を照射した。続いて、150℃のオーブン中で1時間加熱して硬化させた。無色透明で、若干の伸びを有する樹脂状の硬化物が得られた。
【0050】
組成物とその硬化物との評価を、次のようにして行った。
(1)ポットライフ評価:得られた組成物の粘度を測定し、23℃におけるポリシロキサン組成物の粘度が、組成物の調製直後の1.5倍になる時間を測定した。なお、実施例においては、UV光が未照射である場合とUV光を照射した後の場合について測定した。
(2)硬化性試験:未硬化の組成物について、(株)エーアンドディー社製、キュラストメータWR型により、温度150℃測定時間30分において、検出される最大トルクに対して10%になる時間(T10)(秒)及び90%になる時間(T90)(分)を測定した。なお、実施例1および2では、UV光の照射直後に測定を行った。
(3)硬さ:シートを23℃で24時間放置した後、シートを3枚重ねて6mmの厚さとした試料を用いてJIS K6253により、タイプA及びDデュロメータによって硬さを測定した。
(4)線膨張係数:SII社製、熱機械的分析装置TMA/SS6100型によって測定した。
(5)耐熱性:硬化直後の試料および硬化物を180℃24時間放置した後の試料(10mm×10mm×40mm)を、23℃において、日立製作所製、スペクトロフォトメータU-3410型を使用し、光路長10mmで波長400nmにおける透過率を測定した。透過率が、88%以上を◎、84%以上?88%未満を○、84%未満を×とした。
【0051】
各実施例及び比較例の配合比、並びに組成物の硬化性と硬化物の物性は、表1に示すとおりであった。なお、白金触媒の含有量(ppm)は、A成分及びB成分の合計量に対する白金金属原子換算による。
【0052】
【表1】

【0053】
比較例の組成物は、UV光が未照射であっても触媒活性を有する白金触媒を用いたものである。比較例1は、硬化遅延剤を含まない系であり、オルガノポリシロキサン組成物を調製後、15分で粘度が1.5倍になった。
比較例2は、比較例1の組成において、さらに硬化遅延剤を用いた系であり、オルガノポリシロキサン組成物を調製してから12時間で粘度が1.5倍になった。
比較例3は、オルガノポリシロキサン組成物に対して白金含有量が8ppmになるように白金触媒を添加した系であり、硬化反応が十分促進されるため、オルガノポリシロキサン組成物を調製してから3時間で粘度が1.5倍になった。さらに硬化直後の硬化物は白金触媒の含有量が低い組成物と同様の光透過率であったが、耐熱性試験において黄変が観察され、耐熱性が劣っていた。
【0054】
実施例1および2では、オルガノポリシロキサン組成物を調製してから1週間が経過した後であっても、粘度の増加がわずかであり、ポットライフに優れていることがわかった。また、UV光の照射後は僅かな時間で粘度が1.5倍になっており、硬化特性が優れていた。さらに、実施例2では、白金含有量が8ppmであるにもかかわらず、耐熱性の低下が抑えられていた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の光硬化性ポリシロキサン組成物は、UV光を照射することで硬化反応を開始させることができるため、組成物のポットライフを容易にかつ自由に決めることができる。さらに、UV光の照射後は、オルガノポリシロキサン組成物が容易に硬化し、耐熱性に優れた硬化物を与えることができる。本発明は、光学用途、特に耐熱性を要求されるLED等の照明関連や自動車用途に有用である。」

イ.甲1に記載された発明
甲1には、上記ア.の記載事項(特に摘示(1a)及び(1c)の下線部)からみて、
「(A)SiO_(4/2)単位及びR_(3)SiO_(1/2)単位、並びに場合によってはさらにR_(2)SiO単位及び/又はRSiO_(3/2)単位(式中、Rは、それぞれ独立して、1価の非置換又は置換の炭化水素基を表す)からなり、1分子当たり、少なくとも3個のRがアルケニル基である、分岐状オルガノポリシロキサンからなる、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(B)SiO_(4/2)単位及びR^(3)(CH_(3))_(2)SiO_(1/2)単位(式中、R^(3)は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す)からなり、1分子当たり、少なくとも3個のR^(3)が水素原子である、ポリアルキルハイドロジェンシロキサン、
(C)白金原子の含有量が、(A)及び(B)の合計量に対して0.1?1,000重量ppmである(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金並びに必要に応じてオクタン酸セリウムに代表されるセリウム化合物のような無色の耐熱性向上剤を含む光硬化性オルガノポリシロキサン組成物。」に係る発明(以下「甲1発明1」という。)、及び
上記ア.の記載事項(特に摘示(1e)の下線部)からみて、
「(A)(A1):M単位、M^(v)単位及びQ単位からなり、モル単位比がM_(5)M^(v)Q_(8)で示される分岐状の固体ポリメチルビニルシロキサン及び(A2):両末端がM^(v)単位で封鎖され、中間単位がすべてD単位であり、23℃における粘度が0.2Pa・sである直鎖状ポリメチルビニルシロキサンの混合物、(B)近似的にM^(H)_(8)Q_(4)で示されるポリメチルハイドロジェンシロキサン及び(C)A成分及びB成分の合計量に対する白金金属原子換算で4ppm又は8ppmの(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(Me_(3)Pt-Cp-Me錯体)を含む光硬化性オルガノポリシロキサン組成物。」に係る発明(以下「甲1発明2」という。)、
がそれぞれ記載されているものといえる。

(2)甲2
甲2には、「ロール軸の外周面にシリコーンゴム層が形成され、該シリコーンゴム層表面にフッ素樹脂又はフッ素ラテックスがコーティングされてなるフッ素樹脂又はフッ素ラテックスコーティングシリコーンゴム定着ロールにおいて、前記シリコーンゴム層が
(A)一分子中の側鎖のみに珪素原子と結合する脂肪族不飽和炭化水素基を2個以上含有し、該脂肪族不飽和炭化水素基含有シロキサン単位の含有量が0.05?5モル%であるオルガノポリシロキサン 100重量部
(B)一分子中に少なくとも2個の珪素原子に直結した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(A)成分のオルガノポリシロキサン中の脂肪族不飽和炭化水素基に対して(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン中の珪素原子直結水素原子のモル比が0.1?3となる量
(C)白金又は白金系化合物 触媒量
(D)充填剤 5?300重量部
(E)カーボンブラック、酸化セリウム、水酸化セリウム及び酸化鉄から選ばれる耐熱性向上剤 0.1?30重量部
を含有してなり、かつ硬化後のゴム硬度(JIS K6301におけるJIS-A硬度)が15以下であるシリコーンゴム組成物の硬化物で形成されてなることを特徴とするフッ素樹脂又はフッ素ラテックスコーティングシリコーンゴム定着ロール」が開示され(【請求項1】)、「(E)成分の耐熱性向上剤としては、カーボンブラック、酸化セリウム、水酸化セリウム及び酸化鉄(ベンガラ)から選ばれるものを単独で又は2種以上併用して使用」し、「この耐熱性向上剤は、300?350℃で15分?1時間の高温状態においてもゴム硬度が変化せず、フッ素樹脂/フッ素ラテックスコーティング層との接着耐久性に優れる硬化物を得るための必須成分である」ことも開示されている(【0030】)。

(3)甲3
甲3には、「(1)一分子中に少なくとも2個以上のアルケニル基を有し、25℃での粘度が少なくとも5,000センチポイズであるオルガノポリシロキサン、(2)一分子中に少なくとも2個以上の珪素原子に直接結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(3)白金又は白金族化合物、(4)一分子中に1個以上のアルケニル基及び/又は珪素原子に直接結合した水素原子とアルコキシシリル基及び/又はエポキシ基とを含有する化合物、(5)カーボンブラック、(6)酸化セリウム又は水酸化セリウムを含有してなり、エラストマー状の硬化物を与えることを特徴とする接着用シリコーンゴム組成物」が開示され(【請求項1】)、「上記オルガノポリシロキサンとしては、」「直鎖状であっても、RSiO_(3/2)単位又はSiO_(4/2)単位を含んだ分岐状であってもよい」こと(【0009】)及び「第6成分の酸化セリウム又は水酸化セリウムは、上記カーボンブラックと共に添加することで相乗的に作用して組成物の高温での接着耐久性を強化するものであ」り、「酸化セリウム又は水酸化セリウムの添加量は、第1成分のオルガノポリシロキサン100部に対して0.1?5部、特に0.2?2部とすることが好ましく、0.1部に満たないと接着耐久性が強化されない場合があり、5部を超えると組成物の硬化反応に異常をきたし、硬化が阻害される場合がある」こと(【0025】)もそれぞれ開示されている。

(4)甲4
甲4には、「(A)平均重合度が200以上のオロガノポリシロキサン;100重量部、(B)水分を除いた揮発分が0.5重量%以下であるカーボンブラック;20?150重量部、(C)前記(A)及び(B)からなる組成物を硬化させるのに必要な量の硬化剤、及び(D)0?5重量部の酸化セリウムを含有するシリコーンゴム組成物を成形硬化させてなることを特徴とする耐熱熱伝導性シリコーンゴム成形品」が開示され(【請求項1】)、「(A)成分である、平均重合度が200以上であるオロガノポリシロキサンは、R_(n)SiO_((4-n)/2)の平均組成式で表される(nは1.95?2.05の数)」ものであり、「オロガノポリシロキサンの主鎖がジメチルシロキサン単位からなるもの、又は、このオロガノポリシロキサンの主鎖にビニル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基などを導入したものが好ましい」こと(【0010】)、「(C)成分の硬化剤は、通常、シリコーンゴムの硬化に使用される硬化剤の中から適宜選択され」、「(A)成分のオロガノポリシロキサンがアルケニル基を含有する場合には、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金族金属系触媒とからなる付加反応硬化剤が挙げられ」ること(【0013】)並びに「(D)成分の酸化セリウムは、上記カーボンブラックと組み合わせることにより、更に耐熱性を向上させるものであ」って、「(D)成分の添加量は」「(A)成分100重量部に対して0?5重量部の範囲であることが好ましく、特に0.1?2重量部の範囲であることが好ましい」こと(【0014】)もそれぞれ開示されており、(D)成分の添加量として、ポリシロキサン100重量部に対して酸化セリウムを0.5重量部添加使用した実施例が開示されている(【0024】?【0025】)。

(5)甲5

ア.甲5に記載された事項
甲5には、以下の事項が記載されている。

(5a)
「【請求項1】
(A)(1)ケイ素原子に結合した有機基中、分子中に2個以上のR^(1)(式中、R^(1)は、アルケニル基を表す)を含有し、30%までがフェニル基であってよく、残余がメチル基であり、23℃における粘度が10?10,000mm^(2)/sである直鎖状ポリオルガノシロキサン (A)の0?60重量%;および
(2)SiO_(4/2)単位およびR^(2)(CH_(3))_(2)SiO_(1/2)単位(式中、R^(2)は、R^(1)またはメチル基を表す)からなり、分子中に3個以上の、ケイ素原子に結合したR^(1)を含む分岐状ポリオルガノシロキサン (A)の40?100重量%
からなるアルケニル基含有ポリオルガノシロキサン;
(B)SiO_(4/2)単位およびR^(3)(CH_(3))_(2)SiO_(1/2)単位(式中、R^(3)は、水素原子またはアルキル基を表す)からなり、分子中に3個以上の、ケイ素原子に結合した水素原子を含むポリアルキルハイドロジェンシロキサン (A)に存在するR^(2)1個に対するケイ素原子に結合した水素原子の数が0.5?2.0個になる量;ならびに
(C)白金族金属化合物 白金系金属原子を、(A)に対して0.1?1,000重量ppm含有する量を含む、透明な硬化物を与えるポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項2】
R^(1)が、ビニル基である、請求項1記載のポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項3】
R^(3)のうちのアルキル基がメチルである、請求項1または2記載のポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項4】
(C)が、白金-ビニルシロキサン錯体である、請求項1?3のいずれか一項記載のポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか一項記載のポリオルガノシロキサン組成物を、硬化させて得られる硬化物。
【請求項6】
線膨張係数が3.0x10^(-4)/K以下である、請求項5記載の硬化物。
【請求項7】
光学レンズ用である、請求項5または6記載の硬化物。
【請求項8】
発光ダイオード用である、請求項5?7のいずれか一項記載の硬化物。」

(5b)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、付加反応によって硬化して、透明な硬化物を与えるポリオルガノシロキサン組成物に関し、特に、硬化して、高い硬さおよび低い熱膨張係数を示し、熱衝撃に強く、発光ダイオード(以下、LEDという)の封止剤、レンズなどの光学的用途に適した透明な硬化物を与えるポリオルガノシロキサン組成物に関する。また、本発明は、このようなポリオルガノシロキサン組成物を硬化させて得られる硬化物、特に光学用およびLED用に好適な硬化物に関する。」

(5c)
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、線膨張係数が小さく、かつ熱衝撃によるクラックを生じない、LED用および光学レンズ用に適した硬化物を与える硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を提供することである。本発明のもう一つの目的は、上記の特性を有し、LED用および光学レンズ用に適した硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するために研究を重ねた結果、ベースポリマーとして、分岐状アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンと必要に応じて直鎖状アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンを特定の比率範囲で用い、架橋剤として特定のシロキサン骨格構造を有する分岐状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンを用いて、付加反応によって硬化させることにより、その課題を達成しうることを見出して、本発明を完成させるに至った。」

(5d)
「【0012】
(A)ベースポリマーは、(1)直鎖状ポリオルガノシロキサン0?60重量%、好ましくは0?40重量%;および(2)SiO_(4/2)単位と、R^(2)(CH_(3))_(2)SiO_(1/2)単位(式中、R^(2)は、前述のとおりである)とからなる分岐状ポリオルガノシロキサン40?100重量%、好ましくは60?100重量%からなるアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンである。このようにアルケニル基を有する(2)分岐状ポリオルガノシロキサンを単独で用いるか、(1)直鎖状と(2)分岐状のポリオルガノシロキサンを組み合わせて用いることにより、硬化物に優れた機械的性質、特に適度の硬さ、低い線膨張係数、および耐熱衝撃性を付与することができる。(1)が60重量%を越え、(2)が40重量%未満では、機械的強度が弱く、線膨張係数が大きい硬化物しか得られない。また、硬化物に優れた機械的性質を与え、かつ組成物の調製や硬化の際の成形が容易な液状物として扱うには、(1)が5?35重量%、(2)が65?95重量%であるか、(2)を単独で用いる場合には、その性状が液状のものを用いることがさらに好ましい。」

(5e)
「【0017】
(B)成分中のR^(3)に含まれる、ケイ素原子に直接結合した水素原子の數は、(B)成分全体として、平均1分子当たり3個以上である。平均3個未満では、必要な硬さの硬化物を得るために充分な架橋密度が得られない。R^(3)の残余は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルのような直鎖状または分枝状のアルキル基であり、1種でも、2種以上の混成でもよい。(B)成分の粘度を過度に上げることなく、また硬化物に耐熱性をはじめとするシロキサンの特徴をバランスよく付与するために、アルキル基はメチルが最も好ましい。」

(5f)
「【0022】
さらに、本発明の組成物には、硬化物の硬さや透明性などの本発明の目的を損なわないかぎり、必要に応じて、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノールのようなアセチレン化合物、1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンのような、環ケイ素原子にビニル基が結合したビニル基含有環状シロキサンなどの硬化遅延剤;セリウム化合物のような無色の耐熱性向上剤など、各種の添加剤を配合してもよい。また用途によっては、本発明の組成物を、トルエン、キシレンのような有機溶媒に溶解ないし分散させて用いてもよい。」

(5g)
「【0025】
本発明のポリオルガノシロキサン組成物を、使用すべき部位に注入、滴下、流延、注型、容器からの押出しなどの方法により、またはトランスファー成形や射出成形による一体成形によって、LEDのような対象物と組み合わせ、室温で放置または加熱して硬化させることにより、硬化物を得ることができる。
【0026】
本発明の組成物を硬化させて得られる光学的硬化物は、線膨張係数が通常3.0×10^(-4)/K以下、好ましくは2.5×10^(-4)/K以下である。このように線膨張係数を低くすることにより、レンズなどをLEDや光学器械などの部品に固定した後の熱履歴や熱衝撃による内部ひずみが緩和され、レンズなどの亀裂を防ぐことができる。
【0027】
本発明の組成物を硬化させて得られる光学的硬化物は、JIS K6253のタイプAデュロメータによる硬さが通常80以上、好ましくはタイプDデュロメータによる硬さが30以上、さらに好ましくは同40以上の硬度を有し、機械的強度があり、表面に傷がつきにくく、またゴミなどが付着しにくい。また、線膨張係数が低く、かつ温度履歴によるクラックを生じない。したがって、これを成形し、必要に応じてさらに加工することにより、各種の光学的用途、特に発光ダイオード用および光学レンズ用に用いることができる。
【0028】
たとえば、本発明の硬化性組成物を、LEDを搭載した基板に、LEDを封止するように、かつ気泡が残らないように、注型などの方法で送り込み、硬化させて、LEDを内包したレンズの成形品を作製することができる。また、あらかじめ各種の方法で成形したレンズをLED部品にセットし、LEDをそこに嵌め込むか、接着剤で固定することもできる。」

(5h)
「【実施例】
【0029】
以下、実施例および比較例によって、本発明をさらに詳細に説明する。これらの例において、部は重量部、組成の%は重量%を示し、粘度は23℃における粘度を示す。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0030】
以下、シロキサン単位を、次のような記号で示す。
M 単位: (CH_(3))_(3)SiO_(1/2)-
M^(H)単位: (CH_(3))_(2)HSiO_(1/2)-
M^(v)単位: (CH_(3))_(2)(CH_(2)=CH)SiO_(1/2)-
D単位: -(CH_(3))_(2)SiO-
D^(H)単位: -(CH_(3))HSiO-
D^(v)単位: -(CH_(3))(CH_(2)=CH)SiO-
D^(ff)単位: -(C_(6)H_(5))_(2)SiO-
Q 単位: SiO_(4/2)(4官能性)
【0031】
実施例および比較例に、下記のベースポリマー、架橋剤、触媒およびシリカを用いた。
A-1:両末端がM^(v)単位で封鎖され、中間単位がD単位およびD^(v)単位からなり、中間単位の有機基中10%がビニル基であり、23℃における粘度が200mm^(2)/sである直鎖状ポリメチルビニルシロキサン;
A-2:両末端がM^(v)単位で封鎖され、中間単位がD単位からなり、23℃における粘度が200mm^(2)/sである直鎖状ポリメチルビニルシロキサン;
A-3:両末端がM^(v)単位で封鎖され、中間単位の10モル%がD^(ff)単位で、残余がD単位であり、23℃における粘度が300mm^(2)/sである直鎖状ポリメチルビニルフェニルシロキサン;
A-4:両末端がM^(v)単位で封鎖され、中間単位の20モル%がD^(ff)単位、10モル%がD^(v)単位で、残余がD単位であり、23℃における粘度が4,000mm^(2)/sである直鎖状ポリメチルビニルフェニルシロキサン;
A-5:M単位、M^(v)単位およびQ単位からなり、モル単位比がM_(5)M^(v)Q_(8)で示される分岐状の固体ポリメチルビニルシロキサンの60%キシレン溶液;
A-6:M単位、M^(v)単位およびQ単位からなり、モル単位比がM_(5)M^(v)Q_(3.5)で示される分岐状の液状ポリメチルビニルシロキサン;
B-1:M^(H)単位およびQ単位からなり、モル単位比がM^(H)_(8)Q_(4)で示される分岐状ポリメチルハイドロジェンシロキサン;
B-2:平均単位式MD^(H)_(20)D_(20)Mで示される直鎖状ポリメチルハイドロジェンシロキサン;
C-1:塩化白金酸をD^(v)_(4)で示される環状シロキサンと加熱して調製され、白金含有量が2重量%である錯体;
S-1:ヘキサメチルジシラザンで表面処理を行った、比表面積300mm^(2)/gの煙霧質シリカ。
また、硬化遅延剤として、1-エチニル-1-シクロヘキサノールを用いた。組成表では、ECHと略記する。
【0032】
実施例1?6、比較例1?3
減圧加熱装置および撹拌機を備えた容器に、A-5と他の(A)成分を仕込み、均一になるまで撹拌・混合した後、A-5に含まれるキシレンを140℃/667Pa{5mmHg}で留去して、液状の(A)成分混合物を調製した。万能混練機を用いて、表1に示す配合比になるように、前述の(A)成分混合物の一部および(C)触媒からなる主剤部;ならびに(A)成分混合物の残部、(B)架橋剤および硬化遅延剤を含む硬化剤部を、それぞれ調製した。なお、実施例4の組成物に配合したS-1は、主剤部と硬化剤部に1:1に配分した。また、主剤部と硬化剤部のそれぞれ合計量がほぼ重量比で1:1になるように、(A)成分の配分を行った。主剤部と硬化剤部を混合し、脱泡して、厚さ6mmのシート状に注型し、150℃のオーブン中で1時間加熱して硬化させた。無色透明で、若干の伸びを有する樹脂状の硬化物が得られた。
【0033】
実施例7
万能混錬機を用いて、表1に示す配合になるように、A-6の一部およびC-1からなる主剤部;ならびにA-6の残部、B-1および硬化遅延剤を含む硬化剤部を、それぞれ調製した。ただし、A-6は、主剤部と硬化剤部が重量比で1:1になるように配分した。主剤部と硬化剤部の混合、脱泡、注型および硬化を、実施例1と同様にして行い、無色透明で、若干の伸びを有する樹脂状の硬化物を得た。
【0034】
組成物の硬化性、および硬化物の物性の評価を、次のようにして行った。
(1)硬化性試験:(株)エーアンドディー社製、キュラストメータWR型により、150℃において、t_(10)およびt_(90)を測定した。
(2)硬さ:シートを23℃で24時間放置した後、JIS K6253により、タイプAデュロメータおよびタイプDデュロメータによって硬さを測定した。
(3)光透過率:23℃において、日立製作所製、スペクトロフォトメータU-3410型を使用し、石英セル中の未硬化試料(厚さ10mm)について、波長400nmおよび800nmの光の透過率を測定した。
(4)線膨張係数:SII社製、熱機械的分析装置TMA/SS6100型によって測定した。
(5)熱衝撃試験:シートを恒温槽に入れて、熱風を送って120℃に15分保ち、ついで冷凍機から冷空気を送って恒温槽を-40℃に15分保ち、これを1,000サイクル繰り返して、クラックの発生の有無を観察した。
【0035】
各実施例および比較例の配合比、ならびに組成物の硬化性と硬化物の物性は、表1に示すとおりであった。なお、配合中、A-4の量は、シロキサン分換算で示す。また、A-1?A-4およびS-1は、それぞれ主剤と硬化剤に分けて配合したが、表1の組成は、その合計量を示す。
【0036】
【表1】


【0037】
実施例1?7で得られた、本発明の組成物から得られた硬化物は、いずれも低い線膨張係数を示し、また熱衝撃試験でクラックを生じなかった。また、煙霧質シリカを配合した実施例4を除いて、優れた光透過性を示した。実際には厚さ1mm程度で使用されることが多く、この数値は、実質的に充分な透明性を示すものである。それに対して、H/Viの高い比較例1の硬化物は、熱衝撃試験でクラックを生じ、H/Viの低い比較例2の硬化物は、高い線膨張係数を示した。また、架橋剤として直鎖状ポリメチルハイドロジェンシロキサンを用いた比較例3では、満足すべき硬さの硬化物が得られなかった。
【0038】
なお、実施例1の組成物を流延し、得られた厚さ1mmの未硬化組成物の23℃における屈折率を、ATAGO社のアッベ屈折計によって測定したところ、1.413であった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物およびその硬化物は、特に硬化物の高い硬さを生かして、透明性とともに耐熱性と耐衝撃性を必要とする各種の光学的レンズとして有用である。また、LEDの封止、保護、レンズなどに有用である。」

イ.甲5に記載された発明
甲5には、上記ア.の記載事項(特に摘示(5a)及び(5f)の下線部)からみて、
「(A)(1)ケイ素原子に結合した有機基中、分子中に2個以上のR^(1)(式中、R^(1)は、アルケニル基を表す)を含有し、30%までがフェニル基であってよく、残余がメチル基であり、23℃における粘度が10?10,000mm^(2)/sである直鎖状ポリオルガノシロキサン (A)の0?60重量%;および
(2)SiO_(4/2)単位およびR^(2)(CH_(3))_(2)SiO_(1/2)単位(式中、R^(2)は、R^(1)またはメチル基を表す)からなり、分子中に3個以上の、ケイ素原子に結合したR^(1)を含む分岐状ポリオルガノシロキサン (A)の40?100重量%
からなるアルケニル基含有ポリオルガノシロキサン;
(B)SiO_(4/2)単位およびR^(3)(CH_(3))_(2)SiO_(1/2)単位(式中、R^(3)は、水素原子またはアルキル基を表す)からなり、分子中に3個以上の、ケイ素原子に結合した水素原子を含むポリアルキルハイドロジェンシロキサン (A)に存在するR^(2)1個に対するケイ素原子に結合した水素原子の数が0.5?2.0個になる量;ならびに
(C)白金族金属化合物 白金系金属原子を、(A)に対して0.1?1,000重量ppm含有する量を含む、セリウム化合物のような無色の耐熱性向上剤などの添加剤を配合してもよい透明な硬化物を与えるポリオルガノシロキサン組成物。」に係る発明(以下「甲5発明1」という。)、及び
上記ア.の記載事項(特に摘示(5h)の下線部)からみて、
「(A)両末端にM^(v)を有し中間部にD単位、D^(v)単位及びD^(ff)単位を有する直鎖状ポリメチルビニルシロキサンとM単位、M^(v)単位およびQ単位からなり、モル単位比がM_(5)M^(v)Q_(8)で示される分岐状の固体ポリメチルビニルシロキサンとの混合物又はモル単位比がM_(5)M^(v)Q_(3.5)で示される分岐状の液状ポリメチルビニルシロキサン、(B)M^(H)単位およびQ単位からなるモル単位比がM^(H)_(8)Q_(4)で示される分岐状ポリメチルハイドロジェンシロキサン又は平均単位式MD^(H)_(20)D_(20)Mで示される直鎖状ポリメチルハイドロジェンシロキサン及び(C)A成分及びB成分の合計量100重量部に対して0.02重量部の塩化白金酸をD^(v)_(4)で示される環状シロキサンと加熱して調製され、白金含有量が2重量%である錯体を含む硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。」に係る発明(以下「甲5発明2」という。)、
がそれぞれ記載されているものといえる。

(6)甲6
甲6には、「基板と、前記基板上に設けたLED素子と、前記LED素子を覆い、シリコーン樹脂100重量部に対し酸化セリウムを0.005重量部以上、0.03重量部以下、含む酸化セリウム分散組成物層と、前記酸化セリウム分散組成物層を覆い、シリコーン樹脂を主成分とする封止材料と、を含むLED装置」が開示され、「前記封止材料に蛍光体材料を含む」ことも開示されている([請求項1]及び[請求項2])とともに、「樹脂の着色防止材料としては、樹脂の耐熱性、耐紫外線性を高める効果を有する材料である酸化セリウムが最適である」こと([0015])及び「着色を防止する理由は」「セリウムイオンの還元によってポリマー中の電子を吸収し、樹脂成分以外の有機物の酸化反応を生じる可能性のある遊離基を無害化し、酸化を抑制するためであろう」こと([0019])も開示されている。

2.各取消理由についての検討
事案に鑑み、以下、上記取消理由1及び2につき併せて検討するが、本件の各発明ごとに、甲第1号証に記載された発明に基づく検討及び甲第5号証に記載された発明に基づく検討のそれぞれに分けて説示する。

(1)本件発明1について

(1-1)甲1発明1に基づく検討

ア.対比
本件発明1と上記甲1発明1とを対比すると、
「下記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含むことを特徴とする硬化性シリコーン樹脂組成物。
(A):分子内に1個以上のヒドロシリル基を有し、脂肪族不飽和基を有しないポリオルガノシロキサン
(B):分子内に1個以上のアルケニル基を有する分岐鎖状のポリオルガノシロキサン
(C):白金族金属を含むヒドロシリル化触媒」
で一致し、下記の点でのみ相違する。

相違点1a:本件発明1では「(D)成分」として「希土類金属原子の錯体、希土類金属原子の無機塩、希土類金属原子の酢酸塩、及び希土類金属原子のヘキサン酸塩からなる群より選択される1以上の希土類金属化合物(但し、蛍光体及びリン光体材料に該当するものを除く)」を含むのに対して、甲1発明1では「必要に応じてオクタン酸セリウムに代表されるセリウム化合物のような無色の耐熱性向上剤を含む」点

イ.検討
上記相違点1aにつき検討すると、甲1発明1において代表的なものとされる「オクタン酸セリウム」は、セリウムなる希土類金属元素のオクタン酸なるカルボン酸の塩であることが明らかであるが、本件発明1における「希土類金属原子の錯体、希土類金属原子の無機塩、希土類金属原子の酢酸塩、及び希土類金属原子のヘキサン酸塩からなる群より選択される1以上の希土類金属化合物(但し、蛍光体及びリン光体材料に該当するものを除く)」に該当するものではない。
してみると、上記相違点1aは、実質的な相違点である。
また、甲1発明1における「オクタン酸セリウム」は、「耐熱性向上剤」であって「蛍光体及びリン光体材料に該当するもの」ではないものではあるが、甲1及び他の甲号証の記載を検討しても、甲1発明1において、オクタン酸セリウムに代表されるセリウム化合物のような無色の耐熱性向上剤に代えて、本件発明1における「希土類金属原子の錯体、希土類金属原子の無機塩、希土類金属原子の酢酸塩、及び希土類金属原子のヘキサン酸塩からなる群より選択される1以上の希土類金属化合物(但し、蛍光体及びリン光体材料に該当するものを除く)」を使用することを動機付ける事項が開示されていない。
してみると、上記相違点1aにつき、甲1発明1において、たとえ甲1及び他の甲号証の開示を組み合わせても、当業者が適宜なし得ることということもできない。

ウ.小括
したがって、本件発明1は、甲1発明1、すなわち甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいうことができない。

(1-2)甲1発明2に基づく検討

ア.対比
本件発明1と上記甲1発明2とを対比すると、
「下記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含むことを特徴とする硬化性シリコーン樹脂組成物。
(A):分子内に1個以上のヒドロシリル基を有し、脂肪族不飽和基を有しないポリオルガノシロキサン
(B):分子内に1個以上のアルケニル基を有する分岐鎖状のポリオルガノシロキサン
(C):白金族金属を含むヒドロシリル化触媒」
で一致し、下記の点でのみ相違する。

相違点1b:本件発明1では「(D)成分」として「希土類金属原子の錯体、希土類金属原子の無機塩、希土類金属原子の酢酸塩、及び希土類金属原子のヘキサン酸塩からなる群より選択される1以上の希土類金属化合物(但し、蛍光体及びリン光体材料に該当するものを除く)」を含むのに対して、甲1発明2では「希土類金属原子の錯体、希土類金属原子の無機塩、希土類金属原子の酢酸塩、及び希土類金属原子のヘキサン酸塩からなる群より選択される1以上の希土類金属化合物(但し、蛍光体及びリン光体材料に該当するものを除く)」を含むことにつき特定されていない点

イ.検討
上記相違点1bにつき検討すると、甲1には、必要に応じてオクタン酸セリウムに代表されるセリウム化合物のような無色の耐熱性向上剤などの添加剤を配合してもよいことが記載されている(摘示(1c))ところ、オクタン酸セリウムは、本件発明1における「希土類金属原子の錯体、希土類金属原子の無機塩、希土類金属原子の酢酸塩、及び希土類金属原子のヘキサン酸塩からなる群より選択される1以上の希土類金属化合物(但し、蛍光体及びリン光体材料に該当するものを除く)」に該当するものではない。
また、甲1及び他の甲号証の記載を検討しても、甲1発明2において、本件発明1における「希土類金属原子の錯体、希土類金属原子の無機塩、希土類金属原子の酢酸塩、及び希土類金属原子のヘキサン酸塩からなる群より選択される1以上の希土類金属化合物(但し、蛍光体及びリン光体材料に該当するものを除く)」を使用することを動機付ける事項が開示されていない。
してみると、上記相違点1bにつき、甲1発明2において、たとえ甲1及び他の甲号証の開示を組み合わせても、当業者が適宜なし得ることということはできない。

ウ.小括
したがって、本件発明1は、甲1発明2、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいうことができない。

(1-3)甲5発明1に基づく検討

ア.対比
本件発明1と上記甲5発明1とを対比すると、
「下記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含むことを特徴とする硬化性シリコーン樹脂組成物。
(A):分子内に1個以上のヒドロシリル基を有し、脂肪族不飽和基を有しないポリオルガノシロキサン
(B):分子中に3個以上の、ケイ素原子に結合したビニル基を含む分岐状ポリオルガノシロキサンを含むポリオルガノシロキサン
(C):白金族金属化合物であるヒドロシリル化触媒」
で一致し、下記の点でのみ相違する。

相違点1c:本件発明1では「(D)成分」として「希土類金属原子の錯体、希土類金属原子の無機塩、希土類金属原子の酢酸塩、及び希土類金属原子のヘキサン酸塩からなる群より選択される1以上の希土類金属化合物(但し、蛍光体及びリン光体材料に該当するものを除く)」を含むのに対して、甲5発明1では「セリウム化合物のような無色の耐熱性向上剤などの添加剤を配合してもよい」とされる点

イ.検討
上記相違点1cにつき検討すると、甲1にも開示されているとおり、必要に応
じて使用されるセリウム化合物である無色の耐熱性向上剤としてオクタン酸セリウムが代表的なものではある(摘示(1c))が、オクタン酸セリウムは、本件発明1における「希土類金属原子の錯体、希土類金属原子の無機塩、希土類金属原子の酢酸塩、及び希土類金属原子のヘキサン酸塩からなる群より選択される1以上の希土類金属化合物(但し、蛍光体及びリン光体材料に該当するものを除く)」に該当するものではなく、また、甲5及び他の甲号証の記載を検討しても、甲5発明1において、本件発明1における「希土類金属原子の錯体、希土類金属原子の無機塩、希土類金属原子の酢酸塩、及び希土類金属原子のヘキサン酸塩からなる群より選択される1以上の希土類金属化合物(但し、蛍光体及びリン光体材料に該当するものを除く)」を使用することを動機付ける事項が開示されていない。
してみると、上記相違点1cにつき、甲5発明1において、たとえ甲5及び他の甲号証の開示を組み合わせても、当業者が適宜なし得ることということはできない。

ウ.小括
したがって、本件発明1は、甲5発明1、すなわち甲5に記載された発明に基づいて、たとえ甲1などの知見を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(1-4)甲5発明2に基づく検討

ア.対比
本件発明1と上記甲5発明2とを対比すると、
「下記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含むことを特徴とする硬化性シリコーン樹脂組成物。
(A):分子内に1個以上のヒドロシリル基を有し、脂肪族不飽和基を有しないポリオルガノシロキサン
(B):分子内に1個以上のアルケニル基を有する分岐状のポリオルガノシロキサン
(C):白金族金属を有するヒドロシリル化触媒」
で一致し、下記の点でのみ相違する。

相違点1d:本件発明1では「(D)成分」として「希土類金属原子の錯体、希土類金属原子の無機塩、希土類金属原子の酢酸塩、及び希土類金属原子のヘキサン酸塩からなる群より選択される1以上の希土類金属化合物(但し、蛍光体及びリン光体材料に該当するものを除く)」を含むのに対して、甲5発明2では「希土類金属原子の錯体、希土類金属原子の無機塩、希土類金属原子の酢酸塩、及び希土類金属原子のヘキサン酸塩からなる群より選択される1以上の希土類金属化合物(但し、蛍光体及びリン光体材料に該当するものを除く)」を含むことにつき特定されていない点

イ.検討
上記相違点1dにつき検討すると、甲5には「セリウム化合物のような無色の耐熱性向上剤などの添加剤を配合してもよい」ことが記載されている(摘示(5f))とともに、甲1にも開示されているとおり、必要に応じて使用されるセリウム化合物である無色の耐熱性向上剤としてオクタン酸セリウムが代表的なものではある(摘示(1c))が、オクタン酸セリウムは、本件発明1における「希土類金属原子の錯体、希土類金属原子の無機塩、希土類金属原子の酢酸塩、及び希土類金属原子のヘキサン酸塩からなる群より選択される1以上の希土類金属化合物(但し、蛍光体及びリン光体材料に該当するものを除く)」に該当するものではない。
また、甲5及び他の甲号証の記載を検討しても、甲5発明2において、本件発明1における「希土類金属原子の錯体、希土類金属原子の無機塩、希土類金属原子の酢酸塩、及び希土類金属原子のヘキサン酸塩からなる群より選択される1以上の希土類金属化合物(但し、蛍光体及びリン光体材料に該当するものを除く)」を使用することを動機付ける事項が開示されていない。
してみると、上記相違点1dにつき、甲5発明2において、たとえ甲5及び他の甲号証の開示を組み合わせても、当業者が適宜なし得ることということはできない。

ウ.小括
したがって、本件発明1は、甲5発明2、すなわち甲5に記載された発明に基づいて、たとえ甲1などの知見を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2及び4ないし9について
本件発明1を引用する本件発明2及び4ないし9につき検討すると、本件発明1が、上記(1)で説示した理由により、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1又は甲5に記載された発明に基づいて、たとえ甲1ないし6に記載された技術事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1を引用する本件発明2及び4ないし9についても、同様の理由により、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1又は甲5に記載された発明に基づいて、たとえ甲1ないし6に記載された技術事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)小括
以上のとおり、本件発明1、2及び4ないし9は、いずれも、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1又は甲5に記載された発明に基づいて、たとえ甲1ないし6に記載された技術事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。

3.取消理由1及び2に係る検討のまとめ
よって、本件請求項1、2及び4ないし9に係る発明についての特許は、いずれも特許法第29条に違反してされたものではなく、取消理由1及び2はいずれも理由がないから、各特許を取り消すことはできない。

II.申立人が主張する取消理由について

1.甲1に基づく理由について
申立人が主張する甲1に基づく取消理由は、上記I.で検討した甲1に基づく取消理由1及び2と略同旨をいうものであるから、上記I.で説示した理由と同一の理由により、いずれも理由がない。

2.甲2ないし4及び6に基づく理由について
申立人が主張する甲2ないし4及び6に基づく取消理由につき検討するにあたり、それぞれ主たる引用発明となる甲2ないし甲4に記載された発明について確認するとともに、甲6に記載された発明についても確認する。

(1)甲2ないし4又は甲6に記載された発明

ア.甲2に記載された発明
甲2には、上記I.1.(2)で示した記載事項からみて、
「(A)一分子中の側鎖のみに珪素原子と結合する脂肪族不飽和炭化水素基を2個以上含有し、該脂肪族不飽和炭化水素基含有シロキサン単位の含有量が0.05?5モル%であるオルガノポリシロキサン 100重量部
(B)一分子中に少なくとも2個の珪素原子に直結した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(A)成分のオルガノポリシロキサン中の脂肪族不飽和炭化水素基に対して(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン中の珪素原子直結水素原子のモル比が0.1?3となる量
(C)白金又は白金系化合物 触媒量
(D)充填剤 5?300重量部
(E)カーボンブラック、酸化セリウム、水酸化セリウム及び酸化鉄から選ばれる耐熱性向上剤 0.1?30重量部
を含有してなり、かつ硬化後のゴム硬度(JIS K6301におけるJIS-A硬度)が15以下である硬化性シリコーンゴム組成物。」
に係る発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものといえる。

イ.甲3に記載された発明
甲3には、上記I.1.(3)で示した記載事項からみて、
「(1)一分子中に少なくとも2個以上のアルケニル基を有し、25℃での粘度が少なくとも5,000センチポイズであるオルガノポリシロキサン、(2)一分子中に少なくとも2個以上の珪素原子に直接結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(3)白金又は白金族化合物、(4)一分子中に1個以上のアルケニル基及び/又は珪素原子に直接結合した水素原子とアルコキシシリル基及び/又はエポキシ基とを含有する化合物、(5)カーボンブラック、(6)酸化セリウム又は水酸化セリウムを含有してなり、エラストマー状の硬化物を与えることを特徴とする接着用シリコーンゴム組成物。」
に係る発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものといえる。

ウ.甲4に記載された発明
甲4には、上記I.1.(4)で示した記載事項からみて、
「(A)平均重合度が200以上のオロガノポリシロキサン;100重量部、(B)水分を除いた揮発分が0.5重量%以下であるカーボンブラック;20?150重量部、(C)前記(A)及び(B)からなる組成物を硬化させるのに必要な量の硬化剤、及び(D)0?5重量部の酸化セリウムを含有するシリコーンゴム組成物を成形硬化させてなることを特徴とする耐熱熱伝導性シリコーンゴム成形品。」
に係る発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているものといえる。

エ.甲6に記載された発明
甲6には、上記I.1.(6)で示した記載事項からみて、
「シリコーン樹脂100重量部に対し樹脂の着色防止材料としての酸化セリウムを0.005重量部以上、0.03重量部以下、含む酸化セリウム分散組成物。」
に係る発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているものといえる。

(2)対比・検討
本件発明1と甲2発明、甲3発明、甲4発明又は甲6発明とをそれぞれ対比すると、いずれも少なくとも下記の点で相違している。

相違点A:「希土類金属化合物」につき、本件発明1では、「希土類金属原子の錯体、希土類金属原子の無機塩、希土類金属原子の酢酸塩、及び希土類金属原子のヘキサン酸塩からなる群より選択される1以上の希土類金属化合物(但し、蛍光体及びリン光体材料に該当するものを除く)」であるのに対して、甲2発明、甲3発明、甲4発明又は甲6発明では、いずれも「酸化セリウム」及び/又は「水酸化セリウム」である点

そして、上記相違点Aにつき検討すると、上記I.で甲1に基づく取消理由に係る検討で認定した「相違点1a」又は「相違点1c」と同様の相違点であるものといえるから、上記I.の2.(1)(1-1)又は(1-3)で説示した理由と同一の理由により、上記相違点Aは、実質的な相違点であり、また、甲2発明、甲3発明、甲4発明又は甲6発明において、たとえ他の甲号証に記載された技術事項を組み合わせたとしても、当業者が適宜なし得ることということはできない。

(3)小括
したがって、申立人が主張する甲2ないし4及び6に基づく取消理由は、いずれも理由がない。

3.甲5に基づく理由について
申立人が主張する甲5に基づく取消理由は、上記I.で検討した甲5に基づく取消理由2と略同旨をいうものであるから、上記I.で説示した理由と同一の理由により、理由がない。

4.小括
以上のとおり、申立人が主張する取消理由は、いずれも理由がなく、本件の請求項1、2及び4ないし9に係る発明についての特許を取り消すことはできない。

III.当審の判断のまとめ
よって、本件の請求項1、2及び4ないし9に係る発明についての特許は、当審が通知した取消理由及び申立人が主張する取消理由につき、いずれも理由がなく、取り消すことができない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正については適法であるからこれを認める。
また、本件の請求項1、2及び4ないし9に係る発明についての特許は、当審が通知した理由並びに申立人が主張する理由及び提示した証拠によっては、取り消すことができない。
ほかに、本件の請求項1、2及び4ないし9に係る発明についての特許を取り消すべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を含むことを特徴とする硬化性シリコーン樹脂組成物。
(A):分子内に1個以上のヒドロシリル基を有し、脂肪族不飽和基を有しないポリオルガノシロキサン
(B):分子内に1個以上のアルケニル基を有する分岐鎖状のポリオルガノシロキサン
(C):白金族金属を含むヒドロシリル化触媒
(D):希土類金属原子の錯体、希土類金属原子の無機塩、希土類金属原子の酢酸塩、及び希土類金属原子のヘキサン酸塩からなる群より選択される1以上の希土類金属化合物(但し、蛍光体及びリン光体材料に該当するものを除く)
【請求項2】
希土類金属原子の含有量が、前記硬化性シリコーン樹脂組成物100重量%に対して、0.1?500ppmである請求項1に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
下記の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、及び(E)成分を含むことを特徴とする硬化性シリコーン樹脂組成物。
(A):分子内に1個以上のヒドロシリル基を有し、脂肪族不飽和基を有しないポリオルガノシロキサン
(B):分子内に1個以上のアルケニル基を有する分岐鎖状のポリオルガノシロキサン
(C):白金族金属を含むヒドロシリル化触媒
(D):希土類金属原子の酸化物、希土類金属原子の水酸化物、希土類金属原子のホウ化物、希土類金属原子のハロゲン化物、希土類金属原子の錯体、及び希土類金属原子の塩からなる群より選択される1以上の希土類金属化合物(但し、蛍光体及びリン光体材料に該当するものを除く)
(E):分子内に2個以上のアルケニル基及び1個以上のアリール基を有するポリオルガノシロキシシルアルキレン
【請求項4】
さらに蛍光体を含む請求項1?3のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化させることにより得られる硬化物。
【請求項6】
光半導体封止用樹脂組成物である請求項1?4のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項7】
光半導体用レンズの形成用樹脂組成物である請求項1?4のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項8】
光半導体素子と、該光半導体素子を封止する封止材とを含み、前記封止材が請求項6に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする光半導体装置。
【請求項9】
光半導体素子とレンズとを含み、前記レンズが請求項7に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする光半導体装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-09-14 
出願番号 特願2015-112586(P2015-112586)
審決分類 P 1 652・ 113- YAA (C08L)
P 1 652・ 121- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 武貞 亜弓  
特許庁審判長 佐藤 健史
特許庁審判官 橋本 栄和
井上 猛
登録日 2019-03-15 
登録番号 特許第6496193号(P6496193)
権利者 株式会社ダイセル
発明の名称 硬化性シリコーン樹脂組成物及びその硬化物、並びに光半導体装置  
代理人 後藤 幸久  
代理人 好宮 幹夫  
代理人 後藤 幸久  
代理人 小林 俊弘  
代理人 特許業務法人後藤特許事務所  
代理人 特許業務法人後藤特許事務所  
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