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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09D
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09D
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09D
管理番号 1368107
異議申立番号 異議2020-700448  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-06-25 
確定日 2020-10-29 
異議申立件数
事件の表示 特許第6626995号発明「水性塗料組成物及び塗膜形成方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6626995号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯・証拠の一覧
1 本件特許に係る出願は、平成31年1月15日に特願2019-4417号として特許出願され、令和元年7月1日付けで拒絶理由が通知され、同年10月29日に意見書の提出と共に手続補正がされ、同年12月6日に特許権(請求項の数7。)の設定登録がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行され、令和2年6月25日に特許異議申立人 大野 芙美(以下「申立人」という。)によって、全請求項である請求項1?7に係る特許について特許異議の申立てがされたものである。
2 申立人の提示した証拠は以下のとおりである(以下、甲第1号証を「甲1」などという。)。
甲1:特開平8-199114号公報
甲2:特開平6-287506号公報
甲3:中道敏彦著、「架橋剤」、色材協会誌、Vol.65、No.8、511?525頁、(1992年)
甲4:特開2008-81650号公報
甲5:特開2013-133445号公報
甲6:特開2018-2900号公報
甲7:酒井禎之(外1名)、「塗料用水系樹脂の基礎と技術動向」、色材協会誌、Vol.77、No.4、169?176頁、(2004年)

第2 本件発明
本件発明は、特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される次のとおりの発明(以下「本件発明1」?「本件発明7」といい、まとめて「本件発明」という。)である。
「【請求項1】
水性主剤(I)及び水分散性硬化剤(II)を含む水性塗料組成物であって、
前記水性主剤(I)は、水酸基含有樹脂水分散体(A)を含み、
前記水分散性硬化剤(II)は、水分散性ポリイソシアネート(B)を含み、
前記水酸基含有樹脂水分散体(A)は、
アクリル樹脂ディスパージョン(A1)、及び
炭素数4?6の疎水性直鎖アルキル基、分枝状アルキル基又は脂環状アルキル基を有するアクリル樹脂エマルション(A2)、
を含み、
前記アクリル樹脂ディスパージョン(A1)及び前記アクリル樹脂エマルション(A2)の樹脂固形分質量比は、(A1):(A2)=95:5?50:50の範囲内である、
水性塗料組成物。
【請求項2】
前記アクリル樹脂エマルション(A2)は、炭素数4?6の疎水性直鎖アルキル基、分枝状アルキル基又は脂環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含むモノマー混合物の乳化重合体である、
請求項1記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
前記炭素数4?6の疎水性直鎖アルキル基、分枝状アルキル基又は脂環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの量は、前記モノマー混合物100質量部に対して、10?80質量部の範囲内である、
請求項2記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
前記アクリル樹脂ディスパージョン(A1)は、水酸基価が5?200mgKOH/gの範囲内であり、酸価が5?100mgKOH/gの範囲内であり、数平均分子量が1,000?100,000の範囲内である、
請求項1?3いずれかに記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
前記水性主剤(I)及び水分散性硬化剤(II)の少なくとも一方が、更に、粘性調整剤(C)を含む、
請求項1?4いずれかに記載の水性塗料組成物。
【請求項6】
被塗物に、請求項1?5いずれかに記載の水性塗料組成物を塗装し、硬化させることにより塗膜を形成する工程を包含する、塗膜形成方法。
【請求項7】
前記被塗物が、産業機械、建設機械、鉄道車両、船体、建築物又は建造物である、請求項6記載の塗膜形成方法。」

第3 刊行物等の記載事項
1 甲1の記載事項
甲1には、次の記載がある。
(1)「【請求項1】 α,β-エチレン性不飽和カルボル酸を含むα,β-エチレン性不飽和単量体の共重合体である酸価35?120mgKOH/g、水酸基価50?150mgKOH/gのアクリル系共重合体(a1)と、α,β-エチレン性不飽和単量体の共重合体である酸価15mgKOH/g以下、水酸基価50?150mgKOH/gのアクリル系共重合体(a2)とが化学結合を介してグラフト重合したグラフト共重合体であって、酸価10?30mgKOH/g、水酸基価50?150mgKOH/gを有する水分散性のアクリル系グラフト共重合体(A)、およびα,β-エチレン性不飽和単量体(b1)を乳化重合法で重合した共重合体であって、酸価15?200mgKOH/g、水酸基価15?200mgKOH/gを有する内部非架橋型アクリル系微粒子(B)を含有し、水性塗料組成物中の全樹脂固形分に占める割合が、水分散性のアクリル系グラフト共重合体(A)10?90重量%、内部非架橋型アクリル系微粒子(B)10?90重量%であることを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項2】 数平均分子量1000以下のアミノ樹脂(C)を、水性塗料組成物中の全樹脂固形分に占める割合として10?40重量%含有することを特徴とする請求項1記載の水性塗料組成物。
【請求項3】 アルカリ膨潤型有機系増粘剤(D)を、水性塗料組成物中の全樹脂固形分に対して0.1?5重量%含有することを特徴とする請求項1または2記載の水性塗料組成物。」
(2)「【0002】
【従来の技術】近年、地球環境の汚染問題が深刻化し、国際的に有機溶剤の排出規制が強化されつつある。そのような背景の中で、水を媒体にした水性塗料が脚光を浴びている。なかでも工業塗装、とりわけ自動車塗装におけるメタリックベースコートの水性化は、有機溶剤の削減効果が高いだけでなく、仕上がり外観およびコストパフォーマンスの上でも有利とみなされ、これまでいくつかの水性ベースコートが開発されている。」
(3)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、直接乳化法による水分散型水性塗料および間接乳化法による水分散型水性塗料の両者の特性、すなわち基体樹脂の設計幅が広く、かつ低溶剤化が可能であり、しかもワキ、タレ、ムラ等を生じることなく、塗装作業性、貯蔵安定性に優れるとともに、耐水性、耐久性および平滑性に優れた塗膜を形成することが可能な水性塗料組成物を提供することである。本発明の第2の目的は、多量の顔料を分散させた場合でも擬塑性、揺変性が付与され、ワキ、タレ、ムラ等を生じることなく塗装作業性に優れ、しかも耐水性、耐久性および平滑性に優れた塗膜を形成することが可能で、かつ貯蔵安定性に優れ、メタリック塗料に適した水性塗料組成物を提供することである。」
(4)「【0010】本発明で用いるアクリル系グラフト共重合体(A)は、水媒体中で分散させたときに水和して安定化層となる親水性のアクリル系共重合体(a1)を主鎖とし、これに、分散したときに分散層となる疎水性のアクリル系共重合体(a2)が側鎖として化学結合を介してグラフト重合したグラフト共重合体である。このアクリル系グラフト共重合体(A)の酸価は10?30mgKOH/g、好ましくは15?30mgKOH/g、水酸基価は50?150mgKOH/g、好ましくは50?120mgKOH/gである。またガラス転移温度は-20?+50℃、好ましくは-10?+30℃、数平均分子量は10000?100000、好ましくは10000?50000であるのが望ましい。
【0011】アクリル系グラフト共重合体(A)の主鎖を構成するアクリル系共重合体(a1)は、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸を含むα,β-エチレン性不飽和単量体の共重合体であって、酸価35?120mgKOH/g、好ましくは60?110mgKOH/g、水酸基価50?150mgKOH/g、好ましくは60?150mgKOH/gを有するアクリル系共重合体である。またアクリル系共重合体(a1)は、ガラス転移温度が-20?+50℃、好ましくは-20?+30℃、数平均分子量が4500?9000、好ましくは4800?7000であるのが望ましい。
【0012】またアクリル系グラフト共重合体(A)の側鎖を構成するアクリル系共重合体(a2)は、α,β-エチレン性不飽和単量体の共重合体であって、酸価15mgKOH/g以下、好ましくは10mgKOH/g以下、水酸基価50?150mgKOH/g、好ましくは50?120mgKOH/gを有するアクリル系共重合体である。
【0013】本発明で使用するアクリル系グラフト共重合体(A)は、上記のようなアクリル系共重合体(a1)とアクリル系共重合体(a2)とがエステル結合、エーテル結合、ウレタン結合等の化学結合を介してグラフト重合した構造を有している。」
(5)「【0053】〔水分散体〕本発明で使用する(A-1)、(A-2)などのアクリル系グラフト共重合体(A)は、必要であれば、製造に使用した溶媒を脱溶媒した後、塩基性物質で中和して水性分散媒体に分散させることにより、水分散体とすることができる。水性分散媒体への分散は常法により行うことができ、塩基性物質としては、例えばモノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチレントリアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ピペラジン、アンモニア、水酸化ナトリウムなどを用いてアクリル系グラフト共重合体(A)中に存在するカルボキシル基の少なくとも50%を中和することにより行うことができる。水性分散媒体としては、水が40?80重量%を占めるものが好ましい。こうして得られる水分散体はそのまま、または濃縮もしくは希釈したり、あるいは粉末化後再分散させた後、後述の内部非架橋型アクリル系微粒子(B)、アミノ樹脂(C)、アルカリ膨潤型の有機系増粘剤(D)などと組合せて水性塗料組成物を調製する。」
(6)「【0054】〔内部非架橋型アクリル系微粒子(B)〕本発明で使用する内部非架橋型アクリル系微粒子(B)は、水性塗料組成物の造膜成分となる基体樹脂として使用されるとともに、水性塗料組成物に擬塑性または揺変性を付与する成分であり、α,β-エチレン性不飽和単量体(b1)を、水性媒体中で界面活性剤の存在下、ラジカル重合を行う公知の乳化重合法で製造される内部非架橋の微粒子である。
【0055】この際、カルボキシル基含有α,β-エチレン性不飽和単量体(b1-1)および水酸基含有α,β-エチレン性不飽和単量体(b1-2)を必須成分とし、必要に応じて他の共重合性単量体を共重合することができる。これらの単量体は前記アクリル共重合体(a1-1)について示したものと同様な単量体が使用可能である。また乳化重合法としては、特に制約がなく、例えばシード重合法、二段乳化重合法、シードエマルション存在下の二段重合法、パワーフィード法などがあげられる。」
(7)「【0060】〔アミノ樹脂(C)〕本発明で使用するアミノ樹脂(C)は、数平均分子量1000以下、好ましくは300?800のアミノ樹脂であり、水性塗料組成物の架橋成分(硬化剤)である。このようなアミノ樹脂(C)としては、例えば市販品としてサイメル301、サイメル303、サイメル325、サイメル327(三井サイテック(株)製、商品名)、ニカラックMW-30、ニカラックMX43(三和ケミカル(株)製、商品名)、ユーバン120(三井東圧化学(株)製、商品名)等があげられる。なおアミノ樹脂(C)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより常法に従って測定されたポリスチレン換算数平均分子量である。アミノ樹脂(C)の数平均分子量が1000を超える場合、水性媒体中への分散が困難であり水性塗料組成物の安定性に劣る。」
(8)「【0062】〔水性塗料組成物〕本発明の水性塗料組成物は、前記水分散性のアクリル系グラフト共重合体(A)および内部非架橋型アクリル系微粒子(B)を必須成分として含有し、必要によりさらにアミノ樹脂(C)、アルカリ膨潤型有機系増粘剤(D)を含有する水分散体からなる。(C)成分を含有しない場合、水性塗料組成物中の全樹脂固形分に占める(A)および(B)成分の含有量は、(A)成分が10?90重量%、好ましくは40?80重量%、(B)成分が10?90重量%、好ましくは20?60重量%である。(C)成分を含有する場合は、(A)成分が20?80重量%、好ましくは30?70重量%、(B)成分が20?80重量%、好ましくは30?70重量%、(C)成分が10?40重量%、好ましくは20?40重量%である。(D)成分の含有量は水性塗料組成物の全樹脂固形分に対して0.1?5重量%、好ましくは0.5?4重量%である。
【0063】(A)成分が上記下限値未満の場合は、水性塗料組成物中の主体樹脂成分が不足し、得られた塗膜の基本性能に劣る。一方上記上限値を超える場合は、(B)成分の作用が著しく損われ、水性塗料組成物の塗装作業性に劣る。(B)成分が上記下限値未満の場合は、水性塗料組成物への擬塑性または揺変性付与効果に乏しく、塗装作業性に劣る。一方上記上限値を超える場合は、水性塗料組成物への界面活性剤の配合量が増大し、得られる塗膜の耐水性に劣る。
【0064】(C)成分が上記範囲内にある場合、得られる塗膜は、(C)成分を配合しない場合に比べて耐化学薬品性および可撓性がさらに優れたものとなる。(D)成分はメタリック塗料組成物の調製に有効であり、その含有量が0.1重量%未満の場合はムラが生じ、5重量%を超えると、(D)成分が高酸価であるため塗膜の耐水性に劣る。」
(9)実施例
ア 「【0074】製造例1-1〔アクリル系グラフト共重合体(A-1)の製造〕
攪拌機、温度調節機、冷却管、滴下装置を備えた反応容器にメチルイソブチルケトン56.4部を仕込み、攪拌下昇温し、還流させた。次に2-ヒドロキシエチルメタクリレート41.8部、アクリル酸11.6部、n-ブチルアクリレート93.6部、2-エチルヘキシルメタクリレート33.0部、およびアゾビスイソブチロニトリル3.6部の混合物を2時間を要して滴下した。さらに還流下に攪拌を2時間継続して重合を終結させた(以下、この反応工程を「工程1」と呼ぶ)。得られた樹脂は酸価50mgKOH/g、水酸基価100mgKOH/g、ガラス転移温度-20℃、数平均分子量5000を有するアクリル系共重合体であった。
【0075】次に、この樹脂溶液にメチルイソブチルケトン328.6部を仕込み、攪拌下に還流させた。次にグリシジルメタクリレート5.1部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート97.5部、メチルメタクリレート200.2部、n-ブチルアクリレート122.3部、およびアゾビスイソブチロニトリル6.3部の混合物を2時間を要して滴下した。さらに120℃の反応温度で1時間攪拌を行った後、130℃まで昇温し、さらに5時間攪拌を継続することにより、付加および共重合反応を終結させた(以下、この反応工程を「工程2」と呼ぶ)。得られた樹脂溶液は、酸価12mgKOH/g、水酸基価100mgKOH/g、ガラス転移温度+13℃、数平均分子量42000を有するアクリル系グラフト共重合体A-1-1を含む樹脂溶液であった。
【0076】製造例1-2ないし1-4〔アクリル系グラフト共重合体(A-1)の製造〕
表1または表2の処方により製造例1-1と同様な方法で、アクリル系グラフト共重合体A-1-2ないしA-1-4を製造した。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】


イ 「【0079】製造例2-1〔水分散体の製造〕
製造例1-1で得られたアクリル系グラフト共重合体A-1-1の533部にエチレングリコールモノブチルエーテル80部を加えた後、メチルイソブチルケトン205部を減圧蒸留によって留去した。このポリマー溶液にジメチルエタノールアミン3.0部(カルボキシル基に対して0.5当量)を加えて攪拌した後、脱イオン水588.9部を加えて均一になるまで攪拌を行い、アクリル系グラフト共重合体A-1-1の乳白色低粘度の水分散体A-1-1aqを得た(表3参照)。
【0080】製造例2-1ないし2-4〔水分散体の製造〕
表3に示す配合で製造例2-1と同様な方法で、アクリル系グラフト共重合体A-1-2ないしA-1-4の水分散体A-1-2aqないしA-1-4aqを得た。
【0081】
【表3】


ウ 「【0082】製造例3-1〔アクリル系グラフト共重合体(A-2)の製造〕
攪拌機、温度調節機、冷却管、滴下装置を備えた反応容器にトルエン116.4部を仕込み、攪拌下に昇温し、還流させた。次に2-ヒドロキエチルメタクリレート41.8部、アクリル酸18.5部、n-ブチルアクリレート64.3部、n-ブチルメタクリレート55.4部、およびアゾビスイソブチルニトリル3.6部の混合物を2時間を要して滴下した。さらに還流下に攪拌を2時間継続して重合を終了させた(以下、この反応工程を「工程」と呼ぶ)。
【0083】次に、この樹脂溶液にα,α-ジメチルイソプロペニルベンジルイソシアネート7.4部、およびジブチルチンジラウレート0.1部を仕込み、80℃で1時間攪拌を継続した(以下、この反応工程を「工程」と呼ぶ)。得られた樹脂は、酸価80mgKOH/g、水酸基価100mgKOH/g、ガラス転移温度0℃、数平均分子量4900のアクリル共重合体であった。
【0084】次に、この樹脂溶液にトルエン266.2部を仕込み、攪拌下に還流させた。次に、2-ヒドロキシエチルメタクリレート97.4部、n-ブチルアクリレート173.4部、メチルメタクリレート149.2部、およびアゾビスイソブチロニトリル6.3部の混合物を2時間を要して滴下した。さらに2時間攪拌を継続することにより、反応を終結させた(以下、この反応工程を「工程」と呼ぶ)。得られた樹脂溶液は、酸価24mgKOH/g、水酸基価96mgKOH/g、ガラス転移温度+7℃、数平均分子量32000を有するアクリル系グラフト共重合体A-2-1を含む樹脂溶液であった(表4?表6参照)。
【0085】製造例3-2ないし3-4〔アクリル系グラフト共重合体(A-2)の製造〕
表4?表6の処方により製造例3-1と同様の方法で、アクリル系グラフト共重合体A-2-2ないしA-2-4を製造した。物性値などを表4?表6に示す。
【0086】
【表4】

【0087】
【表5】

【0088】
【表6】


エ 「【0089】製造例4-1〔水分散体の製造〕
製造例3-1で得られたアクリル系グラフト共重合体A-2-1の533.0部にエチレングリコールモノブチルエーテル80.0部を加えた後、トルエン207.3部を減圧蒸留によって留去した。このポリマー溶液にジメチルメタノールアミン6.1部(カルボキシル基に対して0.5当量)を加えて攪拌した後、脱イオン水588.2部を加えて均一になるまで攪拌を行い、アクリル系グラフト共重合体A-2-1の乳白色低粘度の水分散体A-2-1aqを得た(表7参照)。
【0090】製造例4-2ないし4-4〔水分散体の製造〕
表7に示す配合で製造例4-1と同様な方法で、アクリル系グラフト共重合体A-2-2ないしA-2-4の水分散体A-2-2aqないしA-2-4aqを得た。
【0091】
【表7】


オ 「【0092】製造例5-1〔内部非架橋型アクリル系微粒子(B)の製造〕
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管を取り付けた4つ口フラスコに脱イオン水606部、エレミノールES-12(界面活性剤、三洋化成(株)製、商品名)3.0部、を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃に保持した。次いで、n-ブチルアクリレート47.8部、メチルメタクリレート71.6部、2-ヒドロキシエチルアクリレート30.6部、エレミノールES-12 0.6部、および脱イオン水100部の混合物(1)250.6部をプレ乳化分散した後、80℃で攪拌下に、この乳化物と、過硫酸アンモニウム0.6部を脱イオン水19.4部に溶解した重合開始剤(1)とを並行して2時間を要して滴下した。さらに80℃で攪拌下に1時間保持し、アクリル系微粒子のコアを熟成した。次にn-ブチルアクリレート30部、2-ヒドロキシエチルアクリレート10.8部、メタクリル酸9.2部、エレミノールES-12 0.4部、および脱イオン水50部の混合物(2)100.4部のプレ乳化分散液と、過硫酸アンモニウム0.2部を脱イオン水19.8部に溶解した重合開始剤(2)とを並行して、1時間を要して滴下した。さらに80℃で攪拌下に2時間保持して反応を終結させ、酸価30mgKOH/g、水酸基価100mgKOH/g、ガラス転移温度+3℃、平均粒径60nmの内部非架橋型アクリル系微粒子B-1を得た。なお、平均粒径は、NICOMP370サブミクロン・パーティクル・サイザー(パシフィック・サイエンティフィック・インストゥルメント社製、商標)を用いて、水媒体中で測定した(表8参照)。
【0093】製造例5-2ないし5-4〔内部非架橋型アクリル系微粒子(B)の製造〕
表8に示す配合で製造例5-1と同様な方法で内部非架橋型のアクリル系微粒子B-2ないしB-4を製造した。
【0094】
【表8】


カ 「【0095】実施例1?11
表9?表11に示した配合に基づき製造例2-1ないし2-4、製造例4-1ないし4-4で得た水分散体に、製造例5-1ないし5-4で得た内部非架橋型アクリル系微粒子B-1ないしB-4、アルミニウムペースト〔アルペースト0539X、水性塗料用特殊加工アルミニウム、加熱残分69重量%(東洋アルミニウム(株)製、商品名〕、アミノ樹脂〔サイメル327、三井サイテック(株)製、商品名〕、アルカリ膨潤型有機系増粘剤〔プライマルASE-60、ロームアンドハース社製、商品名〕、ジメチルエタノールアミン、および脱イオン水を加え、固形分32重量%のメタリック水性塗料組成物を調製した。水性塗料組成物の固形分が32重量%以下の場合は、脱イオン水を加えずそのまま粘度の調整を行った。さらに、これらのメタリック水性塗料組成物に脱イオン水を加え、B型粘度計を用いて6rpm回転粘度で15±2psに調整し、前記塗装方法に従って評価した。得られた塗膜の外観および性能試験結果、ならびに貯蔵安定性結果を表12に示す。
【0096】
【表9】

【0097】
【表10】

【0098】
【表11】

【0099】
【表12】


2 甲2の記載事項
甲2には、次の記載がある。
(1)「【請求項1】 (A)水酸基価40?100、酸価5?40、ガラス転移点-40?10℃、数平均分子量3,000?15,000の同一分子内にポリオキシエチレン結合及び水酸基を併せ有する水溶性アクリル樹脂、並びに(B)水酸基価40?100、酸価1?30、ガラス転移点-40?10℃の水酸基を有するアクリル樹脂エマルジョンを含有してなる水性被覆用樹脂組成物。
【請求項2】 (A)成分と(B)成分の比率が、固形分重量比で(A)/(B)=90/10?15/85である請求項1記載の水性被覆用樹脂組成物。
【請求項3】 請求項1又は2記載の水性被覆用樹脂組成物と、硬化剤としてアミノ樹脂を組み合わせてなる塗料。」
(2)「【0006】本発明における(A)成分の水溶性アクリル樹脂は、水酸基価が40?100である。ここで水酸基価が40未満では反応点が少なく、反応が不充分になり本発明の目的を達成することができない。一方、水酸基価が100を超えると、得られる塗膜の耐水性等が低下する。また、(A)成分は、酸価が5?40である。ここで酸価が5未満では、アクリル樹脂の水に対する溶解性が低下し、40を超えると組成物の安定性が低下する。また、(A)成分は、ガラス転移点が-40?10℃である。ここでガラス転移点が-40℃より低い場合には、塗膜の物理的強度、耐久性に難点があり、10℃より高い場合には、塗膜の硬度が増し、低温における可とう性が低下する。さらに、(A)成分は数平均分子量が3,000?15,000である。ここで数平均分子量が3000未満では、塗膜の物理的強度、耐久性等が低下し、15000を超えると塗膜の外観が悪くなる。なお数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法による標準ポリスチレン換算値である。」
(3)「【0013】本発明の被覆用樹脂組成物は、硬化剤としてアミノ樹脂と組み合わせて塗料とすることができる。アミノ樹脂としては、メラミン樹脂、グアナミン樹脂等が挙げられるが、メラミン樹脂が好ましい。メラミン樹脂としては、水溶性メラミン樹脂を用いることが好ましい。このメラミン樹脂としては、種々のエーテル化をしたもの例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の1種又は2種以上を用いて変性されたものを用いることができる。特に、メチルエーテル化メラミン樹脂が本発明では好適である。硬化剤は、(A)成分及び(B)成分の固形分の総量に対して10?30重量%であることが好ましい。硬化剤が少なすぎると硬化反応が不充分になり、得られる塗膜の耐候性が低下しやすくなり、多すぎると可とう性が低下しやすくなる。」
(4)「【0016】
【実施例】次に、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下「部」とあるのは「重量部」を意味する。
実施例1?3及び比較例1?2
(1)水溶性アクリル樹脂(A-1)の合成例(合成例(1))
かきまぜ機、温度計、窒素ガス吹き込み管および還流冷却管を設けた2リットルの四つ口フラスコに、3-メチル-3-メトキシブタノール120部、メタクリル酸メチル15部、アクリル酸ブチル15部、2-ヒドロキシエチルアクリレート6部、メタクリル酸1.5部、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製、商品名ブレンマーPME400)15部を仕込み、105?110℃に昇温する。ついであらかじめ準備されたメタクリル酸メチル73.5部、アクリル酸ブチル126部、2-ヒドロキシエチルアクリレート39部、メタクリル酸9部、2,2′-アゾビスイソブチロニトリル4.5部、ジ-tert-ブチルパーオキサイド0.3部の混合液を2時間を要して滴下する。滴下終了後140℃まで昇温し、重合率99.9%以上になる迄保温を行い、終点確認後70?75℃に冷却し、トリエチルアミンでpH8.5になるように中和し、イオン交換水450部で希釈してポリオキシエチレン結合及び水酸基を併せ有する水溶性アクリル樹脂(A-1)を得た。得られた水溶性アクリル樹脂(A-1)は、水酸基価75(固形分)、酸価約23(固形分)、ガラス転移点約-10℃及び数平均分子量約12,000(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法による標準ポリスチレン換算値)であった。
【0017】(2)アクリル樹脂エマルジョン(B-1)の合成例(合成例(2))
かきまぜ機、温度計、窒素ガス吹き込み管及び還流冷却管を設けた2リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水375部、乳化剤(固形分75%、ニューコール(Newcol)290M、日本乳化剤(株)製)4.0部を仕込み、90?95℃に昇温する。ついであらかじめ準備されたイオン交換水60部、重合開始剤として過硫酸アンモニウム3部、反応性乳化剤(固形分90%、アントックス(antox)MS-60、日本乳化剤(株)製)1.5部の混合液及びメタクリル酸メチル58.5部、アクリル酸ブチル178.5部、2-ヒドロキシエチルアクリレート45部、メタクリル酸9部、ジビニルベンゼン9部、tert-ドデシルメルカプタン0.6部の混合液を2時間を要して滴下する。滴下終了後、重合率が99.9%以上になる迄保温を行い、終点確認後70?75℃に冷却し、トリエチルアミンでpH7.5に調整し、イオン交換水60部と3-メチル-3-メトキシブタノール45部の混合液で希釈して水酸基を有するアクリル樹脂エマルジョン(B-1)を得た。得られたアクリル樹脂エマルジョン(B-1)は、水酸基価75(固形分)、酸価約19.5(固形分)、ガラス転移点約-20℃、平均粒子径130nm(レーザー相関スペクトロスコピー法で測定)であった。
【0018】
【表1】


(5)「【0019】(3)上記で得られた各アクリル樹脂(A-1)、(B-1)を表2に示す配合で混合し、水性被覆用樹脂組成物を調整した。
【表2】


(6)「【0020】(4)水性ベース塗料の製造
前記の水性被覆用樹脂組成物とアルミペースト(昭和アルミパウダー(株)製、2K-4132)を混合し、混練して顔料をよく分散させた後、硬化剤としてメチルエーテル化メラミン樹脂(商品名メラン623、日立化成工業(株)製固形分80重量%)を加え、水性塗料を作製した。ここで水性被覆用樹脂組成物とメチルエーテル化メラミン樹脂の比率は固形分重量比で85/15になるように配合し、アルミペーストは固形分総量に対して10重量%になるように配合した。次いで、上記の水性塗料をイソプロピルアルコール/イオン交換水が30/70(重量比)の混合溶剤で、粘度30秒(フォードカップ#4、25℃)に希釈調整し、水性ベース塗料とした。」
(7)「【0022】(6)試験
塗膜試料の作成
前記で得られた水性ベース塗料と溶剤系クリヤー塗料を用いて、下記のように2コート1ベーク方式による塗装を行った。厚さ3mmのRIM(リアクティブ・インジェクション・モールド、ポリウレタン樹脂)板をトリクロロエタンで脱脂した後、乾燥した基材を用い、その上に一液型ポリウレタンプライマーを、乾燥膜厚が約8μmになるように塗布し、80℃で20分乾燥させ、ついで、水性ベース塗料を25℃の温度で相対湿度が65%の塗装環境で、2ステージで乾燥膜厚が約20μmとなるようにスプレー塗装し、10分間室温に放置した後、80℃の温度で5分間風乾した。室温まで冷却した後、クリヤー塗料を乾燥膜厚が約30μmとなるようにスプレー塗装し、10分間室温に放置した後、120℃の温度で20分間焼付乾燥を行い、更に23℃で24時間放置した。
【0023】
【表3】

表3から明らかなように、実施例1?3の塗膜は、可とう性(-25℃での屈曲性)に優れ、その他、メタリック感、耐衝撃性及び耐水性の面でバランスよく優れたものである。これに対し、比較例1の塗膜は、可とう性、メタリック感及び耐衝撃性、比較例2は、耐水性の面で実施例1?3の塗膜よりも劣る。」
3 甲3の記載事項
甲3には、次の記載がある。
(1)511頁下11行?末行及び図-1
「さて,架橋剤を用いる場合に一液型として使用が可能であるか,二液型使用であるかは実用上極めて重要である。図-1に反応速度定数の対数と温度の逆数の関係を示したが,反応速度の温度依存性はArrhenius式,k=Aexp(-E_(a)/RT)に従う^(2))。図-1の直線の傾きE_(a)は反応の活性化エネルギーであり,一液型塗料Aでは25?35kcal/mol程度,二液型塗料Bでは5?15kcal/mol程度である。図-1の直線の傾きE_(a)は反応の活性化エネルギーであり,一液型塗料Aでは25?35kcal/mol程度,二液型塗料Bでは5?15kcal/mol程度である。この図からも低温での反応速度が大きく,かつ貯蔵安定性の良好な塗料は一般論としては成り立たないことがわかろう。従って室温硬化型塗料は二液型にならざるを得ない。・・・
以下にメラミン樹脂,ボリイソシアネートを中心に架橋剤とその反応機構,最近の開発動向について述べる。

図-1 アレニウス・プロットと一液型(A)および二液型(B)の反応性」
(2)512頁1行以下
「2.アミノ樹脂およびフェノール樹脂類
2.1 アミノ樹脂
アミノ樹脂とはメラミン、ベンゾグアナミン、尿素のようなアミノ化合物にホルムアルデヒドやアルコールを付加縮合させた樹脂である。

中でもメラミン樹脂(メラミンホルムアルデヒド樹脂)は一液型焼付塗料の最も代表的な架橋剤である。硬化膜は剛直で,耐薬品性,耐候性に優れるため,自動車,金属塗装を中心に幅広く用いられている。メラミン樹脂は通常,ポリマーポリオールと混合し,120?160℃程度の焼付を行う。メラミン樹脂には(2),(3)の完全あるいは部分アルキル化物があり用途に応じて使いわけられる。


(3)514頁1行以下
「3.イソシアネート類
3.1 ポリイソシアネート
ポリイソシアネートは主としてポリオール,ポリアミンと混合して用いられる常温,あるいは低温焼付用の架橋剤として代表的なものであり,金属,木工,橋梁,自動車補修塗装などに幅広く用いられている。
・・・
現在,多くのイソシアネートモノマーが開発されているが以下に代表例を示す。


(4)524頁7行以下
「メラミン樹脂,ポリイソシアネートを中心に塗料用の架橋剤とその架橋反応,架橋反応に影響する諸因子について述べた。・・(中略)・・架橋剤の構造と反応性は直接的に塗膜性能に関わっている。・・(略)・・」
4 甲4の記載事項
甲4には、次の記載がある。
(1)「【請求項1】
(I)水酸基価50?150mgKOH/gの水系アクリル樹脂、
(II)水酸基価0?30mgKOH/gの水系アクリル樹脂、及び
(III)ポリイソシアネート化合物
を含有することを特徴とするプラスチック用水系塗料組成物。
【請求項2】
前記(I)の水系アクリル樹脂と前記(II)の水系アクリル樹脂の割合が、(I)の水系アクリル樹脂/(II)の水系アクリル樹脂の固形分重量比で、90/10?15/85の範囲である請求項1に記載のプラスチック用水系塗料組成物。」
(2)「【0011】
本発明において、(I)成分の水酸基価は50?150mgKOH/gであり、好ましくは80?120mgKOH/gの範囲にあるものが使用できる。(I)成分の水酸基価が50mgKOH/g未満であると、塗膜形成に於ける架橋度が十分なものとはならず、塗膜の硬度及び耐薬品性等の優れた塗膜性能を得られず、150mgKOH/gを超えると樹脂の極性が高くなりプラスチック素材への付着性が低下する。
【0012】
(I)成分の単量体成分は、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、i-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-ブトキシエチルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、アリルアクリレート、グリシジルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリル酸、アクリル酸ソーダ、トリメチロールプロパンアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のアクリル酸及びアクリル酸エステルモノマー、並びにメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、sec-ブチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アリルメタクリレート、エチレングリコールメタクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、テトラエチレングリコールメタクリレート、1,3-ブチレングリコールメタクリレート、トリメチロールプロパンメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩メタクリレート、メタクリル酸、メタクリル酸ソーダ等のメタクリル酸及びメタクリル酸エステルモノマーを挙げることができる。更に、上記のアクリル系モノマー類に加えて、アクリルアミド、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のビニルモノマーを共重合成分として用いることが挙げられ、それら1種又は2種以上の単量体成分、又は共重合体等を使用することができる。
【0013】
(I)成分の樹脂形態は、乳化重合法にて製造することができるアクリルエマルジョン樹脂及び通常の有機溶媒中での溶液重合法により製造することもできる水系アクリルディスパージョン樹脂が挙げられる。」
(3)「【0020】
[(II)水酸基価0?30mgKOH/g水系アクリル樹脂(以下「(II)成分」という)]
本発明において(II)成分は、いわゆるラッカー型の水系アクリル樹脂であり、プラスチック素材への塗膜の付着性に寄与するものである。
【0021】
本発明において、(II)成分の水酸基価は0?30mgKOH/gであり、0?5mgKOH/gの範囲にあるものが好ましい。水酸基価が30mgKOH/gを超えるとなると、乾燥塗膜のプラスチック基材へ付着性が低下するという不具合が生じる。
【0022】
(II)成分の単量体成分としては、上記(I)成分の同様の単量体成分の1種又は2種以上との共重合体等が挙げられる。
【0023】
(II)成分は、(I)成分と同様に、乳化重合法にて製造することができるアクリルエマルジョン樹脂及び通常の有機溶媒中での溶液重合法により製造することもできる水系アクリルディスパージョン樹脂が挙げられる。」
(4)「【0025】
(I)成分と(II)成分の水系アクリル樹脂の割合は、(I)成分/(II)成分樹脂の固形分重量比で、好ましくは90/10?15/85の範囲、より好ましくは85/15?20/80とすることができる。(II)成分に対する(I)成分の樹脂の固形分重量比が90を超えると乾燥塗膜のプラスチック基材への付着性が低下し易く、15未満であると乾燥塗膜の硬度が低下する等の塗膜性能に不具合が生じることがある。」
(5)「【0026】
[(III)ポリイソシアネート化合物(以下「(III)成分」という)]
本発明にかかるポリイソシアネート化合物とは、水分散性ポリイソシアネート及び水に分散しない(自己乳化しない)疎水性のポリイソシアネートが挙げられる。ポットライフ、水系アクリル樹脂と均一に混合し易いといった作業性等の観点から、水分散性ポリイソシアネートが好ましい。
【0027】
水分散性ポリイソシアネートを構成するポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルイソシアネート、(m-もしくはp-)フェニレンジイソシアネート、4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4-フェニルイソシアネート)等の芳香族ポリイソシアネート;水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン-2,4-(又は-2,6-)ジイソシアネート、1,3-(又は1,4-)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,2-シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。かかるポリイソシアネート化合物としては、イソシアヌレート構造、ビウレット構造、ウレタン構造、アロファネート構造、ウレトジオン構造、三量体構造等を有するポリイソシアネート化合物を用いることもできる。」
(6)「【0037】
本発明にかかるプラスチック用水系塗料組成物に添加される他の配合物としては、水系塗料として通常添加される配合物を用いることができる。例えば、界面活性剤、中和剤、安定剤、増粘剤、消泡剤、表面調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤;シリカ等の無機充填剤や、導電性フィラー、金属粉等の導電性充填剤、有機改質剤、可塑剤等の補助配合剤等を必要に応じて配合することができる。」
(7)「【0042】
本発明にかかる水系塗料組成物の乾燥膜厚は、例えば5?40μm、好ましくは10?30μmになるように塗布される。乾燥塗膜が5μm未満であると、薄過ぎて連続な均一膜を得られ難く、また下地の色を完全に隠蔽することが困難である。一方、乾燥塗膜が40μmを超えると、乾燥時にいわゆるワキやタレといった不具合が発生し易くなるので、正常な乾燥塗膜を得難い傾向となる。」
(8)「【0068】
<塗料11の作製>
脱イオン水8部に撹拌しながら高分子量ブロック共重合物からなる顔料分散剤(商品名:BYK-190、ビックケミー社製)5部、カーボンブラック(商品名:FW-285、デグサ社製)3部、破泡性高分子からなる消泡剤(商品名:BYK-011、ビックケミー社製)0.5部、アクリルディスパージョン樹脂(OH価128、Tg50℃、樹脂固形分45%)(商品名:バイヒドロールXP2470、バイエル社製)37部を加え、カーボンブラックの粒子径が10μmとなるまで撹拌する。
【0069】
その後撹拌しながらアクリルエマルション樹脂(OH価0、Tg66℃、樹脂固形分45%)(商品名:ジョンクリル538、ジョンソンポリマー株式会社製)36.8部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル4部、界面活性剤からなる表面調整剤(商品名:サーフィノール104BC、エアープロダクツ社製)1部、ポリウレタン樹脂系増粘剤(商品名:プライマルRM-8W、ロームアンドハース社製)0.8部、脱イオン水12.2部を添加する。
【0070】
塗装前に硬化剤として水分散性ポリイソシアネート(樹脂固形分100%)(商品名:バイヒジュールVPLS2319、バイエル社製)12部加え、塗料11を作製した。」
(9)「【0092】
<比較塗料1の作製>
アクリルエマルション樹脂(OH価43、Tg70℃、樹脂固形分45%)(商品名:バーノックWE-304、大日本インキ化学工業株式会社製)38.9部に撹拌しながらアクリルディスパージョン樹脂(OH価0、Tg80℃、樹脂固形分51%)(商品名:AS2606、アルバーディンクボレー社製)34.3部、脱イオン水23.6部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル1部、界面活性剤からなる表面調整剤(商品名:サーフィノール104BC、エアープロダクツ社製)1部、破泡性高分子からなる消泡剤(商品名:BYK-011、ビックケミー社製)0.5部、ポリウレタン樹脂系増粘剤(商品名:プライマルRM-8W、ロームアンドハース社製)0.6部、ジメチルエタノールアミン0.1部を添加する。塗装前に硬化剤として水分散性ポリイソシアネート(樹脂固形分100%)(商品名:バイヒジュールVPLS2319、バイエル社製)4.7部加え、比較塗料1を作製した。」
(10)「【0105】
<比較塗料7の作製>
脱イオン水8部に撹拌しながら高分子量ブロック共重合物からなる顔料分散剤(商品名:BYK-190、ビックケミー社製)5部、カーボンブラック(商品名:FW-285、デグサ社製)3部、破泡性高分子からなる消泡剤(商品名:BYK-011、ビックケミー社製)0.5部、アクリルディスパージョン樹脂(OH価82、Tg30℃、樹脂固形分45%)(商品名:バイヒドロールXP2469、バイエル社製)37部を加え、カーボンブラックの粒子径が10μmとなるまで撹拌する。
【0106】
その後撹拌しながらアクリルエマルション樹脂(OH価43、Tg70℃、樹脂固形分45%)(商品名:バーノックWE-304、大日本インキ化学工業株式会社製)36.8部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル4部、界面活性剤からなる表面調整剤(商品名:サーフィノール104BC、エアープロダクツ社製)1部、ポリウレタン樹脂系増粘剤(商品名:プライマルRM-8W、ロームアンドハース社製)0.8部、脱イオン水7.9部を添加する。
【0107】
塗装前に硬化剤として水分散性ポリイソシアネート(樹脂固形分100%)(商品名:バイヒジュールVPLS2319、バイエル社製)13部加え、比較塗料7を作製した。」
(11)「【0111】
<比較塗料9の作製>
脱イオン水8部に撹拌しながら高分子量ブロック共重合物からなる顔料分散剤(商品名:BYK-190、ビックケミー社製)5部、カーボンブラック(商品名:FW-285、デグサ社製)3部、破泡性高分子からなる消泡剤(商品名:BYK-011、ビックケミー社製)0.5部、アクリルディスパージョン樹脂(OH価82、Tg30℃、樹脂固形分45%)(商品名:バイヒドロールXP2469、バイエル社製)37部を加え、カーボンブラックの粒子径が10μmとなるまで撹拌する。
【0112】
その後撹拌しながらアクリルエマルション樹脂(OH価35、Tg35℃、樹脂固形分45%)(商品名:バーノックWE-302、大日本インキ化学工業株式会社製)36.8部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル4部、界面活性剤からなる表面調整剤(商品名:サーフィノール104BC、エアープロダクツ社製)1部、ポリウレタン樹脂系増粘剤(商品名:プライマルRM-8W、ロームアンドハース社製)0.8部、脱イオン水12.2部を添加する。
【0113】
塗装前に硬化剤として水分散性ポリイソシアネート(樹脂固形分100%)(商品名:バイヒジュールVPLS2319、バイエル社製)7.9部加え、比較塗料9を作製した。」
5 甲5の記載事項
甲5には次の記載がある。
(1)「【請求項1】
(A)水酸基およびカルボキシル基を有する水性樹脂、
(B)ポリイソシアネート化合物、および、
(C)親水化変性カルボジイミド化合物、
を含む水性塗料組成物であって、
該(A)水酸基およびカルボキシル基を有する水性樹脂は、樹脂固形分換算で、80?200mgKOH/gの水酸基価、および、10?40mgKOH/gの酸価を有し、
該(A)水性樹脂の酸価の値に対する水酸基価の値の比が3?15であり、
該(B)ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基の当量に対する、該(C)親水化変性カルボジイミド化合物が有するカルボジイミド基の当量の比が、0.01?0.20であり、
該(C)親水化変性カルボジイミド化合物が、下記一般式(I)、(II)または(III)で表されるものであり、
該(A)水性樹脂が含有する水酸基の当量に対する、該(B)ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基の当量の比が、0.6?1.5であり、
該(A)水性樹脂が有する酸基の当量に対する、該(C)親水化変性カルボジイミド化合物が有するカルボジイミド基の当量の比が、0.1?1.0である、
水性塗料組成物。
【化1】

[Xは、少なくとも1個のカルボジイミド基を含有する2官能性有機基であり、Yは、同一または異種のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルから水酸基を除いた構造であり、Zは、数平均分子量200?5,000の2官能ポリオールから水酸基を除いた構造である。]
・・・」
(2)「【0051】
一方、上記(B)ポリイソシアネート化合物で水分散性を有するものとしては、上記ポリイソシアネート化合物に親水性基を導入したもの、および、界面活性剤を混合乳化させて、いわゆる自己乳化させたものを挙げることができる。
【0052】
上記親水性基として、カルボキシル基およびスルホン酸基などのアニオン性基、第三級アミノ基などのカチオン性基およびポリオキシアルキレン基などのノニオン性基が挙げられる。これらの中で、得られる塗膜の耐水性を考慮すると、上記親水性基はノニオン性基であることが好ましい。具体的なノニオン性基として、親水性が高いポリオキシエチレン基が好ましい。
【0053】
上記ポリイソシアネート化合物と界面活性剤とを混合し乳化させた、自己乳化ポリイソシアネート化合物の調製に好適に用いられる界面活性剤として、例えば、カルボキシル基およびスルホン酸基などのアニオン性基を有するアニオン界面活性剤、第三級アミノ基などのカチオン性基を有するカチオン界面活性剤、およびポリオキシアルキレン基などのノニオン性基を有するノニオン界面活性剤が挙げられる。これらの中で、得られる塗膜の耐水性を考慮すると、ノニオン界面活性剤を用いるのがより好ましい。
【0054】
水分散性を有する(B)ポリイソシアネート化合物として、市販品を用いてもよい。市販されているものとしては、アクアネート100、アクアネート110、アクアネート2
00およびアクアネート210(日本ポリウレタン工業社製)、バイヒジュールTPLS-2032、SUB-イソシアネートL801、バイヒジュールVPLS-2319、バイヒジュール3100、VPLS-2336およびVPLS-2150/1、バイヒジュール305、バイヒジュールXP-2655(住化バイエルウレタン社製)、タケネートWD-720、タケネートWD-725およびタケネートWD-220(三井武田ケミカル社製)、レザミンD-56(大日精化工業社製)などが挙げられる。
【0055】
本発明においては、(B)ポリイソシアネート化合物として、水分散性を有するものを用いるのがより好ましい。なお、(B)ポリイソシアネート化合物として、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。」
(3)「【0117】
本発明の水性塗料組成物を塗装する被塗物として好適である他の被塗物として、例えば、産業機械および建設機械などが挙げられる。産業機械および建設機械などは、一般に大型であり、そして強い荷重に耐えうるため、自動車車体などと比較して構成基材(鋼板)の厚みがあるという特徴がある。そのため、このような産業機械、建設機械が被塗物である場合は、被塗物の熱容量が大きく、加熱炉中において被塗物に熱が十分に伝達しないという問題がある。本発明の水性塗料組成物は、低温で硬化可能であること、そして低温で硬化させた場合であっても高い架橋密度を有する塗膜が得られることを、特徴の1つとする。そのため、本発明の水性塗料組成物は、このように被塗物の熱容量が大きく、塗装後の高温加熱硬化処理が困難である、産業機械・建設機械を被塗物とする塗装においても、好適に用いることができる。これらを被塗物とした塗装においては、本発明の水性塗料組成物を、被塗物の形状に応じた、当業者において通常用いられる塗装方法によって塗装した後、例えば50?100℃で10分?2時間加熱することによって、硬化塗膜を形成する態様が挙げられる。」
(4)「【0119】
製造例1 水酸基およびカルボキシル基を有するアクリルエマルションの製造
撹拌機、窒素導入管、温度制御装置、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器に、脱イオン水1,000部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら80℃に昇温した。
スチレン103部、メタクリル酸n-ブチル290部、アクリル酸n-ブチル280部、アクリル酸ヒドロキシエチル302部、アクリル酸26部、ドデシルメルカプタン3部および乳化剤としてのラテムルPD-104(花王社製、20%水溶液)100部を脱イオン水1,000部に加えて乳化したプレエマルションを、過硫酸アンモニウム3部を脱イオン水300部に溶解した開始剤水溶液とともに2時間かけて滴下した。
滴下終了後、さらに80℃ で1時間反応を継続した後冷却し、N、N-ジメチルアミノエタール8.2部を加え樹脂固形分30質量%のアクリルエマルションを得た。モノマー組成から計算される、このアクリルエマルションの樹脂固形分換算での水酸基価は130mgKOH/g、酸価は20mgKOH/gであった。また、得られたアクリルエマルションにおけるアクリル樹脂の、水分除去後のGPC測定による数平均分子量は、45,000であった。」
(5)「【0119】
製造例1 水酸基およびカルボキシル基を有するアクリルエマルションの製造
撹拌機、窒素導入管、温度制御装置、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器に、脱イオン水1,000部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら80℃に昇温した。
スチレン103部、メタクリル酸n-ブチル290部、アクリル酸n-ブチル280部、アクリル酸ヒドロキシエチル302部、アクリル酸26部、ドデシルメルカプタン3部および乳化剤としてのラテムルPD-104(花王社製、20%水溶液)100部を脱イオン水1,000部に加えて乳化したプレエマルションを、過硫酸アンモニウム3部を脱イオン水300部に溶解した開始剤水溶液とともに2時間かけて滴下した。
滴下終了後、さらに80℃ で1時間反応を継続した後冷却し、N、N-ジメチルアミノエタール8.2部を加え樹脂固形分30質量%のアクリルエマルションを得た。モノマー組成から計算される、このアクリルエマルションの樹脂固形分換算での水酸基価は130mgKOH/g、酸価は20mgKOH/gであった。また、得られたアクリルエマルションにおけるアクリル樹脂の、水分除去後のGPC測定による数平均分子量は、45,000であった。」
6 甲6の記載事項
甲6には次の記載がある。
(1)「【請求項1】
アクリル樹脂を含む主剤(I)並びに硬化剤(II)を含む水性2液型クリヤ塗料組成物において、主剤(I)に
酸価が40mgKOH/g未満のアクリル樹脂(A1)と、
酸価が100?300mgKOH/gの範囲内のアクリル樹脂(A2)と、を含み、かつ、
硬化剤(II)に酸基を有するポリイソシアネート化合物(B)と、
水酸基を有さないグリコールエーテル系有機溶剤(C)と、を含むことを特徴とする水性2液型クリヤ塗料組成物。」
(2)「【0179】
注9)バイヒジュール XP2655:商品名、住化コベストロウレタン社製、スルホン酸基を有するヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、NCO含量21%、固形分100質量%、
注10)バイヒジュール XP2487/1:商品名、住化コベストロウレタン社製、スルホン酸基を有するヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、NCO含量20.6%、固形分100質量%、
注11)バイヒジュール 3100:商品名、住化コベストロウレタン社製、ポリエチレングリコール変性ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、NCO含有量17.3%、固形分100質量%。」
7 甲7の記載事項
甲7には次の記載がある。
(1)169頁右欄3?11行
「2.水系樹脂の形態
水系樹脂はその形態から,水溶性型と水分散型に大別され,後者はさらにコロイダルディスパージョン型とエマルション型に分けられる。それぞれの特徴を表-2に示す^(3))。水溶性型とコロイダルディスパージョン型は親水性溶剤を使用して合成された樹脂に,中和剤を加えることにより水に溶解,半溶解させて得られるものである。一方エマルション型は乳化重合により製造されるものと,疎水性樹脂を機械的に強制乳化することにより製造されるものとに分けられる。」
(2)170頁表-2



(3)169頁右欄15?21行(当審注:○の中に1などの数字の記号を、○1などと表記する。)
「3.1 アクリル樹脂
アクリル酸,メタクリル酸の誘導体をラジカル重合することにより得ることができる樹脂をアクリル樹脂と呼んでいる。アクリル樹脂は○1耐光性,耐候性が良い,○2モノマーの種類が他の樹脂にくらべ圧倒的に多くあり樹脂設計が容易,○3比較的安価であり,生産性に優れている,○4無色透明であり光沢が良好などの特徴を有している。図-2にアクリル樹脂の構造を示す。」
(4)170頁図-2



8 令和元年10月29日提出の意見書の記載事項
第1に記載した本件特許の審査段階で提出された令和元年10月29日提出の意見書及び添付された実験成績証明書には、次の記載がある。
(1)意見書4頁19?28行
「(4-3-3)実験成績証明書に記載される参考比較例3は、引用文献3(当審注:甲4と同じ文献)の実施例11の追試となります。なお引用文献3の実施例11で用いられているアクリルエマルション樹脂のモノマー組成は不明であります。そしてこの参考比較例3においては、タレ限界膜厚が低く塗装作業性が劣っており、本願発明における水準を満たすものではないことが分かります。
以上より、補正後本願請求項1において達成される技術的効果は、引用文献3に開示される技術的効果とは異なるものであり、そして引用文献3に記載される塗料組成物は本願発明において達成される技術的効果を伴うものではないことがご理解頂けると思料します。
以上より、補正後本願発明は引用文献3から容易に想到し得たものではありません。」
(2)実験成績証明書の記載
ア 3頁1?19行
「引用文献3の【0068】、【0069】、【0070】段落の記載に従い、実施例11で用いられた塗料を製造した。
脱イオン水8部に撹拌しながら高分子量ブロック共重合物からなる顔料分散剤(商品名:BYK-190、ビックケミー社製)5部、カーボンブラック(商品名:FW-285、デグサ社製)3部、破泡性高分子からなる消泡剤(商品名:BYK-011、ビックケミー社製)0.5部、アクリルディスパージョン樹脂(OH価128、Tg50℃、樹脂固形分45%)(商品名:バイヒドロールXP2470、バイエル社製)37部を加え、カーボンブラックの粒子径が10μmとなるまで撹拌した。
その後撹拌しながらアクリルエマルション樹脂(OH価0、Tg66℃、樹脂固形分45%)(商品名:ジョンクリル538、ジョンソンポリマー株式会社製)36.8部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル4部、界面活性剤からなる表面調整剤(商品名:サーフィノール104BC、エアープロダクツ社製)1部、ポリウレタン樹脂系増粘剤(商品名:プライマルRM-8W、ロームアンドハース社製)0.8部、脱イオン水12.2部を添加した。
塗装前に硬化剤として水分散性ポリイソシアネート(樹脂固形分100%)(商品名:バイヒジュールVPLS2319、バイエル社製)12部加え、塗料を作製した。
上記より調製した水性塗料を用いて、参考比較例1と同様の手順により、塗膜形成および評価を行った。評価結果を以下の表に示す。」
イ 4頁11行以下
「評価結果
上記参考比較例1、2、3、4-1および4-2の評価結果を以下の表に示す。併せて、本願実施例1、本願参考例14および本願比較例3?4の評価結果を参考用として示す。



第4 本件異議の申立てについての判断
1 申立理由1(甲1を主引用例とする進歩性欠如)について
(1)申立人は、申立理由1として、本件発明1?7は、甲1に記載された発明および甲3?6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であり、本件発明1?7に係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきと主張するので以下検討する。
(2)甲1発明について
前記第3、1(1)に摘記した甲1の請求項1を引用する請求項2に注目し、下記成分(A)/(B)の上限値を採用し、前記第3、1(9)オに摘記した段落【0094】に記載された内部被架橋型アクリル系微粒子には、いずれもn-ブチルアクリレートが用いられていることを考慮すると、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「α,β-エチレン性不飽和カルボル酸を含むα,β-エチレン性不飽和単量体の共重合体である酸価35?120mgKOH/g、水酸基価50?150mgKOH/gのアクリル系共重合体(a1)と、α,β-エチレン性不飽和単量体の共重合体である酸価15mgKOH/g以下、水酸基価50?150mgKOH/gのアクリル系共重合体(a2)とが化学結合を介してグラフト重合したグラフト共重合体であって、酸価10?30mgKOH/g、水酸基価50?150mgKOH/gを有する水分散性のアクリル系グラフト共重合体(A)、および
n-ブチルアクリレートを含むα,β-エチレン性不飽和単量体(b1)を乳化重合法で重合した共重合体であって、酸価15?200mgKOH/g、水酸基価15?200mgKOH/gを有する内部非架橋型アクリル系微粒子(B)を含有し、
水性塗料組成物中の全樹脂固形分に占める割合が、水分散性のアクリル系グラフト共重合体(A)90重量%、内部非架橋型アクリル系微粒子(B)10重量%であり、
更に、数平均分子量1000以下のアミノ樹脂(C)を、水性塗料組成物中の全樹脂固形分に占める割合として10?40重量%含有することを特徴とする水性塗料組成物。」
(3)本件発明1との対比
ア 甲1発明の「アクリル系グラフト共重合体(A)」、「内部非架橋型アクリル系微粒子(B)」は、本件発明1の「アクリル樹脂ディスパージョン(A1)」、「炭素数4?6の疎水性直鎖アルキル基、分枝状アルキル基又は脂環状アルキル基を有するアクリル樹脂エマルション(A2)」にそれぞれ相当し、これらの成分が本件発明1における「主剤」を構成することになる。
イ 甲1発明の「水性塗料組成物中の全樹脂固形分に占める割合が、水分散性のアクリル系グラフト共重合体(A)90重量%、内部非架橋型アクリル系微粒子(B)10重量%であ」る点は、本件発明1における「前記アクリル樹脂ディスパージョン(A1)及び前記アクリル樹脂エマルション(A2)の樹脂固形分質量比は、(A1):(A2)=95:5?50:50の範囲内」の発明特定事項を充足する。
ウ 甲1発明における「数平均分子量1000以下のアミノ樹脂(C)」は、本件発明1の「水分散性硬化剤(II)」に相当する。
(3)一致点及び相違点
ア 一致点
以上から本件発明1と甲1発明との一致点は、次のとおりである。
「 水性主剤(I)及び水分散性硬化剤(II)を含む水性塗料組成物であって、
前記水性主剤(I)は、水酸基含有樹脂水分散体(A)を含み、
前記水酸基含有樹脂水分散体(A)は、
アクリル樹脂ディスパージョン(A1)、及び
炭素数4?6の疎水性直鎖アルキル基、分枝状アルキル基又は脂環状アルキル基を有するアクリル樹脂エマルション(A2)、
を含み、
前記アクリル樹脂ディスパージョン(A1)及び前記アクリル樹脂エマルション(A2)の樹脂固形分質量比は、(A1):(A2)=95:5?50:50の範囲内である、
水性塗料組成物。」
イ 相違点1
本件発明1と甲1発明との相違点(以下「相違点1」という。)は、次のとおりである。
水分散性硬化剤について、本件発明1においては、「水分散性ポリイソシアネート(B)を含」むのに対して、甲1発明においては、「数平均分子量1000以下のアミノ樹脂(C)」である点。
(4)相違点1についての判断
ア 前記第3、3に摘記した甲3の記載から、アミノ樹脂もポリイソシアネートも架橋剤として周知のものである。また、前記第3、4?6に摘記したように、甲4?6においても水分散性ポリイソシアネートが架橋剤(硬化剤)として用いられており、本件出願前に周知の事項であったといえる。
イ しかしながら、アミノ樹脂を架橋剤とする甲1発明においては、前記第3、3(2)に摘記したように、「一液型焼付塗料」であるのに対して、水分散性イソシアネートを架橋剤とした場合には、前記第3、3(3)に摘記したように「主としてポリオール,ポリアミンと混合して用いられる常温,あるいは低温焼付用の架橋剤」であって、「二液型塗料」といえるものである。
ウ 塗工条件を変更しなければならないから、甲1発明における硬化剤を単純にアミノ樹脂から水分散性イソシアネートに置き換えることはできない。また、仮に置き換えたとしても、実際に塗膜が形成されるかどうかを予測することが困難である。
エ したがって、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到できるものということはできず、申立理由1は成り立たない。
(5)申立人の主張に対して
申立人は、「アミノ樹脂をポリイソシアネートに変更することは、特許・実用新案審査基準,第III部,第2章,第2節,3.1.2(1)設計変更等における「(i)一定の課題を解決するための公知材料の中からの最適材料の選択」、「(iii)一定の課題を解決するための均等物による置換」、又は「(iv)一定の課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計変更や設計的事項の採用」に過ぎない。」と主張する。
しかしながら、アミノ樹脂をポリイソシアネートに変更することによって、本件発明の段落【0003】に記載された「大型で肉厚の被塗物、例えば、重車両、特に鉄道車両を塗装する場合は、被塗物の熱容量が高いことから焼付硬化の実施が困難となるため、焼付硬化型塗料組成物を使用することは困難である。」という課題の一つを解決するものであるから、上記(i),(iii),(iv)に該当するということはできず、申立人の主張は採用できない。
(6)本件発明2?7について
本件発明2?7は、本件発明1を発明特定事項として包含し、さらに限定がされたものであるから、本件発明1と同様に申立理由1は成り立たない。
(7)小括
以上のとおり、本件発明1?7は、甲1発明などに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 申立理由2(甲2を主引用例とする進歩性欠如)
申立人は、申立理由2として、本件発明は、甲2に記載された発明および甲3?6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであると主張するので以下検討する。
(1)甲2発明について
ア 前記第3、2(1)に摘記した請求項1を引用する請求項3は次のとおりである。
「(A)水酸基価40?100、酸価5?40、ガラス転移点-40?10℃、数平均分子量3,000?15,000の同一分子内にポリオキシエチレン結合及び水酸基を併せ有する水溶性アクリル樹脂、並びに(B)水酸基価40?100、酸価1?30、ガラス転移点-40?10℃の水酸基を有するアクリル樹脂エマルジョンを含有し、さらに硬化剤としてアミノ樹脂を含有してなる水性被覆用樹脂組成物。」
イ ここで、前記第3、2(3)に摘記した甲2の段落【0013】には、アミノ樹脂として、水溶性メラミン樹脂を用いることが好ましいとされているから、本件発明1の「水溶性硬化剤」が開示されているといえる。また、水溶性アクリル樹脂(A)及びアクリル樹脂エマルジョン(B)はいずれも水に溶解又は分散しているから「水性主剤」といえる。
ウ 前記第3、2(4)に摘記した甲2の段落【0017】において、アクリル樹脂エマルジョン(B-1)の合成例として、アクリル酸ブチルがモノマーとして用いられているから、アクリル樹脂エマルジョン(B-1)は、本件発明1の「炭素数4?6の疎水性直鎖アルキル基、分枝状アルキル基又は脂環状アルキル基を有するアクリル樹脂エマルション(A2)」に相当する。
エ 前記第3、2(5)に摘記した甲2の段落【0019】の【表2】における実施例3においては、水酸基を有する水溶性アクリル樹脂(A):アクリル樹脂エマルジョン(B-1)が75:10となっている。
オ 以上を踏まえると、甲2から次の発明(以下「甲2発明」という。)が把握できる。
「水性主剤及び水分散性硬化剤を含む水性塗料組成物であって、
水酸基含有樹脂組成物として、水酸基を有する水溶性アクリル樹脂及びアクリル樹脂エマルションを含み、
前記水分散性硬化剤は水溶性メラミン樹脂であり、
前記水酸基含有樹脂組成物は、
水溶性アクリル樹脂ディスパージョン、及び
炭素数4の疎水性直鎖アルキル基を有するアクリル樹脂エマルション、
を含み、
前記アクリル樹脂ディスパージョン及び前記アクリル樹脂エマルションの樹脂固形分質量比は、75:10である、水性塗料組成物。」
(2)本件発明1との対比
ア 以上を踏まえて、甲2発明と本件発明1とを対比する。
イ 甲2発明の「水溶性アクリル樹脂」及び「アクリル樹脂エマルション」は、本件発明1の「水酸基含有樹脂水分散体」及び「アクリル樹脂エマルション」に相当し、両者とも水に分散しているということもできるから、合わせて本件発明1の「水酸基含有樹脂水分散体」に相当し、これらが「水性主剤」を構成する。
ウ 甲2発明の「炭素数4の疎水性直鎖アルキル基を有するアクリル樹脂エマルション」は、本件発明1における「炭素数4?6の疎水性直鎖アルキル基、分枝状アルキル基又は脂環状アルキル基を有するアクリル樹脂エマルション(A2)」を充足する。
エ 甲2発明における「前記アクリル樹脂ディスパージョン及び前記アクリル樹脂エマルションの樹脂固形分質量比は、75:10」は、本件発明1の「前記アクリル樹脂ディスパージョン(A1)及び前記アクリル樹脂エマルション(A2)の樹脂固形分質量比は、(A1):(A2)=95:5?50:50の範囲内」を充足する。
(3)一致点及び相違点
ア 一致点
以上から、本件発明1と甲2発明との一致点は、次のとおりである。
「水性主剤(I)及び水分散性硬化剤(II)を含む水性塗料組成物であって、
前記水性主剤(I)は、水酸基含有樹脂水分散体(A)を含み、
前記水酸基含有樹脂水分散体(A)は、
アクリル樹脂ディスパージョン(A1)、及び
炭素数4?6の疎水性直鎖アルキル基、分枝状アルキル基又は脂環状アルキル基を有するアクリル樹脂エマルション(A2)、
を含み、
前記アクリル樹脂ディスパージョン(A1)及び前記アクリル樹脂エマルション(A2)の樹脂固形分質量比は、(A1):(A2)=95:5?50:50の範囲内である、
水性塗料組成物。」である点。
イ 相違点2
本件発明1と甲2発明との相違点(以下「相違点2」という。)は、次のとおりである。
水分散性硬化剤について、本件発明1においては、「水分散性ポリイソシアネート(B)を含」むのに対して、甲2発明においては、「水溶性メラニン樹脂」である点。
(4)相違点2についての判断
相違点2は、前記1(3)イにおいて検討した相違点1と同様である。したがって、前記1(4)において検討したように、相違点2に係る本件発明1の構成は当業者であっても容易に想到することができるものということはできないから、申立理由2は成り立たない。
(5)本件発明2?7にについて
本件発明2?7は、本件発明1を発明特定事項として包含し、さらに限定がされたものであるから、本件発明1と同様に申立理由2は成り立たない。
(6)小括
以上のとおり、本件発明1?7は、甲2発明などに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 申立理由3(甲4を主引用例とする進歩性欠如)
(1)申立人は、申立理由3として、本件発明は、甲4に記載された発明および甲1?3、5、6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであると主張するので以下検討する。
(2)甲4発明について
ア 前記第3、4(8)に摘記した甲4の塗料11は、次のような発明(以下「甲4発明」という。)である。
「アクリルディスパージョン樹脂(OH価128、Tg50℃、樹脂固形分45%)(商品名:バイヒドロールXP2470、バイエル社製)を36.8部含有する水溶液に、アクリルエマルション樹脂(OH価0、Tg66℃、樹脂固形分45%)(商品名:ジョンクリル538、ジョンソンポリマー株式会社製)36.8部加え、さらに、塗装前に硬化剤として水分散性ポリイソシアネート(樹脂固形分100%)(商品名:バイヒジュールVPLS2319、バイエル社製)12部加えた塗料組成物」
(3)本件発明1との対比
ア 甲4発明における「アクリルディスパージョン樹脂(OH価128、Tg50℃、樹脂固形分45%)(商品名:バイヒドロールXP2470、バイエル社製)」、「アクリルエマルション樹脂(OH価0、Tg66℃、樹脂固形分45%)(商品名:ジョンクリル538、ジョンソンポリマー株式会社製)」は、本件発明1における「アクリル樹脂ディスパージョン(A1)」、「アクリル樹脂エマルション(A2)」にそれぞれ相当し、両者が「水性主剤」を構成し、水酸基含有樹脂水分散体であることも明らかである。
イ 前記アクリルディスパージョン樹脂と前記アクリルエマルション樹脂との重量比は、樹脂固形分が同じなので、37:36.8となり、合計が100となるように、1.355を乗じると、50.14:49.86となるから、本件発明における「(A1):(A2)=95:5?50:50の範囲内」を充足する。
ウ 甲4発明における「水分散性ポリイソシアネート(樹脂固形分100%)(商品名:バイヒジュールVPLS2319、バイエル社製)」は、本件発明1における「水分散性硬化剤(II)」であって、「前記水分散性硬化剤(II)は、水分散性ポリイソシアネート(B)を含」むものである。
(4)一致点及び相違点
ア 以上から、本件発明1と甲4発明は次の点で一致する。
「 水性主剤(I)及び水分散性硬化剤(II)を含む水性塗料組成物であって、
前記水性主剤(I)は、水酸基含有樹脂水分散体(A)を含み、
前記水分散性硬化剤(II)は、水分散性ポリイソシアネート(B)を含み、
前記水酸基含有樹脂水分散体(A)は、
アクリル樹脂ディスパージョン(A1)、及び
アクリル樹脂エマルション(A2)、
を含み、
前記アクリル樹脂ディスパージョン(A1)及び前記アクリル樹脂エマルション(A2)の樹脂固形分質量比は、(A1):(A2)=95:5?50:50の範囲内である、
水性塗料組成物。」である点。
イ 相違点4
本件発明1と甲4発明とは次の点で相違する(以下「相違点4」という。)。
アクリル樹脂エマルションについて、本件発明1においては、「炭素数4?6の疎水性直鎖アルキル基、分枝状アルキル基又は脂環状アルキル基を有するアクリル樹脂エマルション(A2)」と特定されているのに対して、甲4発明においては、「アクリルエマルション樹脂(OH価0、Tg66℃、樹脂固形分45%)(商品名:ジョンクリル538、ジョンソンポリマー株式会社製)」であって、炭素数4?6の疎水性直鎖アルキル基、分枝状アルキル基又は脂環状アルキル基を有するか否か明らかでない点。
(5)相違点4についての判断
ア 甲4発明における「ジョンクリル538」がどのようなモノマーから合成されたものかを申立人は立証せず、職権で調査しても明らかにならなかった。したがって、相違点4は実質的な相違点として取り扱うこととする。
イ 相違点4による作用効果について
前記第3、8(2)イに摘記した表に記載された参考比較例3が甲4発明に相当する。その表から、甲4発明に対して、相違点4の構成を加え、本願実施例1とすることにより、タレ限界膜厚が増加し、20°光沢値が格別に上昇するという予測を超える効果を奏することが読み取れる。そうすると、相違点4が当業者にとって容易に想到しえたとしても、本件発明1は甲4発明に対して進歩性を欠如するということはできない。したがって、申立理由3は成り立たない。
ウ 申立人の主張に対して
申立人は、前記第3、4(3)に摘記した甲4の段落【0022】に「(II)成分の単量体成分としては、上記(I)成分の同様の単量体成分の1種又は2種以上との共重合体等」と記載され、同(2)に摘記した甲4の段落【0012】に「(I)成分の単量体成分は、例えば、・・・n-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート・・・」と記載されているから、相違点4は、実質的な相違点でないか、または容易想到であると主張していると解される。
しかしながら、前記アにて検討したように、相違点4は実質的な相違点である。また、甲4の段落【0012】には、多数のモノマーが記載されており、「炭素数4?6の疎水性直鎖アルキル基、分枝状アルキル基又は脂環状アルキル基を有するアクリル樹脂」を構成するモノマー以外のモノマーも多数列挙されているから、そのなかからn-ブチルアクリレートを選択することにより、前記イで検討したように、格別の作用効果を奏するのであるから、本件特許が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるということはできない。
(6)本件発明2?7について
本件発明2?7は、本件発明1を発明特定事項として包含し、さらに限定がされたものであるから、本件発明1と同様に申立理由3は成り立たない。
(7)小括
以上のとおり、本件発明1?7は、甲4発明に対して新規性を有するものであるし、甲4発明などに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 申立理由4(サポート要件違背または実施可能要件違背)
(1)申立人は、本件発明1?7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号または同法第36条第4項第1号に規定の要件を満たさない特許出願に対してなされたものであるから、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきものと主張するので以下検討する。
(2)申立人の主張について
ア 前記第3、7(3)に摘記した甲7の「アクリル樹脂は、・・・モノマーの種類が他の樹脂にくらべ圧倒的に多くあり」という記載から、本件発明1に包含されるポリマーの種類が多く、そのいずれの樹脂においても、本件特許の課題が解決できるとはいえないと主張していると解される。
しかしながら、申立人は、課題が解決できない例を示しておらず、申立人の主張を採用することはできない。
イ 申立人は、本件発明1の「水酸基含有樹脂水分散体」について、水酸基の下限が規定されていないから、本件発明は十分架橋しない場合も含まれ、その場合は課題が解決できないと主張する。
しかしながら、「水酸基含有樹脂水分散体」には水酸基が当然に含まれるから、ある程度の架橋は起こる発明に特定されているといえるから、申立人の主張は採用できない。
ウ 申立人は、本件発明1においては、「炭素数4?6の疎水性直鎖アルキル基、分枝状アルキル基又は脂環状アルキル基」の含有量が特定されていないから、ごく少量であれば、本件発明は課題が解決できない旨主張する。
しかしながら、本件明細書の段落【0030】に「上記炭素数4?6の疎水性アルキル基含有(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、アクリル樹脂エマルション合成に用いるモノマー混合物100質量部に対して、10?80質量部の範囲内であるのが好ましく、15?80質量部の範囲内であるのがより好ましく、15?75質量部の範囲内であるのがさらに好ましい。炭素数4?6の疎水性アルキル基含有(メタ)アクリレートモノマーの含有量が上記範囲内にあることで、製造されるアクリル樹脂エマルションを用いて得られる塗料組成物の塗装作業性や、塗料組成物から得られる塗膜の外観および耐水性を向上させる利点がある。上記炭素数4?6の疎水性アルキル基含有(メタ)アクリレートモノマーは、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。」と記載されている。そして、課題が解決できないほどの「ごく少量」の場合も本件発明は含むということはできないから、申立人の主張は採用できない。
(3)小括
申立人の主張はいずれも採用できず、申立理由4は成り立たない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?7は、申立人の主張する理由により取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消す理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-10-21 
出願番号 特願2019-4417(P2019-4417)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (C09D)
P 1 651・ 121- Y (C09D)
P 1 651・ 536- Y (C09D)
P 1 651・ 113- Y (C09D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 上條 のぶよ  
特許庁審判長 天野 斉
特許庁審判官 木村 敏康
門前 浩一
登録日 2019-12-06 
登録番号 特許第6626995号(P6626995)
権利者 日本ペイント・インダストリアルコ-ティングス株式会社
発明の名称 水性塗料組成物及び塗膜形成方法  
代理人 吉田 環  
代理人 山尾 憲人  
代理人 後藤 裕子  
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