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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1368135
異議申立番号 異議2020-700574  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-08-07 
確定日 2020-11-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第6648334号発明「カテキン類由来の苦味が軽減された飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6648334号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6648334号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成31年2月22日を出願日とする特願2019-31085号の一部を、令和1年10月2日に新たな特許出願としたものであって、令和2年1月17日にその特許権の設定登録がされ、同年2月14日にその特許公報が発行され、その後、その全請求項に係る発明の特許に対し、令和2年8月7日に斉藤 出(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1?3に係る発明は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件発明1」などと、それらをまとめて「本件発明」ということがある。)である。

「【請求項1】
40ppm以上のリナロールを含む、紅茶抽出物を含有する飲料であって、
カテキン類を1?500ppm含有し、pHが5.0?8.0である、上記飲料。
【請求項2】
Brixが1以下である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
紅茶抽出物を含有する飲料を製造する方法であって、
リナロールの濃度を40ppm以上、カテキン類の濃度を1?500ppm、pHを5.0?8.0に調整する工程を含む、上記方法。」

第3 申立理由の概要
特許異議申立人が申し立てた取消理由の概要は次のとおりである。

[理由1]本件発明1?3は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?甲第9、甲第14号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1?3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
[理由2]本件発明1?3について、発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に適合しない。
したがって、本件発明1?3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
[理由3]本件発明1?3について、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合しない。
したがって、本件発明1?3に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
[理由4]本件発明1?3について、特許を受けようとする発明が明確でないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合しない。
したがって、本件発明1?3に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

第4 当審の判断
1 理由1について
(1)甲各号証及びそれらの記載事項
甲各号証及びそれらの記載事項は以下のとおりである(なお、以下甲第1号証を「甲1」などいう)。

甲1:特開2005-348619号公報
甲2:特開2007-68464号公報
甲3:特開2007-6758号公報
甲4:特開2016-15924号公報
甲5:中国特許出願公開第106720675号明細書
甲6:日本味と匂学会誌,1998年4月,Vol.5,No.1,pp.41?48
甲7:特開2012-95646号公報
甲8:村松敬一郎編,シリーズ≪食品の科学≫ 茶の科学,株式会社朝倉書店,1991年3月15日 初版第1刷,pp.108?113
甲9:Agric.Biol.Chem.,(1990),54(10),pp.2537?2542
甲10:食品添加物「サンフェノン90LB-OP」のパンフレット、太陽化学株式会社、2015年7月8日発行
甲11:武田善行編著,茶のサイエンス-育種から栽培・加工・喫茶まで,筑波書房,2004年4月30日 第1版第1刷発行,pp.202?205
甲12:衛藤英男他6名編,新版 茶の機能-ヒト試験から分かった新たな役割,一般社団法人農山漁村文化協会,2013年11月1日 第1刷発行,pp.382?387
甲13:醸協,(2013),第108巻,第2号,pp.88?97
甲14:科学研究費助成事業 研究成果報告書,平成29年6月9日,研究代表者 京都教育大学・教育学部・講師 大畑 素子

甲1:
1a)「【請求項1】
紅茶葉1重量部に対し、50?90℃の高温水を1?5重量部加え、30秒?5分間蒸らす工程と、
上記工程で蒸らした葉に、30℃未満の低温水を15?40重量部加え、10?30℃で20?60分間抽出する工程と、を具備する紅茶飲料の製造方法。
・・・
【請求項7】
請求項1?6の何れか一項に記載の製造方法によって製造された紅茶飲料。
【請求項8】
請求項7に記載の紅茶飲料であって、該紅茶飲料の原料に用いた紅茶葉と同一の紅茶葉を約70℃の温水で約4分間抽出した紅茶液と比較して、タンニン及びカフェインの含有量が少なく、リナロール及びゲラニオールの含有量が多いことを特徴とする紅茶飲料。
【請求項9】
請求項8に記載の紅茶飲料であって、該紅茶飲料の原料に用いた紅茶葉と同一の紅茶葉を、約70℃の温水で約4分間抽出した紅茶液と比較して、タンニン量が約0.7?0.9倍、カフェイン量が約0.5?0.7倍、リナロール量が約1.4?2.1倍、ゲラニオール量が約1.1?1.4倍であることを特徴とする紅茶飲料。」

1b)「【0001】
本発明は、紅茶飲料の製造方法及び該方法による紅茶飲料に関する。特に、紅茶特有の香り、濃度感を引き出すための製造方法及び該方法による紅茶飲料に関する。」

1c)「【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、香りが強く、適度な濃度感がありながら、苦渋味が弱いという優れた風味を有する紅茶飲料の製造方法を提供することを目的とする。
・・・
【0008】
また、本発明の他の観点から、上記製造方法によって製造された紅茶飲料が提供される。該紅茶飲料は、約70℃の温水で約4分間抽出した紅茶液と比較して、タンニン及びカフェインの含有量が少なく、リナロール及びゲラニオールの含有量が多いことが好ましく、・・・」

1d)「【実施例】
【0021】
以下、本発明の方法によって製造された紅茶飲料と、従来の方法によって製造された紅茶飲料を比較した実験例を記載する。
【0022】
1.紅茶液の調製
<実施例1>
本発明の方法に従い、図1のフローチャートに示した手順で紅茶飲料を調製した。ダージリンの紅茶葉120gをステンレスビーカーに均一にいれ、高温水240mlを加えて茶葉を均一に湿らせた。高温水の温度は、90℃、80℃、70℃、60℃、及び50℃とした。3分間静置して蒸らした後、16?18℃の低温水3600mlを加えて20℃にし、30分間抽出した。抽出後、ステンレスメッシュで濾過し、濾液をさらに微細濾過し、紅茶抽出液を得た。この紅茶抽出液に糖類及び適切な添加物を添加した後、pH5.9に調整した。次いで、イオン交換水を加えて10Lにまで希釈し、紅茶飲料を得た。UHT殺菌(超高温殺菌法)を行い、適切な容器に充填した。
【0023】
<実施例2>
高温水の温度を70℃とした他は、実施例1と同様の手順で紅茶飲料を調製した。但し、実施例2においては、高温水を加えて3分間蒸らした後、液分を廃棄した。
【0024】
<比較例1>
従来の方法に従い、紅茶飲料を調製した。ダージリンの紅茶葉120gに、90℃、70℃、50℃、及び20℃の温水3600mlを加え、抽出した。抽出時間はそれぞれ、2分、4分、7分、及び30分間とした。抽出後、ステンレスメッシュで濾過し、得られた濾液を20℃に冷却した。以後の工程は実施例1と同様に行った。
【0025】
<比較例2>
特許第3435188号に記載の方法に従い、図2のフローチャートに示した手順で紅茶飲料を調製した。同公報に記載された方法は、高温水で抽出した後、低温水で抽出する方法である。
【0026】
ダージリンの紅茶葉120gに、80℃の温水2400mlを加えて1分30秒間抽出した。さらに、5℃の冷水4800mlを加えて30℃に調節し、5分間抽出した。抽出後の工程は、実施例1と同様に行った。
【0027】
2.分析試験
<香気成分量の測定>
実施例1及び2、比較例1及び2で調製した紅茶飲料について、紅茶に特徴的なフラワリーな香りの成分であるリナロール、ゲラニオールの含有量を測定した。
・・・
【0031】
測定結果を表1に示す。表1は、比較例1の3-IIの試料、即ち、70℃で4分間抽出した紅茶液の測定値(殺菌前:リナロール12.8μg/100ml、ゲラニオール6.5μg/100ml;殺菌後:リナロール8.4μg/100ml、ゲラニオール5.9μg/100ml)を基準とし、それぞれの試料の測定値を比で表した。
【表1】

【0032】
この結果をグラフで表したものを図3および4に示した。
【0033】
以上の結果から、実施例1及び2は、比較例1及び2よりリナロール及びゲラニオールを多量に含んでいることが示された。実施例の中では、蒸らし温度が70℃及び60℃のとき(1-III,1-IV)で両成分が最も多く含まれた。これは、高温過ぎると香気成分の一部が熱により気化し、低温過ぎると紅茶葉のひらきが足りず、続く抽出工程において十分に抽出できなかったためと考えられる。
【0034】
<タンニン及びカフェインの含有量の測定>
紅茶飲料における苦渋味の主要成分である、タンニン及びカフェインの含有量を測定した。・・・
【0035】
測定結果を表2に示す。表2は、比較例1の3-IIの試料、即ち、70℃で4分間抽出した紅茶液の測定値(タンニン68.3 mg/100g、カフェイン21.0 mg/100ml)を基準としたときのそれぞれの試料の値を比で表した。
【表2】

【0036】
この結果をグラフで表したものを図5および6に示した。
【0037】
以上の結果から、実施例1及び2は、比較例1の3-I?III及び比較例2よりもタンニン及びカフェインの両成分の含有量が小さいことが示された。従って、本発明の方法によれば、従来の方法によるよりも、苦渋味の原因となるタンニン、カフェインが抑えられた紅茶飲料を製造可能であることが示された。
【0038】
比較例1において20℃の低温水で抽出した紅茶(3-IV)は、タンニン、カフェインの含有量が著しく小さく、抽出が不十分であることが示唆された。一方で、本発明に従った実施例は蒸らし工程を備えているために、20℃の低温水で抽出したにも関わらず、タンニン及びカフェインが適度に抽出された。このことから、蒸らし工程を備えることによって、低温水でも十分に抽出できることが示された。
【0039】
また、比較例2(4-I)は、低温水で抽出する前に高温で抽出する工程を含むが、タンニン、カフェインが比較例1(3-I?III)(90℃、70℃、50℃抽出)と同程度抽出されている。従って、このような製造方法では、苦渋味の原因となるタンニン、カフェインが十分に抑えられていないことが示された。
【0040】
<官能試験>
実施例1及び2、比較例1及び2で調製した紅茶飲料について官能評価を行った。紅茶の品質管理を担当する訓練された5名のパネラーにより、香り、濃度感及び苦渋味の評価を行い、表3に示した結果を得た。
【表3】

【0041】
実施例1及び2は全体的に苦渋味が弱く、濃度感が適度に有り、香りも強く、風味のバランスが良かった。特に、実施例1の70℃及び60℃で蒸らし工程を行った紅茶は、香りが非常に強く、苦渋味が弱いながらも濃度感が適度にあり、最もバランスのよい風味を有した。
【0042】
一方、比較例1及び2は、全体的に濃度感は強いが苦渋味も強かった。これは、表2の結果において、タンニン・カフェインが多く含有されたことと一致している。
【0043】
比較例1において20℃で抽出した紅茶(3-IV)は、苦渋味が非常に弱く、同時に濃度感も極めて弱かった。
【0044】
また、比較例1において90℃、70℃、及び50℃で抽出された紅茶(3-I?III)は、苦渋味が全体的に強く、香りが弱かった。90℃、70℃での抽出(3-I?II)では特にその傾向が強かった。
【0045】
比較例2(4-I)は、濃度感は適度にあるが苦渋味がやや強く、また香りもやや弱い。結果として全体のバランスがあまり良好ではなかった。これは、蒸らし工程よりも加水量の多い高温水を用いて抽出しているため、香気成分が気化すると考えられる。
【0046】
以上の結果をまとめると、香気成分に関しては、実施例1が比較例1及び2に比べ、リナロールやゲラニオールを多量に含んでいることが示された。特に1-IIIや1-IVではその傾向が強く、両成分が多く含まれていた。また実施例2は実施例1と同様にリナロールやゲラニオールを多く含んでいた。
【0047】
タンニン・カフェインに関しては、実施例1及び2は、比較例1及び2(3-I?III、4-I)に比べて、タンニン・カフェイン量が少なかった。一方、比較例1(3-IV)と比較した場合、タンニン・カフェイン量は多く含まれていた。これらのことは高温抽出の場合、過剰にタンニン・カフェインが抽出されてしまい、逆に低温抽出の場合は抽出されにくいことを示している。しかし実施例1および2では適度にタンニン・カフェインを抽出することができた。
【0048】
官能評価では、実施例1および2は、比較例(3-I?III、4-I)に比較して、苦渋味が弱いが香りが強く、香味のバランスも優れていた。また実施例1-IIIや1-IVは、香味のバランスが特に優れており、良好であった。比較例3-IVと比較した場合は苦渋味・香りが共にやや強く、適度な濃度感があった。これらについては成分分析の結果とも一致していた。
【0049】
以上から、本発明は蒸らし工程を備えることにより、内容成分を抽出することなく、茶葉を湿潤させることができ、後の低温抽出において苦渋味が少ないにも関わらず、香りが強く、適度な濃度感がある紅茶飲料を製造することができる。さらに低温水による抽出でも抽出時間を極端に長くする必要がないため、飲料の連続生産にも適した方法である。」

1e)「【図3】



1f)「【図5】



甲2:
2a)「【請求項1】
水素型イオン交換樹脂に接触させてカフェインを低減させた紅茶抽出液と非重合体カテキン類含有組成物を配合することにより得られる、飲料中、非重合体カテキン類を40mg/100mL?300mg/100mLの濃度で、カフェイン/非重合体カテキン類との比率が0.001?0.15であり、非重合体カテキン類中のガレート体含有率が40?80質量%であり、pHが3.5?7である容器詰紅茶飲料。」

2b)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、非重合体カテキン類を高濃度で含有し、カフェイン含有量が大幅に低減された容器詰紅茶飲料を提供することである。」

2c)「【0009】
本発明は、紅茶抽出液を、洗浄した水の塩濃度が0?0.2質量%、電気伝導度が0?0.5[S/m]及びpHが4?7に調整した水素型イオン交換樹脂に接触させてカフェインを低減させ、次いで非重合体カテキン類含有組成物を配合し、飲料中、非重合体カテキン類を40mg/100mL?300mg/100mL、カフェイン/非重合体カテキン類との比率が0.001?0.15であり、非重合体カテキン類中のガレート体含有率が40?80質量%であり、pHが3.5?7の容器詰紅茶飲料の製造法を提供するものである。」

甲3:
3a)「【請求項1】
非重合体カテキン類の濃度が、50mg/100ml以下であり、かつ総ポリフェノール類の濃度が100?500mg/100mlの範囲内であることを特徴とする発酵茶飲料。」

3b)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、総ポリフェノール類濃度が高いにもかかわらず、苦渋味が少なく、さらに保存中の風味の変化、色調および外観の透明性の変化の度合いが少ない発酵茶飲料を提供することを主目的としている。」

3c)「【0024】
本発明における非重合体カテキン類は、茶飲料に含まれるポリフェノールの一種であり、一般的に苦渋味を有する化合物として知られている。このような非重合体カテキン類とは、カテキン、エピカテキン、ガロカテキンおよびエピガロカテキンのガレート基を有さない非ガレート体と、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレートおよびエピガロカテキンガレートのガレート基を有するガレート体との8種類のことを示す。
【0025】
また、本発明における非重合体カテキン類中の、上記ガレート体の含有量は、少ないことが好ましく、具体的には、50mg/100ml以下が好ましく、中でも0?30mg/100mlの範囲内が好ましい。上記ガレート体の含有量が多すぎると、ガレート体は苦渋味の強い化合物であるため、発酵茶飲料の苦渋味が増してしまう傾向にあるからである。」

3d)「【0041】
本発明に用いられる茶葉としては、特に限定されるものではなく、緑茶葉、半発酵茶葉、および完全発酵茶葉のいずれであってもよいが、本発明においては、半発酵茶葉および完全発酵茶葉であることが好ましい。このような発酵茶葉は、緑茶葉に較べて苦渋味の強い非重合体カテキン類の含有割合が少ないからである。
【0042】
上記半発酵茶葉としては、例えば烏龍茶葉等が挙げられ、上記完全発酵茶葉としては、例えば紅茶等が挙げられる。」

3e)「【0069】
[実施例1]
緑茶から抽出した、非重合体カテキン類の含有量が628mg/100mlで、総ポリフェノール類の含有量が739mg/100mlである茶葉抽出液にポリフェノールオキシダーゼであるラッカーゼ ダイワ Y120(天野エンザイム株式会社販売、白色腐朽菌由来)を0.03重量%添加して50℃にて3時間撹拌の酵素処理を実施した。この結果、非重合体カテキン類の含有量が103mg/100mlで、総ポリフェノール類の含有量が510mg/100mlである発酵茶抽出液への変換を行った。この変換した発酵茶抽出液を純水にて約3.4倍に希釈して非重合体カテキン類の含有量が30mg/100mlで、総ポリフェノール類の含有量が149mg/100mlとし、ビタミンCナトリウムを500ppm添加し、次いで重曹にてpH6.5に調整して、透明なペットボトルに135℃、30秒間程度のUHT殺菌後無菌状態で密閉充填し、密閉容器入りの低濃度非重合体カテキン類含有で高濃度総ポリフェノール類含有の発酵茶飲料を得た。こうして得られた発酵茶飲料を室内にて室温で2ケ月間放置し、冷暗所にて同じく2ケ月間放置した同品と比較を行ったが、その外観、色調、および風味において、苦渋味が少なくて飲みやすく、かつ変色、風味劣化がなく、ほとんど差がないものであった。
・・・
【0071】
[実施例3]
特別に調製した非重合体カテキン類の含有量が15g/100gで、総ポリフェノール類の含有量が71g/100gである紅茶から抽出した茶抽出物を、実施例1で同様にして得られた発酵茶抽出液を純水にて希釈して非重合体カテキン類の含有量が30mg/100mlで、総ポリフェノール類の含有量が149mg/100mlとした希釈液に100mg/100ml添加して溶解し、非重合体カテキン類の含有量が45mg/100mlで、総ポリフェノール類の含有量が220mg/100mlである発酵茶抽出液とした。この発酵茶抽出液にビタミンCナトリウムを500ppm添加し、次いで重曹にてpH6.5に調整して、透明なペットボトルに135℃、30秒間程度のUHT殺菌後無菌状態で密閉充填し、密閉容器入りの低濃度非重合体カテキン類で高濃度総ポリフェノール類の発酵茶飲料を得た。こうして得られた発酵茶飲料を室内にて室温で2ケ月間放置し、冷暗所にて同じく2ケ月間放置した同品と比較を行ったが、その外観、色調、および風味において、苦渋味が少なくて飲みやすく、かつ変色、風味劣化がなく、ほとんど差がないものであった。」

甲4:
4a)「【請求項1】
液体と混合して茶飲料を調製するための茶飲料用組成物であって、
原料として、可溶性茶固形分と、
液体と混合して得られる茶飲料における2-フェニルエタノール濃度が50?4000質量ppbになる量の2-フェニルエタノールと、
液体と混合して得られる茶飲料におけるリナロール濃度が5?500質量ppbになる量のリナロールと、
を含有することを特徴とする、茶飲料用組成物。」

4b)「【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、茶飲料、特に烏龍茶やルイボス茶に、2-フェニルエタノール(2-Phenylethanol)とリナロール(Linalool)を特定の濃度以上に含有させることにより、香りを改善できることに加えて、苦味や渋味、くせを低減させてまろやかで飲みやすくすることができることを見出し、本発明を完成させた。」

4c)「【0013】
また、後記参考例1において示すように、茶飲料において、リナロールの含有量は嗜好性と正の相関があり、リナロール濃度が高い茶飲料ほど、香りが良好であり、嗜好性も高くなる。このため、飲料のリナロール濃度を高めることにより、茶飲料の香りと嗜好性を改善することができる。ただし、リナロールは比較的強い香り成分であり、茶飲料の種類によっては、リナロール濃度が高くなりすぎると、リナロール特有の香りが強くなりすぎ、好ましくない場合がある。」

4d)「【0021】
・・・本発明に係る茶飲料用組成物において用いられる可溶性茶固形分としては、例えば、烏龍茶、ルイボス茶、ハニーブッシュ茶、マテ茶、麦茶、はと麦茶、野菜茶(野菜を茶原料とする茶)、コーン茶、ハーブ茶、漢方茶、豆茶、きのこ茶、玄米茶、はぶ茶(ハブソウ(Senna occidentalis)又はエビスグサ(Senna obtusifolia)の種子を茶原料とする茶)、チコリー茶、アロエ茶、緑茶、又は羅布麻茶の可溶性茶固形分が挙げられる。・・・ただし、本発明に係る茶飲料の原料としては、紅茶の茶葉から抽出された可溶性茶固形分は除かれる。紅茶は元々リナロール含有量が高く、2-フェニルエタノール及びリナロールによる香りや嗜好性改善効果が得られ難いためである。」

甲5(訳文で示す。):
5a)「特許請求の範囲
1.保健型ジャスミン茶飲料、その特徴は、以下の重量パーセントの成分を含む:リナロール2200ppm、ベンゼンメタノール150-300ppm、アルファリポ酸100-150ppm、棗フラボン類200-400ppm、カテキン類200-300ppm、グリセロ糖脂質20-40ppm、デヒドロ酢酸ナトリウム20-40ppm;そのうち、棗フラボン類中フラボン-ビス-グルコシドの含有量は棗フラボン類重量の22-27%を占める。」

5b)「[0010] 本発明は従来技術と比べて以下の利点を有する:本発明中にそれぞれ新鮮なジャスミンとジャスミン茶葉に相応したジャスミン茶の香を有する物質を抽出することによって、それと他の原料は合理的に配合し、ジャスミン茶飲料をジャスミン茶の香があるようにさせ、アルファリポ酸の添加は飲料の美味性を向上することができ、同時にその中に対応の重量のその他の原料を添加して、神経衰弱症状を改善することに役立ち、身体抵抗力を向上し、ほとんどの人に適して長期にわたって飲み続けることができる。」

5c)「[0011] 実施例1
保健型ジャスミン茶飲料、以下の重量パーセントの成分を含む:リナロール2200ppm、ベンゼンメタノール150ppm、アルファリポ酸150ppm、棗フラボン類200ppm、カテキン類300ppm、グリセロ糖脂質20ppm、デヒドロ酢酸ナトリウム40ppm;
そのうち、棗フラボン類中フラボン-ビス-グルコシドの含有量は棗フラボン類重量の22%を占める。
[0012] そのうち、前記リナロールは新鮮なジャスミン中から抽出し、ベンゼンメタノールはジャスミン茶叶中から抽出する;前記ジャスミン茶飲料は680nmの吸光度に0.02以下とする;前記アルファリポ酸はほうれん草中から抽出する。;前記カテキン類中没食子酸エステル型カテキン類の重量シェアは60%とする。
[0013] 本発明中ジャスミン茶飲料は通常の飲料生成の方法に従い調製し、常温に用いて、そのうちデヒドロ酢酸ナトリウムは防腐鮮度保持剤を作り、飲料の品質保証期間を延長することができる。」

甲6:
6a)「茶の苦渋味に対する茶香気の影響」(41ページ、表題)

6b)「本研究は、香気特性が異なる緑茶と紅茶を試料とし、それぞれの特徴的な香りが、茶の主要な感覚特性である苦味や渋味に及ぼす影響について調べることを目的とした。緑茶、紅茶の香気を嗅がせながら、苦味・渋味成分水溶液の味を評価させる官能検査により、刺激閾値および味強度を測定し、香気関与の有無について検討した。」(41ページ、左欄下から4行?右欄3行)

6c)「実験方法
1 官能検査方法
・・・
○2(当審中:原文は○の中に2) 実施方法
本論文の官能検査は、全て次の方法で行った。透明なポリエチレン製のコップを用意し、各濃度の味試料溶液10または20mlを入れる。グラスウールにしみこませた香気試料を褐色のサンプル管(・・・)に入れ、パネルの鼻の位置にあわせてコップに図1のようにセットした。官能検査を実施する際、パネルに、香気試料の香りを嗅ぎながら味試料溶液を口の中でころがし吐き出すよう指示した。」(41ページ、右欄6行?42ページ、左欄9行)

6d)「

」(42ページ、左欄)

6e)「3 味試料の調製
○1(当審中:原文は○の中に1) 味試料
茶の全体の味を呈するモデルとしてポリフェノン100 (三井農林株式会社供試品)を用いた。ポリフェノン100中のカテキン類およびカフェインの組成を表1に示した。ポリフェノン100は、緑茶の熱水抽出物を乾燥してつくられたものであるから緑茶と類似しており、苦味および渋味を呈し(-)-EGCgを最も多く含む。」(42ページ、右欄25?33行)

6f)「

」(43ページ、左欄)

6g)「結果
・・・
3 茶香気が苦渋味の味強度に及ぼす影響
・・・
ポリフェノン100、カフェイン、(-)-EGCgの味強度の評点の平均値を、図4に示した。ポリフェノン100については、どの濃度においても香気を付与した場合に、味強度の評点が高くなった。・・・
カフェインについては、有意な差は認められなかったが、200ppm以上の濃度の場合、緑茶の香気を付与すると、苦味強度が強まる傾向が見られた。400 ppmにおいては、紅茶および5倍濃度の緑茶香気を付与した場合に、苦味強度がやや弱まる傾向が見られた。5倍濃度の緑茶香気は紅茶に近い特性がみられたことより、紅茶様の香気は苦味を和らげる効果を持つことが示唆された。
(-)-EGCgについては、有意な差は認められなかったが、香気付与により渋味強度が強まる傾向が見られた。また、300 ppm以上の濃度になると、香気付与による味強度の変化が小さくなったが、この範囲では渋味が非常に強いため強度の差が感じられなかったと思われる。
考察
緑茶、紅茶の香気を付与しつつ、茶の苦渋味成分の剌激閾値および味強度を測定したところ次のような結果となった。ポリフェノン100については、緑茶、紅茶香気の付与により、刺激閾値が上昇し、味強度が増強された。カフェインについては、緑茶香気の付与により、刺激閾値が上昇し、味強度がやや増強された。(-)-EGCgについては、ポリフェノン100と同様、緑茶、紅茶の香気付与により、刺激閾値が上昇し、味強度が増強された。いずれの味試料においても、香気の付与により刺激閾値が上昇する場合は、味強度が増強されていた。・・・
緑茶香気が、苦渋味、苦味、渋味の剌激閾値を上昇させ、味強度を強めたのに対し、紅茶香気は、苦渋味と渋味においてのみ同様の傾向が見られた。紅茶香気付与により、苦味の刺激閾値はほぼ変わらず、高濃度の苦味溶液において苦味が弱まる傾向が見られた。」(43ページ、右欄9行?45ページ、左欄4行)

甲7:
7a)「【請求項1】
メチルサリシレートを有効成分として含有する、苦味抑制剤。」

7b)「【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、不快な苦味を有効に抑制することができる。また、本発明の苦渋味抑制剤は、安全性が高いため、飲食品、医薬品、医薬部外品の分野で使用することが可能である。」

7c)「【0016】
これら飲食品中の苦味成分としては、例えば、アミノ酸、ポリフェノール類、カフェイン、ペプチド、サポニン、リモニン、ナリンギン、オリゴ糖等が例示される。
アミノ酸としては、例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン等が例示される。
ポリフェノール類としては、その代表例としてフラボノイド、クロロゲン酸類等が例示される。フラボノイドとしては、非重合体カテキン類、タンニン等が例示される。なお、タンニンの含有量は、酒石酸鉄法により、標準液として没食子酸エチルを用い、没食子酸の換算量として求めることができる。また、「クロロゲン酸類」とは、3-カフェオイルキナ酸、4-カフェオイルキナ酸及び5-カフェオイルキナ酸のモノカフェオイルキナ酸と、3-フェルラキナ酸、4-フェルラキナ酸及び5-フェルラキナ酸のモノフェルラキナ酸と、3,4-ジカフェオイルキナ酸、3,5-ジカフェオイルキナ酸及び4,5-ジカフェオイルキナ酸のジカフェオイルキナ酸を併せての総称である。クロロゲン酸類の含有量は、上記9種の合計量に基づいて定義され、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりUV-VIS検出器を用いて測定することができる。」

7d)「【0042】
製造例2
紅茶抽出物の製造
90℃のイオン交換水を用いてケニア産CTC紅茶を浴比60で90秒間抽出し、冷却後、金網によりろ過した。更に、2号ろ紙にて濾過を行い、紅茶抽出物を得た。紅茶抽出物中の非重合体カテキン類の含有量は0.011質量%であり、また非重合体カテキン類中のガレート体の割合は60質量%であった。また、紅茶抽出物中の固形分は0.53質量%であった。」

甲8:
8a)「・・・いわゆる,タンニンに関しては,茶芽や緑茶では,カテキンが大半を占めている.」(108ページ、表4.15の下2?3行)

8b)「

」(110ページ)

8c)「

」(112ページ)

甲9(訳文で示す。):
9a)「1. レトルト殺菌後の茶香パターンにおける変化
表Iに示すように、ほとんどすべてのウーロン茶及び紅茶の抽出物に含まれている揮発性化合物は、レトルト殺菌後に減少した。」(2538ページ、左欄5?9行)

9b)「表I.レトルト殺菌前後の緑茶、ウーロン茶及び紅茶の抽出物に含まれる茶香化合物の変化

・・・

・・・

」(2538ページ)

甲10:
10a)「 サンフェノン90LB-OP
緑茶中に含まれる緑茶ポリフェノール(カテキン類)は、抗菌・抗酸化などの効果を持つ事が知られています。本品は、緑茶の茶葉から抽出・精製したポリフェノール粉末であり・・・。
・・・
【用途】
食品全般、特に飲料にご利用いただけます。
【成分】
チャ抽出物 100%(ポリフェノール含量 80%以上、カテキン含量 70%以上、EGCg
含量 40%以上 カフェイン含量 1%以下)」(2?13行)

甲11:
11a)「

・・・

・・・」(203ページ)

甲12:
12a)「1.茶の苦渋味物質
茶には,ポリフェノール,カフェイン,アミノ酸,糖類,有機酸などが含まれている。これらの成分のうち,茶の苦渋味に関与するのは,主にポリフェノールやカフェインである。ポリフェノールとしては,カテキン類,テアフラビン類およびテアルビジン類が,緑茶や紅茶の主要な苦渋味物質である。また,茶に含まれる量は少ないものの,フラバン類やフラボン類なども苦渋味を呈することが知られている^(2))。カフェインは,コーヒーやココアなどの苦味成分としても有名であるが,味を感じるための閾値(味を感じる最低濃度)が他の苦味成分に比較して高く(0.7mM程度)^(3)),それだけで茶の苦味を説明するには至っていない(一般的な煎茶に含まれる量は?2mM程度)。アミノ酸は,一般的には旨味,甘味あるいは酸味などを呈する成分として知られているが, 苦味を呈するものもある^(4))。苦味を呈するアミノ酸としては,アルギニン,チロシン,バリン, フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン,ロイシンおよびイソロイシンがある。また,玉露の旨味の主要成分であるテアニンも,濃度によっては苦味を呈する可能性がある。そのほかにも,サポニンのように強いえぐ味を与え,微量であっても茶の品質に影響するものもある。茶浸出液中や口腔内で様々な成分が相互作用することで,茶の苦渋味の強さが増強あるいは減弱する可能性があるが,詳細な解析はなされておらず,十分に解明されていない。」(382ページ、14?28行)

甲13:
13a)「5. モノテルペンアルコール類の官能特性
次に,モノテルペンアルコール類の官能特性を検討した。過去の文献ではモノテルペンアルコール類の閾値は,linaloolでは既に述べた通りおよそ1?2ppbと低いのに対して,geraniolでは40ppb^(22)),・・・と,いずれもlinaloolと比べると高い閾値が報告されていた。しかし,近年の文献で,geraniolで4?5ppb^(25)、26)),・・・など,より低い閾値が報告されている例もあった。」(91ページ、左欄16?25行)

甲14:
14a)「研究成果の概要(和文):ホエイタンパク質を酵素分解した分解物には、・・・多くの食品に利用されている。しかし、苦みなどの不快味や不快な匂いによる嗜好性の低下が問題となっている。
タイムやセイロン紅茶葉の揮発性画分は、ホエイタンパク質分解物の不快な風味を改善させる効果を有しており、その有効成分としてリナロールが特定された。リナロールは、検知閾値でホエイタンパク質分解物の不快な風味を有意に改善するが、ノーズクリップをして鼻腔に匂いが流入しない状態では風味への影響は見られなかった。このことから、リナロールの風味改善は味覚と嗅覚の相互作用によるものであると考えられた。」(1ページ目、枠囲いの下から1?7行)

14b)「乳タンパク質分解物(Whey Protein Hydrolysates、WPH)は以下の通り調製した。」(2ページ目、右欄21?22行)

14c)「そこで、本研究におけるリナロールの検知閾値を0.04μg/mLとし、2.5%WPH水溶液に添加して、・・・風味の変化を詳細に比較検討した。
・・・リナロール添加試料において、「苦い」、「渋い」、「まずい」、「舌に長く残る」の評価項目で有意に減少することが示された。・・・
以上をまとめると次の通りである。タイムやセイロン紅茶葉の揮発性画分は、ホエイタンパク質分解物の不快な風味を改善させる効果を有しており、その有効成分としてリナロールが特定された。リナロールは匂いの認知の無い検知閾値でホエイタンパク質分解物の不快な風味を有意に改善するが、ノーズクリップをして鼻腔に匂いが極力流入しない状態においては風味への影響は見られなかった。このことから、リナロールの風味改善は味覚と嗅覚の相互作用によるものであると考えられた。サプリメントなどの原料として広く利用されているホエイタンパク質分解物などの乳タンパク質分解物は、その風味改善はかねてからの課題であったが、タイムやセイロン紅茶葉、あるいは香料としてリナロールを添加することによって、不快味が軽減し、嗜好性も改善する可能性が示された。」(4ページ目、右欄、図2-Aの上6行?5ページ目、左欄36行)

(2)引用発明
甲1(摘示1a?1f)には、紅茶飲料の製造方法、及び当該製造方法により製造された紅茶飲料についての記載があるところ(摘示1a)、実施例1として、高温水の温度を種々変えた例が、実施例2として、高温水を加えて蒸らした後、液分を廃棄した例が記載されている(摘示1d)。
また、当該実施例1及び2により調製した紅茶飲料について、比較例1の3-IIの試料を基準としたリナロール及びゲラニオールの含有量並びにタンニン及びカフェインの含有量の測定結果が示されているところ、各実施例の香気成分比、成分比の記載(表1、表2)、比較例1の3-IIの試料についての「殺菌後:リナロール8.4μg/100ml」及び「タンニン68.3 mg/100g」との記載から、実施例1(試験区1-I?1-V)、実施例2(試験区2-I)について、リナロール及びタンニンの含有量は、リナロールが、約13.4、16.0、17.6、17.6、16.8、16.8μg/100ml、タンニンが、約61.5、54.6、54.6、54.6、54.6、47.8mg/100gと計算される。
したがって、甲1には次に示す発明(以下「引用発明1」及び「引用発明2」という。)が記載されていると認める。
「ダージリンの紅茶葉120gに、温度を90℃、80℃、70℃、60℃、及び50℃とした高温水240mlを加えて茶葉を均一に湿らせ、3分間静置して蒸らした後、16?18℃の低温水3600mlを加えて20℃にし、30分間抽出し、抽出後、濾過し、濾液をさらに微細濾過し、紅茶抽出液を得、この紅茶抽出液に糖類及び適切な添加物を添加した後、pH5.9に調整し、次いで、イオン交換水を加えて10Lにまで希釈し、紅茶飲料を得、UHT殺菌(超高温殺菌法)を行い、適切な容器に充填する製造方法により製造した紅茶飲料、又は当該製造方法において、高温水の温度を70℃とし、高温水を加えて3分間蒸らした後液分を廃棄した他は、同様の手順で製造した紅茶飲料であって、上記高温水の温度及び液分の廃棄の有無の順に応じて、リナロールの含有量が約13.4、16.0、17.6、17.6、16.8、16.8μg/100mlであり、タンニンの含有量が約61.5、54.6、54.6、54.6、54.6、47.8mg/100gである、紅茶飲料。」(引用発明1)

「ダージリンの紅茶葉120gに、温度を90℃、80℃、70℃、60℃、及び50℃とした高温水240mlを加えて茶葉を均一に湿らせ、3分間静置して蒸らした後、16?18℃の低温水3600mlを加えて20℃にし、30分間抽出し、抽出後、濾過し、濾液をさらに微細濾過し、紅茶抽出液を得、この紅茶抽出液に糖類及び適切な添加物を添加した後、pH5.9に調整し、次いで、イオン交換水を加えて10Lにまで希釈し、紅茶飲料を得、UHT殺菌(超高温殺菌法)を行い、適切な容器に充填する、紅茶飲料の製造方法、又は当該製造方法において、高温水の温度を70℃とし、高温水を加えて3分間蒸らした後液分を廃棄した他は、同様の手順である紅茶飲料の製造方法であって、上記高温水の温度及び液分の廃棄の有無の順に応じて、リナロールの含有量が約13.4、16.0、17.6、17.6、16.8、16.8μg/100mlであり、タンニンの含有量が約61.5、54.6、54.6、54.6、54.6、47.8mg/100gである、紅茶飲料の製造方法。」(引用発明2)

(3)対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1は、リナロールを含有する紅茶飲料であり、紅茶抽出液に糖類及び適切な添加物を添加し、イオン交換水を加えて製造される紅茶飲料であるから、「リナロールを含む、紅茶抽出物を含有する飲料」である点で、本件発明1と一致する。
引用発明1はタンニンを含有する。
甲8には、タンニンについて、茶芽等ではカテキンが大半を占めていることが記載されているから(摘示8a)、カテキンは、タンニンの1種であることが理解できる。
甲8には、紅茶の味成分の分析例として、未酸化ポリフェノール(カテキン)等のポリフェノール類が記載されており(摘示8b)、甲7には、紅茶抽出物中の非重合体カテキン類の含有量は0.011質量%であったことが記載されており(摘示7d)、甲3には、非重合体カテキン類は、茶飲料に含まれるポリフェノールの一種であること、非重合体カテキン類とは、カテキン、エピカテキン、ガロカテキンおよびエピガロカテキンのガレート基を有さない非ガレート体と、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレートおよびエピガロカテキンガレートのガレート基を有するガレート体との8種類のことを示すこと、用いられる茶葉として紅茶等が挙げられることが記載されている(摘示3c、3d)。
一方、本件明細書には、本件発明1の「カテキン類」について、「本明細書において、「カテキン類」とは、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートの総称を表す。」と記載されているところ(【0009】)、これらの化合物は、上記甲3に記載された非重合体カテキン類と同じ化合物である。
以上のことから、引用発明1はカテキン類を含有するといえるから、この点において、本件発明1と一致する。
引用発明1は、その製造過程においてpHを5.9に調整するものであり、該調整の後にイオン交換水で希釈するところ、当該希釈によってpHが大きくなることはあったとしても中性のpHである7より大きくなることはなく、該調整の後に他にpHが変化するような工程はないと認められるから、引用発明1のpHは本件発明1の「pHが5.0?8.0である」ことに相当する。
したがって、本件発明1と引用発明1とは、
「リナロールを含む、紅茶抽出物を含有する飲料であって、カテキン類を含有し、pHが5.0?8.0である、上記飲料。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:リナロールの濃度について、本件発明1が「40ppm以上」と特定しているのに対し、引用発明1は「約13.4、16.0、17.6、17.6、16.8、16.8μg/100ml」である点

相違点2:カテキン類の濃度について、本件発明1が「1?500ppm」と特定しているのに対し、引用発明1は不明であり、「タンニンの含有量が約61.5、54.6、54.6、54.6、54.6、47.8mg/100g」とされている点

<相違点1について>
引用発明1のリナロールの含有量を「ppm」の値に換算すると、約0.134、0.160、0.176、0.176、0.168、0.168ppmである。
甲5には、保健型ジャスミン茶飲料について、その成分として、リナロールを2200ppm含むことが記載されているが(摘示5a、5c)、甲5には、ジャスミン茶飲料をジャスミン茶の香があるようにさせ、神経衰弱症状を改善することに役立ち、身体抵抗力を向上し、ほとんどの人に適して長期にわたって飲み続けることができるようにしたものであることが記載されており(摘示5b)、一方で、甲1には、「香りが強く、適度な濃度感がありながら、苦渋味が弱いという優れた風味を有する紅茶飲料の製造方法を提供することを目的とする」ことが記載されており(摘示1c)、引用発明1は紅茶飲料に関するものである点でジャスミン茶飲料に関するものである甲5に記載されたものとは、対象とする飲料が異なり、また、引用発明1は、当該発明のリナロールの含有量で香りが強く、適度な濃度感がありながら、苦渋味が弱いという優れた風味を有する紅茶飲料の製造方法を提供することができたといえるから、甲5に記載された技術的事項に基いて、引用発明1の紅茶飲料において、リナロールの含有量を40ppm以上とすることが、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

甲4には、液体と混合して得られる茶飲料におけるリナロール濃度が5?500質量ppbになる量のリナロールを含有する茶飲料用組成物が記載され、茶飲料、特に烏龍茶やルイボス茶に、2-フェニルエタノール(2-Phenylethanol)とリナロール(Linalool)を特定の濃度以上に含有させることにより、香りを改善できることに加えて、苦味や渋味、くせを低減させてまろやかで飲みやすくすることができることを見出したことが記載されているところ(摘示4a、4b)、茶飲料の種類によっては、リナロール濃度が高くなりすぎると、リナロール特有の香りが強くなりすぎ、好ましくない場合があること(摘示4c)、茶飲料の原料としては、紅茶の茶葉から抽出された可溶性茶固形分は除かれること(摘示4d)が記載されており、甲4に記載されたリナロールの濃度は40ppmよりかなり小さく、しかも紅茶の茶葉から抽出された可溶性茶固形分は除かれることが記載されているので、甲4に記載された技術的事項に基いて、引用発明1において、リナロールの含有量を40ppm以上とすることが、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

甲6には、緑茶、紅茶の特徴的な香りが、茶の主要な感覚特性である苦味や渋味に及ぼす影響について調べることを目的とした実験についての記載があり、具体的には、緑茶の熱水抽出物を乾燥してつくられた各種濃度のポリフェノン100、カフェイン、(-)-EGCgを味試料とし、グラスウールにしみこませた香気試料をサンプル管に入れたものを摘示6dの図1のとおりに被験者に提示して茶香気が苦渋味に及ぼす影響を実験した結果が記載されているところ(摘示6a?6g)、結果及び考察として、ポリフェノン100については、紅茶香気の付与により味強度が増強されたこと、カフェインについては、有意な差は認められなかったが、400ppmにおいては、紅茶香気を付与した場合に、苦味強度がやや弱まる傾向が見られ、紅茶様の香気は苦味を和らげる効果を持つことが示唆されたこと、(-)-EGCgについては、有意な差は認められなかったが、香気付与により渋味強度が強まる傾向が見られ、また、300 ppm以上の濃度になると、香気付与による味強度の変化が小さくなったこと、紅茶の香気付与により、刺激閾値が上昇し、味強度が増強されたこと、紅茶香気付与により、苦味の刺激閾値はほぼ変わらず、高濃度の苦味溶液において苦味が弱まる傾向が見られたこと等が記載されている(摘示6g)。
一方、甲7には、メチルサリシレートを有効成分として含有する苦味抑制剤が記載され(摘示7a?7d)、甲9には、紅茶抽出物にリナロール及びサリチル酸メチル(甲7に記載のメチルサリシレートと同一の物質である。)が含まれることが記載されている(摘示9a、9b)。
甲6の記載から、高濃度の苦味溶液において紅茶香気付与により苦味が弱まるといえるとしても、甲6に記載の方法は、香気を苦味溶液とは別体として用いるものであり、また、苦味溶液も紅茶飲料ではない。さらに、当該紅茶香気がどのような成分を含有するかは不明であり、甲7及び甲9の記載をみても、リナロールが苦味を弱める成分であると特定することはできない。そして、仮に苦味溶液にリナロールを配合するとしても、紅茶飲料においてどの程度の量を配合すれば苦味を抑制できるかも不明である。
したがって、甲6、甲7、甲9に記載された技術的事項に基いて、引用発明1において、リナロールの含有量を40ppm以上とすることが、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

甲14には、タイムやセイロン紅茶葉の揮発性画分は、ホエイタンパク質分解物の不快な風味を改善させる効果を有しており、その有効成分としてリナロールが特定されたこと、2.5%WPH水溶液にリナロールの検知閾値を0.04μg/mLとして添加した場合に「苦い」、「渋い」、「まずい」、「舌に長く残る」の評価項目で有意に減少することが記載されているが(摘示14a?14c)、甲1には、「香りが強く、適度な濃度感がありながら、苦渋味が弱いという優れた風味を有する紅茶飲料の製造方法を提供することを目的とする」ことが記載されており(摘示1c)、引用発明1は紅茶飲料に関するものである点でホエイタンパク質分解物に関するものである甲14に記載されたものとは、その対象が異なり、また、引用発明1は、当該発明のリナロールの含有量で香りが強く、適度な濃度感がありながら、苦渋味が弱いという優れた風味を有する紅茶飲料の製造方法を提供することができたといえるから、甲14に記載された事項に基いて、引用発明1の紅茶飲料において、リナロールの含有量を40ppm以上とすることが、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

甲2には、飲料中の非重合体カテキン類の濃度等が特定された容器詰紅茶飲料に関する記載があり(摘示2a?2c)、甲3には、非重合体カテキン類の濃度等が特定された発酵茶飲料に関する記載があり(摘示3a?3e)、甲8には、紅茶の味成分の分析例等に関する記載がある(摘示8a、b)が、いずれの文献にも、紅茶飲料において、リナロールの含有量を40ppm以上とすることについての記載はないから、これら文献に記載された事項に基いて、引用発明1の紅茶飲料において、リナロールの含有量を40ppm以上とすることが、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

以上のとおりであるから、引用発明1において、リナロールの含有量を40ppm以上とすることが、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

そして、本件明細書、特許請求の範囲(以下「本件明細書等」という。)の記載からみて、本件発明1はガレート型カテキン由来の苦味が軽減されたpHが5.0以上の飲料を提供することができるという効果を有するものである。

よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲第2?甲第9、甲第14号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用してさらに技術的に特定するものであるところ、上記アで述べたとおり、引用発明1が甲1に記載された発明及び甲第2?甲第9、甲第14号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件発明2も、甲1に記載された発明及び甲第2?甲第9、甲第14号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件発明3について
本件発明3と引用発明2とを、本件発明1の場合と同様に対比する。
引用発明2の製造方法は、製造された紅茶飲料のリナロールの含有量が約13.4、16.0、17.6、17.6、16.8、16.8μg/100mlであり、タンニンの含有量が約61.5、54.6、54.6、54.6、54.6、47.8mg/100gであるから、当該製造方法において、リナロールの濃度を約13.4、16.0、17.6、17.6、16.8、16.8μg/100mlに、タンニンの濃度を約61.5、54.6、54.6、54.6、54.6、47.8mg/100gに調整する工程を含むといえる。
また、上記アで述べたのと同様に、引用発明2の紅茶飲料が含有するタンニンは、カテキン類を含有するといえ、タンニンの濃度を調整すればカテキン類の濃度も調整されるといえる。
さらに、引用発明2はその製造過程においてpHを5.9に調整するものであるところ、上記アで述べたとおりであるから、「pHを5.0?8.0に調整する工程を含む」といえる。
したがって、両者は、
「紅茶抽出物を含有する飲料を製造する方法であって、リナロールの濃度、カテキン類の濃度を調整し、pHを5.0?8.0に調整する工程を含む、上記方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点3:リナロールの濃度について、本件発明3が「40ppm以上」と特定しているのに対し、引用発明2は「約13.4、16.0、17.6、17.6、16.8、16.8μg/100ml」である点

相違点4:カテキン類の濃度について、本件発明3が「1?250ppm」と特定しているのに対し、引用発明2は不明であり、「タンニンの含有量が約61.5、54.6、54.6、54.6、54.6、47.8mg/100g」とされている点

相違点3について検討するに、当該相違点は、上記相違点1と同様の相違点であるから、その判断についても上記アで述べたのと同様である。

そして、本件明細書等の記載からみて、本件発明3はガレート型カテキン由来の苦味が軽減されたpHが5.0以上の飲料を提供することができるという効果を有するものである。

よって、相違点4について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1に記載された発明及び甲第2?甲第9、甲第14号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書11?12ページにおいて、甲8、11、13を用いてガレート型カテキン、リナロールの閾値を示し、本件明細書等に記載された実施例1は、味を感じにくい飲料に大量の香料を添加している状態であり、リナロールの香味を強く感じて、カテキン類の苦味を感じにくくなるのは当然である旨、実施例2においてカテキンの低濃度からみると、30ppmと40ppmとの間に顕著な効果があるとは言えず、従来技術から実施例の効果は容易に想到することができる旨主張するが、実施例1において、特定のpHにおいて特定量のリナロールの添加の有無に応じて苦味の感じ方に差異があることが理解でき、実施例2において、カテキン類の濃度が1、5、60、500ppmのそれぞれにおいてリナロールの濃度を大きくすることにより苦味が減じられることが理解でき(サンプル1と2の比較、サンプル3?7の比較、サンプル8と9の比較、サンプル10と11の比較)、リナロールの濃度が40ppm以上の場合にコントロールと比較して苦味が少なくなることが理解できる(サンプル2、5?7、9、11)一方、飲料のカテキン類による苦味を40ppm以上のリナロールによって軽減できるという本件特許に係る出願時の技術常識はないから、上記特許異議申立人の主張は採用できない。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1?3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえず、本件発明1?3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはえいない。

2 理由2について
(1)申立理由
理由2についての特許異議申立人の主張の具体的な理由の概要は次のとおりである。
本件明細書等の発明の詳細な説明には、従来の飲料が有する課題を解決する手段として、本件発明1の配合を採用したことが記載されているものの、その配合を採用することの有効性を示すための具体例として記載された実施例1、2のうち、実施例2では、どのような紅茶抽出物を用いたのか等の記載がないから、実質的に検証されたものは実施例1のみである。そうすると、発明の詳細な説明は、本件発明1の広範な範囲について、発明を実施するために、当業者に試行錯誤を強いるものである。
また、精製されていない紅茶抽出物にカテキン類以外の苦味成分が含まれていることは公知であるが、それら苦味成分が本件特許発明1を満たす発明にどのように影響するかは推測できず、当業者に試行錯誤を強いるものであり、さらに、精製されていない紅茶抽出物には、アミノ酸や糖類など様々な成分が存在し、これらの成分の共存下において、カテキン類の苦味をリナロールで抑制することを示すことが理解できるほどに十分な説明や実施例はなされていない。
実施例1の「サンフェノン90LB-OP」(摘示10a)は緑茶抽出物であるため、本件発明1の紅茶抽出物がカテキン由来の刺激的苦味を軽減する課題の解決手段として、効果が得られるかどうかは不明である。
したがって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号を満たすものではない。
本件発明2及び3についても同様である。

(2)判断
以下の観点に立って、検討する。
物の発明における発明の「実施」とは、その物の生産、使用等をする行為をいう(特許法第2条第3項第1号)から、特許法第36条第4項第1号の「その実施をすることができる」(実施可能要件)とは、その物を生産することができ、かつ、その物を使用できることである。したがって、物の発明については、明細書の発明の詳細な説明の記載又はその示唆及び出願当時の技術常識に基づき、当業者がその物を生産することができ、かつ、その物を使用できるのであれば、上記の実施可能要件を満たすということができる。
物を生産する方法の発明における発明の「実施」とは、その方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等をする行為をいう(特許法第2条第3項第3号)から、特許法第36条第4項第1号の「その実施をすることができる」(実施可能要件)とは、その方法により物を生産することができ、かつ、その物を使用できることである。したがって、物を生産する方法の発明については、明細書の発明の詳細な説明の記載又はその示唆及び出願当時の技術常識に基づき、当業者がその方法により物を生産することができ、かつ、その物を使用できるのであれば、上記の実施可能要件を満たすということができる。

ア 本件明細書等の記載
本件明細書等には、以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
pH5.0以上の飲料にカテキン類を含有させると、pHが5.0未満の飲料と比較して、カテキン類由来の苦味が一層強く感じられることが本発明者により見いだされた。本発明は、カテキン類を含有するpH5.0以上の飲料において、飲用時に感じられるカテキン類由来の刺激的な苦味を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の事情に鑑み、本発明者は、飲料に関し、カテキン類の苦味の軽減に有効な成分を探索した。鋭意検討の結果、リナロールが当該苦味の軽減に寄与し得ることを見出した。このような知見に基づいて、本発明を完成させた。」
「【0009】
(カテキン類)
本発明の飲料は、カテキン類を含有する。
本明細書において、「カテキン類」とは、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートの総称を表す。従って、本発明の実施の形態では、カテキン類は、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートからなる群から選択される1以上を含んでいればよい。なお、確認のために記載するが、上記のカテキン類の含有量は、前記8種の各化合物の含有量の合計を意味するものとする。
【0010】
本発明のカテキン類は、特に限定されないが、精製品の他、粗製品でも良く、カテキン類を含有する天然物もしくはその加工品、例えば茶抽出物やその濃縮物の形態であってもよい。カテキン類を含有する植物の抽出物又はその濃縮物は、紅茶、緑茶、烏龍茶、プーアル茶などのカメリア・シネンシスに属する茶葉類等を原料として用い、調製することができる。中でも、本発明の効果の側面から、紅茶葉より得られる抽出物を好適に用いることができる。
【0011】
本発明の飲料中のカテキン類の濃度は、1?500ppmであり、・・・
【0012】
飲料中のカテキン類の濃度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、測
定又は定量できる。・・・」
「【0013】
(リナロール)
本発明の飲料は、リナロールを特定量で含有する。これにより、カテキン類由来の苦味を軽減することができる。本発明の飲料中のリナロールの含有量は、40ppm以上であり、・・・
【0015】
本発明の飲料中のリナロールの含有量は、公知のGC-MS法にて測定できる。・・・
【0016】
本発明で用いるリナロールは、特に限定されないが、精製品の他、粗製品であってもよい。・・・」
「【0017】
(pH)
本発明の飲料のpHは5.0?8.0であり、・・・飲料のpH調整は、クエン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、重曹等のpH調整剤を用いて適宜行うことができる。飲料のpHは市販のpHメーターを使用して容易に測定することができる。
【0018】
(Brix)
本発明の飲料のBrix(ブリックス)は、特に限定されないが、1以下であることが好ましい。・・・Brixは、糖度計や屈折計などを用いて得られるBrix値によって評価することができる。・・・」
「【0020】
(飲料)
本発明の飲料は、清涼飲料であれば特に限定されない。例えば、栄養飲料、機能性飲料、フレーバードウォーター(ニアウォーター)系飲料、茶系飲料(紅茶、ウーロン茶、緑茶等)、コーヒー飲料、炭酸飲料などいずれであってもよい。本発明の飲料は、一実施形態において、茶飲料であることが好ましい。ここで「茶飲料」とは、茶葉の抽出物や穀類の抽出物を主成分として含有する飲料であり、具体的には、緑茶、ほうじ茶、ブレンド茶、麦茶、マテ茶、ジャスミン茶、紅茶、ウーロン茶、杜仲茶などが挙げられる。本発明において特に好ましい茶飲料は、紅茶飲料である。」
「【0022】
(発明の効果)
本発明によれば、カテキン類由来の苦味が軽減されたpHが5.0以上の飲料を提供することができる。本明細書において「苦味」というときは、飲用時に瞬間的に感じる、舌を刺すような刺激的な苦味を意味する。」
「【実施例】
【0023】
以下、実験例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書において、特に記載しない限り、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0024】
[実施例1]pHの苦味に対する影響
カテキン類として、紅茶抽出物(サンフェノン90LB-OP(太陽化学株式会社;カテキン類70%)を用いた。飲料中のカテキン類濃度が5ppmとなるように水にチャ抽出物を添加し飲料を調製した。クエン酸又は水酸化ナトリウムを用いて飲料のpHを表1に示すように調整した(サンプル1?5)。また、このように調製した飲料に、さらにリナロールを300ppmとなるように添加した飲料も調製した。Brixは全ての飲料で1以下であった。
【0025】
それぞれの飲料について、苦味に関する評価を行った。以下の基準に沿って、専門パネル3名が各自で苦味を評価した後、パネル全員で協議して最終的な評価を決定した。
○:苦味をほとんど感じない
△:苦味を少し感じる
×:苦味を強く感じる
結果を表1に示す。リナロールを添加していない飲料の評価結果より、カテキン類由来の不快な苦味は、飲料のpHが5.0以上のときに知覚されることがわかった。これらの飲料にリナロールを添加すると、不快な苦味が軽減されることが示された。
【0026】
一方、pH3.5の飲料では、カテキン類由来の不快な苦味はあまり問題にならないことがわかった。また、この飲料にリナロールを添加しても苦味の強さは変わらないこともわかった。
【0027】
【表1】

【0028】
[実施例2]カテキン類とリナロールの含有量の苦味に対する影響
水に紅茶抽出物とリナロールを添加し、カテキン類とリナロールの濃度を表2の濃度となるように調整し、各飲料を調製した。調製した飲料を500ml容量のPET容器に充填した。調製した飲料のpHは5.9であった。Brixは全ての飲料で1以下であった。
【0029】
調製した飲料の苦味の強さに関して官能評価を行った。専門パネル3名が、カテキン類を1ppm、リナロールを添加していない飲料をコントロール(サンプル1)として、以下の基準に沿って評価を行った。3名の専門パネルの点数の平均を算出し、3.0点以下を合格とした。官能評価結果を表2に示した。
5点:コントロールと比較して苦味が強い。
4点:コントロールと同等の苦味がある。
3点:コントロールと比較して、苦味が少ない。
2点:コントロールと比較して、苦味がかなり少ない。
1点:苦味を感じない。
【0030】
【表2】

【0031】
カテキン類を1?500ppm含有する飲料に対して、リナロールを40ppm以上、40?1500ppm添加すると、カテキン類に由来する不快な苦味が軽減され、飲みやすくなった。」

イ 判断
発明の詳細な説明には、一般的な記載として、本発明は、リナロールが飲料のカテキン類の苦味の軽減に寄与し得ることを見出したことに基づくものであることが記載されているところ(【0006】)、「カテキン類」とは、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートの総称を表すこと、カテキン類は、精製品の他、粗製品でもよいこと、飲料中のカテキン類の濃度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定できること(【0009】?【0012】)、飲料中のリナロールの含有量は、公知のGC-MS法にて測定できること、リナロールは、精製品の他、粗製品であってもよいこと(【0015】?【0016】)、本発明の飲料は、清涼飲料であれば特に限定されないが、特に好ましい茶飲料は、紅茶飲料であること(【0020】)、本発明によれば、カテキン類由来の苦味が軽減されたpHが5.0以上の飲料を提供することができること(【0022】)が記載されている。
そして、実施例1(pHの苦味に対する影響)として、カテキン類として、紅茶抽出物(サンフェノン90LB-OP(太陽化学株式会社;カテキン類70%)を用い、飲料のpHを表1に示すように調整したこと(サンプル1?4)(なお、【0024】の該当箇所には「サンプル1?5」と記載があるが、「サンプル1?4」の誤記と認める。)、また、このように調製した飲料に、さらにリナロールを300ppmとなるように添加した飲料を調製したこと、Brixは全ての飲料で1以下であったこと、実施例2(カテキン類とリナロールの含有量の苦味に対する影響)として、水に紅茶抽出物とリナロールを添加し、カテキン類とリナロールの濃度を表2の濃度となるように調整し、各飲料を調製し、調製した飲料を500ml容量のPET容器に充填したこと、調製した飲料のpHは5.9であり、Brixは全ての飲料で1以下であったことが記載されている(【0023】?【0031】)。
してみると、実施例2における紅茶抽出物が具体的にどのようなものであるか、また、当該紅茶抽出物におけるカテキン類以外の苦味物質の存在の有無が不明であったとしても、紅茶抽出物は本件出願時に周知であり、カテキン類が紅茶抽出物に含まれることは本件明細書等の記載から理解することができ(【0010】)、さらに、本件明細書等には、リナロール、カテキン類の濃度の測定方法、pHの調整方法についての記載もあるから、当業者は、適当な量の通常の紅茶抽出物、リナロールを用いて、実施例2に記載のとおりの方法により、本件発明1の飲料を製造することができるといえる。そして、実施例2のカテキン類を1?500ppm含有する飲料に対して、リナロールを40ppm以上、40?1500ppm添加したものは、カテキン類に由来する不快な苦味が軽減され、飲みやすいものであるところ、通常の紅茶抽出物を用いた場合にそれに存在するカテキン類以外の苦味物質によって、飲料として使用できないものとなるとは考えられないから、紅茶抽出物におけるカテキン類以外の苦味物質の存在の有無が不明であったとしても、飲料として使用できるものであるといえる。
さらに、実施例2に記載のように、カテキン類、リナロールの濃度を変更することは、紅茶抽出物及びリナロールの添加量を変えることにより行えることは明らかであるし、実施例1に記載のように、クエン酸、水酸化ナトリウム等を用いてpHを調整することができるといえるから、本件発明1の範囲全体ついて、過度の試行錯誤をすることなく、当業者は、飲料を生産することができ、また、使用できるといえる。
そして、上記判断は、実施例1に記載の「サンフェノン90LB-OP」が緑茶抽出物であること、実施例2でどのような紅茶抽出物を用いたか不明であることに左右されるものではない。
したがって、本件発明1について、発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
本件発明2についても同様である。
本件発明3は、飲料を製造する方法の発明であり、リナロール及びカテキン類の濃度、pHを特定の範囲に調整する工程を含むものであるところ、当該範囲は本件発明1の範囲と同じであるから、上記本件発明1について述べたとのと同様の理由により、本件発明3の範囲全体について、過度の試行錯誤をすることなく、当業者は、本件発明3の方法により飲料を生産することができ、また、当該飲料を使用できるといえる。
したがって、本件発明3について、発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1?3について、発明の詳細な説明は、特許法第36条第4項第1号に適合しないとはいえず、本件発明1?3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。

3 理由3について
(1)申立理由
理由3についての特許異議申立人の主張の具体的な理由の概要は、上記2で示した理由の概要と述べたのと同様であり、参酌されるべき実施例は実施例1のみであり、本件発明1は実施例1に対してあまりに広く、実施例2が参酌されるとしても、未精製品まで実施例でサポートされておらず、本件発明1?3は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであり、本件特許は、特許法第36条第6項第1号を満たすものではない、というものである。

(2)判断
以下の観点に立って判断する。
特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆる「明細書のサポート要件」)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。そして、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合することは、当該特許の特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である。

ア 本件明細書等の記載
本件明細書等の記載は、上記2(2)アに示したとおりである。

イ 本件発明の課題
発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識からみて、本件発明の課題は、「カテキン類を含有するpH5.0以上の飲料において、飲用時に感じられるカテキン類由来の刺激的な苦味を軽減すること」であると認める。

ウ 判断
上記2(2)で述べたとおり、本件発明1の範囲全体ついて、過度の試行錯誤をすることなく、当業者は、飲料を生産することができ、また、使用できるといえ、本件発明1について、発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、本件発明1の飲料自体は、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
そして、実施例2に、カテキン類を1?500ppm含有する飲料に対して、リナロールを40ppm以上である40?1500ppm添加すると、カテキン類に由来する不快な苦味が軽減され、飲みやすくなったことが記載されており、当該飲料は当業者が上記課題を解決できると認識できるといえる。
ここで、精製されていない紅茶抽出物が、テアフラビン等のカテキン類以外の苦味成分、アミノ酸等の様々な成分を含有するとしても、それらの成分がリナロールによるカテキン類由来の刺激的な苦味の軽減を妨害するという技術的な根拠はないから、それら成分が存在しても、当業者が上記課題を解決できると認識できるといえる。
また、実施例1によりpHが5.0?8.0の範囲においてリナロールの添加によりカテキン類由来の苦味が軽減されること、実施例2によりリナロールが40ppm以上の範囲、カテキン類が1?500ppmの範囲において、カテキン類に由来する不快な苦味が軽減されることが示されており、カテキン類由来の苦味を軽減するという点では、紅茶由来か緑茶由来かは無関係であり、本件明細書等には、紅茶、緑茶を問わず、カテキン類由来の苦味を軽減することが記載されているといえるから(【0010】、【0022】)、当業者が、本件発明1の範囲全体にわたって上記課題を解決できると認識できるといえる。
したがって、本件発明1は発明の詳細な説明に記載したものである。
本件発明2、3についても同様である。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1?3について、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合しないとはいえず、本件発明1?3に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。

4 理由4について
(1)申立理由
理由4についての特許異議申立人の主張の具体的な理由の概要は、実施例2に飲料にリナロールを40?1500ppm添加したことが記載されているが、本件発明1のリナロールの含有量は上限がないため、リナロールの含有量が1500ppmより高い場合も含まれ、その場合は、リナロールの風味が強くて飲みやすいとは言えないから、本件発明1?3は明確でなく、本件発明2には、Brixが0の場合も含まれているところ、茶飲料に可溶性固形分が含まれていないことは実質的に考えられないから、本件発明2は明確でないから、本件特許は特許法第36条第6項第2号を満たすものではない、というものである。

(2)判断
以下の観点に立って判断する。
特許法第36条第6項第2号は、特許請求の範囲の記載に関し、特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。この趣旨は、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となり、第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るため、そのような不都合な結果を防止することにある。そして、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。

本件発明1は、リナロール、カテキン類の含有量、pHを特定した飲料に係るものであり、リナロールの含有量について、「40ppm以上のリナロールを含む」と特定しているところ、その上限についての特定はない。そして、発明の詳細な説明には、「(リナロール)本発明の飲料は、リナロールを特定量で含有する。これにより、カテキン類由来の苦味を軽減することができる。本発明の飲料中のリナロールの含有量は、40ppm以上であり、好ましくは40?1500ppm、好ましくは50?500ppm、より好ましくは60?400ppm、さらに好ましくは70?350ppmである。飲料中のリナロールの含有量が40ppmより小さいとカテキン類由来の苦味の軽減効果が不十分になることがある。」(【0013】)と記載され、上限が1500ppmであることについての記載はない。
したがって、本件発明1は、リナロールの含有量が1500ppmより高い場合を含むと解される。
しかし、飲料が飲みやすいことについては発明特定事項とはされていないから、仮にリナロールの含有量が1500ppmより高い場合であって、リナロールの風味が強くて飲みやすいとはいえない場合があったとしても、そのことによって本件発明1が明確でないということはできない。
したがって、本件発明1について、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず、本件発明1は明確である。
本件発明2及び3についても同様である。

本件発明2は、Brixが1以下であることを特定するものであるところ、Brixの下限についての特定はない。そして、発明の詳細な説明には、「(Brix)本発明の飲料のBrix(ブリックス)は、特に限定されないが、1以下であることが好ましい。理論に拘束されないが、Brixが1以下である場合、苦味のマスキング成分として作用する可溶性固形分が少ないために、カテキン類の苦味が顕著に感じられることが考えられるため、本発明による苦味の軽減効果を得る上で好ましい。Brixは、糖度計や屈折計などを用いて得られるBrix値によって評価することができる。ブリックス値は、20℃で測定された屈折率を、ICUMSA(国際砂糖分析統一委員会)の換算表に基づいてショ糖溶液の質量/質量パーセントに換算した値である。単位は「°Bx」、「%」または「度」で表示される。
」(【0018】)と記載され、Brixが0の場合を含まないことについての記載はない。
しかし、特許異議申立人も主張するように、茶飲料が可溶性固形分を含有しないことは実質的に考えられないのであるから、本件発明2にBrixが0の場合が含まれないことは明らかであり、この点で本件発明2が明確でないとはいえない。
したがって、本件発明2について、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず、本件発明2は明確である。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1?3について、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合しないとはいえず、本件発明1?3に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立て理由及び証拠によっては、本件発明1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-11-09 
出願番号 特願2019-182018(P2019-182018)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A23L)
P 1 651・ 121- Y (A23L)
P 1 651・ 536- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 清野 千秋  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 冨永 保
関 美祝
登録日 2020-01-17 
登録番号 特許第6648334号(P6648334)
権利者 サントリーホールディングス株式会社
発明の名称 カテキン類由来の苦味が軽減された飲料  
代理人 山本 修  
代理人 中西 基晴  
代理人 鶴喰 寿孝  
代理人 宮前 徹  
代理人 小野 新次郎  
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