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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F16L
管理番号 1368145
異議申立番号 異議2019-700656  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-08-20 
確定日 2020-11-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第6471769号発明「真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6471769号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許6471769号(以下「本件特許」という。)の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成29年5月9日(優先権主張平成28年5月24日)に出願され、平成31年2月1日にその特許権の設定登録がされ、平成31年2月20日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和1年 8月20日:特許異議申立人松村朋子による請求項1?7に係る特許に対する特許異議の申立て
令和1年11月15日:取消理由通知書
令和2年 1月20日:特許権者による意見書の提出
令和2年 3月24日:取消理由通知書(決定の予告)
令和2年 5月15日:上申書
令和2年 5月27日:通知書(指定期間の延長)
令和2年 6月11日:上申書
令和2年 6月11日:通知書(指定期間の延長)
令和2年 7月27日:特許権者による意見書の提出

2 本件発明について
本件特許の請求項1?7に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明7」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?7に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも第1フィルムと、第2フィルムと、第3フィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有する真空断熱材用外包材であって、
前記第1フィルムは、第1樹脂基材と、前記第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM-O-P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有し、且つ、金属酸化物の粒子同士がリン原子を介して結合された金属酸化物リン酸層とを有し、
前記第2フィルムは、第2樹脂基材と、前記第2樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層とを有し、
前記第3フィルムは、第3樹脂基材と、前記第3樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層とを有することを特徴とする真空断熱材用外包材。
【請求項2】
前記第3樹脂基材が、親水基含有樹脂を含み、
前記第3樹脂基材が、前記第3フィルムの無機層の前記熱溶着可能なフィルム側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱材用外包材。
【請求項3】
少なくとも第1フィルムと、オーバーコート層付きフィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有する真空断熱材用外包材であって、
前記第1フィルムは、第1樹脂基材と、前記第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM-O-P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する金属酸化物リン酸層とを有し、
前記オーバーコート層付きフィルムは、樹脂基板と、前記樹脂基板の少なくとも一方の面側に配置された無機層と、前記無機層の前記樹脂基板とは反対の面側に配置されたオーバーコート層とを有し、
前記オーバーコート層は親水基含有樹脂を含み、
前記オーバーコート層を構成する原子における、炭素原子に対する金属原子の比率が0.1以上、2以下の範囲内であることを特徴とする真空断熱材用外包材。
【請求項4】
芯材と、前記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有する真空断熱材であって、
前記真空断熱材用外包材は、少なくとも第1フィルムと、第2フィルムと、第3フィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有し、
前記第1フィルムは、第1樹脂基材と、前記第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM-O-P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有し、且つ、金属酸化物の粒子同士がリン原子を介して結合された金属酸化物リン酸層とを有し、
前記第2フィルムは、第2樹脂基材と、前記第2樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層とを有し、
前記第3フィルムは、第3樹脂基材と、前記第3樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層とを有することを特徴とする真空断熱材。
【請求項5】
芯材と、前記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有する真空断熱材であって、
前記真空断熱材用外包材は、少なくとも第1フィルムと、オーバーコート層付きフィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有し、
前記第1フィルムは、第1樹脂基材と、前記第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM-O-P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する金属酸化物リン酸層とを有し、
前記オーバーコート層付きフィルムは、樹脂基板と、前記樹脂基板の少なくとも一方の面側に配置された無機層と、前記無機層の前記樹脂基板とは反対の面側に配置されたオーバーコート層とを有し、
前記オーバーコート層は親水基含有樹脂を含み、
前記オーバーコート層を構成する原子における、炭素原子に対する金属原子の比率が0.1以上、2以下の範囲内であることを特徴とする真空断熱材。
【請求項6】
熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品であって、
前記真空断熱材は、芯材と、前記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有し、
前記真空断熱材用外包材は、少なくとも第1フィルムと、第2フィルムと、第3フィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有し、
前記第1フィルムは、第1樹脂基材と、前記第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM-O-P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有し、且つ、金属酸化物の粒子同士がリン原子を介して結合された金属酸化物リン酸層とを有し、
前記第2フィルムは、第2樹脂基材と、前記第2樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層とを有し、
前記第3フィルムは、第3樹脂基材と、前記第3樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層とを有することを特徴とする真空断熱材付き物品。
【請求項7】
熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品であって、
前記真空断熱材は、芯材と、前記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有し、
前記真空断熱材用外包材は、少なくとも第1フィルムと、オーバーコート層付きフィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有し、
前記第1フィルムは、第1樹脂基材と、前記第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM-O-P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する金属酸化物リン酸層とを有し、
前記オーバーコート層付きフィルムは、樹脂基板と、前記樹脂基板の少なくとも一方の面側に配置された無機層と、前記無機層の前記樹脂基板とは反対の面側に配置されたオーバーコート層とを有し、
前記オーバーコート層は親水基含有樹脂を含み、
前記オーバーコート層を構成する原子における、炭素原子に対する金属原子の比率が0.1以上、2以下の範囲内であることを特徴とする真空断熱材付き物品。」

3 取消理由(決定の予告)の概要
本件発明1?7は、甲第1?6号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

甲第1号証:特開2010-143180号公報
甲第2号証:特開2011-226644号公報
甲第3号証:国際公開第2013/051287号
甲第4号証:国際公開第2016/002222号
甲第5号証:国際公開第2015/087976号
甲第6号証:特開2007-155087号公報

(1)本件発明1、3?7は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3、4号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件発明1、2、4、6は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件発明1、2、4、6は、甲第2号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 甲各号証の記載
(1)甲第1号証
甲第1号証には、以下の事項が記載されている(「・・・」は記載の省略を意味し、下線は当審にて付した。以下同様。)。

(1-a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック材料からなる基材の片面に、無機蒸着層、保護コート層からなるガスバリア層を順次積層し、基材の反対面に防湿層を設けることを特徴とする高防湿ガスバリアフィルム積層体。
【請求項2】
前記保護コート層の上に印刷層および/またはヒートシール層を設けることを特徴とする請求項1記載の高防湿ガスバリアフィルム積層体。
【請求項3】
プラスチック材料からなる基材の片面に、無機蒸着層、保護コート層からなるガスバリア層を順次積層したフィルムを、基材と保護コート層が接する様に複数枚積層し、基材と接していない保護コート層の上に印刷層および/またはヒートシール層を設け、保護コート層と接していない基材に防湿層を設けることを特徴とする高防湿ガスバリアフィルム積層体。
【請求項4】
前記防湿層が2軸延伸ポリオレフィンフィルムであることを特徴とする請求項1から3何れか記載の高防湿ガスバリアフィルム積層体。
【請求項5】
前記防湿層が2軸延伸ポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項1から3何れか記載の高防湿ガスバリアフィルム積層体。」

(1-b)「【技術分野】
【0001】
ガスバリアフィルム積層体に関するもので、特に高温多湿下における防湿性に優れたガスバリアフィルムである。
【0002】
近年、食品及び医薬品の包装には、内容物の変質を抑制しそれらの機能や性質を保持するために、酸素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体による影響を防止する必要があり、これら気体(ガス)を遮断するガスバリアフィルムが用いられてきた。また、近年ではこのガスバリアフィルムを電子部材等の非食品包装や、液晶表示素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネル、EL用基板、カラーフィルタ等で使用する透明伝導シートや、真空断熱材など、産業資材用途への使用が検討され始めている。この産業資材用途には、使用範囲や期間が大幅に拡大されるため、促進試験として高温多湿環境下に一定期間保存した後の物性保証が求められている。」

(1-c)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、高温多湿環境下に一定期間保存した後でも密着低下などの物性の劣化が起こらず、高いバリア性を継続することができる耐湿熱性に優れたガスバリア積層体を提供することにある。
【0007】
すなわち、上記特許文献1ではガスバリア積層体の内部と外部の間には無機蒸着層が存在し、ガスバリア性能を有するものであるが、その無機蒸着層は基材より内側に存在しているので、基材と無機蒸着層との界面は、基材を介して外部に露出している。従って、この様な基材と無機蒸着層との界面に対するガスバリア効果は存在せず、その部分における密着低下などの物性の劣化が起こらない、耐湿熱性に優れたガスバリア積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる問題点を解決すべくなされたものであり、本発明の課題は、請求項1では、プラスチック材料からなる基材の片面に、無機蒸着層、保護コート層からなるガスバリア層を順次積層し、基材の反対面に防湿層を設けることを特徴とする高防湿ガスバリアフィルム積層体によって解決される。」

(1-d)「【0032】
また包装材料として使用する場合、積層体の最内層となる側にヒートシール層を形成することが好ましい。ヒートシール層は、袋状包装体などを形成する際の接着部に利用されるものであり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂が用いられる。厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15?200μmの範囲である。形成方法としては、上記樹脂からなるフィルム状のものを2液硬化型ウレタン樹脂などの接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法、ノンソルベントラミネートにより積層する方法、上記樹脂を加熱溶融させカーテン状に押出し貼り合わせるエキストルージョンラミネート法、ニーラム法等いずれも公知の方法により積層することができる。
・・・
【0034】
防湿層を設けることで高温多湿環境下に保存した場合、基材側からの湿度による水の浸入を防ぎ、蒸着薄膜層および保護コート層からなるガスバリア層の劣化を防ぐことで、結果として高温多湿環境下でも長期間高いバリア性能を保持することができる。特に本発明の無機蒸着層がアルミニウムやマグネシウム、珪素などの酸化被膜の場合、蒸着膜中に微量に存在する未酸化の金属は、湿度など外部からの水によって水酸化物や水酸化物を経た別の化合物に変質しやすく、変質部分がバリアの孔となりガスバリアフィルム全体の大幅な劣化を起こしやすい。このため防湿層は、基材側から侵入する水に対してガスバリア層を保護するための層であり、防湿層がもつバリア性能は単純に積層構成におけるバリア性能向上から予想される効果より、はるかに高い防湿効果が得られる。
【0035】
防湿層には水蒸気バリア性の高い無機酸化物を蒸着して蒸着層を形成しても良いし、EVOHや塩化ビニリデンをコーティングして防湿層を形成しても良い。防湿性のフィルムを貼りあわせて積層させても良い。特に防湿性のフィルムを貼りあわせる方法は簡便で高い防湿性を安定的に発現することができる。また風合いや透明性、耐熱性などの用途によって防湿フィルムを自在に選定することができる。防湿フィルムの積層方法は、2液硬化型ウレタン系樹脂等の接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法や加熱溶融させた樹脂をカーテン状に押出貼り合わせるエキストルージョンラミネート法等の公知の方法を用いることより積層することができる。
【0036】
防湿フィルムは、水蒸気バリア性の高いフィルムが好ましく、ポリプロピレンやポリエチレンフィル、ポリシクロオレフィンなどのポリオレフィンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体やエチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂、ポリ塩化ビニル(PVD)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC),ポリビニルアルコール(PVA),などが挙げられる。材料が共押出で成膜された複合多層フィルムでもよい。さらにこれらのフィルムに塩化ビニリデンをコートしたものやアルミを蒸着し、バリア性能を向上させたものでも良い。なかでもオレフィンフィルムは汎用性が高く、安価でありながらフィルムの防湿性が高く防湿層として好ましい。」

(1-e)「【0040】
用途によって、さらに高いバリア性能が必要な場合には、無機蒸着層、保護コート層からなるガスバリア層を順次積層した基材フィルムを2枚以上積層することで、バリア性能をより高くすることが可能である。
【0041】
本発明のガスバリア性積層体を具体的な実施例を挙げて更に説明するが、本発明はその要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0042】
<実施例1>
基材層(1)として、片面がコロナ処理された厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東レフィルム加工(株)製、P60)を使用し、コロナ面に真空蒸着装置で厚さ12nmの酸化アルミニウムからなる蒸着層(2)を積層した。さらに、再度グラビアコート機にて蒸着層(2)の上に下記の保護コート液を塗布、乾燥した厚さ0.2μmの乾燥被膜からなる保護コート層(3)を積層し、ガスバリア層を積層した。基材の反対面にドライラミネート法で2液硬化型ウレタン系接着剤を設けて、厚さ20μmの2軸延伸ポリプロピレンを積層して防湿層とした。次に保護コート層の上に押し出しラミネート法で厚さ30μmのポリエチレンを押し出してヒートシール層とし本発明のガスバリア積層体を得た。
(保護コート液)
テトラエトキシシラン10.4gに塩酸(0.1N)89.6gを加え、30分間撹拌し加水分解させた固形分3wt%(SiO2換算)の加水分解溶液(A液)。ポリビニルアルコールの3wt%水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール重量比で90:10)液(B液)。A液とB液を配合比(wt%)で60/40に混合したもの。
【0043】
<実施例2>
実施例1において、ガスバリア層を2層、ドライラミネート法で2液硬化型ウレタン系接着剤を設けて積層した以外は実施1と同様にして本発明のガスバリア積層体を得た。」

(1-f)「



(1-g)図2には、防湿層6、基材フィルム1-a、無機蒸着層2-a、保護コート層3-a、接着剤層4-a、基剤フィルム1-b、無機蒸着層2-b、保護コート層3-b、接着剤層4-b、ヒートシール層5の順に積層した積層体が示されている。

(1-h)請求項3の記載から、図2の積層体は、高防湿ガスバリアフィルム積層体であるといえる。また、段落【0035】から、防湿層6は、防湿性のフィルムであり、段落【0032】から、ヒートシール層5は、樹脂からなるフィルム状のものであり、段落【0002】から、真空断熱材などの用途に使用されるといえる。

以上の事項を総合すると、甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されていると認められる。

「防湿層6、基材フィルム1-a、無機蒸着層2-a、保護コート層3-a、接着剤層4-a、基剤フィルム1-b、無機蒸着層2-b、保護コート層3-b、接着剤層4-b、ヒートシール層5の順に積層した高防湿ガスバリアフィルム積層体であって、
防湿層6は、防湿性のフィルムであり、
ヒートシール層5は、樹脂からなるフィルム状のものであり、
真空断熱材などの用途へ使用される高防湿ガスバリアフィルム積層体。」

(1-i)図1には、防湿層6、基材フィルム1、無機蒸着層2、保護コート層3、接着剤層4、ヒートシール層5の順に積層した積層体が示されている。

(1-j)請求項1、2の記載から、図1の積層体は、高防湿ガスバリアフィルム積層体であるといえる。

(1-k)段落【0042】から、保護コート層3は、テトラエトキシシランに塩酸を加えた加水分解溶液であるA液と、ポリビニルアルコールを含むB液とを、配合比(wt%)で60/40に混合した保護コート液を塗布、乾燥した被膜からなるものであるといえる。

さらに、以上を総合すると、甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明2」という。)も記載されていると認められる。

「防湿層6、基材フィルム1、無機蒸着層2、保護コート層3、接着剤層4、ヒートシール層5の順に積層した高防湿ガスバリアフィルム積層体であって、
防湿層6は、防湿性のフィルムであり、
ヒートシール層5は、樹脂からなるフィルム状のものであり、
保護コート層3は、テトラエトキシシランに塩酸を加えた加水分解溶液であるA液と、ポリビニルアルコールを含むB液とを、配合比(wt%)で60/40に混合した保護コート液を塗布、乾燥した被膜からなるものであり、
真空断熱材などの用途へ使用される高防湿ガスバリアフィルム積層体。」

(2)甲第2号証
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。

(2-a)「【0001】
本発明は、高温高湿下で使用される場合にも、長期信頼性に優れる真空断熱材に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の真空断熱材では、特に高温高湿条件(たとえば、85℃、85%RH)で使用される場合、依然として外被材のガスバリア性が不充分であり、断熱性能の経時的な劣化が起こり、断熱材の耐用期間が不充分となる課題を有していた。さらに、高温高湿条件によって低下したガスバリア性は、その後に温湿度条件を緩和した際にも完全には回復しないことが確認された。この理由としては、下記の2つが考えられる。1つめは、高温高湿条件においてエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂層に取り込まれた多量の水分は温湿度が緩和されても容易に揮発しないため、樹脂層が元の水分量に戻るまでに非常に長い時間を必要とすることである。2つめは、高温高湿条件における外被材の膨張によって発生する無機蒸着層中のクラックや、高温の水分との接触により発生する無機蒸着層の浸食または変質による欠陥は、温湿度が緩和された後においても修復されないことである。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するもので、特に85℃、85%RH程度の高温高湿条件下で使用する場合にも、長期信頼性および耐熱性に優れる真空断熱材を提供することを目的とする。
【0011】
上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明者らは、ポリビニルアルコール系樹脂層と特定のバリア層とを有する外被材で芯材を覆って前記外被材の内部を減圧シールしてなる真空断熱材を、85℃、85%RH程度の高温高湿条件下で使用した場合においても、良好な長期信頼性および耐熱性を奏することを見出した。その特定のバリア層は、少なくとも金属酸化物とリン化合物とが反応してなる反応生成物を含むものであった。また、その特定のバリア層は、高温高湿条件下においても、優れたガスバリア性と水蒸気バリア性を維持することが見出された。この新たな知見に基づいてさらに検討を重ねることによって、本発明者らは本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は
[1]ポリビニルアルコール系樹脂層(X)および層(Y)を有する外被材(E)で芯材を覆って前記外被材(E)の内部を減圧シールしてなる真空断熱材であって、前記層(Y)は、反応生成物(R)を含み、前記反応生成物(R)は、少なくとも金属酸化物(A)とリン化合物(B)とが反応してなる反応生成物である、真空断熱材
・・・
[6]800?1400cm-1の範囲における前記層(Y)の赤外線吸収スペクトルにおいて、前記金属酸化物(A)を構成する結合、前記リン化合物(B)を構成する結合、並びに、前記金属酸化物(A)と前記リン化合物(B)とがそれ自身でおよび/または互いに反応して形成された結合に由来する全ての赤外線吸収ピークの中で、前記金属酸化物(A)を構成する金属原子(M)と前記化合物(B)に由来するリン原子(P)とが、酸素原子(O)を介して結合したM-O-Pで表される結合に由来する赤外線吸収ピークが最大となり、前記最大となる赤外線吸収ピークの波数(n1)が1080?1130cm-1の範囲にある、上記[1]?[4]のいずれか1つの真空断熱材」

(2-b)「【0032】
[層(Y)]
本発明の真空断熱材に用いられる外被材(E)に含まれる層(Y)は、反応生成物(R)を含み、前記反応生成物(R)は、少なくとも金属酸化物(A)とリン化合物(B)とが反応してなる反応生成物である。層(Y)は、800?1400cm^(-1)の範囲における当該層(Y)の赤外線吸収スペクトルにおいて赤外線吸収が最大となる波数(n1)が1080?1130cm^(-1)の範囲にあることが好ましい。また、別の観点では、前記層(Y)は反応生成物(R)を含み、前記反応生成物(R)は、少なくとも金属酸化物(A)とリン化合物(B)とが反応してなる反応生成物であり、800?1400cm^(-1)の範囲における前記層(Y)の赤外線吸収スペクトルにおいて、前記金属酸化物(A)を構成する結合、前記リン化合物(B)を構成する結合、並びに、前記金属酸化物(A)と前記リン化合物(B)とがそれ自身でおよび/または互いに反応して形成された結合に由来する全ての赤外線吸収ピークの中で、前記金属酸化物(A)を構成する金属原子(M)と前記化合物(B)に由来するリン原子(P)とが、酸素原子(O)を介して結合したM-O-Pで表される結合に由来する赤外線吸収ピークが最大となり、前記最大となる赤外線吸収ピークの波数(n1)が1080?1130cm^(-1)の範囲にあることが好ましい。当該波数(n1)を、以下では、「最大吸収波数(n1)」という場合がある。金属酸化物(A)は、通常、金属酸化物(A)の粒子の形態でリン化合物(B)と反応する。
【0033】
一般に、金属化合物とリン化合物とが反応して金属化合物を構成する金属原子(M)とリン化合物に由来するリン原子(P)とが酸素原子(O)を介して結合したM-O-Pで表される結合が生成すると、赤外線吸収スペクトルにおいて特性ピークが生じる。ここで当該特性ピークはその結合の周囲の環境や構造などによって特定の波数に吸収ピークを示す。本発明者らによる検討の結果、M-O-Pの結合に基づく吸収ピークが1080?1130cm^(-1)の範囲に位置する場合には、得られる層(Y)に優れたバリア性と耐水性が発現されることがわかった。特に、当該吸収ピークが、一般に各種の原子と酸素原子との結合に由来する吸収が見られる800?1400cm-1の領域において最大吸収波数の吸収ピークとして現れる場合には、得られる層(Y)にさらに優れたバリア性と耐水性が発現されることがわかった。
【0034】
なお本発明を何ら限定するものではないが、金属酸化物(A)の粒子同士が、リン化合物(B)に由来するリン原子を介し、かつ、金属酸化物(A)に由来しない金属原子を介さずに結合され、そして金属酸化物(A)を構成する金属原子(M)とリン原子(P)とが酸素原子(O)を介して結合したM-O-Pで表される結合が生成すると、金属酸化物(A)の粒子の表面という比較的定まった環境に起因して、当該層(Y)の赤外線吸収スペクトルにおいて、M-O-Pの結合に基づく吸収ピークが、1080?1130cm-1の範囲に800?1400cm-1の領域における最大吸収波数の吸収ピークとして現れるものと考えられる。」

(2-c)「【0145】
[外被材(E)]
本発明の真空断熱材に用いられる外被材(E)は、樹脂層(X)および層(Y)のみによって構成されてもよいし、樹脂層(X)、層(Y)および無機蒸着層(Z)のみによって構成されていてもよいし、これらに加えて上記した基材(K)や接着層(H)を含んでもよい。また、外被材(E)は、これらの層をそれぞれ複数含んでもよい。さらに、外被材(E)は、樹脂層(X)、層(Y)、無機蒸着層(Z)、基材(K)および接着層(H)以外の他の部材(例えば熱可塑性樹脂フィルム層、紙層等の他の層など)をさらに含んでもよい。そのような他の部材(他の層など)を有する外被材(E)は、当該他の部材(他の層など)を直接または接着層を介して接着または形成することによって製造することができる。外被材(E)が、このような他の部材(他の層など)を備えることによって、外被材(E)の特性を向上させたり、新たな特性を付与したりすることができる。例えば、本発明の外被材(E)にヒートシール性を付与したり、バリア性や力学的物性をさらに向上させたりすることができる。
【0146】
特に、外被材(E)の表面層をポリオレフィン層(以下、PO層と略すことがある)とすることによって、外被材(E)にヒートシール性を付与したり、外被材(E)の力学的特性を向上させたりすることができるため好ましい。ヒートシール性や力学的特性をより一層向上させる観点から、ポリオレフィンはポリプロピレンまたはポリエチレンであることが好ましい。また、外被材(E)の力学的特性を向上させるために、他の層として、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムおよびポリビニルアルコール系フィルムからなる群より選ばれる少なくとも1つのフィルムを積層することが好ましい。力学的特性の向上の観点から、ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましく、ポリアミドとしてはナイロン-6が好ましく、ポリビニルアルコールとしてはエチレン-ビニルアルコール共重合体が好ましい。なお各層の間には必要に応じて、アンカーコート層や接着剤層を設けてもよい。
【0147】
本発明の真空断熱材に用いられる外被材(E)は、たとえば、真空断熱材の外側となる層から内側となる層に向かって、以下の構成を有していてもよい。以下の構成において、「/」は、「/」を挟む2層が直接的に積層されていることを表す(ただし、接着層(H)は介していてもよい)。また、「//」は、「//」を挟む2層が接着剤を介して間接的に積層されていることを表す。
(1)層(Y)/樹脂層(X)//PO層、
(2)ポリエステル層//層(Y)/樹脂層(X)//PO層、
(3)ポリエステル層//樹脂層(X)/層(Y)//PO層、
(4)ポリアミド層//層(Y)/樹脂層(X)//PO層、
(5)ポリアミド層//樹脂層(X)/層(Y)//PO層、
(6)PO層//層(Y)/樹脂層(X)//PO層、
(7)層(Y)/樹脂層(X)/層(Y)//PO層、
(8)ポリエステル層//層(Y)/樹脂層(X)/層(Y)//PO層、
(9)ポリアミド層//層(Y)/樹脂層(X)/層(Y)//PO層、
(10)PO層//層(Y)/樹脂層(X)/層(Y)//PO層、
(11)ポリエステル層/層(Y)//樹脂層(X)//PO層、
(12)ポリアミド層/層(Y)//樹脂層(X)//PO層、
(13)PO層/層(Y)//樹脂層(X)//PO層、
(14)ポリエステル層/層(Y)//層(Y)/樹脂層(X)//PO層、
(15)ポリアミド層/層(Y)//層(Y)/樹脂層(X)//PO層、
(16)PO層/層(Y)//層(Y)/樹脂層(X)//PO層、
(17)ポリエステル層/層(Y)//層(Y)/樹脂層(X)/層(Y)//PO層、
(18)ポリアミド層/層(Y)//層(Y)/樹脂層(X)/層(Y)//PO層、
(19)PO層/層(Y)//層(Y)/樹脂層(X)/層(Y)//PO層、
(20)ポリエステル層/無機蒸着層(Z)//層(Y)/樹脂層(X)//PO層、
(21)ポリアミド層/無機蒸着層(Z)//層(Y)/樹脂層(X)//PO層、
(22)PO層/無機蒸着層(Z)//層(Y)/樹脂層(X)//PO層、
(23)ポリエステル層/層(Y)//無機蒸着層(Z)/樹脂層(X)//PO層、
(24)ポリアミド層/層(Y)//無機蒸着層(Z)/樹脂層(X)//PO層、
(25)PO層/層(Y)//無機蒸着層(Z)/樹脂層(X)//PO層、
(26)層(Y)/無機蒸着層(Z)/樹脂層(X)//PO層、
(27)ポリエステル層//層(Y)/無機蒸着層(Z)/樹脂層(X)//PO層、
(28)ポリエステル層//層(Y)/樹脂層(X)/無機蒸着層(Z)//PO層、
(29)ポリアミド層//層(Y)/無機蒸着層(Z)/樹脂層(X)//PO層、
(30)PO層//層(Y)/無機蒸着層(Z)/樹脂層(X)//PO層、
(31)ポリエステル層/層(Y)//層(Y)/無機蒸着層(Z)/樹脂層(X)//PO層、
(32)ポリアミド層/層(Y)//層(Y)/無機蒸着層(Z)/樹脂層(X)//PO層、
(33)PO層/層(Y)//層(Y)/無機蒸着層(Z)/樹脂層(X)//PO層、
(34)ポリエステル層/無機蒸着層(Z)//層(Y)/無機蒸着層(Z)/樹脂層(X)//PO層、
(35)ポリアミド層/無機蒸着層(Z)//層(Y)/無機蒸着層(Z)/樹脂層(X)//PO層、
(36)PO層/無機蒸着層(Z)//層(Y)/無機蒸着層(Z)/樹脂層(X)//PO層、
(37)ポリエステル層//無機蒸着層(Z)/樹脂層(X)/層(Y)//PO層、
(38)ポリエステル層//樹脂層(X)/無機蒸着層(Z)/層(Y)//PO層。
これらの中でも、高温高湿条件下で使用した場合にも外観に優れる真空断熱材を得るためには、上記層構成(1)、(2)、(4)、(6)?(19)および(23)?(33)が特に好ましい。
【0148】
以上に例示した外被材(E)の構成の中でも、下記の要件の少なくとも1つ以上を備えていることが好ましい。
(1)少なくとも1層の樹脂層(X)が少なくとも1層の層(Y)よりも芯材側に位置する。
(2)少なくとも1層の層(Y)が、少なくとも1層の樹脂層(X)に直接積層されている。
(3)無機蒸着層(Z)を少なくとも1層含む。
(4)少なくとも1層の樹脂層(X)および/または少なくとも1層無機蒸着層(Z)が少なくとも1層の層(Y)よりも芯材側に位置する。
(5)少なくとも1層の無機蒸着層(Z)が、少なくとも1層の樹脂層(X)に直接積層されている。
(6)少なくとも1層の層(Y)、少なくとも1層の無機蒸着層(Z)、少なくとも1層の樹脂層(X)がこの順に直接積層されている。」

(2-d)「【0161】
[コーティング液(U)の製造例]
層(Y)を製造するために使用したコーティング液(U)の製造例を示す。蒸留水90質量部に60質量%の硝酸水溶液0.28質量部を加え、撹拌しながら75℃に昇温した。得られた水溶液に、アルミニウムイソプロポキシド20質量部を1時間かけて滴下し、液温を徐々に95℃まで上昇させ、発生するイソプロパノールを留出させることによって加水分解縮合を行った。次いで、60質量%の硝酸水溶液2.2質量部を添加し、95℃で1時間撹拌することによって、解膠させた。こうして得られた分散液を、固形分濃度がアルミナ換算で10質量%になるように希釈し、分散液(S)を得た。
【0162】
また、85質量%のリン酸水溶液3.68質量部に対して、蒸留水57.07質量部、60質量%の硝酸水溶液1.50質量部およびメタノール19.00質量部を加え、均一になるように撹拌することによって、溶液(T)を得た。続いて、溶液(T)を攪拌した状態で、分散液(S)18.75質量部を滴下し、滴下完了後からさらに30分間攪拌を続けることによって、コーティング液(U)を得た。なお、当該コーティング液(U)における金属酸化物(A)(アルミナ)を構成する金属原子のモル数(NM)とリン化合物(B)(リン酸)を構成するリン原子のモル数(NP)との比率(モル数(NM)/モル数(NP))は、1.28であった。
・・・
【0164】
[実施例1]
基材として、2軸延伸エチレンービニルアルコール共重合体フィルム(株式会社クラレ製「エバールEF-XL」(商品名)、厚さ12μm、「EVOH」と略記することがある)を準備した。その基材(EVOH)上に、乾燥後の厚さが0.5μmとなるようにバーコータによってコーティング液(U)をコートし、100℃で5分間乾燥することによって層(Y1)の前駆体層を形成した。得られた積層体に対して、乾燥機を用いて160℃で1分間の熱処理を施し、層(Y1)(0.5μm)/EVOH(12μm)という構造を有する積層体(A1)を得た。得られた積層体(A1)について、上記した方法によって、層(Y1)(層(Y))の赤外線吸収スペクトルを測定した。
【0165】
続いて、無延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ株式会社製「RXC-21」(商品名)、厚さ50μm、「CPP」と略記することがある)を準備した。このCPPの上に、2液型の接着剤(三井武田ケミカル株式会社製、「A-520」(商品名)および「A-50」(商品名))をコートして乾燥させた。そして、これと積層体(A1)とをラミネートした。このようにして、層(Y1)/EVOH/接着剤/CPPという構造を有する外被材(E1)を得た。
【0166】
次に、外被材(E1)を所定の形状に2枚切り出した後、CPPが内側となるように2枚の外被材(E1)を重ね合わせ、長方形の3辺をヒートシールすることによって袋を形成した。次に、袋の開口部から断熱性の芯材を充填し、真空包装機(Frimark GmbH製VAC-STAR 2500型)を用いて、温度20℃で内部圧力10Paの状態で袋を密封した。このようにして、本発明の真空断熱材を問題なく作製できた。なお、断熱性の芯材には、120℃の雰囲気下で4時間乾燥したシリカ微粉末を用いた。得られた真空断熱材について、上記した方法によって、85℃、85%RHで50日間保管する前後の外被材(E)の酸素バリア性および85℃、85%RHで50日間保管した後の真空断熱材の外観変化を評価した。
【0167】
[実施例2?13、比較例1?9]
外被材(E)の層構成、製造条件を表1に示す通りに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2?13および比較例1?9の真空断熱材を作製した。得られた真空断熱材を実施例1と同様の方法で評価した。評価結果を表2に示す。ここで、表1の外被材(E)に使用したフィルムは、下記の通りである。
PET:延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製「ルミラーP60」(商品名)、厚さ12μm)
ONY:延伸ナイロンフィルム(ユニチカ株式会社製「エンブレム ON-BC」(商品名)、厚さ15μm)
VM-PET:アルミ蒸着延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製「VM-PET1310」(商品名)、厚さ12μm)
VM-EVOH:アルミ蒸着2軸延伸エチレンービニルアルコール共重合体フィルム(株式会社クラレ製「エバールVM-XL」(商品名)、厚さ12μm)
PVA:2軸延伸ポリビニルアルコールフィルム(厚さ12μm)
なお、表1においてVM-EVOHのようなアルミ蒸着フィルムは、蒸着層であるVM層とEVOH層の層構成も考慮して「VM-EVOH」または「EVOH-VM」と表している。例えば、実施例8の外被材(E)においてはVM-EVOHのVM層(蒸着層)が層(Y)側に、EVOH層がCPP層側になるよう積層されていることを示す。このような表記は、VM-PETについても同様である。
また、基材上にコーティング液(U)を塗布することによって、形成された層(Y)の前駆体層を層(Y’)とした。」

(2-e)「



(2-f)表1において、「/」は直接積層であり、「//」は接着剤層であり、PETは延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、VM-EVOHは(外)アルミ蒸着層/EVOH層(内)であるアルミ蒸着2軸延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムであり、CPPは無延伸ポリプロピレンフィルムであることを踏まえると、表1の実施例8には、外側から、PET(延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)、層(Y)、接着剤層、VM-EVOH(アルミ蒸着2軸延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム)、接着剤層、CPP(無延伸ポリプロピレンフィルム)が、この順で積層された真空断熱材の外被材が示されているといえる。

(2-g)段落【0032】から、層(Y)は、金属酸化物(A)とリン化合物(B)とが反応してなる反応生成物を含み、前記反応生成物は、金属酸化物(A)を構成する金属原子(M)と前記化合物(B)に由来するリン原子(P)とが、酸素原子(O)を介して結合したM-O-Pで表される結合に由来する赤外線吸収ピークが最大となり、前記最大となる赤外線吸収ピークの波数(n1)が1080?1130cm-1の範囲にあることが好ましいとされている。
また、段落【0034】から、金属酸化物(A)の粒子同士が、リン化合物(B)に由来するリン原子を介して結合され、そして、金属酸化物(A)を構成する金属原子(M)とリン原子(P)とが酸素原子(O)を介して結合したM-O-Pで表される結合が生成すると、上記吸収ピークが現れることが分かる。
以上を踏まえると、層(Y)は、M-O-P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有し、且つ、金属酸化物の粒子同士がリン原子を介して結合されているといえる。

(2-h)段落【0167】から、VM-EVOHは、層(Y)側に配置されたVM層(アルミ蒸着層)と、CPP側に配置されたEVOH層とを有するといえる。

以上の事項を総合すれば、甲第2号証には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

「外側から、PET(延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)、層(Y)、接着剤層、VM-EVOH(アルミ蒸着2軸延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム)、接着剤層、CPP(無延伸ポリプロピレンフィルム)が、この順で積層された真空断熱材の外被材であって、
層(Y)は、M-O-P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有し、且つ、金属酸化物の粒子同士がリン原子を介して結合されており、
VM-EVOHは、層(Y)側に配置されたVM層(アルミ蒸着層)と、CPP側に配置されたEVOH層とを有する真空断熱材の外被材。」

(3)甲第3号証
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。

(3-a)「[0007] しかしながら、上記従来のコーティング層は、水蒸気バリア性が充分ではなかった。とりわけ、高温高湿下など、過酷な条件で使用される際には、経時的な水蒸気バリア性の低下が起こりやすく、用途が大幅に制限されていた。たとえば、太陽電池パネルに使用されるバックシートとしては、一般的な評価条件である40℃90%RHから、さらに過酷な条件である85℃85%RHの条件下でも長期間にわたって水蒸気バリア性を維持することが必要とされるが、上記従来のコーティング層はその要求を充分に満たすものではなかった。
[0008] そこで、本発明の目的の1つは、水蒸気バリア性および外観に優れ、高温高湿下で使用される際にも、長期間にわたって水蒸気バリア性を高いレベルで維持することができる複合構造体、およびその製造方法を提供することである。また、本発明の目的の他の1つは、当該複合構造体を含む製品を提供することである。なお、本明細書においては、長期間にわたって水蒸気バリア性を高いレベルで維持することができる性質を、「水蒸気バリア性の安定性」と表現することがある。
[0009] 上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明者らは、特定のコーティング液を用いることによって、水蒸気バリア性および外観に優れ、高温高湿下で使用される際にも、長期間にわたって水蒸気バリア性を高いレベルで維持することができるコーティング層を形成できることを見出した。そのコーティング液は、金属酸化物の微小な粒子とリン化合物とを混合することによって得られたものであり、当該金属酸化物の粒子は、加水分解可能な特性基が結合した金属原子を含有する化合物を加水分解縮合させることによって得られたものであった。この新たな知見に基づいてさらに検討を重ねることによって、本発明者らは本発明を完成させた。」

(3-b)「[0039] [複合構造体]
本発明の複合構造体は、基材(X)と基材(X)に積層された層(Y)とを有する複合構造体である。層(Y)は、反応生成物(R)を含み、反応生成物(R)は、少なくとも金属酸化物(A)とリン化合物(B)とが反応してなる反応生成物である。層(Y)のX線光電子分光測定(XPS)において得られる、酸素原子の1s電子軌道の結合エネルギーのピーク位置が532.0eV以上に位置し、当該ピークの半値幅が2.0eV未満である。このような複合構造体は、複合構造体を製造するための本発明の方法によって得られる。
・・・
[0044] 複合構造体中の層(Y)は、金属酸化物(A)の粒子同士が、リン化合物(B)に由来するリン原子を介して結合された構造を有する。リン原子を介して結合している形態には、リン原子を含む原子団を介して結合している形態が含まれる。
[0045] 本発明の複合構造体が有する層(Y)は、反応に関与していない金属酸化物(A)および/またはリン化合物(B)を、部分的に含んでいてもよい。
[0046] 金属化合物とリン化合物とが反応すると、金属化合物を構成する金属原子(M)とリン化合物に由来するリン原子(P)とが酸素原子(O)を介して結合したM-O-Pで表される結合が生成する。層(Y)のX線光電子分光測定において得られる、酸素原子の1s電子軌道の結合エネルギーは、上記M-O-P結合や、金属酸化物に内在するM-O-M結合など、層(Y)中に存在する化学構造に対応したものとなり、そのピークの位置や半値幅は、酸素原子の結合状態や、周囲の環境や構造により変化する。本発明者らによる検討の結果、層(Y)のX線光電子分光測定において得られる、酸素原子の1s電子軌道の結合エネルギーのピーク位置が532.0eV以上に位置し、当該ピークの半値幅が2.0eV未満以下である場合には、得られる複合構造体が水蒸気バリア性が優れ、高温高湿下で使用される際にも、長期間にわたって水蒸気バリア性を高いレベルで維持することができることがわかった。水蒸気バリア性により優れる複合構造体が得られることから、上記酸素原子の1s電子軌道の結合エネルギーのピーク位置は532.5eV以上であることがより好ましく、また、当該ピークの半値幅が1.7eV未満であることがより好ましい。」

(3-c)「[0111] [複合構造体の構成]
本発明の複合構造体(積層体)は、基材(X)および層(Y)のみによって構成されてもよいし、基材(X)、層(Y)および接着層(H)のみによって構成されていてもよい。本発明の複合構造体は、複数の層(Y)を含んでもよい。また、本発明の複合構造体は、基材(X)、層(Y)および接着層(H)以外の他の部材(例えば熱可塑性樹脂フィルム層、紙層、無機蒸着層等の他の層など)をさらに含んでもよい。そのような他の部材(他の層など)を有する本発明の複合構造体は、基材(X)に直接または接着層(H)を介して層(Y)を積層させた後に、さらに当該他の部材(他の層など)を直接または接着層を介して接着または形成することによって製造できる。このような他の部材(他の層など)を複合構造体に含ませることによって、複合構造体の特性を向上させたり、新たな特性を付与したりすることができる。例えば、本発明の複合構造体にヒートシール性を付与したり、バリア性や力学的物性をさらに向上させたりすることができる。」

(3-d)「[0149] 本発明の複合構造体を含む成形品は、保冷や保温が必要な各種用途に使用することができる真空断熱体であってもよい。該真空断熱体は、長期間にわたって断熱効果を保持できるため、冷蔵庫、給湯設備および炊飯器などの家電製品用の断熱材、壁部、天井部、屋根裏部および床部などに用いられる住宅用断熱材、車両屋根材、自動販売機などの断熱パネルなどに利用できる。」

(3-e)「[0204][実施例1]
蒸留水230質量部を撹拌しながら70℃に昇温した。その蒸留水に、アルミニウムイソプロポキシド88質量部を1時間かけて滴下し、液温を徐々に95℃まで上昇させ、発生するイソプロパノールを留出させることによって加水分解縮合を行った。得られた液体に、60質量%の硝酸水溶液4.0質量部を添加し、95℃で3時間撹拌することによって加水分解縮合物の粒子の凝集体を解膠させた後に、固形分濃度がアルミナ換算で10質量%になるように濃縮した。こうして得られた分散液18.66質量部に対して、蒸留水58.19質量部、メタノール19.00質量部、および5質量%のポリビニルアルコール(以下、PVA)水溶液0.50質量部を加え、均一になるように撹拌することによって、分散液(S1)を得た。また、85質量%のリン酸水溶液3.66質量部を、溶液(T1)として使用した。続いて、分散液(S1)および溶液(T1)をともに15℃に調節した。次に、15℃の液温を維持した状態で、分散液(S1)を攪拌しながら溶液(T1)を滴下してコーティング液(U1)を得た。得られたコーティング液(U1)を15℃に保持したまま、粘度が1500mPa・sになるまで攪拌を続けた。

[0205] 次に、基材として、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、「ルミラーP60」(商品名)、厚さ12μm、以下では「PET」と略記することがある)を準備した。その基材(PET)上に、乾燥後の厚さが0.5μmとなるようにバーコータによってコーティング液(U1)をコートした。コートするまで、コーティング液(U1)の温度を15℃に保った。コーティング液(U1)が塗布された基材を110℃で5分間乾燥することによって、層(Y1)の前駆体層を形成した。得られた積層体に対して、乾燥機を用いて200℃で1分間の熱処理を施し、層(Y1)(0.5μm)/PET(12μm)という構造を有する複合構造体(A1)を得た。得られた複合構造体(A1)について、上記した方法によって外観を評価し、層(Y1)(層(Y))のX線光電子分光(XPS)測定を実施した。

[0206] 続いて、上記で使用したものと同じPETおよび無延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ株式会社製、「RXC-21」(商品名)、厚さ50μm、以下では「CPP」と略記することがある)を準備した。これらのPETおよびCPPの上に、2液型の接着剤(三井武田ケミカル株式会社製、「A-520」(商品名)および「A-50」(商品名))をコートして乾燥させた。そして、これらと複合構造体(A1)とを順次ラミネートした。このようにして、PET/接着剤/層(Y1)/PET/接着剤/CPPという構造を有する複合構造体(B1)を得た。得られた複合構造体(B1)について、上記した方法によって、85℃、85/0%RH及び40℃、90/0%RHの条件下における透湿度を評価した。」
・・・
[0226][参考例1?2]
参考例として、厚さ12μmのアルミナ蒸着PETフィルムおよび厚さ12μmのシリカ蒸着PETフィルムについて、実施例1と同様の方法によって、測定および評価を行った。」

(3-f)「



(3-g)表3から、実施例1で用いられる複合構造体は、参考例1で用いられる多層構造体(層(Y)の代わりにアルミナを蒸着した多層構造体)と比べて低い透湿度を示すことが把握できる。

(3-h)以上によれば、甲第3号証には、基材(X)に層(Y)を積層した複合構造体であって、層(Y)は、M-O-P結合を有し、金属酸化物の粒子同士がリン原子を介して結合された構造を有し、真空断熱体に使用できる複合構造体が記載されており、この複合構造体は、高温高湿下で使用される際にも、長時間にわたって水蒸気バリア性を高いレベルで維持することが記載されているといえる。

(4)甲第4号証
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。

(4-a)「[0010] 本発明の目的の1つは、物理的ストレスを受けた後やレトルト処理後においても高い性能を維持できる新規な多層構造体、およびそれを含む包装材、ならびに多層構造体の製造方法を提供することにある。また、本発明の目的の他の1つは、物理的ストレスを受けてもガスバリア性を高いレベルで維持でき、高温・高湿下においても外観不良が生じにくい包装材およびそれを用いた製品を提供することにある。さらに、本発明の目的の他の1つは、物理的ストレスを受けてもガスバリア性を高いレベルで維持でき、高温・高湿下においても層間接着力の低下が抑制され、外観不良が生じにくい電子デバイスを提供することである。

[0011] 鋭意検討した結果、本発明者らは、特定の層を含む多層構造体によって上記目的を達成できることを見出し、本発明に至った。

[0012] 本発明は1つの多層構造体を提供する。その多層構造体は、基材(X)と層(Y)と前記層(Y)に隣接して配置された層(Z)とを含む多層構造体であって、前記層(Y)は、リン原子を含有する化合物(A)と、水酸基および/またはカルボキシル基を有する重合体(B)とを含み、前記層(Y)において、前記化合物(A)と前記重合体(B)との質量比が15:85?99:1の範囲にあり、前記層(Z)はアルミニウム原子を含む層である。
・・・
[0016] 本発明の多層構造体において、前記層(Z)が、反応生成物(E)を含む層(Z1)を備えてもよい。前記反応生成物(E)は、アルミニウムを含む金属酸化物(C)とリン化合物(D)とが反応してなる反応生成物である。前記層(Z1)の赤外線吸収スペクトルにおいて、800?1,400cm^(-1)の領域における最大吸収波数が1,080?1,130cm^(-1)の範囲にあってもよい。

[0017] 本発明の多層構造体において、前記層(Z)が、アルミニウムの蒸着層(Z2)または酸化アルミニウムの蒸着層(Z3)を備えてもよい。」

(4-b)「[0062][層(Z1)]
層(Z1)に含まれる反応生成物(E)の構造としては、例えば、金属酸化物(C)の粒子同士がリン化合物(D)に由来するリン原子を介して結合された構造が挙げられる。リン原子を介して結合している形態には、リン原子を含む原子団を介して結合している形態が含まれ、例えば、リン原子を含み金属原子を含まない原子団を介して結合している形態が含まれる。また、本発明の多層構造体が有する層(Z1)は、反応に関与していない金属酸化物(C)および/またはリン化合物(D)を部分的に含んでいてもよい。

[0063] 層(Z1)において、金属酸化物(C)を構成する金属原子とリン化合物(D)に由来するリン原子とのモル比は、[金属酸化物(C)を構成する金属原子]:[リン化合物(D)に由来するリン原子]=1.0:1.0?3.6:1.0の範囲にあることが好ましく、1.1:1.0?3.0:1.0の範囲にあることがより好ましい。この範囲外ではガスバリア性能が低下する。層(Z1)における該モル比は、層(Z1)を形成するためのコーティング液における金属酸化物(C)とリン化合物(D)との混合比率によって調整できる。層(Z1)における該モル比は、通常、コーティング液における比と同じである。

[0064] 層(Z1)の赤外線吸収スペクトルにおいて、800?1,400cm-1の領域における最大吸収波数は1,080?1,130cm-1の範囲にあることが好ましい。金属酸化物(C)とリン化合物(D)とが反応して反応生成物(E)となる過程において、金属酸化物(C)に由来する金属原子(M)とリン化合物(D)に由来するリン原子(P)とが酸素原子(O)を介してM-O-Pで表される結合を形成する。その結果、反応生成物(E)の赤外線吸収スペクトルにおいて該結合由来の特性吸収帯が生じる。本発明者らによる検討の結果、M-O-Pの結合に基づく特性吸収帯が1,080?1,130cm^(-1)の領域に見られる場合には、得られた多層構造体が優れたガスバリア性を発現することがわかった。特に、該特性吸収帯が、一般に各種の原子と酸素原子との結合に由来する吸収が見られる800?1,400cm-1の領域において最も強い吸収である場合には、得られた多層構造体がさらに優れたガスバリア性を発現することがわかった。」

(4-c)「[0198][真空断熱体]
前記した包装材を少なくとも一部に用いる、本発明の製品は、真空断熱体であってもよい。本発明の真空断熱体は、被覆材と、被覆材により囲まれた内部に配置された芯材とを備える断熱体であり、芯材が配置された内部は減圧されている。真空断熱体は、ウレタンフォームからなる断熱体による断熱特性と同等の断熱特性を、より薄くより軽い断熱体で達成することを可能にする。本発明の真空断熱体は、長期間にわたって断熱効果を保持できるため、冷蔵庫、給湯設備および炊飯器等の家電製品用の断熱材、壁部、天井部、屋根裏部、および床部等に用いられる住宅用断熱材、車両屋根材、自動販売機等の断熱パネル、ヒートポンプ応用機器等の熱移動機器等に利用できる。

[0199] 本発明による真空断熱体の一例を図8に示す。図8の真空断熱体601は、粒子状の芯材651と、それを覆う被覆材610とを備え、被覆材610は周縁部611で互いに接合されている2枚のフィルム材631、632により構成され、芯材651は、該被覆材610によって囲まれた内部に配置されている。周縁部611で囲まれた中央部において、被覆材610は、芯材651が収容された内部と外部とを隔てる隔壁として機能し、内部と外部との圧力差によって芯材651に密着している。芯材651が配置された内部は減圧されている。」

(4-d)「[0227][実施例1]
<実施例1-1>
まず、基材(X)としてPET12を準備した。この基材上に、乾燥後の厚みが0.3μmとなるようにバーコーターを用いてコーティング液(T-1)を塗工した。塗工後のフィルムを、110℃で5分間乾燥させた後、160℃で1分間熱処理することによって、基材上に層(Z1)を形成した。このようにして、基材(X)/層(Z1)という構造を有する構造体を得た。得られた構造体の赤外線吸収スペクトルを測定した結果、800?1,400cm-1の領域における最大吸収波数は1,108cm -1 であり、該吸収帯の半値幅は37cm-1であった。続いて、前記構造体上に、乾燥後の厚みが0.05μmとなるようにバーコーターを用いてコーティング液(S-1)を塗工し、220℃で1分間乾燥することによって層(Y)を形成した。このようにして、基材(X)/層(Z1)/層(Y)という構造を有する多層構造体(1-1)を得た。

[0228] 得られた多層構造体(1-1)の酸素透過度および透湿度を上述した方法によって測定した。酸素透過度は0.2mL/(m2・day・atm)、透湿度は、0.2g/(m2・day)であった。多層構造体(1-1)から15cm×10cmの大きさのサンプルを切り出し、このサンプルを23℃、50%RHの条件下で24時間静置した後、同条件下で長軸方向に3%延伸し、延伸した状態を10秒間保持することで、延伸処理後の多層構造体(1-1)とした。また、得られた多層構造体(1-1)について、延伸処理後の酸素透過度を上述した方法によって測定した。また、多層構造体(1-1)について外観を評価した。
・・・
[0233]<実施例1-14、1-15>
層(Z1)の代わりに真空蒸着法によって形成した蒸着層を用いること以外は実施例1-1の多層構造体(1-1)の作製と同様にして、実施例1-14の多層構造体(14-1)および実施例1-15の多層構造体(15-1)を作製した。実施例1-14では、蒸着層として、厚み0.03μmのアルミニウムの層(Z2)を用いた。実施例1-15では、蒸着層として、厚み0.03μmの酸化アルミニウムの層(Z3)を用いた。また、多層構造体(1-1)を多層構造体(14-1)?(15-1)に変更したこと以外は実施例1-1の多層構造体(1-2)の作製と同様にして、多層構造体(14-2)?(15-2)を得た。」

(4-e)「



(4-f)表2から、実施例1-1で用いられる多層構造体は、層(Z1)の代わりに蒸着層である(Z2)または層(Z3)を用いた実施例1-14や実施例1-15と比べ、低い透湿度を示すことが把握できる。

(4-g)甲第4号証には、基材(X)に層(Z1)を積層したものを含む多層構造体であって、層(Z1)は、金属酸化物の粒子同士がリン原子を介して結合された構造であって、金属原子とリン原子とが酸素原子を介してM-O-Pで表される結合を形成し、真空断熱体として利用できる多層構造体が記載されており、この多層構造体は、優れたガスバリア性を発現することが記載されている。

(5)甲第5号証
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。

(5-a)「[0008]しかしながら、ガスバリア層として金属箔を用いた構成では、金属箔を伝わる熱量が大きく、真空断熱材の断熱性能が十分でないことがあった。

[0009] 特に、従来の真空断熱材のように、ガスバリア性フィルムとしてアルミ箔を使用している場合、真空断熱材の外装材を伝わる熱伝導、いわゆるヒートブリッジ現象によって真空断熱材の断熱効果が小さくなる。ヒートブリッジ現象を解決するために、金属箔に代えて蒸着膜を有するガスバリア性フィルムに変更した場合であっても、十分な断熱性能が得られていなかった。

[0010] また、ガスバリア層としてアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムのみを用いた構成では、ガスバリア性が十分ではなく、真空断熱材の断熱性能が十分でないことがあった。

[0011] 更に、従来の外装材では、冷却ボックス等に真空断熱材を適用する場合、内容物が収容されている冷却ボックスを輸送する際に、冷却ボックスに振動し、この振動に起因して、内容物が冷却ボックスの表面に対して衝撃を加えることがある。このような場合、冷却ボックスの表面にピンホールが発生しやすく、真空による断熱機能が損なわれる場合があるという問題があった。

[0012] そこで、本発明は、このような従来技術の問題点を鑑みて、ガスバリア層を伝わる熱量が小さく、ガスバリア性が高く、耐屈曲性の良い真空断熱材の外装材を提供することを目的とする。

[0013] さらに、本発明は、このような従来技術の問題点を鑑みて、耐突き刺し性に優れる真空断熱材の外装材を提供する。また、本発明は、上記問題点を鑑みて、振動などに起因する衝撃によって形成されるピンホールが発生しにくい真空断熱材の外装材およびそれを用いた断熱容器を提供することを目的とする。」

(5-b)「[0043](第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態に係る外装材を用いた真空断熱材を示す断面図である。真空断熱材1は、芯材3と、芯材3を覆うように形成された外装材2とを備える。真空断熱材1においては、外装材2で囲まれた芯材3の周囲が脱気されており、真空断熱材1の内部が真空状態に維持されている。 本発明の第一実施形態に係る真空断熱材の外装材は、図2に示すように、バリアフィルム11、アルミ蒸着エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム21、熱融着層31が順に積層された積層体である。

[0044] ここで、バリアフィルム11は、図2に示すように、プラスチックフィルムからなる基材12(プラスチック基材)と、蒸着薄膜層13と、被膜層14(第1被膜層)とが順に積層された構成を有する。具体的に、基材12の少なくとも片面(少なくとも一方の面)に、金属又は無機酸化物、或いは、金属又は無機酸化物を含む混合物を蒸着することによって、基材12上に蒸着薄膜層13が形成されている。被膜層14は、水溶液高分子と、(a)1種以上のアルコキシド及びアルコキシドの加水分解物のうち少なくとも一つ又は(b)塩化錫の少なくともいずれか1つを含む水溶液、或いは、水とアルコールとの混合溶液とを主剤とするコーティング剤によって形成されている。蒸着薄膜層13と被膜層14とは、それぞれ、ガスバリア層を形成する第1の層と第2の層として機能する。」

(5-c)「[0073] なお、図5に示すように、基材12上(基材12(第1基材)の蒸着薄膜層13(第1蒸着薄膜層)が形成される面とは反対の面)に、更に被膜層17(第2被膜層)、蒸着薄膜層16(第2蒸着薄膜層)、基材15(第2基材)を同様に設けることも可能であり、必要に応じて複数層を設けることができる。

[0074] 次に、アルミ蒸着エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム21を説明する。

[0075] 図2に示すように、アルミ蒸着エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム21は、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム23の少なくとも片面に、アルミニウムが蒸着されてアルミニウム蒸着層22が形成された構成を有する。」

(5-d)「



以上の事項を総合すると、甲第5号証には以下の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
「バリアフィルム11、アルミ蒸着エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム21、熱融着層31が順に積層された真空断熱材の外装材であって、
バリアフィルム11は、基材12と蒸着薄膜層13と被膜層14とが順に積層され、
基材12上に更に被膜層17、蒸着薄膜層16、基材15を設け、
アルミ蒸着エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム21は、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム23の片面にアルミニウム蒸着層22が形成された真空断熱材の外装材。」

5 当審の判断
5-1 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
(1)本件発明1について
A 甲1発明1を主引例とした場合
ア 対比
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1の「基材フィルム1-a」、「無機蒸着層2-a」、「基剤フィルム1-b」、「無機蒸着層2-b」は、それぞれ、本件発明1の「第2樹脂基材」、「第2樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層」、「第3樹脂基材」、「第3樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層」に相当する。
また、甲1発明1の、「基材フィルム1-a」、「無機蒸着層2-a」及び「保護コート層3-a」の順に積層したものは、本件発明1の「第2フィルム」に相当し、甲1発明1の「基剤フィルム1-b」、「無機蒸着層2-b」及び「保護コート層3-b」の順に積層したものは、本件発明1の「第3フィルム」に相当する。
そして、甲1発明1の「防湿層6」は、防湿性のフィルムであるから、本件発明1の「第1フィルム」に相当し、甲1発明1の「ヒートシール層5」は、本件発明1の「熱溶着可能なフィルム」に相当する。
さらに、甲1発明1の「真空断熱材などの用途へ使用される高防湿ガスバリアフィルム積層体」は、真空断熱材の外包材として用いられることは明らかであるから、本件発明1の「真空断熱材用外包材」に相当する。

したがって、本件発明1と甲1発明1とは、
「少なくとも第1フィルムと、第2フィルムと、第3フィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有する真空断熱材用外包材であって、
前記第2フィルムは、第2樹脂基材と、前記第2樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層とを有し、
前記第3フィルムは、第3樹脂基材と、前記第3樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層とを有する真空断熱材用外包材。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
第1フィルムに関して、本件発明1では「第1樹脂基材と、前記第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM-O-P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有し、且つ、金属酸化物の粒子同士がリン原子を介して結合された金属酸化物リン酸層とを有」するのに対し、甲1発明1では、防湿層6である点。

イ 判断
上記相違点1について検討する。
取消理由通知(決定の予告)で示したとおり、樹脂基材と、前記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM-O-P結合を有し、且つ、金属酸化物の粒子同士がリン原子を介して結合された金属酸化物リン酸層とを備える複合構造体が、低い透湿度を有し、且つ、真空断熱体を構成するフィルムとして有用であることは、周知技術である(例えば、甲第3号証、甲第4号証を参照のこと。以下「周知技術」という。)。
しかし、特許権者の令和2年7月27日付けの意見書における主張を踏まえて再検討したところ、以下のとおり、本件発明1の防水層6として周知技術を採用することは当業者が容易になし得たことではない。
甲1発明1の防水層6に関して、甲第1号証には、「防湿層を設けることで高温多湿環境下に保存した場合、基材側からの湿度による水の浸入を防ぎ、蒸着薄膜層および保護コート層からなるガスバリア層の劣化を防ぐことで、結果として高温多湿環境下でも長期間高いバリア性能を保持することができる。」(段落【0034】)と記載されており、防湿層は、基材側からの水の進入を防ぎ、蒸着薄膜層および保護コート層からなるガスバリア層の劣化を防ぐものと理解される。
また、甲第1号証には、「防湿フィルムは、水蒸気バリア性の高いフィルムが好ましく、ポリプロピレンやポリエチレンフィル、ポリシクロオレフィンなどのポリオレフィンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体やエチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂、ポリ塩化ビニル(PVD)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC),ポリビニルアルコール(PVA),などが挙げられる。・・・なかでもオレフィンフィルムは汎用性が高く、安価でありながらフィルムの防湿性が高く防湿層として好ましい。」(段落【0036】)と記載され、このような防湿層として用いられる材料は極めて広範囲なものとなる。
このように、甲1発明1の防湿層は、外包材の一部である蒸着薄膜層および保護コート層からなるガスバリア層を水の進入による劣化を防ぐものであり、積層体全体のガスバリア性の向上を意図するものではない上に、汎用性が高く、安価でありながらフィルムの単に防湿性が高いものが好ましいとされている。
一方、周知技術で示された金属酸化物リン酸層は、金属酸化物リン酸層を備える複合構造体が低い透湿度を有し、且つ、真空断熱体を構成する(ガスバリア性が向上する)ものであり、単なる防湿を目的とするものではない。また、汎用性が高く、安価であるともいえないから、甲1発明1の防湿層として周知技術で示された金属酸化物リン酸層を採用する動機付けがない。
さらに、甲1発明1は、ガスバリア性能を高くするために「無機蒸着層2-a」、「無機蒸着層2-b」といった複数の無機蒸着層を既に有する積層体であるから、そのような甲1発明1に、周知技術で示された低い透湿度を有する金属酸化物リン酸層を適用し、さらに積層体全体のガスバリア性能を高めることは通常は想定されない。
したがって、金属酸化物の粒子同士がリン原子を介して結合された金属酸化物リン酸層とを備える複合構造体が、低い透湿度を有し、且つ、真空断熱体を構成するフィルムとして有用であることが周知技術であったとしても、甲1発明1の防湿層として、広範囲の材料が甲第1号証に記載されている中で、その範囲内で選択するのではなく、周知技術で示された金属酸化物リン酸層を選択することは当業者が容易になし得たことではない。
そして、本件発明1の機能は、「上記金属酸化物リン酸層付きフィルムの内側に外側無機層付きフィルムを配置し、当該外側無機層付きフィルムの内側に内側無機層付きフィルムを配置することにより、上記金属酸化物リン酸層付きフィルムを透過した水蒸気を上記外側無機層付きフィルムで遮断するものである。これにより、上記内側無機層付きフィルムの劣化を長期にわたり防止することができ、高温高湿な環境においても、上記内側無機層付きフィルムに初期値と同様のガスバリア性を発揮させることができる。」(段落【0027】)というものであるが、このような機能を備えた構造は、甲1発明1及び周知技術のいずれにも記載されていない。
したがって、甲1発明1及び周知技術に基いて、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことではない。

特許権者は、令和2年7月27日付けの意見書において、「本件発明1におきましては、上記『5 (2)(2-1)ア.本件特許の請求項1に係る発明』の項で説明させていただきました通り、内側無機層付きフィルム側に透過する水蒸気等を持続的に遮断する、金属酸化物リン酸層付きフィルムおよび外側無機層付きフィルムの組み合わせである特徴構成1と、この特徴構成1により水蒸気から保護される内側無機層付きフィルムとを有するものとなります。
このような本件発明1と甲1発明1とを対比した場合の相違点は、本件発明1の上記特徴構成1が、甲1発明1では防湿層6となっている点(以下、相違点1aとする場合があります。)であるとすることが相当であると考えます。
したがって、上記相違点1についての認定は、妥当ではなく、本件発明1と甲1発明1とを対比した場合の相違点は上記相違点1aであるとして、進歩性の判断をすべきであると考えます。」(第5頁第20?29行)と主張する。
しかしながら、金属酸化物リン酸層付きフィルムおよび外側無機層付きフィルムの組み合わせにより内側無機層付きフィルムを水蒸気から保護する点は、本願発明1において特定されているものではない。そして、本件発明1と甲1発明1とを対比すると、上記(1)アで検討したとおり、甲1発明1の「無機蒸着層2-a」、「無機蒸着層2-b」は、それぞれ、本件発明1の「第2樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層」、「第3樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層」に相当するから、相違点1は、上記(1)アで検討したとおりのものとなる。
よって、特許権者の主張は採用できない。

ウ 小活
よって、本件発明1は、甲1発明1及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

B 甲2発明を主引例とした場合
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「PET(延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)」は、本件発明1の「第1樹脂基材」に相当し、甲2発明の「層(Y)」は、M-O-P結合を有し、且つ、金属酸化物の粒子同士がリン原子を介して結合されているから、本件発明1の「第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM-O-P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有し、且つ、金属酸化物の粒子同士がリン原子を介して結合された金属酸化物リン酸層」に相当する。
そして、甲2発明の「PET」及び「層(Y)」をこの順で積層したものは、本件発明1の「第1フィルム」に相当する。甲2発明の「CPP」は、本件発明1の「熱溶着可能なフィルム」に相当する。
また、甲2発明の「VM-EVOH(アルミ蒸着2軸延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム)」は、本件発明1の「第3樹脂基材」と「第3樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層」とを有する「第3フィルム」に相当する。
さらに、甲2発明の「外被材」は、本件発明1の「外包材」に相当する。

したがって、本件発明1と甲2発明とは、
「少なくとも第1フィルムと、第3フィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有する真空断熱材用外包材であって、
前記第1フィルムは、第1樹脂基材と、前記第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM-O-P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有し、且つ、金属酸化物の粒子同士がリン原子を介して結合された金属酸化物リン酸層とを有し、
前記第3フィルムは、第3樹脂基材と、前記第3樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層とを有する真空断熱材用外包材。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点2]
本件発明1は「少なくとも第1フィルムと、第2フィルムと、第3フィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有」し、「第2フィルムは、第2樹脂基材と、前記第2樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層とを有」するのに対し、甲2発明は、「VM-EVOH」が一層しかなく(「第3フィルム」に相当)、第2フィルムを有していない点。

イ 判断
上記相違点2について検討する。
甲第2号証の段落【0145】には、「本発明の真空断熱材に用いられる外被材(E)は、樹脂層(X)および層(Y)のみによって構成されてもよいし、樹脂層(X)、層(Y)および無機蒸着層(Z)のみによって構成されていてもよいし、これらに加えて上記した基材(K)や接着層(H)を含んでもよい。また、外被材(E)は、これらの層をそれぞれ複数含んでもよい。」と記載されている。
また、甲第2号証の段落【0148】には、「(4)少なくとも1層の樹脂層(X)および/または少なくとも1層無機蒸着層(Z)が少なくとも1層の層(Y)よりも芯材側に位置する。」と記載されている。
しかし、特許権者の令和2年7月27日付けの意見書における主張を踏まえて再検討したところ、以下のとおり、これらの甲第2号証の記載に基いて、甲2発明の「VM-EVOH」を複数設けることは当業者が容易になし得たことではない。
甲第2号証の段落【0145】における「これらの層をそれぞれ複数含んでもよい。」との記載は、樹脂層(X)、層(Y)および無機蒸着層(Z)をそれぞれ複数含むものでもよいことが記載されているだけであり、これらの層を複数含む場合にどのように積層させるかは記載されておらず、層(Y)の内側に無機蒸着層(Z)に設け、さらにその内側に無機蒸着層(Z)を設ける点は記載されていない。
また、甲第2号証の段落【0148】の記載は、層(Y)より芯材側に少なくとも1層の無機蒸着層(Z)が設けられていてもよい旨の記載であり、無機蒸着層(Z)を2層、層(Y)より芯材側に設ける点を示唆する記載ではない。さらに、段落【0148】の最初に「以上に例示した外被材(E)の構成の中でも、下記の要件の少なくとも1つ以上を備えていることが好ましい。」と記載されていることからも、上記段落【0148】の記載は、段落【0147】の(1)?(38)の外被材(E)の構成の中で好ましい構成を示しているにすぎないものといえる。
そして、本件発明1の機能は、「上記金属酸化物リン酸層付きフィルムの内側に外側無機層付きフィルムを配置し、当該外側無機層付きフィルムの内側に内側無機層付きフィルムを配置することにより、上記金属酸化物リン酸層付きフィルムを透過した水蒸気を上記外側無機層付きフィルムで遮断するものである。これにより、上記内側無機層付きフィルムの劣化を長期にわたり防止することができ、高温高湿な環境においても、上記内側無機層付きフィルムに初期値と同様のガスバリア性を発揮させることができる。」(段落【0027】)というものであるが、このような機能を備えた構造は、甲第2号証には記載されていない。
したがって、甲2発明において、甲第2号証の記載に基いて、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

甲5発明は、バリアフィルム11として蒸着薄膜層13と蒸着薄膜層16が積層され、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム23にアルミニウム蒸着層22が形成されており、合わせて3つの無機層を有する真空断熱材の外装材が開示されている。
しかしながら、甲第5号証の[0013]段落には、「耐突き刺し性に優れる真空断熱材の外装材を提供」し、「振動などに起因する衝撃によって形成されるピンホールを発生しにくい真空断熱材の外装材を提供する」ことを目的とすることが記載されており、甲2発明とは、その課題が異なるものである。
したがって、甲2発明に甲5発明の無機層を複数有する構造を適用する動機付けがなく、甲2発明において第3フィルムとして設けた「VM-EVOH」を複数設けるように構成し、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

ウ 小活
よって、本件発明1は、甲2発明に基いて、又は甲2発明及び甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2について
本件発明2と甲2発明とを対比する。
甲2発明のEVOH層は、EVOHを含むところ、EVOHは親水基含有樹脂である。また、EVOH層は、VM層(アルミ蒸着層)のCPP側に配置されている。
よって、甲2発明の「EVOH層」は、本件発明2の「親水基含有樹脂を含み」、「第3フィルムの無機層の熱溶着可能なフィルム側に配置されている」「第3樹脂基材」に相当する。
したがって、本件発明2と甲2発明とは、上記(1)Bで検討した[相違点2]と同様の相違点で相違する。
よって、本件発明2は、上記(1)Bで検討したのと同様に、甲2発明に基いて、又は甲2発明及び甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲1発明2とを対比する。
甲1発明2の「基材フィルム1」、「無機蒸着層2」、「保護コート層3」は、この順で積層されているから、それぞれ、本件発明3の「樹脂基板」、「樹脂基板の少なくとも一方の面側に配置された無機層」、「無機層の樹脂基板とは反対の面側に配置されたオーバーコート層」に相当する。
また、甲1発明2の「基材フィルム1」、「無機蒸着層2」及び「保護コート層3」をこの順で積層したものは、基材フィルム1に無機蒸着層2と保護コート層3を積層したものであるから、本件発明3の「オーバーコート層付きフィルム」に相当し、甲1発明2の「防湿層」、「ヒートシール層5」は、それぞれ、本件発明3の「第1フィルム」、「熱溶着可能なフィルム」に相当する。
そして、甲1発明2の保護コート層は、ポリビニルアルコールを含むB液が混合されているから、親水基含有樹脂を含むものである。
ここで、本件発明3の「オーバーコート層を構成する原子における、炭素原子に対する金属原子の比率が0.1以上、2以下の範囲内である」点に関して、本件特許明細書の段落【0110】?【0115】には、オーバコート層形成用組成物として、ポリビニルアルコール(PVA)を含むA液とテトラエトキシシラン(TEOS)を含むB液を、テトラエトキシシラン(TEOS)100質量部に対してポリビニルアルコール(PVA)が5質量部から500質量部となるように調整されたものを用いたオーバーコート層における炭素原子に対する金属原子の比率が0.15から1.92であることが示されているから、甲1発明2のテトラエトキシシランに塩酸を加えた加水分解溶液であるA液と、ポリビニルアルコールを含むB液とを、配合比(wt%)で60/40に混合したものは炭素原子に対する金属原子の比率が0.1以上、2以下の範囲内である蓋然性が高いといえる。
さらに、甲1発明2の「真空断熱材などの用途へ使用される高防湿ガスバリアフィルム積層体」は、真空断熱材の外包材として用いられることは明らかであるから、本件発明3の「真空断熱用外包材」に相当する。
したがって、本件発明3と甲1発明2とは、
「少なくとも第1フィルムと、オーバーコート層付きフィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有する真空断熱材用外包材であって、
前記オーバーコート層付きフィルムは、樹脂基板と、前記樹脂基板の少なくとも一方の面側に配置された無機層と、前記無機層の前記樹脂基板とは反対の面側に配置されたオーバーコート層とを有し、
前記オーバーコート層は親水基含有樹脂を含み、
前記オーバーコート層を構成する原子における、炭素原子に対する金属原子の比率が0.1以上、2以下の範囲内である真空断熱材用外包材。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点3]
第1フィルムに関して、本件発明3では、「第1樹脂基材と、前記第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM-O-P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する金属酸化物リン酸層とを有」するのに対し、甲1発明2では、防湿層である点。

イ 判断
相違点3は、相違点1と同様の相違点であることから、その判断も同様である。すなわち、上記(1)Aで検討したのと同様に、甲1発明2の防湿層を、周知技術の金属酸化物リン酸層を備える複合構造体に置き換えることは、当業者が容易になし得たことではない。

ウ 小活
よって、本件発明3は、甲1発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1に「芯材と、前記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有する真空断熱材」との限定を加え、真空断熱材の発明としたものである。
そして、本件発明1について上記(1)で検討したことを踏まえると、本件発明4も同様に、甲1発明1及び周知技術に基いて、甲2発明に基いて、又は甲2発明及び甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件発明5について
本件発明5は、本件発明3に「芯材と、前記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有する真空断熱材」との限定を加え、真空断熱材の発明としたものである。
そして、本件発明3について上記(3)で検討したことを踏まえると、本件発明5も同様に、甲1発明2及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)本件発明6について
本件発明6は、本件発明4に「熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品であって」との限定を加え、真空断熱材付きの物品の発明としたものである。
そして、本件発明4について上記(4)で検討したことを踏まえると、本件発明6も同様に、甲1発明1及び周知技術に基いて、甲2発明に基いて、又は甲2発明及び甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)本件発明7について
本件発明7は、本件発明5に「熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品であって」との限定を加え、真空断熱材付きの物品の発明としたものである。
そして、本件発明5について上記(5)で検討したことを踏まえると、本件発明7も同様に、甲1発明2及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5-2 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)本件発明1について
甲5発明は、バリアフィルム11として蒸着薄膜層13と蒸着薄膜層16が積層され、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム23にアルミニウム蒸着層22が形成されており、合わせて3つの無機層を有するものであるが、金属酸化物リン酸層を有するフィルムが開示されていない。
そして、甲第5号証の[0013]段落には、「耐突き刺し性に優れる真空断熱材の外装材を提供」し、「振動などに起因する衝撃によって形成されるピンホールを発生しにくい真空断熱材の外装材を提供する」ことを目的(課題)とすることが記載されており、このような課題は、本件発明1と異なるものであり、甲2発明や周知技術にも記載されていない。
そうすると、甲5発明に甲2発明や周知技術を適用する動機付けはなく、甲5発明において、本件発明1のように金属酸化物リン酸層を有する第1フィルムと、無機層を有する第2フィルムと、無機層を有する第3フィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有する真空断熱用外包材とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、本件発明1は、甲5発明及び甲2発明に基いて、又は甲5発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用するものであるから、同様に甲5発明及び甲2発明に基いて、又は甲5発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明1は、上記「5-1(1)」で検討したとおり、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲2発明を考慮しても同様であるから、本件発明2は、甲1発明、甲2発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない

(3)本件発明3について
上記(1)で検討したことを踏まえると、甲5発明に甲2発明や周知技術を適用する動機付けはなく、甲5発明において、本件発明3のように金属酸化物リン酸層を有する第1フィルムと、無機層及びオーバーコート層を有するオーバーコート層付きフィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有する真空断熱用外包材とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、本件発明3は、甲5発明及び甲2発明に基いて、又は甲5発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1に「芯材と、前記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有する真空断熱材」との限定を加え、真空断熱材の発明としたものである。
そして、本件発明1について上記(1)で検討したことを踏まえると、本件発明4も同様に、甲5発明及び甲2発明に基いて、又は甲5発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件発明5について
本件発明5は、本件発明3に「芯材と、前記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有する真空断熱材」との限定を加え、真空断熱材の発明としたものである。
そして、本件発明3について上記(3)で検討したことを踏まえると、本件発明5も同様に、甲5発明及び甲2発明に基いて、又は甲5発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)本件発明6について
本件発明6は、本件発明4に「熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品であって」との限定を加え、真空断熱材付きの物品の発明としたものである。
そして、本件発明4について上記(4)で検討したことを踏まえると、本件発明6も同様に、甲5発明及び甲2発明に基いて、又は甲5発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)本件発明7について
本件発明7は、本件発明5に「熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品であって」との限定を加え、真空断熱材付きの物品の発明としたものである。
そして、本件発明5について上記(5)で検討したことを踏まえると、本件発明7も同様に、甲5発明及び甲2発明に基いて、又は甲5発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6 むすび
以上のとおり、本件発明1は、甲1発明1及び周知技術に基いて、甲2発明に基いて、甲2発明及び甲5発明に基いて、甲5発明及び周知技術に基いて、又は甲5発明及び甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件発明2は、甲1発明1、甲2発明及び周知技術に基いて、甲2発明に基いて、甲2発明及び甲5発明に基いて、甲5発明及び周知技術に基いて、甲5発明及び甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件発明3は、甲1発明2及び周知技術に基いて、甲5発明及び周知技術に基いて、甲5発明及び甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件発明4は、甲1発明1及び周知技術に基いて、甲2発明に基いて、甲2発明及び甲5発明に基いて、甲5発明及び周知技術に基いて、又は甲5発明及び甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件発明5は、甲1発明2及び周知技術に基いて、甲5発明及び周知技術に基いて、甲5発明及び甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件発明6は、甲1発明1及び周知技術に基いて、甲2発明に基いて、甲2発明及び甲5発明に基いて、甲5発明及び周知技術に基いて、甲5発明及び甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件発明7は、甲1発明2及び周知技術に基いて、甲5発明及び周知技術に基いて、甲5発明及び甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

したがって、本件発明1ないし本件発明7に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件発明1ないし本件発明7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。


 
異議決定日 2020-11-19 
出願番号 特願2017-93383(P2017-93383)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (F16L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 渡邉 聡  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 松下 聡
平城 俊雅
登録日 2019-02-01 
登録番号 特許第6471769号(P6471769)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き物品  
代理人 岸本 達人  
代理人 山下 昭彦  
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