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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B60Q
審判 全部申し立て 2項進歩性  B60Q
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B60Q
審判 全部申し立て 特174条1項  B60Q
管理番号 1368147
異議申立番号 異議2020-700519  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-07-28 
確定日 2020-12-01 
異議申立件数
事件の表示 特許第6636997号発明「車両用灯具の制御装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6636997号の請求項1?4に係る特許を維持する。 
理由 理 由
第1 手続の経緯
特許第6636997号(以下「本件特許」という。)の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成23年6月23日(優先権主張 平成22年7月1日)を出願日とする特願2011-139615号の一部を、平成27年4月6日に新たな特許出願とした特願2015-77432号の一部を、平成28年6月3日に新たな特許出願とした特願2016-111520号の一部を、平成29年8月10日に新たな特許出願としたものであって、令和1年12月27日にその特許権の設定登録がされ、令和2年1月29日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許の請求項1?4に対し、令和2年7月28日に特許異議申立人田中貞嗣及び小山卓志(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされたものである。


第2 本件発明
特許第6636997号の請求項1?4の特許に係る発明(以下「本件発明1?4」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
車速が0となった後、加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分と、車両姿勢角度に関する基準値とに基づいて車両用灯具の光軸を調節する制御をイグニッションオンが継続している状態において実行することを含み、
前記安定したときは、前記加速度センサの検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったときであることを特徴とする車両用灯具の制御装置。
【請求項2】
車速が0となった後、加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分に基づいて車両用灯具の光軸を調節する制御をイグニッションオンが継続している状態において実行することを含み、
前記安定したときは、前記加速度センサの検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったときであることを特徴とする車両用灯具の制御装置。
【請求項3】
車速が0となった後、加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分と、車両姿勢角度に関する基準値とに基づいて車両用灯具の光軸を調節する制御をイグニッションオンが継続している状態において実行することを含み、
前記安定したときは、車速が0となってから所定時間が経過したときであることを特徴とする車両用灯具の制御装置。
【請求項4】
車速が0となった後、加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分に基づいて車両用灯具の光軸を調節する制御をイグニッションオンが継続している状態において実行することを含み、
前記安定したときは、車速が0となってから所定時間が経過したときであることを特徴とする車両用灯具の制御装置。」

第3 申立理由の概要
申立人は、証拠として、次の甲第1?4号証を提出し、以下の申立理由により、本件発明1?4に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
甲第1号証 特開2001-341578号公報
甲第2号証 特開2008-94143号公報
甲第3号証 特開2009-126268号公報
甲第4号証 特開2000-85459号公報

1 申立理由1 特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
(1)理由イ
本件発明1?4は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(例えば、甲第3号証、甲第4号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
(2)理由ロ
本件発明1?4は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項及び周知技術(例えば、甲第3号証、甲第4号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

2 申立理由2 特許法第17条の2第3項(同法第113条第1号)
平成31年3月7日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

3 申立理由3 特許法第36条第4項第1号(同法第113条第4号)
発明の詳細な説明の記載は、本件発明1?4について当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

4 申立理由4 特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)
本件発明1?4は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

第4 甲各号証の記載事項等
1 甲第1号証の記載事項、認定事項及び甲第1号証に記載された発明
1-1 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審にて付与した。以下同様。)。
(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両に配設される前照灯による照射の光軸方向を自動的に調整する車両用前照灯光軸方向自動調整装置に関するものである。」

(1b)「【0017】図1において、車両に配設され周知のABS(Antilock Brake System)で用いられている車輪速センサ11等による車速(車輪速)V、また、車体に配設された傾斜計12にて計測された重力方向に対する傾斜角である絶対傾斜角θa、その他のセンサ(図示略)から各種センサ信号等が車両に搭載されたECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)20に入力されている。なお、ECU20、車輪速センサ11及び傾斜計12は便宜上、車両の外部に図示されている。」

(1c)「【0019】そして、ECU20内のCPU21によって、後述するように、車輪速センサ11からの車速V信号、傾斜計12からの絶対傾斜角θaに基づき制御角θactが算出され、車両の左右のヘッドライト(前照灯)30側のアクチュエータ35に入力され、左右のヘッドライト30の光軸方向が自動調整される。」

(1d)「【0023】一般に、車両のサスペンションのばね定数は常用域では線形であるため、加速度と停車中からのピッチ角変化とには比例関係があることが知られている。したがって、図3に示すように、平地であれば、加速度のみによる推定ピッチ角θpeは、次式(1)にて求める
ことができる。ここで、αは車速Vの微分(dV/dt)演算による加速度、Kはばね定数、θp0は停車中のピッチ角である。
【0024】
【数1】
θpe=α・K+θp0 ・・・(1)」

(1e)「【0034】次に、本発明の実施の形態の一実施例にかかる車両用前照灯光軸方向自動調整装置で使用されているECU20内のCPU21による平地(発進加速)→坂道(上り・下り:一定速)→坂道(下り途中で減速停止ののち停車中に乗員変化)に対応する各種制御量等の遷移状態を示す図4のタイムチャートを参照し、ヘッドライト30の光軸方向を自動調整するアクチュエータ35を駆動するための制御角θactの算出について説明する。」

(1f)「【0043】停車中に絶対傾斜角θaに変化があったときには、この絶対傾斜角の変化分Δθaが乗員変化分であるとして、図4に実線にて示すように、次式(7)にて推定ピッチ角θpeに補正が加えられる。
【0044】
【数7】
θpe=α・K+(θp0+Δθa) ・・・(7)
【0045】これにより、推定路面傾斜角θReが変化せず、次式(8)にて制御角の変化分Δθactが得られ、ヘッドライト30の光軸方向が正常に自動調整される。
【0046】
【数8】
Δθact=-(Δθa-ΔθRe)=-Δθa ・・・(8)
【0047】ところで、図4に示す、IG-OFF(イグニッションスイッチ-オフ)の時点でECU20が作動状態にない場合には、停車中に乗員変化が行われても、絶対傾斜角の変化分Δθaが検出できず、上述のような補正を行うことができない。即ち、ECU20が絶対傾斜角の変化分Δθaを停車中の乗員変化と認識することができないため、路面傾斜角が分からなくなってしまう。このため、IG-OFF時点でも、ECU20が作動状態にあるよう直接、バッテリ電源(図示略)に接続するか、ECU20内に図示しないEEPROM(Electrical Erasable Programmable ROM)等の不揮発性メモリを搭載し、IG-OFF直前の絶対傾斜角θa0を記憶させ、次回のIG-ON(イグニッションスイッチ-オン)時点における絶対傾斜角θaとの差分から次式(9)にて絶対傾斜角の変化分Δθaを求め、この絶対傾斜角の変化分Δθaを停車中の乗員変化として推定ピッチ角θpeに上述と同様な補正を加えるようにする。
【0048】
【数9】
Δθa=θa-θa0 ・・・(9)
【0049】これにより、推定路面傾斜角θReが変化せず、上式(8)にて制御角の変化分Δθactが停車中の乗員変化時点よりのちのIG-ON時点で得られ、ヘッドライト30の光軸方向が正常に自動調整される。」

(1g)甲第1号証には、以下の図が示されている。
【図1】


【図4】


1-2 甲第1号証の認定事項
ア 甲第1号証の段落【0047】?【0049】には、「・・・IG-OFF(イグニッションスイッチ-オフ)の時点でECU20が作動状態にない場合には、停車中に乗員変化が行われても、絶対傾斜角の変化分Δθaが検出できず、上述のような補正を行うことができない。・・・このため、IG-OFF時点でも、ECU20が作動状態にあるよう直接、バッテリ電源(図示略)に接続するか、ECU20内に図示しないEEPROM(Electrical Erasable Programmable ROM)等の不揮発性メモリを搭載し、IG-OFF直前の絶対傾斜角θa0を記憶させ、次回のIG-ON(イグニッションスイッチ-オン)時点における絶対傾斜角θaとの差分から次式(9)にて絶対傾斜角の変化分Δθaを求め、この絶対傾斜角の変化分Δθaを停車中の乗員変化として推定ピッチ角θpeに上述と同様な補正を加えるようにする。・・・これにより、・・・制御角の変化分Δθactが停車中の乗員変化時点よりのちのIG-ON時点で得られ、ヘッドライト30の光軸方向が正常に自動調整される。」と記載されており、ECU20が、IG-OFFとなっても、IG-ON時点で絶対傾斜角の変化分Δθaを求めて、ヘッドライト30の光軸方向を自動調整する制御を実行することが示されていることを踏まえると、ECU20が、当該ヘッドライト30の光軸方向を自動調整する制御を、IG-ONが継続している状態において実行することは明らかである。

イ 甲第1号証には、「【0028】・・・坂道走行時では、推定路面傾斜角θReと絶対傾斜角θaとの差分から次式(3)にて制御角θactが算出される。この制御角θactに基づき、アクチュエータ35が駆動されヘッドライト30の光軸方向が自動調整される。
【0029】【数3】θact=-(θa-θRe) ・・・(3)」
と記載され、さらに、「【0025】・・・傾斜計12から得られる絶対傾斜角θaは、実際の路面に対する対地ピッチ角θpと路面自体の傾き分とを含んでいる。したがって、推定路面傾斜角θReは、次式(2)にて得ることができる。
【0026】【数2】θRe=θa-θpe ・・・(2)」
と記載されている。
上記数式(3)に上記数式(2)を代入すると、θact=-θpe(以下「数式A」という。)であることが理解できる。
さらに、甲第1号証には、「【0043】停車中に絶対傾斜角θaに変化があったときには、この絶対傾斜角の変化分Δθaが乗員変化分であるとして、図4に実線にて示すように、次式(7)にて推定ピッチ角θpeに補正が加えられる。
【0044】【数7】θpe=α・K+(θp0+Δθa) ・・・(7)」
と記載されており、上記数式Aに上記数式(7)を代入すると、停車中は車速Vの微分であるα=0であるから、θact=-θpe=-(θp0+Δθa)(以下「数式B」という。)となることが理解できる。
要するに、制御角θactは、停車中のピッチ角θp0を基準としているということができ、当該停車中のピッチ角θp0は、車両姿勢角度に関する基準値といえるから、数式Bは、絶対傾斜角の変化分Δθaと、車両姿勢角度に関する基準値とに基いてヘッドライト30の光軸方向を自動調整することといえる。

1-3 甲第1号証に記載された発明
上記1-1、1-2から、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「減速停止ののち、停車中に傾斜計12にて計測された重力方向に対する傾斜角である絶対傾斜角θaに変化があったときには、この絶対傾斜角の変化分Δθaが乗員変化分であるとして、絶対傾斜角の変化分Δθaと、車両姿勢角度に関する基準値とに基いて、ヘッドライト30の光軸方向を自動調整する制御を、IG-ONが継続している状態において実行するヘッドライト30の光軸方向を自動調整するECU20。」

2 甲第2号証の記載事項、認定事項及び甲第2号証に記載された技術的事項
2-1 甲第2号証の記載事項
(2a)「【0001】
本発明は、自動車等の車両の停止を判定する停止判定装置、及び、このような停止判定装置を備えた電動パーキングブレーキ制御装置に関するものである。」

(2b)「【0009】
本発明は、車両の停止判定を適切に行うことができる停止判定装置等を提供するという課題を、車両の前後方向加速度を検出するGセンサの出力変動をモニタし、停車時のピッチングに起因する出力変動が所定の期間にわたって閾値以下であるときに停止判定を成立させることによって解決した。」

(2c)「【0018】
統合コントローラ41aは、停止判定部41b、加速度データ処理部41c等を統括的に制御するものである。
停止判定部41bは、後述する車両の停止判定処理を行うものである。
加速度データ処理部41cは、Gセンサ43の出力を処理して停止判定部41に提供するとともに、Gセンサ43の出力に基づいて、路面の傾斜を推定するものである。」

(2d)「【0022】
車両側ユニット60は、例えば、車両のエンジンを制御するエンジン制御ユニット(ECU)、トランスミッション(変速機)を制御するトランスミッション制御ユニット(TCU)、ABS制御を含む車両操安性制御を行う操安制御ユニット、車両のその他の電装品を統括的に制御する車両統合ユニットを備え、コントローラ40と車載LANの一種であるCAN通信システムを介して通信するものであって、車速センサ61を備えている。
車速センサ61は、例えばホイールハブ部に備えられ、車輪とともに回転するトーンホイールの回転速度に応じた車速パルス信号を出力することによって、車両の走行速度(車体速度)の検出に用いられるものである。ここで、車速センサ61は、その検出下限速度が例えば約2km/h程度であり、これ以上の速度においては、車速に応じた車速パルス信号を発生する。・・・」

(2e)「【0025】
まず、以下の説明において用いられる変数等について説明する。
g_stockは、Gセンサ43の出力であるgセンサ値を、ECU41が一時的に保持したものであって、初期状態(ロジック開始時)においては0であるとともに、後に説明するように、timerのリセット時にそのときのgセンサ値によって更新される。
timerは、gセンサ値からg_stockを減じた値の絶対値が、予め設定された閾値であるg_limitよりも小さい状態の持続時間を示すタイマ値であって、ECU41に備えられたタイマ機能によってカウントアップされるものであり、初期状態においては0となっている。
判定終了フラグは、停止判定の成立有無を示すフラグであって、ECU41内に保持され、停止判定成立前においては0、成立後においては1に設定される。
【0026】
<ステップS01:判定終了フラグ判断>
ECU41は、判定終了フラグの状態を判断し、0である場合はステップS02に進み、1である場合はリターンする。
<ステップS02:車速Vso判断>
ECU41は、車速センサ61の出力に基づいて検出される現在の車速Vsoが0である場合(車速が車速センサの検出下限速度以下)はステップS03に進み、0よりも大きい場合はリターンする。」

(2f)「【0029】
<ステップS03:gセンサ値-g_stock判断>
ECU41は、gセンサ値からg_stockを減じた値が、-g_limit以下又はg_limit以上である場合は、上述したピッチングがまだ収束していないものとしてステップS06に進み、この値が、g_limitよりも小さくかつ-g_limitよりも大きい場合は、ピッチングが収束しているとして、ステップS04に進む。」

(2g)「【0033】
<ステップS11:timer値判断>
ECU41は、timer値を所定の閾値であるT1と比較し、timer≧T1の場合はステップS12に進み、その他の場合はステップS15に進む。
ここで、T1は、これよりも長時間にわたってgセンサ値からg_stockを減じた値の絶対値がg_limitよりも小さい状態を持続した場合に、ECU41の停止判定部41bが停止判定を成立させる条件となる時間である。
【0034】
<ステップS12:gセンサ値比較>
ECU41の加速度データ処理部41cは、現在のGセンサ43の出力であるgセンサ値が、所定の定数である-RECEPTよりも小さいか否かを判断し、小さい場合は車両が傾斜路に停車し、ヒルホールド機能による増し引きが必要としてステップS13に進み、その他の場合はステップS13をスキップしてステップS14に進む。」

(2h)「【0036】
<ステップS14:判定終了フラグ変更>
ECU41は、判定終了フラグを1としてリターンする。
<ステップS15:timerカウントアップ>
ECU41は、上述したタイマ値であるtimerをカウントアップしてリターンする。
【0037】
<ステップS21:timer値判断>
ECU41は、timer値を上述したT1とは異なる所定の閾値であるT2と比較し、timer≧T2の場合はステップS22に進み、その他の場合はステップS25に進む。
ここで、閾値T2は、車両が通常の停車時よりも減速度が小さい緩制動によって停車する際に、パーキングブレーキ10が早期に作動して引っかかり感がでることを防止するため、通常停車時における閾値T1よりも大きく(長時間)設定されている。」

(2i)「【0039】
<ステップS31:timer値判断>
ECU41は、timer値を上述したT1及びT2とは異なる所定の閾値であるT3と比較し、timer≧T3の場合はステップS32に進み、その他の場合はステップS35に進む。
ここで、閾値T3は、T1よりも大きく(長時間)、かつ、T2よりも小さく(短時間)設定されている。」

(2j)「【0041】
以上説明した本実施例によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)車両のピッチングに起因するGセンサ43の出力変動の収束に応じて停止を判定することによって、このようなピッチングは停車時に発生してその後短時間で減衰するから、停車後早期に確実な停止判定を行うことができる。
(2)Gセンサ43の出力であるgセンサ値から従前のgセンサ値であるg_stockを減じた差分の絶対値が、所定の期間にわたってg_limit以下である場合に停止判定を成立させることによって、簡単なロジックによって適切に停止判定を行うことができる。
(3)上述した停止判定の結果を用いてパーキングブレーキ10を駆動するアクチュエータユニット20を作動させることによって、停車前における誤作動や、停車から制動までのタイムラグが大きくなることを防止して、パーキングブレーキ10を適切に作動させることができる。
(4)Gセンサ43の出力変動が収束した後に、その出力に基づいてパーキングブレーキ10の目標制動力を設定することによって、車両のピッチングの影響を排除して路面の傾斜を正確に検出し、制動力を適切に設定することができる。
(5)車両の停車時における減速度等の状態に応じて、タイマ値(timer)の閾値T1,T2,T3を変更しているから、走行状態の違いに応じて適切なタイミングで停止判定及びパーキングブレーキ10の作動を行うことができる。」

(2k)甲第2号証には、次の図が記載されている。
【図3】


【図4】


2-2 甲第2号証の認定事項
段落【0041】の「(4)Gセンサ43の出力変動が収束した後に、その出力に基づいてパーキングブレーキ10の目標制動力を設定する」なる記載及び図3のフローチャートのS12、S22、S32において、gセンサ値と-RECEPTとを比較していることからみて、Gセンサ43の出力変動が収束したときにおける、Gセンサ43の出力を用いることが理解できる。

2-3 甲第2号証に記載された技術的事項
上記2-1、2-2から、甲第2号証には、次の技術的事項(以下「甲2技術」という。)が記載されていると認められる。
「現在の車速Vsoが0である場合、Gセンサ43の出力であるgセンサ値から従前のgセンサ値であるg_stockを減じた差分の絶対値が、所定の期間にわたってg_limit以下である場合に、そのGセンサ43の出力を用いること。」

3 甲第3号証の記載事項
(3a)「【0014】
計算装置7は、加速度センサ5および加速度算出装置6の出力を基に車体2の傾きθを計算する装置である。」

(3b)「【0030】
以上説明したように、本発明の車両の光軸方向調整装置は、車体2の傾きを検出し、その傾きに応じて、車体2の光軸β軸を動かすものである。例えば、車体2の前方が上を向く方向にθ傾いた場合には、前照灯4の光軸β軸を車体2が傾いていないときの角度に対して下向きにθ傾ければよい。このとき、前照灯4の光軸β軸を傾けるための方法としては、モータの動力を利用する方法が考えられる。」

4 甲第4号証の記載事項
(4a)「【請求項1】ヘッドライト光の光軸を車体の上下方向に傾動調整する光軸調整手段を有するヘッドライトの光軸自動調整装置において、
車体の前後方向の傾斜角度を検出する重力センサと、
この重力センサの計測値に基づいて上記車体の傾斜状態を算出し、この上記車体の傾斜状態により上記光軸調整手段を制御し、上記ヘッドライト光の照射方向を適正な状態に保持する制御手段とを備えたことを特徴とするヘッドライトの光軸自動調整装置。」

(4b)「【0018】22は重力センサ11からの検出値に基づいて光軸調整装置14を制御し、ヘッドライト15の照射方向を適正な状態に保持する制御回路(制御手段)、23は制御回路22に電圧を印加するとともに、イグニッションスイッチ24がOFFされると、重力センサ11および車速センサ12の検出結果をリセットする電源回路リセット回路である。
【0019】図2はこの発明の実施の形態1によるヘッドライトの光軸自動調整装置の重力センサにおける基本動作を示す説明図である。重力センサ11は車体Sが水平である場合には1Gに相当する電圧EBを出力しているが、図2に示すように、車体Sの後部座席に多くの荷物が積載された場合には車両の後部が沈み車体Sがθだけ傾いた場合、θ分の傾きに応じた出力電圧が重力センサ11から得られる。」

第5 当審の判断
1 申立理由1 特許法第29条第2項(同法第113条第2号)について
1-1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「減速停止ののち」は、停止時に車速が0となることは明らかであるから、本件発明1の「車速が0となった後」に相当する。

イ 甲1発明の「傾斜計12にて計測された重力方向に対する傾斜角である絶対傾斜角θa」と、本件発明1の「加速度センサの検出値」とは、甲1発明の「傾斜計12」はセンサということができ、また、本件特許の明細書の段落【0041】に「言い換えれば、加速度センサ316の検出値からは、水平面に対する車両の傾斜角度を導出することができる。」と記載されていることを踏まえると、両者は「センサの傾斜角度に関する検出値」という点で共通する。

ウ 上記イを踏まえると、甲1発明の「停車中に傾斜計12にて計測された重力方向に対する傾斜角である絶対傾斜角θaに変化があったときには、この絶対傾斜角の変化分Δθ」と、本件発明1の「加速度センサの検出値が安定したときにおける加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分」とは、「車両停止中のセンサの傾斜角度に関する検出値の変化分」という点で共通する。

エ 甲1発明の「ヘッドライト30」は、本件発明1の「車両用灯具」に相当し、以下同様に、「光軸方向を自動調整する制御」は、「光軸を調節する制御」に、「IG-ONが継続している状態」は、「イグニッションオンが継続している状態」に、「実行する」は、「実行することを含み」に、それぞれ相当する。

オ 上記ア?エを総合すると、甲1発明の「減速停止ののち、停車中に傾斜計12にて計測された重力方向に対する傾斜角である絶対傾斜角θaに変化があったときには、この絶対傾斜角の変化分Δθaが乗員変化分であるとして、制御角の変化分Δθactと、車両姿勢角度に関する基準値とに基いて、ヘッドライト30の光軸方向を自動調整する制御を、IG-ONが継続している状態において実行する」ことと、本件発明1の「車速が0となった後、加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分と、車両姿勢角度に関する基準値とに基づいて車両用灯具の光軸を調節する制御をイグニッションオンが継続している状態において実行することを含」むこととは、「車速が0となった後、車両停止中のセンサの傾斜角度に関する検出値の変化分と、車両姿勢角度に関する基準値とに基づいて車両用灯具の光軸を調節する制御をイグニッションオンが継続している状態において実行することを含」む点で共通する。

カ 甲1発明の「ヘッドライト30の光軸方向を自動調整するECU20」は、甲第1号証の段落【0017】に「ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)20」と記載されているから、上記エも踏まえると、本件発明1の「車両用灯具の制御装置」に相当する。

したがって、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
「車速が0となった後、車両停止中のセンサの傾斜角度に関する検出値の変化分と、車両姿勢角度に関する基準値とに基づいて車両用灯具の光軸を調節する制御をイグニッションオンが継続している状態において実行することを含む、車両用灯具の制御装置。」

<相違点>
車両用灯具の光軸を調節する制御を実行するに際し、本件発明1は、「加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分」に基いて実行するものであって、「前記安定したときは、前記加速度センサの検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったときである」のに対し、甲1発明は、「停車中に傾斜計12にて計測された重力方向に対する傾斜角である絶対傾斜角θaに変化があったときには、この絶対傾斜角の変化分Δθaが乗員変化分であるとして、絶対傾斜角の変化分Δθa」に基いて実行するものである点。

(2)判断
(2-1)上記相違点について
ア 上記第4の3?4に示したとおり、例えば、甲第3号証には、加速度センサ5を用いて車体2の傾きを検出し、その傾きに応じて、車体2の光軸β軸を動かす車両の光軸方向調整装置が記載され、甲第4号証にも、重力センサの計測値に基づいて車体の傾斜状態を算出し、この上記車体の傾斜状態により光軸調整手段を制御するヘッドライトの光軸自動調整装置が記載されているように、車両用灯具の制御装置の技術分野において、加速度センサの検出値を用いて、車両の傾斜角度を検出することは、本願出願前の周知技術である。
よって、甲1発明において、車両の傾斜角度を検出する手段として、傾斜計12に代えて、上記周知の加速度センサを用いることは、当業者にとって容易といえる。

イ また、甲第1号証の段落【0047】には、「・・・このため、IG-OFF時点でも、ECU20が作動状態にあるよう直接、バッテリ電源(図示略)に接続するか、ECU20内に図示しないEEPROM(Electrical Erasable Programmable ROM)等の不揮発性メモリを搭載し、IG-OFF直前の絶対傾斜角θa0を記憶させ、次回のIG-ON(イグニッションスイッチ-オン)時点における絶対傾斜角θaとの差分から次式(9)にて絶対傾斜角の変化分Δθaを求め、この絶対傾斜角の変化分Δθaを停車中の乗員変化として推定ピッチ角θpeに上述と同様な補正を加えるようにする。」と記載されており、ある時点における絶対傾斜角θaと、その後の絶対傾斜角θaとの差分に基いて、絶対傾斜角の変化分Δθaを求めることが記載されている。

ウ 上記イの記載は、IG-OFFとなる場合の絶対傾斜角の変化分Δθaの求め方に係るものであるが、絶対傾斜角の変化分Δθaの求め方として、IG-ON、OFFを問わず、共通の求め方を用いることが自然であり、甲1発明において、IG-ONが継続している状態において絶対傾斜角の変化分Δθaを求める際にも、IG-OFFとなる場合と同様に、ある時点における絶対傾斜角θaと、その後の絶対傾斜角θaとの差分に基いて、絶対傾斜角の変化分Δθaを求めて、ヘッドライト30の光軸方向を自動調整すること、すなわち、上記相違点に係る本件発明1における「前記加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分」に基いて、車両用灯具の光軸を調節する制御を実行することも、当業者が適宜選択し得た設計的事項といえる。

エ しかしながら、上記相違点に係る本件発明1の「加速度センサの検出値が安定したときにおける加速度センサの検出値」を用いる点及び「前記安定したときは、前記加速度センサの検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったときである」点については、甲第1号証ないし甲第4号証のいずれにも記載されておらず、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

オ 補足すると、甲第2号証には、上記第4の2-3に甲2技術として示したとおり、「現在の車速Vsoが0である場合、Gセンサ43の出力であるgセンサ値から従前のgセンサ値であるg_stockを減じた差分の絶対値が、所定の期間にわたってg_limit以下である場合に、そのGセンサ43の出力を用いること。」が記載されている。

カ 甲2技術の「現在の車速Vsoが0である場合」は、本件発明1の「車速が0となった後」に相当し、以下同様に、「Gセンサ43」は、「加速度センサ」に、「出力」は、「検出値」に、「g_limit以下である場合」は、「所定量以下となったとき」に、それぞれ相当する。また、甲2技術の「Gセンサ43の出力であるgセンサ値から従前のgセンサ値であるg_stockを減じた差分の絶対値」は、加速度センサの検出値の変化量といえる。そうすると、甲2技術は、「車速が0となった後、加速度センサの変化量が、所定期間にわたって所定量以下となったときに、その加速度センサの検出値を用いること。」といえる。

キ しかしながら、甲2技術の「車速が0となった後、加速度センサの変化量が、所定期間にわたって所定量以下となったとき」は、加速度センサの変化量が、所定量以下となった状態が、所定期間に渡って継続したときであって、上記相違点に係る本件発明1の「加速度センサの検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったとき」よりも、所定期間に渡って継続する分だけ遅れたときといえる。

ク また、甲第3号証及び甲第4号証には、上記アの事項が記載されているが、上記相違点に係る本件発明1の「加速度センサの検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったとき」の「加速度センサの検出値」を用いることは、記載も示唆もされていない。

ケ したがって、甲1発明に、甲2技術及び甲第3?4号証に記載された事項を適用しても、上記相違点に係る本件発明1の構成には至らない。

コ 小括
以上のとおり、上記相違点に係る本件発明1の構成とすることは、甲1発明、甲2技術及び甲第3?4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、本件発明1は、甲1発明、甲2技術及び甲3?4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3)申立人の主張について
(3-1)申立理由1の理由イについて
申立人は、上記相違点に関し、「(4-2-1)甲第1号証」において、「このことは、【0047】記載の『IG-OFF直前』の状況においては、車速Vが0となった後に所定時間が経過し、傾斜計の検出値が安定していることを意味している。以上のことから、【0047】に記載の『IG-OFF直前』における傾斜計12の検出値である絶対傾斜角θa0とは、『車速が0となった後、傾斜計の検出値が安定したときにおける傾斜計の検出値』ということができ、・・・また、上記のとおり、車両のピッチングが収束した状態であることは、傾斜計の検出値が安定していることを意味するところ、このように傾斜計の値が安定している状態は、傾斜計の検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となることと同義である。」旨主張している。
しかしながら、甲第1号証の段落【0047】記載のIG-OFF直前における傾斜計12の検出値は、車速が0となった後に、傾斜計12の検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったときから、さらにIG-OFF直前に至るまでの時間が経過したときの検出値ということはできるものの、本件発明1では「安定したときは、加速度センサの検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったとき」と特定されており、上記甲第1号証記載の「さらにIG-OFF直前に至るまでの時間が経過したとき」を含むものと、同義であるということはできない。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、上記(1)に示した相違点で相違し、申立人主張のとおり、加速度センサを用いて車両用灯具の光軸制御を行うことが周知技術であるとしても(例えば、甲第3?4号証)、上記相違点に係るその余の構成は、甲第1号証に記載されていないから、本件発明1は、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、上記申立人の主張には理由がない。

(3-2)申立理由1の理由ロについて
申立人は、「(4-3-1-2)理由ロ」において、「甲2記載事項における『Gセンサ43の出力であるgセンサ値から従前のgセンサ値であるg_stockを減じた差分の絶対値が、所定の期間にわたってg_limit以下である場合』において、gセンサ値からg_stock値を減じた差分の絶対値を当該所定の期間で除すと、gセンサの検出値の単位時間当たりの変化量は所定量g_limit以下となる。したがって、構成要件Bの文言は甲2記載事項の文言を言い換えたものに過ぎないので、甲2記載事項は、構成要件Bに相当する。」旨主張している。
しかしながら、上記「(2-1)上記相違点について」のキでも述べたとおり、甲2技術は、加速度センサの変化量が、所定量以下となった状態が、所定期間に渡って継続したときであって、本件発明1の「加速度センサの検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったとき」よりも、所定期間に渡って継続する分だけ遅れたときといえるから、文言を言い換えたものということはできない。
そうすると、甲1発明に、甲2記載事項及び周知技術(例えば、甲第3?4号証)を適用しても、本件発明1には至らないから、本件発明1は、甲1発明、甲2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、上記申立人の主張には理由がない。

1-2 本件発明2について
(1)対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「減速停止ののち」は、停止時に車速が0となることは明らかであるから、本件発明2の「車速が0となった後」に相当する。

イ 甲1発明の「傾斜計12にて計測された重力方向に対する傾斜角である絶対傾斜角θa」と、本件発明2の「加速度センサの検出値」とは、甲1発明の「傾斜計12」はセンサということができ、また、本件特許の明細書の段落【0041】に「言い換えれば、加速度センサ316の検出値からは、水平面に対する車両の傾斜角度を導出することができる。」と記載されていることを踏まえると、両者は「センサの傾斜角度に関する検出値」という点で共通する。

ウ 上記イを踏まえると、甲1発明の「停車中に傾斜計12にて計測された重力方向に対する傾斜角である絶対傾斜角θaに変化があったときには、この絶対傾斜角の変化分Δθ」と、本件発明2の「加速度センサの検出値が安定したときにおける加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分」とは、「車両停止中のセンサの傾斜角度に関する検出値の変化分」という点で共通する。

エ 甲1発明の「ヘッドライト30」は、本件発明2の「車両用灯具」に相当し、以下同様に、「光軸方向を自動調整する制御」は、「光軸を調節する制御」に、「IG-ONが継続している状態」は、「イグニッションオンが継続している状態」に、「実行する」は、「実行することを含み」に、それぞれ相当する。

オ 上記ア?エを総合すると、甲1発明の「減速停止ののち、停車中に傾斜計12にて計測された重力方向に対する傾斜角である絶対傾斜角θaに変化があったときには、この絶対傾斜角の変化分Δθaが乗員変化分であるとして、制御角の変化分Δθactと、車両姿勢角度に関する基準値とに基いて、ヘッドライト30の光軸方向を自動調整する制御を、IG-ONが継続している状態において実行する」ことと、本件発明2の「車速が0となった後、加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分に基づいて車両用灯具の光軸を調節する制御をイグニッションオンが継続している状態において実行することを含」むこととは、「車速が0となった後、車両停止中のセンサの傾斜角度に関する検出値の変化分に基づいて車両用灯具の光軸を調節する制御をイグニッションオンが継続している状態において実行することを含」む点で共通する。

カ 甲1発明の「ヘッドライト30の光軸方向を自走調整するECU20」は、甲第1号証の段落【0017】に「ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)20」と記載されているから、上記エも踏まえると、本件発明2の「車両用灯具の制御装置」に相当する。

したがって、本件発明2と甲1発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
「車速が0となった後、車両停止中のセンサの傾斜角度に関する検出値の変化分に基づいて車両用灯具の光軸を調節する制御をイグニッションオンが継続している状態において実行することを含む、車両用灯具の制御装置。」

<相違点>
車両用灯具の光軸を調節する制御を実行するに際し、本件発明2は、「加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分」に基いて実行するものであって、「前記安定したときは、前記加速度センサの検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったときである」のに対し、甲1発明は、「停車中に傾斜計12にて計測された重力方向に対する傾斜角である絶対傾斜角θaに変化があったときには、この絶対傾斜角の変化分Δθaが乗員変化分であるとして、絶対傾斜角の変化分Δθa」に基いて実行するものである点。

(2)判断
(2-1)上記相違点について
ア 上記第4の3?4に示したとおり、例えば、甲第3号証には、加速度センサ5を用いて車体2の傾きを検出し、その傾きに応じて、車体2の光軸β軸を動かす車両の光軸方向調整装置が記載され、甲第4号証にも、重力センサの計測値に基づいて車体の傾斜状態を算出し、この上記車体の傾斜状態により光軸調整手段を制御するヘッドライトの光軸自動調整装置が記載されているように、車両用灯具の制御装置の技術分野において、加速度センサの検出値を用いて、車両の傾斜角度を検出することは、本願出願前の周知技術である。
よって、甲1発明において、車両の傾斜角度を検出する手段として、傾斜計12に代えて、上記周知の加速度センサを用いることは、当業者にとって容易といえる。

イ また、甲第1号証の段落【0047】には、「・・・このため、IG-OFF時点でも、ECU20が作動状態にあるよう直接、バッテリ電源(図示略)に接続するか、ECU20内に図示しないEEPROM(Electrical Erasable Programmable ROM)等の不揮発性メモリを搭載し、IG-OFF直前の絶対傾斜角θa0を記憶させ、次回のIG-ON(イグニッションスイッチ-オン)時点における絶対傾斜角θaとの差分から次式(9)にて絶対傾斜角の変化分Δθaを求め、この絶対傾斜角の変化分Δθaを停車中の乗員変化として推定ピッチ角θpeに上述と同様な補正を加えるようにする。」と記載されており、ある時点における絶対傾斜角θaと、その後の絶対傾斜角θaとの差分に基いて、絶対傾斜角の変化分Δθaを求めることが記載されている。

ウ 上記イの記載は、IG-OFFとなる場合の絶対傾斜角の変化分Δθaの求め方に係るものであるが、絶対傾斜角の変化分Δθaの求め方として、IG-ON、OFFを問わず、共通の求め方を用いることが自然であり、甲1発明において、IG-ONが継続している状態において絶対傾斜角の変化分Δθaを求める際にも、IG-OFFとなる場合と同様に、ある時点における絶対傾斜角θaと、その後の絶対傾斜角θaとの差分に基いて、絶対傾斜角の変化分Δθaを求めて、ヘッドライト30の光軸方向を自動調整すること、すなわち、上記相違点に係る本件発明2における「前記加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分」に基いて、車両用灯具の光軸を調節する制御を実行することも、当業者が適宜選択し得た設計的事項といえる。

エ しかしながら、上記相違点に係る本件発明2の「加速度センサの検出値が安定したときにおける加速度センサの検出値」を用いる点及び「前記安定したときは、前記加速度センサの検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったときである」点については、甲第1号証ないし甲第4号証のいずれにも記載されておらず、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

オ 補足すると、甲第2号証には、上記第4の2-3に甲2技術として示したとおり、「現在の車速Vsoが0である場合、Gセンサ43の出力であるgセンサ値から従前のgセンサ値であるg_stockを減じた差分の絶対値が、所定の期間にわたってg_limit以下である場合に、そのGセンサ43の出力を用いること。」が記載されている。

カ 甲2技術の「現在の車速Vsoが0である場合」は、本件発明2の「車速が0となった後」に相当し、以下同様に、「Gセンサ43」は、「加速度センサ」に、「出力」は、「検出値」に、「g_limit以下である場合」は、「所定量以下となったとき」に、それぞれ相当する。また、甲2技術の「Gセンサ43の出力であるgセンサ値から従前のgセンサ値であるg_stockを減じた差分の絶対値」は、加速度センサの検出値の変化量といえる。そうすると、甲2技術は、「車速が0となった後、加速度センサの変化量が、所定期間にわたって所定量以下となったときに、その加速度センサの検出値を用いること。」といえる。

キ しかしながら、甲2技術の「車速が0となった後、加速度センサの変化量が、所定期間にわたって所定量以下となったとき」は、加速度センサの変化量が、所定量以下となった状態が、所定期間に渡って継続したときであって、上記相違点に係る本件発明2の「加速度センサの検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったとき」よりも、所定期間に渡って継続する分だけ遅れたときといえる。

ク また、甲第3号証及び甲第4号証には、上記アの事項が記載されているが、上記相違点に係る本件発明2の「加速度センサの検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったとき」の「加速度センサの検出値」を用いることは、記載も示唆もされていない。

ケ したがって、甲1発明に、甲2技術及び甲第3?4号証に記載された事項を適用しても、上記相違点に係る本件発明2の構成には至らない。

コ 小括
以上のとおり、上記相違点に係る本件発明2の構成とすることは、甲1発明、甲2技術及び甲第3?4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、本件発明2は、甲1発明、甲2技術及び甲3?4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)申立人の主張について
(3-1)申立理由1の理由イについて
申立人は、上記相違点に関し、「(4-2-1)甲第1号証」において、「このことは、【0047】記載の『IG-OFF直前』の状況においては、車速Vが0となった後に所定時間が経過し、傾斜計の検出値が安定していることを意味している。以上のことから、【0047】に記載の『IG-OFF直前』における傾斜計12の検出値である絶対傾斜角θa0とは、『車速が0となった後、傾斜計の検出値が安定したときにおける傾斜計の検出値』ということができ、・・・また、上記のとおり、車両のピッチングが収束した状態であることは、傾斜計の検出値が安定していることを意味するところ、このように傾斜計の値が安定している状態は、傾斜計の検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となることと同義である。」旨主張している。
しかしながら、甲第1号証の段落【0047】記載のIG-OFF直前における傾斜計12の検出値は、車速が0となった後に、傾斜計12の検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったときから、さらにIG-OFF直前に至るまでの時間が経過したときの検出値ということはできるものの、本件発明2では「安定したときは、加速度センサの検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったとき」と特定されており、上記甲第1号証記載の「さらにIG-OFF直前に至るまでの時間が経過したとき」を含むものと、同義であるということはできない。
そうすると、本件発明2と甲1発明とは、上記(1)に示した相違点で相違し、申立人主張のとおり、加速度センサを用いて車両用灯具の光軸制御を行うことが周知技術であるとしても(例えば、甲第3?4号証)、上記相違点に係るその余の構成は、甲第1号証に記載されていないから、本件発明2は、甲1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、上記申立人の主張には理由がない。

(3-2)申立理由1の理由ロについて
申立人は、「(4-3-2-2)理由ロ」において、「甲2記載事項における『Gセンサ43の出力であるgセンサ値から従前のgセンサ値であるg_stockを減じた差分の絶対値が、所定の期間にわたってg_limit以下である場合』において、gセンサ値からg_stock値を減じた差分の絶対値を当該所定の期間で除すと、gセンサの検出値の単位時間当たりの変化量は所定量g_limit以下となる。したがって、構成要件Eの文言は甲2記載事項の文言を言い換えたものに過ぎないので、甲2記載事項は、構成要件Eに相当する。」旨主張している。
しかしながら、上記「(2-1)上記相違点について」のキでも述べたとおり、甲2技術は、加速度センサの変化量が、所定量以下となった状態が、所定期間に渡って継続したときであって、本件発明2の「加速度センサの検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったとき」よりも、所定期間に渡って継続する分だけ遅れたときといえるから、文言を言い換えたものということはできない。
よって、甲1発明に、甲2記載事項及び周知技術(例えば、甲第3?4号証)を適用しても、本件発明2には至らないから、本件発明2は、甲1発明、甲2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、上記申立人の主張には理由がない。

1-3 本件発明3について
(1)対比
本件発明3と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「減速停止ののち」は、停止時に車速が0となることは明らかであるから、本件発明3の「車速が0となった後」に相当する。

イ 甲1発明の「傾斜計12にて計測された重力方向に対する傾斜角である絶対傾斜角θa」と、本件発明3の「加速度センサの検出値」とは、甲1発明の「傾斜計12」はセンサということができ、また、本件特許の明細書の段落【0041】に「言い換えれば、加速度センサ316の検出値からは、水平面に対する車両の傾斜角度を導出することができる。」と記載されていることを踏まえると、両者は「センサの傾斜角度に関する検出値」という点で共通する。

ウ 上記イを踏まえると、甲1発明の「停車中に傾斜計12にて計測された重力方向に対する傾斜角である絶対傾斜角θaに変化があったときには、この絶対傾斜角の変化分Δθ」と、本件発明3の「加速度センサの検出値が安定したときにおける加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分」とは、「車両停止中のセンサの傾斜角度に関する検出値の変化分」という点で共通する。

エ 甲1発明の「ヘッドライト30」は、本件発明3の「車両用灯具」に相当し、以下同様に、「光軸方向を自動調整する制御」は、「光軸を調節する制御」に、「IG-ONが継続している状態」は、「イグニッションオンが継続している状態」に、「実行する」は、「実行することを含み」に、それぞれ相当する。

オ 上記ア?エを総合すると、甲1発明の「減速停止ののち、停車中に傾斜計12にて計測された重力方向に対する傾斜角である絶対傾斜角θaに変化があったときには、この絶対傾斜角の変化分Δθaが乗員変化分であるとして、制御角の変化分Δθactと、車両姿勢角度に関する基準値とに基いて、ヘッドライト30の光軸方向を自動調整する制御を、IG-ONが継続している状態において実行する」ことと、本件発明3の「車速が0となった後、加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分と、車両姿勢角度に関する基準値とに基づいて車両用灯具の光軸を調節する制御をイグニッションオンが継続している状態において実行することを含」むこととは、「車速が0となった後、車両停止中のセンサの傾斜角度に関する検出値の変化分と、車両姿勢角度に関する基準値とに基づいて車両用灯具の光軸を調節する制御をイグニッションオンが継続している状態において実行することを含」む点で共通する。

カ 甲1発明の「ヘッドライト30の光軸方向を自走調整するECU20」は、甲第1号証の段落【0017】に「ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)20」と記載されているから、上記エも踏まえると、本件発明3の「車両用灯具の制御装置」に相当する。

したがって、本件発明3と甲1発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
「車速が0となった後、車両停止中のセンサの傾斜角度に関する検出値の変化分と、車両姿勢角度に関する基準値とに基づいて車両用灯具の光軸を調節する制御をイグニッションオンが継続している状態において実行することを含む、車両用灯具の制御装置。」

<相違点>
車両用灯具の光軸を調節する制御を実行するに際し、本件発明3は、「加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分」に基いて実行するものであって、「前記安定したときは、車速が0となってから所定時間が経過したときである」のに対し、甲1発明は、「停車中に傾斜計12にて計測された重力方向に対する傾斜角である絶対傾斜角θaに変化があったときには、この絶対傾斜角の変化分Δθaが乗員変化分であるとして、絶対傾斜角の変化分Δθa」に基いて実行するものである点。

(2)判断
(2-1)上記相違点について
ア 上記第4の3?4に示したとおり、例えば、甲第3号証には、加速度センサ5を用いて車体2の傾きを検出し、その傾きに応じて、車体2の光軸β軸を動かす車両の光軸方向調整装置が記載され、甲第4号証にも、重力センサの計測値に基づいて車体の傾斜状態を算出し、この上記車体の傾斜状態により光軸調整手段を制御するヘッドライトの光軸自動調整装置が記載されているように、車両用灯具の制御装置の技術分野において、加速度センサの検出値を用いて、車両の傾斜角度を検出することは、本願出願前の周知技術である。
よって、甲1発明において、車両の傾斜角度を検出する手段として、傾斜計12に代えて、上記周知の加速度センサを用いることは、当業者にとって容易といえる。

イ また、甲第1号証の段落【0047】には、「・・・このため、IG-OFF時点でも、ECU20が作動状態にあるよう直接、バッテリ電源(図示略)に接続するか、ECU20内に図示しないEEPROM(Electrical Erasable Programmable ROM)等の不揮発性メモリを搭載し、IG-OFF直前の絶対傾斜角θa0を記憶させ、次回のIG-ON(イグニッションスイッチ-オン)時点における絶対傾斜角θaとの差分から次式(9)にて絶対傾斜角の変化分Δθaを求め、この絶対傾斜角の変化分Δθaを停車中の乗員変化として推定ピッチ角θpeに上述と同様な補正を加えるようにする。」と記載されており、ある時点における絶対傾斜角θaと、その後の絶対傾斜角θaとの差分に基いて、絶対傾斜角の変化分Δθaを求めることが記載されている。

ウ 上記イの記載は、IG-OFFとなる場合の絶対傾斜角の変化分Δθaの求め方に係るものであるが、絶対傾斜角の変化分Δθaの求め方として、IG-ON、OFFを問わず、共通の求め方を用いることが自然であり、甲1発明において、IG-ONが継続している状態において絶対傾斜角の変化分Δθaを求める際にも、IG-OFFとなる場合と同様に、ある時点における絶対傾斜角θaと、その後の絶対傾斜角θaとの差分に基いて、絶対傾斜角の変化分Δθaを求めて、ヘッドライト30の光軸方向を自動調整すること、すなわち、上記相違点に係る本件発明3における「前記加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分」に基いて、車両用灯具の光軸を調節する制御を実行することも、当業者が適宜選択し得た設計的事項といえる。

エ しかしながら、上記相違点に係る本件発明3の「加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値」を用いる点及び「前記安定したときは、車速が0となってから所定時間が経過したときである」点については、甲第1号証ないし甲第4号証のいずれにも記載されておらず、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

オ 補足すると、甲第2号証には、上記第4の2-3に甲2技術として示したとおり、「現在の車速Vsoが0である場合、Gセンサ43の出力であるgセンサ値から従前のgセンサ値であるg_stockを減じた差分の絶対値が、所定の期間にわたってg_limit以下である場合に、そのGセンサ43の出力を用いること。」が記載されている。

カ 甲2技術の「現在の車速Vsoが0である場合」は、本件発明3の「車速が0となった後」に相当し、以下同様に、「Gセンサ43」は、「加速度センサ」に、「出力」は、「検出値」に、それぞれ相当する。また、甲2技術の「g_limit以下である場合」は、所定量以下となったときということができ、「Gセンサ43の出力であるgセンサ値から従前のgセンサ値であるg_stockを減じた差分の絶対値」は、加速度センサの検出値の変化量ということができる。そうすると、甲2技術は、「車速が0となった後、加速度センサの変化量が、所定期間にわたって所定量以下となったときに、その加速度センサの検出値を用いること。」といえる。

キ しかしながら、甲2技術の「車速が0となった後、加速度センサの変化量が、所定期間にわたって所定量以下となったとき」は、車速が0となった後、さらに加速度センサの変化量が所定量以下となるまでの時間が経過してから、その状態が所定期間継続したときということができ、要するに、加速度センサの変化量が所定量以下になってから、所定時間が経過したときといえるから、上記相違点に係る本件発明3の「車速が0となってから所定時間が経過したとき」とは、そのタイミングが異なるものである。

ク また、甲第3号証及び甲第4号証には、上記アの事項が記載されているが、上記相違点に係る本件発明3の「車速が0となってから所定時間が経過したとき」の「加速度センサの検出値」を用いることは、記載も示唆もされていない。

ケ したがって、甲1発明に、甲2技術及び甲第3?4号証に記載された事項を適用しても、上記相違点に係る本件発明3の構成には至らない。

コ 小括
以上のとおり、上記相違点に係る本件発明3の構成とすることは、甲1発明、甲2技術及び甲第3?4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、本件発明3は、甲1発明、甲2技術及び甲3?4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)申立人の主張について
(3-1)申立理由1の理由イについて
申立人は、上記相違点に関し、「(4-2-1)甲第1号証」において、「このことは、【0047】記載の『IG-OFF直前』の状況においては、車速Vが0となった後に所定時間が経過し、傾斜計の検出値が安定していることを意味している。以上のことから、【0047】に記載の『IG-OFF直前』における傾斜計12の検出値である絶対傾斜角θa0とは、『車速が0となった後、傾斜計の検出値が安定したときにおける傾斜計の検出値』ということができ、また、『安定したとき』とは、『車速が0となった後に所定時間が経過したとき』と言うことができる。」旨主張している。
しかしながら、甲第1号証の段落【0047】記載のIG-OFF直前における傾斜計12の検出値は、車速が0となった後に、傾斜計12の検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったときから、さらにIG-OFF直前に至るまでの時間が経過したときの検出値ということはできるものの、本件発明3では「安定したときは、車速が0となってから所定時間が経過したとき」と特定されており、「所定時間」は前もって決められた時間といえるから、上記甲第1号証記載の「さらにIG-OFF直前に至るまでの時間が経過したとき」を含むような、不特定の時間が経過したときとは、そのタイミングが異なるものである。
そうすると、本件発明3と甲1発明とは、上記(1)に示した相違点で相違し、申立人主張のとおり、加速度センサを用いて車両用灯具の光軸制御を行うことが周知技術であるとしても(例えば、甲第3?4号証)、上記相違点に係るその余の構成は、甲第1号証に記載されていないから、本件発明3は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、上記申立人の主張には理由がない。

(3-2)申立理由1の理由ロについて
申立人は、「(4-3-3-2)理由ロ」において、「甲第2号証には、車速が0である場合において、所定の期間(T1からT3の何れか)が経過したときに停止判定を成立させる技術が記載されている。ここでいう『停止』の状態とは、甲第2号証の【0009】に述べられているとおり、車両の『停車時のピッチングに起因する出力変動が所定の期間にわたって閾値以下である』ような車両の状態を指しており、これは、センサの値も『安定』した状態であることを意味する。してみれば、甲第2号証には、『安定したときは、車速が0となってから所定時間が経過したときである』という事項が記載されているといえる。」旨主張している。
しかしながら、上記「(2-1)上記相違点について」のキでも述べたとおり、甲2技術は、車速が0となった後、さらに加速度センサの変化量が所定量以下となるまでの時間が経過してから、その状態が所定期間継続したときということができ、要するに、加速度センサの変化量が所定量以下になってから、所定時間が経過したときといえるから、本件発明3の「車速が0となってから所定時間が経過したとき」とは、そのタイミングが異なるものである。
よって、甲1発明に、甲2記載事項及び周知技術(例えば、甲第3?4号証)を適用しても、本件発明3には至らないから、本件発明3は、甲1発明、甲2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、上記申立人の主張には理由がない。

1-4 本件発明4について
(1)対比
ア 甲1発明の「減速停止ののち」は、停止時に車速が0となることは明らかであるから、本件発明4の「車速が0となった後」に相当する。

イ 甲1発明の「傾斜計12にて計測された重力方向に対する傾斜角である絶対傾斜角θa」と、本件発明4の「加速度センサの検出値」とは、甲1発明の「傾斜計12」はセンサということができ、また、本件特許の明細書の段落【0041】に「言い換えれば、加速度センサ316の検出値からは、水平面に対する車両の傾斜角度を導出することができる。」と記載されていることを踏まえると、両者は「センサの傾斜角度に関する検出値」という点で共通する。

ウ 上記イを踏まえると、甲1発明の「停車中に傾斜計12にて計測された重力方向に対する傾斜角である絶対傾斜角θaに変化があったときには、この絶対傾斜角の変化分Δθ」と、本件発明4の「加速度センサの検出値が安定したときにおける加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分」とは、「車両停止中のセンサの傾斜角度に関する検出値の変化分」という点で共通する。

エ 甲1発明の「ヘッドライト30」は、本件発明4の「車両用灯具」に相当し、以下同様に、「光軸方向を自動調整する制御」は、「光軸を調節する制御」に、「IG-ONが継続している状態」は、「イグニッションオンが継続している状態」に、「実行する」は、「実行することを含み」に、それぞれ相当する。

オ 上記ア?エを総合すると、甲1発明の「減速停止ののち、停車中に傾斜計12にて計測された重力方向に対する傾斜角である絶対傾斜角θaに変化があったときには、この絶対傾斜角の変化分Δθaが乗員変化分であるとして、制御角の変化分Δθactと、車両姿勢角度に関する基準値とに基いて、ヘッドライト30の光軸方向を自動調整する制御を、IG-ONが継続している状態において実行する」ことと、本件発明4の「車速が0となった後、加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分に基づいて車両用灯具の光軸を調節する制御をイグニッションオンが継続している状態において実行することを含」むこととは、「車速が0となった後、車両停止中のセンサの傾斜角度に関する検出値の変化分に基づいて車両用灯具の光軸を調節する制御をイグニッションオンが継続している状態において実行することを含」む点で共通する。

カ 甲1発明の「ヘッドライト30の光軸方向を自走調整するECU20」は、甲第1号証の段落【0017】に「ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)20」と記載されているから、上記エも踏まえると、本件発明4の「車両用灯具の制御装置」に相当する。

したがって、本件発明4と甲1発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
「車速が0となった後、車両停止中のセンサの傾斜角度に関する検出値の変化分に基づいて車両用灯具の光軸を調節する制御をイグニッションオンが継続している状態において実行することを含む、車両用灯具の制御装置。」

<相違点>
車両用灯具の光軸を調節する制御を実行するに際し、本件発明4は、「加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分」に基いて実行するものであって、「前記安定したときは、車速が0となってから所定時間が経過したときである」のに対し、甲1発明は、「停車中に傾斜計12にて計測された重力方向に対する傾斜角である絶対傾斜角θaに変化があったときには、この絶対傾斜角の変化分Δθaが乗員変化分であるとして、絶対傾斜角の変化分Δθa」に基いて実行するものである点。

(2)判断
(2-1)上記相違点について
ア 上記第4の3?4に示したとおり、例えば、甲第3号証には、加速度センサ5を用いて車体2の傾きを検出し、その傾きに応じて、車体2の光軸β軸を動かす車両の光軸方向調整装置が記載され、甲第4号証にも、重力センサの計測値に基づいて車体の傾斜状態を算出し、この上記車体の傾斜状態により光軸調整手段を制御するヘッドライトの光軸自動調整装置が記載されているように、車両用灯具の制御装置の技術分野において、加速度センサの検出値を用いて、車両の傾斜角度を検出することは、本願出願前の周知技術である。
よって、甲1発明において、車両の傾斜角度を検出する手段として、傾斜計12に代えて、上記周知の加速度センサを用いることは、当業者にとって容易といえる。

イ また、甲第1号証の段落【0047】には、「・・・このため、IG-OFF時点でも、ECU20が作動状態にあるよう直接、バッテリ電源(図示略)に接続するか、ECU20内に図示しないEEPROM(Electrical Erasable Programmable ROM)等の不揮発性メモリを搭載し、IG-OFF直前の絶対傾斜角θa0を記憶させ、次回のIG-ON(イグニッションスイッチ-オン)時点における絶対傾斜角θaとの差分から次式(9)にて絶対傾斜角の変化分Δθaを求め、この絶対傾斜角の変化分Δθaを停車中の乗員変化として推定ピッチ角θpeに上述と同様な補正を加えるようにする。」と記載されており、ある時点における絶対傾斜角θaと、その後の絶対傾斜角θaとの差分に基いて、絶対傾斜角の変化分Δθaを求めることが記載されている。

ウ 上記イの記載は、IG-OFFとなる場合の絶対傾斜角の変化分Δθaの求め方に係るものであるが、絶対傾斜角の変化分Δθaの求め方として、IG-ON、OFFを問わず、共通の求め方を用いることが自然であり、甲1発明において、IG-ONが継続している状態において絶対傾斜角の変化分Δθaを求める際にも、IG-OFFとなる場合と同様に、ある時点における絶対傾斜角θaと、その後の絶対傾斜角θaとの差分に基いて、絶対傾斜角の変化分Δθaを求めて、ヘッドライト30の光軸方向を自動調整すること、すなわち、上記相違点に係る本件発明4における「前記加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分」に基いて、車両用灯具の光軸を調節する制御を実行することも、当業者が適宜選択し得た設計的事項といえる。

エ しかしながら、上記相違点に係る本件発明4の「加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値」を用いる点及び「前記安定したときは、車速が0となってから所定時間が経過したときである」点については、甲第1号証ないし甲第4号証のいずれにも記載されておらず、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

オ 補足すると、甲第2号証には、上記第4の2-3に甲2技術として示したとおり、「現在の車速Vsoが0である場合、Gセンサ43の出力であるgセンサ値から従前のgセンサ値であるg_stockを減じた差分の絶対値が、所定の期間にわたってg_limit以下である場合に、そのGセンサ43の出力を用いること。」が記載されている。

カ 甲2技術の「現在の車速Vsoが0である場合」は、本件発明4の「車速が0となった後」に相当し、以下同様に、「Gセンサ43」は、「加速度センサ」に、「出力」は、「検出値」に、それぞれ相当する。また、甲2技術の「g_limit以下である場合」は、所定量以下となったときということができ、「Gセンサ43の出力であるgセンサ値から従前のgセンサ値であるg_stockを減じた差分の絶対値」は、加速度センサの検出値の変化量ということができる。そうすると、甲2技術は、「車速が0となった後、加速度センサの変化量が、所定期間にわたって所定量以下となったときに、その加速度センサの検出値を用いること。」といえる。

キ しかしながら、甲2技術の「車速が0となった後、加速度センサの変化量が、所定期間にわたって所定量以下となったとき」は、車速が0となった後、さらに加速度センサの変化量が所定量以下となるまでの時間が経過してから、その状態が所定期間継続したときということができ、要するに、加速度センサの変化量が所定量以下になってから、所定時間が経過したときといえるから、本件発明4の「車速が0となってから所定時間が経過したとき」とは、そのタイミングが異なるものである。

ク また、甲第3号証及び甲第4号証には、上記アの事項が記載されているが、上記相違点に係る本件発明4の「車速が0となってから所定時間が経過したとき」の「加速度センサの検出値」を用いることは、記載も示唆もされていない。

ケ したがって、甲1発明に、甲2技術及び甲第3?4号証に記載された事項を適用しても、上記相違点に係る本件発明4の構成には至らない。

コ 小括
以上のとおり、上記相違点に係る本件発明4の構成とすることは、甲1発明、甲2技術及び甲第3?4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、本件発明4は、甲1発明、甲2技術及び甲3?4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)申立人の主張について
(3-1)申立理由1の理由イについて
申立人は、上記相違点に関し、「(4-2-1)甲第1号証」において、「このことは、【0047】記載の『IG-OFF直前』の状況においては、車速Vが0となった後に所定時間が経過し、傾斜計の検出値が安定していることを意味している。以上のことから、【0047】に記載の『IG-OFF直前』における傾斜計12の検出値である絶対傾斜角θa0とは、『車速が0となった後、傾斜計の検出値が安定したときにおける傾斜計の検出値』ということができ、また、『安定したとき』とは、『車速が0となった後に所定時間が経過したとき』と言うことができる。」旨主張している。
しかしながら、甲第1号証の段落【0047】記載のIG-OFF直前における傾斜計12の検出値は、車速が0となった後に、傾斜計12の検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったときから、さらにIG-OFF直前に至るまでの時間が経過したときの検出値ということはできるものの、本件発明4では「安定したときは、車速が0となってから所定時間が経過したとき」と特定されており、「所定時間」は前もって決められた時間といえるから、上記甲第1号証記載の「さらにIG-OFF直前に至るまでの時間が経過したとき」を含むような、不特定の時間が経過したときとは、そのタイミングが異なるものである。
そうすると、本件発明4と甲1発明とは、上記(1)に示した相違点で相違し、申立人主張のとおり、加速度センサを用いて車両用灯具の光軸制御を行うことが周知技術であるとしても(例えば、甲第3?4号証)、上記相違点に係るその余の構成は、甲第1号証に記載されていないから、本件発明4は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、上記申立人の主張には理由がない。

(3-2)申立理由1の理由ロについて
申立人は、「(4-3-4-2)理由ロ」において、「甲第2号証には、車速が0である場合において、所定の期間(T1からT3の何れか)が経過したときに停止判定を成立させる技術が記載されている。ここでいう『停止』の状態とは、甲第2号証の【0009】に述べられているとおり、車両の『停車時のピッチングに起因する出力変動が所定の期間にわたって閾値以下である』ような車両の状態を指しており、これは、センサの値も『安定』した状態であることを意味する。してみれば、甲第2号証には、『安定したときは、車速が0となってから所定時間が経過したときである』という事項が記載されているといえる。」旨主張している。
しかしながら、上記「(2-1)上記相違点について」のキでも述べたとおり、甲2技術は、車速が0となった後、さらに加速度センサの変化量が所定量以下となるまでの時間が経過してから、その状態が所定期間継続したときということができ、要するに、加速度センサの変化量が所定量以下になってから、所定時間が経過したときといえるから、本件発明4の「車速が0となってから所定時間が経過したとき」とは、そのタイミングが異なるものである。
よって、甲1発明に、甲2記載事項及び周知技術(例えば、甲第3?4号証)を適用しても、本件発明4には至らないから、本件発明4は、甲1発明、甲2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、上記申立人の主張には理由がない。

2 申立理由2 特許法第17条の2第3項(同法第113条第1号)について
(1)平成31年3月7日にされた手続補正について
平成31年3月7日にされた手続補正により、特許請求の範囲の請求項1及び請求項2の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
車速が0となった後、加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分と、車両姿勢角度に関する基準値とに基づいて車両用灯具の光軸を調節する制御をイグニッションオンが継続している状態において実行することを特徴とする車両用灯具の制御装置。
【請求項2】
車速が0となった後、加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分に基づいて車両用灯具の光軸を調節する制御をイグニッションオンが継続している状態において実行することを特徴とする車両用灯具の制御装置。」

(2)申立理由の概要
概略、申立人は、申立書において次の旨を主張する。
ア 上記(1)の手続補正に係る「車両用灯具の光軸を調節する制御をイグニッションオンが継続している状態において実行」という文言、本件発明が光軸制御を高精度に行う技術を提供することを課題としていること、及び補正の根拠とされた段落【0054】における「このフローは、・・・イグニッションがオンされた場合に、・・・所定のタイミングで繰り返し実行され」との記載に鑑みると、当該制御は1回だけ行われただけでは足りず、イグニッションオンが継続している状態において何回か行われる必要があると解される。

イ 請求項の記載によれば、「加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値」を用いてする光軸制御は、イグニッションオンが継続している状態において何回か行われることが必要であると解されるところ、当初明細書等によれば「車両停止時の合計角度θ」は1度しか用いられていない。そして請求項に記載されたような光軸制御をイグニッションオンが継続している状態において実行することについて、当初明細書の他の段落や図面にも明示的な記載がなされておらず、また、当初明細書等の記載から自明な事項でもない。
したがって、平成31年3月7日になされた補正は、当初明細書等に記載された事項との関係で新たな技術的事項を導入する補正であり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(3)検討
上記(2)の申立人の主張につき検討する。
ア 上記(1)の請求項1には、「加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分と、車両姿勢角度に関する基準値とに基づいて車両用灯具の光軸を調節する制御」(以下「制御A」という。)を「イグニッションオンが継続している状態において実行する」ことは記載されているが、当該制御Aを、「イグニッションオンが継続している状態において」何回も実行することや、「加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値」を何度も用いることは記載されていない。

イ 同様に、上記(1)の請求項2には、「加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値とその後の車両停止中の前記加速度センサの検出値との差分に基づいて車両用灯具の光軸を調節する制御」(以下「制御B」という。)を「イグニッションオンが継続している状態において実行する」ことは記載されているが、当該制御Bを、「イグニッションオンが継続している状態において」何回も実行することや、「加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値」を何度も用いることは記載されていない。

ウ また、本件特許の願書に最初に添付された明細書(以下「当初明細書」という。)の段落【0054】には、「このフローは、・・・イグニッションがオンにされた場合に・・・所定のタイミングで繰り返し実行され」と記載されており、「車両用灯具システムのオートレベリング制御フローチャート」が繰り返し実行されることは示されているが、当該フローチャートが繰り返し実行される中で、請求項1に係る制御A又は請求項2に係る制御Bが、何回か実行されることは記載されていない。

エ 上記ア?ウを踏まえると、上記(1)の請求項1又は2の記載をもって、当該制御A又はBをイグニッションオンが継続している状態において何回か実行することが特定されているということはできない。

オ そして、本件特許の当初明細書の段落【0054】には、「図3は、実施形態1に係る車両用灯具システムのオートレベリング制御フローチャートである。・・・このフローは、たとえばライトスイッチ304によってオートレベリング制御モードの実行指示がなされている状態において、イグニッションがオンにされた場合に照射制御部228R(制御部228R2)により所定のタイミングで繰り返し実行され、イグニッションがオフにされた場合に終了する。」と記載されており、上記記載は、「車両用灯具システムのオートレベリング制御」が、イグニッションがオンからオフされるまでの間、すなわち、イグニッションオンが継続している状態において実行されることを示しているといえる。

カ さらに、本件特許の当初明細書の段落【0102】には、「車両停止中、制御部228R2は、車両停止中の合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの変化として車両姿勢角度θvの基準値を更新するとともに、更新後の車両姿勢角度θvの基準値を用いて光軸位置の調節を指示する制御信号を生成する。例えば、制御部228R2は、車両停止中に現在の合計角度θとメモリ228R4に記録されている合計角度θの基準値との差分Δθ2を算出する。このとき用いられる合計角度θの基準値は、例えば、車両300の停止後最初の差分Δθ2の算出では差分Δθ1の算出後に更新された基準値、すなわち車両停止時の合計角度θであり、2回目以降の場合は前回の差分Δθ2の算出後に更新された基準値である。そして、制御部228R2は、メモリ228R4に記録されている車両姿勢角度θvの基準値に、得られた差分Δθ2を算入して新たな車両姿勢角度θvの基準値を算出し(新θv基準値=θv基準値+Δθ2)、これをメモリ228R4に記録する。」と記載されている。
上記記載は、車両の停止後の最初の差分Δθ2の算出では、「現在の合計角度θ」(その後の車両停止中の前記加速度センサの検出値)と「メモリ228R4に記録されている合計角度θの基準値」(車速が0となった後、加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値)との差分Δθ2を算出することを示しているといえる。

キ 上記オ、カを踏まえると、請求項1の制御A及び請求項2の制御Bを実行することは、上記カで述べたとおり当初明細書に記載されており、また、両制御を「イグニッションオンが継続している状態において実行することを含」むことも、上記オで述べたとおり当初明細書に記載されているといえるから、上記(1)の手続補正に係る「車両用灯具の光軸を調節する制御をイグニッションオンが継続している状態において実行」という事項は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。

ク したがって、平成31年3月7日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

3 申立理由3 特許法第36条第4項第1号(同法第113条第4号)について
(1)申立理由の概要
概略、申立人は、申立書において次の旨を主張する。
ア 本件発明1?4はいずれも、上記2(2)「申立理由 イ」で述べた「加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値」を用いてする光軸制御をイグニッションオンが継続している状態において実行することを含むが、発明の詳細な説明では、このような光軸制御の実行をどのようにして実施するのか、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。

(2)検討
上記(1)に示す申立人の主張につき検討する。
上記2(3)「検討 ア、イ」で述べたのと同様に、本件発明1及び3は上記制御Aを、本件発明2及び4は上記制御Bを、「イグニッションオンが継続している状態において実行することを含」むものであって、制御A又は制御Bを何回も実行することや、「加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値」を何度も用いることを特定するものではない。
そして、上記2(3)「検討 オ、カ」で述べたのと同様に、本件特許の明細書の段落【0054】から、車両用灯具システムのオートレベリング制御が、イグニッションオンが継続している状態において実行されることが理解でき、段落【0102】から、車両の停止後の最初の差分Δθ2の算出では、「現在の合計角度θ」(その後の車両停止中の前記加速度センサの検出値)と「メモリ228R4に記録されている合計角度θの基準値」(車速が0となった後、加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値)との差分Δθ2を算出することが理解できるから、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1?4について当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものといえる。

4 申立理由4 特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)について
(1)申立理由の概要
概略、申立人は、申立書において次の旨を主張する。
ア 本件発明1?4はいずれも、上記2(2)「申立理由 イ」で述べた「加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値」を用いてする光軸制御をイグニッションオンが継続している状態において実行することを含む。
本件発明1?4が解決しようとする課題は、「水平面に対する車両の傾斜角度を取得して車両用灯具の光軸位置を調節するオートレベリング制御をより高精度に実施することができる技術を提供すること」であるとされている。
しかしながら、車両停止時の合計角度θを2回目以降の差分Δθ2の算出においても用いることで前記課題が解決できることは、発明の詳細な説明において記載も示唆もされていないので当業者の認識可能な範囲を超えている。すなわち、「加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値」(車両停止時の合計角度θ)を用いてする光軸制御をイグニッションオンが継続している状態において実行することは、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を越えるものである。
したがって、本件発明1?4は発明の詳細な説明に記載したものでない。

(2)検討
上記(1)に示す申立人の主張につき検討する。
上記2(3)「検討 ア、イ」で述べたのと同様に、本件発明1及び3は上記制御Aを、本件発明2及び4は上記制御Bを、「イグニッションオンが継続している状態において実行することを含」むものであって、制御A又は制御Bを何回も実行することや、「加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値」を何度も用いることを特定するものではない。
そして、上記2(3)「検討 オ、カ」で述べたのと同様に、本件特許の明細書の段落【0054】には、車両用灯具システムのオートレベリング制御が、イグニッションオンが継続している状態において実行されることが示されており、段落【0102】には、車両の停止後の最初の差分Δθ2の算出では、「現在の合計角度θ」(その後の車両停止中の前記加速度センサの検出値)と「メモリ228R4に記録されている合計角度θの基準値」(車速が0となった後、加速度センサの検出値が安定したときにおける前記加速度センサの検出値)との差分Δθ2を算出することが示されている。
さらに、本件特許の明細書の段落【0047】の、「加速度センサ316の検出値が安定したときとするのは、車両300が停止してから車両姿勢が安定するまでに若干の時間を要し、車両姿勢が安定していない状態では正確な合計角度θを検出することが困難なためである。」なる記載を踏まえると、本件発明1及び3の制御A又は本件発明2及び4の制御Bを実行することにより、車両300の停止後最初の差分Δθ2の算出において、正確な車両停止時の合計角度θに基く制御が可能となるから、本件特許の明細書段落【0006】の「水平面に対する車両の傾斜角度を取得して車両用灯具の光軸位置を調節するオートレベリング制御をより高精度に実施することができる技術を提供すること」という本件発明1?4の課題にも整合していることは明らかである。
したがって、本件発明1?4は、発明の詳細な説明に記載したものである。

第6 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由1?4及び証拠によっては、請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-11-17 
出願番号 特願2017-154975(P2017-154975)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (B60Q)
P 1 651・ 536- Y (B60Q)
P 1 651・ 121- Y (B60Q)
P 1 651・ 55- Y (B60Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 下原 浩嗣  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 佐々木 一浩
須賀 仁美
登録日 2019-12-27 
登録番号 特許第6636997号(P6636997)
権利者 株式会社小糸製作所
発明の名称 車両用灯具の制御装置  
代理人 三木 友由  
代理人 森下 賢樹  
代理人 村田 雄祐  
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