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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F23G
管理番号 1368151
異議申立番号 異議2020-700568  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-08-07 
確定日 2020-11-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第6644993号発明「ごみクレーン制御システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6644993号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 
理由
1 手続の経緯
特許第6644993号の請求項1?9に係る特許についての出願は、令和1年9月6日に出願され、令和2年1月14日にその特許権の設定登録がされ、令和2年2月12日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和2年8月7日に特許異議申立人山田宏基(以下、「特許異議申立人」という。)により請求項1?9に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
特許第6644993号の請求項1?9の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
ごみピットにおいて仮想的に配置された格子の各マスに貯留されたごみをごみクレーンで撹拌し、焼却炉に接続したごみホッパへ投入するごみクレーン制御システムであって、
前記ごみクレーンの位置を検出し、位置情報を送信する位置センサと、
前記位置情報を受信し、前記位置情報に基づいて前記ごみクレーンの動作を制御する制御装置とを有し、
前記制御装置は、前記各マスごとに貯留されたごみの撹拌度及び高さを演算する演算部と、前記各マスの中から少なくとも2つの始点候補及び終点候補をそれぞれ選択する選択部とを備え、
前記選択部は、前記各マスのうち最も高さが高いマスが唯一存在する場合はこれを前記始点候補として選択し、前記最も高さが高いマスが複数存在する場合は、前記複数のマスのうち撹拌度が最も低いマスを前記始点候補として選択し、前記始点候補を除き、前記各マスのうち最も高さが高いマスが唯一存在する場合はこれを前記始点候補とは別の始点候補として選択し、前記最も高さが高いマスが複数存在する場合は、前記複数のマスのうち撹拌度が最も低いマスを前記別の始点候補として選択し、
前記ごみクレーンは、複数の前記始点候補のうち前記ごみクレーンの現在の位置に最も近い始点候補から複数の前記終点候補のいずれかに向かって移動され、移動撹拌または移動散乱撹拌が行われること
を特徴とするごみクレーン制御システム。
【請求項2】
前記選択部は、前記各マスのうち最も高さが低いマスが唯一存在する場合はこれを前記終点候補として選択し、前記最も高さが低いマスが複数存在する場合は、前記複数のマスのうち撹拌度が最も低いマスを前記終点候補として選択し、前記終点候補を除き、前記各マスのうち最も高さが低いマスが唯一存在する場合はこれを前記終点候補とは別の終点候補として選択し、前記最も高さが低いマスが複数存在する場合は、前記複数のマスのうち撹拌度が最も低いマスを前記別の終点候補として選択し、
前記演算部は、複数の前記終点候補の各々の高さとそれぞれの前記終点候補に隣接する前記各マスの高さに基づき、各々の前記終点候補近傍の高さの平均値をそれぞれ演算し、
前記ごみクレーンは、前記最も近い始点候補から、複数の前記平均値のうち最も低い平均値に対応する前記終点候補に向かって移動され、前記移動撹拌または前記移動散乱撹拌が行われること
を特徴とする請求項1に記載のごみクレーン制御システム。
【請求項3】
前記演算部は、前記撹拌度を整数化し、且つ、前記高さの範囲を所定範囲ごとにそれぞれ一定の高さにまとめ且つ記号化して撹拌パラメータとし、
前記選択部は、前記各マスのうち前記撹拌パラメータにおいて最も高さが高いマスが唯一存在する場合はこれを投入候補として選択し、前記撹拌パラメータにおいて最も高さが高いマスが複数存在する場合は、前記複数のマスのうち前記撹拌度が最も高いマスを前記投入候補として選択し、前記投入候補を除き、前記各マスのうち前記撹拌パラメータにおいて最も高さが高いマスが唯一存在する場合はこれを前記投入候補とは別の投入候補として選択し、前記撹拌パラメータにおいて最も高さが高いマスが複数存在する場合は、前記複数のマスのうち前記撹拌度が最も高いマスを前記別の投入候補として選択し、
前記ごみクレーンは、複数の前記投入候補のうち、前記ごみクレーンに最も近い前記投入候補または前記ごみホッパに最も近い前記投入候補の前記ごみを、前記ごみホッパに投入すること
を特徴とする請求項2に記載のごみクレーン制御システム。
【請求項4】
投入扉開信号を送信する開閉センサを備えた投入扉をさらに有し、
前記ごみホッパは、前記ごみホッパ内に貯留するごみが所定位置より低下した場合に投入要求信号を送信するレベル計を備え、
前記ごみピットは、前記投入扉を介して前記ごみを受け入れるごみ受入エリア、前記受け入れエリアに貯留された前記ごみを前記ごみクレーンで移動させ且つ撹拌するごみ撹拌エリア、及び前記撹拌がなされた前記ごみを貯留するごみ投入エリアを備え、
前記選択部は、前記始点候補及び前記終点候補を前記ごみ撹拌エリアで選択し、前記投入候補を前記ごみ投入エリアで選択し、
前記制御装置が前記投入要求信号を受信した場合、前記ごみクレーンは、複数の前記投入候補のうち、前記最も近い投入候補に移動され、前記投入候補のごみを掴んで前記ごみホッパへ投入し、前記投入扉開信号を受信した場合、前記ごみクレーンは、前記ごみ受入エリア内の前記各マスのうち、前記投入扉に近接するマスに貯留されたごみを掴み、前記最も低い平均値に対応する前記終点候補に向かって移動され、前記移動撹拌または前記移動散乱撹拌が行われること
を特徴とする請求項3に記載のごみクレーン制御システム。
【請求項5】
前記各マスごとの前記撹拌パラメータ、前記ごみの高さ、及び前記ごみクレーンの位置を表示する表示部をさらに有し、
前記表示部は、複数の前記始点候補及び複数の前記終点候補を互いに異なる色で表示すること
を特徴とする請求項4に記載のごみクレーン制御システム。
【請求項6】
前記表示部は、複数の前記投入候補を、前記始点候補及び前記終点候補と異なる色で表示すること
を特徴とする請求項5に記載のごみクレーン制御システム。
【請求項7】
前記ごみピットに配置され、音波、電波、またはレーザ光により前記ごみピットに貯留されたごみの高さを検出し、前記検出した高さの情報を前記制御装置へ送信するごみ高さ検出装置をさらに有し、
前記演算部は、前記高さの情報または前記位置情報に基づき、前記各マスの各々の高さを演算すること
を特徴とする請求項6に記載のごみクレーン制御システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記各マスごとに滞留時間を計測する滞留時間計測部をさらに備え、
前記ごみクレーンは、掴んだごみの重量を検出し、重量情報を送信する重量センサを備え、
前記演算部は、前記重量情報に基づき前記掴んだごみのかさ比重を演算するとともに、
前記滞留時間に基づく評価点、前記かさ比重に基づく評価点、及び前記ごみクレーンによる垂直撹拌、前記移動撹拌、および前記移動散乱撹拌ごとにそれぞれ設定される評価点に基づき、前記撹拌度を演算すること
を特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のごみクレーン制御システム。
【請求項9】
前記制御装置を操作する操作盤をさらに有し、
オペレータに操作された前記操作盤により、前記ごみクレーンが手動運転で制御されることを特徴とする請求項8に記載のごみクレーン制御システム。」

3 申立理由の概要
特許異議申立人は、主たる証拠として甲第1号証及び従たる証拠として甲第2号証?甲第12号証を提出し、請求項1?9に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?9に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

甲第1号証:特開2017-218316号公報
甲第2号証:特開2010-275064号公報
甲第3号証:特開2019-137551号公報
甲第4号証:特開2017-125627号公報
甲第5号証:特開2016-69170号公報
甲第6号証:特開2018-172208号公報
甲第7号証:特開2017-42706号公報
甲第8号証:特開2019-7633号公報
甲第9号証:特開2006-27783号公報
甲第10号証:特開2019-27696号公報
甲第11号証:特開昭56-28188号公報
甲第12号証:特開2007-126246号公報

4 各甲号証に記載の事項等
(1)甲第1号証
甲第1号証には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。
「【0001】
本発明は、ゴミ焼却設備に設けられたゴミピットにおけるクレーンの動作を制御するクレーン制御装置等に関する。」
「【0008】
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、クレーンに所定の作業を実行させる際のゴミ掴み位置を、ゴミの高さと撹拌度合いの双方に応じた適切な位置とすることができるクレーン制御装置等を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係るクレーン制御装置は、ゴミピット内でゴミを運搬するクレーンの動作を制御するクレーン制御装置であって、上記ゴミピット内のゴミ貯留部を複数区画に区分した各区画のゴミの高さと撹拌度合いに応じて、上記クレーンにゴミ掴み動作を含む所定の作業を実行させる際のゴミ掴み位置を何れの区画とするかを決定する位置決定部と、上記所定の作業を上記クレーンに実行させる際に、上記位置決定部が決定した区画にて上記クレーンにゴミ掴み動作を実行させるクレーン制御部と、を備えている。
【0010】
上記の構成によれば、各区画のゴミの高さのみならず、撹拌度合いに応じたゴミ掴み位置の決定がなされる。よって、クレーンに所定の作業を実行させる際のゴミ掴み位置を、各区画のゴミの高さと撹拌度合いの双方に応じた適切な位置(区画)とすることが可能になる。」
「【0031】
〔ごみ焼却設備の概要〕
図2は、ゴミピットを備えるゴミ焼却設備の概略構成を示す断面図である。図示のゴミ焼却設備は、ゴミ収集車Pが搬入するゴミを一時的に貯留するゴミピット1と、ゴミピット1内のゴミを焼却する焼却炉2とを含む。ゴミピット1と焼却炉2は、ゴミを焼却炉2に供給するためのホッパー12で接続されており、ゴミピット1内のゴミは、ホッパー12を通って焼却炉2に送り込まれ、焼却される。
【0032】
ゴミピット1の底部はゴミ貯留部11となっており、ゴミ収集車Pは、搬入用扉11aからゴミ貯留部11にゴミを落とし込み、このゴミがゴミ貯留部11に貯留される(図示のゴミG)。
【0033】
また、ゴミ貯留部11とホッパー12は、建屋13で覆われており、この建屋13の天井部分にはクレーン14が設けられている。このクレーン14は、ガーダ15、横行台車16、バケット17、ワイヤー18、および巻取機19を備えている。ガーダ15は、建屋13の対向する壁面にそれぞれ設けられたレール(同図の奥行き方向に延在)間を架け渡すように配置されており、このレールに沿って同図の奥行き方向に移動させることができるようになっている。また、横行台車16は、ガーダ15上に設けられており、ガーダ15上を同図の左右方向(ガーダ15の移動方向と直交する方向)に移動させることができるようになっている。この横行台車16には、巻取機19(例えばウインチ)が載置されており、巻取機19から延びるワイヤー18の先端にはゴミGを掴むバケット17が設けられている。このバケット17は開閉動作を行うことができる。
【0034】
このように、ガーダ15は同図の奥行き方向に移動させることができ、横行台車16は同図の左右方向に移動させることができるから、これらの移動の組合せにより、バケット17をゴミ貯留部11内の任意の位置に移動させることができる。また、巻取機19からワイヤー18を伸ばし、バケット17を降下させて、ゴミ貯留部11内のゴミGをバケット17で掴み取ることができる。そして、掴み取ったゴミGは、ガーダ15、横行台車16、バケット17、および巻取機19の動作を制御することにより、ゴミ貯留部11内の別の位置に積み替えたり、ホッパー12に投入したりすることができる。
【0035】
このようなクレーン14の動作制御は、ゴミ貯留部11内を監視できるように建屋13の側壁部13aに設けられた操作室21から手動で行うこともできるし、後述するように、クレーン制御装置により自動で行うこともできる。」
「【0038】
〔ゴミ貯留部〕
続いて、上述のゴミ貯留部11の詳細を図3に基づいて説明する。図3は、ゴミ貯留部11およびホッパー12を上方から見た様子を示す図である。図示のゴミ貯留部11は、横長の長方形状であり、その長辺の一方に3つの搬入用扉11aが位置しており、対向する長辺側に2つのホッパー12(ホッパー1とホッパー2)が位置している。図示の例では、ゴミ貯留部11内を縦5×横16の80個の区画に区分しており、搬入用扉11a側の2列の区画は搬入されるゴミの受け入れエリアとなり、ホッパー12側の3列の区画はゴミの撹拌エリアとなる。各ホッパー12は、同一の焼却炉2にゴミを供給するものであってもよいし、それぞれ異なる焼却炉2にゴミを供給するものであってもよい。つまり、本実施形態のゴミ焼却設備には、複数の焼却炉2が含まれていてもよい。」
「【0040】
〔クレーン制御装置〕
次に、上述のクレーン14を自動で動作させるクレーン制御装置について、図1に基づいて説明する。図1は、クレーン制御装置50の要部構成の一例を示すブロック図である。なお、クレーン制御装置50は、上述の操作室21内に配置してもよいし、他の場所に配置してもよい。
【0041】
クレーン制御装置50は、図示のように、クレーン制御装置50の各部を統括して制御する制御部51、クレーン制御装置50が使用する各種データを記憶する記憶部52を備えている。また、クレーン制御装置50は、クレーン制御装置50に対するユーザの入力を受け付ける入力部53、およびクレーン制御装置50が他の装置と通信するための通信部54を備えている。
【0042】
さらに、制御部51には、クレーンエージェント(エリア設定部/競合調整部)61、投入エージェント(位置決定部/投入管理部)62、受入エージェント(位置決定部/受入管理部)63、撹拌エージェント(位置決定部/撹拌管理部)64、マスエージェント(区画管理部)65、クレーン制御部66、高さ判定部67、および撹拌度合い判定部68が含まれている。そして、記憶部52には、動作スケジュール71が記憶されている。
【0043】
クレーンエージェント61は、クレーン14の動作を決定するソフトウェアエージェントである。クレーン14を複数基設けた場合、各クレーン14について1つのクレーンエージェント61を設けてもよい。詳細は後述するが、クレーンエージェント61は、ゴミ掴み動作を実行すべきゴミ掴みエリアと、ゴミ離し動作を実行すべきゴミ掴みエリアとを動作スケジュール71に従って設定する。そして、他のエージェントからの指示に応じてクレーン14の動作の詳細、すなわちクレーン14を移動させる位置とクレーン14に実行させる作業(撹拌/積み替え/投入)を決定する。さらに、このようにして決定した作業(クレーンモードとも呼ぶ)と、クレーン14の行き先(座標)をクレーン制御部66に通知する。
【0044】
投入エージェント62は、ホッパー12にゴミを投入する投入作業を管理するソフトウェアエージェントである。具体的には、投入エージェント62は、ホッパー12内のゴミの高さが所定の下限値以下となったことを通知するホッパー高さ通知装置30から、通信部54を介して上記通知を受信した場合に、ホッパー12へのゴミの投入指示があったと検出する。そして、投入エージェント62は、投入指示を検出した場合、詳細は後述するが、マスエージェント65が算出する指標値に基づいて何れの区画のゴミをホッパー12に投入するか(ゴミ掴み位置を何れの区画とするか)を決定する。なお、上記「区画」の詳細は図4に基づいて後述する。また、ホッパー高さ通知装置30はホッパー12内のゴミの高さを示す情報についても併せて通知するので、投入エージェント62は上記投入作業について、ホッパー高さ通知装置30から通知された高さに応じた緊急度(高さが低いほど高い緊急度)を設定する。
【0045】
受入エージェント63は、ゴミピット1に搬入されるゴミを受け入れるエリアである受け入れエリアから、ゴミを撹拌する撹拌エリアにゴミを積み替える積み替え作業を管理するソフトウェアエージェントである。詳細は後述するが、受入エージェント63は、マスエージェント65が算出する指標値に基づいて積み替え作業におけるゴミ掴み位置(受け入れエリア内の位置)とゴミ離し位置(撹拌エリア内の位置)を何れの区画とするかを決定する。
【0046】
撹拌エージェント64は、撹拌エリア内でゴミを掴み、掴んだゴミを同エリア内で離す作業である撹拌作業を管理するソフトウェアエージェントである。詳細は後述するが、撹拌エージェント64は、マスエージェント65が算出する指標値に基づいて撹拌作業におけるゴミ掴み位置とゴミ離し位置を何れの区画とするかを決定する。
【0047】
マスエージェント65は、ゴミ貯留部11を複数区画に区分した各区画について設けられたソフトウェアエージェントである。1つのマスエージェント65は、1つの区画を管理しており、管理する区画のゴミの高さを示す情報と、該区画のゴミの撹拌度合いを示す情報を、当該区画の状態を示す情報として保持している。また、マスエージェント65は、これらの情報を用いて、管理する区画のゴミの高さと撹拌度合いに応じた、該区画におけるゴミ掴み動作またはゴミ離し動作の必要性の高さを示す指標値を算出する。
【0048】
クレーン制御部66は、クレーンエージェント61から通知されるクレーンモード(撹拌、積み替え、または投入)の作業をクレーン14に実行させる。また、この作業におけるクレーン14の行き先(ゴミ掴み位置とゴミ離し位置)は、クレーンエージェント61からの指示に従って決定する。
【0049】
高さ判定部67は、ゴミ高さ検出装置31の検出結果からゴミ貯留部11におけるマス毎(区画毎)のゴミの高さを判定する。具体的には、本実施形態のゴミ高さ検出装置31は、ゴミ貯留部11内の画像を撮像する撮像装置であるから、高さ判定部67は、上記画像を通信部54経由で受信し、解析することにより、各区画におけるゴミの高さを判定する。なお、各区画におけるゴミの高さの判定方法はこの例に限られず、センサ等を用いて判定してもよいし、ゴミにバケット17が到達したときのワイヤー18の長さで判定してもよい。また、図1では1つの通信部54にてホッパー高さ通知装置30およびゴミ高さ検出装置31と通信する例を示しているが、異なる通信部を介して通信してもよい。
【0050】
撹拌度合い判定部68は、撹拌度合い検出装置32の検出結果からゴミ貯留部11におけるマス毎(区画毎)の撹拌度合いを判定する。具体的には、本実施形態の撹拌度合い検出装置32は、マス毎の撹拌回数を保持・更新しているので、撹拌度合い判定部68は、撹拌度合い検出装置32からマス毎のゴミの撹拌回数(ゴミ貯留部11に搬入された後の累積撹拌回数)を取得し、この回数を各マスの撹拌度合いと判定する。」
「【0053】
〔区画設定〕
次に、区画の設定例を図4に基づいて説明する。図4は、ゴミ貯留部11における区画の設定例を示す図である。図示の例では、ゴミ貯留部11内を縦5×横16の80個の区画に区分し、各区画におけるゴミの高さ、および撹拌回数を示している。区分の仕方は特に限定されないが、クレーン14の一掴みに相当する範囲を一区画とすれば、クレーン14の動作後の状態の更新などが平明になるので好ましい。」
「【0055】
このような区画を設定した場合、マスエージェント65は、区画の数と同じく80個設けられ、各マスエージェント65は、対応する区画におけるゴミの高さ、および撹拌回数を当該区画の状態を示す情報として保持する。例えば、座標(5,3)の区画は、撹拌エリアの区画であり、この区画を管理するマスエージェント65は、高さ=1400mmと、撹拌回数=4回を当該区画の状態を示す情報として保持している。なお、本実施形態では、ゴミの撹拌度合いを示す情報として撹拌回数を用いる例を説明するが、ゴミの撹拌度合いを示す情報はこの例に限られない。例えば、ゴミの細粒度や、かさ比重等をゴミの撹拌度合いを示す情報として用いてもよい。
【0056】
〔エリア設定〕
ゴミピット1のゴミ貯留部11は、複数のエリアに分けて管理されている。ここではゴミ貯留部11のエリア設定について図5に基づいて説明する。図5は、エリア設定の例を示す図である。同図の(a)の例では、上面視で長方形状のゴミ貯留部11内に、撹拌エリアと、受け入れエリアと、非撹拌エリア(×印を記載したエリア)を設定している。なお、受け入れエリアは、搬入用扉11a側に設けられたエリアであり、ゴミ収集車Pが搬入したゴミはこのエリアに投下される(図3参照)ので、このエリアは、少なくともゴミの搬入が行われる時間帯には非撹拌エリアとして扱われる。受け入れエリアと撹拌エリアとは土手等で仕切られていてもよい。」
「【0066】
撹拌エージェント64は、撹拌を実行するエリアに含まれる各区画のマスエージェント65が算出する指標値に基づき、撹拌作業において、何れの区画でクレーン14にゴミ掴み動作を実行させ、何れの区画でクレーン14にゴミ離し動作を実行させるか決定する。そして、撹拌エージェント64は、決定した各区画をクレーンエージェント61に通知する。なお、撹拌作業におけるゴミ掴み位置およびゴミ離し位置は、基本的には撹拌エリア内の区画となるが、受け入れエリアを撹拌に使用している時間帯においては受け入れエリア内の区画をゴミ掴み位置やゴミ離し位置としてもよい。」
「【0077】
具体的には、積み替え作業または撹拌作業については、ゴミ掴みエリアの各区画に対応するマスエージェント65は、当該区画においてゴミ掴み動作を行う必要性の高さを示す指標値を算出する。より詳細には、当該区画のゴミの高さをHとし撹拌回数をGとして、下記の数式(1)により、指標値F_(P)を算出する。なお、数式(1)のw_(H)は高さに対する重みであり、w_(G)は撹拌度合いに対する重みである。重みは、高さと撹拌度合いの何れを重視するかに応じて予め設定しておけばよい。つまり、高さを重視してゴミ掴み位置の区画を決定する場合にはw_(G)に対して相対的に大きい値のw_(H)を設定すればよく、撹拌度合いを重視してゴミ掴み位置の区画を決定する場合にはw_(H)に対して相対的に大きい値のw_(G)を設定すればよい。また、特定の区画がゴミ掴み位置となりやすいようにするために、w_(H)とw_(G)の少なくとも何れかを、他の区画よりも大きい値としてもよい。また逆に、特定の区画がゴミ掴み位置となり難くするために、w_(H)とw_(G)の少なくとも何れかを、他の区画よりも小さい値としてもよい。後述の数式(2)、(3)についても同様である。
F_(P)={H×w_(H)+(1/G)×w_(G)} ・・・(1)
この数式にて算出される指標値F_(P)は、高さが高い区画ほど大きい値となり、また撹拌回数が少ないほど大きい値となる。つまり、ゴミ掴みエリア内の各区画に対応するマスエージェント65は、何れもゴミ掴み動作を実行することを要求するが、上記指標値F_(P)はその要求の強さを示すものである。そして、指標値F_(P)が大きい区画を選ぶことにより、高さが高く、撹拌回数が少ない区画、すなわちゴミ掴み動作を行う必要性が高い区画をゴミ掴み位置とすることができる。
【0078】
また、ゴミ離しエリアの各区画に対応するマスエージェント65は、当該区画においてゴミ離し動作を行う必要性の高さを示す指標値を算出する。より詳細には、当該区画のゴミの高さをHとし撹拌回数をGとして、下記の数式(2)により、指標値F_(D)を算出する。数式(2)におけるw_(H)は高さに対する重みであり、w_(G)は撹拌度合いに対する重みである。なお、数式(1)と(2)の重みの値は異なっていてもよく、同じであってもよい。また、マスエージェント65毎に異なる値の重みを用いてもよいし、撹拌エリアと受け入れエリアで異なる値の重みを用いてもよい。後述の数式(3)についても同様である。
F_(D)={(1/H)×w_(H)+G×w_(G)} ・・・(2)
この数式にて算出される指標値F_(D)は、高さが低い区画ほど大きい値となり、また撹拌回数が多いほど大きい値となる。つまり、ゴミ離しエリア内の各区画に対応するマスエージェント65は、何れもゴミ離し動作を実行することを要求するが、上記指標値F_(D)はその要求の強さを示すものである。そして、指標値F_(D)が大きい区画を選ぶことにより、高さが低く、撹拌回数が多い区画、すなわちゴミ離し動作を行う必要性が高い(ゴミ離し動作を行うのに適当な)区画をゴミ掴み位置とすることができる。」
「【0103】
S16では、クレーンエージェント61は、クレーン制御部66にクレーンモード(投入)と行き先(ゴミの掴み位置)を通知して、ホッパー12へのゴミの投入を行わせる。そして、クレーン制御部66がクレーン14を動作させた後、少なくともこの動作に関連するマスエージェント65は、保持する状態、すなわちゴミの高さと撹拌回数を更新する(S17)。状態の更新は、図8のS6と同様にして行うことができる。なお、ホッパー12にゴミを投入する際には、撹拌や積み替えでは行うことのない、ゴミのかさの調整等を行うので、撹拌や積み替えとは異なるモデルにて状態を更新してもよい。
【0104】
〔変形例〕
ゴミ掴み位置やゴミ離し位置は、上述の指標値に加えて、クレーン14の位置(より詳細にはバケット17の位置)についても考慮して決定してもよい。これにより、クレーン14の移動距離を抑えて、クレーン14の動作にかかる電力消費量を抑えつつ、適切なゴミ掴み位置やゴミ離し位置を決定することができる。
【0105】
具体的には、撹拌作業のゴミ掴み位置とゴミ離し位置を決定する場合、指標値が所定値以上の区画のうち、この撹拌作業を実行する直前のクレーンの位置から最も近い区画をゴミ掴み位置と決定してもよい。そして、指標値が所定値以上の区画のうち、決定したゴミ掴み位置から最も近い区画をゴミ離し位置と決定してもよい。積み替え作業のゴミ掴み位置とゴミ離し位置を決定する場合も同様である。」

上記記載事項より、甲第1号証には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
[引用発明]
「ゴミピット1のゴミ貯留部11内を複数の区画に区分し、各区画に貯留されたゴミを攪拌作業し、焼却炉2に供給するホッパー12へ投入する、クレーン14の動作を制御するクレーン制御装置50を備えたゴミピット1であって、
クレーン制御装置50は、攪拌度合いを検出する攪拌度合い検出装置32の検出結果からゴミ貯留部11における区画毎の攪拌度合いを判定する攪拌度合い判定部68と、
ゴミ高さ検出装置31の検出結果からゴミ貯留部11における区画毎のゴミの高さHを判定する高さ判定部67と、
ゴミ貯留部11における各区画毎のゴミの高さHを示す情報と、ゴミの攪拌度合いを示す情報を保持するマスエージェント65であって、予め設定されたゴミ掴みエリアの各区画に対応するマスエージェント65は、当該区画においてゴミ掴み動作を行う必要性の高さを示す指標値F_(P)を、
F_(P)={H×w_(H)+(1/G)×w_(G)} ・・・(1)
によって算出し、
予め設定されたゴミ離しエリアの各区画に対応するマスエージェント65は、当該区画においてゴミ離し動作を行う必要性の高さを示す指標値F_(D)を、
F_(D)={(1/H)×w_(H)+G×w_(G)} ・・・(2)
によって算出するものであるマスエージェント65と(ここで、Hは各区画のゴミの高さ、Gは各区画の撹拌回数、w_(H)は高さに対する重み、w_(G)は撹拌度合いに対する重みである。)、
マスエージェント65が算出する指標値に基づき、攪拌作業において、何れの区画でクレーン14にゴミ掴み動作を実行させ、何れの区画でゴミ離し動作を実行させるかを決定する攪拌エージェント64と、
攪拌エージェント64の通知に従ってクレーン14に攪拌作業を実行させることを決定するクレーンエージェント61と、
を備え、
クレーンエージェント61は、マスエージェント65が算出する指標値が所定以上の区画のうち、攪拌作業を実行する直前のクレーンの位置から最も近い区画をゴミ掴み位置と決定し、
指標値が所定以上の区画のうち、決定したゴミ掴み位置から最も近い区画をゴミ離し位置と決定する
クレーン制御装置50を備えたゴミピット1。」

(2)甲第2号証
甲第2号証には、次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、ごみ処理プラントのピットに貯蔵されたごみを攪拌する操業に関して、ごみの攪拌度合いを評価するごみ攪拌評価方法及びごみ攪拌評価プログラム、並びにごみ攪拌評価装置に関する。」
「【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ごみの攪拌度合いを定量化してオペレータに提示することができ、さらには、定量化したごみの攪拌度合いに基づいてクレーンの自動制御を行うことができるごみ攪拌評価方法及びごみ攪拌評価プログラム、並びに、ごみ攪拌評価装置を提供するものである。」
「【0032】
ガイダンス出力・クレーン制御部16は、ピット内の全ての場所について攪拌回数演算・記憶部14で演算されたピット内に堆積されるごみの各層の攪拌回数から計算された評価値に基づいてバケットを移動させるピット内の特定の場所(バケット移動位置)を選択し、クレーン制御指示(バケット移動位置に対するバケットの開閉制御指示)を、クレーン操作オペレータに対するガイダンスとしてディスプレイに出力したり、クレーンを制御する装置であるクレーンコントローラに出力したりするものである。ここで、評価値は、ピット内の全ての場所(本実施形態においては、あるメッシュで離散化した立方体格子で考える)において、攪拌回数演算・記憶部14で演算されたピット内に堆積されるごみの各層の攪拌回数に基づいて、予め設定された評価関数から計算される。評価関数は、位置情報(本実施形態では、格子の位置)とその位置おける攪拌回数から定められる。例えば、バケットでごみを掴みあげる際は、最も攪拌回数が少ない格子を選択し、且つ、攪拌回数が同じである場合はより深い位置に堆積されているものを選択し、且つ、深さが同じである場合は任意とするような評価関数を設定する。そして、クレーン制御指示は、現在のクレーンのバケット位置が選択された特定の場所(バケット移動位置)の真上になるように移動させ、バケットを開閉させることにより直下のごみをバケットで掴みあげる指示となる。そして、バケットで掴みあげたごみを投下する際には、最も攪拌回数が多い格子を選択し、且つ、攪拌回数が同じである場合は任意とする評価関数を設定する。そして、クレーン制御指示は、現在のクレーンのバケット位置が選択された特定の場所(バケット移動位置)の真上になるように移動させ、閉じたバケットを開くことにより掴みあげたごみを投下するクレーン制御指示となる。尚、評価関数は、上記例に限らず、ごみの攪拌回数を平準化するような様々な評価関数を設定することができる。」

(3)甲第3号証
甲第3号証には、次に事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、ごみピット内に堆積されたごみのごみ質を評価する情報処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
ごみ焼却施設では、運び込まれたごみをごみピット内に一旦蓄積し、蓄積したごみを順次焼却炉に送り込んで焼却している。運び込まれたごみには、燃えやすいものも、水分を多く含む燃えにくいものもあるため、安定したごみの焼却のためには、ごみピット内でごみを撹拌して均質化することが重要である。」
「【0047】
〔ごみホッパに投入するごみの決定方法〕
領域決定部119は、図2に示したようなごみ質情報142を参照して、ごみをごみホッパに投入する投入作業におけるごみ掴み位置を、何れの単位領域とするかを決定する。この際、領域決定部119は、過去に投入を決定した領域のごみ質の評価と、新たに決定する領域のごみ質の評価との差異が所定範囲内となるように、投入の対象とする単位領域を決定する。例えば、過去の投入を直前の投入とし、上記所定範囲を±1の範囲とした場合、領域決定部119は、直前の投入作業について決定したごみ掴み位置のごみ質が7であれば、ごみ質が6?8の単位領域を投入の対象とする。無論、上記所定範囲をより広く、またはより狭くしてもよいし、考慮する過去の投入を複数回の投入としてもよい。複数回の投入を考慮する場合、例えば直近の複数回で決定したごみ掴み位置のごみ質の平均値を基準として、ごみ掴み位置を決定してもよい。
【0048】
なお、過去に投入を決定した領域のごみ質の評価との差異が小さかったとしても、ごみ質が低すぎるごみを投入することは好ましくない。このため、ごみ質に下限値を設定しておき、領域決定部119は、ごみ質がこの下限値未満の単位領域は、投入作業におけるごみ掴み位置としないようにすることが好ましい。また、搬入されたごみが搬入される搬入口付近は、ごみ質が低いごみが多く、ごみピットによっては燃焼に適さないごみを選り分けてごみピット内の所定領域に集めておくことがある。領域決定部119は、このような領域は、投入作業におけるごみ掴み位置としないようにすることが好ましい。
【0049】
また、領域決定部119は、比重に基づくごみ質の評価値を条件としてごみ掴み位置を決定してもよい。つまり、領域決定部119は、比重算出部113が算出した比重が相対的に小さいごみが投下された位置に対応する単位領域を、投入の対象の単位領域と決定してもよい。さらに、領域決定部119は、投入作業におけるごみ掴み位置を決定する際に、高さ(高い位置を優先)、撹拌回数(多い位置を優先)、および現在のクレーンのバケットの所在位置からの距離(近い位置を優先)の少なくとも何れかを条件として決定してもよい。この他にも、領域決定部119は、例えば実効度に基づくごみ質の評価値(高い位置を優先)を条件として決定してもよい。また、ごみ質情報142は、各単位領域について、ごみの蓄積時間やごみ種を示す情報を含んでいてもよく、この場合、これらの情報に基づいてごみ掴み位置を決定してもよい。蓄積時間が短いごみも、蓄積時間が長すぎるごみも燃えにくいため、予め燃えやすい蓄積時間の範囲を調べておき、その範囲のごみ掴み位置を決定することが好ましい。」

5 当審の判断
(1)請求項1に係る発明について
a 対比
請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)と引用発明とを対比する。
引用発明の「ゴミ」は、本件発明1の「ごみ」に相当する。
引用発明の「ゴミピット1のゴミ貯留部11」ないし「ゴミ貯留部11」は、本件発明1の「ゴミピット」に相当する。また、引用発明の「複数の区画」は、ゴミ貯留部11において仮想的に格子状に配置されているものであり、本件発明1の「各マス」に相当する。
引用発明の「クレーン14」は、本件発明1の「クレーン」に相当する。そして、引用発明の「クレーン14」で「攪拌作業」することは、本件発明1の「クレーンで攪拌」することに、また、引用発明の「クレーン14」で「焼却炉2に供給するホッパー12へ投入する」ことは、本件発明1の「焼却炉に接続したごみホッパへ投入する」ことに相当する。
引用発明の「クレーン制御装置50を備えたゴミピット1」は、本件発明1の「ごみクレーン制御システム」に相当する。
したがって、引用発明の「ゴミピット1のゴミ貯留部11内を複数の区画に区分し、各区画に貯留されたゴミを攪拌作業し、焼却炉2に供給するホッパー12へ投入する、クレーン14の動作を制御するクレーン制御装置50を備えたゴミピット1」は、本件発明1の「ごみピットにおいて、仮想的に配置された格子の各マスに貯留されたごみをごみクレーンで攪拌し、焼却炉に接続したごみホッパへ投入するごみクレーン制御システム」に相当する。
引用発明の「クレーン制御装置50」は、クレーン14の動作を制御するものであるから、本件発明1の「前記位置情報を受信し、前記位置情報に基づいて前記ごみクレーンの動作を制御する制御装置」との対比において、「前記ごみクレーンの動作を制御する制御装置」との限度で共通する。
引用発明の「クレーン制御装置50」が「攪拌度合いを検出する攪拌度合い検出装置32の検出結果からゴミ貯留部11における区画毎の攪拌度合いを判定する攪拌度合い判定部68と、ゴミ高さ検出装置31の検出結果からゴミ貯留部11における区画毎のゴミの高さを判定する高さ判定部67と」「を備える」ことは、これによって、ゴミ貯留部11における各区画毎に貯留されたゴミの攪拌度及び高さを演算しているといえるから、本件発明1の「前記制御装置は、前記各マスごとに貯留されたごみの攪拌度及び高さを演算する演算部と」「を備える」ことに相当する。
引用発明の「ゴミ掴み位置」及び「ゴミ離し位置」は、機能的にみて、本件発明1の「始点」及び「終点」に相当する。
引用発明の「クレーンエージェント61」は、「マスエージェント65が算出する指標値が所定以上の区画のうち、攪拌作業を実行する直前のクレーンの位置から最も近い区画をゴミ掴み位置と決定し、指標値が所定以上の区画のうち、決定したゴミ掴み位置から最も近い区画をゴミ離し位置と決定」し、「クレーン14にゴミ掴み動作を実行させ」、「ゴミ離し動作を実行させる」ものであり、ゴミ掴み位置及びゴミ離し位置を選択するものといえるから、本件発明1の「選択部」に相当し、また当該ゴミ掴み位置及びゴミ離し位置は、マスエージェント65によって、指標値が所定値以上の少なくとも2つの複数の候補が選択されているといえ、その上で、クレーン14が、決定した複数のゴミ掴み位置候補からクレーン14に最も近いゴミ掴み位置でゴミを掴み、決定した複数のゴミ離し位置候補からゴミ掴み位置から最も近いゴミ離し位置でゴミを離すものであるといえる。
したがって、引用発明の「マスエージェント65が算出する指標値に基づき、攪拌作業において、何れの区画でクレーン14にゴミ掴み動作を実行させ、何れの区画でゴミ離し動作を実行させるかを決定する攪拌エージェント64と、攪拌エージェント64の通知に従ってクレーン14に攪拌作業を実行させることを決定するクレーンエージェント61と、を備え、クレーンエージェント61は、マスエージェント65が算出する指標値が所定以上の区画のうち、攪拌作業を実行する直前のクレーンの位置から最も近い区画をゴミ掴み位置と決定し、指標値が所定以上の区画のうち、決定したゴミ掴み位置から最も近い区画をゴミ離し位置と決定する」ことは、本件発明1の「前記制御装置は」、「前記各マスの中から少なくとも2つの始点候補及び終点候補をそれぞれ選択する選択部とを備え」、「前記ごみクレーンは、複数の前記始点候補のうち前記ごみクレーンの現在の位置に最も近い始点候補から複数の前記終点候補のいずれかに向かって移動され」ることに相当する。
引用発明の「攪拌作業」は、本件発明1の「移動攪拌または移動散乱攪拌」との対比において、「攪拌作業」との限度で共通する。
以上のとおりであるので、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
[一致点]
「ごみピットにおいて仮想的に配置された格子の各マスに貯留されたごみをごみクレーンで撹拌し、焼却炉に接続したごみホッパへ投入するごみクレーン制御システムであって、
前記ごみクレーンの動作を制御する制御装置とを有し、
前記制御装置は、前記各マスごとに貯留されたごみの撹拌度及び高さを演算する演算部と、前記各マスの中から少なくとも2つの始点候補及び終点候補をそれぞれ選択する選択部とを備え、
前記ごみクレーンは、複数の前記始点候補のうち前記ごみクレーンの現在の位置に最も近い始点候補から複数の前記終点候補のいずれかに向かって移動され、攪拌作業が行われるごみクレーン制御システム。」
[相違点1]
本件発明1が、「前記ごみクレーンの位置を検出し、位置情報を送信する位置センサ」「を有し」ているものであるのに対し、引用発明が、位置センサに相当する構成を有しているか否かが特定されていない点。
[相違点2]
本件発明1の「選択部」は、「前記各マスのうち最も高さが高いマスが唯一存在する場合はこれを前記始点候補として選択し、前記最も高さが高いマスが複数存在する場合は、前記複数のマスのうち撹拌度が最も低いマスを前記始点候補として選択し、前記始点候補を除き、前記各マスのうち最も高さが高いマスが唯一存在する場合はこれを前記始点候補とは別の始点候補として選択し、前記最も高さが高いマスが複数存在する場合は、前記複数のマスのうち撹拌度が最も低いマスを前記別の始点候補として選択」するものであるのに対し、引用発明の「クレーンエージェント65」は、「ゴミ貯留部11における各区画毎のゴミの高さHを示す情報と、ゴミの攪拌度合いを示す情報を保持」し、「予め設定されたゴミ掴みエリアの各区画に対応するマスエージェント65は、当該区画においてゴミ掴み動作を行う必要性の高さを示す指標値F_(P)を、F_(P)={H×w_(H)+(1/G)×w_(G)} ・・・(1)によって算出し、予め設定されたゴミ離しエリアの各区画に対応するマスエージェント65は、当該区画においてゴミ離し動作を行う必要性の高さを示す指標値F_(D)を、F_(D)={(1/H)×w_(H)+G×w_(G)} ・・・(2)によって算出する(ここで、Hは、各区画のゴミの高さ、Gは各区画の撹拌回数、Gw_(H)は高さに対する重み、w_(G)は撹拌度合いに対する重みである。)」ものである点。
[相違点3]
本件発明1は、攪拌作業が「移動攪拌または移動散乱攪拌」であるのに対し、引用発明は「何れの区画でクレーン14にゴミ掴み動作を実行させ、何れの区画でゴミ離し動作を実行させる」ものである点。

b 判断
事案に鑑み相違点2について検討する。
本件発明1の「選択部」が、「前記各マスのうち最も高さが高いマスが唯一存在する場合はこれを前記始点候補として選択し、前記最も高さが高いマスが複数存在する場合は、前記複数のマスのうち撹拌度が最も低いマスを前記始点候補として選択し、前記始点候補を除き、前記各マスのうち最も高さが高いマスが唯一存在する場合はこれを前記始点候補とは別の始点候補として選択し、前記最も高さが高いマスが複数存在する場合は、前記複数のマスのうち撹拌度が最も低いマスを前記別の始点候補として選択」することは、換言すれば、「選択部」は、まず第一にマスの高さを始点選択の際の指標とし、マスの高さという指標では始点候補が定まらない時には、第二にマスの攪拌度を指標とするものであり、マスの高さによって始点候補が定まる場合には、攪拌度は使用しない(必要ない)ものといえる。
これに対し、引用発明の「クレーンエージェント65」は、「ゴミ貯留部11における各区画毎のゴミの高さHを示す情報と、ゴミの攪拌度合いを示す情報を保持」し、「予め設定されたゴミ掴みエリアの各区画に対応するマスエージェント65は、当該区画においてゴミ掴み動作を行う必要性の高さを示す指標値F_(P)を、F_(P)={H×w_(H)+(1/G)×w_(G)} ・・・(1)によって算出」するものであり、「クレーンエージェント65」が、ゴミ掴み位置を決定する際には、ゴミの高さHを示す情報と、ゴミの攪拌度合いを示す情報の両者を使用するものであるといえる。
そして、引用文献1には、ゴミの高さHを示す情報と、ゴミの攪拌度合いを示す情報の重み付けについて重みを変化させることができることの記載ないし示唆はあるものの(段落【0077】及び【0078】を参照。)、第一にゴミの高さの情報だけを使用し、ゴミの高さの情報だけではゴミ掴み位置が定まらない場合に初めてゴミの攪拌度合いの情報を使用することは記載も示唆もされていない。
一方、上記4(2)で摘記した甲第2号証の記載に基づけば、甲第2号証には、バケットでごみを掴みあげる位置の選択に際し、まず最も攪拌回数が少ない格子を選択し、且つ、攪拌回数が同じである場合には、より深い位置に堆積されている格子を選択するという技術的事項が記載されているといえるところ、この様な甲第2号証に記載のものが、ごみの攪拌度合いを定量化してオペレータに提示することができ、また、定量化したごみの攪拌度合いに基づいてクレーンの自動制御を行うことができるごみ攪拌評価方法及びごみ攪拌評価プログラム、並びに、ごみ攪拌評価装置を提供することを目的としていることからすれば(甲第2号証の段落【0006】を参照。)、甲第2号証に記載の技術的事項において、第一に攪拌回数を指標とすることに代えて、深さ(高さ)を指標とすることの動機付けは存在しないというべきである。
仮に、甲第2号証に記載の技術的事項について、第一に攪拌回数を指標とすることに代えて、深さ(高さ)を指標とすることが容易であったとしても、深さ(高さ)を第一の指標としたものを、さらに、引用発明のクレーンエージェント65がゴミ掴み位置を決定することの指標に採用することは、いわゆる容易の容易というべきであって、もはや、当業者が容易になし得たことということはできない。
また、甲第3号証には、上記4(3)の摘記事項によれば、ごみホッパに投入するごみの決定方法に関し、投入作業におけるごみ掴み位置を決定する際に、高さ、攪拌回数、および現在のクレーンのバケットの所在位置からの距離の少なくとも何れかを条件として決定してもよいことが記載されている(段落【0049】を参照。)。
しかしながら、かかる記載は、ごみの焼却のためにごみホッパに投入するごみの掴み位置の決定に関するものであって、ごみピット内での攪拌に際してごみ掴み位置の決定に関するものではないから、当該甲第3号証に記載の技術的事項を、引用発明のクレーンエージェント65が、ホッパー12にゴミを投入する作業ではなく、ごみ拡散作業におけるゴミ掴み位置を決定する際の指標として採用することは容易にはなし得ないというべきである。
したがって、引用発明において、相違点2に係る本件発明1の構成となすことは、甲第1号証に記載の技術的事項、甲第2号証に記載の技術的事項及び甲第3号証に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たということはできない。
さらに、異議申立人の提出した甲第4号証?甲第12号証のいずれにおいても、本件発明1の相違点2にかかる構成は記載も示唆もされていない。
以上のとおりであるから、相違点1及び3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1号証に記載の発明及び甲第2号証?甲第12号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

c 異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、次のように主張する。
「甲1発明と甲2は、何れもごみ攪拌におけるごみの掴み位置を自動で選択するものであるから、甲1発明において、『指標値が所定値以上の区画』を始点候補とする代わりに、甲2の技術を適用して、始点候補を選択する際に、『最も攪拌回数が少ない格子を選択し、且つ、攪拌回数が同じである場合はより深い位置に堆積されているものを選択』する構成とすることは容易である。
また、ごみの自動攪拌技術において、攪拌回数を均等化することを優先するか、高さを均等化することを優先するかは、適宜選択される程度の事項である。・・・(中略)・・・
また、甲3の段落【0049】にも、『領域決定部119は、投入作業におけるごみ掴み位置を決定する際に、高さ(高い位置を優先)、攪拌回数(多い位置を優先)、および現在のクレーンのバケットの所在位置からの距離(近い位置を優先)の少なくとも何れかを条件として決定してもよい。』ことが記載されている。
よって、甲2の『最も攪拌回数が少ない格子を選択し、且つ、攪拌回数が同じである場合はより深い位置に堆積されているものを選択』する代わりに、ごみの高さの均等化を重視して、本件発明1の(1F)・(1G)の構成とすることも容易である。」(当審注:(1F)とは、本件発明1の「前記選択部は、前記各マスのうち最も高さが高いマスが唯一存在する場合はこれを前記始点候補として選択し」という発明特定事項、及び、(1G)とは、本件発明1の「前記最も高さが高いマスが複数存在する場合は、前記複数のマスのうち撹拌度が最も低いマスを前記始点候補として選択し」という発明特定事項のことである。)
しかしながら、甲第2号証の段落【0006】の記載から見て、甲第2号証に記載の技術的事項において、第一に攪拌回数を指標とすることに代えて、深さ(高さ)を指標とすることの動機付けが存在しないということは、前説示のとおりであり、また、甲第3号証の段落【0049】に記載の技術的事項が、ごみの焼却のためにごみホッパに投入するごみの掴み位置の決定に関するものであって、ごみピット内での攪拌に際してごみ掴み位置の決定に関するものではなく、当該甲第3号証に記載の技術的事項を、引用発明のクレーンエージェント65が、ごみ拡散作業におけるゴミ掴み位置を決定する際の指標として採用することに適用することは容易にはなし得ないこともまた前説示のとおりである。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(2)請求項2?9に係る発明について
請求項2?9に係る発明は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものである。
したがって、上記(1)に説示の理由と同様の理由により、請求項2?9に係る発明は、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証?甲第12号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立て理由及び証拠によっては、請求項1?9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。


 
異議決定日 2020-11-18 
出願番号 特願2019-163097(P2019-163097)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (F23G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 羽月 竜治  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 尾崎 和寛
杉山 健一
登録日 2020-01-14 
登録番号 特許第6644993号(P6644993)
権利者 三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社 重環オペレーション株式会社
発明の名称 ごみクレーン制御システム  
代理人 伊藤 英輔  
代理人 松沼 泰史  
代理人 古都 智  
代理人 橋本 宏之  
代理人 古都 智  
代理人 伊藤 英輔  
代理人 橋本 宏之  
代理人 松沼 泰史  
代理人 鎌田 康一郎  
代理人 鎌田 康一郎  
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