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審決分類 審判 判定 判示事項別分類コード:なし 属さない(申立て成立) E02D
管理番号 1368156
判定請求番号 判定2020-600016  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 判定 
判定請求日 2020-04-27 
確定日 2020-11-07 
事件の表示 上記当事者間の特許第4402983号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面に示す基礎構造は、特許第4402983号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 手続の経緯と請求の趣旨
1 手続の経緯
特許第4402983号(以下、「本件特許」という。)に係る手続の経緯は、平成16年3月4日に出願され、平成21年11月6日に特許権の設定登録がなされたものである。
その後、判定請求人(以下、「請求人」という。)から、令和2年4月27日差出で本件判定請求がなされるとともに甲第1号証ないし甲第8号証が提出され、令和2年5月20日付けで証拠説明書が提出された。
そして、当審から請求人に対して、令和2年6月11日付けで審尋が送付され、請求人から、令和2年7月16日付けで回答書が提出された。
これに対して、被請求人から、令和2年8月31日付けで判定事件答弁書(以下、「答弁書」という。)が提出されるとともに、証拠説明書並びに乙第1号証及び乙第2号証が提出されたものである。

2 請求の趣旨
判定請求書における「5 請求の趣旨」には、「イ号図面及びその説明書に示す建築基礎工法は、特許第4402983号発明の技術的範囲に属しない、との判定を求める。」と記載されている一方、「6 請求の理由」においては、「イ号図面及びイ号施工手順書で示す地盤置換工法による基礎構造(イ号物件)が、本件特許発明の構成要件への充足性について確認が必要となった。」(判定請求書第2頁第14行?第16行)と記載されており、判定請求の対象とするイ号のカテゴリについて、建築基礎工法という方法であるのか、それとも基礎構造という物であるのか、不明瞭であった。
また、本件判定請求の対象とするイ号の構成について、「イ号図面」が示す構成、「イ号施工手順書」が示す構成、及び判定請求書における説明が示すイ号の構成のうち、いずれを基礎として特定すべきであるのか、判定請求書においては不明瞭であった。
さらに、本件特許には、特許請求の範囲の請求項1ないし7に係る発明があるところ、本件判定請求の対象となる発明が、本件特許の請求項1ないし7に係る発明のうち、いずれの請求項に係る発明であるかも、判定請求書における「5 請求の趣旨」には、明記されていなかった。
これに対し、当審からの審尋に対する請求人の回答により、下記の点が明確とされた。
(1)本件判定請求の対象とするイ号のカテゴリは、基礎構造という「物」であること。
(2)本件判定請求の対象とするイ号の構成は、イ号図面に基づいて特定されるものであること。
(3)本件判定請求の対象となる発明は、本件特許の請求項1に係る発明であること。

以上のことから、本件判定請求の趣旨は、イ号図面に示す基礎構造は、特許第4402983号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものと認める。
イ号図面に示す基礎構造を、以下、「イ号構造」という。


第2 本件特許発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、本件特許明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(構成要件ごとに分説し、記号AないしEを付した。)。

「A 地盤を排土することによって形成された穴部に埋設される発泡樹脂盤と、
B 前記発泡樹脂盤の上面において前記発泡樹脂盤と一体的に形成されるベタ基礎とを有し、
C 前記発泡樹脂盤の上面に2以上の凸部または、前記発泡樹脂盤の垂直断面において確認される3以上の凹部の存在により実質的に形成される2以上の凸部(上記凸部、あるいは上記凹部の存在により実質的に形成される凸部において空気層を有するものを除く)が連続的に形成されており、
D 且つ、上記ベタ基礎の下面が前記発泡樹脂盤の上面に形成された2以上の凸部または凹部に接するように形成されていることによって、前記発泡樹脂盤の上面と前記ベタ基礎の下面との間において2以上の連続的な凹凸形状面を有する界面が形成されている
E ことを特徴とする建造物用基礎構造。」


第3 イ号構造の構成
1 イ号図面、及びその拡大図
判定請求書に添付されたイ号図面(1)及びイ号図面(2)、並びに、回答書に添付されたイ号図面(2)の「A断面図」の拡大図は、次のとおりである。

(1)イ号図面(1)
イ号図面(1)には、「図面名称 『コロンブス工法』地盤置換範囲図・断面図」、及び「縮尺 1/60」と記載されたうえで、次の図示がある。


(2)イ号図面(2)
イ号図面(2)には、「図面名称 『コロンブス工法』断面図 外周部・スラブ下割付図」、及び「縮尺 1/60」と記載されたうえで、次の図示がある。


(3)イ号図面(2)のA断面図の拡大図
イ号図面(2)の「A断面図」の拡大図(以下、「イ号A断面拡大図」という。)には、次の図示がある。


2 請求人によるイ号構造の特定
判定請求書の「6 請求の理由」の「(4)イ号物件の説明 ア)構成要件」の記載によれば、請求人が特定したイ号構造の構成は、次のとおりである。

「建物の基礎構造であり、
a)地盤置換範囲の地面を掘削排土して形成した底面が略平坦な凹部と、
b)該凹部に底面域の略全域に渡って複数個の直方体又は立方体の形状の発
泡樹脂材(発泡スチロール、通称:ジオフォーム)を上面が面一となる
ように接合させて形成した発砲樹脂盤と、
d)該発泡樹脂盤の上面の全面に渡って構築したベタ基礎と、
からなることを特徴としている。」

3 被請求人によるイ号構造の特定
(1)請求人が特定する構成に対する主張
被請求人は、請求人が特定するイ号構造の構成について、本件特許発明の構成A?Eと対比できるように特定されていない旨を主張している。

(2)イ号構造についての主張
ア イ号構造の各領域についての説明
被請求人は、イ号構造における各領域の類別、及び、各領域の構造について、次のとおり説明している(答弁書第9頁第11行?第10頁第1行)。

「1.リブ、凹部及び上面における各構成
(一 ).イ号図面 (2)の平面図によれば、イ号物件は、略十文字形の
リブ、「へ 」及び「ホ」の文字によって表示されている凹部及
びその余のア等によって表示されている各ブロックの接続状態に
よる平坦領域に類別することができる。
(二)(1).御庁からの審尋に対する請求人の回答書のA断面図によれば
、リブ、凹部及び上面領域は、何れも土木シート+厚さ100m
mの砕石+厚さ20mmの調整砂による下地構造が採用されてい
る点において共通している。
(2).リブ、凹部、平坦領域は、それぞれ厚さ100mmのEPS
20による発泡スチロール、厚さ280mmのEPS16による
発泡スチロール、厚さ400mmのEPS16による発泡スチロ
ールが採用されている。
但し、リブの場合には、厚さ100mmの調整コンクリートが
ベタ基礎と前記発泡スチロールとの間に介在している。
(三).かくして、リブ、凹部及び平坦頷域の構成は、別紙のイ号各断面図
に示す通りであって、何れも下地構造の上にそれぞれ厚さの異なる
発泡樹脂材が採用され、かつ相互に接した状況にある。
しかもリブは、上側の平坦面を有し、かつ下側の窪んだ領域を形
成している点において、前記凹部と共通しており、かつ凹部自体に
該当している。」

イ イ号構造の各領域の断面図
そして、被請求人は、イ号構造における各領域の断面図は、「イ号各断面図」として提出する、次のとおりのものとなる旨を主張している(答弁書第9頁第25行?第27行、及び、答弁書に添付した別紙より)。


ウ イ号構造の2つの断面図
そのうえで、被請求人は、イ号構造について、以下の(ア)の「イ号全体平面図」に示すA-A方向の断面図、及びB-B方向の断面図は、それぞれ以下の(イ)に示す「A-A方向断面図」、以下の(ウ)に示す「B-B方向断面図」のとおりとなる旨を、主張している。
(ア)イ号全体平面図(答弁書に添付した別紙より)


(イ)A-A方向断面図(答弁書に添付した別紙より)


(ウ)B-B方向断面図(答弁書に添付した別紙より)


(3)被請求人が特定するイ号構造の構成
被請求人は、イ号構造の構成を、上記(2)ウ(イ)の「A-A方向断面図」、及び、上記(2)ウ(ウ)の「B-B方向断面図」に着目した場合について、それぞれ次のように特定している。

ア A-A方向断面図に着目した場合(答弁書第10頁第6行?第21行)
「a 地盤を排土することによって形成された穴部に埋設される発泡樹脂盤
と、
b 前記発泡樹脂盤の上面において前記発泡樹脂盤と一体的に形成される
ベタ基礎とを有し、
c 前記発泡樹脂盤の上面に、当該発泡樹脂盤のA-A方向を基準とする垂
直断面によって確認される「へ」によって表示されている2個の凹部
及び1個のリブという合計3個の凹部により実質的に形成される2個の
凸部が、リブにおけるEPS20による発泡樹脂の上面を介して連続し
た状態にて形成されており、
d 上記ベタ基礎の下面が前記発泡樹脂盤の上面に形成された前記2個の凸
部に接するように形成されることによって、前記発泡樹脂盤の上面と前
記ベタ基礎の下面との間において「オ」、「ア」、「ア」の各ブロック
によって表示される凸部と、凹部であるリブとによる連続した状態の凹
凸形状面及び「ソ」によって表示される凸部と、「へ」の表示による
凹部とによる連続した状態の凹凸形状面という合計2個の運続した状態
の凹凸形状面を有する界面が形成されている、
e ことを特徴とする建造物用基礎構造物。」

イ B-B方向断面図に着目した場合(答弁書第11頁第1行?第19行)
「(a) 地盤を排土することによって形成された穴部に埋設される発泡樹
脂盤と、
(b) 前記発泡樹脂盤の上面において前記発泡樹脂盤と一体的に形成され
るべ夕基礎とを有し、
(c) 前記発泡樹脂盤の上面に、当該発泡樹脂盤のB-B方向を基準とす
る垂直断面によって確詔される「ホ」及び「へ」によって表示され
ている3個の凹部及び2個のリブという5個の凹部により実質的に形
成される4個の凸部が、2個のリブにおけるEPS20による発泡樹
脂の上面及び1個の「へ」によって表示される凹部の上面を介して連
続した状態にて形成されており、
(d) 上記ベタ基礎の下面が前記発泡樹脂盤の上面に形成された前記4個
の凸部に接するように形成されることによって、前記発泡樹脂盤の上
面と前記ベ夕基礎の下面との間において「ノ」、「ネ」の各ブロック
によって表示される凸部と、凹部であるリブとによる連続した状態の
凹凸形状面、「ツ」によって表示されるブロックによる凸部と、凹部
であるリブとによる連続した状態の凹凸形状面、「ケ」によって表示
されるブロックである凸部と、「へ」によって表示される凹部とに
よる連続した状態の凹凸形状面、「力」、「キ」、「オ」の各ブロッ
クによって表示される凸部と、「へ」によって表示される凹部とに
よる連続した状態の凹凸形状面という合計4個の連続した凹凸形状面
を有する界面が形成されている、
(e) ことを特徴とする建造物用基礎構造物。」

4 当審によるイ号構造の特定
(1)はじめに
ア 「ア」?「フ」と記号が付された領域、及び「ヘ」?「マ」と記号が付された領域の構造について
イ号図面(1)及び(2)における「A断面図」は、イ号図面(2)の「外周部・スラブ下割付図」における、外周部とリブ、及び「サ」「ア」「ネ」「ヒ」と記号が付され網掛けがされていない領域、並びに「ホ」と記号が付され網掛けがされた領域の、鉛直方向の構造を示すものである。
イ号図面(2)の「外周部・スラブ下割付図」において、網掛けがされず「ア」?「フ」と記号が付された領域の構造について、請求人は当審からの審尋に対して、いずれも同様の構造である旨を回答している。また、イ号図面(2)の「外周部・スラブ下割付図」において、「ホ」と記号が付された領域と同様の網掛けがされている、「ヘ」及び「マ」と記号が付された領域の構造について、請求人は当審からの審尋に対して、「ホ」と記号が付された領域と同様の構造である旨を、回答している。
そして、イ号図面(2)の「外周部・スラブ下割付図」において、網掛けがされず「ア」?「フ」と記号が付された領域の構造がいずれも同様であること、及び、イ号図面(2)の「外周部・スラブ下割付図」において、網掛けがされ「ヘ」?「マ」と記号が付された領域の構造がいずれも同様であることは、被請求人も争っていない。
また、イ号図面(1)及び(2)並びにイ号A断面拡大図の、いずれの箇所にも、イ号図面(2)の「外周部・スラブ下割付図」において、網掛けがされず「ア」?「フ」と記号が付された領域が、互いに異なる構造を有することを示す記載はない。同様に、イ号図面(1)及び(2)並びにイ号A断面拡大図の、いずれの箇所にも、イ号図面(2)の「外周部・スラブ下割付図」において、網掛けがされ「ヘ」?「マ」と記号が付された領域が、互いに異なる構造を有することを示す記載はない。
そのため、イ号図面においては、「ア」?「フ」と記号が付され網掛けがされていない領域が互いに同一の鉛直構造を有し、「ヘ」?「マ」と記号が付され網掛けがされた領域が互いに同一の鉛直構造を有する、イ号構造が示されているものとして、本件判定請求の対象であるイ号構造の構成を特定することとする。

イ 「ジオフォームEPS16」及び「ジオフォームEPS20」について
請求人・被請求人とも、イ号構造における「ジオフォームEPS16」及び「ジオフォームEPS20」が、「発泡スチロール」であり、本件特許発明における「発泡樹脂盤」に相当する構成であることには、争いがない。
イ号構造における「ジオフォームEPS16」及び「ジオフォームEPS20」が、本件特許発明における「発泡樹脂盤」と対比されるべき構成であるとして、イ号構造が本件特許発明の構成要件Cを満たすか否かを判断するためには、イ号構造における「ジオフォームEPS16」及び「ジオフォームEPS20」の上面の凸凹に関する構成、並びに、イ号構造における「ジオフォームEPS16」及び「ジオフォームEPS20」の連続性に関する構成を、特定する必要がある。
また、イ号構造における「ジオフォームEPS16」及び「ジオフォームEPS20」が、本件特許発明における「発泡樹脂盤」と対比されるべき構成であるとして、イ号構造が本件特許発明の構成要件Dを満たすか否かを判断するためには、イ号構造における「ベタ基礎」の下面と「ジオフォームEPS16」及び「ジオフォームEPS20」とが接する界面の形状、並びに当該界面の連続性に関する構成を、特定する必要がある。
そして、請求人によるイ号構造の特定と、被請求人によるイ号構造の特定との間には、とりわけ本件特許発明の構成要件C及びDと対比すべき部分において、構成の特定に争いがある。
そこで、イ号構造について、「ジオフォームEPS16」及び「ジオフォームEPS20」の上面の凹凸及び連続性に関する構成、並びに、「ベタ基礎」の下面と「ジオフォームEPS16」及び「ジオフォームEPS20」とが接する界面の形状及び連続性に関する構成にも着目しつつ、当審により構成を特定することとする。

ウ 数値の単位について
イ号図面(1)及び(2)において、図中の数値の単位は直接記載されていないが、請求人は回答書において、「また、「t100」とは厚さ100mmを意味します。」と説明している。そして被請求人も、イ号図面中の数値の単位がmmであることは、争っていない。
また、イ号図面(1)及び(2)には、「縮尺 1/60」とも記載されており、提出されたイ号図面(1)及び(2)が複写の際に多少の拡大若しくは縮小をされた可能性があるとしても、図中の数値の単位は、mmを示すものと解することが合理的である。
そのため、イ号図面(1)及び(2)中の数値は、単位をmmとした数値が示されているものとして、イ号構造の構成を特定することとする。

(2)イ号図面から読み取れる構成
ア 上記第3の1(1)に示したイ号図面(1)の「図面名称」に、「『コロンブス工法』地盤置換範囲図・断面図」とあること、及び、上記第3の1(2)に示すイ号図面(2)の「図面名称」が、「『コロンブス工法』断面図 外周部・スラブ下割付図」であること、並びに、イ号図面(1)とイ号図面(2)の「A断面図」が「リブ」の注記の有無を別として実質的に同一であることから、イ号図面には、地盤置換範囲における構造として、ベタ基礎、及び地盤置換したスラブ下構造が示されていると、読み取ることができる。

イ 上記第3の1(1)に示したイ号図面(1)の「地盤置換範囲図」の左上には、方位を示す記号が示されており、当該記号において「N」と付されたマークは図中の略上側を向いている。上記第3の1(2)に示したイ号図面(2)の「外周部・スラブ下割付図」には、方位を示す記号が付されていないが、図を回転させることなくイ号図面(1)の「地盤置換範囲図」との外形の形状が一致することから、イ号図面(2)の「外周部・スラブ下割付図」においても、方位を示す記号の向きは、イ号図面(1)の「地盤置換範囲図」と同様に、北を示す「N」の向きが図の略上側となることが理解できる。そのため、イ号構造における方位は、イ号図面(1)の「地盤置換範囲図」及びイ号図面(2)の「外周部・スラブ下割付図」における略上方向、略右方向、略下方向、略左方向が、それぞれ平面視における北方向、東方向、南方向、西方向であると、読み取ることができる。また、イ号構造は、平面視において南北方向及び東西方向に伸びる略十字のリブで区分されており、イ号図面(1)の「地盤置換範囲図」及びイ号図面(2)の「外周部・スラブ下割付図」における右上の区画、右下の区画、及び左側の区画が、それぞれ平面視における北東側の区画、南東側の区画、及び西側の区画であると、読み取ることができる。

ウ 上記第3の1(2)に示したイ号図面(2)より、「ジオフォームEPS20」が配置される箇所は、地盤置換範囲において、外周部、及び、平面視において南北方向及び東西方向に伸びる略十字のリブの下方であると、読み取ることができる。そして、同イ号図面(2)、及び上記第3の1(3)に示したイ号A断面拡大図より、地盤置換範囲の外周部において、「ジオフォームEPS20」が配置される幅範囲及び深さ範囲は、幅600mmの範囲、かつ深さはGLより下200mm?480mmの範囲であると、読み取ることができる。また、同イ号図面(2)、及び上記第3の1(3)に示したイ号A断面拡大図より、リブの下方において、「ジオフォームEPS20」が配置される幅範囲及び深さ範囲は、幅は500mmの範囲、かつ深さは、GLより下480mmの「調整コンクリート」の上面からさらに100mm下がった箇所から、厚さ100mmの範囲、すなわち、GLより下580mm?680mmの範囲であることを、読み取ることができる。

エ 上記第3の1(2)に示したイ号図面(2)、及び上記第3の1(3)に示したイ号A断面拡大図より、「ジオフォームEPS16」が配置される箇所は、地盤置換範囲において、水平方向では、外周部でジオフォームEPS20が配置された幅600mmの範囲を除き、かつ、平面視において南北方向及び東西方向に伸びる略十字の、幅200mmのリブを除いた範囲であると、読み取ることができる。また、同イ号図面(2)より、「ジオフォームEPS16」が配置される深さ範囲は、GLより下80mm?480mm、又はGLより下200mm?480mmの範囲であると、読み取ることができる。

オ 上記第3の1(2)に示したイ号図面(2)、及び上記第3の1(3)に示したイ号A断面拡大図より、「ベタ基礎」は、ジオフォームEPS16の上面に接し、ジオフォームEPS20の上面とは接しないことを、読み取ることができる。

カ 上記第3の1(3)に示したイ号A断面拡大図のうち、リブの周辺の部分をさらに拡大すると、次のとおりである。

リブの周辺におけるジオフォームの構成に着目すると、リブの箇所において、両側のジオフォームEPS16は、連続していない様子を、読み取ることができる。また、リブの下方に配置されたジオフォームEPS20とジオフォームEPS16とは、存在する深さ範囲も重複しないから、リブの下方に配置されたジオフォームEPS20は、ジオフォームEPS16とは連続していないと、読み取ることができる。

キ 上記第3の1(2)に示したイ号図面(2)、及び上記第3の1(3)に示したイ号A断面拡大図より、地盤置換範囲で、平面視において略十字のリブで区分された区画のうち、北東側の区画には、ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下200mm?480mmとなる箇所である「ヘ」と記された領域が、ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下80mm?480mmとなる箇所である「ア」「ス」「ソ」「タ」「チ」「ツ」「テ」「ト」「ナ」と記された領域に囲まれて、長方形状に1箇所存在する様子を、読み取ることができる。

ク 上記第3の1(2)に示したイ号図面(2)、及び上記第3の1(3)に示したイ号A断面拡大図より、地盤置換範囲で、平面視において略十字のリブで区分された区画のうち、南東側の区画には、ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下200mm?480mmとなる箇所である「ホ」「マ」と記された領域が、ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下80mm?480mmとなる箇所である「ア」「ス」「ニ」「ヌ」「ネ」「ノ」「ハ」「フ」「フ」と記された領域に囲まれて、L字状に1箇所存在する様子を、読み取ることができる。

ケ 上記第3の1(2)に示したイ号図面(2)、及び上記第3の1(3)に示したイ号A断面拡大図より、地盤置換範囲で、平面視において略十字のリブで区分された区画のうち、略南北に延びるリブより西側の区画には、ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下200mm?480mmとなる箇所である「ヘ」と記された領域が、ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下80?480となる箇所である「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」「カ」「キ」「ク」「ケ」「コ」「サ」「シ」「ス」「セ」と記された領域に囲まれて、長方形状に2箇所存在する様子を、読み取ることができる。

コ 上記第3の1(2)に示したイ号図面(2)、及び上記第3の1(3)に示したイ号A断面拡大図より、ベタ基礎の下面は、GLより下80mmの深さのジオフォームEPS16の上面、及び、GLより下200mmの深さのジオフォームEPS16の上面に、いずれも接している様子を、読み取ることができる。

(3)イ号構造の構成の特定
上記(2)を踏まえて、本件特許発明の構成要件A?Eに対応させて整理すると、イ号構造は、以下のとおりに分説した構成を具備するものと認める(構成ごとに記号<a>ないし<e>を付した。)。

<a>
地盤置換範囲において、外周部、及び、平面視において南北方向及び東西方向に伸びる略十字のリブの下方に配置され、地盤置換範囲の外周部では、幅600mmの範囲、かつ深さはGLより下200mm?480mmの範囲に、リブの下方では、幅500mmの範囲、かつ深さはGLより下580mm?680mmの範囲に配置される、ジオフォームEPS20と、
地盤置換範囲において、水平方向では、外周部でジオフォームEPS20が配置された幅600mmの範囲を除き、かつ、平面視において南北方向及び東西方向に伸びる略十字の幅200mmのリブを除いた範囲に、深さはGLより下80mm?480mm、又はGLより下200mm?480mmの範囲に配置される、ジオフォームEPS16と、
<b>
ジオフォームEPS16の上面に接し、ジオフォームEPS20の上面とは接しない、ベタ基礎とを有し、
<c>
リブの箇所において、両側のジオフォームEPS16は、連続しておらず、リブの下方に配置されたジオフォームEPS20は、ジオフォームEPS16と連続しておらず、
地盤置換範囲で、平面視において略十字のリブで区分された区画のうち、北東側の区画には、ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下200mm?480mmとなる箇所が、ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下80mm?480mmとなる箇所に囲まれて、長方形状に1箇所存在し、
地盤置換範囲で、平面視において略十字のリブで区分された区画のうち、南東側の区画には、ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下200mm?480mmとなる箇所が、ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下80mm?480mmとなる箇所に囲まれて、L字状に1箇所存在し、
地盤置換範囲で、平面視において略十字のリブで区分された区画のうち、略南北に延びるリブより西側の区画には、ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下200mm?480mmとなる箇所が、ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下80mm?480mmとなる箇所に囲まれて、長方形状に2箇所存在し、
<d>
ベタ基礎の下面は、GLより下80mmの深さのジオフォームEPS16の上面、及び、GLより下200mmの深さのジオフォームEPS16の上面に、いずれも接している、
<e>
ベタ基礎、及び地盤置換したスラブ下構造。


第4 属否の判断
イ号構造が、本件特許発明の構成要件を充足するか否かについて検討する。
1 構成要件Aについて
構成<a>の「ジオフォームEPS16」及び「ジオフォームEPS20」は、イ号図面において「発泡樹脂材」と注記されているとともに、「EPS」が発泡ポリスチレンの略語であることは技術常識であるから、構成要件Aの「発泡樹脂盤」に相当する。
また、構成<a>における、「地盤置換範囲において、外周部、及び、平面視において南北方向及び東西方向に伸びる略十字のリブの下方に配置され、地盤置換範囲の外周部では、幅600mmの範囲、かつ深さはGLより下200mm?480mmの範囲に、リブの下方では、幅500mmの範囲、かつ深さはGLより下580mm?680mmの範囲に配置される、ジオフォームEPS20」、及び、「地盤置換範囲において、水平方向では、外周部でジオフォームEPS20が配置された幅600mmの範囲を除き、かつ、平面視において南北方向及び東西方向に伸びる略十字の幅200mmのリブを除いた範囲に、深さはGLより下80mm?480mm、又はGLより下200mm?480mmの範囲に配置される、ジオフォームEPS16」は、地盤置換範囲において、地盤面であるGLより下に配置されるから、いずれも地盤面であるGLより下の地盤を取り除いて、穴部に配置したものと言い得る。
そのため、構成<a>の「地盤置換範囲において、外周部、及び、平面視において南北方向及び東西方向に伸びる略十字のリブの下方に配置され、地盤置換範囲の外周部では、幅600mmの範囲、かつ深さはGLより下200mm?480mmの範囲に、リブの下方では、幅500mmの範囲、かつ深さはGLより下580mm?680mmの範囲に配置される、ジオフォームEPS20」、及び、「地盤置換範囲において、水平方向では、外周部でジオフォームEPS20が配置された幅600mmの範囲を除き、かつ、平面視において南北方向及び東西方向に伸びる略十字の幅200mmのリブを除いた範囲に、深さはGLより下80mm?480mm、又はGLより下200mm?480mmの範囲に配置される、ジオフォームEPS16」は、いずれも構成要件Aの「地盤を排土することによって形成された穴部に埋設される発泡樹脂盤」に相当する。
したがって、イ号構造の構成<a>は、本件特許発明の構成要件Aを充足する。

2 構成要件Bについて
構成<b>の「ジオフォームEPS16の上面に接」する「ベタ基礎」は、ジオフォームEPS16の上面に接しているから、ジオフォームEPS16の上面においてジオフォームEPS16と一体的に形成されることが明らかである。そのため、構成<b>の「ジオフォームEPS16の上面」及び「ジオフォームEPS20の上面」のうち、「ジオフォームEPS16の上面」は、構成要件Bの「前記発泡樹脂盤の上面」に相当し、構成<b>の「ベタ基礎」が「上面に接する」「ジオフォームEPS16」は、構成要件Bの「ベタ基礎」が「一体的に形成」される「前記発泡樹脂盤」に相当し、構成<b>の「ジオフォームEPS16の上面に接」する「ベタ基礎」は、構成要件Bの「前記発泡樹脂盤の上面において前記発泡樹脂盤と一体的に形成されるベタ基礎」に相当する。
したがって、イ号構造の構成<b>は、本件特許発明の構成要件Bを充足する。

3 構成要件Cについて
(1)複数の区画の組み合わせに着目した場合
本件特許発明の構成要件Cは、選択肢ごとに整理すると、「前記発泡樹脂盤の上面」に「2以上の凸部」が「連続的に形成されて」いる、または、「前記発泡樹脂盤の上面」に「前記発泡樹脂盤の垂直断面において確認される3以上の凹部の存在により実質的に形成される2以上の凸部(上記凸部、あるいは上記凹部の存在により実質的に形成される凸部において空気層を有するものを除く)」が「連続的に形成されて」いる、というものである。
ここで、上記2に判断したとおり、「ジオフォームEPS16」の上面が、本件特許発明の構成要件Bにおける「発泡樹脂盤の上面」に相当するところ、イ号においては、構成<c>のとおり「リブの箇所において、両側のジオフォームEPS16は、連続しておらず、リブの下方に配置されたジオフォームEPS20は、ジオフォームEPS16と連続して」いない。そのため、構成<c>における「地盤置換範囲で、平面視において略十字のリブで区分された区画」のうち、「北東側の区画」、「南東側の区画」、及び「略南北に延びるリブより西側の区画」の「ジオフォームEPS16」は、互いに連続しているということができない。また、リブの下方に配置された「ジオフォームEPS20」も、構成<c>における「地盤置換範囲で、平面視において略十字のリブで区分された区画」のうち、「北東側の区画」、「南東側の区画」、及び「略南北に延びるリブより西側の区画」の「ジオフォームEPS16」を接続して、連続させるものではない。すなわち、イ号構造の構成<c>における「地盤置換範囲で、平面視において略十字のリブで区分された区画」のうち、2以上の区画の「ジオフォームEPS16」の組み合わせは、ジオフォーム自体として見たときに連続しているということができず、2以上の区画の「ジオフォームEPS16」の上面についても、連続しているということができない。
そのため、イ号構造の構成<c>における2以上の区画の組み合わせに着目した場合、本件特許発明の構成要件Cにおける、「前記発泡樹脂盤の上面」に「2以上の凸部」が「連続的に形成されて」いるという選択肢、または、「前記発泡樹脂盤の上面」に「前記発泡樹脂盤の垂直断面において確認される3以上の凹部の存在により実質的に形成される2以上の凸部(上記凸部、あるいは上記凹部の存在により実質的に形成される凸部において空気層を有するものを除く)」が「連続的に形成されて」いるという選択肢の、いずれの選択肢についても、本件特許発明の構成要件Cを充足しているということができない。
そこで、以下では、イ号構造の構成<c>における区画のそれぞれに着目すれば、いずれかの区画の「ジオフォームEPS16」が、本件特許発明の構成要件Cを充足するか否かを、次の(2)?(4)において判断することとする。

(2)北東側の区画に着目した場合
構成<c>における、「地盤置換範囲で、平面視において略十字のリブで区分された区画のうち、北東側の区画」では、「ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下200mm?480mmとなる箇所が、ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下80mm?480mmとなる箇所に囲まれて、長方形状に1箇所存在」するから、「ジオフォームEPS16」の上面は、「GLより下200mm」と「GLより下80mm」との、2つの深さとなる。
そして、「ジオフォームEPS16」の上面が浅い方の深さとなる、「ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下80mm?480mmとなる箇所」に着目すると、「ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下80mm?480mmとなる箇所」は、「長方形状に1箇所存在」する「ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下200mm?480mmとなる箇所」を囲んでいるから、「ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下80mm?480mmとなる箇所」の上面は、本件特許発明の構成要件Cの選択肢である、「前記発泡樹脂盤の上面に2以上の凸部」が「形成」されている、という要件を充足するということはできない。そのため、構成<c>における、「地盤置換範囲で、平面視において略十字のリブで区分された4つの区画のうち、北東側の区画」の「ジオフォームEPS16」の上面の構成は、本件特許発明の構成要件Cの一方の選択肢である、「前記発泡樹脂盤の上面に2以上の凸部」が「連続的に形成」されている、という要件を充足しない。
一方、「ジオフォームEPS16」の上面が深い方の深さとなる、「ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下200mm?480mmとなる箇所」に着目すると、「ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下200mm?480mmとなる箇所」は、「長方形状に1箇所存在」するから、1箇所に存在するのみとなり、いずれの方向の垂直断面を考慮しても、本件特許発明の構成要件Cの選択肢が有する、「前記発泡樹脂盤の垂直断面において確認される3以上の凹部の存在」という要件を充足しない。そのため、構成<c>における、「地盤置換範囲で、平面視において略十字のリブで区分された区画のうち、北東側の区画」の「ジオフォームEPS16」の上面の構成は、本件特許発明の構成要件Cの他方の選択肢である、「前記発泡樹脂盤の上面」に「前記発泡樹脂盤の垂直断面において確認される3以上の凹部の存在により実質的に形成される2以上の凸部(上記凸部、あるいは上記凹部の存在により実質的に形成される凸部において空気層を有するものを除く)」が「連続的に形成されて」いる、という要件を充足しない。

(3)南東側の区画に着目した場合
構成<c>における、「地盤置換範囲で、平面視において略十字のリブで区分された区画のうち、南東側の区画」では、「ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下200mm?480mmとなる箇所が、ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下80mm?480mmとなる箇所に囲まれて、L字状に1箇所存在」するから、「ジオフォームEPS16」の上面は、「GLより下200mm」と「GLより下80mm」との、2つの深さとなる。
そして、「ジオフォームEPS16」の上面が浅い方の深さとなる、「ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下80mm?480mmとなる箇所」に着目すると、「ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下80mm?480mmとなる箇所」は、「L字状に1箇所存在」する「ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下200mm?480mmとなる箇所」を囲んでいるから、「ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下80mm?480mmとなる箇所」の上面は、本件特許発明の構成要件Cの選択肢である、「前記発泡樹脂盤の上面に2以上の凸部」が「形成」されている、という要件を充足するということはできない。そのため、構成<c>における、「地盤置換範囲で、平面視において略十字のリブで区分された区画のうち、南東側の区画」の「ジオフォームEPS16」の上面の構成は、本件特許発明の構成要件Cの一方の選択肢である、「前記発泡樹脂盤の上面に2以上の凸部」が「連続的に形成」されている、という要件を充足しない。
一方、「ジオフォームEPS16」の上面が深い方の深さとなる、「ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下200mm?480mmとなる箇所」に着目すると、「ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下200mm?480mmとなる箇所」は、「L字状に1箇所存在」するから、垂直断面においては、L字状の1辺のみを横切るか2辺を横切るかに応じて、1箇所又は2箇所に存在するものとなり、いずれの方向の垂直断面を考慮しても、本件特許発明の構成要件Cの選択肢が有する、「前記発泡樹脂盤の垂直断面において確認される3以上の凹部の存在」という要件を充足しない。そのため、構成<c>における、「地盤置換範囲のうち、平面視において略十字のリブで区分された区画のうち、南東側の区画」の「ジオフォームEPS16」の上面の構成は、本件特許発明の構成要件Cの他方の選択肢である、「前記発泡樹脂盤の上面」に「前記発泡樹脂盤の垂直断面において確認される3以上の凹部の存在により実質的に形成される2以上の凸部(上記凸部、あるいは上記凹部の存在により実質的に形成される凸部において空気層を有するものを除く)」が「連続的に形成されて」いる、という要件を充足しない。

(4)略南北に延びるリブより西側の区画に着目した場合
構成<c>における、「地盤置換範囲のうち、平面視において略十字のリブで区分された区画のうち、略南北に延びるリブより西側の区画」では、「ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下200mm?480mmとなる箇所が、ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下80mm?480mmとなる箇所に囲まれて、長方形状に2箇所存在」するから、「ジオフォームEPS16」の上面は、「GLより下200mm」と「GLより下80mm」との、2つの深さとなる。
そして、「ジオフォームEPS16」の上面が浅い方の深さとなる、「ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下80mm?480mmとなる箇所」に着目すると、「ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下80mm?480mmとなる箇所」は、「長方形状に2箇所存在」する「ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下200mm?480mmとなる箇所」を囲んでいるから、「ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下80mm?480mmとなる箇所」の上面は、本件特許発明の構成要件Cの選択肢である、「前記発泡樹脂盤の上面に2以上の凸部」が「形成」されている、という要件を充足するということはできない。そのため、構成<c>における、「地盤置換範囲で、平面視において略十字のリブで区分された区画のうち、略南北に延びるリブより西側の区画」の「ジオフォームEPS16」の上面の構成は、本件特許発明の構成要件Cの一方の選択肢である、「前記発泡樹脂盤の上面に2以上の凸部」が「連続的に形成」されている、という要件を充足しない。
一方、「ジオフォームEPS16」の上面が深い方の深さとなる、「ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下200mm?480mmとなる箇所」に着目すると、「ジオフォームEPS16の深さ範囲がGLより下200mm?480mmとなる箇所」は、「長方形状に2箇所存在」するから、垂直断面においては、長方形を1つ横切るか2つ横切るかに応じて、1箇所又は2箇所に存在するものとなり、いずれの方向の垂直断面を考慮しても、本件特許発明の構成要件Cの選択肢が有する、「前記発泡樹脂盤の垂直断面において確認される3以上の凹部の存在」という要件を充足しない。そのため、構成<c>における、「地盤置換範囲のうち、平面視において略十字のリブで区分された区画のうち、略南北に延びるリブより西側の区画」の「ジオフォームEPS16」の上面の構成は、本件特許発明の構成要件Cの他方の選択肢である、「前記発泡樹脂盤の上面」に「前記発泡樹脂盤の垂直断面において確認される3以上の凹部の存在により実質的に形成される2以上の凸部(上記凸部、あるいは上記凹部の存在により実質的に形成される凸部において空気層を有するものを除く)」が「連続的に形成されて」いる、という要件を充足しない。

(5)小括
以上のとおり、イ号構造における「ジオフォームEPS16」の上面は、構成<c>の「地盤置換範囲で、平面視において略十字のリブで区分された区画」のうち、「北東側の区画」、「南東側の区画」、及び「略南北に延びるリブより西側の区画」の2以上の区画の組み合わせでみて、本件特許発明における構成要件Cを充足するものではなく、また「北東側の区画」、「南東側の区画」、及び「略南北に延びるリブより西側の区画」の各区画でみても、いずれの区画においても本件特許発明における構成要件Cを充足するものではない。
したがって、イ号構造の構成<c>は、本件特許発明の構成要件Cを充足しない。

4 構成要件Dについて
構成<d>の「ベタ基礎の下面は、GLより下80mmの深さのジオフォームEPS16の上面、及び、GLより下200mmの深さのジオフォームEPS16の上面に、いずれも接している」構成は、本件特許発明の構成要件Dのうち、「上記ベタ基礎の下面が前記発泡樹脂盤の上面」の「凸部または凹部に接するように形成されている」ことによって、「前記発泡樹脂盤の上面と前記ベタ基礎の下面との間」において「凹凸形状面を有する界面が形成されている」という部分的な構成については、充足しているということができる。
しかしながら、本件特許発明の構成要件Dは、「且つ、」の部分において本件特許発明の構成要件Cを前提としているから、本件特許発明の構成要件Dにおける「ベタ基礎の下面」は、構成要件Cを満たす「前記発泡樹脂盤の上面」に形成された「2以上の凸部または凹部」に「接するように形成されている」ことによって、本件構成要件Cを満たす「前記発泡樹脂盤の上面」との間において、「2以上の連続的な凹凸形状面を有する界面」を形成するものである。
そして、イ号構造における「ジオフォームEPS16」は、構成<c>のとおり配置されているから、イ号構造における「ベタ基礎の下面」と「ジオフォームEPS16の上面」とが接することで形成される界面は、上記3(1)で「ジオフォームEPS16の上面」について判断したと同様に、構成<c>における「地盤置換範囲で、平面視において略十字のリブで区分された区画」のうち、2以上の区画に渡っては、連続しているということができない。
そのため、イ号構造における「ジオフォームEPS16の上面」と「ベタ基礎の下面」とは、構成<c>における「地盤置換範囲で、平面視において略十字のリブで区分された区画」のうち、2以上の区画に渡っては、本件特許発明における構成要件Dのうち、「連続的な」「界面が形成されている」という構成を充足しているということができない。
また、イ号構造における「ジオフォームEPS16の上面」と「ベタ基礎の下面」とが接することで形成される界面について、構成<c>における「地盤置換範囲で、平面視において略十字のリブで区分された区画」の「北東側の区画」、「南東側の区画」、及び「略南北に延びるリブより西側の区画」の各区分についてそれぞれ見た場合には、上記3(2)ないし(4)で判断したとおり、「ジオフォームEPS16の上面」が、いずれの区分においても本件特許発明の構成要件Cにおける「2以上の凸部」または「前記発泡樹脂盤の垂直断面において確認される3以上の凹部の存在により実質的に形成される2以上の凸部(上記凸部、あるいは上記凹部の存在により実質的に形成される凸部において空気層を有するものを除く)」を有しているということができない。
そのため、イ号構造における「ジオフォームEPS16の上面」と「ベタ基礎の下面」とは、構成<c>における「地盤置換範囲で、平面視において略十字のリブで区分された区画」のうち、「北東側の区画」、「南東側の区画」、及び「略南北に延びるリブより西側の区画」のいずれの区分においても、本件特許発明の構成要件Dのうち、「前記発泡樹脂盤の上面と前記ベタ基礎の下面との間において2以上の連続的な凹凸形状面を有する界面が形成されている」という構成を充足しているということができない。
したがって、イ号構造の構成<d>は、本件特許発明の構成要件Dを充足しない。

5 構成要件Eについて
構成<e>の「ベタ基礎、及び地盤置換したスラブ下構造」は、技術常識から、建造物用の構造であり、基礎構造であることが明らかである。
したがって、イ号構造の構成<e>は、本件特許発明の構成要件Eを充足する。


6 被請求人の主張について
答弁書における被請求人の主張について検討する。

(1)イ号構造のリブ領域の構成について
ア 被請求人の主張
被請求人は答弁書において、イ号構造のリブ領域の構成について、次のように主張している(答弁書第9頁第11行?第10頁第1行)。
「(二)(1).御庁からの審尋に対する請求人の回答書のA断面図によれ
ば、リブ、凹部及び上面領域は、何れも土木シート+厚さ10
0mmの砕石+厚さ20mmの調整砂による下地構造が採用さ
れている点において共通している。
(2).リブ、凹部、平坦領域は、それぞれ厚さ100mmのEP
S20による発泡スチロール、厚さ280mmのEPS16に
よる発泡スチロール、厚さ400mmのEPS16による発泡
スチロールが採用されている。
但し、リブの場合には、厚さ100mmの調整コンクリート
がベタ基礎と前記発泡スチロールとの間に介在している。
(三).かくして、リブ、凹部及び平坦頷域の構成は、別紙のイ号各断面
図に示す通りであって、何れも下地構造の上にそれぞれ厚さの異な
る発泡樹脂材が採用され、かつ相互に接した状況にある。」
また、被請求人は、「イ号各断面図」、並びにイ号の「A-A方向断面図」及び「B-B方向断面図」として、上記第3の3(2)イ、ウ(イ)及び(ウ)に摘記した図を、答弁書の別紙として提出しており、被請求人が提出する「イ号各断面図」には、「リブ」において「ベタ基礎」の直下に「調整コンクリート」が配置され、「調整コンクリート」の直下に「EPS20による発砲樹脂材」が配置される様子、及び、「リブ」における「EPS20による発泡樹脂」の深さ範囲が、「凹部」及び「発泡樹脂ブロックによる平坦領域」における「EPS16による発泡樹脂材」が配置される深さ領域と重複する様子が、示されている。
さらに、被請求人が提出するイ号の「A-A方向断面図」及び「B-B方向断面図」には、リブの箇所において、「EPS20による発泡樹脂」が両側の「EPS16による発泡樹脂」を接続し、「EPS16による発砲樹脂材」及び「EPS20による発砲樹脂材」が、リブの箇所をまたいで、発砲樹脂材の連続した上面を形成する様子が、示されている。
そのうえで、被請求人は、イ号構造の構成は、A-A方向に着目すれば上記第3の3(3)アに示すとおりに特定されるべきものであり、B-B方向に着目すれば上記第3の3(3)イに示すとおりに特定されるべきである旨を主張している。

被請求人の上記主張は、以下のような趣旨と整理することができる。
(ア)イ号構造において、「リブ」の箇所では、ベタ基礎の下面の直下に、厚さ100mmの調整コンクリートが存在し、厚さ100mmの調整コンクリートの直下に、厚さ100mmのEPS20による発泡スチロールが存在する。
(イ)「リブ」の箇所における上記(ア)の構造のために、上記「リブ」の両側でベタ基礎の下面の下に厚さ400mmの範囲で存在する、EPS16による発泡スチロールの深さ範囲は、リブの箇所におけるEPS20による発泡スチロールが存在する深さ範囲と、重複する。
(ウ)上記(ア)及び(イ)より、リブの箇所において、「EPS20による発泡樹脂」は、リブの両側の「EPS16による発泡樹脂」を接続し、「EPS16による発砲樹脂材」及び「EPS20による発砲樹脂材」は、リブの箇所をまたいで、発砲樹脂材の連続した上面を形成する。
(エ)上記(ア)?(ウ)より、イ号構造として、「発泡樹脂盤の上面」について、「リブ」を「凹部」として「連続した状態にて形成」された「上面」という構成「c」及び「(c)」が特定されるべきであり、「前記発泡樹脂盤の上面と前記ベタ基礎の下面との間」に「形成」される「界面」について、「リブ」を「凹部」として「連続した状態の凹凸形状面」という構成「d」及び「(d)」が特定されるべきである。

(イ)検討
上記被請求人の主張について検討する。
イ号図面(1)及び(2)におけるA断面図、及び、請求人が回答書に添付して提出したイ号図面(2)のA断面図の拡大図において、「リブ」の箇所では、「ベタ基礎」の下面であるGLより80mm下の深さから、周囲の「ジオフォームEPS16」が配置される下限の位置であるGLより480mm下の深さ位置まで、灰色に塗られており、「ジオフォームEPS16」あるいは「ジオフォームEPS20」を示す斜め十字の網掛けはなされていない。これらイ号図面において、リブの箇所では、GLより480mm下の深さ位置から、「調整コンクリートt100」が配置されており、「ジオフォームEPS20」が配置されているのは、GLより480mm下の深さ位置から配置される「調整コンクリート」の、さらに下であり、GLより580mm下の深さ位置からである。
そのため、イ号構造において、「リブ」の箇所でベタ基礎の下面の直下に調整コンクリートが配置され、その直下にEPS20による発泡スチロールが配置されているということはできず、被請求人の上記ア(ア)の主張は、イ号図面を離れて独自に作図した構造に依拠したものである。また、上記ア(ア)の主張を前提として、「リブ」の箇所における「ジオフォームEPS16」と「ジオフォームEPS20」との深さ範囲が重複している旨、及び「リブ」の箇所において発砲樹脂材が接続され発砲樹脂材の上面が連続している旨をいう、被請求人による上記ア(イ)及び(ウ)の主張についても、同様である。
そして、上記ア(ア)?(ウ)の主張を前提として、「リブ」の箇所を「凹部」の一つとして「発泡樹脂盤の上面」が「連続」する構成「c」及び「(c)」、並びに、「リブ」の箇所を「凹部」の一つとして「前記発泡樹脂盤の上面と前記ベタ基礎の下面との間」に「形成」される「界面」が「連続」する構成「d」及び「(d)」が特定されるべき旨をいう、被請求人による上記ア(エ)の主張についても、イ号図面を離れて独自に作図した構造に依拠したものである。
したがって、被請求人による上記アの主張は、イ号構造の構成についての妥当な主張として、採用することができない。

(2)本件特許発明の構成要件C及びDと、イ号構造の構成との対比について
ア 被請求人の主張
被請求人は答弁書において、イ号構造の構成は、A-A方向に着目すれば上記第3の3(3)アに示すとおりに特定されるべきものであり、イ号構造の構成cは本件特許発明の構成要件Cに該当し、またイ号構造の構成dは本件特許発明の構成Dに該当する旨を主張している(第10頁第3行?第21行、及び第12頁第9行?第15行)。
また、被請求人は同答弁書において、イ号構造の構成は、B-B方向に着目すれば上記第3の3(3)イに示すとおりに特定されるべきであり、イ号構造の構成(c)は本件特許発明の構成要件Cに該当し、またイ号構造の構成(d)は本件特許発明の構成Dに該当する旨を主張している(第10頁第22行?第11頁第19行、及び第12頁第16行?第22行)。

イ 検討
上記被請求人の主張について検討する。
被請求人が主張するイ号構造の構成c及びd、並びに構成(c)及び(d)は、上記(1)イに検討したとおり、イ号図面を離れて、被請求人が独自に作図した構造に依拠した構成である。
そして、イ号構造の構成は、上記第3の4(3)に示すとおり特定されるべきものであり、イ号構造の構成が本件特許発明の構成要件C及びDを充足しないことは、上記3及び4に示したとおりである。
したがって、被請求人による上記イの主張も、妥当なものとして採用することができない。


第5 むすび
以上のとおり、イ号図面に示す基礎構造は、本件特許発明の構成要件C及びDを充足しないから、イ号図面に示す基礎構造は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。

よって、結論のとおり判定する。

 
判定日 2020-10-27 
出願番号 特願2004-60319(P2004-60319)
審決分類 P 1 2・ - ZA (E02D)
最終処分 成立  
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 住田 秀弘
有家 秀郎
登録日 2009-11-06 
登録番号 特許第4402983号(P4402983)
発明の名称 建造物用基礎構造及びその施工方法  
代理人 細井 勇  
代理人 水野 博文  
代理人 赤尾 直人  
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