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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B67C
審判 全部無効 2項進歩性  B67C
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  B67C
管理番号 1368438
審判番号 無効2016-800043  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-04-06 
確定日 2020-10-06 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3668240号発明「アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3668240号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-15〕について訂正することを認める。 特許第3668240号の請求項1?8、10?15に係る発明についての特許を無効とする。 特許第3668240号の請求項9についての本件審判の請求を却下する。 審判費用は被請求人の負担とする。 
理由 第1.請求及び答弁の趣旨
請求人は、特許第3668240号の請求項1ないし15に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請人の負担とする、との審決を求めている。
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めている。

第2.手続の経緯
本件に係る主な手続の経緯を以下に示す。
平成14年 6月 5日 本件国際特許出願(パリ条約による優先権
主張 外国庁受理 2001年9月28日
オーストラリア(AU))
平成17年 4月15日 設定登録(特許第3668240号)
平成28年 4月 6日 本件審判請求
平成28年 8月12日付け 答弁書
平成28年 9月16日付け 審理事項通知(1)
平成28年10月28日付け 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成28年10月28日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成28年11月 2日付け 審理事項通知(2)
平成28年11月21日付け 口頭審理陳述要領書(2)(請求人)
平成28年11月21日付け 口頭審理陳述要領書(2)(被請求人)
平成28年11月22日付け 口頭審理当日進行メモ
平成28年11月24日付け 口頭審理陳述要領書(3)(請求人)
平成28年11月25日 口頭審理
平成28年12月 9日付け 上申書(請求人)
平成29年 1月 6日付け 上申書(被請求人)
平成29年 1月20日付け 上申書(被請求人)
平成29年 2月 8日付け 上申書(請求人)
平成29年 3月29日付け 審決の予告
平成29年 7月 4日付け 訂正請求書
平成29年 7月 4日付け 上申書(被請求人)
平成29年 9月25日付け 弁駁書
平成29年11月16日付け 上申書(被請求人)
平成29年12月26日 補正許否の決定
平成30年 1月29日付け 上申書(請求人)
平成30年 2月 1日付け 上申書(請求人)

なお、補正許否の決定は平成29年12月26日に行い、同一の決定について、請求人に対しては平成29年12月26日付け、被請求人に対しては平成30年1月4日付けで通知した。

以下、「甲第1号証の1」、「乙第1号証」等を、「甲1の1」、「乙1」等と略記し、また、「甲1の1」とその抄訳の「甲1の2」等を、総称して「甲1」等という。ただし、「甲16の1」、「甲16の2」、「甲16の3」については、総称せずに別個のものとして取り扱う。また「甲1に記載の発明」を「甲1発明」という。また、請求人又は被請求人が提出した「口頭審理陳述要領書1」等を、「請求人要領書1」等又は「被請求人要領書1」等ということがある。
書面における行数は、行数を示す記載があるときはそれに従い、そのような記載がないときは空白行は除いて数えた行数によることとする。摘記事項における「・・・」は、記載の省略を表す。

第3.訂正の請求について
1.訂正の内容
平成29年7月4日付け訂正請求書による訂正は、「特許第3668240号の明細書、特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?15について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲及び明細書を、次のように訂正するものである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「35ppm未満の遊離SO_(2)と、300ppm未満の塩化物と、800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワインを製造するステップ」との記載を、
「アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワインとして、35ppm未満の遊離SO_(2)と、300ppm未満の塩化物と、800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワインを意図して製造するステップ」
に訂正する。
(請求項1を引用する請求項2?8及び10?15についても同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項9を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項10において、
「請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。」
との記載を、
「請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。」
に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項11において、
「請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法により製造可能な、充填されたワイン。」
との記載を、
「請求項1から8及び10のいずれか1項に記載の方法により製造可能な、充填されたワイン。」
に訂正する。
(請求項11の記載を引用する請求項12から15についても同様に訂正する。)。

(5)訂正事項5
明細書の段落0005において、
「35ppm未満の遊離SO_(2)と、300ppm未満の塩化物と、800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワインを製造するステップ」との記載を、
「アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワインとして、35ppm未満の遊離SO_(2)と、300ppm未満の塩化物と、800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワインを意図して製造するステップ」
に訂正する。

2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア.訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明の「ワインを製造するステップ」について、「アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワインとして」当該ワインを製造するステップであり、当該ワインを「意図して」製造するステップであるという限定事項を追加するものである。
よって、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.また、上記アのとおり訂正事項1は、発明特定事項を直列的に付加するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項の規定によって準用される同法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ.そして、訂正事項1は、本件特許明細書の段落0005に、発明の概要として、「本発明は1つの形態において、アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法であって、該方法が:35ppm未満の遊離SO_(2)と、300ppm未満の塩化物と、800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワインを製造するステップと;・・・とを含む、アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法を提供する。」と記載され、段落0015に「本発明の方法に必要となるワインは、下記のような特定のブドウ栽培及びワイン製造技術によって製造することができる。あるいは、規定レベルよりも高いレベルの構成成分でワインを処理し、これらの構成成分を除去するか又はこれらの構成成分の含有率を本発明に必要となる含有率まで低下させることにより、ワインを製造してもよい。」と記載されていることを考慮すれば、明細書には、「ワイン中の塩化物及びスルフェートの濃度について着目して、意図して上記要件のワインを製造するという技術思想」が記載されていることが明らかである。また、段落0015の冒頭で、「本発明の方法に必要となるワインは、」と記載されていることから明らかなとおり、ここで意図して製造されるワインは、「本発明の方法に必要となるワイン」である。そして、「本発明」とは、段落0001や段落0005に記載されているとおり、「アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法」である。
以上を考慮すれば、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。
よって、訂正事項1は、特許法第134条の2第9項の規定によって準用される同法第126条第5項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項9を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。そして、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
よって、訂正事項2については、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第134条の2第9項の規定によって準用される同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の特許請求の範囲の請求項10の「請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。」との記載を、「請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。」に訂正するものであり、引用請求項を減少させる訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。そして、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
よって、訂正事項3については、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第134条の2第9項の規定によって準用される同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の特許請求の範囲の請求項11の「請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法により製造可能な、充填されたワイン。」との記載を、「請求項1から8及び10のいずれか1項に記載の方法により製造可能な、充填されたワイン。」に訂正するものであり、引用請求項を減少させる訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。そして、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
よって、訂正事項4については、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第134条の2第9項の規定によって準用される同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。そして、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
よって、訂正事項5については、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、同法第134条の2第9項の規定によって準用される同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。

(6)一群の請求項
訂正前の請求項2?15は、直接あるいは間接に請求項1を引用するものであるから、請求項1?15は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項である。
したがって、請求項1?15についての訂正事項1ないし5は、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第134条の2第3項の規定に適合する。

(7)訂正事項1、5に対する請求人の主張について
訂正事項1、5について、弁駁書の段落7(1)イ(ア)、(イ)a、b(3?4頁)において請求人は、訂正事項1における「アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワインとして」との文言の加筆によって要件が限定されることにはならないこと、訂正前の「・・・ワインを製造する」の記載と訂正後の「・・・ワインを意図して製造する」との記載とは同義であることから、特許請求の範囲が減縮されることにはならない旨を主張する。しかし、当該訂正によって、「アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワインとして、35ppm未満の遊離SO_(2)と、300ppm未満の塩化物と、800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワイン」を「意図」せずに製造するものは、特許請求の範囲から除外されることから、当該訂正は特許請求の範囲の減縮に該当する。
また、弁駁書の段落7(1)イ(イ)c(4?5頁)において請求人は、「意図」とは行為を行う者の主観(内心)の状態を説明する言葉であり、技術的な観点から見て、どのような場合が「意図して製造する」場合で、どのような場合が「意図せずに製造する」場合なのかを、当業者が外形的・客観的に判断することができないから、「意図して製造する」との訂正は技術的に明確であるとはいえず、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない旨を主張する。しかし、「意図して製造する」とは、「アルミニウム缶内」にパッケージングするためのワインとして、「35ppm未満の遊離SO_(2)と、300ppm未満の塩化物と、800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワイン」となるよう、「特定のブドウ栽培及びワイン製造技術によって製造」あるいは「規定レベルより高いレベルの構成成分」を「除去」又は「低下」させて製造することを意味することが本件特許明細書の段落0015等の記載から明らかであるから、「意図して製造する」との訂正は技術的に明確であって、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3.まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とし、かつ同条第3項、並びに同条第9項の規定によって準用される同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-15〕について訂正を認める。

第4.本件特許に係る発明
1.上記第3に示したとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1?15に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明15」という。また、これらをまとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の記載からみて、その訂正特許請求の範囲の請求項1?15に記載された次のとおりのものである。(分説記号は請求書に従い当審で付与。)

《本件発明1》
1A アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法であって、該方法が:
1B アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワインとして、35ppm未満の遊離SO_(2)と、300ppm未満の塩化物と、800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワインを意図して製造するステップと;
1C アルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティングされているツーピースアルミニウム缶の本体に、前記ワインを充填し、缶内の圧力が最小25psiとなるように、前記缶をアルミニウムクロージャでシーリングするステップと
1D を含む、アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法。

《本件発明2》
2A 缶の中で缶を直立状態にして30℃で3ヶ月保存したワインの中のアルミニウム含有量の上昇率が最大で約30%である、
2B 本件発明1記載の方法。

《本件発明3》
3A 前記ワインがさらに、250ppm未満の総二酸化硫黄レベルを有することを特徴とする、
3B 本件発明1又は2に記載の方法。

《本件発明4》
4A 前記ワインがさらに、100ppm未満の総二酸化硫黄レベルを有することを特徴とする、
4B 本件発明1又は2に記載の方法。

《本件発明5》
5A 前記ワインがさらに、30ppm未満の総ニトレートと、900ppm未満の総ホスフェートと、6g/リットル?9g/リットルの範囲の酒石酸として算出された酸性度とを有することを特徴とする、
5B 本件発明1から4までのいずれか1項に記載の方法。

《本件発明6》
6A 前記ワインが充填前に冷却される、
6B 本件発明1から5までのいずれか1項に記載の方法。

《本件発明7》
7A 前記耐食コーティングが熱硬化性コーティングである、
7B 本件発明1から6までのいずれか1項に記載の方法。

《本件発明8》
8A クロージャによるシーリング後の頭隙が、80?97%v/vの窒素と、2?20%v/vの二酸化炭素との組成を有する、
8B 本件発明1から5及び7のいずれか1項記載の方法。

《本件発明9》
(削除)

《本件発明10》
10A 前記頭隙が、330ミリリットル缶の場合に、2?5mmの範囲にある、
10B 本件発明1から8までのいずれか1項に記載の方法。

《本件発明11》
11A 充填されたワインであって、本件発明1から8及び10までのいずれか1項に記載の方法により製造可能な、充填されたワイン。

《本件発明12》
12A 前記ワインが非発泡赤ワインである、
12B 本件発明11に記載の充填されたワイン。

《本件発明13》
13A 前記ワインが非発泡白ワインである、
13B 本件発明11に記載の充填されたワイン。

《本件発明14》
14A 前記ワインが炭酸赤ワインである、
14B 本件発明11に記載の充填されたワイン。

《本件発明15》
15A 前記ワインが炭酸白ワインである、
15B 本件発明11に記載の充填されたワイン。

2.本件特許明細書の記載について
(1)本件特許明細書の発明の詳細な説明
本件発明に係る特許請求の範囲は、上記1.のとおりであるところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
ア.技術分野
本発明は、アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法に関する。本発明はまた、本発明の方法に従ってワインが充填されたアルミニウム缶に関する。(段落0001)
イ.発明の背景
ワインの好ましい保存手段として、ガラス瓶の使用が発展した。ほとんど例外なしに瓶が使用されてはいるものの、瓶は比較的重く、かつ比較的壊れやすいという欠点を有する。(段落0002)
ワイン以外の飲料、例えばビールやソフトドリンクの場合、金属缶やポリエチレンテレフタレート(PET)のような、代わりとなる包装容器が幅広く採用されている。これらの包装容器は、より軽量で、かつ耐破損性がより大きいという利点をもたらす。このような代わりの容器にワインを保存することが提案されている。しかし、ワインに対してこのようなタイプのパッケージングを利用しようという試みは概ね不成功に終わっている。いくつかの極めて低品質のワインは、ポリ塩化ビニル容器内に保存される。このような不成功の理由は、ワイン中の物質の比較的攻撃的な性質、及び、ワインと容器との反応生成物の、ワイン品質、特に味質に及ぼす悪影響にあると考えられる。(段落0003)
アルミニウム缶内にワインをパッケージングし、これによりワインの品質が保存中に著しく劣化しないようにすることが望ましい。(段落0004)
ウ.発明の詳細な説明
本発明の方法に必要となるワインは、下記のような特定のブドウ栽培及びワイン製造技術によって製造することができる。あるいは、規定レベルよりも高いレベルの構成成分でワインを処理し、これらの構成成分を除去するか又はこれらの構成成分の含有率を本発明に必要となる含有率まで低下させることにより、ワインを製造してもよい。本発明において、「ワイン」という用語は、極めて広範囲に使用され、この用語には非発泡ワイン、発泡ワインならびに強化ワイン、及びミネラルウォーター及びフルーツジュースとブレンドされたワインが含まれる。(段落0015)
エ.特定のブドウ栽培及びワイン製造技術
(ア)ブドウ栽培
ブドウ栽培に関して、不都合な化学薬剤散布を用いないことを保証することにより、望ましくない物質の不存在を達成することができる。化学薬剤散布を使用する際には、監視が必要となる。それというのもこのような化学薬剤散布はまた、最終ワイン製品中に望ましくない化学物質が全体的に蓄積することに対して影響を与えるからである。ブドウの木のほとんどの病気は、未剪定のブドウの木を繁茂させるために熱又は湿分を必要とし、このことにより、さらに化学薬剤散布が必要になるというジレンマにますます陥ることになる。(段落0016)
ブドウの品質、より高い発生率のボツリチス、粉末饂飩粉病及び綿毛饂飩粉病を形成する上で、日陰が主要な役割を有する。ここでもまた、化学的な介入が必要となる。硫黄を基剤とする防カビ剤を使用することができるが、しかしこれらの防カビ剤は、許容範囲を超えたレベルの硫黄を導入する。未剪定のブドウの木の房は、過剰な青臭い不快な風味を有するコクのないワインを生成する。光は最大の自然資産の1つであるが、忘れられることが多く、軽視されがちである。焦点をあわせるべきなのは、木自体内で「調和的バランスがとれたブドウの木」である。ブドウと、葉と、茎と、木部と、根との正しい比率がこのようにバランスがとれた状態で生じれば、必要となる化学的介入は最小限で済む。(段落0017)
過剰な灌漑の名残が「バランスを崩した」作物である。過剰に豊富な天蓋のある場所での作物は、日陰果実及び熟成の遅れをもたらす。また収穫前の過剰な灌漑は、液果に水分と化学的取込み物質とを過剰に供給し、液果の本来の状態を変えてしまう。ここでもまた、さらに加工ラインに沿った化学的対策が必要となる。一定電子土壌水分モニターによる細流灌漑が好ましい選択肢である。(段落0018)
好ましくはブドウは(果実を過度に損傷しないように細心の注意を払って)手摘みし、涼しい環境(8℃?16℃)中で好ましくは夜間に収穫するべきである。「赤」の場合、pHは3.1?3.8であると共にボーメ(Baume)は13.0?14.0の範囲にあり、「白」の場合、pHは3.0?3.5であると共にボーメ(Baume)は10.0?13.0である。野生酵母の分解を最小限に抑えるように、最小量の二酸化硫黄の散布が必要とされる。発酵に際しては野生酵母に頼るのが好ましい。(段落0019)
(イ)ワイン製造
赤ワインの場合、収穫後できるだけ早く、好ましくは収穫から12時間以内に圧搾及び除茎を行わなければならない。高品質ワインを製造するには、圧搾の前に除茎を行うことが強く推奨される。その利点は、渋みのある、葉が茂った草質の茎を含有しないことにより、味質を改善できることである。予想アルコール強度は0.5%も高くなる。なぜならば、水を含有し、かつ糖を含有しない茎はアルコールを吸収するからである。茎の色素を回避することにより、色合いが強くなる。茎と共に発酵すると、加工が促進された時には、より多量の酸素が取り込まれるようになる。発明者にとって発酵時に必要となるのは速度ではなく、安定性及び品質だけである。除茎及び圧搾を行ったあと、マストを発酵容器にポンプ供給し、酒石酸で調整し、酵母を必要なレベルに調整し、最小限の二酸化硫黄を添加する。(段落0020)
この容器は、過剰な発酵ガスを排出するように、また酸素が入らないように、気泡システムを備えている。酸素の流入はパンチング(叩き込み)の時にだけ発生する。このようなエアレーション量は、酵母増殖及び完全な糖発酵にとって重要である。(段落0021)
規則的な間隔を置いて(10?12時間毎に)皮を叩き込み、ほぼ25℃の周囲温度を維持することが、発酵プロセスにおいて重大である。ドライ・キャップが酸化を可能にし、温度がより高く又はより低くなると、このことは発酵ジュースに悪影響を与える。浸漬中の安定性が次の14?21日間の重要な要素となる。一日0.7?1.0のボーメ減少が「ベンチマーク」となるように、ボーメを常に監視する。ボーメが0°?1°に達したら、しぼりかす又はブドウ塊は「バスケット・プレス」される。(段落0022)
プレスは、注意深くかつ鋭敏に監視することが必要である。過剰のプレスは強力な渋み物質、フェノール成分、及び強力な粗タンニンを形成する。バランスのとれたプレスは、結果として行われる重化学的な清澄、無用のブレンド及び化学的介入の必要性を軽減する。(段落0023)
この段階において、自由流動するジュースとプレスされたジュースとの組み合わせは、亜硫酸塩で予め処理されて滅菌された、使用済みの又は新しいアメリカンオーク、フレンチオークに移され、自然制御された温度環境内で保存される。温度範囲は15℃?25℃である。充填後、樽をゴム製の槌で数回打ち、これにより気泡を除去し、25mm以内の樽口から補充する。樽はエアロックを備えており、樽内での発酵の進行が可能である。このプロセスは完成するのに3?4ヶ月かかる(この時間係数は、宿主環境における湿度及び温度の変動に関連する)。この段階の頃に、接種によって、又はワイン醸造場において固有の場合には自然に、リンゴ酸-乳酸発酵が生じる。(段落0024)
発酵が完了した後、樽をおり引きし、清浄化し、滅菌し、軽く亜硫酸塩処理し、充填し、エアロックを取り外す。充填後、樽をゴム製の槌で数回打つことにより気泡を除去し、補充して栓をする。次いで樽を鉛直方向に対して30°の角度を成すように位置決めする。(段落0025)
若いワインからは沈殿物を除去して、酵母菌、細菌体、及び腐敗を生じさせる有機異物を減少させ、亜硫酸水素塩を回避できるようにすることが必要である。(段落0026)
優れた品質を探求する上で、エアレーションはもう一つの自然の成り行きである。このファクタは、酵母形質転換及び結果として得られるワインの安定性の達成を容易にする。発酵媒質中では、種々異なる沈殿領域が発生して、当然遊離二酸化硫黄レベルを形成することになる。おり引きはこれらの層に相乗効果を与えて、これらを一致させる。この段階における亜硫酸塩処理の要件は、従ってより厳密である。(段落0027)
おり引きの頻度は異論の多い問題であり、一年目では2?3ヶ月毎の時間枠が完全に許容され得るが、しかし現実のファクタ、例えばタンク又は樽のサイズ、貯蔵庫内の温度及びワインの種類に応じて、貯蔵庫責任者が決定する。責任者の技能及び経験が、最終的な要件を見極めることになる。懸濁させられた物質の沈下を促進するには、100リットル当たり1?3の割合で卵白清澄することが必要となる。(段落0028)
12?18ヶ月間桶内で熟成させた後、少なくとも3?4回おり引きし、分析し、テイスティングし、軽く亜硫酸塩処理し、(100%必要ならば)ワインが傷んでおらず、発酵性糖を含有しておらず、完全にリンゴ酸-乳酸発酵させられたことを認識した後、ワインはブレンド準備完了状態となる。このことはこれまでの12?18ヶ月、及び、収穫に至るまでの数ヶ月になされた努力の最終的な報酬である。(段落0029)
白ワインの場合、圧搾の前にブドウを除茎する。ジュースのpHは、酒石酸でpH3.0?3.4に調整される。皮接触時間は、ブドウの品種、原産地、周囲温度及びタンニンの量又は渋み作用のあるフェノール成分の要件に関連する。二酸化炭素を添加しながら、マストから水分を流出させる。(段落0030)
発酵温度は10?16℃の範囲にある。0.4?0.8ボーメの糖含量減少が目標である。発酵後、ワインのかすを沈殿させ、二酸化炭素のもとでおり引きし、二酸化硫黄を添加する。(段落0031)
白ワインに付随する全ての手順において、何があっても空気に対する暴露は回避しなければならず、低温環境が実現される。上述のようにして製造されたワインは、35ppm未満の遊離二酸化硫黄レベルと、250ppm未満の総二酸化硫黄レベルとを有する。酸、塩化物、ニトレート及びスルフェートを形成することができる陰イオンレベルは、規定の最大値未満である。(段落0032)
本発明は、頭隙に窒素を必要としない発泡ワインに適用することもできる。それというのも、所要の缶強度を提供するのには二酸化炭素で充分だからである。(段落0033)
オ.缶充填
本発明に適したツーピース缶は、ソフトドリンク及びビール飲料に現在用いられている缶である。この缶のライニングも同様であり、典型的には、ホルムアルデヒドを基剤とする架橋剤と組み合わされたエポキシ樹脂である。使用される膜厚は、典型的にはビール又はソフトドリンクに用いられているものよりは厚い。典型的には、175mg/375ml缶が、適切な膜厚をもたらすことが判った。内部をコーティングされた缶は、典型的には165?185℃の範囲の温度で20分間ベーキングすることができる。良好に架橋された不透過性膜によって、保存中に過度のレベルのアルミニウムがワイン中に溶解しないことを保証することが重要である。(段落0034)
缶充填プロセスは、ほぼ0.1mlの液体窒素を、本体のクロージャのシーム形成直前に添加することに関与する。缶の内部圧力は、ほぼ25?40psiである。(段落0035)
あるいは、ワインは、カーボネータとして知られる装置においてワインと二酸化炭素ガスとを混合することにより、炭酸ガス飽和させることもできる。このようなタイプの装置はよく知られており、ソフトドリンク業界において広く使用されている。(段落0036)
上述のように、アルミニウム缶内でのワインの保存安定性は極めて重大である。頭隙が酸素を含むボトリングされたワインとは異なり、本発明の缶の頭隙が有する酸素レベルは極めて低い。すなわち、このワインは保存中「老化」しない。(段落0037)
カ.試験、効果
試験を目的として、パッケージングされたワインを、周囲条件下で6ヶ月間、30℃で6ヶ月間保存する。50%の缶を直立状態で、50%の缶を倒立状態で保存する。(段落0038)
製品を2ヶ月の間隔を置いて、Al、pH、°ブリックス(Brix)、頭隙酸素及び缶の目視検査に関してチェックする。1つの変数当たり、6つの缶を倒立させ、6つの缶を直立させる。目視検査は、ラッカー状態、ラッカーの汚染、シーム状態を含む。試料は12ヶ月保存しなければならない。官能試験は、味覚パネルによる認識客観システムを用いる。(段落0039)
その結果、初期に対するAl含有量上昇率が3ヶ月後に30%(直立)又は36%(倒立)、6ヶ月後に44%(直立)又は36%(倒立)であって、(段落0041)許容可能なワイン品質が味覚パネルによって確認された。(段落0042)

(2)本件発明の特徴
上記(1)によれば、本件発明の特徴は、以下のとおりである。
ア.本件発明は、アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法に関する。本件発明はまた、本件発明の方法に従ってワインが充填されたアルミニウム缶に関する。(段落0001)
イ.ワインの好ましい保存手段として、ほとんど例外なしにガラス瓶が使用されてはいるものの、瓶は比較的重く、かつ比較的壊れやすいという欠点を有する。(段落0002)
ワイン以外の飲料で用いられる金属缶やポリエチレンテレフタレート(PET)のような、代わりとなる包装容器は、より軽量で、かつ耐破損性がより大きいという利点をもたらす。このような代わりの容器にワインを保存することが提案されている。しかし、ワインに対してこのようなタイプのパッケージングを利用しようという試みは概ね不成功に終わっている。このような不成功の理由は、ワイン中の物質の比較的攻撃的な性質、及び、ワインと容器との反応生成物の、ワイン品質、特に味質に及ぼす悪影響にあると考えられる。(段落0003)
本件発明の目的は、ワイン中の物質の比較的攻撃的な性質、及び、ワインと容器との反応生成物の、ワイン品質、特に味質に及ぼす悪影響を抑制しながら、アルミニウム缶内にワインをパッケージングし、これによりワインの品質が保存中に著しく劣化しないようにする、アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法を提供することである。(段落0003、0004)
ウ.上記イ.の目的を達成するために、特定のブドウ栽培及びワイン製造技術(段落0016?0033)によってワインを製造するか、あるいは、規定レベルよりも高いレベルの構成成分でワインを処理し、これらの構成成分を除去するか又はこれらの構成成分の含有率を本発明に必要となる含有率まで低下させることにより(段落0015)、35ppm未満の遊離二酸化硫黄レベルと、250ppm未満の総二酸化硫黄レベルとを有するものであり、酸、塩化物、ニトレート及びスルフェートを形成することができる陰イオンレベルが、特許請求の範囲に規定の最大値未満のワインを製造する(段落0032)。そして、典型的には、ビール又はソフトドリンクに用いられているものよりは厚い、ホルムアルデヒドを基剤とする架橋剤と組み合わされたエポキシ樹脂である良好に架橋された不透過性膜によって、保存中に過度のレベルのアルミニウムがワイン中に溶解しないことを保証したツーピース缶に、缶の内部圧力がほぼ25?40psiとなるように上記ワインを充填し、パッケージングする。(段落0035)
エ.上記ウ.の方法によりパッケージングされたワインは、30℃で6ヶ月間保存したときに、初期に対するAl含有量上昇率が3ヶ月後に30%(直立)又は36%(倒立)、6ヶ月後に44%(直立)又は36%(倒立)であって、(段落0041)許容可能なワイン品質が味覚パネルによって確認された。(段落0042)

第5.当事者の主張の要旨及び証拠方法
1.請求人の主張の要旨及び証拠方法
(1)審判請求書に記載された無効理由
請求人の主張の全趣旨からみて、審判請求書に記載された請求人が主張する無効理由は以下のとおりであり、これについて当事者間に争いはない。(審理事項通知(1)の第3の1、2、4、審理事項通知(2)の第2、口頭審理当日進行メモの第2、第1回口頭審理調書の審判長欄の2)

ア.無効理由1
本件発明1ないし4、6、9ないし15は、甲1発明、甲2に記載された技術的事項、甲3、4から把握される周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明5は、甲1発明、甲2に記載された技術的事項、甲3、4、9、11から把握される周知技術1ないし3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明7は、甲1発明、甲2に記載された技術的事項、甲3ないし8から把握される周知技術1、5に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明8は、甲1発明、甲2に記載された技術的事項、甲3、4から把握される周知技術1、甲10から把握される技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件発明1?15は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。

イ.無効理由2
(ア)本件発明1について
a.本件発明1の「35ppm未満の遊離SO_(2)と、300ppm未満の塩化物と、800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワインを製造するステップ」なる発明特定事項に関し、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者が本件発明1を実施することができる程度の記載がない。
b.また、本件発明1の「アルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティングされているツーピースアルミニウム缶」の具体的材料として、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、熱硬化性コーティングが望ましいこと(段落0009)、エポキシ樹脂とすること(段落0034)の記載があるが、エポキシ樹脂以外のどのような樹脂を耐食性コーティングの材料とすべきかを認識できないので、当業者が本件発明1を実施することができる程度の記載がない。
よって、本件発明1は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反し、特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

(イ)本件発明2ないし15について
a.本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2ないし15も、上記(ア)で述べたことと同じ無効理由を有する。
b.また、本件発明5の「前記ワインがさらに、30ppm未満の総ニトレートと、900ppm未満の総ホスフェートと、6g/リットル?9g/リットルの範囲の酒石酸として算出された酸性度とを有することを特徴とする」、本件発明6の「前記ワインが充填前に冷却される」、本件発明8の「クロージャによるシーリング後の頭隙が、80?97%v/vの窒素と、2?20%v/vの二酸化炭素との組成を有する」、本件発明9の「前記ツーピース缶に前記ワインが充填される前に、前記ワインが炭酸ガス飽和させられ、これにより、シーリング後の前記頭隙は大部分が二酸化炭素となる」、本件発明10の「前記頭隙が、330ミリリットル缶の場合に、2?5mmの範囲にある」なる発明特定事項に関し、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者が本件発明5ないし15を実施することができる程度の記載がない。
よって、本件発明2?15は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反し、特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

ウ.無効理由3
(ア)本件発明1について
a.本件発明1の「35ppm未満の遊離SO_(2)と、300ppm未満の塩化物と、800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワインを製造するステップ」なる発明特定事項に関し、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、上記所定の組成を満たすワインについての記載がないため、発明の詳細な説明の段落0004に記載の本件発明の課題を解決できない。
b.また、本件発明1では「アルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティングされているツーピースアルミニウム缶」と記載されているところ、この「耐食コーティング」の具体的な材料については、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、熱硬化性コーティングとすることが好ましい旨が記載されると共に、エポキシ樹脂とする旨が記載されているのみであり、当業者といえども、本件発明1の内容まで発明の詳細な説明に記載された内容を拡張・一般化することはできない。
よって、本件発明1は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反し、特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

(イ)本件発明2ないし15について
a.本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2ないし15も、上記(ア)で述べたことと同じ無効理由を有する。
b.また、本件発明5の「前記ワインがさらに、30ppm未満の総ニトレートと、900ppm未満の総ホスフェートと、6g/リットル?9g/リットルの範囲の酒石酸として算出された酸性度とを有することを特徴とする」、本件発明6の「前記ワインが充填前に冷却される」、本件発明8の「クロージャによるシーリング後の頭隙が、80?97%v/vの窒素と、2?20%v/vの二酸化炭素との組成を有する」、本件発明9の「前記ツーピース缶に前記ワインが充填される前に、前記ワインが炭酸ガス飽和させられ、これにより、シーリング後の前記頭隙は大部分が二酸化炭素となる」、本件発明10の「前記頭隙が、330ミリリットル缶の場合に、2?5mmの範囲にある」なる発明特定事項についても、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載がなく、本件発明の課題を解決できない。
よって、本件発明2?15は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反し、特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

エ.無効理由4
本件発明8と、本件発明9とは技術的に両立せず、本件発明9を本件発明8に従属させると本願請求項9に係る発明の内容を理解することができない。
よって、本件発明9は特許法第36条第6項第2号の規定に違反し、特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

(2)証拠方法
甲1の1:R.Ferrariniら、“Il condizionamento del vino in contenitore d’alluminio”、1992、VIGNEVINI Numero5、p.59?64
甲1の2:甲1の1の抄訳
甲2の1:“Schweiz. Lebensmittelbuch、Kapitel 30、Wein(Wein aus Trauben)”、April 2001、12/14?14/14頁
甲2の2:甲2の1の抄訳
甲2の3:甲2の14/14頁の“Tabelle 30A.2”の抄訳
甲3:芝崎勲ら、“新版 食品包装講座”、日報出版、2007年6月4日第4刷(増補)発行、190?193頁
甲4:日本食品工業学会編、“新版 食品工業総合事典”、株式会社光琳、平成5年4月30日発行、842?843頁
甲5:特開昭62-52048号公報
甲6:特開昭63-241077号公報
甲7:特開昭60-34342号公報
甲8:特開平7-232737号公報
甲9:“醸造物の成分”、財団法人日本醸造協会編集発行、平成11年12月10日発行、294?295、352頁
甲10:石谷孝佑編“食品包装用語辞典”、株式会社サイエンスフォーラム、1993年7月25日第1版第1刷発行、52?53頁
甲11:岩野貞雄、“ワイン辞典”、株式会社柴田書店、1979年12月1日初版発行、218?219頁
甲11の2:岩野貞雄、“ワイン辞典”、株式会社柴田書店、1979年12月1日初版発行、398?403、454?455、468?469頁
甲11の3:岩野貞雄、“ワイン辞典”、株式会社柴田書店、1979年12月1日初版発行、190?193頁
甲12:“日本工業規格 包装用語”、財団法人日本規格協会、平成8年4月30日第1刷発行、16頁
甲13:“ジーニアス英和大辞典”、株式会社大修館書店、2001年4月25日初版発行、1940?1941頁
甲14:協和発酵工業株式会社のウェブサイトのプリントアウト“缶入り・低アルコールの気軽な微発泡ワイン『ワインスパーク(赤・白)』新発売!”と題する文書、掲載日:平成10年8月25日(印刷日:平成27年9月4日)、<URL:http://www.kyowa.co.jp/netext/nr980825.htm>
甲15:日本食糧新聞、平成10年9月21日、第11面
甲16の1:飲料総合専門誌ビバリッジジャパン、No.201、1998年9月号、26頁
甲16の2:協和発酵工業株式会社、ワインスパークに関する“仮暫定品質規格案/分析方法”と題する書面等、作成日:平成10年7月13日、同年6月7日
甲16の3:協和発酵工業株式会社、ワインスパークに関する“表示方法届出書”と題する書面、作成日:平成10年7月16日
甲17:信濃毎日新聞株式会社の“長野五輪のオフィシャルワイン発売 キリン・シーグラム”と題するウェブサイトのプリントアウト、掲載日:平成9年11月13日(印刷日:平成28年7月13日)、<URL:http://www.shinmai.co.jp/feature/olympic/199711/97111305.htm>
甲18:キリン ホットワインに関する写真撮影報告書 作成日:平成28年7月25日 作成者:請求人大和製罐従業員 長嶋 玲
甲19:キリン ホットワインに関する調査試験報告書 作成日:平成10年2月23日 作成者:請求人大和製罐
甲20:服部孝雄、“社員教育のための缶詰製造学”缶詰技術研究会、平成14年4月30日発行、16?17頁
甲21:日本食品工業学会編、“食品工業総合辞典”株式会社光琳、昭和54年10月25日発行、611頁
甲22:“化学大辞典9縮刷版”、共立出版株式会社、昭和52年9月20日第21刷発行、694?695頁
甲23:Expert witness code of conduct(鑑定人行動準則)、ビクトリア州最高裁判所作成
甲24:Second affidavit of Motohiro Kasahara(第2宣誓供述書)、笠原基広弁護士作成
甲25:欧州特許第1429968号明細書
甲26:欧州特許庁の審判部の審決書
甲27:中国特許第02823823.0号明細書
甲28:中華人民共和国国家知的財産権局特許再審委員会の無効審決
甲29:兒島洋一、岸元努、辻川茂男、“白ぶとう酒中におけるアルミニウムの腐食”、Zairyo-to-Kankyo、1996年、Vol.45、No.5、305?314頁
甲30:乙14の97頁のTable.3、98頁のTable.4の抄訳
甲31:Gloriesら、“Handbook of Enology Volume 2 The Chemistry of Wine Stabilization and Treatments 2nd Edition”、John Wiley & Sons、 Ltd、2006年発行、94?95頁
甲32:乙10の103頁の14?19行の抄訳
甲33:“THE LAND:Geography and Climate”と題するイスラエル外務省のウェブサイトのプリントアウト、印刷日:平成28年11月18日、<URL:http://mfa.gov.il/mfa/aboutisrael/land/pages/the%20land-%20geography%20and%20climate.aspx>
甲34:“ワイン産地まとめ(イスラエル)”と題するウェブサイトのプリントアウト、印刷日:平成28年11月18日、<URL:http://ministryofwine.jp/life/563.html>
甲35:国立研究開発法人 国立環境研究所の“土壌中におけるイオウの存在形態とその分別定量法の開発”と題するウェブサイトのプリントアウト、平成28年11月21日、<URL:https://www.nies.go.jp/kanko/news/14/14-4/14-4-04.html>
甲36:宮崎俊三、“缶詰の内面腐食”、鉄と鋼、1987年、第73年第3号、427?436頁
甲37:野口雅敏、“アルミニウムと缶”軽金属、1988年、Vol.38、No.7、414?p.425頁
甲38:インターネット百科事典ウィキペディアの”ボローニャ大学”のウェブサイトのプリントアウト、印刷日:平成28年11月22日、<URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/ボローニャ大学>
甲39:グーグル社が提供する検索エンジン(Google)で“ボローニャ 地図”と検索バーに入力して表示されたウェブサイトのプリントアウト、印刷日:平成28年11月22日、<URL:https://www.google.co.jp/maps/place/イタリア+ボローニャ/@45.3416428、5.5943558、6.5z/data=!4m5!3m4!1s0x477fd498e951c40b:0xa2e17c015ba49441!8m2!3d44.494887!4d11.3426163>
甲40:“Wine Book イタリアワイン事典 EMILIA-ROMAGNA”と題するウェブサイトのプリントアウト、印刷日:平成28年11月22日、<URL:http://www.italy-wine-jiten.com/north/emilia_r_1.html>
甲41:乙13の抄訳
甲42:横塚弘毅、“初めてのワイン分析” ASEV Jpn. Rep.、1990、Vol.1、No.2、65?89頁
甲43:土屋秀紀、“アルミ缶の特性ならびに腐食問題”、Zairyo?to-kankyo、51、2002年、293?298頁
甲44:R.M.STEVENSら、“Irrigation of grapevines with saline water at deifferent growth stages:Effects on leaf、wood and juice composition”、Australian Journal of Grape and Wine Reserch、2011年6月、Vol.17、Issue 2、Abstract
甲45:日下一尊、“酒類製造における硫黄の役割(バイオミディア)”生物工学会誌、2011年、89巻2号、83頁及び生物工学会誌89(2)目次
甲46:三村徹郎、“ミニレビュー 植物細胞における栄養塩輸送”、RADIO ISOTOPES、1995年、44巻299号、77?78頁
甲47:新村出編、広辞苑 平成20年1月11日 第6版第一冊発行
甲48:知財高判 平成28年(行ケ)第10160号 判決 平成29年7月12日 知財高裁
甲49:被請求人が関連侵害訴訟において平成29年7月5日付けで提出した被請求人第9準備書面

甲1の1?甲2の2、甲3?11は、審判請求時に提出され、甲2の3、甲11の2?49は、その後提出された。

(3)弁駁書において追加された無効理由
平成29年9月25日付け弁駁書の段落7(4)(42?43頁)において請求人は、本件発明1は甲1に記載された発明(甲1発明)であって、新規性が否定されること、甲1発明と乙10の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、進歩性が否定されることを主張する。
しかし、当該無効理由を追加する請求の理由の補正は、要旨を変更するものであって、平成29年12月26日に行われた補正許否の決定により、許可しないものとされた。

2.被請求人の主張の要旨及び証拠
(1)主張の要旨
ア.無効理由1
甲2に記載の塩化物及びスルフェートについての数値範囲はガイドラインであって法律上の規制ではないから、実際に市販されているスイスワインが本件発明1で特定される所定値を超える塩化物及びスルフェートを含有する可能性を否定できない。また、シェア0.4%程度にすぎない甲2のスイスワインを甲1発明に適用する動機づけはなく、一方、本件発明1は、塩化物とスルフェートについて所定値未満とすることにより、アルミニウム缶にパッケージングされたワインの品質の劣化について顕著な効果が奏されるから、本件発明1?15は容易想到な発明であるとはいえない。このため無効理由1には理由がない。
イ.無効理由2
本件特許明細書の発明の詳細な説明には本件発明に係るワインの製造方法が詳細に記載されている。また、耐食コーティングにはエポキシ樹脂以外に様々な樹脂を用いればよいことは周知であり、どのような種類のものでも本件発明の実施において利用可能である。このため無効理由2には理由がない。
ウ.無効理由3
本件発明は本件明細書の発明の詳細な説明の記載の範囲を超えておらず、また本件発明により本件発明の課題を解決できると認識できる。また、耐食コーティングとしてどのような種類のものを用いても本件発明の課題を解決できると認識できる。このため無効理由3には理由がない。
エ.無効理由4
無効理由4について、被請求人は特段の意見は述べていない(平成28年10月28日付け被請求人口頭審理陳述要領書5.(5)段落参照)。
(2)証拠方法
乙1:特開昭62-152744号公報
乙2:特開平2-76565号公報
乙3:“A new era of wine consumption”、Can Tech International、2016年5月
乙3の2 :CanTech Internationaのウェブサイトのプリントアウト、印刷日:2016年7月4日、<URL:http://www.cantechonline.com/magazine/>
乙4:Excite Bitコネタの2007年1月4日付けの“世界初の缶入りワイン『バロークス』を体験!』”と題するウェブサイトのプリントアウト、印刷日:2016年6月21日、<URL:http://www.excite.co.jp/News/bit/00091167302623.html>
乙5:Locari(ロカリ)の2015年2月付け記事の“世界初!缶入りワイン『バロークス』の魅力”と題するウェブサイトのプリントアウト、印刷日:2016年6月21日、<URL:https://locari.jp/posts/16357>
乙6:“ワインノマド”の“バロークス”と題するウェブサイトのプリントアウト、印刷日:2016年6月21日、<URL:http://www.winenomado.com/products/wine/australia/barokes.html>
乙7:京枝屋酒店の“ワイン革命“世界初のプレミアム缶ワイン””と題するウェブサイトのプリントアウト、印刷日:2016年6月21日、<URL:http://www.kyoedaya.com/wine-item11.htm>
乙8:asahi.com“神の雫作者のノムリエ日記”の2008年10月21日付け記事の“世界初の缶ワインを飲んでみた”と題するウェブサイトのプリントアウト、印刷日:2016年6月21日、
<URL:http://www.asahi.com/food/column/nommelier/TKY200810210120.html>
乙9:被請求人の“受賞歴”と題するウェブサイトのプリントアウト、印刷日:2016年7月4日、<URL:http://barokes.jp/awards>
乙10:M.A.Amerine、C.S.Ough、“WINE AND MUST ANALYSIS”、1974年、99?104頁
乙10の2:M.A.Amerine、C.S.Ough、“WINE AND MUST ANALYSIS”、1974年、81?83頁
乙10の3:M.A.Amerine、C.S.Ough、“Wine AND MUST ANALYSIS”、1974年、110?118頁
乙11:Riccardo Flamini、“HYPHENATED TECHNIQUES IN GRAPE AND WINE CHEMISTRY”、2008年、289?295頁
乙12:“醸造物の成分”、財団法人日本醸造協会、平成11年12月10日発行、1?3、294?298、323、347頁
乙13:P.A.LESKEほか、“The composition of Australian grape juice: chloride、 sodium and sulfate ions”Australian Journal of Grape and Wine Research、3、1997年、26?30頁
乙14:Marina Soneghetiほか、“Chloride concentration in red wines: influence of terroir and grape type”、Food Science and Technology、2015年1月/3月、vol.35 no.1 Campinas、95?99頁
乙15:Kym Andersonほか、“Global wine markets、1961 to 2009: a statistical compendium”、2011年、142?143頁
乙15の2:Kym Andersonほか、“Global wine markets、1961 to 2009: a statistical compendium”、2011年、142?143頁、176?177頁
乙16:Mr. Steve Baricsの宣誓供述書、2016年7月8日
乙17:“専門証人報告書2”、弁護士・弁理士 笠原基広、平成28年1月15日
乙18:特開昭62-14777号公報
乙19:特開平5-112755号公報
乙20:Rob Walkerほか、“Grape Juice Composition and Wine Quality from Salt Excluding Rootstocks and Characterisation of the Chloride Exclusion Mechanism”、2010年9月30日、1?3頁
乙21:平成27年(ワ)第21684号特許権侵害差止等請求事件の平成28年8月31日付け準備書面(5)
乙22:平成27年(ワ)第21684号特許権侵害差止等請求事件の平成28年9月29日付け準備書面(6)
乙23:協和発酵工業株式会社の“酒類事業紹介”と題するウェブページのプリントアウト、印刷日:2016年10月19日、<URL:http://web.archive.org/web/19981203004703/http://www.kyowa.co.jp/dstext/srjb.htm#itiran>
乙24:日経テクノロジーonlineの”NE用語 アレニウスの法則”と題するウェブサイトのプリントアウト、印刷日:2016年10月17日、<URL:http://techon.nikkeibp.co.jp/article/WORD/20060628/118687/?rt=nocnt>
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乙26の2:特許庁ウェブサイトの“資料・統計”-“刊行物・報告書”-“標準技術集”-“香料”-“4-3-1-1 加速試験”のプリントアウト、印刷日:2016年10月17日、<URL:https://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/kouryou/4-3-1.pdf#1>
乙27:CMET Technology P/L所属のロビン・エフ・メイ氏の見解書、2016年10月20日
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乙36:マスターオブワインのPeter Scudamore-Smith氏の陳述書、2016年11月14日
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乙41:国際公開第2003/029089号
乙42:ビクトリア州最高裁判所の2016年3月23日付けの命令書
乙43:ビクトリア州最高裁判所の2016年6月7日付け判決
乙44:AU 2002304976B2(書誌事項及びクレーム記載の頁のみ)
乙45:AU 20003100154A4(書誌事項及びクレーム記載の頁のみ)
乙46:オーストラリア特許庁長官代理による2005年12月12日付け決定要旨、16?20頁
乙47:本件特許権のライセンシーリスト
乙48:IsraelAgriの“Chinese Vineyards to Use Israeli Technologies”と題するウェブページのプリントアウト、印刷日:2016年11月17日、<URL:http://www.israelagri.com/?CategoryID=395&ArticleID=1160>
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乙69:大和製罐株式会社 ウェブサイト 印刷日:2017年2月27日、
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乙71:平成29年3月10日付け原告第7準備書面(東京地裁平成27年(ワ)第21684号事件)、1、16?18頁
乙72:平成29年5月10日付け被告大和製罐株式会社及び被告モンデ酒造株式会社作成の準備書面(10)(東京地裁平成27年(ワ)第21684号事件)、1、10?15頁
乙73の1:グーグル翻訳(https://translate.google.co.jp/)による、イタリア語「cloruri」の英語への翻訳結果のプリントアウト、印刷日:2017年6月28日
乙73の2:グーグル翻訳(https://translate.google.co.jp/)による、イタリア語「solfati」の英語への翻訳結果のプリントアウト、印刷日:2017年6月28日
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乙78:「IUPAC命名法」のWikipediaでの検索結果のプリントアウト(2017年10月17日被請求人代理人作成)
乙79:R.Ferrariniら、“Il condizionamento del vino in contenitore d’alluminio”、1992年、VIGNEVINI Numero5、p.59?64 (甲1の1と同じ文献のより鮮明な写し)
乙80:甲1の1(乙79)の追加抄訳


第6.無効理由についての当審の判断
1.無効理由2(実施可能要件)について
事案に鑑み、まず、無効理由2についての検討を行う。

(1)本件発明1に関する本件特許明細書の記載について
ア.ワインの製造条件等の記載について
(ア)請求人の主張する無効理由は、上記第5.1.イ.(ア)a.に示したとおり、本件発明1の「35ppm未満の遊離SO_(2)と、300ppm未満の塩化物と、800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワインを製造するステップ」なる発明特定事項に関し、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者が本件発明1を実施することができる程度の記載がないというものである。
しかし、本件特許明細書の段落0015の記載に基づいて、塩化物やスルフェートの含有率の低いミネラルウォーター、フルーツジュースまたはワインとブレンドすることによって、塩化物やスルフェートの含有率を本件発明に必要となる含有率まで低下させられることが明らかであるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明には本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分な記載があるものと認められる。
(なお、第6.3.(2)イ.において後述するとおり、甲2には、本件発明1の「35ppm未満の遊離SO_(2)と、300ppm未満の塩化物と、800ppm未満のスルフェートと」を有するワインに相当する、甲2事項-1のワイン及び甲2事項-2のワインが記載されている。このことは、本件発明1のワインが実際に製造できることを示すものである。)
(イ)請求人の主張について
弁駁書の7(3)ウ(イ)c(b)(21?22頁)において請求人は、本件特許明細書の段落0015の記載について、「処理」とは「規定レベルよりも高いレベルの構成成分」で「ワインを処理」することであって、ワインを、薄めて、その塩化物を300ppm未満とし、スルフェートを800ppm未満とすればよいという被請求人の主張は段落0015に記載されている「処理」の具体例の説明となっていない旨を主張する。
しかし、本件特許明細書の段落0015には「規定レベルよりも高いレベルの構成成分・・・これらの構成成分の含有率を本発明に必要となる含有率まで低下させる。本発明において、『ワイン』という用語は・・・ミネラルウォーター及びフルーツジュースとブレンドされたワインが含まれる。」との記載があり、この記載が、塩化物が300ppm以上、スルフェートが800ppm以上のワインをミネラルウォーター及びフルーツジュースとブレンドして塩化物が300ppm未満、スルフェートが800ppm未満にすることを意味することが明らかである。
よって、請求人の上記主張は当を得たものとはいえず、これを採用することはできない。

イ.「耐食コーティング」の記載について
(ア)請求人の主張する無効理由は、上記第5.1.イ.(ア)b.に示したとおり、本件発明1の「アルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティングされているツーピースアルミニウム缶」の具体的材料として、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、熱硬化性コーティングが望ましいこと(段落0009)、エポキシ樹脂とすること(段落0034)の記載があるが、エポキシ樹脂以外のどのような樹脂を耐食性コーティングの材料とすべきかを認識できないので、当業者が本件発明1を実施することができる程度の記載がないというものである。
しかし、本件特許の優先日前から多くの種類の耐食コーティングが当業者に知られている(例えば甲5?8、乙19を参照)ことを踏まえれば、本件特許明細書の段落0034の「保存中に過度のレベルのアルミニウムがワイン中に溶解しないことを保障することが重要である」との記載を考慮して、内容物に応じて適宜選択した組成の耐食コーティングをアルミニウム缶の内面に設ければよいことが明らかである。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者が本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分な記載があるものと認められる。
(イ)請求人の主張について
弁駁書の7(3)ウ(イ)d(24?27頁)において請求人は、耐食コーティングに用いる樹脂成分の違いにより、缶内の飲料に与える影響に大きな差があることは周知であり、エポキシ樹脂以外のどのような樹脂が本件発明に用いることができるのかを当業者が認識できない旨を主張する。
しかし、上記(ア)に示したとおり、エポキシ樹脂以外の耐食コーティングについても、内容物に応じて、本件特許明細書の段落0034の「保存中に過度のレベルのアルミニウムがワイン中に溶解しない」ものを、実験等の通常の技術的手段により適宜選択すればよいことが明らかである。請求人の主張は、エポキシ樹脂以外の樹脂の選択に、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等をする必要があることを十分に立証するものではなく、採用できない。
ウ.よって、無効理由2は本件発明1について理由がない。

(2)本件発明2?8、10?15に関する明細書の記載について
ア.請求人の主張する無効理由は、上記第5.1.イ.(イ)a.に示したとおり、本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2?8、10?15についても、本件発明1と同様に、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者が本件発明を実施できる程度の記載がない、というものである。
これについて、上記(1)のとおり無効理由1は本件発明1について理由がないのであるから、本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2?8、10?15についても同様に、理由がない。
イ.一方、請求人の主張する無効理由には、上記第5.1.イ.(イ)b.に示したとおり、「本件発明5の「前記ワインがさらに、30ppm未満の総ニトレートと、900ppm未満の総ホスフェートと、6g/リットル?9g/リットルの範囲の酒石酸として算出された酸性度とを有することを特徴とする」、本件発明6の「前記ワインが充填前に冷却される」、本件発明8の「クロージャによるシーリング後の頭隙が、80?97%v/vの窒素と、2?20%v/vの二酸化炭素との組成を有する」、本件発明10の「前記頭隙が、330ミリリットル缶の場合に、2?5mmの範囲にある」なる発明特定事項に関し、明細書の発明の詳細な説明には、当業者が本件発明5ないし15を実施することができる程度の記載がない。」というものがある。
この点について検討すると、上記(1)ア.(ア)で述べたように、本件特許明細書の段落0015の記載に基づいて、ミネラルウォーター、フルーツジュースを適宜ブレンドすることによって、総ニトレート、総フォスフェート、酒石酸の含有率を本件発明の範囲に調整する程度のことには格別の困難性はないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者が本件発明5を実施することができる程度に明確かつ十分な記載があるものと認められる。
また、缶内に飲料をパッケージングするに際して、飲料の温度を充填前に調節することや、缶内の頭隙に窒素や二酸化炭素を充填することは、例を挙げるまでもなく当業者の技術常識であって、またその組成の割合や頭隙の寸法は常識的な範囲として適宜に調節し得る程度のものにすぎない。よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者が本件発明6、8、10を実施することができる程度に明確かつ十分な記載があるものと認められる。
ウ.よって、無効理由2は本件発明2?8、10?15について理由がない。

(3)小括
以上のとおりであるから、無効理由2は本件発明1?8、10?15について理由がない。
したがって、本件発明1?8、10?15に係る発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定に適合するものであるから、その特許は同法第123条第1項第4号に該当せず、無効とすることはできない。

2.無効理由3(サポート要件)について
特許法第36条第6項第1号は、特許請求の範囲の記載は「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」との要件に適合するものでなければならないと定めている。その趣旨は、発明の詳細な説明に記載していない発明を特許請求の範囲に記載すると、公開されていない発明について独占的、排他的な権利を認めることになり、特許制度の趣旨に反するから、そのような特許請求の範囲を許容しないとしたものである。
そうすると、特許請求の範囲の記載が上記要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、(1)発明の詳細な説明に記載された発明で、(2)発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解するのが相当である。
本件発明についてこれを以下検討する。

(1)本件発明1に関する本件特許明細書の記載について
ア.本件発明1による発明の課題の解決について
発明の詳細な説明には、本件発明が解決すべき課題として、上記第4.2.(2)イ.に示したとおり、「ワイン中の物質の比較的攻撃的な性質、及び、ワインと容器との反応生成物の、ワイン品質、特に味質に及ぼす悪影響を抑制しながら、アルミニウム缶内にワインをパッケージングし、これによりワインの品質が保存中に著しく劣化しないようにする、アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法を提供すること」が記載されており、段落0038?0042において、30℃で6ヶ月後の十分な保存状態と許容可能なワイン品質が確認されたという試験の結果が記載されている。
しかし、発明の詳細な説明には、当該試験に用いたワインの組成は記載されていない。これに対し、アルミニウム缶の腐食の原因となり、飲料の品質を劣化させる物質には、遊離SO_(2)、塩化物やスルフェートのほか、例えば銅イオンや、本件発明5で挙げられている酒石酸といった、各種の金属イオンや有機酸が存在することが技術常識である(例えば甲1を参照)。
また、当該試験に用いた缶の内面の耐食コーティングについても、段落0039における「ラッカー」がこれに該当するのか否か、具体的にどのような組成であるのかが不明である。
このため、発明の詳細な説明を参照しても、当該試験の結果が、ワインの遊離SO_(2)、塩化物、スルフェートを特許請求の範囲で特定される所定の値以下にしたことによるものであるのか、ワインを組成する他の物質によるものであるのか、耐食コーティングによるものであるのか、これらの相乗効果によるものであるのか否かが、当業者にとって不明であるといわざるを得ない。
よって、ワインの遊離SO_(2)、塩化物、スルフェートを特許請求の範囲で特定される所定の値以下とし、ツーピースアルミニウム缶の本体のアルミニウムの内面に耐食コーティングをコーティングすることで、発明の課題を解決できると当業者が認識することはできない。
イ.ワインの製造条件等の記載について
(ア)請求人の主張する無効理由は、上記第5.1.ウ.(ア)a.で示したとおり、「本件発明1の「35ppm未満の遊離SO_(2)と、300ppm未満の塩化物と、800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワインを製造するステップ」なる発明特定事項に関し、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、上記所定の組成を満たすワインについての記載がないため、発明の詳細な説明の段落0004に記載の本件発明の課題を解決できない。」というものである。
この点について検討すると、上記ア.で示したとおり、発明の詳細な説明を参照しても、段落0038?0042に記載の試験の結果が、ワインの遊離SO_(2)、塩化物、スルフェートを特許請求の範囲で特定される所定の値以下にしたことによるものであるのか、ワインを組成する他の物質によるものであるのか、耐食コーティングによるものであるのか、これらの相乗効果によるものであるのか否かが、当業者にとって不明であるといわざるを得ない。
よって、ワインの遊離SO_(2)、塩化物、スルフェートを特許請求の範囲で特定される所定の値以下にしたことで、発明の課題を解決できると当業者が認識することはできない。
(イ)平成29年7月4日付け上申書の第2.1(1)イ.(16?18頁)において被請求人は、塩化物イオン及びスルフェートがアルミニウムの腐食の原因であることは技術常識であり、またこのことは甲1にも記載されており、ワイン中の塩化物イオン及びスルフェートの濃度が低いワインをアルミニウム缶にパッケージングした場合の方が、それらの濃度が高いワインをパッケージングした場合よりも、腐食原因が少ないため前者の方がアルミニウム缶が腐食しにくいであろうことは容易に理解可能である旨を主張する。
また、同上申書の第5.(2)ウ.(5?6頁)において被請求人は、本件訂正発明の各数値範囲は、それぞれが相対的に低い濃度であることを示すという意義を有するものであって、当該数値範囲に臨界的な意義があるわけではないから、その裏付けとなる実験結果等の記載がなくとも、サポート要件違反にはならない旨を主張する。
しかし、塩化物イオン及びスルフェートがアルミニウムの腐食の原因であることが技術常識であるとしても、上記ア.で示したとおり、アルミニウムの腐食の原因になる物質には、塩化物やスルフェート以外にも各種の金属イオンや有機酸が存在することが技術常識であって、段落0038?0042に記載の試験に用いたワインの組成は不明であるため、その結果が、ワインの遊離SO_(2)、塩化物、スルフェートを特許請求の範囲で特定される所定の値以下にしたことによるものであるのか、ワインを組成する他の物質によるものであるのかが、当業者にとって不明である。
よって、被請求人の上記主張は当を得たものとはいえず、これを採用することはできない。
(ウ)同上申書の第2.1(1)オ.(19?21頁)において被請求人は、本件発明1は「耐食コーティング」の具体的な組成を発明特定事項として特定しているものではなく、本件発明1の「ワインの品質が保存中に著しく劣化しない」との効果が、腐食原因物質である遊離SO_(2)、塩化物及びスルフェートの含有量がいずれも相対的に低いワインをパッケージングしたことによる効果であると容易に認識することが可能である旨を主張する。
しかし、発明の詳細な説明の段落0034における「良好に架橋された不透過性膜によって、保存中に過度のレベルのアルミニウムがワイン中に溶解しないことを保障することが重要である。」との記載に鑑みると、段落0038?0042に記載の試験の結果は、ワインの遊離SO_(2)、塩化物、スルフェートを特許請求の範囲で特定される所定の値以下にしたことによるものであるのか、耐食コーティングによるものであるのか、これらの相乗効果によるものであるのか否かが、当業者にとって不明である。
よって、被請求人の上記主張は当を得たものとはいえず、これを採用することはできない。
ウ.「耐食コーティング」の記載について
(ア)本件発明1では「アルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティングされているツーピースアルミニウム缶」と記載されているところ、この「耐食コーティング」の具体的な材料については、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「典型的には、ホルムアルデヒドを基剤とする架橋剤と組み合わされたエポキシ樹脂」(段落0034)の記載があるのみで、他の組成の耐食コーティングについての記載はなく、他の組成の耐食コーティングであっても「長期間の保存安定性を実現」することは、試験結果等、発明の詳細な説明に何ら裏付けとなる記載がない。したがって、「エポキシ樹脂」のみの開示から、組成が何ら特定されない「耐食コーティング」にまで、拡張、一般化できるとは認められない。
(イ)平成29年7月4日付け上申書の第2.1(2)(22?24頁)において、耐食コーティングは金属缶と内容物である飲料との接触を物理的に遮断するものであって、本件特許の優先日前から多くの種類のものが当業者に知られており、どのような組成のものであっても、本件発明の課題である「ワイン中の物質の攻撃的な性質、及びワインと容器との反応性生物の、ワイン品質、特に見質に及ぼす悪影響」について、当該「ワイン中の物質」がワインと接触することを物理的に妨害することにより、「ワインの品質が保存中に著しく劣化しない」との効果に定性的に寄与することは容易に理解可能である旨を主張する。
しかし、上記ア.で示したとおり、段落0038?0042に記載の試験に用いた缶の内面の耐食コーティングの具体的な組成は不明であって、当該試験の結果が、ワインの遊離SO_(2)、塩化物、スルフェートを特許請求の範囲で特定される所定の値以下にしたことによるものであるのか、耐食コーティングによるものであるのか、これらの相乗効果によるものであるのか否かが、当業者にとって不明である。
よって、被請求人の上記主張は当を得たものとはいえず、これを採用することはできない。

ウ.小括
以上のことから、発明の詳細な説明の記載からは、段落0038?0042に記載の試験の結果が、ワインの遊離SO_(2)、塩化物、スルフェートを特許請求の範囲で特定される所定の値以下にしたことによるものであるのか、ワインを組成する他の物質によるものであるのか、耐食コーティングによるものであるのか、これらの相乗効果によるものであるのか否かが、当業者にとって不明であり、出願時の技術常識に照らして、本件発明1が発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであるとはいえない。
したがって、本件発明1は発明の詳細な説明に記載された発明ではなく、無効理由3は本件発明1について理由がある。

(2)本件発明2?8、10?15に関する明細書の記載について
ア.請求人の主張する無効理由は、上記第5.1.ウ.(イ)a.に示したとおり、本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2?8、10?15についても、本件発明1と同様に、発明の詳細な説明の段落0004に記載の本件発明の課題を解決できず、また、本件発明2?8、10?15の範囲まで発明の詳細な説明に記載された内容を拡張・一般化することはできない、というものである。
これについては、上記(1)のとおり無効理由3は本件発明1について理由があるのであるから、本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2?8、10?15についても同様に、理由がある。
イ.さらに、請求人の主張する無効理由には、上記第5.1.ウ.(イ)b.に示したとおり、「本件発明5の「前記ワインがさらに、30ppm未満の総ニトレートと、900ppm未満の総ホスフェートと、6g/リットル?9g/リットルの範囲の酒石酸として算出された酸性度とを有することを特徴とする」、本件発明6の「前記ワインが充填前に冷却される」、本件発明8の「クロージャによるシーリング後の頭隙が、80?97%v/vの窒素と、2?20%v/vの二酸化炭素との組成を有する」、本件発明10の「前記頭隙が、330ミリリットル缶の場合に、2?5mmの範囲にある」なる発明特定事項についても、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載がなく、本件発明の課題を解決できない。 」というものがある。
これについて、本件特許明細書の段落0038?0042記載の試験では、これらの発明特定事項により「ワインの品質が保存中に著しく劣化しない」との効果に寄与することは示されていないし、当業者にとって技術常識でもない。
なお、平成29年7月4日付け意見書において、この点についての被請求人からの具体的な反論はなされていない。
よって、無効理由3は本件発明5、6、8、10について理由がある。

(3)小括
以上のとおりであるから、無効理由3は本件発明1?8、10?15について理由がある。
したがって、本件発明1?8、10?15に係る請求項の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反し、特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

3.無効理由1(進歩性)について
(1)甲1の記載、甲1発明
ア.甲1の記載
甲1の1には、次の記載がある。訳文は請求人による(甲1の2)。なお、下線は当審で付した。

(ア)第59頁の左欄1行?25行
「Processa
Le ricerche condotte negli anni '80sui contenitori altenativi al vetro per il confezionamento del vino, sono nate dall'esigenze di trovare nuove vie per il riancio dell'immagine di un
produtto in profonda crisi di consumo dovuta, il larga parte, allo scarso interesse manifestato dalla maggioranza dei giovani che preferiscono oritentarsi verso bevande proposte in toni
meno impegnativi e volutamente innovativi nel gusto nella veste di representazione. Dopo le numerose prove condotte sui poliaccoppiati(1)(2)(3)(4)(5)(6), l'attenzione dei ricercatori si e orientata verso altri materiali gia da tempo largamente im pregati nel settoree delle bevande come i contenitori metallici,con particolare riguardo a quelli a banda stagnata ed in alluminio(7). 0ggetto del presente lavoro e proprio quest'ultimo tipo di conteniore per il quale si e voluto studiare l'ottimizzazione di impiego verificando da un lato,le interazioni tra vino e scatola c mantenere inalterate le qualita del contenuto e,all'altro spprofondendo le tecniche di preparazione del vino per conferirgli caratteristiche ottimali al confezionamento . Va sottolineato
aspetti pratici quati, sopratutto, la facilta di transporto e si stoccaggio e la resistenza meccanica agli urti ed alle sollecitazioni interene,consentendo ,in quest ultmo caso,il confezionametno
sotto pressione di CO_(2) (vini frizzanti).」
「はじめに
商品のイメージをリニューアルする新たな方法を見つける必要が生じたため、ワインをパッケージングするためのガラスに代わる容器について、80年代に研究が行われた・・・。ポリマー組成物(1)(2)(3)(4)(5)(6)について多くのテストを行った後、研究者は、金属容器のような、飲料産業で既に広く使用されている他の材料、特にブリキ板およびアルミニウム(7)に着目した。この研究の対象は、特に後者のタイプの容器であり、その意図することは、その最適の使用の研究と、容器の腐食を最少にするための、且つ内容物の品質を変化させずに維持するためのワインとアルミニウム缶との相互作用に関する調査であり、他方では、パッケージングでの最適な特性をワインに与えるためのワイン調製の技術開発である。金属容器は、中でも輸送及び保管の容易さと、衝撃および内部応力に対する機械的な耐性のように、便利で実用的な品質を有しており、機械的な耐性はCO_(2)圧力下でパッキングすること(スパークリングワイン)も可能にすることも強調して述べておかなければならない。」

(イ)第59頁の左欄27行?右欄9行、Table 1
「Le prove sono state realizzate dalla Sezione Enologica del C.RI.VE (Centro di Ricerche Viticole ed Enologiche dell' Universita di Bologna) e condotte presso il Centro Tecnologico
Sperimentale dell'E.S.A.V.E. a Faeaza (RA) su vino bianco, tipo base spumante, dotato di una notevole acidita totale per la presenza di acido tartarico e malico e da un bassissimo pH;
nel complesso quindi si travatta di un prodotto caratterizzato da uoa notevole agressivita nei confronti del contenitore in alluminio. E da notare, inoltre,la presenza nel vino, gia all'inizio, di una certa quantita del metallo (0,94 mg/I)(tab. 1).」
「テストがC.R.I.V.E.(ボローニア大学のワイン栽培・ワイン製造研究センター)のワイン製造セクションにより行われ、Faenza(RA)のE.S.A.V.E.実験技術センターでは、酒石酸とリンゴ酸とが存在する理由で、かなり全体的酸味を有し、非常に低いpHを有しているスパークリングベース型の白ワインについて行われ、よって、全体として、製品はアルミニウム容器に対して著しい浸食を示した。ワイン中のある量(0.94mg/l)の金属の存在についても当初から注目すべきである(表1)。」



表1-種々のテストで使用した白ワインの組成物


(ウ)第59頁の右欄5行?18行
「Nelle prove sono stati utilizzati contenitori in alluminio della capacita di 250ml; (forniti da un'azienda che opera nel settore), differenziati per il tipo di vernice, per la modalita di applicazione della stessa e per fil coperchio.
In particolare si sono considerati tre tipi di rivestimento: A, B e C, Il rivestimento A e il B erano dello stesco tipo di vernice, mentre si differenziavano per le modalita di applicazione della stessa; il rivestimento C era costitnito, invece, da ua'alta vernice」
「ワニスのタイプ、その適用方法、および蓋が異なった、250mlの容量を有するアルミニウム容器をテストで使用した。
3つのタイプのコーティング、即ちA、B、Cを特別に考慮した。コーティングAとBは同じタイプのワニスであるが、適用方法が異なり、コーティングCは別のワニスからなる。」

(エ)第59頁右欄下から2行?第60頁左欄6行、Table 2、Table 3
「- variabili mercelogische(tab 2),comprendenti alcune caratteritiche tipiche ed immodificabili del produtto e che sono suscettibili soltanto di piccoli interventi e per le quali il contenitore si deve adattare al contentuto;
- variabili tecnologiche (tab.3) ,comprendenti quelle caratteristichre del produtto che possono essere ampiamente modificate dal tecnologo; in questo caso il contenuto puo sdsttsrdi sl contenitore.」
「-品質変数(表2):小さな調節のみを行うことが可能であるが、典型的には変更可能ではない複数の製品特性を含み、それに関連して、容器を内容物に適合させなければならない。
-技術的変数(表3):技術によって大きな変更が可能な製品特性を含み、この場合には内容物を容器に適合させることができる。」









(オ)第60頁の右欄3行?13行、Table 4
「Discussione del risultati
Lo schema di tabella 4 mette in evidenza. alcuni parametri riguardanti la composizione del vino confezionato in prove di conservazione a 40℃; fl tenore di anidride solforosa libera al momento del confezionamento (0, 10,20, 35 mg/l di SO_(2) libera),la presenza di anidride carbonica inpressione(2 atm di sovrappressione),o la sua assenza (gassato o tranquillo)e le modalita di confezionamento,vale a dire in assenza di aria nello spazio di testa(o per meglio dire tenori inferiori a 2ml di aria per contenitore) e in presenza di aria (ambiente saturo. per un quantitative complessivo di 25 ml).」
「結果の考察
表4は、40℃での保存テスト期間中における、パッキングされたワインに関するいくつかのパラメータ、即ちパッケージング時の遊離酸化硫黄含有量(遊離SO_(2):0、10、20、35mg/l)、加圧された炭酸ガスの存在(2atm以上の過度の圧力)または不存在(スパークリングあるいはスティル)と、パッケージの方法、即ちヘッドスペースから空気を除いた状態(または容器当たりの空気が2ml未満の濃度)および空気が存在する状態(総量25mlに対して、飽和雰囲気)とを示している。」





(カ)第63頁の左欄下から15行?第64頁左欄第2行
「Altro fattore che condizionanotevolmente la buona riuscita del confezionamento in lattina e il coperchio di chiusura, anch’esso in alluminio.
Nell’esperienza riportata in tabella 6 si sono considerati 5 tipi di coperchi ed i valori medi dell’alluminio ceduto evidenzaino notevoli differenze.・・・(後略)
Vale inoltre la pena di sottolineare l’entita della cessione di alluminio da parte del coperchio di chiusura che risulta elevato nei confronti di quella globale del contenitore.」
「缶へのパッケージングでの満足できる結果にかなり関連する別の因子は、蓋であり、これもアルミニウムである。
表6に記載の実験では、5つのタイプの蓋が考察されており、放出されたアルミニウムの平均値はかなりの差を示した。・・・(後略)
蓋により放出されるアルミニウムの量について、それは容器からの全体量と比較するとかなり高いことを、強調して述べる価値がある。」

(キ)第64頁左欄第14?25行
「Infatti gli istogrammi della figura 6 evidenziano che lacessione di alluminio (colonne bianche) e la percentuale di comparsa di odori anomaly (parte tratteggiata) sono in funzione del tempo, del contenuto in anidride solforosa libera nonche del tipo di confezionamento e di rivestimento della lattina. Inoltre si nota come con il miglioramento della tecnologia di confezionamento si minimizzano gli inconvenienti riscontrabili. Se si osservano infatti gli istogrammi relative al confezionamento con il contenitore rivestito da un film protettivo di tipo C (il migliore) e in presenza di azoto, si puo notare la decisa diminuzione delle cessioni e delle occasioni di comparsa di odori anomali.」
「実のところ、図6の柱上グラフは、アルミニウムの放出(白色の柱)および異臭の発生割合(破線部)が、時間、遊離二酸化硫黄含有量、パッケージングのタイプ、缶のコーティングに関連していることを示している。発見された欠点は、缶詰め技術の改良を通して最小化されることも注目されよう。柱状グラフが窒素の存在下で、タイプCの保護膜(最良)でコーティングされている容器でのパッケージングに関するものであるならば、放出と、異臭が発生する時とを著しく減少させることが注目されよう。」

(ク)第64頁左欄第26行?下から3行、第63頁のFig.7
「Conclusioni
Dalla serie di prove condotte sul confezionamento del vino in lattine di alluminio e emersa, in linea generale, una buona rispondenza di questo tipo di contenitore alle specifiche esigenze tecnologiche richieste.
La corrosione del contenitore in questione puo dipendere sia dalla composizione del vino, che dalla tecnologia di riempimento e dalla scelta del corpo lattina e del coperchio.
Alcuni parametri, come l’ossigeno nello spazio di testa, sono estremamente importanti ma ben difficilmente sono fondamentali se presi singolarmente. Molto spesso la corrosione e piu frutto di fattori concomitanti che non di un singolo parametro, pertanto l’ottimizzare tutti questi elementi, congiuntamente alla scelta del contenitore piu idoneo, permette di rendere minima la cessione di alluminio.
In tal modo si ottiene anche una maggiore garanzia nei confronti di eventi casuali; si ha quindi un tipo di sicurezza legato a piu fattori.
・・・(中略)・・・
Nella figure 7 e illustrata la linea tecnologica che puo risultare piu idonea per il confezionamento del vino in lattina di alluminio. Secondo lo schema tutte le operazioni di vinificiazione e di conservazione del prodotto devono essere effettuate con dosi ridotte di SO2 perservando le sostanze riducenti naturali. ・・・(中略)・・・ Il riempimento deve essere effettuato a freddo, in ambiente sterile con chiusura del contenitore sotto flusso di azoto gassoso o con espansione di azoto liquido.」
「結論
アルミニウム缶にワインをパッケージングすることについて行われたテストセットは、概して、このタイプの容器が技術的要求を満たしていることを示している。
問題となる容器の腐食は、ワインの組成物、または充填技術、あるいは缶体および蓋の選択に基づくであろう。
幾つかのパラメータ、たとえばヘッドスペース中の酸素は極めて重要であるが、分離すれば、必須であるとは考え難い。非常に多くの場合、腐食は幾つかの付随因子の結果であり、単一のパラメータではなく、よって、最も好適な容器の選択肢と連携して、これらの全ての因子を最適化することが、最小のアルミニウム放出を生じるであろう。
偶発的出来事に対しても、このような方法で、より良い保証が得られ、よって、安全性は幾つかの因子に関連されるタイプのものである。
・・・(中略)・・・
図7は、アルミニウム缶にワインをパッケージングするために最も好適であり得る技術的方法を示している。この構想を基にして、自然減物質を保存しながら、全てのワイン製造および製品の保管作業を低い分量のSO_(2)で行わなければならない。・・・(中略)・・・充填は冷温で、無菌環境で行われ、容器は気体窒素流の下方で、または液体窒素の膨張から密封されている。」






イ.甲1発明
上記ア.(ア)、(ク)で示した甲1の記載は、アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワインとして最適な特性のワインを意図して製造することを意味していると認められる。
上記ア.(イ)で示した甲1の記載は、アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワインとして、4ppmの遊離SO_(2)を有する白ワインを用いることを意味していると認められる。
上記ア.(ウ)、(キ)で示した甲1の記載は、アルミニウムの放出を防ぐためのコーティングすなわち耐食コーティングに、ワニスを用いることを示している。
上記ア.(オ)で示した甲1の記載は、「・・・パッケージング時の・・・加圧された炭酸ガスの存在(2atm以上の過度の圧力)または不存在(スパークリングあるいはスティル)・・・」との記載、表4の表題中の「白ワイン」との記載及び表4中の「スパークリング」、「スティル」との記載から、「加圧された炭酸ガスの存在」でパッケージングすることでスパークリングの白ワインが、「不存在」でスティルの白ワインが製造されている。このことから、甲1では、「スティルの白ワインに炭酸ガスを封入したスパークリングベース型の白ワイン」を用いることを示している。また、その「加圧された炭酸ガス」の圧力「2atm以上」は、換算すると「約29psi以上」である。
上記ア.(カ)で示した甲1の記載は、ワインをパッケージングするアルミニウム缶にアルミニウムの蓋を用いることを示している。
よって、上記ア.で示した甲1の記載事項を本件発明1に倣って整理すれば、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

《甲1発明》
1A’ アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法であって、該方法が:
1B’ アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワインとして、4ppmの遊離SO_(2)を有するスティルの白ワインに炭酸ガスを封入したスパークリングベース型の白ワインを意図して製造するステップと;
1C’ アルミニウムの内面に耐食コーティングとしてワニスがコーティングされている容器と蓋からなるアルミニウム缶の本体に、前記ワインを充填し、缶内の圧力が約29psi以上となるように、アルミニウム缶をパッケージングするステップと
1D’ を含む、アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法。

さらに、上記ア.(イ)で示した甲1の記載は、アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワインとして、79ppmの総二酸化硫黄レベルを有するスティルの白ワインを用いることを意味していると認められる。
上記ア.(ク)で示した甲1の記載には、充填を冷温で行うことも記載されている。
上記ア.(ク)で示した甲1の記載は、窒素と共にワインをパッケージングすること、すなわちクロージャによるシーリング後の頭隙が窒素を有することを示している。

よって、甲1発明は、下記構成も含むものである。
3A’ 前記ワインが、さらに79ppmの総二酸化硫黄レベルを有し、
6A’ 前記ワインが冷温充填され、
8A’ クロージャによるシーリング後の頭隙が窒素を有する。

(2)甲2の記載、甲2事項
ア.甲2の記載
甲2には、以下の記載がある。訳文は請求人による(平成30年1月29日付け上申書)

(ア)
「Spezielle Literaturabkurzungen
O.I.V.-Methoden: Recueil de Methodes internationales d'analyse des vins et des mouts, Methoden, Office international de la Vigne et du Vin, 11 rue Roquepine, F-75008 Paris 1978)
IFU-Methoden: Sammulung der Analysenmethoden der Internai. Fruchtsaftunion, Schweiz. Obstverband, 6300 Zug
Tanner und Brunner (1987): Tanner H. und Brunner H.R.: Getranke-Analytik, Verlag Heller, D-7170 Schwabisch Hall (1987)
LMV Lebensmittelverordnung
FIV V2rordnung uber Fremd-und Inhaltsstoffe in Lebensmitteln (EDI)
ZuV Zusatzstoffverordnung (EDI)」
「特別な書誌的略語
O.I.V.-Methods:ワインとマストに関する国際的分析方法のコレクション(Collection of international analysis methods of wines and musts)、International Office for Vines and Wines、11 rue Roquepine, F-75008 Paris (1978)
IFU-Methods: 国際フルーツジュース協会の分析方法のコレクション(Collection of analysis methods of the International Fruit Juice Union)、Swiss Culinary Fruit Association, 6300 Zug
Tanner and Brunner(1987): Tanner H. and Brunner H.R.: 飲料分析(Beverage Analytics)、Heller Publishing, D-7170 Schwabisch Hall (1987)
LMV = 食品規制
FIV = 外来物質・成分についての規制(EDI)
ZuV = 添加物についての規制(EDI)」

(イ)
「Umschreibungen1

Wein wird grundsatzlich aus Most oder aus frisch geernteten trauben gewonnen. Der Most aus weissen Trauben ensteht hauptsachlich durch Abpressen von gekelterten Trauben,

Bei der Lelterung werden die roten Trauben entrappt ("Beerliwein"). Die geernteten roten Trauben Konnen unmittelbar nach dem Abbeeren und dem Keltern abgepresst werden (Rosewein, Weiss aus Rot), Sie Konnen auch teilweise oder vollstandig vergoren oder vor dem Abpressen erhitzt werden. Je nach Dauer der Garung oder Starke der Erhitzung erhalt man einen Wein, dessen Farbe von rose zu rot geht. Der rote Farbstoff kann auch durch andere Verfahren aus den Trauben extrahiert werden 8z.B. durch Mazeration mittels Kohlensaure).

Bei der Gewisser auslandischer Weine wurden die Trauben vor der Garung leicht angetrocknet 8Recioto, Sforzato, gelber Wein aus dem Jura).

Folgende Produkte werden in der Lebensmittelverordnung (LMV) vom 1. Marz 1995 (Stand am 22. Feb. 2005) definiert:

^(1) Wurde im Jahr 2005 vom BAG an die neue Gesetzgebung angepasst」
「記(Transcriptions)^((1))

通常、ワインはマスト又は収穫したてのぶどうから得られる。白ワイン由来のマストは主に粉砕ぶどうを搾ることにより得られる。

赤ぶどうは粉砕の際に枝取りされる(「Beerliwein」)。収穫された赤ぶどうは枝取りと粉砕の後に直接絞られてもよい(ロゼワイン、赤から白)。赤ぶどうは、絞りの前に部分的又は全体的に発酵又は加熱されてもよい。発酵の期間又は加熱強度によっては、色がロゼから赤に変わるワインが得られる。赤色はその他の方法によって抽出されてもよい(例えば、炭酸を用いた浸漬)。

ある種の外国産ワインは、ブドウを発酵前に少々乾燥させて得られる(ジュラ産Recioto,Sforzato,Zellowワイン)。

以下の製品は、1995年3月1日付け食品規制(LMV)(2005年2月2日制定)において定義されているものである

^((1))2005年に新たな規制に沿うようにBAGにより修正された。」

(ウ)







イ.甲2事項
上記ア.で示した記載から、甲2には以下の次の2事項(以下、それぞれ「甲2事項-1」、「甲2事項-2」という。)が記載されている。

《甲2事項-1》
スイスワインは、ガイドライン値において、白ワインとロゼワインでは、遊離亜硫酸が15?30mgSO_(2)/l、塩化物が10?80mg/l、硫酸塩が0.2?0.8g/l K_(2)SO_(4) の組成である。
《甲2事項-2》
スイスワインは、ガイドライン値において、赤ワインとシラー(Schiller)では、遊離亜硫酸が10?25mgSO_(2)/l、塩化物が10?80mg/l、硫酸塩が0.2?0.8g/l K_(2)SO_(4) の組成である。

(3)本件発明1について
ア.本件発明1と甲1発明との対比、検討
(ア)一致点
甲1発明の「アルミニウムの」「蓋」は本件発明1の「アルミニウムクロージャ」に相当する。
そして、甲1発明の「4ppmの遊離SO_(2)を有するスティルの白ワインに炭酸ガスを封入したスパークリングベース型の白ワインを製造するステップ」は、本件発明1の「アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワインとして、35ppm未満の遊離SO_(2)と、300ppm未満の塩化物と、800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワインを意図して製造するステップ」と、「アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワインとして、35ppm未満の遊離SO_(2)を有するワインを意図して製造するステップ」である限りにおいて、一致する。
さらに、甲1発明の「アルミニウム缶の本体に、前記ワインを充填し、缶内の圧力が約29psi以上となるように、アルミニウム缶をパッケージングするステップ」は、本件発明1の「アルミニウム缶の本体に、前記ワインを充填し、缶内の圧力が最小25psiとなるように、前記缶をアルミニウムクロージャでシーリングするステップ」に相当する。

してみると、本件発明1と甲1発明との一致点は以下のとおりである。
《本件発明1と甲1発明との一致点》
1A アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法であって、該方法が:
1B”アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワインとして、35ppm未満の遊離SO_(2)を有するワインを意図して製造するステップと;
1C”アルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティングされている容器と蓋からなるアルミニウム缶の本体に、前記ワインを充填し、缶内の圧力が最小25psiとなるように、前記缶をアルミニウムクロージャでシーリングするステップと
1D を含む、アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法。

(イ)相違点
本件発明1と甲1発明とは、以下の点で相違する。

《相違点1》
分説1B”の「アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワイン」として、「ワインを意図して製造するステップ」について、本件発明1では、「300ppm未満の塩化物と、800ppm未満のスルフェート」とを有するワインを製造するのに対し、甲1発明では、製造するワインが「300ppm未満の塩化物と、800ppm未満のスルフェートと」を有するものであることの特定がない点。

《相違点2》
分説1C”の「アルミニウム缶の本体に、前記ワインを充填し、缶内の圧力が最小25psiとなるように、前記缶をアルミニウムクロージャでシーリングするステップ」について、本件発明1では、「アルミニウム缶」が「ツーピースアルミニウム缶」であるのに対し、甲1発明では「容器と蓋からなるアルミニウム缶」である点。

(ウ)相違点1についての検討
甲1発明は、上記(1)ア.(オ)で示したとおり、ワインの遊離SO_(2)の含有量に着目し、遊離SO_(2)が0?35mg/lの範囲にある白ワインを想定するものである。これに対し、甲2事項-1のスイスワインの白ワインは一般に市販されている白ワインであって、遊離亜硫酸が15?30mgSO_(2)/lの白ワインである。
そうすると、甲1発明において、パッケージングの対象とする白ワインについて、一般に市販されているワインの中から、遊離SO_(2)が0?35mg/lの範囲にある白ワインであって、「遊離亜硫酸が15?30mgSO_(2)/l、塩化物が10?80mg/l、硫酸塩が0.2?0.8g/l K_(2)SO_(4) 」の組成であることが知られている甲2事項-1のスイスワインの白ワインを選択する程度のことは、当業者が適宜行い得ることである。
したがって、甲1発明において相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(エ)相違点2についての検討
甲1発明の「容器と蓋からなるアルミニウム缶」は、容器と蓋の2部品からなる缶、すなわちツーピース缶と解釈できるので、相違点2は実質的な相違点とならない。
仮に実質的な相違点になり得るとしても、本件特許の優先日当時、アルミニウムのツーピース缶を金属缶として用いることが周知であった(例えば、甲3の第191頁の「3.4」、甲4の第343頁の「つーぴーすかん〔ツーピース缶〕」の記載欄等を参照。)ことを鑑みると、相違点3は単なる周知技術の付加にすぎない。

イ.被請求人の主張について
(ア)平成29年7月4日付け意見書の第3.1(2)イ.(29頁)において被請求人は、本件発明1は、ワイン中の腐食原因物質の濃度が相対的に高い、要件1Bの所定値を超えるワインがアルミニウム缶にパッケージングされてしまうことを確実に防げるという顕著な効果を奏する旨を主張する。
しかし、上記2.(1)で示したとおり、本件特許明細書における試験の結果が、要件1Bの所定値未満にしたことによるものであるのか否かが当業者にとって不明であり、相違点1によってワインの保存中の品質の劣化について必ずしも顕著な効果が奏されるとは認められない。
(イ)被請求人は、甲1発明のパッケージングの対象として、世界中のあらゆるワインの中から、あえて、シェア0.4%程度にすぎない甲2のスイスワインを選択する動機付けは、どこにも見いだせない(被請求人陳述要領書(1)第14頁)旨主張する。
しかしながら、甲2のスイスワインは、たとえシェアが0.4%であっても、一般に市販されて流通するものであり、当然に何らかの手段によりパッケージングを行う必要があるから、甲1発明の方法により甲2のスイスワインをパッケージングすることが不合理であることの根拠がなく、特段の阻害要因は見出せない。したがって、上記主張は採用できない。
(ウ)また、同意見書の第3.1(2)ウ.(29?30頁)において被請求人は、甲2に記載の塩化物及びスルフェートについての数値範囲はあくまでもガイドラインであって法規制ではなく、実際に市販されているスイスワインについて甲2に記載のガイドライン値を超えて本件発明1の所定値を超える塩化物及びスルフェートを含有するワインが存在する可能性を否定できず、本件発明1のように各腐食原因物質が所定値未満の含有量のワインを意図して製造して充填しなければ、要件1Bを超えるワインがパッケージングされてしまう可能性を排除できない旨を主張する。
しかし、甲2のスイスワインがガイドライン値を超えたものであることの証拠は示されておらず、また、上記(2)ア.(ア)、(ウ)、特に上記(2)ア.(ウ)の表30A.1の「法的注記」欄に示されるように甲2事項-1における遊離亜硫酸、硫酸塩、塩化物のガイドライン値はLMV(食品規制)であるから、通常はガイドラインどおりに製造されるものであると解するのが相当である。
(エ)同意見書の第3.1.(2)エ(30頁)において被請求人は、甲2のスイスワインについて、当然に何らかの手段によりパッケージングを行う必要があるとしても、甲1のアルミニウム缶にパッケージングしなければならない理由はなく、組み合わせの阻害要因がないことが組み合わせの動機づけがあることにはならない旨を主張する。
しかし、上記(1)ア.(オ)で示したとおり、甲1はワインの遊離SO_(2)の含有量に着目し、遊離SO_(2)が0?35mg/lの範囲にある白ワインを想定するものであるから、当該範囲を満たす、「遊離亜硫酸が15?30mgSO_(2)/l」の組成であることが知られている甲2事項-1のスイスワインの白ワインを選択する動機づけはあるというべきである。
ウ.小括
以上のとおりであるから、無効理由1は本件発明1について理由がある。

(4)本件発明2と甲1発明との対比、判断
ア.対比
本件発明2と甲1発明とは、本件発明1と甲1発明との相違点1、2のほか、さらに以下の点で相違する。
《相違点3》
本件発明2では、「ワインをパッケージングする方法」において、本件発明2では、「缶の中で缶を直立状態にして30℃で3ヶ月保存したワインの中のアルミニウム含有量の上昇率が最大で約30%である」のに対し、甲1発明では、その点の特定がない点。
イ.判断
上記(1)ア.(オ)で示したとおり、甲1の第60頁のTab.4(表4)に、40℃で保管した白ワイン中のアルミニウム含有量(ppm)の変化が記載されており、アルミニウム容器に封入したワインの経時でのアルミニウム含有量の上昇抑制が、ワインの保存安定性を確保するために求められる指標であることが示唆されている。
したがって、甲1発明において、アルミニウム含有量の上昇率を規定することは、当業者が適宜なし得たものである。
そして、本件特許明細書を参酌しても、相違点3にかかる数値に限定したことにより、当業者が予測しがたい作用効果が奏されているとは認められない。

(5)本件発明3、4、6、11、15と甲1発明との対比、判断
本件発明3、4、6、11、15は、それぞれ要件3A、4A、6A、11A、15Aの点で、甲1発明と共通する。
すなわち、本件発明3、4、6、11、15と甲1発明との相違点は、上記相違点1、2のみであるから、その判断は、本件発明1のものと同様である。

(6)本件発明5と甲1発明との対比、判断
ア.対比
本件発明5と甲1発明とは、本件発明1と甲1発明との相違点1、2のほか、以下の点で相違する。
《相違点4》
「ワインをパッケージングする方法」において、本件発明5では、「前記ワインがさらに、30ppm未満の総ニトレートと、900ppm未満の総ホスフェートと、6g/リットル?9g/リットルの範囲の酒石酸として算出された酸性度とを有する」のに対し、甲1発明では、その点の特定がない点。
イ.判断
ワイン中の成分として、硝酸塩の含有量が「30ppm未満」となること、及び、リン酸塩の含有量が「900ppm未満」となることは、一般的なワインの成分量を規定しているにすぎない。(特に、硝酸塩について、甲9の第352頁の左欄11行?12行及び第1表等を、リン酸塩について、同甲9の第295頁の右欄の「第6表」等を、それぞれ参照。)
したがって、甲1発明において、硝酸鉛及びリン酸塩を本件発明5の如く規定することは、当業者が適宜なし得たものである。
そして、本件特許明細書を参酌しても、相違点4にかかる数値に限定したことにより、当業者が予測しがたい作用効果が奏されているとは認められない。

(7)本件発明7と甲1発明との対比、判断
ア.対比
本件発明7と甲1発明とは、本件発明1と甲1発明との相違点1、2のほか、以下の点で相違する。
《相違点5》
「ワインをパッケージングする方法」において、本件発明7では、「前記耐食コーティングが熱硬化性コーティングである」のに対し、甲1発明では、耐食コーティングがワニスである点。
イ.判断
ここで、ワニスとは、「透明な被膜を形成する塗料」(三省堂大辞林)である。
そして、缶入り飲料において、飲料の劣化を抑制するための缶の内面の耐食コーティングに熱硬化性樹脂(例えばエポキシ系の樹脂)の被膜を用いることは、本件優先日前に周知の技術である。(例えば、甲5の第2頁左上欄下から6行?右上欄2行、同頁右下欄5行?9行、第5頁左上欄8行?14行、甲6の第1頁左下欄下から3行?右下欄6行、第2頁左上欄下から8行?右上欄18行、甲7の第2頁左上欄4行?9行、請求項1、甲8の段落0007?0010等参照。)
してみると、甲1発明において、被膜を形成する塗料に熱硬化性の樹脂を採用する程度のことは、当業者が容易になし得たことである。

(8)本件発明8と甲1発明との対比、判断
ア.対比
本件発明8と甲1発明とは、本件発明1と甲1発明との相違点1、2のほか、以下の点で相違する。
《相違点6》
「ワインをパッケージングする方法」において、本件発明8では、「クロージャによるシーリング後の頭隙が、80?97%v/vの窒素と、2?20%v/vの二酸化炭素との組成を有する」のに対し、甲1発明では単に「クロージャによるシーリング後の頭隙が窒素を有する」ものである点。
イ.判断
飲料を缶に充填するに際し、頭隙に不活性ガスである窒素を充填することや、二酸化炭素を充填することはどちらも本件優先日前に周知の技術であって、これを併用すること、窒素と二酸化炭素の充填割合を適宜に設定することは、当業者が適宜なし得たことである。
そして、本件発明8について、本件特許明細書を参酌しても、相違点6にかかる数値に限定したことにより、当業者が予測しがたい作用効果が奏されているとは認められない。

(9)本件発明10と甲1発明との対比、判断
ア.対比
本件発明10と甲1発明とは、本件発明1と甲1発明との相違点1、2のほか、以下の点で相違する。
《相違点7》
「ワインをパッケージングする方法」において、本件発明10では、「前記頭隙が、330ミリリットル缶の場合に、2?5mmの範囲にある」のに対し、甲1発明では、その点の特定がない点。
イ.判断
甲1発明において、アルミ缶の大きさと頭隙を好適な範囲に決定することは当業者が適宜行う設計事項にすぎない。
そして、本件発明10について、本件特許明細書を参酌しても、相違点8にかかる数値に限定したことにより、当業者が予測しがたい作用効果が奏されているとは認められない。

(10)本件発明12と甲1発明との対比、判断
ア.対比
本件発明12と甲1発明とは、本件発明1と甲1発明との相違点2のほか、以下の点で相違する。
《相違点8》
分説1B”の「アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワイン」として、「ワインを意図して製造するステップ」について、本件発明12では、「300ppm未満の塩化物と、800ppm未満のスルフェート」とを有する「非発泡赤ワイン」を製造するのに対し、甲1発明では、製造するワインが「300ppm未満の塩化物と、800ppm未満のスルフェートと」を有する「非発泡赤ワイン」であることの特定がない点。
イ.相違点8についての検討
上記(1)ア.(ア)で示した甲1の記載から、甲1発明の課題はアルミニウム缶へのパッケージングでの最適な特性をワインに与えるためのワイン調製の技術開発であって、ワインの種類(赤ワインであるか白ワインであるか等)について特段の限定を付するものではない。
そして、甲1発明は、上記(1)ア.(オ)で示したとおり、ワインの遊離SO_(2)の含有量に着目し、遊離SO_(2)が0?35mg/lの範囲にあるワインを想定するものである。これに対し、甲2事項-2のスイスワインの赤ワインは一般に市販されている赤ワインであって、遊離亜硫酸が10?25mgSO_(2)/lの赤ワインである。
そうすると、甲1発明において、パッケージングの対象とするワインについて、一般に市販されているワインの中から、遊離SO_(2)が0?35mg/lの範囲にあるワインであって、「遊離亜硫酸が10?25mgSO_(2)/l、塩化物が10?80mg/l、硫酸塩が0.2?0.8g/l K_(2)SO_(4) 」の組成であることが知られている甲2事項-2のスイスワインの赤ワインを選択する程度のことは、当業者が適宜行い得ることである。
また、上記(1)ア.(オ)で示した甲1の記載には、「・・・パッケージング時の・・・加圧された炭酸ガスの存在(2atm以上の過度の圧力)または不存在(スパークリングあるいはスティル)・・・」との記載があり、また表4のテストにおいて「スパークリング」、「スティル」の双方のワインについてパッケージングを行っていることから、甲1発明は、同一のワインについて、加圧された炭酸ガスの不存在下で非発泡(スティル)のワインとしてパッケージングを行うことと、加圧された炭酸ガスの存在下で炭酸(スパークリング)のワインとしてパッケージングを行うこととの、双方を予定している。
よって、甲1発明において、パッケージングの対象とするワインについて、甲2事項-2のスイスワインの赤ワインを選択するとともに、その際に加圧された炭酸ガスの不存在下で非発泡(スティル)のワインとしてパッケージングを行う程度のことも、当業者が適宜行い得ることである。
また、非発泡の飲料であっても、缶内へのパッケージング時に缶内の圧力が最小25psi程度となるようにガスを充填して缶をシーリングすることは、缶の潰れやへこみを防ぐために、普通に行われている周知の技術である。
したがって、甲1発明において相違点8に係る本件発明12の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
ウ.相違点2についての検討
上記(3)ア.(エ)で示したとおり、甲1発明において、相違点2は実質的な相違点ではないか、単なる周知技術の付加に過ぎない。
エ.小括
よって、本件発明12は当業者が容易に発明をすることができたものである。

(11)本件発明13と甲1発明との対比、判断
ア.対比
本件発明13と甲1発明とは、本件発明1と甲1発明との相違点1、2のほか、以下の点で相違する。
《相違点9》
本件発明13のワインが「非発泡」の白ワインであるのに対し、甲1発明ではワインが「非発泡」の白ワインであることの特定がない点。
イ.相違点9についての検討
上記(10)イ.で示したとおり、甲1発明は、同一のワインについて、加圧された炭酸ガスの不存在下で非発泡(スティル)のワインとしてパッケージングを行うことと、加圧された炭酸ガスの存在下で炭酸(スパークリング)のワインとしてパッケージングを行うこととの、双方を予定している。
よって、甲1発明において、パッケージングの対象とするワインについて、甲2事項-1のスイスワインの白ワインを選択する際に、加圧された炭酸ガスの不存在下で非発泡(スティル)のワインとしてパッケージングを行う程度のことも、当業者が適宜行い得ることである。
また、非発泡の飲料であっても、缶内へのパッケージング時に缶内の圧力が最小25psi程度となるようにガスを充填して缶をシーリングすることは、缶の潰れやへこみを防ぐために、普通に行われている周知の技術である。
したがって、甲1発明において相違点9に係る本件発明13の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
ウ.小括
よって、本件発明13は当業者が容易に発明をすることができたものである。

(12)本件発明14と甲1発明との対比、判断
ア.対比
本件発明14と甲1発明とは、本件発明1と甲1発明との相違点2のほか、以下の点で相違する。
《相違点10》
分説1B”の「アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワイン」として、「ワインを意図して製造するステップ」について、本件発明12では、「300ppm未満の塩化物と、800ppm未満のスルフェート」とを有する「炭酸赤ワイン」を製造するのに対し、甲1発明では、製造するワインが「300ppm未満の塩化物と、800ppm未満のスルフェートと」を有する「炭酸赤ワイン」であることの特定がない点。
イ.相違点10についての検討
上記(10)イ.で示したとおり、甲1発明において、パッケージングの対象とするワインについて、一般に市販されているワインの中から、遊離SO_(2)が0?35mg/lの範囲にあるワインであって、「遊離亜硫酸が10?25mgSO_(2)/l、塩化物が10?80mg/l、硫酸塩が0.2?0.8g/l K_(2)SO_(4) 」の組成であることが知られている甲2事項-2のスイスワインの赤ワインを選択する程度のことは、当業者が適宜行い得ることである。
また、上記(10)イ.で示したとおり、甲1発明は、同一のワインについて、加圧された炭酸ガスの不存在下で非発泡(スティル)のワインとしてパッケージングを行うことと、加圧された炭酸ガスの存在下で炭酸(スパークリング)のワインとしてパッケージングを行うこととの、双方を予定している。
よって、甲1発明において、パッケージングの対象とするワインについて、甲2事項-2のスイスワインの赤ワインを選択するとともに、その際に加圧された炭酸ガスの存在下で炭酸(スパークリング)のワインとしてパッケージングを行う程度のことも、当業者が適宜行い得ることである。
したがって、甲1発明において相違点10に係る本件発明14の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
ウ.相違点2についての検討
上記(3)ア.(エ)で示したとおり、甲1発明において、相違点2は実質的な相違点ではないか、単なる周知技術の付加に過ぎない。
エ.小括
よって、本件発明14は当業者が容易に発明をすることができたものである。

(13)小括
以上のとおりであるから、無効理由1は本件発明1?8、10?15について理由がある。
したがって、本件発明1?8、10?15は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

4.無効理由4(明確性)について
上記第3のとおり、請求項9を削除する訂正が認められることにより、本件特許の請求項9についての無効理由4による本件審判の請求は、その対象が存在しないものとなった。
したがって、本件特許の請求項9に係る発明についての無効理由4による本件審判の請求は、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第135条の規定により、却下すべきものである。

第7.むすび
以上のとおり、無効理由1及び3により、本件発明1?8、10?15に係る特許は無効とすべきものである。
また、本件発明9に係る特許に対する本件審判の請求は、却下すべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法に関する。本発明はまた、本発明の方法に従ってワインが充填されたアルミニウム缶に関する。
【0002】
発明の背景
ワインは、古代ギリシャの時代から製造されている。ワインは多くのタイプの容器に保存されてきた。これらの容器には例えば、木材、陶器、皮革が含まれる。特に1リットル未満の量で保存される場合には、ワインの好ましい保存手段として、ガラス瓶の使用が発展した。ほとんど例外なしに瓶が使用されてはいるものの、瓶は比較的重く、かつ比較的壊れやすいという欠点を有する。
【0003】
ワイン以外の飲料、例えばビールやソフトドリンクの場合、金属缶やポリエチレンテレフタレート(PET)のような、代わりとなる包装容器が幅広く採用されている。これらの包装容器は、より軽量で、かつ耐破損性がより大きいという利点をもたらす。このような代わりの容器にワインを保存することが提案されている。しかし、ワインに対してこのようなタイプのパッケージングを利用しようという試みは概ね不成功に終わっている。いくつかの極めて低品質のワインは、ポリ塩化ビニル容器内に保存される。このような不成功の理由は、ワイン中の物質の比較的攻撃的な性質、及び、ワインと容器との反応生成物の、ワイン品質、特に味質に及ぼす悪影響にあると考えられる。ワインは典型的には3?4の範囲のpHを有する複雑な製品である。これと比較して、ビールのpHは5以上であり、多くのソフトドリンクのpHは3以上である。しかし、pH自体は単独の決定因ではなく、3という低いpHを有する炭酸コーラ飲料は、PET容器に充分に保存することができる。この低いpHは、炭酸コーラ飲料中のリン酸含有物の結果である。このことは、プレコーティングされたアルミニウム缶及びPETボトルをこれらの飲料に対して申し分なく使用することを可能にする。
【0004】
アルミニウム缶内にワインをパッケージングし、これによりワインの品質が保存中に著しく劣化しないようにすることが望ましい。
【0005】
発明の概要
本発明は1つの形態において、アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法であって、該方法が:
アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワインとして、35ppm未満の遊離SO2と、300ppm未満の塩化物と、800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワインを意図して製造するステップと;
アルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティングされているツーピースアルミニウム缶の本体に、前記ワインを充填し、容器内の圧力が最小25psiとなるように、前記缶をアルミニウム・クロージャでシーリングするステップとを含む、アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法を提供する。
【0006】
前記ワインがさらに、250ppm未満、より好ましくは100ppm未満の総二酸化硫黄レベルを有することを特徴とすることが好ましい。
【0007】
前記ワインがさらに、1ppm未満の総ニトリットと、30ppm未満の総ニトレートと、900ppm未満の総ホスフェートと、6g/リットル?9g/リットルの範囲の酒石酸として算出された酸性度とを有することを特徴とすることが好ましい。
【0008】
前記ワインが充填前に冷却されることが好ましい。
【0009】
前記耐食コーティングが熱硬化性コーティングであることが好ましい。
【0010】
クロージャによるシーリング後の頭隙が、80?97%v/vの窒素と、2?20%v/vの二酸化炭素との組成を有することが好ましい。
【0011】
あるいは、前記ツーピース缶に前記ワインが充填される前に、前記ワインが炭酸ガス飽和させられ、これにより、シーリング後の前記頭隙は大部分が二酸化炭素となる。
【0012】
前記頭隙の最大酸素含有率が1%v/vであることが好ましい。
【0013】
前記缶の本体に対する前記クロージャのシーム形成直前に、液体窒素が添加されることが好ましい。
【0014】
前記頭隙が、330ミリリットル缶の場合に、2?5mmの範囲にあることが好ましい。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明の方法に必要となるワインは、下記のような特定のブドウ栽培及びワイン製造技術によって製造することができる。あるいは、規定レベルよりも高いレベルの構成成分でワインを処理し、これらの構成成分を除去するか又はこれらの構成成分の含有率を本発明に必要となる含有率まで低下させることにより、ワインを製造してもよい。本発明において、「ワイン」という用語は、極めて広範囲に使用され、この用語には非発泡ワイン、発泡ワインならびに強化ワイン、及びミネラルウォーター及びフルーツジュースとブレンドされたワインが含まれる。
【0016】
ブドウ栽培に関して、不都合な化学薬剤散布を用いないことを保証することにより、望ましくない物質の不存在を達成することができる。化学薬剤散布を使用する際には、監視が必要となる。それというのもこのような化学薬剤散布はまた、最終ワイン製品中に望ましくない化学物質が全体的に蓄積することに対して影響を与えるからである。ブドウの木のほとんどの病気は、未剪定のブドウの木を繁茂させるために熱又は湿分を必要とし、このことにより、さらに化学薬剤散布が必要になるというジレンマにますます陥ることになる。
【0017】
ブドウの品質、より高い発生率のボツリチス、粉末饂飩粉病及び綿毛饂飩粉病を形成する上で、日陰が主要な役割を有する。ここでもまた、化学的な介入が必要となる。硫黄を基剤とする防カビ剤を使用することができるが、しかしこれらの防カビ剤は、許容範囲を超えたレベルの硫黄を導入する。未剪定のブドウの木の房は、過剰な青臭い不快な風味を有するコクのないワインを生成する。光は最大の自然資産の1つであるが、忘れられることが多く、軽視されがちである。焦点をあわせるべきなのは、木自体内で「調和的バランスがとれたブドウの木」である。ブドウと、葉と、茎と、木部と、根との正しい比率がこのようにバランスがとれた状態で生じれば、必要となる化学的介入は最小限で済む。
【0018】
過剰な灌漑の名残が「バランスを崩した」作物である。過剰に豊富な天蓋のある場所での作物は、日陰果実及び熟成の遅れをもたらす。また収穫前の過剰な灌漑は、液果に水分と化学的取込み物質とを過剰に供給し、液果の本来の状態を変えてしまう。ここでもまた、さらに加工ラインに沿った化学的対策が必要となる。一定電子土壌水分モニターによる細流灌漑が好ましい選択肢である。
【0019】
好ましくはブドウは(果実を過度に損傷しないように細心の注意を払って)手摘みし、涼しい環境(8℃?16℃)中で好ましくは夜間に収穫するべきである。「赤」の場合、pHは3.1?3.8であると共にボーメ(Baume)は13.0?14.0の範囲にあり、「白」の場合、pHは3.0?3.5であると共にボーメ(Baume)は10.0?13.0である。野生酵母の分解を最小限に抑えるように、最小量の二酸化硫黄の散布が必要とされる。発酵に際しては野生酵母に頼るのが好ましい。
【0020】
赤ワインの場合、収穫後できるだけ早く、好ましくは収穫から12時間以内に圧搾及び除茎を行わなければならない。高品質ワインを製造するには、圧搾の前に除茎を行うことが強く推奨される。その利点は、渋みのある、葉が茂った草質の茎を含有しないことにより、味質を改善できることである。予想アルコール強度は0.5%も高くなる。なぜならば、水を含有し、かつ糖を含有しない茎はアルコールを吸収するからである。茎の色素を回避することにより、色合いが強くなる。茎と共に発酵すると、加工が促進された時には、より多量の酸素が取り込まれるようになる。発明者にとって発酵時に必要となるのは速度ではなく、安定性及び品質だけである。除茎及び圧搾を行ったあと、マストを発酵容器にポンプ供給し、酒石酸で調整し、酵母を必要なレベルに調整し、最小限の二酸化硫黄を添加する。
【0021】
この容器は、過剰な発酵ガスを排出するように、また酸素が入らないように、気泡システムを備えている。酸素の流入はパンチング(叩き込み)の時にだけ発生する。このようなエアレーション量は、酵母増殖及び完全な糖発酵にとって重要である。
【0022】
規則的な間隔を置いて(10?12時間毎に)皮を叩き込み、ほぼ25℃の周囲温度を維持することが、発酵プロセスにおいて重大である。ドライ・キャップが酸化を可能にし、温度がより高く又はより低くなると、このことは発酵ジュースに悪影響を与える。浸漬中の安定性が次の14?21日間の重要な要素となる。一日0.7?1.0のボーメ減少が「ベンチマーク」となるように、ボーメを常に監視する。ボーメが0°?1°に達したら、しぼりかす又はブドウ塊は「バスケット・プレス」される。
【0023】
プレスは、注意深くかつ鋭敏に監視することが必要である。過剰のプレスは強力な渋み物質、フェノール成分、及び強力な粗タンニンを形成する。バランスのとれたプレスは、結果として行われる重化学的な清澄、無用のブレンド及び化学的介入の必要性を軽減する。
【0024】
この段階において、自由流動するジュースとプレスされたジュースとの組み合わせは、亜硫酸塩で予め処理されて滅菌された、使用済みの又は新しいアメリカンオーク、フレンチオークに移され、自然制御された温度環境内で保存される。温度範囲は15℃?25℃である。充填後、樽をゴム製の槌で数回打ち、これにより気泡を除去し、25mm以内の樽口から補充する。樽はエアロックを備えており、樽内での発酵の進行が可能である。このプロセスは完成するのに3?4ヶ月かかる(この時間係数は、宿主環境における湿度及び温度の変動に関連する)。この段階の頃に、接種によって、又はワイン醸造場において固有の場合には自然に、リンゴ酸-乳酸発酵が生じる。
【0025】
発酵が完了した後、樽をおり引きし、清浄化し、滅菌し、軽く亜硫酸塩処理し、充填し、エアロックを取り外す。充填後、樽をゴム製の槌で数回打つことにより気泡を除去し、補充して栓をする。次いで樽を鉛直方向に対して30°の角度を成すように位置決めする。
【0026】
若いワインからは沈殿物を除去して、酵母菌、細菌体、及び腐敗を生じさせる有機異物を減少させ、亜硫酸水素塩を回避できるようにすることが必要である。
【0027】
優れた品質を探求する上で、エアレーションはもう一つの自然の成り行きである。このファクタは、酵母形質転換及び結果として得られるワインの安定性の達成を容易にする。発酵媒質中では、種々異なる沈殿領域が発生して、当然遊離二酸化硫黄レベルを形成することになる。おり引きはこれらの層に相乗効果を与えて、これらを一致させる。この段階における亜硫酸塩処理の要件は、従ってより厳密である。
【0028】
おり引きの頻度は異論の多い問題であり、一年目では2?3ヶ月毎の時間枠が完全に許容され得るが、しかし現実のファクタ、例えばタンク又は樽のサイズ、貯蔵庫内の温度及びワインの種類に応じて、貯蔵庫責任者が決定する。責任者の技能及び経験が、最終的な要件を見極めることになる。懸濁させられた物質の沈下を促進するには、100リットル当たり1?3の割合で卵白清澄することが必要となる。
【0029】
12?18ヶ月間桶内で熟成させた後、少なくとも3?4回おり引きし、分析し、テイスティングし、軽く亜硫酸塩処理し、(100%必要ならば)ワインが傷んでおらず、発酵性糖を含有しておらず、完全にリンゴ酸-乳酸発酵させられたことを認識した後、ワインはブレンド準備完了状態となる。このことはこれまでの12?18ヶ月、及び、収穫に至るまでの数ヶ月になされた努力の最終的な報酬である。
【0030】
白ワインの場合、圧搾の前にブドウを除茎する。ジュースのpHは、酒石酸でpH3.0?3.4に調整される。皮接触時間は、ブドウの品種、原産地、周囲温度及びタンニンの量又は渋み作用のあるフェノール成分の要件に関連する。二酸化炭素を添加しながら、マストから水分を流出させる。
【0031】
発酵温度は10?16℃の範囲にある。0.4?0.8ボーメの糖含量減少が目標である。発酵後、ワインのかすを沈殿させ、二酸化炭素のもとでおり引きし、二酸化硫黄を添加する。
【0032】
白ワインに付随する全ての手順において、何があっても空気に対する暴露は回避しなければならず、低温環境が実現される。上述のようにして製造されたワインは、35ppm未満の遊離二酸化硫黄レベルと、250ppm未満の総二酸化硫黄レベルとを有する。酸、塩化物、ニトレート及びスルフェートを形成することができる陰イオンレベルは、規定の最大値未満である。
【0033】
本発明は、頭隙に窒素を必要としない発泡ワインに適用することもできる。それというのも、所要の缶強度を提供するのには二酸化炭素で充分だからである。
【0034】
本発明に適したツーピース缶は、ソフトドリンク及びビール飲料に現在用いられている缶である。この缶のライニングも同様であり、典型的には、ホルムアルデヒドを基剤とする架橋剤と組み合わされたエポキシ樹脂である。使用される膜厚は、典型的にはビール又はソフトドリンクに用いられているものよりは厚い。典型的には、175mg/375ml缶が、適切な膜厚をもたらすことが判った。内部をコーティングされた缶は、典型的には165?185℃の範囲の温度で20分間ベーキングすることができる。良好に架橋された不透過性膜によって、保存中に過度のレベルのアルミニウムがワイン中に溶解しないことを保証することが重要である。
【0035】
缶充填プロセスは、ほぼ0.1mlの液体窒素を、本体のクロージャのシーム形成直前に添加することに関与する。缶の内部圧力は、ほぼ25?40psiである。
【0036】
あるいは、ワインは、カーボネータとして知られる装置においてワインと二酸化炭素ガスとを混合することにより、炭酸ガス飽和させることもできる。このようなタイプの装置はよく知られており、ソフトドリンク業界において広く使用されている。
【0037】
上述のように、アルミニウム缶内でのワインの保存安定性は極めて重大である。頭隙が酸素を含むボトリングされたワインとは異なり、本発明の缶の頭隙が有する酸素レベルは極めて低い。すなわち、このワインは保存中「老化」しない。
【0038】
試験を目的として、パッケージングされたワインを、周囲条件下で6ヶ月間、30℃で6ヶ月間保存する。50%の缶を直立状態で、50%の缶を倒立状態で保存する。
【0039】
製品を2ヶ月の間隔を置いて、Al、pH、°ブリックス(Brix)、頭隙酸素及び缶の目視検査に関してチェックする。1つの変数当たり、6つの缶を倒立させ、6つの缶を直立させる。目視検査は、ラッカー状態、ラッカーの汚染、シーム状態を含む。試料は12ヶ月保存しなければならない。官能試験は、味覚パネルによる認識客観システムを用いる。
【0040】
白ワインの保存評価の結果を表1に示す。白ワインは赤ワインよりも平均で、より低いpHを有し、白ワイン試験は保存安定性に関してより厳しい試験となる。
【0041】
【表1】

【0042】
このデータは30℃で6ヵ月後の充分な保存状態を示す。許容可能なワイン品質が味覚パネルによって確認された。
【0043】
本発明の思想及び範囲内での変更は当業者であれば容易に可能なので、本発明は、一例として示した上述の特定の実施例に限定されるものではないことを理解すべきである。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法であって、該方法が:
アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワインとして、35ppm未満の遊離SO_(2)と、300ppm未満の塩化物と、800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワインを意図して製造するステップと;
アルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティングされているツーピースアルミニウム缶の本体に、前記ワインを充填し、缶内の圧力が最小25psiとなるように、前記缶をアルミニウムクロージャでシーリングするステップと
を含む、アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法。
【請求項2】
缶の中で缶を直立状態にして30℃で3ヶ月保存したワインの中のアルミニウム含有量の上昇率が最大で約30%である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ワインがさらに、250ppm未満の総二酸化硫黄レベルを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ワインがさらに、100ppm未満の総二酸化硫黄レベルを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記ワインがさらに、30ppm未満の総ニトレートと、900ppm未満の総ホスフェートと、6g/リットル?9g/リットルの範囲の酒石酸として算出された酸性度とを有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ワインが充填前に冷却される、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記耐食コーティングが熱硬化性コーティングである、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
クロージャによるシーリング後の頭隙が、80?97%v/vの窒素と、2?20%v/vの二酸化炭素との組成を有する、請求項1から5及び7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
前記頭隙が、330ミリリットル缶の場合に、2?5mmの範囲にある、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
充填されたワインであって、請求項1から8及び10のいずれか1項に記載の方法により製造可能な、充填されたワイン。
【請求項12】
前記ワインが非発泡赤ワインである、請求項11に記載の充填されたワイン。
【請求項13】
前記ワインが非発泡白ワインである、請求項11に記載の充填されたワイン。
【請求項14】
前記ワインが炭酸赤ワインである、請求項11に記載の充填されたワイン。
【請求項15】
前記ワインが炭酸白ワインである、請求項11に記載の充填されたワイン。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2017-12-26 
結審通知日 2018-01-04 
審決日 2018-02-20 
出願番号 特願2003-532366(P2003-532366)
審決分類 P 1 113・ 536- ZAA (B67C)
P 1 113・ 537- ZAA (B67C)
P 1 113・ 121- ZAA (B67C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田村 嘉章  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 谿花 正由輝
千壽 哲郎
登録日 2005-04-15 
登録番号 特許第3668240号(P3668240)
発明の名称 アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法  
代理人 臼井 幸治  
代理人 山口 健司  
代理人 和田 祐造  
代理人 田子 真也  
代理人 渡▲辺▼ 陽一  
代理人 内田 公志  
代理人 青木 晋治  
代理人 鮫島 正洋  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 山口 健司  
代理人 柳下 彰彦  
代理人 青木 篤  
代理人 池田 達則  
代理人 青木 篤  
代理人 中島 勝  
代理人 鵜飼 健  
代理人 関口 尚久  
代理人 関口 尚久  
代理人 萩尾 保繁  
代理人 萩尾 保繁  
代理人 渡▲辺▼ 陽一  
代理人 河野 直樹  
代理人 池田 達則  
代理人 中島 勝  
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