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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1368605
審判番号 不服2020-5490  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-23 
確定日 2020-12-10 
事件の表示 特願2018-222990「ALD反応炉における基板の装填」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月 9日出願公開,特開2019- 71425,請求項の数(13)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2012年(平成24年)11月23日を国際出願日とする特願2015-543487号の一部を,平成29年 3月 7日に新たな特許出願とした特願2017-42486号の一部を,平成30年11月29日に更に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年12月13日 :手続補正書の提出
令和 1年 8月13日付け:拒絶理由通知書
令和 1年10月16日 :意見書,手続補正書の提出
令和 1年12月27日付け:拒絶査定
令和 2年 4月23日 :審判請求書,手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和 1年12月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由2 本願請求項1-13に係る発明は,以下の引用文献1-6に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1 特開2010-186904号公報
引用文献2 特開2005-123315号公報
引用文献3 特開2012-186485号公報
引用文献4 特開2012-174763号公報
引用文献5 特開2004-281613号公報
引用文献6 特開2000-286321号公報

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正は,補正前の請求項1,7に,「前記基板ホルダを真空中で回転させることは,前記基板ホルダを,該基板ホルダに備えられる回転中心において,回転軸の周りに回転させることを含む」と限定を加えるものであるから,特許請求の範囲の限縮を目的とするものである。
また,審判請求時の補正は,本願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲及び図面に記載された事項であり,新規事項を追加するものではないといえ,当該補正によっても,補正前の請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であることは明らかである。
そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1-13に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1-13に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明13」という。)は,令和 2年 4月23日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-13に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
堆積反応炉の反応室内に基板を装填する方法であって,
基板ホルダに複数の基板を供給すること,ただし前記複数の基板は前記基板ホルダ内で,水平に向けられた基板群の鉛直方向の積み重ねを形成する,前記供給することと,
鉛直に向けられた基板群の水平方向の配列を形成するべく前記基板ホルダを真空中で回転させることと,
を含む,方法であって,前記基板ホルダを真空中で回転させることは,前記基板ホルダを,該基板ホルダに備えられる回転中心において,回転軸の周りに回転させることを含む,
方法。」

なお,本願発明2-6は,概略,本願発明1を減縮した発明であり,発明本願発明7は,本願発明1に対応する装置に関する発明,本願発明8-13は,概略,本願発明7を減縮した発明である。

第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様である。)

「【0003】
基板を処理する場合,処理管内の基板に対して均一な処理を行うことが重要である。
しかしながら,上記縦型処理管を備える基板処理装置で,比較的大口径,例えば約400mm以上の口径の基板を処理する際,水平姿勢で配置された基板が自重により比較的大きく変形する場合がある。そのため,その基板に対して均一に所定の基板処理を行うことができない場合がある。
【0004】
本発明は,比較的大口径の基板に対して基板処理を行う場合であっても,その基板に対して均一に基板処理を行うことが可能な基板処理装置を提供することを目的とする。」

「【0016】
(移載室124)
筐体111の前室117の後方には,ウエハ載置台122の設置空間(前室117)から,流体的に隔離された移載室(搬送室)124が設けられている。移載室124内には,ウエハ移載機構(基板移載機構)125が設けられている。ウエハ移載機構125は,ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置(基板移載装置)125aと,ウエハ移載装置125aを移動させるための移動機構125bと,を有する。
【0017】
移動機構125bは,ウエハ移載装置エレベータ125bおよびウエハ移載装置125aの連続動作により,ウエハ移載装置125aのツイーザ(基板保持体)125cをウエハ200の載置部として,基板保持具217に対してウエハ200を装填(チャージング)および脱装(ディスチャージング)するように構成されている。
【0018】
本実施形態では,ウエハ200が装填される基板保持具217は,水平姿勢と垂直姿勢との間で姿勢変換可能に構成されている。いうまでもなく,基板保持具217は本実施形態に限られるものではない。例えば,基板保持具217は,ウエハ200を垂直姿勢で保持するように固定されていても構わない。
【0019】
(姿勢変換移動機構115)
第1のシール部2190の近傍(例えば下方)には,姿勢変換移動機構115が備えられている。例えば,姿勢変換移動機構115は,基板保持具217を保持する第1のシール部2190を,基板保持具217に保持されるウエハ200が水平姿勢となる状態と垂直姿勢となる状態との間で姿勢変換する機構と,第1のシール部2190を移動させる機構と,を有する。詳細には,姿勢変換移動機構115は,第1のシール部2190に連結された連結具としてのアーム128と,姿勢変換移動駆動部1151と,移動誘導部材1152と,を有する。」

「【0089】
(基板処理装置101の動作)
次に,本発明の一実施形態にかかる基板処理装置101の動作について説明する。図7は,本発明の一実施形態にかかる基板処理装置101の動作を説明するためのフローチャートである。
図7を参照しながら,上記構成にかかる処理炉202を用いて,半導体デバイスの製造工程の一工程として,ウエハ200に熱処理を行う方法について説明する。なお,以下の説明において,基板処理装置101を構成する各部の動作はコントローラ280により制御される。
【0090】
(S1)
装填前処理として,先ず,ポッド110が載置台122に移載される。ポッドオープナ121のウエハ搬入搬出口120は,キャップ着脱機構123によって閉じられており,移載室124にはクリーンエアが流通され,充満されている。
【0091】
例えば,移載室124にはクリーンエアとして窒素ガスが充満することにより,酸素濃度が20ppm以下と,筐体111の内部(大気雰囲気)の酸素濃度よりも遥かに低く設定されている。
不図示のポッド搬送装置によって,載置台122に載置されたポッド110は,その開口側端面が筐体111の正面壁におけるウエハ搬入搬出口120の開口縁辺部に押し付けられる。ポッド110のキャップがキャップ着脱機構123によって取り外され,ウエハ出し入れ口を開放される。
【0092】
ポッド110がポッドオープナ121によって開放されると,ウエハ200はポッド110からウエハ移載装置125aのツイーザ125cによってウエハ出し入れ口を通じてピックアップされ,不図示のノッチ合わせ装置にてウエハ200を整合した後,基板保持具217に装填(チャージング)される。
【0093】
(S10)
詳細には,ステップS10では,図5(A)?図5(D),図6(A),図6(B)に示すように,基板保持具217に,複数のウエハ200を略垂直姿勢で略水平方向に配列した状態で保持し,固定部(可動保持部217c)により,ウエハ200を略垂直姿勢で略水平方向に配列した状態で固定する(S10)。詳細には,コントローラ280により駆動部(駆動モータ)2178を制御して,可動保持部217cを回転軸2178dを中心に回転させて,ウエハ200を固定保持部2171aと可動保持部217cで狭持することで固定する。
【0094】
本実施形態では,上記ステップS10における基板保持具217の固定部により,複数のウエハ200を水平姿勢で垂直方向に配列した状態で固定する固定する工程として,図7,図8(A)?図8(C)に示されるステップS11?S13を実行する。
【0095】
本実施形態では,図8(A)に示すように,基板保持具217の各支柱2173a,2173b,2173c)には,ウエハ200を保持するための複数の保持溝217hが形成されている。この保持溝217hの溝幅(支柱の長手方向に沿った長さ)は,ウエハ200の厚さより幅広に形成されている。
【0096】
(S11)
ステップS11では,図8(A)に示すように,基板保持具217の各支柱2173a?2173cの軸方向が垂直方向と一致するように,姿勢変換移動機構115により,基板保持具217を垂直姿勢にする。
【0097】
続いて,図8(A)に示すように,基板保持具217により,複数のウエハ200を水平姿勢で垂直方向に配列した状態で保持する。詳細には,各支柱2173(2173a?2173c)の保持溝217hは,保持溝217hに挿入されたウエハ200が水平姿勢となるように,各支柱の保持溝217hの側面(立ち上り部)217gが形成されている。 ウエハ200が,基板保持具217の保持溝217hそれぞれに挿入されることにより,ウエハ200の表面(主面)に直交する方向と各支柱2173の長手方向(本実施形態では回転軸200θと同じ方向)とが一致するように規定されている。
【0098】
(S12)
ステップS12では,図8(B)に示すように,基板保持具217の固定部(可動保持部217c)により,複数のウエハ200を水平姿勢で垂直方向に配列した状態で固定する。基板保持具217の固定保持部217aと可動保持部217cの各支柱2173a,2173b,2173cにより,ウエハ200の側面が狭持される。
【0099】
(S13)
ステップS13では,図8(C)に示すように,基板保持具217の固定部(可動保持部217c)により複数のウエハ200を固定したまま,ウエハ200が垂直姿勢となるように,基板保持具217を姿勢変換移動機構115により水平軸まわりに90°回転させて姿勢変換する。
【0100】
上記ステップS11?S13により,上記支柱の保持溝217hに挿入された複数のウエハ200が略垂直姿勢で水平方向に沿って配列した状態で,基板保持具217の固定部(可動保持部217c)により固定された状態となる。
【0101】
(S20)
続いて,ステップS20では,炉口側シール部2190が姿勢変換移動機構115によって移動されることにより,ウエハ200を固定した基板保持具217が,処理炉202内に搬入(ローディング)され,シール部2190によりプロセスチューブ205の開口部2021が密閉される。 この際,回転軸方向に沿った基板保持具217の両端部が,プロセスチューブ205の両端部にそれぞれ設けられた回転支持部(回転部255,尾管側回転支持部2955)により回転自在にそれぞれ支持される。
【0102】
(S30)
続いて,ステップS30では,回転部255により基板保持具217を回転させつつ,プロセスチューブ205内にガスを供給して,ウエハ200に所定の基板処理,例えば,酸化,拡散,アニールなどの基板処理が実施される。」

「【図1】



「【図2】




「【図7】



「【図8】



(2) 上記(1)を参酌すると,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 ステップS1では,装填前処理として,移載室124にはクリーンエアが流通され,
ステップS10では,基板保持具217に,複数のウエハ200を略垂直姿勢で略水平方向に配列した状態で保持し,固定部(可動保持部217c)により,ウエハ200を略垂直姿勢で略水平方向に配列した状態で固定され,
ステップS20では,炉口側シール部2190が姿勢変換移動機構115によって移動されることにより,ウエハ200を固定した基板保持具217が,処理炉202内に搬入(ローディング)され,シール部2190によりプロセスチューブ205の開口部2021が密閉される,
基板処理装置101の動作であって,
上記ステップS10における基板保持具217の固定部により,複数のウエハ200を水平姿勢で垂直方向に配列した状態で固定する固定する工程として,
ステップS11では,基板保持具217の各支柱2173a?2173cの軸方向が垂直方向と一致するように,姿勢変換移動機構115により,基板保持具217を垂直姿勢にし,基板保持具217により,複数のウエハ200を水平姿勢で垂直方向に配列した状態で保持し,
ステップS12では,基板保持具217の固定部(可動保持部217c)により,複数のウエハ200を水平姿勢で垂直方向に配列した状態で固定し,
ステップS13では,基板保持具217の固定部(可動保持部217c)により複数のウエハ200を固定したまま,ウエハ200が垂直姿勢となるように,基板保持具217を姿勢変換移動機構115により水平軸まわりに90°回転させて姿勢変換する,
ステップS11?S13を実行すること。」

2 その他の文献について
(1) 原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0017】
本発明に係る熱処理装置の実施の形態について以下に説明するが,先ず,装置の全体構成について図1及び図2を参照しながら説明する。この熱処理装置は,基板であるウエハWを例えば15枚棚状に収納したキャリアCを搬入出するための搬入出ポートA1と,ウエハWを熱処理用の加熱炉内に搬入して所定の熱処理を行うためのローディングエリア(移載領域)A2と,を備えており,これら搬入出ポートA1とローディングエリアA2とは仕切壁20により雰囲気が区画されている。
【0018】
搬入出ポートA1はキャリアCが外部から搬入出される第1の載置台21と,キャリアC内のウエハWがローディングエリアA2に搬入出されるときに置かれる第2の載置台22と,両載置台21,22の間でキャリアCを搬送するキャリア搬送機構23と,を備えている。このキャリアCは,前後の工程との間でウエハWを移送する際にウエハWが大気中に置かれることを防止するために例えば蓋付きの密閉型キャリアとして構成され,仕切壁20の開口部を開閉するドア24に組み合わされた蓋開閉機構により蓋が取り外されてキャリアC内がローディングエリアA2の雰囲気に置かれるようになっている。
【0019】
ローディングエリアA2は,例えばクリーンエアのサイドフローが形成されており,各々がウエハWを所定の経路にて移載する第1の移載手段3と第2の移載手段4とが設けられると共に,ウエハWに対して熱処理を行う加熱炉5と,ウエハの姿勢を横向きと縦向きとの間で変更する姿勢変更手段6と,が設けられている。
【0020】
前記第1の移載手段3は,横向き姿勢のウエハWの裏面側周縁部を下方側から支持する例えば複数枚のアームを所定の間隔をおいて積層したアームユニット31が搬送基体32に進退自在に設けられると共に,この搬送基体32を横方向(熱処理装置の幅方向)及び上下方向に移動自在でかつ鉛直軸回りに回転自在とするための駆動系33を備えている。この第1の移載手段3は,キャリアCと姿勢変更手段6との間でウエハWの移載を行う役割を有している。
【0021】
また第2の移載手段4は,姿勢変更手段6により縦向きにされたウエハWの周縁部例えばデバイス形成領域の外側を左右から把持する一対のアームが前後方向に複数並べられたアームユニット41が搬送基体42に進退自在に設けられると共に,この搬送基体42を横方向(熱処理装置の幅方向)及び上下方向に移動自在とするための駆動系43を備えている。この第2の移載手段4は,姿勢変更手段6と加熱炉5との間でウエハWの移載を行う役割を有している。」

「【0027】
続いて図1及び図2に記載したウエハWの姿勢を変更する姿勢変更手段6について図6を参照しながら詳述する。図中61は前面が開口する回転箱であり,この回転箱61の内周面には段部62がウエハWの厚み相当の間隔をおいて上下に並んで形成されている。ウエハWは段部62間に挿入され,当該段部62に裏面側を支持されて棚状に保持されるように構成されている。更に回転箱61の背面側底部には,幅方向に水平に伸びる回転軸64が設けられており,この回転軸64の基端側は回転機構65と接続されている。そして当該回転機構65により回転軸64が水平軸周りに90度回転することにより,このウエハWを収納した回転箱61が前転および後転し,これによりウエハWの姿勢が縦向きと横向きとの間で変更されるように構成されている。
【0028】
更に回転箱61の背面には,例えば下端部から上端部に渡って縦に開口する開口部61aが形成されており,後転位置にある回転箱61の開口部61aと対向するように基板突き上げ手段66が配置されている。この基板突き上げ手段66は,上昇して前記開口部61aを通過可能な突き上げ部材67を備えており,この突き上げ部材67の表面には図6(b)に示すようにウエハWの外周縁が係合される上部側側面が外に傾斜した溝部67aが形成されている。この突き上げ部材67の下方側には昇降機構68が軸部69を介して接続され,この昇降機構68により突き上げ部材67が上昇してウエハWを上方に突き上げ,このウエハWを第2の移載手段4が受け取る。即ち,基板突き上げ手段66と,第2の移載手段4との協働作用によりウエハWの受け渡しが可能なように構成されている。
【0029】
続いて,上述の熱処理装置を用いてウエハWを熱処理する工程について説明する。熱処理としては,ウエハWの表面にシリコン酸化膜を形成するための酸化処理を例に挙げて説明する。先ず,例えば自動搬送ロボットにより図1及び図2に示す搬入出ポートA1の第1の載置台21にキャリアCが搬入され,次いでキャリア搬送機構23により例えば図示しないキャリアストッカに一時的に保管された後,第2の載置台22に搬送される。そしてキャリアCが仕切壁20に圧接された後,キャリアCの蓋が外され,続いてドア24が開かれる。
【0030】
続いて第1の移載手段3のアームユニット31がキャリアC内に進入し,複数枚例えば5枚のウエハWを一括してキャリアCから取り出して縦向きの回転箱61に搬入する。この作業を順次繰り返してキャリアC内にあるウエハWを回転箱61に搬入した後,回転機構65により回転軸64が回転することにより回転箱61が90度後転する。これにより回転箱61内に水平に保持されていたウエハWの姿勢が縦向きに変更される。続いて,第2の移載手段4のアームユニット41が回転箱61の上方に案内され,更に基板突き上げ手段66により回転箱61内から上方に突き上げられた複数枚例えば15枚のウエハWを一括して受け取ってウエハボート71に載置する。この作業を順次繰り返して所定枚数のウエハWをウエハボート71に載置した後,第2の移載手段4は後退する。
【0031】
しかる後,ボートエレベータ73が上昇して反応容器51内に,ウエハWを保持したウエハボート71が搬入され,当該反応容器51の開口部53が蓋体7により閉じられて気密になる。?以下略?」

「【図1】



「【図2】



「【図6】



(2)上記(1)の記載から,上記引用文献2には次の事項(以下,「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「 ローディングエリアA2は,クリーンエアのサイドフローが形成されており,各々がウエハWを所定の経路にて移載する第1の移載手段3と第2の移載手段4とが設けられると共に,ウエハWに対して熱処理を行う加熱炉5と,ウエハの姿勢を横向きと縦向きとの間で変更する姿勢変更手段6と,が設けられている,熱処理装置を用いてウエハWを熱処理する工程であって,
第1の移載手段3のアームユニット31がキャリアC内にあるウエハWを回転箱61に搬入し,
その後,回転機構65により回転軸64が回転することにより回転箱61が90度後転することにより回転箱61内に水平に保持されていたウエハWの姿勢が縦向きに変更され,
続いて,第2の移載手段4のアームユニット41が回転箱61の上方に案内され,回転箱61内からウエハWを受け取ってウエハボート71に載置し,
ボートエレベータ73が上昇して反応容器51内に,ウエハWを保持したウエハボート71が搬入される,
工程。」

(3)原査定の拒絶の理由において引用された引用文献3の,段落0015-0016,0029-0030,0047-0055,0157及び図1には,「基板処理装置の処理炉を用いて,基板上に絶縁膜を成膜する方法において,ALD法を使用すること。」及び,「基板処理装置の処理炉として,縦型バッチ装置や横型装置がある。」という事項(以下,「引用文献3記載事項」という。)が記載されていると認められる。

(4)原査定の拒絶の理由において引用された引用文献4の,段落0011-0012及び図1には,「基板にCVD及びALD等による成膜の処理を行うプロセスモジュールを,複数備える基板処理装置。」という事項(以下,「引用文献4載事項」という。)が記載されていると認められる。

(5)原査定の拒絶の理由において引用された引用文献5の,段落0051-0056及び図1-2には,「搬送室34内部と前記ロードロック室37内部とは略真空圧に同圧化されている状態で,基板搬送容器27から未処理前記ウェーハ43が前記ゲート口37aを通して前記ボート41に移載すること。」という事項(以下,「引用文献5載事項」という。)が記載されていると認められる。

(6)原査定の拒絶の理由において引用された引用文献6の,段落0092-0093及び図6には,「真空処理装置63で,基板80に多層膜を成膜する方法において,予め真空槽61内は真空排気されており,搬送室70から,搬送機構で水平な状態の基板を真空槽61内に搬入して,基板を基板ホルダ80に密着保持させ,基板が保持された状態で,基板ホルダ80をカソード681方向に起立させて,基板を立った状態とすること。」という事項(以下,「引用文献6載事項」という。)が記載されていると認められる。

(7)本願の出願前に公開された,特開平6-69314号公報(以下,「引用文献7」という。)の,段落0002-0006,0013-0021及び図1,2,6,7には,「ウエハボート10の両端の受部47を支持するボート支持部18と,このボート支持部18を垂直面内に回転させる垂直回転駆動機構22とを備えたウエハボート回転装置50において,移載機構によりウエハWをウエハボート10に移載し,ウエハの移載が完了するとボート支持部18の両端のアームによりウエハボート10の両端を支持し,垂直回転駆動機構22を回転軸20を中心に90°回転させてウエハボート10を起立させる。」という事項(以下,「引用文献7記載事項」という。)が記載されていると認められる。

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

ア 引用発明における「基板保持具217」,「ウエハ200」は,本願発明1の「基板ホルダ」,「基板」に相当することは明らかである。
また,引用発明における「処理炉202」は,本願発明1の「堆積反応炉」と,基板に基板処理が実行される「炉」である点で一致し,本願発明1の「プロセスチューブ205」は,本願発明1の「反応室」に対応する。
そして,引用発明は,「ウエハ200を固定した基板保持具217が,処理炉202内に搬入(ローディング)され,シール部2190によりプロセスチューブ205の開口部2021が密閉される」から,本願発明1の「堆積反応炉の反応室内に基板を装填する方法」であるといえる。

イ 引用発明の,「基板保持具217の各支柱2173a?2173cの軸方向が垂直方向と一致するように,姿勢変換移動機構115により,基板保持具217を垂直姿勢にし,基板保持具217により,複数のウエハ200を水平姿勢で垂直方向に配列した状態で保持」する「ステップS11」は,本願発明1の「基板ホルダに複数の基板を供給すること,ただし前記複数の基板は前記基板ホルダ内で,水平に向けられた基板群の鉛直方向の積み重ねを形成する,前記供給すること」に相当する。

ウ 引用発明の,「基板保持具217の固定部(可動保持部217c)により複数のウエハ200を固定したまま,ウエハ200が垂直姿勢となるように,基板保持具217を姿勢変換移動機構115により水平軸まわりに90°回転させて姿勢変換」する「ステップS13」は,本願発明1の「鉛直に向けられた基板群の水平方向の配列を形成するべく前記基板ホルダを真空中で回転させることと」と,「鉛直に向けられた基板群の水平方向の配列を形成するべく前記基板ホルダを」「回転させること」で一致する。

エ したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「 炉の室内に基板を装填する方法であって,
基板ホルダに複数の基板を供給すること,ただし前記複数の基板は前記基板ホルダ内で,水平に向けられた基板群の鉛直方向の積み重ねを形成する,前記供給することと,
鉛直に向けられた基板群の水平方向の配列を形成するべく前記基板ホルダを回転させることと,
を含む,
方法。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は,「反応堆積炉」の「反応室」と特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。

(相違点2)鉛直に向けられた基板群の水平方向の配列を形成するべく基板ホルダを回転させることについて,本願発明1は,「鉛直に向けられた基板群の水平方向の配列を形成するべく前記基板ホルダを真空中で回転させ」,かつ,「前記基板ホルダを,該基板ホルダに備えられる回転中心において,回転軸の周りに回転させることを含む」と特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点2について
事案に鑑みて,相違点2について最初に検討する。
引用文献5記載事項には,「略真空圧に同圧化されている状態で」,「板搬送容器27」から「未処理前記ウェーハ43」を「ボート41」に移載する」点が記載されているが,「ボート41」を回転させるものではなく,本願発明1の,「鉛直に向けられた基板群の水平方向の配列を形成するべく前記基板ホルダを真空中で回転させ」,かつ,「前記基板ホルダを,該基板ホルダに備えられる回転中心において,回転軸の周りに回転させることを含む」点について,何ら記載されていない。
また,引用文献6記載事項には,予め真空排気されている「真空槽61」内に「基板」を搬入し,「基板」を「基板ホルダ80に密着保持」させ,「基板ホルダ80」を起立させることにより,基板を立った状態とすることが記載されているが,「基板ホルダ80」に複数の「基板」を供給するものでなく,また,「鉛直に向けられた基板群の水平方向の配列を形成するべく」回転させるものでもない。
そして,引用文献7記載事項には,「垂直回転駆動機構22」により,「ボート支持部18」を回転させ,「ウエハボート10を起立させる」ことが記載されているが,「回転軸20」は「垂直回転駆動機構22」に設けられており,「ウエハボート10」に設けられておらず,また,「真空中で回転させ」るとも特定されていない。
さらに,引用文献2-4記載事項にも,相違点2に係る本願発明1の,「鉛直に向けられた基板群の水平方向の配列を形成するべく前記基板ホルダを真空中で回転させ」,かつ,「前記基板ホルダを,該基板ホルダに備えられる回転中心において,回転軸の周りに回転させることを含む」という構成は,記載されていない。
また,相違点2に係る本願発明1の,「鉛直に向けられた基板群の水平方向の配列を形成するべく前記基板ホルダを真空中で回転させ」,かつ,「前記基板ホルダを,該基板ホルダに備えられる回転中心において,回転軸の周りに回転させることを含む」という構成は,上記引用発明及び文献2-7記載事項に記載されておらず,本願出願前において周知技術であるともいえない。
してみると,当業者であっても,引用発明及び引用文献2-7記載事項に基づいて,本願発明1の相違点2に係る構成とすることは,容易に発明できたものであるとはいえない。

イ したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明及び引用文献2-7記載事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2-6について
本願発明2-6は,本願発明1を減縮した発明であり,本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2-7記載事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明7-13について
本願発明7は,本願発明1に対応する装置に関する発明,本願発明8-13は,本願発明7を減縮した発明であり,本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2-7記載事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定について
1 理由2について
本願発明1-13は,上記「第6 対比・判断」の「1 本願発明1について」の「(1)対比」における相違点2に係る構成を有するものとなっており,拒絶査定において引用された引用文献1及び引用文献2-6に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。

したがって,原査定の理由2を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-11-25 
出願番号 特願2018-222990(P2018-222990)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 内田 正和  
特許庁審判長 加藤 浩一
特許庁審判官 小川 将之
▲吉▼澤 雅博
発明の名称 ALD反応炉における基板の装填  
代理人 川守田 光紀  

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