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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03F
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03F
管理番号 1368731
審判番号 不服2019-8995  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-04 
確定日 2020-11-27 
事件の表示 特願2016-201651「光感応性酸発生剤およびそれらを含むフォトレジスト」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月18日出願公開、特開2017- 83826〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は2001年11月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2000年11月3日 米国)を国際出願日として出願された特願2002-545309号の一部を、平成20年2月14日に新たな特許出願である特願2008-32677号とし、その一部を平成24年11月22日に新たな特許出願である特願2012-255880号とし、その一部を平成26年6月18日に新たな特許出願である特願2014-125020号とし、その一部をさらに平成28年10月13日に新たな特許出願である特願2016-201651号としたものである。
そして、本願の分割出願後の手続の経緯は、次のとおりである。

平成28年11月11日 :手続補正
平成29年11月16日付け:拒絶理由の通知
平成30年 5月22日 :意見書の提出及び手続補正
平成30年 7月 3日付け:拒絶理由の通知
平成31年 1月 9日 :意見書の提出
平成31年 2月28日付け:拒絶査定(以下、「現査定」という。)
令和 元年 7月 4日 :拒絶査定不服審判の請求
令和 元年12月11日付け:拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」とい
う。)の通知
令和 2年 6月12日 :意見書の提出及び手続補正(以下、「本
件補正」という。)


第2 本件発明
本件補正は、明細書の段落【0008】のみを補正するものであって、特許請求の範囲の記載を補正していない。
したがって、本願の請求項1?3に係る発明は、本件補正前の、平成30年5月22日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、次のとおりのものである。
「組成物の露光されたコーティング層を現像させるのに充分な量で樹脂バインダおよび光感応性酸発生剤化合物を含み、その光感応性酸発生剤が放射線で露光されることにより、化学式
R(CR^(1)R^(2))CF_(2)SO_(3)H
(式中、Rが置換されていてもよいC_(1-20)アルキル、置換されていてもよい炭素環式芳香族基、置換されていてもよいヘテロ脂環式基又は置換されていてもよいヘテロ芳香族基であり、R^(1)とR^(2)がそれぞれ独立して水素または水素以外の置換基である。ただし、R(CR^(1)R^(2))がパーハロアルキルであることはなく、CH_(3)(CH_(2))_(5)CF_(2)-基であることはなく、CF_(3)(CFH)-基であることはなく、C_(2)H_(5)(CF_(2))-基であることはない。)
で表されるα, α-ジフルオロアルキルスルホン酸を発生させる、フォトレジスト組成物。」


第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

1 理由1(サポート要件)
本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2 理由2(明確性)
本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

3 理由3(進歩性)
本願の請求項1?3に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である下記の引用文献1?3に記載された発明に基づいて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4 理由4(拡大先願)
本願の請求項1?3に係る発明は、その優先権主張の日前の特許出願であって、その優先権主張の日後に出願公開がされた特許出願である下記の引用出願4の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

5 引用文献等
上記理由3及び理由4において引用された引用文献1?3及び引用出願4は、以下のとおりである。

引用文献1:特開2000-147753号公報
引用文献2:旧東ドイツ国経済特許第295421号明細書
引用文献3:特開平8-53442号公報
引用出願4:特願2000-321128号
(特開2002-131897号)


第4 引用文献等の記載事項及び引用文献等に記載された発明
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載事項
本願の優先権主張の日前の平成12年5月26日に公開された刊行物である引用文献1には、以下の記載事項がある。なお、発明の認定に用いた箇所に下線を付した。ほかの文献も同様である。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、イオン性および非イオン性光酸発生剤化合物の混合物を含有してなる新しいフォトレジスト組成物に関する。

(中略)

【0023】本発明のPAG混合物およびフォトレジスト組成物の中で多様な非イオン性PAGを用いることができる。

(中略)

【0026】N-スルホニルオキシイミド光酸発生剤も本発明のPAG混合物および組成物中で非イオン性PAGとして用いるために適し、それらには、国際特許出願公開公報第WO94/10608号に開示されたN-スルホニルオキシイミド、例えば、下記の式、
【0027】
【化5】

【0028】(式中、炭素原子は、単結合、二重結合または芳香族結合を有する2炭素構造を形成し、あるいは3炭素構造を形成し、すなわち、環は代わりに5員環または6員環であり、XaRは、-C_(n)H_(2n+1)(式中、n=1?8)、-C_(n)F_(2n+1)(式中、n=1?8)、樟脳置換基、-2(9,10-ジエトキシアントラセン)、-(CH_(2))_(n)-Zまたは-(CF_(2))_(n)-Z(式中、n=1?4、ZはH)C_(1?6)アルキル、樟脳置換基、-2-(9,10-ジエトキシアントラセンまたはフェニルなどのアリールである)であり、XおよびYは、(1)1個以上のヘテロ原子を含むことが可能な環式環または多環式環を形成する、または(2)縮合芳香族環を形成する、または(3)独立に水素、アルキルまたはアリールであることが可能である、もしくは(4)もう一つのスルホニルオキシイミド含有残基に結合されていてもよく、あるいは(5)ポリマー鎖または主鎖に結合されていてもよく、あるいは炭素原子は、下記の式、
【0029】
【化6】

【0030】(式中、R_(1)はH、1?4個の炭素を有するアセチル、アセタミド、アルキル(m=1?3)、NO_(2)(m=1?2)、F(m=1?5)、Cl(m=1?2)、CF_(3)(m=1?2)、OCH_(3)(m=1?2)(mは別途に1?5でありうる)およびそれらの混合成分からなる群から選択される)を形成し、その場合、XおよびYは、(1)1個以上のヘテロ原子を含むことが可能な環式環または多環式環を形成する、または(2)縮合芳香族環を形成する、または(3)独立に水素、アルキルまたはアリールであることが可能である、もしくは(4)もう一つのスルホニルオキシイミド含有残基に結合されてもよく、あるいは(5)ポリマー鎖または主鎖に結合されてもよい)の化合物が挙げられる。」

合議体注:
上記記載事項の段落【0028】における「-(CH_(2))_(n)-Zまたは-(CF_(2))_(n)-Z(式中、n=1?4、ZはH)C_(1?6)アルキル、樟脳置換基、-2-(9,10-ジエトキシアントラセンまたはフェニルなどのアリールである)であり」との記載は、n=Zであることは不自然であり、また、「(9,10-ジエトキシアントラセン」の括弧が閉じられていないことから、「-(CH_(2))_(n)-Zまたは-(CF_(2))_(n)-Z(式中、n=1?4、ZはH、C_(1?6)アルキル、樟脳置換基、-2-(9,10-ジエトキシアントラセン)またはフェニルなどのアリールである)であり」とすべき記載の誤記と認められる。このことは、引用文献1に対応する米国特許第6280911号明細書の4欄65及び66行の記載からも確認することができる。

イ 「【0064】本発明のレジストの樹脂バインダー成分は、一般に、レジストの露光された被膜層をアルカリ水溶液などで現像可能にするために十分な量を用いる。更に詳しくは、樹脂バインダーは、好ましくは、レジストの総固形分の50?約90重量%を含む。」

ウ 「【0066】本発明のフォトレジストは、公知の手順に従って用いることができる。本発明のフォトレジストを乾燥膜としてコーティングしてもよいが、好ましくは、液体被膜組成物として基板上にコーティングし、加熱により乾燥して、好ましくは被膜層が不粘着性になるまで溶媒を除去し、フォトマスクを通して活性化された光線に露光し、任意に、ポスト露光ベーキングして、レジスト被膜層の露光領域と非露光領域との間の溶解度差を設けるかまたは高め、その後、好ましくは水性アルカリ現像剤で現像して、レリーフ画像を形成する。」

(2)引用文献1に記載された発明
引用文献1の段落【0026】?【0029】(前記(1)の記載事項ア)の記載に接した当業者ならば、段落【0026】に記載の「N-スルホニルオキシイミド光酸発生剤」として、段落【0027】の【化5】に記載の式のXaRが、「-(CF_(2))_(n)-Z」であり、かつ、Zが「C_(1?6)アルキル、-2-(9,10-ジエトキシアントラセン)またはフェニルなどのアリール」である化合物を把握することができる。また、引用文献1は、「イオン性および非イオン性光酸発生剤化合物の混合物を含有してなる新しいフォトレジスト組成物に関する」(段落【0001】)発明が記載されたものであるから、上記「N-スルホニルオキシイミド光酸発生剤」は、段落【0064】(前記(1)の記載事項イ)に記載の「樹脂バインダー成分」とともに、「フォトレジスト組成物」として用いられることが予定されているといえる。
そうしてみると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
「レジストの露光された被膜層をアルカリ水溶液などで現像可能にするために十分な量の樹脂バインダー成分および下記の式の化合物であるN-スルホニルオキシイミド光酸発生剤を含み、XaRは、-C_(n)H_(2n+1)(式中、n=1?8)、-C_(n)F_(2n+1)(式中、n=1?8)、樟脳置換基、-2(9,10-ジエトキシアントラセン)、-(CH_(2))_(n)-Zまたは-(CF_(2))_(n)-Z(式中、n=1?4、ZはH、C_(1?6)アルキル、樟脳置換基、-2-(9,10-ジエトキシアントラセンまたはフェニルなどのアリールである)である、フォトレジスト組成物。



2 引用文献2
(1)引用文献2の記載事項
本願の優先権主張の日前の1991年10月31日に公開された刊行物である引用文献2には、以下の記載事項がある。




以下に翻訳文を示す。
「特許請求の範囲
1.1つ以上の感光性成分、1つのポリ(三級ブトキシカルボニル-オキシ-スチレン)及び1つの溶媒又は溶媒混合物から成る、ポジ型に作用する写真複写用化学増幅レジストであって、
前記写真複写用レジストは、一般式I

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、水素、アルキル、置換されていない又は置換されたアリール又はヘテロアリールを意味し、かつ

は、

かつ、
X=H,F,CF_(3),
Y=F,
Z=H,F,
n=0から6
又は、

(中略)

で表される1つのスルホニウム塩、前記ポリ(三級ブトキシカルボニル-オキシ-スチレン)及び前記溶媒又は溶媒混合物から成っており、前記感光性成分は、全固体含有量に対して4重量%から25重量%の濃度で含まれていることを特徴とするポジ型に作用する写真複写用化学増幅レジスト。」

(2)引用文献2に記載された発明
前記(1)の記載事項に基づけば、引用文献2には、一般式I中のA^(-)として、CF_(3)-(CXY)_(n)-CFZ-SO_(3)^(-)を選択肢として含む写真複写用化学増幅レジストが記載されているといえる(合議体注:○で囲まれた「-」について、○を省略して標記した。以下同様である。)。そうすると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。
「以下の一般式Iで表されるスルホニウム塩、ポリ(三級ブトキシカルボニル-オキシ-スチレン)及び溶媒又は溶媒混合物から成る写真複写用化学増幅レジストであって、一般式I中のA^(-)が、CF_(3)-(CXY)_(n)-CFZ-SO_(3)^(-)であって、X=H,F,CF_(3),Y=F,Z=H,F,n=0から6である構造を含む、写真複写用化学増幅レジスト。



3 引用文献3
(1)引用文献3の記載事項
本願の優先権主張の日前の平成8年2月27日に公開された刊行物である引用文献3には、以下の記載事項がある。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は対応するイオン交換(counter ion exchange)を含まないワンポット方(one-potprocess )によってジアリールヨードニウムフルオロアルキルスルホネート塩を製造する方法及びこの方法によって得られた塩に関する。

(中略)

【0002】
【従来の技術】ヨードニウム塩は、多くの画像系において重要な物質である。このものは、重合反応若しくは解重合反応を開始させ、若しくは酸感受性基と反応するのに使用される遊離基、又は強プロトン酸を光化学的にその場で生産するのに使用することができる。一般に、このものは熱的に安定であるが、光化学的に不安定であって、例えばエポキシドタイプの樹脂の硬化のみならず、印刷板、リトグラフフィルム及び校正刷の如き画像関係において理想的な物質である。」

イ 「【0012】本発明はまた、本発明の製造方法に従って得られた塩を提供する。本発明方法に従って得られた好ましい塩は、次に示す式から選ばれるものである。
【化4】

及び
【化5】

ここで、mは0又は1の整数を表わし、Lは-O-,-NR^(12)-(ここでR^(12)は-H又はアルキル基を表わす)及び-(CR^(13)R^(14))_(n) -(ここでR^(13)及びR^(14)は独立して-H又はアルキル基を表わし、そしてnは1から2の整数を表わす)から成る群から選ばれ、R^(1) ,R^(2) ,R^(3) ,R^(4) ,R^(5) ,R^(6) ,R^(7) ,R^(8) ,R^(9) 及びR^(10)は電子中性基及び電子供与基から成る群からいづれも独立して選ばれ、ここでの隣接したR^(1) ,R^(2) ,R^(3) ,R^(4) ,R^(7) ,R^(8) ,R^(9) ,R^(10)基は任意にはお互に共に環を形成しても良く、そしてR^(11)はハロゲン基、アルキル基、クロロフルオロアルキル基、塩素化アルキル基及び弗素化アルキル基から成る群から選ばれる。」

(2)引用文献3に記載された発明
引用文献3の前記(1)の記載事項イには、「【化4】」に示す「塩」が記載されており、記載事項アに接した当業者であれば、当該塩が「強プロトン酸を光化学的にその場で生産するのに使用することができる」ものであることが理解できる。そうすると、引用文献3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているといえる。
「強プロトン酸を光化学的にその場で生産するのに使用することができ、次に示す式に示す構造を含み、

R^(11)はアルキル基、クロロフルオロアルキル基、塩素化アルキル基及び弗素化アルキル基から成る群から選ばれる塩。」

4 引用出願4
(1)引用出願4の記載事項
本願の優先権主張の日前の平成12年10月20日に出願され、その後出願公開された引用出願4の明細書には、以下の記載事項がある。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、平版印刷板やIC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造、更にその他のフォトファブリケーション工程に使用されるポジ型感光性組成物に関するものである。

(中略)

【0009】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、下記構成のポジ型レジスト組成物が提供されて、本発明の上記目的が達成される。
【0010】(1) (A)活性光線の照射により下記一般式(X)で表されるスルホン酸を発生する化合物を少なくとも1種
(B)酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度を増大させる基を有する樹脂
を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【0011】
【化3】

【0012】一般式(X)中、R_(1a)?R_(13a)は、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、ハロゲン原子、水酸基を表す。Aは、ヘテロ原子を有する2価の連結基または単結合を表す。但し、Aが単結合の場合、R_(1a)?R_(13a)の全てが同時にフッ素原子を表すことはなく、またR_(1a)?R_(13a)の全てが同時に水素原子を表すことはない。mは0?12の整数を表す。nは0?12の整数を表す。qは1?3の整数を表す。」

イ 「【0020】以下、まずこれらポジ型レジスト組成物に含有される化合物、樹脂等の成分について詳細に説明する。
【0021】〔組成物に含有される各成分の説明〕
〔1〕 (A)活性光線の照射により下記一般式(X)で表されるスルホン酸を発生する化合物を少なくとも1種((A)成分又はスルホン酸発生剤ともいう)上記一般式(X)中、R_(1a)?R_(13a)は、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、ハロゲン原子、水酸基を表す。Aは、ヘテロ原子を有する2価の連結基または単結合を表す。但し、Aが単結合の場合、R_(1a)?R_(13a)の全てが同時にフッ素原子を表すことはなく、またR_(1a)?R_(13a)の全てが同時に水素原子を表すことはない。mは0?12の整数を表す。nは0?12の整数を表す。qは1?3の整数を表す。
【0022】R_(1a)?R_(13a)のアルキル基としては、置換基を有してもよい、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基のような炭素数1?12個のものが挙げられる。R_(1a)?R_(13a)のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、沃素原子等が挙げられる。この置換基として好ましくは、炭素数1?4個のアルコキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、沃素原子)、炭素数6?10個のアリール基、炭素数2?6個のアルケニル基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基等が挙げられる。
【0023】Aにおけるヘテロ原子を有する2価の連結基としては、酸素原子、硫黄原子、-CO-、-COO-、-CONR-、-SO_(2)NR-、-CONRCO-、-SO_(2)NRCO-、-SO_(2)NRSO_(2)-、-OCONR-等が挙げられる。ここで、Rは水素原子、炭素数1?10個のアルキル基を表す。
【0024】上記一般式(X)で表されるスルホン酸としては、R_(1a)?R_(13a)の少なくとも1つがハロゲン原子を表すものが好ましく、さらに好ましくはR_(1a)?R_(13a)の少なくとも1つがフッ素原子を表すものが好ましい。上記の中でも、さらに好ましくは、CF_(8)(CF_(2))_(k)[A(CF_(2))_(k')]_(q)SO_(3)H、CF_(3)(CF_(2))_(k)(CH_(2))_(k')SO_(3)H、CH_(3)(CH_(2))_(k)(CF_(2))_(k')SO_(3)Hで表される化合物が好ましく、CF_(3)CF_(2)-O-CF_(2)CF_(2)SO_(3)Hが特に好ましい。ここで、kは0?12の整数を表す。k’は1?12の整数を表す。qは前述と同義である。」

ウ 「【0181】〔ポジ型レジスト組成物の調製及びその使用〕以上、本発明のポジ型レジスト組成物に含有される各成分を説明した。次に、本発明のポジ型レジスト組成物の調製方法及びその使用方法について説明する。本発明の組成物は、上記各成分を溶解する前記溶媒に溶かして支持体上に塗布する。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2-メトキシエチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン等が好ましく、これらの溶媒を単独あるいは混合して使用する。

(中略)

【0184】上記組成物を精密集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆、SiON、TiN、SOG)上にスピナー、コーター等の適当な塗布方法により塗布後、所定のマスクを通して照射し、ベークを行い現像することにより良好なレジストパターンを得ることができる。
【0185】また、露光光源がDUV光の場合、反射防止膜を設けた基板上へレジスト膜を塗布することが好ましい。これにより定在波が低減され、解像力が向上する。好ましい反射防止膜としてはブリュワーサイエンス社のDUVシリーズ、あるいはシプレー社のARシリーズ等が挙げられる。」

(2)引用出願4に記載された発明
引用出願4の、前記(1)の記載事項イの「上記一般式(X)で表されるスルホン酸としては、R_(1a)?R_(13a)の少なくとも1つがハロゲン原子を表すものが好ましく、さらに好ましくはR_(1a)?R_(13a)の少なくとも1つがフッ素原子を表すものが好ましい。上記の中でも、さらに好ましくは、CF_(8)(CF_(2))_(k)[A(CF_(2))_(k')]_(q)SO_(3)H、CF_(3)(CF_(2))_(k)(CH_(2))_(k')SO_(3)H、CH_(3)(CH_(2))_(k)(CF_(2))_(k')SO_(3)Hで表される化合物が好ましく、CF_(3)CF_(2)-O-CF_(2)CF_(2)SO_(3)Hが特に好ましい。ここで、kは0?12の整数を表す。k’は1?12の整数を表す。qは前述と同義である。」(段落【0024】)との記載に基づけば、記載事項アに記載されたポジ型レジスト組成物における「(A)活性光線の照射により下記一般式(X)で表されるスルホン酸を発生する化合物」の好ましい化合物として、「CH_(3)(CH_(2))_(k)(CF_(2))_(k')SO_(3)H」を発生する化合物を選択したポジ型レジスト組成物が記載されているといえる。そうすると、引用出願4には、次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。
「(A)活性光線の照射によりCH_(3)(CH_(2))_(k)(CF_(2))_(k')SO_(3)H、ここで、kは0?12の整数、k’は1?12の整数、で表されるスルホン酸を発生する化合物を少なくとも1種、(B)酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度を増大させる基を有する樹脂、を含有するポジ型レジスト組成物。」


第5 判断
1 理由1(サポート要件)

(1)本件発明が解決しようとする課題
本願の明細書には、「本発明者らは、新規な光感応性酸発生剤化合物(PAGs)を発見したが、これらはポジ型、ネガ型のいずれのフォトレジスト組成物においても使用することができる。特に、放射線に露光されることにより任意に置換されるα, α-ジフルオロアルキルスルホン酸を生成する光感応性酸発生剤が得られる。」(段落【0006】)、及び、「我々は、本願のPAGを含むフォトレジストが優れたリソグラフィックの結果を示すことができることを発見した。とりわけ、光発生するα, α-ジフルオロアルキルスルホン酸は強い酸であるが、相分離やパーフルオロアルキル酸によって示されうる他の移動をする傾向がない。さらに、大きな容積の基、たとえば炭素、ヘテロ脂環式基やアリール基などを含むことにより、リソグラフィック効果に好ましい影響を与えうるレジスト形成のさらに進んだ技術を可能とする。」(段落【0009】)と記載されている。これらの記載に基づけば、本件発明が解決しようとする課題は、ポジ型、ネガ型のいずれのフォトレジスト組成物においても使用することができる強い酸であって、相分離やパーフルオロアルキル酸によって示されうる他の移動をする傾向がないフォトレジスト組成物を提供することにあると認められる。

(2)本願の明細書の記載
本願の明細書には、フォトレジスト組成物に含まれる光感応性酸発生剤が発生ずる化学式「R(CR^(1)R^(2))CF_(2)SO_(3)H」で表される「α, α-ジフルオロアルキルスルホン酸」が、ポジ型、ネガ型のいずれのフォトレジスト組成物においても使用することができ、相分離やパーフルオロアルキル酸によって示されうる他の移動をする傾向がないという特性を有することについて、何ら理論的な説明がなされていない。
そして、本願明細書には、実施例3として、ジ(4-t-ブチルフェニル)-ヨードニウム1,1-ジフルオロ-1-スルホネート-2-(1-ナフチル)エチレン(化学式IAで、R=R^(1)=4-t-ブチルフェニル;R^(3)=ナフチル;R^(4)=R^(5)=Hである化合物)を合成して化合物が得られたことが記載されており(段落【0108】)、実施例4として、実施例3により調整した化合物を、レジスト成分、樹脂バインダー、乳酸エチルと共に混合してフォトレジストを調整することが示唆されている(段落【0109】?【0112】)が、得られるフォトレジスト組成物の特性について何も開示していない。

(3)課題を解決できると当業者が理解できたかについて
本件発明は、化学式R(CR^(1)R^(2))CF_(2)SO_(3)Hで表わされるα,α-ジフルオロアルキルスルホン酸を発生させる光感応性酸発生剤化合物を含むことを必須の要件としており、Rが置換されていてもよいC_(1-20)アルキル、置換されていてもよい炭素環式芳香族基、置換されていてもよいヘテロ脂環式基又は置換されていてもよいヘテロ芳香族基であるもの、R^(1)とR^(2)がそれぞれ独立して水素以外の置換基であるものを包含するものである。
光感応性酸発生剤化合物を含む化合物に関する技術分野においては、置換基が異なれば、反応性や酸としての強度、溶解性、移動特性など、様々な特性に影響を与えることが知られており、どのような特性となるかは事前に予測がつかず、実際に試みないと分からない分野である。しかしながら、本願明細書には、実施例3として、化学式R(CR^(1)R^(2))CF_(2)SO_(3)Hで表わされるα,α-ジフルオロアルキルスルホン酸のうち、RがナフチルでありR^(1)とR^(2)がそれぞれ水素である化合物を発生する光感応性酸発生剤化合物のみが開示されているに過ぎない。実施例3の化合物についてすら、フォトレジスト組成物とした際の、発生する酸の強さや相分離の有無、移動傾向や、解像度などが明らかにされていない。R、R^(1)、R^(2)を、本件発明において特定された範囲の置換基に置き換えた場合に、光官能性酸発生剤化合物として本件発明が解決しようとする課題を解決する化合物が得られるとする根拠が何ら示されておらず、フォトレジスト組成物として必要な特性を備えるかどうかも実証されていない。
したがって、たとえ、本願出願時の技術常識を参酌したとしても、本件発明が課題を解決できることを、当業者が認識できるとはいえない。

(4)請求人の主張について
請求人は、令和2年6月12日に提出した意見書において、本件発明が「フォトレジスト組成物中の光感光性酸発生剤化合物への放射線露光により発生するα,α-ジフルオロアルキルスルホン酸が、従来知られていたような化学式R(CR^(1)R^(2))CF_(2)SO_(3)HのR(CR^(1)R^(2))がパーフルオロアルキルなど特定の構造を有する化合物でなくとも、R(CR^(1)R^(2))CF_(2)SO_(3)Hの基本骨格を有するものであれば、最終的に好ましいレリーフ像を得ることができる、という技術的思想に基づくものであります。」とし、「当業者であれば、本願明細書の記載を元にしてR(CR^(1)R^(2))CF_(2)SO_(3)HのR、R^(1)、R^(2)基を適宜変更し、本願発明を実施することができるものであり、請求項1?3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであります。」と主張している。
しかしながら、本件発明を実施することができたとしても、前記(3)に記載したとおり、本件発明が課題を解決できることを認識することができない。
したがって、請求人の主張を採用することができない。

(5)小括
以上のとおりであるから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない

2 理由3(進歩性)
(1)引用文献1に基づく判断
ア 対比
本件発明と引用発明1とを対比する。

(ア)フォトレジスト組成物
引用発明1の「フォトレジスト組成物」は、「樹脂バインダー成分」及び「N-スルホニルオキシイミド光酸発生剤」を含むものである。
したがって、引用発明1の「フォトレジスト組成物」は、本件発明の「フォトレジスト組成物」に相当する。

(イ)樹脂バインダ
引用発明1の「樹脂バインダー成分」は、技術的にみて、本件発明の「樹脂バインダ」に相当する。
また、引用発明1の「樹脂バインダー成分」は、「レジストの露光された被膜層をアルカリ水溶液などで現像可能にするために十分な量」で含まれるものである。そうすると、引用発明1の「樹脂バインダー成分」は、本件発明の「組成物の露光されたコーティング層を現像させるのに充分な量」で含むとする要件を満たしている。

(ウ)光感応性酸発生剤化合物
引用発明1の「N-スルホニルオキシイミド光酸発生剤」は、技術的にみて、本件発明の「光感応性酸発生剤化合物」に相当する。
そして、引用発明1はフォトレジスト組成物として機能するものであるから、「N-スルホニルオキシイミド光酸発生剤」についても、「組成物の露光されたコーティング層を現像させるのに充分な量」含有しているといえる。

(エ)一致点及び相違点
そうすると、本件発明と引用発明1とは、「組成物の露光されたコーティング層を現像させるのに充分な量で樹脂バインダおよび光感応性酸発生剤化合物を含むフォトレジスト組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]光感応性酸発生剤化合物が、本件発明は、化学式「R(CR^(1)R^(2))CF_(2)SO_(3)H(式中、Rが置換されていてもよいC_(1-20)アルキル、置換されていてもよい炭素環式芳香族基、置換されていてもよいヘテロ脂環式基又は置換されていてもよいヘテロ芳香族基であり、R^(1)とR^(2)がそれぞれ独立して水素または水素以外の置換基である。ただし、R(CR^(1)R^(2))がパーハロアルキルであることはなく、CH_(3)(CH_(2))_(5)CF_(2)-基であることはなく、CF_(3)(CFH)-基であることはなく、C_(2)H_(5)(CF_(2))-基であることはない。)で表されるα, α-ジフルオロアルキルスルホン酸を発生させる」のに対し、引用発明1は、そのように特定されていない点。

イ 判断
上記[相違点1]について検討すると、引用発明1の「N-スルホニルオキシイミド光酸発生剤」は、「XaRは、-C_(n)H_(2n+1)(式中、n=1?8)、-C_(n)F_(2n+1)(式中、n=1?8)、樟脳置換基、-2(9,10-ジエトキシアントラセン)、-(CH_(2))_(n)-Zまたは-(CF_(2))_(n)-Z(式中、n=1?4、ZはH、C_(1?6)アルキル、樟脳置換基、-2-(9,10-ジエトキシアントラセンまたはフェニルなどのアリールである)である」とされる。そうすると、引用発明1の「N-スルホニルオキシイミド光酸発生剤」は、その構造式から、酸として、XaR-SO_(3)Hを発生させるものである。そして、XaRの選択肢として、-(CF_(2))_(n)-Z(式中、n=1?4、ZはC_(1?6)アルキル、-2-(9,10-ジエトキシアントラセン)またはフェニルなどのアリールである)を選択した場合、「-(CF_(2))_(n)-」のnが1?4であるから、発生する酸は、「-SO_(3)H」に隣接して必ず「-(CF_(2))-」基を有している。したがって、引用発明1の「N-スルホニルオキシイミド光酸発生剤」は、本件発明の「R(CR^(1)R^(2))CF_(2)SO_(3)H」で表され、「式中、Rが置換されていてもよいC_(1-20)アルキル、置換されていてもよい炭素環式芳香族基、置換されていてもよいヘテロ脂環式基又は置換されていてもよいヘテロ芳香族基であり、R^(1)とR^(2)がそれぞれ独立して水素または水素以外の置換基である。」とされる「α,α-ジフルオロアルキルスルホン酸」を発生させる「光感応性酸発生剤化合物」であるといえる。
そして、選択肢として示された化合物群の中から、いずれの化合物を選択するかは、当業者が適宜選択しうることであるから、引用発明1において、選択肢として、R(CR^(1)R^(2))がパーハロアルキル、CH_(3)(CH_(2))_(5)CF_(2)基、C_(2)H_(5)(CF_(2))基以外の選択肢を選択することは、当業者が容易になし得ることである。そして、本願の明細書の記載を参酌しても、R(CR^(1)R^(2))がパーハロアルキル、CH_(3)(CH_(2))_(5)CF_(2)基、C_(2)H_(5)(CF_(2))基以外の選択肢を選択したことにより格別な効果を奏するとはいえない。

ウ 請求人の主張について
請求人は、令和2年6月12日に提出した意見書において、「引用文献1-4はいずれも化学式R(CR^(1)R^(2))CF_(2)SO_(3)Hで表されるα,α-ジフルオロアルキルスルホン酸を発生させるフォトレジスト組成物から最終的に好ましいレリーフ像を得ることができるという技術的思想を開示していません。」、「本願発明は引用文献1-3に記載の発明から容易に想到できたものではなく、進歩性を有するものであります。」と主張している。
しかしながら、上記のとおり、引用文献1には、「N-スルホニルオキシイミド光酸発生剤」を含むフォトレジスト組成物が記載されており、「N-スルホニルオキシイミド光酸発生剤」はα,α-ジフルオロアルキルスルホン酸を発生させるものを含んでいる。そして、本願明細書の記載を参酌しても、本件発明が格別な効果を奏するということができない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

エ 小括
以上のとおりであるから、本件発明は、引用文献1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)引用文献2に基づく判断
ア 対比
本件発明と引用発明2とを対比する。

(ア)フォトレジスト組成物
引用発明2の「写真複写用化学増幅レジスト」は、「CF_(3)-(CXY)_(n)-CFZ-SO_(3)^(-)であって、X=H,F,CF_(3),Y=F,Z=H,F,n=0から6である構造を含む一般式Iで表されるスルホニウム塩」及び「ポリ(三級ブトキシカルボニル-オキシ-スチレン)」からなるものである。そうすると、引用発明2の「写真複写用化学増幅レジスト」は、本件発明の「フォトレジスト組成物」に相当する。

(イ)樹脂バインダ
引用発明2の「ポリ(三級ブトキシカルボニル-オキシ-スチレン)」は、技術的にみて、本件発明の「樹脂バインダ」に相当する。
そして、引用発明2は「写真複写用化学増幅レジスト」として機能するものである。そうすると、引用発明2の「ポリ(三級ブトキシカルボニル-オキシ-スチレン)」は、本件発明の「組成物の露光されたコーティング層を現像させるのに充分な量」で含むとする要件を満たしている。

(ウ)光感応性酸発生剤化合物
引用発明2の「CF_(3)-(CXY)_(n)-CFZ-SO_(3)^(-)であって、X=H,F,CF_(3),Y=F,Z=H,F,n=0から6である構造を含む一般式Iで表されるスルホニウム塩」は、技術的にみて、光感応性酸発生剤として機能するものといえる。したがって、引用発明2の「CF_(3)-(CXY)_(n)-CFZ-SO_(3)^(-)であって、X=H,F,CF_(3),Y=F,Z=H,F,n=0から6である構造を含む一般式Iで表されるスルホニウム塩」は、本件発明の「光感応性酸発生剤化合物」に相当する。
そして、引用発明2は「写真複写用化学増幅レジスト」として機能するものである。そうすると、引用発明2の「CF_(3)-(CXY)_(n)-CFZ-SO_(3)^(-)であって、X=H,F,CF_(3),Y=F,Z=H,F,n=0から6である構造を含む一般式Iで表されるスルホニウム塩」は、本件発明の「組成物の露光されたコーティング層を現像させるのに充分な量」で含むとする要件を満たしている。
また、引用発明2の「一般式Iで表されるスルホニウム塩」は、技術的にみて、放射線で露光されることにより、「CF_(3)-(CXY)_(n)-CFZ-SO_(3)Hであって、X=H,F,CF_(3),Y=F,Z=H,F,n=0から6である」スルホン酸を発生させるものである。Z=Fである場合、「CF_(3)-(CXY)_(n)-CFZ-SO_(3)H」は、「α, α-ジフルオロアルキルスルホン酸」である。そうすると、引用発明2の「一般式Iで表されるスルホニウム塩」と、本件発明の「化学式R(CR^(1)R^(2))CF_(2)SO_(3)H (式中、Rが置換されていてもよいC_(1-20)アルキル、置換されていてもよい炭素環式芳香族基、置換されていてもよいヘテロ脂環式基又は置換されていてもよいヘテロ芳香族基であり、R^(1)とR^(2)がそれぞれ独立して水素または水素以外の置換基である。ただし、R(CR^(1)R^(2))がパーハロアルキルであることはなく、CH_(3)(CH_(2))_(5)CF_(2)基であることはなく、CF_(3)(CFH)基であることはなく、C_(2)H_(5)(CF_(2))基であることはない。)で表わされるα,α-ジフルオロアルキルスルホン酸を発生させる」「光感応性酸発生剤化合物」とは、「アルキルスルホン酸を発生させる」「光感応性酸発生剤化合物」である点で共通する。

(エ)一致点及び相違点
以上より、本件発明と引用発明2とは、
「組成物の露光されたコーティング層を現像させるのに充分な量で樹脂バインダおよび光感応性酸発生剤化合物を含み、その光感応性酸発生剤が放射線で露光されることにより、アルキルスルホン酸を発生させる、フォトレジスト組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点2]光感応性酸発生剤化合物が発生させるアルキルスルホン酸が、本件発明は、化学式R(CR^(1)R^(2))CF_(2)SO_(3)Hで表されるα,α-ジフルオロアルキルスルホン酸であって、R(CR^(1)R^(2))がパーハロアルキルであることはなく、CF_(3)(CFH)基であることはないのに対し、引用発明2のN-スルホニルオキシイミド光酸発生剤が発生させる酸は、化学式R(CR^(1)R^(2))CF_(2)SO_(3)Hで表す場合に、選択肢として、本件発明が除外した基を含む点。

イ 判断
上記[相違点2-1]について検討すると、選択肢として示された化合物群の中から、いずれの化合物を選択するかは、当業者が適宜選択しうることであるから、引用発明2において、選択肢として、本件発明において除外された基以外の選択肢を選択することは、当業者が容易になし得ることである。そして、本願明細書の記載を参酌しても、R(CR^(1)R^(2))がパーハロアルキル、CF_(3)(CFH)基以外の選択肢を選択したことにより格別な効果を奏するとはいえない。

ウ 請求人の主張について
請求人は、令和2年6月12日に提出した意見書において、「引用文献1-4はいずれも化学式R(CR^(1)R^(2))CF_(2)SO_(3)Hで表されるα,α-ジフルオロアルキルスルホン酸を発生させるフォトレジスト組成物から最終的に好ましいレリーフ像を得ることができるという技術的思想を開示していません。」、「本願発明は引用文献1-3に記載の発明から容易に想到できたものではなく、進歩性を有するものであります。」と主張している。
しかしながら、上記のとおり、引用文献2には、「一般式Iで表されるスルホニウム塩」を含む写真複写用化学増幅レジストが記載されており、上記「一般式Iで表されるスルホニウム塩」はα,α-ジフルオロアルキルスルホン酸を含むアルキルスルホン酸を発生させるものである。そして、本願明細書の記載を参酌しても、本件発明が格別な効果を奏するということができない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

エ 小括
以上のとおりであるから、本件発明は、引用文献2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3)引用文献3に基づく判断
ア 対比
本件発明と引用発明3とを対比する。

(ア)光感応性酸発生剤化合物
引用発明3の「塩」が光化学的に産生する「強プロトン酸」は、「塩」の構造からみて、「R_(11)-CF_(2)-SO_(3)H」である。
そうすると、引用発明3の「塩」は、本件発明の「光感応性酸発生剤化合物」に相当する。また、引用発明3の「塩」は、本件発明の「光感応性酸発生剤が放射線で露光されることにより、化学式 R(CR^(1)R^(2))CF_(2)SO_(3)H (式中、Rが置換されていてもよいC_(1-20)アルキル」「であり、R^(1)とR^(2)がそれぞれ独立して水素または水素以外の置換基である。」「)で表されるα, α-ジフルオロアルキルスルホン酸を発生させる」とする要件を満たしている。

(イ)一致点及び相違点
以上より、本件発明と引用発明3とは、
「光感応性酸発生剤化合物であって、その光感応性酸発生剤が放射線で露光されることにより、化学式
R(CR^(1)R^(2))CF_(2)SO_(3)H
(式中、Rが置換されていてもよいC_(1-20)アルキルであり、R^(1)とR^(2)がそれぞれ独立して水素または水素以外の置換基である。)
で表されるα, α-ジフルオロアルキルスルホン酸を発生させる。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点3-1]本件発明は、組成物の露光されたコーティング層を現像させるのに充分な量で樹脂バインダを含むフォトレジスト組成物であるのに対し、引用発明3は、樹脂バインダを含まない塩自体である点。
[相違点3-2]本件発明の光感応性酸発生剤化合物が発生させる化学式R(CR^(1)R^(2))CF_(2)SO_(3)Hで表されるα,α-ジフルオロアルキルスルホン酸は、R(CR^(1)R^(2))がパーハロアルキルであることはなく、CH_(3)(CH_(2))_(5)CF_(2)基であることはなく、CF_(3)(CFH)基であることはなく、C_(2)H_(5)(CF_(2))基であることはないのに対し、引用発明3の塩が発生させる酸は、化学式R(CR^(1)R^(2))CF_(2)SO_(3)Hで表す場合に、選択肢として、本件発明が除外した基を含む点。

イ 判断
(ア)[相違点3-1]について
引用文献3の記載事項アによれば、当該塩は、印刷板、リトグラフフィルム及び校正刷の如き画像関係において理想的な物質である。そのような塩を樹脂バインダとともにフォトレジスト組成物を構成させることは、文献を挙げるまでもなく周知技術であるから、引用発明3の塩を、樹脂バインダとともに組成物の露光されたコーティング層を現像させるのに十分な量で含ませ、フォトレジスト組成物とすることは、当業者が適宜なし得ることである。

(イ)[相違点3-2]について
選択肢として示された化合物群の中から、いずれの化合物を選択するかは、当業者が適宜選択しうることであるから、引用発明3において、選択肢として、本件発明において除外された基以外の選択肢を選択することは、当業者が容易になし得ることである。そして、本願明細書の記載を参酌しても、除外された選択肢以外を選択したことにより格別な効果を奏するとはいえない。

ウ 請求人の主張について
請求人は、令和2年6月12日に提出した意見書において、「引用文献1-4はいずれも化学式R(CR^(1)R^(2))CF_(2)SO_(3)Hで表されるα,α-ジフルオロアルキルスルホン酸を発生させるフォトレジスト組成物から最終的に好ましいレリーフ像を得ることができるという技術的思想を開示していません。」、「本願発明は引用文献1-3に記載の発明から容易に想到できたものではなく、進歩性を有するものであります。」と主張している。
しかしながら、上記のとおり、引用文献3には、上記【化4】に示す構造を有する塩が記載されており、その化学構造からみて、α,α-ジフルオロアルキルスルホン酸を発生させるものである。そして、引用文献3には、上記塩を画像関係において使用することも示唆されている。一方、本願明細書の記載を参酌しても、本件発明が格別な効果を奏するということができない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

エ 小括
以上のとおりであるから、本件発明は、引用文献3の記載及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件発明は、引用文献1?3の何れかに記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができない。

3 理由4(拡大先願)
(1)対比
本件発明と引用発明4を対比する。

ア フォトレジスト組成物
引用発明4の「ポジ型レジスト組成物」は、技術的にみて、本件発明の「フォトレジスト組成物」に相当する。

イ 樹脂バインダ
引用発明4の「(B)酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度を増大させる基を有する樹脂」は、本件発明の「樹脂バインダ」に相当する。
そして、引用発明4の「ポジ型レジスト組成物」は、レジスト組成物として機能するものであるから、引用発明4の「(B)酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度を増大させる基を有する樹脂」は、本件発明における「組成物の露光されたコーティング層を現像させるのに充分な量」で含むとする要件を満たしている。

ウ 光感応性酸発生剤化合物
引用発明4の「(A)活性光線の照射によりCH_(3)(CH_(2))_(k)(CF_(2))_(k')SO_(3)H、ここで、kは0?12の整数、k’は1?12の整数、で表されるスルホン酸を発生する化合物」は、技術的にみて、本件発明の「光感応性酸発生剤化合物」に相当する。
また、引用発明4の「(A)活性光線の照射によりCH_(3)(CH_(2))_(k)(CF_(2))_(k')SO_(3)H、ここで、kは0?12の整数、k’は1?12の整数、で表されるスルホン酸を発生する化合物」と本件発明の「光感応性酸発生剤化合物」とは「放射線で露光されることにより 化学式R(CR^(1)R^(2))CF_(2)SO_(3)H (式中、Rが置換されていてもよいアルキルであり、R^(1)とR^(2)がそれぞれ独立して水素または水素以外の置換基である。ただし、R(CR^(1)R^(2))がパーハロアルキルであることはなく、CF_(3)(CFH)基であることはない。)で表わされるα,α-ジフルオロアルキルスルホン酸を発生させる」点で共通する。
そして、引用発明4の「ポジ型レジスト組成物」は、レジスト組成物として機能するものであるから、引用発明4の「(A)活性光線の照射によりCH_(3)(CH_(2))_(k)(CF_(2))_(k')SO_(3)H、ここで、kは0?12の整数、k’は1?12の整数、で表されるスルホン酸を発生する化合物」は、本件発明における「組成物の露光されたコーティング層を現像させるのに充分な量」で含むとする要件を満たしている。

エ 一致点及び相違点
以上より、本件発明と引用発明4とは、
「組成物の露光されたコーティング層を現像させるのに充分な量で樹脂バインダおよび光感応性酸発生剤化合物を含み、その光感応性酸発生剤が放射線で露光されることにより、化学式
R(CR^(1)R^(2))CF_(2)SO_(3)H
(式中、Rが置換されていてもよいアルキルであり、R^(1)とR^(2)がそれぞれ独立して水素または水素以外の置換基である。ただし、R(CR^(1)R^(2))がパーハロアルキルであることはなく、CF_(3)(CFH)基であることはない。)
で表されるα, α-ジフルオロアルキルスルホン酸を発生させる、フォトレジスト組成物。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。
[相違点4]本件発明の光感応性酸発生剤化合物が発生させる化学式R(CR^(1)R^(2))CF_(2)SO_(3)Hで表されるα,α-ジフルオロアルキルスルホン酸は、式中、RがC_(1-20)アルキルであってC_(21)以上の化合物を含まず、CH_(3)(CH_(2))_(5)CF_(2)基であることはなく、C_(2)H_(5)(CF_(2))基であることはないのに対し、引用発明4のスルホン酸を発生する化合物が発生するCH_(3)(CH_(2))_(k)(CF_(2))_(k')SO_(3)Hが、k+k’が20を超える場合を含み、CH_(3)(CH_(2))_(5)CF_(2)基、C_(2)H_(5)(CF_(2))基を除外していないものであって、本件発明が包含しない化合物を包含している点。

(2)判断
[相違点4]について検討する。
光感応性酸発生剤化合物が発生するα,α-ジフルオロアルキルスルホン酸として、いずれのα,α-ジフルオロアルキルスルホン酸を発生するものを選択するかは、開示された官能基の範囲に含まれるもののなかから当業者が適宜なし選択し得るものである。そして、本件発明において包含する化合物群を選択した場合に、効果の差異が生じるともいえない。
したがって、上記[相違点4]は、課題解決のための具体化手段における微差というべきものであって、新たな効果を奏するものではないから、両者は実質同一といえる。

(3)請求人の主張について
請求人は、令和2年6月12日に提出した意見書において、「引用文献1-4はいずれも化学式R(CR^(1)R^(2))CF_(2)SO_(3)Hで表されるα,α-ジフルオロアルキルスルホン酸を発生させるフォトレジスト組成物から最終的に好ましいレリーフ像を得ることができるという技術的思想を開示していません。」、「本願発明は引用文献4の願書に最初に添付された明細書に記載された発明と同一ではありません。」と主張している。
しかしながら、前記(2)に記載したとおり、本件発明及び引用発明4の相違点は、課題解決のための具体化手段における微差というべきものであって、新たな効果を奏するものではない。
したがって、両者は実質同一といえるものであるから、請求人の上記主張は採用できない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明は、引用出願4に記載された発明と実質同一の発明であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。


第6 むすび
以上のとおり、本件発明は、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、及び、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-06-26 
結審通知日 2020-06-29 
審決日 2020-07-17 
出願番号 特願2016-201651(P2016-201651)
審決分類 P 1 8・ 161- WZ (G03F)
P 1 8・ 537- WZ (G03F)
P 1 8・ 121- WZ (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川口 真隆  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 宮澤 浩
神尾 寧
発明の名称 光感応性酸発生剤およびそれらを含むフォトレジスト  
代理人 佐伯 拓郎  
代理人 中村 正展  
代理人 牛山 直子  
代理人 佐伯 裕子  
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