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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F02B |
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管理番号 | 1368815 |
審判番号 | 不服2020-1943 |
総通号数 | 253 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-02-12 |
確定日 | 2020-12-22 |
事件の表示 | 特願2018-507931「ターボチャージャー」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月 5日国際公開、WO2017/168626、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)3月30日を国際出願とする出願であって、令和元年7月26日付け(発送日:令和元年7月30日)で拒絶理由が通知され、令和元年9月25日付けで意見書及び手続補正書が提出され、令和元年10月30日付け(発送日:令和元年11月12日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、令和2年2月12日に拒絶査定不服審判が請求されるとともにその審判請求と同時に手続補正が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 (進歩性)本願の請求項1,2に係る発明は、その出願前に日本国又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開2001-200727号公報 2.特開2014-234713号公報 3.特開平6-159084号公報(周知技術を示す文献) 4.特公昭55-15606号公報(周知技術を示す文献) 5.実願昭56-056520号(実開昭57-171101号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献) 6.特開昭61-112737号公報(周知技術を示す文献) 第3 本願発明 本願の請求項1ないし2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明2」という。)は、令和2年2月12日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲請求項1ないし2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 中心軸に沿って延びる回転軸と、 前記回転軸の第一端部側に設けられたタービンホイールと、 前記回転軸の第二端部側に設けられたコンプレッサーホイールと、 前記回転軸を回転可能に支持するラジアル軸受、及び前記回転軸を前記中心軸方向に支 持するスラスト軸受を備えた軸受ハウジングと、 前記タービンホイールを収容するタービンハウジングと、 前記タービンハウジング内で、前記タービンホイールを前記第一端部側に向かって押圧する流体を前記タービンホイールに供給する流体供給部と、 を備え、 前記流体供給部は、前記タービンホイールに供給されるガスの流れ方向において、前記タービンホイールよりも上流側から前記ガスを抽気し、前記タービンホイールの前記第二端部側の背面に前記ガスを供給し、 前記軸受ハウジングは、少なくとも前記ラジアル軸受に潤滑油を供給する潤滑油供給路を備え、 前記流体供給部は、前記潤滑油供給路内の潤滑油を加熱するべく前記軸受ハウジング内で前記潤滑油供給路に沿うよう設けられているターボチャージャー。 【請求項2】 中心軸に沿って延びる回転軸と、 前記回転軸の第一端部側に設けられたタービンホイールと、 前記回転軸の第二端部側に設けられたコンプレッサーホイールと、 前記回転軸を回転可能に支持するラジアル軸受、及び前記回転軸を前記中心軸方向に支持するスラスト軸受を備えた軸受ハウジングと、 前記タービンホイールを収容するタービンハウジングと、 前記タービンハウジング内で、前記タービンホイールを前記第一端部側に向かって押圧する流体を前記タービンホイールに供給する流体供給部と、 を備え、 前記流体供給部は、前記コンプレッサーホイールと前記軸受ハウジングとの間に形成された空間から前記流体を抽気し、前記タービンホイールの前記第二端部側の背面に前記流体を供給し、 前記軸受ハウジングは、少なくとも前記ラジアル軸受に潤滑油を供給する潤滑油供給路を備え、 前記流体供給部は、前記潤滑油供給路内の潤滑油を加熱するべく前記軸受ハウジング内で前記潤滑油供給路に沿うよう設けられているターボチャージャー。」 第4 引用文献、引用発明 等 1 引用文献1(特開2001?200727号公報) 原査定の拒絶の理由に引用された特開2001?200727号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「ターボ形過給機」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付した。以下同様。) ア.【0002】 【従来の技術】図4は、従来のターボ形過給機の一例を示す断面構成図である。このターボ形過給機100は、ジャーナル部を主軸受1により支持されたシャフト2と、シャフト2の一端に取り付けられその先端に整流用のキャップ3を設けた羽根車4と、シャフト2の他端に取り付けたロータディスク5と、このロータディスク5の周囲に取り付けた複数の動翼6とを備えている。主軸受1は、センターケーシング7内にて保持されている。主軸受1は、ホワイトメタルをライニングしたすべり軸受であり、ケーシング内に形成した強制潤滑構造8からの給油によりその潤滑が保たれる。 【0003】また、シャフト2がスラスト方向の推力を受けるため、センターケーシング7の一方側には、テーパランド形のスラスト軸受9が設けられている。さらに、前記シャフト2の一端は、端部軸受10により支持されている。センターケーシング7の周囲には、排気側ケーシング11が設けられており、この排気側ケーシング11には駆動ガスの排気口12が設けられている。 【0004】また、排気側ケーシング11に対しては入口側ケーシング13および入口側内部ケーシング14が設けられ、これら入口側ケーシング13および入口側内部ケーシング14によって吸込ノズル15が形成されている。前記吸込ノズル15の出口には、複数の静翼を配置して構成したノズル16が設けられている。前記動翼6は、このノズル16に対向して位置している。また、入口側ケーシング13には、駆動ガス入口17が設けられている。」 イ.「【0006】センターケーシング7および排気側ケーシング11には、ロータディスク5との間とでラビリンスシール26を構成する軸封体27が設けられている。また、センターケーシング7の端部には、チップフィン28が設けられており、ロータディスク5の根元近傍において気体の漏洩を少なくしている。また、センターケーシング7には、キリ穴で構成したシールエア通路30が設けられている。シールエア通路30の端部は、ディフューザ近傍にて開口している。このシールエア通路30は、前記軸封体27およびロータディスク5で構成した空間Sにつながっている。 【0007】駆動ガス入口17から導入されたディーゼルエンジンなどの排気ガスは、吸込ノズル15で圧縮されノズル16から噴出する。噴出したガスは動翼6により回転運動に変換され、排気側ケーシング11内を通って排気口12から排気される。ここで、前記シャフト2には、駆動ガスの作用によりスラスト方向の推力が加わることになり、このスラスト荷重は、前記スラスト軸受9によって受ける格好になる。 【0008】動翼6の回転は、シャフト2を介して羽根車4に伝わる。羽根車4が回転することにより吸込構造22から大気が吸い込まれ、羽根車4の仕事によって吸い込んだ空気の圧力と運動エネルギーが増大させられる。続いて、羽根車4を出た空気は、ディフューザ19においてその運動エネルギーが圧力変換される。ディフューザ19からの高圧空気は、渦巻ケーシング(21,22)を通って吐出口23から吐き出される。」 上記記載事項及び図面の図示内容から、引用文献1には次の事項(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 引用発明1 「スラスト方向に沿って延びるシャフト2と、 前記シャフト2の他端に設けられたロータディスク5と、 前記シャフト2の一端に設けられた羽根車4と、 前記シャフト2を回転可能に支持する主軸受1、及び前記シャフト2を前記スラスト方向に支持するスラスト軸受9を備えたセンターケーシング7と、 前記ロータディスク5を収容する排気ケーシング11とが設けられているターボ形過給機。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について 本願発明1と引用発明1とを対比すると、後者における「スラスト方向に沿って」は、その機能、構成または技術的意義から見て、「中心軸に沿って」に相当し、以下同様に、「シャフト2」は「回転軸」に、「他端」は「第一端部」に、「ロータディスク5」は「タービンホイール」に、「一端」は「第二端部」に、「羽根車4」は「コンプレッサーホイール」に、「主軸受」は「ラジアル軸受」に、「スラスト軸受9」は「スラスト軸受」に、「センターケーシング7」は「軸受ハウジング」に、「排気側ケーシング11」は「タービンハウジング」に、「ターボ形過給機」は「ターボチャージャー」に相当する。 したがって、両者の一致点、相違点は以下の通りである。 [一致点] 「中心軸に沿って延びる回転軸と、 前記回転軸の第一端部側に設けられたタービンホイールと、 前記回転軸の第二端部側に設けられたコンプレッサーホイールと、 前記回転軸を回転可能に支持するラジアル軸受、及び前記回転軸を前記中心軸方向に支持するスラスト軸受を備えた軸受ハウジングと、 前記タービンホイールを収容するタービンハウジングとが設けられているターボチャージャー。」 [相違点1] 本願発明1は、「タービンハウジング内で、タービンホイールを前記第一端部側に向かって押圧する流体を前記タービンホイールに供給する流体供給部と、を備え、流体供給部は、タービンホイールに供給されるガスの流れ方向において、タービンホイールよりも上流側からガスを抽気し、タービンホイールの第二端部側の背面にガスを供給し、 軸受ハウジングは、少なくともラジアル軸受に潤滑油を供給する潤滑油供給路を備え、 流体供給部は、潤滑油供給路内の潤滑油を加熱するべく軸受ハウジング内で前記潤滑油供給路に沿うよう設けられている」技術事項を有しているのに対して、引用発明1はそのような構成を有していない点で相違している。 上記相違点1について検討する 上記相違点1に係る技術事項は、上記引用文献1に記載されておらず、原査定における引用文献2ないし引用文献6に記載されていない。また、上記相違点1に係る技術事項は、本願出願前の「ターボチャージャー」の技術分野において周知技術でもなく、当業者が適宜成し得た設計的事項ともいえない。 そして、本願発明1は、前記相違点1に係る技術事項を有することにより、コンプレッサーホイールの背圧に起因するスラスト荷重を低減するとともに、流体供給部によってタービンホイールの背圧に起因するスラスト荷重を低減するとともに、流体供給部によってタービンホイールに供給される流体の熱により潤滑油を加熱し、その粘度を低下させることができ、回転軸を支持するジャーナル軸受等における摺動抵抗が低減し、ターボチャージャー1Bの過給効率を高めることが可能となるという特有の作用効果を奏するものである。 2 本願発明2について 本願発明2と引用発明1とを対比すると、対比及び一致点については、第5、1において述べた通りである。 [相違点2] 本願発明2は、「タービンハウジング内で、タービンホイールを第一端部側に向かって押圧する流体をタービンホイールに供給する流体供給部と、を備え、 流体供給部は、コンプレッサーホイールと軸受ハウジングとの間に形成された空間から流体を抽気し、タービンホイールの第二端部側の背面に流体を供給し、 軸受ハウジングは、少なくともラジアル軸受に潤滑油を供給する潤滑油供給路を備え、 流体供給部は、潤滑油供給路内の潤滑油を加熱するべく軸受ハウジング内で潤滑油供給路に沿うよう設けられている」技術事項を有しているのに対して、引用発明1はそのような構成を有していない点で相違している。 上記相違点2について検討する 上記相違点2に係る技術事項は、上記引用文献1に記載されておらず、原査定における引用文献2ないし引用文献6に記載されていない。また、上記相違点2に係る技術事項は、本願出願前の「ターボチャージャー」の技術分野において周知技術でもなく、当業者が適宜成し得た設計的事項ともいえない。 そして、本願発明2は、前記相違点2に係る技術事項を有することにより、コンプレッサーホイールの背圧に起因するスラスト荷重を低減するとともに、流体供給部によってタービンホイールの背圧に起因するスラスト荷重を低減するとともに、流体供給部によってタービンホイールに供給される流体の熱により潤滑油を加熱し、その粘度を低下させることができ、回転軸を支持するジャーナル軸受等における摺動抵抗が低減し、ターボチャージャー1Bの過給効率を高めることが可能となるという特有の作用効果を奏するものである。 3 小括 そうすると、本願発明1ないし本願発明2は、原査定で引用された引用文献1ないし引用文献6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶する理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-12-07 |
出願番号 | 特願2018-507931(P2018-507931) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(F02B)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 北村 亮 |
特許庁審判長 |
渡邊 豊英 |
特許庁審判官 |
谷治 和文 西中村 健一 |
発明の名称 | ターボチャージャー |
代理人 | 松沼 泰史 |
代理人 | 橋本 宏之 |
代理人 | 鎌田 康一郎 |
代理人 | 伊藤 英輔 |
代理人 | 古都 智 |