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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C12N
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C12N
管理番号 1368871
審判番号 不服2020-3026  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-04 
確定日 2021-01-04 
事件の表示 特願2017-225326「核酸の抽出及び貯蔵のための方法及び組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月10日出願公開、特開2018- 68303、請求項の数(17)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)4月29日(パリ条約による優先権主張2012年4月30日 米国)を国際出願日として出願した特願2015-510354号の一部を平成29年11月24日に新たな特許出願としたものであって、平成29年12月22日付けで手続補正書が提出され、平成30年3月9日付けで手続補正書が提出され、同年12月5日付けで拒絶理由が通知され、令和元年6月11日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年10月31日付けで拒絶査定(原査定)されたところ、令和2年3月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年8月3日付けで拒絶理由が通知され、同年10月22日付けで意見書及び手続補正書が提出されものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?17に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明17」という。)は、令和2年10月22日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
試料からの核酸の抽出及び貯蔵のための固体マトリクスであって、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)及びトルヒドロキノン(THQ)からなる群から選択されるUV抑制剤を含む組成物が固体マトリクスに含浸されており、固体マトリクスが、セルロース、酢酸セルロース、ガラス繊維又はこれらの組合せを含む多孔性マトリクスであり、核酸が、HPRT1のmRNA及びクラスリンのmRNAの少なくとも一方である、固体マトリクス。」

また、本願発明2?17は、本願発明1を減縮した発明である。

第3 引用文献、引用発明等

1 引用文献1について

(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特表2008-509226号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は、当審において付与した。以下同様。

(引1ア)
「【0006】
特定の実施態様では、溶出可能な多孔性基質または半多孔性基質は、親水性生体適合材料、合成ポリマーまたは天然ポリマー、セルロース、ポリエステル、またはポリウレタンを含む。別の特定実施態様では、溶出可能な多孔性基質または半多孔性基質は、1/3?10ポンド/フィート3の範囲の密度を有する。さらに別の実施態様では、溶出可能な多孔性基質または半多孔性基質はエラストマー(弾力)性を有する。エラストマー基質は、非圧縮状態の容量の1/2、1/5、1/10、1/25、1/50、または1/100に圧縮可能な材料、および非圧縮状態の容量の2倍、5倍、10倍、25倍、50倍、または100倍に拡張可能な材料を含む。特定の局面では、溶出可能な弾力性、多孔性基質または半多孔性基質は、開放気泡フォーム、独立気泡フォーム、またはそれらの組み合わせを含む。別の特定局面では、溶出可能な、多孔性または半多孔性、非弾力性基質は、FTA(登録商標)、ラグペーパー、またはイソコード(登録商標)を含む。
・・・
【0008】
さらに別の実施態様では、溶出可能な、多孔性または半多孔性、弾力性または非弾力性基質は、添加剤またはその他の処理剤によって処理されるか、または処理されず、ある特定の物質、成分、または構成分を有するか、または実質的に含まない。一つの局面では、溶出可能な、多孔性または半多孔性、弾力性または非弾力性基質は、多価化合物によって処理されないかまたは多価化合物を実質的に含まない(例えば、全質量の約0.25%(重量/重量)未満の量の多価化合物を有する)。別の局面では、溶出可能な、多孔性または半多孔性、弾力性または非弾力性基質は、実質的にガラス、またはガラス繊維を含まない。さらに別の局面では、溶出可能な、多孔性または半多孔性、弾力性または非弾力性基質は、緩衝液(例えば、pH安定化剤)、キレート剤、変性剤、界面活性剤、還元剤、抗酸化剤、プロテアーゼインヒビター、ヌクレアーゼインヒビター、抗菌剤、または低水分吸収性糖類によって処理される。」

(引1イ)
「【0237】
(実施例7)
本実施例は、溶出可能なエラストマー基質に吸収された血液を様々な時間保管し、その後溶出、回収、および分析した実験を含む。例示の実験は、二つの連続工程を用いる。すなわち、1)ポリエステルスポンジに吸収された血液からのタンパク質の溶出、および2)同じポリエステルスポンジに吸収された血液からの核酸の溶出である。
【0238】
(スポンジに吸収された血液サンプルから、タンパク質および核酸の2工程の溶出および回収)
この実験では、ポリエステルスポンジに吸収された血液を167日間保管した。保管後、タンパク質をスポンジ基質から溶出、回収し、次に、同じスポンジ基質から核酸を溶出、回収した。
【0239】
各種処理剤(下記参照)を含むポリウレタン(例えば、ポリエステル)スポンジ(6mm×5mmの円筒)に血液サンプルを吸収させ、様々の期間室温で保管した。167日間の保管後、血液吸収スポンジを水(150μl)で水和し、容器の中に含まれるスポンジをプランジャーを用いて圧縮することによってタンパク質を溶出した。タンパク質溶出後、スポンジをアルカリ性溶出液(pH11.7?11.)によって水和し、複数回圧縮し、室温でインキュベートし(30分)、再び複数回圧縮した。このプロセスを繰り返し、溶出液を合わせて分析した。この2工程の溶出および回収手順は、本質的に実施例4に記載する通りである。
【0240】
保管サンプルから回収されたタンパク質溶出液は、次いで定量的、定性的に分析された。特に、溶出液中に回収された総タンパク質を、前述の通りBCA分析によって定量した。溶出液中に回収された総タンパク質はまた、電気泳動および銀染色によって定性的に分析した。これらの結果はゲル#6および#7に示す。
【0241】
(BCAにより測定した、各種処理剤(約120μL容量)を用いて167日間保管したスポンジから回収されたタンパク質総収量(μg/mL))
処理#1 TE+NP40 =150,914
処理#2 TE+NP40+トレハロース =197,959
処理#3 TE+SDS =165,175
処理#4 TE+SDS+トレハロース =177,038
処理#5 トレハロースのみ =148,897
処理#6 添加剤無し =154,525
コントロールC1 凍結した全血 =191,028
コントロールC2 凍結した血清 =113,733

【0242】
2回目の溶出工程で保管サンプルから回収した核酸溶出液は、次に定量的、定性的に分析した。特に、溶出液中に存在するDNA量は、半定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて定量した。簡単に述べると、DNA溶出液を10倍に希釈し、標準的50μLのPCR反応液とした。この液は、ヒトのアメロゲニン遺伝子に対して特異的な、オリゴヌクレオチドPCRプライマー対を含み、単一の558bpPCR産物を生成する。定量的ポジティブコントロールとして、精製ヒトDNAの一組の系列希釈サンプルについても、反応当たり10ng、1ng、0.1ng、0.01ngで分析した。40サイクルのPCRを実行し、溶出DNAを、既知のヒトDNAサンプルと比較した。この比較は、各PCR反応産物5μLを5%アクリルアミド電気泳動に供することにより行った。得られた電気泳動パターン(すなわち、サンプル当たり単一の558bpバンド)を臭化エチジウムによって可視化し、CCDを用いてデータを得た。電気泳動バンド由来の得られたデジタル信号を比較し、溶出液中のDNA濃度を、PCR産物収量比が元のサンプルにおけるDNA質量比に比例するという妥当な仮定に基づいて、既知の標準質量濃度を内挿することによって推定した。このアッセイにおいて、DNAの計算収量は、約±30%以内の正確さであると推定される。下表において、Q1およびQ2は、スポンジに吸収された元の血液150μLにおけるDNA量の二連の測定値を指す。これらの値(Q1、Q2)は、150μLの血液(二連)をQiaAmp-mini製品(Qiagen)を用いカラムクロマトグラフィーで処理して得た。これらの未乾燥の参照標本に基づくと、処理#2および#5によって、適用した血液DNAの約1/2は、エラストマー基質から回収された。その他の処理では、相対的により低い回収率が得られた。
【0243】
溶出液中に存在する回収DNAも、ゲル電気泳動および染色によって定性的に分析した。これらの結果をゲル#8に示す。
【0244】
(半定量的PCRにより測定した167日間保管後スポンジから回収された(150μL当たり)DNA総収量(ナノグラム))
処理#1 TE+NP40 =100ng
処理#2 TE+NP40+トレハロース =750ng
処理#3 TE+SDS =10ng
処理#4 TE+SDS+トレハロース =100ng
処理#5 トレハロースのみ =750ng
処理#6 添加剤無し =100ng
コントロールQ1 凍結した全血 =1500ng
コントロールQ2 凍結した血清 =1500ng

【0245】
【化6】

【0246】
【化7】

【0247】
【化8】


上記の結果は、長期の室温保管後、基質から安定なタンパク質を回収することが可能であることを示す。回収タンパク質は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)で評価したところ、凍結全血コントロールと同一であるようである。全ての処理について、80%を超えるタンパク質が基質から回収された。従って、溶出可能なエラストマー基質は、分解に耐性を有する形態でタンパク質を保管するための信頼性の高い手段を提供する。
【0248】
上記の結果はまた、DNAも分解に耐性を有する保管形態で長期保管が可能であることを示す。従って、このDNAは、増幅、配列決定、およびクローニングのような高品質で、非分解性DNAを要する分析または応用に適切である。さらに、回収されるDNAは、タンパク質汚染の存在に対し感受性の高いPCRにも直接使用が可能であり得る。従って、この回収DNAは、PCR、およびタンパク質汚染物が手順を妨げる可能性のあるその他の方法に使用する前に、タンパク質汚染物を除去するためフェノール:クロロホルム抽出、またはその他の技術に供される必要がない。
【0249】
DNAの回収率は、処理に応じて変動する。処理#2(NP40-トレハロース)および#5(トレハロースのみ添加)は、最良のDNA回収率をもたらし、そして処理#6(未処理ポリエステルスポンジ)も効果的なDNA回収率をもたらした。処理#2および#5それぞれの回収率は、基質単位当たり約50%(750ng DNA)であった。トレハロースはDNA回収率を強化するようであるが、実験条件下では、タンパク質回収率を有意に改善するようには見えなかった。スクロースもまた、トレハロースと同様に、核酸の回収を強化するようである。」

(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 血液サンプルを吸収させ保管するポリエステルスポンジであって、
ポリエステルスポンジは各種処理剤(TE+NP40、TE+NP40+トレハロース、TE+SDS、TE+SDS+トレハロース、又は、トレハロースのみ)を含み、ポリエステルスポンジは多孔性基質であり、
保管後、ポリエステルスポンジからタンパク質を溶出、回収し、次に、同じポリエステルスポンジからDNAを溶出、回収する、ポリエステルスポンジ。」

2 引用文献2について

(1)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に周知技術として引用された引用文献2(特開昭61-88896号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(引2ア)
「 試料中の白血球弁別用の本発明の組成物は、白血球の選ばれたサブクラスからのみ細胞膜および細胞質を取除くのに有効な少くとも一種の希薄酸および少くとも一種の水溶性界面活性剤を含有してなり、かつpHが約1.8ないし約2.3である。」(4頁右上欄末行?左下欄4行)

(引2イ)
「 本発明の新規組成物は種々の型の血球の手動および流動血球計数系による検出に適用し得る。こゝに開示した組成物は水溶性界面活性剤と希酸とを含有して成り、pH範囲は約1.8ないし約2.3である。この組成物はまた必要に応じ酸化防止剤を含有することができる。検定実施のためには界面活性剤成分と希酸成分とが存在しなければならず、どちらの成分を欠いても有効な組成物は得られない。連鎖停止性酸化防止剤は界面活性剤の自動酸化的分解を防止し、それによる細胞質除去機能の低下を防ぐ。」(4頁右下欄10?末行)

(引2ウ)
「 本組成物はまた必要に応じ、界面活性剤の自動酸化による分解を遅延させて貯蔵寿命を増大させる連鎖停止性酸化防止剤を含有し得る。酸化防止剤は、防止剤がない場合に連鎖反応に関与するであろう過酸化ラジカルを破壊する。例としてジ第三級ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、p-メトキシフェノール(MEHQ)またはジ第三級ブチル-4-メトキシフェノール(BHA)が挙げられる。」(5頁左下欄3?11行)

(2)引用文献2に記載された技術的事項
上記(1)から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「 白血球の選ばれたサブクラスからのみ細胞膜および細胞質を取除くのに有効な希薄酸および水溶性界面活性剤を含有してなる、試料中の白血球弁別用の組成物であって、
界面活性剤の自動酸化的分解を防止し、それによる細胞質除去機能の低下を防ぐ連鎖停止性酸化防止剤として、p-メトキシフェノール(MEHQ)を含有し得る、組成物。」

第4 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「血液サンプルを吸収させ保管するポリエステルスポンジ」は、「血液サンプル」中の核酸である「DNAを溶出、回収」すなわち抽出するものであるから、本願発明1の「試料からの核酸の抽出及び貯蔵のための固体マトリクス」に相当する。

イ 引用発明の「各種処理剤(TE+NP40、TE+NP40+トレハロース、TE+SDS、TE+SDS+トレハロース、又は、トレハロースのみ)」には、(引1ア)【0008】に各種処理剤の一つとして挙げられている「抗酸化剤」がない。また、引用発明の「各種処理剤」を「ポリエステルスポンジ」に「含」ませることは、「各種処理剤」は溶液であり「ポリエステルスポンジ」は多孔質であるから、各種処理剤をポリエステルスポンジに「含浸」させているといえる。
よって、引用発明の「各種処理剤(TE+NP40、TE+NP40+トレハロース、TE+SDS、TE+SDS+トレハロース、又は、トレハロースのみ)」が「ポリエステルスポンジ」に「含」まれることと、本願発明1の「ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)及びトルヒドロキノン(THQ)からなる群から選択されるUV抑制剤を含む組成物が固体マトリクスに含浸されて」いることとは、「組成物が固体マトリクスに含浸されて」いる点で共通する。

ウ 引用発明の「ポリエステルスポンジは多孔性基質であ」ることと、本願発明1の「固体マトリクスが、セルロース、酢酸セルロース、ガラス繊維又はこれらの組合せを含む多孔性マトリクスであ」ることとは、「固体マトリクスが多孔性マトリクスであ」る点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、次の点で一致し、次の各点で相違する。

(一致点)
「 試料からの核酸の抽出及び貯蔵のための固体マトリクスであって、組成物が固体マトリクスに含浸されており、固体マトリクスが多孔性マトリクスである、固体マトリクス。」

(相違点1)
本願発明1では、固体マトリクスが抽出及び貯蔵のための核酸は、「HPRT1のmRNA及びクラスリンのmRNAの少なくとも一方」であり、固体マトリクスに含浸されている組成物は、「ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)及びトルヒドロキノン(THQ)からなる群から選択されるUV抑制剤」を含むのに対し、引用発明では、固体マトリクスが抽出及び貯蔵のための核酸は、「DNA」であり、固体マトリクスに含浸されている組成物は、「各種処理剤(TE+NP40、TE+NP40+トレハロース、TE+SDS、TE+SDS+トレハロース、又は、トレハロースのみ)」である点。

(相違点2)
多孔性マトリクスが、本願発明1では、「セルロース、酢酸セルロース、ガラス繊維又はこれらの組合せ」を含むのに対し、引用発明では、「ポリエステル」である点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討する。

引用発明は、抽出及び貯蔵するものが「DNA」であり、それを「各種処理剤(TE+NP40、TE+NP40+トレハロース、TE+SDS、TE+SDS+トレハロース、又は、トレハロースのみ)」を含ませたポリエステルスポンジに抽出及び貯蔵するところ、抽出及び貯蔵するものを「DNA」から「HPRT1のmRNA及びクラスリンのmRNAの少なくとも一方」に代えた場合には、「各種処理剤(TE+NP40、TE+NP40+トレハロース、TE+SDS、TE+SDS+トレハロース、又は、トレハロースのみ)」を「ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)及びトルヒドロキノン(THQ)からなる群から選択されるUV抑制剤」に代えることが、引用文献1及び引用文献2に記載も示唆もされておらず、また「HPRT1のmRNA及びクラスリンのmRNAの少なくとも一方」を抽出及び貯蔵する際に、固体マトリクスに含ませるものとして「ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)及びトルヒドロキノン(THQ)からなる群から選択されるUV抑制剤」が特に有効であることを示す証拠もない。
よって、上記相違点1に係る本願発明1の構成は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることでない。
そして、本願明細書【0037】の実施例7(図7)の結果を見ると、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)又はトルヒドロキノン(THQ)のを含む固体マトリクスでは、いずれも、HPRT1のmRNA及びクラスリンのmRNAの高い貯蔵性(安定性)が読み取れるから、仮に、固体マトリクスとしてHPRT1のmRNA又はクラスリンのmRNAを抽出・貯蔵することが公知であったとしても、本願発明1が奏する効果は、当業者が引用文献1及び2の記載から予測し得ることでない。
してみると、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2?17について
本願発明2?17は、上記相違点1に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1について引用文献1及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、令和2年10月22日付け手続補正により補正された請求項1は、「核酸が、HPRT1のmRNA及びクラスリンのmRNAの少なくとも一方である」という事項を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
当審では、請求項1?17に係る特許請求の範囲の記載が、発明の詳細な説明から、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)又はトルヒドロキノン(THQ)を含む組成物が含浸されている固体マトリクスにおいて、HPRT1のmRNA及びクラスリンのmRNA以外の核酸の高い貯蔵性(安定性)が読み取れない点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、との拒絶の理由を通知しているが、令和2年10月22日付けの補正において、請求項1に「核酸が、HPRT1のmRNA及びクラスリンのmRNAの少なくとも一方である」との補正がなされた結果、この拒絶理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1?17は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の拒絶理由及び当審で通知した拒絶理由によっては、本願を拒絶することができない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-12-11 
出願番号 特願2017-225326(P2017-225326)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C12N)
P 1 8・ 537- WY (C12N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 北条 弥作子萩田 裕介  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 伊藤 幸仙
▲高▼見 重雄
発明の名称 核酸の抽出及び貯蔵のための方法及び組成物  
代理人 田中 研二  
代理人 飯田 雅人  
代理人 崔 允辰  
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