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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  F16B
管理番号 1368921
審判番号 無効2019-800105  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-11-29 
確定日 2020-11-19 
事件の表示 上記当事者間の特許第6602499号発明「交差連結具」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6602499号(以下、「本件特許」という。)に係る発明は、平成26年12月19日(以下、「原出願日」という。)に出願された特願2014-257742号の一部を平成28年10月12日に新たな特許出願とした特願2016-200735号の一部を平成29年6月27日に新たな特許出願とした特願2017-125321号の一部を平成31年3月29日に新たな特許出願としたものであって、令和1年10月18日に特許権の設定の登録がなされたものである。

以後の本件無効審判事件に関連する手続の概要は以下のとおりである。

令和1年11月29日付け 本件無効審判の請求及び証拠説明書
令和2年 2月18日付け 答弁書
同年 4月 3日付け 審理事項通知書
同年 5月18日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 5月19日差出 口頭審理陳述要領書(請求人)
同年 5月20日付け 口頭審理中止通知書及び書面審理通知書
同年 6月 1日 口頭審尋(テレビ会議システム)

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明10」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
第一棒状体と、前記第一棒状体に対してそれぞれ交差する2本の第二棒状体とを連結する交差連結具であって、
前記第一棒状体を保持する第一保持部と、
前記第二棒状体をそれぞれ保持する一対の第二保持部と、を備え、
前記第一保持部が、前記第一棒状体の保持位置に対して板面に沿う方向の両側に設けられた一対の取付基部を有するベース板部を含み、
一対の前記第二保持部の一方が、対応する前記第二棒状体に直交する方向に沿って締結される連結ボルトを用いて当該第二棒状体をその軸方向に沿って挟み込んで保持するとともに、一対の前記取付基部の一方に相対変位可能に連結され、
一対の前記第二保持部の他方が、対応する前記第二棒状体に直交する方向に沿って締結される連結ボルトを用いて当該第二棒状体をその軸方向に沿って挟み込んで保持するとともに、一対の前記取付基部の他方に相対変位可能に連結されている交差連結具。

【請求項2】
第一棒状体と、前記第一棒状体に対してそれぞれ交差する2本の第二棒状体とを連結する交差連結具であって、
前記第一棒状体を保持する第一保持部と、
前記第二棒状体をそれぞれ保持する一対の第二保持部と、を備え、
前記第一保持部が、前記第一棒状体の保持位置に対して板面に沿う方向の両側に設けられた一対の取付基部を有するベース板部を含み、
一対の前記第二保持部の一方が、対応する前記第二棒状体を当該第二棒状体の軸方向に沿って面で押さえる状態で挟み込んで保持するとともに、一対の前記取付基部の一方に相対変位可能に連結され、
一対の前記第二保持部の他方が、対応する前記第二棒状体を当該第二棒状体の軸方向に沿って面で押さえる状態で挟み込んで保持するとともに、一対の前記取付基部の他方に相対変位可能に連結されている交差連結具。

【請求項3】
一対の前記第二保持部のそれぞれが、対応する前記第二棒状体に直交する方向に沿って締結される連結ボルトを用いて、対応する前記第二棒状体を挟み込んで保持する請求項2に記載の交差連結具。

【請求項4】
前記第二保持部が、対応する前記第二棒状体の外周を包囲する湾曲部又はループ部を有する部材を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の交差連結具。

【請求項5】
前記取付基部と前記第二保持部との各組に対して、前記取付基部と前記第二保持部とを連結するとともに前記取付基部に対する前記第二保持部の相対姿勢変更のための支点となる枢支連結部材を個別に備えている請求項1から4のいずれか一項に記載の交差連結具。

【請求項6】
一対の前記第二保持部が、前記ベース板部の一対の前記取付基部における板厚方向の同じ側の面に連結されている請求項1から5のいずれか一項に記載の交差連結具。

【請求項7】
前記第一保持部が、前記ベース板部との間に前記第一棒状体を挟み込んで保持する第一保持板部をさらに含む請求項1から6のいずれか一項に記載の交差連結具。

【請求項8】
前記ベース板部が、一対の前記取付基部のそれぞれに対して交差する状態で一対の前記取付基部の間に配置されたベース本体部をさらに有し、
前記第一保持板部が、前記ベース本体部に固定されている請求項7に記載の交差連結具。

【請求項9】
前記ベース本体部に対して、一対の前記取付基部がそれぞれ鈍角状に交差して配置されている請求項8に記載の交差連結具。

【請求項10】
前記第一保持部が、前記第一棒状体の軸方向の2箇所に対して係合する一対の係合部を有する請求項1から6のいずれか一項に記載の交差連結具。」

第3 当事者の主張
1 請求人
請求人は、審判請求書及び口頭審理陳述要領書において、「『特許第6602499号の特許請求の範囲の請求項1乃至10に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。』との審決を求める。」ことを請求の趣旨とし、甲第1号証ないし甲第24号証を提出して、概略次の無効理由1ないし5を主張する。

(1)無効理由1(本件発明1、2及び6?9)
甲第2号証に記載された発明(以下、「甲2発明」という。)を主引用発明、甲第3?6号証に記載された発明(以下、「甲3発明」?「甲6発明」という。)を副引用発明とし、本件発明1、2及び6?9は、甲2発明及び甲3?6発明のいずれかに基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1、2及び6?9についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(2)無効理由2(本件発明3及び6?9)
本件発明3及び6?9は、甲2発明、甲3?6発明のいずれか、及び、甲3発明又は甲4発明のいずれかに基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明3及び6?9についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(3)無効理由3(本件発明4及び6?9)
本件発明4及び6?9は、甲2発明、甲3?6発明のいずれか、甲3発明又は甲4発明のいずれか、及び、甲3発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明4及び6?9についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(4)無効理由4(本件発明5?9)
本件発明5?9は、甲2発明、甲3?6発明のいずれか、甲3発明又は甲4発明のいずれか、甲3発明、及び、甲3?5発明のいずれかに基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明5?9についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(5)無効理由5(本件発明10)
甲第7号証に記載された発明(以下、「甲7発明」という。)も副引用発明とし、本件発明10は、甲2発明、甲3?6発明のいずれか、甲3発明又は甲4発明のいずれか、甲3発明、甲3?5発明のいずれか、及び、甲7発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明10についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(6)証拠方法
甲第1号証:本件特許の特許掲載公報
甲第2号証:株式会社昭和コーポレーション、配管支持金具カタログVOL.8、2014年8月、第1ページ、第107?110ページ
甲第3号証:特開2002-339918号公報
甲第4号証:特開平7-324426号公報
甲第5号証:実願平1-98760号(実開平3-37114号)のマイクロフィルム
甲第6号証:特開2014-148828号公報
甲第7号証:特開2014-52014号公報
甲第8号証:特開2013-245688号公報
甲第9号証:株式会社アカギ、アカギBigNEWS65、2013年7月
甲第10号証:中井拓也、外3名、I-18 建築設備・機器の耐震性に関する研究 その5 吊りボルトで支持された配管およびケーブルラックの振動特性に関する実験、空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集、2013年9月25日、第69?72ページ
甲第11号証:橋本信、外4名、D-55 吊り式設備機器の耐震支持方法における静的実験 単調及び繰返し載荷試験の概要と結果、空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集、2014年9月3日、第273?276ページ
甲第12号証:特開2014-47896号公報
甲第13号証:特開2014-148827号公報
甲第14号証:因幡電機産業株式会社 因幡電工事業部、因幡電工事業部2015年度版総合カタログ、2014年10月、初版、P8-26ページ?P8-28ページ
甲第15号証:特開2012-87860号公報
甲第16号証:株式会社昭和コーポレーション、配管支持金具カタログVOL.8、2014年8月、第4ページ、第113ページ、第133ページ
甲第17号証の1:株式会社アカギ、2010-55 アカギ式配管支持金具、2010年9月、第48ページ
甲第17号証の2:日栄インテック株式会社、総合カタログ2010、2010年、第29ページ
甲第17号証の3:morii、吊タンバックル、2009年10月、第113ページ
甲第17号証の4:マルイ電機設備パーツ総合カタログNo.2(2013.3?)、第211ページ
甲第17号証の5:マルイ管機設備パーツ総合カタログNo.1(2013.2?)、第51ページ、第135ページ
甲第18号証:特開2009-185940号公報
甲第19号証:特開2011-163544号公報
甲第20号証:特開2013-164152号公報
甲第21号証:震災復興支援会議「設備被害対策検討委員会」、東日本大震災による設備被害と耐震対策報告書、一般社団法人建築設備技術者協会、平成25年9月5日、第42ページ
甲第22号証の1:特開2008-240790号公報
甲第22号証の2:特開2013-164153号公報
甲第22号証の3:ネグロス電工、空調・衛生資材総合カタログ2013/14A、2013年3月17日、第50?51ページ、第102ページ、第109ページ、第112ページ、第157ページ
甲第23号証:ネグロス電工、総合カタログ 空調・衛生配管資材冷媒管ラックウィンラック掲載版、2013年3月、第111?112ページ
甲第24号証:特許第5458199号公報

2 被請求人
被請求人は、答弁書及び口頭審理陳述要領書において、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。」ことを答弁の趣旨とし、乙第1号証ないし乙第3号証を提出し、無効理由1ないし4に対して、概略次のように反論する。

(1)無効理由1?5に対して
本件発明1、2、6?9は、甲2発明、及び、甲3?6発明のいずれかに基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものでなく、
本件発明3、6?9は、甲2発明、甲3?6発明のいずれか、及び、甲3発明又は甲4発明のいずれかに基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものでなく、
本件発明4、6?9は、甲2発明、甲3?6発明のいずれか、甲3発明又は甲4発明のいずれか、及び、甲3発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものでなく、
本件発明5?9は、甲2発明、甲3?6発明のいずれか、甲3発明又は甲4発明のいずれか、甲3発明、及び、甲3?5発明のいずれかに基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものでなく、
本件発明10は、甲2発明、甲3?6発明のいずれか、甲3発明又は甲4発明のいずれか、甲3発明、甲3?5発明のいずれか、及び、甲7発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(2)証拠方法
乙第1号証:株式会社昭和コーポレーション、2011-2012配管支持金具カタログVOL.5、2011年、第102ページ
乙第2号証:実公平4-48088号公報
乙第3号証:日本建築学会、構法計画パンフレット2 システム天井、株式会社彰国社、昭和56年11月20日、第1版、第14?17ページ

第4 各甲号証の記載事項等
1 甲第2号証・甲2発明
原出願日前に日本国内において頒布された甲第2号証には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)

(1)「空調機器用振れ止め金具」、
「SCキープY金具90度タイプ両側」、
「4面ブレースを素早く取り付け!」、
「※機器の4面それぞれに振れ止めを取る事を『4面ブレース』と呼んでいます。」、
「本文掲載P110」(第1ページ)

(2)「SCキープ金具シリーズ」、
「SCキープY金具90度タイプ」、
「用途・天井吊型機器、ラック、配管などの振れ止めに使用します。」(第107ページ)

(3)「4面ブレース施工例」、
「4面ブレース用SCキープ金具バリエーション」、
「SCキープY金具90度タイプ ナナメ全ネジの取付けカンタン!」、
「本文掲載p110」(第108ページ)

(4)「空調機器・配管用振れ止め金具」、
「空調機器用振れ止め金具SCキープY金具90度タイプ両側」、
「メッキは環境にやさしいRoHS対応!!」、
「先付け用」、
「後付け用」、
「特長1 カンタン!90°! 支持部1ヶ所から、直角の2方向(90°)への振れ止め施工がカンタン!」、
「特長2 組み立て不要!ラクラク施工! 本体をバラすことなく施工が可能!作業時間の短縮を実現! [1](当審注:[1]は、丸の中にアラビア数字の「1」。以下同様。)ナットの脱落防止機能 [2]独自のフックロック機構の採用により取付簡単!」、
「特長3 伴回り防止!」、
「特長4 カンタン取付! サイド金具は任意の角度で調整可能!全ネジの取付けがカンタンです。」、
「施工手順 [1]本体金具を緩めて吊り下げ用全ネジに取付けます。 [2]先付け用の場合 振れ防止用の全ネジを金具に取付けます。 [2]後付け用の場合 振れ防止用の全ネジをサイド金具に掛けた後、専用ワッシャーを挿入して下さい。 [3]両側の上下ダブルナットを締め込み施工完了です。」、
「KYA SCキープY金具90度(両側タイプ)後付け用」(第110ページ)

(5)第1ページ及び第108ページには、SCキープY金具90度タイプの空調機器用振れ止め金具によって、吊り下げ用全ネジと、吊り下げ用全ネジに対してそれぞれ交差する2本の振れ防止用全ネジとを連結した4面ブレース施工例の図面が記載されている。

(6)第1ページ、第108ページ及び第110ページの、SCキープY金具90度タイプの写真からは、本体金具が板状に形成された板部を含んでおり、吊り下げ用全ネジの保持位置に対して板部の板面に沿う方向の両側に一対の取付部が設けられており、取付部のそれぞれがサイド金具に連結されている構成が見て取れる。

上記の事項を総合し、本件の特許請求の範囲の請求項1の記載ぶりに則って整理すると、甲第2号証には、次の甲2発明が記載されていると認められる。

[甲2発明]
「吊り下げ用全ネジと、前記吊り下げ用全ネジに対してそれぞれ交差する2本の振れ防止用全ネジとを連結する空調機器用振れ止め金具であって、
前記吊り下げ用全ネジを保持する本体金具と、
前記振れ防止用全ネジをそれぞれ保持する一対のサイド金具と、を備え、
前記本体金具が、前記吊り下げ用全ネジの保持位置に対して板面に沿う方向の両側に設けられた一対の取付部を有する板部を含み、
一対の前記サイド金具の一方が、対応する前記振れ防止用全ネジをサイド金具に掛けた後、専用ワッシャーを挿入し、上下ダブルナットを締め込んで、当該振れ防止用全ネジを保持するとともに、一対の前記取付部の一方に任意の角度で調整可能に連結され、
一対の前記サイド金具の他方が、対応する前記振れ防止用全ネジをサイド金具に掛けた後、専用ワッシャーを挿入し、上下ダブルナットを締め込んで、当該振れ防止用全ネジを保持するとともに、一対の前記取付部の他方に任意の角度で調整可能に連結されている空調機器用振れ止め金具。」

2 甲第3号証・甲3発明
原出願日前に日本国内において頒布された甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0002】
【従来の技術】従来、この種の振れ止め金具として、当出願人が先に出願した実公平4-16569号公報、実公平4-48088号公報に記載された考案、及び特開平10-318241号公報に記載された吊りボルト振れ止め金具が公知である。」

(2)「【0008】一方、後者の考案は、ケーブルラック等の設備と共に装着する金具であり、吊りボルトの側面に差し込む切欠を設けたものなので、吊りボルトの異なる径に対応できる利点がある。しかしながら、既に装着されている設備に、この振れ止め金具を後付けで装着しようとすると、吊りボルトを固定しているナットを緩めてからでなければ、振れ止め金具を装着することができない不都合があった。」

(3)「【0012】そこで、本発明は、上述の課題を解消すべく創出されたもので、確実な固定力を有し、高所での取り付け作業を容易に行なうことができ、しかも、1本の連結ボルトを使用する場合でも、既設の吊りボルトに後付けで装着することが可能になる吊りボルト用振れ止め金具の提供を目的とする。」

(4)「【0016】本発明振れ止め金具の主な構成は、挟着体1、連結ボルト2、斜め支持体3、固定ナット4から成る(図2参照)
【0017】挟着体1は、吊りボルトPの側面に挟着固定する平面略U字形状を成している。(以下省略)」

(5)「【0019】挟着体1は、吊りボルトPの側面に沿って湾曲する湾曲面部1Bと、連結ボルト2を挿通せしめる挿通孔1Dを設けた連結片1Cとから成る(図2参照)。そして、連結片1Cと挿通孔1Dとの境界部分に近接する湾曲面部1Bに前記係止突起1Aを設けている。
【0020】連結ボルト2は、挟着体1の開放端部を貫通するボルトで、挟着体1に斜め支持体3を揺動自在に連結する(図3参照)。この連結ボルト2の端部に固定ナット4をネジ止めしてあり、連結ボルト2の頭部2Aを回り止め部1Eに係止させた状態で固定ナット4を緊締する。
【0021】斜め支持体3は、連結ボルト2に上下揺動自在に連結され、吊りボルトPに対して斜めに配設される長ボルトQに連結する部材である(図1参照)。この斜め支持体3は、連結ボルト2を挿通する挿通孔3Aの部分で上下角度の調整が自在になっている。また、長ボルトQを挿通する挿通孔3Bを設けてあり、斜め支持体3と長ボルトQとを,一対の固定ナット5で連結する(図2参照)。(以下省略)」

(6)「【0026】更に、吊りボルトPの側面に挟着する平面略U字形状の挟着体1を使用しているので、連結ボルトを1本だけ使用する場合でも、既設の吊りボルトに後付けで装着することが極めて容易になった。」

上記の記載事項を総合し、本件の特許請求の範囲の請求項1の記載ぶりに則って整理すると、甲第3号証には、次の甲3発明が記載されていると認められる。

[甲3発明]
「吊りボルトPと、前記吊りボルトPに対して斜めに配設される長ボルトQとを連結する振れ止め金具であって、
前記吊りボルトPに挟着固定する挟着体1と、
挟着体1に揺動自在に連結され、かつ、長ボルトQを挿通孔3Bに挿通して一対の固定ナット5で連結する斜め支持体3と、を備え、
前記挟着体1は、吊りボルトPの側面に沿って湾曲する湾曲面部1Bと、連結ボルト2を挿通せしめる挿通孔1Dを設けた連結片1Cを有し、
斜め支持体3が連結片1Cに連結ボルト2を介して連結される振れ止め金具。」

3 甲第4号証・甲4発明
原出願日前に日本国内において頒布された甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、長尺ボルトに対する長尺部材の連結金具に関し、さらに詳しくは、天井から吊り下げた吊ボルト等の長尺ボルトの適宜位置に、振れ止め用ブレース等他の長尺部材を連結するための長尺ボルトに対する長尺部材の連結金具に関する。」

(2)「【0004】さらに、上記従来技術や周知の上部振れ止め受け連結金具等では、振れ止め用ブレース等の長尺部材を吊ボルトに対して傾斜状態で連結するためには、吊ボルトに対する連結金具の取付用締付ねじと、連結金具に対するブレースの取付用締付ねじとを別々に設けなければならず、連結作業が繁雑であった。」

(3)「【0006】また、本発明の第二の目的は、一ヶ所の締付操作で長尺ボルトに対し他の長尺部材を傾斜状に交差させて連結することの可能な連結金具を提供することにある。」

(4)「【0015】また、上記連結金具の第三の特徴構成によれば、長尺ボルトに対し他の長尺部材を適宜角度で傾斜状に交差させた状態で、これら両部材を一ヶ所の締付用ボルトの締付操作で連結することの可能な連結金具を提供し得るに至った。」

(5)「【0018】図2?図5に示すように、本発明にかかる連結金具6は、別体の第一、第二の部材10,20に分割形成するとともに、これらを締付手段たる締付用ボルト30により連結してなる。
【0019】第一の部材10には、長孔16を有する連結用のフランジと、鋼よりなる板材を断面略U字状を呈する溝状に湾曲させて、吊ボルト2の外径にほぼ沿うと共に、吊ボルト2の側面よりこの吊ボルト2に嵌合するボルト嵌合部12とを設けてある。このボルト嵌合部12には、吊ボルト2のねじ溝2aに係合する小突起を局部的に4つ設けてある。一方、上記第二の部材20には、ねじ孔26を有する連結用のフランジと、振れ止めチャンネル5の側面よりこの振れ止めチャンネル5に嵌合する長尺部材嵌合部たるチャンネル嵌合部22とを設けてある。また、これらボルト嵌合部12とチャンネル嵌合部22とを対向させた状態で、締付用ボルト30を、上記第一の部材10の長孔16に貫通させると共に第二の部材20のねじ孔26に螺合させることにより、これらを互いに近接させるように締め付けることを可能に構成してある。
【0020】ここに、締付用ボルト30は、連結金具を吊ボルト2に取付けた状態において吊ボルト2の長手方向Vに直交する方向Hに配向してある。そして、この締付用ボルト30周りで第一の部材10に対し第二の部材20が角変位可能となっているため、吊ボルト2に対して振れ止めチャンネル5を傾斜状に連結できる。」

(6)「【0025】吊ボルト2の適宜箇所に振れ止めチャンネル5を連結するに際しては、まず、締付用ボルト30を緩めておいてから、ボルト嵌合部12の開口部より吊ボルト2に対してその側面側から第1の部材10を近接させて、ボルト嵌合部12内に吊ボルト2を嵌合させる。次いで、振れ止めチャンネル5を、吊ボルト2に接当させた状態で振れ止めチャンネル5の底部5a側より第二の部材20のチャンネル嵌合部22に嵌合させ、締付用ボルト30を締め付ける。すると、ボルト嵌合部12とチャンネル嵌合部22との間で振れ止めチャンネル5及び吊ボルト2が挟み付けられる。」

(7)「【0027】次に、本発明の別実施例を説明する。本発明における「他の長尺部材」とは、第一実施例に示すような振れ止めチャンネルに限らず、吊ボルト2とほぼ同様の長尺のブレースとして使用される振れ止めボルト5であってもよい。この場合、図8及び図9に示すように、第一の部材10と第二の部材20の形状はほぼ同様となり、チャンネル嵌合部28は長尺ボルトの外径に沿って嵌合するように形成される。かかる構成によれば、連結金具6は、小突起14の食い込みによって、吊ボルト2及び振れ止めボルト5の長手方向に対して夫々移動し難くなる。
【0028】また、上記各実施例において、本発明を上部振れ止め金具に対して実施したが、図1の符号7の位置に示す下部振れ止め金具に対して実施してもよい。この場合、「長尺ボルト」は振れ止めチャンネル5の代わりにブレースとして使用される振れ止めボルトとなり、チャンネル嵌合部に嵌合する「他の長尺部材」は野縁受となる。」

(8)【図9】からは、吊ボルトと、吊ボルト2と交差する振れ止めボルト5を連結金具6で連結している構成が見て取れる。

上記の記載事項及び図示内容を総合し、本件の特許請求の範囲の請求項1の記載ぶりに則って整理すると、甲第4号証には、次の甲4発明が記載されていると認められる。

[甲4発明]
「吊ボルト2と、前記吊ボルト2に対して交差する振れ止めボルト5とを連結する連結金具6であって、
前記吊ボルト2と嵌合するボルト嵌合部12を有する第一の部材10と、
前記第一の部材10に対して角変位可能に連結され、前記振れ止めボルト5と嵌合するチャンネル嵌合部28を有する第二の部材20と、を備え、
締付用ボルト30を締め付けることで、ボルト嵌合部12とチャンネル嵌合部28の間で吊ボルト2及び振れ止めボルト5が挟み付けられる連結金具6。」

4 甲第5号証・甲5発明
原出願日前に日本国内において頒布された甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
(1)「[産業上の利用分野]
本考案は、システム天井等の天井下地の構造に係り、とくに、天井下地に筋違を有するときに、その端部を固定する天井下地筋違用金物に関するものである。」(第2ページ第1?5行)

(2)「従って、本考案によれば、筋違の固着に溶接作業を一切排除することが可能となり、しかも、施工の容易な天井構造を提供するものである。」(第4ページ第17?20行)

(3)「吊りボルト4の下端46は、結合金具47を介して斜設の角度が可変に野縁受3を吊持している。
本考案では、下地筋違6の下端62と野縁受3とは、係着金具10を使用して結合してある。
本考案の係着金具10は、第2図、第3図に示すように、野縁受3を抱持固定する野縁受係止部11と、その上部の筋違係止部12と、それらを回動、傾動自在に軸支して連結する連結部13とからなっている。
野縁受係止部11は、野縁受3のウェブ31とフランジ32に対応する形状の本体部14は、上下のフランジ15の先端縁に、フランジ32に係合するように係止辺を有しており、本体部14の中央部に設けた外方への凸部16には、野縁受3との係着を確保するための止めねじ17が内向きに螺合してあり、上方のフランジ15には、連結部13を固着する貫通孔18を穿設してある。」(第6ページ第2?19行)

(4)「次に、第6図、第7図によって、本考案の係着金物のさらに他の実施例を説明する。この実施例の係着金物210では、野縁受係止部11と連結部13とは第1例と同様であり、筋違係止部12が変更されている。この実施例において、筋違係止部212は、断面を下向きのC字形に曲成して下地筋違6の太さに対応させた本体部219と、その両端部を閉じる部分に形成し、それぞれ貫通孔221を有する軸支部222とからなり、本体部219は下地筋違6の太さに対応してこれを密着して抱持する寸法とし、その両端の開口部の側縁には、第1の実施例と同様に、下地筋違6の下端62部分のねじ溝63に係合して固定するように、複数の爪形の突起223を設ける。」(第9ページ第3?16行)

(5)「第3の実施例の係着金物210では、筋違係止部212を単独に下地筋違6の下端62部分に跨らせたのち、軸支ピン28によって連結部13に結合する点が第1例と異なっている。」(第11ページ第7?10行)

(6)第6図からは、野縁受3と交差する下地筋違6を係着金物210で結合している構成が見て取れる。

上記の記載事項及び図示内容を総合し、本件の特許請求の範囲の請求項1の記載ぶりに則って整理すると、甲第5号証には、次の甲5発明が記載されていると認められる。

[甲5発明]
「吊りボルト4に吊持された野縁受3と、前記野縁受3に対して交差する下地筋違6とを結合する係着金物210であって、
前記野縁受3を抱持固定する野縁受係止部11と、
下地筋違6を抱持する筋違係止部212と、前記野縁受係止部11に対して前記筋違係止部212を回動、傾動自在に軸支して連結する連結部13とを備え、
前記野縁受係止部11が、本体部14を含み、
前記本体部14が、連結部13を固着する貫通孔18を穿設した上方のフランジ15を有し、
前記筋違係止部212が軸支ピン28によって前記連結部13に結合する係着金物210。」

5 甲第6号証・甲6発明
原出願日前に日本国内において頒布された甲第6号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「【請求項7】
天井スラブ・デッキプレートの如き天板部より垂設された吊りボルトに対して長尺ボルトを交差状態に配設し、この交差状態の2本のボルトの交差部分を請求項1?5のいずれかに記載の長尺ボルト交差連結金具を用いて連結する構成であることを特徴とする長尺ボルト交差連結金具。」

(2)「【0001】
本発明は長尺ボルト交差連結金具に関し、詳しくは天井スラブ・デッキプレートの如き天板部より垂設された複数本の吊りボルト同士間に長尺ボルトを交差状態に架渡して連結することにより吊り状態を補強する構成に用いる長尺ボルト交差連結金具に関する。」

(3)「【0008】
特許文献1の技術は、2つの半割抱持部材を接続する1本のボルト・ナットの緊締が緩んでしまうと半割抱持部から長尺ボルトが脱落し易くなるという問題点を有している。
【0009】
特許文献2,3の技術は、凹部に嵌入した長尺ボルトに対して嵌入方向と逆方向に応力が掛かった場合に長尺ボルトが凹部から脱落してしまう場合があるという問題点を有している。更に、特許文献3の技術においては、歪みを許容する弾性部材で形成されているため、吊り状態の更なる補強については不充分であるという問題点を有している。
【0010】
特許文献4の技術は、2本の長尺ボルトの各々を2つの挿通部に対して予め端部から挿通する必要があり、現場での作業性が劣るという問題点を有している。
【0011】
そこで本発明の課題は、2本の交差状態の長尺ボルトの交差部を確実に連結することができ、しかも作業性の良好な長尺ボルト交差連結金具を提供することにある。」

(4)「【0019】
7.天井スラブ・デッキプレートの如き天板部より垂設された吊りボルトに対して長尺ボルトを交差状態に配設し、この交差状態の2本のボルトの交差部分を上記1?5のいずれかに記載の長尺ボルト交差連結金具を用いて連結する構成であることを特徴とする長尺ボルト交差連結金具。」

(5)「【0026】
請求項7に示す発明によれば、吊りボルトとこの吊りボルトに交差する長尺ボルトとの交差部を連結することができ、しかも、取付作業時の作業性が良好である。」

(6)「【0034】
本発明の交差連結金具1は、
板材を断面J字状に折曲げて、長辺部4A、短辺部4B、該長辺部4Aと短辺部4Bとを接続する折曲部4Cとを形成して成る第1J字部材4と、
板材を断面J字状に折曲げて、長辺部5A、短辺部5B、該長辺部5Aと短辺部5Bとを接続する折曲部5Cとを形成して成る第2J字部材5と、を有すると共に、
前記第1J字部材4と第2J字部材5とが、各々のJ字の短辺部4B・5Bが外向きとなると共に各々の長辺部4A・4Bの一部同士を積層させた状態で回動可能に接続されており、
更に、前記第1J字部材4の短辺部4Bと該短辺部4Bと間隔を設けて積層する長辺部4Aの各々には、ボルト7Aを貫通挿通可能な透孔41A・41Bが穿設され、
且つ、前記第2J字部材5の短辺部5Bと該短辺部5Bと間隔を設けて積層する長辺部5Aの各々には、ボルト7Bを貫通挿通可能な透孔51A・51Bが穿設されており、
前記第1J字部材4の長辺部4Aと短辺部4Bとの間で且つ折曲部4Cの内側に前記2本の長尺ボルト3の一方(本実施例では3A)を引掛け挿通した後(図5の(2)参照)、前記長辺部4Aと短辺部4Bの透孔41A・41Bにボルト7Aを貫通挿通し(図5の(5)参照)、該ボルト7Aに対してナット8A締めすることにより引掛け挿通した一方の長尺ボルト3Aの脱落を防止する構成であり、
前記第2J字部材5の長辺部5Aと短辺部5Bとの間で且つ折曲部5Cの内側に前記2本の長尺ボルト3の他方(本実施例では3B)を引掛け挿通した後(図5の(4)参照)、前記長辺部5Aと短辺部5Bの透孔51A・51Bにボルト7Bを貫通挿通し(図5の(5)参照)、該ボルト7Bに対してナット8B締めすること(図5の(6)参照)により引掛け挿通した他方の長尺ボルト3Bの脱落を防止する構成であること、
を具体的構成とするものである。
【0035】
上記構成を有する本発明の交差連結金具1は、2本の長尺ボルト3A・3Bの各々を、第1J字部材4と第2J字部材5の各々の長辺部4A・5Aと短辺部4B・5Bとの間で且つ折曲部4C・5Cの内側に引掛け挿通した後、長辺部4A・5Aと短辺部4B・5Bをボルト7A・7Bを貫通挿通してナット8A・8B締めする構成により、引掛け挿通した長尺ボルト3A・3Bが脱落することがない。従って、2本の長尺ボルト3A・3Bの交差部を確実に連結することができるので、吊りボルト2による吊り状態を更に補強することができる。しかも、取付作業時の作業性が良好である。
【0036】
また、本発明の交差連結金具1は、第1J字部材4と第2J字部材5とが長辺部4A・4Bの一部同士を積層させた状態で回動可能に接続した構成により、2本の長尺ボルト3A・3Bの交差部が様々な交差角度であっても対応することができる。第1J字部材4と第2J字部材5とを接続する回動接続部6は、本実施例では長辺部4Aに形成された透孔42と長辺部5Aに形成された透孔52とに貫通するカシメ手段により回動可能に接続する構成をしているが、本発明はかかる構成に限定されず、ボルト・ナットを用いた構成とすることもできる。」

(7)「【0042】
図1に示す上記実施例では、2本の吊りボルト同士間である1つのスパン間に交差状態に架渡した2本の長尺ボルトの交差部分を連結する構成について説明したが、2本の長尺ボルト同士の連結ではなく、吊りボルトと長尺ボルトとの交差部分を連結する構成に用いることもできる。即ち、図1に示す吊りボルト連結金具9に代えて長尺ボルト交差連結金具1を用いる構成も本発明の範囲内である。
【0043】
尚、本発明の長尺ボルト交差連結金具は、上記実施例の1つのスパン間の2本の長尺ボルトの交差部分に用いる構成、吊りボルトと長尺ボルトの交差部分に用いる構成の他、単に2本の長尺ボルトの交差部分を連結する構成に用いることができる。」

上記の記載事項を総合し、本件の特許請求の範囲の請求項1の記載ぶりに則って整理すると、甲第6号証には、次の甲6発明が記載されていると認められる。

[甲6発明]
「吊りボルトと、前記吊りボルトに対して交差する長尺ボルトとを連結する交差連結金具1であって、
前記吊りボルトの脱落を防止する第1J字部材4と、
前記第1J字部材4に対して回動可能に接続され、かつ、長尺ボルトを引掛け挿通した後脱落を防止する第2J字部材5とを備え、
前記第1J字部材4が、長辺部4Aを含み、
前記第2J字部材5が、長辺部5Aを含み、
前記長辺部4Aと、前記長辺部5Aの各々の一部同士が、積層された状態で回動可能に接続されている交差連結金具1。」

6 甲第7号証・甲7発明
原出願日前に日本国内において頒布された甲第7号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、吊りボルトを極めて合理的且つ安全に振れ止めすることができる吊りボルト用振れ止め金具に関するものである。」

(2)「【0032】
尚、いずれの挟着体1も、2枚の挟着体1の吊りボルトPに接触する部分に挟着突起1Cを設けている(図1参照)。この挟着突起1Cは、吊りボルトPのねじ山に係止する突起で、挟着体1がずれるのを防止する。」

上記の記載事項を総合し、本件の特許請求の範囲の請求項10の記載ぶりに則って整理すると、甲第7号証には、次の甲7発明が記載されていると認められる。

[甲7発明]
「2枚の挟着体1に、吊りボルトPのねじ山に係止する挟着突起1Cを設けている、吊りボルト用振れ止め金具。」

7 甲第8号証
原出願日前に日本国内において頒布された甲第8号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0020】
以下図面の例に従って本発明を更に具体的に説明すれば、Aは、躯体スラブ(図示省略)から下方に突設した吊りボルト5によって吊り支持した天井、機器等の設置物6をワイヤー7で支持してその落下乃至振れを防止するように上記吊ボルト5の長手方向任意位置にワイヤー7の長手方向一端を連結固定自在としたワイヤー連結金具であり、該ワイヤー連結金具Aは、対向一対の挟持金具1と、該挟持金具1を一端で開閉自在に軸支した開閉ヒンジ2を備え、上記対向一対の挟持金具1を、吊ボルト5の半円状の被嵌溝を形成する吊ボルト外径に沿う内径を有する湾曲片14と、該湾曲片14の吊ボルト交差方向一方に突出して面内にボルト挿通孔13を透設したボルトナット締着用の対向片11と、上記湾曲片14の吊ボルト交差方向他方に突出した軸受21をそれぞれ一体に有して形成するとともに上記開閉ヒンジ2をこれら対向一対の挟持金具1の上記軸受21に回動支軸22を配置することによって形成したものとしてあり、本例にあって該ワイヤー連結金具Aは、その上記対向一対の挟持金具1を、それぞれ厚肉鋼板にプレス加工を施して形成したものとしてある。」

8 甲第9号証
原出願日前に日本国内において頒布された甲第9号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「(省略)
[2]振止用全ねじを用意する
1.ボルト間を計測する
2.計測値より50mm短く全ねじをカットする
3.付属の吊用タンを取付ける
[3]振止用全ねじを取付ける
1.ボルトに吊用タンの穴を通す
2.付属のナットで締付け固定する。
3.吊用タンのナットを調整し、テンションをかける
[4]V形金具で振止用全ねじを固定する
1.ボルト・ナットを外し、手前の全ねじに奥からV形金具を掛ける
2.V形金具を手前に起こし奥の全ねじを乗越えさせて全ねじにV形金具を掛ける
3.位置調整後にボルト・ナットを締付け固定する」

9 甲第10号証
原出願日前に日本国内において頒布された甲第10号証の写真1及び図1からは、吊りボルトと、吊りボルトの上下方向の中間位置に対して交差するブレースとを連結した部材が見て取れる。

10 甲第11号証
原出願日前に日本国内において頒布された甲第11号証の写真2.No.8からは、吊りボルトと、吊りボルトの上下方向の中間位置に対して交差するブレースとを連結したブレース金具が見て取れる。

11 甲第12号証
原出願日前に日本国内において頒布された甲第12号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「【0008】
そこで従来では、特許文献2に記載のような1本の吊りボルトに対して1本の長ボルトを連結する振れ止め金具が使用されている。ところが、ボックスの四隅を吊下げる4本の吊りボルトに対して振れ止めをする場合、隣接する吊りボルト相互にそれぞれ交差状に長ボルトを連結するので、吊りボルト1本ごとに2本の長ボルトを連結する必要がある。そうすると、ボックスの四隅を吊下げる4本の吊りボルトに対して合計8本の長ボルトが必要になり、これに伴って合計16個の振れ止め金具を吊りボルトに固定する作業が必要になっていた。このような多数の固定作業は極めて手間がかかる他、特に高所において危険な作業にならざるを得なかった。
【0009】
そこで本発明は、上述の課題を解消すべく創出されたもので、例えば天井吊り形エアコンやファンコイル等のボックス状の軽量機器を吊りボルトで吊下げる場合に、この吊りボルトを極めて合理的且つ安全に振れ止めすることができる吊りボルト用振れ止め金具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、平面矩形状を成した懸吊物の四隅を吊下げる4本の吊りボルトPの側面に夫々装着する一対の挟着体1と、吊りボルトPを間に挟んだ状態で挟着体1の左右両端部を固定する一対の連結ボルト2と、各連結ボルト2に上下揺動自在に連結され、吊りボルトPに対して斜めに配設される長ボルトQを連結せしめる一対の斜め支持体3とで構成された吊りボルト用振れ止め金具であって、各挟着体1の長手中央から該挟着体1が平面直角になるように屈曲し、該挟着体1の各先端方向で夫々隣接する吊りボルトPに対して一対の長ボルトQを斜めに連結するように構成したことにある。」

(2)「【0029】
本発明の主な構成は、挟着体1、連結ボルト2、斜め支持体3を備えている(図3参照)。挟着体1は、吊りボルトPの側面を挟着する一対の金具である。この挟着体1は、長手中央から平面直角になるように屈曲されている(図5参照)。図示例では、2枚の挟着体1の吊りボルトPに接触する部分に挟着突起1Bを設けている。この挟着突起1Bは、吊りボルトPのねじ山に係止して挟着体1がずれるのを防止するものである。
【0030】
連結ボルト2は、挟着体1の左右両端部を貫通する一対のボルトであり、この連結ボルト2を介して挟着体1に斜め支持体3を連結する。図示例の挟着体1には、連結ボルト2の頭部2Aに係止して連結ボルト2の回転を阻止する係止突起1Aを挟着体1の外側面に一対設けている(図4参照)。すなわち、2枚の挟着体1の内側に位置する挟着体1表面に上下一対の係止突起1Aを形成し、この係止突起1Aの間に頭部2Aを挟み込むことで、連結ボルト2の回転を防止するものである。
【0031】
斜め支持体3は、連結ボルト2に上下揺動自在に連結された金具である。屈曲された挟着体1の左右両端部に連結された斜め支持体3には長ボルトQを連結する(図2参照)。そして、この長ボルトQを隣接する吊りボルトPに斜めに固定する。本発明では、この斜め支持体3を介して配設される長ボルトQの先端方向が、挟着体1の両側に隣接する吊りボルトPに対して斜めに連結するように構成している(図1参照)。
【0032】
すなわち、軽量機器Rの四隅を4本の吊りボルトPが懸吊した状態で、いずれか1本の吊りボルトPに挟着体1を取り付けると、挟着体1の左右両端部が隣接する他の吊りボルトPに向くように挟着体1を屈曲している。そして、挟着体1の端部が向いている吊りボルトPに対し、連結ボルト2と斜め支持体3とを介して長ボルトQを連結するものである(図2参照)。」

(3)「【0034】
斜め支持体3においても、次のように構成することが可能である。すなわち、図10に示す斜め支持体3は、挟着体1に連結する帯状の連結片3Aと、該連結片3Aの端部から屈曲縁長されて長ボルトQを連結せしめるネジ止め部3Bとで平面L字形状に形成されている。図11に示す斜め支持体3は、一端に前記連結ボルト2を貫通せしめる貫通孔3Cを備え、他端に斜め支持体3をネジ止めする連結ネジ部3Dを備えたタンバックル状を成したものである。図12に示す斜め支持体3は、平面山形状に形成された連結片3Eと、該連結片3Eの端部から平面L字形状に屈曲されたネジ止め部3Fとで構成され、該連結片3Eに、前記連結ボルト2を固定ナット4ごと挿通せしめるボルト係止孔3Gを形成している。」

(4)【図11】からは、タンバックル状の斜め支持体3が見て取れる。

12 甲第13号証
原出願日前に日本国内において頒布された甲第13号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「【0011】
1本の吊りボルトに対して一箇所毎に二つの連結金具を取付けた場合、二つの連結金具の取付位置は吊りボルトの軸方向にズレるため、各々に取付固定される2本の長尺ボルトも異なる長さに調整しなければならず、余分な手間がかかるだけでなく煩雑であるという不都合が生じている。」

(2)「【0052】
タンバックルを用いた一辺側固定手段8A・他辺側固定手段8Bの構成について下記に詳説する。
【0053】
図4の(6)に符号を付して示すように、一辺側固定手段8Aは、前記一辺部分4A側のボルト6Aが挿通する透孔を有する取付板状部81と、該取付板状部81に対して屈曲部又は折曲部82を介して略直角方向に連設されると共に前記一辺側長尺ボルト3Aの端部を螺合するナット部84が設けられた固定板状部83と、を有して構成され、
他辺側固定手段8Bは、前記他辺部分4B側のボルト6Bが挿通する透孔を有する取付板状部81と、該取付板状部81に対して屈曲部又は折曲部82を介して略直角方向に連設されると共に前記他辺側長尺ボルト3Bの端部を螺合するナット部84が設けられた固定板状部83と、を有して構成され、
前記一辺側固定手段8Aの取付板状部81が重合する2枚構成であり、該2枚の内の一方の取付板状部81の端部に屈曲部又は折曲部82を介して前記固定板状部83の一方の端部が連設されると共に、前記2枚の内の他方の取付板状部81の端部に屈曲部又は折曲部82を介して前記固定板状部83の他方の端部が連設される構成であり、
前記固定板状部83に設けられたナット部84が該固定板状部83に対して回動可能に取り付けられたナット部材である、
構成となっている
【0054】
以上の構成によれば、一辺側固定手段8Aと他辺側固定手段8Bの各々の固定板状部83が、その両端部において2枚の取付板状部81・81に両持ち構成で連設された構成となるので、この固定板状部83のナット部84に螺合取付される一辺側長尺ボルト3Aと他辺側長尺ボルト3Bに大きな荷重や振動等の負荷がかかったとしても、変形・損傷・破断等の発生を著しく抑制することができる。従って、大規模地震等における安全性向上に寄与することができる。そして、一辺側固定手段8Aと他辺側固定手段8Bとして、タンバックルを使用することにより、高い強度の補強をより容易に提供することができる。特に、タンバックルは引張力に対する耐性が高いので地震時や余震時の変形・損傷・破断等が生じるおそれが極めて低い。しかも、回動可能なナットが取付けられたタンバックルを用いることにより、ナットの緩みを著しく抑制することができるので、より高い強度の補強を得ることができる。」

(3)【図2】及び【図4】からは、タンバックルを用いた長尺ボルト3A、3Bの取付けの構造が見て取れる。

13 甲第14号証
(1)原出願日前に日本国内において頒布された甲第14号証(特にP8-27ページ参照)には、クロスロックZタイプFL-Zについて、写真とともに次の事項が記載されている。
ア「吊りボルト1本に対して、両側面の振れ抑制用全ねじボルトを同時固定できる振れ止め支持金具です。」

イ「作業スピードUP! ワンタッチ施工だから工具不要で取付簡単! ボルト・ナット式金具に比べて作業時間が短縮! 簡単3ステップ 1 取り付け位置に合わせ吊りボルトに取り付けます。 2 振れ抑制用全ねじボルトに取り付けます。 3 脱落防止金具を取り付けます。」

ウ「信頼性UP! ボルト・ナット式金具と同等の性能を発揮します。また、ボルト・ナット金具のように震動による緩みや締め忘れもありません!」

(2)甲第14号証(特にP8-28ページ参照)には、FL-X クロスロックXタイプの使用例の写真及び図面が掲載されている。

14 甲第15号証
原出願日前に日本国内において頒布された甲第15号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「【0008】
上記した本願発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)固定部が、固定片の環状部にその軸方向に沿って強度を下げて固定片の吊り部材に対する仮固定を補助する仮固定補助手段(スリットや凹溝等)を備えたことで、工具を使用せずに指で延伸部をつまむだけで固定片を吊り部材に仮固定できる。すなわち、固定片の延伸部を指でつまんで略ハの字に広がる延伸部の開きを抑えることで、吊り部材を簡単に握持し仮固定できるとともにボルト・ナットによる締め付けを簡単に行える。これによって、振り止め要金具の後付け施工を簡易且つ確実に実施できる。
(2)固定部が、環状部へ吊り部材を押圧するための押圧手段を固定片の延伸部内面側に備えることで、吊り部材が固定片の環状部へ押圧されて吊り部材を適正位置に維持できるために、固定片の吊り部材への固定がより確実なものとなる。
(3)取付部が、取付片の本体から折曲する折曲部分に振止部材を挿通するための挿通部として切欠溝を備えることで、振止部材を取付部に後付け施工で取り付けることができる。また、振止部材に予めナットを取り付けておく(螺合しておく)ことができる(前記の特許文献1では振止部材の挿通後でなければ、下側ナットを取り付けることができなかった)。
(4)取付部が、切欠溝の開口側を塞ぐ脱落防止用ワッシャーを備えることで、取付部から振止部材の脱落を簡易且つ確実に防止することができる。
(5)締結孔に締結具を設けた固定部が、ナットによる締め付けに対してボルトの伴回りを防止するための伴回り防止手段を備えることで、ボルトの伴回りを防止し、ナットによる締め付けを確実に行える。
(6)上記(1)?(5)のように、本願発明は、吊り部材と振止部材を簡易且つ確実に連結できるので、耐震補助材として有効に使用できる。」

(2)「【0013】
図3及び図4は、振れ止め用金具10の固定部20の構造を示す説明図である。
まず、図3に示すように、固定部20は、固定片30をC字形に形成された環状部及びその両端から延伸した延伸部で構成して吊り部材80を握持するようにして仮固定する。この時、固定片30の仮固定を容易にするために、固定片30の環状部35にその軸方向に沿って強度を下げて固定片30の吊り部材80に対する仮固定を補助する仮固定補助手段33を備えている。この仮固定補助手段33を備えることで、固定片30の延伸部31,31を指でつまんで略ハの字に広がる延伸部31,31の開きを抑えることで、吊り部材80を簡単に握持し仮固定できる。それととともに、次の締結具70(ボルト71・ナット72)による締め付けを簡単に行える。ここで、仮固定補助手段33には、図示するように固定片30の背の部分にスリット34,34や凹溝38を設けることなどが挙げられる(スリットではなく丸孔でもよいし、スリットを上下に切欠溝のように形成してもよく、要は強度を下げて延伸部をつまみやすくすればよい)。また、締結孔32の外周側には、締結具70をナット72で締め付ける場合に、ボルト71の伴回りを防止するために伴回り防止突起73を設けている。」

15 甲第16号証
(1)原出願日前に日本国内において頒布された甲第16号証(特に第113ページ参照。)には、KYTB3-SM10 SCキープY金具(片側)タンバックルタイプと、KYMK3-S SCキープY金具(片側)丸環タイプについて、写真とともに次の事項が記載されている。
ア「特長1 ツマめば閉じる!ラクラク仮止め! 独自の“スリット構造”で工具を使わずにボルト・ナットの仮付けができます!」

イ「特長2 2連本体くるくる!“SCメモリみえ?る君2連式”を使用すれば、逆ネジ不要で、振れ止め用全ネジの締め込みが可能!」

ウ「特長3 カンタン!タンバックル! タンバックルの採用で締め込みもカンタン!」

(2)甲第16号証(特に第133ページ参照。)には、「MI丸環内ネジ」に関し、写真とともに次の事項が記載されている。
「本製品は外ネジアンカーやボルトに吊配管金具を取り付ける金具です。」

(3)甲第16号証(特に第4ページ及び第113ページ)には、SCキープY金具片側丸環タイプ&タンバックルタイプの使用例の写真が掲載されている。

16 甲第17号証の1?5
それぞれ原出願日前に日本国内において頒布された、甲第17号証の1には「A10321 固定タン 内ねじ」に「丸かん内ねじ」の写真及び図面が、甲第17号証の2には「固定タンバックル(内ネジ)」の写真及び図面が、甲第17号証の3には「固定タンバックル/オネジ/メネジ」に「メネジ」の写真及び図面が、甲第17号証の4には「吊ボルト・吊環」に「吊環」の写真及び図面が、甲第17号証の5には「チャンレールナット ワンタッチ 3型 自在」の写真及び図面が、並びに、「吊ボルト・吊環」に「吊環」の写真及び図面が、記載されている。

17 甲第18号証
原出願日前に日本国内において頒布された甲第18号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「【0028】
〔第1実施形態〕
図1は、構造体の一例であるコンクリート製のスラブSに吊設された複数本の吊りボルト(棒状体の一例)3に、被吊設部材の一例である空調機器1の取付け金具1Aをナット2で取付けるとともに、振れ止め措置対象の二本の吊りボルト3にわたって交差姿勢の振れ止めボルト(棒状体の一例)4を交差連結具Aで係合連結してある振れ止め措置構造を示す。」

(2)「【0032】
他方の連結部材5は、図7に示すように、ボルト3,4の一方に係合保持された一方の連結部材5に対して背中合わせで相対回転自在に枢支連結されているため、一方のボルト3,4及び一方の連結部材5に対する特別な操作が不要で、他方の連結部材5をそれの両係合部6が近接する側に弾性変形操作して、この連結部材5の両係合部6をボルト3,4の他方に対して交差方向から係合させたのち、該連結部材5に加えられていた近接操作力を解除するだけで、他方の連結部材5の弾性復元力で両係合部6を他方の棒状体に係合保持させることができる。」

(3)「【0047】
(7)上述の各実施形態では、空調機器1の吊下げ支持構造を構成する複数本の吊りボルト3とこれの振れ止め措置を講ずる振れ止めボルト4との係止連結構造について説明したが、本発明の技術は棒状体同士を交差姿勢で係合連結するものであれば、あらゆる分野で使用することが可能である。」

18 甲第19号証
原出願日前に日本国内において頒布された甲第19号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「【0004】
特許文献2は、図6に示すものであり、一方の棒状体の二箇所に対して弾性復元力で係合保持可能な係合部6を備え、且つ前記両係合部6を互いに近づける側への弾性変形操作で該係合部6が係合解除される形態に屈曲形成されている一対の連結部材5が、互いに逆向き姿勢となる背中合わせで相対回転自在に枢支連結されている棒状体用交差連結具Aが開示されている。」

(2)「【0014】
図2は、本願発明に係る交差金具の使用状態を示す斜視図であり、図3は、本願発明に係る交差金具の使用状態を示す断面図(縦)である。図2及び図3に示すように、交差金具10は、第1取付部20で垂下された吊部材又は鋼材40と、第2取付部30で振止部材50とそれぞれ別個に係合している(図3に図示するように、吊部材又は鋼材40と振止部材50の間には接点がない。或いは図示省略するが、吊部材又は鋼材40と振止部材50の間には接点があっても各部材間に圧力がほぼ無い状態である。)。従って、吊部材又は鋼材40および振止部材50のスライドは容易であり、交差金具10の位置調整などの調整は可能である。」

(3)「【0017】
本願発明に係る吊り交差金具は、垂下された吊部材又は鋼材に振止部材を交差状に連結するために広く利用できるものであるとともに、振止部材どうしを交差状に連結するためにも広く利用できるものである。」

19 甲第20号証
原出願日前に日本国内において頒布された甲第20号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「【0008】
しかも、吊りボルトに挾持固定金具を取付ける場合、両挾持プレートの両端部間に各連結金具の一端側の連結板部を挟み込み保持した状態でボルト・ナットを締め込み操作して吊りボルトに挾持固定する必要があり、しかも、予め一つのナットが螺合装着されている振れ止め用ボルトを各連結金具の他端側の連結板部の挿通孔に挿通したのち、挿通された振れ止め用ボルトの先端側に他のナットを螺合装着して、両ナットの締付け操作で各連結金具を振れ止め用ボルトに締付け固定する必要があるため、吊りボルトと二本の振れ止め用ボルトとの連結に多くの手間を要していた。」

(2)「【0023】
〔第1実施形態〕
図1は、構造体の一例であるコンクリート製の天井スラブSに垂設された複数本の吊りボルト(棒状体の一例)3に、吊設部材の一例である空調機器1の取付け金具1Aをナット2で取付けてある吊下げ支持構造を示し、振れ止め措置対象の一本の吊りボルト3とこれに対して互いに逆向きの傾斜姿勢で交差する二本の振れ止め用ボルト(棒状体の一例で、一般的にはブレスボルトと称呼されている)4とを本願発明の棒状体用交差連結具Aで係合連結してなる振れ止め措置装置が組付けられている。
【0024】
この振れ止め措置装置には、一本の吊りボルト3とこれに対して傾斜姿勢で交差する一本の振れ止め用ボルト4とを係合連結する別の第2交差連結具Bが設けられている。
【0025】
本願発明の棒状体用交差連結具Aは、図2?図6に示すように、一本の吊りボルト3と二本の振れ止め用ボルト4との合計3本のボルトを係合連結するため、ボルトの最大設定連結数と同数の係合部7を備え、且つ、両端部を互いに近づける側に弾性変形操作可能な形態に屈曲形成されている三つの金属製の第1連結部材5A?第3連結部材5Cが、積層状態で相対回転自在に枢支連結手段の一例であるリベット6にて枢支連結されているとともに、前記各連結部材5A?5Cの係合部7は、係合対象のボルト3,4に対応する向き姿勢で係脱可能に構成されている。
【0026】
三つの第1連結部材5A?第3連結部材5Cのうち、枢支軸芯方向(回転軸芯方向)の一端側に位置する一つの第1連結部材5Aと他の二つの第2・第3連結部材5B,5C(以下、枢支軸芯方向の中央側に位置するものを第2連結部材5Bとし、枢支軸芯方向の他端側に位置するものを第3連結部材5Cとして記載する)とは、背中合わせ状態で枢着されている。
【0027】
三つの第1連結部材5A?第3連結部材5Cは、図4、図5に示すように、リベット6に対する枢支連結孔5aを貫通形成してある中央板部5bと、これに対して交差する傾斜姿勢で該中央板部5bの両端から同一側に延出される傾斜板部5dと、該両傾斜板部5dの先端側に延出される操作板部5eを備えた帯板状のバネ板部材から構成されている。」

20 甲第21号証
原出願日前に日本国内において頒布された甲第21号証(第42ページ参照。)には、次の図面が記載されている。




21 甲第22号証の1
原出願日前に日本国内において頒布された甲第22号証の1には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0037】
前記振れ止めワイヤー連結部材4は、図2、図3に示すように、平面視略薄コの字状の本体部材5と、この本体部材5を挟み込む状態で本体部材5を締め付け操作する締め付け部材6(締め付け手段の一例)が主要構成として備えられている。
【0038】
前記本体部材5は、部材基端側に形成された平面視Cの字状のボルト挟着凹部5A(吊りボルト1に対する取り付け部の一例)と、このボルト挟着凹部5Aから部材先端側に延びる一対の第1、第2ワイヤー挟着片部5a、5bからなるワイヤー挟着部5B(振れ止めワイヤーWを緊張状態で保持するワイヤー保持部の一例)とから構成されている。」

22 甲第22号証の2
原出願日前に日本国内において頒布された甲第22号証の2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0032】
〔第1実施形態〕
図1は、吊設部材の一例である空調機器1の振れ止め措置構造を示し、固定部(構造体)の一例であるコンクリート製の天井スラブSに垂設された複数本(当該実施形態では4本)の吊りボルト(吊下げ棒状体の一例)2に、空調機器1の取付け金具1Aをナット3で取付けるとともに、振れ止め措置対象となる全ての吊りボルト2の下端側部位2aと天井スラブSにおける各吊りボルト2の基部2bから外方の側方に偏倚した複数(4箇所)の固定部位Sa、換言すれば、天井スラブSにおける空調機器1の上面に対面する領域Sbから外方側に離間する固定部位Saとの間に振れ止め措置装置Aが架設されている。
【0033】
各振れ止め措置装置Aには、吊りボルト2の下端側部に挾持固定される挾持固定部材4と、この挾持固定部材4の端部にボルト5・ナット6で連結される金属製の下側連結部材7と、天井スラブSの固定部位Saにアンカーボルト8で固定される金属製の上側連結部材9と、下側連結部材7と上側連結部材9とに連結される振れ止め棒状体の一例である振れ止めボルト10とが備えられている。
【0034】
そして、図2?図4に示すように、各振れ止め措置装置Aの下側連結部材7と振れ止めボルト10との下側連結部には、振れ止めボルト10の圧縮方向(図2の矢印イ方向)の外力による振れ止めボルト10と下側連結部材7との相対移動を許容する融通Fが設けられ、この融通Fによる振れ止めボルト10と下側連結部材7との相対移動を一定範囲内に規制する相対移動範囲制限手段Rが設けられている。
【0035】
また、各振れ止め措置装置Aの上側連結部材9と振れ止めボルト10との上側連結部においては、この上側連結部材9と振れ止めボルト10とが相対移動不能な状態で連結されている。
【0036】
各振れ止め措置装置Aの挾持固定部材4は、吊りボルト2を挾持可能な状態まで縮径変形可能な横断面形状が略「C」の字状の筒状挾持部4Aと、この筒状挾持部4Aの周方向両端部から径方向外方側に延出される一対の連結板部4Bとを備え、この両連結板部4Bには、下側連結部材7をボルト5・ナット6で固定連結するためのボルト挿通用の第1連結孔4aが形成されている。
【0037】
各挾持固定部材4の筒状挾持部4Aは、ボルト5・ナット6の締付け操作による両連結板部4Bの近接移動に伴って縮径し、吊りボルト2の外周に挾持固定される。
【0038】
尚、各挾持固定部材4の筒状挾持部4Aの内周面に、吊りボルト2の谷部に係合する突起部を形成してもよい。」

23 甲第22号証の3
原出願日前に日本国内において頒布された甲第22号証の3には「吊りボルト振れ止め金具」(第109ページ)と、「長穴付きアングル用中間支持金具」(第157ページ)の写真及び図面が記載されており、これらの図面からは、吊りボルトを金具で包むように保持する構成が見て取れる。

24 甲第23号証
原出願日前に日本国内において頒布された甲第23号証(第112ページ)には、「ブレース取付金具」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「1.既設の吊りボルトに後付けで施工できます。」

(2)「2.ブレース材のほか、全ねじボルトも施工できます。」

25 甲第24号証
原出願日前に日本国内において頒布された甲第24号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、主に、ケーブルラック、ダクト等を懸吊する吊りボルトの振れ止めに使用するもので、特に、後付けで三方向の斜め支持ボルトに接続が可能な吊りボルト用振れ止め金具に関する。」

(2)「【0028】
いずれの斜め支持体30も、固定板10の左右両端部を貫通する左右一対の固定ボルト1と固定ナット1Aで予め固定するように構成している(図5、図11参照)。したがって、吊りボルトPに固定板10を連結する際は、一対の斜め支持体30を固定した固定板10を装着する作業となる(図6参照)。」

(3)「【0034】
このように、本発明では三方向の斜め支持ボルトQに連結することが可能である。したがって、状況に応じて三方向の斜め支持ボルトQから適数本の斜め支持ボルトQを選択することも可能になる。すなわち、図8は一方向の斜め支持ボルトQに連結した状態を示し、図9は固定板10の両端から二方向の斜め支持ボルトQに連結した状態を示す。図10は固定板10とL形金具20との直交する二方向の斜め支持ボルトQに連結した状態を示している。このように、一つの振れ止め金具で、複数の連結状態を選択することが可能になる。」

第5 当審の判断
1 無効理由1(本件発明1、2及び6?9)について
(1)甲3発明を副引用発明とする場合について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「吊り下げ用全ネジ」は、本件発明1の「第一棒状体」に相当し、以下同様に
「振れ防止用全ネジ」は「第二棒状体」に、
「空調機器用振れ止め金具」は「交差連結具」に、
「本体金具」は「第一保持部」に、
「サイド金具」は「第二保持部」に、
「板部」は「ベース板部」に、
「取付部」は「取付基部」に、
「任意の角度で調整可能」であることは「相対変位可能」であることに、
それぞれ相当する。

また、甲2発明の「一対の前記サイド金具の一方が、対応する前記振れ防止用全ネジをサイド金具に掛けた後、専用ワッシャーを挿入し、上下ダブルナットを締め込んで、当該振れ防止用全ネジを保持するとともに、一対の前記取付部の一方に任意の角度で調整可能に連結され、
一対の前記サイド金具の他方が、対応する前記振れ防止用全ネジをサイド金具に掛けた後、専用ワッシャーを挿入し、上下ダブルナットを締め込んで、当該振れ防止用全ネジを保持するとともに、一対の前記取付部の他方に任意の角度で調整可能に連結されている」構成と、
本件発明1の「一対の前記第二保持部の一方が、対応する前記第二棒状体に直交する方向に沿って締結される連結ボルトを用いて当該第二棒状体をその軸方向に沿って挟み込んで保持するとともに、一対の前記取付基部の一方に相対変位可能に連結され、
一対の前記第二保持部の他方が、対応する前記第二棒状体に直交する方向に沿って締結される連結ボルトを用いて当該第二棒状体をその軸方向に沿って挟み込んで保持するとともに、一対の前記取付基部の他方に相対変位可能に連結されている」構成とは、
「一対の前記第二保持部の一方が、対応する前記第二棒状体を保持するとともに、一対の前記取付基部の一方に相対変位可能に連結され、
一対の前記第二保持部の他方が、対応する前記第二棒状体を保持するとともに、一対の前記取付基部の他方に相対変位可能に連結されている」構成の限りにおいて共通する。

したがって、本件発明1と甲2発明とは、次の一致点1で一致し、相違点1で相違する。
[一致点1]
「第一棒状体と、前記第一棒状体に対してそれぞれ交差する2本の第二棒状体とを連結する交差連結具であって、
前記第一棒状体を保持する第一保持部と、
前記第二棒状体をそれぞれ保持する一対の第二保持部と、を備え、
前記第一保持部が、前記第一棒状体の保持位置に対して板面に沿う方向の両側に設けられた一対の取付基部を有するベース板部を含み、
一対の前記第二保持部の一方が、対応する前記第二棒状体を保持するとともに、一対の前記取付基部の一方に相対変位可能に連結され、
一対の前記第二保持部の他方が、対応する前記第二棒状体を保持するとともに、一対の前記取付基部の他方に相対変位可能に連結されている交差連結具。」

[相違点1]
本件発明1の「第二保持部」は、「第二棒状体に直交する方向に沿って締結される連結ボルトを用いて当該第二棒状体をその軸方向に沿って挟み込んで保持する」構成であるのに対し、
甲2発明の「サイド金具」は、「対応する前記振れ防止用全ネジをサイド金具に掛けた後、専用ワッシャーを挿入し、上下ダブルナットを締め込んで、当該振れ防止用全ネジを保持する」構成である点。

(イ)判断
上記相違点1について検討する。
a 適用の動機付けについて
甲2発明の「サイド金具」は、「振れ防止用全ネジを保持する」ものであるが、甲3発明の「挟着体1」は「吊りボルトPを挟持固定する」ものであって、仮に甲3発明の「挟着体1」が、甲第10号証や甲第11号証に示されたものと同様に「吊りボルトP」の上下方向の中間位置に固定されるものであったとしても、本件発明1の「第二棒状体」に相当する甲2発明の「振れ防止用全ネジ」と、本件発明1の「第一棒状体」に相当する甲3発明の「吊りボルトP」とは、求められる機能や施工の際の組立順序は異なるから、甲2発明の「振れ防止用全ネジ」を固定する「サイド金具」と、甲3発明の「挟着体1」とは、機能ないし作用を異にするものであり、甲2発明の「サイド金具」を、甲3発明の「挟着体1」に置換する動機付けはない。

また、甲3発明の「長ボルトQ」及び「斜め支持体3」は、それぞれ、甲2発明の「振れ防止用全ネジ」及び「サイド金具」に相当するといえるものの、甲3発明の「斜め支持体3」は、「長ボルトQを挿通孔3Bに挿通して一対の固定ナット5で連結する」構成(段落【0021】参照。)であって、甲2発明の「サイド金具」の構成と相違しないので、甲2発明の「サイド金具」に甲3発明の「斜め支持体3」を適用しても、甲2発明のままでしかなく、甲2発明に甲3発明の「斜め支持体3」を適用する動機付けはない。

b 構成の充足性について
甲3発明の「挟着体1」のみを抽出、適用することは恣意的といえ、その動機付けは上記aのとおり、あるとはいえないので、甲3発明の構成を甲2発明に適用するときには、甲3発明の全体の構成を甲2発明に適用することとなる。
そうすると、甲3発明の吊りボルトPに装着される「挟着体1」及び長ボルトQに連結される「斜め支持体3」を、それぞれ甲2発明の吊り下げ用全ネジを保持する「本体金具」及び振れ防止用全ネジを保持する「サイド金具」に適用することとなり、振れ防止用全ネジあるいは長ボルトQを「挟み込む」構成を有しないこととなる。
したがって、甲3発明の構成を甲2発明に適用しても、上記相違点1に係る本件発明1の「第二保持部」の構成に至らない。

c 発明の効果について
本件発明1は、「2つの第二保持部がいずれも対応する第二棒状体を挟み込んで保持するので、その保持のための保持操作が容易である。例えば従来仕様の交差連結具のように固定片の孔部に第二棒状体を挿通させる必要がなく、第二棒状体が長い場合であっても、外周側からその第二棒状体を容易に挟み込んで保持することができる。また、それぞれの第二保持部は、いずれも対応する第二棒状体をその軸方向に沿って挟み込むので、仮保持状態で対応する第二棒状体の軸方向に沿って移動させることができ、各第二保持部の位置調整も容易である。従って、第一棒状体とそれに対して交差する2本の第二棒状体とを相互に連結固定するための連結操作を容易に行うことができる。」(本件特許の明細書の段落【0008】参照。)ものと認められる。
これに対し、甲2発明、甲3発明のいずれも、「2本の振れ防止用全ネジ」や2本の「長ボルトQ」が長い場合でも外周側から挟み込んで保持することを可能にする発明でもなければ、「2本の振れ防止用全ネジ」や2本の「長ボルトQ」を軸方向に沿って移動し、位置調整を容易にする発明でもない。
そうであれば、本件発明1の、上述のような位置調整や連結操作の容易性に関する効果は、甲2発明や甲3発明から当業者が予測し得たものとはいえない。

d 請求人の主張について
(a)甲第8号証について
請求人は、「なお、本件特許発明1の構成要件E1及びF1「第二保持部」は、(省略)これを2部材で構成することも可能であり(甲第8号証:特開2013-245688号公報の図5及び図6を参照)、構成要件E1及びF1「第二保持部」が2部材で第二棒状体を挟み込んで保持することが含まれるとしてもそれによって上記判断が否定されることはない。」(審判請求書第12ページ第28?34行)とし、副引用発明1(審決注:「甲3発明」を指す。)の「挟持体1」を、甲第8号証の挟持金具1のように2部材とし、主引用発明(審決注:「甲2発明」を指す。)に適用することは、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(当業者)が容易に想到し得るものである旨の主張をしている。
しかしながら、甲第8号証の挟持金具1は、甲3発明の「挟着体1」と同様に、吊りボルトを保持する部材であり、吊りボルトは甲2発明の「振れ防止用全ネジ」に相当する部材ではないから、前記挟持金具1は、当業者といえども、容易に甲2発明の「振れ防止用全ネジ」を保持する「サイド金具」と置き換えられるものではない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(b)上下ダブルナットで締め付けることについて
口頭審理陳述要領書において、請求人は、「後者については、?『上下ダブルナットで締め付けること』が課題であったことを理解できる。」と主張している。(第9ページ第3?5行参照)。
また、請求人は、甲2発明も甲3発明も、棒状体をダブルナットで締め込む構成に共通の課題を有していること、さらに、甲第20号証を示し、前記共通の課題は当該技術分野で周知の課題であるとし、さらにまた、甲第21号証を示し、棒状体からの外れという共通の課題も有していることも主張している(第12ページ第1行?第13ページ第8行)。
しかしながら、甲第2号証には、上下ダブルナットの両方を振れ防止用全ネジに取り付けてあっても金具を後付けできることが記載されているに留まり、上下ダブルナットで締め付けることを課題として示唆するような記載はない。
また、甲第3号証にも、上下ダブルナットを締め込むことによる課題についての記載はない。
さらにまた、甲第20号証は、棒状体をダブルナットで締め込む課題を、バネの弾性を利用した金具で解決することを示すものに過ぎず、また、甲第21号証は、甲2発明とは別の発明の対策例として甲3発明と同様の構成のものが示されているに過ぎない。
したがって、請求人の主張は、採用できない。

(c)第二棒状体の脱落防止について
口頭審理陳述要領書において、請求人は、甲2発明と同様のサイド金具を使用した甲第15号証及び甲第3号証の記載を引用し、甲2発明の課題と甲3発明の課題が共通する旨の主張をしている(第9ページ第6?20行)が、引用された甲第3号証の記載は、振れ止め金具を吊りボルトP(第一棒状体)に後付けすることに伴う「確実な固定力」に関するものであり、長ボルトQ(第二棒状体)の脱落防止等に関するものとは認められないから、請求人の主張は採用できない。

(d)第一棒状体と第二棒状体について
口頭審理陳述要領書において、請求人は、甲第2号証、甲第12号証、甲第13号証及び甲第16号証のタンバックルの周知例、甲第2号証、甲第16号証、甲第17号証の内ネジを有する丸環の周知例、並びに、甲第18号証及び甲第19号証のバネの弾性を利用した金具の周知例を示し、同じ部材を、第二棒状体を取り付けるために使用する場合と、第一棒状体を取り付けるために使用する場合がよくあること(第9ページ第24行?第11ページ末行及び第12ページ図8)とし、第二棒状体と第一棒状体とを分ける必要は無い旨主張している。
しかしながら、吊り下げ用全ネジに対して振れ防止用全ネジを後付けで交差させて結合する交差連結具において、吊り下げ用全ネジと振れ防止用全ネジを、ともにタンバックルで結合することや、内ネジを有する丸環で結合することは周知といえず、甲2発明において、振れ防止用全ネジ(第二棒状体)を後付けで保持するサイド金具と、吊り下げ用全ネジ(第一棒状体)を保持する本体金具とは、技術的に分けて把握せざるを得ない。
そして、吊りボルトに対してそれぞれ交差する振れ抑制用全ねじボルトを連結する交差連結具において、同じ金具を、第二棒状体を取り付けるために使用するとともに、第一棒状体を取り付けるために使用するものとして、甲第14号証(P8-27ページ)及び甲第18号証?甲第20号証の、バネの弾性を利用した金具の周知例が示されていても、それらの周知例からは、バネの弾性を利用した金具であれば、第二棒状体と第一棒状体とを分ける必要は無いことが把握できるに留まる。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(e)標準部材について
口頭審理陳述要領書において、請求人は、甲2発明のサイド金具も、甲3発明の挟着体1も、標準部材(定番部材)であったことを勘案すれば、第一棒状体で使用されていた挟着体1を、第二棒状体で使用することは当業者にとって設計的事項である旨主張している(第13ページ第9行?第14ページ第4行)。
しかしながら、甲3発明の挟着体1と同様の構成の金具が甲第15号証及び甲第22号証の1?3に記載されており、甲第23号証及び甲第24号証にも甲3発明の挟着体1と同様の構成の金具が記載されているものの、これらの金具は全て吊りボルト(吊り下げ用全ネジ・第一棒状体)で使用されるものであり、振れ防止用全ネジ(第二棒状体)で使用する標準部材とは認められないので、請求人の主張は採用できない。

e 小括
したがって、本件発明1は、甲2発明及び甲3発明並びに甲第8号証及び甲第10?24号証に記載された事項を組み合わせることによって当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

イ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「吊り下げ用全ネジ」は、本件発明2の「第一棒状体」に相当し、以下同様に
「振れ防止用全ネジ」は「第二棒状体」に、
「空調機器用振れ止め金具」は「交差連結具」に、
「本体金具」は「第一保持部」に、
「サイド金具」は「第二保持部」に、
「板部」は「ベース板部」に、
「取付部」は「取付基部」に、
「任意の角度で調整可能」であることは「相対変位可能」であることに、
それぞれ相当する。

そして、甲2発明の「一対の前記サイド金具の一方が、対応する前記振れ防止用全ネジをサイド金具に掛けた後、専用ワッシャーを挿入し、上下ダブルナットを締め込んで、当該振れ防止用全ネジを保持するとともに、一対の前記取付部の一方に任意の角度で調整可能に連結され、
一対の前記サイド金具の他方が、対応する前記振れ防止用全ネジをサイド金具に掛けた後、専用ワッシャーを挿入し、上下ダブルナットを締め込んで、当該振れ防止用全ネジを保持するとともに、一対の前記取付部の他方に任意の角度で調整可能に連結されている」構成と、
本件発明2の「一対の前記第二保持部の一方が、対応する前記第二棒状体を当該第二棒状体の軸方向に沿って面で押さえる状態で挟み込んで保持するとともに、一対の前記取付基部の一方に相対変位可能に連結され、
一対の前記第二保持部の他方が、対応する前記第二棒状体を当該第二棒状体の軸方向に沿って面で押さえる状態で挟み込んで保持するとともに、一対の前記取付基部の他方に相対変位可能に連結されている」構成とは、
「一対の前記第二保持部の一方が、対応する前記第二棒状体を保持するとともに、一対の前記取付基部の一方に相対変位可能に連結され、
一対の前記第二保持部の他方が、対応する前記第二棒状体を保持するとともに、一対の前記取付基部の他方に相対変位可能に連結されている」構成の限りにおいて共通する。

したがって、本件発明2と甲2発明とは、次の一致点2で一致し、相違点2で相違する。
[一致点2]
「第一棒状体と、前記第一棒状体に対してそれぞれ交差する2本の第二棒状体とを連結する交差連結具であって、
前記第一棒状体を保持する第一保持部と、
前記第二棒状体をそれぞれ保持する一対の第二保持部と、を備え、
前記第一保持部が、前記第一棒状体の保持位置に対して板面に沿う方向の両側に設けられた一対の取付基部を有するベース板部を含み、
一対の前記第二保持部の一方が、対応する前記第二棒状体を保持するとともに、一対の前記取付基部の一方に相対変位可能に連結され、
一対の前記第二保持部の他方が、対応する前記第二棒状体を保持するとともに、一対の前記取付基部の他方に相対変位可能に連結されている交差連結具。」

[相違点2]
本件発明2の「第二保持部」は、「第二棒状体の軸方向に沿って面で押さえる状態で挟み込んで保持する」構成であるのに対し、
甲2発明の「サイド金具」は、「対応する前記振れ防止用全ネジをサイド金具に掛けた後、専用ワッシャーを挿入し、上下ダブルナットを締め込んで、当該振れ防止用全ネジを保持する」構成である点。

(イ)判断
上記相違点2について検討する。
a 適用の動機付けについて
上記ア(イ)aで述べたとおりであるから、甲2発明の「吊りボルトP」を固定する「サイド金具」を、甲3発明の「挟着体1」に置換する動機付けはなく、また、甲2発明に甲3発明の「斜め支持体3」を適用する動機付けはない。

b 構成の充足性について
上記ア(イ)b で述べたと同様に、甲3発明の構成を甲2発明に適用するときには、甲3発明の全体の構成を甲2発明に適用することとなり、甲3発明の吊りボルトPに装着される「挟着体1」及び長ボルトQに連結される「斜め支持体3」を、それぞれ甲2発明の吊り下げ用全ネジを保持する「本体金具」及び振れ防止用全ネジを保持する「サイド金具」に適用することとなり、振れ防止用全ネジあるいは長ボルトQを「挟み込む」構成を有しないこととなるから、上記相違点2に係る本件発明2の「第二保持部」の構成に至らない。

c 発明の効果について
本件発明2は、「2つの第二保持部がいずれも対応する第二棒状体を挟み込んで保持するので、その保持のための保持操作が容易である。例えば従来仕様の交差連結具のように固定片の孔部に第二棒状体を挿通させる必要がなく、第二棒状体が長い場合であっても、外周側からその第二棒状体を容易に挟み込んで保持することができる。また、それぞれの第二保持部は、いずれも対応する第二棒状体をその軸方向に沿って挟み込むので、仮保持状態で対応する第二棒状体の軸方向に沿って移動させることができ、各第二保持部の位置調整も容易である。従って、第一棒状体とそれに対して交差する2本の第二棒状体とを相互に連結固定するための連結操作を容易に行うことができる。」(本件特許の明細書の段落【0008】参照。)ものと認められる。
これに対し、甲2発明、甲3発明のいずれも、「2本の振れ防止用全ネジ」や2本の「長ボルトQ」が長い場合でも外周側から挟み込んで保持することを可能にする発明でもなければ、「2本の振れ防止用全ネジ」や2本の「長ボルトQ」を軸方向に沿って移動し、位置調整を容易にする発明でもない。
そうであれば、本件発明2の、上述のような位置調整や連結操作の容易性に関する効果は、甲2発明や甲3発明から当業者が予測し得たものとはいえない。

d 小括
上記a?cに加えて、上記ア(イ)dで述べたと同様のことが本件発明2についてもいえるので、本件発明2は、甲2発明及び甲3発明並びに甲第8号証及び甲第10?24号証に記載された事項を組み合わせることによって当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

ウ 本件発明6?9について
本件発明6?9は、本件発明1又は本件発明2の構成を全て含む発明である。
したがって、上記ア又はイと同様の理由で、本件発明6?9は、甲2発明及び甲3発明並びに甲第8号証及び甲第10?24号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとは認められない。

エ 甲3発明を副引用発明とする場合についてのまとめ
本件発明1、2及び6?9は、甲2発明及び甲3発明並びに甲第8号証及び甲第10?24号証に記載された事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(2)甲4発明を副引用発明とする場合について
ア 本件発明1について
(ア)対比
上記(1)ア(ア)のとおりであるから、本件発明1と甲2発明とは、上記のとおりの一致点1及び相違点1を有する。

(イ)判断
上記相違点1について検討する。
a 適用の動機付けについて
甲2発明の「サイド金具」は、「振れ防止用全ネジを保持する」ものであるのに対し、これと置換することを請求人が主張する(審判請求書第15ページ下から3行?第16ページ第3行参照。)甲4発明の「第二の部材20」は「振れ止めボルト5と嵌合するチャンネル嵌合部28」を有し、「第一の部材10」の「ボルト嵌合部12」との間で「吊ボルト2及び振れ止めボルト5が挟み付けられる」ものであって、甲2発明の「サイド金具」と、甲4発明の「第二の部材20」とは、機能ないし作用を異にするものであり、甲2発明の「サイド金具」を、甲4発明の「第二の部材20」と置換する動機付けはない。
なお、甲2発明の「サイド金具」と、甲4発明の「連結金具6」とを置換するとしても、同様の理由により、その動機付けはない。

b 構成の充足性について
甲4発明の「第二の部材20」は、「第一の部材10」との間で「吊りボルト2及び振れ止めボルト5を挟み付け」る構成であるから、第二の部材20自体で、振れ止めボルト5を挟み込む構成を有しない。
したがって、甲2発明に甲4発明を適用したとしても、上記相違点1に係る本件発明1の「第二保持部」の構成に至らない。

c 発明の効果について
甲4発明は、吊りボルト2と、2本の「振れ止めボルト5」とを連結する発明ではないから、甲2発明、甲4発明のいずれも、「2本の振れ防止用全ネジ」や2本の「振れ止めボルト5」が長い場合でも外周側から挟み込んで保持することを可能にする発明でもなければ、「2本の振れ防止用全ネジ」や2本の「長ボルトQ」を軸方向に沿って移動し、位置調整を容易にする発明でもない。
したがって、上記(1)ア(イ)cで述べた本件発明1の位置調整や連結操作の容易性に関する効果は、甲2発明や甲4発明から当業者が予測し得たものとはいえない。

d 請求人の主張について
(a)本件発明の明細書の記載について
請求人は、審判請求書において、本件特許の明細書の段落【0069】の記載事項や【図10】の図示内容を例示し「すなわち、コーナー部で使用される本件特許発明1の第二保持部が、2本の棒状体の交差部の連結具としても用いることができるということである。そうであれば、その逆もしかりで、2本交差用の連結具として用いられる副引用発明2(審決注:「甲4発明」を指す。)の『第二の部材20』(振れ止めボルト5を挟み込んで保持する部材)を主引用発明の第二保持部として適用することは可能であるといわざるを得ない。」(第13ページ第10?15行)と主張している。
しかしながら、本件特許の明細書(特に段落【0069】)の記載事項や図面(特に【図10】)の図示内容は、本件特許の原出願日前に公知であったわけでなく、また、コーナー部で使用される振れ止めボルト保持具と、2本の棒状体の交差部の連結具とが相互に利用可能であることを示す証拠もないので、請求人の主張は採用できない。
そもそも、甲4発明の「第二の部材20」は、振れ止めボルト5を挟み込んで保持する構成を有しない(上記(イ)b参照。)。

(b)課題解決について
請求人は、口頭審理陳述要領書において、甲第4号証の段落【0004】及び【0006】の記載に基づいて、甲4発明の課題は、甲2発明の課題である「[1]第二棒状体を容易(簡便)に取り付けること(施工性・作業性)」の具体的内容である「上下ダブルナットで締め付けること」による作業の困難性と共通する旨主張している。(特に第15ページ下から5行?第16ページ第11行参照)
しかしながら、「上下ダブルナットで締め付けること」による作業の困難性が課題である旨の事項は、甲第2号証にも、甲第4号証(特に第3 3(2)及び(3)参照。)にも、記載も示唆もされておらず、請求人の主張は根拠がない。

e 小括
したがって、本件発明1は、甲2発明及び甲4発明を組み合わせることによって当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

イ 本件発明2について
(ア)対比
上記(1)イ(ア)のとおりであるから、本件発明2と甲2発明とは、上記のとおりの一致点2及び相違点2を有する。

(イ)判断
上記相違点2について検討する。
a 適用の動機付けについて
上記ア(イ)aで述べたとおりであるから、甲2発明の「サイド金具」を、甲4発明の「第二の部材20」と置換する動機付けはない。

b 構成の充足性について
上記ア(イ)bで述べたと同様の理由により、甲2発明に、甲4発明を適用したとしても、上記相違点2に係る本件発明2の「第二保持部」の構成に至らない。

c 発明の効果について
上記ア(イ)cで述べたと同様に、本件発明2は、「第二棒状体が長い場合であっても、外周側からその第二棒状体を容易に挟み込んで保持することができる」ものであり、また「軸方向に沿って移動させることができ、各第二保持部の位置調整も容易である」ものと認められる。
これに対し、甲4発明は、吊りボルト2と、2本の「振れ止めボルト5」とを連結する発明ではなく、甲2発明、甲4発明のいずれも、「2本の振れ防止用全ネジ」や2本の「振れ止めボルト5」が長い場合でも外周側から挟み込んで保持することを可能にする発明でもなければ、「2本の振れ防止用全ネジ」や2本の「長ボルトQ」を軸方向に沿って移動し、位置調整を容易にする発明でもなので、本件発明2の、先に述べた位置調整や連結操作の容易性に関する効果は、甲2発明や甲4発明から当業者が予測し得たものとはいえない。

d 小括
上記a?cに加えて、上記ア(イ)dで述べたと同様のことが本件発明2についてもいえるので、本件発明2は、甲2発明及び甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

ウ 本件発明6?9について
本件発明6?9は、本件発明1又は本件発明2の構成を全て含む発明である。
したがって、上記ア又はイと同様の理由で、本件発明6?9は、甲2発明及び甲4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとは認められない。

エ 甲4発明を副引用発明とする場合についてのまとめ
本件発明1、2及び6?9は、甲2発明及び甲4発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(3)甲5発明を副引用発明とする場合について
ア 本件発明1について
(ア)対比
上記(1)ア(ア)のとおりであるから、本件発明1と甲2発明とは、上記のとおりの一致点1及び相違点1を有する。

(イ)判断
上記相違点1について検討する。
a 適用の動機付けについて
甲2発明の「サイド金具」は、「吊り下げ用全ネジ」と「振れ防止用全ネジ」を交差させて連結しブレース面を形成する「空調機器用振れ止め金具」の一部であるが、甲5発明の「筋違係止部212」は「野縁受係止部11に対して」「回動、傾動自在に軸支」されるものであって、吊りボルト4と下地筋違6を交差させて連結する金具の一部ではない。
また、吊りボルト4と野縁受係止部11という、金具が結合する対象の違いに着目しなくとも、甲5発明の筋違係止部212は、甲第5号証の第2実施例の筋違係止部112のように単体で回動、傾動自在に軸支されるものではなく、「連結部13」と結合することで回動、傾動自在に軸支されるものであり、単体で取付基部に連結される甲2発明のサイド金具とは、対応する機能が異なる。
したがって、甲2発明の「サイド金具」と、甲5発明の「筋違係止部212」とは、機能ないし作用を異にするものであり、甲2発明の「サイド金具」を、甲5発明の「筋違係止部212」と置換する動機付けはない。

b 構成の充足性について
甲5発明の「筋違係止部212」は、「連結部13」に結合するものであり、「連結部13」は、「野縁受係止部11」に固着されるものであるから、「連結部13」を除いた「筋違係止部212」を抽出し、甲2発明の「サイド金具」と置換することは恣意的といえ、その動機付けは上記aのとおり、あるとはいえないので、甲5発明の構成を甲2発明に適用するときには、甲5発明の全体の構成を甲2発明に適用することとなる。
そうすると、甲5発明の構成の適用により、甲2発明は、振れ防止用全ネジ(本件発明1の第二棒状体に相当)を、吊りボルト4(本件発明1の第一棒状体に相当)に吊持ちされた野縁受3に連結する構成を有することとなるものの、甲2発明の「サイド金具」を、振れ防止用全ネジを「挟み込む」構成の金具と置き換えて、吊り下げ用全ネジに対して2本の振れ防止用全ネジとを連結する構成とはならない。
したがって、甲5発明の構成を甲2発明に適用しても、上記相違点1に係る本件発明1の構成に至らない。

c 発明の効果について
甲5発明は、吊りボルト4と、2本の「下地筋違6」とを連結する発明ではないから、甲2発明、甲5発明のいずれも、「2本の振れ防止用全ネジ」や2本の「下地筋違6」が長い場合でも外周側から挟み込んで保持することを可能にする発明でもなければ、「2本の振れ防止用全ネジ」や2本の「下地筋違6」を軸方向に沿って移動し、位置調整を容易にする発明でもない。
したがって、上記(1)ア(イ)cで述べた本件発明1の位置調整や連結操作の容易性に関する効果は、甲2発明や甲5発明から当業者が予測し得たものとはいえない。

d 請求人の主張について
請求人は、口頭審理陳述要領書において「また、甲5発明である第3実施例については『下地筋違6の筋違係止部12への嵌着が、固定手段として逆に抜け勝手である点が改善される点で有利である。』と記載されており、(同明細書第11頁第12行?第14行)、筋違6の脱落防止を課題としている。(省略)甲5発明の後者の課題も、甲2発明の課題である「[2]第二棒状体を確実に取り付けること(確実性・固定力)」の具体的内容である「第二棒状体の脱落を防止すること」と共通する。従って、甲2発明の課題と甲5発明の課題は共通する。」(第17ページ第16?第18ページ第4行)と主張している。
しかしながら、甲第2号証には、甲2発明が、振れ防止用全ネジがサイド金具から抜け勝手である旨の記載や、振れ防止用全ネジをサイド金具に取り付けることの確実性を課題として示唆するような記載はない。
それどころか、甲2発明は「振れ防止用全ネジをサイド金具に掛けた後、専用ワッシャーを挿入し、上下ダブルナットを締め込」むことにより、振れ防止用全ネジをサイド金具に確実に取り付け得る構成となっている。
そうであれば、甲5発明の筋違係止部212を甲2発明に適用する動機付けはないといえるので、請求人の主張は採用できない。

また、請求人は、口頭審理陳述要領書において、甲第23号証及び甲第24号証を例示し、使用場所を機器振止と天井振止とで分ける必要がなく、甲2発明と甲5発明とは、その用途において共通する旨主張している。(第18ページ下から8行?第19ページ第4行)
しかしながら、甲第23号証及び甲第24号証のいずれも、吊りボルトを別の部材に連結する金具が記載されているにとどまり、甲第23号証及び甲第24号証のいずれにも、吊りボルト用の金具と野縁受け材用の金具とを共通して使用できる旨の記載はないから、甲2発明と甲5発明とは、その用途において共通するとまではいえず、請求人の主張は採用できない。

e 小括
したがって、本件発明1は、甲2発明及び甲5発明並びに甲第23号証及び甲第24号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

イ 本件発明2について
(ア)対比
上記(1)イ(ア)のとおりであるから、本件発明2と甲2発明とは、上記のとおりの一致点2及び相違点2を有する。

(イ)判断
上記相違点2について検討する。
a 適用の動機付けについて
上記ア(イ)aで述べたとおりであるから、甲2発明の「サイド金具」と、甲5発明の「筋違係止部212」とは、機能ないし作用を異にするものであり、甲2発明の「サイド金具」を、甲5発明の「筋違係止部212」と置換する動機付けはない。

b 構成の充足性について
上記ア(イ)bで述べたと同様の理由により、甲2発明に、甲5発明を適用したとしても、上記相違点2に係る本件発明2の「第二保持部」の構成に至らない。

c 発明の効果について
上記ア(イ)cで述べたと同様に、甲2発明、甲5発明のいずれも、「2本の振れ防止用全ネジ」や2本の「下地筋違6」が長い場合でも外周側から挟み込んで保持することを可能にする発明でもなければ、「2本の振れ防止用全ネジ」や2本の「下地筋違6」を軸方向に沿って移動し、位置調整を容易にする発明でもないから、本件発明2の、先に述べた位置調整や連結操作の容易性に関する効果は、甲2発明や甲5発明から当業者が予測し得たものとはいえない。

d 小括
上記a?cに加えて、上記ア(イ)dで述べたと同様のことが本件発明2についてもいえるので、本件発明2は、甲2発明及び甲5発明並びに甲第23号証及び甲第24号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

ウ 本件発明6?9について
本件発明6?9は、本件発明1又は本件発明2の構成を全て含む発明である。
したがって、上記ア又はイと同様の理由で、本件発明6?9は、甲2発明及び甲5発明並びに甲第23号証及び甲第24号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとは認められない。

エ 甲5発明を副引用発明とする場合についてのまとめ
本件発明1、2及び6?9は、甲2発明及び甲5発明並びに甲第23号証及び甲第24号証に記載された事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(4)甲6発明を副引用発明とする場合について
ア 本件発明1について
(ア)対比
上記(1)ア(ア)のとおりであるから、本件発明1と甲2発明とは、上記のとおりの一致点1及び相違点1を有する。

(イ)判断
上記相違点1について検討する。
a 適用の動機付けについて
甲2発明の「サイド金具」は、「吊り下げ用全ネジ」と2本の「振れ防止用全ネジ」の合計3本の全ネジ(長尺ボルト)を相互干渉させずに交差させて連結する「空調機器用振れ止め金具」の一部である。
これに対し、甲6発明の「第1J字部材4」及び「第2J字部材5」は、2本の長尺ボルトを交差させて連結する金具の一部でしかなく、甲2発明のような3本の長尺ボルトの相互干渉を避けつつ交差させて連結する金具に係るものではない。
したがって、甲2発明の「サイド金具」と、甲6発明の「第1J字部材4」及び「第2J字部材5」とは、機能ないし作用を異にするものであり、甲2発明の「サイド金具」を、甲6発明の「第1J字部材4」又は「第2J字部材5」と置換する動機付けはない。

b 構成の充足性について
甲第6号証に「即ち、図1に示す吊りボルト連結金具9に代えて長尺ボルト交差連結金具1を用いる構成も本発明の範囲内である。」(段落【0042】)と記載されているが、甲6発明の交差連結金具1は、「吊りボルトに対して長尺ボルトを交差状態に配設し、この交差状態の2本のボルトの交差部分」(段落【0019】)を連結するものであり、3本以上のボルトの交差部分を1つの交差連結金具1で連結する構成は、甲第6号証に記載されていない。
このため、吊りボルトと、2本の長尺ボルトの交差部分において、上記のとおり「長尺ボルト交差連結金具1を用いる構成」とする場合、交差連結金具1を2つ用いることとなる。
そうすると、甲2発明に甲6発明を適用した構成においては、甲2発明の「空調機器用振れ止め金具」1つを、甲6発明の「交差連結金具1」2つに置き換えたものによって、吊り下げ用全ネジと、前記吊り下げ用全ネジに対してそれぞれ交差する2本の振れ防止用全ネジとを連結することとなるが、このような構成では、本件発明1と甲2発明との一致点である「前記板部が、前記吊り下げ用全ネジの保持位置に対して板面に沿う方向の両側に設けられた一対の取付部を有し、一対の前記サイド金具の一方が一対の取付部の一方に連結され、一対の前記サイド金具の他方が一対の取付部の他方に連結されている」構成とならない。
したがって、甲2発明に甲6発明を適用しても、本件発明1の構成に至らない。

c 発明の効果について
甲6発明は、吊りボルトと、2本の「長尺ボルト」とを1つの金具で連結する発明ではなく、また、甲2発明、甲6発明のいずれも、「2本の振れ防止用全ネジ」や2本の「長尺ボルト」が長い場合でも外周側から挟み込んで保持することを可能にする発明でもなければ、「2本の振れ防止用全ネジ」や2本の「長尺ボルト」を軸方向に沿って移動し、位置調整を容易にする発明でもない。
したがって、上記(1)ア(イ)cで述べた本件発明1の位置調整や連結操作の容易性に関する効果は、甲2発明や甲6発明から当業者が予測し得たものとはいえない。

d 請求人の主張について
(a)位置調整について
請求人は、審判請求書において、「しかも、副引用発明4(審決注:「甲6発明」を指す。)の明細書には明示の記載は無いが、『J字部材』を長尺ボルトに仮固定した状態で位置調整ができる点は、副引用発明4の製品チラシに記載されており(甲第8号証(審決注:「甲第9号証」の誤記。):アカギビッグニュース 振止V型金具W3/8(省略))、当業者に自明のことである」(第14ページ第21?24行)と主張しているが、甲第9号証には、テンションをかけて固定された2本の振止用全ねじの、移動しない交差位置に対して、V形金具の位置を調整することが記載されているだけであり、V形金具に対して振止用全ねじの位置を調整することが記載されているわけではないので、この主張は採用できない。

(b)コーナー部の3本保持具について
請求人は、口頭審理陳述要領書において、甲第14号証のクロスロックZタイプFL-Z(P8-27ページ)を例示し、交差部で使用された2本保持具をコーナー部の3本保持具で使用されることがあり、使用場所がコーナー部と交差部とで分ける必要がない旨主張している(第22ページ第5?8行)が、この例示されたものはバネの弾性を利用した金具を用いた3本保持具であり、甲2発明の「サイド金具」並びに甲6発明の「第1J字部材4」及び「第2J字部材5」の、いずれとも異なるから、この請求人の主張は根拠がなく、採用できない。

e 小括
したがって、本件発明1は、甲2発明及び甲6発明並びに甲第9号証及び甲第14号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

イ 本件発明2について
(ア)対比
上記(1)イ(ア)のとおりであるから、本件発明2と甲2発明とは、上記のとおりの一致点2及び相違点2を有する。

(イ)判断
上記相違点2について検討する。
a 適用の動機付けについて
上記ア(イ)aで述べたとおり、甲2発明の「サイド金具」と、甲6発明の「第1J字部材4」及び「第2J字部材5」とは、機能ないし作用を異にするものであり、甲2発明の「サイド金具」を、甲6発明の「第1J字部材4」又は「第2J字部材5」と置換する動機付けはない。

b 構成の充足性について
上記ア(イ)bで述べたと同様に、吊りボルトと、2本の長尺ボルトの交差部分において、甲6発明の「交差連結金具1を用いる構成」とする場合、長尺ボルト交差連結金具1を2つ用いることとなるから、甲2発明に甲6発明を適用した構成においては、甲2発明の「空調機器用振れ止め金具」1つを、甲6発明の「交差連結金具1」2つに置き換え、「4面ブレースの4面のうちの隣り合う2面」のそれぞれに「交差連結金具1」が1つづつ配置される構成によって、吊り下げ用全ネジと、前記吊り下げ用全ネジに対してそれぞれ交差する2本の振れ防止用全ネジとを連結することとなるが、このような構成では、上記一致点2に係る甲2発明の「前記本体金具は、前記2面のそれぞれに沿って配置される一対の取付部を有」する構成とならない。
したがって、甲2発明に甲6発明を適用しても、本件発明2の構成に至らない。

c 発明の効果について
上記ア(イ)cで述べたと同様に、甲6発明は、吊りボルトと、2本の「長尺ボルト」とを1つの金具で連結する発明ではなく、また、甲2発明、甲6発明のいずれも、「2本の振れ防止用全ネジ」や2本の「長尺ボルト」が長い場合でも外周側から挟み込んで保持することを可能にする発明でもなければ、「2本の振れ防止用全ネジ」や2本の「長尺ボルト」を軸方向に沿って移動し、位置調整を容易にする発明でもないから、本件発明2の先に述べた位置調整や連結操作の容易性に関する効果は、甲2発明や甲6発明から当業者が予測し得たものとはいえない。

d 小括
上記a?cに加えて、上記ア(イ)dで述べたと同様のことが本件発明2についてもいえるので、本件発明2は、甲2発明及び甲6発明並びに甲第9号証及び甲第14号証に記載された事項を組み合わせることによって当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

ウ 本件発明6?9について
本件発明6?9は、本件発明1又は本件発明2の構成を全て含む発明である。
したがって、上記ア又はイと同様の理由で、本件発明6?9は、甲2発明及び甲6発明並びに甲第9号証及び甲第14号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとは認められない。

エ 甲6発明を副引用発明とする場合についてのまとめ
本件発明1、2及び6?9は、甲2発明及び甲6発明並びに甲第9号証及び甲第14号証に記載された事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(5)無効理由1(本件発明1、2及び6?9)についてのまとめ
本件発明1、2及び6?9は、甲2発明及び甲3?6発明のいずれか、並びに、甲第8?24号証に記載された事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものとは認められないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでなく、本件発明1、2、6?9についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1によって無効とすることはできない。

2 無効理由2(本件発明3及び6?9)について
本件発明3及び6?9は、本件発明1又は本件発明2の構成を全て含む発明である。
したがって、上記1と同様の理由で、本件発明3及び6?9は、甲2発明、甲3?6発明のいずれか、及び、甲3発明又は甲4発明のいずれか、並びに、甲第8?24号証に記載された事項に基いて、、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものとは認められないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでなく、本件発明3、6?9についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1によって無効とすることはできない。

3 無効理由3(本件発明4及び6?9)について
本件発明4及び6?9は、本件発明1又は本件発明2の構成を全て含む発明である。
したがって、上記1と同様の理由で、本件発明4及び6?9は、甲2発明、甲3?6発明のいずれか、甲3発明又は甲4発明のいずれか、及び、甲3発明、並びに、甲第8?24号証に記載された事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものとは認められないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでなく、本件発明4、6?9についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1によって無効とすることはできない。

4 無効理由4(本件発明5?9)について
本件発明5?9は、本件発明1又は本件発明2の構成を全て含む発明である。
したがって、上記1と同様の理由で、本件発明5?9は、甲2発明、甲3?6発明のいずれか、甲3発明又は甲4発明のいずれか、甲3発明、及び、甲3?5発明のいずれか、並びに、甲第8?24号証に記載された事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものとは認められないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでなく、本件発明5?9についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1によって無効とすることはできない。

5 無効理由5(本件発明10)について
本件発明10は、本件発明1又は本件発明2の構成を全て含む発明である。
したがって、上記1と同様の理由で、本件発明10は、甲2発明、甲3?6発明のいずれか、甲3発明又は甲4発明のいずれか、甲3発明、甲3?5発明のいずれか、及び、甲7発明、並びに、甲第8?24号証に記載された事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものとは認められないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでなく、本件発明10についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1によって無効とすることはできない。

第6 むすび
以上のとおり、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件発明についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-09-14 
結審通知日 2020-09-17 
審決日 2020-10-09 
出願番号 特願2019-66963(P2019-66963)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (F16B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鵜飼 博人  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 平田 信勝
内田 博之
登録日 2019-10-18 
登録番号 特許第6602499号(P6602499)
発明の名称 交差連結具  
代理人 小池 眞一  
代理人 特許業務法人R&C  
代理人 岩田 敏  
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