• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特174条1項  H01M
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01M
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01M
管理番号 1368973
異議申立番号 異議2019-700127  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-01-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-02-15 
確定日 2020-10-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6372491号発明「電池、セパレータ、電極、電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6372491号の特許請求の範囲を、訂正請求書の手続補正書に添付された補正後の訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?11、14?19〕、12、13について訂正することを認める。 特許第6372491号の請求項1?3、7及び9?19に係る特許を維持する。 特許第6372491号の請求項4?6及び8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6372491号(以下「本件特許」という。)の請求項1?19に係る特許についての出願は、2014年(平成26年)8月28日(優先権主張 平成25年11月5日)を国際出願日とする出願であって、平成30年7月27日にその特許権の設定登録がされ、同年8月15日に特許掲載公報が発行された。以後の本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

平成31年 2月15日 :特許異議申立人である伊藤範子(以下「申立人」という。)による請求項1?19(全請求項)に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 1年 6月17日付け:取消理由通知書
同年 8月15日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年11月12日付け:訂正拒絶理由通知書
同年12月11日 :特許権者による訂正請求書の手続補正書の提出
令和 2年 3月18日 :申立人による意見書の提出
同年 5月25日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年 7月27日 :特許権者による意見書の提出


第2 訂正の適否
1 訂正の趣旨及び訂正の内容
令和1年8月15日提出の訂正請求書による訂正の趣旨は、特許第6372491号の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下「本件明細書等」という。)を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び令和1年12月11日提出の訂正請求書の手続補正書(以下「本件訂正請求書の手続補正書」)に添付された補正後の訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?19について訂正を求めるものであり(以下、本件訂正請求書の手続補正書により補正された訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)、その訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正された箇所を表す。)。
なお、本件訂正請求書の手続補正書による補正は、本件訂正における請求項8の訂正事項を当該請求項の削除という訂正事項に変更するとともに、当該変更に整合させるための変更を行うものであり、当審はこれを認容した。

(1)訂正事項1
請求項1について、本件訂正前に「正極と、
負極と、
セパレータと、
電解液と、
前記正極と前記負極との間に介在し、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子含有樹脂層は、前記電解液を保持する機能を有し、
前記粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、前記粒子含有樹脂層の強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、
前記粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、前記粒子の屈折率は1.3以上2.4未満である電池。」とあるのを、「正極と、
負極と、
セパレータと、
電解液と、
前記正極と前記負極との間に介在し、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子含有樹脂層は、前記電解液を保持する機能を有し、
前記樹脂は、含フッ素樹脂または含フッ素ゴムであり、
前記粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、前記粒子含有樹脂層の強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、
前記粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、前記粒子の屈折率は1.3以上2.4未満であり、
前記粒子は、無機粒子および有機粒子の少なくとも何れかであり、
前記無機粒子は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、ベーマイト、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、リン酸トリリチウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、パイロフィライト、雲母、ゼオライト、ムライト、サポナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ドロマイト、スピネルからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記有機粒子は、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下である電池。」に訂正する。
請求項1を引用する請求項3、7、9?11、14?19も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
請求項2について、本件訂正前に「正極と、
負極と、
セパレータと、
電解液と
を備え、
前記セパレータは、
セパレータ基材と、
該セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子含有樹脂層は、前記電解液を保持する機能を有し、
前記粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、前記セパレータの強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、
前記粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、前記粒子の屈折率は1.3以上2.4未満である電池。」とあるのを、「正極と、
負極と、
セパレータと、
電解液と
を備え、
前記セパレータは、
セパレータ基材と、
該セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子含有樹脂層は、前記電解液を保持する機能を有し、
前記樹脂は、含フッ素樹脂または含フッ素ゴムであり、
前記粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、前記セパレータの強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、
前記粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、前記粒子の屈折率は1.3以上2.4未満であり、
前記粒子は、無機粒子および有機粒子の少なくとも何れかであり、
前記無機粒子は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、ベーマイト、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、リン酸トリリチウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、パイロフィライト、雲母、ゼオライト、ムライト、サポナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ドロマイト、スピネルからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記有機粒子は、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下である電池。」に訂正する。
請求項2を引用する請求項3、7、9?10、14?19も同様に訂正する。

(3)訂正事項3
請求項4を削除する。

(4)訂正事項4
請求項5を削除する。

(5)訂正事項5
請求項6を削除する。

(6)訂正事項6
請求項7について、本件訂正前に「前記樹脂は、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体およびその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体およびその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体およびその水素化物、メタクリル酸エステル-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エチルセルロース、セルロース誘導体、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリエーテル、アクリル酸樹脂、ポリエステル、ポリエチレングリコールからなる群から選ばれた少なくとも何れかである請求項1から6のいずれか1項に記載の電池。」とあるのを、「前記樹脂は、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも何れかである請求項1から3のいずれか1項に記載の電池。」に訂正する。
請求項7を引用する請求項9、10、14?19も同様に訂正する。

(7)訂正事項7
請求項8を削除する。

(8)訂正事項8
請求項9について、本件訂正前に「請求項1から8のいずれか1項に記載の電池」とあるのを、「請求項1から3、7のいずれか1項に記載の電池」に訂正する。
請求項9を引用する請求項14?19も同様に訂正する。

(9)訂正事項9
請求項10について、本件訂正前に「請求項1から8のいずれか1項に記載の電池」とあるのを、「請求項1から3、7のいずれか1項に記載の電池」に訂正する。
請求項10を引用する請求項14?19も同様に訂正する。

(10)訂正事項10
請求項14について、本件訂正前に「請求項1から11のいずれか1項に記載の電池」とあるのを、「請求項1から3、7、9から11のいずれか1項に記載の電池」に訂正する。

(11)訂正事項11
請求項15について、本件訂正前に「請求項1から11のいずれか1項に記載の電池」とあるのを、「請求項1から3、7、9から11のいずれか1項に記載の電池」に訂正する。

(12)訂正事項12
請求項16について、本件訂正前に「請求項1から11のいずれか1項に記載の電池」とあるのを、「請求項1から3、7、9から11のいずれか1項に記載の電池」に訂正する。

(13)訂正事項13
請求項17について、本件訂正前に「請求項1から11のいずれか1項に記載の電池」とあるのを、「請求項1から3、7、9から11のいずれか1項に記載の電池」に訂正する。

(14)訂正事項14
請求項19について、本件訂正前に「請求項1から11のいずれか1項に記載の電池」とあるのを、「請求項1から3、7、9から11のいずれか1項に記載の電池」に訂正する。

(15)訂正事項15
明細書の【0008】について、訂正前に「上記問題点を解消するために、本技術は、正極と、負極と、セパレータと、電解液と、正極と負極との間に介在し、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層とを備え、粒子含有樹脂層は、電解液を保持する機能を有し、粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、粒子含有樹脂層の強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、粒子の形状は平面を含み、且つ、粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、粒子の屈折率は1.3以上2.4未満である電池である。
本技術は、正極と、負極と、セパレータと、電解液とを備え、セパレータは、セパレータ基材と、セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層とを備え、粒子含有樹脂層は、電解液を保持する機能を有し、粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、セパレータの強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、粒子の形状は平面を含み、且つ、粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、粒子の屈折率は1.3以上2.4未満である電池である。」とあるのを、「上記問題点を解消するために、本技術は、正極と、負極と、セパレータと、電解液と、正極と負極との間に介在し、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層とを備え、粒子含有樹脂層は、電解液を保持する機能を有し、樹脂は、含フッ素樹脂または含フッ素ゴムであり、粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、粒子含有樹脂層の強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、粒子の形状は平面を含み、且つ、粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、粒子の屈折率は1.3以上2.4未満であり、粒子は、無機粒子および有機粒子の少なくとも何れかであり、無機粒子は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、ベーマイト、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、リン酸トリリチウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、パイロフィライト、雲母、ゼオライト、ムライト、サポナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ドロマイト、スピネルからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、有機粒子は、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、粒子と樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下である電池である。
本技術は、正極と、負極と、セパレータと、電解液とを備え、セパレータは、セパレータ基材と、セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層とを備え、粒子含有樹脂層は、電解液を保持する機能を有し、樹脂は、含フッ素樹脂または含フッ素ゴムであり、粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、セパレータの強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、粒子の形状は平面を含み、且つ、粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、粒子の屈折率は1.3以上2.4未満であり、粒子は、無機粒子および有機粒子の少なくとも何れかであり、無機粒子は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、ベーマイト、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、リン酸トリリチウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、パイロフィライト、雲母、ゼオライト、ムライト、サポナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ドロマイト、スピネルからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、有機粒子は、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、粒子と樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下である電池である。」に訂正する。

(16)訂正事項16
明細書の【0259】について、訂正前に「<実施例3-1?実施例3-8>
実施例3-1?実施例3-8では、フィラー(ベーマイト粒子)とマトリックス高分子化合物(PVdF)との質量比を変えたこと以外は、実施例1-1と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。具体的には、実施例3-1では質量比(粒子/PVdF)を15/85にした。実施例3-2では質量比(粒子/PVdF)を20/80にした。実施例3-3では質量比(粒子/PVdF)を30/70にした。実施例3-4では、実施例1-1と同様、質量比(粒子/PVdF)を50/50にした。実施例3-5では質量比(粒子/PVdF)を70/30にした。実施例3-6では質量比(粒子/PVdF)を80/20にした。実施例3-7では、質量比(粒子/PVdF)を85/15にした。実施例3-8では質量比(粒子/PVdF)を90/10にした。」とあるのを、「<実施例3-1?実施例3-6、参考例3-7、参考例3-8>
実施例3-1?実施例3-6、参考例3-7、参考例3-8では、フィラー(ベーマイト粒子)とマトリックス高分子化合物(PVdF)との質量比を変えたこと以外は、実施例1-1と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。具体的には、実施例3-1では質量比(粒子/PVdF)を15/85にした。実施例3-2では質量比(粒子/PVdF)を20/80にした。実施例3-3では質量比(粒子/PVdF)を30/70にした。実施例3-4では、実施例1-1と同様、質量比(粒子/PVdF)を50/50にした。実施例3-5では質量比(粒子/PVdF)を70/30にした。実施例3-6では質量比(粒子/PVdF)を80/20にした。参考例3-7では、質量比(粒子/PVdF)を85/15にした。参考例3-8では質量比(粒子/PVdF)を90/10にした。」に訂正する。

(17)訂正事項17
明細書の【0260】について、訂正前に「<実施例3-9?実施例3-15>
実施例3-9?実施例3-15では、フィラー(タルク粒子)とマトリックス高分子化合物(PVdF)との質量比を変えたこと以外は、実施例1-2と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。具体的には、実施例3-9では質量比(粒子/PVdF)を20/80にした。実施例3-10では質量比(粒子/PVdF)を40/60にした。実施例3-11では、実施例1-2と同様、質量比(粒子/PVdF)を50/50にした。実施例3-12では質量比(粒子/PVdF)を60/40にした。実施例3-13では質量比(粒子/PVdF)を80/20にした。実施例3-14では質量比(粒子/PVdF)を85/15にした。実施例3-15では質量比(粒子/PVdF)を90/10にした。」とあるのを、「<実施例3-9?実施例3-13、参考例3-14、参考例3-15>
実施例3-9?実施例3-13、参考例3-14、参考例3-15では、フィラー(タルク粒子)とマトリックス高分子化合物(PVdF)との質量比を変えたこと以外は、実施例1-2と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。具体的には、実施例3-9では質量比(粒子/PVdF)を20/80にした。実施例3-10では質量比(粒子/PVdF)を40/60にした。実施例3-11では、実施例1-2と同様、質量比(粒子/PVdF)を50/50にした。実施例3-12では質量比(粒子/PVdF)を60/40にした。実施例3-13では質量比(粒子/PVdF)を80/20にした。参考例3-14では質量比(粒子/PVdF)を85/15にした。参考例3-15では質量比(粒子/PVdF)を90/10にした。」に訂正する。

(18)訂正事項18
明細書の【0263】の【表3】について、訂正前に「実施例3-7」、「実施例3-8」、「実施例3-14」及び「実施例3-15」とあるのを、「参考例3-7」、「参考例3-8」、「参考例3-14」及び「参考例3-15」に訂正する。

(19)訂正事項19
明細書の【0264】について、訂正前に「実施例3-1?実施例3-15では」とあるのを、「実施例3-1?実施例3-6、参考例3-7、参考例3-8、実施例3-9?実施例3-13、参考例3-14、参考例3-15では」に訂正する。

(20)訂正事項20
明細書の【0307】について、訂正前に「<実施例8-1?実施例8-8>
実施例8-1?実施例8-8では、フィラー(ベーマイト粒子)とマトリックス高分子化合物(PVdF)との質量比を変えたこと以外は、実施例1-1と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。具体的には、実施例8-1では質量比(粒子/PVdF)を15/85にした。実施例8-2では質量比(粒子/PVdF)を20/80にした。実施例8-3では質量比(粒子/PVdF)を30/70にした。実施例8-4では、実施例1-1と同様、質量比(粒子/PVdF)を50/50にした。実施例8-5では質量比(粒子/PVdF)を70/30にした。実施例8-6では質量比(粒子/PVdF)を80/20にした。実施例8-7では、質量比(粒子/PVdF)を85/15にした。実施例8-8では質量比(粒子/PVdF)を90/10にした。」とあるのを、「<実施例8-1?実施例8-6、参考例8-7、参考例8-8>
実施例8-1?実施例8-6、参考例8-7、参考例8-8では、フィラー(ベーマイト粒子)とマトリックス高分子化合物(PVdF)との質量比を変えたこと以外は、実施例1-1と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。具体的には、実施例8-1では質量比(粒子/PVdF)を15/85にした。実施例8-2では質量比(粒子/PVdF)を20/80にした。実施例8-3では質量比(粒子/PVdF)を30/70にした。実施例8-4では、実施例1-1と同様、質量比(粒子/PVdF)を50/50にした。実施例8-5では質量比(粒子/PVdF)を70/30にした。実施例8-6では質量比(粒子/PVdF)を80/20にした。参考例8-7では、質量比(粒子/PVdF)を85/15にした。参考例8-8では質量比(粒子/PVdF)を90/10にした。」に訂正する。

(21)訂正事項21
明細書の【0308】について、訂正前に「<実施例8-9?実施例8-15>
実施例8-9?実施例8-15では、フィラー(タルク粒子)とマトリックス高分子化合物(PVdF)との質量比を変えたこと以外は、実施例1-2と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。具体的には、実施例8-9では質量比(粒子/PVdF)を20/80にした。実施例8-10では質量比(粒子/PVdF)を40/60にした。実施例8-11では、実施例1-2と同様、質量比(粒子/PVdF)を50/50にした。実施例8-12では質量比(粒子/PVdF)を60/40にした。実施例8-13では質量比(粒子/PVdF)を80/20にした。実施例8-14では質量比(粒子/PVdF)を85/15にした。実施例8-15では質量比(粒子/PVdF)を90/10にした。」とあるのを、「<実施例8-9?実施例8-13、参考例8-14、参考例8-15>
実施例8-9?実施例8-13、参考例8-14、参考例8-15では、フィラー(タルク粒子)とマトリックス高分子化合物(PVdF)との質量比を変えたこと以外は、実施例1-2と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。具体的には、実施例8-9では質量比(粒子/PVdF)を20/80にした。実施例8-10では質量比(粒子/PVdF)を40/60にした。実施例8-11では、実施例1-2と同様、質量比(粒子/PVdF)を50/50にした。実施例8-12では質量比(粒子/PVdF)を60/40にした。実施例8-13では質量比(粒子/PVdF)を80/20にした。参考例8-14では質量比(粒子/PVdF)を85/15にした。参考例8-15では質量比(粒子/PVdF)を90/10にした。」に訂正する。

(22)訂正事項22
明細書の【0311】の【表8】について、訂正前に「実施例8-7」、「実施例8-8」、「実施例8-14」及び「実施例8-15」とあるのを、「参考例8-7」、「参考例8-8」、「参考例8-14」及び「参考例8-15」に訂正する。

(23)訂正事項23
明細書の【0312】について、訂正前に「実施例8-1?実施例8-15では」とあるのを、「実施例8-1?実施例8-6、参考例8-7、参考例8-8、実施例8-9?実施例8-13、参考例8-14、参考例8-15では」に訂正する。

(24)訂正事項24
明細書の【0352】について、訂正前に「<実施例13-1?実施例13-8>
実施例13-1?実施例13-8では、フィラー(ベーマイト粒子)とバインダー高分子化合物(PVdF)との質量比を変えたこと以外は、実施例11-1と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。具体的には、実施例13-1では質量比(粒子/PVdF)を15/85にした。実施例13-2では質量比(粒子/PVdF)を20/80にした。実施例13-3では質量比(粒子/PVdF)を30/70にした。実施例13-4では、実施例11-1と同様、質量比(粒子/PVdF)を50/50にした。実施例13-5では質量比(粒子/PVdF)を70/30にした。実施例13-6では質量比(粒子/PVdF)を80/20にした。実施例13-7では、質量比(粒子/PVdF)を85/15にした。実施例13-8では質量比(粒子/PVdF)を90/10にした。」とあるのを、「<実施例13-1?実施例13-6、参考例13-7、参考例13-8>
実施例13-1?実施例13-6、参考例13-7、参考例13-8では、フィラー(ベーマイト粒子)とバインダー高分子化合物(PVdF)との質量比を変えたこと以外は、実施例11-1と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。具体的には、実施例13-1では質量比(粒子/PVdF)を15/85にした。実施例13-2では質量比(粒子/PVdF)を20/80にした。実施例13-3では質量比(粒子/PVdF)を30/70にした。実施例13-4では、実施例11-1と同様、質量比(粒子/PVdF)を50/50にした。実施例13-5では質量比(粒子/PVdF)を70/30にした。実施例13-6では質量比(粒子/PVdF)を80/20にした。参考例13-7では、質量比(粒子/PVdF)を85/15にした。参考例13-8では質量比(粒子/PVdF)を90/10にした。」に訂正する。

(25)訂正事項25
明細書の【0353】について、訂正前に「<実施例13-9?実施例13-15>
実施例13-9?実施例13-15では、フィラー(タルク粒子)とバインダー高分子化合物(PVdF)との質量比を変えたこと以外は、実施例11-2と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。具体的には、実施例13-9では質量比(粒子/PVdF)を20/80にした。実施例13-10では質量比(粒子/PVdF)を40/60にした。実施例13-11では、実施例11-2と同様、質量比(粒子/PVdF)を50/50にした。実施例13-12では質量比(粒子/PVdF)を60/40にした。実施例13-13では質量比(粒子/PVdF)を80/20にした。実施例13-14では質量比(粒子/PVdF)を85/15にした。実施例13-15では質量比(粒子/PVdF)を90/10にした。」とあるのを、「<実施例13-9?実施例13-13、参考例13-14、参考例13-15>
実施例13-9?実施例13-13、参考例13-14、参考例13-15では、フィラー(タルク粒子)とバインダー高分子化合物(PVdF)との質量比を変えたこと以外は、実施例11-2と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。具体的には、実施例13-9では質量比(粒子/PVdF)を20/80にした。実施例13-10では質量比(粒子/PVdF)を40/60にした。実施例13-11では、実施例11-2と同様、質量比(粒子/PVdF)を50/50にした。実施例13-12では質量比(粒子/PVdF)を60/40にした。実施例13-13では質量比(粒子/PVdF)を80/20にした。参考例13-14では質量比(粒子/PVdF)を85/15にした。参考例13-15では質量比(粒子/PVdF)を90/10にした。」に訂正する。

(26)訂正事項26
明細書の【0356】の【表13】について、訂正前に「実施例13-7」、「実施例13-8」、「実施例13-14」及び「実施例13-15」とあるのを、「参考例13-7」、「参考例13-8」、「参考例13-14」及び「参考例13-15」に訂正する。

(27)訂正事項27
明細書の【0357】について、訂正前に「実施例13-1?実施例13-15では」とあるのを、「実施例13-1?実施例13-6、参考例13-7、参考例13-8、実施例13-9?実施例13-13、参考例13-14、参考例13-15では」に訂正する。

(28)訂正事項28
明細書の【0398】について、訂正前に「<実施例18-1?実施例18-8>
実施例18-1?実施例18-8では、フィラー(ベーマイト粒子)とバインダー高分子化合物(PVdF)との質量比を変えたこと以外は、実施例16-1と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。具体的には、実施例18-1では質量比(粒子/PVdF)を15/85にした。実施例18-2では質量比(粒子/PVdF)を20/80にした。実施例18-3では質量比(粒子/PVdF)を30/70にした。実施例18-4では、実施例16-1と同様、質量比(粒子/PVdF)を50/50にした。実施例18-5では質量比(粒子/PVdF)を70/30にした。実施例18-6では質量比(粒子/PVdF)を80/20にした。実施例18-7では、質量比(粒子/PVdF)を85/15にした。実施例18-8では質量比(粒子/PVdF)を90/10にした。」とあるのを、「<実施例18-1?実施例18-6、参考例18-7、参考例18-8>
実施例18-1?実施例18-6、参考例18-7、参考例18-8では、フィラー(ベーマイト粒子)とバインダー高分子化合物(PVdF)との質量比を変えたこと以外は、実施例16-1と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。具体的には、実施例18-1では質量比(粒子/PVdF)を15/85にした。実施例18-2では質量比(粒子/PVdF)を20/80にした。実施例18-3では質量比(粒子/PVdF)を30/70にした。実施例18-4では、実施例16-1と同様、質量比(粒子/PVdF)を50/50にした。実施例18-5では質量比(粒子/PVdF)を70/30にした。実施例18-6では質量比(粒子/PVdF)を80/20にした。参考例18-7では、質量比(粒子/PVdF)を85/15にした。参考例18-8では質量比(粒子/PVdF)を90/10にした。」に訂正する。

(29)訂正事項29
明細書の【0399】について、訂正前に「<実施例18-9?実施例18-15>
実施例18-9?実施例18-15では、フィラー(タルク粒子)とバインダー高分子化合物(PVdF)との質量比を変えたこと以外は、実施例16-2と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。具体的には、実施例18-9では質量比(粒子/PVdF)を20/80にした。実施例18-10では質量比(粒子/PVdF)を40/60にした。実施例18-11では、実施例16-2と同様、質量比(粒子/PVdF)を50/50にした。実施例18-12では質量比(粒子/PVdF)を60/40にした。実施例18-13では質量比(粒子/PVdF)を80/20にした。実施例18-14では質量比(粒子/PVdF)を85/15にした。実施例18-15では質量比(粒子/PVdF)を90/10にした。」とあるのを、「<実施例18-9?実施例18-13、参考例18-14、参考例18-15>
実施例18-9?実施例18-13、参考例18-14、参考例18-15では、フィラー(タルク粒子)とバインダー高分子化合物(PVdF)との質量比を変えたこと以外は、実施例16-2と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。具体的には、実施例18-9では質量比(粒子/PVdF)を20/80にした。実施例18-10では質量比(粒子/PVdF)を40/60にした。実施例18-11では、実施例16-2と同様、質量比(粒子/PVdF)を50/50にした。実施例18-12では質量比(粒子/PVdF)を60/40にした。実施例18-13では質量比(粒子/PVdF)を80/20にした。参考例18-14では質量比(粒子/PVdF)を85/15にした。参考例18-15では質量比(粒子/PVdF)を90/10にした。」に訂正する。

(30)訂正事項30
明細書の【0402】の【表18】について、訂正前に「実施例18-7」、「実施例18-8」、「実施例18-14」及び「実施例18-15」とあるのを、「参考例18-7」、「参考例18-8」、「参考例18-14」及び「参考例18-15」に訂正する。

(31)訂正事項31
明細書の【0403】について、訂正前に「実施例18-1?実施例18-15では」とあるのを、「実施例18-1?実施例18-6、参考例18-7、参考例18-8、実施例18-9?実施例18-13、参考例18-14、参考例18-15では」に訂正する。

(32)訂正事項32
請求項12について、本件訂正前に「セパレータ基材と、
該セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子含有樹脂層は、電解液を保持する機能を有し、
前記粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、セパレータの強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、
前記粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、前記粒子の屈折率は1.3以上2.4未満であるセパレータ。」とあるのを、「セパレータ基材と、
該セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子含有樹脂層は、電解液を保持する機能を有し、
前記樹脂は、含フッ素樹脂または含フッ素ゴムであり、
前記粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、セパレータの強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、
前記粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、前記粒子の屈折率は1.3以上2.4未満であり、
前記粒子は、無機粒子および有機粒子の少なくとも何れかであり、
前記無機粒子は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、ベーマイト、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、リン酸トリリチウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、パイロフィライト、雲母、ゼオライト、ムライト、サポナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ドロマイト、スピネルからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記有機粒子は、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下であるセパレータ。」に訂正する。

(33)訂正事項33
明細書の【0009】について、訂正前に「本技術は、セパレータ基材と、セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層とを備え、粒子含有樹脂層は、電解液を保持する機能を有し、粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、セパレータの強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、粒子の形状は平面を含み、且つ、粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、粒子の屈折率は1.3以上2.4未満であるセパレータである。」とあるのを、「本技術は、セパレータ基材と、セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層とを備え、粒子含有樹脂層は、電解液を保持する機能を有し、樹脂は、含フッ素樹脂または含フッ素ゴムであり、粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、セパレータの強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、粒子の形状は平面を含み、且つ、粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、粒子の屈折率は1.3以上2.4未満であり、粒子は、無機粒子および有機粒子の少なくとも何れかであり、無機粒子は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、ベーマイト、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、リン酸トリリチウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、パイロフィライト、雲母、ゼオライト、ムライト、サポナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ドロマイト、スピネルからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、有機粒子は、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、粒子と樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下であるセパレータである。」に訂正する。

(34)訂正事項34
請求項13について、本件訂正前に「電極と、
該電極の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子含有樹脂層は、電解液を保持する機能を有し、
前記粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、前記粒子含有樹脂層の強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、
前記粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、前記粒子の屈折率は1.3以上2.4未満である粒子含有樹脂層付きの電極。」とあるのを、「電極と、
該電極の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子含有樹脂層は、電解液を保持する機能を有し、
前記樹脂は、含フッ素樹脂または含フッ素ゴムであり、
前記粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、前記粒子含有樹脂層の強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、
前記粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、前記粒子の屈折率は1.3以上2.4未満であり、
前記粒子は、無機粒子および有機粒子の少なくとも何れかであり、
前記無機粒子は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、ベーマイト、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、リン酸トリリチウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、パイロフィライト、雲母、ゼオライト、ムライト、サポナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ドロマイト、スピネルからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記有機粒子は、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下である粒子含有樹脂層付きの電極。」に訂正する。

(35)訂正事項35
明細書の【0010】について、訂正前に「本技術は、電極と、電極の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層とを備え、粒子含有樹脂層は、電解液を保持する機能を有し、粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、粒子含有樹脂層の強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、粒子の形状は平面を含み、且つ、粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、粒子の屈折率は1.3以上2.4未満である粒子含有樹脂層付きの電極である。」とあるのを、「本技術は、電極と、電極の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層とを備え、粒子含有樹脂層は、電解液を保持する機能を有し、樹脂は、含フッ素樹脂または含フッ素ゴムであり、粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、粒子含有樹脂層の強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、粒子の形状は平面を含み、且つ、粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、粒子の屈折率は1.3以上2.4未満であり、前記粒子は、無機粒子および有機粒子の少なくとも何れかであり、無機粒子は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、ベーマイト、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、リン酸トリリチウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、パイロフィライト、雲母、ゼオライト、ムライト、サポナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ドロマイト、スピネルからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、有機粒子は、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、粒子と樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下である粒子含有樹脂層付きの電極である。」に訂正する。


2 訂正の適否に関する当審の判断
(1)訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1による訂正は、本件訂正前の請求項1の発明特定事項である「樹脂」及び「粒子」について、「樹脂は、含フッ素樹脂または含フッ素ゴム」、「粒子は、無機粒子および有機粒子の少なくとも何れかであり、前記無機粒子は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、ベーマイト、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、リン酸トリリチウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、パイロフィライト、雲母、ゼオライト、ムライト、サポナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ドロマイト、スピネルからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、前記有機粒子は、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子」及び「前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下」にさらに特定する訂正であることから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しない。

(イ)新規事項の有無
本件明細書等において、「樹脂」の特定については本件明細書等の【0035】に記載され、「粒子」の特定については訂正前の請求項4?6に記載され、粒子と樹脂との「質量比(粒子/樹脂)」については同【0070】に記載されているから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2による訂正は、本件訂正前の請求項2の発明特定事項である「樹脂」及び「粒子」について、「樹脂は、含フッ素樹脂または含フッ素ゴム」、「粒子は、無機粒子および有機粒子の少なくとも何れかであり、前記無機粒子は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、ベーマイト、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、リン酸トリリチウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、パイロフィライト、雲母、ゼオライト、ムライト、サポナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ドロマイト、スピネルからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、前記有機粒子は、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子」及び「前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下」にさらに特定する訂正であることから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(イ)新規事項の有無
本件明細書等において、「樹脂」の特定については同【0035】に記載され、「粒子」の特定については訂正前の請求項4?6に記載され、粒子と樹脂との「質量比(粒子/樹脂)」については同【0070】に記載されているから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

ウ 訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

エ 訂正事項4について
訂正事項4による訂正は、請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

オ 訂正事項5について
訂正事項5による訂正は、請求項6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

カ 訂正事項6について
訂正事項6による訂正は、本件訂正前の請求項7の発明特定事項である具体的な樹脂の種類を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である
また、訂正事項6による訂正は、訂正事項3?5によって請求項4?6を削除することに伴い、本件訂正前の請求項7においてなされている請求項4?6の引用をしないようにするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

キ 訂正事項7について
訂正事項7による訂正は、請求項8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

ク 訂正事項8について
訂正事項8による訂正は、訂正事項3?5及び7によって請求項4?6及び8を削除することに伴い、本件訂正前の請求項9においてなされている請求項4?6及び8の引用をしないようにするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

ケ 訂正事項9について
訂正事項9による訂正は、訂正事項3?5及び7によって請求項4?6及び8を削除することに伴い、本件訂正前の請求項10においてなされている請求項4?6及び8の引用をしないようにするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

コ 訂正事項10について
訂正事項10による訂正は、訂正事項3?5及び7によって請求項4?6及び8を削除することに伴い、本件訂正前の請求項14においてなされている請求項4?6及び8の引用をしないようにするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

サ 訂正事項11について
訂正事項11による訂正は、訂正事項3?5及び7によって請求項4?6及び8を削除することに伴い、本件訂正前の請求項15においてなされている請求項4?6及び8の引用をしないようにするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

シ 訂正事項12について
訂正事項12による訂正は、訂正事項3?5及び7によって請求項4?6及び8を削除することに伴い、本件訂正前の請求項16においてなされている請求項4?6及び8の引用をしないようにするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

ス 訂正事項13について
訂正事項13による訂正は、訂正事項3?5及び7によって請求項4?6及び8を削除することに伴い、本件訂正前の請求項17においてなされている請求項4?6及び8の引用をしないようにするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

セ 訂正事項14について
訂正事項14による訂正は、訂正事項3?5及び7によって請求項4?6及び8を削除することに伴い、本件訂正前の請求項19においてなされている請求項4?6及び8の引用をしないようにするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

ソ 訂正事項15について
訂正事項15による訂正は、本件明細書等の【0008】の記載について、訂正事項1及び2により訂正される請求項1及び2の記載に整合させるために行うものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

タ 訂正事項16について
訂正事項16による訂正は、本件明細書等の【0259】の記載について、訂正事項1及び2により訂正される請求項1及び2における粒子と樹脂との質量比(粒子/樹脂)に整合させるために、当該訂正後の質量比の条件を満たさない実施例を参考例に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

チ 訂正事項17について
訂正事項17による訂正は、本件明細書等の【0260】の記載について、訂正事項1及び2により訂正される請求項1及び2における粒子と樹脂との質量比(粒子/樹脂)に整合させるために、当該訂正後の質量比の条件を満たさない実施例を参考例に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

ツ 訂正事項18について
訂正事項18による訂正は、本件明細書等の【0263】の【表3】の記載について、訂正事項1及び2により訂正される請求項1及び2における粒子と樹脂との質量比(粒子/樹脂)に整合させるために、当該訂正後の質量比の条件を満たさない実施例を参考例に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

テ 訂正事項19について
訂正事項19による訂正は、本件明細書等の【0264】の記載について、訂正事項1及び2により訂正される請求項1及び2における粒子と樹脂との質量比(粒子/樹脂)に整合させるために、当該訂正後の質量比の条件を満たさない実施例を参考例に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

ト 訂正事項20について
訂正事項20による訂正は、本件明細書等の【0307】の記載について、訂正事項1及び2により訂正される請求項1及び2における粒子と樹脂との質量比(粒子/樹脂)に整合させるために、当該訂正後の質量比の条件を満たさない実施例を参考例に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

ナ 訂正事項21について
訂正事項21による訂正は、本件明細書等の【0308】の記載について、訂正事項1及び2により訂正される請求項1及び2における粒子と樹脂との質量比(粒子/樹脂)に整合させるために、当該訂正後の質量比の条件を満たさない実施例を参考例に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

ニ 訂正事項22について
訂正事項22による訂正は、本件明細書等の【0311】の【表8】の記載について、訂正事項1及び2により訂正される請求項1及び2における粒子と樹脂との質量比(粒子/樹脂)に整合させるために、当該訂正後の質量比の条件を満たさない実施例を参考例に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

ヌ 訂正事項23について
訂正事項23による訂正は、本件明細書等の【0312】の記載について、訂正事項1及び2により訂正される請求項1及び2における粒子と樹脂との質量比(粒子/樹脂)に整合させるために、当該訂正後の質量比の条件を満たさない実施例を参考例に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

ネ 訂正事項24について
訂正事項24による訂正は、本件明細書等の【0352】の記載について、訂正事項1及び2により訂正される請求項1及び2における粒子と樹脂との質量比(粒子/樹脂)に整合させるために、当該訂正後の質量比の条件を満たさない実施例を参考例に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

ノ 訂正事項25について
訂正事項25による訂正は、本件明細書等の【0353】の記載について、訂正事項1及び2により訂正される請求項1及び2における粒子と樹脂との質量比(粒子/樹脂)に整合させるために、当該訂正後の質量比の条件を満たさない実施例を参考例に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

ハ 訂正事項26について
訂正事項26による訂正は、本件明細書等の【0356】の【表13】の記載について、訂正事項1及び2により訂正される請求項1及び2における粒子と樹脂との質量比(粒子/樹脂)に整合させるために、当該訂正後の質量比の条件を満たさない実施例を参考例に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

ヒ 訂正事項27について
訂正事項27による訂正は、本件明細書等の【0357】の記載について、訂正事項1及び2により訂正される請求項1及び2における粒子と樹脂との質量比(粒子/樹脂)に整合させるために、当該訂正後の質量比の条件を満たさない実施例を参考例に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

フ 訂正事項28について
訂正事項28による訂正は、本件明細書等の【0398】の記載について、訂正事項1及び2により訂正される請求項1及び2における粒子と樹脂との質量比(粒子/樹脂)に整合させるために、当該訂正後の質量比の条件を満たさない実施例を参考例に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

へ 訂正事項29について
訂正事項29による訂正は、本件明細書等の【0399】の記載について、訂正事項1及び2により訂正される請求項1及び2における粒子と樹脂との質量比(粒子/樹脂)に整合させるために、当該訂正後の質量比の条件を満たさない実施例を参考例に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

ホ 訂正事項30について
訂正事項30による訂正は、本件明細書等の【0402】の【表18】の記載について、訂正事項1及び2により訂正される請求項1及び2における粒子と樹脂との質量比(粒子/樹脂)に整合させるために、当該訂正後の質量比の条件を満たさない実施例を参考例に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

マ 訂正事項31について
訂正事項31による訂正は、本件明細書等の【0403】の記載について、訂正事項1及び2により訂正される請求項1及び2における粒子と樹脂との質量比(粒子/樹脂)に整合させるために、当該訂正後の質量比の条件を満たさない実施例を参考例に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

ミ 訂正事項32について
(ア)訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項32による訂正は、本件訂正前の請求項12の発明特定事項である「樹脂」及び「粒子」について、「樹脂は、含フッ素樹脂または含フッ素ゴム」、「粒子は、無機粒子および有機粒子の少なくとも何れかであり、前記無機粒子は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、ベーマイト、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、リン酸トリリチウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、パイロフィライト、雲母、ゼオライト、ムライト、サポナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ドロマイト、スピネルからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、前記有機粒子は、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子」及び「前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下」にさらに特定する訂正であることから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(イ)新規事項の有無
本件明細書等において、「樹脂」の特定については本件明細書等の【0035】に記載され、「粒子」の特定については訂正前の請求項4?6に記載され、粒子と樹脂との「質量比(粒子/樹脂)」については同【0070】に記載されているから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

ム 訂正事項33について
訂正事項33による訂正は、本件明細書等の【0009】の記載について、訂正事項32により訂正される請求項12の記載に整合させるために行うものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

メ 訂正事項34について
(ア)訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項34による訂正は、本件訂正前の請求項13の発明特定事項である「樹脂」及び「粒子」について、「樹脂は、含フッ素樹脂または含フッ素ゴム」、「粒子は、無機粒子および有機粒子の少なくとも何れかであり、前記無機粒子は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、ベーマイト、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、リン酸トリリチウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、パイロフィライト、雲母、ゼオライト、ムライト、サポナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ドロマイト、スピネルからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、前記有機粒子は、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子」及び「前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下」にさらに特定する訂正であることから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(イ)新規事項の有無
本件明細書等において、「樹脂」の特定については本件明細書等の【0035】に記載され、「粒子」の特定については訂正前の請求項4?6に記載され、粒子と樹脂との「質量比(粒子/樹脂)」については同【0070】に記載されているから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

モ 訂正事項35について
訂正事項35による訂正は、本件明細書等の【0010】の記載について、訂正事項34により訂正される請求項13の記載に整合させるために行うものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
また、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

(2)独立特許要件について
訂正前の本件特許の全請求項に対して特許異議の申立てがなされているので、訂正事項1?14、32及び34について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項は適用されない。

(3)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1?11及び14?19について、請求項3?11及び14?19はそれぞれ請求項1又は2を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1又は2によって訂正される請求項1又は2に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1?11及び14?19は一群の請求項であるところ、本件訂正請求は、上記一群の請求項についてされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
そして、本件訂正は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものではなく、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めもないから、本件訂正請求は、請求項〔1?11、14?19〕、12、13を訂正単位として訂正の請求をするものである。

(4)明細書の訂正に係る請求項について
訂正事項15?31、33及び35による訂正は明細書の訂正であるところ、当該明細書の訂正に関連する請求項の全てである請求項1?19について訂正が行われているといえるから、本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するものである。

3 訂正の適否についての結論
以上のとおり、上記訂正事項1?35は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、同条第9項で準用する同法第126条第4項?第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書及び本件訂正請求書の手続補正書に添付された補正後の訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?11、14?19〕、12、13について訂正することを認める。


第3 本件発明
本件訂正は、上記第2で検討したとおり適法なものであるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?19に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明19」といい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。)は、本件訂正請求書の手続補正書に添付された補正後の訂正特許請求の範囲の請求項1?19に記載された次のものである。

「【請求項1】
正極と、
負極と、
セパレータと、
電解液と、
前記正極と前記負極との間に介在し、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子含有樹脂層は、前記電解液を保持する機能を有し、
前記樹脂は、含フッ素樹脂または含フッ素ゴムであり、
前記粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、前記粒子含有樹脂層の強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、
前記粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、前記粒子の屈折率は1.3以上2.4未満であり、
前記粒子は、無機粒子および有機粒子の少なくとも何れかであり、
前記無機粒子は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、ベーマイト、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、リン酸トリリチウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、パイロフィライト、雲母、ゼオライト、ムライト、サポナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ドロマイト、スピネルからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記有機粒子は、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下である電池。
【請求項2】
正極と、
負極と、
セパレータと、
電解液と
を備え、
前記セパレータは、
セパレータ基材と、
該セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子含有樹脂層は、前記電解液を保持する機能を有し、
前記樹脂は、含フッ素樹脂または含フッ素ゴムであり、
前記粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、前記セパレータの強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、
前記粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、前記粒子の屈折率は1.3以上2.4未満であり、
前記粒子は、無機粒子および有機粒子の少なくとも何れかであり、
前記無機粒子は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、ベーマイト、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、リン酸トリリチウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、パイロフィライト、雲母、ゼオライト、ムライト、サポナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ドロマイト、スピネルからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記有機粒子は、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下である電池。
【請求項3】
前記平面は、結晶面、破砕面、および劈開面うちの少なくとも何れかを含む請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
前記樹脂は、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも何れかである請求項1から3のいずれか1項に記載の電池。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
前記粒子含有樹脂層は、前記電解液を前記樹脂により保持する請求項1から3、7のいずれか1項に記載の電池。
【請求項10】
前記粒子含有樹脂層は、前記電解液を前記樹脂および前記粒子の少なくとも何れかにより形成される空隙に保持する請求項1から3、7のいずれか1項に記載の電池。
【請求項11】
前記粒子含有樹脂層は、前記正極の一方の主面および他方の主面、前記負極の一方の主面および他方の主面、並びに、前記セパレータの一方の主面および他方の主面の中から選ばれた少なくとも一つの主面上に形成されたものである請求項1に記載の電池。
【請求項12】
セパレータ基材と、
該セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子含有樹脂層は、電解液を保持する機能を有し、
前記樹脂は、含フッ素樹脂または含フッ素ゴムであり、
前記粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、セパレータの強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、
前記粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、前記粒子の屈折率は1.3以上2.4未満であり、
前記粒子は、無機粒子および有機粒子の少なくとも何れかであり、
前記無機粒子は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、ベーマイト、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、リン酸トリリチウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、パイロフィライト、雲母、ゼオライト、ムライト、サポナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ドロマイト、スピネルからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記有機粒子は、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下であるセパレータ。
【請求項13】
電極と、
該電極の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子含有樹脂層は、電解液を保持する機能を有し、
前記樹脂は、含フッ素樹脂または含フッ素ゴムであり、
前記粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、前記粒子含有樹脂層の強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、
前記粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、前記粒子の屈折率は1.3以上2.4未満であり、
前記粒子は、無機粒子および有機粒子の少なくとも何れかであり、
前記無機粒子は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、ベーマイト、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、リン酸トリリチウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、パイロフィライト、雲母、ゼオライト、ムライト、サポナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ドロマイト、スピネルからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記有機粒子は、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下である粒子含有樹脂層付きの電極。
【請求項14】
請求項1から3、7、9から11のいずれか1項に記載の電池と、
前記電池を制御する制御部と、
前記電池を内包する外装と
を有する電池パック。
【請求項15】
請求項1から3、7、9から11のいずれか1項に記載の電池を有し、前記電池から電力の供給を受ける電子機器。
【請求項16】
請求項1から3、7、9から11のいずれか1項に記載の電池と、
前記電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
前記電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置と
を有する電動車両。
【請求項17】
請求項1から3、7、9から11のいずれか1項に記載の電池を有し、前記電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
【請求項18】
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え、
前記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、前記電池の充放電制御を行う請求項17に記載の蓄電装置。
【請求項19】
請求項1から3、7、9から11のいずれか1項に記載の電池を有し、前記電池から電力の供給を受け、または、発電装置もしくは電力網から前記電池に電力が供給される電力システム。」


第4 異議申立理由及び当審から通知した取消理由の概要
1 異議申立理由
特許異議申立人は、異議申立理由として以下(1)の証拠方法に基づき、以下(2)を概要とする理由を主張し、本件特許は取り消されるべき旨を申立てた。

(1)証拠方法
・甲第1号証:特開2010-92881号公報
・甲第2号証:特開2010-108753号公報
・甲第3号証:特開2008-66094公報
・甲第4号証:国際公開2012/057324号
・甲第5号証:協和化学工業株式会社ホームページ(http://kyowa-chem.jp/products/ind_material02.html)、ホームページ最下部のCopyright年は2014年、印刷日:2019年2月14日
・甲第6号証:片倉コープアグリ株式会社ホームページ(http://www.katakuraco-op.com/business/inorganic.html)、ホームページ最下部のCopyright年は2015年(印刷日:2019年2月14日)
・甲第7号証:樹脂などのフィラーの種類と特性、役割(https://www.toishi.info/sozai/filler/index.html)、ホームページ最下部のCopyright年は2009-2019(印刷日:2019年2月14日)
・甲第8号証:特開平1-123844号公報
・甲第9号証:特開平11-100498号公報
・甲第10号証:特開2005-259928号公報
・甲第11号証:特開2013-134861公報

(2)異議申立理由の概要
ア 異議申立理由1(新規事項)(異議申立書第31頁((4-3)))
審査段階の平成30年5月17日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

イ 異議申立理由2(サポート要件)(異議申立書第31?32頁((4-4)))
本件発明1?19は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

ウ 異議申立理由3(新規性進歩性)(異議申立書第32?50頁((4-5)))
(ア)本件訂正前の請求項1?5、7、8、10?12に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本件訂正前の請求項1?5、7、8、10?12に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と甲第5、7?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(イ)本件訂正前の請求項1?8、10?12に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本件訂正前の請求項1?8、10?12に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と甲第6?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(ウ)本件訂正前の請求項1?7、9、11、12に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本件訂正前の請求項1?7、9、11、12に係る発明は、甲第3号証に記載された発明と甲第7?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(エ)本件訂正前の請求項1?5、7、8、10?13に係る発明は、甲第4号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本件訂正前の請求項1?5、7、8、10?13に係る発明は、甲第4号証に記載された発明と甲第7?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(オ)本件訂正前の請求項14?19に係る発明は、甲第11号証に記載された発明と甲第1?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2 当審から通知した取消理由
(1)当審は、上記1(2)の異議申立理由を検討した結果、イの異議申立理由2(サポート要件)並びにウの異議申立理由3(新規性進歩性)の(ア)、(イ)、(エ)及び(オ)を取消理由1及び2として通知するとともに、当審が職権調査により発見した特許法第29条第2項(進歩性、訂正前の請求項9に係る発明に対して甲第1、2及び4号証を主引用例としたもの)を取消理由2の一部として、同第36条6項2号(明確性)を取消理由3として、令和1年6月17日付けで取消理由を通知した。

(2)その後、当審は、特許権者が提出した令和1年8月15日付け意見書及び訂正請求書並びに同年12月11日付け訂正請求書の手続補正書、申立人が提出した令和2年3月18日付け意見書を踏まえて検討した結果、本件訂正により、取消理由1(サポート要件)及び取消理由2(新規性進歩性)の取消理由は解消したが、依然として取消理由3(明確性)の取消理由があると判断し、令和2年5月25日付けで取消理由(決定の予告)を通知した。


第5 当審の判断
当審は、特許権者が提出した令和2年7月27日付け意見書を踏まえて検討した結果、以下のとおり、取消理由(決定の予告)は解消するとともに、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及びその他の理由によっても、本件請求項1?3、7及び9?19に係る特許を取り消すべき理由はないと判断した。

1 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
(1)取消理由(決定の予告)の概要(明確性)
本件発明は、電池、セパレータ又は電極において、正極と負極との間に介在するか、セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられるか、又は電極の少なくとも一方の主面に設けられる粒子含有樹脂層に含まれる粒子について、「粒子の平面率は40%超100%以下」を特定事項として含むものであるが、平面率の測定方法が明らかでなく、本件発明における「平面率」がどのようなものであるか不明であるため、本件発明は明確でない。

(2)特許権者の主張
特許権者は、令和1年8月15日及び令和2年7月27日付け意見書において、当該意見書に添付した乙第1号証及び乙第2-1号証(いずれも、写真、撮影対象 セパレータ、撮影日 平成25年4月18日、撮影者 青木学、撮影場所 福島県郡山市日和田町高倉字下杉下1-1 ソニーエナジー・デバイス(株)郡山事業所内、印刷日 令和1年8月13日)、乙第2-2号証(粒子全体の投影面積の図、印刷日 令和2年7月8日)並びに乙第2-3号証(粒子の非平面部分の投影面積の図、印刷日 令和2年7月8日)に基づいて、以下のとおり主張している。

「特許権者が提出した乙第1号証には、粒子含有樹脂層の写真が記載されている。このように、粒子含有樹脂層において粒子毎の境界が区別できる程度の写真は撮影可能なことから、かかる写真を用いて段落0041に記載された平面率の測定方法を適用し、「平面率」を測定することは当業者であれば十分可能である。」(令和1年8月15日付け意見書の8頁3?7行)



」(乙第1号証。以下、乙第1号証の写真を「乙1写真」という。)

「以下に、乙1写真、乙第2-1号証の写真(以下「乙2-1写真」」という。)、乙第2-2号証の写真(以下「乙2-2写真」という。)および乙第2-3号証の写真(以下「乙2-3写真」という。)を参照して、平面率の具体的な算出過程について説明する。なお、本願発明に係る粒子の形状において、SEMにより平面として観察される箇所は、結晶面、破砕面及び劈開面のいずれかに分類されるものである。
[1]粒子含有樹脂層11bの主面に対して垂直方向から、SEMにて、粒子含有樹脂層11bを観察し、体積基準の50%平均粒径(D50)前後のサイズの典型的形状の粒子10個の写真を撮影する(乙1写真、乙2-1写真参照)。なお、乙2-1写真は、乙1写真中に記載の拡大部分に対応するものである。
[2]撮影した写真から各粒子の粒子全体の投影面積S1を画像解析ソフト(ImageJ)で算出する(乙2-2写真参照)。乙2-2写真では、粒子全体の投影面積S1は、S1=24996nm^(2)である。
[3]撮影した写真のうち、粒子に相当する部分の輝度の変化率を解析することにより、各粒子について平面部分と非平面部分を識別し、当該非平面部分の面積S2を同ソフトにより算出する(乙2-3写真参照)。乙2-3写真では、非平面部の投影面積S2はS2=1175nm^(2)である。
SEM写真では、粒子を構成する面の形状に応じて輝度(二次電子放出量)が変化する。例えば、平面部分の輝度は略一定となるのに対して、非平面部分(例えば球面部分)の輝度は非平面部分の傾きに応じて変化する。したがって、SEM写真の輝度の変化率を解析することで、粒子の平面部分と非平面部分との境界を確定することができる。
[4]上述のようにして求めた粒子全体の投影面積S1及び非平面部分の投影面積S2を用いて、各粒子について、投影面積のうち、結晶面、破砕面、劈開面に相当する平面の投影面積S3(=S1-S2)を求め、粒子全体の投影面積S1に対する平面部分の投影面積S3の百分率R=((S3/S1)×100) を算出する。算出した各粒子の百分率Rの平均値を求め、平面率とする。乙2-2写真、乙2-3写真それぞれから求めた投影面積S1、投影面積S2を用いて上記百分率Rを求めると、R=((S1-S2)/S1)×100=((24996?1175)/24996)×100=95%である。」(令和2年7月27日付け意見書の6頁下から11行?7頁21行)

「乙1写真は、ベーマイトの写真である。」(令和2年7月27日付け意見書の7頁25行)



」(乙第2-1号証)



」(乙第2-2号証)



」(乙第2-3号証)

(3)特許権者の主張についての判断
上記(2)の特許権者の主張について、SEM写真では、「平面部分の輝度は略一定となるのに対して、非平面部分(例えば球面部分)の輝度は非平面部分の傾きに応じて変化する。したがって、SEM写真の輝度の変化率を解析することで、粒子の平面部分と非平面部分との境界を確定することができる。」という事項は、技術常識を踏まえれば合理的に理解できるし、画像解析ソフトを用いて輝度の変化率を解析できることも通常知られた技術手段であるといえるから、本件明細書に記載がなくとも、上記意見書における主張によって、結晶面、破砕面、劈開面に相当するものである平面率の測定方法が具体的に示され、本件発明における「平面率」がどのようなものであるか明らかになったと認められる。

(4)申立人の主張について
申立人は、令和2年3月18日付け意見書の14頁下から4行?15頁11行において、以下のとおり主張している。

ア「乙第1号証において拡大された粒子について、粒子の境界は区別できていても、いずれの箇所が結晶面、破砕面、劈開面に相当する面であって、結晶面、破砕面、劈開面に相当しない面がどこの箇所であるのかについて何らの説明もされておらず、これら区別が判然としない。

イ「乙第1号証がどの実施例に相当するのかは不明であり、仮に平面率100%に相当する例であるとすれば、本件特許発明が含む平面率100%未満(かつ40%超)の範囲にある例では、粒子がどのように観察され、いずれの箇所を平面と判断するのか不明である。」

ウ「乙第1号証が平面率100%未満の例であるとすれば、一つの粒子の拡大写真が示されるのみで、拡大写真において、いずれの箇所が平面と判断されるのか何らの説明もされていないし、また段落0041に示された測定方法によれば、D50前後のサイズの典型的形状の粒子10個の写真を撮影して、各粒子の平面率の平均値を本件特許発明における平面率としているとのことであるが、10個の粒子全てについてこのような測定が可能であり、かつ平均された結果が確かに実施例に記載された値になっていることが示されていない。」

しかしながら、上記ア及びイについては上記(2)の特許権者の主張により明らかとなったし、上記ウについては、少なくとも1つの粒子について測定可能なことが示されれば、他の粒子についても同様に測定可能であると認められるから、申立人の主張を採用することはできない。

(5)取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由についての小括
よって、本件発明1?3、7及び9?19が明確でないとはいえない。


2 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由及び当審が職権調査により発見した取消理由について
(1)異議申立理由1(新規事項)について
ア 申立人の主張の概要
訂正前の請求項1、13において、粒子は、「粒子含有樹脂層の強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し」と記載され、訂正前の請求項2、12において、粒子は、「セパレータの強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し」と記載されているが、当該記載は、平成30年5月17日付け手続補正書において追加されたものであって、同日付意見書で、これら補正は本件明細書の【0045】、【0125】、【0169】に基づくものである旨が説明されるが、【0125】には「粒子が含まれているのでゲル電解質56の強度や耐熱性、耐酸化性が向上する」と記載され、【0169】には「粒子含有樹脂層93bにより、セパレータ93の強度や耐熱性、耐酸化性が向上」すると記載されているのであり、「粒子」が「粒子含有樹脂層」又は「セパレータ」の強度等を向上させるとは記載されていないから、これら補正は新規事項の追加である。

イ 当審の判断
本件明細書の【0088】において、「ゲル電解質層56が、セパレータ基材11aに形成された電解液を含む粒子含有樹脂層11bに対応する。」と記載されているように、「ゲル電解質層56」は、「粒子含有樹脂層11b」にあたるものであって、同【0125】における「粒子が含まれているのでゲル電解質56の強度や耐熱性、耐酸化性が向上する」との記載から、「粒子」が、「ゲル電解質56」である「粒子含有樹脂層」の強度等を向上させることは明らかである。
また、セパレータは、セパレータ基材と、セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられる粒子含有樹脂層とを備えるものであって、上記のとおり、「粒子」が、「粒子含有樹脂層」の強度等を向上させることは明らかであるから、それによって、粒子含有樹脂層を備えるものであるセパレータも、強度等が向上することは、同様に明らかである。
したがって、「粒子」が「粒子含有樹脂層」又は「セパレータ」の強度等を向上させることは、本件明細書の記載から明らかであり、新たな技術事項を導入するものでない。

ウ 異議申立理由1(新規事項)についての小括
よって、本件発明1?3、7及び9?19は、新規事項を追加する補正をしたものではない。

(2)異議申立理由2(サポート要件)について
ア サポート要件を検討する観点
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

イ 発明の詳細な説明の記載について
(ア)発明の詳細な説明には、以下の記載がある。なお、下線は当審が付与し、「・・・」は記載の省略を表すものであって、以下同様である。

a「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
粒子を含有するゲル電解質等の粒子を含有する樹脂層を備えた電池では、これを形成するための塗料に白濁等が生じることに起因して、粒子を含有する樹脂層の厚みを高精度で管理することが難しかった。
【0007】
したがって、本技術の目的は、粒子を含有する樹脂層の厚みを高精度で管理することができる電池、セパレータ、電極、これらを用いた電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムを提供することにある。」

b「【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解消するために、本技術は、正極と、負極と、セパレータと、電解液と、正極と負極との間に介在し、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層とを備え、粒子含有樹脂層は、電解液を保持する機能を有し、粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、粒子含有樹脂層の強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、粒子の形状は平面を含み、且つ、粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、粒子の屈折率は1.3以上2.4未満である電池である。
本技術は、正極と、負極と、セパレータと、電解液とを備え、セパレータは、セパレータ基材と、セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層とを備え、粒子含有樹脂層は、電解液を保持する機能を有し、粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、セパレータの強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、粒子の形状は平面を含み、且つ、粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、粒子の屈折率は1.3以上2.4未満である電池である。
【0009】
本技術は、セパレータ基材と、セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層とを備え、粒子含有樹脂層は、電解液を保持する機能を有し、粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、セパレータの強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、粒子の形状は平面を含み、且つ、粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、粒子の屈折率は1.3以上2.4未満であるセパレータである。
【0010】
本技術は、電極と、電極の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層とを備え、粒子含有樹脂層は、電解液を保持する機能を有し、粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、粒子含有樹脂層の強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、粒子の形状は平面を含み、且つ、粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、粒子の屈折率は1.3以上2.4未満である粒子含有樹脂層付きの電極である。
【0012】
また、本技術の電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムは、上述の電池を備えることを特徴とする。」

c「【0025】
そこで、本技術では、粒子を含有する粒子含有樹脂溶液の透明度を向上させている。このため、電極およびセパレータの少なくとも何れかの表面上に形成する粒子含有樹脂溶液層の厚みを、粒子含有樹脂溶液の塗布工程の際に、リアルタイムで精度良く測定し調整することができるようになる。これにより、粒子含有樹脂溶液から溶媒を除去することにより形成される粒子含有樹脂層の厚みを、高精度で管理することができる。その結果、高い精度で厚みが管理された粒子含有樹脂層を備えた電池を提供することができる。このような電池では、粒子含有樹脂層の厚みの過不足による粒子含有樹脂層の機能劣化が抑制されるので、高安全性を保つことができる。」

d「【0037】
(フィラー)
粒子含有樹脂層11bに含まれるフィラーとしては、光の散乱を低減させて粒子含有樹脂層11bの前駆体である粒子含有樹脂溶液層の透明性を確保する観点から、平面を含む形状であり、且つ、所定の平面率を有し、且つ、所定の屈折率を有する粒子を用いる。例えば、アルミナ粒子等の白い無機物の粉体は、無色透明な粒子で構成されているが、光の散乱現象により白くなっている。本技術では、白くなる要因である光の散乱を抑制し、粒子含有樹脂層11bの前駆体の粒子含有樹脂溶液層の透明性を向上するために、フィラーとして、平面を含む形状であり、且つ、所定の平面率を有し、且つ所定の屈折率を有する粒子を用いている。」

e「【0248】
【表1】
・・・



f「【0296】
【表6】
・・・



g「【0341】
【表11】
・・・




h「【0387】
【表16】
・・・




(イ)上記(ア)a及びcの記載から、本件発明が解決しようとする課題(以下「本件課題」という。)は、「粒子を含有するゲル電解質等の粒子を含有する樹脂層を備えた電池では、これを形成するための塗料に白濁等が生じることに起因して、粒子を含有する樹脂層の厚みを高精度で管理することが難しかった」ことから、「粒子を含有する樹脂層の厚みを高精度で管理することができる電池、セパレータ、電極、これらを用いた電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムを提供すること」との記載によれば、粒子を含有する樹脂層の厚みを高精度で管理するために、粒子を含有する樹脂層を形成するための塗料に白濁を生じさせず、透明度を向上させることにあるといえる。

(ウ)そして、上記b及びdの記載からみれば、本件課題を解決する手段は、粒子含有樹脂層における粒子について、「粒子の形状は平面を含み、且つ、粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、粒子の屈折率は1.3以上2.4未満」とすることにあると一応理解できる。

(エ)しかしながら、上記e?hの比較例1-2、6-2、11-2及び16-2では、いずれも、粒子であるフィラーの材料種が「酸化セリウム」であって、平面率75%及び屈折率2.2%と、上記エの平面率及び屈折率の範囲を満たすにもかかわらず、その外観は「濃い白濁」であって、レーザー計測の合否判定は「不合格」となっていることから、上記エの解決手段のみによって本件課題が解決できるとはいえず、本件課題が解決できると認識できる範囲は、実施例における以下の特定の材料種を粒子として用いた場合であると理解せざるを得ない。

<特定の材料種>
1 ベーマイト
2 タルク
3 酸化亜鉛
4 酸化スズ
5 酸化ケイ素
6 酸化マグネシウム
7 酸化アンチモン
8 酸化アルミニウム
9 硫酸マグネシウム
10 硫酸カルシウム
11 硫酸バリウム
12 硫酸ストロンチウム
13 炭酸マグネシウム
14 炭酸カルシウム
15 炭酸バリウム
16 炭酸リチウム
17 水酸化マグネシウム
18 水酸化アルミニウム
19 水酸化亜鉛
20 炭化ホウ素
21 窒化ケイ素
22 窒化ホウ素
23 窒化アルミニウム
24 窒化チタン
25 フッ化リチウム
26 フッ化アルミニウム
27 フッ化カルシウム
28 フッ化バリウム
29 フッ化マグネシウム
30 リン酸トリリチウム
31 リン酸マグネシウム
32 リン酸水素マグネシウム
33 ケイ酸カルシウム
34 ケイ酸亜鉛
35 ケイ酸ジルコニウム
36 ケイ酸アルミニウム
37 ケイ酸マグネシウム
38 スピネル
39 ハイドロタルサイト
40 ドロマイト
41 カオリナイト
42 セピオライト
43 イモゴライト
44 セリサイト
45 パイロフィライト
46 雲母
47 ゼオライト
48 ムライト
49 サポナイト
50 アタパルジャイト
51 モンモリロナイト
52 メラミン
53 ポリリン酸アンモニウム
54 メラミンシアヌレート
55 ポリリン酸メラミン

ウ 発明との詳細な説明に記載された発明と本件発明との対比
上記イ(オ)のとおりであるところ、本件発明は、粒子の材料種を上記イ(オ)のとおりに特定していることから、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲を超えるものでない。

エ 申立人の主張について
(ア)申立人は、令和2年3月18日付け意見書の9頁1行?10頁19行において、「本件課題は、粒子を含有する樹脂層を形成するための塗料(粒子含有樹脂溶液)に白濁を生じさせず、透明度を向上させることにある」ところ、「粒子含有樹脂層の透明性は、訂正後の本件特許発明での特定事項に加えて、更に樹脂のより具体的な材料種、粒子の形状及び大きさ、また樹脂との組み合わせによっても影響を受けるものである。樹脂が「含フッ素樹脂」という概念において共通していても、より具体的な構造又は組成が異なれば粒子含有樹脂層の透明性は異なり、粒子の形状及び大きさによって光の進路が変わるため透明性に影響し、また樹脂と粒子の屈折率差や親和性によっても透明性が変化し得るからである。しかしながら、実施例にて透明度の向上効果を確かめているのは、含フッ素樹脂または含フッ素ゴムとの構成要件の中でも、PVdFのみであり、PVdF以外の含フッ素樹脂または含フッ素ゴムを用いたときにも、同様の透明度の向上効果が得られるかどうかについて、発明の詳細な説明からは明らかではない。また、粒子と樹脂との組み合わせという観点から、PVdFと、表に挙げられた特定材料の粒子の組み合わせにおいては透明性向上効果が確認されているが、PVdF以外のフッ素樹脂と表に挙げられた特定材料の粒子の組み合わせで、同様の透明性向上効果が得られるかどうかについては明らかではない。更に、本件特許発明で特定される粒子と樹脂の質量比についても、PVdFと表に挙げられた特定材料の粒子の組み合わせにおいてそのような範囲で透明性が確認されているのみで、PVdF以外の樹脂と特定材料の粒子においても同様の範囲で透明性が確保できるかどうかについて明らかではない。」旨主張している。

(イ)しかしながら、本件発明がサポート要件を満たすのは上記イのとおりであるし、粒子含有樹脂溶液層の透明性は、上記イ(ア)dに摘示したように、粒子による影響が大きいものと認められるところ、実施例において実証されているPVdF以外の含フッ素樹脂又は含フッ素ゴムを用いたときに、透明度の向上効果が得られないことについて、申立人は何らかの証拠や技術常識に基づいた立証をしていないから、申立人の上記(ア)の主張を採用することはできない。

(ウ)また、申立人は、令和2年3月18日付け意見書の10頁20行?11頁19行において、「本件特許発明の効果を確認する方法として、粒子含有樹脂層を、レーザー及び接触式厚み計によってそれぞれ測定し、それぞれの厚みを対比している。この厚み測定は、段落0233、0234、0243、0244に記載される様に、レーザー計測については、粒子含有樹脂層を形成するための塗料(溶媒はNMP)を基材に塗布し、塗料膜の厚みを計測しており、一方、接触式厚み計による計測では、作製した電池を解体して、粒子含有樹脂層のマトリックス高分子化合物が電解液を吸って膨潤したゲル電解質層の厚みを測定している。そして、段落0244には、「なお、粒子含有樹脂層の厚さは、これに含まれる溶媒(溶剤)の体積に依存する。すなわち、レーザー厚み計で測定したNMPを含む塗料膜の厚さと、接触式厚み計によって測定した電解液を含む粒子含有樹脂層(ゲル電解質層)の厚さとは、粒子含有樹脂層に含まれる溶媒種は異なるが、含まれる溶媒(溶剤)の量が同体積の場合、これらは同じ厚さになる」と記載される。このように、「含まれる溶媒(溶剤)の量が同体積の場合」との前提の下、両測定法による厚みを対比している。しかし、本件特許発明の効果が得られるというためには、「含まれる溶媒(溶剤)の量が同体積の場合」との要件、すなわち、マトリックス高分子化合物に含まれる電解液の量が、マトリックス高分子化合物に含まれるNMPの量と同体積になるという要件を満たす必要があり、このような要件を満たすことが示されているのは、 電解液として炭酸エチレンと炭酸ジメチルとを混合した非水溶媒に対して六フッ化リン酸リチウムを溶解させたものである。電解液の種類が異なれば、マトリックス高分子化合物が電解液を吸収する量は異なり、またマトリックス高分子化合物と電解液の組み合わせによってもその吸収性は異なる。しかし、本件特許発明では電解液とマトリックス高分子化合物(樹脂)の組み合わせが特定されていないことはもちろんのこと、電解液の種類さえ特定されていないから、これらが特定されていない本件特許発明の全範囲に亘って、本件特許発明の効果が確認できるかどうかは、発明の詳細な説明からは明らかではない。従って、電解液が特定されていない観点からも本件特許発明はサボート要件を満たしていない。」旨主張している。

(エ)しかしながら、上記(ウ)の主張は、異議申立書においてなされた主張ではないし、本件訂正によって生じた理由に基づく主張でもない新たな主張であるから、これを採用することはできない。

オ 異議申立理由2(サポート要件)についての小括
以上のとおりであるから、本件発明1?3、7及び9?19が発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。


(3)異議申立理由3(新規性進歩性)について
ア 甲第1?11号証の記載事項と引用発明
(ア)甲第1号証
a 上記甲第1号証には、以下の記載がある。

(1a)「【請求項1】
ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の面に、耐熱性樹脂を含む耐熱性多孔質層が被覆された非水系二次電池用セパレータにおいて、
水銀圧入法により求めた該耐熱性多孔質層の平均孔径が0.1?0.2μmであり、
水銀圧入法により求めた前記ポリオレフィン微多孔膜の平均孔径が0.05?0.5μmであり、
前記耐熱性多孔質層が、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムからなる無機フィラーを含むことを特徴とする非水系二次電池用セパレータ。
・・・
【請求項5】
前記耐熱性多孔質層の空孔率が20?80%であることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項6】
前記耐熱性樹脂が全芳香族ポリアミドであることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項7】
前記全芳香族ポリアミドがメタ型全芳香族ポリアミドであることを特徴とする請求項6に記載の非水系二次電池用セパレータ。」

(1b)「【0003】
リチウムイオン二次電池の安全性確保においてセパレータの役割は重要であり、・・・現状ではポリエチレン微多孔膜が用いられている。」

(1c)「【0033】
(無機フィラー)
本発明において、耐熱性多孔質層は無機フィラーを含むことが好ましい。耐熱性多孔質層に無機フィラーが含まれると、セパレータが高温度になった際の熱収縮が抑制され、更にセパレータの圧縮強度が強固になる。その結果、二次電池用セパレータの耐熱性を向上させる効果が生じる。また、無機フィラー自体の特有の機能(例えば耐熱性や熱伝導性、難燃性、ガス吸収性等)をセパレータの機能に付加できる点でも好ましい。」

(1d)「【0062】
(非水系二次電池)
本発明の非水系二次電池用セパレータは、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る形態の非水系二次電池であれば、いかなる形態の非水系二次電池においても適用可能である。一般的な非水系二次電池は、負極と正極がセパレータを介して対向している電池要素に電解液が含浸され、これが外装に封入された構造となっている。」

(1e)「【0114】
[実施例1-1]
ポリエチレンパウダーとしてTicona社製のGUR2126(重量平均分子量415万、融点141℃)とGURX143(重量平均分子量56万、融点135℃)を用いた。・・・ポリエチレン微多孔膜を得た。」

(1f)「【0115】
メタ型全芳香族ポリアミドであるコーネックス(登録商標;帝人テクノプロダクツ社製)を、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)が重量比60:40となっている混合溶媒に溶解させた。このポリマー溶液に、無機フィラーとして平均粒子径0.8μmの水酸化アルミニウム(昭和電工社製;H-43M)を分散させて、塗工液を作製した。なお、塗工液におけるコーネックスの濃度は5.0重量%となるように、かつ、コーネックスと水酸化アルミニウムの重量比が15:85(体積比24:76)となるように調整した。そして、マイヤーバーを2本対峙させ、その間に塗工液を適量のせた。上述のようにして作製したポリエチレン微多孔膜を、塗工液がのっているマイヤーバー間を通過させて、ポリエチレン微多孔膜の表裏面に塗工液を塗工した。ここで、マイヤーバー間のクリアランスは30μmに設定し、マイヤーバーの番手は2本とも#6を用いた。これを重量比で水:DMAc:TPG=40:36:24で30℃となっている凝固液中に浸漬し、次いで水洗・乾燥を行った。これにより、ポリエチレン微多孔膜の表裏両面に耐熱性多孔質層が形成された、本発明の非水系二次電池用セパレータを得た。当該セパレータにおいて、耐熱性多孔質層の塗工量は両面で5.63g/m^(2)であり、耐熱性多孔質層の空孔率は63%であった。当該セパレータ全体の膜厚は20μm、空孔率は53%、突刺強度は346gであった。」

(1g)「【0119】
[実施例1-3]
無機フィラーとして、平均粒子径0.8μmの水酸化マグネシウム(協和化学工業社製;キスマ5P)を用いた点以外は、実施例1-1と同様にして、本発明の非水系二次電池用セパレータを得た。当該セパレータにおいて、耐熱性多孔質層の塗工量は両面で5.05g/m^(2)であり、耐熱性多孔質層の空孔率は66%であった。当該セパレータ全体の膜厚は20μm、空孔率は54%、突刺強度は351gであった。」

b 上記記載事項(1a)?(1g)より、甲第1号証には、実施例1-3に注目すると、以下の2つの発明が記載されていると認められる(以下「引用発明1-1」及び「引用発明1-2」という。)。

<引用発明1-1>
「負極と正極がセパレータを介して対向している電池要素に電解液が含浸された非水系二次電池であって、
セパレータは、ポリエチレン微多孔膜の表裏両面に、耐熱性樹脂を含む耐熱性多孔質層が被覆されたものであり、
前記耐熱性多孔質層が、水酸化マグネシウム(協和化学工業社製;キスマ5P)からなる無機フィラーを含み、
前記耐熱性樹脂が、メタ型全芳香族ポリアミドであるコーネックス(登録商標;帝人テクノプロダクツ社製)であり、
コーネックスと水酸化マグネシウムの重量比が15:85であり、
耐熱性多孔質層の空孔率は66%であり、
耐熱性多孔質層に無機フィラーが含まれると、セパレータが高温度になった際の熱収縮が抑制され、更にセパレータの圧縮強度が強固になり、その結果、二次電池用セパレータの耐熱性を向上させる効果が生じ、無機フィラー自体の特有の機能である難燃性をセパレータの機能に付加できる、
電池。」

<引用発明1-2>
「ポリエチレン微多孔膜の表裏両面に、耐熱性樹脂を含む耐熱性多孔質層が被覆されたセパレータであって、
前記耐熱性多孔質層が、水酸化マグネシウム(協和化学工業社製;キスマ5P)からなる無機フィラーを含み、
耐熱性多孔質層の空孔率は66%であり、
耐熱性多孔質層に無機フィラーが含まれると、セパレータが高温度になった際の熱収縮が抑制され、更にセパレータの圧縮強度が強固になり、その結果、二次電池用セパレータの耐熱性を向上させる効果が生じ、無機フィラー自体の特有の機能である難燃性をセパレータの機能に付加できる、
セパレータ。」

(イ)甲第2号証
a 上記甲第2号証には、以下の記載がある。

(2a)「【請求項1】
主としてポリオレフィンにて形成されシャットダウン機能を有する微多孔膜と、主として耐熱性樹脂にて形成され前記微多孔膜の片面又は両面に積層された耐熱性多孔質層とを備えた非水系二次電池用セパレータにおいて、
該セパレータが板状の無機フィラーを含有しており、
前記耐熱性多孔質層の空孔率が、60?90%であることを特徴とする非水系二次電池用セパレータ。
・・・
【請求項3】
前記板状の無機フィラーが、前記耐熱性多孔質層に含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項4】
前記板状の無機フィラーが、前記耐熱性多孔質層において重量分率で50重量%以上95重量%以下含まれていることを特徴とする請求項3に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項5】
前記板状の無機フィラーが、雲母、モンモリロナイト、膨潤性合成雲母、窒化ホウ素、板状アルミナ及びベーマイトからなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項6】
前記耐熱性樹脂が、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミドからなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1?5のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
・・・
【請求項8】
リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池において、請求項1?6のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータを用いることを特徴とする非水系二次電池。」

(2b)「【0002】
・・・リチウムイオン二次電池の安全性確保においてセパレータの役割は重要であり、シャットダウン機能を有するという観点から、現状ではポリオレフィン、特にポリエチレン微多孔膜が用いられている。」

(2c)「【0023】
本発明のセパレータ構成において、耐熱性多孔質層はセパレータに耐熱性を付与する機能があるが、この層に前記のような板状の無機フィラーを添加することで、高温時の短絡防止や寸法安定性といった観点から耐熱性多孔質層の耐熱性をより向上させることができる。」

(2d)「【0036】
[非水系二次電池]
非水系二次電池用セパレータが、前記のようなポリオレフィンを主として形成された微多孔膜と、その片面又は両面に積層された前記のような耐熱性樹脂を主として形成された耐熱性多孔質層とからなるものである限り、本発明の非水系二次電池用セパレータは、公知のいかなる構成の非水系二次電池にも適用することができ、安全性に優れた電池が得られる。」

(2e)「【0038】
一般に非水系二次電池とは、負極と正極がセパレータを介して対向している電池要素に電解液が含浸され、これが外装に封入された構造となっているものをいう。」

(2f)「【0049】
[実施例1]
ポリエチレンパウダーとしてTicona社製のGUR2126(重量平均分子量415万、融点141℃)とGURX143(重量平均分子量56万、融点135℃)を用いた。・・・ポリエチレン微多孔膜を得た。」

(2g)「【0050】
メタ型全芳香族ポリアミドであるコーネックス(登録商標;帝人テクノプロダクツ社製)と平均粒子径1μmのベーマイト(アスペクト比:12)が重量比20:80となるように調整し、これらをコーネックスが5.0重量%となるように、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)が重量比60:40となっている混合溶媒にコーネックスを溶解し、ベーマイトは分散することで塗工液を作製した。マイヤーバーを2本対峙させ、その間に塗工液を適量のせた。前記ポリエチレン微多孔膜を塗工液がのっているマイヤーバー間を通過させて、微多孔膜の表裏面に塗工液を塗工した。ここでマイヤーバー間のクリアランスは30μm、マイヤーバーの番手は2本とも#6を用いた。これを重量比で水:DMAc:TPG=70:18:12で30℃となっている凝固液中に浸漬し、次いで水洗・乾燥を行い、このポリエチレン微多孔膜の表裏面に耐熱性多孔質層を形成した。」

(2h)「【0052】
[実施例2]
メタ型全芳香族ポリアミドであるコーネックス(登録商標;帝人テクノプロダクツ社製)と平均粒子径1μmのベーマイトが重量比20:80となるように調整し、これらをコーネックスが5.5重量%となるように、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)が重量比60:40となっている混合溶媒にコーネックスを溶解し、ベーマイトは分散することで塗工液を作製した以外は、実施例1と同様にして本発明の非水系二次電池用セパレータを作製した。」

(2h)「【0054】
[実施例4]
ベーマイトを合成マイカである平均粒子径1.7μm(アスペクト比:20)のミクロマイカMK-100F(コープケミカル社製)に変更した以外は、実施例2と同様にして本発明の非水系二次電池用セパレータを作製した。耐熱性多孔質層の空孔率は70%・・・であった。」

b 上記記載事項(2a)?(2h)より、甲第2号証には、実施例4に注目すると、以下の2つの発明が記載されていると認められる(以下「引用発明2-1」及び「引用発明2-2」という。)。

<引用発明2-1>
「負極と正極がセパレータを介して対向している電池要素に電解液が含浸された非水系二次電池であって、
セパレータは、ポリエチレン微多孔膜と、主として耐熱性樹脂にて形成され前記微多孔膜の表裏両面に積層された耐熱性多孔質層とを備え、
前記板状の無機フィラーが、前記耐熱性多孔質層に含まれ、
前記板状の無機フィラーを添加することで、耐熱性多孔質層の耐熱性をより向上させることができ、
前記板状の無機フィラーが、合成マイカであるミクロマイカMK-100F(コープケミカル社製)であり、
前記耐熱性樹脂が、メタ型全芳香族ポリアミドであるコーネックス(登録商標;帝人テクノプロダクツ社製)であり、
前記コーネックスと前記ミクロマイカMK-100Fの重量比が20:80であり、
耐前記熱性多孔質層の空孔率は70%である、
非水系二次電池。」

<引用発明2-2>
「ポリエチレン微多孔膜と、主として耐熱性樹脂にて形成され前記微多孔膜の表裏両面に積層された耐熱性多孔質層とを備えた非水系二次電池用セパレータにおいて、
前記板状の無機フィラーが、前記耐熱性多孔質層に含まれ、
前記板状の無機フィラーを添加することで、耐熱性多孔質層の耐熱性をより向上させることができ、
前記板状の無機フィラーが、合成マイカであるミクロマイカMK-100F(コープケミカル社製)であり、
耐前記熱性多孔質層の空孔率は70%である、
非水系二次電池用セパレータ。」

(ウ)甲第3号証
a 上記甲第3号証には、以下の記載がある。

(3a)「【0023】
また、本発明のセパレータに係る鱗片状粒子(B)は、例えば分散媒などに分散した分散液の状態から、乾燥により分散媒を除去した後には、複数の粒子が積層した状態を取り易い。そのため、鱗片状粒子(B)は、セパレータ内において積層した状態で存在しており、セパレータを折り曲げた場合には、積層した鱗片状粒子(B)の表層数層が崩れて応力が開放され、それ以上の破壊が進行し難いため、セパレータには割れ(クラック)が生じ難い。」

(3b)「【0047】
また、セパレータにシャットダウン機能を付与するために、80?130℃で溶融する熱溶融性粒子(D)や、非水電解液中で膨潤でき、かつ温度の上昇により膨潤度が増大する膨潤性粒子(E)を添加することも可能である。また、セパレータには、熱溶融性粒子(D)と膨潤性粒子(E)の両者を添加してもよく、これらの複合体を添加しても構わない。」

(3c)「【0052】
非水電解液中で膨潤でき、かつ温度の上昇により膨潤度が増大する膨潤性粒子(E)は、これを用いたセパレータを備えた電池が高温に曝されると、膨潤性粒子(E)における温度上昇に伴って膨潤度が増大する性質(以下、「熱膨潤性」という場合がある)により、膨潤性粒子(E)が電池内の電解液を吸収して膨潤する。」

(3d)「【0115】
実施例1
鱗片状粒子(B)であるシリカの水スラリー(固形分濃度15質量%、アスペクト比50、平均粒径0.5μm)200g、無機粒子(C)であるシリカ(平均粒径3μm)1000g、バインダ(F)であるSBRラテックス(固形分濃度3質量%)108g、および水1000gを容器に入れ、スリーワンモーターで1時間攪拌して分散させ、均一なスラリーを得た。このスラリー中に、厚みが15μmのPET製不織布を通し、引き上げ塗布によりスラリーを塗布した後、乾燥して、厚みが20μmのセパレータを得た。」

(3e)「【0119】
実施例3
無機粒子(C)を、板状ベーマイト(平均粒径1μm)1000gに変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。」

(3f)「【0121】
実施例4
無機粒子(C)を、板状αアルミナ(平均粒径2μm)1000gに変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。」

(3g)「【0123】
実施例5
鱗片状粒子(B)を、マイカ(アスペクト比30、平均粒径1?2μm)20gに変更した以外は、実施例3と同様にしてセパレータを作製した。」

(3h)「【0129】
実施例8
膨潤性粒子(E)である架橋PMMAを含むエマルジョン[ガンツ化成社製「スタフィロイドAC-3364(商品名)」、平均粒径0.1μm]250gを更に加えた以外は、実施例3と同様にしてスラリーを調製し、このスラリーを用いた以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。」

(3i)「【0131】
実施例9
膨潤性粒子(E)である架橋PMMAを含むエマルジョン[ガンツ化成社製「スタフィロイドAC-3364(商品名)」、平均粒径0.1μm]250gを更に加えた以外は、実施例4と同様にしてスラリーを調製し、このスラリーを用いた以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。」

(3j)「【0133】
実施例10
膨潤性粒子(E)である架橋PMMAを含むエマルジョン[ガンツ化成社製「スタフィロイドAC-3364(商品名)」、平均粒径0.1μm]250gを更に加えた以外は、実施例5と同様にしてスラリーを調製し、このスラリーを用いた以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。」

(3k)「【0149】
実施例11
<負極の作製>
・・・
【0150】
<正極の作製>
・・・
【0151】
<電池の組み立て>
上記のようにして得られた正極と負極とを、実施例1のセパレータを介して渦巻状に巻回して巻回構造の電極群とした。この電極群を押しつぶして扁平状にし、大日本印刷製ラミネートフィルム外装材内に装填し、電解液(エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを1:2の体積比で混合した溶媒に、LiPF_(6)を1.2mol/lの濃度で溶解させた溶液)を注入し、真空封止を行ってリチウム二次電池を作製した。
【0152】
実施例12?20、比較例9?16
セパレータを、実施例2?10または比較例1?8のものに変更した以外は、実施例11と同様にしてリチウム二次電池を作製した。」

b 上記記載事項(3a)?(3k)より、甲第3号証には、実施例18及び8(実施例3によるもの)もしくは実施例19及び9(実施例4によるもの)又は実施例20及び10(実施例5によるもの)に着目すると、以下の2つの発明が記載されていると認められる(以下「引用発明3-1」及び「引用発明3-2」という。)。

<引用発明3-1>
正極と負極とを、
鱗片状粒子(B)であるシリカ(アスペクト比50)の水スラリー、無機粒子(C)である板状ベーマイトもしくは板状αアルミナ、バインダ(F)であるSBRラテックス、非水電解液中で膨潤できる膨潤性粒子(E)である架橋PMMAを含むエマルジョン[ガンツ化成社製「スタフィロイドAC-3364(商品名)」]、および水を分散させて得た均一なスラリー中に、
又は、
鱗片状粒子(B)であるマイカ(アスペクト比30)の水スラリー、無機粒子(C)である板状ベーマイト、バインダ(F)であるSBRラテックス、非水電解液中で膨潤できる膨潤性粒子(E)である架橋PMMAを含むエマルジョン[ガンツ化成社製「スタフィロイドAC-3364(商品名)」]、および水を分散させて得た均一なスラリー中に、
PET製不織布を通し、引き上げ塗布によりスラリーを塗布した後、乾燥して得たセパレータ
を介して渦巻状に巻回して巻回構造とした電極群を押しつぶして扁平状にし、大日本印刷製ラミネートフィルム外装材内に装填し、電解液を注入し、真空封止を行って作製したリチウム二次電池。

<引用発明3-2>
鱗片状粒子(B)であるシリカ(アスペクト比50)の水スラリー、無機粒子(C)である板状ベーマイトもしくは板状αアルミナ、バインダ(F)であるSBRラテックス、非水電解液中で膨潤できる膨潤性粒子(E)である架橋PMMAを含むエマルジョン[ガンツ化成社製「スタフィロイドAC-3364(商品名)」]、および水を分散させて得た均一なスラリー中に、
又は、
鱗片状粒子(B)であるマイカ(アスペクト比30)の水スラリー、無機粒子(C)である板状ベーマイト、バインダ(F)であるSBRラテックス、非水電解液中で膨潤できる膨潤性粒子(E)である架橋PMMAを含むエマルジョン[ガンツ化成社製「スタフィロイドAC-3364(商品名)」]、および水を分散させて得た均一なスラリー中に、
PET製不織布を通し、引き上げ塗布によりスラリーを塗布した後、乾燥して得たセパレータ。」

(エ)甲第4号証
a 上記甲第4号証には、以下の記載がある。

(4a)「[請求項1] 非導電性粒子、及びバインダーを含んでなり、
前記バインダーが、ニトリル基、親水性基、及び炭素数が4以上の直鎖アルキレン構造単位を同一の分子内に含んでなる重合体からなり、前記バインダーを構成する重合体における前記ニトリル基の含有割合が1?25質量%であり、該重合体のヨウ素価が0mg/100mg以上30mg/100mg以下である二次電池多孔膜。
・・・
[請求項6] 前記多孔膜用を構成する固形分全量中の、前記非導電性粒子の含有割合が70?97重量%であり、
前記バインダーの含有割合が0.5?15重量%である請求項1?5のいずれかに記載の二次電池多孔膜。
・・・
[請求項10] 電極合剤層用バインダー及び電極活物質を含んでなる電極活物質層が、集電体に付着してなり、かつ電極活物質層の表面に、請求項1?7の何れかに記載の多孔膜が積層されてなる、二次電池用電極。
[請求項11] 有機セパレータ上に、請求項1?7の何れかに記載の多孔膜が積層されてなる、二次電池用セパレータ。
[請求項12] 正極、負極、セパレータ及び電解液を含む二次電池であって、前記正極、負極及びセパレータの少なくともいずれかに、請求項1?7の何れかに記載の多孔膜が積層されてなる、二次電池。」

(4b)「[0005] 例えば、特許文献1(特開2005-327680号公報)では、アクリロニトリル基を含むゴム粒子をバインダーとし、非導電性の無機酸化物であるアルミナ粒子をフィラーとして含むペーストを電極に塗布することにより多孔膜を作成している。このような多孔膜を設けることで、電池の作成過程における活物質の脱離を防止し、また電池作動時の短絡を防止している。さらに多孔膜が多孔性であるため、多孔膜中に電解液が浸透し、電池反応を阻害することもない。」

(4c)「 [0026](バインダー)
バインダーは、ニトリル基、親水性基、及び直鎖アルキレン構造単位を同一の分子内に含んでなる重合体からなる。
・・・
[0029] 本発明において、親水性基とは、水性溶媒中でプロトンを遊離する官能基及び、プロトンがカチオンに置換された塩のことをいい、具体的には、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基およびこれらの塩などが挙げられる。
[0030] バインダーを構成する重合体中に親水性基を導入することで非導電性粒子間及び非導電性粒子と基材との間の接着性が向上し、多孔膜の製造工程における非導電性粒子の剥落(粉落ち)を低減できる。
・・・
[0037] 上記のように、バインダーを構成する重合体は、ニトリル基、親水性基、及び直鎖アルキレン構造単位を同一の分子内に含む。このような重合体は、ニトリル基を有する単量体単位を導く単量体、親水性基を有する単量体単位を導く単量体および、直鎖アルキレン構造単位を導く単量体を重合して得られる。なお、直鎖アルキレン構造単位は、不飽和結合を有する構造単位を有する重合体を得た後に、これを水素添加して形成することができる。
[0038] 以下、該重合体の製造方法について、説明する。
・・・
[0039] 親水性基の導入は、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基およびこれらの塩などを含む単量体を重合して行われる。
[0040] カルボン酸基を有する単量体としては、モノカルボン酸及びその誘導体やジカルボン酸、及びこれらの誘導体などが挙げられる。モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。モノカルボン酸誘導体としては、2-エチルアクリル酸、イソクロトン酸、α?アセトキシアクリル酸、β-trans-アリールオキシアクリル酸、α-クロロ-β-E-メトキシアクリル酸、β-ジアミノアクリル酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。ジカルボン酸誘導体としては、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸などマレイン酸メチルアリル、マレイン酸ジフェニル、マレイン酸ノニル、マレイン酸デシル、マレイン酸ドデシル、マレイン酸オクタデシル、マレイン酸フルオロアルキルなどのマレイン酸エステル;が挙げられる。また、加水分解によりカルボキシル基を生成する酸無水物も使用ジカルボン酸の酸無水物としては、無水マレイン酸、アクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸などが挙げられる。」

(4d)「[0068](非導電性粒子)
本発明に用いる非導電性粒子は、二次電池(リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池など)の使用環境下で安定に存在し、電気化学的にも安定であることが望まれる。非導電性粒子としては、例えば各種の無機粒子や有機粒子を使用することができる。電池の性能に悪影響を及ぼす金属のコンタミネーション(以下において「金属異物」と表すことがある。)が少ない粒子を低コストで製造できる点からは、有機粒子が好ましい。
[0069] 無機粒子としては、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化チタン、BaTiO_(2)、ZrO、アルミナ-シリカ複合酸化物等の酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化硼素等の窒化物粒子;シリコーン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶粒子;硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム等の難溶性イオン結晶粒子;タルク、モンモリロナイトなどの粘土微粒子等が用いられる。これらの粒子は必要に応じて元素置換、表面処理、固溶体化等されていてもよく、また単独でも2種以上の組合せからなるものでもよい。これらの中でも電解液中での安定性と電位安定性の観点から酸化物粒子であることが好ましい。
[0070] 有機粒子としては、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体架橋物、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド縮合物などの各種架橋高分子粒子や、ポリスルフォン、ポリアクリロニトリル、ポリアラミド、ポリアセタール、熱可塑性ポリイミドなどの耐熱性高分子粒子などが例示できる。また、これらの有機粒子を構成する有機樹脂(高分子)は、前記例示の材料の混合物、変性体、誘導体、共重合体(ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体)、架橋体(前記の耐熱性高分子の場合)であってもよい。」

(4e)「[0088] 多孔膜中における非導電性粒子の含有量は、好ましくは70?97質量%、より好ましくは75?97質量%、特に好ましくは80?97質量%である。多孔膜中における非導電性粒子の含有量を、前記範囲とすることにより、高い熱安定性を示す多孔膜を得ることができる。また、非導電性粒子の多孔膜からの脱離(粉落ち)を抑制することができるため、高い強度を示す多孔膜を得ることができる。」

(4f)「[0176] <1-5.多孔膜用バインダーの調整>
全固形分濃度を12重量%に調整したニトリルゴム-L1を400ミリリットル(全固形分48グラム)、撹拌機付きの1リットルオートクレーブに投入し、窒素ガスを10分間流してニトリルゴム中の溶存酸素を除去した後、水素添加触媒として、酢酸パラジウム75mgを、Pdに対して4倍モルの硝酸を添加した水180mlに溶解して、添加した。系内を水素ガスで2回置換した後、3MPaまで水素ガスで加圧した状態でオートクレーブの内容物を50℃に加温し、6時間水素添加反応(「第一段階の水素添加反応」という)させた。このとき、ニトリルゴムのヨウ素価は35であった。
[0177] 次いで、オートクレーブを大気圧にまで戻し、更に水素添加触媒として、酢酸パラジウム25mgを、Pdに対して4倍モルの硝酸を添加した水60mlに溶解して、添加した。系内を水素ガスで2回置換した後、3MPaまで水素ガスで加圧した状態でオートクレーブの内容物を50℃に加温し、6時間水素添加反応(「第二段階の水素添加反応」という)させた。
[0178] その後、内容物を常温に戻し系内を窒素雰囲気とした後、エバポレータを用いて、固形分濃度が40%となるまで濃縮してヨウ素価7の多孔膜用バインダーの水分散液を得た。多孔膜用バインダーの水分散液から、上記「ヨウ素価の測定」に記載した方法と同様にして乾燥体を得、NMRで分析したところ、ニトリル基が重合体全量に対して17質量%、炭素数4の共役ジエンモノマーから導かれる重合単位を水素添加した直鎖アルキレン構造単位が54.1質量%、カルボン酸基が2.6質量%であった。
[0179] <1-6.多孔膜用スラリーの製造>
増粘剤として、エーテル化度が0.8?1.0で、1%水溶液粘度が10?20mPa・sであるカルボキシメチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社製、ダイセル1220)を用いて、1%水溶液を調製した。
[0180] 工程<1-3>で得た非導電性粒子の水分散体、工程<1-5>で得た多孔膜用バインダーの水分散液及びカルボキシメチルセルロースの1%水溶液を、固形分重量比が83.1:6.15:4.6となるように水中で混合し、更に溶媒として水を加えて、ビーズミルを用いて分散させ多孔膜用スラリーを得た。なお、スラリーにおける水以外の原料(固形分の合計)の含有量は、50質量%となるようにした。
・・・
[0183] <1-9.多孔膜付セパレータの製造>
乾式法により製造された単層のポリプロピレン製セパレータ(気孔率55%、厚さ25μm)を、有機セパレータ層として用意した。この有機セパレータ層の一方の面に、工程(1-5)で得た多孔膜用スラリーを、乾燥後の厚みが5μmとなるようにワイヤーバーを用いて塗布してスラリー層を得、スラリー層を50℃で10分間乾燥し、多孔膜を形成した。続いて、有機セパレータ層のもう一方の面にも、同様に多孔膜を形成し、両面に多孔膜を有する、多孔膜付セパレータを得た。
[0184] <1-10.多孔膜付セパレータを有する二次電池の製造>
工程(1-7)で得られた正極を直径13mmの円形に切り抜いて、円形の正極を得た。工程(1-8)で得られた負極を直径14mmの円形に切り抜いて、円形の負極を得た。また、工程(1-9)で得た多孔膜付セパレータを直径18mmの円形に切り抜いて、円形の多孔膜付セパレータを得た。
[0185] ポリプロピレン製パッキンを設けたステンレス鋼製のコイン型外装容器の内底面上に円形の正極を載置し、その上に円形の多孔膜付セパレータを載置し、さらにその上に円形の負極を載置し、これらを容器内に収納した。円形の正極は、そのアルミニウム箔側の面が外装容器の底面側に向き、正極活物質層側の面が上側に向くよう載置した。円形の負極は、その負極活物質層側の面が円形の多孔膜付セパレータ側に向き、銅箔側の面が上側に向くよう載置した。
[0186] 容器中に電解液を空気が残らないように注入し、ポリプロピレン製パッキンを介して外装容器に厚さ0.2mmのステンレス鋼のキャップをかぶせて固定し、電池缶を封止して
、直径20mm、厚さ約3.2mmのリチウムイオン二次電池(コインセルCR2032)を製造した。電解液としてはエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをEC:DEC=1:2(20℃での容積比)で混合してなる混合溶媒にLiPF6を1モル/リットルの濃度で溶解させた溶液を用いた。
・・・
[0188] <実施例2>
(2-1.多孔膜付負極の製造)
実施例1の工程(1-8)で得た負極の負極活物質層側の面に、実施例1の工程(1-6)で得た多孔膜用スラリーを、負極活物質層が完全に覆われ、乾燥後の多孔膜厚みが5μmとなるように塗布してスラリー層を得た。スラリー層を50℃で10分間乾燥し、多孔膜を形成し、多孔膜付負極を得た。得られた多孔膜付負極は、(多孔膜)/(負極活物質層)/(銅箔)の層構成を有していた。
[0189](2-2.二次電池等の製造)
・・・
・工程(1-10)の電池の製造において、負極に代えて、上記工程(2-1)で得た多孔膜付負極を用いた。円形の多孔膜付負極を外装容器内に載置するにあたっては、その多孔膜側の面が円形のセパレータ側に向き、銅箔側の面が上側に向くよう載置した。」

(4g)「[0210]<実施例14>
実施例1<1-6.多孔膜用スラリーの製造>において、工程<1-3>で得られた非導電性粒子の水分散体に代えて、平均粒子径が5μm、アスペクト比が50の鱗片状ベーマイト(アスペクト比3?100の範囲にある粒子の割合が個数基準で全粒子の50%以上)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。・・・
[0211]<実施例15>
実施例2において、多孔膜用スラリーとして、実施例14で得た多孔膜用スラリーを用いた以外は、実施例2と同様に行った。・・・
[0212]<実施例16>
非導電性粒子として、平均粒子径が1μm、アスペクト比が10の板状ベーマイト(アスペクト比3?100の範囲にある粒子の割合が個数基準で全粒子の50%以上)を使用した以外は実施例14と同様に行った。・・・」

b 上記記載事項(4a)?(4g)より、甲第4号証には、実施例14及び16に注目すると、以下の3つの発明が記載されていると認められる(以下「引用発明4-1」、「引用発明4-2」及び「引用発明4-3」という。)。

<引用発明4-1>
「正極、負極、セパレータ及び電解液を含む二次電池であって、前記正極、負極及びセパレータの少なくともいずれかに、多孔膜が積層されてなり、
多孔膜は非導電性粒子、バインダー及び増粘剤を含んでなり、
非導電性粒子として、アスペクト比が50の鱗片状ベーマイト又はアスペクト比が10の板状ベーマイトを用い、
バインダーとして、ニトリルゴムを用い、
増粘剤として、カルボキシメチルセルロースを用い、
べーマイト、ニトリルゴム、カルボキシメチルセルロースの固形分重量比が83.1:6.15:4.6となるようにし、
非導電性粒子により、多孔膜が高い熱安定性及び高い強度を示す、
二次電池。」

<引用発明4-2>
「有機セパレータ上に、多孔膜が積層されてなり、
多孔膜は非導電性粒子、バインダー及び増粘剤を含んでなり、
非導電性粒子として、アスペクト比が50の鱗片状ベーマイト又はアスペクト比が10の板状ベーマイトを用い、
バインダーとして、ニトリルゴムを用い、
増粘剤として、カルボキシメチルセルロースを用い、
べーマイト、ニトリルゴム、カルボキシメチルセルロースの固形分重量比が83.1:6.15:4.6となるようにし、
非導電性粒子により、多孔膜が高い熱安定性及び高い強度を示す、
二次電池用セパレータ。」

<引用発明4-3>
「電極合剤層用バインダー及び電極活物質を含んでなる電極活物質層が、集電体に付着してなり、かつ電極活物質層の表面に、多孔膜が積層されてなり
多孔膜は非導電性粒子、バインダー及び増粘剤を含んでなり、
非導電性粒子として、アスペクト比が50の鱗片状ベーマイト又はアスペクト比が10の板状ベーマイトを用い、
バインダーとして、ニトリルゴムを用い、
増粘剤として、カルボキシメチルセルロースを用い、
べーマイト、ニトリルゴム、カルボキシメチルセルロースの固形分重量比が83.1:6.15:4.6となるようにし、
非導電性粒子により、多孔膜が高い熱安定性及び高い強度を示す、
二次電池用電極。」

(オ)甲第5号証
上記甲第5号証には、以下の記載がある。

(5a)「



(5b)「[分析一例]
キスマ(R)5
・・・




(カ)甲第6号証
上記甲第6号証には、以下の記載がある。

(6a)「

・・・



(6b)「



(6c)「ミクロマイカ(電子顕微鏡写真)



(6d)「



(キ)甲第7号証
上記甲第7号証には、以下の記載がある。

(7a)「





(ク)甲第8号証
上記甲第8号証には、以下の記載がある。

(8a)「【特許請求の範囲】
1 (A)ポリオレフィン系樹脂と、(B)平均粒径が0.1?20μmの粉末状無機質充填材、平均アスペクト比が10?80で、かつ板状長が1mm以下の板状無機質充填材及び平均アスペクト比が5?500で、かつ繊維長が10mm以下の繊維状無機質充填材の中から選ばれた少なくとも1種とを、重量に基づき60:40ないし90:10の割合で含有する無機質充填材含有複合樹脂製シートを成形して成る耐熱容器。」

(8b)「[発明が解決しようとする問題点]
本発明は、従来のホットメルト接着剤やアスファルトなどのように溶融固化して使用する製品の包装材が有する欠点を改良し、耐熱性、強度、離型性などに優れる上に、軽量で、かつ折りたたみや多段積みが可能であるなど、優れた特徴を有する無機質充填材含有複合樹脂製耐熱容器を提供することを目的としてなされたものである。」(第2頁左上欄第16行?右上欄第3行)

(8c)「板状無機質充填材としては、例えばマイカが好ましく挙げられ、また、繊維状無機質充填材としては、例えばガラス繊維、炭素繊維、ポロン繊維などが挙げられる。」(第3頁左上欄第4?7行)

(ケ)甲第9号証
上記甲第9号証には、以下の記載がある。

(9a)「【0006】金属水酸化物はその難燃機構が加熱・分解して水を発生する時の吸熱によるものであり、有毒ガスや腐食性ガスが発生せずクリーンな難燃剤として近年盛んに検討されている。金属水酸化物としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが主体となっており、水酸化アルミニウムは熱分解温度が220℃と低いため、融点の低い熱可塑性樹脂に使用される。一方、水酸化マグネシウムは熱分解温度が340℃と高くポリオレフィンやポリアミド樹脂の難燃化が検討されている。」

(コ)甲第10号証
上記甲第10号証には、以下の記載がある。

(10a)「【0012】
本発明の高電圧機器用絶縁コイルによれば、絶縁層を構成する熱硬化性樹脂層中に分散された層状粘土鉱物に基づいて、耐熱性および耐酸化劣化特性の向上を図ることが可能となる。」

(10b)「【0017】
上述した絶縁層2はマイカ紙4に補強材5を接着する熱硬化性樹脂層6中に層状粘土鉱物7を分散させているため、耐熱性や耐酸化劣化特性を向上させることができる。すなわち、層状粘土鉱物7は熱硬化性樹脂8の分子鎖の間に入り込み、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂8の三次元網目構造を拘束する補強材として働くため、熱硬化性樹脂8自体が有するガラス転移温度以上の温度域においても、高い弾性率を維持することができる。また、絶縁コイル3が空気中で加熱された際に、熱硬化性樹脂層6中に存在する層状粘土鉱物7は、空気中の酸素が熱硬化性樹脂8中に侵入、拡散することを抑制するガスバリア効果を発現する。これらによって、熱硬化性樹脂層6ひいては絶縁層2の耐熱性および耐酸化劣化特性を向上させることが可能となる。」

(サ)甲第11号証
a 上記甲第11号証には、以下の記載がある。

(11a)「【請求項1】
巻回された正極および負極を含む巻回電極体と、
上記巻回電極体が収容された外装体と
を備え、
上記負極は、負極活物質として、リチウムと合金を形成可能な元素を少なくとも含む合金系負極材料を含み、
上記巻回電極体の巻回軸方向の一端と上記外装体との間に、上記外装体の膨張を抑制するための構造体がある電池。
・・・
【請求項15】
請求項1に記載の電池と、
上記電池を制御する制御部と、
上記電池を内包する外装を有する電池パック。
【請求項16】
請求項1に記載の電池を有し、
上記電池から電力の供給を受ける電子機器。
【請求項17】
請求項1に記載の電池と、
上記電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
上記電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置とを有する電動車両。
【請求項18】
請求項1に記載の電池を有し、
上記電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
【請求項19】
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え
上記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、上記電池の充放電制御を行う請求項18に記載の蓄電装置。
【請求項20】
請求項1に記載の電池から電力の供給を受け、または、発電装置もしくは電力網から上記非水電解質電池に電力が供給される電力システム。」

b 上記記載事項(11a)より、甲第11号証には、以下の6つの発明が記載されていると認められる(以下「引用発明11-1」?「引用発明11-6」という。)。

<引用発明11-1>
「電池と、
上記電池を制御する制御部と、
上記電池を内包する外装を有する電池パック。」

<引用発明11-2>
電池を有し、
上記電池から電力の供給を受ける電子機器。

<引用発明11-3>
電池と、
上記電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
上記電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置とを有する電動車両。

<引用発明11-4>
電池を有し、
上記電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。

<引用発明11-5>
電池を有し、
上記電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置であって、
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え
上記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、上記電池の充放電制御を行う蓄電装置。

<引用発明11-6>
電池から電力の供給を受け、または、発電装置もしくは電力網から上記非水電解質電池に電力が供給される電力システム。

イ 甲第1号証を主引用例とした対比・判断(本件発明1?3、7、9?12について)
(ア)本件発明1と引用発明1-1との対比・判断
a 対比
本件発明1と引用発明1-1とを対比すると、引用発明1-1における「耐熱性樹脂」、「耐熱性多孔質層」及び「水酸化マグネシウム(協和化学工業社製;キスマ5P)からなる無機フィラー」は、本件発明1における「樹脂」、「粒子含有樹脂層」及び「無機粒子」のうち「水酸化マグネシウム」である「粒子」にそれぞれ相当する。
また、引用発明1-1における「耐熱性多孔質層」は、セパレータに設けられるものであって、セパレータは正極と負極の間に設けられるものであることから、「耐熱性多孔質層」も、当然に正極と負極の間に介在するものである。
してみると、本件発明1と引用発明1-1とは、以下の一致点及び相違点を有する。

<一致点>
「正極と、
負極と、
セパレータと、
電解液と、
前記正極と前記負極との間に介在し、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子は、無機粒子であり、
前記無機粒子は、水酸化マグネシウムの粒子である電池。」である点。

<相違点1a>
本件発明1は、「粒子含有樹脂層は、前記電解液を保持する機能を有」するのに対し、引用発明1-1は、「耐熱性多孔質層」がそのような機能を有することについて特定されていない点。

<相違点2a>
粒子含有樹脂層に含まれる樹脂について、本件発明1は、「含フッ素樹脂または含フッ素ゴム」であるのに対し、引用発明1-1は、「メタ型全芳香族ポリアミドであるコーネックス(登録商標;帝人テクノプロダクツ社製)」である点。

<相違点3a>
本件発明1は、「粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、前記粒子含有樹脂層の強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有」するのに対し、引用発明1-1は、「無機フィラー」がそのような性質及び機能を有することについて特定されていない点。

<相違点4a>
本件発明1は、 「粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下」であるのに対し、引用発明1-1は、粒子の形状及び平面率が特定されていない点。

<相違点5a>
本件発明1は、「粒子の屈折率は1.3以上2.4未満」であるのに対し、引用発明1-1は、粒子の屈折率が特定されていない点。

<相違点6a>
本件発明1は、「前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下」であるのに対し、引用発明1-1は、「コーネックスと水酸化マグネシウムの重量比が15:85」である点。

b 判断
(a)事案に鑑み、相違点2aについて検討する。
甲第5、7?10号証に記載された事項及び技術常識を踏まえても、正極と負極との間に介在する粒子含有樹脂層に含まれる樹脂について、引用発明1-1における「メタ型全芳香族ポリアミドであるコーネックス(登録商標;帝人テクノプロダクツ社製)」を「含フッ素樹脂または含フッ素ゴム」に置換する動機付けがあるとは認められないから、当該置換を当業者が容易に想到し得るということはできない。

(b)そして、本件発明1は、粒子含有樹脂層に含まれる樹脂として「含フッ素樹脂または含フッ素ゴム」を用いるとともに、「平面率は40%超100%以下」及び「屈折率は1.3以上2.4未満」である特定の無機又は有機の粒子を用い、粒子と樹脂との質量比(粒子/樹脂)を「15/85以上80/20」とすることによって、粒子を含有する樹脂層を形成するための塗料に白濁を生じさせず、透明度を向上させ、粒子を含有する樹脂層の厚みを高精度で管理することができるという格別顕著な効果を奏するものである。

(c)ここで、申立人は、令和2年3月18日付け意見書の12頁8?22行において、以下のとおり主張している。

「セパレータを構成する樹脂として、フッ素樹脂を用いることは、周知である(必要であれば、国際公開第2013/108510号の請求項1、請求項8、請求項9、段落0023、段落0029、段落0038;特開2013-008690号の請求項1、請求項4、段落0025、段落0033などを参照)。また、甲第4号証においても、非導電性粒子及びバインダーを含んでなる二次電池多孔膜(請求項1)が有機セパレータ上に積層されてなるニ次電池用セパレータが開示され(請求項11)、前記バインダーを構成する単量体としてフルオロマレイン酸や、マレイン酸フルオロアルキル(段落0040)が開示されていることから、セパレー夕を構成する樹脂としてフッ素樹脂を用いることが開示されている。
従って、甲第1号証及び甲第2号証において、セパレータの構成要素としての耐熱性多孔質層の耐熱性樹脂に、セパレータを構成する樹脂として周知のフッ素樹脂を採用することは、公知材料の中からの最適材料の選択にすぎず、本 件特許発明1?3、7、9?12に係る発明は、依然として進歩性を有してい ない。」

(d)しかしながら、上記(c)のとおりセパレータを構成する樹脂としてフッ素樹脂が周知であるにしても、そのことが、正極と負極との間に介在する粒子含有樹脂層に含まれる樹脂について、引用発明1-1における「メタ型全芳香族ポリアミドであるコーネックス(登録商標;帝人テクノプロダクツ社製)」を「含フッ素樹脂」に置換する動機付けになるとはいえないことから、申立人の主張を採用することはできない。

c 本件発明1と引用発明1-1との対比・判断の小括
よって、本件発明1は、少なくとも上記相違点2aにおいて実質的に相違するから甲第1号証に記載された発明でなく、また、上記相違点2aに係る特定事項は容易に想到し得えるものでもないので、他の相違点について検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明と甲第5、7?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(イ)本件発明2と引用発明1-1との対比・判断
a 対比
本件発明2と引用発明1-1とを対比すると、引用発明1-1における「ポリエチレン微多孔膜」、「耐熱性樹脂」、「耐熱性多孔質層」、「水酸化マグネシウム(協和化学工業社製;キスマ5P)からなる無機フィラー」及び「難燃性」は、本件発明2における「セパレータ基材」、「樹脂」、「粒子含有樹脂層」、「無機粒子」のうち「水酸化マグネシウム」である「粒子」及び「耐酸化性」にそれぞれ相当する。
してみると、本件発明2と引用発明1-1とは、以下の一致点及び相違点を有する。

<一致点>
「正極と、
負極と、
セパレータと、
電解液と
を備え、
前記セパレータは、
セパレータ基材と、
該セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子は、前記セパレータの強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、
前記粒子は、無機粒子であり、
前記無機粒子は、水酸化マグネシウムの粒子である電池。」である点。

<相違点1b>
本件発明2は、「粒子含有樹脂層は、前記電解液を保持する機能を有」するのに対し、引用発明1-1は、「耐熱性多孔質層」がそのような機能を有することについて特定されていない点。

<相違点2b>
粒子含有樹脂層に含まれる樹脂について、本件発明2は、「含フッ素樹脂または含フッ素ゴム」であるのに対し、引用発明1-1は、「メタ型全芳香族ポリアミドであるコーネックス(登録商標;帝人テクノプロダクツ社製)」である点。

<相違点3b>
「粒子」について、本件発明2は、「電気絶縁性を有」するのに対し、引用発明1-1は、電気絶縁性を有することについて特定されていない点。

<相違点4b>
本件発明2は、 「粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下」であるのに対し、引用発明1-1は、粒子の形状及び平面率が特定されていない点。

<相違点5b>
本件発明2は、 「粒子の屈折率は1.3以上2.4未満」であるのに対し、引用発明1-1は、粒子の屈折率が特定されていない点。

<相違点6b>
本件発明2は、「前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下」であるのに対し、引用発明1-1は、「コーネックスと水酸化マグネシウムの重量比が15:85」である点。

b 判断
事案に鑑み、相違点2bについて検討することとし、その判断は、上記(ア)bと同様である。

c 本件発明2と引用発明1-1との対比・判断の小括
よって、本件発明2は、少なくとも上記相違点2bにおいて実質的に相違するから甲第1号証に記載された発明でなく、また、上記相違点2bに係る特定事項は容易に想到し得えるものでもないので、他の相違点について検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明と甲第5、7?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(ウ)本件発明3、7、9?11について
本件発明3、7、9?11は、請求項1又は2を引用するものであるから、少なくとも上記相違点2a又は2bで実質的に相違するから甲第1号証に記載された発明でなく、また、上記相違点2a又は2bに係る特定事項は容易に想到し得えるものでもないので、他の相違点について検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明と甲第5、7?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(エ)本件発明12と引用発明1-2との対比・判断
a 対比
本件発明12と引用発明1-2とを対比すると、引用発明1-2における「ポリエチレン微多孔膜」、「耐熱性樹脂」、「耐熱性多孔質層」、「水酸化マグネシウム(協和化学工業社製;キスマ5P)からなる無機フィラー」及び「難燃性」は、本件発明12における「セパレータ基材」、「樹脂」、「粒子含有樹脂層」、「無機粒子」のうち「水酸化マグネシウム」である「粒子」及び「耐酸化性」にそれぞれ相当する。
してみると、本件発明12と引用発明1-2とは、以下の一致点及び相違点を有する。

<一致点>
「セパレータ基材と、
該セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
粒子は、前記セパレータの強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、
前記粒子は、無機粒子であり、
前記無機粒子は、水酸化マグネシウムの粒子であるセパレータ。」

<相違点1c>
本件発明12は、「粒子含有樹脂層は、前記電解液を保持する機能を有」するのに対し、引用発明1-2は、「耐熱性多孔質層」がそのような機能を有することについて特定されていない点。

<相違点2c>
粒子含有樹脂層に含まれる樹脂について、本件発明12は、「含フッ素樹脂または含フッ素ゴム」であるのに対し、引用発明1-2は、「メタ型全芳香族ポリアミドであるコーネックス(登録商標;帝人テクノプロダクツ社製)」である点。

<相違点3c>
「粒子」について、本件発明12は、「電気絶縁性を有」するのに対し、引用発明1-2は、電気絶縁性を有することについて特定されていない点。

<相違点4c>
本件発明12は、 「粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下」であるのに対し、引用発明1-2は、粒子の形状及び平面率が特定されていない点。

<相違点5c>
本件発明12は、 「粒子の屈折率は1.3以上2.4未満」であるのに対し、引用発明1-2は、粒子の屈折率が特定されていない点。

<相違点6c>
本件発明12は、「前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下」であるのに対し、引用発明1-2は、「コーネックスと水酸化マグネシウムの重量比が15:85」である点。

b 判断
事案に鑑み、相違点2cについて検討することとし、その判断は、上記(ア)bと同様である。

c 本件発明12と引用発明1-2との対比・判断の小括
よって、本件発明12は、少なくとも上記相違点2cにおいて実質的に相違するから甲第1号証に記載された発明でなく、また、上記相違点2cに係る特定事項は容易に想到し得えるものでもないので、他の相違点について検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明と甲第5、7?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(オ)甲第1号証を主引用例とした対比・判断の小括
したがって、本件発明1?3、7、9?12は、甲第1号証に記載された発明でなく、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ 甲第2号証を主引用例とした対比・判断(本件発明1?3、7、9?12について)
(ア)本件発明1と引用発明2-1との対比・判断
a 対比
本件発明1と引用発明2-1とを対比すると、引用発明2-1における「耐熱性樹脂」及び「耐熱性多孔質層」は、本件発明1における「樹脂」及び「粒子含有樹脂層」にそれぞれ相当する。
また、引用発明2-1における「耐熱性多孔質層」は、セパレータに設けられるものであって、セパレータは正極と負極の間に設けられるものであることから、「耐熱性多孔質層」も、当然に正極と負極の間に介在するものである。
さらに、「マイカ」とは「雲母」のことであるから、引用発明2-1における「無機フィラー」としての「合成マイカであるミクロマイカMK-100F(コープケミカル社製)」は、本件発明1における「無機粒子」のうち「雲母」である「粒子」に相当する。
そして、重量比と質量比は同等であるから、引用発明2-1における「前記コーネックスと前記ミクロマイカMK-100Fの重量比が20:80」は、本件発明1における「前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下」と、「前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)」が「80/20」である点で共通する。

してみると、本件発明1と引用発明2-1とは、以下の一致点及び相違点を有する。

<一致点>
「正極と、
負極と、
セパレータと、
電解液と、
前記正極と前記負極との間に介在し、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子は、前記粒子含有樹脂層の耐熱性を向上する機能を有し、
前記粒子は、無機粒子であり、
前記無機粒子は、雲母の粒子であり、
前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、80/20である電池。」である点。

<相違点1d>
本件発明1は、「粒子含有樹脂層は、前記電解液を保持する機能を有」するのに対し、引用発明2-1は、「耐熱性多孔質層」がそのような機能を有することについて特定されていない点。

<相違点2d>
粒子含有樹脂層に含まれる樹脂について、本件発明1は、「含フッ素樹脂または含フッ素ゴム」であるのに対し、引用発明2-1は、「メタ型全芳香族ポリアミドであるコーネックス(登録商標;帝人テクノプロダクツ社製)」である点。

<相違点3d>
本件発明1は、「粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、前記粒子含有樹脂層の強度」及び「耐酸化性を向上する機能を有」するのに対し、引用発明2-1は、「無機フィラー」がそのような性質及び機能を有することについて特定されていない点。

<相違点4d>
本件発明1は、 「粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下」であるのに対し、引用発明2-1は、粒子の形状及び平面率が特定されていない点。

<相違点5d>
本件発明1は、 「粒子の屈折率は1.3以上2.4未満」であるのに対し、引用発明2-1は、粒子の屈折率が特定されていない点。

b 判断
事案に鑑み、相違点2dについて検討することとし、その判断は、上記イ(ア)bと同様である。

c 本件発明1と引用発明2-1との対比・判断の小括
よって、本件発明1は、少なくとも上記相違点2dにおいて実質的に相違するから甲第2号証に記載された発明でなく、また、上記相違点2dに係る特定事項は容易に想到し得えるものでもないので、他の相違点について検討するまでもなく、甲第2号証に記載された発明と甲第6?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(イ)本件発明2と引用発明2-1との対比・判断
a 対比
本件発明2と引用発明2-1とを対比すると、引用発明2-1における「ポリエチレンにて形成される微多孔膜」、「耐熱性樹脂」及び「耐熱性多孔質層」は、本件発明1における 「セパレータ基材」、「樹脂」及び「粒子含有樹脂層」にそれぞれ相当する。
さらに、「マイカ」とは「雲母」のことであるから、引用発明2-1における「無機フィラー」としての「合成マイカであるミクロマイカMK-100F(コープケミカル社製)」は、本件発明1における「無機粒子」のうち「雲母」である「粒子」に相当する。
そして、重量比と質量比は同等であるから、引用発明2-1における「前記コーネックスと前記ミクロマイカMK-100Fの重量比が20:80」は、本件発明1における「前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下」と「80/20」の点で共通する。

してみると、本件発明2と引用発明2-1とは、以下の一致点及び相違点を有する。

<一致点>
「正極と、
負極と、
セパレータと、
電解液と
を備え、
前記セパレータは、
セパレータ基材と、
該セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子は、無機粒子であり、
前記無機粒子は、雲母の粒子であり、
前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、80/20である
電池。」

<相違点1e>
本件発明2は、「粒子含有樹脂層は、前記電解液を保持する機能を有」するのに対し、引用発明2-1は、「耐熱性多孔質層」がそのような機能を有することについて特定されていない点。

<相違点2e>
粒子含有樹脂層に含まれる樹脂について、本件発明2は、「含フッ素樹脂または含フッ素ゴム」であるのに対し、引用発明2-1は、「メタ型全芳香族ポリアミドであるコーネックス(登録商標;帝人テクノプロダクツ社製)」である点。

<相違点3e>
本件発明2は、「粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、前記セパレータの強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有」するのに対し、引用発明2-1は、「無機フィラー」がそのような性質及び機能を有することについて特定されていない点。

<相違点4e>
本件発明2は、 「粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下」であるのに対し、引用発明2-1は、粒子の形状及び平面率が特定されていない点。

<相違点5e>
本件発明2は、 「粒子の屈折率は1.3以上2.4未満」であるのに対し、引用発明2-1は、粒子の屈折率が特定されていない点。

b 判断
事案に鑑み、相違点2eについて検討することとし、その判断は、上記イ(ア)bと同様である。

c 本件発明2と引用発明2-1との対比・判断の小括
よって、本件発明2は、少なくとも上記相違点2eにおいて実質的に相違するから甲第2号証に記載された発明でなく、また、上記相違点2eに係る特定事項は容易に想到し得えるものでもないので、他の相違点について検討するまでもなく、甲第2号証に記載された発明と甲第6?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(ウ)本件発明3、7、9?11について
本件発明3、7、9?11は、請求項1又は2を引用するものであるから、少なくとも上記相違点2d又は2eで実質的に相違するから甲第1号証に記載された発明でなく、また、上記相違点2d又は2eに係る特定事項は容易に想到し得えるものでもないので、他の相違点について検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明と甲第6?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(エ)本件発明12と引用発明2-2との対比・判断
a 対比
本件発明12と引用発明2-2とを対比すると、引用発明2-2における「ポリエチレン微多孔膜」、「耐熱性樹脂」及び「耐熱性多孔質層」は、本件発明1における 「セパレータ基材」、「樹脂」及び「粒子含有樹脂層」にそれぞれ相当する。
さらに、「マイカ」とは「雲母」のことであるから、引用発明2-2における「無機フィラー」としての「合成マイカであるミクロマイカMK-100F(コープケミカル社製)」は、本件発明1における「無機粒子」のうち「雲母」である「粒子」に相当する。
そして、重量比と質量比の表示は結果的に同等であるから、引用発明2-2における「前記コーネックスと前記ミクロマイカMK-100Fの重量比が20:80」は、本件発明1における「前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下」と「80/20」の点で共通する。

してみると、本件発明12と引用発明2-2とは、以下の一致点及び相違点を有する。

<一致点>
「セパレータ基材と、
該セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子は、無機粒子であり、
前記無機粒子は、雲母の粒子であり、
前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、80/20であるセパレータ。」である点。

<相違点1f>
本件発明12は、「粒子含有樹脂層は、前記電解液を保持する機能を有」するのに対し、引用発明2-2は、「耐熱性多孔質層」がそのような機能を有することについて特定されていない点。

<相違点2f>
粒子含有樹脂層に含まれる樹脂について、本件発明12は、「含フッ素樹脂または含フッ素ゴム」であるのに対し、引用発明2-2は、「メタ型全芳香族ポリアミドであるコーネックス(登録商標;帝人テクノプロダクツ社製)」である点。

<相違点3f>
本件発明12は、「粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、セパレータの強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有」するのに対し、引用発明2-2は、「無機フィラー」がそのような性質及び機能を有することについて特定されていない点。

<相違点4f>
本件発明12は、「粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下」であるのに対し、引用発明2-2は、粒子の形状及び平面率が特定されていない点。

<相違点5f>
本件発明12は、 「粒子の屈折率は1.3以上2.4未満」であるのに対し、引用発明2-2は、粒子の屈折率が特定されていない点。

b 判断
事案に鑑み、相違点2fについて検討することとし、その判断は、上記イ(ア)bと同様である。

c 本件発明12と引用発明2-2との対比・判断の小括
よって、本件発明12は、少なくとも上記相違点2fにおいて実質的に相違するから甲第2号証に記載された発明でなく、また、上記相違点2fに係る特定事項は容易に想到し得えるものでもないので、他の相違点について検討するまでもなく、甲第2号証に記載された発明と甲第6?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(オ)甲第2号証を主引用例とした対比・判断の小括
したがって、本件発明1?3、7、9?12は、甲第2号証に記載された発明でなく、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

エ 甲第3号証を主引用例とした対比・判断(本件発明1?3、7、9、11及び12について)
(ア)本件発明1と引用発明3-1との対比・判断
a 対比
本件発明1と引用発明3-1とを対比すると、両者は、以下の一致点及び相違点を有する。

<一致点>
「正極と、
負極と、
セパレータと、
電解液と、
を備える電池。」

<相違点7a>
本件発明1は、「前記正極と前記負極との間に介在し、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子含有樹脂層は、前記電解液を保持する機能を有し、
前記樹脂は、含フッ素樹脂または含フッ素ゴムであり、
前記粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、前記粒子含有樹脂層の強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、
前記粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、前記粒子の屈折率は1.3以上2.4未満であり、
前記粒子は、無機粒子および有機粒子の少なくとも何れかであり、
前記無機粒子は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、ベーマイト、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、リン酸トリリチウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、パイロフィライト、雲母、ゼオライト、ムライト、サポナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ドロマイト、スピネルからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記有機粒子は、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下である」のに対し、引用発明3-1は、このような「粒子含有樹脂層」を有していない点。

b 判断
(a)甲各号証に記載された事項及び技術常識を踏まえても、引用発明3-1において、上記相違点7aに係る特定事項を有する「粒子含有樹脂層」を付加することを当業者が容易に想到し得るということはできない。

(b)そして、本件発明1は、粒子含有樹脂層に含まれる樹脂として「含フッ素樹脂または含フッ素ゴム」を用いるとともに、「平面率は40%超100%以下」及び「屈折率は1.3以上2.4未満」である特定の無機又は有機の粒子を用い、粒子と樹脂との質量比(粒子/樹脂)を「15/85以上80/20」とすることによって、粒子を含有する樹脂層を形成するための塗料に白濁を生じさせず、透明度を向上させ、粒子を含有する樹脂層の厚みを高精度で管理することができるという格別顕著な効果を奏するものである。

c 本件発明1と引用発明3-1との対比・判断の小括
よって、本件発明1は、上記相違点7aにおいて実質的に相違するから甲第3号証に記載された発明でなく、また、上記相違点7aに係る特定事項は容易に想到し得えるものでもないので、甲第3号証に記載された発明と甲第7?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(イ)本件発明2と引用発明3-1との対比・判断
a 対比
本件発明2と引用発明3-1とを対比すると、引用発明3-1における「PET製不織布」は、本件発明2における「セパレータ基材」に相当するから、両者は、以下の一致点及び相違点を有する。

<一致点>
「正極と、
負極と、
セパレータと、
電解液と
を備え、
前記セパレータは、
セパレータ基材と
を備える電池。」

<相違点7b>
本件発明2は、「該セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子含有樹脂層は、前記電解液を保持する機能を有し、
前記樹脂は、含フッ素樹脂または含フッ素ゴムであり、
前記粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、前記粒子含有樹脂層の強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、
前記粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、前記粒子の屈折率は1.3以上2.4未満であり、
前記粒子は、無機粒子および有機粒子の少なくとも何れかであり、
前記無機粒子は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、ベーマイト、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、リン酸トリリチウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、パイロフィライト、雲母、ゼオライト、ムライト、サポナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ドロマイト、スピネルからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記有機粒子は、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下である」のに対し、引用発明3-1は、このような「粒子含有樹脂層」を有していない点。

b 判断
上記相違点7bについての判断は、上記(ア)bと同様である。

c 本件発明2と引用発明3-1との対比・判断の小括
よって、本件発明2は、上記相違点7bにおいて実質的に相違するから甲第3号証に記載された発明でなく、また、上記相違点7bに係る特定事項は容易に想到し得えるものでもないので、甲第3号証に記載された発明と甲第7?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(ウ)本件発明3、7、9、11について
本件発明3、7、9、11は、請求項1又は2を引用するものであるから、少なくとも上記相違点7a又は7bで実質的に相違するから甲第3号証に記載された発明でなく、また、上記相違点7a又は7bに係る特定事項は容易に想到し得えるものでもないので、他の相違点の有無について検討するまでもなく、甲第3号証に記載された発明と甲第7?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(エ)本件発明12と引用発明3-2との対比・判断
a 対比
本件発明12と引用発明3-2とを対比すると、引用発明3-2における「PET製不織布」は、本件発明12における「セパレータ基材」に相当するから、両者は、以下の一致点及び相違点を有する。

<一致点>
「セパレータ基材と
を備えるセパレータ。」である点。

<相違点7c>
本件発明12は、「該セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子含有樹脂層は、前記電解液を保持する機能を有し、
前記樹脂は、含フッ素樹脂または含フッ素ゴムであり、
前記粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、前記粒子含有樹脂層の強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、
前記粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、前記粒子の屈折率は1.3以上2.4未満であり、
前記粒子は、無機粒子および有機粒子の少なくとも何れかであり、
前記無機粒子は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、ベーマイト、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、リン酸トリリチウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、パイロフィライト、雲母、ゼオライト、ムライト、サポナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ドロマイト、スピネルからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記有機粒子は、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下である」のに対し、引用発明3-2は、このような「粒子含有樹脂層」を有していない点。

b 判断
上記相違点7cについての判断は、上記(ア)bと同様である。

c 本件発明12と引用発明3-2との対比・判断の小括
よって、本件発明12は、上記相違点7cにおいて実質的に相違するから甲第3号証に記載された発明でなく、また、上記相違点7cに係る特定事項は容易に想到し得えるものでもないので、甲第3号証に記載された発明と甲第7?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(オ)甲第3号証を主引用例とした対比・判断の小括
したがって、本件発明1?3、7、9、11及び12は、甲第1号証に記載された発明でなく、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

オ 甲第4号証を主引用例とした対比・判断(本件発明1?3、7、9?13について)
(ア)本件発明1と引用発明4-1との対比・判断
a 対比
本件発明1と引用発明4-1とを対比すると、引用発明4-1における「ニトリルゴムを用い」る「バインダー」及び「カルボキシメチルセルロースを用い」る「増粘剤」、「鱗片状ベーマイト」又は「板状ベーマイト」を用いた「非導電性粒子」、「非導電性粒子、及びバインダーを含んでな」る「多孔膜」並びに「高い熱安定性」は、本件発明1における 「樹脂」、「無機粒子」のうち「ベーマイト」である「粒子」、「粒子含有樹脂層」並びに「耐熱性」にそれぞれ相当する。
また、引用発明4-1における「多孔膜」は、正極、負極及びセパレータの少なくともいずれかに積層されるものであることから、当然に正極と負極の間に介在するものである。
そして、引用発明4-1における「非導電性粒子」が、電気絶縁性を有することは、当然のことである。
してみると、本件発明1と引用発明4-1とは、以下の一致点及び相違点を有する。

<一致点>
「正極と、
負極と、
セパレータと、
電解液と、
前記正極と前記負極との間に介在し、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、前記粒子含有樹脂層の強度、耐熱性を向上する機能を有し、
前記粒子は、無機粒子であり、
前記無機粒子は、ベーマイトの粒子である電池。」である点。

<相違点1g>
本件発明1は、「粒子含有樹脂層は、前記電解液を保持する機能を有」するのに対し、引用発明4-1は、「多孔膜」がそのような機能を有することについて特定されていない点。

<相違点2g>
粒子含有樹脂層に含まれる樹脂について、本件発明1は、「含フッ素樹脂または含フッ素ゴム」であるのに対し、引用発明4-1は、「ニトリルゴム」及び「カルボキシメチルセルロース」である点。

<相違点3g>
本件発明1は、「粒子は」「前記粒子含有樹脂層の」「耐酸化性を向上する機能を有」するのに対し、引用発明4-1は、「非導電性粒子」がそのような機能を有することについて特定されていない点。

<相違点4g>
本件発明1は、 「粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下」であるのに対し、引用発明4-1は、粒子の形状及び平面率が特定されていない点。

<相違点5g>
本件発明1は、 「粒子の屈折率は1.3以上2.4未満」であるのに対し、引用発明4-1は、粒子の屈折率が特定されていない点。

<相違点6g>
本件発明1は、「前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下」であるのに対し、引用発明4-1は、「べーマイト、ニトリルゴム、カルボキシメチルセルロースの固形分重量比が83.1:6.15:4.6」である点。

b 判断
(a)事案に鑑み、相違点6gについて検討する。
引用発明4-1において、粒子であるべーマイトと、樹脂であるニトリルゴム及びカルボキシメチルセルロースの固形分重量比(粒子/樹脂)は、べーマイト(83.1)/{ニトリルゴム(6.15)+カルボキシメチルセルロース(4.6)}であることから、83.1/10.75であって、これを粒子と樹脂の合計が100となるように換算すれば、{83.1×100/(83.1+10.75)}/{10.75×100/(83.1+10.75)}=88.5/11.5であるから、相違点6gは、実質的な相違点である。
さらに、甲各号証に記載された事項及び技術常識を踏まえても、引用発明4-1において、粒子であるべーマイトと、樹脂であるニトリルゴム及びカルボキシメチルセルロースの固形分重量比(粒子/樹脂)を「15/85以上80/20以下」の範囲に特定する動機付けがあるとは認められない。

(b)そして、本件発明1は、粒子含有樹脂層に含まれる粒子と樹脂との質量比(粒子/樹脂)を「15/85以上80/20」とするとともに、樹脂として「含フッ素樹脂または含フッ素ゴム」を用いること、「平面率は40%超100%以下」及び「屈折率は1.3以上2.4未満」である特定の無機又は有機の粒子を用いることによって、粒子を含有する樹脂層を形成するための塗料に白濁を生じさせず、透明度を向上させ、粒子を含有する樹脂層の厚みを高精度で管理することができるという格別顕著な効果を奏するものである。

(c)ここで、申立人は、令和2年3月18日付け意見書の13頁9?22行において、以下のとおり主張している。

「粒子含有樹脂層中の樹脂と粒子について、樹脂がある程度存在しないと(すなわち粒子の量が多すぎると)粒子を均一に分散することが難しくなり、透明性が低下してしまうことは当業者にとって明らかな事項であり、粒子の割合を所定以下にすることは容易であり、またそれによって得られる効果は 当業者にとって十分に予測可能な範囲であり、粒子と樹脂の質量比を所定範囲にすることは、単なる数値の最適化にすぎない。
粒子と樹脂の質量比を所定範囲にすることの効果が、仮に表3、表8、表13、表18などにより主張されることがあったとしても、この程度の透明性向 上効果は予測の範囲内である。また、粒子と樹脂の質量比を所定範囲にすることによる透明性向上効果が認められることがあったとしても、(前述のサボート要件での主張とも重複するが)その効果が確認されたのは粒子がベーマイト、タルクで樹脂がPVdFの場合だけであり、発明の全体に亘ってその効果 が得られることが明らかでない以上、そのような効果によって本件特許発明が 進歩性を有するということはできない。」

(d)しかしながら、「粒子含有樹脂層中の樹脂と粒子について、樹脂がある程度存在しないと(すなわち粒子の量が多すぎると)粒子を均一に分散することが難しくなり、透明性が低下してしまうこと」が、当業者にとって自明であることの根拠は何ら示されておらず、それが技術常識であるとは認められないから、粒子と樹脂の質量比を所定範囲にすることが単なる数値の最適化であるとはいえない。
また、本件発明がサポート要件を満たすことは、上記(2)のとおりである。
したがって、申立人の上記主張を作用することはできない。

c 本件発明1と引用発明4-1との対比・判断の小括
よって、本件発明1は、少なくとも上記相違点6gにおいて実質的に相違するから甲第4号証に記載された発明でなく、また、上記相違点6gに係る特定事項は容易に想到し得えるものでもないので、他の相違点について検討するまでもなく、甲第4号証に記載された発明と甲第7?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(イ)本件発明2と引用発明4-1との対比・判断
a 対比
本件発明2と引用発明4-1とを対比すると、引用発明4-1における「ニトリルゴムを用い」る「バインダー」及び「カルボキシメチルセルロースを用い」る「増粘剤」、「鱗片状ベーマイト」又は「板状ベーマイト」を用いた「非導電性粒子」並びに「非導電性粒子、及びバインダーを含んでな」る「多孔膜」は、本件発明1における 「樹脂」、「無機粒子」のうち「ベーマイト」である「粒子」並びに「粒子含有樹脂層」にそれぞれ相当する。
また、引用発明4-1において、セパレータに多孔膜が積層されるものである場合、引用発明4-1における「セパレータ」及び「多孔膜が積層され」た「セパレータ」は、本件発明2における「セパレータ基材」及び「セパレータ」にそれぞれ相当する。
そして、引用発明4-1における「非導電性粒子」が、電気絶縁性を有することは、当然のことである。
してみると、本件発明2と引用発明4-1とは、以下の一致点及び相違点を有する。

<一致点>
「正極と、
負極と、
セパレータと、
電解液と
を備え、
前記セパレータは、
セパレータ基材と、
該セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子は、電気絶縁性を有し、
前記粒子は、無機粒子であり、
前記無機粒子は、ベーマイトの粒子である電池。」である点。

<相違点1h>
本件発明2は、「粒子含有樹脂層は、前記電解液を保持する機能を有」するのに対し、引用発明4-1は、「多孔膜」がそのような機能を有することについて特定されていない点。

<相違点2h>
粒子含有樹脂層に含まれる樹脂について、本件発明2は、「含フッ素樹脂または含フッ素ゴム」であるのに対し、引用発明4-1は、「ニトリルゴム」及び「カルボキシメチルセルロース」である点。

<相違点3h>
本件発明2は、「粒子は」「セパレータの強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有」するのに対し、引用発明4-1は、「非導電性粒子」がそのような機能を有することについて特定されていない点。

<相違点4h>
本件発明2は、 「粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下」であるのに対し、引用発明4-1は、粒子の形状及び平面率が特定されていない点。

<相違点5h>
本件発明2は、 「粒子の屈折率は1.3以上2.4未満」であるのに対し、引用発明4-1は、粒子の屈折率が特定されていない点。

<相違点6h>
本件発明2は、「前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下」であるのに対し、引用発明4-1は、「ベーマイト、ニトリルゴム、カルボキシメチルセルロースの固形分重量比が83.1:6.15:4.6」である点。

b 判断
事案に鑑み、相違点6hについて検討することとし、その判断は、上記(ア)bと同様である。

c 本件発明2と引用発明4-1との対比・判断の小括
よって、本件発明2は、少なくとも上記相違点6hにおいて実質的に相違するから甲第4号証に記載された発明でなく、また、上記相違点6hに係る特定事項は容易に想到し得えるものでもないので、他の相違点について検討するまでもなく、甲第4号証に記載された発明と甲第7?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(ウ)本件発明3、7、9?11について
本件発明3、7、9?11は、請求項1又は2を引用するものであるから、少なくとも上記相違点6g又は6hで実質的に相違するから甲第4号証に記載された発明でなく、また、上記相違点6g又は6hに係る特定事項は容易に想到し得えるものでもないので、他の相違点について検討するまでもなく、甲第4号証に記載された発明と甲第7?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(エ)本件発明12と引用発明4-2との対比・判断
a 対比
本件発明12と引用発明4-2とを対比すると、引用発明4-2における「ニトリルゴムを用い」る「バインダー」及びと「カルボキシメチルセルロースを用い」る「増粘剤」、「鱗片状ベーマイト」又は「板状ベーマイト」を用いた「非導電性粒子」並びに「非導電性粒子、及びバインダーを含んでな」る「多孔膜」は、本件発明1における「樹脂」、「無機粒子」のうち「ベーマイト」である「粒子」並びに「粒子含有樹脂層」にそれぞれ相当する。
また、引用発明4-2において、セパレータに多孔膜が積層されるものである場合、引用発明4-2における「セパレータ」及び「多孔膜が積層され」た「セパレータ」は、本件発明12における「セパレータ基材」及び「セパレータ」にそれぞれ相当する。
さらに、引用発明4-2における「非導電性粒子」が、電気絶縁性を有することは、当然のことである。
してみると、本件発明12と引用発明4-2とは、以下の一致点及び相違点を有する。

<一致点>
「セパレータ基材と、
該セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子は、電気絶縁性を有し、
前記粒子は、無機粒子であり、
前記無機粒子は、ベーマイトの粒子であるセパレータ。」である点。

<相違点1i>
本件発明12は、「粒子含有樹脂層は、前記電解液を保持する機能を有」するのに対し、引用発明4-2は、「多孔膜」がそのような機能を有することについて特定されていない点。

<相違点2i>
粒子含有樹脂層に含まれる樹脂について、本件発明12は、「含フッ素樹脂または含フッ素ゴム」であるのに対し、引用発明4-2は、「ニトリルゴム」及び「カルボキシメチルセルロース」である点。

<相違点3i>
本件発明12は、「粒子は」「セパレータの強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有」するのに対し、引用発明4-2は、「非導電性粒子」がそのような機能を有することについて特定されていない点。

<相違点4i>
本件発明12は、 「粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下」であるのに対し、引用発明4-2は、粒子の形状及び平面率が特定されていない点。

<相違点5i>
本件発明12は、 「粒子の屈折率は1.3以上2.4未満」であるのに対し、引用発明4-2は、粒子の屈折率が特定されていない点。

<相違点6i>
本件発明12は、「前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下」であるのに対し、引用発明4-2は、「ベーマイト、ニトリルゴム、カルボキシメチルセルロースの固形分重量比が83.1:6.15:4.6」である点。

b 判断
事案に鑑み、相違点6iについて検討することとし、その判断は、上記(ア)bと同様である

c 本件発明12と引用発明4-2との対比・判断の小括
よって、本件発明12は、少なくとも上記相違点6iにおいて実質的に相違するから甲第4号証に記載された発明でなく、また、上記相違点6iに係る特定事項は容易に想到し得えるものでもないので、他の相違点について検討するまでもなく、甲第4号証に記載された発明と甲第7?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(オ)本件発明13と引用発明4-3との対比・判断
a 対比
本件発明13と引用発明4-3とを対比すると、引用発明4-3における「ニトリルゴムを用い」る「バインダー」及び「カルボキシメチルセルロースを用い」る「増粘剤」、「鱗片状ベーマイト」又は「板状ベーマイト」を用いた「非導電性粒子」、「非導電性粒子、及びバインダーを含んでな」る「多孔膜」並びに「高い熱安定性」は、本件発明1における「樹脂」、「無機粒子」のうち「ベーマイト」である「粒子」、「粒子含有樹脂層」並びに「耐熱性」にそれぞれ相当する。
また、引用発明4-3における「非導電性粒子」が、電気絶縁性を有することは、当然のことである。
してみると、本件発明12と引用発明4-3とは、以下の一致点及び相違点1i?4iを有する。

してみると、本件発明13と引用発明4-3とは、以下の一致点及び相違点を有する。

<一致点>
「電極と、
該電極の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子は、電気絶縁性を有し、且つ、前記粒子含有樹脂層の強度、耐熱性を向上する機能を有し、
前記粒子は、無機粒子であり、
前記無機粒子は、ベーマイトの粒子である粒子含有樹脂層付きの電極。」である点。

<相違点1j>
本件発明13は、「粒子含有樹脂層は、前記電解液を保持する機能を有」するのに対し、引用発明4-3は、「多孔膜」がそのような機能を有することについて特定されていない点。

<相違点2j>
粒子含有樹脂層に含まれる樹脂について、本件発明13は、「含フッ素樹脂または含フッ素ゴム」であるのに対し、引用発明4-3は、「ニトリルゴム」及び「カルボキシメチルセルロース」である点。

<相違点3j>
本件発明13は、「粒子は」「前記粒子含有樹脂層の」「耐酸化性を向上する機能を有」するのに対し、引用発明4-3は、「非導電性粒子」がそのような機能を有することについて特定されていない点。

<相違点4j>
本件発明13は、「粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下」であるのに対し、引用発明4-3は、粒子の形状及び平面率が特定されていない点。

<相違点5j>
本件発明13は、「粒子の屈折率は1.3以上2.4未満」であるのに対し、引用発明4-3は、粒子の屈折率が特定されていない点。

<相違点6j>
本件発明13は、「前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下」であるのに対し、引用発明4-3は、「ベーマイト、ニトリルゴム、カルボキシメチルセルロースの固形分重量比が83.1:6.15:4.6」である点。

b 判断
事案に鑑み、相違点6jについて検討することとし、その判断は、上記(ア)bと同様である

c 本件発明13と引用発明4-3との対比・判断の小括
よって、本件発明13は、少なくとも上記相違点6jにおいて実質的に相違するから甲第4号証に記載された発明でなく、また、上記相違点6jに係る特定事項は容易に想到し得えるものでもないので、他の相違点について検討するまでもなく、甲第4号証に記載された発明と甲第7?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(カ)甲第4号証を主引用例とした対比・判断の小括
したがって、本件発明1?3、7、9?13は、甲第4号証に記載された発明でなく、甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

カ 甲第11号証を主引用例とした対比・判断(本件発明14?19について)
(ア)本件発明14と引用発明11-1との対比・判断
本件発明14と引用発明11-1とを対比すると、両者は、本件発明14が「請求項1から3、7、9から11のいずれか1項に記載の電池」を有する点で相違するが、当該相違点についての判断は、上記イ?オのとおりである。

(イ)本件発明15と引用発明11-2との対比・判断
本件発明15と引用発明11-2とを対比すると、両者は、本件発明15が「請求項1から3、7、9から11のいずれか1項に記載の電池」を有する点で相違するが、当該相違点についての判断は、上記イ?オのとおりである。

(ウ)本件発明16と引用発明11-3との対比・判断
本件発明16と引用発明11-3とを対比すると、両者は、本件発明16が「請求項1から3、7、9から11のいずれか1項に記載の電池」を有する点で相違するが、当該相違点についての判断は、上記イ?オのとおりである。

(エ)本件発明17と引用発明11-4との対比・判断
本件発明17と引用発明11-4とを対比すると、両者は、本件発明17が「請求項1から3、7、9から11のいずれか1項に記載の電池」を有する点で相違するが、当該相違点についての判断は、上記イ?オのとおりである。

(オ)本件発明18と引用発明11-5との対比・判断
本件発明18と引用発明11-5とを対比すると、両者は、本件発明18が「請求項1から3、7、9から11のいずれか1項に記載の電池」を有する点で相違するが、当該相違点についての判断は、上記イ?オのとおりである。

(カ)本件発明19と引用発明11-6との対比・判断
本件発明19と引用発明11-6とを対比すると、両者は、本件発明19が「請求項1から3、7、9から11のいずれか1項に記載の電池」を有する点で相違するが、当該相違点についての判断は、上記イ?オのとおりである。

(キ)甲第11号証を主引用例とした対比・判断の小括
したがって、本件発明14?19は、甲第11号証に記載された発明と甲第1?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

キ 異議申立理由3(新規性進歩性)についての小括
よって、本件発明1?3、7、9?13は、甲第1?4に記載された発明でないし、甲第1?4に記載された発明と甲第5?10号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
さらに、本件発明14?19は、甲第11号証に記載された発明と甲第1?10号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。


第6 むすび
以上のとおり、本件訂正は適法であるから、これを認める。
そして、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?3、7及び9?19に係る特許を取り消すことはできないし、他に本件請求項1?3、7及び9?19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項4?6及び8は、本件訂正により削除されたから、請求項4?6及び8に係る特許に対して申立人がした特許異議申立については、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
負極と、
セパレータと、
電解液と、
前記正極と前記負極との間に介在し、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子含有樹脂層は、前記電解液を保持する機能を有し、
前記樹脂は、含フッ素樹脂または含フッ素ゴムであり、
前記粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、前記粒子含有樹脂層の強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、
前記粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、前記粒子の屈折率は1.3以上2.4未満であり、
前記粒子は、無機粒子および有機粒子の少なくとも何れかであり、
前記無機粒子は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、ベーマイト、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、リン酸トリリチウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、パイロフィライト、雲母、ゼオライト、ムライト、サポナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ドロマイト、スピネルからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記有機粒子は、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下である電池。
【請求項2】
正極と、
負極と、
セパレータと、
電解液と
を備え、
前記セパレータは、
セパレータ基材と、
該セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子含有樹脂層は、前記電解液を保持する機能を有し、
前記樹脂は、含フッ素樹脂または含フッ素ゴムであり、
前記粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、前記セパレータの強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、
前記粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、前記粒子の屈折率は1.3以上2.4未満であり、
前記粒子は、無機粒子および有機粒子の少なくとも何れかであり、
前記無機粒子は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、ベーマイト、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、リン酸トリリチウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、パイロフィライト、雲母、ゼオライト、ムライト、サポナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ドロマイト、スピネルからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記有機粒子は、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下である電池。
【請求項3】
前記平面は、結晶面、破砕面、および劈開面うちの少なくとも何れかを含む請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
前記樹脂は、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも何れかである請求項1から3のいずれか1項に記載の電池。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
前記粒子含有樹脂層は、前記電解液を前記樹脂により保持する請求項1から3、7のいずれか1項に記載の電池。
【請求項10】
前記粒子含有樹脂層は、前記電解液を前記樹脂および前記粒子の少なくとも何れかにより形成される空隙に保持する請求項1から3、7のいずれか1項に記載の電池。
【請求項11】
前記粒子含有樹脂層は、前記正極の一方の主面および他方の主面、前記負極の一方の主面および他方の主面、並びに、前記セパレータの一方の主面および他方の主面の中から選ばれた少なくとも一つの主面上に形成されたものである請求項1に記載の電池。
【請求項12】
セパレータ基材と、
該セパレータ基材の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子含有樹脂層は、電解液を保持する機能を有し、
前記樹脂は、含フッ素樹脂または含フッ素ゴムであり、
前記粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、セパレータの強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、
前記粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、前記粒子の屈折率は1.3以上2.4未満であり、
前記粒子は、無機粒子および有機粒子の少なくとも何れかであり、
前記無機粒子は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、ベーマイト、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、リン酸トリリチウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、パイロフィライト、雲母、ゼオライト、ムライト、サポナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ドロマイト、スピネルからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記有機粒子は、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下であるセパレータ。
【請求項13】
電極と、
該電極の少なくとも一方の主面に設けられ、且つ、粒子および樹脂を含む粒子含有樹脂層と
を備え、
前記粒子含有樹脂層は、電解液を保持する機能を有し、
前記樹脂は、含フッ素樹脂または含フッ素ゴムであり、
前記粒子は、電気絶縁性を有し、かつ、前記粒子含有樹脂層の強度、耐熱性および耐酸化性を向上する機能を有し、
前記粒子の形状は平面を含み、且つ、前記粒子の平面率は40%超100%以下であり、且つ、前記粒子の屈折率は1.3以上2.4未満であり、
前記粒子は、無機粒子および有機粒子の少なくとも何れかであり、
前記無機粒子は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、ベーマイト、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、リン酸トリリチウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、パイロフィライト、雲母、ゼオライト、ムライト、サポナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ドロマイト、スピネルからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記有機粒子は、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンからなる群から選ばれた少なくとも何れかの粒子であり、
前記粒子と前記樹脂との質量比(粒子/樹脂)は、15/85以上80/20以下である粒子含有樹脂層付きの電極。
【請求項14】
請求項1から3、7、9から11のいずれか1項に記載の電池と、
前記電池を制御する制御部と、
前記電池を内包する外装と
を有する電池パック。
【請求項15】
請求項1から3、7、9から11のいずれか1項に記載の電池を有し、前記電池から電力の供給を受ける電子機器。
【請求項16】
請求項1から3、7、9から11のいずれか1項に記載の電池と、
前記電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
前記電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置と
を有する電動車両。
【請求項17】
請求項1から3、7、9から11のいずれか1項に記載の電池を有し、前記電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
【請求項18】
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え、
前記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、前記電池の充放電制御を行う請求項17に記載の蓄電装置。
【請求項19】
請求項1から3、7、9から11のいずれか1項に記載の電池を有し、前記電池から電力の供給を受け、または、発電装置もしくは電力網から前記電池に電力が供給される電力システム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-09-30 
出願番号 特願2015-546278(P2015-546278)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (H01M)
P 1 651・ 55- YAA (H01M)
P 1 651・ 121- YAA (H01M)
P 1 651・ 113- YAA (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 市川 篤  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 亀ヶ谷 明久
中澤 登
登録日 2018-07-27 
登録番号 特許第6372491号(P6372491)
権利者 株式会社村田製作所
発明の名称 電池、セパレータ、電極、電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システム  
代理人 杉浦 拓真  
代理人 杉浦 拓真  
代理人 杉浦 正知  
代理人 杉浦 正知  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ