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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
令和1行ケ10160 審決取消請求事件 判例 特許
異議2018701011 審決 特許
異議2021700592 審決 特許
異議2019700557 審決 特許
令和1行ケ10067 審決取消請求事件 判例 特許

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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 発明同一  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
管理番号 1368982
異議申立番号 異議2019-700058  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-01-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-01-25 
確定日 2020-10-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6427634号発明「光安定性に優れたシロドシン含有経口固形製剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6427634号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-6]について訂正することを認める。 特許第6427634号の請求項1、2、5及び6に係る特許を維持する。 特許第6427634号の請求項3及び4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6427634号(以下、「本件特許」という。)に係る発明についての出願は、平成29年 6月 30日にされたものであって、平成30年11月 2日にその特許権の設定登録がされたものである。
これに対して、特許異議申立人 牧 美千代から、平成31年 1月25日付け特許異議申立書によって、本件特許の全ての請求項1?6に係る発明の特許を取り消すべき旨の特許異議の申立てがされた。以降の主な手続の経緯は次のとおりである。

令和1年 8月28日付け 取消理由通知書
同年11月 5日付け 意見書
2年 1月31日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年 4月27日付け 訂正請求書
同年 同月 同日付け 意見書

なお、特許異議申立人に対し、令和2年 6月23日付け通知書により、上記訂正の請求があった旨を通知し、意見を述べる機会を与えたが、特許異議申立人から意見書は提出されなかった。

第2 訂正請求について

1.令和2年 4月27日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について訂正することを求めるものである。
本件訂正における訂正事項は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「シロドシンを含有するマスキング粒子と光安定化剤をそれぞれ別個に含有する口腔内崩壊錠であって」と記載されているのを、「シロドシンを含有するマスキング粒子と、D-マンニトール、結晶セルロース、クロスポビドン及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種以上を含有する造粒物と、後末成分のみに光安定化剤を、それぞれ別個に含有する口腔内崩壊錠であって」に訂正する。
請求項1を引用する請求項2、5及び6も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「光安定化剤が黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、褐色酸化鉄、三二酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用赤色2号、食用赤色3号及び食用赤色102号からなる群から選択される1以上である」と記載されているのを、「光安定化剤が黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択される1種以上であり、光安定化剤の含有量が錠剤全重量に対して、0.1?0.2重量%である」に訂正する。
請求項1を引用する請求項2、5及び6も同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に「光安定化剤が黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択される1種以上である、請求項1記載の口腔内崩壊錠」と記載されているのを、「シロドシンを含有するマスキング粒子が、オーバーコートされているマスキング粒子であり、光安定化剤が黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄である、請求項1記載の口腔内崩壊錠」に訂正する。
請求項2を引用する請求項5及び6も同様に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項5に「光安定化剤の含有量が錠剤全重量に対して、0.1?0.2重量%である」と記載されているのを、「光安定化剤の含有量が錠剤全重量に対して、0.15?0.2重量%である」に、「請求項1?3のいずれかに記載」と記載されているのを、「請求項1又は2記載」に訂正する。
請求項5を引用する請求項6も同様に訂正する。

(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項6に「シロドシンを含有するマスキング粒子、光安定化剤及び滑沢剤を含有する打錠用混合物を打錠する工程を含む」と記載されているのを、「シロドシンを含有するマスキング粒子と、D-マンニトール、結晶セルロース、クロスポビドン及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種以上を含有する造粒物と、後末成分のみに光安定化剤と、滑沢剤を含有する打錠用混合物を打錠する工程を含む」に、「請求項1?5」と記載されているのを、「請求項1、2及び5」に訂正する。

2.訂正の適否の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」といい、また、特許請求の範囲又は図面と合わせて「本件明細書等」という。)の【0011】、【0020】?【0022】、実施例1?3の記載に基づいて、請求項1の「口腔内崩壊錠」を「D-マンニトール、結晶セルロース、クロスポビドン及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種以上を含有する造粒物」を含有するものとし、かつ、該口腔内崩壊錠における「光安定化剤」を「後末成分のみに含有する」として、限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項1の「光安定化剤」を、訂正前の請求項1に択一的に記載されていた選択肢から「黄酸化鉄、褐色酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用赤色2号、食用赤色3号及び食用赤色102号」を削除し、「黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択される1種以上」とし、かつ、該「光安定化剤」の含有量を訂正前の請求項5に記載されていた「錠剤全重量に対して0.1?0.2重量%」として、限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、本件明細書の【0019】、実施例1?3の記載に基づいて、請求項2の「マスキング粒子」を「オーバーコートされているマスキング粒子」とし、かつ、同請求項の「光安定化剤」を「黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択される1種以上」から「黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄である」として、限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4及び5について
訂正事項4及び5は、それぞれ、請求項3及び4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項6について
訂正事項6は、本件明細書の実施例2、3の記載に基づいて、請求項5の「光安定化剤の含有量」の下限値を上げることにより範囲を限定するとともに、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)訂正事項7について
訂正事項7は、本件明細書の【0011】、【0020】?【0022】、実施例2の記載に基づいて、請求項6の「打錠用混合物」を、「D-マンニトール、結晶セルロース、クロスポビドン及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種以上を含有する造粒物」を含有するものとし、かつ、該打錠用混合物における「光安定化剤」を「後末成分のみに」「含有する」として限定するとともに、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

訂正前の請求項1?6は、請求項2?6が訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正事項1?7は、一群の請求項に対して請求されたものである。
また、本件においては、全ての請求項が異議申立の請求の対象とされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

3.小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。

第3 本件訂正発明

上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1?6に係る発明(以下、順に、「訂正発明1」?「訂正発明6」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
シロドシンを含有するマスキング粒子と、D-マンニトール、結晶セルロース、クロスポビドン及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種以上を含有する造粒物と、後末成分のみに光安定化剤を、それぞれ別個に含有する口腔内崩壊錠であって、
光安定化剤が黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択される1種以上であり、光安定化剤の含有量が錠剤全重量に対して、0.1?0.2重量%である、口腔内崩壊錠。
【請求項2】
シロドシンを含有するマスキング粒子が、オーバーコートされているマスキング粒子であり、光安定化剤が黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄である、請求項1記載の口腔内崩壊錠。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
光安定化剤の含有量が錠剤全重量に対して、0.15?0.2重量%である、請求項1又は2記載の口腔内崩壊錠。
【請求項6】
シロドシンを含有するマスキング粒子と、D-マンニトール、結晶セルロース、クロスポビドン及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種以上を含有する造粒物と、後末成分のみに光安定化剤と、滑沢剤を含有する打錠用混合物を打錠する工程を含む、請求項1、2及び5のいずれかに記載の口腔内崩壊錠を製造する方法。」

第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について

1.取消理由通知(決定の予告)の概要
本件訂正前の請求項1?6に係る特許に対して、当審が令和2年 1月31日付で特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。

特許時の請求項1?6に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

引用文献1:国際公開第2014/157137号(特許異議申立人が提出した甲第2号証)
引用文献2:特開2016-210760号公報(特許異議申立人が提出した甲第3号証)

2.引用文献の記載等
(1)引用文献1の記載及び引用文献1に記載された発明
ア 引用文献1には、次のとおりの記載がある。
(i)「【請求の範囲】
【請求項1】シロドシンの微粉末を含有する薬物粒子を、非腸溶性高分子を含有するコーティング剤で造粒又は被覆して得られるマスキング粒子であって、非腸溶性高分子含量が、シロドシン100質量部に対して80質量部?400質量部である、マスキング粒子。」

(ii)「発明が解決しようとする課題
【0005】 本発明は、極めて苦味の強い薬剤であるシロドシンを、異物感なく水なしでも服用でき、かつ前立腺肥大症に伴う排尿障害等の治療に有効な血中濃度を再現できる溶出性を備えた、新規な経口投与製剤を提供することを課題とする。」

(iii)「【0012】 薬物粒子に用いられる添加剤としては、シロドシンと配合変化を起こさない種々の添加剤が用いることができ、例えば、崩壊剤、賦形剤、結合剤、滑沢剤、甘味剤、酸味剤、発泡剤、香料、着色剤等を適宜用いることができる。崩壊剤としては、例えば、…トウモロコシデンプン、…クロスポピドン、結晶セルロース …等が挙げられる。賦形剤としては、例えば、…トウモロコシデンプン、…結晶セルロース、…D-マンニトール…等が挙げられる。結合剤としては、例えば、…結晶セルロース、…等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、…フマル酸ステアリルナトリウム、…等が挙げられる。…着色剤としては、例えば、食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号等の食用色素、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、カラメル色素、酸化チタン等が挙げられる。」

(iv)「【0017】 本発明のマスキング粒子は、製造時の凝集を防ぐため、さらに適当な添加剤でオーバーコートしてから用いてもよく、本発明のマスキング粒子にはオーバーコートしたものも含まれる。ただし、本明細書において、マスキング粒子の質量には、オーバーコートに用いられる添加剤の質量は含まない。オーバーコートに用いられる添加剤としては、例えば、乳糖、グルコース、蔗糖、果糖等の糖、D-マンニトール、エリスリトール、キシリトール、マルトース、D-ソルビトール、マルチトール等の糖アルコールが挙げられ、好ましくは、D-マンニトールである。」

(v)「【0018】
(経口投与製剤)
本発明のマスキング粒子を用いて種々の剤形の経口投与製剤を製造することができる。本発明の経口投与製剤の剤形としては、例えば、…錠剤等が挙げられる。
【0019】 本発明の経口投与製剤は、本発明のマスキング粒子と口腔内速崩壊製剤に一般的に使用される医薬品添加物を用いて、製剤分野において慣用の方法により製造することができる。
【0020】 例えば、錠剤の場合には、本発明のマスキング粒子を、口腔内速崩壊製剤に一般的に使用される医薬品添加物と共に、直接粉末圧縮法(直打法)、造粒法等の公知の方法又はそれに準じた方法で錠剤化することにより、経口投与製剤を製造することもできる。
具体的には、例えば、直打法では、本発明のマスキング粒子と、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等の医薬品添加物を含有する混合物を造粒せずに、混合機を用いて混合した後、打錠して経口投与製剤を製造することもできる。
また、例えば、造粒法では、賦形剤、崩壊剤等の混合物を、水、水とエタノールの混合液又は結合剤もしくは崩壊剤の溶液もしくは懸濁液等を用いて造粒後、本発明のマスキング粒子、滑沢剤等と混合機を用いて混合した後、打錠してもよいし、本発明のマスキング粒子と賦形剤、崩壊剤等の混合物を、水、水とエタノールの混合液又は結合剤もしくは崩壊剤の溶液もしくは懸濁液等を用いて造粒後、さらに滑沢剤を添加して混合機を用いて混合した後、打錠して経口投与製剤を製造することもできる。

【0022】 口腔内速崩壊製剤に一般的に使用される医薬品添加物としては、前記薬物粒子に用いられる添加剤を用いることができるが、崩壊剤としては、部分アルファー化デンプン、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、トウモロコシデンプン等が好ましい。賦形剤としては、D-マンニトール、エリスリトール、キシリトール、マルトース、D-ソルビトール、マルチトール等の糖アルコール、トウモロコシデンプン、結晶セルロース等が好ましい。滑沢剤としては、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、軽質無水ケイ酸等が好ましい。これらの医薬品添加物は、必要に応じて、2つ以上を組み合わせて使用してもよい。

【0025】〔製造例2〕
例えば、本発明のマスキング粒子と乳糖、果糖等の糖、D-マンニトール、エリスリトール、キシリトール等の糖アルコール、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン等のデンプン類、結晶セルロース、クロスポビドン、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸カルシウム、タルク及び軽質無水ケイ酸から選択される少なくとも1つの医薬品添加物とを、混合機を用いて混合した後、その混合物を打錠することにより、錠剤を製造することもできる。前記混合工程において、必要に応じて、さらに賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、発泡剤、甘味剤、矯味剤、流動化剤、香料、着色剤等を1つ又は2つ以上組み合せて添加してもよい。

【0029】〔製造例6〕
例えば、D-マンニトール及び結晶セルロースの混合物を、流動層造粒乾燥機を用いて混合し、これにクロスポビドンの水分散液を噴霧しながら造粒を行った後に、整粒機を用いて整粒し、顆粒(3)を製造することもできる。次いで、本発明のマスキング粒子、前記顆粒(3)及びフマル酸ステアリルナトリウムを、混合機を用いて混合した後、打錠することにより錠剤を製造することもできる。前記混合工程において、必要に応じて、さらに賦形剤、滑沢剤、発泡剤、甘味剤、矯味剤、流動化剤、香料、着色剤等を1つ又は2つ以上組み合せて添加してもよい。
【0030】〔製造例7〕
例えば、D-マンニトール、結晶セルロース及びクロスポビドンの混合物を、流動層造粒乾燥機を用いて混合し、これに水を噴霧しながら造粒を行った後に、整粒機を用いて整粒し、顆粒(4)を製造することもできる。次いで、本発明のマスキング粒子、前記顆粒(4)及びフマル酸ステアリルナトリウムを、混合機を用いて混合した後、打錠することにより錠剤を製造することもできる。前記混合工程において、必要に応じて、さらに賦形剤、滑沢剤、発泡剤、甘味剤、矯味剤、流動化剤、香料、着色剤等を1つ又は2つ以上組み合せて添加してもよい。」

(vi)「発明の効果
【0038】
本発明のマスキング粒子は、製剤学的に安定であり、シロドシンの極めて強烈な苦味を抑制し、市販のシロドシンの錠剤(ユリーフ(登録商標)錠)と同様の速やかな溶出性を有するので、水なしでも、異物感がなく服用できる経口投与製剤に用いることができる。また本発明の経口投与製剤は、シロドシン特有の苦味を抑制し、市販のシロドシンの錠剤(ユリーフ(登録商標)錠)と同様の速やかな溶出性及び生物学的同等性を有することから、水なしでも異物感がなく服用できるシロドシン含有製剤として有用である。」

(vii)「【0051】〔試験例9〕
生物学的同等性試験
(1)試験方法
健康成人男性を対象として、空腹時に、シロドシン4mgを含有する試験製剤を口腔内で崩壊させて水なしで単回経口投与した場合と、シロドシン4mgを含有する市販錠(標準製剤)を水とともに単回経口投与した場合の血漿中シロドシン濃度を測定し、両製剤間の生物学的同等性を検討した。
(2)被験薬
標準製剤は、市販のユリーフ(登録商標)4mg錠を使用した。
試験製剤は、実施例10の方法に準じて表3記載の組成の錠剤を作製した。
【0052】[表3]


【0062】
実施例9

一方、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(エボニックデグサジャパン社製)6825g、ラウリル硫酸ナトリウム(花王社製)682.5g、ステアリン酸(マリンクロット社製)1023.8g及びタルク(松村産業社製)2388.8gを精製水に添加し、コーティング液(c-4)を得た。
また、D-マンニトール(三菱フードテック社製)3000gを精製水に添加し、コーティング液(c-5)を得た。

【0063】
実施例10
シロドシン4400g、部分アルファー化デンプン(日本カラコン社製)16192g及びタルク(松村産業社製)1100gを、流動層造粒乾燥機(NFLO-30SJC、フロイント産業社製)を用いて混合し、ここへヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)308gを精製水に添加した溶液をスプレーノズルで噴霧しながら造粒を行った。得られた造粒物を、整粒機(P-02S、ダルトン社製)を用いて、スクリーンサイズφ1.0mmにて整粒し、薬物粒子を得た。
得られた薬物粒子16250gを、流動層造粒乾燥機(NFLO-30SJC、フロイント産業社製)に入れ、コーティング液(c-4)をスプレーし、シロドシン100質量部に対して、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEとして175質量部を被覆し、マスキング粒子を得た。
次に得られたマスキング粒子にコーティング液(c-5)をスプレーし、マスキング粒子100質量部に対して、10質量部を被覆した。得られた顆粒を30号の篩を用いて篩過し、オーバーコートしたマスキング粒子(a-10)を得た。
D-マンニトール(フロイント産業社製)19399g、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ社製)4095g及びクロスポビドン(ISP社製)1706gを用いて、常法に従い造粒物(b-4)を得た。
オーバーコートしたマスキング粒子(a-10)171.5g、造粒物(b-4)738.5g、トウモロコシデンプン(日本食品化工社製)70g及びフマル酸ステアリルナトリウム(PHARMATRANS SANAQ AG社製)20gを混合し、打錠用混合物を得た。この打錠用混合物を、ロータリー打錠機(CLEANPRESS Correct 12HUK、菊水製作所社製)を用い、杵臼8mm、打錠圧約7kNの条件で打錠し、1錠当たりシロドシン4mgを含有する質量200.0mgの錠剤を得た。」

イ 上記アに示した引用文献1の記載(特に、摘示事項(vii))によれば、引用文献1には、試験製剤として表3記載の組成を有する錠剤を、実施例10の方法に準じて作製したこと、及び、当該試験製剤は、口腔内で崩壊させて水なしで経口投与するものであることが記載されている。
そして、引用文献1の実施例10(摘示事項(vii))には、シロドシン、部分アルファー化デンプン、タルクを混合し、そこへヒドロキシプロピルセルロース溶液を噴霧しながら造粒し、整粒して得た薬物粒子に、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸及びタルクを含むコーティング液をスプレー被覆し、更にD-マンニトールをオーバーコートしたマスキング粒子(a-10)と、D-マンニトール、結晶セルロース及びクロスポビドンを含む造粒物(b-4)と、トウモロコシデンプン及びフマル酸ステアリルナトリウムとを混合して、打錠用混合物を得たことが記載されているから、次の発明が記載されているものと認める。

「シロドシンを含有するマスキング粒子と、D-マンニトール、結晶セルロース及びクロスポビドンを含む造粒物を含有する、口腔内で崩壊させて水なしで経口投与する錠剤であって、以下の組成を有する、錠剤。

[マスキング粒子]
シロドシン:4mg
部分アルファー化デンプン:14.72mg
タルク:3.45mg
ヒドロキシプロピルセルロース:0.28mg
アミノアルキルメタクリレートコポリマーE:7mg
ラウリル硫酸ナトリウム:0.7mg
ステアリン酸:1.05mg

[医薬品添加物]
D-マンニトール、結晶セルロース、クロスポビドン、トウモロコシデンプン、フマル酸ステアリルナトリウム、着色剤、甘味剤、香料:合計169.4mg」の発明(以下、「引用文献1発明」という。)

(2)引用文献2の記載
ア 引用文献2には、次のとおりの記載がある。
(i)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
淡黄色、黄色、淡赤色、赤色より選ばれる色で錠剤が着色された、シロドシン及び遮光剤を含有する素錠である錠剤。
【請求項2】
口腔内崩壊錠である、請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
遮光剤が黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、褐色酸化鉄、三二酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号より選ばれる、請求項1又は2に記載の錠剤。
【請求項4】
遮光剤が黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄より選ばれる、請求項1又は2に記載の錠剤。
【請求項5】
遮光剤の含有量が錠剤全重量に対して、0.001?10.0重量%である、請求項1?4のいずれかに記載の錠剤。
【請求項6】
遮光剤の含有量が錠剤全重量に対して、0.01?1.0重量%である、請求項1?4のいずれかに記載の錠剤。
【請求項7】
遮光剤とシロドシンを含む造粒物を含有する、請求項1?6のいずれかに記載の錠剤。

【請求項10】
遮光剤とシロドシンを含む造粒物を賦形剤及び滑沢剤と混合して打錠する工程を含む、請求項1?8のいずれかに記載の錠剤を製造する方法。」

(ii)「【0003】
シロドシンは錠剤に含有された形態で医療現場に上記の治療薬として提供されている。シロドシンを含有する錠剤に関しては、シロドシンが光に対する安定性が不十分であり、分解物(類縁体)を生じやすいことが特許文献1で報告されている。そのため、シロドシンを含有する錠剤については今までに、その安定性を改善する錠剤の製造方法が、幾つかの先行技術文献で報告されてきた。特許文献1では、シロドシンを含有する錠剤が酸化チタンを含有するフィルムコーティング層で覆われた技術が報告され、その技術によって光に対する安定性が向上している。また、特許文献2では、光及び温度に対する保存条件下での安定性の向上を目的とした、シロドシンを含有する錠剤に塩基性コポリマーを含有させる技術が報告されている。」

(iii)「【0008】
本発明者は、シロドシンを含有する口腔内崩壊錠の安定性を改善するため、その処方や製造方法に関して鋭意検討を重ねた。その結果、特定の遮光剤によって特定の色で着色されたシロドシン含有口腔内崩壊錠は、シロドシンの光に対する安定性が向上し、原薬由来の類縁体の発生量が有意に抑えられることを発見した。…」

(iv)「【0020】
本発明のシロドシンを含有する錠剤は、遮光剤をさらに含有する。遮光剤によって錠剤を特定の色に着色することが可能である。その特定の遮光剤としては、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、褐色酸化鉄、三二酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号等を挙げる事ができ、好ましくは食用黄色4号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄から選ばれ、より好ましくは黄色三二酸化鉄又は三二酸化鉄である。遮光剤は、錠剤全重量に対して0.001?10.0重量%の範囲で含有されていることが好ましく、より好ましくは0.005?5.0重量%の範囲で含有され、さらにより好ましくは0.01?1.0重量%の範囲で含有され、最も好ましくは0.2?1.0重量%の範囲で含有される。遮光剤はシロドシンと共に造粒の工程を経て、造粒物に含有されることが好ましい。
本発明のシロドシンを含有する錠剤は、遮光剤の錠剤中の含有量によっては必ずしも着色されている必要性はないが、淡黄色、黄色、淡赤色、赤色より選ばれる色で着色されていることが好ましく、より好ましくは黄色、赤色、淡黄色且つ淡赤色である色より選ばれる色で着色され、最も好ましくは黄色で着色される。」

(v)「【0035】
〔試験例1〕光照射前後の類縁物質測定試験
実施例1?7及び比較例1?4で得た錠剤について、白熱光3000lxを400時間、合計120万lx・hr照射した前後又は白熱光3000lxを200時間、合計60万lx・hr照射した前後のシロドシンの類縁体の含量をそれぞれHPLC法(定量方法は面積百分率法を使用した)で測定し、それらの結果を図1、2、4、5に示した。図1、4では類縁体としてデヒドロ体の含有量を測定し、図2、5ではデヒドロ体を含む全ての類縁体の含有量を測定している。
〔試験例2〕光照射前後の色差測定
実施例1?7及び比較例1?4で得た錠剤について、白熱光3000lxを400時間、合計120万lx・hr照射した前後又は白熱光3000lxを200時間、合計60万lx・hr照射した前後の、各錠剤の明度(L*)、色相と彩度を示す色度(a*およびb*)について分光色差計(日本電色工業社製:SE6000型)を用いて測定した。これらの結果から、光照射前後の色差(ΔE)を算出して図3、6に示した。色差は色度値としてCIELab1976に規定されるL*a*b*を用い、ΔEについて下記の式にて算出した。ΔE={(ΔL*)^2+(Δa*)^2(Δb*)^2}^1/2(日本電色工業株式会社、Spectrophotometer SE6000型、取扱説明書より)。
【0036】
図1、2、4、5に共通して、本発明に係る実施例1?7の錠剤では光照射後のシロドシン由来の類縁体の増加量が有意に低いのに対し、比較例1?4の錠剤では製造直後のシロドシンの類縁体の増加量が有意に大きいことが判る。すなわち、本発明により得られる錠剤は、光に対するシロドシンの化学的な安定性が極めて優れていることが判った。
さらに図3、6より、発明に係る実施例1?7の錠剤では光照射前後の色差が有意に低いのに対し、比較例1?4の錠剤では光照射前後の色差が有意に大きいことが判る。すなわち、本発明により得られる錠剤は、光による錠剤の色調変化を防止する効果が極めて優れていることが併せて判った。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、保存条件下でのシロドシンの光に対する化学的な安定性を向上させ、分解産物(類縁体)の発生量を抑制すると共に、さらには光による錠剤の色調変化を防止する効果をもった、シロドシンを含有する口腔内崩壊錠を医療現場に提供することが可能となる。」

3.当審の判断
(1)訂正発明1について
ア 対比
訂正発明1と引用文献1発明とを対比すると、引用文献1発明の「シロドシンを含有するマスキング粒子」、「D-マンニトール、結晶セルロース及びクロスポビドンを含む造粒物」、「口腔内で崩壊させて水なしで経口投与する錠剤」は、それぞれ、訂正発明1の「シロドシンを含有するマスキング粒子」、「D-マンニトール、結晶セルロース、クロスポビドン及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種以上を含有する造粒物」、「口腔内崩壊錠」に相当する。引用文献1発明において、「シロドシンを含有するマスキング粒子」と、「D-マンニトール、結晶セルロース及びクロスポビドンを含む造粒物」とは別個に含有するものであるといえるから、訂正発明1と引用文献1発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「シロドシンを含有するマスキング粒子と、D-マンニトール、結晶セルロース、クロスポビドン及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種以上を含有する造粒物を、それぞれ別個に含有する口腔内崩壊錠」

<相違点>
1.訂正発明1は、後末成分のみに光安定化剤を含有するものであるのに対し、引用文献1発明においては、着色剤の含有形態について特定がされていない点。
2.訂正発明1は、光安定化剤が、黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択される1種以上であり、光安定化剤の含有量が錠剤全重量に対して、0.1?0.2重量%であるのに対し、引用文献1発明においては、着色剤の種類及び錠剤全重量に対する含有量について特定がされていない点。

イ 判断
(ア)相違点1について
a 訂正発明1における「光安定化剤」は、「黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択される1種以上」であり、本件明細書の【0010】の「光(日光、屋内光など)に暴露した時のシロドシンの分解又は光劣化を防止させる又は低減させることができる添加剤であればよく、例えば、食用黄色4号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用青色1号、食用青色2号、食用青色2号アルミニウムレーキ等の食用色素、酸化チタン、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、褐色酸化鉄、三二酸化鉄等、発明に支障がない範囲で、従来から遮光剤又は着色剤として使用されているものを挙げることができる。」との記載によれば、上記「黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択される1種以上」は着色剤でもあるから、引用文献1発明における「着色剤」は、訂正発明1における「光安定化剤」に相当するものといえる。
また、訂正発明1の「後末成分のみに光安定化剤」を含有するとは、本件明細書の【0011】の記載から、経口固形製剤の一種である口腔内崩壊錠中、「シロドシンを含有するマスキング粒子」と分離して、造粒された顆粒の外側に加える添加剤として光安定化剤を含有することをいうものと認める。

b そこで、引用文献1発明において、着色剤が、後末成分のみに含有されているものであるか否かについて検討する。

c 引用文献1発明が、それに準じて作製されたとされる引用文献1の実施例10(摘示事項(vii))には、打錠用混合物に着色剤を混合することについては記載されていないから、該実施例10に準じて作製された引用文献1発明の錠剤中、着色剤がどのように含有されているかは不明である。
そして、引用文献1には、着色剤をどのように含有させるかについて具体的に特定する記載は見出せない。

d 一方、引用文献2には、シロドシン及び黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、褐色酸化鉄、三二酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号より選ばれる遮光剤を含有する口腔内崩壊錠が記載されている(摘示事項(i)?(v))。引用文献2には、さらに、上記遮光剤が、シロドシンと共に造粒の工程を経て、造粒物に含有されることが好ましいこと(摘示事項(iv))、シロドシンと遮光剤を含む造粒物に、賦形剤、滑沢剤等を添加し、打錠して、保存条件下でのシロドシンの光に対する化学的な安定性を向上させ、分解産物(類縁体)の発生量を抑制すると共に、さらには光による錠剤の色調変化を防止する効果をもった、シロドシンを含有する口腔内崩壊錠を製造したことが記載されている(摘示事項(v))。
そうすると、引用文献2の記載内容をみても、黄色三二酸化鉄等の遮光剤をシロドシンの光に対する化学的な安定性を向上させるために用いる場合には、遮光剤をシロドシンと共に造粒物に含有させることが好ましいとの上記記載による教示をあえて離れて、着色剤によりシロドシンの光安定性を向上させることに関してなんら記載されていない引用文献1発明において 、シロドシンを含有するマスキング粒子とは別個に、後末成分のみに黄色三二酸化鉄等の着色剤を含有させて光に対する化学的な安定性を向上させる動機付けがあったとまではいえない。
したがって、引用文献1発明において、相違点1の発明特定事項とすることは当業者が格別の創意を要することなくなし得たものとは認められない。

(イ)効果について
訂正発明1は、光安定化剤をシロドシンを含有するマスキング粒子と別個に含有することにより、シロドシンの光による分解を抑制して、光に対する化学的な安定性を向上することができたものである(本件明細書の【0043】、【0044】)。
そして、上記効果について、光安定化剤として、黄色三二酸化鉄を単独で、又は黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄を、後末成分のみに含有する口腔内崩壊錠が、上記光安定化剤を後末成分のみとは異なる態様で含有する錠剤に比べて優れた安定化作用を示すことは、令和2年 4月27日付け意見書の14?19頁の記載から確認することができる。

(ウ)小括
以上によれば、訂正発明1は、相違点2について検討するまでもなく、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)訂正発明2、5及び6について
請求項1を引用し、訂正発明1を更に限定した訂正発明2、5も、訂正発明1と同様の理由で、引用文献1に記載に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、請求項1を引用し、訂正発明1に係る口腔内崩壊錠を製造する方法である訂正発明6も、訂正発明1と同様の理由で、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について

特許異議申立人が特許異議申立書において申し立てた理由の概要、証拠方法は、次のとおりである。

申立理由1:請求項1?6に係る発明は、甲第1号証に係る出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから(同法第41条第3項参照)、請求項1?6に係る特許は、同法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し取り消されるべきものである。

申立理由2:請求項1?3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、請求項1?3に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し取り消されるべきものである。

申立理由3:請求項1?6に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基いて、又は甲第3号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項1?6に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し取り消されるべきものである。

申立理由4:請求項1?6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第1項第4号に該当し取り消されるべきものである。

申立理由5:請求項1?6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第1項第4号に該当し取り消されるべきものである。

甲第1号証:特願2016-202293号(特開2018-100257号公報)
甲第2号証:国際公開第2014/157137号
甲第3号証:特開2016-210760号公報

上記第1に記述のとおり、訂正の請求があった旨の令和2年 6月23日付け通知書に対し、特許異議申立人から意見書は提出されなかった。そこで、以下においては、訂正発明1?6について本件訂正前の請求項1?6についてした申立理由を主張するものとして検討する。

1.申立理由5について
請求項1記載の「シロドシンのマスキング粒子」とは、本件明細書の【0009】の記載から、シロドシンの苦味をマスクした粒子をいうものであり、また、同請求項記載の「それぞれ別個に含有する」とは、同【0011】の記載から、経口固形製剤の一種である口腔内崩壊錠中、「シロドシンを含有するマスキング粒子」と「造粒物」と「後末成分のみに光安定化剤」とを、それぞれ異なる成分として含有することをいうものであることは明らかである。
そして、請求項1を引用する訂正発明2、5及び6に係る発明においても、該用語は上記と同様の意味で用いられているものと認める。
よって、訂正発明1、2、5及び6は明確である。

2.申立理由1について
(1)甲第1号証に係る出願(特願2016-202293号(特開2018-100257号公報参照))の願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、「当初明細書等」という。)の記載等

甲第1号証に係る出願の当初明細書等には、核粒子の周囲がコーティング層で被覆されていることを特徴とする原薬を含む顆粒が、非腸溶性高分子を含むコーティング層で更に被覆されていることを特徴とする被覆顆粒、を含有する口腔内崩壊錠であって、上記原薬がシロドシンであることが記載されている(請求項1、2)。ここで、核粒子は賦形剤又は原薬であり(【0025】)、非腸溶性高分子は、好ましくは胃溶性高分子又は水不溶性高分子である(【0026】)。
また、遮光剤は、素錠の全重量に対して0.01?1.0重量%の範囲で素錠中に含有されていることが好ましいこと、また、具体的には、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、褐色酸化鉄、三二酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号等が例示されている(【0022】)。
甲第1号証に係る出願の当初明細書等には、さらに、上記錠剤を製造する工程に関して、被覆顆粒に、結合剤を含む造粒液を噴霧することで更なる造粒物を製造する工程を介することが好ましいことが記載されており(【0027】)、実施の態様として、シロドシンを含む顆粒に非腸溶性高分子であるアミノアルキルメタクリレートコポリマーE又はエチルセルロースを含むコーティング液を噴霧乾燥して被覆顆粒を得て、該被覆顆粒に、D-マンニトール、クロスポビドン、結晶セルロース、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄等を含む液を噴霧乾燥して顆粒を得て、該顆粒に滑沢剤であるステアリン酸マグネシウム(【0018】)を加えて得られた混合物を圧縮成形して口腔内崩壊錠を製造したことが記載されている(実施例1?6)。上記記載によれば、錠剤を製造するために使用可能な添加物のうち、賦形剤、崩壊剤、結合剤及び遮光剤は、シロドシンを含む顆粒を非腸溶性高分子で被覆した層上に被覆層の態様で存在しているものと認められる。

そうすると、甲第1号証に係る出願の当初明細書等には、次の発明が記載されていると認められる。

「シロドシンを含む顆粒と非腸溶性高分子被覆層からなる被覆顆粒に、D-マンニトール、クロスポビドン、結晶セルロース、黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄を含有する被覆層を設けた顆粒を含有する口腔内崩壊錠であって、黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄の含有量が素錠の全重量に対して0.01?1.0重量%である、口腔内崩壊錠」の発明(以下、「甲1発明」という。)

(2)訂正発明1について
ア 対比
訂正発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「シロドシンを含む顆粒と非腸溶性高分子被覆層からなる顆粒」、「黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄」は、各々、訂正発明1の「シロドシンを含有するマスキング粒子」、「光安定化剤が黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択される1種以上」に相当するから、両発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「シロドシンを含有するマスキング粒子と、D-マンニトール、クロスポビドン、結晶セルロース、クロスポビドン及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される成分と、光安定化剤を含有する口腔内崩壊錠であって、
光安定化剤が黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択される1種以上である、口腔内崩壊錠」

<相違点>
4.訂正発明1が、シロドシンを含有するマスキング粒子と、D-マンニトール、結晶セルロース、クロスポビドン及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種以上を含有する造粒物と、後末成分のみに光安定化剤を、それぞれ別個に含有するのに対し、甲1発明は、シロドシンを含有するマスキング粒子の上に、D-マンニトール、クロスポビドン、結晶セルロース、黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄を含有する被覆層が設けられている点。
5.訂正発明1が、光安定化剤の含有量が錠剤全重量に対して、0.1?0.2重量%である、と特定しているのに対し、甲1発明が、0.01?1.0重量%である、と特定している点。

イ 判断
甲1発明の顆粒は、シロドシンを含有するマスキング粒子の上に、D-マンニトール、クロスポビドン、結晶セルロース、黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄を含有する被覆層が設けられたものであって、訂正発明1の「後末成分のみに」「光安定化剤」と、「D-マンニトール、結晶セルロース、クロスポピドン及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種以上を含有する造粒物」を「シロドシンを含有するマスキング粒子」と「別個に含有する」点を満足するものではなく、相違点4は実質的な相違点である。
したがって、相違点5について検討するまでもなく、 訂正発明1は甲第1号証に係る出願の当初明細書等に記載された発明ではない。

(3)訂正発明2、5及び6について
請求項1を引用し訂正発明1を更に限定した訂正発明2、5も、前記(2)に説示のとおり、訂正発明1と同様の理由で、少なくとも相違点4において甲第1号証に記載された発明と実質的に相違するといえるから、甲第1号証に係る出願の当初明細書等に記載された発明ではない。
また、請求項1を引用し、訂正発明1に係る口腔内崩壊錠を製造する方法である訂正発明6も、訂正発明1と同様の理由で、甲第1号証に係る出願の当初明細書等に記載された発明ではない。

3.申立理由2について
甲第2号証(国際公開第2014/157137号)は、上記第4 1.に記述のとおり、取消理由通知(決定の予告)において引用された引用文献1である。
したがって、訂正発明1、2と甲第2号証に記載された発明とは、上記第4 3.(1)アで説示した相違点があるといえるから、訂正発明1、2は甲第2号証に記載された発明ではない。

4.申立理由3について
(1)甲第3号証の記載等
甲第3号証の特許請求の範囲(特に請求項4、6を引用する請求項7、請求項4、6を引用する請求項10)には、それぞれ「淡黄色、黄色、淡赤色、赤色より選ばれる色で錠剤が着色された、シロドシン及び遮光剤を含有する素錠である錠剤であって、上記遮光剤が黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄より選ばれ、その含有量が錠剤全重量に対して、0.01?1.0重量%である錠剤」の発明、「遮光剤とシロドシンを含む造粒物を賦形剤及び滑沢剤と混合して打錠する工程を含む錠剤を製造する方法であって、該錠剤が、淡黄色、黄色、淡赤色、赤色より選ばれる色で錠剤が着色された、シロドシン及び遮光剤を含有する素錠であって、上記遮光剤が黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄より選ばれ、その含有量が錠剤全重量に対して、0.01?1.0重量%である錠剤を製造する方法」の発明が記載されている。上記錠剤に口腔内崩壊錠が含まれることは、甲第3号証の【0007】の記載から明らかであるし、必ずしも着色されている必要性はないことも記載されている(【0020】)。
また、上記錠剤を製造するために使用可能な添加物として、一般的に使用されている賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等が記載されている(【0014】)。賦形剤として、結晶セルロース、D-マンニトール等が、結合剤として、ヒドロキシプロピルセルロース等が、崩壊剤として、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、D-マンニトール等が、滑沢剤として、ステアリン酸マグネシウム等が記載されている(【0015】?【0018】)。
そして、特許請求の範囲に記載される上記遮光剤として、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、褐色酸化鉄、三二酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号等が例示され、また、錠剤全重量に対して、さらにより好ましくは0.01?1.0重量%の範囲で含有されることがより好ましいことや、遮光剤はシロドシンと共に造粒の工程を経て、造粒物に含有されることが好ましいことが記載されている(【0020】)。
さらに、甲第3号証には、上記錠剤の製造は常法にしたがって行うことができ、より好ましくは湿式造粒物圧縮法で製造することができること、例えば、原薬と添加剤の混合物を流動層造粒機中で結合剤を含有する液を添加して造粒した造粒物を打錠する、一般的な方法で行われることが記載されており(【0023】)、実施の態様として、シロドシン、D-マンニトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの混合物に、ヒドロキシプロピルセルロース、黄色三二酸化鉄を含む液を噴霧造粒することにより得られたシロドシンを含む造粒物に、賦形剤であるD-マンニトール、滑沢剤であるステアリン酸マグネシウム等を加えて得られた混合物を圧縮成形して口腔内崩壊錠を製造したことが記載されている(実施例1)。

そうすると、甲第3号証には、次の発明が記載されているものと認める。

「シロドシンと、黄色三二酸化鉄又は三二酸化鉄より選ばれる遮光剤とを含む造粒物と、D-マンニトール等の賦形剤とステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤を混合して圧縮成形した素錠である、口腔内崩壊錠であって、該遮光剤の含有量が錠剤全重量に対して0.01?1.0重量%である、口腔内崩壊錠。」の発明(以下、「甲3発明」という。)

(2)訂正発明1について
ア 対比
訂正発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明の「遮光剤」は、訂正発明1の「光安定化剤」に相当するから、訂正発明1と甲3発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「シロドシンと光安定化剤を含有する口腔内崩壊錠であって、
光安定化剤が黄酸化鉄及び黄色三二酸化鉄からなる群から選択される1種以上である、口腔内崩壊錠」

<相違点>
6.訂正発明1が、シロドシンと、D-マンニトール、結晶セルロース、クロスポビドン及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種以上を含有する造粒物と、後末成分のみに光安定化剤を、それぞれ別個に含有するものであるのに対し、甲3発明は、シロドシンと遮光剤とを一の造粒物中に含有するものであり、D-マンニトール等の賦形剤を造粒物とすることが特定されていない点。
7.訂正発明1が、光安定化剤の含有量が錠剤全重量に対して0.1?0.2重量%である、と特定しているのに対し、甲3発明は、0.01?1.0重量%である、と特定している点。
8.シロドシンが、訂正発明1においてはシロドシンを含有するマスキング粒子であるのに対し、甲3発明においては、そのような特定がなされていない点。

イ 判断
(ア)相違点6?8について
a まず、相違点6について検討する。
甲第3号証には、遮光剤を、シロドシンを含む造粒物以外に含有させる具体的な態様について記載も示唆もない。そして、「遮光剤はシロドシンと共に造粒の工程を経て、造粒物に含有されることが好ましい。」(【0020】)との記載に照らせば、甲第3号証において好ましいと記載されている、光安定化剤をシロドシンと共に造粒物に含有されるもの以外の態様とする動機付けは見当たらない。
そして、甲第2号証にも、シロドシンを含有する口腔内崩壊錠における、黄色三二酸化鉄等の着色剤の含有形態について、具体的な示唆はされてないから、甲第2号証の記載を考慮しても、甲3発明において、甲第3号証において好ましいものとして記載されている態様と異なりかつ例示もされていない、シロドシンを含む造粒物とは別個に遮光剤を含む、との構成に当業者が至るものとは認められない。

b また、甲第3号証には、上記(1)において説示のとおり、甲3発明の賦形剤、崩壊剤、結合剤として、たとえば、順に、結晶セルロース、D-マンニトール等、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、D-マンニトール等、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられているが、それらは造粒されていないし、また造粒してから用いることも記載されておらず、D-マンニトール、結晶セルロース、クロスポビドン及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種以上を含有する造粒物とする態様について記載も示唆もない。

c したがって、甲3発明において、相違点6の発明特定事項とすることは当業者が格別の創意を要することなくなしえたものとは認められない。

(イ)効果について
訂正発明1は、光安定化剤を後末成分のみに、シロドシンを含有するマスキング粒子と別個に含有することにより、シロドシンの光による分解を抑制して、口腔内崩壊錠の、光に対する化学的な安定性を向上することができたものであり、このことは、上記第4 3.(1)イ(イ)に説示した記載から確認することができる。

(ウ)小括
以上によれば、その余の相違点7、8について検討するまでもなく、訂正発明1は、甲第3号証に記載された発明、又は甲第3号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)訂正発明2、5及び6について
請求項1を引用し訂正発明1を更に限定した訂正発明2、5も、訂正発明1と同様の効果を奏するものであり、訂正発明1と同様の理由で、甲第3号証に記載された発明、又は甲第3号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、請求項1を引用し、訂正発明1に係る口腔内崩壊錠を製造する方法である訂正発明6も、訂正発明1と同様の理由で、甲第3号証に記載された発明、又は甲第3号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5.申立理由4について
(1)訂正後の特許請求の範囲及び本件明細書の記載、特に【0005】から、訂正発明1、2、5及び6の課題は、シロドシンの光による分解を抑制した光安定性に優れた経口固形製剤及び該経口固形製剤を製造する方法を提供することであると認める。
本件明細書の発明の詳細な説明には、該課題を解決すべく検討を行った結果、シロドシンを含有する薬物顆粒と光安定化剤をそれぞれ別個に含有することにより、シロドシンの光による分解を抑制し、ユリーフ(登録商標)錠と同様の光安定性を実現しうることを見出し、本発明を完成したものであることが記載されており(【0006】)、また、訂正発明6の発明特定事項を有する方法により製造された、訂正発明1の発明特定事項を有する、実施例1?3の口腔内崩壊錠剤が、光によるシロドシンの分解を抑制し得たことは具体的に確認されている(表1)。
以上の記載によれば、本件明細書の発明の詳細な説明には、訂正発明1、2、5及び6が上記課題を解決できることを当業者が認識できる程度に記載されているものと認める。
よって、訂正発明1、2、5及び6は、発明の詳細な説明に記載したものである。

(2)特許異議申立人は、実施例1?3には、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEで被覆したコーティング顆粒のみしか記載されていないのに対して、訂正発明1、2、5及び6は、上記形態に限定したものではないから、請求項1、2、5及び6において、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものである、と主張する。
しかし、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEによる粒子の被覆は、マスキングによるシロドシンの苦味をマスクすることに関連するものであり、訂正発明1、2、5及び6の課題及び該課題を解決するための手段と直接関係するものではなく、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE以外のコーティング剤で造粒又は被覆したマスキング粒子を用いたからといって、訂正発明1、2、5及び6の発明の課題を解決できない、といえるものではないことは、当業者において明らかである。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

6.小括
以上によれば、特許異議申立人が主張する申立理由は、いずれも採用できない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、請求項1、2、5及び6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2、5及び6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項3及び4は、上記のとおり訂正により削除され、特許異議の申立ての対象が存在しないものとなったため、請求項3及び4に係る特許についての特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロドシンを含有するマスキング粒子と、D-マンニトール、結晶セルロース、クロスポビドン及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種以上を含有する造粒物と、後末成分のみに光安定化剤を、それぞれ別個に含有する口腔内崩壊錠であって、
光安定化剤が黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択される1種以上であり、光安定化剤の含有量が錠剤全重量に対して、0.1?0.2重量%である、口腔内崩壊錠。
【請求項2】
シロドシンを含有するマスキング粒子が、オーバーコートされているマスキング粒子であり、光安定化剤が黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄である、請求項1記載の口腔内崩壊錠。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
光安定化剤の含有量が錠剤全重量に対して、0.15?0.2重量%である、請求項1又は2記載の口腔内崩壊錠。
【請求項6】
シロドシンを含有するマスキング粒子と、D-マンニトール、結晶セルロース、クロスポビドン及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種以上を含有する造粒物と、後末成分のみに光安定化剤と、滑沢剤を含有する打錠用混合物を打錠する工程を含む、請求項1、2及び5のいずれかに記載の口腔内崩壊錠を製造する方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-09-30 
出願番号 特願2017-129468(P2017-129468)
審決分類 P 1 651・ 161- YAA (A61K)
P 1 651・ 537- YAA (A61K)
P 1 651・ 121- YAA (A61K)
P 1 651・ 113- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 伊藤 清子  
特許庁審判長 藤原 浩子
特許庁審判官 穴吹 智子
渡邊 吉喜
登録日 2018-11-02 
登録番号 特許第6427634号(P6427634)
権利者 キッセイ薬品工業株式会社
発明の名称 光安定性に優れたシロドシン含有経口固形製剤  
代理人 柳 伸子  
代理人 柳 伸子  
代理人 飯塚 雅人  
代理人 飯塚 雅人  

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