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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23F
審判 全部申し立て 発明同一  A23F
管理番号 1369017
異議申立番号 異議2020-700718  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-01-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-09-18 
確定日 2020-12-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第6672509号発明「乳成分とゲラニオールを含有する茶飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6672509号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6672509号の請求項1?4に係る特許(以下、「本件特許」という)についての出願は、令和元年6月10日に出願され、令和2年3月6日にその特許権の設定登録がされ、同年3月25日にその特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許に対して、当該発行日から6月以内にあたる、令和2年9月18日に斉藤 出(以下、「異議申立人1」という)により、及び令和2年9月23日に松永 健太郎(以下、「異議申立人2」という)により、それぞれ特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件特許発明
特許第6672509号の請求項1?4に係る発明(以下、「本件特許発明1」などともいい、まとめて、「本件特許発明」ともいう)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
乳成分を含む加熱殺菌処理済みの茶飲料であって、
(a)飲料の甘味度が1?6であり、
(b)ゲラニオールを350?10000ppb含有する、
上記茶飲料。
【請求項2】
紅茶抽出物を含む、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
ゲラニオールを500?10000ppb含有する、請求項1又は2記載の飲料。
【請求項4】
乳タンパク質含有量に対するゲラニオール含有量の比率(ゲラニオール含有量/乳タンパク質含有量)が0.03×10^(-3)以上である、請求項1?3のいずれか1項に記載の飲料。」

第3 異議申立理由の概要
1 異議申立人1の異議申立理由の概要
異議申立人1は、令和2年9月18日付け異議申立書において、全請求項に係る特許を取り消すべきものである旨主張し、その理由として、以下の理由を主張し、証拠方法として甲第1?11号証を提出している。

(1)進歩性について
本件特許の特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明は、甲第1?9号証(主たる証拠は、甲第1号証)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2)実施可能要件について
本件特許の発明の詳細な説明は、以下の点で、当業者が本件特許の請求項1?4に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合していないため、当該発明に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

ア 茶飲料の種類、茶抽出物濃度の範囲、ゲラニオール濃度の範囲について
本件明細書には「【0012】・・・ここで、本明細書において乳のフレッシュ感とは、乳由来の青っぽいフレッシュな香りを意味する。特定の理論に拘束されるわけではないが、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減は、加熱により生じた乳由来の甘い香りと茶の香ばしさが合わさることによって、米を炊いた時に生じるような匂いが発生し、これが青っぽいフレッシュな香りをマスキングするものと考えられる。」と記載されているから、乳のフレッシュ感の低減には茶の香ばしさも関与していると解される。
しかしながら、茶の香ばしさは、甲第10号証に示されるように、茶の種類、焙煎や乾燥の程度によって異なるものである。
本件特許明細書の実施例には特定のパウダー状の紅茶抽出物か紅茶抽出液を特定の含有量で用いた極めて限定的な場合しか開示されておらず、紅茶以外の茶飲料、茶抽出物濃度の範囲、ゲラニオール濃度の範囲について、当業者に過度の試行錯誤を強いるものである。

イ 茶成分の含有量について
本件特許明細書の実施例ではタンニン量0.07重量%と0.08重量%の紅茶抽出物を用いた場合しか開示されておらず、それ以外のタンニン量でも同様の効果が得られるかは不明である。
また、そもそも茶成分の含有量がいかなる範囲においても「乳のフレッシュ感の低減」という課題が存在するかも不明であって、「乳のフレッシュ感の低減」の原因に「茶の香ばしさ」の関与が推定されていることから、実施例のみでは、本件特許発明の全ての範囲までその効果が合理的に推測できるとはいえず、本件特許発明を実施するために、当業者に過度の試行錯誤を強いるものである。

ウ 甘味度について
本件特許明細書の表2?4に記載された甘味度は、添加した砂糖の量から計算される甘味度と一致しておらず、砂糖以外の成分に含まれる甘味成分も合算されていると推測されるが、本件特許明細書にはそのことについての記載も、計算方法等についても説明がなく、当業者に過度の試行錯誤を強いるものである。

エ 乳タンパク質含量について
飲料中には甲第11号証に記載されているように茶葉等由来のタンパク質も含まれているところ、どのように「乳」由来のタンパク質の含有量を特定するのかが開示されておらず、タンパク質の種類についても当業者に試行錯誤を強いるものである。

オ ゲラニオール添加効果について
ゲラニオール添加効果について確認できるのは紅茶抽出液を用いた表4の結果だけであり、それ以外は紅茶抽出物という異なる材料を恣意的に用いて、あえて本件特許発明が優れた効果があるように見せているものであるから、本件特許発明の茶飲料までゲラニオールの添加効果があるかどうか試行錯誤が必要であって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。

(3)サポート要件について
本件特許の特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明は、以下の点で、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合していないため、当該発明に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

ア 茶飲料の種類、茶抽出物濃度の範囲について
上記(2)アと同様に、本件特許明細書の実施例では紅茶抽出物、極めて狭い濃度のみの開示であるから、特許請求の範囲に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えている。

イ 甘味料の種類について
甲第7号証にはスクロースが増えると乳加熱臭で生じるジメチルスルフィドやジメチルジスルフィド等の異臭成分が増加するが、他の糖質の場合、添加量が増えても異臭成分が減少傾向であることがわかるので、糖の種類によっては甘味度を高めても異臭成分を放出しない場合があり、甘味度1?6でも乳のフレッシュ感が低減するとは限らないから、ショ糖以外の糖の量に依存する「甘味度」のみを特定する本件特許発明は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。

(4)証拠方法
甲第1号証 :特開2009-045021号公報
甲第2号証 :Scientific Study & Research, 2007, Vol.VIII(3), 281-
288
甲第3号証 :香料、平成22年3月、No.245、第21?32頁
甲第4号証 :国際公開第2019/050041号
甲第5号証 :日本食品標準成分表2015年版(七訂)、文部科学省科
学技術・学術審議会資源調査分科会、平成27年12月2
5日、第2章 13 乳類
甲第6号証 :日本食品標準成分表2015年版(七訂)炭水化物成分表
編、文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会、平
成27年12月25日、第2章 13 乳類
甲第7号証 :特開2006-094856号公報
甲第8号証 :Food Research International, 2013, 53, 864-874
甲第9号証 :特開2015-122969号公報
甲第10号証:Journal of Japan Association on Odor Environment, 20
07, Vol.38, No.3, 179-186
甲第11号証:日本食品標準成分表2015年版(七訂)、文部科学省科
学技術・学術審議会資源調査分科会、平成27年12月2
5日、第2章 16 し好飲料類

2 異議申立人2の異議申立理由の概要
異議申立人2は、令和2年9月23日付け異議申立書において、全請求項に係る特許を取り消すべきものである旨主張し、その理由として、以下の理由を主張し、証拠方法として甲第1?5号証を提出している。

(1)拡大先願について
本件特許の特許請求の範囲の請求項1、3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2)甲第2号証に基づく進歩性について
本件特許の特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明は、甲第1,2,5号証(主たる証拠は、甲第2号証)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(3)甲第3号証に基づく進歩性について
本件特許の特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(4)サポート要件について
本件特許の特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明は、以下の点で、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合していないため、当該発明に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

ア 茶濃度について
茶濃度が高くなると乳成分の存在感が薄くなるので、乳のフレッシュ感が感じられるとはいえず、実施例の紅茶抽出物の濃度が0.4%のもの又は紅茶抽出液の濃度が16%のもの以外について課題を解決できるとはいえない。

イ 甘味料の種類について
ショ糖と高甘味度甘味料では甘味の強度も質も異なっており、高甘味度甘味料のみで甘味度を調整した飲料においても乳のフレッシュ感の低減を抑制できるかどうかは予測不能であるから、ショ糖以外の甘味料を含む場合にまで課題が解決できるとはいえない。

ウ 加熱殺菌処理のF値について
F値が高い加熱殺菌処理条件を採用すると、高温により乳のフレッシュ感がなくなる可能性が高く、乳のフレッシュ感の低減を抑制できるかどうかは予測不能であるから、F値4又は60以外の条件での加熱殺菌処理条件について、課題を解決できるとはいえない。

(5)証拠方法
甲第1号証:特開2019-140950号公報
甲第2号証:特許第5916156号公報
甲第3号証:特開2015-144600号公報
甲第4号証:日本調理科学会誌、2013年、Vol.46、No. 4、308-311
甲第5号証:日本食品工学会誌、2014年、Vol.15、No.4、267-269

なお、以下、異議申立人1が提出した甲第1?11号証を、その番号に対応してそれぞれ、「甲1-1」?「甲1-11」、異議申立人2が提出した甲第1?5号証を、その番号に対応してそれぞれ、「甲2-1」?「甲2-5」ともいう。

第4 当審の判断
1 異議申立人1の異議申立理由について
(1)証拠の記載事項
ア 甲1-1に記載された事項
甲1-1には以下の記載がある。

(甲1-1a)「【請求項1】
シソ科メンタ属植物(Mentha)の葉又は茎の乾燥物の溶媒抽出物からなることを特徴とする香味又は香気改善剤。
・・・
【請求項4】
シソ科メンタ属植物が、ミズハッカ(Mentha aquatica L.)、ペパーミント(Mentha piperita L.)、ペニロイアルハッカ(Mentha pulegium L.)、マルバハッカ(Mentha rotundifolia (L.) Huds.)、オランダハッカ(Mentha spicata L.)もしくはベルガモットハッカ(Mentha citrata(Ehrh.)Briq.)またはこれらの変種である請求項1乃至3のいずれかに記載の香味又は香気改善剤。
・・・
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の香味又は香気改善剤を含有することを特徴とする経口組成物。
【請求項9】
経口組成物が牛乳類含有飲食品である請求項8記載の経口組成物。
【請求項10】
牛乳類含有飲食品が牛乳入り紅茶飲料である請求項9記載の経口組成物。
・・・
【請求項12】
請求項1乃至6のいずれかに記載の香味又は香気改善剤を経口組成物又は香粧品に0.01?500ppm添加することを特徴とする、経口組成物又は香粧品の香味又は香気改善方法。」

(甲1-1b)「【0001】
本発明は熱により生成する飲食品等の経口組成物、香粧品の劣化臭の抑制に対し、広く適用できる香味又は香気改善剤に関する。
・・・
【0003】
特に牛乳類は、蛋白、脂肪、糖質、ビタミン、ミネラル等の多種多様の乳成分から構成され、熱や光による影響を受けやすい。このため、自動販売機や店頭で加温販売される缶コーヒーや缶紅茶等の牛乳(ミルク)入り缶飲料のように、高温で長期間保存される商品では、乳成分に起因する劣化臭をいかに抑制するかが問題となる。
【0005】
長期間にわたる加熱による飲食品の香味の劣化、特に牛乳類入り飲料の加熱による劣化を防止するために、これまでに幾つかの方法・・・等が提案されている。
・・・
しかしながら、これら従来技術は必ずしも熱による乳成分の分解等に起因する劣化臭を抑制するのに適した方法とはいえず、牛乳類入り飲食品の熱による劣化臭を抑制する技術は未だ確立されていないのが現状である。
・・・
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、飲食品等の熱による劣化、特に牛乳類入り飲食品の加熱による劣化臭を効果的に抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは牛乳類入り飲食品の加熱による劣化を詳細に検討した結果、シソ科メンタ属植物(Mentha)の葉又は茎の乾燥物の溶媒抽出物に、牛乳類入り飲食品の加熱による劣化臭を抑える効果があることを見出した。さらに、この溶媒抽出物は牛乳類入り飲食品のみならず、他の飲食品、香粧品等の熱による劣化臭を抑制する効果があることを見出し、本発明を完成した。」

(甲1-1c)「【0018】
添加量は一般に、香料に添加する場合は0.1?50質量%が適当であり、好ましくは0.5?20質量%、さらに好ましくは1?10質量%である。
飲食品のような経口組成物及び香粧品では、一般に0.01?500ppmが適当であるが、飲食品等の香味、香気に影響を及ぼさない閾値の範囲内で添加する観点から、好ましくは0.5?50ppm、さらに好ましくは1?10ppmである。」

(甲1-1d)「【0028】
上記の香料、経口組成物、香粧品の中でも、熱による劣化臭が問題となることが多い茶飲料、果汁飲料等の飲料類への使用が好ましく、特に自動販売機や店頭で加温販売される缶コーヒーや缶紅茶等のミルク入り缶飲料に使用することが特に好ましい。」

(甲1-1e)「【0030】
〔香味又は香気改善剤の製造例〕
ペパーミントの乾燥葉300gを2250gの50%エタノール水溶液で、60℃で60分間抽出した。抽出後、遠心分離により抽出液を分離し、抽出液の固形分質量に対して30%の活性炭を加え、30分撹拌した後、セライト濾過により、活性炭を除去した。
得られた抽出液は減圧濃縮によりエタノールを除去し、水で固形分濃度が5質量%となるよう調製した。これに固形分質量の25%のヘスペリジナーゼ(田辺製薬(株)製「可溶性ヘスペリジナーゼタナベ2号」)を添加して、60℃で12時間撹拌した。その後、セライト濾過により酵素を除去し、固形分濃度が31%となるまで濃縮した。
【0031】
この濃縮液を予め0℃に冷却した95%エタノール中に撹拌しながら徐々に加え、液温を0?5℃に保ちながら30分間撹拌した(この工程で酵素は失活する)。析出した不溶物をセライト濾過により除去し、減圧濃縮した後、水で濃度調整し、固形分濃度10%、エタノール濃度50%のエキス650gを得た。
このエキスの50%エタノール溶液中における紫外線吸収スペクトル(濃度:100ppm)を図1に示した。
【0032】
〔試験例1〕<牛乳入り紅茶飲料に対する香味又は香気改善効果>
250gの湯(80℃)にL-アスコルビン酸ナトリウム0.3gを溶かし、紅茶葉8gを5分間抽出し、メッシュで濾過した。濾液を20℃以下に冷却した後、これに、牛乳200g、砂糖57g、予め溶かしておいた乳化剤0.3g及び水にて全量1000gとし、重曹でpH6.8に調整して牛乳入り紅茶飲料を製造した。
この紅茶飲料をベースに何も添加しない紅茶飲料と、上記製造例で得られた香味又は香気改善剤を1ppm添加した紅茶飲料とをそれぞれ缶に充填し殺菌して、缶入りの2種類の牛乳入り紅茶飲料を製造した。
【0033】
それらを、60℃で4週間保管した後、習熟した14名のパネルを選んで官能評価を行った。そして、この場合、香味変化のない対照としては何も添加しない冷蔵保管品を使用し、香味の変化(劣化)の度合いを評価した。その結果は表1及び表2の通りである。
なお、表1中の評価の点数は、「異味・異臭が非常に強い」を4点、「異味・異臭がない」を0点とし、絶対評価を行った各パネルの平均点である。また、表2は、紅茶感(紅茶が本来有している香味)、牛乳感(牛乳が本来有している香味)、後キレ(後キレの良さ=飲んだ後に後味が長く残らないこと)について、無添加60℃、4週間保管品の場合を4点、無添加冷蔵保管品を8点とした場合の各パネルの評価の平均点である。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】



イ 甲1-2に記載された事項
甲1-2には以下の記載がある(訳文にて示す)。

(甲1-2a)「精油の抽出
集めた植物は、根を除いて、室温で三週間乾燥させた。精油は、乾燥させた植物原料から水蒸気蒸留によって抽出した。」(第283頁表下第1?3行)

(甲1-2b)「表4:Mentha piperita L.の精油の化学組成
化合物 割合(%) Rt(分)
・・・
ゲラニオール 3.26 11.19
・・・」(第286頁上)

ウ 甲1-3に記載された事項
甲1-3には以下の記載がある。

(甲1-3a)「次に20名の香りの専門家が,悪臭(イソ吉草酸)に対する電気生理学測定で用いた16種類の香りのマスキング効果を,心理テストによって5段階に評価した。・・・
なお,マスキング効果の強い化合物は,トリブラル,ゲラニオール,リナロール,ベンジルアセテイト,ジヒドロミルセノール,ベンズアルデヒドなどで,構造とマスキング効果との間には,はっきりした関係は見つからなかった。これらの実験結果は,優れたマスキング剤の開発に役立つ。」(第26頁右欄第1?16行)

エ 甲1-4に記載された事項
甲1-4には以下の記載がある。

(甲1-4a)「[請求項1] 50?14000ppbのリナロールと、
ゲラニオール、サリチル酸メチル、β-ダマセノン、ベンズアルデヒド、デカン酸、ラウリン酸、ブチル酸、オクタン酸、およびパルミチン酸からなる群より選択される少なくとも一種とを含有する飲料であって、以下の条件(i)?(v)を満たす前記飲料:
(i)波長660nmにおける吸光度が0.06以下であり、
(ii)純水を基準とした場合のΔE値(色差)が3.5以下であり、
(iii)甘味度が3?10であり、
(iv)pHが4.0?7.0であり、そして
(v)以下の条件(ア)?(ケ)のうちいずれか一以上を満たす:
(ア)ゲラニオールの含有量が5?2000ppbである;
(イ)サリチル酸メチルの含有量が1?200ppbである;
(ウ)β-ダマセノンの含有量が1?100ppbである;
(エ)ベンズアルデヒドの含有量が5?300ppbである;
(オ)デカン酸の含有量が5?5000ppbである;
(カ)ラウリン酸の含有量が5?5000ppbである;
(キ)ブチル酸の含有量が5?5000ppbである;
(ク)オクタン酸の含有量が5?5000ppbである;
(ケ)パルミチン酸の含有量が5?5000ppbである。」

(甲1-4b)「発明が解決しようとする課題
[0005] フレーバードウォーターのような無色透明飲料は、その性質上、配合成分や配合量に様々な制限がある。特に、無色透明であるという性質を保つために、エキスや果汁の添加量が著しく制限される。そのため、フレーバードウォーターのような無色透明飲料は、味の厚みや広がりを高めるために、またトップの香り立ちを強めるために、少量のリナロールを添加することがある。
[0006] しかしながら、pHが4.0以上の無色透明飲料にリナロールを添加すると、飲用時に舌にざらつきを感じるという問題が生じることが新たに見出された。その原因は、pHが中性に近づくほど酸味が弱くなるため、リナロール特有の舌に残る味わいが際立ち、さらにそこに甘味成分の甘さが相まって、舌にまとわりつくざらつきとなって感じるものと考えられる。
[0007] そこで本発明は、リナロールを含有するpHが4.0?7.0の無色透明飲料において、飲用時に感じられる舌のざらつきを軽減することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0008] 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、リナロールを含有するpHが4.0?7.0の無色透明飲料に、ゲラニオール、サリチル酸メチル、β-ダマセノン、ベンズアルデヒド、デカン酸、ラウリン酸、ブチル酸、オクタン酸、およびパルミチン酸からなる群より選択される少なくとも一種の香気成分を添加することが有用であることを見出し、本発明を完成させた。」

(甲1-4c)「[0048] (飲料)
本発明の飲料の種類は、本発明が対象とする無色透明飲料である限り特に限定されず、清涼飲料であればよい。栄養飲料、機能性飲料、フレーバードウォーター(ニアウォーター)系飲料、茶系飲料(紅茶、ウーロン茶、緑茶、ブレンド茶等)、炭酸飲料などいずれであってもよいが、フレーバードウォーターが好ましい。当該飲料は、茶風味を有する飲料であることが好ましく、紅茶風味飲料であることがより好ましく、ミルク紅茶風味飲料であることが特に好ましい。一方、アルコール分を1%以上含有するアルコール飲料は、含有されるアルコール分が本発明の効果を阻害するおそれがあるため、好ましくない。また、ビール風味のアルコールテイスト飲料は、アルコール分の有無に関わらず、ビール特有の香気成分が本発明の効果を阻害するおそれがあるため、好ましくない。」

(甲1-4d)「[0061][表3A]
(決定注:表3Aは省略)」

オ 甲1-5に記載された事項
甲1-5には以下の記載がある。

(甲1-5a)「・・・・可食部100g当たり
・・・食品名 ・・・タンパク質・・・
・・・
・・・普通牛乳 ・・・3.3」

カ 甲1-6に記載された事項
甲1-6には以下の記載がある。

(甲1-6a)「 可食部100g当たり
・・・食品名 ・・・乳糖・・・
・・・・・・・・・・・g・・・・
・・・
・・・普通牛乳 ・・・4.4」

キ 甲1-7に記載された事項
甲1-7には以下の記載がある。

(甲1-7a)「【請求項1】
乳又は乳製品にα-グリコシルトレハロースを含有せしめることを特徴とする乳加熱臭の生成抑制方法。」

(甲1-7b)「【0002】
牛乳、練乳、粉末乳、乳菓、アイスクリーム、発酵乳、乳飲料などの乳又はこれを利用した乳製品の製造工程において、加熱は最も重要な工程であり、加熱によって微生物を殺菌すること及び酵素を不活性化することによって、消費者に安全で良質の乳又は乳製品を提供することができる。例えば、牛乳の場合の加熱殺菌法は、通常、72乃至85℃で15秒間以上または120乃至130℃で1乃至4秒間行なわれ、さらに、常温保存可能品の場合、140℃で4秒間の滅菌が行なわれる。しかしながら、一般に、乳清タンパク質は加熱によって熱変性し、タンパク質に含まれるSH基が活性化し、揮発性の硫化物であるジメチルスルフィドやジメチルジスルフィドが生成し、これらに起因する乳特有の加熱臭(以下、本明細書では乳加熱臭と呼称する)が発生する。乳加熱臭は、酸化臭とともに不快なものであり、乳又は乳製品にとって品質上好ましくない。」

(甲1-7c)「【0021】
【表1】



ク 甲1-8に記載された事項
甲1-8には以下の記載がある(訳文にて示す)。

(甲1-8a)「

」(第869頁上)

ケ 甲1-9に記載された事項
甲1-9には以下の記載がある。

(甲1-9a)「【請求項1】
乳入り紅茶飲料において、飲料全量に対して0.6重量%以上の難消化性デキストリンを添加し、長期保存により発生する異臭味の発生を防止したことを特徴とする長期保存に対して香味の保持された容器詰乳入り紅茶飲料。」

(甲1-9b)「【0001】
本発明は、容器詰乳入り紅茶飲料の長期保存により発生する異臭味の発生を防止し、長期保存に対して香味の保持された容器詰乳入り紅茶飲料及び、その製造方法に関する。より詳しくは、容器詰乳入り紅茶飲料の長期保存により発生する乳酸敗臭、酸味及びオフフレーバーのような異臭味の発生を、特定量の難消化性デキストリンを添加することによって防止し、長期保存に対して香味の保持された容器詰乳入り紅茶飲料、及び、その製造方法を提供することに関する。」

(甲1-9c)「【0033】
(2.難消化性デキストリン入り紅茶飲料の調製)
下記表1及び表2に示す配合で、定法に従って、原料を混合し、得られた混合液をUHTにて殺菌、PETに充填を行い、容器詰乳入り紅茶飲料を得た(試験例1?7)。具体的には、上記の(1.紅茶抽出物の調製)の方法で紅茶葉から抽出した紅茶抽出物に、乳(脱脂粉乳)、香料、乳化剤、ビタミンC、高甘味度甘味料(アセスルファムカリウム、スクラロース)、及び水を添加してpHが6.9となるように調整し、混合液を調製した。難消化性デキストリンの添加量は、表2となるように、それぞれ配合した。
【0034】
【表1】



コ 甲1-10に記載された事項
甲1-10には以下の記載がある。

(甲1-10a)「茶の香気は主に3つの要素から成り立っている.(Z)-3-ヘキセノール,(E)-2-ヘキセノール,ノナナール,(Z)-3-ヘキセニルヘキサノエートなどは若葉の青臭の原因成分であり,2,5-ジメチルピラジン(ピラジン類)などは香ばしい焙煎香の原因成分である.紅茶やウーロン茶に多く含まれるリナロール,ゲラニオール(テルペンアルコール)は花や果実の香りの成分である.」(第179頁要約第1?4行)

(甲1-10b)「また,主に仕上げ工程の火入れの際には,ピラジン類などの加熱香気が生じる.茶のピラジン類も,パンやポップコーンなど他の焙焼食品と同じく,加熱中に茶葉に含まれるアミノ酸と糖のアミノ-カルボニル反応(メイラード反応)の一種ストレッカー分解が起こることによって生成する(図-6).」(第181頁右欄下から第10?5行)

(甲1-10c)「火入れの温度と時間を調節することにより,消費者の好みにあわせて青臭とのバランスを考えて香ばしさを引き立たせた茶に仕上げることになる.」(第182頁左欄第1?3行)

サ 甲1-11に記載された事項
甲1-11には以下の記載がある。

(甲1-11a)「・・・・可食部100g当たり
・・・食品名 ・・・タンパク質・・・
・・・
・・・(緑茶類)
・・・玉露
・・・茶 ・・・
・・・浸出液 ・・・1.3
・・・
・・・せん茶
・・・茶 ・・・
・・・浸出液 ・・・0.2」

(2)進歩性について
ア 甲1-1に記載された発明
摘示(甲1-1a)から、甲1-1には請求項1,4,8,9を引用する請求項10に係る発明として「ペパーミントの葉の乾燥物の溶媒抽出物からなる香味又は香気改善剤を含む牛乳入り紅茶飲料」が記載されており、摘示(甲1-1e)の試験例1にはその具体例として「全量1000g中に、250gの湯(80℃)にL-アスコルビン酸ナトリウム0.3gを溶かし、紅茶葉8gを5分間抽出し、メッシュで濾過した濾液、牛乳200g、砂糖57g、ペパーミントの葉の乾燥物の溶媒抽出物からなる香味又は香気改善剤を1ppm含む、缶に充填し殺菌された牛乳入り紅茶飲料」の発明(以下、「引用発明1-1」という。)が記載されているといえる。

イ 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と引用発明1-1を対比する。
引用発明1-1の牛乳200gには、摘示(甲1-6a)の記載から、炭水化物として乳糖が4.4重量%含まれており、本件特許明細書【0017】【0018】の記載から、ショ糖の甘味1に対する乳糖の甘味度は0.15であること、また、引用発明1-1には砂糖が57g含まれていることから、引用発明1-1の甘味度を計算すると(57×1+200×0.044×0.15)×100/1000=5.832となり、これは本件特許発明1の「(a)飲料の甘味度が1?6であり」に相当する。
そして、引用発明1-1の「缶に充填し殺菌された牛乳入り紅茶飲料」は、本件特許発明1の「乳成分を含む殺菌処理済みの茶飲料であって、・・・上記茶飲料。」に相当する。

そうすると、引用発明1-1と本件特許発明1とは
「乳成分を含む殺菌処理済みの茶飲料であって、
(a)飲料の甘味度が1?6である、
上記茶飲料。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1-1:本件特許発明1は「(b)ゲラニオールを350?10000ppb含有」することが特定されているのに対し、引用発明1-1にはそのような特定がない点
相違点1-2:本件特許発明1は殺菌が「加熱」によるものであると特定されているのに対し、引用発明1-1はそのような特定がない点

(イ)判断
相違点1-1について、甲1-1にはゲラニオールの含有量に関する記載は一切なく、他の甲号証に記載された技術的事項を踏まえても、ゲラニオールを350?10000ppbとなるように含有させることは動機付けられない。
そして、本件特許発明は、飲料の甘味度が1?6である乳成分含有茶飲料に、ゲラニオールを350?10000ppbという範囲で含有させることによって、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減を抑制するという効果を奏するものである。

相違点1-1については上記のとおりであるから、相違点1-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は引用発明1-1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(ウ)異議申立人1の主張について
異議申立人1は、異議申立書において、甲1-2にはペパーミントの精油を特徴付ける主要な化合物としてゲラニオールが記載されている旨、甲1-3には、ゲラニオールがマスキング効果の強い化合物として知られていることが記載されているから、ゲラニオールが「加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減を抑制することが可能」であることは甲1-1?甲1-3に示唆されている旨、また、甲1-4の摘示(甲1-4d)には甘味度が5であり、ゲラニオール含有量が500から2500ppbである飲料の試験例が記載され、摘示(甲1-4c)にはミルク紅茶風味飲料が記載されているから、「(b)ゲラニオールを350?10000ppb含有する」は、ゲラニオールを通常含有させる濃度範囲である旨、さらに、甲1-8は茶飲料にゲラニオールを多く含むと香味を向上できることを示唆しているから、ゲラニオールを多く含ませる動機付けは存在する旨主張している。

引用発明1-1の「ペパーミントの葉の乾燥物の溶媒抽出物からなる香味又は香気改善剤」は、ペパーミントの葉の乾燥物をエタノール水溶液で抽出等したものであるのに対し、摘示(甲1-2b)に記載されたペパーミント精油は、摘示(甲1-2a)によれば、ペパーミントの乾燥物を水蒸気蒸留して抽出したものであるから、その組成が同一であるとはいえず、引用発明1-1の「ペパーミントの葉の乾燥物の溶媒抽出物からなる香味又は香気改善剤」がゲラニオールを含むものであることが明らかであるとはいえない。
また、異議申立人の主張するように引用発明1-1の「ペパーミントの葉の乾燥物の溶媒抽出物からなる香味又は香気改善剤」の中にゲラニオールが含まれている可能性があるとしても、引用発明1-1の「ペパーミントの葉の乾燥物の溶媒抽出物からなる香味又は香気改善剤」には、ゲラニオール以外にも種々の成分が含まれていると考えられ、ゲラニオールが引用発明1-1の乳成分の熱による劣化臭を抑制する成分として機能していることは明らかでない。
異議申立人は、甲1-1?甲1-3の記載からゲラニオール自体が「加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減を改善」できることが示唆されていると主張しているが、甲1-1にはゲラニオールについての記載はなく、甲1-2はペパーミント精油にゲラニオールが含まれていることが記載されているにとどまり、摘示(甲1-3a)をみても、ゲラニオールがマスキングするのは、イソ吉草酸の悪臭であることが記載されているにすぎず、ゲラニオールが「加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減を改善」できることが理解できるとはいえない。
さらに、甲1-4及び甲1-8にもゲラニオールが「加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減を改善」できることは記載されていない。
したがって、甲1-1及び甲1-2?甲1-4、甲1-8をみても、また、その他のいずれの証拠をみても、引用発明1-1の乳成分の熱による劣化臭を抑制する成分がゲラニオールであることが明らかでない以上、引用発明1-1においてゲラニオールに着目し、その含有量を350?10000ppbとすることは動機付けられないし、ゲラニオールを350?10000ppbという範囲で含有させることによって、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減を抑制するという本件発明の効果も予測の範囲内ということはできない。
よって、上記異議申立人の主張は採用できない。

(エ) 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1の上記相違点1-1に係る構成を容易想到の事項ということはできず、また、本件特許発明1は上記相違点1-1に係る構成に起因して格別顕著な効果を有するものであるから、本件特許発明1は、甲1-1?甲1-9に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

ウ 本件特許発明2?4について
本件特許発明2?4は、本件特許発明1を直接的又は間接的に引用し、さらに限定した「飲料」の発明である。
そして、上記イにおいて検討したとおり、本件特許発明1は、当業者が甲1-1?甲1-9に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
そうすると、本件特許発明2?4も、本件特許発明1と同様の理由により、当業者が甲1-1?甲1-9に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

エ まとめ
以上のとおり、本件特許発明1?4に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してなされたものではないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

(3)実施可能要件について
ア 本件特許の発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。

「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
加熱殺菌を行う乳成分含有茶飲料の開発過程において、本発明者らは、飲料の甘味度が1?6の場合に、乳成分含有茶飲料における乳のフレッシュ感が加熱殺菌処理によって著しく低減することを見出した。そこで、本発明は、甘味度が1?6の乳成分含有茶飲料において、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減が抑制された飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、加熱殺菌を行う乳成分含有茶飲料においてリナロールを添加することによって、当該茶飲料における加熱殺菌処理後の乳のフレッシュ感低減の改善に関して特に優れた効果が得られることを見出した。かかる知見に基づき、本発明者らは、本発明を完成するに至った。」

「【0012】・・・ここで、本明細書において乳のフレッシュ感とは、乳由来の青っぽいフレッシュな香りを意味する。特定の理論に拘束されるわけではないが、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減は、加熱により生じた乳由来の甘い香りと茶の香ばしさが合わさることによって、米を炊いた時に生じるような匂いが発生し、これが青っぽいフレッシュな香りをマスキングするものと考えられる。」

イ 茶飲料の種類、茶抽出物濃度の範囲、ゲラニオール濃度の範囲について
本件特許明細書【0012】に記載された「加熱により生じた乳由来の甘い香り」は、乳成分が加熱殺菌処理されることによって生じるものであって、茶飲料の種類や濃度とは無関係に生じるものである。
一方、茶の香ばしさは、摘示(甲1-10b)によれば、茶葉に含まれるアミノ酸と糖が、加熱中に反応することによって生成するピラジン類によるものであると理解できる。茶にはいろいろな種類が存在するが、いずれもアミノ酸と糖を含む茶葉から、加熱工程を経て製造されるものであるから、茶の香ばしさは、茶飲料であれば、種類や濃度が異なってもある程度生じるものであるといえる。
そうすると、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減は、加熱により生じた乳由来の甘い香りと茶の香ばしさが合わさった匂いによりマスキングされることで生じるものであるから、茶飲料の種類や濃度が異なっても生じるものであるといえる。
そして、本件特許明細書の実施例には、350?10000ppbでゲラニオールを含有し、乳成分と紅茶抽出物又は紅茶抽出液を含有する茶飲料について、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減が抑制できることが示されているから、350?10000ppbの範囲のゲラニオールを含有する場合に、茶飲料の種類や濃度が異なっても、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減ができないということはできない。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、上記の点で当業者が本件特許発明1?4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないということはできない。

ウ 茶成分の含有量について
上記アにおいて検討したとおり、「加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減」は、「加熱により生じた乳由来の甘い香り」と「茶の香ばしさ」が合わさることによって生じる匂いに起因するものであるが、「加熱により生じた乳由来の甘い香り」も「茶の香ばしさ」も、タンニンとは別の、乳成分や茶成分から生じるものであるから、本件特許明細書の実施例において特定のタンニン量の紅茶抽出物を用いた場合しか開示されていなくても、他のタンニン量や茶成分の含有量の場合に、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減ができないということはできない。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、上記の点で当業者が本件特許発明1?4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に
記載したものでないということはできない。

エ 甘味度について
本件特許の請求項1には「乳成分を含む加熱殺菌処理済みの茶飲料であって、(a)飲料の甘味度が1?6であり、」と記載されているから、本件特許発明の甘味度は、乳成分を含む加熱殺菌処理済みの茶飲料全体における甘味度のことを意味していることは明らかであって、本件特許明細書の表2?4に示された例において、砂糖以外の成分に含まれる甘味成分も合算されていることは、本件特許発明とは何ら矛盾するものでない。
そして、甘味度は、飲料全体に含まれる甘味成分の種類や濃度を分析して計算する等して算出することができるといえる。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、上記の点で当業者が本件特許発明1?4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないということはできない。

オ 乳タンパク質含量について
乳タンパク質は、カゼインやグロブリンやアルブミン、ラクトフェリン等のホエータンパク質からなることが知られているから、飲料を分析し、これらの含有量を特定することは可能であるといえる。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、上記の点で当業者が本件特許発明1?4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないということはできない。

カ ゲラニオール添加効果について
本件特許明細書の表2?表3-3に記載された試料1-2?1-4、2-1はゲラニオールの添加量が本件特許発明の範囲外であるから、試料2-2?2-17に対する比較例であると理解できる。
また、本件特許明細書の表4の試料3-1は試料3-2に対する比較例である。
そして、これらの例から、紅茶抽出物でも紅茶抽出液でもゲラニオールを添加することにより、加熱殺菌による乳のフレッシュ感の低減を抑制できるという効果は確認されているといえる。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、上記の点で当業者が本件特許発明1?4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないということはできない。

キ まとめ
よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものであるから、本件特許発明1?4に係る特許は同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。

(4)サポート要件について
ア 本件特許の発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細な説明の記載については、上記(3)に記載したとおりである。

イ 茶飲料の種類、茶抽出物濃度の範囲について
本件特許明細書【0007】【0008】の記載をみるに、本件特許発明は、甘味度が1?6の乳成分含有茶飲料において、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減が抑制された飲料を提供することを課題とし、その課題を解決するための手段としてゲラニオールを特定濃度含有させるものであると理解できる。
ここで、本件特許明細書【0012】に記載された「加熱により生じた乳由来の甘い香り」は、乳成分が加熱殺菌処理されることによって生じるものであって、茶飲料の種類や濃度とは無関係に生じるものである。
一方、茶の香ばしさは、摘示(甲1-10b)によれば、茶葉に含まれるアミノ酸と糖が、加熱中に反応することによって生成するピラジン類によるものであると理解できる。茶にはいろいろな種類が存在するが、いずれもアミノ酸と糖を含む茶葉から、加熱工程を経て製造されるものであるから、茶の香ばしさは、茶飲料であれば、種類や濃度が異なってもある程度生じるものであるといえる。
そうすると、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減は、加熱により生じた乳由来の甘い香りと茶の香ばしさが合わさった匂いによりマスキングされることで生じるものであるから、茶飲料の種類や濃度が異なっても生じるものであるといえる。
そして、本件特許明細書の実施例には、350?10000ppbでゲラニオールを含有し、乳成分と紅茶抽出物又は紅茶抽出液を含有する茶飲料について、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減が抑制できることが示されているから、350?10000ppbの範囲のゲラニオールを含有する場合に、茶飲料の種類や濃度が異なっても、本件特許発明が解決しようとする課題である加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減ができないということはできない。
したがって、本件特許発明1?4は、本件特許の発明の詳細な説明に記載したものでないということはできない。

ウ 甘味料の種類について
摘示(甲1-7c)の表1からはスクロース以外の糖質によって異臭成分であるジメチルスルフィドやジメチルジスルフィドが減少する場合でも、これらの成分が0になるわけではないことがわかるから、ショ糖以外の甘味料を用いた場合であっても乳のフレッシュ感はある程度低減するといえ、本件特許発明が解決しようとする課題である加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減ができないということはできない。
したがって、本件特許発明1?4は、本件特許の発明の詳細な説明に記載したものでないということはできない。

エ まとめ
よって、本件特許発明1?4は、特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、本件特許発明1?4に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。

2 異議申立人2の異議申立理由について
(1)証拠の記載事項
ア 甲2-1に記載された事項
甲2-1には以下の記載がある。

(甲2-1a)「【請求項1】
果糖、乳清ミネラル、食塩、および茶フレーバーを含み、以下の条件1,2を満たす、飲料。
条件1:前記飲料がショ糖(砂糖)を含まない場合、単糖および二糖の合計含有量(g)に対する前記果糖の含有量(g){果糖/(単糖+二糖)}が、0.8以上。
条件2:前記飲料がショ糖(砂糖)を含む場合、単糖および二糖の合計含有量(g)に対する前記果糖と前記ショ糖(砂糖)の合計含有量(g){(果糖+ショ糖(砂糖))/(単糖+二糖)}が、0.8以上であって、前記ショ糖(砂糖)の含有量(g)に対する前記果糖の含有量(g)(果糖/ショ糖(砂糖))が0.3以上。」

(甲2-1b)「【0005】
そこで、本発明者は、より嗜好性の高い飲料を開発すべく、茶風味と乳風味をともに増強させるという新たな課題を見出した。そして、かかる課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、糖類の種類の違いが重要な因子となることを知見した。さらに、糖類の中でもショ糖(砂糖)の有無に着目し、乳清ミネラルと茶フレーバーを含む飲料において、糖類の配合を適切に制御することによって、茶風味と乳風味をともに増強できることを初めて見出し、本発明を完成させた。」

(甲2-1c)「【0023】
[果糖] 果糖は、いわゆる甘味料の一成分であり、単糖である。果糖は、本発明の効果に影響を与えない限り、高果糖液糖や果糖ブドウ糖液糖等の異性化糖、果汁等の天然物に含まれるものであってもよい。
果糖の濃度は、飲料全体に対して、5g/L以上が好ましく、10g/L以上がより好ましく、一方、60g/L以下が好ましく、50g/L以下がより好ましい。果糖の濃度をかかる数値範囲とすることにより、良好な嗜好性を得つつ、茶風味および乳風味を増強できる。
【0024】
[ショ糖(砂糖))] ショ糖は、いわゆる甘味料の一成分であり、二糖である。ショ糖が含まれる形態は特に限定されず、果汁等の天然物に含まれるものであってもよい。
ショ糖の濃度は、飲料全体に対して、5g/L以上が好ましく、10g/L以上がより好ましく、一方、60g/L以下が好ましく、50g/L以下がより好ましい。ショ糖の濃度をかかる数値範囲とすることにより、良好な嗜好性を得つつ、茶風味および乳風味を増強できる。」

(甲2-1d)「【0030】
[茶フレーバー]
茶フレーバーとは、本実施形態の飲料に茶風味を付与するために用いられる。茶フレーバーは、飲料中に含有された際に茶類を想起させるフレーバーであればよく、特に限定されるものではない。
茶類としては、代表的には、ツバキ科カメリア属の植物を原材料として加工された茶製品があり、例えば、煎茶、深蒸し煎茶、玉露、かぶせ茶、番茶、玉緑茶、粉茶、芽茶、ほうじ茶、玄米茶、および抹茶などの不発酵茶、黄茶、白茶、ウーロン茶、紅茶、および黒茶(プーアール茶)などの発酵茶が挙げられる。さらに、これに限られず、麦茶、ドクダミ茶、まめ茶、甜茶、ゴボウ茶、そば茶、およびブレンド茶なども挙げることができる。
茶フレーバーとしては、1種または2種以上を用いてもよい。
また、茶フレーバーとしては、例えば、(Z)-3-ヘキセノール、ジメチルスルフィド、β-ヨノン、3-メチル-2,4-ナノンジオン、リナロール、フラネオール、メチオナール、インドール、ジャスモン酸メチル、リナロール、ゲラニオール、サリチル酸メチル、β-ダマセノン、フェネチルアルコール、ホトリエノール、2,4-ヘプタジエナール、および1-オクテン-3-オールなどの香気成分を少なくとも1種以上含むことが好ましい。
なかでも、本実施形態の飲料による効果をより一層高める観点から、煎茶に代表されるいわゆる緑茶を想起させるフレーバーであることが好ましい。緑茶風味を感じさせる観点から、茶フレーバーとしては、(Z)-3-ヘキセノール、ジメチルスルフィド、β-ヨノン、3-メチル-2,4-ナノンジオン、フラネオール、メチオナール、およびリナロールといった香気成分を少なくとも一種以上含むことが好ましい。」

(甲2-1d)「【0040】
本実施形態の飲料は、pHが4.6未満であることにより、加熱殺菌の条件を緩やかにすることができる。加熱殺菌の条件としては、例えば、90?135℃の瞬間殺菌又は30秒間殺菌とすることができる。」

(甲2-1e)「【0046】
[実験例1]糖原料の違いの検証
<実施例1?4、比較例1?4>
表1に示す配合比率となるように、各成分を水中で均一に混合して飲料を調合し、得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた。これにより容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について以下の測定、および評価を行い、結果を表1に示した。」
・・・
【0048】
<評価>
・官能評価:実施例および比較例の飲料(4℃)それぞれを、熟練した5名のパネラーが試飲し、以下の評価基準に従い、「お茶風味の強さ」、「ミルク風味の強さ」、「酸味の強さ」、「後味の強さ」、「飲みやすさ」それぞれについて、7段階(1?7点)評価を実施し、その平均点を求めた。また、評価する際は、比較例1の飲料を対照品(基準値4点)として評価を実施した。なお、評価は、数値が大きいほど良好な結果であることを表す。
【0049】
・評価基準
「お茶風味の強さ」、「ミルク風味の強さ」、「酸味の強さ」、「後味の強さ」
7点・・・対象品よりも非常に強い
6点・・・対象品よりも強い
5点・・・対象品よりもわずかに強い
4点・・・対象品と同等の強さ
3点・・・対象品よりもわずかに弱い
2点・・・対象品よりも弱い
1点・・・対象品よりも非常に弱いか全く感じない
「飲みやすさ」
7点・・・対象品よりも非常によい
6点・・・対象品よりもよい
5点・・・対象品よりもわずかによい
4点・・・対象品と同等程度
3点・・・対象品よりもわずかに悪い
2点・・・対象品よりも悪い
1点・・・対象品よりも非常に悪い
【0050】
【表1】

【0051】
[実験例2]食塩濃度の違いの検証
<実施例2,5?6、比較例5>
表2に示す配合比率となるように、各成分を水中で均一に混合して飲料を調合し、得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた。これにより容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について、上記実験例1と同様にして、測定および評価を行い、結果を表2に示した。
なお、表2中の「-」は、比較例5の飲料が食塩を含まないことを示す。
【0052】
【表2】

【0053】
[実験例3]乳清ミネラル濃度の違いの検証
<実施例2,7?8>
表3に示す配合比率となるように、各成分を水中で均一に混合して飲料を調合し、得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた。これにより容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について、上記実験例1と同様にして、測定および評価を行い、結果を表3に示した。
【0054】
【表3】



イ 甲2-2に記載された事項
甲2-2には以下の記載がある。

(甲2-2a)「【請求項5】
平均粒径1.0μm以上15.0μm以下の微粉砕紅茶葉を50ppm以上1500ppm以下、および乳固形分として0.5重量%以上5.0重量%以下を含有する、加熱殺菌による加熱劣化臭が抑制された微粉砕紅茶葉含有容器詰ミルク入り紅茶飲料。」

(甲2-2b)「【0001】
本発明は、微粉砕紅茶葉を含有し、乳由来の加熱劣化臭が抑制され、且つ紅茶のフレッシュな香味を保持したミルク入り紅茶飲料の製造方法及び該飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、茶飲料は、茶葉を熱水、温水、或いは常温水で抽出後、茶葉残渣を除去した抽出液を所望とする濃度に調整し製造されている。ペットボトル、缶、紙、瓶入りの容器詰茶飲料ではさらに保存性を高めるために加熱殺菌工程を経る製造方法が必要とされている。
【0003】
しかし、このようにして得られた茶飲料は、製造工程中で茶の本来持っている香気成分を失ってしまうことが多く、本来のフレッシュな香味を持つ茶飲料にはならないという問題点があった。さらに、容器詰茶飲料では加熱殺菌という工程を経るために、加熱劣化臭が多かれ少なかれ生成し、茶の持つ本来の香りを一層低下させてしまうという問題もあった。紅茶については、香りを楽しむことも嗜好性を大きく左右することから、紅茶本来のフレッシュな香味を保ち、加熱劣化臭を抑制することが望まれていた。特に、乳成分を添加した容器詰め紅茶飲料においては、加熱殺菌による乳成分の加熱劣化臭の生成も大きな問題点であり、その解決方法が望まれていた。また、紅茶の香味が弱く感じられやすく、加熱による紅茶本来の香味の損失も同様に問題視されていた。」

(甲2-2c)「【0008】
本発明の課題は、乳由来の加熱劣化臭を抑え、紅茶本来のフレッシュな香味を付与および保持したミルク入り紅茶飲料の製造方法及び該飲料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、微粉砕紅茶葉を添加することで、ミルク入り紅茶調合液を加熱殺菌した際に、乳成分由来の劣化臭が抑えられ、更には、紅茶本来のフレッシュな香味を付与および保持されることを見出し、本発明を完成した。」

(甲2-2d)「【0022】
〈試験製造1〉乳固形分と加熱劣化臭
紅茶飲料における、乳固形分の濃度と、乳成分の加熱劣化臭の関係を調べた。
〈紅茶抽出液〉
市販されている紅茶葉(インド・アッサム産、CTC製法)300gを90℃の超純水9.0kgに20分間撹拌しながら抽出した。この抽出液を100メッシュのステンレスフィルターで茶葉を分離した後、濾紙(No.27、アドバンテック(株)製)を用いて濾過を行って紅茶抽出液を得た。
〈紅茶飲料の調製〉
最終的な調合液量に対して茶葉使用率1.0%となる上記紅茶抽出液の相当量をステンレス容器に入れた。
別のステンレス容器に、グラニュー糖、全粉乳、牛乳、乳化剤(ホモゲン:三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)、加水全量に対し0.03重量%となるようL-アスコルビン酸ナトリウム、所定量のイオン交換水を加えた(表1参照)。乳固形分は最終濃度0.5?10.0重量%(原材料:牛乳、全粉乳又は脱脂粉乳)となるよう調製した。さらに均質化させるために、75℃、5分間攪拌し、冷却することで、乳成分配合液を得た。
次に上記紅茶抽出液および各濃度の乳成分配合液を混合させ紅茶調合液とした。
炭酸水素ナトリウムでpH6.7に調整し、更に紅茶調合液の液温を75℃に昇温し、高圧ホモジナーザー(株式会社イズミフードマシナリ)にて20MPaで均質化し、80℃まで昇温後、スチール缶(東洋製罐(株)製TULC)に分注した。次いでヘッドスペースを窒素ガスで満たし、缶シーマーにて密封後、レトルト殺菌処理(123℃、20分間)を行って容器詰ミルク入り紅茶飲料を得た(試験例2?7)。また、乳成分配合液を混合しない容器詰紅茶飲料を得た(試験例1)。最終的な飲料中のタンニン濃度は175.0mg%であった。
パネリスト5名による官能評価試験を行った。評価基準は、乳成分由来の加熱劣化臭、紅茶のフレッシュな香味、味(ミルク感)が良好であるかによって判断し、◎:非常に良い、○:良い、△:普通、×悪い、とした。また、各評価結果からパネリスト5名が協議により総合評価を求めた。結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

・・・
【0025】
〈試験製造2〉
試験製造1で製造した乳固形分の濃度の異なるミルク入り紅茶飲料に微粉砕紅茶葉を添加し、微粉砕紅茶葉を添加する以外は試験製造1と同様に調製した。
微粉砕紅茶葉は、紅茶葉(アッサム)をエアータグミル(ミクロパウテック(株)製)を用いて粉砕した平均粒径の11.8μmの微粉砕紅茶葉を調合液中の濃度として500ppmとなるよう添加した。
〈紅茶飲料の調製〉
紅茶調合液中の濃度として500ppmとなる微粉砕紅茶葉量を別のステンレス容器に水とともに入れ、ハンディーフードプロセッサーを用いて撹拌し分散させた。
試験製造1の各濃度の乳成分配合液と前記微粉砕紅茶葉の分散液を紅茶抽出液の入ったステンレス容器に入れ、炭酸水素ナトリウムでpH6.7に調整し、紅茶調合液を得た。得られた紅茶調合液は、試験製造例1と同様に均質化、密閉容器に封入後、加熱殺菌を行い、微粉砕紅茶葉含有容器詰ミルク入り紅茶飲料を製造した(試験例8?14)。最終的な飲料中のタンニン濃度は175.0mg%であった。
上記方法により得られた容器詰ミルク入り紅茶飲料について、飲料中の成分測定とパネリスト5名による官能評価を行った。
・・・結果を表2に示す。
・・・
【0026】
【表2】

【0027】
表2より微粉砕紅茶葉を含有することによって乳の加熱劣化臭が抑制されたミルク入り紅茶飲料が得られた。乳固形分が多く含む試験例11?13においても加熱劣化臭が抑制されることがわかった。また、微粉砕紅茶葉を添加することによって、紅茶のフレッシュな香味が感じられ、更に後切れのよいミルク入り紅茶飲料が得られた。・・・
【0028】
〈製造例1〉微粉砕紅茶葉添加量の検討
〈紅茶抽出液〉
市販されている紅茶葉(インド・アッサム産、CTC製法)300gを90℃の超純水9.0kgに20分間撹拌しながら抽出した。この抽出液を100メッシュのステンレスフィルターで茶葉を分離した後、濾紙(No.27、アドバンテック(株)製)を用いて濾過を行って紅茶抽出液を得た。
〈微粉砕紅茶葉〉
微粉砕紅茶葉は、紅茶葉(アッサム)を原料として使用し、エアータグミル(ミクロパウテック(株)製)を用いて粉砕し、各平均粒径の11.0μmの微粉砕紅茶葉を得た。
〈紅茶飲料の調製〉
最終的な調合液量に対して茶葉使用率1.0%となる上記紅茶抽出液の相当量をステンレス容器に入れた。
別のステンレス容器に、グラニュー糖、全粉乳、牛乳、乳化剤(ホモゲン:三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)、加水全量に対し0.03重量%となるようL-アスコルビン酸ナトリウム、所定量のイオン交換水を加え、さらに均質化させるために、液温を75℃に保ちながら5分間攪拌し、冷却することで乳成分配合液を得た(表3参照)。
微粉砕紅茶葉は所定の最終濃度(0?2500ppm)となるように予めイオン交換水に溶かし、それぞれ分散させた。上記紅茶抽出液、乳成分配合液及び分散させた微粉砕紅茶葉(最終濃度0?2500ppm)を混合し、所定量のイオン交換水を加え、炭酸水素ナトリウムでpH6.7に調整し、紅茶調合液を得た。
更に紅茶調合液の液温を75℃に昇温し、高圧ホモジナーザー(株式会社イズミフードマシナリ)にて20MPaで均質化し、80℃まで昇温後、スチール缶(東洋製罐(株)製TULC)に分注した。ヘッドスペースを窒素ガスで満たし、缶シーマーにて密封後、レトルト殺菌処理(123℃、20分間)を行って本発明の微粉砕紅茶葉含有容器詰ミルク入り紅茶飲料を得た(比較例1?4、実施例1?7)。タンニン濃度は175.0mg%である。
上記方法により得られた容器詰ミルク入り紅茶飲料を用いて、飲料中の成分測定とパネリスト5名による官能評価を行った。
・・・結果を表3に示す。
【0029】
【表3】

・・・
【0031】
〈製造例2〉微粉砕紅茶葉平均粒径の検討
紅茶抽出液は製造例1と同様に製造した。
〈微粉砕紅茶葉〉
微粉砕紅茶葉は、紅茶葉(アッサム)を表4記載の方法を用いて粉砕し、各平均粒径の微粉砕紅茶葉を得た。
〈紅茶飲料の調製〉
最終的な調合液量に対して茶葉使用率1.0%となる上記紅茶抽出液の相当量をステンレス容器に入れた。さらに別のステンレス容器に、グラニュー糖、全粉乳、牛乳、乳化剤(ホモゲン:三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)、加水全量に対し0.03重量%となるようL-アスコルビン酸ナトリウムを加え、さらに所定量の水を加えた(表4参照)。これを均質化させるために、調合液の液温を75℃で5分間攪拌し、冷却することで、乳成分配合液を得た。
さらに、粒径の異なる微粉砕紅茶葉(表4参照)を調合液中の濃度として500ppmとなるように計量し、別のステンレス容器に水とともに入れ、ハンディーフードプロセッサーを用いて撹拌し分散させた。
上記乳成分配合液と分散させた微粉砕紅茶葉を紅茶抽出液の入ったステンレス容器に入れ、炭酸水素ナトリウムでpH6.7に調整し、紅茶調合液を得た。得られた調合液は、製造例1と同様に、均質化、密閉容器に封入後、加熱殺菌を行い、本発明の微粉砕紅茶葉含有容器詰ミルク入り紅茶飲料を製造した(比較例6、7、実施例8?11)。また、微粉砕紅茶葉を含有しない容器詰紅茶飲料を得た(比較例5)。
上記方法により得られた容器詰ミルク入り紅茶飲料を用いて、飲料中の成分測定と製造例1と同様に官能評価を行った。結果を表4に示す。
【0032】
【表4】

・・・
【0034】
〈製造例3〉紅茶抽出物使用微粉砕紅茶葉含有ミルク入り紅茶飲料の製造
紅茶抽出液として、市販の紅茶エキス(粉末)を使用し容器詰ミルク入り紅茶飲料を製造した。
〈微粉砕紅茶葉〉
微粉砕紅茶葉は、紅茶葉(アッサム)をエアータグミル(ミクロパウテック(株)製)を用いて粉砕し、平均粒径の11.8μmの微粉砕紅茶葉を得た。
〈紅茶飲料の調製〉
ステンレス容器に、グラニュー糖、全粉乳、牛乳、乳化剤(ホモゲン:三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)、加水全量に対し0.03重量%となるようL-アスコルビン酸ナトリウムを加え、所定量の水を加え、均質化させるために、75℃で5分間攪拌後、冷却することで、乳成分配合液を得た(表5参照)。
さらに、微粉砕紅茶葉を加水全量に対し、500ppmとなるよう計量し、別のステンレス容器に水とともに入れ、ハンディーフードプロセッサーを用いて撹拌し分散させた。
別のステンレス容器に、市販されている紅茶エキス(粉末)(MN-10:三井農林(株)製)3.5gを超純水200gの温水に溶かし、乳化させた原料と分散させた微粉砕紅茶葉を紅茶抽出液の入ったステンレス容器に入れ、炭酸水素ナトリウムでpH6.7に調整し、所定のタンニン濃度(90.0mg%)となるようイオン交換水を加え、紅茶調合液を得た。得られた紅茶調合液は、製造例1と同様に、均質化、密閉容器に封入後、加熱殺菌(レトルト殺菌処理:124℃、20分間)を行い、本発明の微粉砕紅茶葉含有容器詰ミルク入り紅茶飲料を得た(実施例12)。また、微粉砕紅茶葉を含有しない容器詰紅茶飲料を得た(比較例8)。
上記方法により得られた容器詰ミルク入り紅茶飲料を用いて、飲料中の成分測定を行い、製造例1と同様に官能評価を行った。結果を表5に示す。
【0035】
【表5】



ウ 甲2-3に記載された事項
甲2-3には以下の事項が記載されている。

(甲2-3a)「【請求項10】
植物油脂と、テルペン類からなる香料と、乳原料とを含有することを特徴とする、嗜好性飲料。
・・・
【請求項12】
前記テルペン類がリモネン、β-ピネン、α-ピネン、テルピノレン、リナロール、ヌートカトン、及びバレンセンからなる群より選択される一種以上である、請求項10又は11に記載の嗜好性飲料。
【請求項13】
コーヒー飲料、紅茶飲料、ココア飲料、又は抹茶飲料である、請求項10?12のいずれか一項に記載の嗜好性飲料。」

(甲2-3b)「【0008】
特許文献3?6で開示されているように、マスキング効果を有する成分を飲食品に添加することにより、特有の臭みや苦み、渋みといった風味の改善に関する報告はあるが、植物油脂を乳脂肪の代替として使用した飲食品において、その使用量や使用比率を制限することなく、かつコーヒーや紅茶などの素材の風味を維持しつつ、植物油脂自体の風味(油っぽさ、クセ)を抑制する方法はこれまでに無い。
【0009】
本発明は、植物油脂を用いた時に生じる、植物油脂自体の風味(油っぽさやクセ)を低減し、それを含む飲食品における全体的な風味を改善する方法、当該方法により植物油脂含有飲食品を製造する方法、並びに当該方法を用いて得られた嗜好性飲料及びインスタント嗜好性飲料用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、植物油脂を含有する飲食品に対して、テルペン類を添加することにより、植物油脂の持つ油っぽさやクセを低減し得ることを見出し、本発明を完成させた。」

(甲2-3c)「【0021】
また、テルペン類の多くが特有の香味を有しているため、テルペン類の含有量が多くなりすぎると、テルペン類自体の香味が強くなり、異味に感じられるようになる。このため、植物油脂含有飲食品に含有させるテルペン類の質量濃度は、当該植物油脂含有飲食品中において当該テルペン類特有の香味がヒトの五感で検知可能な最小質量濃度(検知閾値濃度)以下であることが好ましく、検知閾値濃度の0.67倍濃度以下であることがより好ましい。例えば、テルペン類がリモネンの場合、植物油脂含有飲食品の種類によってやや変動するものの、検知閾値濃度はおよそ10?20ppm程度である。このため、本発明に係る風味改善方法において、テルペン類としてリモネンを用いる場合、植物油脂含有飲食品に含有させるリモネン量は、15ppm以下が好ましく、0.01?15ppmがより好ましく、0.1?10ppm以下がさらに好ましく、0.5?5ppmがよりさらに好ましい。なお、各植物油脂含有飲食品における各テルペン類の検知閾値濃度は、植物油脂含有飲食品に様々な濃度となるようにテルペン類を添加した場合に、当該テルペン類特有の香味がヒトの五感で検知できるかどうかを調べ、特有の香味が検知できた最小濃度値を決定することにより求められる。」

(甲2-3d)「【0033】
本発明に係る嗜好性飲料及び本発明に係る飲料用組成物の製造においては、望まれる品質特性によってその他の原料をさらに用いることができる。当該その他の原料としては、紅茶飲料やコーヒー飲料等に配合可能な成分が挙げられる。具体的には、甘味料、香料(但し、テルペン類は除く。)、澱粉分解物等が挙げられる。・・・
【0034】
甘味料としては、砂糖、ショ糖、オリゴ糖、ブドウ糖、果糖等の糖類、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール等の糖アルコール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース等の高甘味度甘味料、ステビア等が挙げられる。」

(甲2-3e)「【0051】
[実施例3]
植物油脂を含有するココア飲料、抹茶ミルク飲料、及びミルク紅茶飲料に対してリモネンを添加し、油感マスキング効果について調べた。
具体的には、表5に示す処方にて、リモネンを飲料中の濃度が1、5、又は10ppm(0.0001、0.0005、又は0.001%)となるように添加したココア飲料3a-1?3a-3、抹茶ミルク飲料3b-1?3b-3、ミルク紅茶飲料3c-1?3c-3を調製した。表中、ココアパウダーは市販品(森永製菓(株)製)、抹茶パウダーは市販品(共栄製茶(株)製)である。紅茶は、市販品(三井農林(株)製)の茶葉70gに95℃の湯を500mL注ぎ、5分間抽出し、Brix分を固形分として調整したものである。
【0052】
【表5】

【0053】
各飲料について、油っぽさと植物油脂特有のクセに対するリモネンの効果を、リモネン不含有の飲料を規準とし、実施例2と同様にして評価した。3名のパネルによる総評の結果を、各飲料中のリモネン濃度及びパネルのコメントと共に表6?8に示す。表中、「リモネン濃度(飲料中、ppm)」とは、各飲料中のリモネン濃度を示し、「リモネン濃度(対油脂、ppm)」とは、各飲料中の植物油脂に対するリモネン濃度を示す。この結果、リモネンを含有させた全ての飲料において、油っぽさと植物油脂特有のクセが低減しており、コーヒー以外の嗜好性飲料(抹茶、紅茶、ココア)でも同様の効果があることがわかった。
【0054】
【表6】

【0055】
【表7】

【0056】
【表8】



エ 甲2-4に記載された事項
甲2-4には以下の事項が記載されている。

(甲2-4a)「表2-4. その他のフレーバーの実践的処方例
(決定注:表2-4は省略)」(第311頁)

オ 甲2-5に記載された事項
甲2-5には以下の事項が記載されている。

(甲2-5a)「5.2 香気成分分析
ミルクティーをAP製法,従来の無菌充填製法,レトルト殺菌で作製し,ガスクロマトグラフィにより香気成分の残存量を分析した(Fig.5).
(決定注:Fig.5は省略)」(第269頁左欄)

(2)拡大先願について
ア 甲2-1に記載された発明
摘示(甲2-1e)の特に実施例2から「1L中に砂糖17.5g、果糖17.5g、乳清ミネラルを固形分として0.1g、緑茶フレーバーを1g含有し、95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた容器詰め飲料」の発明(以下、「引用発明2-1」という。)が記載されているといえる。
また、摘示(甲2-1e)の特に実施例1から「1L中に果糖35g、乳清ミネラルを固形分として0.1g、緑茶フレーバーを1g含有し、95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた容器詰め飲料」、特に実施例3から「1L中に砂糖23.3g、果糖11.7g、乳清ミネラルを固形分として0.1g、緑茶フレーバーを1g含有し、95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた容器詰め飲料」、特に実施例4から「1L中に砂糖11.7g、果糖23.3g、乳清ミネラルを固形分として0.1g、緑茶フレーバーを1g含有し、95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた容器詰め飲料」、特に実施例5,6から「1L中に砂糖17.5g、果糖17.5g、乳清ミネラルを固形分として0.1g、緑茶フレーバーを1g含有し、95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた容器詰め飲料」、特に実施例7から「1L中に砂糖17.5g、果糖17.5g、乳清ミネラルを固形分として0.2g、緑茶フレーバーを1g含有し、95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた容器詰め飲料」、特に実施例8から「1L中に砂糖17.5g、果糖17.5g、乳清ミネラルを固形分として0.4g、緑茶フレーバーを1g含有し、95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた容器詰め飲料」の発明(以下、「引用発明2-2」?「引用発明2-7」という。)が記載されているといえる。

イ 本件特許発明1について
(ア)対比
引用発明2-1と本件特許発明1とを対比する。
引用発明2-1の「乳清ミネラル」は本件特許発明1の「乳成分」に相当し、引用発明2-1の「95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた容器詰め飲料」は本件特許発明1の「加熱殺菌処理済みの飲料」に相当する。
また、引用発明2-1は「1L中に砂糖17.5g、果糖17.5g」含むものであるから、その甘味度は、(17.5×1+17.5×1.2)×100/1000=3.85と計算され、本件特許発明1の「(a)飲料の甘味度が1?6であり」に相当する。
そうすると、引用発明2-1と本件特許発明1とは
「乳成分を含む殺菌処理済みの飲料であって、
(a)飲料の甘味度が1?6である、
上記飲料。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点2-1:本件特許発明1は飲料が「茶飲料」であるのに対し、引用発明2-1は「緑茶フレーバーを含有する飲料」である点
相違点2-2:本件特許発明1は「(b)ゲラニオールを350?10000ppb含有」することが特定されているのに対し、引用発明2-1にはそのような特定がない点

(イ)判断
(イ-1)相違点2-1について
本件特許発明1の「茶飲料」は、本件特許明細書の【0026】の記載から、茶抽出物を含む飲料のことを意味していると理解できる。
一般的に、緑茶フレーバーには茶樹の芽葉から抽出した天然香料素材だけでなく、合成香料素材も使用されていることは周知であるところ、引用発明2-1の「緑茶フレーバー」について、摘示(甲2-1e)には具体的にいかなるものを用いたのか明示的に記載されておらず、また、摘示(甲2-1d)の記載をみても、茶抽出物として得られるものであることは明らかでない。
そうすると、引用発明2-1の「緑茶フレーバーを含有する飲料」は、本件特許発明1の「茶飲料」に相当するとはいえない。

(イ-2)相違点2-2について
甲2-1にはゲラニオールの含有量を350?10000ppbとすることは記載されておらず、引用発明2-1におけるゲラニオール含有量が350?10000ppbであることが明らかともいえない。
(ウ)異議申立人2の主張について
異議申立人2は、異議申立書において、摘示(甲2-1d)に茶フレーバーとして紅茶等の茶類を想起させるフレーバーを使用できることが記載されている旨、摘示(甲2-4a)の表2-4に示されるように、紅茶フレーバーがゲラニオールを7%程度含むことが一般的であり、飲料に対するフレーバーの添加量も0.1?1g/Lが一般的であるから、引用発明2-1のゲラニオール含有量は7000?70000ppbである旨、本件特許発明は元々下限を350ppbとのみ決めていたものであり、範囲を特定したことによる効果はなく、引用発明2-1も茶風味及び乳風味が増強されているから、乳のフレッシュ感も維持乃至増強されていると理解されるものであるから、本件特許発明1は引用発明2-1と同一である旨主張している。

しかしながら、摘示(甲2-1d)には茶フレーバーとして紅茶のみならず、種々の種類の茶を想起させるフレーバーを使用できることが記載されており、摘示(甲2-1e)にはその具体的なものとして緑茶フレーバーを用いた例が記載されているにとどまり、紅茶フレーバーを用いた例も、その他の茶のフレーバーを用いた例も記載されていないから、甲2-1に飲料の甘味度が1?6である乳成分及び紅茶フレーバーを含有する飲料が記載されているとただちにいうことはできない。
仮に摘示(甲2-1d)の記載も考慮して、甲2-1に飲料の甘味度が1?6である乳成分及び紅茶フレーバーを含有する飲料が記載されていると認めたとしても、紅茶フレーバーとして天然香料素材だけでなく合成香料素材も使用されていることは周知であるから、上記(イ-1)において検討したのと同様に、紅茶フレーバーを含有する飲料が本件特許発明1の「茶飲料」に相当するとはいえない。
その上、摘示(甲2-4a)の表2-4に記載されているのは紅茶フレーバーの実践的処方例の一つに過ぎないから、この記載をもって、紅茶フレーバーがゲラニオールを7%程度含むことが一般的であるとはいえない。
さらに、飲料に対するフレーバーの添加量は0.1?1g/Lが一般的であるという主張は、何ら根拠に基づくものでないし、仮に一般的であったとしても、甲2-1の飲料において紅茶フレーバーの添加量が0.1?1g/Lであることを示したことにもならない。
そうすると、甲2-1に記載された飲料が「ゲラニオールを350?10000ppb含有」するものであるということはできない。
したがって、上記異議申立人2の主張は採用できない。

また、引用発明2-2?2-7のそれぞれと本件特許発明1とを対比しても、引用発明2-2?2-7の甘味度は、それぞれ4.20、3.73、39.7、3.85、3.85、3.85と計算され、いずれも本件特許発明1の「(a)飲料の甘味度が1?6であり」に相当するから、上記(ア)と同じ点で一致し、相違点2-1及び相違点2-2において相違し、相違点2-1及び相違点2-2についての判断は上記(イ-1)及び(イ-2)と同じである。さらに、異議申立人2の主張については上記(ウ)で検討したとおりである。

(エ)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1の上記相違点2-1及び相違点2-2に係る構成は甲2-1に実質的に記載されたものということはできず、本件特許発明1は、甲2-1に記載された発明と同一又は実質同一であるとは認められない。

ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明1を直接的又は間接的に引用し、さらに限定した「飲料」の発明である。
そして、上記イにおいて検討したとおり、本件特許発明1は、甲2-1に記載された発明と同一又は実質同一であるとは認められない。
そうすると、本件特許発明3も、本件特許発明1と同様の理由により、甲2-1に記載された発明と同一又は実質同一であるとは認められない。

エ まとめ
以上のとおり、本件特許発明1?4に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものではないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

(3)異議申立人2の甲第2号証(甲2-2)に基づく進歩性について
ア 甲2-2に記載された発明
摘示(甲2-2a)及び(甲2-2d)の特に表1?5の例からみて、甲2には「微粉砕紅茶葉、紅茶抽出液、グラニュー糖6.5重量%、および牛乳、全粉乳又は脱脂粉乳を含有する、加熱殺菌による加熱劣化臭が抑制された微粉砕紅茶葉含有容器詰ミルク入り紅茶飲料」の発明(以下、「引用発明2-2」という。)が記載されている。

イ 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲2-2発明を対比する。
引用発明2-2の「ミルク入り」は本件特許発明1の「乳成分を含む」に相当し、引用発明2-2の「加熱殺菌による加熱劣化臭が抑制された」は本件特許発明1の「加熱殺菌処理済みの」に相当し、引用発明2-2の「紅茶飲料」は本件特許発明1の「茶飲料」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と引用発明2-2とは
「乳成分を含む殺菌処理済みの茶飲料である上記茶飲料。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点3-1:本件特許発明1は「(a)飲料の甘味度が1?6である」と特定されているのに対し、引用発明2-2はそのような特定がない点
相違点3-2:本件特許発明1は「(b)ゲラニオールを350?10000ppb含有」することが特定されているのに対し、引用発明2-2にはそのような特定がない点

(イ)判断
事案に鑑み、相違点3-1及び相違点3-2について合わせて検討する。
本件特許発明は、本件特許明細書【0001】?【0010】の記載をみるに、乳成分含有茶飲料について、加熱殺菌処理による乳成分の加熱劣化臭を比較的感じやすい甘味度1?6という範囲において、加熱劣化臭を抑制して乳のフレッシュ感を感じられるように、ゲラニオールを350?10000ppbとなるように調節したというものである。
引用発明2-2はグラニュー糖を6.5重量%含有するものであり、その甘味度は6.5と計算される。
引用発明2-2は、摘示(甲2-2b)及び摘示(甲2-2c)に記載されているとおり、乳成分由来の劣化臭を抑えたミルク入り紅茶飲料を得ることを課題の一つとするものであるから、甘味度を乳成分の加熱劣化臭を比較的感じやすい1?6の範囲に調節することは動機付けられない。
その上、甲2-2には、ゲラニオールについて何ら記載がないから、乳成分の加熱劣化臭を比較的感じやすい甘味度1?6の範囲において、ゲラニオール含有量を350?10000ppbとなるように調節することも動機付けられない。
そして、本件特許発明は、甘味度とゲラニオール含有量を共に所定の範囲とすることによって、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減を抑制できるという効果を奏するものである。

(ウ)異議申立人2の主張について
異議申立人2は、異議申立書において、甲2-1に甘味度0.6以上13.2以下の紅茶飲料が記載されているように、甲2-2に記載された発明において甘味度を1?6程度に調整するのは設計事項である旨、加熱(殺菌)処理により生じる異臭(レトルト臭)等はショ糖とアミノ酸によるメイラード反応で生じた生成物が寄与していることは技術常識であるから、異臭を抑制するために糖類の含有量を調整することは当業者が通常行うことである旨、摘示(甲2-5a)に示されるように、紅茶抽出物にゲラニオールが含まれることは技術常識であり、ゲラニオール含有量は紅茶抽出物と微粉細紅茶葉の含有量を適宜調整することで変化するものであるから、本件特許発明の範囲程度とすることは設計事項にすぎない旨、本件特許発明は全範囲にわたって参酌しえる程度の効果を奏するものでもない旨主張している。

しかしながら、上記(イ)において検討したとおりであるから、甲2-1に甘味度0.6以上13.2以下の紅茶飲料が記載され(なお、甲2-1は本件特許出願前に公知の文献ではない。)、甲2-5に紅茶抽出物にゲラニオールが含まれることが記載されていても、甘味度とゲラニオール含有量のそれぞれの範囲を調節して本件特許発明の範囲とすることは設計事項とも、当業者が容易になし得ることともいえない。
また、本件特許発明は、本件特許明細書の実施例、特に表2?4から理解できるように、甘味度とゲラニオール含有量を共に所定の範囲とすることによって、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減を抑制できるという効果を奏するものである。
したがって、上記異議申立人2の主張は採用できない。

(エ)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1の上記相違点3-1及び相違点3-2に係る構成を容易想到の事項ということはできず、また、本件特許発明1は上記相違点3-1及び相違点3-2に係る構成に起因して効果を有するものであるから、本件特許発明1は、甲2-2に記載された発明及び甲2-3?甲2-5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

エ 本件特許発明2?4について
本件特許発明2?4は、本件特許発明1を直接的又は間接的に引用し、さらに限定した「飲料」の発明である。
そして、上記イにおいて検討したとおり、本件特許発明1は、当業者が甲2-2に記載された発明及び甲2-5に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
そうすると、本件特許発明2?4も、本件特許発明1と同様の理由により、当業者が甲2-2に記載された発明及び甲2-5に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

オ まとめ
以上のとおり、本件特許発明1?4に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してなされたものではないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

(4)異議申立人2の甲第3号証(甲2-3)に基づく進歩性について
ア 甲2-3に記載された発明
摘示(甲2-3a)及び(甲2-3e)からみて、甲2-3には「植物油脂としてココナッツオイルと、テルペン類からなる香料としてリモネンを1、5又は10ppmと、乳原料として脱脂粉乳を6質量%と、抹茶パウダー又は紅茶抽出物1.5質量%と、グラニュー糖4質量%とを含有することを特徴とする、抹茶又は紅茶飲料」の発明(以下、「引用発明3-1」という。)が記載されている。

イ 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲3-1発明を対比する。
引用発明3-1の「乳原料として脱脂粉乳を6質量%・・・とを含有する」は本件特許発明1の「乳成分を含む」に相当し、引用発明3-1の「抹茶又は紅茶飲料」は本件特許発明1の「茶飲料」に相当する。
また、引用発明3-1の「グラニュー糖4質量%とを含有する」から、引用発明3-1の甘味度は4と計算されるから、本件特許発明1の「(a)飲料の甘味度が1?6である」に相当する。

そうすると、本件特許発明1と引用発明3-1とは
「乳成分を含む茶飲料であって、
(a)飲料の甘味度が1?6である、
上記茶飲料。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点4-1:本件特許発明1は「加熱殺菌処理済み」と特定されているのに対し、引用発明3-1はそのような特定がない点
相違点4-2:本件特許発明1は「(b)ゲラニオールを350?10000ppb含有」することが特定されているのに対し、引用発明3-1にはそのような特定がない点

(イ)判断
事案に鑑み、まず、相違点4-2について検討する。
摘示(甲2-3a)の請求項10にはテルペン類からなる香料を添加することが記載され、請求項12にはそのテルペン類の具体的なものとして種々の化合物が記載されているが、ゲラニオールは記載されていないから、引用発明3-1において、リモネンに代えてゲラニオールを用いることは動機付けられない。
また、引用発明3-1は、摘示(甲2-3b)の記載から、リモネン等のテルペン類を用いて植物油脂の持つ油っぽさやクセを低減したという発明であるのに対し、本件特許発明は、甘味度とゲラニオール含有量を共に所定の範囲とすることによって、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減を抑制できるという効果を奏するものであって、引用発明3-1と本件特許発明ではテルペン類を添加する目的、テルペン類の作用・効果が異なるから、本件特許発明の効果は引用発明3-1においてリモネンに代えてゲラニオールを用いても、予測しえるものではない。

(ウ)異議申立人2の主張について
異議申立人2は、異議申立書において、甲2-3はテルペン類を使用することを特定しており、ゲラニオールはテルペン類であるから、甲2-3に記載された発明において、リモネンに代えてゲラニオールを添加することは当業者が容易に想到し得ることである旨主張している。

しかしながら、上記(イ)で検討したとおり、引用発明3-1においてリモネンに代えてゲラニオールを用いることは動機付けられず、また、本件特許発明は、甘味度とゲラニオール含有量を共に所定の範囲とすることによって、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減を抑制できるという引用発明3-1からは予測し得ない効果を奏するものであるから、上記異議申立人2の主張は採用できない。

(エ)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1の上記相違点4-2に係る構成を容易想到の事項ということはできず、また、本件特許発明1は上記相違点4-2に係る構成に起因して格別顕著な効果を有するものであるから、本件特許発明1は、甲2-3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

ウ 本件特許発明2?4について
本件特許発明2?4は、本件特許発明1を直接的又は間接的に引用し、さらに限定した「飲料」の発明である。
そして、上記イにおいて検討したとおり、本件特許発明1は、当業者が甲2-3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
そうすると、本件特許発明2?4も、本件特許発明1と同様の理由により、当業者が甲2-3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

エ まとめ
以上のとおり、本件特許発明1?4に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してなされたものではないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

(5)サポート要件について
ア 本件特許の発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細な説明には以下の記載がある。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、乳成分を含む茶飲料に関し、より詳細には、乳のフレッシュ感が改善された加熱殺菌済みの乳成分含有茶飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
ミルク紅茶等のような乳成分を含む茶飲料は、乳成分を含まない従来の茶飲料と比べて、茶本来の味わいとともに乳のフレッシュ感やコクも併せて感じることができ、嗜好性の高い飲料の一つである。消費者がこのような乳成分含有茶飲料を手軽に飲用できるように、乳成分を加えた茶飲料を密封容器に充填した容器詰め飲料も広く販売されている。
【0003】
今日、容器詰め飲料の市場においては、再栓可能で軽量なペットボトル容器が主流となっており、移動時にも携帯しながら長時間かけて飲用するスタイルが多く見られる。そのようなスタイルに従って近年では、甘みの強い濃厚な乳成分含有茶飲料よりも、甘味を抑えたスッキリした味わいのものの方が好まれる傾向にある。
【0004】
一方、容器詰めを行う乳成分含有飲料の製造工程においては、微生物保証のための加熱殺菌工程が必要であり、従来、この加熱殺菌工程で乳成分由来の加熱劣化臭が発生することが知られていた。乳成分の加熱劣化による不快な香味を改善する技術としては、例えば、イソ吉草酸エチルをミルク入り飲料に添加し、飲料の高温殺菌時及び/又は加温状態での保管時に発生する乳加熱臭や酸化臭を抑制する方法が開示されている(特許文献1)。また、乳類含有飲食品の加熱による劣化を防止する方法として、紅茶葉の抽出液を吸着剤で精製処理した精製物を乳類含有飲料に添加する方法が開示されている(特許文献2)。また、シソ科メンタ属植物の抽出物を牛乳入り紅茶飲料に添加して、牛乳類入り飲食品の加熱による劣化臭を抑制する方法が開示されている(特許文献3)。また、乳飲料にトコフェロール、ルチン及びアスコルビン酸を添加して、加熱又は光に曝される条件下において乳成分の劣化を抑制する方法も開示されている(特許文献4)。しかしながら、これらの方法は、乳のフレッシュ感を改善する方法としては、必ずしも十分とは言えなかった。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
加熱殺菌を行う乳成分含有茶飲料の開発過程において、本発明者らは、飲料の甘味度が1?6の場合に、乳成分含有茶飲料における乳のフレッシュ感が加熱殺菌処理によって著しく低減することを見出した。そこで、本発明は、甘味度が1?6の乳成分含有茶飲料において、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減が抑制された飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、加熱殺菌を行う乳成分含有茶飲料においてゲラニオールを添加することによって、当該茶飲料における加熱殺菌処理後の乳のフレッシュ感低減の改善に関して特に優れた効果が得られることを見出した。かかる知見に基づき、本発明者らは、本発明を完成するに至った。
・・・
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、甘味度が1?6の乳成分含有茶飲料において、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減を抑制することが可能となる。これにより、本発明では、茶の味わいとともに乳のフレッシュ感やコクも併せて感じ、さらに甘味を抑えたスッキリした味わいを有する加熱殺菌済みの容器詰め茶飲料を提供することができる。」

「【0012】・・・ここで、本明細書において乳のフレッシュ感とは、乳由来の青っぽいフレッシュな香りを意味する。特定の理論に拘束されるわけではないが、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減は、加熱により生じた乳由来の甘い香りと茶の香ばしさが合わさることによって、米を炊いた時に生じるような匂いが発生し、これが青っぽいフレッシュな香りをマスキングするものと考えられる。」

イ 茶濃度について
本件特許明細書【0001】?【0010】の記載をみるに、本件特許発明は、加熱殺菌処理による乳成分由来の加熱劣化臭を感じやすい甘味度が1?6の乳成分含有茶飲料において、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減が抑制された飲料を提供することを課題とし、その課題を解決するための手段としてゲラニオールを特定濃度含有させるものであると理解できる。
本件特許明細書【0012】の記載から、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減には乳成分と茶の成分の両方が関与しているといえる。
そして、乳成分含有茶飲料は、乳成分も茶の成分も感じられるような濃度となるように配合することが通常であるから、一般的な乳成分含有茶飲料の茶の濃度において、実施例以外の濃度で上記本件特許発明の課題を解決できないとはいえない。
したがって、本件特許発明1?4は、本件特許の発明の詳細な説明に記載したものでないということはできない。

ウ 甘味料の種類について
本件特許明細書【0001】?【0010】の記載をみるに、本件特許発明は、加熱殺菌処理による乳成分由来の加熱劣化臭を感じやすい甘味度が1?6の乳成分含有茶飲料において、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減が抑制された飲料を提供することを課題とし、その課題を解決するための手段としてゲラニオールを特定濃度含有させるものであると理解できる。
本件特許明細書【0012】の記載から、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減には乳成分と茶の成分の両方が関与しているといえるが、甘味料の甘味の質は関与しているとはいえない。
そして、本件特許発明において、甘味の強度は、乳成分と茶の成分の両方が関与する乳のフレッシュ感の低減が感じられる1?6程度と低ければよいのであるから、ショ糖以外の甘味料を含む場合に課題が解決できないとはいえない。
したがって、本件特許発明1?4は、本件特許の発明の詳細な説明に記載したものでないということはできない。

エ 加熱殺菌処理のF値について
本件特許明細書【0001】?【0010】の記載をみるに、本件特許発明は、加熱殺菌処理による乳成分由来の加熱劣化臭を感じやすい甘味度が1?6の乳成分含有茶飲料において、加熱殺菌処理による乳のフレッシュ感の低減が抑制された飲料を提供することを課題とし、その課題を解決するための手段と してゲラニオールを特定濃度含有させるものであると理解できる。
乳成分含有茶飲料は、乳成分がなるべく変性してしまわないような条件で加熱殺菌処理を行うことが一般的であるから、一般的な乳成分含有茶飲料の加熱殺菌処理の条件において、F値4又は60以外の条件で上記本件特許発明の課題を解決できないとはいえない。
したがって、本件特許発明1?4は、本件特許の発明の詳細な説明に記載したものでないということはできない。

オ まとめ
以上のとおり、件特許発明1?4は、特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、本件特許発明1?4に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。

第5 むすび
上記のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2020-12-04 
出願番号 特願2019-107813(P2019-107813)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (A23F)
P 1 651・ 161- Y (A23F)
P 1 651・ 121- Y (A23F)
P 1 651・ 537- Y (A23F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 金田 康平  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 安孫子 由美
齊藤 真由美
登録日 2020-03-06 
登録番号 特許第6672509号(P6672509)
権利者 サントリーホールディングス株式会社
発明の名称 乳成分とゲラニオールを含有する茶飲料  
代理人 中西 基晴  
代理人 山本 修  
代理人 武田 健志  
代理人 小野 新次郎  
代理人 宮前 徹  
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