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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B22F
管理番号 1369030
異議申立番号 異議2020-700512  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-01-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-07-21 
確定日 2020-12-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第6645892号発明「積層造形の残留応力低減システム、積層造形の残留応力低減方法および積層造形の残留応力低減プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6645892号の請求項1?7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6645892号(以下「本件」という。)の請求項1?7に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)3月31日に出願され、令和2年1月14日にその特許権の設定登録がされ、令和2年2月14日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和2年7月21日に特許異議申立人である土田裕介(以下「申立人」という。)は全請求項に係る特許について特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
特許第6645892号の請求項1?7の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明7」といい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。)は、それぞれ特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
積層される金属粉末にビームを照射して造形物を形成する積層造形の制御に用いる制御情報が入力される制御情報入力部と、
前記造形物に生じる残留応力を前記積層造形の開始前に前記制御情報に基づいて解析する残留応力解析部と、
前記制御情報を前記解析された残留応力に基づいて、前記造形物に生じる前記残留応力を低減させるように修正する制御情報修正部と、
前記修正後の制御情報を出力する制御情報出力部と、
を備え、
前記制御情報は、前記造形物の3次元構造情報と前記造形物をベースプレートに固定するためのサポート部の3次元構造情報とを含み、
前記制御情報修正部は、前記造形物に生じる前記残留応力を低減させるために、少なくとも前記サポート部の3次元構造情報を修正することを特徴とする積層造形の残留応力低減システム。
【請求項2】
前記制御情報は、前記ビームの制御に関するビーム情報であって、ビームの出力値を示す出力情報と、ビームの直径を示す径情報と、ビームの性質を示すプロファイル情報と、ビームの走査速度を示す走査速度情報と、ビームの走査順序を示す走査シーケンス情報と、の少なくともいずれか1つの情報を含み、
前記制御情報修正部は、前記ビーム情報を前記解析された残留応力に基づいて修正する請求項1に記載の積層造形の残留応力低減システム。
【請求項3】
前記制御情報は、前記金属粉末に前記ビームを照射して本焼結を行う直前に前記本焼結よりも出力を抑えた前記ビームを照射して仮焼結を行うときの仮焼結情報を含み、
前記制御情報修正部は、前記仮焼結情報を前記解析された残留応力に基づいて修正する請求項1または請求項2に記載の積層造形の残留応力低減システム。
【請求項4】
前記制御情報は、前記造形物が完成した時点から前記造形物の周囲に残存した前記金属粉末を除去するまでの後熱時間情報を含み、
前記制御情報修正部は、前記後熱時間情報を前記解析された残留応力に基づいて修正する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の積層造形の残留応力低減システム。
【請求項5】
前記残留応力解析部には、所定の形状をなす前記造形物を構成する3次元構造物に生じる固有ひずみを予め解析し、これら解析結果を収集したデータベースが接続され、
前記残留応力解析部は、前記制御情報と前記データベースとに基づいて有限要素法を用いた弾性計算を実行することで、前記残留応力を解析する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の積層造形の残留応力低減システム。
【請求項6】
積層される金属粉末にビームを照射して造形物を形成する積層造形の制御に用いる制御情報が入力される制御情報入力ステップと、
前記造形物に生じる残留応力を前記積層造形の開始前に前記制御情報に基づいて解析する残留応力解析ステップと、
前記制御情報を前記解析された残留応力に基づいて、前記造形物に生じる前記残留応力を低減させるように修正する制御情報修正ステップと、
前記修正後の制御情報を出力する制御情報出力ステップと、
を含み、
前記制御情報は、前記造形物の3次元構造情報と前記造形物をベースプレートに固定するためのサポート部の3次元構造情報とを含み、
前記制御情報修正ステップにて、前記造形物に生じる前記残留応力を低減させるために、少なくとも前記サポート部の3次元構造情報を修正することを特徴とする積層造形の残留応力低減方法。
【請求項7】
コンピュータに、
積層される金属粉末にビームを照射して造形物を形成する積層造形の制御に用いる制御情報が入力される制御情報入力ステップと、
前記造形物に生じる残留応力を前記積層造形の開始前に前記制御情報に基づいて解析する残留応力解析ステップと、
前記制御情報を前記解析された残留応力に基づいて、前記造形物に生じる前記残留応力を低減させるように修正する制御情報修正ステップと、
前記修正後の制御情報を出力する制御情報出力ステップと、
を実行させ、
前記制御情報は、前記造形物の3次元構造情報と前記造形物をベースプレートに固定するためのサポート部の3次元構造情報とを含み、
前記制御情報修正ステップにて、前記造形物に生じる前記残留応力を低減させるために、少なくとも前記サポート部の3次元構造情報を修正することを特徴とする積層造形の残留応力低減プログラム。」

第3 特許異議の申立ての理由(進歩性)の概要
申立人は、主たる証拠として次の甲第1号証(以下、「甲1」という。)及び従たる証拠として次の甲第2号証(以下、「甲2」という。)、甲第3号証(以下、「甲3」という。)、甲第4号証(以下、「甲4」という。)を提出するとともに、甲2の部分訳、甲4の部分訳を提出し、本件発明1?7は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1?7に係る特許は同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである旨を主張する。

甲1:特表2017-530027号公報
甲2:Bo Cheng,Kevin Chou,“Geometric consideration of support structures in part overhang fabrications by electron beam additive manufacturing”,Computer-Aided Design,(英),2015,Vol.69,pp.102-111
甲3:特開2007-270227号公報
甲4:Konstantinos Salonitis,外3名,“Additive manufacturing and post-processing simulation: laser cladding followed by high speed machining”,The International Journal of Advanced Manufacturing Technology,(英),2016,Vol.85,pp.2401-2411

第4 当審の判断
当審は、以下に述べるとおり、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由(進歩性)およびその他の理由によっても、請求項1?7に係る特許を取り消すことはできないと判断する。

1 特許異議の申立ての理由(進歩性)について
(1)申立人が、本件発明1?7は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと申立てを行うにあたり、本件発明1?7のすべてに対して、主たる証拠として提出した甲1は、平成29年10月12日に公表されたものであり、本件の出願の平成28年3月31日より後に公知となった刊行物であるので、甲1は証拠として採用することができない。
そうすると、甲1?4の他の記載事項を検討するまでもなく、申立人による特許異議の申立ての理由(進歩性)によって、本件発明1?7の進歩性を否定できないことは明らかである。

(2)特許異議の申立ての理由(進歩性)についてのまとめ
以上、上記(1)のとおりであるから、進歩性に関する特許異議の申立ての理由を採用することはできない。

2 その他の理由(進歩性)について
(1)主たる証拠の差し替え
甲1に係る国際出願の国際公開公報である国際公開第2015/184495号(以下、「刊行物1」という。)は、平成27年12月10日に国際公開されたものであり、本件の出願の平成28年3月31日より前に公知となった刊行物であるので、これを甲1と差し替えることで主たる証拠になる可能性があるとの前提において、以下、申立人による進歩性に関する特許異議の申立ての理由は、甲1に関するところは刊行物1に関するところと読み替えながら参酌し、かつ、甲1を刊行物1の訳文として採用しながら、以下のように検討する。

(2)刊行物1及び甲2?4の記載事項と引用発明
ア.刊行物1の記載事項及び刊行物1に記載された発明(引用発明)
(ア)刊行物1の記載事項
刊行物1には、以下の記載がある。
なお、英語で記載された刊行物1の翻訳文は甲1を参酌した。また、下線は当審による(以下同じ。)。

a.「CLAIMS
1 . A method of minimising distortion in a workpiece, including the steps of: in a computer system, carrying out finite element analysis on a finite element thermo-mechanical model of the workpiece during and after fabrication by additive manufacturing to predict shape distortion and residual stress development in the workpiece, wherein the fabrication includes the fabrication step of depositing multiple layers of a material melted by a heat source along a deposit path on a substrate; and introducing alterations to the workpiece prior to or during fabrication to compensate for the predicted distortion.」
(翻訳文)
「請求の範囲
1.ワークピースの歪みを最小限にする方法であって、コンピュータシステムにおいて、付加製造による製造中及び製造後に、前記ワークピースの有限要素熱‐機械モデルで有限要素解析を行うことによって、前記ワークピースにおける形状歪み及び残留応力成長を予測し、前記製造は、熱源によって溶融された材料の複数の層を基板上の堆積経路に沿って堆積させる製造工程を含み、製造前又は製造中に、前記ワークピースに対する変更を導入することによって、前記予測された歪みを補償する、方法。」

b.「[1] The present disclosure relates generally to additive manufacturing where successive layers of metallic material are laid down on a substrate, and in particular to the prediction and minimisation of distortion in additive manufacturing processes. It will be convenient to describe the prediction and minimisation of distortion in relation to the exemplary application of the manufacture of custom-made metal parts by Electron Beam Free Form Fabrication (EBFFF), however it should be appreciated that the description is not limited to this exemplary application only and has general applicability to other forms of additive manufacturing.」

(翻訳文)
「[1] 本開示は、概して、金属材料層を基板上に順次積層して行われる付加製造に関し、特に、付加製造プロセスにおける歪みの予測及び最小化に関する。この歪み予測及び最小化の説明を、電子ビーム自由形状造形(electron beam freeform fabrication)(EBFFF)によるカスタムメイドの金属部品の製造に採用する例に関連付けて行うことが、便利であろう。ただし、この説明は、この例示的な用途のみに限定されるものではなく、他の形態の付加製造に広く適用可能である。」

c.「[4] Residual stress and shape distortion are inherent features of additive manufacturing, particularly at high deposition rates which require high heat input to the substrate and previously deposited layers, resulting in large thermal gradients. In most cases, fabricated parts are heat treated after deposition to help relieve stresses. As a result, the presence of high stress leading to premature failure during service is not as much of a concern as are stress and stress-induced distortion during and after deposition. Residual stress and distortion associated with the EBFFF process are currently addressed by frequent stress-relieving steps during the build. However, such steps are cumbersome, time consuming and add to the production cost of objects manufactured using the EBFFF process.

[5] It would be desirable to minimise the stress-relieving steps required during additive manufacturing.」

(翻訳文)
「[4] 残留応力及び形状歪みは、付加製造に必ず生じる問題であり、特に、堆積速度が速い場合に顕著となる。堆積速度が速い場合は、基板及び先に堆積されている層に対して高温の入熱を行う必要があり、これによって温度勾配が大きくなるからである。多くの場合、製造された部品は、堆積後に熱処理されて、応力除去が促進される。そのため、使用中の早期の破損につながる高い応力の存在は、堆積中及び堆積後の応力ならびに応力に起因する歪みほど、重大な問題ではない。現在のところは、EBFFFプロセスに関連する残留応力及び歪みに対して、造形中に応力除去工程を頻繁に行うことによって対処している。しかしながら、そのような工程は、面倒且つ時間がかかるとともに、EBFFFプロセスによって製造される対象物の製造コストを増大させる。
[5] 従って、付加製造中に必要とされる応力除去工程を最小限にすることが望ましいであろう。」

d.「[64] Referring now to Figure 1 , there is shown generally selected elements of an Electron Beam Free Form Fabrication (EBFFF) apparatus 10 for use in manufacturing workpieces by additive manufacturing. The apparatus 10 notably includes an electron beam gun 12 for generating an electron beam 14 that acts to melt metal wire feedstock 16 fed into a molten pool created and sustained by the electron beam from a wire feeder 18. The electron beam gun 12 and wire feeder 18 are maintained in a fixed disposition relative to each other but are moveable along the Y and Z axes. The apparatus 10 further includes a table 20 adapted to support a metallic substrate 22 upon which successive layers of metallic alloy 24 are deposited by operation of the electron beam gun 12 and wire feeder 18. The table 20 is displaceable along the X axis. In use, the electron beam gun 12 / wire feeder 18 are displaced relative to the table 20 so as to lay down successive tracks of molten alloy, which resolidifies after deposition in order to form a desired layer of material.

[65] Figure 2 shows the electron beam gun 12 contained in a sealed container or vacuum chamber 50 capable of maintaining a vacuum environment. The electron beam gun 12 is adapted to generate and transmit the electron beam 14 within the vacuum environment, and to direct the electron beam 14 toward the substrate 22. In the arrangement depicted in Figure 1 , the substrate 22 is positioned on the table or moveable platform 20. Part of the gun 12 may be positioned outside of the chamber 50 for access and electrical connectivity. Alternately, the electron beam gun 12 may be completely enclosed within a chamber 50 so that the electron beam gun is also moved rather than just the substrate 22. In either case, the electron beam gun 12 moves relative to the substrate 22.

[66] The platform 20 and/or the electron beam gun 12 may be movable via a multi-axis positioning drive system 25, which is shown schematically as a box in Figure 1 for simplicity. A complex or three-dimensional (3D) object is formed by progressively forming and cooling a molten pool 29 into the layers 24 on the substrate 20. The molten pool 29 is formed by using the electron beam 14 to melt a consumable wire 16 formed from a suitable metal, such as aluminium or titanium. The wire 16 is fed toward the molten pool from a wire feeder 18, typically including a spool or other suitable delivery mechanism having a controllable speed.

[67] The apparatus 10 shown in Figures 1 and 2 also includes a closed-loop controller (C) 30 having a host machine 32 and an algorithm(s) 100 adapted for controlling an EBFFF process conducted using the apparatus 10. The controller 30 is electrically connected to or in communication with a main process controller 34 which is adapted for sending necessary commands to the electron beam gun 12, the wire feeder 18, and any required motors (not shown) that position the substrate 22 and the gun 12, including a set of final control parameters 1 F. The controller 30 generates and transmits a set of input parameters 1 1 that modifies the final control parameters 1 1 F as set forth below.

[68] The wire 16, when melted by the electron beam 14, in one embodiment to over approximately 1600 degrees C, is accurately and progressively deposited in successive layers according to a set of design data 19, such as Computer Aided Design (CAD) data or other 3D design file. In this manner, a 3D structural part or other complex object may be created by additive manner without the need for a casting die or mold.

[69] Figure 3 depicts an exemplary computer system 200 for use in one or more embodiments, and notably for use in predicting the distortion likely to occur in a workpiece manufactured by the apparatus 10 and for providing data to the controller 30 in various embodiments to enable alterations to be introduced into the workpiece to compensate for that predicted distortion. The computer system includes one or more processors, such as processor 202, the processor 202 is connected to a computer system internal communications bus 204.」

(翻訳文)
「[64] まず図1を参照すると、同図には、付加製造によってワークピースを製造する際に用いられる電子ビーム自由形状造形(electron beam freeform fabrication:EBFFF)装置10のうちの選択された要素が、概略的に示されている。装置10は、特に、電子ビーム14を生成する電子ビームガン12を含み、電子ビームガンは、電子ビームによって生成及び維持された溶融池に、ワイヤ供給装置から供給された金属ワイヤ材料16を溶融する働きを行う。電子ビームガン12及びワイヤ供給装置18は、相対的に固定位置に保持される一方で、Y軸及びZ軸に沿って移動可能である。装置10は、金属基板22を支持するように構成されたテーブル20をさらに含み、当該金属基板上に、電子ビームガン12及びワイヤ供給装置18の動作によって、金属合金24の層が順次堆積される。テーブル20は、X軸に沿って変位可能である。使用の際には、電子ビームガン12/ワイヤ供給装置18を、テーブル20に対して変位させて、溶融合金のトラックを順次積層する。溶融合金は、堆積後に再固化して所望の材料層を形成する。
[65] 図2は、密閉コンテナー、あるいは、真空環境を維持可能な真空チャンバ50に収容された電子ビームガン12を示している。電子ビームガン12は、電子ビーム14を生成して真空環境内に照射し、電子ビーム14を基板22に誘導するように構成されている。図1に示した構成において、基板22は、テーブル又は可動プラットフォーム20上に配置されている。ガン12の一部を、チャンバ50の外部に位置させて、ガンに対するアクセス及び電気接続性を確保してもよい。これに代えて、電子ビームガン12全体をチャンバ50内に収容し、基板22だけでなく電子ビームガンも移動させるようにしてもよい。いずれの場合も、電子ビームガン12は、基板22に対して移動する。
[66] プラットフォーム20及び/又は電子ビームガン12は、多軸位置決め駆動システム25を介して移動可能とすることができる。当該システムは、図1において、簡略化のためにボックスとして概略的に示している。溶融池29を徐々に形成し、これを冷却して層24にすることによって、複雑な物体又は3次元(3D)の物体が、基板20上に形成される。溶融池29は、アルミニウムやチタンなどの適当な金属から形成された消耗ワイヤ16を、電子ビーム14を用いて溶融することによって、形成される。ワイヤ16は、通常、スプール又は速度制御可能な他の適当な送給機構を含むワイヤ供給装置18から、溶融池に供給される。
[67] 図1及び図2に示した装置10は、装置10を用いて行われるEBFFFプロセスを制御するように構成されたホストマシン32及びアルゴリズム100を有する閉ループ制御装置(c)30をさらに含む。制御装置30は、メインプロセスコントローラ34と電気的に接続され且つこれと通信可能となっており、当該メインプロセスコントローラは、電子ビームガン12、ワイヤ供給装置18、並びに、基板22及びガン12を配置する任意の必要なモータ(図示せず)に、必要なコマンドを、一組の最終制御パラメータ11Fを含め、送信するように構成されている。制御装置30は、以下に説明するように、最終制御パラメータ11Fを修正するための一組の入力パラメータ11を生成し送信する。
[68] 一実施形態においては、ワイヤ16は、電子ビーム14によって約1600℃以上に溶融されると、コンピュータ支援設計(CAD)データ又は他の3D設計ファイルなどの一組の設計データ19に従って、精密且つ徐々に、層状に順次堆積される。このようにして、3次元構造部品または他の複雑な物体を、鋳造用ダイやモールドを用いずに、付加方式で作製することができる。
[69] 図3は、1つ又は複数の実施形態で使用される例示的なコンピュータシステム200を示している。当該システムは、特に、装置10によって製造されるワークピースに起こり易い歪みを予測し、様々な実施形態の制御装置30にデータを提供して、予測された歪みを補償すべくワークピースに変更を加えることを可能とするために使用される。コンピュータシステムは、プロセッサ202などの1つ又は複数のプロセッサを含み、プロセッサ202は、コンピュータシステム内部通信バス204に接続されている。」

e.「[72] Computer programs in the form of a series of instructions to cause various functionality to be performed are stored in application module 224 in the main memory 206 and/or secondary memory 208. Computer programs may also be received via the communications interface 220. Such computer programs, when executed, enable the computer system 200 to perform features and provide functionality as described herein. In particular, the computer programs, when executed, enable the processor 202 to perform features as described herein.

[73] In one embodiment, the application module 224 is configured to carry out finite element analysis on a finite element thermo-mechanical model of a workpiece prior to and during fabrication by additive manufacturing to predict shape distortion and/or residual stress development in the workpiece. In one or more embodiments, the application module 224 is also adapted to determine alterations to be made to the workpiece prior to or during fabrication to compensate for the predicted distortion. In addition, the module 224 stores the finite element thermo-mechanical model of the workpiece to be fabricated.

[74] Figure 4 is a schematic representation of data input into the module 224 of the computer system 200, the Finite Element Analysis (FEA) model applied to that data by the module 224 as well as the predicted stress and distortion data and workpiece alteration data generated by the module 224. The prediction of shape distortion and/or residual stress development in a workpiece fabricated by the equipment 10 is dependent upon the input of the 3D geometry 248 of the workpiece prior to, during and at the conclusion of the additive manufacturing process. In addition to the geometry input 250, parameters defining the various fabrication steps and conditions 252 are provided to the module 224. 」

(翻訳文)
「[72] 様々な機能を実行させるための一連の命令の形態のコンピュータプログラムは、メインメモリ206内のアプリケーションモジュール224及び/又は補助メモリ208に格納される。コンピュータプログラムを、通信インターフェイス220を介して受信してもよい。このようなコンピュータプログラムが実行されると、コンピュータシステム200が本明細書に記載の特徴を実行し機能を実現することが可能となる。特に、コンピュータプログラムが実行されると、これによって、プロセッサ202が、本明細書に記載の特徴を実行することが可能となる。
[73] 一実施形態において、アプリケーションモジュール224は、付加製造による製造前及び製造中に、ワークピースの有限要素熱‐機械モデル(finite element thermo-mechanical model)で有限要素解析を行うことによって、ワークピースにおける形状歪み及び/又は残留応力進行を予測するように構成されている。1つ又は複数の実施形態において、アプリケーションモジュール224は、さらに、製造前又は製造中に、ワークピースに対して行うべき変更を決定することによって、予測された歪みを補償するように構成されている。また、モジュール224は、製造されるワークピースの有限要素熱‐機械モデルを格納する。
[74] 図4は、コンピュータシステム200のモジュール224に対するデータ入力、モジュール224によって当該データに適用される有限要素解析(FEA)モデル、ならびに、モジュール224によって生成される予測の応力及び歪みデータ及びワークピース変更データの概略図である。装置10によって製造されるワークピースの形状歪み及び/又は残留応力成長の予測は、付加製造プロセスの前、プロセス中、及びプロセスの完了時における、ワークピースの3Dジオメトリ248の入力に依存する。ジオメトリ入力250に加えて、様々な製造工程及び条件252を規定するパラメータが、モジュール224に与えられる。」

f.「[76] The predicted distortion 256 is compared with the input geometry. If that comparison 258 indicates that predicted distortion is within a predetermined tolerance, then the input geometry 250 is output 262 to the controller 30. However, if the predicted distortion is greater than a predetermined tolerance then alterations 260 to are used to update the input geometry 250 to ensure that the fabricated workpiece includes compensation for the predicted distortion.」

(翻訳文)
「[76] 予測歪み256は、入力ジオメトリと比較される。この比較258において、予測歪みが所定の許容範囲内であることがわかると、当該入力ジオメトリ250の制御装置30に対する出力262が行われる。一方、予測歪みが所定の許容範囲より大きい場合、変更260を行って入力ジオメトリ250を更新し、製造されるワークピースに予測歪みに対する補償が含まれるようにする。」

g.「[96] The model has been effectively used to perform a series of virtual Design of Experiments in order to assess how the overall distortion is influenced by various operating parameters and conditions, build paths, preheated or preformed substrate and their combinatorial effects.」

(翻訳文)
「[96] このモデルを効果的に用いて一連の実際上の実験計画法を実施し、様々な動作パラメータ及び動作条件、造形経路、予熱又は予成形された基板、及び、これらの組み合わせによる効果によって、全体の歪みがどのように影響されるかを評価した。」

h.「[127] Virtual Design of Experiments was carried out employing the Johnson- Cook model as the updated model was not available at the time. The effects of various build scenarios such as varying process parameters, build sequences, build speeds, etc. (Table 1 ) on post-build distortion were virtually investigated with our developed modelling tool. Figure 3.18 summarizes the results obtained from the virtual Design of Experiments, compared with the "real" baseline case corresponding to the experimental build with aluminium alloy clamps in place. [128] A significant reduction of 30.1 percent in post-build distortion was achieved by just insulating the clamps while more a more active approach such as the use of pre-bent substrates may fully eliminate post-built distortion. Other "extreme" approaches, such as active heating of the substrate to temperatures above 1300 K shows a large reduction in distortion but violates metallurgical constraints and is almost impossible to implement.」

(翻訳文)
「[127] 更新されたモデルが当時は入手できなかったため、ジョンソン・クックモデルを用いて実際上の実験計画法が行われた。プロセスパラメータ、造形順序、造形速度(表1)の変化などのさまざまな造形シナリオが造形後の歪みに与える影響を、我々の開発モデリングツールを使用して、仮想的に調べた。図3.18は、実際上の実験計画法から得られた結果を、アルミニウム合金クランプが所定位置に設けられた実験的な造形体に対応する「リアルな」基準ラインケースと比較した結果を、まとめたものである。」

i.「



(翻訳文)




(イ)刊行物1に記載された発明(引用発明)
a.刊行物1の請求の範囲の第1項、段落[1]、[74]、[76]、及び図4の記載内容を総合すると、刊行物1には、以下のような発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
なお、刊行物1の図4の記載内容は、当該図4に関する[74]、[76]等の説明内容に照らし、甲1の平成30年1月30日付け補正についての特許法第17条の2の規定による補正の掲載公報(平成30年3月15日発行)において、データの流れを示す矢印(⇒)が追加されるように修正されている、以下の図4の内容を意図していたことは明らかである。
【図4】

<引用発明>
(a)電子ビーム自由形状造形(electron beam freeform fabrication)(EBFFF)によって、金属材料層を基板上に順次積層して行われるワークピースの製造に用いる入力ジオメトリが入力され、
(b)有限要素熱‐機械モデル(FEA)モデルで前記ワークピースにおける残留応力の進行を前記データに基づいて予測し、
(c)解析された残留応力に基づいて、ワークピースにおいて予測された歪みが入力ジオメトリと比較され、予測歪みが所定の許容範囲内であることがわかると、当該入力ジオメトリの制御装置に対する出力が行われる一方、予測歪みが所定の許容範囲より大きい場合、変更を行って入力ジオメトリを更新し、製造されるワークピースに予測歪みに対する補償を行うコンピュータシステム。

イ.甲2の記載事項
甲2には、以下の記載がある。
なお、英語で記載された甲2の翻訳文は、申立人が提出した甲2の部分訳も参酌しながら、当審で作成した。

a.ABSTRACT 102ページ要約第1-2行
「Powder bed electron beam additive manufacturing (EBAM) has emerged as a potentially cost-effective process for high-value, small-batch productions for biomedical and aerospace applications.」

(翻訳文)
「粉末床電子ビーム付加造形(EBAM)は、生物医学および航空宇宙応用のための高価値、小バッチ生産のための潜在的に費用効果の高いプロセスとして出現した。」

b.ABSTRACT 102ページ要約第4-9行
「However, support structures are indeed needed in practice for an overhang; without it, the overhang area will have defects such as warping, which are due to the complex thermomechanical process in EBAM. In this study, a numerical approach is introduced to simulate the thermomechanical responses in the EBAM process of overhang structures.
The objective of this study was to develop a 2D thermomechanical model, using a finite element method (FEM), to evaluate temperature induced deformation on different overhang support patterns in the EBAM process. 」

(翻訳文)
「しかしながら、実際には、オーバーハングのための支持構造が必要であり、それがなければ、オーバーハング領域は、EBAMにおける複雑な熱機械的プロセスに起因する反りなどの欠陥を有することになる。この研究では、オーバーハング構造のEBAMプロセスにおける熱機械的応答をシミュレートするために数値的アプローチを導入する。この研究の目的は、有限要素法(FEM)を用いて2D熱機械モデルを開発し、EBAMプロセスにおける異なるオーバーハング支持パターン上の温度誘起変形を評価することであった。」

c.1.Introduction 102ページ右欄第1-3行
「it utilizes a high-energy electron beam, as a moving heat source, to melt and fuse metal powder and produce a solid part in a layer-by-layer fashion.」

(翻訳文)
「これは、移動熱源として高エネルギー電子ビームを利用して、金属粉末を溶融して融着し、層ごとに固体部品を製造する。」

d.1.Introduction 103ページ右欄第52-53行
「To effectively design necessary supports, it is essential to understand the source of defects associated with overhang geometries in EBAM.」

(翻訳文)
「必要な支持体を効果的に設計するためには、EBAMにおけるオーバーハング形状に関連する欠陥の原因を理解することが不可欠である。」

e.1.Introduction 104ページ左欄第9-11行
「it is possible to improve the quality of EBAM parts through effective support structures.」

(翻訳文)
「効果的な支持構造によってEBAM部品の品質を改善することができる。」

f.2. 4 Numerical model configuration 105ページ左欄第21-30行
「Fig.3(a) shows the geometric details for a typical overhang model, which has a substrate placed in powder bed. The powder material is Ti-6Al-4V powder (sintered) with 50% porosity. A thin layer, on the top of the substrate, is assumed to be the latest added powder layer, which also has the powder properties. In this study, a total of 3 layers will be deposited sequentially above substrate. A conical body heat source with linearly decaying along y-direction (building direction), and scanning along x-direction, has been applied on the top powder layer, shown in Fig.3 (b).」

(翻訳文)
「図3(a)は、粉末床に配置された基板を有する典型的なオーバーハングモデルの幾何学的詳細を示す。粉末材料は、50%の多孔度を有するTi-6Al-4V粉末(焼結)である。基板の上部の薄い層は、粉末特性を有する最後に追加された粉末層であると仮定した。本検討では、合計3層が基板上に順次堆積される。y方向(構築方向)に沿って線形に減衰し、x方向に沿って走査する円錐体熱源を、図3(b)に示すように、頂部粉末層上に適用した。」

g.2. 4 Numerical model configuration 105ページ右欄 図3




(図面の説明部分の翻訳文)
「図3.(a)モデル幾何学的情報および(b)電子ビーム走査サイクルにおけるモデル境界条件。」

h.3.Overhang and support structure simulation study 107ページ左欄第23-40行
「According to the above simulated results, the overhang structure can result in a serious part warping problem. Therefore, improved designs of overhang geometry (e.g., support features) may help to reduce the distortion of the overhang area. The numerical model can be a cost-effective way to study thermomechanical responses of different overhang support features when subject to a moving heat source. Three types of overhang structures, each with different control dimensions and support features, have been constructed bassed on Fig.3. Their structural configurations are shown in Fig.8; in which the parameters are: L is the overhang length; Wc is the width of the support column; Gap is the distance between bottom surface of the first deposited layer and the top surface of the solid piece(solid Ti-6Al-4V material). For all the cases, there are a total of three deposited top layers above the substrate. Fig.8(a) shows the configuration of the overhang length effect model, L will be 5, 10, 15 and 25 mm. The solid column model (L = 15 mm) is shown in Fig.8(b). The bottom surface of the column wil be fully constrained.」

(翻訳文)
「上記のシミュレーション結果によれば、オーバーハング構造は、重大な成形品の反りの問題をもたらす可能性がある。したがって、オーバーハング形状(例えば、支持機構)の改善された設計は、オーバーハング領域の歪みを低減するのに役立ち得る。数値モデルは、移動する熱源にさらされたときの種々のオーバーハング支持機構の熱機械的応答を研究するための費用効果の高い方法であり得る。制御寸法と支持機構の異なる3種類のオーバーハング構造が、図3に基づいて構築されている。それらの構造的構成を図8に示し、パラメータは次のとおりである。Lはオーバーハング長さであり、Wcは支持柱の幅であり、Gapは堆積層の底面と固体片(固体Ti-6Al-4V材料)の上面との間の距離である。全ての場合について、基板の上に計3つの堆積された最上層が存在する。図8(a)はオーバーハング長効果モデルの構成を示しており、Lは5、10 15、25mmとなる。固体柱モデル(L = 15 mm)を図8(b)に示す。柱の底面は完全に拘束される。」

i.3.Overhang and support structure simulation study 107ページ右欄 図8




(図面の説明部分の翻訳文)
「図8.異なる支持構造の幾何学的考察。」

j.4.2 Support column effect 108ページ左欄第26行-右欄第7行
「Fig.10(a) displays final deformation contours for a support column (Wc = 1.0mm) case. There is no deformation in the bottom region of the support column due to a fully constrained boundary condition. Top surface deformation plots from the Wc = 1.0mm case and the L = 15 mm case have been compared. An expected deformation drop for the Wc = 1.0 mm case can be noted as a result of the applied support column constraint, illustrated in Fig.10(b).
To reduce build cost, it is necessary to investigate the amount of material used in the support columns and the corresponding effect on warping reduction. In the 2D simulation, the amount of material used in support columns is proportional to the width of the column. The Wc = 0.5 mm columns width is considered as the “base size” for future comparison, and the increment of support column material usage (column width) is set to be 1 × “base size” at a time in simulation. Top surface deformation plots, from simulated results of different amounts of support column material usage cases (Wc values), have been concluded in Fig.11. However, the deformation is barely changed even if a larger amount of materials have been used e.g., Wc = 1.5 mm case (3 × “base size”) vs. Wc = 0.5 mm case (1 × “base size”). The results confirm that even a thin support column, which requires less material, could provide mechanical constraint to prevent overhang curling. Thus, it is probably not necessary to spend a large amount of materials on building thick support columns.」

(翻訳文)
「図10(a)は、支持柱(Wc = 1.0 mm)の場合の最終変形輪郭を表示する。完全に拘束された境界条件により支持柱の底部領域の変形はない。Wc=1.0mmの場合とL=15mmの場合の上面変形プロットを比較した。図10(b)に示されるように、Wc=1.0mmの場合の予想される変形の低下は、適用された支持柱の束縛の結果として特筆することができる。
構築コストを低減するために、支持柱に使用される材料の量および反り低減に対する対応する効果を調査することが必要である。2Dシミュレーションでは、支持柱に使用される材料の量は、支持柱の幅に比例する。Wc=0.5mmの柱幅は、今後の比較のための「基本サイズ」と見なされ、支持柱材料使用の増分(柱幅)は、シミュレーションの時には1×「基本サイズ」に設定される。支持柱材料の使用量 (Wc値)を変えた場合のシミュレートされた結果から得られた上面変形プロットが図11に示されているが、例えば、Wc=0.5mmケース(1×「ベースサイズ」)に対するWc=1.5mmの場合(3×「基本サイズ」)とのように、より多くの材料を使用しても変形はほとんど変化しない。この結果は、より少ない材料を必要とする薄い支持柱でさえ、オーバーハングのカールリングを防止するための機械的制約を提供し得ることを確認する。したがって、おそらく、厚い支柱を構築するのに大量の材料を費やす必要はない。」

k.4.2 Support column effect 108ページ右欄 図10




(図面の説明部分の翻訳文)
「図10.Wc = 1.0mmの場合の最終冷却後の変形輪郭及び上面変形プロットの典型的な例。」

l.5.Conclusions 110ページ左欄第7-11行
「A solid column, as a traditional support structure means, can reduce and possibly eliminate the overhang warping;」

(翻訳文)
「従来のサポート構造手段としてのソリッド柱は、オーバーハング反りを低減し、可能であれば除去することができる。」

ウ.甲3の記載事項
甲3には、以下の記載がある。
なお、申立人は、特許異議申立書第24ページ4(4)ウ.(エ)において、「制御情報に、後熱時間情報を含めることは、周知の技術である。」としており、甲3は、その周知の技術を示す文献として例示されたものである。

a.「【0023】
鋼の場合、加熱による回復減少でほとんどの残留応力は消滅し、再結晶温度付近に加熱すれば完全に何かする。100 ℃で10分間加熱すると、格子欠陥が消滅して残留応力は消滅し、反りも減少する。また加熱温度が高いほど、残留応力の除去に必要な加熱時間は短くなる。」

b.「【0032】
(実施の形態3)
図11は、本発明の(実施の形態3)の光造形物の製造方法の実施に使用する光造形物製造装置を示し、図11が(実施の形態1)や(実施の形態2)に用いた装置と異なる点は、加熱ランプ19によって金属粉末2の被覆層を加熱しながらレーザ光Lで焼結を行うことである。加熱ランプ19の加熱により、焼結工程中の金属粉末2の表面が100 ℃ から300℃ になるようにしておけば、焼結層21が絶えず焼鈍され、焼結工程が進む間に並行して残留応力を軽減することができる。」

エ.甲4の記載事項
甲4には、以下の記載がある。
なお、申立人は、特許異議申立書第25ページ4(4)ウ.(オ)において、「所定の形状をなす造形物を構成する3次元構造物に生じる固有ひずみを予め解析することは周知の技術である。」としており、甲4は、その周知の技術を示す文献として例示されたものである。
また、英語で記載された甲4の翻訳文は、申立人が提出した甲4の部分訳も参酌しながら、当審で作成した。

a.2.1 Modeling of the laser cladding process 2404ページ右欄第7-11行
「This fact is used to reduce the time-consuming transient thermo-mechanical problem for the prediction of geometrical distortion to a fast solution of the mechanical problem on the basis of the method of inherent strain.」

(翻訳文)
「この事実は、幾何学的歪の予測のための時間のかかる過渡的熱機械的問題を、固有歪法に基づく機械的問題の高速解に縮小するために使用される。」

b.2.1 Modeling of the laser cladding process 2404ページ左欄第26行-右欄第11行
「However, this energy is used for changing the phase of the powder from solid to liquid and for heating the substrate (previous layers). Thus, it was decided that the thermal load should not derive from a heat flux input but from the new layer of material having an initial temperature equal to that of powder melting point. The three different modeling approach are shown in Fig.2. Obviously, the modeling approach which uses elements loaded with heat is more accurate than the approach which loads a whole layer with the equivalent load. A simple example, to understand the effect of these modeling approaches, is the accuracy on the displacement of a cantilever under an axial loading condition. A dense mesh will give a more accurate displacement result than a model with coarse mesh. However, the accuracy of models which use layer elements can give accurate results for distortion prediction in AM simulation because stress and temperature of a certain point in a layer are affected by approximately ten previous layer but displacement values alter (depending on the macroscopic part geometry) until the end of the builtup process. All AM parts are extremely large compared to the size of the micro-weld, and each weld seam experiences an identical or comparable thermos-mechanical history. This fact is used to reduce the time-consuming transient thermos-mechanical problem for the prediction of geometrical distortion to a fast solution of the mechanical problem on the basis of the method of inherent strain.」

(翻訳文)
「しかしながら、このエネルギーは、粉末の相を固体から液体に変化させるため基板(前の層)を加熱するために使用される。したがって、熱負荷は、熱流束入力に由来すべきではなく、粉末融点に等しい初期温度を有する材料の新しい層に由来すべきであると決定された。3つの異なるモデリング手法を図2に示す。明らかに、熱が負荷された要素を使用するモデリング手法は、層全体に等価負荷を負荷する手法よりも正確である。これらのモデリング手法の効果を理解するための簡単な例は、軸方向荷重条件下でのカンチレバーの変位に対する精度である。密なメッシュは、粗いメッシュを有するモデルよりも正確な変位結果を与える。しかしながら、層要素を使用するモデルの精度は、層内の特定の点の応力および温度が約10の先行層によって影響されるが、変位値構築プロセスの終了まで(巨視的な部品形状に応じて)変化するので、AMシミュレーションにおける歪み予測に対して正確な結果を与えることができる。全てのAM部品は、マイクロ溶接のサイズと比較して極めて大きく、各溶接シームは、同一又は同等の熱機械的履歴を受ける。この事実は、固有歪みの方法に基づく機械的問題の高速解に対する幾何学的歪みの予測のための時間のかかる過渡熱機械的問題を低減するために使用される。」

(3)引用発明との対比・判断
ア.本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「コンピュータシステム」は、「(a)電子ビーム自由形状造形(electron beam freeform fabrication)(EBFFF)によって、金属材料層を基板上に順次積層して行われるワークピースの製造に用いる入力ジオメトリが入力され」るものであり、本件発明1のように「積層造形の制御に用いる制御情報が入力される制御情報入力部」の機能を有する部分を備えているのは明らかである。また、対象となる積層造形が、積層される金属にビームを照射して造形物を形成するものである点も、本件発明1と共通する。
b.また、引用発明の「コンピュータシステム」は、「有限要素熱‐機械モデル(FEA)モデルで前記ワークピースにおける残留応力の進行を前記データに基づいて予測」するものであり、本件発明1のように「前記造形物に生じる残留応力を前記積層造形の開始前に前記制御情報に基づいて解析する残留応力解析部」の機能を有する部分を備えているのも明らかである。
c.また、引用発明の「コンピュータシステム」は、「解析された残留応力に基づいて、ワークピースにおいて予測された歪みが入力ジオメトリと比較され、予測歪みが所定の許容範囲内であることがわかると、当該入力ジオメトリの制御装置に対する出力が行われる一方、予測歪みが所定の許容範囲より大きい場合、変更を行って入力ジオメトリを更新し、製造されるワークピースに予測歪みに対する補償を行う」ものであり、本件発明1のような「前記制御情報を前記解析された残留応力に基づいて、前記造形物に生じる前記残留応力を低減させるように修正する制御情報修正部」の機能を有する部分と、「前記修正後の制御情報を出力する制御情報出力部」の機能を有する部分とを備えているのも明らかである。
d.さらに、引用発明の「コンピュータシステム」は、上記a.?c.に挙げる一連の技術的特徴を有することにより、本件発明1のような「積層造形の残留応力低減システム」を構築していることも明らかである。
e.そうすると、両者は、
<一致点>
「積層される金属にビームを照射して造形物を形成する積層造形の制御に用いる制御情報が入力される制御情報入力部と、
前記造形物に生じる残留応力を前記積層造形の開始前に前記制御情報に基づいて解析する残留応力解析部と、
前記制御情報を前記解析された残留応力に基づいて、前記造形物に生じる前記残留応力を低減させるように修正する制御情報修正部と、
前記修正後の制御情報を出力する制御情報出力部と、
を備える、
積層造形の残留応力低減システム。」
である点において一致をするが、以下の点において相違している。

<相違点1>
積層造形を行うにあたりビームを照射する対象の金属が、本件発明1では、「金属粉末」とされているのに対し、引用発明では、そのようなものを対象とすることについて何ら示唆されていない点。

<相違点2>
本件発明1の「前記制御情報は、前記造形物の3次元構造情報と前記造形物をベースプレートに固定するためのサポート部の3次元構造情報とを含み、」という技術的特徴について、引用発明には何ら示唆されていない点。

<相違点3>
本件発明1の「前記制御情報修正ステップにて、前記造形物に生じる前記残留応力を低減させるために、少なくとも前記サポート部の3次元構造情報を修正する」という技術的特徴について、引用発明には何ら示唆されていない点。

(イ)判断
事案に鑑み、上記(ア)の相違点2について検討する。
a.本件の明細書及び図面には、本件発明1の「サポート部」に関し、以下の記載がある。
「【0017】
図5および図6に示すように、造形物20を形成するときには、パウダーベッド上に金属粉末が供給される前に、パウダーベッド上にベースプレート30が予め固定される。このベースプレート30は、造形物20の土台となる金属製の板材である。このベースプレート30上にサポート部31,32を介して造形物20が支持された状態で、造形物20が形成される。なお、サポート部31,32は、造形物20が形成された後に切り離される。本実施形態では、複数本のピン状をなすサポート部31(図5参照)と、格子状をなすサポート部32(図6参照)との2種類のパターンのサポート部31,32を例示する。また、各造形物20を造形するときにおいて、サポート部31,32以外の構成は、同一となっている。」
「【図5】


「【図6】



b.そうすると、「造形物をベースプレートに固定するための」ものとされている本件発明1の「サポート部」は、造形物の形成中には、ベースプレートと造形物との間に介在されて造形物を支持する一方、造形物が形成された後には切り離されるものを意図しており、その結果として、形成された造形物は、ベースプレートから分離されることも理解できる。

c.これに対し、特許異議申立書第22ページ4(4)ウ.(ア)において申立人が提示している甲2には、「オーバーハング反りを低減し、除去することができる」「下面が完全に拘束されたサポート柱」が示されてはいるものの、当該「サポート柱」は、上記したような「造形物の形成中には、ベースプレートと造形物との間に介在されて造形物を支持する一方、造形物が形成された後には切り離されるもの」ではなく、かつ、「形成された造形物は、ベースプレートから分離される」結果ももたらさないものであって、本件発明1の「サポート部」とは明らかに異なるものである。
また、刊行物1における引用発明に関わる以外の記載、甲2において申立人が触れている以外の記載、及び申立人が異議申立書とともに提出したその他の証拠(甲3、甲4)におけるいずれの記載からも、本件発明1のような「サポート部」は示唆されない。
したがって、刊行物1及び申立人が異議申立書とともに提出した証拠(甲2?甲4)に記載された発明に基いても、相違点2に係る本件発明1のような「サポート部」を得ることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。
なお、ここでは、主たる証拠として刊行物1を用いた上で引用発明を認定し、本件発明1との対比・判断を行ったが、仮に、主たる証拠として甲2を用いた場合も、本件発明1のような「サポート部」は示唆されないため、判断の結論は変わらない。

(ウ)小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、刊行物1及び申立人が異議申立書とともに提出した証拠(甲2?甲4)に記載された発明に基づき、当業者が容易になし得たものとはいえない。
すると、本件発明1が、甲1及び甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた旨の特許異議申立書第22ページ4(4)ウ.(ア)における進歩性に関する申立人の主張内容については、甲1を刊行物1と読み替えてみたところで、採用することはできない。

イ.本件発明2?5について
本件発明2?5は、本件発明1を引用し、これに、さらに限定を付したものであり、本件発明1の構成要件全て含むものである。
したがって、本件発明2?5に関しても、刊行物1及び申立人が異議申立書とともに提出した証拠(甲2?甲4)に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。

ウ.本件発明6,7について
本件発明6,7も、「造形物をベースプレートに固定するための」ものとされている「サポート部」を発明特定事項に備えている点において、それぞれ本件発明1と同様であり、刊行物1及び申立人が異議申立書とともに提出した証拠(甲2?甲4)に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。

(4)その他の理由(進歩性)についてのまとめ
以上、上記(3)のとおりであるから、特許異議の申立ての理由にはない、刊行物1及び申立人が異議申立書とともに提出した証拠(甲2?甲4)に記載された発明に基いた進歩性に関する理由も成立しない。

第5 むすび
したがって、特許異議の申立てのいずれの理由及び証拠によっても、請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-12-09 
出願番号 特願2016-70472(P2016-70472)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B22F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 ▲来▼田 優来  
特許庁審判長 中澤 登
特許庁審判官 平塚 政宏
市川 篤
登録日 2020-01-14 
登録番号 特許第6645892号(P6645892)
権利者 株式会社東芝 東芝エネルギーシステムズ株式会社
発明の名称 積層造形の残留応力低減システム、積層造形の残留応力低減方法および積層造形の残留応力低減プログラム  
代理人 特許業務法人東京国際特許事務所  
代理人 小松 秀輝  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 黒木 義樹  
代理人 特許業務法人東京国際特許事務所  
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